(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119589
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】缶蓋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 17/32 20060101AFI20220809BHJP
B21D 51/44 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B65D17/32
B21D51/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016837
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】521054474
【氏名又は名称】ケイジェイ トーゴー プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KJ TOGO Pte Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】新宮領 拓郎
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA03
3E093AA13
3E093BB02
3E093DD02
(57)【要約】
【課題】薄肉化された高強度材を用いた場合でも、リベットヘッドが破断することを抑制するとともに、開缶用タブの回転を防止できる缶蓋及びその製造方法を提供する。
【解決手段】缶胴の開口部に取り付けられ、略円板状のパネル部にスコアにより区画された開口片を有するアルミニウム合金からなる缶蓋本体と、開口片を開口させるための開缶用タブとを備え、パネル部の内側には、パネル部から突出し、開缶用タブをパネル部とリベットヘッドとの間に固定してなるリベットが形成されており、リベットヘッドの外周部は、缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴の開口部に取り付けられ、略円板状のパネル部にスコアにより区画された開口片を有するアルミニウム合金からなる缶蓋本体と、前記開口片を開口させるための開缶用タブとを備え、
前記パネル部の内側には、前記パネル部から突出し、前記開缶用タブを前記パネル部とリベットヘッドとの間に固定してなるリベットが形成されており、
前記リベットヘッドの外周部は、前記缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
缶胴の開口部に取り付けられ、略円板状のパネル部にスコアにより区画された開口片を有するアルミニウム合金からなる缶蓋本体と、前記開口片を開口させるための開缶用タブとを備え、前記パネル部の内側に、前記パネル部から突出し、前記開缶用タブを固定したリベットが形成された缶蓋の製造方法であって、
前記缶蓋本体の前記パネル部を変形させて突起を形成する本体形成工程と、前記突起に前記開缶用タブに形成したタブホールを挿通させて前記開缶用タブを装着した後、前記突起の先端を潰して前記開缶用タブの上でリベットヘッドを成形することにより、前記リベットを形成して前記開缶用タブを前記パネル部に固定するタブ固定工程と、を備え、
前記タブ固定工程は、前記突起の先端に対向するように配置するステイクパンチと、前記缶蓋本体を挟んで前記ステイクパンチの反対側に配置するステイクダイとを用いて実行され、前記ステイクパンチは、平面視円形状の中央部と、前記中央部の外周縁に連続して設けられ、前記缶蓋本体に向けて突出し、かつ、半径方向外側に向かうに従って前記中央部よりもその厚さが大きくなる周縁部とを有し、前記ステイクダイは、前記中央部と略同形状の平面部を有し、
前記ステイクパンチ及び前記ステイクダイにより前記缶蓋本体及び前記開缶用タブを挟持することにより前記リベットヘッドの外周部に、前記缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を形成することを特徴とする缶蓋の製造方法。
【請求項3】
前記中央部から前記周縁部の外周端までの高さは、前記缶蓋本体の塗装済みの缶蓋材料の厚さの60.0%以下であることを特徴とする請求項2に記載の缶蓋の製造方法。
【請求項4】
前記周縁部は、前記中央部の端部から傾斜する傾斜面からなり、前記傾斜面の前記中央部の表面に対する傾斜角度が13.5°以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の缶蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴の開口端部に巻締められる缶蓋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用の缶蓋は、開缶用タブが缶蓋本体に成形したリベットによって取り付けられており、この開缶用タブの後端部側に形成された引上部(タブテール部)を引き上げることにより、リベット近傍が支点となり、押下部(タブの先端)が作用点となって、パネル表面のスコアに囲まれた開口片を押圧、没入させてスコアを破断させ、飲み口を開口させることができる。この際、パネルは、スコア形状に沿って破断されるが、開口片はパネルから離れることなく缶内部に押し入れられる。
【0003】
このような缶蓋は、アルミ合金製の開缶用タブは、リベットにより支持されているため、タブの側面に一定以上の力が加わるとリベットを中心にして回り、押下部(タブの先端)がスコア開口域から外れる場合があり、そのまま開口動作を行うと当然ながら飲み口を開口することができない。このようなリベットを中心とする開缶用タブの回転を防止するため、例えば、リベットの回転に対する抵抗部をリベット以外の部位に形成する特許文献1や、リベットのかしめを強くする特許文献2に記載の缶蓋の製造方法が知られている。
【0004】
この特許文献1に記載の缶蓋では、開缶用タブにおいてリベットを貫通状態に配する貫通孔の内周縁に半径方向内方に突出してリベットの側面に食い込む突起を形成し、この突起により開缶用タブとリベットとの相対回転を係止して、開缶のために最適な位置にタブを固定している。このような突起は、開缶用タブの貫通孔の周縁近傍に金型を押し当てて潰すことにより形成されるため、その先端が鋭利に形成される。そして、貫通孔をリベットに外挿して、リベットを加締める。これにより、リベットヘッドは、開缶用タブの貫通孔よりも大きな形状に形成され、開缶用タブが缶蓋本体に脱落不可に取り付けられるとともに、開缶用タブと缶蓋本体との相対回転が抑制される。
【0005】
また、特許文献2に記載の缶蓋の製造方法では、缶蓋本体にリベット用突出部を形成しておき、リベット用突出部にタブに形成された貫通孔を外挿してタブを缶蓋本体上に配するタブ載置工程と、タブ載置工程後に、リベット用突出部の頭部を押し潰して貫通孔の内径より大きな外径の拡径部を有するリベットを形成する拡径部形成工程と、タブ載置工程後に、タブの貫通孔の内縁近傍を厚さ方向に押し潰して凹部を形成することにより、貫通孔内縁の肉厚を厚くする凹部形成工程とを備えている。この場合、拡径部形成工程と凹部形成工程とは、同時に行うか、いずれかを先に行ってもよいと記載されている。
【0006】
また、リベットヘッドの製造は、例えば、特許文献3に示されているように、タブのインナーランスに形成されているリベットホールに対してパネル上面中央部に設けられているニップル部(突起)を挿入し、該突起をリベット成形することによってパネルとタブとを接続する。具体的には、パネル上面を基準として、インナーランス下面がタブの縁部下面より高くなるようにタブを予め成形しておき、タブのリベットホールに対してニップル部(突起)を挿入し、パネルの下面を支持するパネル支持部の上面とリベットピンの肩部との高さ位置を同一とした状態で、パネル支持部によってパネル下面を支持し、ニップル部(突起)に対して、上方からステイクパンチをあてがうとともに、下方からリベットピンをあてがい、ステイクパンチ及びリベットピンを用いて押圧することにより、インナーランスを弾性変形領域内で下方に変形させつつ、リベット成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-26275号公報
【特許文献2】特開平9-165056号公報
【特許文献3】特許第5192005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、製造コスト低減のため蓋材料とタブ材料の薄肉化が進められる一方、アルミ合金についてもより高強度で、また安価な調質のものが選ばれる傾向にある。例えば、従来は、中間焼鈍を行うA5182H18材が使用されていたが、近年では、中間焼鈍のないA5182H48材(所謂、直通材)を使用している。このような薄肉材・高強度材であるA5182H48材を用いて特許文献3の方法によりリベットヘッドを形成すると、リベットヘッドの強度低下と材料の靭性の低下を招く。特に、特許文献2のようにリベットのかしめを強くすることにより開缶用タブの回転を防止する構成において、リベットを強く成形し過ぎると、リベットネック上部が破断して内容物が漏洩するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、薄肉化された高強度材を用いた場合でも、リベットヘッドが破断することを抑制するとともに、開缶用タブの回転を防止できる缶蓋及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の缶蓋は、缶胴の開口部に取り付けられ、略円板状のパネル部にスコアにより区画された開口片を有するアルミニウム合金からなる缶蓋本体と、前記開口片を開口させるための開缶用タブとを備え、前記パネル部の内側には、前記パネル部から突出し、前記開缶用タブを前記パネル部とリベットヘッドとの間に固定してなるリベットが形成されており、前記リベットヘッドの外周部は、前記缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を有している。
【0011】
一般的に、リベットヘッドの下方に位置するリベットネック部と開缶用タブとの静止摩擦力は、接触面積及び接触面圧が高いほど大きくなる。つまり、リベットヘッドと開缶用タブが缶蓋に強固に固定され、開缶用タブの回転を防止できる状態とは、リベットのリベットヘッドの下方に位置するリベットネックと、開缶用タブとの接触面積及び接触面圧が大きい状態をいう。
本発明では、リベットヘッドの外周部は、缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を有している、つまり、リベットヘッドの形成時に中心よりも外周部の方が大きな圧力をかけた状態で押圧されている。このようにリベットヘッドの外周部が中心よりも大きな圧力で押圧されると、リベットネック部がタブホールの周辺を咥えこむような形状となることから、リベットネック部と開缶用タブとの接触面積及び接触面圧が増大する。このため、本発明では、開缶用タブの回転を確実に防止できる。
【0012】
本発明の缶蓋の製造方法は、缶胴の開口部に取り付けられ、略円板状のパネル部にスコアにより区画された開口片を有するアルミニウム合金からなる缶蓋本体と、前記開口片を開口させるための開缶用タブとを備え、前記パネル部の内側に、前記パネル部から突出し、前記開缶用タブを固定したリベットが形成された缶蓋の製造方法であって、前記缶蓋本体の前記パネル部を変形させて突起を形成する本体形成工程と、前記突起に前記開缶用タブに形成したタブホールを挿通させて前記開缶用タブを装着した後、前記突起の先端を潰して前記開缶用タブの上でリベットヘッドを成形することにより、前記リベットを形成して前記開缶用タブを前記パネル部に固定するタブ固定工程と、を備え、前記タブ固定工程は、前記突起の先端に対向するように配置するステイクパンチと、前記缶蓋本体を挟んで前記ステイクパンチの反対側に配置するステイクダイとを用いて実行され、前記ステイクパンチは、平面視円形状の中央部と、前記中央部の外周縁に連続して設けられ、前記缶蓋本体に向けて突出し、かつ、半径方向外側に向かうに従って前記中央部よりもその厚さが大きくなる周縁部とを有し、前記ステイクダイは、前記中央部と略同形状の平面部を有し、前記ステイクパンチ及び前記ステイクダイにより前記缶蓋本体及び前記開缶用タブを挟持することにより前記リベットヘッドの外周部に、前記缶蓋本体に向けて傾斜する傾斜面を形成する。
【0013】
ここで、従来のステイクパンチ51Aは、
図9及び
図10に示すように、凹部511Aの底面に形成された単一の円平面512Aを用いて成形している。このステイクパンチ51Aによる加工では、
図10に示すように、開缶用タブ1Aの上面に対してリベットヘッド251Aの下方に連続して形成されるリベットネック254Aの上部255Aが開き気味の状態となる。このため、リベットネック254Aの上部255Aをさらにタブに強く押さえ付けようとすると、
図11に示すように、リベットヘッド251Aの中央部の材料はステイクパンチ51Aとステイクダイ52Aに圧迫されて、
図11の矢印に示すように半径方向外方に押し出される。このとき、リベットネック254Aの下部256Aは、ステイクダイ51Aと開缶用タブ1Aによって挟まれて固定されているため、リベットヘッド251Aの外周部とリベットネック254Aの上部255Aとの間に、白抜き矢印で示すように引張り応力が発生し、材料の限界に達するとリベットネック254Aの上部255A(
図11の破断を示す部位)が破断してしまう。
【0014】
本発明では、
図10に示す従来方式のように、突起20の先端を単一の円平面512Aで潰してリベットヘッド251Aを形成するのではなく、ステイクパンチの周縁部がリベットヘッドの外周部を押し下げることで、ステイクパンチの中央部と周縁部との接続部を起点として曲げ加工がなされるため、ステイクパンチの押圧面が円平面のみからなる場合に比べて過大な引張り応力がリベットヘッドの外周部(傾斜面)及びリベットヘッドの下方に連続して形成されるリベットネックの上部(
図11の破断を示す部位)に発生することを抑制できる。これにより薄肉化された高強度材を用いた場合でも、リベットネックの上部が破断することを抑制できる。また、リベットヘッドの外周部を曲げ加工により形成することから、リベットネックがタブホールの周辺を咥え込むような形状となり、リベットネックと開缶用タブとの接触面積と接触面圧が増加する。これにより、開缶用タブの回転を確実に防止可能な缶蓋を製造できる。
【0015】
本発明の缶蓋の製造方法の一つの態様としては、前記中央部から前記周縁部の外周端までの高さは、前記缶蓋本体の塗装済の缶蓋材料の厚さの60.0%以下であるとよい。
中央部から周縁部の外周端までの高さが上記厚さの60.0%を超えると、所望のリベットヘッド径にすることが難しく、充分なオーバーラップ領域(タブホールの外側に位置するリベットヘッドの領域)を得ることができない可能性があり、この場合、開缶用タブを操作してスコアを破断する前に開缶用タブがリベットヘッドから外れるおそれがある。
【0016】
本発明の缶蓋の製造方法の一つの態様としては、前記周縁部は、前記中央部の端部から傾斜する傾斜面からなり、前記傾斜面の前記中央部の表面に対する傾斜角度が13.5°以下であるとよい。
なお、傾斜面は、縦断面視で直線状、凹曲線状、凸曲線状のいずれであってもよい。この点、本発明における傾斜角度は、傾斜面が直線状の場合は、傾斜面と中央部の表面との角度を傾斜角度と定義し、傾斜面が縦断面視で凹曲線状及び凸曲線状の場合は、傾斜面の幅方向の中央位置での接線と中央部の表面との角度を傾斜角度と定義する。
ここで、上述した塗装済みの缶蓋材料の厚さの60.0%に相当する傾斜角度はおよそ13.5°である。このため、上記態様では、傾斜面の中央部の表面に対する傾斜角度を13.5°以下に設定し、開口用タブの回転を防止するとともに開缶用タブの外れを防止している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄肉化された高強度材を用いた場合でも、リベットヘッドが破断することを抑制するとともに、開缶用タブの回転を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る缶蓋が巻き締められた缶を缶蓋側から見た平面図である。
【
図2】
図1の缶及び缶蓋をA1-A1線で切断した断面を示す断面図である。
【
図3】上記実施形態の缶蓋の開缶用タブ近傍を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図3の缶蓋をB1-B1線で切断した断面を示す断面図である。
【
図5】上記実施形態の缶蓋の製造方法を示すフローチャートを示す図である。
【
図6】上記実施形態の缶蓋の製造工程において、タブ固定工程に用いるステイクパンチ及びステイクダイを示す断面図である。
【
図7】上記タブ固定工程において、ステイクダイに缶蓋本体が配置され、缶蓋本体が固定される直前の状態を示す断面図である。
【
図8】上記タブ固定工程において、ステイクパンチがステイクダイに向けて押圧され、リベットヘッドが形成される様子を示す断面図である。
【
図9】従来のタブ固定工程に用いるステイクパンチ及びステイクダイを示す断面図である。
【
図10】従来のタブ固定工程において、ステイクパンチがステイクダイに向けて押圧され、リベットヘッドが形成される様子を示す断面図である。
【
図11】
図10に示す状態からさらにステイクパンチによる押圧力を高め、リベットヘッドとリベットネックとの接続部位近傍に亀裂が生じた様子を示す断面図である。
【
図12】従来のリベットヘッド及び開缶用タブの一部を拡大して示す図である。
【
図13】上記実施形態のリベットヘッド及び開缶用タブの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る缶蓋及び缶蓋の製造方法の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の缶蓋100は、例えば飲料用等の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ方式の缶蓋であり、
図1に示すように、缶蓋本体2と、この缶蓋本体2に取り付けられた開缶用タブ1とにより構成される。また、このように構成される缶蓋100は、
図2に示すように、内容物を充填した缶胴3の開口端部に巻締められることにより、缶胴3の内部を密閉した缶101が製造される。なお、図示は省略するが、缶胴3は有底筒状に形成されている。これらの缶胴3、缶蓋本体2及び開缶用タブ1は、それぞれアルミニウム合金(例えば、Al-Mg合金、Al-Mn合金、Al-Mg-Mn合金等)により形成されている。具体的には、A5182H48材等の薄肉化された高強度材により形成されるとよい。なお、缶蓋本体2となる缶蓋材料はあらかじめ塗装がなされており、塗装済の缶蓋材料の厚さは、0.2mm以上0.26mm以下とされている。
【0021】
缶蓋本体2は、
図1及び
図2に示すように、略円板状のパネル部21と、このパネル部21の外周部に沿って下方に凸となるように設けられた環状のカウンターシンク部22とを備えている。そして、パネル部21の一部には、凹状に形成されたパネルデボス23が設けられており、このパネルデボス23の底面に、開口片27を画成するスコア24と、パネル部21から突出し、開缶用タブ1のタブホール15に挿通されるリベット25と、開口片27とはリベット25を介して反対側に配置された指掛け凹部26とが設けられている。
【0022】
スコア24は、開缶用タブ1による押圧によって破断されて開口片27を缶内部に押し込まれることで、飲み口を開口する構成とされる。なお、開口片27上には、スコア24に沿うようにして上方に突出したインナービード28が形成されており、開口片27が補強されている。
リベット25は、パネル部21の上面の中央部を深絞りする加工とその周囲をリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部21の中心部を上方に張り出させ、その先端を潰すことにより形成される。
【0023】
また、指掛け凹部26は、開缶用タブ1の後端部に沿うように形成されている。これにより、開封者は、後端部に指をかけやすく、後端部を容易に引き上げることができる。
また、これらリベット25と指掛け凹部26との間には、ディンプルと称される凸部29が形成されている。凸部29は、パネルデボス23の上面に突出し、開缶用タブ1の幅方向に間隔をおいて2つ形成されている。この凸部29に、開缶用タブ1の外側縁部が引っ掛かることで、開缶用タブ1がリベット25周りへ回転移動することをある程度防止できる。しかし缶に内容物が充填されて缶蓋100が巻締められた後、缶101内に所定の内圧が発生すると缶蓋100は外方に膨らむため、凸部29に対して開缶用タブ1が浮き上がってしまい、この開口用タブ1の回転移動を防止する効果は薄れてしまう。
【0024】
開缶用タブ1は、
図1~
図4に示すように、外形形状を形成するタブ本体11の周縁部19が下面側に折り曲げられてカール成形が施されており、全体の剛性が高められている。そして、このタブ本体11の中央付近には、缶蓋本体2のリベット25と固着される固着部12が設けられている。また、固着部12は、U字状のスロット13により区画形成されている。そして、開缶用タブ1は、この固着部12に形成されたタブホール15に缶蓋本体2のリベット25を挿入し、固着部12の下面をパネルデボス23の底面に当接させた状態でリベット25を加締めることにより、缶蓋本体2に取り付けられている。
【0025】
また、開缶用タブ1は、タブ本体11の先端部に設けられて缶蓋本体2の開口片27を押し下げて開口させるための押下部16(本発明のタブノーズに相当)と、この押下部16に対してタブ本体11の固着部12を挟んだ反対側に配置される後端部に設けられて押下部16を押し下げるために缶蓋本体2から引き上げられる引上部17と、タブ本体11の引上部17と固着部12との間に設けられて下面側に向けて凸となるように上面が凹状に形成されたタブパネル14とを備えている。
なお、タブパネル14の形態は、上記形態に限らず、タブパネル部を長円状にブランキングし、その破断面を下方に曲げ加工することにより、いわゆるフィンガーホールを形成した形態であってもよい。
【0026】
(リベットの構成)
リベット25は、
図4に示すように、先端側に位置し径方向外側に張り出す形状のリベットヘッド251と、リベットヘッド251に連続して設けられ、リベットヘッド251を支持する形状のリベットネック254とを有している。リベットヘッド251の平面中央部252は平面視円形状の平坦面からなり、リベットヘッド251の外周部253は、缶蓋本体2に向けて傾斜する傾斜面を有している。リベットネック254は、
図13に示すように、リベットヘッド251の外周部253の外周端に接続され、その下面が開缶用タブ1の上面に当接する上部255と、上部255に連続して形成され、その側面及び上面が開缶用タブ1のタブホール15及び開缶用タブ1の下面に当接する下部256とからなり、上部255及び下部255は、タブホール15の開口端近傍に接触した状態でリベットヘッド251を支持している。
【0027】
また、リベットヘッド251の外周部253の傾斜面は、詳しくは後述するが、突起20の先端が潰される際に形成され、リベットヘッド251の形成時に平面中央部252よりも外周部253の方が開缶用タブ1に向けて強く押圧されることにより形成される。このようにリベットヘッド251の外周部253が平面中央部252よりも強く押圧されると、リベットネック部254がタブホール15の周辺を咥えこむような形状となる。具体的には、
図13に示すように、開缶用タブ1の上面とリベットネック254の上部255の下面との間に形成される隙間Ar2が小さくなることで、開缶用タブ1の上面が上部255の下面に接触した状態となるとともに、リベットネック部254の下部256がタブホール15の開口縁及び開缶用タブ1の下面に接触した状態となることから、リベットネック部254と開缶用タブ1との接触面積及び接触面圧が増大する。
【0028】
一般的に、リベットヘッド251の下方に位置するリベットネック254と開缶用タブ1との静止摩擦力は、接触面積及び接触面圧が高いほど大きくなる。つまり、リベットネック254と、開缶用タブ1との接触面積(
図13の斜線で示す領域)及び接触面圧が大きいほど開缶用タブ1がリベットヘッド251により強固に固定された状態となる。例えば、
図10及び
図11に示す従来方式でリベットヘッド251Aを形成した場合、
図12に示すように、リベットネック254Aの上部255Aの下面と開缶用タブ1Aの上面との隙間Ar1は、本実施形態の隙間Ar2よりも大きく形成されている。このため、従来方式でリベットヘッド251Aを形成すると、
図12に示すように、リベットネック254Aの上部255A及び下部256Aと開缶用タブ1Aとの接触面積及び接触面圧が小さくなる。これに対し、本実施形態では、
図4及び
図13に示すように、タブホール15の周辺を咥えこむようにリベットヘッド251及びリベットネック254を形成することで、
図13に示すリベットネック254の上部255の下面と開缶用タブ1の上面との隙間Ar2を小さくでき、これにより上記接触面積及び接触面圧を増大させ、開缶用タブ1の回転を確実に防止している。
【0029】
なお、リベットヘッド251の外径d1は3.6mm~4.6mm、タブホール15の内径d2は3.2mm~4.2mm、リベットヘッド251の平面中央部252の外径d3は2.3mm~3.3mmに設定されている。
【0030】
[缶蓋の製造方法]
次に、本実施形態の缶蓋の製造方法について説明する。本実施形態の缶蓋の製造方法は、
図5に示すように、缶蓋本体2のパネル部21を変形させて突起を形成する本体形成工程(S11)と、缶蓋本体2に固定する開缶用タブ1を形成する開缶用タブ形成工程(S12)と、缶蓋本体2の突起に開缶用タブ1に形成したタブホール15を挿通させて開缶用タブ1を装着した後、突起の先端を潰して開缶用タブ1の上でリベットヘッド251を成形することにより、リベット25を形成して開缶用タブ1をパネル部に固定するタブ固定工程(S13)と、を有する。
なお、本実施形態では、缶蓋本体と開缶用タブとは別々に成形され、タブ固定工程(S13)により、開缶用タブ1が缶蓋本体2に固定される。以下、工程ごとに説明する。
【0031】
(本体形成工程)
本体形成工程では、予め塗装が施された塗装済のアルミニウム合金からなる略円板状のパネル部21にスコア24により区画された開口片27を形成するとともに、パネル部21の内側に、パネル部21から突出する突起20を形成する。この突起20は、パネル部21の上面の中央部を深絞りする加工とその周囲をリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部21の中心部を上方に張り出させることにより形成される。なお、上記突起20は、後述するタブ固定工程により先端が潰されることによりリベット25となる部位であるため、その外径はタブホール15の外径よりも若干小さいサイズに設定される。
【0032】
(開缶用タブ形成工程)
開缶用タブ形成工程では、缶蓋本体2に固定する開缶用タブ1を形成する。具体的には、開缶用タブ1は、0.24mm以上0.31mm以下の板厚の金属板を加工することにより形成され、金属板にタブホール15等の開缶用タブ1に形成される孔形状を形成した後、ブランクを打ち抜き、凹凸形状等の成形を施し、かつ、タブ本体11の周縁部をカール成形する。そして、その後に後端部の周縁部を押しつぶして、引上部17を形成する。
【0033】
(タブ固定工程)
缶蓋本体2の突起に開缶用タブ1に形成したタブホール15を挿通させて開缶用タブ1を装着した後、突起の先端を潰して開缶用タブ1の上でリベットヘッド251を成形することにより、リベット25を形成して開缶用タブ1をパネル部21に固定する。以下、詳細に説明する。
【0034】
タブ固定工程は、
図6に示すように、突起20の先端に対向するように配置されるステイクパンチ51と、缶蓋本体2を挟んでステイクパンチ51の反対側に配置するステイクダイ52とを用いて実行される。このステイクパンチ51の中央部には、凹部511が形成され、この凹部511の底面には、平面視円形状の中央部512と、中央部512の外周縁に連続して設けられ、缶蓋本体2に向けて突出し、かつ、半径方向外側に向かうに従って中央部512よりもその厚さが大きくなる周縁部513とが形成されている。また、ステイクダイ52は、ステイクパンチ51の凹部511に向けて突出する突出部521を有しており、突出部521の先端には、中央部512と略同形状の平面部522が形成されている。
【0035】
これらステイクパンチ51及びステイクダイ52の各種寸法は使用する缶蓋板厚及びタブ板厚にもよるが、例えば、凹部511の内径d4は3.6mm~4.6mm、中央部512の直径d5は2.3mm~3.3mm、突出部521の外径d6は2.6mm~3.6mm、中央部512から周縁部513の外周端までの高さh1は0.02mm~0.15mm、突出部521の高さh2は0.7mm~1.0mmに設定されている。また、中央部512と周縁部513との間は、円弧状面により接続され、その曲率半径R1は0.3mm~0.9mmに設定されている。さらに、突出部521の平面部522の外周端及び突出部521の基端側端部のいずれもが円弧状面により接続され、平面部522の外周端の曲率半径R2は0.1mm~0.4mm、突出部521の基端側端部の曲率半径R3は0.3mm~0.6mmに設定されている。
【0036】
これらのうち、中央部512から周縁部513の外周端までの高さh1は、缶蓋本体2の塗装済の缶蓋材料の厚さ(例えば、0.2mm以上0.26mm以下)の60.0%以下であるとよい。中央部512から周縁部513の外周端までの高さh1が上記板厚の60.0%を超えると、所望のリベットヘッド径にすることが難しく、充分なオーバーラップ領域(タブホール15の外側に位置するリベットヘッド251の領域)を得ることができない可能性があり、この場合、開缶用タブ1を操作してスコア24を破断する前に開缶用タブ1がリベットヘッド251から外れるおそれがあるためである。
なお、本実施形態では、周縁部513を形成する傾斜面は、
図6に示すように、縦断面視直線状に形成されている。ここで、上述した塗装済みの缶蓋材料の厚さの60.0%に相当する傾斜角度はおよそ13.5°である。このため、本実施形態では、傾斜面の中央部512の表面に対する傾斜角度を13.5°以下に設定し、開口用タブ1の回転を防止するとともに開缶用タブ1の外れを防止している。
また、上記傾斜角度が2.5°より小さいとリベット251の外周部253を適切に押圧できない可能性があるため、傾斜角度の範囲は2.5°以上13.5°以下であることがより好ましい。
【0037】
また、凹部511の内径d4と平面部512の直径d5との差は1.0mm~1.6mmであることが好ましい。この差が1.0mm未満であると、リベットヘッド251の外径d1が小さくなり過ぎて前記オーバーラップ領域を得ることができない可能性があり、1.6mmを超えるとリベットヘッド251の外径d1の一部が大きくなり過ぎてリベットヘッドが変形する可能性がある。
【0038】
そして、
図7に示すように、ステイクパンチ51及びステイクダイ52の間に、缶蓋本体2及び開缶用タブ1を配置し、
図8に示すように、これらをステイクパンチ51及びステイクダイ52により挟持することにより、リベットヘッド251の外周部253に、缶蓋本体2に向けて傾斜する傾斜面を形成する。このタブ固定工程では、
図10に示す従来方式のように、突起20の先端を単に潰してリベットヘッド251Aを形成するのではなく、ステイクパンチ51の周縁部513がリベットヘッド251の外周部253を押し下げることで、ステイクパンチ51の中央部512と周縁部513とを接続する円弧状面(接続部)を起点として曲げ加工がなされるため、ステイクパンチ51の押圧面が円平面のみからなる場合に比べて過大な引張り応力がリベットヘッド251の外周部253及びリベットネック254の上部255に発生することを抑制できる。これにより薄肉化された高強度材を用いた場合でも、リベットネック254が破断することを抑制できる。また、リベットヘッド251の外周部を曲げ加工により形成することから、リベットネック254がタブホール15の周辺を咥え込むような形状となり、リベットネック254と開缶用タブ1との接触面積と接触面圧が増加する。これにより、開缶用タブ1の回転を確実に防止可能な缶蓋100が形成される。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明に趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、周縁部513を形成する傾斜面は、縦断面視直線状に形成されていることとしたが、これに限らず、周縁部513を形成する傾斜面は、縦断面視凸曲線状又は凹曲線状に形成されてもよい。このように傾斜面が縦断面視で凹曲線状及び凸曲線状の場合は、傾斜面の幅方向の中央位置での接線と中央部512の表面との角度を傾斜角度と定義する。つまり、傾斜面は、縦断面視で直線状、凹曲線状、凸曲線状のいずれであってもよい。
【実施例0040】
実施例では、アルミニウム合金A5182H48、缶蓋板厚0.208mm、タブ板厚0.280mmを使用して、呼び径200径の缶蓋(缶蓋外径57mm)を作製した。このとき、
図6に示すステイクパンチ51及びステイクダイ52を用い、凹部511の内径d4は3.79mm、中央部512の直径d5は2.6mm、突出部521の外径d6は2.9mm、中央部512から周縁部513の外周端までの高さh1は0.11mm、突出部521の高さh2は0.82mmとした。また、中央部512と周縁部513とを接続する円弧状面の曲率半径R1を0.5mm、突出部521の平面部522の外周端の円弧状面の曲率半径R2を0.2mm、突出部521の基端側端部の円弧状面の曲率半径R3を0.4mmとした。さらに、タブホールの内径は3.3mmとした。
一方、比較例では、ステイクパンチを
図9に示す形状のもの(凹部の底面が平坦面からなるもの)を用いた以外は、各種寸法が同じステイクパンチ及び実施例と同じステイクダイを用いて缶蓋を製造した。
これら缶蓋の開缶用タブを回転させ、そのトルク(Ncm)を測定するとともに、リベットヘッド径及びリベットの亀裂の有無を確認した。
トルクの測定は、開缶用タブがリベットヘッドを中心にして回転するようにタブの側面にモーメントを付与し、開缶用タブが回り始めるときのトルクを測定した。また、リベットヘッド径は、複数缶の平均値であり、リベットの亀裂の有無は目視で確認した。
それぞれ100缶測定し、その結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
実施例、比較例ともリベットの亀裂はなかったものの、リベットヘッド径は実施例の方が比較例よりも0.03mm小さいにも関わらず、開缶用タブが回り始めるトルクは実施例の方が比較例よりも、最大値、最小値及び平均値のそれぞれで略15Ncm大きかった。このため、実施例の製造方法により製造した缶蓋は、開缶用タブの回転を防止できることがわかった。