(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119646
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】水中油型乳化物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A23D7/00 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016915
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 智史
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】西盛 裕平
(72)【発明者】
【氏名】御前 紀洋
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DL01
4B026DL03
4B026DL08
4B026DL10
4B026DP01
4B026DX04
(57)【要約】
【課題】油脂及び乳成分を含有する水中油型乳化物、好ましくはクリームフィリング、チーズフィリング、練乳フィリング、カスタードクリーム、チョコフィリング等の水中油型乳化フィリングの乳風味を向上させること。
【解決手段】乳清カルシウム及び/又は塩化カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品、粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上とを含むミネラル原料を含有する水中油型乳化物において、前記ミネラル原料由来のカリウム(K)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を所定の配合量、配合比率に調整することにより、従来の水中油型乳化物と比較し乳風味が向上した水中油型乳化物を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件a)~g)を満たすことを特徴とする、水中油型乳化物。
a)原材料として、ミネラル原料を含有する;
b)前記ミネラル原料が、乳清カルシウム及び/又は塩化カルシウムを含有する;
c)前記ミネラル原料が、さらに、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品、粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上を含有する;
d)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のMgを0.003~0.2mmol含有する;
e)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のCaを合計0.005~2.5mmol含有する;
f)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.01~2.8mmol含有する;
g)前記水中油型乳化物に含まれる乳蛋白1gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.007mmol以上含有する;
【請求項2】
さらに、以下の条件h)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の水中油型乳化物。
h)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のNa及びCaを合計0.02~2mmol含有する;
【請求項3】
以下の条件d’)を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水中油型乳化物。
d’)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のMgを0.008~0.15mmol含有する;
【請求項4】
以下の条件h’)を満たすことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の水中油型乳化物。
h’)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のNa及びCaを合計0.05~2mmol含有する;
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化物における風味向上技術に関し、さらに詳しくは、乳清カルシウム、リン酸カルシウム及び塩化カルシウムから選択される少なくとも1のカルシウム源と、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品及び粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上とを含むミネラル原料を含有し、前記ミネラル原料由来のカリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムを所定の重量比で含む水中油型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
生クリーム、フレッシュチーズ、濃縮乳、練乳といった乳製品は、豊かな乳風味(フレッシュな牛乳様の香り、持続感のある乳様のコク味)をもち、古来から好まれる食品である。これに対して、乳由来の無脂乳固形分を配合しながら、脂肪分の全て又は一部として乳脂肪以外の食用動植物油脂を配合した、ホイップクリーム、練り込み用クリーム、チーズフィリング、練乳フィリングといった水中油型乳化物が広く利用されている。しかしながら、これらの水中油型乳化物は、乳由来の無脂乳固形分を含有しながらも、豊かな乳風味は生クリームや、フレッシュチーズ、濃縮乳、練乳といった乳製品よりも劣る。
これは、無脂乳固形分として原料に使用される全粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー、総合乳蛋白、バターオイル、バターミルクパウダーといった乳由来の原料が、それらの加工段階でフレッシュな香りや、持続感のある乳様のコク味といった乳独特の風味が失われるため、これらを配合した製品の風味が前述のような乳製品の風味に劣るものと考えられている。
【0003】
そこで、これらの風味を補う目的で、乳に本来含まれているミネラル成分に着目した解決方法が検討されてきた。特許文献1には、油脂、無脂乳固形分及び水を含む水中油型乳化物であって、無脂乳固形分が3~20重量%であり、マグネシウム塩及びカリウム塩が所定の含有量で配合された、牛乳の自然な風味を有する、製菓、製パン、調理、レトルト食品の各種練り込み用素材として使用可能な水中油型乳化物が記載されている。特許文献2には、飲食品に多量に添加しても塩味や苦みを感じることなく、バランスのとれたコクのある自然な乳風味を付与することのできる、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム含量を調整した乳清ミネラル組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-170415号公報
【特許文献2】特開2018-078849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の水中油型乳化物は乳の風味が十分に得られているとは言えず、特に、各種練り込み用素材として用いる場合にその効果が発揮されるものの、各種フィリング類のように直接そのものを摂取する食品においては、むしろ違和感のある風味であった。また、本願発明者らの検討においては、特許文献2に記載のように乳から得られた乳清ミネラル組成物を用いると、むしろ乳本来の風味と異なる異味が感じられた。
【0006】
本発明の課題は、油脂及び乳成分を含有する水中油型乳化物、好ましくはクリームフィリング、チーズフィリング、練乳フィリング、カスタードクリーム、チョコフィリング等の水中油型乳化フィリングの乳風味を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、あえて、乳に含まれるミネラル組成を反映する乳清ミネラルを用いずに、ミネラル成分の量比を調整することにより、本発明の課題が解決されることを見いだした。そして、乳清カルシウム及び/又は塩化カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品、粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上とを含むミネラル原料を含有する水中油型乳化物において、前記ミネラル原料由来のカリウム(K)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を所定の配合量、配合比率に調整することで、該水中油型乳化物の乳風味が向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものです。
[1]以下の条件a)~g)を満たすことを特徴とする、水中油型乳化物。
a)原材料として、ミネラル原料を含有する;
b)前記ミネラル原料が、乳清カルシウム及び/又は塩化カルシウムを含有する;
c)前記ミネラル原料が、さらに、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品、粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上を含有する;
d)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のMgを0.003~0.2mmol含有する;
e)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のCaを合計0.005~2.5mmol含有する;
f)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.01~2.8mmol含有する;
g)前記水中油型乳化物に含まれる乳蛋白1gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.007mmol以上含有する;
[2]さらに、以下の条件h)を満たすことを特徴とする上記[1]の水中油型乳化物。
h)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のNa及びCaを合計0.02~2mmol含有する;
[3]以下の条件d’)を満たすことを特徴とする上記[1]又は[2]の水中油型乳化物。
d’)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のMgを0.008~0.15mmol含有する;
[4]以下の条件h’)を満たすことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかの水中油型乳化物。
h’)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のNa及びCaを合計0.05~2mmol含有する;
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物によれば、従来の水中油型乳化物と比較し風味が向上した水中油型乳化物を提供することができるため、乳感やコクが強化されたクリームフィリング、チーズフィリング、練乳フィリング、カスタードクリーム、チョコフィリング等の水中油型乳化物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の条件a)~g)を満たすことを特徴とする、水中油型乳化物(以下、「本発明の水中油型乳化物」ということがある)に関する。
a)原材料として、ミネラル原料を含有する;
b)前記ミネラル原料が、乳清カルシウム及び/又は塩化カルシウムを含有する;
c)前記ミネラル原料が、さらに、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、食塩、海洋深層水、海洋深層水加工品、粗製海水塩化マグネシウムから選ばれる1又は2以上を含有する;
d)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のMgを0.003~0.2mmol含有する;
e)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のCaを合計0.005~2.5mmol含有する;
f)前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.01~2.8mmol含有する;
g)前記水中油型乳化物に含まれる乳蛋白1gに対して、前記ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgを合計0.007mmol以上含有する;
本発明の水中油型乳化物は、従来の水中油型乳化物と比較して、風味、好ましくは乳感(乳のフレッシュな香り)やコク(後味の持続感)等の乳独特の風味が向上したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、カルシウム源としては、乳清カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウムを用いることができる。ここで、乳清カルシウムとは、乳又はホエー(乳清)から得られるカルシウムを多く含有する灰分を主体とする乳原料のことであり、例えば、酸ホエーから可能な限り蛋白質や乳糖を除去後、溶液をpH6.0から8.0に調整し、生成した不溶物を分離して、カルシウムの比率を高めたものである。本発明の乳清カルシウムとしては、このような工程により調製したものを用いることができるほか、市販されている乳清カルシウムを用いることもできる。なお、本発明において、灰分中のカルシウム含量が20質量%以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上、25質量%以上、26質量%以上、27質量%以上、28質量%以上、29質量%以上、又は30質量%以上の乳清カルシウムを使用することが好ましく、カルシウム含量の上限は、特に制限されるものではないが、例えば70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下の乳清カルシウムを例示することができる。
なお、炭酸カルシウムを主要成分とする卵殻カルシウムや貝殻焼成カルシウムをカルシウム源として用いた場合には、十分な風味向上効果が得られないため望ましくない。
【0012】
本発明において、食塩とは、塩化ナトリウムを主な成分とし、海水の乾燥・岩塩の採掘によって生産される物質を意味し、海洋深層水とは、海面下200メートル又はそれより深いところから採取された海水を指し、海水中の溶存有機物が非常に少なく、微生物的な観点から極めて清浄であるという特徴を有している。海洋深層水の組成は、海域、季節により若干の変動はあるが、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムといったミネラルを含有し、海洋深層水をそのまま本発明のミネラル原料として用いてもよく、濃縮、粉末化、成分調整等の処理を施した海洋深層水加工品を用いてもよい。
本発明において、粗製海水塩化マグネシウムとは、海水から塩化カリウム及び塩化ナトリウムを析出分離して得られた塩化マグネシウムを主成分とするものをいい、豆乳を豆腐に変える凝固剤として使用する場合には「にがり」と呼ばれる。
【0013】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のMgの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して0.003~0.2mmolであればよく、0.008~0.15mmolがより好ましい。
【0014】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のCaの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して0.005~2.5mmolであればよく、0.01~2.0mmolが好ましく、0.01~1.5mmolがより好ましく、0.01~1.0mmolがさらに好ましい。
【0015】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のKの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して0.01~2.0mmolが好ましく、0.01~1.5mmolがより好ましく、0.01~1.0mmolがさらに好ましい。
【0016】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のNaの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して0.002~2.0mmolが好ましく、0.002~1.5mmolがより好ましく、0.002~1.0mmolがさらに好ましい。
【0017】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して合計0.01~2.8mmolであればよく、下限としては、0.03mmol以上、0.05mmol以上、0.07mmol以上がより好ましく、上限としては、2.5mmol以下がより好ましい。
【0018】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のK、Na、Ca及びMgの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる乳蛋白1gに対して合計0.007mmol以上であればよい。ここで、乳蛋白とは、乳由来の蛋白質を意味する。また、上限としては、例えば前記水中油型乳化物に含まれる乳蛋白1gに対して合計2.0mmol以下、好ましくは1.5mmol以下、より好ましくは0.5mmol以下を挙げることができる。
【0019】
本発明の水中油型乳化物において、ミネラル原料由来のNa及びCaの含有量は、前記水中油型乳化物に含まれる水100gに対して合計0.02~2mmolであればよく、0.05~2mmolがより好ましい。
【0020】
本発明の水中油型乳化物は、乳蛋白を含んでいてもよい。ここで、乳蛋白とは、乳由来の蛋白質を意味する。本発明において、乳蛋白は、生乳や、牛乳、脱脂乳、生クリーム、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム等の生乳由来の原料の形で水中油型乳化物に添加することができ、乳蛋白換算で好ましくは2~15質量%添加される。
【0021】
本発明の水中油型乳化物は、乳清ミネラルを含んでいても含んでいなくてもよい。ここで、乳清ミネラルとは、乳又は乳清から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、原料となる乳や乳清中のミネラル組成に近いミネラル組成を有する組成物を意味する。本発明の水中油型乳化物における乳清ミネラルの含有量は、前記水中油型乳化物の0.15質量%以下、0.14質量%以下、0.13質量%以下、0.12質量%以下、0.11質量%以下、0.10質量%以下、0.09質量%以下、0.08質量%以下、0.07質量%以下、0.06質量%以下、0.05質量%以下、0.04質量%以下、0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.01質量%以下が好ましく、乳清ミネラルを実質的に含まなくてもよい。
【0022】
本発明の水中油型乳化物に使用される油脂としては、食用油脂であればよく、具体的にはパーム油、ナタネ油、大豆油、綿実油、コーン油、ヤシ油、パーム核油等の天然の植物油脂;牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の天然の動物油脂;又はこれら単独あるいは組み合わせの硬化油、極度硬化油、分別油、エステル交換油が挙げられる。
【0023】
本発明の水中油型乳化物は、任意で、糖類、増粘多糖類、澱粉類、塩類、乳化剤を添加してもよい。糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、トレハロース、糖アルコール、コーンシロップ、水あめ、デキストリンを例示できる。また、糖アルコールとしては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の単糖アルコール、イソマルチトール、マルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の三糖アルコール、オリゴ糖アルコール等の四糖以上の糖アルコール、還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物等を挙げることができる。増粘多糖類としては、例えば、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、カラギーナン、タマリンド種子ガム及びタラガムを挙げることができる。澱粉類としては、小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類や、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉や、これらの澱粉を加工した加工澱粉等を挙げることができる。また、塩類としては、例えば、ヘキサメタリン酸塩、第二リン酸塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸塩、重曹等を挙げることができる。また、乳化剤としては、例えば、レシチン、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等を挙げることができる。糖類、増粘多糖類、澱粉類、塩類、乳化剤は、それぞれ1種でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。その他、任意で、香料、色素、保存料等を添加してもよい。
【0024】
本発明の水中油型乳化物は、ホイップクリーム、クリームフィリング、練り込み用油クリーム、チーズフィリング、練乳フィリング、コーヒーフレッシュ、カスタードクリーム、フラワーペースト、アイスクリーム類、チョコフィリング等として使用することができる他、これら水中油型乳化物の原料や、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム等の油中水型乳化物の原料として好適に使用することができる。また、本発明の水中油型乳化物は、各種ベーカリー製品やスナック菓子、調理品、乳製品、チョコレートなどに添加してもよく、ベーカリー製品としては、例えば、食パン、菓子パン、及び調理パンなどのパン類、並びに、デニッシュ・ペストリー、パイ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ビスケット、ワッフル、スコーン、及び蒸し菓子などが挙げられる。スナック菓子としては、ポテトや甘藷、コーン、エンドウ豆などを原料としたチップやフライ、パフ菓子などが挙げられる。調理品としては、ハンバーグ、つくね、肉団子、餃子、シューマイ、チキンナゲット、及び成形肉などの畜肉加工食品、コロッケ、及びハッシュドポテトなどのポテト加工食品、ホワイトソース、デミグラスソース、各種パスタソース、及びグラタンなどのソース類、オムレツなどの卵加工食品、水産練り製品などが挙げられる。乳製品としては、例えばアイスクリーム類、発酵乳製品、等が挙げられる。
中でも、そのものを直接摂食するクリームフィリング、チーズフィリング、練乳フィリング、カスタードクリーム、フラワーペースト等の水中油型乳化フィリングとして使用することが好ましく、かかる水中油型乳化フィリングは、起泡されていないことがより好ましい。より好ましくは、本発明の水中油型乳化物は、クリームフィリング、練乳フィリング、カスタードクリームとして使用される。好ましい態様において、本発明の水中油型乳化物は、ホイップクリームを含まない。
【0025】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例0026】
1.本発明の水中油型乳化物の製造
表4~9に示した量の配合により以下の手順で水中油型乳化物を製造し、それぞれ実施例1~25及び比較例1~25とした。
(製造手順)
水に60℃に加温した油脂(パーム系油脂と、ラウリン系油脂と、パーム系油脂とラウリン系油脂を原料とするエステル交換油との混合油脂)及びその他の原料をカッターミキサーに入れ、攪拌混合しながら115℃まで昇温し、30秒間ホールドした。その後、温度を5℃まで低下させ、水中油型乳化物を得た。
【0027】
2.官能評価
得られた水中油型乳化物について、パネル10名での官能評価を行った。
官能評価は、乳感、コク、塩味、収斂味、酵母様臭について、表1~3に示す点数の基準に基づいてパネル10名により評価した評価点を平均し、小数点以下を四捨五入した値を各水中油型乳化物の評価点とした。
*乳感:フレッシュな乳の香り(牛乳様)
**コク:乳に似た後味の持続感
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
3.結果
結果を以下の表4~9に示す。ここでの結果より、実施例1~25の水中油型乳化物は、いずれの官能評価項目も評点が3以上であり、優れた風味を示すことがわかった。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
本発明の組成物によれば、従来の水中油型乳化物と比較し乳風味が向上した水中油型乳化物を提供することができるため、乳感やコクが強化されたクリームフィリング、チーズフィリング、練乳フィリング、カスタードクリーム、チョコフィリング等の水中油型乳化物を製造することができる。そのため、食品分野における産業上の利用可能性は極めて高い。