(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119736
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】船舶用の推進制御装置
(51)【国際特許分類】
B63H 20/00 20060101AFI20220809BHJP
B63H 25/02 20060101ALI20220809BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20220809BHJP
B63B 79/40 20200101ALI20220809BHJP
【FI】
B63H20/00 803
B63H25/02 A
B63H25/42 B
B63B79/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010955
(22)【出願日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】21155277.3
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518415071
【氏名又は名称】ボルボ ペンタ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】VOLVO PENTA CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウィングレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】船舶を制御するための速度コマンドを提供するように動作可能な推進制御装置を提供する。
【解決手段】軸V上を延び、ニュートラル位置104から最大前進位置106までオペレータによって手動で傾けられるように適合された可動レバー102を含み、前記ニュートラル位置と前記最大前進位置との間の操作レンジ120は中間位置126によって分けられた第1のサブレンジ122および第2のサブレンジ124を含むとともに、前記第1のサブレンジが前記ニュートラル位置と前記中間位置との間に配置されており、前記中間位置は、前記ニュートラル位置とは異なり、前記船舶のためのプリセット運転パラメーターに応じて調整可能であり且つ選択され、前記可動レバーが前記第2のサブレンジ内で解放された場合に、前記可動レバーを前記中間位置に自動的に復帰させ、および前記中間位置に留まらせるように構成された手段をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(300)を制御するための速度コマンドを提供するように動作可能な推進制御装置(100)であって、
軸(V)上を延び、ニュートラル位置(104)から最大前進位置(106)までオペレータによって手動で傾けられるように適合された可動レバー(102)を含み、
前記ニュートラル位置と前記最大前進位置との間の操作レンジ(120)は中間位置(126)によって分けられた第1のサブレンジ(122)および第2のサブレンジ(124)を含むとともに、前記第1のサブレンジが前記ニュートラル位置と前記中間位置との間に配置されており、
前記中間位置は、前記ニュートラル位置とは異なり、前記船舶のためのプリセット運転パラメーターに応じて調整可能であり且つ選択され、
前記可動レバーが前記第2のサブレンジ内で解放された場合に、前記可動レバーを前記中間位置に自動的に復帰させ、および前記中間位置に留まらせるように構成された手段をさらに含む、
推進制御装置。
【請求項2】
前記可動レバーを前記中間位置に自動的に復帰させるように構成された手段は、ばねを含む、請求項1に記載の推進制御装置(100)。
【請求項3】
前記可動レバーをクロスオーバーに自動的に復帰させるように構成された手段は、電気制御式のステッピングモータを含む、請求項1に記載の推進制御装置(100)。
【請求項4】
前記中間位置を手動で調整するための手段をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項5】
前記中間位置を電気的に調整するための手段をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項6】
前記可動レバーは、前記第1のサブレンジ内で解放されても前記第1のサブレンジ内の位置に留まる、請求項1から5のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項7】
前記可動レバーが前記第1のサブレンジ内で動かされると、予め定義されたレベルの摩擦抵抗が加えられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項8】
前記中間位置を電気的に調整するための手段に接続された制御ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットは、
前記船舶のための前記プリセット運転パラメーターを受信し、および、
受信されたプリセット運転パラメーターに基づいて前記中間位置を電気的に調整するための手段を動作させる、
ように適合されている、
請求項5に記載の推進制御装置(100)。
【請求項9】
前記中間位置を電気的に調整するための手段は、アクチュエータを含む、請求項1に記載の推進制御装置(100)。
【請求項10】
前記プリセット運転パラメーターは、船舶用のナビゲーション制御システムから受信される、請求項8または9に記載の推進制御装置(100)。
【請求項11】
前記可動レバー(102)は、さらに前記ニュートラル位置(104)から最大後進位置(108)まで手動で傾けられるように適合されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項12】
前記可動レバー(102)は、さらに前記軸のまわりを回転可能なように適合されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)。
【請求項13】
船舶(300)の船体に装備された推進ユニットを制御するように適合された船舶推進制御システムであって、
請求項1から12のいずれか1項に記載の推進制御装置(100)と、
デジタルマップを含むナビゲーション制御システムと、
を含み、
前記ナビゲーション制御システムを用いて前記船舶の現在の座標を判定し、
前記ナビゲーション制御システムを用い、前記現在の座標および前記デジタルマップに基づいて制限速度を決定し、および、
前記制限速度に基づいて前記推進制御装置の前記中間位置を調整する、
ように適合されている、船舶推進制御システム。
【請求項14】
推進ユニット(308、310、312および314)と、
請求項13に記載の船舶推進制御システムと、
を含む、船舶(300)。
【請求項15】
前記推進ユニットは、少なくとも第1の推進ユニット(308)および第2の推進ユニット(310)を含む、請求項14に記載の船舶(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、船舶の速度および取り得る方向を制御するように動作可能な推進制御装置に関する。本開示はまた、船舶の船体に装備される推進ユニットを制御する船舶推進制御システムであって、推進制御装置から入力コマンドを受信するように適合された船舶推進制御システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
最近の船舶には、船舶を駆動するための複数の推進ユニットが装備されていることが多い。典型的な実装において、船舶は、船舶の方向を制御するための操舵輪(ステアリングホイール)と、推進ユニットの速度および方向を制御するための可動レバーを有する少なくとも1つの推進制御装置とを含む。
【0003】
このような実装の一例が米国特許第9、248、898号に開示され、そこでは、オペレータ入力デバイスのレバーが、ニュートラルデテント位置と、前進デテント位置との間を移動可能である。これらのデテント位置の導入は、レバーが所与のデテント位置に移動されたときに抵抗を与えることにより、レバーが新たなシフト位置に移動されたときにそのことを船舶のオペレーター(操縦者)が身体的に検出ことを可能にする。通常、ニュートラルデテント位置と前進デテント位置との間でレバーが移動されるときには概して線形の抵抗力が与えられる。
【0004】
米国特許第10、377、458号には、船舶用の推進制御装置をさらに発展させたものが開示されている。米国特許第10、377、458号においては、ニュートラル位置から最大前進位置までの操作レンジをローレンジとハイレンジとに分け、レバーがローレンジにあるときは低い抵抗力が加えられ、レバーがハイレンジにあるときは高い抵抗力が加えられるようにすることが提案されている。このような実装によれば、船舶を操作しているときの触覚的な体験が改善されて、現在要求されている中間速度を本質的にオペレータに知らせることができる。
【0005】
米国特許第10、377、458号で提示された解決策は、レバーを動かすときにフィードバックが知覚されることで、特に未熟なオペレータにとって、現在どのように船舶が操作されているかついてのオペレータの認識を大幅に改善することになる。しかし、米国特許第10、377、458号で提示された解決策は、レバーが動かされたときにフィードバックを提供することに限定されている。したがって、レバーがすでに特定の位置に動がされていた場合、オペレータは、他のフィードバック手段に頼って、要求されている現在の速度についての情報を得る必要がある。上記のことを考慮すると、船舶の制御を改善するように適合された推進制御装置に関し、特に、船舶の操作の全体的な信頼性の実現に目を向けると、さらなる改善の余地があると思われる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の別の態様によれば、上記のことは、船舶を制御するための速度コマンドを提供するように動作可能な推進制御装置によって少なくとも部分的に改善される。推進制御装置は、軸上を延び、ニュートラル位置から最大前進位置までオペレータによって手動で傾けられるように適合された可動レバーを含み、ニュートラル(中立)位置と最大前進位置との間の操作レンジは中間位置によって分けられた第1のサブレンジおよび第2のサブレンジを含み、第1のサブレンジはニュートラル位置と中間位置との間に配置され、中間位置は、ニュートラル(中立)位置とは異なり、船舶のためのプリセット運転パラメーター(pre-set operational parameter)に応じて調整可能であり且つ選択され、推進制御装置は、可動レバーが第2のサブレンジ内で解放された場合に、可動レバーを中間位置に自動的に復帰させ、および中間位置に留まらせるように構成された手段をさらに含む。
【0007】
本開示によれば、技術的思想は、レバーが長時間にわたって意図しない位置に留まらないようにして、船舶の操作性を改善することを可能とするものである。むしろ、上記で定義されるように、オペレータが可動レバーを解放すると、可動レバーは予め定義された中間位置に自動的に復帰する。この自動復帰機能によって、オペレータは、通常、抵抗だけではなく、例えば、自動復帰機能がばね装置(または同様のもの)を用いて実装された場合には、「対抗力」をも知覚することになる。
【0008】
本開示の文脈では、自動復帰機能は、ニュートラル位置と最大前進位置との間の操作レンジ全体にわたって実装されるわけではないことも理解されたい。そのような実装では、船舶を確実に前進させるため、オペレータは常に可動レバー上に手を置く必要が生じるからである。それゆえ、本開示に従って、自動復帰機能は、第2のサブレンジ内でのみ、すなわち、中間位置と最大前進位置との間でのみ、アクティブ(有効)になるという利点を提供する。ニュートラル位置と中間位置との間である第1のサブレンジ内では、概してオペレータがレバーから手を放したときに可動レバーが「留まる」ことを保証し、それに加えて摩擦抵抗を適用することが望ましい。
【0009】
本開示の実装態様に従うさらなる利点は、本開示が、船舶のためのプリセット運転パラメーターに応じて中間位置を調整および選択することを可能にすることである。例えば速度制御領域(ドメイン)で操作するとき、このことは、可動レバーが自動的に(中間位置に)復帰する(中間位置での)速度を選択的に定義することを効果的に行うことを可能にする。同様に、中間位置は、信頼レベルを選択的に定義するために使用されるものとしても考えることができる。
【0010】
自動復帰機能は、上記したように、ばね装置を用いて実装され得る。とはいえ、本開示では、もちろん、他の手段を用いて、例えば、電気制御式のステッピングモータや他の任意の形式の適切な電気制御式または空気圧制御式のアクチュエータなどを用いて、このような機能を提供することはもちろん可能である。他の同様の選択肢を用いることももちろん可能であり、それらも本開示の範囲内である。いくつかの実施形態において、ばね装置を用いることは、このような実装の単純さのため、望ましい場合がある。とはいえ、電気制御式のステッピングーモータ(または同様のもの)を用いることは、自動復帰機能によって与えられる対抗力の可制御性について利点をもたらすことがある。場合によっては、自動復帰機能は、(ばねを用いるときと比べて)線形的に実装されてもよいし、または任意の形態の触覚スキーム(tactile scheme)に従って実装されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、中間位置は、例えば船舶のオペレータまたは船長によって手動で調整されてもよい。一例として、オペレータ/船長は、場合によっては、船舶が現在航行しているエリア(海域)についての制限速度に応じて、中間位置を選択(および調整)することができる。しかし、本開示のいくつかの実施形態においては、中間位置を自動的に調整できるようにすることが望ましい場合がある。これは、そのような実施形態において、中間位置を電気的に調整する手段、例えば(繰り返しなるが)ステッピングモータ、サーボモータ、アクチュエータまたは同様のものを用いることで解決され得る。
【0012】
本開示において、「速度コマンド」という表現は、最も広い意味で解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、速度コマンドは、船舶の速度を直接制御すること、または例えば船舶の回転数(rpm)やトルクを制御して船舶の速度を間接的に制御することが可能であり、本開示の範囲内であり得る。もちろん、速度コマンドが他の方法で船舶の速度を直接または間接的に制御することも可能である。
【0013】
推進制御装置を実装する場合、中間位置の自動調整を可能にするため、制御ユニットと通信する(またはそれ含む)ように推進制御装置を構成することが望ましい場合がある。制御ユニットは、船舶のためのプリセット運転パラメーターに基づいてステッピングモータ(または同様のもの)を制御して中間位置を調整するように構成される。
【0014】
調整可能な中間位置の自動的な管理を実装することによって、船舶に関して設定される法律、環境、または経済上の要求および制限を守ることが可能な場合がある。推進制御装置に提供される情報は、船舶のためのプリセット運転パラメーターによって定義され、後述するように、測位システムおよびデジタルマップに依存することがある。情報は、船舶に搭載された追加の感知能力、近接通信および/または双方向通信によって、例えば、船舶自動識別装置(AIS:automatic identification system)または同様のものなどを用いることによって、少なくとも部分的に形成されてもよい。
【0015】
一例として、上記の検討に従って、いくつかの実施形態において、プリセット動作パラメーターは、制御ユニットにおいて、船舶のナビゲーション制御システムから受信されてもよい。ナビゲーション制御システムは、GPS受信機(または同様のもの)と通信するように構成されてもよいし、ナビゲーション情報データベースが設けられていてもよい。ナビゲーション情報データベースは、受信されたGPSからの情報と併せて、船舶が現時点で航行しているエリア(海域)についての最高速度を自動的に判定するために使用される。次いで、最高速度は、中間位置を制御するためのプリセット運転パラメーターに変換されてもよい。このような実施形態では、最高速度の一部に、例えば最高速度の70%~95%などに対応するようにプリセット運転パラメーターを形成することが望ましい場合があることに留意されたい。もちろん他のレンジとすることも可能であり、本開示の範囲内に含まれる。
【0016】
ただし、船舶のためのプリセット運転パラメーターは、必ずしも船舶が現在航行しているエリア(海域)についての最高速度に基づいて決定される必要がないことに特に留意されたい。むしろ、本開示の範囲内で、船舶のためのプリセット運転パラメーターを決定するために使用可能な他のタイプの情報を保持するように、ナビゲーション制御システムを適合させることが可能であり得る。このような情報は、例えば、船舶担当組織によって指示される一般的な方針(ポリシー)を含んでもよい。例えば、船舶担当組織は、船舶を最高速度で航行させるとエネルギー消費が比較的大きくなるので、通常は船舶が船舶の最高速度未満の速度で航行することを望むことがある。むしろ、中間位置は、エネルギー消費が比較的少ない低レベルに設定されることが望ましい場合がある。同時に、本開示によるスキームは、オペレータが、場合によっては安全上の理由から、必要な場合に容易に中間位置を越えることがあり得るので、船舶の運転範囲を限定しない。
【0017】
概して、可動レバーは、ニュートラル位置から最大後進位置まで手動で傾けることができるようにすることが望ましいが、必ずしもそうである必要はない。後進位置に向かってレバーを動かすことは、概して、船舶が後方に移動するように、船舶の方向を調整するために用いられる。レバーを最大後進位置に向かって動かすほど、船舶の後進速度が高くなる。可能な実施形態においては、レバーを最大後進位置に向かって動かすときのレバーの操作レンジの分割を、レバーを最大前進位置に向かって動かすときと同じ方法で、上述の自動復帰機能を含めて実装することが可能であり得る。
【0018】
さらに、いくつかの実施形態では、レバーをニュートラル位置から前後方向に傾けることに加えて、任意の方向、例えば左向きや右向きに傾けることができるようにすることも可能である。レバーを左方向および右方向に動かすことは、対応する方向に船舶を向けるために用いられてもよい。さらに、本開示のいくつかの実施形態においては、船舶を制御するための回転コマンドを提供するために、可動レバーを軸まわりに回転可能とすることも可能である。すなわち、そのような実施形態において、推進制御装置は、有利には、船舶を「旋回させる(ヨー)」ために使用されてもよい。詳細には、可動レバーを回転させる/捻ることによって、船舶が回転/旋回するように制御される。回転/捻り動作は、時計回りと反時計回りの両方で行われ、その結果、船舶を対応する方法で旋回/回転させることができるのが好ましい。
【0019】
例えばオペレータが可動レバーから手を放すと、可動レバーが回転ニュートラル位置に自動的に復帰し得るように、可動レバーの捻り/回転を実装することがさらに好ましい。このような実装は、例えば、復帰機能を実現するための複数のばねのうち1つで構成されてもよい。
【0020】
本開示のさらなる実施形態においては、可動レバーで知覚できるハプティック効果を生じさせるように適合されたフィードバック手段を推進制御装置に設けることが可能であってもよい。その結果、例えば可動レバーの傾斜方向に応じて(傾斜における最終位置などで)、例えば可動レバーを手で掴んでいるオペレータは、フィードバックを受け取ることができ、オペレータは、通常、可動レバーが傾斜している方向を判定するために可動レバーを見る必要がない。ハプティック効果は、異なる目的のため、例えば、船舶が有する他の制御システムから受信した情報などに基づき、船舶が現在の方向に移動し続けた場合に近づくことなる障害物を示すために、提供されてもよい。
【0021】
上記の検討に従い、本開示によれば、船舶の船体に装備される1組の推進ユニットを制御する船舶推進制御システムが提供することが可能であり、船舶推進制御システムは、上述の推進制御装置と、デジタルマップを有するナビゲーション制御システムとを含み、制御システムは、ナビゲーション制御システムを用いて船舶の現在の座標を判定し、ナビゲーション制御システムを用い、現在の座標およびデジタルマップに基づいて制限速度を決定し、制限速度に基づいて推進制御装置の中間位置を調整するように適合されている。例えば、少なくとも第1および第2の推進ユニットなどのように、任意の数の推進ユニットが船舶に設けられてもよい。例えば、バウスラスターのようなさらなる推進ユニットが含まれてよい。
【0022】
本開示のさらなる利点および有利な特徴は、以下の説明および従属請求項に開示されている。
【0023】
添付の図面を参照しながら、例として挙げる本開示の実施形態について以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の現時点で好ましい実施形態による推進制御装置を概念的に示す図である。
【
図2】
図1に示される推進制御装置を含む船舶推進制御システムの一例を示す図である。
【
図3】船舶を操作する
図2に示される船舶推進制御システムを含む船舶の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の現時点で好ましい実施形態が示された添付図面を参照しながら、本開示をより詳細に説明する。ただし、本開示は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、それらの実施形態は、徹底的かつ網羅的となるように提供されており、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるためものである。全体を通して同様の番号は同様の要素を指している。
【0026】
図面、特に
図1を参照すると、(
図3に示されるような)船舶300を制御するように適合された推進制御装置100が概念的に示されている。推進制御装置100は、可動レバー102を含み、可動レバー102は、軸V上を延び、ニュートラル位置104から最大前進位置106にオペレータによって手動で傾けられるように適合されている。可動レバー102がニュートラル位置104にあるとき、推進ユニット(例えば、
図3に示される308、310、312および314)は、船舶300を推進させないように、切り離されているか、または少なくとも「非アクティブ(無効)」状態にあることが概して望ましい。したがって、可動レバー102がニュートラル位置104にあるとき、概して、船舶300を制御するための速度コマンドは、推進ユニット308、310、312、314を非アクティブにするように制御することが概して望ましい場合がある。しかし、オペレータがレバー102を前進方向に傾けると、推進ユニット308、310、312、314を起動して船舶300を前進方向に推進させる速度コマンドが形成される。通常、レバー102が最大前進位置106に向かって動かされるほど、船舶300の前進速度が速くなる。
【0027】
いくつかの実施形態においては、
図1に示されるように、レバー102をニュートラル位置104から最大後進位置108にも動かすことができることが望ましい場合がある。上記の検討と同様に、レバー102が最大後進位置108に向かって動かされるほど、船舶300の後進速度が速くなる。
【0028】
本開示によれば、
図1に示されるように、ニュートラル位置と最大前進位置との間の操作レンジ120は、中間位置126によって分けられた第1のサブレンジ122および第2のサブレンジ124で構成され、第1のサブレンジ122は、ニュートラル位置104と中間位置126との間に配置されると定義することが望ましい。可動レバー102は、本開示によれば、可動レバー102が現在第1のサブレンジ122内と第2のサブレンジ124内のどちらに配置されているかに応じて、オペレータに異なる「フィードバック」を提供するように適合されている。具体的には、可動レバー102が第1のサブレンジ122内にあるときは、弱い(小さな)摩擦フィードバックがオペレータに提供されることが望ましい場合がある。オペレータが可動レバー102から手を放すと、可動レバー102は、手が放された位置に留まることになる。
【0029】
しかし、可動レバー102が中間位置126を越えて第2のサブレンジ126まで前進方向に動かされると、通常の摩擦フィードバックは、例えば、ばね装置を用いて実装される対抗力に置き換えられる。さらに、オペレータが可動レバー102から手を放すと、可動レバー102は、中間位置126に「スプリングバック」することになる。
【0030】
中間位置126は、本開示によれば、船舶300のためのプリセット運転パラメーターに応じて調整可能である。上述のように、および、さらに
図2を参照すると、船舶300のためプリセット運転パラメーターは、例えば、オペレータによって手動で、船舶300の船長によって手動で選択および調整されてもよいし、または、例えば中間位置を電気的に調整するための手段を用いて自動的に選択および調整されてもよい。このような手段には、例えば、アクチュエータ、サーボモータ(図示せず)またはステッピングモータ(図示せず)が含まれてもよい。
【0031】
次に、アクチュエータまたはステッピングモータは、制御ユニット(図示せず)を用いて制御されてもよく、制御ユニットは、船舶のためのプリセット運転パラメーターを受信し、中間位置を電気的に調整するため、受信されたプリセット運転パラメーターに基づいてアクチュエータまたはステッピングモータを動作させるように適合されている。参考までに、制御ユニットは、本開示によるスキームを少なくとも部分的に実行するように構成された処理回路を含んでいる。処理回路は、例えば、汎用プロセッサー、特定用途向けプロセッサー、処理構成要素を含む回路、分散型処理構成要素のグループ、処理のために構成された分散型コンピューターのグループ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などとして実現されてもよい。プロセッサーは、データ処理または信号処理を行うための、またはメモリーに格納されたコンピューターコードを実行するための、任意の数のハードウエア構成要素であってよいし、それらを含んでもよい。メモリーは、本明細書に記載された様々な方法を完了するかまたは容易にするためのデータおよび/またはコンピューターコードを格納する1つまたは複数のデバイスであってもよい。メモリーは、揮発性メモリーまたは不揮発性メモリーを含んでもよい。メモリーは、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、または本明細書の様々な動作を支援するための他の任意のタイプの情報構造体を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、任意の分散型の、またはローカルのメモリーデバイスが本明細書のシステムおよび方法と共に利用され得る。例示的な実施形態によれば、メモリーは、(例えば、回路または他の任意のワイヤード、ワイヤレス、もしくはネットワーク接続を介して)プロセッサーに通信可能なように接続され、本明細書に記載された1つまたは複数のプロセスを実行するためのコンピューターコードを含む。
【0032】
いくつかの実施形態においては、
図2をさらに参照すると、推進制御装置100は、船舶推進制御システム200に含まれることが望ましく、船舶推進制御システム200は、さらにナビゲーション制御システム202を含み得る。いくつかの実施形態においては、ナビゲーション制御システム202を、例えば、GPS受信機204と通信するように構成し、および、例えば、少なくとも船舶300が現在位置しているエリア(海域)を表すデジタルマップを含むように、適合させることが可能な場合がある。さらに、ナビゲーション制御システム202を、GPS受信機204から受信した情報に基づいて船舶300の現在の座標を判定するように、適合させることが可能な場合がある。
【0033】
船舶300の現在の座標とデジタルマップとに基づいて、船舶300が位置するエリア(海域)についての現在の制限速度を判定することも可能であり得る。制限速度は、続いて、船舶300のためのプリセット運転パラメーターを選択するために使用され得る。したがって、制限速度は、推進制御装置100の中間位置126に影響を与える。上述のように、可動レバーが中間位置126に配置されるときは、船舶300が現在位置するエリア(海域)について判定された制限速度と比べてわずかに低い速度で船舶300が動作(航行)するように、中間位置126を選択することが望ましい場合がある。
【0034】
他の因子が、船舶300のためのプリセット運転パラメーターの選択に影響を及ぼすことがあり、続いて、推進制御装置100の中間位置126を調整するために使用されることがあることに留意されたい。一例として、船舶300が特定のエンジン速度(例えばrpm)において最適なエネルギー効率を有すると判定された場合、プリセット運転パラメーターは、推進制御装置100の中間位置126に影響を与えるように選択され得る。したがって、可動レバー102が第2のサブレンジ124にあるときにオペレータがそこから手を放した場合、レバー102は自動的に中間位置126にスプリングバックし、その結果、最適なエネルギー効率で動作する。このような実装形態は、船舶300を操作するための全体的なエネルギー効率に、特に未熟なオペレータの場合に、大きな影響を与えることがある。
【0035】
最後に
図3を参照すると、船舶300の一例が示されており、船舶300は、本開示に従って定義される推進制御装置100を用いて船舶300を操作するための船舶推進制御システム200を含む。
【0036】
提示された図において、船舶300は、船首304、船尾306を有する船体302を有するように設計されている。船尾306には、4つの推進ユニット308、310、312、314が搭載されてもよい。推進ユニット308、310、312、314は、概して従来の種類の所望の方向への駆動推力を発生させるために、船体302に対して枢動可能に配置されてもよい。あるいは、推進ユニットは、船内推進ユニットであってもよいし、船舶の下側で船体302に搭載されてもよし、またはいわゆる船内外機として船尾306に搭載されてもよい。すなわち、推進ユニット308、310、312、314は、船外推進ユニットでも船内推進ユニットでもよい。
【0037】
4基を超える(または4基未満)の推進ユニットが船舶300に設けられてもよいことを理解されたい。さらに、船舶300には、例えば風の強い状況で、船首304を「動かす」ことを支援するための、例えばバウスラスター(図示せず)が設けられてもよい。推進ユニット308、310、312、314およびバウスラスターは、上述したような方式で可動レバー102を傾ける、および/または回転させる際に発生するコマンドに基づいて操作される。
【0038】
要約すると、本開示は、船舶を制御するための速度コマンドを提供するように動作可能な推進制御装置に関し、推進制御装置は、軸上を延びる可動レバーであって、ニュートラル位置から最大前進位置までオペレータによって手動で傾けられるように適合された可動レバーを含み、ニュートラル位置と最大前進位置との間の操作レンジは、中間位置によって分けられた第1のサブレンジおよび第2のサブレンジを含み、第1のサブレンジは、ニュートラル位置と中間位置との間に配置されており、中間位置は、ニュートラル位置とは異なり、船舶のためのプリセット運転パラメーターに応じて調整可能でありかつ選択されるものであり、推進制御装置は、可動レバーが第2のサブレンジ内で解放された場合に可動レバーを中間位置に自動的に復帰させ、および中間位置に留まらせるように構成された手段を含む。
【0039】
本開示に従う利点は、例えば、推進制御装置の可動レバーを操るときに与えられる知覚フィードバックについての改善、ならびに、船舶を推進させるときのエネルギー消費が低くなり得ること、したがって、環境負荷が少なくなり得ることを含む。
【0040】
本開示は、様々な動作を実現するための、任意の機械可読媒体上の方法、デバイスおよびプログラムプロダクトを企図する。本開示の実施形態は、現行のコンピュータープロセッサーを用いて、またはこの目的もしくは別の目的のために組み込まれた適切なシステムのための専用のコンピュータープロセッサーによって、またはハードワイヤードシステムによって実施されてもよい。本開示の範囲内の実施形態は、機械可読媒体を含むプログラム製品を含み、機械可読媒体は、そこに格納された機械実行可能な命令またはデータ構造体を担持するかまたは有するためのものである。このような機械可読媒体は、汎用または専用のコンピューターまたはプロセッサーを有する他の機械によってアクセスできる、任意の利用可能な媒体とすることができる。
【0041】
一例として、このような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CDーROMもしくは他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶デバイス、または他の任意の媒体を含むことができ、他の任意の媒体は、機械実行可能な命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを担持または格納するために使用することができ、汎用もしくは専用のコンピューターまたはプロセッサーを有する他の機械によってアクセスできるものである。ネットワークまたは別の通信接続(ハードワイヤード、ワイヤレス、またはハードワイヤードもしくはワイヤレスの組み合わせのいずれか)を介して機械に情報が転送または提供されるとき、その機械は接続を適切に機械可読媒体と見なす。それゆえ、このような接続はいずれも機械可読媒体と呼ばれるのが適切である。上記の組み合わせも機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能な命令には、例えば、汎用コンピューター、専用コンピューター、または専用処理機械に一定の機能または機能の群を実行させる、命令およびデータが含まれる。
【0042】
図が方法ステップの特定の順序を示すことがあるが、ステップの順序はそこに示されたものとは異なる場合がある。さらに、2以上のステップが同時にまたは部分的に同時に実行されることがある。このような変形は、選択されるソフトウェアおよびハードウエアシステムに応じてならびに設計者の選択に応じて異なる。このような変形形態はいずれも本開示の範囲内に包含される。同様に、ソフトウェア実装形態は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップおよび決定ステップを実現する、ルールベースのロジックおよび他のロジックを用いる標準的なプログラミング技術によって実現することもできる。さらに、特定の例示的実施形態を参照しながら本開示が説明されていても、多数の異なる変更形態および修正形態などが当業者には明らかである。
【0043】
開示された実施形態に対する変形形態は、当業者であれば、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される本開示を実施する際に理解し、および実施することができる。さらに、本特許請求の範囲では、用語「含む(comprising)」は他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。
【外国語明細書】