(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119694
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその押出成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20220809BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20220809BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220809BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20220809BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220809BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20220809BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/12
C08L53/02
C08K5/5425
C08K5/14
C08L71/12
C08J3/24 A CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087048
(22)【出願日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2021016719
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三上 純也
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA13
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4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】押出成形性、圧縮永久歪、柔軟性、押出成形外観に優れる変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物。この変性エラストマー組成物を成分(G):シラノール触媒により架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物。
成分(A): エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物。
成分(A): エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【請求項2】
前記成分(C)の共役ジエンブロックのジエン単量体単位における1,2-結合の割合が20~90質量%である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記成分(A)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融解の終了ピーク温度が115℃以上である、請求項1又は2に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記成分(D)が下記式(1)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性エラストマー組成物。
RSi(R’)3 ・・・(1)
(ただし、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【請求項5】
更に成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項6】
更に成分(H):ポリフェニレンエーテル系樹脂を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の変性エラストマー組成物を成分(G):シラノール触媒により架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物。
【請求項8】
JIS K6253(2012)(Duro-A)におけるデュロA硬度が30以上70以下である、請求項7に記載の架橋エラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の変性エラストマー組成物の押出成形体。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の架橋エラストマー組成物の押出成形体。
【請求項11】
下記成分(A)~(E)を溶融混練する工程を含む変性エラストマー組成物の製造方法。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【請求項12】
下記成分(A)~(E)を溶融混練して変性エラストマー組成物を得る工程、前記変性エラストマー組成物と成分(G):シラノール触媒とを押出成形することにより押出成形体を得る工程、及び前記押出成形体を水雰囲気下に曝して架橋エラストマー組成物よりなる押出成形体を得る工程、を有する押出成形体の製造方法。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその押出成形体に関する。詳しくは、本発明は、押出成形性、圧縮永久歪、柔軟性、押出成形外観に優れる変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物と、これを用いた押出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するエラストマーをいう。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、ゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であることから、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
シール性が求められる用途に使われる場合には良好なゴム弾性、ないしは圧縮永久歪特性を有することが重要であり、そのために多くの研究がなされている。しかし、熱可塑性エラストマーは熱可塑性を確保するためにポリオレフィンのような熱可塑性樹脂を含有することから、熱硬化性ゴムと比較すると圧縮永久歪特性が不十分で、使用できる用途に制限があった。一方、EPDMのような熱硬化性ゴムは優れた圧縮永久歪特性を有するが、長い架橋工程が必要であり、また耐久性に劣るという欠点があった。
【0004】
圧縮永久歪特性を改善した熱可塑性エラストマー組成物として、例えば、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム;非共役ジエン単位を含まないエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレンまたはプロピレン・α-オレフィン共重合体;不飽和シラン化合物を含む組成物を過酸化物でグラフト変性させて得られる変性エラストマー組成物、或いは更にこれを架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1には、前記変性エラストマー組成物、前記架橋エラストマー組成物により、熱硬化性ゴムと同等の圧縮永久歪特性と熱可塑性エラストマーと同様の簡便な成形性を両立させた成形体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物は、柔軟性、押出成形外観に劣るという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされてものであり、その目的は、押出成形性、圧縮永久歪、柔軟性、押出成形外観に優れる変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその押出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム;プロピレン系樹脂;スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;不飽和シラン化合物を含み、過酸化物によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物或いは更にこれを架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物とすることで、押出成形性、圧縮永久歪、柔軟性、押出成形外観に優れる成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[12]に存する。
【0009】
[1] 下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物。
成分(A): エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【0010】
[2] 前記成分(C)の共役ジエンブロックのジエン単量体単位における1,2-結合の割合が20~90質量%である、[1]に記載の変性エラストマー組成物。
【0011】
[3] 前記成分(A)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融解の終了ピーク温度が115℃以上である、[1]又は[2]に記載の変性エラストマー組成物。
【0012】
[4] 前記成分(D)が下記式(1)で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
RSi(R’)3 ・・・(1)
(ただし、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【0013】
[5] 更に成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部含む、[1]~[4]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0014】
[6] 更に成分(H):ポリフェニレンエーテル系樹脂を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部含む、[1]~[5]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0015】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物を成分(G):シラノール触媒により架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物。
【0016】
[8] JIS K6253(2012)(Duro-A)におけるデュロA硬度が30以上70以下である、[7]に記載の架橋エラストマー組成物。
【0017】
[9] [1]~[6]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物の押出成形体。
【0018】
[10] [7]又は[8]に記載の架橋エラストマー組成物の押出成形体。
【0019】
[11] 下記成分(A)~(E)を溶融混練する工程を含む変性エラストマー組成物の製造方法。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【0020】
[12] 下記成分(A)~(E)を溶融混練して変性エラストマー組成物を得る工程、前記変性エラストマー組成物と成分(G):シラノール触媒とを押出成形することにより押出成形体を得る工程、及び前記押出成形体を水雰囲気下に曝して架橋エラストマー組成物よりなる押出成形体を得る工程、を有する押出成形体の製造方法。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、押出成形性、圧縮永久歪、柔軟性、押出成形外観に優れる押出成形体を得ることができる変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物と、これを用いた押出成形体を提供することができる。
本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物と、これを用いた押出成形体は、従来熱硬化性ゴムが使用されている良好なゴム弾性が要求される用途、更に厳しい使用環境に曝される種々の用途への展開が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0023】
[変性エラストマー組成物]
本発明の変性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物であり、更に好ましくは下記成分(F)、成分(H)を含む。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(B):プロピレン系樹脂
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(H):ポリフェニレンエーテル系樹脂
【0024】
<メカニズム>
本発明の変性エラストマー組成物により押出成形性、圧縮永久歪特性に優れ、柔軟で、押出成形外観が良好な押出成形体が得られるメカニズムは以下の通り推定される。
成分(D)、(E)により成分(A)、(C)がグラフトされ、高いゴム弾性を得ることができるので、圧縮永久歪特性に優れる。また、成分(C)、更には成分(F)の使用により、柔軟性、良好な押出成形外観を付与することができる。更に、成分(B)を添加することにより良好な押出成形性(成形安定性)を付与することができる。更に、成分(H)を添加することにより、圧縮永久歪特性を向上させることができる。
【0025】
<成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム>
成分(A)はエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムである。成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムはその構成単位のうちでエチレン単位を最も多く含む共重合体であり、公知のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムが適宜用いられる。エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムのエチレン単位の含有率は、好ましくは60~99質量%であり、より好ましくは60~85質量%である。エチレン単位の含有率が上記範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れる変性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0026】
本発明で用いる成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの密度(JIS K6922-1,2:1997にて測定)は、好ましくは0.855~0.900g/cm3であり、0.860~0.895g/cm3であることがより好ましく、0.860~0.890g/cm3であることが更に好ましく、0.860~0.880g/cm3であることが特に好ましい。密度が上記上限値以下であると柔軟で耐圧縮永久歪に優れる傾向がある。密度が上記下限値以上であれば引張強度に優れる。
【0027】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレンと、炭素数3~10のα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体ゴムが挙げられる。
【0028】
エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムを製造する際に用いられる触媒の種類は特に制限されないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられる。これらの中でも、メタロセン触媒により製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムであることが好ましい。
【0029】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムは、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解の終了ピーク温度(以下「融解終了点」と称す場合がある。)が115℃以上のものが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの融解終了点が115℃以上であると高温でも結晶により形状を保持することが可能であるため、圧縮永久歪特性が良好となる。この観点からエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの融解終了点は115℃以上、特に117℃以上であることが好ましい。ただし、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの融解終了点が過度に高いと、成形昇温時の未溶融のブツや成形冷却時の早期結晶化(メルトフラクチャー)により外観不良となる虞があることから、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの融解終了点は通常145℃以下である。エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムの融解終了点は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0030】
なお、成分(A)の各構成単位の含有率は赤外分光法及びNMR法により求めることができる。後述の成分(B)の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0031】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(2014)に準拠して温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)で、好ましくは0.01~30g/10分である。本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムのMFRの上限を30g/10分以下とすることで、圧縮永久歪が大きくなりすぎることを抑制し、シール性を良好に保持できる。また、MFRの下限を0.01g/10分以上とすることで、本発明の変性エラストマー組成物を溶融押出により製造する場合の樹脂圧力の上昇による生産性の悪化を抑制できる。これらの観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムのMFRは、より好ましくは0.1g/10分以上であり、一方、より好ましくは20g/10分以下である。
【0032】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムは市販品として入手することができる。例えば、ダウ・ケミカル社製エンゲージ(ENGAGE)(登録商標)シリーズ、日本ポリエチレン社製カーネル(登録商標)シリーズ、ダウ・ケミカル社製インフューズ(INFUSE)(商標登録)シリーズ、三井化学社製タフマー(登録商標)シリーズ、三井化学社製エボリュー(商標登録)シリーズから該当品を選択して用いることができる。
【0033】
成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0034】
<成分(B):プロピレン系樹脂>
本発明に用いる成分(B)のプロピレン系樹脂は、樹脂に含まれる全単量体単位に対するプロピレン単位の含有量が40~100質量%のプロピレン系樹脂であり、好ましくはエチレン単位の含有量が0~50質量%のものである。
【0035】
成分(B)のプロピレン系樹脂としては、その種類は特に制限ざれず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のいずれも使用することができる。また、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
成分(B)がプロピレンランダム共重合体又はプロピレンブロック共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの1種又は2種以上を例示することができる。また、成分(B)がプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0037】
成分(B)のポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン単位の含有量は、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。プロピレン単位の含有量が上記下限値以上であることにより、成形性、成形外観が良好となる傾向にある。一方、プロピレン単位の含有量の上限については特に制限されず、通常100質量%である。
【0038】
成分(B)のプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(2014)により、230℃、荷重21.2Nで測定され、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上である。一方、通常100g/10分以下であり、成形性の観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0039】
成分(B)のプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた多段重合法を挙げることができる。この多段重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせて製造してもよい。
【0040】
成分(B)のプロピレン系樹脂は市販品として入手することができる。例えば、プライムポリマー社製Prim Polypro(登録商標)、住友化学社製住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社製プロピレン・エチレンランダムコポリマー、日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社製Moplen(登録商標)、Adflex(登録商標)、Hiflex(登録商標)、Hifax(登録商標)、ExxonMobil社製ExxonMobil PP、Formosa Plastics社製Formolene(登録商標)、Borealis社製Borealis PP、LG Chemical社製SEETEC PP、A.Schulman社製ASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社製INEOS PP、Braskem社製Braskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社製Sumsung Total、Sabic社製Sabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社製TOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社製YUPLENE(登録商標)から該当品を選択して用いることができる。
【0041】
成分(B)のプロピレン系樹脂は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0042】
<成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物>
本発明の変性エラストマー組成物は、更に成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を含む。本発明の変性エラストマー組成物が、成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を含有することにより、更なる圧縮永久歪の低下と柔軟性の向上効果を得ることができる。
【0043】
本発明に用いる成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物は、ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であることが好ましい。
【0044】
成分(C)において、ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は特に限定されないが、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。ここで、成分(C)における「主体とする」とは、ブロック中の当該構成単位の含有率が50質量%以上であることを意味する。なお、ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
【0045】
上記ビニル芳香族化合物以外の単量体としては、エチレン、α-オレフィン等が挙げられる。また、ブロックPが、上記ビニル芳香族化合物以外の単量体を原料として含む場合、その含有率は、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。上記ビニル芳香族化合物以外の単量体の含有率がこの範囲であることにより耐熱性や圧縮永久歪が良好となる傾向がある。
【0046】
ブロックQを構成する単量体の共役ジエンは特に限定されないが、ブタジエン及び/又はイソプレンを主体とすることが好ましく、ブタジエンを主体とすることがより好ましい。なお、ブロックQには、共役ジエン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
【0047】
上記共役ジエン以外の単量体としては、イソブチレン、スチレン等が挙げられる。また、ブロックQが、上記共役ジエン以外の単量体を原料として含む場合、その含有率は、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。上記共役ジエン以外の単量体の含有率がこの範囲であることによりブリードアウトが抑制される傾向がある。
【0048】
成分(C)は、少なくとも2個の上記重合体ブロックPと少なくとも1個の上記重合体ブロックQとを有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。より具体的には、ブロック共重合体のブロックQが有する二重結合を水素添加した水添ブロック共重合体である。ブロックQの水素添加率は特に限定されないが、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
【0049】
本発明における成分(C)は、重合体ブロックPを少なくとも2個と、重合体ブロックQを少なくとも1個有する構造が好適であり、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(2)又は(3)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。
【0050】
P-(Q-P)m ・・・(2)
(P-Q)n ・・・(3)
(式中、Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ示し、mは1~5の整数を示し、nは2~5の整数を示す。)
【0051】
式(2)又は(3)において、m及びnは、ゴム的高分子体としての秩序-無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
【0052】
成分(C)を構成するブロックPとブロックQとの質量割合は任意であるが、本発明の変性エラストマー組成物の良好な触感の点からはブロックPが多い方が好ましく、一方、柔軟性、ブリードアウト抑制、耐圧縮永久歪の点からはブロックPが少ない方が好ましい。
【0053】
成分(C)中のブロックPの含有率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0054】
式(2)及び/又は式(3)で表されるブロック共重合体の水素添加物において、ブロックQがブタジエンのみから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中の1,2-結合(1,2-付加構造)の割合は20~90質量%であるのが、エラストマーとしての性質を保持する上で好ましい。柔軟性と良好な機械強度を得るために、ブロックQのミクロ構造中の1,2-結合の割合は50~90質量%がより好ましく、更に好ましくは60~80質量%である。
【0055】
本発明で用いる成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物は、JIS K7210(2014)に準拠して温度200℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)で、好ましくは10g/10分以下である。本発明で用いる成分(C)のMFRの上限を10g/10分以下とすることで、圧縮永久歪が大きくなりすぎることを抑制し、ゴム弾性を良好に保持できる。また、MFRはより好ましくは5g/10分以下であり、更に好ましくは1g/10分以下である。本発明で用いる成分(C)のスチレン系ブロック共重合体のMFRは0g/10分であってもよい。
【0056】
本発明で用いる成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の密度(JIS K6922-1,2:1997にて測定)は、通常0.88~1.00g/cm3であり、0.89~0.98g/cm3であることが好ましく、0.89~0.96g/cm3であることがより好ましい。密度が上記上限値以下であると柔軟で圧縮永久歪に優れる傾向がある。密度が上記下限値以上であると耐熱性が優れる傾向がある。
【0057】
本発明における成分(C)の製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。例えば、特公昭40-23798号公報に記載された方法によりリチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによってブロック共重合体を得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特開昭59-133203号公報及び特開昭60-79005号公報等に記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。
【0058】
本発明に用いる成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられ、これらの中でも、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物が好適である。
【0059】
成分(C)は市販品として入手することができる。成分(C)の市販品としては、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)-Gシリーズ」、クラレ社製「セプトン(登録商標)シリーズ」、「ハイブラー(登録商標)シリーズ」、旭化成社製「タフテック(登録商標)シリーズ」等が挙げられる。
【0060】
成分(C)は、1種のみを用いてもよく、ブロック組成や物性等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
<成分(D):不飽和シラン化合物>
本発明で用いる成分(D)の不飽和シラン化合物は限定されないが、下記式(1)で表される不飽和シラン化合物が好適に用いられる。
RSi(R’)3 ・・・(1)
【0062】
上記式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0063】
式(1)において、Rは好ましくは炭素数2~10のエチレン性不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6のエチレン性不飽和炭化水素基である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0064】
式(1)において、R’は好ましくは炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルコキシ基である。また、R’のうちの少なくとも1つは、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基である。R’の炭素数1~10の炭化水素基は脂肪族基、脂環族基、芳香族基のいずれであってもよいが、脂肪族基であることが望ましい。また、R’の炭素数1~10のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。R’が炭化水素基の場合、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、シクロヘキシル基等に代表されるアルキル基、又はフェニル基等に代表されるアリール基が挙げられる。R’がアルコキシ基の場合、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β-メトキシエトキシ基が挙げられる。
【0065】
不飽和シラン化合物が前記式(1)で表される場合、3つのR’のうち少なくとも1つはアルコキシ基であるが、2つのR’がアルコキシ基であることが好ましく、全てのR’がアルコキシ基であることがより好ましい。
【0066】
不飽和シラン化合物としては、式(1)で表されるものの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン等に代表されるビニルトリアルコキシシランが望ましい。これはビニル基によって成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムへの変性を可能とし、アルコキシシリル基によって後述の架橋反応が進行するからである。即ち、不飽和シラン化合物によりエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムにグラフト変性されて導入されたアルコキシシリル基が、成分(H)のシラノール触媒の存在下、水と反応して加水分解してシラノール基を生成させ、シラノール基同士が脱水縮合することにより、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム同士が結合して架橋反応が起こる。なお、これらの不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
<成分(E):過酸化物>
成分(E)の過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれる有機過酸化物が挙げられ、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0068】
ハイドロパーオキサイド群にはクメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が含まれ、ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシル)-3-ヘキシン、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が含まれ、ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。パーオキシエステル群にはt-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が含まれ、ケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等が含まれる。
【0069】
これらのうち、本発明の変性エラストマー組成物を製造する際の押出機による溶融混練過程におけるグラフト反応の観点から、熱分解温度が高いラジカル発生剤が好ましい。この観点からジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0070】
成分(E)の過酸化物は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0071】
<成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤>
本発明の変性エラストマー組成物は、柔軟性を増加させるとともに、加工性や流動性、耐油性を向上させる観点から、成分(F)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することができる。
【0072】
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。
【0073】
鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、常温(23±2℃)で液体である液状炭化水素系ゴム用軟化剤が好ましく、常温で液体である液状パラフィン系オイルがより好ましい。
炭化水素系ゴム用軟化剤として液状炭化水素系ゴム用軟化剤を用いることで、本発明の変性エラストマー組成物の柔軟性や弾性を増加させることができ、また加工性や流動性が飛躍的に向上する傾向にある。
【0074】
パラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常10cSt(センチストークス)以上、好ましくは20cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものが好適に用いられる。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0075】
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0076】
<成分(G):シラノール触媒>
本発明の変性エラストマー組成物に成分(G)シラノール触媒を配合することにより、変性エラストマー組成物を分子間で架橋反応させ、架橋エラストマー組成物を得ることができる。即ち、変性エラストマー組成物中の成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、好ましくは更に、成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物にグラフト変性されて導入されたアルコキシシリル基が、シラノール触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、変性されたエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムやスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が互いに結合して耐熱性に優れた架橋エラストマー組成物を生成させることができる。
【0077】
本発明に用いることのできる成分(G)のシラノール触媒としては、金属有機酸塩、チタネート、ホウ酸塩、有機アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、無機酸及び有機酸、並びに無機酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物等が挙げられる。
【0078】
金属有機酸塩としては例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄が挙げられる。チタネートとしては例えば、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ-イソプロピルチタネートが挙げられる。有機アミンとしては例えば、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジンが挙げられる。アンモニウム塩としては例えば、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが挙げられる。ホスホニウム塩としては例えば、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイドが挙げられる。無機酸及び有機酸としては例えば、硫酸、塩酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。無機酸エステルとしては例えば、エチルヘキシルリン酸エステル等のリン酸エステルが挙げられる。
【0079】
これらの中で、好ましくは金属有機酸塩、スルホン酸、リン酸エステルが挙げられ、より好ましくは錫の金属カルボン酸塩(例えばジオクチル錫ジラウレート)、アルキルナフチルスルホン酸、エチルヘキシルリン酸エステルが挙げられる。
【0080】
以上に挙げたシラノール触媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
シラノール触媒は、ポリオレフィンとシラノール触媒とを配合したマスターバッチとして用いることが好ましい。このマスターバッチに用いることのできるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0082】
ポリエチレンとしては、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等の(分岐状又は直鎖状)エチレン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂が挙げられる。
【0083】
これらの中でも本発明においては、耐熱性と強度のバランスに優れた高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、より好ましくはエチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、このエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種又は2種以上のα-オレフィン2~60質量%と、エチレン40~98質量%とを共重合させたものであることがより好ましい。シラノール触媒のマスターバッチには、これらのポリオレフィンの1種のみを用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0084】
シラノール触媒を、ポリオレフィンとシラノール触媒とを配合したマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチ中のシラノール触媒の含有率には特に制限は無いが、通常0.1~5.0質量%程度とすることが好ましい。
【0085】
シラノール触媒含有マスターバッチとしては市販品を用いることができ、例えば、三菱ケミカル(株)製「LZ082」「LZ033」を用いることができる。
【0086】
<成分(H):ポリフェニレンエーテル系樹脂>
本発明で用いる成分(H)のポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂である。
【0087】
【0088】
(ここで、R1,R2,R3,R4は、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0089】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂は、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.1~0.8dl/gであるものが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度はより好ましくは0.2~0.7dl/gであり、さらに好ましくは0.25~0.6dl/gである。ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.1dl/g以上であれば、高温での圧縮永久歪の改良効果を得易く、0.8dl/g以下であれば、成形性を十分に満たすことができる。
【0090】
このようなポリフェニレンエーテル系樹脂としては公知のものを用い得る。具体的な例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)が挙げられる。また、2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体を用いることもできる。これらのうち、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)や、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、特に好ましくはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)である。
【0091】
これらのポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
成分(H)のポリフェニレンエーテル系樹脂としては市販品を用いることができ、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユピタール(登録商標)PX100F」を用いることができる。
【0093】
<配合割合>
本発明の変性エラストマー組成物は、成分(A)100質量部あたり、成分(B)を1~100質量部の割合で含むことが好ましい。成分(B)の含有量が上記下限以上であることで、押出成形性に優れる傾向がある。成分(B)の含有量が上記上限以下であることで圧縮永久歪に優れる傾向がある。このような観点から、成分(A)100質量部あたり、成分(B)を5~80質量部の割合で含むことがより好ましい。
【0094】
本発明の変性エラストマー組成物は、成分(A)100質量部あたり、成分(C)を1~100質量部の割合で含むことが好ましい。成分(C)の含有量が上記下限以上であることで、機械物性や柔軟性や押出外観に優れる傾向がある。成分(C)の含有量が上記上限以下であることで圧縮永久歪に優れる傾向がある。このような観点から、成分(A)100質量部あたり、成分(C)を5~80質量部の割合で含むことがより好ましい。
【0095】
成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて用いられる成分(F)の合計100質量部に対し、0.01~10質量部であることが好ましく、架橋反応を十分に進行させる観点から、より好ましくは0.05~5質量部、更に好ましくは0.1~4質量部である。
【0096】
成分(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて用いられる成分(F)の合計100質量部に対し、0.01~3質量部であることが好ましく、十分な架橋反応を得ると共に良好な成形外観を保つ観点からより好ましくは0.03~2質量部、更に好ましくは0.05~1質量部である。
【0097】
本発明の変性エラストマー組成物が成分(F)を含む場合、成分(F)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して1~100質量部が好ましい。成分(F)の含有量が上記下限以上であると、成分(F)による柔軟性の向上効果を十分に得ることができ、上記上限以下であると表面からのブリードアウトを抑制できる。この観点から、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(F)の含有量は、5~50質量部であることがより好ましい。
【0098】
本発明の変性エラストマー組成物に成分(G)のシラノール触媒を配合する場合、その配合量としては特に限定されるものではないが、成分(G)を除く変性エラストマー組成物100質量部に対し、0.0001~0.01質量部であることが好ましく、0.0001~0.005質量部であることがより好ましい。シラノール触媒の配合量が上記下限以上であると架橋反応が十分に進行し、耐熱性が良好な架橋エラストマー組成物を得やすくなる傾向にあるために好ましく、上記上限以下であると押出機内で早期架橋が起こりにくく、ストランド表面や製品外観の荒れが発生しにくくなる傾向があるために好ましい。
【0099】
本発明の変性エラストマー組成物が成分(H)を含む場合、成分(H)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して1~200質量部が好ましい。成分(H)の含有量が上記下限以上であると、成分(H)による圧縮永久歪の向上効果を十分に得ることができ、上記上限以下であると柔軟性向上の効果を十分に得ることができる。この観点から、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(H)の含有量は、1~100質量部であることがより好ましく、2~70質量部であることが更に好ましく、5~50質量部であることが特に好ましい。
【0100】
<その他の成分>
本発明の変性エラストマー組成物には、上記成分の他に、その他の成分として各種の添加剤や充填剤、成分(A)、(B)、(C)、(H)以外の樹脂やエラストマー等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0101】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、粘度調整剤、発泡剤、滑剤及び顔料を挙げることができる。これらのうち、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤又はリン系の酸化防止剤を含有させるのが好ましい。酸化防止剤は、本発明の変性エラストマー組成物100質量部に対し、0.1~1質量部含有させるのが好ましい。
【0102】
また、その他の樹脂としては、例えば、成分(A)、(B)以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ロジンとその誘導体、テルペン樹脂や石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、成分(C)以外のスチレン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたものが挙げられる。
【0103】
<変性エラストマー組成物の製造・成形>
本発明の変性エラストマー組成物は、成分(A)、(B)、(C)と、成分(D)の不飽和シラン化合物及び成分(E)の過酸化物、必要に応じて更に成分(F)、(H)や上記したその他の成分を、公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーブレンダーで機械的に混合した後、公知の方法で機械的に溶融混練することにより製造することができる。この溶融混練には、バンバリーミキサー、各種ニーダー、単軸又は二軸押出機等の一般的な溶融混練機を用いることができる。また、後掲の実施例に示すように、本発明の組成物を単軸又は二軸押出機等で混練して製造する場合、通常120~240℃、好ましくは120~220℃に加熱した状態で溶融混練を行うことができる。
【0104】
本発明の変性エラストマー組成物において、前述のシラノール触媒を配合し、押出成形、射出成形、プレス成形等の各種成形方法により成形した後、水雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、架橋エラストマー組成物よりなる成形体とすることができる。水雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができ、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水する方法等が挙げられる。
【0105】
架橋反応の進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、通常0~130℃の温度範囲、かつ5分~1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、40~90℃の温度範囲、30分~24時間の範囲である。水分を含む空気を使用する場合、相対湿度は1~100%の範囲から選択される。
【0106】
このようにして得られる本発明の架橋エラストマー組成物の架橋度はシラノール触媒の種類と配合量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調整することができる。
【0107】
<デュロA硬度>
本発明の架橋エラストマー組成物は、JIS K6253(2012)(Duro-A)に準拠して測定したデュロA硬度が30~90であることが好ましい。デュロA硬度が30以上であれば表面硬度に優れる。一方、デュロA硬度が90以下であれば圧縮永久歪に優れる。本発明の架橋エラストマー組成物は、柔軟性の観点から、デュロA硬度は好ましくは70以下であり、より好ましくは65以下である。
【0108】
<用途>
本発明の変性エラストマー組成物と架橋エラストマー組成物の用途は特に限定されないが、グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ウェザーシール、クッションパッド等の自動車部品やパッキン、ガスケット、クッション、防振ゴム、チューブ等の建築、工業部品、その他スポーツ、雑貨用品、医療用部品、食品用部品、家電用部品、電線被覆材として好適に用いることができる。
本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物は特に押出成形外観に優れることから、これらの用途に押出成形体として適用されることが好ましいが、何ら押出成形体に限定されるものではない。
【実施例0109】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0110】
以下の実施例及び比較例において、変性エラストマー組成物の調製に用いた原料及び得られた変性エラストマー組成物の評価方法は次の通りである。
【0111】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0112】
<成分(A)エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム>
(A):ENGAGE(登録商標) XLT8677(ダウ・ケミカル社製)
エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
α-オレフィン:1-オクテン
密度:0.870g/cm3
融解終了点:123℃
MFR:0.5g/10分(190℃、21.2N荷重)
【0113】
<成分(B)プロピレン系樹脂>
(B):ノバテック(登録商標)PP EA9(日本ポリプロ社製)
プロピレン単位含有率:100質量%
MFR:0.5g/10分(230℃、21.2N荷重)
【0114】
<成分(C)スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物>
(C)-1:クレイトン(登録商標)G1651HU(クレイトンポリマー社製)
水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体
MFR:<1g/10分(200℃、49N荷重)
密度:0.91g/cm3(カタログ値)
スチレンブロックの含有率:33質量%(カタログ値)
ブタジエン部の1,2-結合割合:30質量%
ブタジエン部の1,4-結合割合:70質量%
(C)-2:クレイトン(登録商標)G1641HU(クレイトンポリマー社製)
水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体
MFR:<1g/10分(200℃、49N荷重)
密度:0.92g/cm3(カタログ値)
スチレンブロックの含有率:33質量%(カタログ値)
ブタジエン部の1,2-結合割合:70質量%
ブタジエン部の1,4-結合割合:30質量%
(C´)-1:アサプレン(登録商標)T411(旭化成社製)
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体
MFR:0g/10分(200℃、49N荷重)
密度:0.94g/cm3
スチレンブロックの含有率:30質量%
【0115】
<成分(D)不飽和シラン化合物>
(D):KBM-1003(信越化学社製)
ビニルトリメトキシシラン
【0116】
<成分(E)過酸化物>
(E):トリゴノックス101-40C(化薬ヌーリオン社製)
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と有機フィラー60質量%との混合物
【0117】
<成分(F)炭化水素系ゴム用軟化剤>
(F):ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90(出光興産社製)
パラフィン系オイル
40℃の動粘度:95.54cSt
流動点:-15℃
引火点:272℃
【0118】
<成分(G)シラノール触媒>
(G):シラノール触媒マスターバッチ(MB) LZ033(三菱ケミカル社製)
0.12質量%錫触媒(ジオクチル錫ジラウレート)含有直鎖状低密度ポリエチレン
【0119】
<成分(H)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(H):ユピタール(登録商標)PX100F(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)
クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度:0.38dl/g
【0120】
[評価方法]
<成分(A)の融解終了点>
(株)日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計、商品名「DSC6220」を用いて、JIS K7121(2012)に準じて、試料約5mgを加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから補外ピーク終了点(℃)を算出し、融解終了点とした。
【0121】
<変性エラストマー組成物の評価>
(1)押出成形性
押出成形外観評価用のシート成形時のシート形状安定性について評価した。
〇 : 形状安定性合格
× : 形状安定性不合格
【0122】
(2)表面硬度
表面硬度評価用のシートについて、JIS K6253(2012)(Duro-A)に準拠し、デュロA硬度(15秒後)を測定した。
【0123】
(3)圧縮永久歪
圧縮永久歪評価用のシートについて、JIS K6262(2013)の規格に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮、A法(即開放)およびB法(23℃で2時間保持した後に開放)によって測定した。
【0124】
(4)引張試験
引張試験評価用のシートについて、JIS K6251(2017)の規格に準拠し、ダンベル形状3号形、試験速度500mm/minにて切断時引張応力と切断時伸びを測定した。
【0125】
(5)押出成形外観
押出成形外観評価用のシートの表面状態を目視にて確認を行い、表面平滑性について下記基準で評価を行った。
5 : 表面平滑で押出成形外観が非常に優れる。
4 : 表面平滑で押出成形外観が優れる。
3 : 表面平滑性がやや劣るが、押出成形外観が許容範囲内である。
2 : 表面平滑性が悪く、押出成形外観が劣る。
1 : 表面平滑性が非常に悪く、押出成形外観が非常に劣る。
【0126】
[実施例1]
表1の通り、成分(A)を100質量部、成分(B)を14質量部、成分(C)-1を14質量部、成分(D)を2.1質量部、成分(E)を0.11質量部(成分(E)中の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンのみの配合量(実配合量の40%))、成分(F)を14質量部、顔料として大日精化社製PC40Cを成分(A)~(F)の合計量100質量部に対し、3.3質量部添加配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入した。合計25kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を120~200℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して変性エラストマー組成物を製造した。
得られた変性エラストマー組成物100質量部に対して、成分(G)シラノール触媒MBとしてLZ033を4質量部(錫触媒として0.0048質量部)加えた。これをインラインスクリュータイプの射出成形機(日本製鋼社製、商品番号:J110AD)を用い、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、組成物を射出成形して厚さ2mm×幅100mm×長さ100mmのシートを成形した。更に85℃、85%RHの条件で恒温恒湿機に24時間曝して、表面硬度、圧縮永久歪、引張試験の評価用のシートとした。
【0127】
また、押出成形外観に関しては変性ポリオレフィン組成物100質量部に対して、成分(G)シラノール縮合触媒MBとしてLZ033を4質量部(錫触媒として0.0048質量部)加えた触媒MBを含有する変性ポリオレフィン組成物を、IKG製の直径40mm単軸押出機(L/D=28、圧縮比=2.0、フルフライトスクリュー)、幅25mm、厚み1mmのシート形状のダイスを使用し、成形温度がホッパー下:130℃、シリンダー温度160~200℃、ダイス温度200℃、スクリュー回転数30rpmの条件で押出成形を行い押出成形外観評価用のシートを得た。
【0128】
この実施例1の変性エラストマー組成物を用いた評価用シートの各種物性および押出成形外観の評価結果を表1に示す。
【0129】
[実施例2~4、比較例1~2、比較例5~6]
表1又は表2に示す原料配合に変更する以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2~4及び比較例1~2、5~6の変性エラストマー組成物のペレットをそれぞれ得、同様に各評価用シートを成形した。それぞれの各種物性および押出成形外観の評価結果を表1,2に示す。
【0130】
[比較例3]
表2の通り、成分(A)を100質量部、成分(B)を13質量部、成分(D)を1.9質量部、成分(E)を0.1質量部(成分(E)中の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンのみの配合量(実配合量の40%))、顔料として大日精化社製PC40Cを成分(A)~(F)の合計量100質量部に対し3.3質量部添加配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入し、上流からシリンダーブロック10番目の位置から成分(F)を13質量部供給した。合計25kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を120~200℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して変性エラストマー組成物を製造した。
この変性エラストマー組成物を用いて実施例1と同様に各評価用シートを成形した。それぞれの各種物性および押出成形外観の評価結果を表2に示す。
【0131】
[比較例4]
表2に示す原料配合に変更する以外は、比較例3と同様に処理して、比較例3の変性エラストマー組成物を得、同様に各評価用シートを成形した。それぞれの各種物性および押出成形外観の評価結果を表2に示す。
【0132】
[実施例5~6]
表1の通り、成分(B)を20質量部、成分(C)を35質量部、成分(F)を35質量部、成分(H)を10質量部配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入し、合計30kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を210~240℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して組成物を製造した。得られた組成物を100質量部(成分(B)を20質量部、成分(C)を35質量部、成分(F)を35質量部、成分(H)を10質量部を含む)、成分(A)を100質量部、成分(D)を3.0質量部、成分(E)を0.16質量部(成分(E)中の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンのみの配合量(実配合量の40%))、顔料として大日精化社製PC40Cを成分(A)~(H)の合計量100質量部に対し3.3質量部添加配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入し、合計25kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を120~200℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して変性エラストマー組成物を製造した。
この変性エラストマー組成物を用いて実施例1と同様に各評価用シートを成形した。それぞれの各種物性および押出成形外観の評価結果を表1に示す。
【0133】
なお、表1,2中、成分(G)及びその他の添加剤の配合量の記載は省略してある。
【0134】
【0135】
【0136】
[評価結果]
表1に示すとおり、本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物に該当する実施例1~6は良好な押出成形性、圧縮永久歪特性、柔軟性、良好な押出成形外観を有していることがわかる。
【0137】
これに対して、表2に示す通り、比較例1では、成分(B)及び成分(C)が含有されていないことにより、押出成形時の形状安定性が悪くなり、押出成形性が悪化した。成分(C)を含まない比較例2~4のうち、比較例2では、成形性に優れるが押出外観や柔軟性に劣る結果となった。比較例3、4では、成分(F)を含むことで、比較例2と比較して柔軟となったが、切断時伸びや押出成形外観に劣る結果となった。成分(C)の代わりに水素添加されていないスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体を用いた比較例5、6のうち、比較例5では、実施例1,2と比較し、柔軟性と圧縮永久歪に劣る結果となった。比較例6では、実施例3,4と比較し、柔軟性と圧縮永久歪に劣る結果となった。
本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物は、押出成形性、耐圧縮永久歪、触感、射出成形外観に優れるため、これらが要求される各種用途、例えばグラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ウェザーシール、クッションパッド等の自動車部品、建築ガスケット等の土木・建材部品、スポーツ用品、工業用部品、家電部品、医療用部品、食品用部品、医療用機器部品、電線、雑貨において、広く且つ有効に利用可能である。