(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119752
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】全地球衛星システムでの測位におけるビット遷移拡張直接位置推定
(51)【国際特許分類】
G01S 19/35 20100101AFI20220809BHJP
G01S 19/30 20100101ALI20220809BHJP
【FI】
G01S19/35
G01S19/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016268
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】2101072
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】521549349
【氏名又は名称】アルボラ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミケル リボ
(72)【発明者】
【氏名】アドリア グシ
(72)【発明者】
【氏名】パウ クロサス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】GNSS信号のビット遷移改良DPE(Direct Position Estimation、直接位置推定)のための方法、システム、プログラム製品の提供。
【解決手段】複数の衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星からの信号をGNSS受信機で受信するステップを含む。GNSS受信機パラメータとしての、位置、速度、クロックバイアス、クロックドリフト、およびオプションで、未知であれば受信機時刻を推定する。前記受信機パラメータによって決まる、受信したGNSS信号のモデルを生成する。ユニークな特徴として、時間遅延、ドップラーシフト、および測位のための他の関連パラメータに加えて、受信した前記GNSS信号の前記モデルにおける1次コードおよび2次コードの両方の同期処理を含む。最後に、特定の信号の前記2次コードが未知である場合、ビット遷移の前記組合せのうち、最適化問題を最大化する組み合わせを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)信号のビット遷移改良DPE(Direct Position Estimation、直接位置推定)のための方法であって、
受信機において、GNSSと共に使用するように構成された衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星からGNSS信号を受信するステップと、
前記GNSS信号から1次コード及び2次コードの両方を抽出するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々における複数のビット遷移を識別するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々の前記ビット遷移のうちの1つのアラインメントを決定するステップと、
前記ビット遷移のうちの前記1つの決定された前記アラインメントを用いて、前記1次コードに対応して決定された粗い位置を修正するステップと、を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記アラインメントを決定する前記ステップは、
前記受信機のローカルコードと相関させて前記GNSS信号の各々について拡張クロス・アンビギュイティ関数の組を生成するステップと、
前記アラインメント内にあると決定された前記ビット遷移のうちの前記1つを利用するDPEによって前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々を処理するステップとを有すること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々はDPEによって処理され、該DPEは、位置、速度および時間を求めるため、かつ、積分時間の延長が可能となるように前記ビット遷移を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の組は、前記GNSSの受信機の受信範囲内の前記衛星の数に対応すること
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
GNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)信号のビット遷移改良DPE(Direct Position Estimation、直接位置推定)のために構成されたデータ処理システムであって、該データ処理システムは、
各々がメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを備える1つまたは複数のコンピュータを有するホスト・コンピューティング・プラットフォームと
前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームで実行されるDPEモジュールであって、該DPEモジュールは該DPEモジュールの実行中に実行可能にされるコンピュータ・プログラム命令を含み、該コンピュータ・プログラム命令は、
GNSS受信機において、GNSSと共に使用するように構成された衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星から位置決定用の信号を受信するステップと、
前記信号から1次コード及び2次コードの両方を抽出するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々における複数のビット遷移を識別するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々の前記ビット遷移のうちの1つのアラインメントを決定するステップと、
前記ビット遷移のうちの前記1つの決定された前記アラインメントを用いて、前記1次コードに対応して決定された粗い位置を修正するステップと、を含むこと
を特徴とするシステム。
【請求項6】
前記アラインメント決定するステップは、
前記GNSS受信機のローカルコードと相関させて前記信号の各々について拡張クロス・アンビギュイティ関数の組を生成するステップと、
前記アラインメント内にあると決定された前記ビット遷移のうちの前記1つを利用するDPEによって前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々を処理するステップとを有すること
を特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々はDPEによって処理され、該DPEは、位置、速度および時間を求めるためだけでなく、前記ビット遷移のうちの前記1つを求めるために計算すること
を特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の組は、前記GNSS受信機の受信範囲内の前記衛星の数に対応すること
を特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
GNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)信号のビット遷移改良DPE(Direct Position Estimation、直接位置推定)のためのコンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ可読記憶媒体は、プログラム命令を含み、前記プログラム命令は、デバイスによって実行されて該デバイスに方法を実行させることができ、該方法は、
GNSS受信機において、GNSSと共に使用するように構成された衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星から位置決定用の信号を受信するステップと、
前記信号から1次コード及び2次コードの両方を抽出するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々における複数のビット遷移を識別するステップと、
前記1次コードおよび前記2次コードの各々の前記ビット遷移のうちの1つのアラインメントを決定するステップと、
前記ビット遷移のうちの前記1つの決定されたアラインメントを用いて、前記1次コードに対応して決定された粗い位置を修正するステップと、を含むこと
を特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
前記アラインメント決定するステップは、
前記GNSS受信機のローカルコードと相関させて前記信号の各々について拡張クロス・アンビギュイティ関数の組を生成するステップと、
前記アラインメント内にあると決定された前記ビット遷移のうちの前記1つを利用するDPEによって前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々を処理するステップとを有すること
を特徴とする請求項9に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の各々はDPEによって処理され、該DPEは、位置、速度および時間を求めるため、かつ、前記ビット遷移のうちの前記1つを求めるために計算すること
を特徴とする請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の組は、前記GNSS受信機の受信範囲内の前記衛星の数に対応すること
を特徴とする請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星ベースの全地球測位システムにおける全地球航法衛星システム(GNSS、Global Navigation Satellite System)の位置決定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星ベースの測位は、全地球測位システム(GPS)、全地球航法衛星システム(GLONASS)、Galileo、NaVIC、およびBeiDouによって生成されるデータのように信号内のGNSS測位データに基づくGNSS受信機の位置、速度、および時間(PVT、Position, Velocity, Time)の決定を意味する。GNSS用のコア信号は、GNSS衛星コンステレーション内の各衛星によって同期して送信される直接シーケンススペクトラム拡散信号である。スペクトル拡散信号は、擬似ランダムノイズ(PRN、Pseudo Random Noise)拡散シーケンスとも呼ばれるレンジングコードと、対応する衛星のエフェメリス情報をブロードキャストする低速データリンクとの両方を含む。
【0003】
各GNSS受信機は、GNSS信号を受信してその信号からPVTを推定する。このために、GNSS受信機と協調して動作するプログラムロジックは、GNSS信号が受信源である各衛星毎の観測量の組を構成するように、信号モデルにおけるレンジングコードを推定する。前記組の中の前記観測量は、擬似距離と呼ばれる対応するGNSS信号の受信時の時間遅延から計算された一組の距離と、異なるGNSS信号間の搬送波位相測定値と呼ばれる位相差推定値とを含む。前記観測量を用いてPVTを計算することは、最小二乗法において複数観測量のマルチラテレーションの解を求める問題である。
【0004】
従来、PVTの計算は2ステップ・プロセスである。該プロセスの第1のステップは、精査されてない受信信号データに基づいて同期パラメータの粗い推定値を生成する。さらに、この第1ステップは、より細かい捕捉ループまたは追跡ループのいずれかを利用した、粗い推定値の精細化を含むことができる。より正確には、第1ステップにおいて、時間遅延およびドップラーシフトの推定値が、選択された衛星から受信されたスペクトル拡散信号に基づいて決定される。「ナビゲーション・ソリューション」と呼ばれる第2ステップでは、GNSS受信機のPVTを推定するためにGNSS観測量が処理される。
【0005】
特に、最新のGNSS信号には、1次PRNコードを補足する2次PRNコードが含まれる。1次PRNコードは、高いチッピングレートで連続的に反復するバイナリコードであり、一方、2次PRNコードもまた連続的に反復するバイナリコードであるが、1次PRNコードのチッピングレートに対して桁違いではるかに低いチッピングレートを有する。2次PRNコードの各チップは、1次PRNコードの1周期分を乗算される。1次PRNコードと2次PRNコードとの積は、通常、多層コードと呼ばれる。2次PRNコードにはいくつかの利点がありGNSS受信機の性能の大幅な向上を可能にするが、2次PRNコードの存在は捕捉ステップを複雑にする。その理由は、延長された信号捕捉時間の間の2次PRNコードの正しいアライメントのために、GNSS受信機において処理リソースの追加が必要となるからである。
【0006】
しかしながら、最近の計算処理能力向上によって、PVTの2ステップ・プロセス決定の必要性がなくなり、代わりに、受信されたスペクトル拡散信号からの単一ステップによる直接位置推定(DPE、Direct Positioning Estimation)が可能になっている。DPEでは、GNSS受信機内で動作するプログラム命令は、コード/搬送波追跡ループとナビゲーション・ソリューションを単一のステップに統合する。重要なことは、DPEを実装したGNSS受信機は、衛星の捕捉および追跡が改良され、マルチパス伝搬または微弱信号環境およびフェーディング環境などの困難な状況下でPVTを配信できることである。従来の位置推定の2ステップ・プロセスとは対照的に、DPEは、信号遮断に対処しながら、微弱なGNSS信号から有用な情報を抽出し利用することができる。したがって、DPEは、衛星カバレージが悪い場所にGNSS受信機が位置していても測位を実行することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、GNSS信号のビット遷移改良DPEのための新規かつ非自明な方法、システム、およびコンピュータ・プログラム製品を提供するために、DPEの前述の利点を組み込みながら、2ステップ位置推定プロセスにおける1次コードおよび2次コードの連結処理に関する前記技術の欠陥に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態では、GNSS受信機のビット遷移改良DPEのための方法が、GNSSと共に使用するように構成された衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星からの信号をGNSS受信機で受信することを含む。本方法は、さらに、受信したGNSS信号からの1次コードおよび2次コード両方との同期を含む。独自なことであるが、本方法はさらに、前記1次コードおよび2次コードの各々における複数のビット遷移の識別と、前記1次コードおよび2次コードの各々のビット遷移のうちの1つのアラインメントの決定とを含む。最後に、本方法は、前記ビット遷移の決定された前記アラインメントを使用して、前記1次コードについて決定された粗い位置を補正することを含む。
【0009】
本実施形態の一態様では、前記アラインメントの決定は、各信号のローカルコードに対して拡張クロス・アンビギュイティ関数を生成することを含む。このため、拡張クロス・アンビギュイティ関数の一組の行列が、GNSS受信機の受信範囲にある多数の衛星に対応する。また、次に、前記拡張クロス・アンビギュイティ関数の複数の行列の各々は、前記ビット遷移における決定されたアラインメントを利用してDPEによって処理される。その結果、前記クロス・アンビギュイティ関数行列の各々は、位置、速度および時間だけでなく、2次コードアラインメントまたは可能なビット遷移も考慮して、DPEによって処理される。
【0010】
本発明の別の実施形態では、データ処理システムがGNSS信号のビット遷移改良DPEのために構成される。本システムは、それぞれがメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを有する1つまたは複数のコンピュータを有するホスト・コンピューティング・プラットフォームを含む。本システムはまた、前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームに結合されたGNSS受信機を含む。最後に、本システムは、コンピュータ・プログラム命令を含むDPEモジュールを含む。前記コンピュータ・プログラム命令は、前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームにおいて実行されるとき、GNSSと共に使用するように構成された衛星コンステレーション内の複数の異なる衛星からの測位信号をGNSS受信機において受信し、前記測位信号から1次コードおよび2次コードの両方を抽出し、該1次コードおよび2次コードの各々における複数のビット遷移を識別し、該1次コードおよび2次コードの各々のビット遷移のうちの1つのアラインメントを決定し、前記ビット遷移のうちの前記1つの決定されたアラインメントを用いて前記1次コードについて決定された粗い位置を補正することを実行可能にされる。
【0011】
本発明の別の態様は、一部は以下の記載で説明され、一部はその記載から自明であり、
または本発明の実施により知ることができる。本発明の態様は、添付の特許請求の範囲で特に明示される要素およびその組み合わせによって実現され達成されるであろう。前述の概略的な記載および以下の詳細な記載の両方とも、代表例および説明例であるだけであり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、かつ、その一部を構成し、本発明の実施形態を図解し、本明細書の記載と合わせて本発明の原理を説明するように働く。本明細書で説明された実施形態は現在においては好ましい形態であるが、本発明は下記図面に示された精細な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0013】
【
図1】
図1は、GNSS信号のビット遷移改良DPEためのプロセスの説明図である。
【
図2】
図2は、GNSS信号のビット遷移改良DPE用に構成されたホストデータ処理システムを説明する概略図である。
【
図3】
図3は、GNSS信号のビット遷移改良DPEのためのプロセスを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、GNSS信号のビット遷移改良DPEを提供する。本発明の一実施形態によれば、1次コードおよび2次コードの両方がGNSS信号から抽出され、前記1次コードのビット遷移と前記2次コードのビット遷移との間でビット遷移のアラインメントが決定される。次に、DPE関数を、時間、位置および速度を考慮するだけでなく、前記1次コードおよび前記2次コードについて決定されたビット遷移の前記アラインメントも考慮して計算することができる。このように、GNSS信号に対するDPEにおいて、前記2次コードの前記1次コードとのビットアライメントを考慮することによって精度向上を達成することができる。
【0015】
さらに説明すると、
図1は、GNSS信号のビット遷移改良DPEのためのプロセスを示す図である。
図1に示されるように、GNSS信号130は、GNSS衛星コンステレーション内のいくつかの異なる衛星110のうちの1つからGNSS受信機120において受信される。1次コード140Aおよび2次コード140Bの両方がGNSS信号130から抽出され、2次コード140Bのビット遷移が1次コード140Aのビット遷移よりも桁違いに高い頻度で存在する限り、ビット遷移150のアラインメントが検出される。同様に、粗い位置100Aが、1次コード140AとGNSS受信機120内で生成されたローカルコード(図示せず)とのアマルガメーションに基づいて決定される。
【0016】
その後、いくつかの異なる衛星110のうちの1つについてのクロス・アンビギュイティ関数(CAF、Cross-Ambiguity Function)160が、決定されたアライメント150と組み合わせて粗位置100Aに基づいて決定される。次に、前記プロセスは、前記コンステレーションの衛星110のうちの異なる衛星からの追加のGNSS信号130に対して繰り返される。異なる衛星110毎に十分な数のCAF160が計算されると、各衛星のCAF160の和170が計算され、DPE処理がされて、ビットアライメント改良DPE180を生成することができる。ビットアライメント改良DPE180の結果は、GNSS受信機120の位置推定値100Bになる。
【0017】
図1に関連して説明したプロセスは、GNSSにおける位置情報を推定するように構成されたデータ処理システム内で実行することができる。次の説明において、
図2は、GNSS信号のビット遷移改良DPE用に構成されたホストデータ処理システムを概略的に示す。該システムは、メモリ230と少なくとも1つのプロセッサ220とを有するホストコンピューティングシステムを含む。該ホストコンピューティングシステムは、コンピュータ通信ネットワーク240を介してGNSS受信機210に通信で結合される。本実施形態のいくつかの態様だけであるが、該ホストコンピューティングシステムはGNSS受信機210の一部として含まれる。
【0018】
GNSS受信機210は、GNSS衛星コンステレーション200内の衛星からGNSS信号を受信し、DPEモジュール300によって実行されるビットアライメント改良DPEに従って前記GNSS信号を処理する。この点に関して、DPEモジュール300はコンピュータ・プログラム命令を含み、該コンピュータ・プログラム命令は、プロセッサ220によってメモリ230内で実行されるときに、衛星コンステレーション200内の特定の衛星から送られGNSS受信機210内で受信されたGNSS信号の1次コードと2次コードとの間の共通ビット遷移の位置を特定し、GNSS受信機210内で生成されたローカルコードで前記1次コードを前処理してGNSS受信機210の粗い位置を生成し、次に、前記共通ビット遷移を考慮したGNSS信号のCAFを計算するように動作することができる。前記プログラム命令はさらに、コンステレーション200内の異なる衛星から受信された各GNSS信号について計算された前記CAFの合計値を求め、GNSS受信機210についての精密な位置推定値を生成するために、前記合計値をDPEに送ることを実行可能にされる。
【0019】
DPEモジュール300の動作のさらに別の説明において、
図3は、GNSS信号のビット遷移改良DPEのプロセスを示すフローチャートである。ブロック310から始まり、前記衛星コンステレーション内の特定の衛星からのGNSS信号が前記GNSS受信機において受信され、ブロック320において、前記特定の衛星からの信号が選択される。次に、ブロック330において、1次および2次ローカルコードの両方のレプリカが生成され、ブロック340において、前記特定の衛星信号に対するCAFが計算される。ブロック350では、受信機の位置、速度、および時間の初期の粗い推定値を使用して、関連領域のみを選択することによって、計算されたCAF行列のサイズを縮小する。
【0020】
重要なことは、ブロック360において、前記1次コードと前記2次コードとの間の可能なビット遷移アラインメントの範囲は、例えば、コードの各々について異なるアラインメントの推定値をテストし、前記1次コードと前記2次コードをアラインさせるために最も相関度の高い推定値を選択することによって識別することができる。次に、ブロック370において、前記1次コードと前記2次コードとの間のアラインメントとして識別されたビット遷移アライメントの範囲に対して拡張CAFを生成することができる。この点に関して、前記拡張CAFは、3次元の構造、すなわち時間遅延、ドップラーシフト値、およびビット遷移を有する。したがって、前記拡張CAFの前記ビット遷移は、その後使用するために、位置推定の間保存される。次に、決定ブロック380において、前記衛星コンステレーション内の異なる衛星からさらにGNSS信号が受信される場合、本プロセスはブロック310に戻る。しかし、決定ブロック380において、前記GNSS受信機の精密な位置を計算するためにさらにGNSS信号を受信する必要がない場合、ブロック400において、GNSS受信機の精密な位置推定値を生成するためにDPEが実行される。具体的には、ブロック400において、各衛星について最適化されたCAF出力が、損失関数すなわちコスト関数を生成するためにビットアライメントを含めて結合され、この関数は、次に、位置推定値を生成するために位置および速度について最適化される。
【0021】
本願発明はシステム、方法、コンピュータ・プログラム製品またはこれらの任意の組み合わせとして実現される。コンピュータ・プログラム製品は、プロセッサに本願発明の特長を実行させるコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体またはメディアを含む。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は命令を実行するデバイスによって用いられる命令を保持、記憶する有形のデバイスである。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、限定を目的としていないが、例えば、電子記憶デバイス、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁気記憶媒体、半導体記憶媒体または上記した媒体の任意の組み合わせとすることができる。
【0022】
本明細書中のコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体から個別の計算/処理デバイスに、またはネットワークを介して外部コンピュータもしくは外部記憶デバイスにダウンロードできる。コンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、すべてユーザーのコンピュータ上で実行され、一部ユーザーのコンピュータ上でかつ一部は遠隔にあるコンピュータ上で実行され、またはすべて遠隔にあるコンピュータもしくはサーバー上で実行される。本願発明の特長は、本願発明の実施形態にしたがう、フローチャートによる図解、ならびに/または方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム製品からなるブロック概略図を参照して本明細書中で説明される。フローチャート図解および/またはブロック概略図中の各ブロックならびにフローチャート図解および/またはブロック概略図中の複数のブロックの組み合わせはコンピュータ読み取り可能な命令によって実装される。
【0023】
このようなコンピュータ読み取り可能な命令は汎用コンピュータ、専用目的コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに与えられて、これらコンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置プロセッサで実行される命令は、フローチャートのブロックおよび/またはブロック概略図のブロック中に特定される機能/作用を実装する手段を作り出す。このようなコンピュータ読み取り可能な命令はまたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体はコンピュータ・プログラム可能なデータ処理装置および/または他の所定の形式で機能するデバイスに命令する。したがって、命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、フローチャートのブロックおよび/またはブロック概略図のブロック中に特定される機能/作用を実装する命令を含む製造物を含む。
【0024】
前記したコンピュータ読み取り可能な命令はコンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスにロードされてコンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイス上で実行されて、コンピュータが実行するプロセスを作る。その結果、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイス上で実行される命令は、フローチャートのブロックおよび/またはブロック概略図のブロック中に特定される機能/作用を実行する。
【0025】
添付した図面中のフローチャートとブロック概略図は、本願発明の様々な実施形態にしたがうシステム、方法およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実装形態に関するアーキテクチャ、機能および動作を説明する。この点に関して、フローチャートまたはブロック概略図中のブロックの各々は、特別な論理機能を実装するための一つ以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメントまたは部分を表す。代わりの実装のやり方では、ブロック中に示された機能が、添付した図面内に示された命令から生じる。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際のところ実質的に同時に実行されてもよく、また必要とする機能によっては、すべてのブロックを逆の順番で実行してもよい。ブロック概略図および/またはフローチャート図解中の各ブロックならびにブロック概略図および/またはフローチャート図解中の複数のブロックの組み合わせは、専用目的のハードウェアに基づいたシステムによって実行することができ、このシステムは特定の機能または作用を実装し、専用の目的のハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせを実行することはわかるはずである。
【0026】
最後に、本明細書中で用いられる専門用語は特定の実施形態のみを説明する目的で使用されたものであり、本願発明を限定することを意図するものではない。本願明細書中で用いられている単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈から明示的に単数と示される場合を除き、複数形も含む。「含む(includes)」および/または「含んでいる(including)」という用語が本明細書中で用いられるとき、記載された特徴、整数、ステップ、工程、要素および/または部品が存在することを明らかにし、一つ以上の他の特徴、整数、ステップ、工程、要素、部品および/もしくはこれらの組み合わせが存在することまたは追加されることを除外するものではない。
【0027】
以下の特許請求の範囲中のすべての手段もしくはすべてのステップを含む機能を行なう要素と同一の構造、材料および動作またはこれらと同等なものは、特許請求の範囲で具体的に記載された特許請求の範囲中の他の要素と組み合わせてその機能を実行するための構造、材料もしくは動作を含むことを意図するものである。本願発明の詳細な説明は、図解と説明を目的として開示されているものであり、開示した形の本願発明にすべてを帰したり、それに限定したりすることを意図するものではない。本願発明の技術的範囲および主旨から逸脱しない変形例や変更例が多数存在することは当業者には明らかである。本願発明の原理を最もよく説明するために、さらに考えられる特別な使用に適する様々な変形例を有する様々な実施形態に対応する本願発明を当業者が理解することができるように、本明細書の実施形態は選択され、記載されたものである。
【0028】
以上のべたように本明細書の発明を詳細に、かつその実施形態を参照して記載したので、以下の特許請求の範囲に定義された本願発明の技術的範囲から逸脱することのない変形例や変更例が可能であることは明らかである。
【外国語明細書】