(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119612
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】触感提示装置及び触感提示方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016863
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】米原 悠二
(72)【発明者】
【氏名】黒木 帝聡
(72)【発明者】
【氏名】島田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA04
5E555BA38
5E555BB04
5E555BB38
5E555BC01
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】触感提示装置の表現機能を向上させる。
【解決手段】装着者に触感を提示する触感提示装置10は、印加電圧に応じて面方向に伸縮するシート状のDEA14a、14bと、DEA14a、14bを装着部位に接触させた状態で保持する装着部11とを備えている。装着部11は、装着部位の周方向の一部を露出させる露出部12を備えている。DEA14a、14bは、露出部12と同一の周方向線上に位置するように設けられ、周方向に延びる面状に形成されるとともに周方向に伸縮する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着した使用者に触感を提示する触感提示装置であって、
印加電圧に応じて面方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータと、
使用者の装着部位に装着されて、前記誘電エラストマーアクチュエータを前記装着部位に接触させた状態で保持する装着部とを備え、
前記装着部は、前記装着部位の周方向の一部を露出させる露出部を備え、
前記誘電エラストマーアクチュエータは、前記露出部と同一の周方向線上に位置するように設けられるとともに前記周方向に伸縮することを特徴とする触感提示装置。
【請求項2】
前記誘電エラストマーアクチュエータは、前記装着部よりも前記周方向に相対的に大きく伸縮する請求項1に記載の触感提示装置。
【請求項3】
複数の前記誘電エラストマーアクチュエータを備え、
複数の前記誘電エラストマーアクチュエータのうちの二つは、前記露出部を前記周方向に挟むように前記露出部の両側に位置している請求項1又は請求項2に記載の触感提示装置。
【請求項4】
前記露出部の両側に位置する二つの前記誘電エラストマーアクチュエータに対して、それぞれ独立して電圧を印加可能な駆動制御部を備える請求項3に記載の触感提示装置。
【請求項5】
使用者に触感を提示する触感提示方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の触感提示装置の前記装着部を使用者の前記装着部位に装着させた状態として、前記装着部位における前記露出部から露出する接触領域を物体に触れさせることにより、前記接触領域に対する前記物体に基づく実触感と前記誘電エラストマーアクチュエータの振動に基づく擬似触感とを重ねた触感を使用者に提示することを特徴とする触感提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触感提示装置及び触感提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相互作用コンピュータアプリケーション、遠隔ロボット工学、娯楽、医療等の技術分野において、使用者に対して触感をフィードバックする触感提示装置を適用する研究が進められている。例えば、特許文献1には、振動子の振動を触感として認識させるウェアラブルな触感提示装置が開示されている。特許文献1の触感提示装置は、振動子が使用者の皮膚に接触するように装着して用いられ、振動子が接触している部分に対して振動子の振動に基づく触感を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触感提示装置により提示される触感を、目的とする触感により近づけるように、触感提示装置の表現機能を向上させることは、触感提示装置に求められ続ける課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する触感提示装置は、装着した使用者に触感を提示する触感提示装置であって、印加電圧に応じて面方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータと、使用者の装着部位に装着されて、前記誘電エラストマーアクチュエータを前記装着部位に接触させた状態で保持する装着部とを備え、前記装着部は、前記装着部位の周方向の一部を露出させる露出部を備え、前記誘電エラストマーアクチュエータは、前記露出部と同一の周方向線上に位置するように設けられるとともに前記周方向に伸縮する。
【0006】
上記構成によれば、装着部を装着者の装着部位に装着させた状態において、装着部位における露出部から露出する部分を物体に触れさせることができる。また、露出部と同一の周方向線上に、周方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータを配置している。これにより、誘電エラストマーアクチュエータの振動が露出部から露出する部分へと伝わり、露出部から露出する部分の触感として、誘電エラストマーアクチュエータに基づく触感を使用者に提示できる。したがって、物体に触れることによる実触感と、誘電エラストマーアクチュエータに基づく擬似触感とを重ねることができ、振動子の振動に基づく擬似触感のみを提示する従来の触感提示装置と比較して、触感提示装置の表現機能が向上する。
【0007】
上記触感提示装置において、前記誘電エラストマーアクチュエータは、前記装着部よりも前記周方向に相対的に大きく伸縮することが好ましい。
上記構成によれば、露出部から露出する部分の触感を装着者により強く提示できる。
【0008】
上記触感提示装置において、複数の前記誘電エラストマーアクチュエータを備え、複数の前記誘電エラストマーアクチュエータのうちの二つは、前記露出部を前記周方向に挟むように前記露出部の両側に位置していることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、ファントムセンセーションによる錯覚を生じさせることにより、露出部から露出する部分の触感を装着者により強く提示できる。
上記触感提示装置において、前記露出部の両側に位置する二つの前記誘電エラストマーアクチュエータに対して、それぞれ独立して電圧を印加可能な駆動制御部を備えることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、露出部の両側に位置する二つの誘電エラストマーアクチュエータに印加する電圧の大きさの比率を変化させることにより、ファントムセンセーションによる振動を錯覚させる位置を変化させることができる。これにより、露出部から露出する部分において、触感が強く提示される位置を調整できる。
【0011】
上記課題を解決する触感提示方法は、使用者に触感を提示する触感提示方法であって、上記触感提示装置の前記装着部を使用者の前記装着部位に装着させた状態として、前記装着部位における前記露出部から露出する接触領域を物体に触れさせることにより、前記接触領域に対する前記物体に基づく実触感と前記誘電エラストマーアクチュエータの振動に基づく擬似触感とを重ねた触感を使用者に提示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、触感提示装置の表現機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、使用者の指先に装着して用いられ、指の腹を触感提示の対象部位とする触感提示装置に具体化した一実施形態を説明する。なお、以下では、触感提示装置を装着した使用者を装着者と記載する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、触感提示装置10は、使用者の指先に装着される装着部11を備えている。装着部11は、断面C字状の略円筒体である。装着部11における周方向の両端部である第1端部11aと第2端部11bとの間には、装着部11が装着された指の腹を露出させるための露出部12が設けられている。露出部12は、装着部11における軸方向の全体に設けられている。
【0016】
装着部11は、第1端部11aと第2端部11bとの間の露出部12を広げるように弾性変形可能に構成されている。装着部11を構成する材料としては、例えば、軟質ゴム材、ポリウレタンやポリエステル製の化学繊維などからなるストレッチ素材が挙げられる。装着部11は、後述する誘電エラストマーアクチュエータ14a、14bよりも固い材料により構成されていることが好ましい。
【0017】
装着部11の内面における周方向の中央部には、粘着部13が設けられている。粘着部13は、装着者の指先の外面(爪側の面)に粘着することにより、装着者の指先に対する装着部11の位置ずれを抑制する。
【0018】
装着部11の内面には、二つの誘電エラストマーアクチュエータ14a、14b(DEA:Dielectric Elastomer Actuator)が取り付けられている。DEA14aは、装着部11の周方向における第1端部11aと粘着部13との間の位置に取り付けられるとともに、装着部11の軸方向及び周方向に延びるシート状に形成されている。DEA14bは、装着部11の周方向における第2端部11bと粘着部13との間の位置に取り付けられるとともに、装着部11の軸方向及び周方向に延びるシート状に形成されている。
【0019】
装着部11の内面において、DEA14a、14bは、粘着部13を間に挟んで周方向に並ぶように位置するとともに、露出部12を周方向に挟むように露出部12の両側に位置している。したがって、装着部11の露出部12及びDEA14a、14bは、同一の周方向線上に位置している。
【0020】
DEA14a、14bの周方向の長さL1a、L1bの合計(=L1a+L2a)は、例えば、装着部位の周方向の長さの20%以上であり、30%以上であることが好ましい。本実施形態では、指先の周方向の長さである指先の太さが装着部位の周方向の長さになる。また、露出部12の周方向の長さL2は、例えば、装着部位の周方向の長さの20%以上であり、30%以上であることが好ましい。
【0021】
図3に示すように、DEA14a、14bは、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層20と、誘電層20の厚さ方向の両側に配置された電極層としての正極電極21及び負極電極22とが複数、積層された多層構造体である。DEA14a、14bの最外層には絶縁層23が積層されている。DEA14a、14bは、正極電極21と負極電極22との間に直流電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて、誘電層20が厚さ方向に圧縮されるとともに誘電層20の面に沿った方向(DEA14a、14bの面方向)に伸張するように変形する。
【0022】
誘電層20を構成する誘電エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAに用いられる誘電エラストマーを用いることができる。上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら誘電エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。誘電層20の厚さは、例えば、20~200μmである。
【0023】
正極電極21及び負極電極22を構成する材料としては、例えば、導電エラストマー、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック(登録商標)、金属蒸着膜が挙げられる。上記導電エラストマーとしては、例えば、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーが挙げられる。
【0024】
上記絶縁性高分子としては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁性高分子のうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。上記導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子が挙げられる。これら導電性フィラーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。正極電極21及び負極電極22の厚さは、例えば、10~100μmである。
【0025】
絶縁層23を構成する絶縁エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAの絶側縁分に用いられる公知の絶縁エラストマーを用いることができる。上記絶縁エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。絶縁層23の厚さは、例えば、10~100μmである。
【0026】
図2に示すように、装着部11の内面には、装着部11の軸方向においてDEA14a、14bの両端部に隣接する制限部15が設けられている。制限部15は、DEA14a、14bの軸方向の側縁が当接することにより、DEA14a、14bの軸方向へのそれ以上の伸長を制限する。一方、DEA14a、14bの周方向の端部には、制限部15に相当する構成は設けられてなく、DEA14a、14bは、周方向に自由に伸長可能である。これにより、DEA14a、14bは、装着部11よりも周方向に相対的に大きく伸長可能になる。また、DEA14a、14bは、その面方向における周方向以外の方向と比較して、周方向に相対的に大きく伸長可能である。
【0027】
図1に示すように、触感提示装置10は、DEA14a、14bに印加される印加電圧を制御する駆動制御部16を備えている。駆動制御部16は、予め設定された振動パターンにてDEA14a、14bを振動させるようにバッテリー等の電源(図示略)からDEA14a、14bへ印加される印加電圧を制御する。また、駆動制御部16は、DEA14a、14bに対して、それぞれ独立して印加電圧を変更できるように構成されており、必要に応じて、DEA14a、14bに対して、それぞれ異なる印加電圧を印加可能である。
【0028】
駆動制御部16において、DEA14a、14bに対する印加電圧の大きさや、印加電圧の継続時間、前後の印加電圧の間隔等が変更されると、これらに応じてDEA14a、14bの振動パターンが変更される。例えば、駆動制御部16は、複数種類の印加電圧の波形を記憶した記憶部を有しており、切替スイッチの操作等により生成される外部からの切替信号の入力に基づいて、DEA14a、14bを駆動するための印加電圧の波形を切り替え可能に構成されている。
【0029】
上記印加電圧の波形としては、例えば、粗面に触れた場合の触感を提示するための振動パターンに対応する印加電圧の波形、滑面に触れた場合の触感を提示するための振動パターンに対応する印加電圧の波形、硬い物体に触れた場合の触感を提示するための振動パターンに対応する印加電圧の波形、柔らかい物体に触れた場合の触感を提示するための振動パターンに対応する印加電圧の波形が挙げられる。
【0030】
次に、本実施形態の触感提示装置10を用いた触感提示方法を、本実施形態の作用とともに説明する。
図1及び
図2に示すように、触感提示装置10を使用する場合には、まず、触感提示装置10の装着部11を装着者の指先に装着する。このとき、露出部12に指の腹が位置するように装着部11を装着する。装着部11は、第1端部11aと第2端部11bとの間を広げるように弾性変形することにより、装着者の指の太さに合わせてその形状が調整される。これにより、指先を挟み込むようにして指先に装着部11が装着される。
【0031】
装着部11を装着した装着状態においては、装着者の指の腹が装着部11の露出部12を通じて露出するとともに、装着部11の内面に設けられたDEA14a、14bが指先の周面に面接触する。また、装着部11の内面に設けられた粘着部13が指先の爪側の面に粘着することにより、指先に対する装着部11の位置ずれが規制される。装着部11は、DEA14a、14bを指先に接触させた状態で保持する部材として機能する。
【0032】
次に、装着部11の露出部12から露出している指の腹を物体Aに触れさせる。本実施形態においては、露出部12から露出している指の腹が物体Aに接触する接触領域になる。そして、DEA14a、14bに対して、所定の触感を提示するための振動パターンに対応する波形の電圧を印加する。DEA14a、14bに電圧が印加されると、印加電圧に応じてDEA14a、14bが面方向及び面直方向の伸縮することに基づいて振動する。DEA14a、14bの振動は、指先の内部を経て露出部12から露出している指の腹へと伝わる。装着者は、指の腹へと伝わった振動を、指の腹に触れている物体Aの触感として認識する。
【0033】
このとき、装着者は、指の腹に直接触れている物体Aから得られる実触感と、DEA14a、14bの振動に基づく擬似触感とが重なった触感を、物体Aの触感として認識する。例えば、物体Aが滑らかな表面を有する硬質な物体であり、DEA14a、14bに対する印加電圧の波形が、粗面に触れた場合の触感を提示するための振動パターンに対応する波形であるとする。この場合、装着者は、指の腹で触れている物体Aを、表面が粗い硬質の物体であると認識する。
【0034】
また、本実施形態では、露出部12を周方向に挟むように露出部12の両側に二つのDEA14a、14bを配置している。したがって、装着者の指先は、露出部12に位置する指の腹を周方向に挟む2箇所においてDEA14a、14bに接触するとともに、それらの2箇所に対してDEA14a、14bの振動が直接付与される。
【0035】
この場合、指の腹に対して、ファントムセンセーションによる振動感が更に付加される。ファントムセンセーションは、皮膚上の異なる2点を同時に刺激した際に、それらの間の1点に刺激を受けたように錯角する現象である。上記実施形態においては、装着者の指先におけるDEA14a、14bに接触している2箇所の間に位置している指の腹に、DEA14a、14bによる振動を直接受けたように錯覚する。その結果、実際に伝わる振動以上の強い振動が指の腹に加えられたように錯覚し、装着者は、DEA14a、14bに基づく振動を、指の腹に触れている物体Aの触感として強く認識する。これにより、装着者に対して、指の腹の触感がより強く提示される。
【0036】
また、露出部12の両側に配置されている二つのDEA14a、14bに印加する電圧の大きさの比率を変化させると、指の腹において、ファントムセンセーションにより振動を錯覚する位置が移動する。例えば、印加電圧が同じ状態から、DEA14aへの印加電圧が大きくなる方向に、DEA14a、14bに対する印加電圧の大きさの比率を変化させる。この場合、上記の錯覚する位置は、指の腹の中央から印加電圧の大きいDEA14aに近い側へ移動する。また、この場合、触感が提示される位置が移動することにより、装着者は、実際には動いていない物体Aが移動しているように認識する。
【0037】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)装着者に触感を提示する触感提示装置10は、印加電圧に応じて面方向に伸縮するシート状のDEA14a、14bと、DEA14a、14bを装着部位に接触させた状態で保持する装着部11とを備えている。装着部11は、装着部位の周方向の一部を露出させる露出部12を備えている。DEA14a、14bは、露出部12と同一の周方向線上に位置するように設けられるとともに周方向に伸縮する。
【0038】
上記構成によれば、装着部11を装着者の指先に装着させた状態において、指先における露出部12から露出する部分である指の腹を物体Aに触れさせることができる。また、露出部12と同一の周方向線上に、周方向に延びる面状に形成されて周方向に伸縮するDEA14a、14bを配置している。これにより、DEA14a、14bの振動が露出部12から露出する部分である指の腹へと伝わり、露出部12から露出する部分の触感として、DEA14a、14bに基づく触感を使用者に提示できる。したがって、物体Aに触れることによる実触感と、DEA14a、14bに基づく擬似触感とを重ねることができ、振動子の振動に基づく擬似触感のみを提示する従来の触感提示装置と比較して、触感提示装置10の表現機能が向上する。
【0039】
(2)DEA14a、14bは、装着部11よりも周方向に相対的に大きく伸縮する。
上記構成によれば、露出部12から露出する部分である指の腹の触感を装着者により強く提示できる。したがって、DEA14a、14bの振動を、露出部12から露出する部分である指の腹の触感に効率的に変換できる。
【0040】
(3)複数のDEA14a、14bを備え、DEA14a、14bは、露出部12を周方向に挟むように露出部12の両側に位置している。
上記構成によれば、ファントムセンセーションによる錯覚を生じさせることにより、露出部12から露出する部分である指の腹の触感を装着者により強く提示できる。したがって、DEA14a、14bの振動を、露出部12から露出する部分である指の腹の触感に効率的に変換できる。
【0041】
(4)露出部12の両側に位置するDEA14a、14bに対して、それぞれ独立して電圧を印加可能な駆動制御部16を備えている。
上記構成によれば、DEA14a、14bに印加する電圧の大きさの比率を変化させることにより、ファントムセンセーションによる振動を錯覚させる位置を変化させることができる。これにより、装着者の装着部位における露出部12から露出する部分において、触感が強く提示される位置を調整できる。また、物体Aが動いているような触感を提示することができる。
【0042】
(5)DEA14a、14bは、印加電圧に応じて装着者の指に対して、z面方向及び面直方向に伸縮することができる位置に配置されている。
上記構成によれば、DEA14a、14bの面直方向の振動に基づく触感を重畳的に提示することができるため、生体や流体の動きのような生々しい動き、つまりは3次元的な動きを簡素かつ小型に構成で実現することができる。
【0043】
(6)装着部11は、弾性変形可能であるとともに、DEA14a、14bよりも固い材料から構成される。
上記構成によれば、装着者の指とDEA14a、14bとの密着性をより向上させることに加え、触感の伝播性も向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。また、以下では、装着部11に設けられるDEA14a、14bをまとめてDEA14と記載する。
【0045】
・装着部11が装着される装着部位は、指先に限定されるものではなく、例えば、指の付け根等の指先以外の指の一部であってもよいし、腕、足、胴部等の人体における指以外の部分であってもよい。
【0046】
・装着部11の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、露出部12を有し、装着部位に対してDEA14を接触させた状態を保持できる構成であればよい。例えば、ゴム材、メッシュ材等の伸縮する材料により構成され、伸縮作用に基づいてDEA14を接触させた状態を保持する構成であってもよい。また、例えば、皮材、布材により構成され、粘着部等の接着性を有する部分に基づいて装着部位に装着されるとともに、DEA14を接触させた状態を保持する構成であってもよい。また、断面環状の筒体の周面に、露出部12としての孔が設けられている装着部11としてもよい。この場合、露出部12としての孔を有する帯状をなし、装着部位に巻き付けて面ファスナー等により固定する構成の装着部11としてもよい。
【0047】
・装着部11に取り付けられているDEA14は、少なくとも周方向に伸縮可能な構成であればよく、例えば、面方向に一様に伸縮するものであってもよい。
・装着部11に取り付けられているDEA14の数及びDEA14の配置は上記実施形態に限定されない。例えば、装着部11の周方向に並ぶDEA14の数を、1としてもよいし、3以上としてもよい。また、装着部11の軸方向に複数のDEA14が並ぶ構成としてもよい。
【0048】
・駆動制御部16によりDEAに印加される印加電圧の波形は、特に限定されるものではなく、装着者に提示する触感に応じて適宜、設定することができる。また、複数のDEAを備える場合、各DEAに印加する印加電圧の波形は、同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…触感提示装置
11…装着部
12…露出部
14、14a、14b…DEA