IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キリンホールディングス株式会社の特許一覧

特開2022-11975514-デヒドロエルゴステロールの製造方法
<>
  • 特開-14-デヒドロエルゴステロールの製造方法 図1
  • 特開-14-デヒドロエルゴステロールの製造方法 図2
  • 特開-14-デヒドロエルゴステロールの製造方法 図3
  • 特開-14-デヒドロエルゴステロールの製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119755
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】14-デヒドロエルゴステロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 33/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
C12P33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021471
(22)【出願日】2022-02-15
(62)【分割の表示】P 2021016753の分割
【原出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】杉原 圭彦
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AB05
4B064CA05
4B064CD09
4B064CD20
4B064CD22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】14-デヒドロエルゴステロールの製造方法の提供。
【解決手段】本発明によれば、14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよびタンパク酵素消化物を含んでなるものである、14-DHEの製造方法が提供される。本発明によればまた、14-DHEの製造方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、培地が少なくとも麦芽エキスおよび糖類を含んでなり、かつ、前記糖類の培地中の濃度が10g/L以上である、14-DHEの製造方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法であって、アスペルギル
ス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物
の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも
麦芽エキスおよびタンパク酵素消化物を含んでなるものである、方法。
【請求項2】
タンパク酵素消化物がペプトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプトンの培地中の濃度が4.5g/L以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法であって、アスペルギル
ス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物
の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも
麦芽エキスおよび糖類を含んでなるものであり、前記糖類の培地中の濃度が10g/L以
上である、方法。
【請求項5】
糖類がマルトースおよび/またはデキストロースを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
培養期間が3~5日間である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
麦芽エキス、酵母エキス、タンパク酵素消化物および糖類の培地中の合計濃度が18g
/L以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
微生物がアスペルギルス・カワチである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前培養の工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
微生物培養による14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法におい
て14-DHEの産生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を培養
して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が
1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよびタンパク
酵素消化物を含んでなるものである、方法。
【請求項11】
微生物培養による14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法におい
て14-DHEの産生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を培養
して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が
1.0×10個/mL以上であり、培地が少なくとも麦芽エキスおよび糖類を含んでな
るものであり、かつ、前記糖類の培地中の濃度が10g/L以上である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、14-デヒドロエルゴステロールの製造方法に関する。本発明はまた、微生
物培養による14-デヒドロエルゴステロールの製造方法において14-デヒドロエルゴ
ステロールの産生を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、14-デヒドロエルゴステロール(以下、単に「14-DHE」ということがあ
る)は、免疫抑制や脂質代謝改善に関連する生理活性を有する物質として注目されている
(特許文献1)。14-DHEの製造方法に関しては麹菌などの微生物発酵を利用した方
法がある(特許文献2および特許文献3)。しかしながら、これらの従来法では十分な量
の14-DHEを得るには培養期間を6日間程度とする必要があり、より効率的な14-
DHEの製造方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-204342号公報
【特許文献2】特開2013-138617号公報
【特許文献3】特開2015-123013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、14-DHEの新規な製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた
、微生物培養による14-DHEの製造方法において14-DHEの産生を増強する新規
な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アスペルギルス属に属する微生物の培養において、前記微生物の培地中
の初期胞子濃度や培地成分を特定の条件とすることで、従来法よりも短い培養期間で14
-DHEの産生量が同等またはそれ以上となることを見出した。本発明はこの知見に基づ
くものである。
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法であって、アスペル
ギルス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微
生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なく
とも麦芽エキスおよびタンパク酵素消化物を含んでなるものである、方法。
[2]タンパク酵素消化物がペプトンである、上記[1]に記載の方法。
[3]ペプトンの培地中の濃度が4.5g/L以上である、上記[2]に記載の方法。
[4]14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法であって、アスペル
ギルス属に属する微生物を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微
生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なく
とも麦芽エキスおよび糖類を含んでなるものであり、前記糖類の培地中の濃度が10g/
L以上である、方法。
[5]糖類がマルトースおよび/またはデキストロースを含む、上記[4]に記載の方法

[6]培養期間が3~5日間である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]麦芽エキス、酵母エキス、タンパク酵素消化物および糖類の培地中の合計濃度が1
8g/L以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]微生物がアスペルギルス・カワチである、上記[1]~[7]のいずれかに記載の
方法。
[9]前培養の工程をさらに含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]微生物培養による14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法
において14-DHEの産生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物
を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子
濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよびタ
ンパク酵素消化物を含んでなるものである、方法。
[11]微生物培養による14-デヒドロエルゴステロール(14-DHE)の製造方法
において14-DHEの産生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物
を培養して14-DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子
濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよび糖
類を含んでなるものであり、かつ、前記糖類の培地中の濃度が10g/L以上である、方
法。
【0007】
上記[1]の製造方法と上記[4]の製造方法を合わせて本明細書において「本発明の
製造方法」ということがある。
【0008】
本発明の方法によれば、従来法よりも短い培養期間で従来法と同等またはそれ以上の産
出量の14-DHEを得ることができるため、より効率的に生理活性物質である14-D
HEを製造することができる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例1に示された条件1~6の培養で得られたアスペルギルス・カワチの湿菌体重量を示す。
図2図2は、例1に示された条件1~6におけるアスペルギルス・カワチの湿菌体単位重量あたりの14-DHE産生量(14-DHE産生量/湿菌体単位重量)を示す。
図3図3は、例1に示された条件1~6における培養バッチあたりの14-DHE産生量(総14-DHE産生量)を示す。
図4図4は、例1に示された条件4と条件6において培養期間を4~6日間とした場合におけるアスペルギルス・カワチの湿菌体単位重量あたりの14-DHE産生量(14-DHE産生量/湿菌体単位重量)を条件4’および条件6’としてそれぞれ示す。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明の製造方法により得られる14-DHEは、下記の構造式で表される化合物であ
り、下記の物理化学的特性を有する。
【0011】
(構造式)
【化1】
【0012】
(物理化学的特性)
(1)分子量:394.63
(2)分子式:C28H42O(高分解能APCI-Orbitrap法による観測値:m/z 395.33057(M+H)+
理論値:395.33139)
(3)溶剤に対する溶解性:水に不溶、エタノールに難溶、クロロホルムに易溶
(4)紫外吸収スペクトル(MeCN):391nm
(5)1H-NMR(CD3OD): 6.15 (1H, m), 5.75 (1H, m), 5.65 (1H, dd, J = 2.2, 5.9Hz),
5.27 (1H, dd, J = 7.0, 15.1 Hz), 5.21 (1H, dd, J = 7.9, 15.1 Hz), 3.64 (1H, m),
2.51 (1H, ddd, J = 2.2, 5.1, 10.6 Hz), 2.30 (1H, m), 2.20 (1H, m), 2.20 (1H, dd
, J = 3.2, 7.8 Hz), 2.06 (1H, m), 2.05 (1H, m), 1.94 (1H, m), 1.90 (1H, m),1.87
(2H, m), 1.87 (1H, ddd, J = 3.2, 7.0, 7.3 Hz), 1.71 (1H, m), 1.59 (1H, m),1.57 (
1H, m), 1.45 (1H, m), 1.45 (1H, ddd, J = 3.2, 6.3, 6.5 Hz), 1.30 (1H, m),1.05 (3
H, d, J = 6.8 Hz ), 0.93 (3H, d, J = 7.3 Hz), 0.92 (3H, s,), 0.89 (3H, s), 0.85
(3H, d, J = 6.5 Hz), 0.83 (3H, d, J = 6.3 Hz).
(6)13C-NMR(CD3OD):149.2 (s), 143.0 (s), 135.4 (s), 132.2 (s), 132.0 (s),120.
5 (s), 120.4 (s), 117.4 (s), 70.4 (s), 58.1 (s), 46.3 (s), 45.4 (s), 42.8 (s), 4
1.0 (s), 39.0 (s), 38.9 (s), 37.8 (s), 37.0 (s), 36.0 (s), 33.1 (s), 32.0 (s), 2
1.1 (s), 19.9 (s), 19.7 (s), 19.6 (s), 17.6 (s), 16.8 (s), 14.5 (s).
【0013】
本発明で用いるアスペルギルス属に属する微生物は、14-DHEを産生することがで
きるものであれば特に限定されないが、例えば、黒麹菌(アスペルギルス・アワモリ、ア
スペルギルス・ニガー)、黄麹菌(アスペルギルス・オリゼー)、醤油用麹菌(アスペル
ギルス・ソーヤ)、白麹菌(アスペルギルス・カワチ)などが挙げられる。このうち、ア
スペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリが好ましく、特に、アスペルギルス・
カワチ(亜種を含む)は14-DHE高産生であるため好ましい。これらの麹菌の種麹は
、秋田今野社、樋口もやし社、日本醸造工業社などから入手することができる。
【0014】
本発明の製造方法の第一の態様によれば、アスペルギルス属に属する微生物を培養して
14-DHEを産生させる工程を含んでなる、14-DHEの製造方法であって、前記微
生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なく
とも麦芽エキスおよびタンパク酵素消化物を含んでなることを特徴とする製造方法が提供
される。
【0015】
本発明の製造方法の第一の態様において、アスペルギルス属に属する微生物の培養にあ
たって最初に培地に添加する該微生物の初発の胞子数、すなわち、前記微生物の培地中の
初期胞子濃度の下限値(以上または超える)は、培地1mLあたり5.0×10個、7
.5×10個、1.0×10個、1.25×10個、1.5×10個、1.75
×10個、2.0×10個とすることができ、その上限値(以下または下回る)は、
培地1mLあたり1.0×10個、2.0×10個、3.0×10個、4.0×1
個、5.0×10個とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ
任意に組み合わせることができ、上記初期胞子濃度の範囲は、例えば、培地1mLあたり
5.0×10個~5.0×10個、7.5×10個~4.0×10個とすること
ができる。培地に添加するアスペルギルス属に属する微生物の培地中の初期胞子濃度を上
記のように設定することにより、14-DHEを産生するフェーズの微生物の数を十分確
保することができるとともに、溶菌に至らない14-DHEを産生するフェーズの微生物
を十分に存在させることができる。
【0016】
本発明の製造方法の第一の態様において、培地は少なくとも麦芽エキスおよびタンパク
酵素消化物を含む。
【0017】
麦芽エキスは、麦、特に大麦の種子を発芽させ、場合により焙煎した後、それを水など
の溶媒により抽出して得られる抽出物であり、マルトース、グルコース、フルクトースな
どの還元糖を多く含み、その他ペプチド、アミノ酸、プリン、ビタミンなどを含むことが
知られている。麦芽エキスの形態は、粉末などの固体状のもの、ペースト状のものなどが
知られているところ、本発明で使用する麦芽エキスの形態は特に限定されず、ハンドリン
グの観点から粉末状のものを好ましく用いることができる。
【0018】
麦芽エキスの培地中の濃度(固形分濃度)の下限値(以上または超える)は、9g/L
、10g/L、15g/L、18g/L、21g/L、22g/Lとすることができ、そ
の上限値(以下または下回る)は、30g/L、35g/L、40g/Lとすることがで
きる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記麦芽
エキスの培地中の濃度の範囲は、例えば、10~40g/L、15~35g/L、18~
30g/L、21~30g/Lとすることができる。麦芽エキスの培地中の濃度を上記の
ように設定することにより、微生物の十分な増殖および生育に必要な栄養分を供給するこ
とができるとともに、想定する培養期間経過時に培地中の栄養分が過剰に残らないように
することにより多くの微生物が二次代謝(14-DHEは微生物の二次代謝で産生すると
考えられる)のフェーズになっているようにすることができる。なお、本発明では粉末な
ど固体状の成分以外にペースト状など水を含んだ形態の麦芽エキスを使用することができ
、その場合には、その濃度から固形分濃度に換算した上で必要量を使用すればよいことは
いうまでもない(以下、他の成分も同様)。
【0019】
タンパク酵素消化物としては、ペプトンが挙げられる。ペプトンの由来は特に限定され
ず、肉由来や酵母由来、ミルクカゼイン由来、大豆由来、血球成分由来のものであっても
よい。また、酵素の由来や種類は特に限定されず、たとえば、ペプシン、パパイン、パン
クレアチン、トリプシン、細菌由来のプロテイナーゼなどが挙げられる。
【0020】
タンパク酵素消化物の培地中の濃度(固形分濃度)の下限値(以上または超える)は、
2g/L、3g/L、4g/L、5g/Lとすることができ、その上限値(以下または下
回る)は、7g/L、9g/L、11g/Lとすることができる。これらの下限値および
上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記タンパク酵素消化物の培地中の濃
度の範囲は、例えば、2~11g/L、3~9g/L、3~g/Lとすることができる。
タンパク酵素消化物の培地中の濃度を上記のように設定することにより、微生物の十分な
増殖・生育に必要な栄養分(特に適度に小分子化された窒素源)を供給することができる
とともに、想定する培養期間経過時に培地中の栄養分(特に適度に小分子化された窒素源
)が過剰に残らないようにすることにより多くの微生物が二次代謝のフェーズになってい
るようにすることができる。なお、14-DHEは微生物の二次代謝で産生すると考えら
れる。
【0021】
本発明の製造方法の第一の態様において、培地には、上記以外の成分(例えば、酵母エ
キスや糖類)が含まれていてもよいが、これらの成分が実質的に含まれないようにするこ
ともできる。なお、培地に糖類が実質的に含まれない場合であっても麦芽エキス由来の糖
類が培地に含まれることは許容されるものとする。
【0022】
本発明の製造方法の第二の態様によれば、アスペルギルス属に属する微生物を培養して
14-DHEを産生させる工程を含んでなる、14-DHEの製造方法であって、前記微
生物の培地中の初期胞子濃度が1.5×10個/mL以上であり、かつ、培地が少なく
とも麦芽エキスを含んでなることを特徴とする製造方法が提供される。
【0023】
本発明の製造方法の第二の態様において、アスペルギルス属に属する微生物の培地中の
初期胞子濃度の下限値(以上または超える)は、培地1mLあたり5.0×10個、7
.5×10個、1.0×10個、1.25×10個、1.5×10個、1.75
×10個、2.0×10個、2.25×10個、2.5×10個とすることがで
き、その上限値(以下または下回る)は、1.0×10個、2.0×10個、3.0
×10個、4.0×10個、5.0×10個とすることができる。これらの下限値
および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記初期胞子濃度の範囲は、例
えば、5.0×10個~5.0×10個、7.5×10個~4.0×10個とす
ることができる。培地に添加するアスペルギルス属に属する微生物の培地中の初期胞子濃
度を上記のように設定することにより、14-DHEを産生するフェーズの微生物の数を
十分確保することができるとともに、溶菌に至らない14-DHEを産生するフェーズの
微生物を十分に存在させることができる。
【0024】
本発明の製造方法の第二の態様において、培地は少なくとも麦芽エキスを含む。該麦芽
エキスの培地中の濃度(固形分濃度)の下限値(以上または超える)は、10g/L、1
1g/L、12.0g/L、13g/L、14g/Lとすることができ、その上限値(以
下または下回る)は、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、40g/Lと
することができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることがで
き、上記麦芽エキスの培地中の濃度の範囲は、例えば、9~30g/L、10~25g/
L、10~20g/L、10~15g/Lとすることができる。麦芽エキスの培地中の濃
度を上記のように設定することにより、微生物の十分な増殖および生育に必要な栄養分を
供給することができるとともに、想定する培養期間経過時に培地中の栄養分が過剰に残ら
ないようにすることにより多くの微生物が二次代謝のフェーズになっているようにするこ
とができる。
【0025】
本発明の製造方法の第二の態様において、培地には上記成分以外に酵母エキス、糖類を
含んでもよい。
【0026】
酵母エキスの培地中の濃度(固形分濃度)の下限値(以上または超える)は、1.2g
/L、1.8g/L、2.4g/L、3.0g/Lとすることができ、その上限値(以下
または下回る)は、2.2g/L、2.8g/L、3.4g/Lとすることができる。こ
れらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記糖類の培地中
の濃度の範囲は、例えば、1.2~3.4g/L、1.8~2.8g/Lとすることがで
きる。酵母エキスの培地中の濃度を上記のように設定することにより、微生物の増殖およ
び生育に必要な栄養分(特に糖分、ビタミン、無機質)を供給することができるとともに
、想定する培養期間経過時に培地中の栄養分が過剰に残らないようにすることにより多く
の微生物が二次代謝のフェーズになっているようにすることができる。
【0027】
糖類には、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、乳糖、デキストロースが
挙げられるが、好ましくはマルトース、デキストロースである。糖類の培地中の濃度の下
限値(以上または超える)は、7.8g/L、10g/L、13g/L、15.6g/L
とすることができ、その上限値(以下または下回る)は16g/L、18g/L、20g
/L、25g/Lとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組
み合わせることができ、上記糖類の培地中の濃度の範囲は、例えば10~25g/L、1
3~20g/L、13~18g/Lとすることができる。
【0028】
本発明の製造方法において、麦芽エキス、酵母エキス、タンパク酵素消化物および糖類
の各成分の培地中の濃度(固形分濃度)の合計は18g/L以上(好ましくは20g/L
以上、25g/L以上)とすることができる。なお、麦芽エキス、酵母エキス、タンパク
酵素消化物および糖類の合計濃度は、培地中の各成分の添加濃度を足し合わせて算出する
ことができる。
【0029】
本発明の製造方法において、培養期間は3~5日間とすることができ、14-DHEの
産生量を最大化する観点からは好ましくは3.5~4.5日間であり、より好ましくは4
日間以下または約4日間である。
【0030】
本発明の製造方法において、培養温度の下限値(以上または超える)は20℃、25℃
とすることができ、その上限値(以下または下回る)は40℃、35℃とすることができ
る。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、培養温度の
範囲は、例えば、20~40℃、20~35℃、25~35℃、30~35℃、最も好ま
しくは約30℃とすることができる。
【0031】
本発明の製造方法において微生物培養は液体培養にて行うことができる。液体培養は、
条件制御可能な発酵槽を用いて、例えば攪拌培養、通気培養、振とう培養などを挙げるこ
とができる。培養は、好気的条件で行われる。攪拌速度や通気量は、微生物菌体の種類や
培養条件に応じて適宜選択される。
【0032】
振とう培養の場合、振とう条件は特に限定されないが、振とうの方向は1次元方向(往
復振とう)や2次元方向(旋廻振とう)とすることができ、あるいは3次元方向とするこ
とができる。例えば、培養容器として5Lのジャーファーメンターを使用するときは旋廻
振とうで、撹拌速度は100~1000rpmとすることができ、好ましくは200~8
00rpmまたは400~600rpmである。通気条件下で培養する場合には、通気量
を例えば0.4~0.6vvmとすることができる。比較的大スケールの培養でも、適切
な振とう条件とすることで、培地全体への送気が確保されるとともに、微生物の増殖など
による培地中の栄養分や増殖等を阻害する物質の偏りが防止され、14-DHEの効率的
な産生が確保される。
【0033】
本発明の製造方法は、既に述べた培養工程の前に前培養の工程をさらに含むことができ
る(本明細書では、既に述べた培養工程を「前培養」と区別するために「本培養」という
ことがある)。前培養は、微生物の培養にあたって初発の胞子数をあらかじめ所望の数お
よび生育フェーズに調整する観点から行うものであり、例えば、以下のように実施するこ
とができる。
【0034】
本発明の製造方法において、前培養の培養期間は特に限定されないが、例えば8~14
4時間、10~80時間、15~40時間、15~30時間とすることができ、最も好ま
しくは24時間である。本発明の製造方法において、前培養の培養温度、振とう条件およ
び通気量は本培養の培養温度、振とう条件および通気量と同様の条件とすることができる
。ここで、前培養はフラスコ等で比較的小スケールで行うところ、振とう培養器を使用す
る場合に、振とうの態様は、培養容器の形状に合わせて選択することができる。例えば、
培養容器として坂口フラスコを使用するときは振幅を1次元方向(往復振とう)で行い、
三角フラスコを使用するときは振幅を2次元方向(旋廻振とう)で行う。攪拌速度として
、例えば、培養容器の容量が500mLのときの振幅数(spm)または回転数(rpm
)は、10~500、50~300、70~200、さらに好ましくは約120であり、
最も好ましくは坂口フラスコを使用した場合の約120spmである。
【0035】
本発明の製造方法は、本培養の工程の後に、本培養により得られた菌体を含む発酵産物
を適切な溶媒を用い、一般的な手法により抽出する工程をさらに含むことができる。また
、上記発酵産物を抽出する工程には、超音波処理による菌体破壊工程や後記浸漬工程を組
合わせたものとすることができる。
【0036】
溶媒抽出に用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノール、n-プロパノール、イ
ソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。中で
もエタノール、メタノール、酢酸エチル、およびヘキサンが好ましい。これらの溶媒は2
種類以上を混合して用いてもよく、また2種類以上の有機溶媒を用いて2段階以上の溶媒
抽出工程を行なってもよい。あるいは、そのような有機溶媒に代えて、またはそれらと組
み合わせて、食用油脂を抽出溶媒として用いることができる。食用油脂は、ラードまたは
ヘットなどの動物性油脂であってもよいが、好ましくは植物性油脂であり、例えば大豆油
、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、綿実油、ピーナ
ッツオイル、グレープシードオイル、えごま油、つばき油、亜麻仁油などが挙げられる。
【0037】
上記発酵産物を抽出する工程は、例えば、抽出工程は、菌体を含む発酵産物をエタノー
ルと水を含む浸漬液に浸漬する工程と、浸漬工程後に得られた菌体を含む混合物に有機溶
媒および/または食用油脂を加えて抽出する工程とすることができる。なお、食用油脂に
よる抽出工程においては、前記浸漬工程は必須のものとなる。前記浸漬工程において、培
養により得られた菌体を含む発酵産物を浸漬するエタノールと水を含む浸漬液中のエタノ
ールの濃度は20(w/w)%以上、特に30(w/w)%以上、とりわけ40(w/w
)%以上であることが好ましく、かつ95(w/w)%以下、特に90(w/w)%以下
、とりわけ80(w/w)%以下であることが好ましい。浸漬液は、水とエタノールとか
らなるエタノール水溶液であってもよい。エタノールと水を含む浸漬液は、発酵産物に含
まれる菌体の細胞膜または細胞壁を弱め、菌体内部に蓄えられた14-DHEが抽出され
やすくする効果を奏すると考えられる。浸漬は、1時間以上、特に6時間以上、とりわけ
12時間以上、さらには24時間以上の時間をかけて行うことが好ましい。
【0038】
エタノールと水を含む浸漬液に浸漬した発酵産物は、次いで有機溶媒および/または食
用油脂を用いた抽出工程に供される。食用油脂は、培養産物1gに対して10mL以下、
特に8mL以下、とりわけ6mL以下の量で用いると、得られる麹菌発酵エキス中の14
-DHE濃度が高くなるため好ましい。なお、この浸漬工程を経た抽出工程においては、
菌体を破壊するための超音波処理などは特に必要ない。エタノールと水を含む浸漬液に浸
漬したことにより、菌体の細胞膜または細胞壁は十分弱まっており、単に食用油脂を加え
て攪拌するだけで菌体に蓄えられた14-DHEを抽出することができる。より効率的に
14-DHEが抽出できるよう、抽出工程は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0039】
本発明によれば、微生物培養による14-DHEの製造方法において14-DHEの産
生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を液体培養して14-DH
Eを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×10
個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよびタンパク酵素消化物を含
んでなることを特徴とする方法が提供される。本発明の上記増強方法は、初期胞子濃度お
よびタンパク酵素消化物については本発明の製造方法の第一の態様に関する記載に従って
実施することができ、それ以外は本発明の製造方法に関する記載に従って実施することが
できる。
【0040】
本発明によればまた、微生物培養による14-DHEの製造方法において14-DHE
の産生を増強する方法であって、アスペルギルス属に属する微生物を液体培養して14-
DHEを産生させる工程を含んでなり、前記微生物の培地中の初期胞子濃度が1.0×1
個/mL以上であり、かつ、培地が少なくとも麦芽エキスおよび糖類を含んでなるこ
とを特徴とする方法が提供される。本発明の上記増強方法は、初期胞子濃度については本
発明の製造方法の第二の態様に関する記載に従って実施することができ、それ以外は本発
明の製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【実施例0041】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定される
ものではない。
【0042】
例1:14-DHEの発酵生産に関する培養条件の検討(1)
例1では、14-DHEの発酵生産に関する培養条件として本培養の培地中の初期胞子
濃度(添加胞子数)と培地組成に着目して検討した。
【0043】
(1)方法
ア 前培養
14-DHEを産生する菌体としてアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii
NBRC4308株(独立行政法人製品評価技術基盤機構より分譲)を使用した。前培養
の培地は、麦芽エキスとしてMalt extract(Bacto Malt ext
ract 218630)6.0g/L、マルトース(富士フイルム和光純薬社)1.8
g/L、デキストロース(富士フイルム和光純薬社)6.0g/L、酵母エキスとしてY
east Extract(Difco社)1.2g/Lとなるように培地150mLを
容量500mLの坂口フラスコにおいて調製した。そして、この培地に胞子濃度が1.0
×10個/mLとなるようにNBRC4308株を播種して30℃、120spmの条
件で24時間培養を行った。
【0044】
イ 本培養
本培養の培地は、表1に示す組成・分量にて容量5Lのジャファーメンター(丸菱バイ
オエンジ社)において3Lで調製した。そして、上記アの前培養液を表1の条件にて移植
した後、30℃、400rpm、0.5vvmにて96時間培養(4日間)(条件1)ま
たは144時間培養(6日間)(条件2~6)を行った。培地成分には、ペプトン(Di
fco社)を使用し、麦芽エキス、酵母エキス、マルトースおよびデキストロースは前培
養と同様のものを使用した。なお、使用したペプトンは牛由来タンパク質を酵素消化した
タンパク酵素消化物である。
【0045】
【表1】
【0046】
ウ 14-DHEの抽出および定量
上記イにおいて培養した菌体を回収するために、培養液(液体麹)を、濾紙を用いて吸
引濾過を行い、菌体を水で洗浄した。その後、再び吸引ろ過を行い、水分を極力除去した
。回収した湿菌体2gにエタノールを6mL添加し1晩静置し、水3mL、ヘキサン6m
Lを加え、2分間激しく攪拌した後、超音波処理を30分間行った。その後、10,00
0rpmで遠心分離し、上清(ヘキサン層)のみを回収した。回収したヘキサン層を乾固
し、ヘキサン層以外の残渣(懸濁した水層)にヘキサン6mLを加え、攪拌、超音波処理
および遠心分離を再度実施し、上清のヘキサン層を回収し、乾固した。この抽出操作を湿
菌体2gにつき2回行った。得られたヘキサン乾固物にエタノール2mLを添加し、2-
プロパノールで40倍希釈したのち液体クロマトグラグラフィー(HPLC)に20μL
供した。HPLCの条件は表2の通りである。この条件では14-DHEは12.5分前
後に溶出される。14-DHE産生量は14-DHE標品(発酵産生・精製で作製)を使
用した検量線法により算出した。
【0047】
【表2】
【0048】
(2)結果
結果は、図1~3に示す通りであった。従来法と同等の培養条件(条件1)では、麦芽
エキスを含むエキス分が一定濃度以上である培地で6日間培養した場合、湿菌体重量は約
90g、湿菌体単位重量あたりの14-DHE産生量は約680μg、総14-DHE産
生量は約60mg/3Lであった。
【0049】
ア 初期胞子濃度
初期胞子濃度(本培養における添加胞子数)を条件1の8倍にした場合は、4日間培養
(条件2)の条件下でも6日間培養(条件1)と同等以上の湿菌体重量(図1)、湿菌体
単位重量あたりの14-DHE産生量(図2)および総14-DHE産生量(図3)を達
成できることが確認された。
【0050】
イ 培地組成
i)培地成分
<麦芽エキス+ペプトン>
初期胞子濃度を8倍まで高めた上で、培地組成を麦芽エキスとペプトンの2成分の構成
に変更し、培地成分の合計濃度を条件1および条件2(いずれも18g/L)の2倍程度
(条件4:培地成分の合計濃度30g/L)まで上げた場合は(条件4)、条件1(6日
間培養)および条件2と比較して、4日間培養で湿菌体重量と湿菌体重量あたりの14-
DHE量が増加し(図1、2)、総14-DHE量は6日間培養(条件1)の約3倍とな
ることが確認された(図3)。
【0051】
<麦芽エキス+酵母エキス>
一方で、培地成分としてペプトンの代わりに酵母エキスを添加した場合は(条件5)、
湿菌体重量が明らかに増える一方で湿菌体重量あたりの14-DHE量および総14-D
HE量が減少することが確認された。
【0052】
ii)培地濃度
条件1(6日間培養)および条件2とは培地成分を変えずに培地成分の合計濃度を2倍
程度にした場合(条件3および6:培地成分合計30g/L)、添加胞子数を8倍に高め
たときは(条件3)湿菌体重量のみが顕著に増え、湿菌体単位重量あたりの14-DHE
量および総14-DHE量は明らかに減少することが確認された。一方で、初期胞子濃度
を12倍まで高めた場合は(条件6)、4日間で湿菌体重量、湿菌体重量あたりの14-
DHE量が6日間培養(条件1)よりも1.5倍程度高くなり、総14-DHE量として
条件1(6日間培養)の約3倍となることが確認された(図3)。
【0053】
これらの結果から、同じ培地組成で初期胞子濃度を8倍とした場合は、本培養4日目時
点で14-DHEがほとんど産生されなかったが、初期胞子濃度をさらに高めた場合(例
えば、12倍まで高めた場合)は、菌体の生育フェーズから二次代謝フェーズへの切り替
わりが早期に起こり、菌体二次代謝物である14-DHEの産生が早まった可能性が考え
られる。
【0054】
例2:14-DHEの発酵生産に関する培養条件の検討(2)
例1の結果から、14-DHEの発酵生産に関する培養条件のうち初期胞子濃度や培地
組成の培養条件を変更することで、培養期間が4日間の場合でも、6日間の場合(例1の
条件1)と同等以上の14-DHE産生量を得られることが確認された(特に例1の条件
4と条件6)。そこで、例2では、例1の条件4および6と同様の初期胞子濃度および培
地組成の培養条件下で、培養期間を4日間から延ばした場合に14-DHE産生量にどの
ような影響を及ぼすかを検討した。
【0055】
(1)方法
培養期間を5日間および6日間としたこと以外は、例1の条件4と条件6と同じ条件で
行った。
【0056】
(2)結果
結果は、図4に示す通りであった。具体的には、培地組成が例1の条件4(●)の場合
は、培養期間が4日間と5日間で菌体あたりの14-DHE産生量はほとんど変化せず、
6日目では減少した(図4の条件4’)。また、6日目には菌体量も減少しており溶菌し
た可能性が考えられる。一方、培地組成が例1の条件6(▲)の場合は、培養期間が5日
間で4日間よりも菌体単位重量あたりの14-DHE産生量が減少した(図4の条件6’
)。
【0057】
例3:14-DHEの発酵生産に関する培養条件の検討(3)
例1の条件4において、培地成分として肉由来のペプトンを添加した場合に14-DH
E産生量の増大が確認された。この結果は、窒素源としてのタンパク酵素消化物の使用が
、アスペルギルス属に属する微生物による14-DHEの産生量の増大に寄与するためと
考えられた。そこで、例3では、ペプトンの由来(種類)を代えた場合の14-DHE産
生量に及ぼす影響について検討した。
【0058】
(1)方法
ペプトンとして酵母由来ペプトン(オリエンタル酵母工業社)を使用したこと以外は、
例1の条件4と同じ条件で行った。
【0059】
(2)結果
酵母由来ペプトンを使用した場合、バッチあたりの産生量はペプトン非含有培地(例1
の条件1)に対して約1.75倍であった(データ示さず)。この結果から、タンパク酵
素消化物としてペプトンの種類(由来)によらず14-DHE産生量が増加することが確
認された。
図1
図2
図3
図4