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特開2022-119653ステンシルプレート及びその製造方法、ならびにタイヤ加硫金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119653
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ステンシルプレート及びその製造方法、ならびにタイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016925
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AF01
4F202AH20
4F202AR13
4F202CA21
4F202CB01
4F202CK28
4F202CU01
4F202CU02
4F202CU14
4F202CU20
(57)【要約】
【課題】ステンシルプレートの表裏の識別を容易にしてタイヤ加硫金型への誤装着を防止する。
【解決手段】タイヤ加硫金型10のタイヤ成型面12に設けられた装着凹部22に装着され、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのステンシルプレート20である。該ステンシルプレート20は、タイヤ成型時にタイヤ外表面に接する表面28と、タイヤ成型時に装着凹部22側に面する裏面30と、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのマーク形成部32と、表面28に現れることなく裏面30に設けられてステンシルプレート20の表裏を識別するための表裏識別マーク34と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に設けられた装着凹部に装着され、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのステンシルプレートであって、
タイヤ成型時にタイヤ外表面に接する表面と、タイヤ成型時に前記装着凹部側に面する裏面と、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのマーク形成部と、前記表面に現れることなく前記裏面に設けられてステンシルプレートの表裏を識別するための表裏識別マークと、を備えるステンシルプレート。
【請求項2】
前記表裏識別マークが、前記裏面に設けられた前記表面に達しない窪みを含む、請求項1に記載のステンシルプレート。
【請求項3】
前記窪みが、前記裏面に対する引っ掻き、ローレット加工またはショットブラストにより形成された、請求項2に記載のステンシルプレート。
【請求項4】
前記表裏識別マークが、前記表面とは異なる色を付した着色部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のステンシルプレート。
【請求項5】
前記着色部が油性マーカーによる線である、請求項4に記載のステンシルプレート。
【請求項6】
前記着色部が塗装部である、請求項4に記載のステンシルプレート。
【請求項7】
前記表裏識別マークが、ステンシルプレートの長手方向に延在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のステンシルプレート。
【請求項8】
前記表裏識別マークが、前記裏面に設けられた前記表面に達しない窪み上に、さらに前記表面とは異なる着色を付してなる、請求項1又は7に記載のステンシルプレート。
【請求項9】
前記マーク形成部がタイヤ外表面に凸状のタイヤ識別マークを形成するための凹部であり、前記裏面に前記凹部に対応した凸部が設けられた、請求項1~8のいずれか1項に記載のステンシルプレート。
【請求項10】
タイヤ成型面と、
前記タイヤ成型面に設けられた装着凹部と、
前記装着凹部に装着された請求項1~9のいずれか1項に記載のステンシルプレートと、
を備えるタイヤ加硫金型。
【請求項11】
請求項1~9に記載のステンシルプレートの製造方法であって、
金属板の前記裏面に相当する面に前記表裏識別マークを形成すること、
前記表裏識別マークを設けた金属板にエンボス加工を実施して前記マーク形成部を形成すること、
前記マーク形成部を設けた金属板をステンシルプレートの外形形状に切断すること、
を含む、ステンシルプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのステンシルプレート、及びその製造方法、ならびに、該ステンシルプレートを含むタイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの外表面には、タイヤの製造者や品種、サイズ、製造年や週などの識別を容易にするために、文字、記号又は図形などのタイヤ識別マークが設けられている。かかるタイヤ識別マークを形成するために、加硫金型のタイヤ成型面に、アルミや鉄などの金属板からなるステンシルプレートを交換可能に取り付けることが知られている(特許文献1~3参照)。
【0003】
従来、タイヤ識別マークはタイヤ外表面に凹状に形成されていたが、近年、タイヤ識別マークを凸状に形成することが望まれている。凸状のタイヤ識別マークを形成するためには、ステンシルプレートに設ける凹凸を従来の逆にする必要があり、金属板にエンボス加工を施すことによりタイヤ識別マークを形成するための凹部を表面に設けたステンシルプレートが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-001224号公報
【特許文献2】特開2015-051605号公報
【特許文献3】特開2007-038528号公報
【特許文献4】特開2020-151915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにステンシルプレートに設ける凹凸を従来の逆に設定すると、タイヤ加硫金型にステンシルプレートを装着する際に、作業者が表裏を誤って装着することがあり、表裏逆に装着されると正しいタイヤ識別マークを成型することができない。特許文献4に記載のステンシルプレートのように、タイヤ加硫金型に固定するための皿ネジの頭部を受け入れる皿絞りが両端部に設けられていれば、当該皿絞りにより見た目及び触感で表裏の判別は比較的容易である。しかしながら、皿絞りのないステンシルプレートでは、作業者にとって表裏の判別がさらに難しくなる。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、ステンシルプレートの表裏の識別を容易にしてタイヤ加硫金型への誤装着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るステンシルプレートは、タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に設けられた装着凹部に装着され、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのステンシルプレートであって、タイヤ成型時にタイヤ外表面に接する表面と、タイヤ成型時に前記装着凹部側に面する裏面と、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのマーク形成部と、前記表面に現れることなく前記裏面に設けられてステンシルプレートの表裏を識別するための表裏識別マークと、を備えたものである。
【0008】
前記表裏識別マークは、前記裏面に設けられた前記表面に達しない窪みを含んでもよい。前記窪みは、前記裏面に対する引っ掻き、ローレット加工またはショットブラストにより形成されてもよい。
【0009】
前記表裏識別マークは、前記表面とは異なる色を付した着色部を含んでもよい。前記着色部は油性マーカーによる線でもよい。前記着色部は塗装部でもよい。
【0010】
前記表裏識別マークは、ステンシルプレートの長手方向に延在してもよい。
【0011】
前記表裏識別マークは、前記裏面に設けられた前記表面に達しない窪み上に、さらに前記表面とは異なる着色を付してなるものでもよい。
【0012】
前記マーク形成部がタイヤ外表面に凸状のタイヤ識別マークを形成するための凹部であり、前記裏面に前記凹部に対応した凸部が設けられてもよい。
【0013】
本発明の実施形態に係るタイヤ加硫金型は、タイヤ成型面と、前記タイヤ成型面に設けられた装着凹部と、前記装着凹部に装着された前記ステンシルプレートと、を備える。
【0014】
前記ステンシルプレートを製造するための実施形態に係るステンシルプレートの製造方法は、金属板の前記裏面に相当する面に前記表裏識別マークを形成すること、前記表裏識別マークを設けた金属板にエンボス加工を実施して前記マーク形成部を形成すること、前記マーク形成部を設けた金属板をステンシルプレートの外形形状に切断すること、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本実施形態であると、表裏識別マークを設けたことにより、ステンシルプレートの表裏を識別することができ、タイヤ加硫金型への誤装着を防止することができる。表裏識別マークはステンシルプレートの表面側には現れないので、タイヤ外表面に影響を与えない。一方で、仮に誤装着された場合には、タイヤ成型面をみたときに表裏識別マークが現れるので、作業者に誤装着を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るタイヤ加硫金型の加硫時における状態を示す半断面図
図2図1のX矢視図
図3図2のIII-III線断面図
図4】第1実施形態に係るステンシルプレートの裏面を示す平面図
図5図4のV-V線断面図
図6】第3実施形態に係るステンシルプレートの裏面を示す平面図
図7】第5実施形態に係るステンシルプレートの裏面を示す平面図
図8】第6実施形態に係るステンシルプレートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤということがある。)Tを加硫成型するために用いられる、一実施形態に係るタイヤ加硫金型(以下、単に金型ということがある。)10を示した図である。ここで、空気入りタイヤTは、接地面をなすトレッドT1と、トレッドT1の幅方向両端からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォールT2,T2及びビードT3,T3とを備えて構成されており、サイド部T4に設けられたタイヤ識別マークを除いて一般的なタイヤ構造を採用することができる。ここで、サイド部T4とは、サイドウォールT2とビードT3とを包括する概念である。
【0019】
金型10は、タイヤTの外表面を成型するタイヤ成型面12を備え、キャビティ内にセットされた未加硫のグリーンタイヤを加硫成型する。金型10は、トレッドT1の外面を成型するトレッド成型面14Aを有するトレッドモールド14と、サイドウォールT2の外面を成型するサイドウォール成型面16Aを有する上下一対のサイドウォールモールド16,16と、ビードT3の外面を成型するビード成型面18Aを有する上下一対のビードモールド18,18を備え、タイヤTの成型空間であるキャビティを形成する。
【0020】
タイヤ成型面12には、ステンシルプレート20を装着するための装着凹部22が設けられている。この例では、装着凹部22は、タイヤ成型面12のうち、サイド部T4を成型するサイド成型面12Aに設けられている。ここで、サイド成型面12Aとは、サイドウォール成型面16Aとビード成型面18Aとを包括する概念である。図1では、装着凹部22は、サイドウォール成型面16Aに設けられているが、ビード成型面18Aに設けられてもよく、サイドウォール成型面16Aとビード成型面18Aの双方にそれぞれ設けられてもよい。
【0021】
装着凹部22は、タイヤ成型面12を局所的に窪ませることにより形成され、図2に示すようにタイヤ周方向CDに沿って湾曲して延びる凹溝である。そのため、装着凹部22は、タイヤ周方向CDの長さがタイヤ半径方向RDの幅よりも大きい横長形状を有している。装着凹部22の深さは、特に限定されず、例えば0.8~1.8mmでもよく、1.0~1.5mmでもよい。
【0022】
ステンシルプレート20は、タイヤTの外表面にタイヤ識別マークを形成するためのプレートであり、装着凹部22内に嵌め込まれて装着される。この例では、ステンシルプレート20は、サイド部T4の外面に凸状のタイヤ識別マークを形成するための部材であり、タイヤ周方向CDの長さLがタイヤ半径方向RDの幅Wよりも大きい横長の金属板からなる(図4参照)。ステンシルプレート20は、タイヤ周方向CDに沿って湾曲しながら延びる細長いストリップ状部材である。金属板の厚みt1(図3参照)は、特に限定されず、例えば0.2~0.8mmでもよく、0.3~0.6mmでもよい。
【0023】
ステンシルプレート20は、装着凹部22に取り付けられたスペーサ部材24を介在させて装着凹部22に装着されている。スペーサ部材24は、図3に示すように装着凹部22の一部の底面高さを嵩上げするための嵩上げ部であり、図2及び図3に示すようにステンシルプレート20の周縁部及び後述するネジ穴35周りを支持するように設けられている。そして、装着凹部22内にスペーサ部材24を取り付け、その上にステンシルプレート20を取り付けて、長手方向LDの両端部においてネジ26を締め付けることにより、ステンシルプレート20は装着凹部22内に固定される。装着凹部22の底面にはネジ26が螺合する取付穴27が設けられている。
【0024】
ステンシルプレート20は、タイヤ成型時にタイヤ外表面に接する表面28と、タイヤ成型時に装着凹部22側に面する裏面30と、タイヤ外表面にタイヤ識別マークを形成するためのマーク形成部32と、ステンシルプレート20の表裏を識別するための表裏識別マーク34(図4参照)と、を備える。ステンシルプレート20はまた、その長手方向LDの両端部にネジ穴35を備える。
【0025】
表面28は、板状をなすステンシルプレート20の表裏両面のうち、ステンシルプレート20を金型10に装着した状態で上記キャビティに面する面であり、図3における上側の面である。裏面30は、板状をなすステンシルプレート20の表裏両面のうち、ステンシルプレート20を金型10に装着した状態で装着凹部22の底面側に向く面であり、図3における下側の面である。
【0026】
マーク形成部32は、この例では、タイヤ外表面に凸状のタイヤ識別マークを形成するための凹部36により構成されており、エンボス加工(浮き出し工法)により表面28から陥没形成されている。すなわち、凹部36はステンシルプレート20の表面28側に設けられている。表面28からの凹部36の深さD1は、特に限定されず、例えば0.3~1.2mmでもよい。
【0027】
凹部36を形成したことにより、ステンシルプレート20の裏面30には凹部36に対応する凸部38が形成されている。すなわち、凸部38は、上記凹部36をステンシルプレート20の裏面30側からみたものであり、そのため、その突出高さは凹部36の深さと実質同じである。
【0028】
凹部36は、この例ではステンシルプレート20の長手方向LDに複数設けられ、これら複数の凹部36によりタイヤ外表面にタイヤ識別マークが形成される。凹部36は、図2に示すように、タイヤ外表面に形成されるタイヤ識別マークを反転させた形状をなす。タイヤ識別マークとしては、タイヤの製造者や品種、サイズ、製造番号、製造年月日などを表す文字、記号又は図形などが挙げられる。図2の例では「HLD5011」との文字列をタイヤ識別マークとしており、凹部36はこれを反転させた形状に形成されている。そのため、図4に示すようにステンシルプレート20を裏面30からみると、凸部38はタイヤ識別マークと同じ形状に形成される。
【0029】
表裏識別マーク34は、ステンシルプレート20の表面28に現れることなく裏面30に設けられている。この例では、図4及び図5に示すように、表裏識別マーク34は、ステンシルプレート20の裏面30に設けられた表面28に達しない窪み40であり、ステンシルプレート20の長手方向LDに延在している。
【0030】
窪み40は、ステンシルプレート20の裏面30に対する引っ掻きにより形成されており、例えばケガキ針による引っ掻き傷(即ち、ケガキ線)であり、ステンシルプレート20の長手方向LDに沿って連続して1本のケガキ線からなる窪み40が形成されている。窪み40の深さは、表面28にまで達していなければ特に限定されないが、ケガキ線であるため、通常はステンシルプレート20の厚みよりも十分に小さい。
【0031】
ステンシルプレート20は次のようにして製造することができる。
(1)金属板を用いて上記裏面30に相当する面に表裏識別マーク34を形成する。
(2)表裏識別マーク34を設けた金属板にエンボス加工を実施してマーク形成部32を形成する。
(3)マーク形成部32を設けた金属板をステンシルプレート20の外形形状に切断する。
【0032】
工程(1)では、長尺状(帯状)の金属板の巻物から当該金属板を繰り出し、繰り出された金属板の一方面に対してケガキ針を押し付ける。すなわち、ケガキ針を固定したところに金属板を流し送る。これにより、金属板の一方面にケガキ線(表裏識別マーク34に相当する窪み40)を形成することができる。ケガキ線の形成後、工程(2)において、金属板の上記表面28に相当する面(ケガキ線を形成した面とは反対側の面)からエンボス型を押し当ててマーク形成部32の凹部36を陥没形成させる。次いで、工程(3)において、金属板を所定形状に打抜き加工することによりステンシルプレート20が得られる。
【0033】
ステンシルプレート20を装着凹部22に取り付ける際には、金型10の装着凹部22内にスペーサ部材24を取り付け、その後、ステンシルプレート20を装着凹部22内にセットしてネジ26をネジ穴35に挿入して取付穴27と螺合させることによりステンシルプレート20を固定する。
【0034】
以上よりなる金型10を用いてタイヤTを製造する際には、金型10内にグリーンタイヤをセットして型閉めした後、内側に配置した不図示のブラダーを膨張させて、グリーンタイヤを金型内面に押し当て、加熱状態に保持する。これによりグリーンタイヤが加硫成型され、タイヤTが得られる。得られたタイヤTでは、サイド部T4の外面にタイヤ識別マークがタイヤ外面から突出した凸状をなして形成される。なお、グリーンタイヤの作製は、公知の方法を用いて行うことができる。
【0035】
本実施形態であると、ステンシルプレート20に表裏識別マーク34を設けたことにより、皿絞りのないステンシルプレート20でありながら、その表裏を識別することができ、金型10への誤装着を防止することができる。表裏識別マーク34はステンシルプレート20の裏面30に設けられた表面28側には達しない窪み40であり、表面28には現れていないので、成型されるタイヤTの外表面には影響を与えない。一方で、仮にステンシルプレート20を装着凹部22に表裏逆に装着した場合には、タイヤ成型面12をみたときに表裏識別マーク34が現れるので、作業者に誤装着を知らせることができる。
【0036】
上記第1実施形態では、表裏識別マーク34を1本のケガキ線である直線状の窪み40としたが、ケガキ線は複数本設けてもよい。また、図4では、ケガキ線である直線状の窪み40をステンシルプレート20の長手方向LDの全体に連続した直線として示したが、長手方向LDの一部に形成してもよく、断続状に形成してもよい。例えば、上記のようにケガキ線を形成してからエンボス加工によりマーク形成部32を設ける場合、裏面30の凸部38を設けた部分では塑性変形によりケガキ線の窪み40が浅くなったり消失したりすることもあり、それによりケガキ線が断続状に形成されてもよい。また、ケガキ線による窪み40は、長手方向LDに延在する形態には限定されず、例えば、ステンシルプレート20の幅方向に延在させて設けてもよい。
【0037】
[第2実施形態]
上記の第1実施形態では、表裏識別マーク34をケガキ針による引っ掻き傷により構成したが、このような引っ掻き傷の作製方法としてはケガキ針には限定されない。他の例として、第2実施形態においては、ダイヤモンド砥石などの粗い砥粒を持つ砥石によりステンシルプレート20の裏面30に多数の引っ掻き傷を形成する。
【0038】
この場合、上記の工程(1)において、繰り出された金属板の一方面に砥石を押し当てることにより、金属板の上記裏面30に相当する面に多数の引っ掻き傷を表裏識別マーク34として形成することができる。
【0039】
第2実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0040】
[第3実施形態]
図6は第3実施形態に係るステンシルプレート20Aの裏面30を示す平面図である。第3実施形態では、ステンシルプレート20Aの裏面30に設ける表裏識別マーク34がローレット加工により形成された窪み40Aである点で、ケガキ針による引っ掻き傷である第1実施形態とは異なる。
【0041】
窪み40Aは、第1実施形態の窪み40と同様、ステンシルプレート20Aの表面28には達しない裏面30側に設けられた窪みであり、ステンシルプレート20Aの裏面30にローレット工具を押し当てることにより、塑性変形により裏面30に凹凸模様が転造されている。ローレット工具としては、例えば、斜めローレット、平目ローレット、綾目ローレットなどがあり、特に限定されない。
【0042】
図6に示す例では、ローレット加工による窪み40Aは、第1実施形態と同様、ステンシルプレート20Aの長手方向LDに延在して設けられているが、幅方向に延在させてもよい。また、裏面30の全体にローレット加工を施してもよい。
【0043】
第3実施形態に係るステンシルプレート20Aを製造する場合、第1実施形態と同様、上記の工程(1)において、繰り出された金属板の一方面にローレット工具を押し当てることにより、金属板の上記裏面30に相当する面にローレット加工による凹凸模様を表裏識別マーク34として形成することができる。
【0044】
第3実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0045】
[第4実施形態]
上記の第1~第3実施形態では、表裏識別マーク34として表面28には達しない窪み40,40Aを裏面30に設けた。このような表面28に達しない窪みは上記の引っ掻き傷やローレット加工によるものには限定されない。他の例として、第4実施形態においては、ショットブラストによりステンシルプレート20の裏面30に表面28に達しない窪みを形成する(砂目処理)。
【0046】
ショットブラストは、投射材と呼ばれる粒体を加工物に衝突させる工法であり、例えばサンドブラストが挙げられる。金属板の裏面30に相当する面にショットブラストを行うことにより、塑性変形により多数の微小な窪みを、表裏識別マーク34として、ステンシルプレート20の裏面30に形成することができる。ショットブラストによる表裏識別マーク34はステンシルプレートの裏面30全体に形成してもよい。ショットブラストは金属板を長尺状に切断する前に実施し、サンドブラストによる微小な窪みを形成してから長尺状に切断し、その後、上記工程(2)及び(3)を行うことによりステンシルプレート20を製造してもよい。
【0047】
第4実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0048】
[第5実施形態]
図7は第5実施形態に係るステンシルプレート20Bの裏面30を示す平面図である。第5実施形態では、ステンシルプレート20Bの裏面30に設ける表裏識別マーク34が、表面28とは異なる色を付した着色部42である点で、窪み40である第1実施形態とは異なる。
【0049】
すなわち、第5実施形態では、ステンシルプレート20Bの裏面30に、表裏識別マーク34として着色部42が設けられている。着色部42は、この例では油性マーカー(フェルトペン、油性ペンともいう。)による線であり、ステンシルプレート20Bの長手方向LDに延在して設けられている。そのため、油性マーカーによる着色部42は、裏面30の一部に裏面30のその他の部分とは異なる色を有して形成されている。
【0050】
着色部42に付する色としては、暗い場所での視認性を高めるため、金属板の素地に対してコントラストのある色が好ましく、例えば赤、ピンク、紫、オレンジ、黒、青、緑、茶などが挙げられる。また、蛍光色を持つ油性蛍光マーカーを用いてもよい。
【0051】
第5実施形態に係るステンシルプレート20Bを製造する場合、第1実施形態における上記工程(1)において、油性マーカーを固定したところに金属板を流し送って、当該金属板の一方面に油性マーカーにより線を引く。これにより油性マーカーによる着色部42が表裏識別マーク34として裏面30に相当する面に形成される。その後、工程(2)において、着色部42を付した面とは反対側の面からエンボス型を押し当ててマーク形成部32の凹部36を陥没形成させ、次いで、工程(3)において、金属板を所定形状に打抜き加工することによりステンシルプレート20Bが得られる。
【0052】
第5実施形態であると、着色部42としてコントラストのある色を付することにより、暗い場所での視認性を高めることができ、ステンシルプレート20Bの表裏の識別をさらに容易にすることができる。第5実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0053】
なお、第5実施形態では、表裏識別マーク34を1本の油性マーカーによる線である着色部42としたが、油性マーカーによる線は複数本設けてもよい。また、図7では、着色部42をステンシルプレート20Bの長手方向LDの全体に連続した直線として示したが、長手方向LDの一部に形成してもよく、断続状に形成してもよい。例えば、上記のように着色部42を形成してからエンボス加工によりマーク形成部32を設ける場合、裏面30の凸部38を設けた部分では着色部42が薄くなったり消失したりすることもあり、それにより着色部42が断続状に形成されてもよい。また、油性マーカーによる着色部42は、長手方向LDに延在する形態には限定されず、例えば、ステンシルプレート20の幅方向に延在させて設けてもよい。
【0054】
[第6実施形態]
図8は第6実施形態に係るステンシルプレート20Cの断面図である。第6実施形態では、ステンシルプレート20Cの裏面30に設ける表裏識別マーク34としての着色部が、塗装部44である点で、油性マーカーによる線である第5実施形態とは異なる。
【0055】
すなわち、第6実施形態では、ステンシルプレート20Cの裏面30に、表面28とは異なる色を付した着色部として塗装部44が設けられている。図8に示す例では、裏面30の全体に塗装部44が形成されているが、第5実施形態の着色部42と同様、裏面30の一部に塗装部44を形成してもよい。
【0056】
塗装部44は、金属板の素地とは異なる色を持つ着色剤を含む塗料を塗装することにより形成される塗膜である。例えば、金属光沢のある金属板の素地に対して、艶消しの着色やコントラストがある色、蛍光色などを持つ塗膜が挙げられる。塗料としては、合成樹脂を主成分とする合成樹脂塗料、乾性油を主成分とする油性塗料、ニトロセルロースを主成分とするラッカーなどが挙げられる。
【0057】
一実施形態として、塗装部44は、着色剤を含む樹脂組成物(合成樹脂塗料)をステンシルプレート20Cの裏面30に塗装した樹脂層でもよい。樹脂の種類としては、特に限定されず、エポキシ系樹脂など種々の樹脂を用いることができる。
【0058】
一実施形態として、塗装部44は、蛍光着色剤を含む蛍光塗料(夜光塗料ともいう。)をステンシルプレート20Cの裏面30にスプレーした塗膜でもよい。なお、本明細書において、蛍光とは、燐光や蓄光なども包含する広義の蛍光をいう。
【0059】
塗装部44の形成は、例えば、第1実施形態における上記工程(1)において、繰り出された金属板の一方面に対して塗料をスプレーなどで塗装することにより形成してもよい。塗装部44の形成は、金属板を長尺状に切断する前に実施してもよく、塗装部44を形成してから金属板を長尺状に切断し、その後、上記工程(2)及び(3)を行うことによりステンシルプレート20Cを製造してもよい。
【0060】
第6実施形態について、その他の構成及び効果は第5実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0061】
[第7実施形態]
上記第1~第6実施形態の表裏識別マーク34はいずれか2つ以上を組み合わせて形成してもよい。例えば、第1~第4実施形態の窪み40,40Aと、第5~第6実施形態の着色部を組み合わせてもよい。
【0062】
その場合、表裏識別マーク34は、裏面30に設けられた表面28に達しない窪み40,40A上に、さらに表面28とは異なる着色を付して形成されることが好ましい。より詳細には、ケガキ針や砥石による引っ掻き傷、ローレット加工による凹凸、またはショットブラストによる多数の微小窪みを予め形成しておき、そのようにして形成した窪み40,40A上に、油性マーカーによる着色部42や塗料を塗装してなる塗装部44を設ける。
【0063】
これにより、油性マーカーのインクや塗装した塗料が窪み40,40A内に入り込み、着色部を消失しにくくすることができる。また、長尺状の金属板を巻物から繰り出して流し送りながら、窪みの形成と着色部の形成を連続的に行う場合、仮にいずれか一方の形成に不具合(例えば油性マーカーのインク切れ)があったときでも、もう一方により表裏識別マークが形成されるので、表裏識別マークが全く形成されないという不具合を回避することができる。
【0064】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
T…空気入りタイヤ、10…タイヤ加硫金型、12…タイヤ成型面、20,20A,20B,20C…ステンシルプレート、22…装着凹部、28…表面、30…裏面、32…マーク形成部、34…表裏識別マーク、36…凹部、38…凸部、40,40A…窪み、42…着色部、44…塗装部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8