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特開2022-119677木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
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  • 特開-木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法 図1
  • 特開-木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119677
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20220809BHJP
   B32B 21/02 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B27N3/02 D
B32B21/02
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016970
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
2B260
4F100
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA02
2B260BA07
2B260BA18
2B260CB01
2B260CD02
2B260CD06
2B260DA07
2B260DA18
2B260DB14
2B260DB21
2B260DD02
2B260DD03
2B260EA05
2B260EB19
4F100AH02
4F100AH02A
4F100AK01A
4F100AK05
4F100AK70
4F100AK70A
4F100AP00
4F100AP00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE01A
4F100DE05
4F100DE05A
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100GB08
4F100HB00B
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JA06
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JD15
4F100JJ03
4F100JJ04
4F100JK04
4F100JK05
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な耐水性を備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、を含み、熱可塑性樹脂組成物12が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、酸含有樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、
前記酸含有樹脂の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内であることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、密度が0.93g/cm以上のポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、JIS K7210-1:2014に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定したときに、1g/10分以上30g/10分以下の範囲内のメルトフローレートを有することを特徴とする請求項1または2に記載の木質基材。
【請求項4】
前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
前記酸含有樹脂が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物が有機過酸化物をさらに含み、
前記有機過酸化物の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上3質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項7】
前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする化粧材。
【請求項9】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して木質基材を形成する工程を有し、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、
前記酸含有樹脂の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内であることを特徴とする木質基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材は、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材である。この木質基材は、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
【0003】
木質基材の接着剤としては、従来、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、またはフェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられていた。ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されている。しかしながら、従来技術では、ホルムアルデヒドの放散を完全に抑制することは困難であった。
【0004】
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸とを主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されていた(特許文献1の段落[0017]参照)。また、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、従来、ポリビニルアルコールと水とからなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されていた(特許文献2の段落[0017]、及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-55620号公報
【特許文献2】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度などの機械特性や耐水性、耐寒性、耐熱性が実用上十分なものではなかった。
そこで、本発明は、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な耐水性を備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、前記熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、前記酸含有樹脂の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る木質基材の熱可塑性樹脂は、密度が0.93g/cm以上のポリオレフィン樹脂であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材の熱可塑性樹脂は、JIS K7210-1:2014に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定したときに、1g/10分以上30g/10分以下の範囲内のメルトフローレートを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記酸含有樹脂が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物が有機過酸化物をさらに含み、前記有機過酸化物の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上3質量部以下の範囲内であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧材は、上述した木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る木質基材の製造方法は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して木質基材を形成する工程を有し、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、前記熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、前記酸含有樹脂の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な耐水性を備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る木質基材の製造工程を説明するための模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る化粧材の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係る木質基材20が示されている。木質基材20は、木質材料11の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材20は、図1に示すように、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。なお、木質基材20には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、木質基材20内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
以下、木質基材20を構成する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12とについて説明する。
【0015】
(木質材料11)
木質材料11は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有するものである。ここで、「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しない。本実施形態では、そのサイズ(平均粒径)が概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものをいう。本実施形態における木質材料11の平均粒径は、例えば、10μm以上10mm以下の範囲内である。
【0016】
木質材料11は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、その原料としては、例えば、間伐材、オガ粉、廃木材などを用いることができる。
また、木質材料11は、木材以外でも、例えば、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば、その候補とすることができる。
【0017】
木質材料11の原料としては、例えば、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床は、キノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。菌床は、キノコ栽培後の国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状である。
【0018】
本実施形態において、菌床を木質材料11として使用する場合には、木質材料11全体の体積に占める菌床の割合は、1%以上100%以下の範囲内であればよく、好ましくは、50%以上100%以下の範囲内である。菌床の含有量が上記数値範囲内であれば、製造コストを通常の木質チップを用いた場合と比較して低減することができる。
【0019】
(木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比)
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、95/5~70/30の範囲内であることが好ましい。
木質材料11の含有量が、上記した数値(95/5)より大きくなると、木質基材20に十分な機械強度を付与することができない。一方、木質材料11の含有量が、上記した数値(70/30)より小さくなると、加熱加圧時に木質基材20の変形が生じやすくなり好ましくない。
【0020】
(熱可塑性樹脂組成物12)
熱可塑性樹脂組成物12は、その形状が粉体状であり、且つ、熱可塑性樹脂と酸含有樹脂とを含有した組成物である。本実施形態における熱可塑性樹脂組成物12の平均粒径は、例えば、10μm以上1mm以下の範囲内である。
【0021】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、木質基材20に機械強度と耐熱性、さらには耐寒性を付与することができ、且つ加熱加圧時における変形が少ない点でポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリプロピレン及びポリエチレンであればより好ましく、ポリエチレンであればさらに好ましい。熱可塑性樹脂は、密度が0.93g/cm以上、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂がより好ましく、密度が0.94g/cm以上、融点が125℃以上135℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂が更に好ましい。
【0022】
密度が0.93g/cm未満であると、木質基材20の耐熱性が低下する場合があるため好ましくない。
融点が120℃に満たないと、木質基材20に十分な耐熱性を得ることができず、機械強度が低下する場合が多いため好ましくない。また、融点が140℃を超えると、木質基材20に十分な耐寒性を得ることができず、加熱加圧時に変形を生じるため好ましくない。
【0023】
なお、本実施形態において、熱可塑性樹脂の密度の上限値は限定されるものではないが、1.00g/cm以下、好ましくは0.97g/cm以下である。これは、密度が1.00g/cmを超える熱可塑性樹脂は実質的に存在せず、仮に存在したとしてもその入手が極めて困難だからである。
【0024】
また、熱可塑性樹脂を備えた木質基材20であれば、熱可塑性樹脂が有する高い耐水性に起因して木質基材20全体に優れた耐水性を付与することができる。具体的には、耐水性に優れた熱可塑性樹脂が木質材料11の表面を覆うため、木質基材20全体の吸水膨張を抑制し木質基材20全体に優れた耐水性を付与することができる。
【0025】
本実施形態において使用可能なポリオレフィン樹脂としては、上述したポリエチレンやポリプロピレン以外に、例えば、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂等、或いはこれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等が挙げられる。
【0026】
プロピレンを主成分とする単独又は共重合体であるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合した樹脂、またはそれらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を例示できる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体又はその水素添加物等の改質剤を適宜添加できる。ここで、上記「主成分」とは、ポリプロピレン系樹脂全体の質量の50質量%以上をプロピレン成分が占めている状態をいう。
なお、上記した材料の中でも特に、密度及び融点の観点から高密度ポリエチレン(HDPE)が本実施形態のポリオレフィン樹脂として好ましい。
【0027】
また、熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210-1:2014に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定したときに、1g/10分以上30g/10分以下の範囲内であることが好ましい。
メルトフローレートが1g/10分に満たないと、木質基材等に馴染みにくいため好ましくない。また、メルトフローレートが30g/10分を超えると、加熱加圧による成形が困難となるため好ましくない。
【0028】
(酸含有樹脂)
酸含有樹脂は、木質材料11と熱可塑性樹脂との接着性を向上させるため、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む樹脂が用いられる。
酸含有樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレンなど無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、または無水イタコン酸変性ポリエチレンなどを用いることができるが、セルロースを含む木質材料11との馴染み易さ(接着性の観点)から、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく、無水マレイン酸変性ポリエチレンがさらに好ましい。
【0029】
(酸含有樹脂の添加量)
酸含有樹脂の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内が好ましく、10質量部以上40質量部以下の範囲内がさらに好ましい。
酸含有樹脂の添加量が5質量部に満たないと、木質材料11と熱可塑性樹脂との接着性が不足するため、木質基材20に十分な強度を付与することができない。また、酸含有樹脂の添加量が50質量部を超えると木質基材20の強度が低下する場合が多いため好ましくない。
【0030】
なお、木質材料11と熱可塑性樹脂との接着性が不足した状態では、木質材料11を構成する木質チップ等の表面全体を熱可塑性樹脂で覆うことができていないため、木質材料11内に侵入した水分によって木質基材20全体が吸水膨張し、木質基材20全体の耐水性が低下する。
【0031】
(有機過酸化物)
熱可塑性樹脂組成物12は、有機過酸化物をさらに含んでいてもよい。
有機過酸化物は、原料混合物10の加熱加圧工程において、熱可塑性樹脂同士をラジカル架橋するために用いてもよい。また、酸含有樹脂にラジカル架橋性を有する材料を用いれば、熱可塑性樹脂組成物12に有機過酸化物を添加することで、酸含有樹脂と熱可塑性樹脂とに架橋を生じさせることができる。熱可塑性樹脂同士、または酸含有樹脂と熱可塑性樹脂との間にラジカル架橋が形成されると、その架橋構造により、木質基材20全体の機械強度が向上する。
【0032】
有機過酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの既存材料から、反応性や安定性を考慮し適宜選択して用いられる。
また、有機過酸化物は、ラジカル架橋剤の一種であり、例えば、ヒドロペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカルボナート類、ペルオキシエステル類、ペルオキシカルボナート類、ジアルキルペルオキシド類、ケトンペルオキシド類等がある。
【0033】
(有機過酸化物の添加量)
有機過酸化物の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上3質量部以下の範囲内が望ましい。
有機過酸化物の添加量が0.01質量部に満たないと、原料混合物の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材の強度向上に寄与しない。また、有機過酸化物の添加量が3質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材の変形の原因になる場合があるため好ましくない。
【0034】
さらに、熱可塑性樹脂組成物12に有機過酸化物を添加することで、熱可塑性樹脂と、酸含有樹脂と、木質材料11との間にラジカル架橋による3次元ネットワーク(結合)を形成することが可能となる。これにより、木質基材20全体の機械強度が向上する。
【0035】
(熱可塑性樹脂組成物12の作成方法)
有機過酸化物と酸含有樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能である。例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて熱可塑性樹脂とともに酸含有樹脂と有機過酸化物とを加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。
【0036】
(原料混合物10の加熱加圧による製造方法)
原料混合物10の加熱加圧は各種公知の方法を用いることができるが、枠型を用いたプレス成型が好適である。
加熱温度は通常は、120℃以上250℃以下の範囲内であり、熱可塑性樹脂の融点以上であることが必要であるが、加熱温度が250℃を超えると木質材料11の熱劣化が顕著に生じ場合がある。加圧圧力は、通常は10kgf/cm以上400kgf/cm以下の範囲内であり、所望する木質基材の密度により適宜した値を用いる。
【0037】
上記で得られる木質基材20の密度や形状は用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.5g/cm以上1.2g/cm以下の範囲内が好ましく、0.6g/cm以上1.1g/cm以下の範囲内がさらに好ましい。木質基材20の密度が上記数値の範囲内であれば、木質基材20全体の機械強度がさらに向上する。さらに、木質基材20の密度が上記数値の範囲内であれば、木質基材20全体に含まれる細孔容量が少なくなるため、耐熱性や耐寒性も向上する。
【0038】
[第2実施形態]
図2を用いて第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、先に図1を用いて説明した第1実施形態に係る木質基材20に、意匠性を有する意匠性基材31を積層した化粧材30である。
本実施形態によれば、木質基材20に意匠性基材31を積層することで、意匠性を付与することができる。
【0039】
すなわち、木質基材20は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、木質基材20にさらに優れた意匠性を付与するため、図2に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠性基材31を木質基材20に積層して化粧材30としてもよい。
【0040】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、を含み、熱可塑性樹脂組成物12が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、酸含有樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内である。
【0041】
このような構成であれば、木質基材20は、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質を含有していないため、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。また、木質基材20は熱可塑性樹脂を含んでいるため、その熱可塑性樹脂が有する高い耐水性に起因して木質基材20に優れた耐水性を付与することができる。
【0042】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂は、その密度が0.93g/cm以上のポリオレフィン樹脂であってもよい。
このような構成であれば、木質基材20の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂は、JIS K7210-1:2014に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定したときに、1g/10分以上30g/10分以下の範囲内のメルトフローレートを有していてもよい。
このような構成であれば、熱可塑性樹脂が木質基材等に馴染みに易く、加熱加圧による成形が容易となる。
【0044】
また、本実施形態の木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、95/5~70/30の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、木質基材20に十分な機械強度を付与しつつ、加熱加圧時における木質基材20の変形を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態の酸含有樹脂は、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであってもよい。
このような構成であれば、木質材料11と熱可塑性樹脂との接着性をさらに向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物12は、有機過酸化物をさらに含み、その有機過酸化物の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上3質量部以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、木質基材20の強度が向上し、且つ木質基材20の変形を低減することができる。さらに、このような構成であれば、熱可塑性樹脂と、酸含有樹脂と、木質材料11との間にラジカル架橋による3次元ネットワーク(結合)を形成することが可能となり、木質基材20の機械強度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の木質材料11は、菌床を原料に含んでいてもよい。
このような構成であれば、環境に配慮した木質材料11を製造することができる。
【0048】
また、本実施形態の化粧材30は、木質基材20に意匠性基材31を積層させたものであってもよい。
このような構成であれば、木質基材20の意匠性を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態の木質基材20の製造方法は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12と、を含む原料混合物10を加熱加圧して木質基材20を形成する工程を有し、熱可塑性樹脂組成物12が、熱可塑性樹脂と、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む酸含有樹脂と、を含有し、熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上140℃以下の範囲内のポリオレフィン樹脂であり、酸含有樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の範囲内である。
【0050】
このような構成であれば、製造された木質基材20は、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質を含有していないため、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。また、製造された木質基材20は熱可塑性樹脂を含んでいるため、その熱可塑性樹脂が有する高い耐水性に起因して木質基材20に優れた耐水性を付与することができる。
【0051】
[実施例]
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~28及び比較例1~4について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~28に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
実施例1の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン樹脂 100質量部
(融点129℃、密度0.952g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)21g/10min)
(2)無水マレイン酸変性ポリエチレン 25質量部
(3)有機過酸化物(パーオキシケタール): 1質量部
上記(1)~(3)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0053】
木質材料には、キノコ収穫後の菌床(平均粒径2mm)を洗浄、乾燥した材料を用いた。
木質材料と熱可塑性樹脂組成物とを、質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)「85/15」で乾式混合することで、木質基材の原料混合物を得た。
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで本実施例の木質基材を得た(プレス条件:40kgf/cm、200℃10分、基材材厚:10mm、基材密度:0.8g/cm)。
【0054】
以上のように、本実施例の木質基材は、その製造工程において、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質を使用していない。よって、本実施例の木質基材であれば、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「70/30」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0056】
(実施例3)
実施例3では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「95/5」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0057】
(実施例4)
実施例4では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「60/40」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0058】
(実施例5)
実施例5では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「97/3」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0059】
(実施例6)
実施例6では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点124℃、密度0.940g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)20g/10minの直鎖系低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0060】
(実施例7)
実施例7では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点120℃、密度0.919g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)20g/10minの直鎖系低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0061】
(実施例8)
実施例8では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂の配合量を5部とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例9)
実施例9では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂の配合量を50部とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0062】
(実施例10)
実施例7では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点130℃、密度0.960g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)13g/10minの高密度ポリエチレンとし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0063】
(実施例11)
実施例11では、熱可塑性樹脂組成物中の(3)有機過酸化物を配合しなかった以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例12)
実施例12では、熱可塑性樹脂組成物中の(3)有機過酸化物を5部配合し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0064】
(実施例13)
実施例13では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点130℃、密度0.945g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.05g/10minの高密度ポリエチレンとし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0065】
(実施例14)
実施例14では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点133℃、密度0.960g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)40g/10minの高密度ポリエチレンとし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0066】
(実施例15)
実施例15では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点122℃、密度0.922g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.6g/10minの低密度ポリエチレンに変更し、(2)酸含有樹脂を「無水マレイン酸ポリプロレン」に変更し、且つその配合量を5部とし、(3)有機過酸化物を配合せず、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を「60/40」とし、木質材料を「木質チップ(平均粒径2mm)」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0067】
(実施例16)
実施例16では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)低密度ポリエチレンを、融点122℃の低密度ポリエチレンに変更し、(2)酸含有樹脂の配合量を50部とし、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
【0068】
(実施例17)
実施例17では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)低密度ポリエチレンを、融点131℃、密度0.949g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.05g/10minの低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
【0069】
(実施例18)
実施例18では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)低密度ポリエチレンを、融点131℃、密度0.949g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.05g/10minの低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0070】
(実施例19)
実施例19では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)低密度ポリエチレンを、密度0.923g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)1.00g/10minの低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
【0071】
(実施例20)
実施例20では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)低密度ポリエチレンを、融点123℃、密度0.923g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)30.00g/10minの低密度ポリエチレンに変更し、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0072】
(実施例21)
実施例21では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を「95/5」とし、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例22)
実施例22では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を「70/30」とし、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0073】
(実施例23)
実施例23では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂を「無水マレイン酸変性ポリエチレン」に変更し、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例24)
実施例24では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂を「無水マレイン酸変性ポリエチレン」に変更し、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0074】
(実施例25)
実施例25では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)有機過酸化物(パーオキシケタール)の配合量を0.01部とし、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例26)
実施例26では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)有機過酸化物(パーオキシケタール)の配合量を3.00部とし、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0075】
(実施例27)
実施例27では、木質材料を「キノコ収穫後の菌床(平均粒径2mm)」に変更し、それ以外は実施例15と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例28)
実施例28では、木質材料を「キノコ収穫後の菌床(平均粒径2mm)」に変更し、それ以外は実施例16と同様の方法で木質基材を得た。
【0076】
(比較例1)
比較例1では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点163℃、密度0.910g/cmのホモポリプロピレンとし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0077】
(比較例2)
比較例2では、熱可塑性樹脂組成物中の(1)高密度ポリエチレンを、融点106℃、密度0.918g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重下)7g/10minの低密度ポリエチレンとし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0078】
(比較例3)
比較例3では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂の配合量を60部とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(比較例4)
比較例4では、熱可塑性樹脂組成物中の(2)酸含有樹脂の配合量を3部とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0079】
(木質基材の評価)
木質基材の物性評価は、次の(1)機械強度、(2)耐水性、(3)基材変形、(4)耐寒性、(5)耐熱性、の5点で評価した。
(機械強度)
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:13以上(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0080】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨潤率を測定した。測定値(単位:%)に対する耐水性の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
耐水性の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0081】
(基材変形)
基材変形とは、基材表面が部分的に膨れた状態であり、主にプレス中に基材内部で発生するガスの滞留により発生する。基材変形は基材端部の状態により如実に反映されるため、基材端部の外観を目視評価した。
基材変形の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:空隙なし(合格)
△:痕跡程度の空隙あり(合格)
×:空隙あり(不合格)
【0082】
(耐寒性)
耐寒性とは、5℃環境下に1時間置き、その後JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:13以上(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0083】
(耐熱性)
耐熱性とは、70℃環境下に1時間置き、その後JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:8以上(合格)
△:3以上8未満(合格)
×:3未満(不合格)
【0084】
(評価結果)木質基材の評価結果は、次の表1の通りである。
なお、表中の「酸含有樹脂配合量」及び「有機過酸化物配合量」は、それぞれ熱可塑性樹脂100質量部に対する各成分の配合量を示し、「配合比」は「木質材料/熱可塑性樹脂組成物」を示し、「MFR」はJIS K7210:2014, 190℃, 2.16kgの条件で測定された値を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
5点の物性評価のすべてが「合格」なのは、実施例1~28であり、比較例1~4は1個以上の不合格を含んでいた。
【0087】
(機械強度の評価結果)
機械強度が不合格なものは、比較例2、比較例3及び比較例4の3件であった。
比較例2では、熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを用いており、又、比較例3では「酸含有樹脂」の添加量が多すぎ、又、比較例4では「酸含有樹脂」の添加量が少なすぎることが原因と推測できる。すなわち、「熱可塑性樹脂」の種類と「酸含有樹脂」の過量、少量により、機械強度が低下することが推測できる。
【0088】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものはなかったが、実施例8、実施例11、実施例15~25、27、28、比較例4は、合格の中でも比較的耐水性に劣るものであった。
実施例8、実施例15、実施例17、実施例19、実施例21、実施例23、実施例25、実施例27、比較例4では、「酸含有樹脂」の量が少量であったことにより、耐水性が低下することが推測できる。又、実施例11、実施例16、実施例18、実施例20、実施例22、実施例24、実施例28では「有機過酸化物」を使用しないことが原因と推測できる。
【0089】
(基材変形の評価結果)
基材変形が不合格なものは、比較例1の1件だけであった。
比較例1では、「熱可塑性樹脂」の融点が140℃以上のポリオレフィン樹脂であったことが原因と推測できる。
【0090】
(耐寒性)
耐寒性が不合格なものは、比較例1の1件だけであった。
比較例1では、「熱可塑性樹脂」の融点が140℃以上のポリオレフィン樹脂であったことが原因と推測できる。
【0091】
(耐熱性)
耐熱性が不合格なものは、比較例2の1件だけであった。
比較例2では、「熱可塑性樹脂」の融点が120℃以下のポリオレフィン樹脂であったことが原因と推測できる。
【0092】
(実施例1~28の評価結果)
実施例1~28の評価結果は、5点の物性評価のすべてが「合格」である。
機械強度の評価結果に「△」を含むのは、実施例5、実施例8、実施例9及び実施例14~28の18件である。
実施例5では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「97/3」に変更したことが原因と推測できる。実施例8、実施例15、実施例17、実施例19、実施例21、実施例23、実施例25、実施例27では、酸含有樹脂の配合量を、実施例1の25質量部から5質量部に減じたことが原因と推測できる。実施例9、実施例16、実施例18、実施例20、実施例22、実施例24、実施例26、実施例28では、酸含有樹脂の配合量を、実施例1の25質量部から50質量部に増したことが原因と推測できる。実施例14ではMFRが高いことが原因と推測できる。
【0093】
耐水性の評価結果に「△」を含むのは、実施例8及び実施例11、実施例15~25、27、28の15件である。
実施例8、実施例15、実施例17、実施例19、実施例21、実施例23、実施例25、実施例27では、酸含有樹脂の配合量を、実施例1の25質量部から5質量部に減じたことが原因と推測できる。実施例11、実施例16、実施例18、実施例20、実施例22、実施例24、実施例28では、有機過酸化物の配合量を、実施例1の1質量部から0質量部に減じたことが原因と推測できる。
【0094】
基材変形の評価結果に「△」を含むのは、実施例4、実施例12、実施例13、実施例15~28の17件である。
実施例4、実施例15~20、実施例23~28では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「60/40」に変更したことが原因と推測できる。実施例22では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「70/30」に変更したことが原因と推測できる。実施例12では、有機過酸化物の配合量を、実施例1の1質量部から5質量部に増加したことが原因と推測できる。実施例13では、熱可塑性樹脂のMFRを、実施例1の21g/10minから0.05g/10minに変更したことが原因と推測できる。実施例21では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「95/5」に変更したことが原因と推測できる。つまり、実施例21では、熱可塑性樹脂組成物の含有量が少なく、基材の変形が生じたと考えられる。
【0095】
(総合的な評価結果)
総合的な評価結果としては、実施例1~28は、5点の物性評価のすべてが「合格」であり、表1から明らかなように、本発明の木質基材は優れた機械強度と耐水性、耐寒性、耐熱性を有し、基材変形も問題ないことが示された。
【符号の説明】
【0096】
10 原料混合物
11 木質材料
12 熱可塑性樹脂組成物
20 木質基材
30 化粧材
31 意匠性基材
図1
図2