IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図1
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図2
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図3
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図4
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図5
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図6
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図7
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図8
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図9
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図10
  • 特開-コネクタ及び電子機器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119669
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】コネクタ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20220809BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016954
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 元太
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC31
5E021HA05
5E223AB26
5E223BA01
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB11
5E223DB25
5E223DB33
5E223DB36
5E223EA03
5E223EA12
5E223EA33
(57)【要約】
【課題】可動インシュレータの嵌合方向への移動を許容しつつ、フローティング構造に起因する可動特性の低下及び回路基板における電気的な不具合を抑制可能なコネクタを提供する。
【解決手段】本開示に係るコネクタ10は、一対の第1側壁21bと底壁22とを有する第1インシュレータ20と、一対の第1側壁21bと底壁22とにより囲まれる空間に第2インシュレータ30の一部が配置され、第1インシュレータ20に対して相対的に移動可能である第2インシュレータ30と、第1インシュレータ20の第1側壁21b及び第2インシュレータ30に取り付けられ、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に位置する弾性部53を有するコンタクト50と、を備え、第2インシュレータ30及び弾性部53は、非嵌合状態で第1インシュレータ20と離間し、かつ底壁22と対向する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1側壁と底壁とを有し、矩形状に形成されている第1インシュレータと、
前記第1インシュレータの長手方向に沿って延在する第2インシュレータであって、前記一対の第1側壁と前記底壁とにより囲まれる空間に前記第2インシュレータの一部が配置され、前記第1インシュレータに対して相対的に移動可能である前記第2インシュレータと、
前記第1インシュレータの前記第1側壁及び前記第2インシュレータに取り付けられ、前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとの間に位置して前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとを接続する弾性部を有するコンタクトと、
を備え、
前記第2インシュレータ及び前記弾性部は、前記第2インシュレータと接続対象物とが互いに嵌合していない非嵌合状態で前記第1インシュレータと離間し、かつ前記底壁と対向し、
前記弾性部における前記底壁側の端部は、前記第2インシュレータにおける前記底壁側の端部よりも前記底壁側に位置する、
コネクタ。
【請求項2】
前記底壁は、前記第2インシュレータと対向する当接部と、前記当接部において前記第2インシュレータと対向する当接面よりも前記第2インシュレータと反対側に凹設されている凹部と、を有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記凹部は、前記第1側壁及び前記当接部との間に形成され、かつ前記弾性部と対向する、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記凹部の底面は連続して形成され、
前記凹部は、前記コネクタが実装される回路基板と前記弾性部との間に配置される、
請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記凹部の深さは、前記第2インシュレータにおける前記底壁側の端部と前記弾性部における前記底壁側の端部との間の、前記第2インシュレータと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合方向の間隔よりも大きい、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性部は、前記第1インシュレータ側で上方に延在する第1延長部と、前記第1延長部から逆U字状に折り返す第1折返部と、前記第1折返部から前記第2インシュレータ側に向けて斜め下方に延出する第2延長部と、前記第2延長部からU字状に折り返す第2折返部と、前記第2折返部から前記第2インシュレータまで上方に延出する第3延長部と、を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第2インシュレータは、前記第1インシュレータの前記空間に配置され前記当接部と対向する底部と、前記底部における前記第1インシュレータの長手方向の端部に形成されている抜止突起と、を有する、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1インシュレータは、前記一対の第1側壁と直交し前記第1側壁と共に外周壁を構成する一対の第2側壁を有し、
前記抜止突起は、前記非嵌合状態で前記一対の第1側壁及び前記第2側壁と対向する、
請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記抜止突起は、前記非嵌合状態で、前記第1インシュレータの前記底壁において前記当接部と同面に形成されている底面と対向する、
請求項7又は8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記抜止突起における前記底壁側の底面は、前記底部において前記当接部と対向する部分と同面に形成されている第1面と、前記第1面よりも前記底壁と反対側に位置し、かつ前記第1面と略平行となる第2面と、を含む、
請求項7乃至9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のコネクタを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接続対象物との接続信頼性を向上させるための技術として、例えば嵌合中及び嵌合後においてもコネクタの一部である可動インシュレータが移動することで接続対象物とコネクタとの間の位置ずれを吸収するフローティング構造を有したコネクタが知られている。
【0003】
特許文献1には、端子を固定ハウジング及び可動ハウジングのそれぞれと一体成形で強固に保持した状態でコネクタの高さ方向寸法を小さくした低背化を確保しつつ、端子の弾性部での弾性変形量を大きくできる、フローティング構造を有する回路基板用電気コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6727103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フローティング構造を有するコネクタにおいて、コネクタと接続対象物とが互いに嵌合する嵌合方向に沿った可動インシュレータの可動量を十分に得ることが望まれている。しかしながら、特許文献1に記載の回路基板用電気コネクタでは、嵌合方向に直交する方向、例えば回路基板に対して平行な方向に沿った可動インシュレータの移動について主に着目されている。仮に、特許文献1に記載の回路基板用電気コネクタにおいて可動インシュレータが嵌合方向に移動すると、コンタクト及び可動インシュレータなどのコネクタの構成部が回路基板に接触する可能性がある。これにより、コンタクトにおいて変形及び破損などの不具合が生じる可能性がある。このような不具合によって、コネクタのフローティング構造に起因する可動特性が低下する可能性がある。加えて、コンタクトが回路基板に接触するときに短絡などの電気的な不具合が生じる可能性がある。
【0006】
このような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、可動インシュレータの嵌合方向への移動を許容しつつ、フローティング構造に起因する可動特性の低下及び回路基板における電気的な不具合を抑制可能なコネクタ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係るコネクタは、
一対の第1側壁と底壁とを有し、矩形状に形成されている第1インシュレータと、
前記第1インシュレータの長手方向に沿って延在する第2インシュレータであって、前記一対の第1側壁と前記底壁とにより囲まれる空間に前記第2インシュレータの一部が配置され、前記第1インシュレータに対して相対的に移動可能である前記第2インシュレータと、
前記第1インシュレータの前記第1側壁及び前記第2インシュレータに取り付けられ、前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとの間に位置して前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとを接続する弾性部を有するコンタクトと、
を備え、
前記第2インシュレータ及び前記弾性部は、前記第2インシュレータと接続対象物とが嵌合していない非嵌合状態で前記第1インシュレータと離間し、かつ前記底壁と対向し、
前記弾性部における前記底壁側の端部は、前記第2インシュレータにおける前記底壁側の端部よりも前記底壁側に位置する。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る電子機器は、
上記のコネクタを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係るコネクタ及び電子機器によれば、可動インシュレータの嵌合方向への移動を許容しつつ、フローティング構造に起因する可動特性の低下及び回路基板における電気的な不具合を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】接続対象物が接続されている状態の一実施形態に係るコネクタを上面視で示した外観斜視図である。
図2】接続対象物と分離している状態の一実施形態に係るコネクタを上面視で示した外観斜視図である。
図3図1のコネクタ単体を上面視で示した外観斜視図である。
図4図3のコネクタの上面視による分解斜視図である。
図5図3のV-V矢線に沿った断面斜視図である。
図6図3のV-V矢線に沿った断面図である。
図7図6の破線囲み部VIIの拡大図である。
図8図3のVIII-VIII矢線に沿った断面図である。
図9図3のコネクタと接続される接続対象物を上面視により示した外観斜視図である。
図10図9の接続対象物の上面視による分解斜視図である。
図11図1のXI-XI矢線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について詳細に説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、図1乃至図8、及び図11において、異なる図面同士で互いに整合している。各矢印の方向は、図9及び図10同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、後述する回路基板CB1及びCB2の図示を省略する。
【0012】
図1は、接続対象物60が接続されている状態の一実施形態に係るコネクタ10を上面視で示した外観斜視図である。図2は、接続対象物60と分離している状態の一実施形態に係るコネクタ10を上面視で示した外観斜視図である。例えば図2に示すとおり、コネクタ10は、固定インシュレータとしての第1インシュレータ20と、可動インシュレータとしての第2インシュレータ30と、金具40と、コンタクト50と、を有する。接続対象物60は、インシュレータ70と、金具80と、コンタクト90と、を有する。
【0013】
以下では、例えば、一実施形態に係るコネクタ10はプラグコネクタであり、接続対象物60はリセプタクルコネクタであるとして説明する。すなわち、コネクタ10と接続対象物60とが互いに嵌合する嵌合状態で、コンタクト50においてコンタクト90と接触する部分が弾性変形しないコネクタ10をプラグコネクタとして説明する。一方で、嵌合状態で、コンタクト90においてコンタクト50と接触する部分が弾性変形する接続対象物60をリセプタクルコネクタとして説明する。コネクタ10及び接続対象物60の種類は、これらに限定されない。例えば、コネクタ10がリセプタクルコネクタの役割を果たし、接続対象物60がプラグコネクタの役割を果たしてもよい。
【0014】
以下では、コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2にそれぞれ実装されるとして説明する。コネクタ10は、コネクタ10と嵌合した接続対象物60を介して、接続対象物60が実装されている回路基板CB2と回路基板CB1とを電気的に接続する。回路基板CB1及びCB2は、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。例えば、回路基板CB1及びCB2の少なくとも一方は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。
【0015】
以下では、コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2に対して垂直方向に互いに接続されるとして説明する。すなわち、コネクタ10及び接続対象物60は、一例として上下方向に沿って互いに接続される。接続方法は、これに限定されない。コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2に対して平行方向に互いに接続されてもよいし、実装されている回路基板に対して一方が垂直方向となるように、かつ実装されている回路基板に対して他方が平行方向となるように、互いに接続されてもよい。
【0016】
以下の説明中で使用する「嵌合方向」は、一例として上下方向を意味する。「コネクタ10の短手方向」は、一例として前後方向を意味する。「コネクタ10の長手方向」は、一例として左右方向を意味する。「第1インシュレータ20の長手方向」は、一例として左右方向を意味する。「底壁22側」は、一例として下側を意味する。「第2インシュレータ30と反対側」は、一例として下側を意味する。「非嵌合状態」は、第2インシュレータ30と接続対象物60とが互いに嵌合していない状態であって、コンタクト50の後述する弾性部53が外力によって弾性変形していない状態を意味する。
【0017】
一実施形態に係るコネクタ10は、フローティング構造を有している。コネクタ10は、接続されている接続対象物60が回路基板CB1に対して上下前後左右方向の6方向に相対的に移動することを許容する。すなわち、接続対象物60は、コネクタ10と接続されている状態であっても、回路基板CB1に対して上下前後左右方向の6方向に所定の範囲内で動くことができる。
【0018】
図3は、図1のコネクタ10単体を上面視で示した外観斜視図である。図4は、図3のコネクタ10の上面視による分解斜視図である。図5は、図3のV-V矢線に沿った断面斜視図である。図6は、図3のV-V矢線に沿った断面図である。図7は、図6の破線囲み部VIIの拡大図である。図8は、図3のVIII-VIII矢線に沿った断面図である。
【0019】
図4に示すとおり、コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。すなわち、第1インシュレータ20の内側に第2インシュレータ30を配置した状態で、第1インシュレータ20に対して上方から金具40を圧入する。同様に、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に対して上方からコンタクト50を圧入する。
【0020】
以下では、非嵌合状態におけるコネクタ10の各部品の構成について主に説明する。初めに、図4を主に参照しながら、第1インシュレータ20の構成について主に説明する。
【0021】
図4に示すとおり、第1インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。第1インシュレータ20は矩形状に形成されている。第1インシュレータ20は、前後左右の4つの側壁を含み、内部の空間を囲繞する外周壁21を有する。より具体的には、外周壁21は、左右両側の一対の短手壁21aと前後両側の一対の長手壁21bとにより形成されている。一対の短手壁21aは、一対の長手壁21bと直交し長手壁21bと共に外周壁21を構成する。長手壁21bは、その前後方向の内面を構成し、上方から下方に向けて第1インシュレータ20の内側に傾斜する傾斜面21b1を有する。
【0022】
第1インシュレータ20は、その周縁部から上方に向けて外周壁21が突出する底壁22を有する。底壁22は、一対の長手壁21bを連結するように連続して形成されている。底壁22は、左右方向の中央部に位置する底壁22の上面から上方に山状に隆起する当接部22aを有する。当接部22aの上面は、当接面を構成する。底壁22は、長手壁21b及び当接部22aとの間に形成されている凹部22bを有する。凹部22bの底面は連続して形成されている。底壁22は、当接部22aの上面と同面をなし、底壁22の左右両端部の上面を構成する底面22cを有する。第1インシュレータ20は、外周壁21及び底壁22により囲繞される内部の空間を含む可動空間23を有する。
【0023】
第1インシュレータ20は、長手壁21bの前後方向の外側で上下方向に沿って凹設されている複数のコンタクト取付溝24を有する。複数のコンタクト取付溝24は、左右方向に沿って互いに所定の間隔で離間した状態で形成されている。第1インシュレータ20は、左右方向の両端部において、前後方向に離間する一対の長手壁21bの外面全体にわたり凹設されている金具取付溝25を有する。
【0024】
続いて、図4及び図8を主に参照しながら、第2インシュレータ30の構成について説明する。第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20の可動空間23に配置され、第1インシュレータ20に対して相対的に移動可能である。第2インシュレータ30は、接続対象物60と嵌合する。
【0025】
図4及び図8に示すとおり、第2インシュレータ30は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。第2インシュレータ30は、前方からの正面視において凸字状に形成されている。第2インシュレータ30は、下部を構成する底部31と、底部31から上方に突出し、接続対象物60と嵌合する嵌合凸部32と、を有する。底部31は、左右方向において嵌合凸部32よりも長い。図5にも示すとおり、底部31は、テーパ面31aを有し、上下方向に沿って底壁22側に向かうほど先細りになる。底部31は、その左右両端部を構成する抜止突起33を有する。抜止突起33は、底部31における第1インシュレータ20の長手方向の端部に形成されている。
【0026】
例えば図8に示すとおり、抜止突起33における底壁22側の底面は、底部31において当接部22aと対向する部分と同面に形成されている第1面33aを含む。抜止突起33における底壁22側の底面は、第1面33aから底壁22と反対側に向けて傾斜する傾斜面33bを含む。抜止突起33における底壁22側の底面は、傾斜面33bと連続して第1面33aと略平行となる第2面33cを含む。
【0027】
第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の下端部において嵌合凸部32の左右幅を減じるくびれ部34を有する。くびれ部34は、上方から下方に向けて斜め内側に傾斜するテーパ面34aと、テーパ面34aの下側でテーパ面34aと連続して形成されている対向面34bと、を有する。くびれ部34は、テーパ面34a、対向面34b、及び抜止突起33の上面によって囲まれる逃げ空間34cを有する。
【0028】
第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の左右両端部の上縁にわたり形成されている誘い込み部35を有する。誘い込み部35は、嵌合凸部32の左右両端部の上縁において上方から下方に向けて斜め外側に傾斜する傾斜面を含む。
【0029】
第2インシュレータ30は、左右方向に沿って互いに所定の間隔で離間した状態で形成されている複数のコンタクト取付溝36を有する。コンタクト取付溝36は、嵌合凸部32の前後方向の外面において上下方向の略全体にわたり延在する。コンタクト取付溝36は、嵌合凸部32の上端に凹設されている第1係止部36aを有する。コンタクト取付溝36は、その下端に凹設されている第2係止部36bを有する。
【0030】
続いて、図4を主に参照しながら、金具40の構成について説明する。
【0031】
金具40は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図4に示す形状に成形加工したものである。金具40の加工方法は、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含む。金具40は、左右方向からの正面視において、U字状に形成されている。
【0032】
金具40は、その前後両側の下端部において、L字状に外側に延出する実装部41を有する。金具40は、実装部41の上端から上方に延出する係止部42を有する。金具40は、前後両側の係止部42を連結するように前後方向に延在する抜止部43を有する。金具40は、抜止部43の左右方向の中央部において左右方向の内縁部から内側に一段突出する突出部44を有する。突出部44は、抜止部43の左右方向の内縁部に沿って前後方向に延在する。
【0033】
続いて、図4乃至図7を主に参照しながら、コンタクト50の構成について説明する。
【0034】
コンタクト50は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図4乃至図7に示す形状に成形加工したものである。コンタクト50は、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させて形成される。コンタクト50の加工方法はこれに限定されず、抜き加工の工程のみを含んでもよい。コンタクト50は、弾性変形に伴う形状変化が大きくなるように、例えば弾性係数の小さい金属材料によって形成されている。コンタクト50の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫などによるめっきが施されている。
【0035】
図4に示すとおり、コンタクト50は、左右方向に沿って複数配列されている。図5に示すとおり、コンタクト50は、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に取り付けられている。図5及び図6に示すとおり、同一の左右位置に配列される一対のコンタクト50は、前後方向に沿って互いに対称的に形成及び配置されている。すなわち、一対のコンタクト50は、その間の中心を通る上下軸に対して互いに線対称となるように形成及び配置されている。
【0036】
コンタクト50は、上下方向に沿って延在し、第1インシュレータ20によって支持される第1係止部51を有する。コンタクト50は、第1係止部51の下端部からL字状に外側に延出する実装部52を有する。コンタクト50は、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に位置する弾性部53を有する。
【0037】
弾性部53は、第1係止部51の上端部から上方に直線的に延出する第1延長部53aを有する。弾性部53は、第1延長部53aから逆U字状に折り返す第1折返部53bを有する。弾性部53は、第1折返部53bから第2インシュレータ30側に向けて斜め下方に直線的に延出する第2延長部53cを有する。弾性部53は、第2延長部53cからU字状に折り返す第2折返部53dを有する。弾性部53は、第2折返部53dから後述する第2係止部54aまで上方に直線的に延出する第3延長部53eを有する。図6などでは、第1折返部53bを上下反転させた形状と第2折返部53dの形状とは互いに同一でなく、異なるU字形状となっているが、これに限定されない。第1折返部53bを上下反転させた形状と第2折返部53dの形状とは、互いに同一のU字形状であってもよい。
【0038】
コンタクト50は、上下方向に沿って逆U字状に延在し、第2インシュレータ30によって支持される被支持部54を有する。被支持部54は、弾性部53の第3延長部53eの上端部から連続して形成されている第2係止部54aを有する。被支持部54は、第2係止部54aから上方に直線的に延出する第4延長部54bを有する。被支持部54は、第4延長部54bから逆U字状に折り返す第3折返部54cを有する。被支持部54は、第3折返部54cと連続して形成され、コンタクト50における第2インシュレータ30側の先端に位置する第3係止部54dを有する。コンタクト50は、第4延長部54bの前後方向の外面として構成される接触部55を有する。
【0039】
図5乃至図7に示すとおり、コンタクト50の第1係止部51は、第1インシュレータ20の長手壁21bに形成されているコンタクト取付溝24に係止する。コンタクト50の第2係止部54aは、第2インシュレータ30の嵌合凸部32に形成されているコンタクト取付溝36の第2係止部36bに係止する。コンタクト50の第3係止部54dは、第2インシュレータ30の嵌合凸部32に形成されているコンタクト取付溝36の第1係止部36aに係止する。図5に示すとおり、コンタクト50の接触部55は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝36において前後方向に露出する。
【0040】
図5乃至図8に示すとおり、コンタクト50は、第1インシュレータ20の内側で、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20と離間し、かつ、浮いた状態で、第2インシュレータ30を支持している。
【0041】
第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20の内側に第1インシュレータ20と離間して配置されている。第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20の長手方向に沿って延在する。第2インシュレータ30の一部は、一対の長手壁21bと底壁22とにより囲まれる空間に配置されている。このとき、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20に対して相対的に移動可能である。
【0042】
第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対してコンタクト50により保持されると、第2インシュレータ30の底部31は、第1インシュレータ20の可動空間23に配置される。すなわち、第2インシュレータ30の底部31は、第1インシュレータ20の外周壁21によって囲繞される。このとき、底部31は、第1インシュレータ20の当接部22aと対向する。凹部22bは、当接部22aにおいて第2インシュレータ30と対向する当接面よりも第2インシュレータ30と反対側に凹設されている。第2インシュレータ30の嵌合凸部32は、第1インシュレータ20の可動空間23から上方に突出して接続対象物60との嵌合が可能な状態で配置されている。
【0043】
図5乃至図7に示すとおり、コンタクト50の弾性部53は、第1インシュレータ20と第2インシュレータ30との間に位置して第1インシュレータ20と第2インシュレータ30とを接続する。弾性部53は、コンタクト50が第1インシュレータ20の長手壁21b及び第2インシュレータ30の嵌合凸部32に取り付けられている状態で、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30から露出する。このとき、弾性部53の下部は、第1インシュレータ20の可動空間23内に位置する。
【0044】
図7に示すとおり、第2インシュレータ30及びコンタクト50の弾性部53は、非嵌合状態で第1インシュレータ20の底壁22と嵌合方向に離間して対向する。例えば、第2インシュレータ30の底部31の下面は、底壁22の当接部22aの上面と対向する。例えば、弾性部53の第2折返部53dの下端は、底壁22の凹部22bの底面と対向する。底壁22の当接部22aは、第2インシュレータ30と対向し、かつ弾性部53と対向する部分から第2インシュレータ30側に隆起する。凹部22bを含む底壁22は、コネクタ10が実装される回路基板CB1とコンタクト50の弾性部53との間に配置される。
【0045】
弾性部53における底壁22側の端部は、第2インシュレータ30における底壁22側の端部よりも底壁22側に位置する。すなわち、第2折返部53dの下端は、第2インシュレータ30の底部31の下面よりも底壁22側に位置する。第2インシュレータ30の底部31の下面及び第2折返部53dの下端は、第1インシュレータ20の可動空間23内に位置する。第2インシュレータ30の底部31の下面及び第2折返部53dの下端と底壁22との間には、弾性部53が弾性変形して第2インシュレータ30が底壁22側へと沈み込むことが可能な空間が形成されている。
【0046】
例えば、凹部22bの深さh2は、第2インシュレータ30における底壁22側の端部と弾性部53における底壁22側の端部との間の嵌合方向の間隔h1よりも大きくてもよい。凹部22bの深さh2は、第2インシュレータ30の底部31の下面と第2折返部53dの下端との間の上下間隔h1よりも大きくてもよい。凹部22bの深さh2は、当接部22aの上面から凹部22bの底面までの上下間隔に相当する。
【0047】
長手壁21bの傾斜面21b1は、コンタクト50の第2延長部53cと対向するように斜め下方に傾斜する。例えば、傾斜面21b1は、第2延長部53cと略平行になるように傾斜する。同様に、第2インシュレータ30の底部31において底壁22に向けて先細りになっている部分の前後方向のテーパ面31aは、第2延長部53cと略平行になるように傾斜する。
【0048】
図5に示すとおり、金具40の係止部42は、第1インシュレータ20の金具取付溝25に係止する。金具40は、第1インシュレータ20の金具取付溝25に圧入され、第1インシュレータ20の左右両端部に配置されている。
【0049】
金具40の抜止部43は、金具40が第1インシュレータ20に取り付けられている状態で、可動空間23における左右方向の端部を上方から覆う。図8に示すとおり、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対してコンタクト50により保持されると、第2インシュレータ30の底部31の抜止突起33の上面は、抜止部43の下面と上下方向に対向する。第2インシュレータ30のくびれ部34の対向面34bは、金具40の突出部44と左右方向に対向する。
【0050】
このとき、抜止突起33は、第1インシュレータ20の底壁22において当接部22aと同面に形成されている底面22cと対向する。例えば、抜止突起33の下面は、第1インシュレータ20の底面22cと上下方向に対向する。同様に、抜止突起33は、一対の長手壁21b及び短手壁21aと対向する。例えば、抜止突起33の前後方向の両側面は、第1インシュレータ20の一対の長手壁21bと前後方向に対向する。例えば、抜止突起33の左右方向の側面は、第1インシュレータ20の短手壁21aと左右方向に対向する。
【0051】
以上のような構造のコネクタ10は、例えば、回路基板CB1の実装面に形成された回路形成面に実装される。より具体的には、金具40の実装部41は、回路基板CB1上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。コンタクト50の実装部52は、回路基板CB1上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。リフロー炉などにおいて各はんだペーストを加熱溶融することで、実装部41及び実装部52は、上記パターンにはんだ付けされる。結果、コネクタ10の回路基板CB1への実装が完了する。回路基板CB1の回路形成面には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コントローラ、又はメモリなどのコネクタ10とは別の電子部品が実装される。
【0052】
続いて、接続対象物60の構造について主に図9及び図10を参照しながら説明する。
【0053】
図9は、図3のコネクタ10と接続される接続対象物60を上面視により示した外観斜視図である。図10は、図9の接続対象物60の上面視による分解斜視図である。
【0054】
図10に示すとおり、接続対象物60は、大きな構成要素として、インシュレータ70と、金具80と、コンタクト90と、を有する。接続対象物60は、インシュレータ70に対して、下方から金具80及びコンタクト90を圧入することで組み立てられる。
【0055】
インシュレータ70は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、四角柱状の部材である。インシュレータ70は、上面において左右方向に直線状に凹設されている嵌合凹部71を有する。インシュレータ70は、嵌合凹部71の左右両端部においてその上縁部に形成されている誘い込み部72を有する。誘い込み部72は、嵌合凹部71の上縁部において下方に向けて斜め内側に傾斜する傾斜面によって構成される。インシュレータ70は、左右両側の底面から上方に向けてインシュレータ70の内部に凹設されている金具取付溝73を有する。
【0056】
インシュレータ70は、底部の前後両側と、嵌合凹部71の前面及び後面とに形成されている複数のコンタクト取付溝74を有する。複数のコンタクト取付溝74は、左右方向に沿って互いに所定の間隔で離間した状態で形成されている。
【0057】
金具80は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図10に示す形状に成形加工したものである。金具80は、左右方向における正面視でH字状に形成されている。金具80は、その下端部において、U字状に外側に延出する実装部81を有する。金具80は、実装部81と上方に連続して形成されている係止部82を有する。
【0058】
コンタクト90は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図10に示す形状に成形加工したものである。コンタクト90の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫などによるめっきが施されている。
【0059】
コンタクト90は、左右方向に沿って複数配列されている。コンタクト90は、外側に延出する実装部91を有する。コンタクト90は、実装部91と連続して形成されている第1係止部92を有する。コンタクト90は、第1係止部92から上方に向けて互いに分岐するように延出する第2係止部93及び弾性接触部94を有する。第2係止部93は、第1係止部92から上方に向けて直線状に延出する。弾性接触部94は、前後方向の内側に屈曲しながら第1係止部92から上方に向けて延出する。
【0060】
図9に示すとおり、金具80は、インシュレータ70の金具取付溝73に取り付けられる。例えば、金具80の係止部82は、インシュレータ70の金具取付溝73に係止する。金具80は、インシュレータ70の左右両端部のそれぞれに配置されている。複数のコンタクト90は、インシュレータ70の複数のコンタクト取付溝74にそれぞれ取り付けられている。例えば、コンタクト90の第1係止部92及び第2係止部93は、インシュレータ70のコンタクト取付溝74に係止する。このとき、コンタクト90の弾性接触部94の先端は、インシュレータ70のコンタクト取付溝74から嵌合凹部71の内部に露出する。弾性接触部94は、コンタクト取付溝74において前後方向に弾性変形可能である。
【0061】
以上のような構造の接続対象物60では、例えば、回路基板CB2の実装面に形成された回路形成面に実装される。より具体的には、金具80の実装部81は、回路基板CB2上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。コンタクト90の実装部91は、回路基板CB2上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。リフロー炉などにおいて各はんだペーストを加熱溶融することで、実装部81及び実装部91は、上記パターンにはんだ付けされる。結果、接続対象物60の回路基板CB2への実装が完了する。回路基板CB2の回路形成面には、例えば、カメラモジュール及びセンサなどを含む接続対象物60とは別の電子部品が実装される。
【0062】
図11は、図1のXI-XI矢線に沿った断面図である。図11を主に参照しながら、フローティング構造を有するコネクタ10の動作について主に説明する。
【0063】
コンタクト50の実装部52が回路基板CB1に対してはんだ付けされることで、第1インシュレータ20は、回路基板CB1に対して固定される。第2インシュレータ30は、コンタクト50の弾性部53が弾性変形することで、回路基板CB1に固定された第1インシュレータ20に対して移動可能となる。
【0064】
図4及び図8に示すとおり、第1インシュレータ20の長手壁21bは、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の前後方向への過剰な移動を規制する。例えば、第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性部53の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく前後方向に移動すると、第2インシュレータ30の抜止突起33が長手壁21bに接触する。これにより、第2インシュレータ30は、前後方向の外側にそれ以上移動しない。
【0065】
図8に示すとおり、第1インシュレータ20の短手壁21a及び金具40の突出部44は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の左右方向への過剰な移動を規制する。例えば、第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性部53の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく左右方向に移動すると、第2インシュレータ30の抜止突起33が短手壁21aに接触する。又は、第2インシュレータ30の対向面34bが突出部44に接触する。このとき、金具40の抜止部43の一部及び突出部44は、第2インシュレータ30の逃げ空間34cに収容される。以上により、第2インシュレータ30は、左右方向の外側にそれ以上移動しない。
【0066】
図7及び図11に示すとおり、第2インシュレータ30の底部31の下面は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の下方向への過剰な移動を規制する。例えば、第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性部53の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく下方向に移動すると、第2インシュレータ30の底部31の下面が底壁22の当接部22aの上面に接触する。同様に、抜止突起33の第1面33aが底壁22の当接部22aの上面と同面に形成されている底面22cに接触する。これにより、第2インシュレータ30は、下方向にそれ以上移動しない。このとき、図7に示すとおり凹部22bの深さh2が上下間隔h1よりも大きいと、コンタクト50の第2折返部53dは、第1インシュレータ20の凹部22bの底面に接触しない。コンタクト50の弾性部53の弾性変形に伴って第2インシュレータ30が下方へと移動する量は、弾性部53が下方へと移動する量と異なるのが通常である。
【0067】
図8に示すとおり、金具40の抜止部43は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。すなわち、金具40の抜止部43は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方向への過剰な移動を規制する。例えば、第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性部53の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく上方向に移動すると、第2インシュレータ30の抜止突起33が抜止部43に接触する。これにより、第2インシュレータ30は、上方向にそれ以上移動しない。コネクタ10は、金具40のような強度の高い部材によって第2インシュレータ30の上方向への過剰な移動を規制することができる。
【0068】
以上のようなフローティング構造を有するコネクタ10に対して接続対象物60の上下方向の向きを逆にした状態で、コネクタ10及び接続対象物60の前後位置及び左右位置を略一致させながら、互いを上下方向に対向させる。その後、接続対象物60を下方に移動させる。このとき、互いの位置が例えば前後左右方向に多少ずれていても、コネクタ10の誘い込み部35と接続対象物60の誘い込み部72とが接触する。
【0069】
その結果、コネクタ10のフローティング構造により第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して相対的に移動する。より具体的には、第2インシュレータ30の嵌合凸部32が、インシュレータ70の嵌合凹部71に誘い込まれる。接続対象物60を下方にさらに移動させると、第2インシュレータ30の嵌合凸部32とインシュレータ70の嵌合凹部71とが互いに嵌合する。
【0070】
図11に示すとおり、コネクタ10の第2インシュレータ30と接続対象物60のインシュレータ70とが嵌合した嵌合状態で、コネクタ10のコンタクト50と接続対象物60のコンタクト90とが互いに接触する。より具体的には、コンタクト50の接触部55とコンタクト90の弾性接触部94とが互いに接触する。このとき、コンタクト90の弾性接触部94の先端は、前後方向の外側に向けて若干弾性変形し、コンタクト取付溝74の内部に向けて弾性変位する。
【0071】
以上により、コネクタ10と接続対象物60とは、完全に接続される。このとき、コンタクト50及びコンタクト90を介して、回路基板CB1と回路基板CB2とが電気的に接続される。
【0072】
この状態で、コンタクト90の一対の弾性接触部94は、コネクタ10の一対のコンタクト50を前後方向に沿った内側への弾性力により前後両側から挟持する。これにより生じるコネクタ10のコンタクト50への押圧力により、接続対象物60をコネクタ10から抜去する場合、第2インシュレータ30は、コンタクト50を介して抜去方向、すなわち上方向への力を受ける。これにより、仮に第2インシュレータ30が上方に移動したとしても、第1インシュレータ20に圧入された金具40の抜止部43が、第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。
【0073】
以上のような一実施形態に係るコネクタ10は、可動インシュレータとしての第2インシュレータ30の嵌合方向への移動を許容する。例えば、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20の内側に第1インシュレータ20と離間して配置されていることで、第1インシュレータ20に対して前後左右方向に加え嵌合方向へも相対的に移動可能である。例えば、第2インシュレータ30及びコンタクト50の弾性部53は、非嵌合状態で第1インシュレータ20の底壁22と離間する。これにより、第2インシュレータ30は、弾性部53の底壁22側への弾性変形に伴って底壁22側にも移動可能である。
【0074】
加えて、第1インシュレータ20の底壁22は、非嵌合状態で第2インシュレータ30及び弾性部53と対向する。すなわち、凹部22bを含む底壁22は、コネクタ10が実装される回路基板CB1と弾性部53との間に配置される。これにより、第2インシュレータ30が底壁22側に移動し、かつ回路基板CB1が嵌合方向に直交するように配置されている場合であっても、コネクタ10は、その構成部と回路基板CB1との接触を抑制可能である。第2インシュレータ30及び弾性部53と回路基板CB1との間に底壁22が介在しているので、例えば第2インシュレータ30が底壁22側に大きく移動したとしても、コネクタ10は、第2インシュレータ30及び弾性部53を含むコネクタ10の構成部と回路基板CB1との接触を抑制可能である。これにより、コンタクト50において変形及び破損などの不具合が抑制される。結果として、コネクタ10は、フローティング構造に起因する可動特性の低下を抑制可能である。加えて、コネクタ10は、コンタクト50が回路基板CB1に接触するときの短絡などの電気的な不具合を抑制可能である。
【0075】
コンタクト50の弾性部53における底壁22側の端部が、第2インシュレータ30における底壁22側の端部よりも底壁22側に位置することで、第2延長部53cをより長く延伸させることが可能となる。これにより、弾性部53全体をより長く形成することが可能となる。したがって、第2インシュレータ30が底壁22に平行な方向、すなわち前後左右方向に移動するときの可動量が増大する。したがって、コネクタ10は、第2インシュレータ30の円滑な移動を実現して、良好なフローティング構造を提供可能である。
【0076】
底壁22が、第2インシュレータ30と対向する当接部22aを有することで、コネクタ10は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の底壁22側への過剰な移動を規制することができる。同様に、抜止突起33が第1インシュレータ20の底壁22において当接部22aと同面に形成されている底面22cと対向することで、コネクタ10は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の底壁22側への過剰な移動を規制することができる。以上により、コネクタ10は、コンタクト50の弾性部53の過剰な弾性変形によってコンタクト50が底壁22に接触することを抑制することができる。したがって、コンタクト50の破損などの不具合が抑制される。
【0077】
底壁22がコンタクト50の弾性部53と対向する凹部22bを有することで、第1インシュレータ20に対して第2インシュレータ30が底壁22側へ移動したときであっても、弾性部53と底壁22との接触が抑制される。例えば、図7に示すとおり凹部22bの深さh2が上下間隔h1よりも大きいことで、第2インシュレータ30が大きく移動したとしても、弾性部53と底壁22との接触が十分に抑制される。以上により、コンタクト50との接触に伴って生じる第1インシュレータ20の変形及び破損などの不具合が抑制される。
【0078】
底壁22が一対の長手壁21bを連結するように連続して形成されていることで、第1インシュレータ20の強度が向上する。加えて、第1インシュレータ20が、一対の長手壁21bと直交し長手壁21bと共に外周壁21を構成する一対の短手壁21aを有することで、第1インシュレータ20の強度がさらに向上する。したがって、第1インシュレータ20を有するコネクタ10の堅牢性が向上する。加えて、回路基板CB1において底壁22により覆われている部分で、当該部分とコネクタ10のコンタクト50との接触が抑制される。したがって、当該部分を回路形成面の一部としてパターンを形成することも可能となる。
【0079】
コンタクト50の弾性部53が図7に示す形状を有することで、コネクタ10の短手方向の幅を短くしつつ、第1インシュレータ20に対して第2インシュレータ30が移動するときの可動量を維持することができる。コネクタ10は、短手方向への小型化と、第2インシュレータ30に対して必要となる可動量の維持と、を両立可能である。
【0080】
長手壁21bが第2延長部53cと対向するように斜め下方に傾斜する傾斜面21b1を有することで、例えば長手壁21bの前後方向の内面が垂直に形成されている場合と比較して、弾性部53が前後方向に弾性変形可能な空間が大きくなる。同様に、第2インシュレータ30の底部31がテーパ面31aを有することで、例えば底部31の前後方向の側面が垂直に形成されている場合と比較して、弾性部53が前後方向に弾性変形可能な空間が大きくなる。これにより、第2インシュレータ30が前後方向に移動するときの可動量が増大する。したがって、コネクタ10は、第2インシュレータ30の円滑な移動を実現して、良好なフローティング構造を提供可能である。
【0081】
抜止突起33が一対の長手壁21b及び短手壁21aと対向することで、コネクタ10は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の前後左右方向への過剰な移動を規制することができる。コネクタ10は、弾性部53全体がより長く形成されて、第2インシュレータ30の前後左右方向への可動量が増大しても、当該方向への過剰な移動を確実に規制することができる。以上により、コネクタ10は、コンタクト50の弾性部53の過剰な弾性変形によってコンタクト50が第1インシュレータ20に接触することを抑制することができる。したがって、コンタクト50の破損などの不具合が抑制される。
【0082】
抜止突起33における底壁22側の底面が第1面33a及び第2面33cを含むことで、例えば図8において第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して左右方向に沿って斜めに傾くことも可能となる。コネクタ10は、このような第1インシュレータ20の長手方向に沿った第2インシュレータ30の傾きも許容する。加えて、第1面33aが底部31において当接部22aと対向する部分と同面に形成されていることで、第2インシュレータ30と底壁22とが互いに接触するときの面積が広くなる。したがって、第2インシュレータ30の破損が抑制される。
【0083】
第2インシュレータ30が誘い込み部35を有することで、接続対象物60の嵌合凹部71と第2インシュレータ30の嵌合凸部32との間の誘い込みが容易となり、コネクタ10において、良好なフローティング構造が実現可能である。すなわち、コネクタ10に対する接続対象物60の挿入作業が容易となる。
【0084】
第2インシュレータ30は、くびれ部34を有することで、逃げ空間34cの分だけ左右方向の外側に移動可能となる。これにより、第2インシュレータ30が左右方向に移動するときの可動量が増大する。したがって、コネクタ10は、第2インシュレータ30の円滑な移動を実現して、良好なフローティング構造を提供可能である。
【0085】
コンタクト50が第2係止部54a及び第3係止部54dの2つによって第2インシュレータ30に係止することで、第2インシュレータ30によるコンタクト50の保持力が向上する。これにより、第2インシュレータ30が上下前後左右方向に移動したときの、第2インシュレータ30からのコンタクト50の抜けが抑制される。
【0086】
コンタクト50が弾性係数の小さい金属材料によって形成されていることで、コネクタ10は、第2インシュレータ30にかかる力が小さい場合であっても、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保できる。すなわち、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20に対して滑らかに移動することができる。これにより、コネクタ10は、接続対象物60と嵌合するときの位置ずれを容易に吸収できる。
【0087】
コネクタ10では、何らかの外的要因によって発生する振動をコンタクト50の弾性部53が吸収する。これにより、実装部52に大きな力が加わる可能性が抑制される。したがって、回路基板CB1との接続部分の破損が抑制される。すなわち、回路基板CB1と実装部52との接続部分のはんだにクラックが入ることを抑制できる。したがって、コネクタ10と接続対象物60とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
【0088】
金具40が第1インシュレータ20に圧入されて、実装部41が回路基板CB1にはんだ付けされることで、金具40は、第1インシュレータ20を回路基板CB1に対して安定して固定できる。金具40により、回路基板CB1に対する第1インシュレータ20の実装強度が向上する。
【0089】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0090】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0091】
上述したコネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、金具40及びコンタクト50の少なくとも一方は、圧入ではなくインサート成形によって第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の少なくとも一方と一体的に成形されてもよい。例えば、金具80及びコンタクト90の少なくとも一方は、圧入ではなくインサート成形によってインシュレータ70と一体的に成形されてもよい。
【0092】
上記実施形態では、弾性部53における底壁22側の端部が第2インシュレータ30における底壁22側の端部よりも底壁22側に位置すると説明したが、これに限定されない。第2インシュレータ30に対して必要となる可動量が得られるのであれば、弾性部53における底壁22側の端部は、第2インシュレータ30における底壁22側の端部よりも底壁22と反対側に位置してもよい。
【0093】
上記実施形態では、底壁22は、第2インシュレータ30と対向する当接部22aを有すると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の底壁22側への過剰な移動を規制することが可能であれば、当接部22aを有さなくてもよい。
【0094】
上記実施形態では、底壁22は、コンタクト50の弾性部53と対向する凹部22bを有すると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、弾性部53と底壁22との接触が抑制されるのであれば、凹部22bを有さなくてもよい。
【0095】
上記実施形態では、底壁22は、一対の長手壁21bを連結するように連続して形成されていると説明したが、これに限定されない。底壁22は、連続して形成されていなくてもよい。例えば、底壁22の一部が上下方向の全体にわたり切り欠かれていてもよいし、底壁22の一部に貫通孔が形成されていてもよい。同様に、凹部22bの底面は連続して形成されていなくてもよい。例えば、凹部22bの底面の一部が上下方向の全体にわたり切り欠かれていてもよいし、凹部22bの底面の一部に貫通孔が形成されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、長手壁21bは、コンタクト50の第2延長部53cと対向するように斜め下方に傾斜する傾斜面21b1を有すると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、弾性部53が前後方向に弾性変形可能な空間を維持することができるのであれば、傾斜面21b1を有さなくてもよい。同様に、上記実施形態では、底部31はテーパ面31aを有すると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、弾性部53が前後方向に弾性変形可能な空間を維持することができるのであれば、テーパ面31aを有さなくてもよい。
【0097】
上記実施形態では、第1インシュレータ20は、一対の長手壁21bと直交し長手壁21bと共に外周壁21を構成する一対の短手壁21aを有すると説明したが、これに限定されない。第1インシュレータ20は、一対の短手壁21aを有さなくてもよい。
【0098】
上記実施形態では、抜止突起33における底壁22側の底面は第1面33a、傾斜面33b、及び第2面33cを含むと説明したが、これに限定されない。抜止突起33における底壁22側の底面は1つの平面として形成されていてもよい。逆に、抜止突起33における底壁22側の底面において突起などが付加されて、当該突起が底壁22に部分的に接触してもよい。第1面33aは、底部31において当接部22aと対向する部分と同面に形成されていなくてもよい。第2インシュレータ30側と同様に、第1インシュレータ20の底面22cは、当接部22aの当接面と同面に形成されていなくてもよい。
【0099】
コンタクト50は、弾性係数の小さい金属材料によって形成されているとして説明したが、これに限定されない。コンタクト50は、必要とされる弾性変形量を確保できるのであれば、任意の弾性係数を有する金属材料によって形成されていてもよい。
【0100】
接続対象物60は、回路基板CB2に接続されるリセプタクルコネクタであるとして説明したが、これに限定されない。接続対象物60は、コネクタ以外の任意の対象物であってもよい。例えば、接続対象物60は、FPC、フレキシブルフラットケーブル、リジッド基板、又は任意の回路基板のカードエッジであってもよい。
【0101】
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ、及びエンジンコントロールユニットなどの任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム、及びセキュリティシステムなどの車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、及び複合機などの任意の情報機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。
【0102】
このような電子機器は、フローティング構造を有するコネクタ10において、可動インシュレータとしての第2インシュレータ30の嵌合方向への移動を許容しつつ、フローティング構造に起因する可動特性の低下及び回路基板CB1における電気的な不具合を抑制可能である。例えば、コネクタ10のコンタクト50と回路基板CB1との接触が抑制可能である。これにより、コンタクト50において変形及び破損などの不具合が抑制される。したがって、コネクタ10を有する電子機器の製品としての信頼性が向上する。
【0103】
さらに、コネクタ10の良好なフローティング構造により回路基板間の位置ずれが吸収されるので、電子機器の組み立ての際の作業性が向上する。すなわち、電子機器の製造が容易になる。コネクタ10により回路基板CB1との接続部分の破損が抑制されるので、電子機器の製品としての信頼性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0104】
10 コネクタ
20 第1インシュレータ
21 外周壁
21a 短手壁(第2側壁)
21b 長手壁(第1側壁)
21b1 傾斜面
22 底壁
22a 当接部
22b 凹部
22c 底面
23 可動空間
24 コンタクト取付溝
25 金具取付溝
30 第2インシュレータ
31 底部
31a テーパ面
32 嵌合凸部
33 抜止突起
33a 第1面
33b 傾斜面
33c 第2面
34 くびれ部
34a テーパ面
34b 対向面
34c 逃げ空間
35 誘い込み部
36 コンタクト取付溝
36a 第1係止部
36b 第2係止部
40 金具
41 実装部
42 係止部
43 抜止部
44 突出部
50 コンタクト
51 第1係止部
52 実装部
53 弾性部
53a 第1延長部
53b 第1折返部
53c 第2延長部
53d 第2折返部
53e 第3延長部
54 被支持部
54a 第2係止部
54b 第4延長部
54c 第3折返部
54d 第3係止部
55 接触部
60 接続対象物
70 インシュレータ
71 嵌合凹部
72 誘い込み部
73 金具取付溝
74 コンタクト取付溝
80 金具
81 実装部
82 係止部
90 コンタクト
91 実装部
92 第1係止部
93 第2係止部
94 弾性接触部
CB1、CB2 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11