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特開2022-119723薬剤送達デバイス、流体プルームを制御する方法及び鼻腔注入方法
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  • 特開-薬剤送達デバイス、流体プルームを制御する方法及び鼻腔注入方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119723
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス、流体プルームを制御する方法及び鼻腔注入方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61M11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004963
(22)【出願日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】17/167,351
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン・ブルース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジリ・マニシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ・ブライアン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サード・マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ミルゲイト サード・ロバート ダブリュー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬剤送達デバイスおよび薬剤送達デバイスの使用方法を提供する。
【解決手段】薬剤送達デバイス100は、カートリッジ本体102と、カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズル104と、カートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジ106とを含み、カートリッジは、液体薬剤と、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッド112とを含む。プロセッサ114は、ロジックボード108または流体噴射ヘッドに配置され、コントロールアルゴリズムを実行して、流体ジェット発射周波数、バースト長、および流体ジェット発射バースト遅延のうちの1つまたはそれ以上を制御することによって、噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するよう噴射ヘッドを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズルと、
前記カートリッジ本体の中に配置され、液体薬剤を含み、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む噴射ヘッドが取り付けられた流体ジェット噴射カートリッジと、
ロジックボードまたは前記噴射ヘッドに配置され、コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延からなる群より選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを制御することによって、前記噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するよう前記噴射ヘッドを制御するプロセッサと、
を含む薬剤送達デバイス。
【請求項2】
前記薬剤送達デバイスから噴射される各流体液滴が、約2~約24pLの範囲の体積を有する請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記噴射ヘッドが、約2~約20KHzの範囲の発射周波数を有する請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記バースト長が、バースト毎に約20~約250回の範囲である請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記流体ジェット発射バースト遅延が、約0msec~約15msecの範囲である請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
流体噴射デバイスからの流体プルームを制御して、薬剤を送達する方法であって、
カートリッジ本体、前記カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズル、および前記カートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジを有する前記流体噴射デバイスを提供し、前記流体ジェット噴射カートリッジが、液体薬剤を含み、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッドを前記流体ジェット噴射カートリッジに取り付け、前記流体噴射ヘッドを前記流体出口ノズルと流体流連通状態にすることと、
前記流体噴射ヘッドと電気通信したプロセッサを提供することと、
コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延からなる群より選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを選択し、前記流体出口ノズルを介して前記噴射ヘッドから噴射された流体の流体プルーム特性を変更するようプロセッサを構成することと、
前記流体噴射デバイスを起動し、前記薬剤を患者に送達することと、
を含む方法。
【請求項7】
前記薬剤が、約25~約60度の範囲の流体プルーム角で前記流体噴射デバイスから噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、約10~約25cmの流体プルーム高さで前記流体噴射デバイスから噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、前記流体噴射ヘッドから約1~約25cmの流体ジェット長で前記流体噴射デバイスから噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、前記薬剤を前記患者の鼻腔の鼻甲介領域に送達するプルーム特性で噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が、前記薬剤を前記患者の鼻腔全体に均一に分配するプルーム特性で噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、前記患者への薬物投与量送達速度を速めるプルーム特性で噴射される請求項6に記載の方法。
【請求項13】
薬剤の鼻腔注入方法であって、
カートリッジ本体、前記カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズル、および前記カートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジを有する流体噴射デバイスを提供し、前記流体ジェット噴射カートリッジが、液体薬剤を含み、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッドを前記流体ジェット噴射カートリッジに取り付け、前記流体噴射ヘッドを前記流体出口ノズルと流体流連通状態にすることと、
前記流体噴射ヘッドと電気通信したプロセッサを提供することと、
コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延からなる群より選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを選択し、前記流体出口ノズルを介して前記噴射ヘッドから噴射された流体の流体プルーム特性を変更するようプロセッサを構成することと、
前記流体噴射デバイスを起動して、前記薬剤を人の前記鼻腔に送達することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記薬剤が、前記薬物を前記鼻腔の鼻甲介領域に送達するプルーム特性で噴射される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が、前記薬物を前記鼻腔全体に均一に分配するプルーム特性で噴射される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、前記鼻腔への薬物投与量送達速度を速めるプルーム特性で噴射される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が、約25~約60度の範囲の流体プルーム角で前記流体噴射デバイスから噴射される請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、約10~約25cmの流体プルーム高さで前記流体噴射デバイスから噴射される請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、前記流体噴射ヘッドから約1~約25cmの流体ジェット長で前記流体噴射デバイスから噴射される請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入薬送達システムに関するものであり、特に、吸入に用いる流体ジェット薬物送達システムのプルーム特性の変更に関するものである。
【背景技術】
【0002】
点鼻スプレーは、薬物を患者に送達するための重要な方法になっている。このような点鼻スプレーは、静脈注射や注射による薬物の投与よりも使用しやすい。また、点鼻スプレーは、薬物の経口投与に比べて高い生物学的利用能を提供する。点鼻スプレーによって送達された薬物は、即効性の高い血流に直接入るため、点鼻スプレーによる薬物の吸収は、経口投与された薬物よりも急速に行われる。
【0003】
図1は、人の鼻腔10の解剖図の、縮尺通りではない断面図である。脳12の一部を鼻腔10の上方に示す。嗅球14は、脳12と篩板16の間に配置される。嗅粘膜は、篩板16の下方にある。鼻腔は、また、上鼻甲介20、中間鼻甲介22、呼吸粘膜24、および下鼻甲介26を含む。項目28は、口蓋を示す。薬剤ミストを注入すると、鼻孔30および扁平上皮粘膜32を通って、鼻腔10に入る。点鼻スプレーを使用して血流に薬物を適切に送達するために、高度に血管新生化された呼吸粘膜24に薬物を送達しなければならない。高度に血管新生化された2つの領域は、嗅部と呼吸部である。呼吸部は、薬物の吸収に利用できる表面面積を増やす鼻甲介を含む。
【0004】
鼻腔10内に薬物を堆積させるには、比較的小さく、低速の流体液滴が最も好ましいとされている。高慣性の流体液滴は、一直線に移動し、狙った地点にしか到達しない傾向にある。低慣性の流体液滴は、空気抵抗と気流の影響を受けて、薬物送達範囲をより均一になるように鼻腔全体に浮遊する可能性が高くなる。
【0005】
堆積範囲を増やすことのできる薬物の経鼻送達のもう一つの面は、流体液滴のプルーム角である。より広いプルーム角は、より大きなミスト形成を提供するため、鼻腔内の薬物送達範囲を広げると考えられている。鼻腔を介して薬物を送達する従来の方法は、薬用スポイト、スプレーチップ付きマルチスプレーボトル、スプレーチップ付き単回投与注射器、および乾燥粉末システムを含む。したがって、従来の薬物送達デバイスは、通常、特定の薬物を鼻腔に送達するよう設計されており、各デバイスは、鼻腔ルートを通して広範囲の薬物を送達するのには適していない。従来の経鼻薬物送達方法の多くは、流体のミストを鼻腔に注入する高圧容器に頼っている。したがって、薬物送達デバイスは、通常、特定の薬物用に設計されており、異なる薬物の投与には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鼻腔ルートを通して薬物を送達する様々なデバイスが使用可能であるにもかかわらず、速度、流体噴射時間、およびプルーム角の範囲にわたって様々な薬物を送達するために調整することのできる単一の経鼻薬物送達デバイスが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した点から、本発明の1つの実施形態は、薬剤送達デバイスおよび薬剤送達デバイスの使用方法を提供する。
【0008】
1つの実施形態において、薬剤送達デバイスは、カートリッジ本体と、カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズルと、カートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジとを含み、カートリッジは、液体薬剤と、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッドとを含む。プロセッサは、ロジックボードまたは流体噴射ヘッドに配置され、コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延から選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを制御することによって、噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するよう噴射ヘッドを制御するために提供される。
【0009】
1つの実施形態において、流体噴射デバイスからの流体プルームを制御して、薬剤を送達する方法を提供する。この方法は、カートリッジ本体、カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズル、およびカートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジを有する流体噴射デバイスを提供することを含む。流体ジェット噴射カートリッジは、液体薬剤を含む。複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッドを流体ジェット噴射カートリッジに取り付け、流体噴射ヘッドを流体出口ノズルと流体流連通状態にする。流体噴射ヘッドと電気通信したプロセッサを提供する。コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延から選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを選択し、流体出口ノズルを介して噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するようプロセッサを構成する。流体噴射デバイスを起動して、薬剤を患者に送達する。
【0010】
別の実施形態において、薬剤の鼻腔注入方法を提供する。この方法は、カートリッジ本体、カートリッジ本体に取り付けられた流体出口ノズル、およびカートリッジ本体の中に配置された流体ジェット噴射カートリッジを有する流体噴射デバイスを提供することを含む。流体ジェット噴射カートリッジは、液体薬剤を含む。複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む流体噴射ヘッドを流体ジェット噴射カートリッジに取り付け、流体噴射ヘッドを流体出口ノズルと流体流連通状態にする。流体噴射ヘッドと電気通信したプロセッサを提供する。コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延から選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを選択し、流体出口ノズルを介して噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するようプロセッサを構成する。流体噴射デバイスを起動して、薬剤を人の鼻腔に送達する。
【0011】
いくつかの実施形態において、噴射ヘッドから噴射される各流体液滴は、約2~約24pLの範囲の体積を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、各流体噴射器は、約2~約20KHzの範囲の発射周波数を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、バースト長は、バースト毎に約20~約250回の範囲である。
【0014】
いくつかの実施形態において、流体ジェット発射バースト遅延は、約0msec~約15msecの範囲である。
【0015】
いくつかの実施形態において、薬剤は、約25~約60度の範囲の流体プルーム角でデバイスから噴射される。
【0016】
いくつかの実施形態において、薬剤は、約10~約25cmの流体プルーム高さでデバイスから噴射される。
【0017】
いくつかの実施形態において、薬剤は、流体噴射ヘッドから約1~約25cmの流体ジェット長でデバイスから噴射される。
【0018】
いくつかの実施形態において、薬剤は、薬物を患者の鼻腔の鼻甲介領域に送達するプルーム特性で噴射される。
【0019】
いくつかの実施形態において、薬剤は、薬物を患者の鼻腔全体に均一に分配するプルーム特性で噴射される。
【0020】
いくつかの実施形態において、薬剤は、患者への薬物投与量送達速度を速めるプルーム特性で噴射される。
【発明の効果】
【0021】
ここで説明する薬剤送達デバイスの利点は、異なる流体特性を有する幅広い種類の薬物に使用できることである。このデバイスは、特定の流体噴射器の特性を変更して、経鼻注入に用いる流体ミストのプルーム角、流体ジェット長、および/またはプルーム高さを変更することにより、調節可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
図1】人の鼻腔および頭骨の一部を示す、縮尺通りではない断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態に係る薬剤送達デバイスの、縮尺通りではない断面図である。
図3】異なる操作条件に対する流体ジェットおよびプルーム特性を示す図2の薬剤送達デバイスの概略図である。
図4】異なる操作条件に対する流体ジェットおよびプルーム特性を示す図2の薬剤送達デバイスの概略図である。
図5】異なる操作条件に対する流体ジェットおよびプルーム特性を示す図2の薬剤送達デバイスの概略図である。
図6図2の薬剤送達デバイスの噴射器発射周波数の変化に対する流体プルーム角における変化を示したグラフである。
図7図2の薬剤送達デバイスの噴射器発射周波数の変化に対する流体プルーム高さにおける変化を示したグラフである。
図8図2の薬剤送達デバイスの噴射器発射周波数の変化に対する流体ジェット長における変化を示したグラフである。
図9図2の薬剤送達デバイスの噴射ヘッドの一部の、縮尺通りではない平面図である。
図10図2の薬剤送達デバイスの流体ジェット発射バースト間の時間遅延の変化に対する流体プルーム高さにおける変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的のため、以下の項目を定義する:
a)プルームは、空気抵抗と気流の影響を受けて、鼻腔全体に浮遊し、範囲をより均一にする可能性の高い低慣性の流体液滴の不規則な方向性を持つミストのことを意味する;
b)プルーム角は、プルームにおける流体液滴の不規則な方向性を持つミストの円錐形体積の角度の単位である;
c)プルーム高さは、流体噴射ヘッドの出口からプルームの総移動距離まで測定したプルームにおける流体液滴のミストの全高の単位である;
d)流体ジェット長は、噴射ヘッドの出口からプルーム角の頂点に噴射された高慣性流体液滴の長さの単位である;
e)バーストは、流体液滴が個々のノズルから噴射された回数として定義される。流体のバーストは、流体噴射器が十分な大きさの一連の電圧パルスによって発射され、それに関連するノズルを介して流体が噴射された時に発生する;
f)バースト長は、各流体噴射器が発射されたバースト毎の合計回数として定義される;
g)バースト遅延は、個々のバースト間の時間の量として定義される。
【0024】
図2において、薬剤送達デバイスの100の例を、縮尺通りではない断面図で示す。デバイスは、カートリッジ本体102を含み、カートリッジ本体102に取り付けられた流体出口ノズル104を有する。流体ジェット噴射カートリッジ106は、カートリッジ本体102の中に配置される。流体ジェット噴射カートリッジ106は、デバイス100によって投与される液体薬剤を含む。ロジックボード108は、カートリッジ本体102の中に配置され、ロジックボードコネクタ110を介してロジックボード108上の噴射ヘッド112に電気接続される。以下に詳細に説明するように、噴射ヘッド112は、複数の流体噴射ノズルおよびそれに関連する流体噴射器を含む。プロセッサ114は、ロジックボード108の上に、または噴射ヘッド112の上に配置され、コントロールアルゴリズムを実行して、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延から選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを制御することによって、噴射ヘッドから噴射された流体のプルーム特性を変更するよう噴射ヘッド112を制御する。カートリッジ本体102は、ロジックボード108に電気接続され、噴射ヘッド112に電力を提供する充電式電池116を含んでもよい。電源スイッチ118は、デバイス100を起動するために使用される。異なる薬剤流体と一緒に使用できるようにプロセッサを再プログラミングするUSB入力120を含んでもよい。起動ボタン122は、使用者の要求に応じて薬剤の送達を開始するために使用することができる。
【0025】
上述したデバイス100と一緒に、幅広い種類の噴射ヘッド112を使用することができる。したがって、噴射ヘッド112は、サーマルジェット噴射ヘッド、バブルジェット(登録商標)噴射ヘッド、または圧電ジェット噴射ヘッドから選択される。上述した各噴射ヘッドは、要求に応じて流体のスプレーを生成することができ、以下に説明するように、様々な流体プルーム特性を提供するようプログラミングされる。反対に、従来のスプレーポンプは、特定の薬物送達に応用するために機械的に固定されるため、通常、様々な流体プルーム特性を提供するために変更することができない。
【0026】
流体液滴を一直線に2~3mm噴射して、紙等の基板に到達するよう設計された従来のインクジェット噴射ヘッドとは異なり、ここで説明するデバイス100は、流体液滴をミストとしてさらに気流として噴射するよう設計されるため、液滴が鼻腔の粘膜領域に均一に到達する。図3は、噴射ヘッド202を有し、そこから流体を噴射して、周辺気流に浮遊する流体ミストの比較的高速の流体ジェットストリーム204および低速のプルーム206を形成する流体ジェッド噴射デバイス200の概略図である。プルーム206の特性、例えば、プルーム高さPHおよびプルーム角PA、ならびに流体ジェットストリーム長JLは、噴射ヘッド202がどのように操作されるかによって影響を受ける。例えば、噴射ヘッドの発射周波数は、プルーム高さPHに影響を与える可能性がある。発射周波数を高くすると、プルーム206が広くなり、流体ジェットストリーム長JLが短くなる。液滴は、噴射ヘッド202から噴射されるため、プルーム206が広くなると、液滴間で衝突が生じる可能性がある。プルーム206に影響を与える別の特性は、噴射ヘッド202からの流体液滴の混入である。高速の流体液滴は、噴射ヘッド202に垂直に気流を生成するため、噴射ヘッド202から噴射される次の液滴を混入させて、噴射ヘッド202から液滴をさらに引き出す傾向がある。したがって、空気の混入は、流体ジェットストリーム204とプルーム206の両方に影響を与える可能性がある。
【0027】
図4図8に示すように、発射周波数は、96個の流体出口ノズルが付いた噴射ヘッド202を有する噴射デバイス200のプルーム角PA、プルーム高さPH、および流体ジェットストリーム長JLに影響を与えている。各ノズルは、液滴毎に約2~約24pLを吐出する大きさである。いくつかの実施形態において、各ノズルは、液滴毎に約4pLを吐出する大きさである。例えば、図4において、噴射デバイス200を6KHzの周波数で操作した結果、プルーム角PAは、約5度、プルーム高さPHは、約21.5cm、流体ジェットストリーム長JLは、約15cmであった(図6図8)。図5において、噴射デバイス200を18KHzの周波数で操作した結果、プルーム角PAは、約25度、プルーム高さPHは、約18cm、流体ジェットストリーム長JLは、約4.5cmであった(図6図8)。したがって、上に明示されるように、より高い周波数を使用して、より広いプルーム206およびより短い流体ジェットストリーム204を生成することができ、より低い周波数を使用して、より狭いプルーム206およびより長い流体ジェットストリーム204を生成することができる。より高い周波数を使用して、分配速度を速め、薬剤の処方量に対する送達時間を減らすこともできる。
【0028】
流体ジェットストリームおよびプルーム特性に影響を与える別のパラメータは、バースト長である。図9において、ノズル毎に4pLの液滴を噴射する噴射ヘッド202の一部を平面図で示す。噴射ヘッド202は、複数の流体出口ノズル208を含むノズルプレートを含み、各流体出口ノズル208は、流体噴射器210の上方に配置される。流体出口ノズル208を介して噴射される流体は、流体カートリッジから流体ビア212を通って流体噴射器210を含む噴射室214に供給される。96個の流体出口ノズルが付いた噴射ヘッド202を有する噴射デバイス200を18KHzで操作すると、バースト毎に各流体噴射器210が起動される総数が増えるため、噴射ヘッド202から別の流体ジェットストリーム204を生成できることが明らかになった。例えば、各流体噴射器をバースト毎に25、50、75、100、および150回起動した時は、別の流体ジェットストリーム204の生成に失敗したが、各流体噴射器をバースト毎に200回起動した時は、はっきりと見える流体ジェットストリームが提供された。別の流体ジェットストリーム204は、より多くの流体液滴が流体ジェットストリーム内に混入した時に発生し、それにより、ジェットストリームから生じるプルームに送達される流体の投与量が増える。
【0029】
最後に、噴射ヘッド202の50個のノズル208からの流体ジェット発射バースト間の時間遅延を利用して、プルーム特性を変更できることが明らかになった。上述したように、各ノズルは、バースト毎に4pLの液滴を噴射するよう設計されている。図10に示すように、バースト遅延が1から10msecに増加した時、プルーム高さPHは、約17cmから約12cmに減少した。同様に、プルーム角PAは、約27度から約18度に減少した。バースト遅延が10msecの時も、液滴の混入があると思われる。しかしながら、バースト遅延が増えるにつれて、混入が減少し、それにより、プルーム高さPHとプルーム角PAが減少する。一般的なバースト遅延は、0~15msecの範囲である。バースト遅延がゼロの時、噴射ヘッドから流体を噴射する連続的なバーストが1つ存在する。当然のことながら、発射バースト遅延が長くなると、所定量の薬剤を患者に送達する時間が増える。したがって、本実施形態の利点は、流体ジェット噴射ヘッドを調整して、薬剤送達デバイスから様々な薬物を投与し、薬物の径鼻送達の応用を広げる多様なプルーム特性を達成できることである。プルーム制御は、(a)流体ジェット発射周波数、(b)バースト長、および(c)流体ジェット発射バースト遅延から選択される1つまたはそれ以上の操作パラメータを変更することによって達成することができる。したがって、(a)流体ジェット発射周波数および(b)バースト長、(a)流体ジェット発射周波数および(c)流体ジェット発射バースト遅延、(b)バースト長および(c)流体ジェット発射バースト遅延の操作パラメータの組み合わせ、または(a)、(b)、および(c)の全ての操作パラメータの組み合わせを使用して、薬物送達デバイスから吐出される流体液滴のプルームおよびジェット特性を変更することができる。さらに、操作パラメータ(a)、(b)、および(c)を任意の順番で並べ替えても、鼻腔の異なる部分に流体を堆積させることができる。このように変更することによって、鼻腔の異なる部分に所定量の流体を堆積させるようプルーム特性を制御するための外部機構を必要とせずにデバイスを調整することができる。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その内容が明確に他の意味であることを示していない限り、複数の指示対象物を含むことを注記しなければならない。ここで使用する場合、用語「含む(include)」およびその文法上の変形は、リスト内で項目を記述することが、リストされた項目に置換または追加され得る他の同様の項目を除外するなど、限定することを意図したものではない。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、パーセンテージ、または割合、および他の数値を表わす全ての数字は、全ての場合において用語「約(about)」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、特にそうではないことが示されない限り、前述の明細書および添付の実施形態の一覧に記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る。最低限でも、また特許請求される実施形態の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、また通常の概算方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0032】
特定の実施形態を記述してきたが、現在予期しないか、または予期することができない代替、修飾形、変形、改良物、および実質的な相当物が本出願者または他の当業者に思い浮かぶ可能性がある。したがって、出願した、および補正を行うことが可能な添付の特許請求の範囲にそのような代替、修飾形、変形、改良物、および実質的な相当物の全部を包含させることを意図する。
【符号の説明】
【0033】
10:鼻腔
12:脳
14:嗅球
16:篩板
18:嗅粘膜
20:上鼻甲介
22:中間鼻甲介
24:呼吸粘膜
26:下鼻甲介
28:口蓋
30:鼻孔
32:扁平上皮粘膜
100:薬剤送達デバイス
102:カートリッジ本体
104:流体出口ノズル
106:流体ジェット噴射カートリッジ
108:ロジックボード
110:ロジックボードコネクタ
112:噴射ヘッド
114:プロセッサ
116:充電式電池
118:電源スイッチ
120:USB入力
122:起動ボタン
200:噴射デバイス
202:噴射ヘッド
204:流体ジェットストリーム
206:プルーム
208:流体出口ノズル
210:流体噴射器
212:流体ビア
214:噴射室
JL:流体ジェットストリーム長
PA:プルーム角
PH:プルーム高さ
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