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特開2022-119763グリカン相互作用化合物および使用方法
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  • 特開-グリカン相互作用化合物および使用方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119763
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】グリカン相互作用化合物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220809BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220809BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220809BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220809BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/44
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K38/08
A61P35/00
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/513
A61K31/4745
A61K31/282
C12P21/08
C40B40/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072796
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2018524357の分割
【原出願日】2016-11-10
(31)【優先権主張番号】62/254,278
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/274,572
(32)【優先日】2016-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/287,666
(32)【優先日】2016-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/293,989
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/345,515
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/382,835
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】イバロン、デイビッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】プレンダーガスト、ジリアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ベーレンス、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ルゴフスキー、アレクセイ アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ドランスフィールド、ダニエル ティ.
(57)【要約】
【課題】疾患ならびに異常細胞および組織と関連するグリカンを含めたグリカンを結合することができる治療用抗体、さらに、このような抗体、および異常細胞および組織を標的とするこれらの抗体を使用する方法を開発するより良好な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、グリカン相互作用抗体、がんを含めたヒト疾患の処置および予防において有用なグリカン相互作用抗体を産生する方法を提供する。このようなグリカン相互作用抗体は、ヒト化抗体、その誘導体およびフラグメント、ならびに関連する組成物およびキットを含む。処置および診断のためにグリカン相互作用抗体を使用する方法が含まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリカン相互作用化合物、例えば、抗体、ならびに生物からのグリコシル化された物質を検出および/または除去するためのこのような化合物および関連する組成物の開発のための方法に関する。本発明はまた、異常なグリコシル化に関連する疾患、例えば、がんを、本明細書において提示するグリカン相互作用化合物および組成物で処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異常なグリコシル化は、癌腫において一般に観察される他の変異のいくつかを伴う。全ての癌腫の約80%は、切断型グリカンであるTn抗原、およびシアル酸付加形態であるシアリルTn(STn)を発現していると推定される。殆ど例外なく、TnおよびSTnは、正常な健常組織において発現していない。さらに、非ヒト免疫原性シアル酸であるN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)は、Neu5Gc-STn(GcSTn)の形態で癌腫、例えば、乳がん上で異なって発現しているように思われる。
【0003】
複数の異常なグリコシル化形態がヒトがんにおいて記載されてきており、特異的腫瘍ターゲッティングに適した細胞表面分子の1クラスとして特定のグリカンが同定されてきた((非特許文献1))。例えば、様々なヒトがんタイプ(例えば、とりわけ、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、肺、および卵巣がん)は、正常なヒト組織においてまれであるSTn抗原が高発現していることが示される((非特許文献2);(非特許文献3))。さらに、腫瘍関連ムチン上のSTnの存在は、予後不良を伴うがんと関連し、それによって、がん検出および標的療法のための魅力的なエピトープと考えられる((非特許文献4);(非特許文献5);(非特許文献6);(非特許文献7);(非特許文献8))。TnおよびSTn形成は、活性T-シンターゼの形成に必要とされる分子シャペロンをコードする遺伝子Cosmcにおける体細胞変異と関連する((非特許文献9);(非特許文献10))。これはまた、シアリルトランスフェラーゼ、ST6GalNAc-Iの発現の増加に起因し得る((非特許文献11);(非特許文献12))。STnの新規の発現は、癌腫細胞をモジュレートし、悪性の表現型を変化させ、より攻撃的な細胞挙動をもたらし得る((非特許文献13))。STnは悪性組織において高度に発現しているが、健康なヒト細胞上では低レベルがまた見出される((非特許文献14);(非特許文献15))。STn単独は、がん検出および治療のための標的として注目を集めてきた((非特許文献1))。STnはまたがん幹細胞と関連するムチンにおいて存在し((非特許文献16))、STnは免疫抑制において結び付けられている((非特許文献17))。
【0004】
STnの存在に加えて、他のグリコシル化の変化ががんにおいて記載されてきた。これらの1つは、Neu5Gcが関与する。N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)およびNeu5Gcは、哺乳動物細胞表面上の2つの主要なシアル酸である。Neu5AcおよびNeu5Gcは、Neu5Gcが炭素5に付着している化学基と会合しているさらなる酸素原子を含むことのみが異なる。機能性遺伝子の喪失によって、ヒトは、Neu5GcではなくNeu5Acの形態のシアル酸のみ合成することができる。しかし、Neu5Gcは、動物に由来する食事源、例えば、赤肉からヒトに代謝的に組み込むことができる((非特許文献18);(非特許文献19);(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)および(特許文献4))。Neu5Gcは、ヒト腫瘍において有意に豊富であり((非特許文献20);(非特許文献21);(非特許文献22);(非特許文献23);(非特許文献24);(非特許文献25)および(非特許文献26))、正常なヒト組織において著しく低く、これは数十年の間見過ごされてきた((非特許文献27);(非特許文献28);(非特許文献29))。健康なヒト組織と比較したがん組織における食事に由来するNeu5Gcの代謝性蓄積の増加は、少なくとも3つの要因によって恐らく説明される。競合する内因性Neu5Acの産生不足を伴う急速な成長、成長因子によって誘発されるマクロピノサイトーシスの増進((非特許文献30);(非特許文献31);(非特許文献32);(非特許文献33))、および低酸素によるリソソームのシアル酸輸送体遺伝子であるシアリンの遺伝子発現のアップレギュレーション((非特許文献34))。さらに、現在までに試験された全てのヒトは、非ヒトNeu5Gcに対するポリクローナル抗体のレザバーを含み、これによってNeu5Gcは異種自己抗原の第1の例となっている((非特許文献35);(非特許文献36))。抗Neu5Gc応答にも関わらず悪性腫瘍における食事性のNeu5Gcの蓄積は、低悪性度慢性炎症を誘発することによって腫瘍進行を促進することが示された((非特許文献37))。このように、ヒト腫瘍上のNeu5Gc含有グリカンエピトープは、薬物ターゲッティングのための貴重な可能性を表す。最近の研究は、がん患者における、Neu5Ac-STn(AcSTn)ではなく、Neu5Gc含有STn(GcSTn)に対する抗体の存在を示唆し、がん検出のための特異的バイオマーカーとしてのこれらの可能性を探究している((非特許文献38))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,682,794号明細書
【特許文献2】米国特許第8,084,219号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0142903号明細書
【特許文献4】国際公開第2010030666号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】チーバー,M.A.(Cheever,M.A.)ら著、臨床がんリサーチ(Clin Cancer Res.)、2009年9月1日;15巻(17号):5323~37頁
【非特許文献2】カーレン,P.(Karlen,P.)ら著、胃腸病学(Gastroenterology)、1998年12月;11 5巻(6号):1395~404頁
【非特許文献3】オオノ,S.(Ohno,S.)ら著、抗がんリサーチ(Anticancer Res.)、2006年11月~12月;26巻(6A):4047~53頁
【非特許文献4】カオ,Y.(Cao,Y.)ら著、ウィルヒョーアーカイブ(Virchows Arch.)1997年9月;431巻(3号):159~66頁
【非特許文献5】ジュリアン,S.(Julien,S.)ら著、英国がんジャーナル(Br J Cancer.)2009年6月2日;100巻(11号):1746~54頁
【非特許文献6】イッツコウィッツ,S.H.(Itzkowitz,S.H.)ら著、がん(Cancer.)、1990年11月1日;66巻(9号):1960~6頁
【非特許文献7】モットー,Y.(Motoo,Y.)ら著、腫瘍学(Oncology.)、1991年;48巻(4号):321~6頁
【非特許文献8】コバヤシ,H.(Kobayashi,H.)ら著、臨床腫瘍学ジャーナル(J Clin Oncol.)、1992年1月;10巻(1号):95~101頁
【非特許文献9】ジュ,T.(Ju,T.)ら著、ネイチャー(Nature)、2005年10月27日;437巻(7063号):1252頁
【非特許文献10】ジュ,T.(Ju,T.)ら著、がんリサーチ(Cancer Res.)、2008年3月15日;68巻(6号):1636~46頁
【非特許文献11】イケハラ,Y.(Ikehara,Y.)ら著、糖生物学(Glycobiology.)、1999年11月;9巻(11号):1213~24頁
【非特許文献12】ブロックハウゼン,I.(Brockhausen,I.)ら著、生物化学(Biol Chem.)、2001年2月;382巻(2号):219~32頁
【非特許文献13】ピンホー,S.(Pinho,S.)ら著、がんレター(Cancer Lett.)、2007年5月8日;249巻(2号):157~70頁
【非特許文献14】ジャス,J.R.(Jass,J.R.)ら著、病理学ジャーナル(J Pathol.)、1995年6月;176巻(2号):143~9頁
【非特許文献15】カークビー,S.(Kirkeby,S.)ら著、口腔生物学アーカイブ(Arch Oral Biol.)、2010年11月;55巻(11号):830~41頁
【非特許文献16】エンゲルマン(Engelmann)ら著、がんリサーチ(Cancer research)、2008年、68巻、2419~2426頁
【非特許文献17】カラスカル,M.A.(Carrascal,M.A.)ら著、分子腫瘍学(Molecular Oncology.)、2014年、8巻(3号):753~65頁
【非特許文献18】タングボラヌンタクル,P.(Tangvoranuntakul,P.)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、2003年10月14日;100巻(21号):12045~50頁
【非特許文献19】グエン,D.H.(Nguyen,D.H.)ら著、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、2005年7月1日;175巻(1号):228~36頁
【非特許文献20】ヒガシ,H.(Higashi,H.)ら著、がんリサーチ(Cancer Res.)、1985年8月;45巻(8号):3796~802頁
【非特許文献21】ミヨシI.(Miyoshi I.)ら著、分子免疫学(Mol Immunol.)、1986年、23巻:631~638頁
【非特許文献22】ヒラバヤシ,Y.(Hirabayashi,Y.)ら著、日本がんリサーチジャーナル(Jpn J Cancer Res.)、1987年、78巻:614~620頁
【非特許文献23】カワチ.S(Kawachi.S)ら著、アレルギーおよび応用免疫学の国際アーカイブ(Int Arch Allergy Appl Immunol.)、1988年、85巻:381~383頁
【非特許文献24】ディバイン,P.L.(Devine,P.L.)ら著、がんリサーチ(Cancer Res.)、1991年、51巻:5826~5836頁
【非特許文献25】マリフ,Y.N.(Malykh,Y.N.)ら著、生化学(Biochimie.)、2001年、83巻:623~634頁
【非特許文献26】イノウエ,S.(Inoue,S.)ら著、2010年、糖生物学(Glycobiology)20巻(6号):752~762頁
【非特許文献27】ディアズ,S.L.(Diaz,S.L.)ら著、プロスワン(PLoS One)、2009年、4巻:e4241頁
【非特許文献28】タングボラヌンタクル,P.(Tangvoranuntakul,P.)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、2003年、100巻:12045~12050頁
【非特許文献29】ヴァルキ,A.(Varki,A.)ら著、グリココンジュゲートジャーナル(Glycoconj J.)、2009年、26巻:231~245頁
【非特許文献30】ダーマワーダナ,S.(Dharmawardhane,S.)ら著、細胞の分子生物学(Mol Biol Cell.)、2000年10月;11巻(10号):3341~52頁
【非特許文献31】シモンセン,A.(Simonsen,A.)ら著、細胞生物学の現在のオピニオン(Curr Opin Cell Biol.)、2001年8月;13巻(4号):485~92頁
【非特許文献32】ジョハネス,L.(Johannes,L.)ら著、輸送(Traffic.)、2002年7月;3号(7巻):443~51頁
【非特許文献33】アミエル,M.(Amyere,M.)ら著、医微生物学の国際ジャーナル(Int J Med Microbiol.)、2002年2月;291巻(6~7号):487~94頁
【非特許文献34】イン,J.(Yin,J.)ら著、がんリサーチ(Cancer Res.)、2006年3月15日;66巻(6号):2937~45頁
【非特許文献35】パドラー-カラヴァニ,V.(Padler-Karavani,V.)ら著、糖生物学(Glycobiology.)、2008年10月;18巻(10号):818~30頁
【非特許文献36】ヴァルキ,N.M.(Varki,N.M.)ら著、病理学年次レビュー(Annu Rev Pathol.)、2011年;6巻:365~93頁
【非特許文献37】ヘドランド,M.(Hedlund,M.)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、2008年12月2日;105巻(48号):18936~41頁
【非特許文献38】パドラー-カラヴァニ,V.(Padler-Karavani,V.)ら著、がんリサーチ(Cancer Res.)、2011年5月1日;71巻(9号):3352~63頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
疾患ならびに異常細胞および組織と関連するグリカンを含めたグリカンを結合することができる治療用抗体が当技術分野で依然として必要とされている。さらに、このような抗体、および異常細胞および組織を標的とするこれらの抗体を使用する方法を開発するより良好な方法が依然として必要とされている。本開示は、関連する化合物および方法を提供することによって、これらの必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号114~120、140、および141からなる群から選択されるアミノ配列と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有するCDR-H3相補性決定領域を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体を提供する。VHは、配列番号105、106、および136からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-H1、ならびに配列番号107~113、および137~139からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するCDR-H2を含み得る。
【0009】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号89、91、93、95~98、101~103、133~135、および148からなる群から選択されるアミノ配列と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有するCDR-L3を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。VLは、配列番号121~129、および142~146からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-L1、ならびに配列番号77、79~81、83~86、88、130~132、および147からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-L2を含み得る。抗体は、配列番号206~216からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのヒトフレームワーク領域を有し得る。
【0010】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号220~224、230~234、237~241、249~253、および256~260からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するVHを含む。抗体は、配列番号217~219、225~229、235、236、242~248、254、および255からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するVLを含み得る。VHは、配列番号220~224からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し得、VLは、配列番号217~219からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し得る。VHは、配列番号237~241からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し得、VLは、配列番号235および236からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し得る。抗体は、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、およびIgG4からなる群から選択されるアイソタイプであり得る。抗体は、ヒトまたはヒト化抗体であり得る。抗体は、ヒトIgG1抗体であり得る。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、記載されている抗体をコードし得る構築物を提供する。構築物を含み得る細胞をさらに提供する。構築物は、ベクター中に含まれ得る。一部の実施形態では、本開示の抗体をコードする構築物を含む細胞から産生される抗体を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、約0.01nM~約30nMの最大半量有効濃度(EC50)を伴って細胞関連STnに結合する抗体を提供する。
一部の実施形態では、抗体は、治療剤にコンジュゲートし得る。治療剤は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される細胞毒性剤であり得る。抗体は、約0.1nM~約20nMの最大半量阻害濃度(IC50)を伴ってSTn関連細胞を死滅させることができ得る。
【0013】
一部の実施形態では、開示されている抗体を投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。がんは、少なくとも1つの腫瘍を含み得る。腫瘍の体積は、処置によって低減し得る。腫瘍サイズの低減は、少なくとも20%であり得る。腫瘍は、少なくとも1種の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)を含み得る少なくとも1個の腫瘍細胞を含み得る。TACAは、シアリル(α2,6)N-アセチルガラクトサミン(STn)を含み得る。がんは、乳がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、前立腺がん、および肝臓がんの1つもしくは複数を含み得る。抗体は、化学療法剤および/または治療用抗体と組み合わせて投与し得る。化学療法剤は、フルロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンの少なくとも1つから選択し得る。治療用抗体は、ベバシズマブおよび抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体の少なくとも1つから選択し得る。抗体は、約0.1mg/kg~約30mg/kgの用量で投与し得る。用量は、約2.5mg/kg~約5mg/kgであり得る。抗体は、処置の約1日後から処置の約1カ月後に得た少なくとも1つの対象試料において検出可能であり得る。抗体は、MMAEとコンジュゲートし得る。試料中のMMAEと抗体の、薬物と抗体の比(DAR)は、少なくとも1つの対象試料において50%未満で変化し得る。
【0014】
一部の実施形態では、細胞または試料と開示されている抗体とを接触させることを含む、少なくとも1種のTACAの存在について細胞または試料をスクリーニングする方法を提供する。少なくとも1種のTACAは、STnを含み得る。試料は、生体試料であり得る。生体試料は、対象から得てもよい。対象は、がんを有するか、またはがんを有することが疑われていてもよい。生体試料は、細胞、組織、組織切片、および体液の1つもしくは複数を含み得る。抗体は、検出可能な標識を含み得る。抗体は、検出剤を使用して検出し得る。検出剤は、二次抗体であり得る。二次抗体は、検出可能な標識を含み得る。方法は、対象におけるがんを診断するために使用し得る。方法は、コンパニオン診断の部分であり得る。コンパニオン診断は、がんの重症度を層別化すること、がんの危険性を層別化すること、臨床治験のために対象を選択すること、治療レジメンを開発すること、治療レジメンをモジュレートすること、処置の安全性を増加させること、および処置の有効性をモジュレートすることの1つもしくは複数のために使用し得る。方法は、タンパク質アレイの使用を含み得る。タンパク質アレイは、試料中に存在する1種もしくは複数のタンパク質を結合するように構成された1種もしくは複数の抗体を含み得る。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、記載した方法を実施するためのキットを提供する。キットは、記載した抗体を含み得る。キットは、二次抗体を含み得る。二次抗体は、検出可能な標識を含み得る。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、記載されている抗体の1つもしくは複数を含む組成物を提供する。組成物は、少なくとも1種の添加剤を含み得る。組成物は、薬学的に許容される添加剤を含み得る。組成物は、抗体をコーティングした薬剤を含み得る。抗体をコーティングした薬剤は、粒子、ナノ粒子、タンパク質、融合タンパク質、脂質、リポソーム、および細胞の1つもしくは複数を含み得る。抗体は、抗体フラグメントであり得る。抗体フラグメントは、Fabフラグメントおよび単鎖Fvの1つもしくは複数から選択し得る。
【0017】
一部の実施形態では、本開示は、合成構築物を有する改変された細胞を提供する。合成構築物は、細胞のSTnレベルをモジュレートする因子をコードし得る。因子は、STn合成に関与する少なくとも1種の因子を含み得る。因子は、(アルファ-N-アセチル-ノイラミニル-2,3-ベータ-ガラクトシル-1,3)-N-アセチルガラクトサミニド、アルファ-2,6-シアリルトランスフェラーゼI(ST6GalNAc I)、T-シンターゼ、およびコア1ベータ3-ガラクトシルトランスフェラーゼ特異的分子シャペロン(COSMC)の少なくとも1つから選択し得る。改変された細胞は、少なくとも1種の改変されていない細胞と比較したとき、上昇したSTnレベルを有し得る。因子は、ST6GalNACの発現を低減し得る。因子は、阻害性リボ核酸(RNA)分子であり得る。改変された細胞は、改変された卵巣腫瘍細胞であり得る。改変された卵巣腫瘍細胞は、SKOV3細胞、OVCAR3細胞、OVCAR4細胞、BRCA1変異腫瘍細胞、および非BRCA1変異腫瘍細胞の1つもしくは複数から選択し得る。
【0018】
一部の実施形態では、抗体結合を特性決定する方法を提供する。方法は、グリカンアレイと抗体とを接触させることを含み得る。グリカンアレイは、複数種のグリカンを含み得る。複数のグリカンは、Neu5Acα6GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;Neu5Gcα6GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;Neu5Acα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2;Neu5Gcα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2;Neu5Acα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2;Neu5Gcα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2;Neu5Acα6GalβO(CH2)2CH2NH2;Neu5Gcα6GalβO(CH2)2CH2NH2;GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;Galβ3GalNAcβO(CH2)2CH2NH2;Gal3βGalNAcαO(CH2)2CH2NH2;Neu5Acα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;およびNeu5Gcα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2のそれぞれの1つもしくは複数からなるグリカンのパネルを含み得る。複数のグリカンのそれぞれは、ネオ糖脂質プローブの部分であり得る。
【0019】
上記および他の目的、フィーチャおよび利点は、同様の参照文字が異なる図を通して同じ部分を指す添付図面において例示するように、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかである。図面は必ずしも尺度通りではなく、代わりに本発明の様々な実施形態の原理を例示することに重点を置く。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】α2,6-シアル酸付加N-アセチルガラクトサミン(STn)を示し、抗STn抗体結合に関与している推定上のエピトープを示す図。各図における最も大きな楕円形は、4つの抗体群のそれぞれによって標的とされるSTの特定の領域を示す。これらの群は、群1抗体(図1Aにおいて示す大きな楕円形の領域への結合)を含む。
図1B】α2,6-シアル酸付加N-アセチルガラクトサミン(STn)を示し、抗STn抗体結合に関与している推定上のエピトープを示す図。各図における最も大きな楕円形は、4つの抗体群のそれぞれによって標的とされるSTの特定の領域を示す。これらの群は、群2抗体(図1Bにおいて示す大きな楕円形の領域への結合)を含む。
図1C】α2,6-シアル酸付加N-アセチルガラクトサミン(STn)を示し、抗STn抗体結合に関与している推定上のエピトープを示す図。各図における最も大きな楕円形は、4つの抗体群のそれぞれによって標的とされるSTの特定の領域を示す。これらの群は、群3抗体(図1Cにおいて示す大きな楕円形の領域への結合)を含む。
図1D】α2,6-シアル酸付加N-アセチルガラクトサミン(STn)を示し、抗STn抗体結合に関与している推定上のエピトープを示す図である。各図における最も大きな楕円形は、4つの抗体群のそれぞれによって標的とされるSTの特定の領域を示す。これらの群は、群4抗体(図1Dにおいて示す大きな楕円形の領域への結合)を含む。
図2】可変ドメインの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
導入
本発明によるものは、本明細書においてグリカンと称される炭水化物基を含むエピトープに対して特異的であるか、または相互作用する抗体である。本明細書に記載されているいくつかのグリカン相互作用抗体は、生物学的薬剤として使用し得る。他の実施形態は、このようなグリカン相互作用抗体を生じさせるための方法を提供する。
【0022】
天然で、STnは、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)またはN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)でシアル酸付加し得る。本発明によるグリカン相互作用抗体は、任意のSTn(汎STn抗体)を有するグリカン、Neu5Acを含むSTn、特に、(AcSTn)を有するグリカン、またはNeu5Gcを含むSTn、特に、(GcSTn)を有するグリカンに向けられ得る。一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、がんに関連するグリカン抗原、例えば、α2,6-シアル酸付加N-アセチルガラクトサミン(STn)を標的とする。
【0023】
一部の実施形態では、本開示は、グリカン相互作用抗体を産生する方法を提供する。このような方法は、STn(例えば、AcSTnおよび/またはGcSTn)を含めた1種もしくは複数の抗原に対する免疫応答を生じさせるためのマウスの使用を含み得る。本明細書に記載のように、いくつかの方法は、マウスの免疫化によって産生されたこのように得られた抗体を操作するために利用し得る。このような方法は、免疫化されているマウスの系統および/または性別を変更すること、使用される抗原を変更すること、抗原投与に含まれるアジュバントのタイプおよび用量ならびにハイブリドーマ融合の開始前の免疫化の時間経過を変更することを含み得る。
【0024】
一部の実施形態では、本開示は、グリカン相互作用抗体を使用してがん幹細胞を排除するための方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、グリカン相互作用抗体を使用してがん幹細胞を排除することによって、対象においてがんを処置する方法を提供する。いくつかの態様では、グリカン相互作用抗体は、単独で使用し得る。他の態様では、グリカン相互作用抗体は、化学療法剤と組み合わせて使用される。
【0025】
さらに提供するのは、本明細書において開示されているグリカン相互作用抗体の最適化されたヒト化およびコンジュゲートされた形態である。さらに、本発明の抗体および/または方法を含むキット、アッセイおよび試薬を提示する。
【0026】
定義
隣接した:本明細書において使用する場合、用語「隣接した」は、所与の実体に近接しているか、隣接しているか、または隣であるものを指す。一部の実施形態では、「隣接した残基」は、互いに連結しているグリカン鎖内の糖残基である。一部の実施形態では、「隣接したグリカン」は、直接接触しているか、または2つの間に別のグリカンを伴わずに近接している、互いに隣り合っているグリカン鎖である。
【0027】
組み合わせて投与される:本明細書において使用する場合、用語「組み合わせて投与される」または「合わせた投与」は、対象が、ある時点で両方に同時に曝露されているように、および/または患者に対する各薬剤の効果におけるオーバーラップが存在し得るように、対象が、同時にまたは時間間隔内に投与された2種もしくはそれよりも多い薬剤に同時に曝露されることを意味する。一部の実施形態では、1種もしくは複数の薬剤の少なくとも1つの用量は、1種もしくは複数の他の薬剤の少なくとも1つの用量の約24時間以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、1時間以内、30分以内、15分以内、10分以内、5分以内、または1分以内に投与される。一部の実施形態では、投与は、オーバーラップする投与量レジメンにおいて起こる。本明細書において使用する場合、用語「投与量レジメン」は、時間的に間隔を置いた複数の用量を指す。このような用量は、規則的間隔で起こり得るか、または投与における1回もしくは複数の中断を含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のような1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体の個々の用量の投与は、組合せの(例えば、相乗的)効果が達成されるように十分に一緒に接近して間隔を置いている。
【0028】
アミノ酸:本明細書において使用する場合、用語「アミノ酸(複数可)」は、全ての天然L-アルファ-アミノ酸および非天然アミノ酸を指す。アミノ酸は、下記のような一文字または三文字の記号表示によって同定される。アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リシン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)。ここでは、アミノ酸が最初に列挙され、それに続いて、それぞれ、三文字および一文字のコードが括弧内に列挙される。
【0029】
動物:本明細書において使用する場合、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階におけるヒトを指す。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階におけるヒトではない動物を指す。ある特定の実施形態では、ヒトではない動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、またはブタ)である。一部の実施形態では、動物には、これらに限定されないが、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚、および虫が含まれる。一部の実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子工学処理された動物、またはクローンである。
【0030】
抗体:本明細書において使用する場合、用語「抗体」は最も広範な意味で使用され、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される二重特異的抗体)、およびこれらが所望の生物活性を示す限り、抗体フラグメント、例えば、二特異性抗体を含めた様々な実施形態を特にカバーする。抗体は主にアミノ酸をベースとする分子であるが、例えば、糖部分による1つもしくは複数の修飾をまた含み得る。
【0031】
抗体フラグメント:本明細書において使用する場合、用語「抗体フラグメント」は、好ましくは、その抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の部分を指す。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;二特異性抗体;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体を含む。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと称される2個の同一の抗原結合性フラグメントを生じさせ、それぞれは、単一の抗原結合部位を有する。また産生されるのは、残留する「Fc」フラグメントであり、その名前は、容易に結晶化するその能力を反映する。ペプシン処理は、2個の抗原結合部位を有し、かつまだ抗原を架橋することができる、F(ab’)フラグメントを生じさせる。グリカン相互作用抗体は、これらのフラグメントの1つもしくは複数を含み得る。本明細書における目的のために、抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメイン、ならびにFc領域を含み得る。
【0032】
抗原結合性領域:本明細書において使用する場合、用語「抗原結合性領域」は、標的分子またはエピトープと直接相互作用する、抗体の部分、抗体フラグメント、または関連する分子を指す。抗原結合性領域は典型的には、抗体のFab領域におけるように、またはscFvにおいて一緒に連結するように、可変ドメイン対を含む。
【0033】
概ね:本明細書において使用する場合、用語「概ね」または「約」は、1つもしくは複数の目的の値に適用されるように、記述した参照値と同様の値を指す。ある特定の実施形態では、用語「概ね」または「約」は、他に記述しない限り、または文脈から他に明らかでない限り(このような数が可能な値の100%を超える場合を除いて)、いずれの方向にしても(それ超またはそれ未満)、記述した参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、もしくはこれ未満の範囲に入る一連の値を指す。
【0034】
会合した:本明細書において使用する場合、用語「会合した」、「コンジュゲートした」、「連結した」、「付着した」および「繋ぎ止められた」は、2つまたはそれよりも多い部分に関して使用されるとき、直接的に、または連結剤としての役割を果たす1つもしくは複数のさらなる部分を介して、部分が互いに物理的に会合または接続して、十分に安定的である構造を形成し、その結果、構造が使用される条件、例えば、生理学的条件下で、部分が物理的に会合したままであることを意味する。「会合」は、厳密に直接の化学的共有結合を介してである必要はない。これはまた、「会合した」実体が物理的に会合したままであるように十分に安定的である、イオン結合もしくは水素結合、またはハイブリダイゼーションをベースとする接続性を示唆し得る。
【0035】
二機能性:本明細書において使用する場合、用語「二機能性」は、任意の物質、少なくとも2つの機能を維持すことができるか、または維持する、分子または部分を指す。機能は、同じ成果または異なる成果に影響を与え得る。機能を生じさせる構造は、同じまたは異なり得る。
【0036】
生体分子:本明細書において使用する場合、用語「生体分子」は、アミノ酸をベースとする、核酸をベースとする、炭水化物をベースとする、または脂質をベースとするなどである任意の天然分子である。
【0037】
二重特異的抗体:本明細書において使用する場合、用語「二重特異的抗体」は、2つの異なる抗原を結合することができる抗体を指す。このような抗体は典型的には、少なくとも2つの異なる抗体からの領域を含む。二重特異的抗体は、そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、リエスマラー,G.(Riethmuller,G.)、2012年、がん免疫(Cancer Immunity)12巻:12~18頁、マーヴィン,J.S.(Marvin,J.S.)ら著、2005年、アクタファルマコロジカシニカ(Acta Pharmacologica Sinica.)26巻(6号):649~58頁およびシェーファー,W.(Schaefer,W.)ら著、2011年、PNAS.、108巻(27号):11187~92頁に記載されているもののいずれかを含み得る。
【0038】
分岐:本明細書において使用する場合、用語「分岐」は、連結されているか、または主要な実体もしくは源から伸びる、実体、部分または付属物を指す。一部の実施形態では、「分岐鎖」または「分岐状鎖」は、親鎖から伸長する1個もしくは複数の残基(これらに限定されないが、糖残基を含めた)を含む。本明細書において使用する場合、「親鎖」は、そこから分岐状鎖が連結している残基の鎖(これらに限定されないが、糖残基を含めた)を指すために使用される。複数の分岐を有するグリカンの場合、親鎖はまた、そこから全てのこのような分岐が直接的または間接的に付着している源鎖を指し得る。ヘキソース残基の鎖を有する多糖類の場合、親鎖連結は典型的には、隣接する残基の炭素1および4の間に生じ、一方、分岐状鎖は、分岐状残基の炭素1、およびそこから分岐が伸びている親残基の炭素3の間の連結によって親鎖に付着している。本明細書において使用する場合、用語「分岐状残基」は、分岐状鎖における親鎖に付着している残基を指す。
【0039】
がん幹細胞:本明細書において使用する場合、がん幹細胞(CSC)は、自己再生する能力を有する腫瘍細胞のサブセットを指す。CSCは、多様な細胞型を再び生じさせることができ得る。場合によって、これらの細胞は、腫瘍の外科的または化学的処置によって除去することは困難または不可能である。
【0040】
化合物:本明細書において使用する場合、用語「化合物」は、別個の化学的実体を指す。一部の実施形態では、特定の化合物は、1つもしくは複数の異性体または同位体形態(これらに限定されないが、立体異性体、幾何異性体および同位体を含めた)で存在し得る。一部の実施形態では、化合物は、単一のこのような形態のみで、提供されるか、または利用される。一部の実施形態では、化合物は、2つもしくはそれよりも多いこのような形態の混合物(これらに限定されないが、立体異性体のラセミ混合物を含めた)として、提供されるか、または利用される。いくつかの化合物が異なるこのような形態で存在し、異なる特性および/または活性(これらに限定されないが、生物活性を含めた)を示すことを当業者は認識する。このような場合では、本発明による使用のために化合物の特定の形態を選択または回避することは当業者の通常の技術の範囲内である。例えば、非対称的に置換された炭素原子を含有する化合物は、光学活性な形態またはラセミ体で単離することができる。ラセミ混合物の分離による、または立体選択的合成によるなど、光学活性な出発材料から光学活性な形態をどのように調製するかの方法は、当技術分野において公知である。
【0041】
環状または環化:本明細書において使用する場合、用語「環状」は、連続的ループの存在を指す。環状分子は、円状である必要はなく、単に接合して、サブユニットの壊れていない鎖を形成する。
【0042】
シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ:本明細書において使用する場合、用語「シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ」または「CMAH」は、ヒトにおいては存在しないが、N-アセチルノイラミン酸からのN-グリコリルノイラミン酸の形成を触媒する、大部分の他の哺乳動物(これらに限定されないが、マウス、ブタおよびチンパンジーを含めた)において存在する酵素を指す。ヒトにおいてこの酵素が存在しないことは、CMAH転写物の中途終止、および非機能タンパク質の産生をもたらすフレームシフト変異によるものである。
【0043】
細胞毒性:本明細書において使用する場合、用語「細胞毒性」は、細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生虫、プリオン、もしくはこれらの組合せを死滅させるか、または傷害効果、毒性効果、もしくは致命的効果をもたらす薬剤を指すために使用される。
【0044】
送達:本明細書において使用する場合、「送達」は、意図する目的場所への化合物、物質、実体、部分、カーゴまたはペイロードを輸送する行為または様式を指す。
送達剤:本明細書において使用する場合、「送達剤」は、少なくとも部分的に、化合物、物質、実体、部分、カーゴまたはペイロードのin vivoでの送達を促進する任意の物質を指す。
【0045】
検出可能な標識:本明細書において使用する場合、「検出可能な標識」は、付着しているか、組み込まれているか、または別の実体と会合している1つもしくは複数のマーカー、シグナルまたは部分を指し、このマーカー、シグナルまたは部分は、放射線透過写真、蛍光、化学発光、酵素活性、吸収度などを含めた当技術分野において公知の方法によって容易に検出される。検出可能な標識は、放射性同位体、フルオロフォア、発色団、酵素、色素、金属イオン、リガンド、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびハプテン、量子ドットなどを含む。検出可能な標識は、これらが付着しているか、組み込まれているか、または会合している実体における任意の位置において位置し得る。例えば、ペプチドまたはタンパク質と付着しているか、組み込まれているか、または会合しているとき、これらはアミノ酸、ペプチド、もしくはタンパク質内にあってもよいか、またはN末端もしくはC末端に位置し得る。
【0046】
ディスプレイライブラリー:本明細書において使用する場合、用語「ディスプレイライブラリー」は、生体分子相互作用を同定するための科学的発見において使用されるツールを指す。バクテリオファージ、イーストおよびリボソームの利用を含む、ディスプレイライブラリーの異なるバリエーションが存在する。いずれの場合にも、所与のライブラリー内のタンパク質(本明細書において、「ライブラリーメンバー」とまた称される)は、タンパク質をコードする核酸に連結(物理的に、または宿主との関連によって)している。標的分子がディスプレイライブラリーのメンバーと共にインキュベートされるとき、標的に結合する任意のライブラリーメンバーは単離し得、結合したタンパク質をコードする配列は連結された核酸の分析によって決定し得る。一部の実施形態では、ディスプレイライブラリーは、「ファージディスプレイライブラリー」であり、ディスプレイライブラリーは、バクテリオファージウイルス粒子(本明細書において、「ファージ粒子」とまた称される)で構成されており、核酸は、ファージゲノム中に組み込まれており、導入されてきた核酸によってコードされるタンパク質に融合しているウイルスコートタンパク質の産生がもたらされる。このような融合されたタンパク質は、アセンブルされたファージ粒子の外表面上に「ディスプレイ」されており、ここでこれらは所与の標的と相互作用し得る。
【0047】
遠位:本明細書において使用する場合、用語「遠位」は、中心から遠くにあるか、または目的のポイントもしくは領域から遠くにあることを意味する。
工学処理された:本明細書において使用する場合、本発明の実施形態は、構造的または化学的であろうと、出発点、野生型または天然分子とは異なるフィーチャまたは特性を有するように設計されているとき、「工学処理」されている。このように、工学処理された薬剤または実体は、その設計および/または産生が人の手の行為を含むものである。
【0048】
エピトープ:本明細書において使用する場合、「エピトープ」は、これらに限定されないが、抗体を含めた免疫系の構成要素と相互作用することができる分子上の表面または領域を指す。一部の実施形態では、エピトープは、標的部位を含み得る。エピトープは、対応する抗体によって特異的に認識および結合される、抗原上または2つもしくはそれよりも多い抗原の間の領域を含み得る。いくつかのエピトープは、1種もしくは複数のグリカンに沿って1個もしくは複数の糖残基を含み得る。このようなエピトープは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは少なくとも10個の糖残基を含み得る。エピトープはまた、実体の間の相互作用の1つもしくは複数の領域を含み得る。一部の実施形態では、エピトープは、2個の糖残基の間、分岐状鎖および親鎖の間、またはグリカンおよびタンパク質の間のジャンクションを含み得る。
【0049】
エーテル結合:本明細書において使用する場合、「エーテル結合」は、2個の炭素原子の間に結合されている酸素を含む化学結合を指す。一部の実施形態では、エーテル結合は、糖残基を、これらに限定されないが、グリカン鎖を形成する他の糖残基を含めた他の実体に連結する。このような結合はまた、「グリコシド結合」または「グリコシド連結」と称される。少なくとも1個の糖残基との関連で、用語「連結する」および/または「連結」がまた、グリコシド連結に言及するとき本明細書において使用される。一部の実施形態では、連結は、グリカンを、これらに限定されないが、タンパク質、脂質、リン脂質およびスフィンゴ脂質を含めた他の実体に連結し得る。一部の実施形態では、糖残基は、タンパク質に連結し得、典型的には、糖残基およびアミノ酸残基の間に連結を形成する。このようなアミノ酸残基は、セリンおよびトレオニンを含む。一部の実施形態では、エーテル結合は、結合形成に関与している炭水化物リンカーを介してグリカンをグリカンアレイに連結する。グリコシド連結は、これらの立体化学的特性において異なり得る。一部の実施形態では、アルファ配向されたグリコシド連結(本明細書において、「アルファ連結」とまた称される)は、エーテル結合の結合した酸素、および糖残基のシクロヘキサン環の間に軸方向の配向をもたらす。一部の実施形態では、ベータ配向されたグリコシド連結(本明細書において、「ベータ連結」とまた称される)は、エーテル結合の結合した酸素、および糖残基のシクロヘキサン環の間にエクアトリアル配向をもたらす。
【0050】
発現:本明細書において使用する場合、核酸配列の「発現」は、下記の事象の1つもしくは複数を指す。(1)DNA配列からのRNAテンプレートの生成(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる);(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳;(4)ポリペプチドまたはタンパク質のフォールディング;ならびに(5)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0051】
フィーチャ:本明細書において使用する場合、「フィーチャ」は、特徴、特性、または特有のエレメントを指す。
製剤:本明細書において使用する場合、「製剤」は、処方によって調製され、かつ少なくとも1種の抗体、化合物、物質、実体、部分、カーゴまたはペイロードおよび送達剤、担体または添加剤を含み得る、材料または混合物を指す。
【0052】
官能的:本明細書において使用する場合、「官能的」生物学的分子は、それによってこれが特性決定される特性および/または活性を示す構造を有し、その形態にある生物学的実体である。本明細書において使用する場合、「官能基」または「化学基」は、より大きな分子の部分である原子または化学結合の特徴的な基を指す。一部の実施形態では、官能基は、異なる分子と会合し得るが、官能基がその部分である分子に関わらず同様の化学反応に参加し得る。一般の官能基には、これらに限定されないが、カルボキシル基(-COOH)、アセチル基(-COH)、アミノ基(-NH)、メチル基(-CH)、硫酸基(-SOH)およびアシル基が含まれる。一部の実施形態では、分子への1個もしくは複数の官能基の付加は、官能基の名前を語尾「-化」で修飾する用語、例えば、アセチル化、メチル化および硫酸化を使用して伝え得る。
【0053】
グリカン:本明細書において使用する場合、用語「グリカン」、「オリゴ糖類」および「多糖類」は、互換的に使用され、本明細書において、また連結と称されるグリコシド結合によって典型的には接合している糖モノマーでできているポリマーを指す。一部の実施形態では、用語「グリカン」、「オリゴ糖類」および「多糖類」は、グリココンジュゲートの炭水化物部分(例えば、糖タンパク質、糖脂質またはプロテオグリカン)を指すために使用し得る。
【0054】
グリカン鎖:本明細書において使用する場合、用語「グリカン鎖」は、2つもしくはそれよりも多い糖を含む糖ポリマーを指す。一部の実施形態では、グリカン鎖は、タンパク質上のセリンまたはトレオニン残基を介してタンパク質に共有結合的に連結している。
【0055】
グリカンに富んだ組成物:本明細書において使用する場合、用語「グリカンに富んだ組成物」は、大きな百分率のグリカンを含む混合物を指す。一部の実施形態では、グリカンに富んだ組成物中のグリカンは、組成物の総重量に対して約1%~約10%、約5%~約15%、約20%~約40%、約30%~約50%、約60%~約80%、約70%~約90%または少なくとも100%を構成し得る。
【0056】
グリコシド結合:本明細書において使用する場合、用語「グリコシド結合」は、炭水化物および別の化学基の間に形成される共有結合を指す。一部の実施形態では、グリコシド結合は、1個の糖分子の還元末端、および第2の糖分子または多糖類鎖の非還元末端の間に形成される。このようなグリコシド結合はまた、接合した糖の間の酸素によってO-グリコシド結合(またはエーテル結合)として公知である。一部の実施形態では、2つの糖の間、または糖およびリンカーの間のグリコシド結合はまた、「連結」と称し得る。
【0057】
In vitro:本明細書において使用する場合、用語「in vitro」は、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内よりはむしろ、人工環境において、例えば、試験管または反応槽において、細胞培養物において、ペトリ皿などにおいて起こる事象を指す。
【0058】
In vivo:本明細書において使用する場合、用語「in vivo」は、生物(例えば、動物、植物、もしくは微生物、またはその細胞もしくは組織)内で起こる事象を指す。
【0059】
単離された:本明細書において使用する場合、用語「単離された」は、「分離された」と同義であるが、これによって推論による分離が人の手によって行われたことを伝える。一実施形態では、単離された物質または実体は、それと従前に会合していた構成要素の少なくともいくつかから分離されているものである(天然でまたは実験の設定において)。単離された物質は、これらが会合している物質に関して変動するレベルの純度を有し得る。単離された物質および/または実体は、それと共にこれらが最初に会合している他の構成要素の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ超から分離し得る。一部の実施形態では、単離された薬剤は、約80%超、約85%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、または約99%超の純度である。本明細書において使用する場合、物質は、他の構成要素が実質的に非含有である場合、「純粋」である。
【0060】
キット:本明細書において使用する場合、用語「キット」は、協同的な目的のために適合された1つもしくは複数の構成要素、およびその使用のための説明書を含むセットを指す。
【0061】
ノックアウト:本明細書において使用する場合、用語「ノックアウト」は、現存する遺伝子が、人の手が典型的には関与するプロセスによって不活性化されている生物を指す。ノックアウト生物において、不活性化されている遺伝子は、「ノックアウト」されていると言われる。一部の実施形態では、ノックアウトされた遺伝子は、遺伝子へのヌクレオチド配列の挿入によって、または遺伝子全体の置換えによって不活性化し得る。
【0062】
リンカー:本明細書において使用する場合、「リンカー」は、2つもしくはそれよりも多いドメイン、部分または実体を接続する部分を指す。一実施形態では、リンカーは、10個、11個、12個、13個、14個、15個またはそれ超の原子を含み得る。さらなる実施形態では、リンカーは、原子の群、例えば、10~1,000個の原子を含み得る。このような原子またはその群には、これらに限定されないが、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、およびイミンが含まれてもよい。一部の実施形態では、リンカーは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。一部の実施形態では、リンカーによって結合されている部分には、これらに限定されないが、原子、化学基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸塩基、糖、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、ペイロード(例えば、治療剤)またはマーカー(これらに限定されないが、化学、蛍光、放射性または生物発光マーカーを含めた)が含まれてもよい。リンカーは、任意の有用な目的のために、例えば、マルチマーまたはコンジュゲートを形成するために、かつ本明細書に記載のようなペイロードを投与するために使用することができる。リンカー中に組み込むことができる化学基の例には、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルが含まれ、これらのそれぞれは、本明細書に記載のように任意選択で置換することができる。リンカーの例には、これらに限定されないが、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレンまたはプロピレングリコールモノマー単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、またはテトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマーが含まれる。他の例には、これらに限定されないが、還元剤または光分解を使用して切断することができる、リンカー内の切断可能な部分、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)またはアゾ結合(-N=N-)が含まれる。選択的に切断可能な結合の非限定的例は、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または他の還元剤、および/もしくは光分解の使用によって切断し得るアミド結合、ならびに例えば、酸性または塩基性加水分解によって切断し得るエステル結合を含む。一部の実施形態では、リンカーは、例えば、グリカンアレイにおいて、グリカンを基材に連結するために使用される炭水化物部分である。このような炭水化物リンカーには、これらに限定されないが、-O(CHCHHNおよび-O(CHNHCOCH(OCHCHNHが含まれる。
【0063】
mRNA:本明細書において使用する場合、用語「mRNA」は、遺伝子転写、および生じた転写物のプロセシングの結果として産生されたメッセンジャーRNAを指す。一部の実施形態では、細胞の細胞核を離れたmRNAを細胞または一連の細胞から抽出し、分析して、どの遺伝子が所与の時間においてまたは所与の一連の状況下で転写を受けたかを決定し得る。
【0064】
ムチン:本明細書において使用する場合、用語「ムチン」は、重度にグリコシル化されているタンパク質のファミリーを指す。一部の実施形態では、ムチンは顎下腺によって産生され、唾液および粘液において見出される。
【0065】
ネガティブ選択:本明細書において使用する場合、用語「ネガティブ選択」は、標的抗原を含まない組成物の実体および/または構成要素を結合するこれらの能力に基づいた、ディスプレイライブラリーからのライブラリーメンバーの選択を指す。一部の実施形態では、ネガティブ選択は、標的に非特異的に結合し得るエレメントを除去するポジティブ選択の前に使用する。
【0066】
オフターゲット:本明細書において使用する場合、「オフターゲット」は、任意の1種もしくは複数の標的、遺伝子、または細胞の転写物への任意の意図されない効果を指す。
患者:本明細書において使用する場合、「患者」は、処置を求めているか、もしくは必要としているか、処置を必要としているか、処置を受けているか、処置をこれから受け得る対象、または特定の疾患もしくは状態についての訓練された(例えば、免許を受けた)専門家によるケアの元にある対象を指す。
【0067】
ペプチド:本明細書において使用する場合、「ペプチド」は、50個のアミノ酸の長さ、例えば、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、または50個のアミノ酸の長さと等しいかもしくはこれ未満であるタンパク質またはポリペプチドである。
【0068】
薬学的に許容される:語句「薬学的に許容される」は本明細書において用いられて、合理的な利益/リスク比と釣り合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、正しい医学的判断の範囲内で、人間および動物の組織と接触させる使用に適したこれらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0069】
薬学的に許容される添加剤:語句「薬学的に許容される添加剤」は、本明細書において使用する場合、医薬組成物中に存在する活性剤(例えば、本明細書に記載のような)以外であり、患者において実質的に無毒性および非炎症性である特性を有する任意の成分を指す。一部の実施形態では、薬学的に許容される添加剤は、活性剤を懸濁または溶解することができるビヒクルである。添加剤は、例えば、抗粘着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、色素(色)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(賦形剤)、皮膜形成剤またはコーティング、フレーバー、香料、流動促進剤(流動増進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁化剤または分散化剤、甘味剤、および水和水を含み得る。例示的な添加剤には、これらに限定されないが、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、(第二)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが含まれる。
【0070】
薬学的に許容される塩:本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩は、開示された化合物の形態であり、ここで、酸または塩基部分は、(例えば、遊離塩基基と適切な有機酸とを反応させることによって生じさせるような)その塩の形態である。薬学的に許容される塩の例には、これらに限定されないが、塩基性残基、例えば、アミンの鉱酸塩または有機酸塩;酸性残基、例えば、カルボン酸のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、ならびにこれらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンを含めたアミンカチオンなどを含む。薬学的に許容される塩は、例えば、無毒性の無機酸または有機酸からの通常の無毒性の塩を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される塩は、通常の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から調製される。一般に、このような塩は、水もしくは有機溶媒、または2つの混合物中で、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態と、化学量論量の適当な塩基または酸とを反応させることによって調製することができる。一般に、非水性媒体、例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルが好ましい。適切な塩のリストは、これらのそれぞれが参照により本明細書中にその全体が組み込まれている、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、マックパブリッシングカンパニー(Mack Publishing Company)、イーストン、Pa.,1985年、1418頁、医薬塩:特性、選択、および使用(Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use)、P.H.StahlおよびC.G.Wermuth(編)、ワイリー-VCH(Wiley-VCH)、2008年、およびバーグ(Berge)ら著、薬学ジャーナル(Journal
of Pharmaceutical Science)、66巻、1~19頁(1977年)において見出される。薬学的に許容される溶媒和物:用語「薬学的に許容される溶媒和物」は、本明細書において使用する場合、化合物の結晶形態を指し、適切な溶媒の分子は、結晶格子中に組み込まれている。例えば、溶媒和物は、結晶化、再結晶化、または有機溶媒、水、もしくはこれらの混合物を含む溶液からの沈殿によって調製し得る。適切な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、および三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジルなどである。水が溶媒であるとき、溶媒和物は、「水和物」と称される。一部の実施形態では、溶媒和物中に組み込まれる溶媒は、(例えば、医薬組成物の単位剤形で)溶媒和物が投与される生物にとって生理学的に許容できるタイプ、またはレベルのものである。
【0071】
薬物動態:本明細書において使用する場合、「薬物動態」は、生きている生物に投与される物質の運命の決定に関するような、分子または化合物の任意の1つもしくは複数の特性を指す。薬物動態は、吸収、分布、代謝、ならびに排泄の程度および速度を含めたいくつかの領域に分けられる。これは、ADMEと一般に称され、(A)吸収は、血液循環に入る物質のプロセスであり;(D)分布は、体液および体の組織に亘る物質の分散または蔓延であり;(M)代謝(または生体内変化)は、娘代謝物への親化合物の不可逆的な転換であり;(E)排泄(または排除)は、体からの物質の排除を指す。まれに、いくつかの薬物は身体組織において不可逆的に蓄積する。
【0072】
物理化学的:本明細書において使用する場合、「物理化学的」は、物理的および/または化学的特性を意味するか、またはこれに関する。
ポジティブ選択:本明細書において使用する場合、用語「ポジティブ選択」は、独自の実体の群からの所与の実体の選択を指す。このような実体およびその群は、例えば、抗体であり得る。場合によって、これらは抗体フラグメントであり得るか、または発現している抗体フラグメントは、このようなフラグメント(例えば、ディスプレイライブラリーからのライブラリーメンバー)を発現することができる薬剤と関連している。選択は、所望の標的またはエピトープに結合する選択された実体の能力に基づき得る。一部の実施形態では、ポジティブ選択はファージディスプレイライブラリーと共に使用して、所望の標的に結合するscFvを発現しているファージ粒子を同定し得る。他の実施形態では、ポジティブ選択は、抗体のプールからの抗体候補の選択を指し得る。他の場合では、実体は、ハイブリドーマ選択の間のクローンの選択におけるように、細胞、細胞系またはクローンであり得る。このような場合において、ポジティブ選択は、このようなクローンによって産生される抗体の1つもしくは複数のフィーチャ(例えば、1つもしくは複数の所望のエピトープに対する特異性)に基づくクローン選択を指し得る。場合によって、ポジティブ選択方法における所望のエピトープは、STn(例えば、AcSTnおよび/またはGcSTn)を含み得る。
【0073】
逆に、「ネガティブ選択」は、本明細書において使用する場合、ポジティブ選択について記載したのと同じ原理および例を含むが、これが独自の実体の群からの望ましくない実体の除去のために使用されるという際立った特徴を伴う。
【0074】
予防すること:本明細書において使用する場合、用語「予防すること」は、感染症、疾患、障害および/もしくは状態の発症を部分的にもしくは完全に遅延させること;特定の感染症、疾患、障害および/もしくは状態の1つもしくは複数の症状、フィーチャ、または臨床的顕在化の発生を部分的にもしくは完全に遅延させること;特定の感染症、疾患、障害および/もしくは状態の1つもしくは複数の症状、フィーチャ、または顕在化の開始を部分的にもしくは完全に遅延させること;感染症、特定の疾患、障害および/もしくは状態からの進行を部分的にもしくは完全に遅延させること;ならびに/または感染症、疾患、障害および/もしくは状態と関連する病態を発生する危険性を減少させることを指す。
【0075】
プロドラッグ:本開示はまた、本明細書に記載されている化合物のプロドラッグを含む。本明細書において使用する場合、「プロドラッグ」は、化学的または物理的変化によって治療剤として作用するその物質、分子または実体を含意する形態の任意の物質、分子または実体を指す。プロドラッグは、何らかの方法で共有結合または隔離し得、哺乳動物対象への投与の前に、投与によって、または投与の後に、活性薬物部分を放出するか、活性薬物部分に変換される。プロドラッグは、親化合物へと、修飾が通例の操作でまたはin
vivoで切断されるように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、またはカルボキシル基が、哺乳動物対象に投与したとき、切断されて、それぞれ、遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、またはカルボキシル基を形成する任意の基に結合している化合物を含む。プロドラッグの調製および使用は、これらの両方が参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、T.ヒグチ(T.Higuchi)およびV.Stella(V.ステラ)、「新規な送達系としてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems)」、第14巻、A.C.S.シンポジウムシリーズ(A.C.S.Symposium Series)、およびドラッグデザインにおける生物可逆的担体(Bioreversible Carriers in Drug Design)、編、エドワードB.ロシェ(Edward B.Roche)、米国薬学会およびペルガモンプレス(American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press)、1987年に記載されている。
【0076】
近位:本明細書において使用する場合、用語「近位」は、中心、または目的のポイントもしくは領域のより近くに位置することを意味する。
相互作用の領域:本明細書において使用する場合、用語「相互作用の領域」は、このような実体が相互作用またはオーバーラップする、2つもしくはそれよりも多い実体のいずれかに沿った領域を指す。一部の実施形態では、相互作用の領域は、第2のグリカン鎖に接触するグリカン鎖に沿った1個もしくは複数の糖残基を含み得る。一部の実施形態では、グリカン鎖は、同じ親鎖からの分岐状鎖である。一部の実施形態では、相互作用の領域は、2個のグリカン鎖の間に起こり得、ここで、1個の鎖は分岐状鎖であり、第2の鎖は親鎖である。グリカン鎖の場合、相互作用の領域は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または少なくとも10個の糖残基を含み得る。一部の実施形態では、相互作用の領域はまた、グリカンおよびタンパク質の間、またはグリカンおよび脂質の間に起こり得る。
【0077】
残基:本明細書において使用する場合、用語「残基」は、ポリマーと関連しているか、もしくは関連することができるモノマーを指す。一部の実施形態では、残基は、これらに限定されないが、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸を含めた糖分子を含む。一部の実施形態では、残基は、アミノ酸を含む。
【0078】
試料:本明細書において使用する場合、用語「試料」は、源から採取し、かつ/または分析もしくはプロセシングのために提供される、一定分量または部分を指す。一部の実施形態では、試料は、生物学的源(本明細書において、「生体試料」とまた称される)、例えば、組織、細胞または構成要素部分(例えば、これらに限定されないが、血液、血漿、血清、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血液、尿、膣液および精液を含めた体液)からのものである。一部の実施形態では、試料は、これらに限定されないが、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、および尿生殖路の外部セクション、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官を含めた、完全な生物またはその組織、細胞もしくは構成要素部分のサブセットから調製したホモジネート、ライセートもしくは抽出物、またはその画分もしくは部分であり得るか、これらを含む。一部の実施形態では、試料は、細胞構成要素、例えば、タンパク質または核酸分子を含有し得る、培地、例えば、栄養ブイヨンまたはゲルを含む。一部の実施形態では、「一次」試料は、一定分量の源である。一部の実施形態では、一次試料は1つもしくは複数のプロセシング(例えば、分離、精製など)ステップに供し、分析または他の使用のための試料を調製する。
【0079】
シアリル:本明細書において使用する場合、接頭辞「シアリル」および用語「シアル酸付加」は、シアル酸を含む化合物を説明する。
単一の単位用量:本明細書において使用する場合、「単一の単位用量」は、1つの用量で/1回/単一の経路/単一の接触点、すなわち、単回投与事象において投与される任意の治療剤の用量である。一部の実施形態では、単一の単位用量は、別個の剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、パッチ、充填されたシリンジ、バイアルなど)として提供される。
【0080】
分割用量:本明細書において使用する場合、「分割用量」は、2つもしくはそれよりも多い用量への単一の単位用量または総1日用量の分割である。
安定的:本明細書において使用する場合、「安定的」は、反応混合物からの有用な程度の純度までの単離を生き残るのに十分にロバストであり、好ましくは、効果的な治療剤へと製剤化することができる化合物または実体を指す。
【0081】
安定化した:本明細書において使用する場合、用語「安定化する」、「安定化した」、「安定化した領域」は、安定的とするか、安定的となることを意味する。一部の実施形態では、安定性は、絶対値に対して測定される。一部の実施形態では、安定性は、参照化合物または実体に対して測定される。
【0082】
対象:本明細書において使用する場合、用語「対象」または「患者」は、例えば、実験目的、診断目的、予防目的、および/または治療目的のために、本発明による組成物を投与し得る任意の生物を指す。典型的な対象は、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒトではない霊長類、およびヒト)ならびに/または植物を含む。
【0083】
顎下腺:本明細書において使用する場合、用語「顎下腺」または「顎下の腺」は、口腔底の下に位置している粘液産生腺を指す。これらの腺は、ムチンを産生することができ、一部の実施形態では、ムチンの源として哺乳動物から抽出し得る。
【0084】
患っている:疾患、障害および/もしくは状態を「患っている」個体は、疾患、障害および/もしくは状態と診断されているか、または疾患、障害および/もしくは状態の1つもしくは複数の症状を示す。
【0085】
影響を受けやすい:疾患、障害および/もしくは状態に「影響を受けやすい」個体は、疾患、障害および/もしくは状態の症状と診断されておらず、かつ/または疾患、障害および/もしくは状態の症状を示し得ないが、疾患またはその症状を発生させる傾向を持つ。一部の実施形態では、疾患、障害および/もしくは状態(例えば、がん)の影響を受けやすい個体は、下記の1つもしくは複数によって特性決定し得る。(1)疾患、障害および/もしくは状態の発生と関連する遺伝子変異;(2)疾患、障害および/もしくは状態の発生と関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害および/もしくは状態と関連するタンパク質および/または核酸の発現および/または活性の増加および/または減少;(4)疾患、障害および/もしくは状態の発生と関連する習慣および/またはライフスタイル;(5)疾患、障害および/もしくは状態の家族歴;ならびに(6)疾患、障害および/もしくは状態の発生と関連する微生物への曝露および/またはこれによる感染。一部の実施形態では、疾患、障害および/もしくは状態の影響を受けやすい個体は、疾患、障害および/もしくは状態を発生させる。一部の実施形態では、疾患、障害および/もしくは状態の影響を受けやすい個体は、疾患、障害および/もしくは状態を発生させない。
【0086】
合成の:用語「合成の」は、人の手によって生成、調製、および/または製造されることを意味する。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたは他の分子の合成は、化学的または酵素的であり得る。
【0087】
標的:本明細書において使用する場合、用語「標的」は、作用によって影響を受ける目的または実体を指す。一部の実施形態では、標的は、抗原を特異的に結合する抗体の開発のために使用される抗原を指す。
【0088】
標的スクリーニング:本明細書において使用する場合、用語「標的スクリーニング」は、その物質についての結合パートナーを同定する標的物質の使用を指す。
標的部位:本明細書において使用する場合、用語「標的部位」は、1種もしくは複数のグリカン、糖タンパク質、生体分子上もしくは内の領域、ならびに/または結合剤もしくはエフェクター分子(例えば、抗体)によって認識される細胞、細胞外空間、組織、器官および/または生物上もしくは内の生体構造を指す。一部の実施形態では、グリカン標的部位は、1個の糖残基上にもっぱら存在し得るか、2個もしくはそれよりも多い残基によって形成し得るか、またはグリカンおよび非グリカン構成要素の両方を含み得る。一部の実施形態では、標的部位は、2つもしくはそれよりも多いグリカンまたは糖タンパク質の間で形成される。一部の実施形態では、標的部位は、同じグリカンの分岐状鎖の間に、または1個もしくは複数の分岐状鎖および親鎖の間に形成される。
【0089】
標的とされる細胞:本明細書において使用する場合、「標的とされる細胞」は、任意の1個もしくは複数の目的の細胞を指す。細胞は、in vitro、in vivo、in situで、または生物の組織もしくは器官において見出し得る。生物は、動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト、最も好ましくは、患者であり得る。
【0090】
末端残基:本明細書において使用する場合、用語「末端残基」は、ポリマー鎖における最後の残基を指す。一部の実施形態では、末端残基は、多糖類鎖の非還元末端に位置している糖残基である。
【0091】
治療剤:用語「治療剤」は、対象に投与したとき、治療、診断、および/もしくは予防効果を有し、かつ/または所望の生物学的および/もしくは薬理学的効果を引き出す任意の薬剤を指す。
【0092】
治療的有効量:本明細書において使用する場合、用語「治療的有効量」は、感染症、疾患、障害および/もしくは状態を患っているかもしくは影響を受けやすい対象に投与したとき、感染症、疾患、障害および/もしくは状態を処置し、その症状を改善させ、診断し、予防し、かつ/またはその発症を遅延させるのに十分な送達される薬剤(例えば、核酸、薬物、治療剤、診断用剤、予防剤など)の量を意味する。一部の実施形態では、治療的有効量は、単回用量で提供される。一部の実施形態では、治療的有効量は、複数の用量を含む投与量レジメンで投与される。一部の実施形態では、単位剤形は、これがこのような投与量レジメンの部分として投与したとき有効である量を含む場合、治療的有効量の特定の薬剤または実体を含むと考えられてもよいことを当業者なら理解するであろう。
【0093】
治療的に有効な成果:本明細書において使用する場合、用語「治療的に有効な成果」は、感染症、疾患、障害および/もしくは状態を患っているかもしくは影響を受けやすい対象において、感染症、疾患、障害および/もしくは状態を処置し、その症状を改善させ、診断し、予防し、かつ/またはその発症を遅延させるのに十分な成果を意味する。
【0094】
総1日用量:本明細書において使用する場合、「総1日用量」は、24時間の期間において与えられるかもしくは処方される量である。これは、単一の単位用量として投与し得る。
【0095】
トランスジェニック:本明細書において使用する場合、用語「トランスジェニック」は、その生物において天然に見出されない生物のゲノム内に組み込まれている1種もしくは複数の遺伝子を含む生物を指す。
【0096】
処置する:本明細書において使用する場合、用語「処置する」は、特定の感染症、疾患、障害および/もしくは状態の1つもしくは複数の症状またはフィーチャを、部分的にもしくは完全に軽減し、回復させ、改善させ、軽減し、その発症を遅延させ、その進行を阻害し、その重症度を低減させ、かつ/またはその発生率を低減させることを指す。例えば、がんを「処置すること」は、腫瘍の生存、成長、および/または拡大を阻害することを指す。処置は、疾患、障害および/もしくは状態の徴候を示さない対象、ならびに/または疾患、障害および/もしくは状態と関連する病態を発生する危険性を減少させる目的のために、疾患、障害および/もしくは状態の初期徴候のみを示す対象に投与し得る。
【0097】
可変領域:本明細書において使用する場合、用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の間で配列が広範に異なる特異的抗体ドメインを指し、その特定の抗原についてのそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用される。
【0098】
全IgG:本明細書において使用する場合、用語「全IgG」は、完全IgG分子を指す。一部の実施形態では、全IgG分子は、2つもしくはそれよりも多い他の生物において天然に見出される領域を含む。
【0099】
野生型:本明細書において使用する場合、用語「野生型」は、天然ゲノム(他の生物に由来する遺伝子を非含有)を含む生物を指す。
I.本発明の組成物
一部の実施形態では、本発明は、少なくとも1種のグリカン相互作用抗体を含む化合物および組成物を提供する。グリカン内で、単糖類モノマーは全て同じであり得るか、またはこれらは異なり得る。一般のモノマーには、これらに限定されないが、トリオース、テトロース、ペントース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イオドース、リボース、マンノヘプツロース、セドヘプツロースおよびタロースが含まれる。アミノ糖はまた、グリカン内のモノマーであり得る。このような糖を含むグリカンは、本明細書でアミノグリカンと称する。アミノ糖は、本明細書において使用する場合、ヒドロキシル基の代わりにアミン基、または一部の実施形態では、このような糖に由来する糖を含む糖分子である。アミノ糖の例には、これらに限定されないが、グルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸(これらに限定されないが、N-アセチルノイラミン酸およびN-グリコリルノイラミン酸を含めた)ならびにL-ダウノサミンが含まれる。
【0100】
本明細書において使用する場合、用語「グリカン相互作用抗体」は、グリカン部分と相互作用することができる抗体を指す。このような抗体は、グリカン部分単独に、複数のグリカン部分に、またはグリカンおよび非グリカン構成要素の両方を含むエピトープに結合し得る。非グリカン構成要素には、これらに限定されないが、タンパク質、タンパク質関連部分(例えば、翻訳後修飾)、細胞、および細胞関連分子/構造が含まれてもよい。グリカン相互作用抗体は、グリカンまたはグリカン関連分子または実体に結合し、変更し、活性化させ、阻害し、安定化させ、分解し、かつ/またはモジュレートするように機能し得る。その際、グリカン相互作用抗体は、対症療法的、予防的であると、または進行中の処置組成物としてであろうと、治療剤として機能し得る。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、他の分子とのコンジュゲートまたは組合せを含み得る。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数のアミノ糖を有するグリカンに対して向けられる。さらなる実施形態では、1種もしくは複数のアミノ糖は、シアル酸である。さらなる実施形態では、1種もしくは複数のシアル酸は、N-アセチルノイラミン酸および/またはN-グリコリルノイラミン酸である。
【0101】
抗体
グリカン相互作用抗体は、全抗体またはそのフラグメントを含み得る。本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、これらに限定されないが、これらが、所望の生物活性(例えば、1つもしくは複数の標的を結合し、活性化し、阻害し、安定化させ、分解し、かつ/またはモジュレートすること)を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される二重特異的抗体)、抗体コンジュゲート(これらに限定されないが、抗体-薬物コンジュゲートを含めた)、抗体バリアント[これらに限定されないが、抗体模倣物、キメラ抗体(例えば、複数の種に由来するアミノ酸配列を有する抗体)、および合成バリアントを含めた]、ならびに抗体フラグメントを含めた様々なフォーマットを包含する。抗体は主にアミノ酸をベースとする分子であるが、1つもしくは複数の翻訳後修飾または合成修飾を含み得る。翻訳後修飾は、グリコシル化を含み得る。
【0102】
本明細書において使用する場合、用語「抗体フラグメント」は、場合によって、少なくとも1つの抗原結合領域を含む、インタクトな抗体またはその融合タンパク質の一部を指す。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、単鎖可変フラグメント(scFv);二特異性抗体;トリ(a)ボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体を含む。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位有する、「Fab」フラグメントと称される2個の同一の抗原結合性フラグメントを産生する。また産生されるのは、残留する「Fc」フラグメントであり、その名前は容易に結晶化するその能力を反映する。ペプシン処理は、2個の抗原結合部位を有するF(ab’)フラグメントを生じさせ、抗原をまだ架橋することができる。グリカン相互作用抗体は、これらのフラグメントの1つもしくは複数を含み得、例えば、全抗体の酵素消化または組換え発現によって生じ得る。
【0103】
「天然抗体」は通常、2個の同一の軽(L)鎖および2個の同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。抗体重鎖および軽鎖をコードする遺伝子は公知であり、それぞれを構成するセグメントは良好に特性決定され、説明されてきた(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、マツダ,F.(Matsuda,F.)ら著、1998年、実験医学ジャーナル(The Journal of Experimental Medicine.)、188巻(11号);2151~62頁およびリー,A.(Li,A.)ら著、2004年、血液(Blood.)、103巻(12号:4602~9頁)。各軽鎖は、1個の共有結合的ジスルフィド結合によって重鎖に連結しており、一方、ジスルフィド連結の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内のジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの端部において、可変ドメイン(V)、それに続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、1つの端部において可変ドメイン(V)およびその他の端部において定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列化し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列化する。
【0104】
本明細書において使用する場合、用語「可変ドメイン」は、抗体の間で配列が広範に異なり、かつその特定の抗原についてのそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用される、抗体重鎖および軽鎖の両方上に見出される特異的抗体ドメインを指す。可変ドメインは、超可変領域を含む。本明細書において使用する場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与するアミノ酸残基を含む可変ドメイン内の領域を指す。超可変領域内に存在するアミノ酸は、抗体の抗原結合部位の部分となる相補性決定領域(CDR)の構造を決定する。本明細書において使用する場合、用語「CDR」は、その標的抗原またはエピトープに対して相補性である構造を含む抗体の領域を指す。抗原と相互作用しない可変ドメインの他の部分は、フレームワーク(FW)領域と称される。抗原結合部位(抗原接合部位またはパラトープとしてまた公知である)は、特定の抗原と相互作用することが必要とされるアミノ酸残基を含む。抗原結合部位を構成する正確な残基は典型的には、結合した抗原による共結晶学によって解明されるが、他の抗体との比較に基づいたコンピュータを利用したアセスメントをまた使用することができる(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ストロール,W.R.(Strohl,W.R.)、治療用抗体工学(Therapeutic Antibody Engineering.)ウッドヘッドパブリッシング(Woodhead Publishing)、フィラデルフィア、PA.、2012年、第3章、47~54頁)。CDRを構成する決定残基は、これらに限定されないが、カバット(Kabat)[そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ウー,T.T.(Wu,T.T.)ら著、1970年、JEM、132巻(2号):211~50頁およびジョンソン,G.(Johnson,G.)ら著、2000年、核酸リサーチ(Nucleic Acids Res.)、28巻(1号):214~8頁]、コチア(Chothia)[そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、コチア(Chothia)およびレスク(Lesk)、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、196巻、901頁(1987年)、コチア(Chothia)ら著、ネイチャー(Nature)、342巻、877頁(1989年)およびアル-ラジカニ,B.(Al-Lazikani,B.)ら著、1997年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、273巻(4号):927~48頁]、ルフラン(Lefranc)(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ルフラン,M.P.(Lefranc,M.P.)ら著、2005年、イムノームリサーチ(Immunome Res.)、1:3)およびオネゲル(Honegger)(オネゲル,A.(Honegger,A.)およびプルッカン,A.(Pluckthun,A.)、2001年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、309巻(3号):657~70頁)によって教示されたものを含めたナンバリングスキームの使用を含み得る。
【0105】
VHおよびVLドメインは、それぞれ3個のCDRを有する。VL CDRは、本明細書において、可変ドメインポリペプチドに沿ってN末端からC末端に移動するとき現れた順に、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3と称される。VH CDRは、本明細書において、可変ドメインポリペプチドに沿ってN末端からC末端に移動するとき現れた順に、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3と称される。CDRのそれぞれは、CDR-H3を例外として、好ましい極限構造を有し、これは抗原結合性ドメインにおける種々の三次元構造をもたらす、抗体の間で配列および長さにおいて高度に可変であり得るアミノ酸配列を含む(ニコラウディス,D.(Nikoloudis,D.)ら著、2014年、ピアJ(PeerJ.)、2巻:e456頁)。場合によって、CDR-H3は関連する抗体のパネルの間で分析し、抗体の多様性をアセスメントし得る。CDR配列を決定する様々な方法は当技術分野において公知であり、公知の抗体配列に適用し得る(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ストロール,W.R.(Strohl,W.R.)、治療用抗体工学(Therapeutic Antibody Engineering.)ウッドヘッドパブリッシング(Woodhead Publishing)、フィラデルフィア、PA.、2012年、第3章、47~54頁)。
【0106】
本明細書において使用する場合、用語「Fv」は、完全抗原結合部位を形成するのに必要とされる抗体上の最小のフラグメントを含む抗体フラグメントを指す。これらの領域は、密接な非共有結合的に会合している1個の重鎖および1個の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。Fvフラグメントは、タンパク質分解的切断によって生じさせることができるが、大いに不安定である。典型的には、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの間の柔軟なリンカーの挿入[単鎖Fv(scFv)を形成させる]によって、または重鎖および軽鎖可変ドメインの間のジスルフィド架橋の導入によって、安定的なFvフラグメントを生じさせるための組換え方法は、当技術分野において公知である(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ストロール,W.R.(Strohl,W.R.)、治療用抗体工学(Therapeutic Antibody Engineering.)、ウッドヘッドパブリッシング(Woodhead Publishing)、フィラデルフィア、PA.、2012年、第3章、46~47頁)。
【0107】
任意の脊椎動物種からの抗体「軽鎖」は、これらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパおよびラムダと称される2つの明らかに別個のタイプの1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、抗体は、異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要なクラスのインタクトな抗体:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分けてもよい。
【0108】
本明細書において使用する場合、用語「単鎖Fv」または「scFv」は、VHおよびVL抗体ドメインの融合タンパク質を指し、これらのドメインは、柔軟なペプチドリンカーによって一本鎖ポリペプチドへと一緒に連結している。一部の実施形態では、Fvポリペプチドリンカーは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。一部の実施形態では、scFvは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイまたは他のディスプレイ方法と合わせて利用され、ここでこれらは表面メンバー(例えば、ファージコートタンパク質)と関連して発現し、所与の抗原についての高親和性ペプチドの同定において使用し得る。
【0109】
用語「二特異性抗体」は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、フラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメインVに接続した重鎖可変ドメインVを含む。短すぎて同じ鎖上の2個のドメインの間の対形成を可能としないリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成し、2個の抗原結合部位を生じさせることを強いられる。二特異性抗体は、例えば、これらのそれぞれの全内容が参照により本明細書中に組み込まれている欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;およびホリンガー(Hollinger)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、90巻:6444~6448頁(1993年)においてより完全に記載されている。
【0110】
用語「細胞内抗体」は、それが産生される細胞から分泌されない抗体の1形態を指すが、代わりに、1種もしくは複数の細胞内タンパク質を標的とする。細胞内抗体を使用して、これらに限定されないが、細胞内輸送、転写、翻訳、代謝過程、増殖シグナル伝達および細胞分裂を含めた多数の細胞過程に影響を与え得る。一部の実施形態では、本発明の方法は、細胞内抗体をベースとする治療を含み得る。一部のこのような実施形態では、本明細書において開示されている可変ドメイン配列および/またはCDR配列は、細胞内抗体をベースとする治療のための1種もしくは複数の構築物中に組み込み得る。場合によって、本発明の細胞内抗体は、1種もしくは複数の糖化された細胞内タンパク質を標的とし得るか、または1種もしくは複数の糖化された細胞内タンパク質および代替タンパク質の間の相互作用をモジュレートし得る。
【0111】
用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、本明細書において使用する場合、免疫エフェクター細胞の表面上に発現するように工学処理されて、人工的な受容体に高親和性を伴って結合する実体を発現している細胞へのこのような免疫エフェクター細胞の特異的ターゲッティングがもたらされる、人工的な受容体を指す。CARは、このようなCARが免疫エフェクター細胞上に発現しているとき、免疫エフェクター細胞はCARの抗体部分によって認識される任意の細胞を結合および排除するように、抗体、抗体可変ドメインおよび/または抗体CDRの1つもしくは複数のセグメントを含むように設計し得る。場合によって、CARは、がん細胞を特異的に結合し、がん細胞の免疫によってレギュレートされるクリアランスをもたらすように設計される。
【0112】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用する場合、実質的に均一な細胞(またはクローン)の集団から得た抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生の間に生じ得る可能なバリアントを除いて、同一であり、かつ/または同じエピトープを結合し、このようなバリアントは一般に、少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。
【0113】
修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得たという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されない。モノクローナル抗体は、本明細書において、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、ここでは、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖(複数可)の残部は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、およびこのような抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一または相同である。
【0114】
ヒトではない(例えば、マウスの)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここでは、レシピエントの抗体からの超可変領域からの残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有するヒトではない種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギまたはヒトではない霊長類の抗体からの超可変領域からの残基で置き換えられている。ヒト化抗体は、ドナー抗体において見出されるアミノ酸への1個もしくは複数のアミノ酸の復帰を含む、1つもしくは複数の逆突然変異を含み得る。逆に、ヒト化抗体に含まれるドナー抗体からの残基は、ヒトレシピエント抗体中に存在するマッチ残基に変異し得る。
【0115】
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、抗体模倣物であり得る。用語「抗体模倣物」は、抗体の機能または効果を模倣し、かつ特異的および高親和性を伴ってそれらの分子標的に結合する任意の分子を指す。一部の実施形態では、抗体模倣物は、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)をタンパク質スカフォールドとして組み込むように設計されたモノボディであり得る(米国特許第6,673,901号明細書;米国特許第6,348,584号明細書)。一部の実施形態では、抗体模倣物は、これらに限定されないが、affibody分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アヴィマー、DARPin、Fynomerおよびクニッツおよびドメインペプチドを含めた当技術分野において公知のものであり得る。他の実施形態では、抗体模倣物は、1つもしくは複数の非ペプチド領域を含み得る。
【0116】
本明細書において使用する場合、用語「抗体バリアント」は、構造、配列および/または機能において、生体分子類似抗体を指すが、別の抗体または天然抗体と比較してこれらのアミノ酸配列、組成物または構造においていくつかの差異を含む。
【0117】
抗体の開発
本発明のグリカン相互作用抗体は、抗原、例えば、本明細書に記載されているものを結合するように開発される。本明細書において使用する場合、「抗原」は、生物において免疫応答を誘発または誘起する実体である。免疫応答は、異種実体の存在に対する生物の細胞、組織および/または器官の反応によって特性決定される。このような免疫応答は典型的には、生物による異種実体、例えば、抗原または抗原の部分に対する1種もしくは複数の抗体の産生をもたらす。場合によって、免疫化の方法は、1つもしくは複数の所望の免疫化の成果に基づいて変化し得る。ここで使用するように、用語「免疫化の成果」は、免疫化の1つもしくは複数の所望の効果を指す。例は、目的の標的について高い抗体力価および/または増加した抗体特異性を含む。
【0118】
本発明の抗原は、グリカン、グリココンジュゲート(これらに限定されないが、糖タンパク質および糖脂質を含めた)、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質、または上記のいずれかを含み得、1種もしくは複数の別々のアジュバントもしくは異種タンパク質にコンジュゲートするか、または複合体化し得る。一部の実施形態では、本発明の方法によって使用される抗原は、シアル酸付加されたグリカン、例えば、STnを含み得る。STnを有する抗原は、ムチンを含み得る。ムチンは、重度にグリコシル化されているタンパク質のファミリーである。これらは、上皮細胞に由来する多くの腫瘍の構成要素である(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、イシダ,A.(Ishida,A.)ら著、2008年、プロテオミクス(Proteomics)、8巻:3342~9頁)。これらは顎下腺によって高度に発現されており、高レベルで唾液および粘液において見出すことができる。動物由来の顎下ムチンは、免疫原性宿主において抗STn抗体を生じさせるために抗原として使用し得る。異なる種からの顎下ムチンは、AcSTn対GcSTn形態に関して、これらのSTn含量において異なる。ブタの顎下ムチン(PSM)は、GcSTnが特に富んでおり、総STnの約90%を構成する。ウシの顎下ムチン(BSM)からのSTnは、概ね等しい百分率のGcSTnおよびAcSTnを含む。ヒツジの顎下ムチン(OSM)は、AcSTnにおいて特に富んでおり、総STnの約90%を構成する。場合によって、免疫化のために調製される溶液は、このような免疫化からもたらされる抗体の所望の標的によって、PSM、BSMおよびOSMの1つもしくは複数を含むように修飾し得る。PSMは、GcSTnに対して特異的である可能性が高い免疫原性宿主において抗体を生じさせるために免疫化において使用し得る。PSMは、GcSTnで装飾されている、Neu5Gc含有ムチンタイプの糖タンパク質に富んでいる。高いNeu5Gc含量の現在公知の源の中には、赤肉がある。特に、顎下腺は、Neu5Gc前駆体であるCMP-Neu5Acを産生する反応を触媒するCMAH酵素の高発現によってNeu5Gcの豊富な源として従前に記載された。場合によって、PSMは、汎抗Neu5Gc応答を防止し、かつGcSTnに対するより特異的免疫応答を誘発するために使用し得る。OSMは、AcSTnに対して特異的である可能性が高い免疫原性宿主において抗体を生じさせる免疫化において使用し得る。
【0119】
一実施形態では、本発明は、GcSTn特異的であるグリカン相互作用抗体を提供する。抗体は、Neu5Ac-STnまたはTnへの僅かな交差反応性を有する。抗体は、GcSTnを結合することができるが、AcSTnに対して低減した親和性を有する。
【0120】
一部の実施形態では、抗原は、免疫化の前に酵素消化に供し、免疫原性宿主におけるこのように得られた免疫応答をモジュレートし得る。一例では、顎下ムチンは、免疫化の前にトリプシンまたはプロテイナーゼK酵素で処理し得る。このような酵素の活性は切断されることを助け、それによって、非STnエピトープの百分率および可変性を低減し得る。グリカン部分は、それらが付着しているペプチドの領域を酵素によるタンパク質分解から遮蔽し得、それによってインタクトなままである。免疫化に由来する抗体力価は、このような免疫化において使用される抗原のタイプおよび量によって異なる抗体レベルを有し得る。場合によって、特定の抗原は、予想される力価に基づいて免疫化において使用するために選択し得る。
【0121】
本明細書において使用する場合、「アジュバント」は、他の薬剤の効果を修飾する薬理学的または免疫学的薬剤である。本発明によるアジュバントは、これらに限定されないが、化学組成物、生体分子、治療剤、および/または治療レジメンを含む。アジュバントは、フロイントアジュバント(完全および/または不完全)、免疫賦活性オリゴヌクレオチド[例えば、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)]、鉱物含有組成物、細菌のADP-リボシル化毒素、バイオ接着剤、粘膜接着剤、微粒子、脂質、リポソーム、ムラミルペプチド、N-酸化ポリエチレン-ピペラジン誘導体、サポニンおよび/または免疫刺激複合体(ISCO)を含み得る。一部の実施形態では、アジュバントは、水中油型乳剤(例えば、サブミクロン水中油型乳剤)を含み得る。本発明によるアジュバントはまた、そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20120027813号明細書および/または米国特許第8506966号明細書において開示されているもののいずれかを含み得る。
【0122】
本発明の抗体は、当技術分野において公知の方法によって、または本出願に記載されているように産生される、ポリクローナルまたはモノクローナルまたは組換えであり得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、検出の目的のために当業者には公知の検出可能な標識で標識し得る。標識は、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、もしくは酵素補因子、または当技術分野において公知の任意の他の標識でよい。いくつかの態様では、所望の抗原に結合する抗体は標識されていないが、一次抗体に特異的に結合する標識された二次抗体の結合によって検出し得る。
【0123】
本発明の抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含めた)、細胞内に作製された抗体(すなわち、細胞内抗体)、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。本発明の抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、鳥および哺乳動物を含めた任意の動物起源からでよい。好ましくは、このような抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ起源のものである。本発明の抗体は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異的、三重特異性、もしくはそれ超の多重特異性)でよい。多重特異的抗体は、本発明の標的抗原の異なるエピトープに対して特異的であり得るか、または本発明の標的抗原、および異種エピトープ、例えば、異種グリカン、ペプチドもしくは固体支持体材料の両方に対して特異的であり得る。(例えば、国際公開第93/17715号パンフレット;国際公開第92/08802号パンフレット;国際公開第91/00360号パンフレット;国際公開第92/05793号パンフレット;タット,A.(Tutt,A.)ら、TCR/CD3複合体およびCD2を介して協同的シグナル伝達を使用し、休止している細胞毒性T細胞を活性化および再方向付ける三重特異的F(ab’)3誘導体(Trispecific F(ab’)3 derivatives that use cooperative signaling via the TCR/CD3 complex and CD2 to activate and redirect resting cytotoxic T cells)、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、1991年7月1日;147巻(1号):60~9頁;米国特許第4,474,893号明細書;同第4,714,681号明細書;同第4,925,648号明細書;同第5,573,920号明細書;同第5,601,819号明細書;およびコステルニ,S.A.(Kostelny,S.A.)ら著、ロイシンジッパーの使用による二重特異的抗体の形成(Formation of a bispecific antibody by the use of leucine zippers.)、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、1992年3月1日;148巻(5号):1547~53頁を参照されたい)。
【0124】
本開示のグリカン相互作用抗体は、モノクローナル抗体を開発するための当技術分野において公知の十分に確立した方法を使用して調製し得る。一実施形態では、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して調製される(ケーラー,G.(Kohler,G.)ら著、所定の特異性の抗体を分泌する融合細胞の連続培養(Continuous
cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.)、ネイチャー(Nature)、1975年8月7日;256巻(5517号):495~7頁)。ハイブリドーマ形成のために、最初に、マウス、ハムスター、または他の適当な宿主動物は典型的には、免疫剤(例えば、本発明の標的抗原)で免疫化して、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか、もしくは産生することができるリンパ球を引き出す。代わりに、リンパ球は、in vitroで免疫化し得る。次いで、リンパ球は、適切な融剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(ゴディング,J.W.(Goding,J.W.)、モノクローナル抗体:原理および実践(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice.)、アカデミックプレス社(Academic Press.)、1986年;59~1031頁)。不死化細胞系は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウサギ、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞系が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合不死化細胞の成長または生存を阻害する1種もしくは複数の物質を含有する適切な培養培地中で培養し得る。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含み、これらの物質は、HGPRT欠乏性細胞の成長を防止する。
【0125】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定的な高レベル発現を支援し、培地、例えば、HAT培地に対して感受性であるものである。より好ましい不死化細胞系は、例えば、サルク研究所の細胞配布センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、サンディエゴ、カリフォルニアおよびアメリカ培養細胞系統保存機関、マナッサス、ヴァージニアから得ることができるマウス骨髄腫系である。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系はまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されてきた(Kozbor,D.ら著、ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトハイブリッド骨髄腫(A human hybrid myeloma for production of human monoclonal antibodies.)、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、1984年12月;133巻(6号):3001~5頁;ブロジャー,B.(Brodeur,B.)ら著、モノクローナル抗体産生技術および用途(Monoclonal Antibody Production Techniques and
Applications.)、マルセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1987年;33巻:51~63頁)。
【0126】
一部の実施形態では、骨髄腫細胞は、遺伝子操作に供し得る。このような操作は、本明細書に記載のようなジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)突然変異誘発を使用して行い得る。代わりに、当技術分野において公知のトランスフェクション方法を使用し得る。NS0骨髄腫細胞または他のマウス骨髄腫細胞系は使用し得る。例えば、Sp2/0-Ag14は、ハイブリドーマ開発のための代替の細胞系であり得る。
【0127】
転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)によって誘発される遺伝子エディティングは、代替の遺伝子ノックアウト方法を提供する。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生じる人工的な制限酵素である。ZFNと同様に、TALENは、エラープローンNHEJによって修復することができる所望の座位における二重鎖切断を誘発し、切断部位における挿入/欠失を生じさせる(ウッド,A.J.(Wood,A.J.)ら著、ZFNおよびTALENを使用した種に亘る標的化されたゲノムエディティング(Targeted genome editing across species using ZFNs and TALENs.)、科学(Science)、2011年7月15日;333巻(6040号):307頁)。セレクティスバイオリサーチ(Cellectis Bioresearch)(ケンブリッジ、MA)は、TALEN設計およびプラスミド構築のサービスを提供する。ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、次いで、モノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性(すなわち、特異的免疫反応性)は、免疫沈降によって、またはin vitroでの結合アッセイ、例えば、放射線免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。このような技術およびアッセイは、当業者には公知である。モノクローナル抗体の結合特異性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定することができる(マンソン,P.J.(Munson,P.J.)ら、リガンド:リガンド結合系の特性決定のための多用途のコンピュータ化されたアプローチ(Ligand:a versatile computerized approach for characterization
of ligand-binding systems)、分析生化学(Anal Biochem.)、1980年9月1日;107巻(1号):220~39頁)。場合によって、所与の抗原の領域についての抗体特異性は、抗体結合についてアッセイする前に、抗原を化学的に修飾することによって特性決定し得る。一例では、シアル酸のC6側鎖を破壊するために過ヨウ素酸処理を使用し得る。アッセイは、過ヨウ素酸処理を伴っておよび伴わずに行って、無処理の試料における結合がシアル酸特異的であるかどうかを明らかにし得る。場合によって、9-O-アセチル化シアル酸を有する抗原は、穏やかな塩基処理(例えば、0.1MのNaOHによる)に供し、9-O-アセチル基を破壊し得る。アッセイは、穏やかな塩基処理を伴っておよび伴わずに行って、無処理の試料における結合がシアル酸の9-O-アセチル化によって決まるかどうかを明らかにし得る。
【0128】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングし、標準的な方法によって成長させ得る。この目的のための適切な培養培地は、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地またはRPMI-1640培地を含む。代わりに、ハイブリドーマ細胞は、in vivoで哺乳動物における腹水として成長し得る。
【0129】
ハイブリドーマをクローニングする代替方法は、STEMCELLテクノロジーズ(STEMCELL Technologies)(バンクーバー、BC、カナダ)からのキット、例えば、ハイブリドーマクローンの選択および成長をサポートする、メチルセルロースをベースとする半流動培地および他の培地および試薬を含有するClonaCell(商標)-HYキットによって提供されるものを含み得る。しかし、このキットにおける培地はFCSを含有し、これはNeu5Gc組込みのための外因性の源を提供する。内因性Neu5Gc合成のための機構はCmah-/-ハイブリドーマにおいて破壊されるが、培養培地から組み込まれたNeu5Gcはまた、場合によって問題を提起し得る(バルドー,M.(Bardor,M.)ら、ヒト細胞中への非ヒトシアル酸N-グリコリルノイラミン酸の取込みおよび組込みの機序(Mechanism of uptake and incorporation of the non-human sialic
acid N-glycolylneuraminic acid into human cells)、生物化学ジャーナル(J Biol Chem.)、2005年、280巻:4228~4237頁)。そのような場合、培養培地は、Neu5Acを補充して、代謝競合によるNeu5Gc組込みを排除し得る(ガデリ,D.(Ghaderi,D.)ら著、組換え治療用糖タンパク質におけるN-グリコリルノイラミン酸の存在の意味(Implications of the presence of N-glycolylneuraminic acid in recombinant therapeutic glycoproteins)、ネイチャーバイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2010年、28巻:863~867頁)。
【0130】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、通常の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロンテインA-セファロース(Sepharose)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーによって、培養培地または腹水から単離または精製し得る。
【0131】
別の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体はまた、組換えDNA方法、例えば、参照により本明細書にその全体が組み込まれている米国特許第4,816,567号明細書に記載されているものによって作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、DNAの好ましい源としての役割を果たす。単離すると、DNAは発現ベクター中に配置することができ、次いでこれは、宿主細胞中にトランスフェクトされる。宿主細胞には、これらに限定されないが、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得るために免疫グロブリンタンパク質を他に産生しない、HEK293細胞、HEK293T細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および骨髄腫細胞が含まれてもよい。DNAはまた、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号明細書)、または免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全てもしくは部分を共有結合的に接合することによって改変することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに代えて用いることができるか、またはキメラ二価抗体を生じさせるために、本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに代えて用いることができる。
【0132】
一部の実施形態では、本発明の抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、当業者には公知の様々な手順によって産生し得る。in vivoでのポリクローナル抗体の産生のために、宿主動物、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ロバ、ニワトリ、サル、ヒツジまたはヤギは、例えば、腹腔内および/または皮内注射によって、遊離または担体がカップリングした抗原で免疫化される。一部の実施形態では、注射材料は、約100μgの抗原または担体タンパク質を含有するエマルジョンであり得る。一部の実施形態では、注射材料は、グリカンに富んだ組成物、例えば、溶液中のヒトではない哺乳動物の顎下ムチンを含み得る。様々なアジュバントはまた、宿主動物種によって免疫応答を増加させるために使用することができる。アジュバントには、これらに限定されないが、フロイント(完全および不完全)、鉱物ゲル、例えば、水酸化アルミニウム、表面活性物質、例えば、リゾレシチン、pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、TITERMAX(登録商標)(CytRx社(CytRx Corp)、ロサンゼルス、CA)、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメットゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウムパルバム(corynebacterium parvum)が含まれる。このようなアジュバントはまた当技術分野で周知である。いくつかのブースター注射は、例えば、固体表面に吸着されたグリカンおよび/または遊離ペプチドを使用したELISAアッセイによって検出することができる有用な力価の抗体を実現するために、例えば、約2週間の間隔で必要とし得る。免疫化された動物からの血清中の抗体の力価は、抗体の選択によって、例えば、固体支持体上への抗原の吸着、および当技術分野で周知の方法による選択した抗体の溶出によって増加することができる。
【0133】
グリカン相互作用抗体、そのバリアントおよびフラグメントは、発見のハイスループット方法を使用して選択および産生し得る。一実施形態では、合成抗体、そのバリアントおよびフラグメントを含むグリカン相互作用抗体は、ディスプレイライブラリーの使用によって産生される。用語「ディスプレイ」は、本明細書において使用する場合、所与の宿主の表面上のタンパク質またはペプチドの発現または「ディスプレイ」を指す。用語「ライブラリー」は、本明細書において使用する場合、独自のcDNA配列および/またはこれらによってコードされるタンパク質のコレクションを指す。ライブラリーは、2つほどに少ない独自のcDNAから数千億の独自のcDNAを含有し得る。一部の実施形態では、合成抗体であるグリカン相互作用抗体は、抗体ディスプレイライブラリーまたは抗体フラグメントディスプレイライブラリーを使用して産生される。用語「抗体フラグメントディスプレイライブラリー」は、本明細書において使用する場合、ディスプレイライブラリーを指し、各メンバーは、抗体の少なくとも1個の可変領域を含有する抗体フラグメントをコードする。このような抗体フラグメントは好ましくは、Fabフラグメントであるが、他の抗体フラグメント、例えば、単鎖可変フラグメント(scFv)もまた同様に意図される。Fab抗体フラグメントライブラリーにおいて、コードされる各Fabは、Fabフラグメントの相補性決定領域(CDR)の可変ループ内に含有されるアミノ酸配列を除いて同一であり得る。代替またはさらなる実施形態では、個々のVおよび/またはV領域内のアミノ酸配列もまた同様に異なり得る。
【0134】
ディスプレイライブラリーは、これらに限定されないが、酵母、バクテリオファージ、細菌およびレトロウイルスを含めたいくつかの可能な宿主において発現し得る。使用し得るさらなるディスプレイ技術は、リボソーム-ディスプレイ、マイクロビース-ディスプレイおよびタンパク質-DNA連結技術を含む。好ましい実施形態では、Fabディスプレイライブラリーは、酵母またはバクテリオファージ(本明細書において、また「ファージ」または「ファージ粒子」と称される)において発現している。発現しているとき、Fabは、ファージまたは酵母の表面を装飾し、ここで、これらは所与の抗原と相互作用することができる。グリカンを含む抗原、または所望の標的からの他の抗原は、その抗原への最も高い親和性を有する抗体フラグメントを発現しているファージ粒子または酵母細胞を選択するために使用し得る。結合した抗体フラグメントのCDRをコードするDNA配列は、次いで、結合した粒子または細胞を使用した配列決定によって決定することができる。一実施形態では、ポジティブ選択は、抗体の開発において使用される。一部の実施形態では、ネガティブ選択は、抗体の開発において利用される。一部の実施形態では、ポジティブおよびネガティブ選択方法の両方は、ディスプレイライブラリーを使用して抗体の開発において複数のラウンドの選択の間に利用される。
【0135】
酵母ディスプレイにおいて、異なる抗体フラグメントをコードするcDNAは、これらが発現している酵母細胞中に導入され、抗体フラグメントは、チャオ(Chao)らによって記載されているように細胞表面上に「ディスプレイ」される(チャオ,G.(Chao,G.)ら著、酵母表面ディスプレイを使用したヒト抗体の単離および工学処理(Isolating and engineering human antibodies
using yeast surface display.)、ネイチャープロトコル(Nat Protoc.)、2006年;1巻(2号):755~68頁)。酵母表面ディスプレイにおいて、発現した抗体フラグメントは、酵母アグルチニンタンパク質、Aga2pを含むさらなるドメインを含有し得る。このドメインは、表面発現したAga1pとのジスルフィド結合の形成によって、抗体フラグメント融合タンパク質が酵母細胞の外表面に付着することを可能とする。結果は、特定の抗体フラグメントでコーティングした酵母細胞である。これらの抗体フラグメントをコードするcDNAのディスプレイライブラリーは最初に利用され、ここでは、抗体フラグメントはそれぞれユニーク配列を有する。これらの融合タンパク質は、数百万の酵母細胞の細胞表面上に発現しており、ここでこれらは所望の抗原性標的抗原と相互作用し、細胞と共にインキュベートすることができる。標的抗原は化学基または磁気基で共有結合的にまたは他の方法で修飾され、適切な抗体フラグメントとの結合の成功が起こった後、効率的な細胞選別を可能とし得る。回収は、磁力活性化細胞選別(MACS)、蛍光活性化細胞選別(FACS)または当技術分野において公知の他の細胞選別方法によってであり得る。酵母細胞のサブ集団が選択されると、CDR配列を決定するために対応するプラスミドを分析し得る。
【0136】
バクテリオファージディスプレイ技術は典型的には、これらに限定されないが、fd、F1およびM13ビリオンを含めた繊維状ファージを利用する。このような系統は非溶解性であり、宿主の連続した増殖、およびウイルス力価の増加を可能とする。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ方法の例は、ミエルシュ(Miersch)らによって開示されているものを含む(ミエルシュ,S.(Miersch,S.)ら著、合成抗体:コンセプト、可能性および実践的な考察(Synthetic antibodies:Concepts,potential and practical considerations.)、方法(Methods.)、2012年8月;57巻(4号):486~98頁)、Bradbury(ブラッドベリー)ら(ブラッドベリー,A.R.(Bradbury,A.R.)ら著、天然抗体を超えて:in vitroのディスプレイ技術のパワー(Beyond natural antibodies:the power of in vitro display technologies.)、ネイチャーバイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2011年3月;29巻(3号):245~54頁)、ブリンクマン(Brinkman)ら(ブリンクマン,U.(Brinkmann,U.)ら著、ジスルフィド安定化されたFvフラグメントのファージディスプレイ(Phage display of disulfide-stabilized Fv fragments.)、免疫学的方法ジャーナル(J Immunol Methods.)、1995年5月11日;182巻(1号):41~50頁);エイムス(Ames)ら(エイムス,R.S.(Ames,R.S.)ら著、全長免疫グロブリンへのコンビナトリアルファージディスプレイライブラリーから単離したマウスFabの変換(Conversion of murine Fabs isolated from a combinatorial phage display library to full length immunoglobulins.)、免疫学的方法ジャーナル(J Immunol Methods.)、1995年8月18日;184巻(2号):177~86頁);ケトルボロー(Kettleborough)ら(ケトルボロー,C.A.(Kettleborough,C.A.)ら著、ファージ-抗体ライブラリーを使用した免疫化されたマウスからの腫瘍細胞特異的単鎖Fvの単離、およびこれらの抗体フラグメントからの全抗体の再構築(Isolation of tumor cell-specific single-chain Fv from immunized mice using phage-antibody libraries and the re-construction of whole antibodies from these antibody fragments.)、ヨーロッパ免疫学ジャーナル(Eur J Immunol.)、1994年4月;24巻(4号):952~8頁);パーシック(Persic)ら(パーシック,L.(Persic,L.)ら著、ファージディスプレイライブラリーからの選択後の真核生物の抗体またはこれらのフラグメントの発現のための統合されたベクター系(An integrated vector system for the eukaryotic expression of antibodies or their fragments after selection from phage display libraries.)、遺伝子(Gene.)、1997年3月10日;187巻(1号):9~18頁);PCT出願番号PCT/GB91/01134号パンフレット;国際公開第90/02809号パンフレット;国際公開第91/10737号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第92/18619号パンフレット;国際公開第93/11236号パンフレット;国際公開第95/15982号パンフレット;国際公開第95/20401号パンフレット;ならびに米国特許第5,698,426号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,750,753号明細書;同第5,821,047号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,516,637号明細書;同第5,780,225号明細書;同第5,658,727号明細書;同第5,733,743号明細書および同第5、969,108号明細書(これらのそれぞれは、参照により本明細書中にその全体が組み込まれている)。バクテリオファージ上の抗体フラグメント発現は、フラグメントをコードするcDNAを、ウイルスコートタンパク質を発現している遺伝子中に挿入することによって行い得る。繊維状バクテリオファージのウイルスコートは、一本鎖ゲノムによってコードされる5つのコートタンパク質で構成されている。コートタンパク質pIIIは、典型的には、N末端における抗体フラグメント発現のための好ましいタンパク質である。抗体フラグメント発現がpIIIの機能を損なう場合、ウイルス機能は、野生型pIIIの同時発現によって回復し得る。しかし、このような発現は、ウイルスコート上に発現している抗体フラグメントの数を低減させるが、標的抗原による抗体フラグメントへのアクセスを増強し得る。ウイルスおよび抗体フラグメントタンパク質の発現は、代わりに複数のプラスミド上でコードし得る。この方法は、感染性プラスミドの全体的なサイズを低減させ、形質転換効率を増進するために使用し得る。
【0137】
上記のように、高親和性抗体または抗体フラグメント(例えば、グリカン相互作用抗体)を発現している宿主の選択の後で、抗体または抗体フラグメントからのコード領域は、ヒト抗体を含めた全抗体、または任意の他の所望の抗原結合性フラグメントを生じさせるために単離および使用し、例えば、下記で詳細に記載するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含めた任意の所望の宿主において発現させることができる。
【0138】
高親和性抗体をコードするDNA配列は、親和性成熟として公知であるプロセスにおけるさらなるラウンドの選択のために変異することができる。用語「親和性成熟」は、本明細書において使用する場合、それによって、抗体または抗体フラグメントをコードするcDNA配列の連続的ラウンドの変異および選択によって、所与の抗原に対する増加した親和性を有する抗体が産生される方法を指す。場合によって、このプロセスは、in vitroで行われる。これを達成するために、CDRコード配列の増幅は、エラープローンPCRを使用して行い、これらに限定されないが、点変異、局所変異、挿入変異および欠失変異を含めた変異を含有する数百万のコピーを産生し得る。本明細書において使用する場合、用語「点変異」は、ヌクレオチド配列内の1個のヌクレオチドが異なるヌクレオチドに変化する核酸変異を指す。本明細書において使用する場合、用語「局所変異」は、2個もしくはそれよりも多い連続したヌクレオチドが異なるヌクレオチドに変化する核酸変異を指す。本明細書において使用する場合、用語「挿入変異」は、1個もしくは複数のヌクレオチドがヌクレオチド配列中に挿入される核酸変異を指す。本明細書において使用する場合、用語「欠失変異」は、1個もしくは複数のヌクレオチドがヌクレオチド配列から除去される核酸変異を指す。挿入変異または欠失変異は、全コドンの完全な置換え、または出発コドンの1個もしくは2個のヌクレオチドを変化させることによる1個のコドンの別のコドンへの変化を含み得る。
【0139】
突然変異誘発は、CDRをコードするcDNA配列上で行い、CDR重鎖および軽鎖領域において唯一の変異を有する数百万の変異体を生じさせ得る。別のアプローチにおいて、ランダム変異は、親和性を改善させる可能性が最も高いCDR残基においてのみ導入される。これらの新規に生じた変異原性ライブラリーは、標的抗原に対してさらにより高い親和性を有する抗体フラグメントをコードするクローンについてスクリーニングするプロセスを繰り返すために使用することができる。連続するラウンドの変異および選択は、より大きな親和性を有するクローンの合成を促進する(チャオ,G.(Chao,G.)ら著、酵母表面ディスプレイを使用したヒト抗体の単離および工学処理(Isolating and engineering human antibodies using
yeast surface display.)、ネイチャープロトコル(Nat Protoc.)、2006年;1巻(2号):755~68頁)。
【0140】
抗体および抗体フラグメント、例えば、FabおよびscFvを産生するために使用することができる技術の例は、これらのそれぞれが参照により本明細書中にその全体が組み込まれている、米国特許第4,946,778号明細書および同第5,258、498号明細書;ミエルシュら(ミエルシュ,S.(Miersch,S.)ら著、合成抗体:概念、可能性および実践的考察(Synthetic antibodies:Concepts,potential and practical considerations.)、方法(Methods.)、2012年8月;57巻(4号):486~98頁)、チャオ(Chao)ら(チャオ,G.(Chao,G.)ら著、酵母表面ディスプレイを使用したヒト抗体の単離および工学処理(Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.)、ネイチャープロトコル(Nat Protoc.)、2006年;1巻(2号):755~68頁)、ヒューストン(Huston)ら(ヒューストン,J.S.(Huston,J.S.)ら著、単鎖Fv類似体および融合タンパク質のタンパク質工学(Protein engineering of single-chain Fv analogs and fusion proteins.)、酵素学の方法(Methods Enzymol.)、1991年;203巻:46~88頁);シュー(Shu)ら(シュー,L.(Shu,L.)ら著、骨髄腫細胞からの単一遺伝子がコードする免疫グロブリンの分泌(Secretion of a single-gene-encoded immunoglobulin from myeloma cells.)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、1993年9月1日;90巻(17号):7995~9頁);およびシュケラー(Skerra)ら(シュケラー,A.(Skerra,A.)ら著、大腸菌(Escherichia coli)における機能的免疫グロブリンFvフラグメントのアセンブリー(Assembly of a functional immunoglobulin Fv fragment in Escherichia coli.)、科学(Science.)、1988年5月20日;240巻(4855号):1038~41頁)において記載されているものを含む。
【0141】
ヒトおよびin vitroでの検出アッセイにおける抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)のin vivoでの使用を含めたいくつかの使用のために、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を使用することが好ましくあり得る。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えば、マウス単クローン性免疫グロブリンおよびヒト免疫グロブリン定常領域に由来する可変領域を有する抗体である。キメラ抗体を産生する方法は、当技術分野において公知である。(全内容が参照により本明細書中に組み込まれている、モリソン,S.L.(Morrison,S.L.)、トランスフェクトーマは新規なキメラ抗体を提供する(Transfectomas provide novel
chimeric antibodies.)、科学(Science.)、1985年9月20日;229巻(4719号):1202~7頁;ギリース,S.D.(Gillies,S.D.)ら著、適合されたcDNA可変領域カセットを使用したキメラ抗体の高レベル発現(High-level expression of chimeric antibodies using adapted cDNA variable
region cassettes.)、免疫学的方法ジャーナル(J Immunol Methods.)、1989年12月20日;125巻(1~2号):191~202頁;ならびに米国特許第5,807、715号明細書;同第4,816,567号明細書;および同第4,816,397号明細書)。
【0142】
ヒト化抗体は、所望の抗原に結合し、かつ非ヒト種からの1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)、およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する、ヒトではない種からの抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、ドナー抗体のCDRおよびフレームワーク領域からの対応する残基で置換され、抗原結合を変化させ、好ましくは、改善する。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定するCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって、および特定の位置における普通でないフレームワーク残基を同定する配列比較によって同定される。(米国特許第5,693,762号明細書および同第5,585、089号明細書;リーシュマン,L.(Riechmann,L.)ら著、治療のためのヒト抗体のリシェーピング(Reshaping human antibodies for therapy.)、ネイチャー(Nature)、1988年3月24日;332巻(6162号):323~7頁、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれている)。抗体は、例えば、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号明細書;国際公開第91/09967号パンフレット;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;および同第5,585,089号明細書);ベニヤリングまたはリサーフェシング(欧州特許第592,106号明細書;欧州特許第519,596号明細書;パドラン,E.A.(Padlan,E.A.)、それらのリガンド結合特性を保存する一方で、抗体可変ドメインの免疫原性を低減させるための可能な手順(A possible procedure for reducing the immunogenicity of antibody variable domains while preserving their ligand-binding properties)、分子免疫学(Mol Immunol.)、1991年4月~5月;28巻(4~5号):489~98頁;スタドニッカ,G.M.(Studnicka,G.M.)ら著、ヒト工学処理されたモノクローナル抗体は、非CDR相補性調節残基を保存することによって完全な特異的結合活性を保持する(Human-engineered monoclonal antibodies retain full specific
binding activity by preserving non-CDR complementarity-modulating residues.)、タンパク質工学(Protein Eng.)、1994年6月;7巻(6号):805~14頁;ログスカ,M.A.(Roguska,M.A.)ら著、可変ドメインリサーフェシングによるマウスモノクローナル抗体のヒト化(Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing.)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、1994年2月1日;91巻(3号):969~73頁);ならびに鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号明細書);(これらのそれぞれは参照により本明細書中にその全体が組み込まれている)を含めた当技術分野で公知の種々の技術を使用してヒト化することができる。本発明のヒト化抗体は、所望の結合特異性、補体依存性細胞毒性、および抗体依存性細胞媒介細胞毒性などのために開発し得る。
【0143】
場合によって、ヒトフレームワークは、ドナー抗体配列とヒトフレームワーク配列とのアラインメントによって選択され、最も高いレベルの相同性を有するヒトフレームワーク候補を見出す。場合によって、フレームワーク領域は、複数のヒトフレームワーク候補(例えば、フレームワーク領域1~3は、1つの候補から選択し得、フレームワーク領域4は、代替の候補から選択し得る)から選択し得る。場合によって、フレームワーク領域は、体細胞変異によって生じる免疫原性エピトープを含む危険性を回避するためにヒトコンセンサス配列から選択し得る。コンセンサス配列は、多くの配列を比較し、各位置において最も一般に出現する残基を採用することによって形成される配列である。場合によって、ヒトフレームワークは、ヒト生殖系列配列から選択し得る。これらは、データベース検索(例えば、NCBIタンパク質データベースまたは他のデータベースを使用した)によって同定し得る。
【0144】
軽鎖および重鎖ヒトフレームワークは、同じまたは異なるクローンから選択し得る。同じクローンに由来する軽鎖および重鎖は、機能的である結合部位を形成する会合のより大きな可能性を有する。しかし、重鎖および軽鎖の間のインターフェースの保存された性質は典型的には、異なるクローンからの軽鎖および重鎖が会合して、機能的であることを可能とする。ヒト軽鎖および重鎖フレームワークの間の対形成の頻度は、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、Tillerら著、2013年、MAbs.、5巻(3号):445~70頁において概観することができる。
【0145】
ヒト化抗体配列における残基には、ヒト化の間に失われた抗体親和性を改善または回復するために、「逆突然変異」を考慮し得る。逆突然変異は、当初の非ヒト抗体配列において存在するものに戻る、ヒト化の間に変化した残基を変更することを伴う。逆突然変異についての候補である残基は、例えば、極限抗体構造において見出される標準的な高次構造と比較することによって同定し得る(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、アル-ラジカニ(Al-Lazikaniら)著、1997年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、273巻:927~48頁を参照されたい)。普通でない極限残基は、同定され、逆突然変異について標的とし得る。場合によって、逆突然変異についての候補である残基は、CDRと接触している残基を指すために使用される用語である「バーニア(Vernier)残基」であり得る。これらの残基は、CDRの位置付けおよび高次構造、したがって、抗体の親和性および/または特異性に影響を与えるより高い可能性を有する(ストロール,W.R.(Strohl,W.R.)、治療用抗体工学(Therapeutic Antibody Engineering)、ウッドヘッドパブリッシング(Woodhead Publishing)、フィラデルフィア、PA.、2012年、第6章、117頁)。場合によって、ヒトフレームワーク領域は定常に維持し、ドナー抗体からのCDRは、経験による方法によって結合を維持する一方で、ヒトCDR領域にフィットするように逆突然変異する。
【0146】
完全ヒト抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、異種タンパク質への免疫反応を回避または軽減するためにヒト患者の治療的処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用して、上記の抗体ディスプレイ方法を含めた当技術分野において公知の種々の方法によって作製することができる。これらのそれぞれが参照により本明細書中にその全体が組み込まれている、米国特許第4,444,887号明細書および同第4,716,111号明細書;ならびに国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、および国際公開第91/10741号パンフレットをまた参照されたい。
【0147】
ヒト抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)はまた、機能的内因性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリンポリヌクレオチドを発現することができる、トランスジェニックマウスを使用して産生することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチド複合体は、ランダムに、または相同組換えによって、マウス胚性幹細胞中に導入することができる。代わりに、ヒト重鎖および軽鎖ポリヌクレオチドに加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域は、マウス胚性幹細胞中に導入し得る。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチドは、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と別々にまたは同時に非機能的とすることができる。特に、J領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体の産生を防止する。改変された胚性幹細胞は増殖し、胚盤胞に微量注射し、キメラマウスを生じさせる。次いで、キメラマウスは、ヒト抗体を発現するホモ接合型子孫を産生するように飼育される。トランスジェニックマウスは、正常な様式で選択した抗原、例えば、本発明のグリカン、グリココンジュゲートおよび/またはポリペプチドの全てまたは部分で免疫化される。
【0148】
このように、このような技術を使用して、有用なヒトIgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するための技術の概要については、ロンバーグ(Lonberg)およびフサール(Huszar)(ロンバーグ,N.(Lonberg,N.)ら著、トランスジェニックマウスからのヒト抗体(Human antibodies from transgenic mice.)、免疫学国際レビュー(Int Rev Immunol.)、1995年;13巻(1号):65~93頁)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するための技術、ならびにこのような抗体を産生するためのプロトコルの詳細な考察について、例えば、これらのそれぞれが参照により本明細書中にその全体が組み込まれている、国際公開第98/24893号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第96/34096号パンフレット;国際公開第96/33735号パンフレット;米国特許第5,413,923号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,885,793号明細書;同第5,916,771号明細書;同第5,939,598号明細書;同第6,075,181号明細書;および同第6,114,598号明細書を参照されたい。さらに、会社、例えば、アブジェニクス社(Abgenix,Inc.)(フリーモント、カリフォルニア)、プロテインデザインラブ社(Protein Design Labs, Inc.)(マウンテンビュー、カリフォルニア)およびジェンファーム(Genpharm)(サンホゼ、カリフォルニア)は、上記の技術と同様の技術を使用して、選択した抗原に対するヒト抗体を提供するように従事することができる。
【0149】
本発明の抗体分子が動物、細胞系によって産生されるか、化学的に合成されるか、または組み換え技術によって発現されると、これは免疫グロブリンまたはポリペプチド分子の精製のための当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、特異的抗原、タンパク質Aに対する親和性による、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度によって、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製(すなわち、単離)することができる。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、本明細書に記載されているかまたは他に当技術分野において公知の異種ポリペプチド配列に融合して、精製を促進することができる。
【0150】
抗体および標的またはリガンド(例えば、所与の抗体を生じさせるために使用される抗原)の間の親和性は、本明細書に記載のような1つもしくは複数の結合アッセイを使用して、Kに関して測定し得る。所与の抗体についての所望の用途によって、変動するK値が望ましくてもよい。高親和性抗体は典型的には、約10-5Mもしくはこれ未満、例えば、約10-6Mもしくはこれ未満、約10-7Mもしくはこれ未満、約10-8Mもしくはこれ未満、約10-9Mもしくはこれ未満、約10-10Mもしくはこれ未満、約10-11Mもしくはこれ未満または約10-12Mもしくはこれ未満のKを伴ってリガンド結合を形成する。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、これらの最大半量有効濃度または阻害濃度(それぞれ、EC50またはIC50)によって特性決定し得る。場合によって、この値は、最も高い濃度の抗体で観察される最大阻害の半分と等しいレベルで、STnを発現している細胞を阻害する(例えば、死滅させ、増殖を低減させ、かつ/または1つもしくは複数の細胞機能を低減する)のに必要とされる抗体の濃度を表し得る。このようなIC50値は、約0.001nM~約0.01nM、約0.005nM~約0.05nM、約0.01nM~約1nM、約0.05nM~約5nM、約0.1nM~約10nM、約0.5nM~約25nM、約1nM~約50nM、約5nM~約75nM、約10nM~約100nM、約25nM~約250nM、約200nM~約1000nMまたは1000nM超であり得る。
【0152】
一部の実施形態では、本開示において教示される抗体は、患者に由来するがん細胞および/またはがん幹細胞(CSC)を標的とするこれらの能力について試験し得る。このような実施形態によると、患者に由来するがん細胞は、in vitroで培養してもよく、本開示の抗体は、このような細胞を標的とするために使用し得る。
【0153】
他の実施形態では、患者に由来する細胞は、患者に由来する異種移植片(PDX)腫瘍を生じさせるために使用し得る。場合によって、組織構造として維持されている原発性または転移性の固形腫瘍の小片は、手術または生検手順によって集め得る。場合によって、悪性の腹水または胸水から流れる液体を使用し得る。腫瘍は、単独で、またはいくつかの研究において、MATRIGEL(登録商標)(コーニングライフサイエンス(Corning Life Sciences)、コーニング、NY)でコーティングして、またはヒト線維芽細胞もしくは間葉系幹細胞と混合して、小片または単一の細胞懸濁液として埋め込み得る。埋込の部位は、マウスの背側の領域(皮下埋込)を含み得るが、最初の腫瘍と同じ器官における埋込はオプションであり得る(同所性埋込、すなわち、膵臓、口腔、卵巣、乳房脂肪体、脳など)。さらに、腫瘍の起源とは無関係に、いくつかのアプローチは、生着成功率を増加させるために、腎被膜において原発性腫瘍を埋め込むことを含み得る。異なる程度の免疫抑制を有する種々のマウス系統は、このような研究において使用し得る。ホルモン感受性腫瘍について、いくつかの研究は、生着率を増加させる目的でホルモン補充を使用し得る。一部の実施形態では、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウスにおいてPDX腫瘍を生じさせ得る。抗体は、PDX腫瘍を有するマウスに投与し得、腫瘍体積に対する効果を分析し得る。場合によって、PDX腫瘍は、切開し、細胞解離に供し、このように得られた細胞は培養液中で成長させ得る。これらの細胞を標的とする本開示の抗体の能力は、in vitroでアセスメントし得る。
【0154】
抗体の調製は、モノクローナルまたはポリクローナルであろうと、当技術分野において公知である。抗体の産生のための技術は当技術分野で周知であり、例えば、ハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体、実験室マニュアル(Antibodies,A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1988年およびハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体の使用:実験室マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1999年に記載されている。
【0155】
標的
本発明のグリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数のグリカンまたはグリカン関連標的またはグリカンに関連する標的に(可逆的にまたは不可逆的に)結合することによってこれらの効果を発揮し得る。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、本明細書において教示されている標的の任意の領域から調製することができる。一部の実施形態では、本発明の標的は、グリカンを含む。抗体を生じさせるために使用されるグリカンは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または少なくとも20個の残基を有する糖の鎖を含み得る。抗体を生じさせるために使用されるいくつかのグリカンは、約2個の残基から約5個の残基を含み得る。
【0156】
一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体標的抗原は、シアル酸を含む。N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)およびN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)は、哺乳動物細胞表面上の主要なシアル酸である。これらのうち、Neu5Acは、ヒトにおいて天然に産生される。Neu5Gcは、CMP-Neu5AcからのCMP-Neu5Gc産生に関与するシチジン一リン酸(CMP)-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)遺伝子における変異によって、ヒトを例外として大部分の哺乳動物において天然に産生される。ヒトにおけるNeu5Gcは、実際、免疫原性であり、殆ど全てのヒトは抗Neu5Gc抗体を発現している。産生の欠如にも関わらず、大部分のヒト系は、食事摂取によってある程度のレベルのNeu5Gcを含む。これらの異種産物は、ヒト糖タンパク質中にそれに続いて組み込まれる。このような糖タンパク質は、本発明の標的として意図される。本発明のグリカン標的抗原には、これらに限定されないが、下記の表において列挙したものが含まれてもよい。
【0157】
【表1-1】
【0158】
【表1-2】

下記の略語を本明細書において使用する。Glc-グルコース、Gal-ガラクトース、GlcNAc-N-アセチルグルコサミン、GalNAc-N-アセチルガラクトサミン、GlcNAc6S-6-スルホ-N-アセチルグルコサミン、KDN-2-ケト-3-デオキシ-D-glycero-D-ガラクトノノン酸、Neu5,9Ac2-N-アセチル-9-O-アセチルノイラミン酸、Fuc-フコースおよびNeu5GcOMe-2-O-メチル-N-グリコリルノイラミン酸。O-グリコシド結合は、結合によって接合している2個の残基の間の相対的化学量論を示すαおよびβと共に列挙されているグリカンにおける各残基の間に存在し、ここで、αは、軸方向の配向を示し、βは、エクアトリアル配向を示す。フォーマットx,xにおけるαおよび/またはβに続く数は、結合形成に関与する近接した残基のそれぞれからの炭素のそれぞれの炭素数を示す。従前の表において列挙するグリカンは、意図する個々のグリカン標的抗原を表す一方、本発明はまた、上記で提示したグリカンが、提示したものと異なるαおよびβ-配向されたO-グリコシド結合の組合せを含む実施形態を含む。また従前の表において、Rは、グリカンがカップリングし得る実体を表す。一部の実施形態では、Rは、タンパク質であり、グリカンは典型的には、セリンまたはトレオニン残基に連結している。一部の実施形態では、Rは、例えば、グリカンアレイにおいて、グリカンを基材に接合するために使用されるリンカー分子である。一部の実施形態では、Rは、-(CHCHNHまたは-(CHNHCOCH(OCHCHNHの式を有するリンカーであり得る。一部の実施形態では、Rは、ビオチン、アルブミン、ProNH、-CH-、-OH、-OCH、-OCHCH、-H、ヒドリド、ヒドロキシ、アルコキシル、酸素、炭素、硫黄、窒素、ポリアクリルアミド、リン、NH、ProNH=O(CHCHNH、(OCHCHNH、O(CHNHCOCH(OCHCHNH、蛍光標識2-アミノベンズアミド(AB)および/または2-アミノ安息香酸(AA)、アルキルアミンを含有する2-アミノベンズアミド類似体(AEAB)、アミノオキシ基、メチルアミノオキシ基、ヒドラジド基、アミノ脂質1,2-ジヘキサデシル-sn-glycero-3-ホスホエタノールアミン(DHPE)、アミノオキシ(AO)官能化DHPE、ならびにグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)であり得る。Rの源または性質を限定することを意図しないが、これはグリカン残基の物理的な間隔に影響を与える構造を含み得る。一部の実施形態では、R基は、ここで提示するR基、例えば、ビオチン化ポリアクリルアミドの組合せを含み得る。一部の実施形態では、基礎をなす基材と組み合わせたR基は、グリカン残基の間隔をもたらす。
【0159】
本発明のグリカン標識は、抗体認識の1つもしくは複数の領域を含み得る。本明細書において使用する場合、用語「抗体認識の領域」は、分子、付着基の任意の部分上に位置しているか、またはグリカンと、これらに限定されないが、別のグリカン、タンパク質、膜、細胞表面構造、もしくは細胞外マトリックス構成要素を含めた別の分子との間の相互作用の領域上に位置している、セグメントを指す。一部の実施形態では、抗体認識の領域は、鎖間の標的部位において位置しており、ここで、用語「鎖間」は、本ポリマー鎖内を意味する。鎖間の標的部位は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または少なくとも10個の残基、残基の間の結合、または残基および結合の組合せを有する抗体認識の領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体認識の領域は、1個もしくは複数のグリカン鎖の間の相互作用の領域において位置している。このような領域は、2個、3個、4個または少なくとも5個のグリカン鎖の間であり得る。
【0160】
一部の実施形態では、抗体認識の領域は、一般の親鎖に接続しているグリカン分岐鎖の間の相互作用の領域において位置している。一部の実施形態では、抗体認識の領域は、グリカン分岐鎖および親鎖の間の相互作用の領域において位置している。一部の実施形態では、抗体認識の領域は、グリカンおよびタンパク質の間の相互作用の領域において位置している。相互作用のこのような領域は、これらに限定されないが、共有結合、イオン結合、静水結合(hydrostatic bond)、疎水性結合および水素結合を含めた、グリカンおよびタンパク質の間の化学結合を含み得る。一部の実施形態では、抗体認識の領域は、グリカンと、これらに限定されないが、脂質および核酸を含めた他の生体分子との間の相互作用の領域において位置している。相互作用のこのような領域は、これらに限定されないが、共有結合、イオン結合、静水結合、疎水性結合および水素結合を含めたグリカンおよび生体分子の間の化学結合を含み得る。
【0161】
一部の実施形態では、本発明のグリカン標的は、グリココンジュゲートの構成要素である。本明細書において使用する場合、用語「グリココンジュゲート」は、グリカン部分と接合した任意の実体を指す。一部の実施形態では、グリココンジュゲートは、糖脂質である。本明細書において使用する場合、用語「糖脂質」は、炭水化物部分が共有結合的に付着している脂質の1クラスを指す。一部の実施形態では、糖脂質上に存在する炭水化物部分は、グリカンであり得る。一部の実施形態では、糖脂質の脂質構成要素は、セラミド部分を含む。本発明の標的として意図される糖脂質の例には、これらに限定されないが、グリセロ糖脂質(これらに限定されないが、ガラクト脂質および硫脂質を含めた)、スフィンゴ糖脂質(これらに限定されないが、セレブロシド(例えば、ガラクトセレブロシド、グルコセレブロシドおよびスルファチド)、ガングリオシド、グロボシドおよび糖スフィンゴリン脂質を含めた)ならびにグリコシルホスファチジルイノシトールが含まれる。細胞膜内に位置しているとき、糖脂質のグリカン部分は、膜の細胞外側上に位置しており、ここでこれらは、他の細胞および細胞シグナル伝達リガンドと相互作用し得る(マッキオーニ,H.J.(Maccioni,H.J.)ら著、ゴルジ複合体における糖脂質オリゴ糖の合成の機構(Organization of the synthesis of glycolipid oligosaccharides in the Golgi complex)、FEBSレターズ(FEBS Lett.)、2011年6月6日;585巻(11号):1691~8頁)。
【0162】
一部の実施形態では、本発明のグリココンジュゲート標的は、糖タンパク質および/またはプロテオグリカンである。糖タンパク質は、グリカンと共有結合している任意のタンパク質を指す。プロテオグリカンは、負の電荷を担持することが多いグリカンで重度にグリコシル化されているタンパク質の1クラスである。この特性によって、これらは非常に親水性であり、かつ結合組織の重要な構成要素となる。
【0163】
がんに関連する標的
一部の実施形態では、本発明の標的は、がんに関連する抗原またはエピトープである。本明細書において使用する場合、用語「がん関連」は、がん、がん性細胞および/またはがん組織と何らかの方法で関連し得る実体を記載するために使用される。腫瘍細胞と相関して発現している、グリカンを含む多くのがんに関連する抗原またはエピトープが同定されてきた(ヘインバーグ-モリナロ,J.(Heimburg-Molinaro,J.)ら著、がんワクチンおよび炭水化物エピトープ(Cancer vaccines and carbohydrate epitopes.)、ワクチン(Vaccine.)、2011年11月8日;29巻(48号):8802~26頁)。これらは、本明細書において、「腫瘍関連炭水化物抗原」または「TACA」と称される。TACAには、これらに限定されないが、ムチン関連抗原[これらに限定されないが、Tn、シアリルTn(STn)およびトムゼン-フリーデンライヒ抗原を含めた]、血液型ルイス関連抗原[これらに限定されないが、ルイス(Le)、ルイス(Le)、シアリルルイス(SLe)およびシアリルルイス(SLe)を含めた]、スフィンゴ糖脂質関連抗原[これらに限定されないが、グロボH、ステージ特異的胎児抗原-3(SSEA-3)、およびシアル酸を含むスフィンゴ糖脂質を含めた]、ガングリオシド関連抗原[これらに限定されないが、ガングリオシドGD2、GD3、GM2、フコシルGM1およびNeu5GcGM3を含めた]、ならびにポリシアル酸関連抗原が含まれる。このような抗原の多くは、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2015054600号パンフレットに記載されている。
【0164】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、ルイス血液型抗原を含む。ルイス血液型抗原は、α1-3連結またはα1-4連結によってGlcNAcに連結したフコース残基を含む。これらは糖脂質および糖タンパク質の両方上で見出し得る。ルイス血液型抗原は、これらの抗原の分泌者である個体の体液において見出し得る。赤血球上にこれらが現れることは、赤血球による血清からのルイス抗原の吸収による。
【0165】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、Leを含む。Le(CD174としてもまた公知である)は、α1,2-およびα1,3-連結フコース残基を有するGalβ1,4GlcNACで構成されており、Fucα(1,2)Galβ(1,4)Fucα(1,3)GlcNAcエピトープを生じさせる。これはα1,3フコースを親鎖のGlcNAc残基に付着させるα1,3フコシルトランスフェラーゼによってH抗原から合成される。Leは、これらに限定されないが、卵巣、乳房、前立腺、結腸、肺および上皮を含めた種々のがんにおいて発現し得る。正常組織におけるその低い発現レベル、および多くのがんにおける上昇した発現レベルによって、Le抗原は、治療用抗体についての魅力的な標的である。
【0166】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、Leを含む。Leは、エピトープGalβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ-Rを含む。これはまた、CD15およびステージ特異的胎児抗原-1(SSEA-1)として公知である。この抗原は、F9奇形癌細胞による免疫化に供したマウスから採取した血清と免疫反応性であると最初に認識された。Leはまた、特定の段階における胚発生と相関することが見出された。これはまた、がんの存在下および非存在下の両方における種々の組織において発現しているが、また乳がんおよび卵巣がんにおいて見出すことができ、これはがん性細胞によってのみ発現される。
【0167】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、SLeおよび/またはSLeを含む。SLeおよびSLeは、それぞれ、構造Neu5Acα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ-RおよびNeu5Acα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ-Rで構成されている。これらの発現は、がん細胞においてアップレギュレートされる。血清中のこれらの抗原の存在は、悪性腫瘍および予後不良と相関する。SLeは、ムチン末端エピトープとして大部分が見出される。これは、乳房、卵巣、黒色腫、結腸、肝臓、肺および前立腺を含めたいくつかの異なるがんにおいて発現している。本発明の一部の実施形態では、SLeおよびSLe標的は、Neu5Gc(本明細書において、それぞれ、GcSLeおよびGcSLeと称される)を含む。
【0168】
場合によって、本発明のがんに関連する標的は、ムチンを含み得る。イシダ(Ishida)らは、MUC2と樹状細胞(抗腫瘍活性を有する)との相互作用が、樹状細胞アポトーシスをもたらすことを示す(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、イシダ,A.(Ishida,A.)ら著、2008年、プロテオミクス(Proteomics.)、8巻:3342~9頁)。いくつかの態様では、本発明は、樹状細胞のアポトーシスを防止し、抗腫瘍活性を支持する抗ムチン抗体を提供した。
【0169】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、糖脂質および/またはこれらに限定されないが、スフィンゴ糖脂質を含めた糖脂質上に存在するエピトープを含む。スフィンゴ糖脂質は、セラミドヒドロキシル基によってグリカンに連結した脂質セラミドを含む。細胞膜上で、スフィンゴ糖脂質は、「脂質ラフト」と称されるクラスターを形成する。
【0170】
一部の実施形態では、本発明のTACA標的は、グロボHを含む。グロボHは、乳がん細胞において最初に同定されたがんに関連するスフィンゴ糖脂質である。グロボHのグリカン部分は、Fucα(1-2)Galβ(1-3)GalNAcβ(1-3)Galα(1-4)Galβ(1-4)Glcβ(1)を含む。いくつかの正常な上皮組織において見出されるが、グロボHは、これらに限定されないが、小細胞肺、乳房、前立腺、肺、膵臓、胃、卵巣および子宮内膜の腫瘍を含めた多くの腫瘍組織と関連して同定されてきた。
【0171】
一部の実施形態では、本発明のがんに関連するスフィンゴ糖脂質標的は、ガングリオシドを含む。ガングリオシドは、1種もしくは複数のシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質である。ガングリオシドの命名法によると、Gは、ガングリオシドについての略語として使用される。この略語に、付着したシアル酸残基の数(それぞれ、1、2または3)を意味する文字M、DまたはTが続く。最後に、数1、2または3は、薄層クロマトグラフィーによって分析したときに、それぞれが移動した距離の順序を指すために使用される(ここで、3は最も長い距離を移動し、それに続いて、2、次いで、1である)。ガングリオシドは、がんに関連する成長および転移に関与していることが公知であり、腫瘍細胞の細胞表面上に発現し得る。腫瘍細胞上で発現しているガングリオシドには、これらに限定されないが、GD2、GD3、GM2およびフコシルGM1(本明細書において、Fuc-GM1とまた称される)が含まれてもよい。本発明の一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、GD3に対して方向付けされる。GD3は、細胞成長のレギュレーターである。一部の実施形態では、GD3に向けられる抗体を使用して、細胞成長および/または血管形成をモジュレートする。一部の実施形態では、GD3に向けられる抗体を使用して、細胞付着をモジュレートする。いくつかの腫瘍細胞と会合しているGD3は、9-O-アセチル化シアル酸残基を含み得る(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ムケルジー,K.(Mukherjee,K.)ら著、2008年、細胞生化学ジャーナル(J Cell Biochem.)、105巻:724~34頁およびムケルジー,K.(Mukherjee,K.)ら著、2009年、生物化学(Biol Chem.)、390巻:325~35頁)。場合によって、本発明の抗体は、9-O-アセチル化シアル酸残基に対して選択的である。いくつかの抗体は、9-O-アセチル化GD3に対して特異的であり得る。このような抗体は、9-O-アセチル化GD3を発現している腫瘍細胞を標的とするために使用し得る。本発明の一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、GM2に方向付ける。一部の実施形態では、GM2に向けられる抗体を使用して、細胞と細胞の接触をモジュレートする。一部の実施形態では、本発明のガングリオシド標的は、Neu5Gcを含む。一部の実施形態では、このような標的は、Neu5Gcを有するGM3バリアントを含み得る(本明細書において、GcGM3と称される)。GcGM3のグリカン構成要素は、Neu5Gcα2-3Galβ1-4Glcである。GcGM3は、腫瘍細胞の公知の構成要素である(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、カザドシュ,A.V.(Casadesus,A.V.)ら著、2013年、グリココンジュゲートジャーナル(Glycoconj J.)、30巻(7号):687~99頁)。
【0172】
一部の実施形態では、本開示のTACAは、少なくとも1個のNeu5Gc残基を含む。
組換え抗体
本発明の組換え抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、当技術分野で公知の標準的な技術を使用して生じさせ得る。一部の実施形態では、組換え抗体は、抗グリカン抗体であり得る。さらなる抗体は、抗STn抗体(例えば、抗GcSTnまたは抗AcSTn抗体)であり得る。本発明の組換え抗体は、本明細書に記載されている方法によって産生されるハイブリドーマ細胞由来の抗体から得た可変ドメインを使用して産生し得る。抗体の重鎖および軽鎖可変領域cDNA配列は、標準的な生化学的技術を使用して決定し得る。総RNAは、抗体産生ハイブリドーマ細胞から抽出し、リバーストランスクリプターゼ(RT)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってcDNAに変換し得る。PCR増幅は、結果として生じたcDNA上で行って、可変領域遺伝子を増幅し得る。このような増幅は、重鎖および軽鎖配列の増幅に対して特異的なプライマーの使用を含み得る。他の実施形態では、組換え抗体は、他の源から得た可変ドメインを使用して産生し得る。これは、1種もしくは複数の抗体フラグメントライブラリー、例えば、抗原パニングにおいて使用されるscFvライブラリーから選択される可変ドメインの使用を含む。次いで、結果として生じたPCR産物は、配列分析のためにプラスミド中にサブクローニングし得る。配列決定されると、抗体コード配列は、発現ベクター中に配置し得る。ヒト化のために、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのためのコード配列は、相同マウス配列を置換するために使用し得る。次いで、このように得られた構築物は、大規模翻訳のために哺乳動物細胞にトランスフェクトし得る。
【0173】
抗Tn抗体
一部の実施形態では、本発明の組換え抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、抗Tn抗体であり得る。このような抗体は、Tnを有する標的に結合し得る。抗Tn抗体は、Tnに対して特異的であり得るか、またはTnを有する他の修飾された形態、例えば、これらに限定されないが、さらなる炭水化物残基を含めた他の部分に連結したTnを結合し得る。場合によって、抗Tn抗体は、抗シアリル-Tn抗体であり得る。このような抗体は、Neu5Acを含むシアル酸付加されたTnおよび/またはNeu5Gcを含むシアル酸付加されたTnに結合し得る。いくつかの抗Tn抗体は、Tn抗原のクラスターに特異的に結合し得る。
【0174】
抗STn抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体(例えば、グリカン相互作用抗体)は、STnに特異的に結合し得る。本発明の抗STn抗体は、STn抗原の特定の部分へのこれらの結合によって、および/またはAcSTn対GcSTnについてのこれらの特異性によってカテゴリー化し得る。場合によって、本発明の抗STn抗体は、群1抗体である。本発明による「群1」抗体は、AcSTnおよびGcSTnを結合することができる抗体である。このような抗体はまた、本明細書において、より広範囲のSTn構造と関連するこれらの能力によって汎STn抗体と称し得る。一部の実施形態では、群1抗体は、図1Aにおける大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連し得る。場合によって、本発明の抗STn抗体は、群2抗体である。「群2」抗体は、本発明によると、STn、およびセリンまたはトレオニンへのO-連結を含むいくつかの関連する構造を結合することができる抗体である。一部の実施形態では、群2抗体は、シアル酸付加されたガラクトース残基を含むグリカンと関連し得る。場合によって、群2抗体は、図1Bにおける大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連し得る。いくつかの群2抗体は、好ましくは、GcSTnを有する構造を超えてAcSTnを有する構造に結合する。さらなる抗STn抗体は、群3抗体であり得る。本明細書において言及するように、「群3」抗体は、STnを結合することができる抗体であるが、またより広範な一連の関連する構造を結合し得る。群2抗体とは異なり、群3抗体は、このような構造がセリンまたはトレオニンへのO-連結を有することを必要としない。一部の実施形態では、群3抗体は、図1Cにおける大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連し得る。最後に、本発明のいくつかの抗STn抗体は、群4抗体であり得る。本明細書において言及するように、「群4」抗体は、AcSTnおよびGcSTnの両方、ならびに非シアル酸付加されたTn抗原に結合することができ、従って、より広範な特異性を有する。一部の実施形態では、群4抗体は、図1Dにおける大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連し得る。
【0175】
場合によって、本発明の抗STn抗体は、特定の抗原または細胞表面上のSTnのクラスターに特異的に結合し得る。いくつかのこのような抗体は、付近のSTn構造の間の接触のエリアを含むエピトープを含めた、STnのクラスター化によって形成されたエピトープを認識し得る。このようなエピトープは、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ超のSTn構造のクラスター化によって形成し得る。
【0176】
一部の実施形態では、本開示の抗STn抗体は、STnを担持する細胞タンパク質を結合するのに使用し得る。このような抗体は、STn発現によって非がん性細胞における同様のタンパク質から鑑別可能である、がん細胞と会合する細胞タンパク質を標的とするのに有用であり得る。場合によって、このようなタンパク質は、細胞表面タンパク質を含み得る。STnを担持するがん細胞表面タンパク質は、がん処置および/または診断の間に、抗STn抗体によって標的とされてもよい。STnを担持する細胞表面タンパク質は、質量分析法を使用して、かつ/または免疫学的方法(例えば、FACS分析、免疫沈降、免疫ブロット、ELISAなど)を使用して同定し得る。場合によって、STnを担持する細胞タンパク質は、がん細胞マーカー、がん幹細胞マーカー、および/またはがん幹細胞シグナル伝達タンパク質を含み得る。一部の実施形態では、STnを担持する細胞タンパク質には、これらに限定されないが、CD44、CD133、CD117、インテグリン、ノッチ、およびヘッジホッグが含まれてもよい。
【0177】
抗体構成要素
場合によって、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、本明細書において提供する可変ドメインおよび/またはCDRアミノ酸配列を含み得る。いくつかの抗体または抗原結合性フラグメントは、このような配列の異なる組合せを含み得る。場合によって、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した可変ドメイン配列の1つもしくは複数を含み得る。「X」で示す残基は、存在しないか、または任意のアミノ酸残基から選択し得る。表において提示する軽鎖可変ドメインは、C末端アルギニン残基を伴いもしくは伴わずに発現し得る。この残基は典型的には、軽鎖可変ドメインを軽鎖定常ドメインに連結し、軽鎖可変ドメインの代わりに軽鎖定常ドメインの部分として発現し得る。場合によって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した可変ドメイン配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0178】
【表2-1】
【0179】
【表2-2】
【0180】
【表2-3】
【0181】
【表2-4】

場合によって、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙するCDRアミノ酸配列の1つもしくは複数を含み得る。「X」で示す残基は、存在しないか、または任意のアミノ酸残基から選択し得る。場合によって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙したCDR配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0182】
【表3-1】
【0183】
【表3-2】
【0184】
【表3-3】
【0185】
【表3-4】

場合によって、本開示の抗体は、下記の表において列挙したCDR配列群からの1つもしくは複数のCDRアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含み得る。「X」で示す残基は、存在しないか、または任意のアミノ酸残基から選択し得る。場合によって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙したCDR配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、抗体は、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0186】
【表4】

場合によって、本開示の抗体は、下記の表において列挙したCDR配列群からの1つもしくは複数のCDRアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含み得る。「X」で示す残基は、存在しないか、または任意のアミノ酸残基から選択し得る。場合によって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙したCDR配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、抗体は、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0187】
【表5】

場合によって、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙する可変ドメイン配列の1つもしくは複数を含むヌクレオチド配列によってコードし得る。「N」と標識された残基は、存在しないか、またはヌクレオチドA、C、GもしくはTから選択し得る。場合によって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した可変ドメイン配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有する配列を含むヌクレオチド配列によってコードし得る。場合によって、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを含むヌクレオチド配列によってコードし得る。
【0188】
【表6-1】
【0189】
【表6-2】
【0190】
【表6-3】
【0191】
【表6-4】
【0192】
【表6-5】
【0193】
【表6-6】
【0194】
【表6-7】
【0195】
【表6-8】
【0196】
【表6-9】
【0197】
【表6-10】

場合によって、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、下記の表において提示するIgGフレームワーク領域のいずれかを含み得る。場合によって、抗体またはそのフラグメントは、下記の表において列挙した定常ドメイン配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、本発明の抗体またはそのフラグメントは、下記の表において列挙した配列のいずれかの1個もしくは複数のフラグメントを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0198】
【表7】

場合によって、抗体は、下記の表におけるアミノ酸配列の1つまたは両方を含んでもよく、かつ/または下記の表において提示するヌクレオチド配列もしくはその最適化されたバージョンの1つまたは両方によってコードし得る。
【0199】
【表8-1】
【0200】
【表8-2】

場合によって、抗体またはそのフラグメントは、従前の表において提示するアミノ酸配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するアミノ酸配列を含み得る。場合によって、抗体またはそのフラグメントは、従前の表において提示するヌクレオチド配列の1つもしくは複数と約50%~約99.9%の配列同一性(例えば、約50%~約60%、約55%~約65%、約60%~約70%、約65%~約75%、約70%~約80%、約75%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%または約99.8%)を有するヌクレオチド配列によってコードし得る。
【0201】
一部の実施形態では、本開示は、上記の抗体配列または関連するバリアントの1つもしくは複数を使用して産生される抗体フラグメントを含む。このような抗体フラグメントは、本明細書に記載されているもののいずれかを含めた、scFv、Fabフラグメント、または任意の他の抗体フラグメントを含み得る。
【0202】
ヒト化抗体
ヒトではない(例えば、マウスの)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここではレシピエントの抗体からの超可変領域からの残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有するヒトではない種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギまたはヒトではない霊長類の抗体からの超可変領域からの残基で置き換えられている。
【0203】
一部の実施形態では、完全ヒト化重鎖および軽鎖は、抗体配列から、および/または本明細書において提示するCDRと共に設計し得る。抗体可変領域のタンパク質モデルは、現存する抗体構造をテンプレートとして使用して生じさせ得る。出発重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列のセグメントは、ヒト配列と比較して、同様の配列を有するヒト生殖系列抗体を同定し得る。一連のヒト化重鎖および軽鎖可変領域は、T細胞エピトープを回避する目的で、ヒト可変ドメインフレームワーク領域配列を使用して設計し得る。in silicoでの技術によって決定するような潜在的なT細胞エピトープの有意な発生率を伴うバリアントヒト配列セグメントは廃棄し得る。場合によって、結果として生じた可変ドメインにおけるアミノ酸残基のいくつかは、当初のマウス可変ドメイン中に存在するアミノ酸に逆突然変異し得る。場合によって、このように得られた可変ドメインにおけるマウス残基のいくつかは、ヒト生殖系列配列中に存在するマッチ残基に変異し得る。
【0204】
ヒト化重鎖および軽鎖可変領域遺伝子は、リガーゼ連鎖反応(LCR)を使用して、全長遺伝子にアセンブルされたオーバーラップオリゴヌクレオチドから構築し得る。LCR産物は増幅してもよく、適切な制限部位は、発現ベクターへのクローニングのために加え得る。PCR産物は、中間ベクターにクローニングされ、配列決定によって確認し得る。
【0205】
ヒト定常領域を有する完全ヒト化抗体をコードする発現プラスミドの構築のために、抗体可変領域をコードするDNA配列は、上流のプロモーター/エンハンサー、例えば、サイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー(CMV IE)、プラス免疫グロブリンシグナル配列と、下流の免疫グロブリン定常領域遺伝子との間の、発現ベクター(例えば、哺乳動物の発現ベクター)中に挿入し得る。次いで、DNA試料は、哺乳動物細胞へのトランスフェクションのために調製し得る。
【0206】
細胞系の産生、および完全ヒト化抗体の選択のために、重鎖および軽鎖プラスミドDNA対は、発現のために細胞中にトランスフェクトし得る。一部の実施形態では、哺乳動物のNS0細胞を使用し得る。ヒト化抗体を産生する細胞系は、細胞培養培地から収集および精製し得る抗体の発現のために増殖し得る。
【0207】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、当技術分野において公知のヒト化方法によって調製し得る。このような方法には、これらに限定されないが、CDRグラフティング、リサーフェシング、超ヒト化、およびヒトストリング内容最適化が含まれてもよい(例えば、アルマグロ(Almagro)ら著、2008年、バイオサイエンスにおけるフロンティア(Front.Biosci.)、13巻:1619~33頁を参照されたい)。一部の実施形態では、経験による方法が使用される。このような方法は、濃縮技術、例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、または他のハイスループットスクリーニング技術によって、大きなコンビナトリアルライブラリーの生成、および所望のバリアントを選択することを含み得る。これらの方法は、単独で、またはフレームワークライブラリー、誘導選択、フレームワークシャフリング、およびヒューマニアリングと組み合わせて利用し得る。
【0208】
一部の実施形態では、ヒト化抗体は、下記の表において提示するヒト可変ドメインの1つもしくは複数を利用することによって調製し得る。このような抗体は、ヒト可変ドメイン中に存在するCDR配列に代えて用いられる、本明細書において提示するCDR配列、またはそのフラグメントもしくはバリアントのいずれかの1つもしくは複数を含み得る。場合によって、ヒト可変ドメイン配列のバリアントを利用し、このようなバリアントは、下記の表において提示するヒト可変ドメイン配列のいずれかに対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する。
【0209】
【表9】

一部の実施形態では、本開示のヒト化抗体は、下記の表において提示するヒトフレームワーク領域の1つもしくは複数を含み得る。いくつかの抗体は、下記の表において提示するフレームワーク領域のいずれかと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有するフレームワーク領域を含み得る。
【0210】
【表10】

一部の実施形態では、ヒト化抗体の1個もしくは複数の残基はバッククロスして、抗体結合または他の特性を改善し得る。
【0211】
一部の実施形態では、本開示の抗体中に存在するヒト化可変ドメインは、下記の表におい提示する可変ドメインのいずれかを含み得る。場合によって、抗体は、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有するこれらの可変ドメインの1つもしくは複数のバリアントを含む。
【0212】
【表11-1】
【0213】
【表11-2】
【0214】
【表11-3】
【0215】
【表11-4】

抗体配列最適化
可変ドメイン配列は、抗体機能、発現、安定性、および/または免疫原性に影響を与え得る配列特徴について分析し得る。場合によって、このような特徴は、NG残基対を含み得る。NG残基対はアスパラギン脱アミドの影響を受けやすくてもよく、時間と共に3:1比のグルタメートおよびピログルタメートへの変換の可能性を伴う。これらの残基対は、例えば、SGまたはQG対に変異され、これらの部位における脱アミドを防止し得る。代わりに、これらの抗体は配合され、脱アミドを低減し得る。
【0216】
一部の実施形態では、アスパルテート異性化部位は、同定および変更し得る。アスパルテート異性化部位は、DGアミノ酸残基対を含む。これらの部位におけるアスパラギン酸は、時間と共に3:1比でグルタメートおよびピログルタメートに変換することができる。DG残基対は、SGまたはQG残基対に変異され、これらの部位において異性化を防止し得る。代わりに、これらの抗体は配合され、脱アミドを低減し得る。
【0217】
一部の実施形態では、N末端グルタミン残基は、N末端グルタメート残基に変換し得る。これは、N末端熱分解を防止し得る。
一部の実施形態では、アミノ酸残基の1つもしくは複数の凝集を起こしやすいパッチは変異し得る。これらはかさ高い側鎖を有するアミノ酸、例えば、ヒスチジン、フェニルアラニン、およびトリプトファンを有するパッチを含み得る。
【0218】
一部の実施形態では、1個もしくは複数のシステイン残基は変異して、不対システインの存在を防止し得る。不対システインは、例えば、溶媒が到達可能であるとき、抗体の部分として反応性であり得る。場合によって、不対システイン残基は、セリンに変異し得る。
【0219】
一部の実施形態では、1つもしくは複数のグリコシル化部位(例えば、N-連結NXS/T部位)、酸切断部位、およびアミノ酸酸化部位は変異して、抗体の産生、安定性、結合、および/または活性が改善する。
【0220】
IgG合成
本明細書において提示する1つもしくは複数の可変ドメインおよび/またはCDRアミノ酸配列(またはフラグメントもしくはそのバリアント)を含めたIgG抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)は、さらなる試験および/または生成物開発のために合成し得る。このような抗体は、所望のアミノ酸配列をコードするcDNAの1つもしくは複数のセグメントを、IgG産生に適した発現ベクター中に挿入することによって産生し得る。発現ベクターは、哺乳動物細胞におけるIgG発現に適した哺乳動物の発現ベクターを含み得る。哺乳動物のIgGの発現は、産生された抗体が哺乳動物のタンパク質の特徴を示す修飾(例えば、グリコシル化)を含むことを確実にし、かつ/または抗体調製物が細菌発現系からのタンパク質調製物において存在し得る内毒素および/または他の汚染物質を欠いていることを確実にするために行い得る。
【0221】
免疫原性宿主
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、本明細書において、「免疫原性宿主」と称される、免疫化のための宿主としてヒトではない動物を使用することによって開発し得る。一部の実施形態では、免疫原性宿主は、哺乳動物である。一部の実施形態では、免疫原性宿主は、トランスジェニックノックアウトマウスである。グリカン相互作用抗体の標的部位および/またはエピトープ標的を有する抗原を使用して、免疫応答を刺激し、かつ導入された抗原上に存在する標的部位および/またはエピトープ標的を特異的に結合する免疫原性宿主における抗体を産生するために、免疫原性宿主に接触し得る。
【0222】
本発明のいくつかの方法によると、抗STn抗体の開発は、Cmah遺伝子が撹乱されているマウスを免疫化することを含み得る。このような変異は、シアル酸の免疫原性非ヒト形態であるNeu5Gcがこのようなマウスにおいてもはや産生されないという点で、よりヒト様の生理学をもたらし得る。また提供するのは、回収可能な抗GcSTnの量を低減させることによるGcSTnモノクローナル抗体の産生のための、Neu5Gc発現がないハイブリドーマを産生するためのCmah-/-骨髄腫細胞であるか、またはハイブリドーマは、ハイブリドーマへの抗体結合によって死滅し始める。他の遺伝子は、Cmah-/-骨髄腫細胞のバックグラウンドにおいてノックアウトすることができる。例えば、ヒトに対して高度に免疫原性であるエピトープの形成のために重大である酵素をコードするアルファ1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子(チャン,C.H.(Chung,C.H.)ら著、セツキシマブによって誘発されるアナフィラキシー、およびガラクトース-アルファ-1,3-ガラクトースに対して特異的なIgE(Cetuximab-induced anaphylaxis and IgE specific
for galactose-alpha-1,3-galactose.)、ニューイングランドジャーナルオブメディシン(N Engl J Med.)、2008年3月13日;358巻(11号):1109~17頁)は、Cmah-/-骨髄腫細胞のバックグラウンドにおいてノックアウトすることができる。
【0223】
本発明の他の方法によると、野生型マウスは、免疫化のために使用し得る。このような方法は時々、AcSTnまたは汎STnエピトープと相互作用する抗体の産生のために好ましくあり得る。場合によって、野生型マウスにおける免疫応答は、よりロバストであり得る。
【0224】
免疫化により産生された抗体は、免疫原性宿主の血清から単離し得る。免疫原性宿主からの抗体産生細胞はまた、所望の抗体を産生する細胞系を生じさせるために使用し得る。一部の実施形態では、免疫原性宿主からの抗体および/または抗体産生細胞についてのスクリーニングは、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)および/またはグリカンアレイの使用によって行い得る。
【0225】
アジュバント
本明細書に記載されている抗原による免疫原性宿主の免疫化は、1種もしくは複数のアジュバントの使用を含み得る。アジュバントは、このような免疫原性宿主においてより高い免疫応答を発揮するために使用し得る。したがって、本発明によって使用されるアジュバントは、抗体力価に影響を与えるこれらの能力に基づいて選択し得る。
【0226】
一部の実施形態では、油中水型乳剤は、アジュバントとして有用であり得る。油中水型乳剤は、可動な抗原デポーを形成し、遅い抗原放出を促進し、免疫構成要素への抗原提示を増進することによって作用し得る。フロイントアジュバントは、乾燥および不活性化されているマイコバクテリア粒子を含む完全フロイントアジュバント(CFA)として、またはこのような粒子を欠いている不完全フロイントアジュバント(IFA)として使用し得る。他の油中水型をベースとするアジュバントは、EMULSIGEN(登録商標)(MVPテクノロジーズ(MVP Technologies)、オマハ、NE)を含み得る。EMULSIGEN(登録商標)は、動物をベースとする構成要素が非含有であるミクロンサイズの油滴を含む。これは、単独で、またはこれらに限定されないが、水酸化アルミニウムおよびCARBIGEN(商標)(MVPテクノロジーズ(MVP Technologies)、オマハ、NE)を含めた他のアジュバントと組み合わせて使用し得る。
【0227】
一部の実施形態では、TITERMAX(登録商標)アジュバントを使用し得る。TITERMAX(登録商標)は、スクアレン、およびモノオレイン酸ソルビタン80(乳化剤として)および他の構成要素を含む別の油中水型乳剤である。場合によって、TITERMAX(登録商標)は、より高い免疫応答を提供し得るが、免疫原性宿主に対する減少した毒性を伴う。
【0228】
免疫賦活性オリゴヌクレオチドはまた、アジュバントとして使用し得る。このようなアジュバントは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含み得る。CpG ODNは、トール様受容体9(TLR9)によって認識され、強力な免疫賦活効果をもたらす。C型CpG ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)およびB細胞刺激からの強力なIFN-α産生、ならびにヘルパーT(T)細胞からのIFN-γ産生を誘発する。CpG ODNアジュバントは、マウスにおいて肺炎球菌多糖体(19Fおよびtype 6B)特異的IgG2aおよびIgG3を有意に増進することが示されてきた。CpG ODNはまた、タンパク質担体CRM197、特に、CRM197特異的IgG2aおよびIgG3に対する抗体応答を増強した(チュー(Chu)ら著、感染((症))免疫(Infection Immunity)、2000年、第68巻(3号):1450~6頁)。さらに、CpG-ODNと合わせた肺炎球菌莢膜多糖類のセロタイプ14(PPS14)による老化マウスの免疫化は、IgG抗PPS14応答を若い成体レベルに回復させた(セン(Sen)ら著、感染免疫(Infection Immunity)、2006年、74巻(3号):2177~86頁)。本発明によって使用されるCpG ODNは、A型、B型またはC型のODNを含み得る。一部の実施形態では、ODNは、商業的に入手可能なもののいずれか、例えば、これらのそれぞれが、例えば、インビボジェン(InvivoGen)(サンディエゴ、CA)から購入し得る、ODN-1585、ODN-1668、ODN-1826、ODN-2006、ODN-2007、ODN-2216、ODN-2336、ODN-2395および/またはODN-M362を含み得る。場合によって、ODN-2395を使用し得る。ODN-2395は、ヒトおよびマウスTLR9を特異的に刺激したC型CpG ODNである。これらのODNは、ホスホロチオエート骨格およびCpGパリンドロームモチーフを含む。
【0229】
一部の実施形態では、免疫刺激複合体(ISCOM)は、アジュバントとして使用し得る。ISCOMは、特定の化学量論下でコレステロール、リン脂質およびキラヤサポニンと一緒に混合されたときに、自発的に形成される球状のオープンケイジ様構造(典型的には、直径が40nm)である。ISCOM技術は、大きな糖タンパク質からの多様な抗原、例えば、エプスタインバーウイルスからのgp340(80%の炭水化物からなる340kDaの抗原)から、担体がコンジュゲートされた合成ペプチドおよび小さなハプテン、例えば、ビオチンまで立証されている。いくつかのISCOMは、TH1およびTH2特徴の両方を有する釣り合った免疫応答を生じさせることができる。ISCOMに対する免疫応答は、流入領域リンパ節において開始するが、脾臓に効率的に移動し、これによってこれはモノクローナル抗体をまた生じさせるのに特に適したものとなる。一部の実施形態では、ISCOMアジュバントAbISCO-100(イスコノーバ(Isconova)、ウプサラ、スウェーデン)を使用し得る。AbISCO-100は、他のサポニンに対して感受性であり得る免疫原性宿主、例えば、マウスにおける使用のために特に開発されたサポニンをベースとするアジュバントである。
【0230】
本発明の実施形態によると、所望の結果を達成するために、免疫化溶液のアジュバント構成要素は変動し得る。このような結果は、免疫原性宿主における免疫応答の全体的レベルおよび/または毒性のレベルをモジュレートすることを含み得る。
【0231】
抗体配列および構造分析および最適化
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列分析および/または構造分析に供してもよく、ここでこれらは、抗体の化学、親和性、特異性、タンパク質フォールディング、安定性、製造、発現、および/または免疫原性(すなわち、このような抗体で処置されている対象における免疫反応)に影響を与え得る特徴について分析される。このような分析は、同じまたは同様のエピトープへの抗体結合の間の比較を含み得る。
【0232】
同じエピトープへの抗体結合の抗体配列は、軽鎖および/または重鎖配列におけるバリエーションについて分析し得る。このような分析は、生殖系列配列および/またはCDR配列を含み得る。このような分析から得た情報は、保存されたアミノ酸残基;アミノ酸の保存されたセグメント;保存された側鎖の特徴を有するアミノ酸位置;保存されたCDR長;および同じエピトープへの抗体結合の間に保存された他のフィーチャを同定する(かつ任意選択で、改変するか、欠失させるか、置き換えるか、もしくは修復する)ために使用し得る。この情報は、バリアントを設計するか、または抗体の親和性、特異性、タンパク質フォールディング、安定性、製造、発現および/もしくは免疫原性を改善させる抗体最適化手順について情報を与えるために使用し得る。
【0233】
配列分析は、同じまたは同様のエピトープに結合する2つもしくはそれよりも多い抗体を整列化し、類似性を同定することを含み得る。このような分析は、抗体領域(例えば、CDR、可変ドメイン、生殖系列セグメント)の配列および/または長さを比較し得る。アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、および置換は、同定およびアセスメントし得る。配列の差異は、抗体の親和性および/または特異性に対して比較し得る。
【0234】
場合によって、配列分析は、不対システインまたは不規則なジスルフィド;グリコシル化部位(例えば、N-連結NXS/T部位);酸切断部位、アミノ酸酸化部位、マウス生殖系列配列との整合性;アスパラギン脱アミド部位;アスパルテート異性化部位;N末端ピログルタメート形成部位;およびCDRにおける凝集を起こしやすいパッチの1つもしくは複数を同定する(かつ任意選択で、改変するか、欠失させるか、置き換えるか、もしくは修復する)ために行われる。
【0235】
場合によって、本発明は、本明細書において提示する抗体の、配列分析の情報に基づくバリアントを提供する。本明細書において使用する場合、用語「配列分析の情報に基づくバリアント」は、抗体配列分析から導かれる1つもしくは複数の結論に基づいて改変されている抗体バリアントを指す。場合によって、本発明の抗体は改変して、抗体親和性、特異性、タンパク質フォールディング、安定性、製造、発現および/または免疫原性の1つもしくは複数への改変を含む抗体バリアントを産生し得る。
【0236】
いくつかの配列分析の情報に基づくバリアントは、1つもしくは複数のCDR長の改変を含む。CDR長を改変された抗体は、1つもしくは複数のCDRにおいて、当初の抗体配列に対して、1個もしくは複数の付加または欠失したアミノ酸を含み得る。場合によって、配列分析の情報に基づくバリアントは、1つもしくは複数のCDRを別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDR(例えば、同じまたは同様のエピトープへの抗体結合)で置換することを含み得る。場合によって、配列分析の情報に基づくバリアントは、別の抗体からの重鎖または軽鎖可変ドメインの置換を含み得る(例えば、同じまたは同様のエピトープへの抗体結合)。配列分析の情報に基づくバリアントは、抗体がそこから発現している1つもしくは複数の生殖系列遺伝子への改変を含み得る。このような改変は、点変異、局所変異、挿入変異または欠失変異を含み得る。場合によって、生殖系列遺伝子改変が行われて、CDRが1つの公知の生殖系列遺伝子から別のものに動く。配列分析の情報に基づくバリアントは、これらに限定されないが、scFv、モノボディ、二特異性抗体、細胞内抗体、CAR、抗体模倣物などを含めた本明細書に記載されている他のバリアントを含み得る。
【0237】
一部の実施形態では、配列および/または構造分析を使用して、抗体フラグメントディスプレイライブラリー(これらに限定されないが、scFvライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、およびイーストディスプレイライブラリーを含めた)の構築について情報を提供し得る。一例では、配列アラインメントを行って、2つもしくはそれよりも多い抗体と一般の抗原またはエピトープとを整列化し得、整列化した抗体の間に保存されているか、または整列化した抗体の間で可変であるアミノ酸残基は同定し得る。このような場合、ライブラリーメンバーの間の可変性が、配列分析において同定される可変アミノ酸に主に限定されるように、抗体フラグメントディスプレイライブラリーを構築し得る。場合によって、このようなライブラリーは、標的抗原(例えば、STn)について変化した親和性および/もしくは特異性を有するバリアント、または標的抗原の特異的エピトープ(例えば、本明細書の下記で実施例1において記載されているような群1、2、3および4抗体によって認識されるエピトープ)を同定するために使用し得る。
【0238】
一部の実施形態では、本発明の抗体は改変して、1個もしくは複数の不対システイン残基を除去するか、置き換えるか、またはその他の方法で排除し得る。場合によって、不対システイン残基は反応性であり得、場合によって、抗体親和性および/または特異性に影響を与え得る。したがって、本発明のいくつかの抗体は改変して、不対システイン残基が排除されてきた。場合によって、このようなバリアントは、改変されたエピトープ特異性および/または親和性を有し得る。場合によって、不対システイン残基の改変は、抗体フォールディングを変化させ得る。場合によって、これらのバリアントは、1個もしくは複数のシステイン残基の置換または欠失を含む。場合によって、これらのバリアントは、不対システイン残基からの望ましくない効果を防止または低減するための1個もしくは複数のさらなるアミノ酸残基(これらに限定されないが、1個もしくは複数のシステイン残基の添加を含めた)を含む。場合によって、システイン残基は、疎水性側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニンまたはトリプトファン)で置き換えられる。
【0239】
抗体試験および特性決定
本明細書に記載されている抗体は、種々の方法を使用して試験および/または特性決定し得る。このような方法は、これらに限定されないが、抗体の親和性;特異性;および活性(例えば、細胞シグナル伝達経路または他の細胞もしくは生物活性の活性化または阻害)が含まれてもよい種々の特徴を決定するために使用し得る。抗体試験は、毒性、治療効果、薬力学、薬物動態、吸収、沈着、代謝、および排泄の1つもしくは複数についてin
vivoで(例えば、動物および/またはヒト研究において)試験することをさらに含み得る。動物における試験には、これらに限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、霊長類(例えば、カニクイザル)、ヒツジ、ヤギ、ウマ、およびウシにおける試験が含まれてもよい。
【0240】
セルベースアッセイ
一部の実施形態では、本発明の抗体は、1つもしくは複数のセルベースアッセイの使用によって試験または特性決定し得る。このようなセルベースアッセイは、in vitroで培養液中の細胞で行い得る。場合によって、セルベースアッセイは、in vivoで行い得る。セルベースin vivoアッセイの例は、腫瘍細胞が宿主に注射されるか、または他の方法で導入される腫瘍モデルを含む。
【0241】
場合によって、セルベースアッセイにおいて使用される細胞は、1種もしくは複数の本発明の抗体によって認識される1種もしくは複数の標的グリカンを発現し得る。このようなグリカンは、このような細胞が天然に発現し得るか、あるいは代わりに、細胞は、特定のアッセイの目的のために望ましい1種もしくは複数のグリカンを発現するように誘発し得る。誘発された発現は、グリコシル化をレギュレートするグリコシル化されたタンパク質または酵素の発現をアップレギュレートする1つもしくは複数の処理によってであり得る。他の場合では、誘発された発現は、グリコシル化のレギュレーションに関与する1種もしくは複数のグリコシル化されたタンパク質または酵素の内因性発現のための1種もしくは複数の遺伝子または転写物のトランスフェクション、形質導入、または他の形態の導入を含み得る。
【0242】
場合によって、本明細書において使用されるセルベースアッセイは、がん細胞の使用を含み得る。多くのがん細胞系は、本発明の抗体を試験する実験のために利用可能である。このような細胞は、標的グリカンを発現し得るか、または標的グリカンを発現するように誘発し得る。さらに、がん細胞系は、本発明の抗体を試験するために使用してもよく、ここで、がん細胞系は、がん幹細胞の代表的なものである。がん幹細胞(CSC)細胞系は、培養液中で成長したがん細胞から単離または分化し得る(例えば、がん幹細胞に対して特異的なマーカーをベースとするソーティングによる)。セルベースアッセイにおいて使用される細胞系は、これらに限定されないが、乳房、結腸、卵巣、リンパ球、骨髄、および皮膚の細胞系を含み得る。特定の細胞系には、これらに限定されないが、SNU-16細胞、LS-174T細胞、MC38細胞、TOV-112D細胞、TOV-21G細胞、Jurkate E6.1細胞、K-562細胞、B16-F0細胞、B16-F10細胞、LS180細胞、COLO205細胞、TB4細胞、HT29細胞、Panc1細胞、HPAC細胞、HPAFII細胞、RKO細胞、SW480細胞、およびSNU-C2A細胞が含まれてもよい。
【0243】
一部の実施形態では、卵巣がん細胞系は、使用し得る。このような細胞系には、これらに限定されないが、SKOV3、OVCAR3、OV90およびA2870細胞系が含まれてもよい。場合によって、CSC細胞は、CD44および/またはCD133細胞マーカーを発現している細胞を単離することによってこれらの細胞系から単離し得る。
【0244】
OVCAR3細胞は、進行性卵巣腺癌を患っている患者から得た悪性の腹水を使用して最初に確立した(ハミルトン,T.C.(Hamilton,T.C.)ら著、1983年、がんリサーチ(Cancer Res.)、43巻:5379~89頁)。がん幹細胞集団は、特異的細胞表面マーカー、例えば、CD44(細胞接着および移動に関与する)、CD133およびCD117をベースとする選択によってOVCAR3細胞培養物から単離し得る(リャン,D.(Liang,D.)ら著、2012年、BMCがん(BMC Cancer)、12巻:201頁、その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれている)。OV90細胞は、ヒト腹水に同様に由来した上皮卵巣がん細胞である(米国特許第5,710,038号明細書を参照されたい)。OV-90細胞はまた、活性化されたとき、CD44を発現し得る(ムニエ,L.(Meunier,L.)ら著、2010年、トランスレーショナル腫瘍学(Transl Oncol.)、3巻(4号):230~8頁)。
【0245】
一部の実施形態では、胃がんに由来する細胞系は使用し得る。このような細胞系には、これらに限定されないが、SNU-16細胞が含まれてもよい(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、パークJ.G.(Park J.G.)ら著、1990年、がんリサーチ(Cancer Res.)、50巻:2773~80頁における記載を参照されたい)。SNU-16細胞は、STnを天然に発現するが、低レベルである。
【0246】
一部の実施形態では、本開示の方法は、結腸直腸細胞とグリカン相互作用抗体とを接触させ、細胞への抗体結合、細胞中への抗体内部移行、および/または抗体による細胞死滅を評価することによって、グリカン相互作用抗体を特性決定する方法を含む。いくつかのこのような方法によると、結腸直腸細胞は、in vitroで成長した結腸直腸細胞系に由来し得る(例えば、細胞培養物によって増殖する)。場合によって、結腸直腸細胞系は、腫瘍に由来する。他の実施形態では、結腸直腸細胞系は、異種移植片動物モデル(例えば、異種移植片マウスモデル)を使用して形成した腫瘍に由来し得る。グリカン相互作用抗体を特性決定するために使用される結腸直腸細胞は、患者(例えば、患者腫瘍)からであり得る。グリカン相互作用抗体を特性決定する方法は、1種もしくは複数の結腸直腸細胞を有するものを含めた、組織マイクロアレイの使用を含み得る。
【0247】
結腸直腸細胞によってグリカン相互作用抗体と特性決定することは、結腸直腸細胞へのグリカン相互作用抗体の結合のEC50を決定することによって、このような抗体および細胞の間の結合を評価することを含み得る。EC50は、フローサイトメトリー分析およびELISA分析の1つもしくは複数を使用することによって決定し得る。一部の実施形態では、結腸直腸細胞によってグリカン相互作用抗体を特性決定することは、グリカン相互作用抗体によるこのような細胞の死滅を評価することを含み得る。これは、結腸直腸細胞をグリカン相互作用抗体で処理し、細胞生存率アッセイを使用して、処置によって死滅した細胞の百分率を決定することによって行い得る。場合によって、グリカン相互作用抗体による結腸直腸細胞の死滅を評価することは、グリカン相互作用抗体による結腸直腸細胞の死滅についてのIC50を決定することを含む。場合によって、抗体は、細胞毒性剤(例えば、MMAEまたはMMAF)とコンジュゲートし得る。
【0248】
グリカンアレイ
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、グリカンアレイの使用によって開発し得る。本明細書において使用する場合、用語「グリカンアレイ」は、アレイ基材に連結したいくつかの異なるグリカンのいずれかと相互作用する薬剤を同定するために使用されるツールを指す。一部の実施形態では、グリカンアレイは、本明細書において「グリカンプローブ」と称される、いくつかの化学的に合成されたグリカンを含む。一部の実施形態では、グリカンアレイは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも350、少なくとも1000または少なくとも1500のグリカンプローブを含む。一部の実施形態では、グリカンアレイは、所望の一連のグリカンプローブを提示するようにカスタマイズし得る。一部の実施形態では、グリカンプローブは、リンカー分子によってアレイ基材に付着し得る。このようなリンカーは、これらに限定されないが、-O(CHCH)NHおよびO(CHNHCOCH(OCHCHNHを含めた分子を含み得る。
【0249】
一部の実施形態では、グリカンアレイは、70超の化学的に合成されたグリカンを有し、これらの大部分はNeu5AcおよびNeu5Gc含有グリカン対として提示される。グリカンプローブのいくつかの例は、Neu5Ac-α-2-6-GalNAc(AcSTn);Neu5Gc-α-2-6-GalNAc(GcSTn);Neu5,9Ac2-α-2,6-GalNAc;Neu9Ac5Gc-α-2,6-GalNAc、およびGalNAc(Tn)を含み得る。AcSTn対GcSTnへの抗体結合特異性は、アレイ、または当技術分野において公知の特異性を決定する他の方法を使用して決定することができる。さらに、O-アセチル化STnへの抗体の結合プロファイルは決定することができる。がん関連発現は、抗体によるSTn認識の増加と相関するため、STn上のO-アセチル化の喪失はがんに関連する(オガタ,S.(Ogata,S.)ら著、腫瘍関連シアル酸付加された抗原は正常なヒト結腸粘膜において恒常的に発現している(Tumor-associated sialylated antigens are constitutively expressed in normal human colonic mucosa.)、がんリサーチ(Cancer Res.)、1995年5月1日;55巻(9号):1869~74頁)。場合によって、グリカンアレイは、STn対Tnの認識を決定するために使用し得る。
【0250】
抗体フラグメントディスプレイライブラリースクリーニング技術
一部の実施形態では、本発明の抗体は、発見のハイスループット方法を使用して産生および/または最適化し得る。このような方法は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている国際出願第2014074532号パンフレットに開示されているディスプレイ技術(例えば、ディスプレイライブラリースクリーニング技術)のいずれかを含み得る。一部の実施形態では、合成抗体は、ディスプレイ技術(例えば、ファージディスプレイ技術)を使用して標的抗原をスクリーニングすることによって設計、選択または最適化し得る。ファージディスプレイライブラリーは、無数のファージ粒子を含み得、それぞれは、これらのウイルスコート上に独自の抗体フラグメントを発現している。このようなライブラリーは、1つもしくは複数の目的の抗原に対して多様なレベルの親和性を有する潜在的に数百の抗体フラグメントを選択するために使用し得る十分に多様なリソースを提供し得る(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、マッカファティ(McCafferty)ら著、1990年、ネイチャー(Nature)、348巻:552~4頁;エドワーズ,B.M.(Edwards,B.M.)ら著、2003年、JMB.、334巻:103~18頁;スコフィールド,D.(Schofield,D.)ら著、2007年、ゲノム生物学(Genome Biol.)、8巻、R254頁およびペルシャード,K.(Pershad,K.)ら著、2010年、タンパク質工学の設計および選択(Protein Engineering Design
and Selection.)、23巻:279~88頁)。しばしば、このようなライブラリー中に存在する抗体フラグメントは、柔軟なリンカーによって接合しているVおよびV抗体ドメインの融合タンパク質を含むscFv抗体フラグメントを含む。場合によって、scFvは、相補性決定領域(CDR)の可変ループをコードするユニーク配列を例外として、同じ配列を含有し得る。場合によって、scFvは、ウイルスコートタンパク質(例えば、ウイルスpIIIコートタンパク質のN末端)に連結した融合タンパク質として発現する。V鎖は、ウイルスコート中への複雑な組込みの前に、ペリプラズム中のV鎖とのアセンブリーのために別々に発現し得る。沈殿したライブラリーメンバーは結合したファージから配列決定して、所望のscFvをコードするcDNAを得てもよい。このような配列は、組換え抗体産生のための抗体配列中に直接組み込まれるか、またはin vitroでの親和性成熟によるさらなる最適化のために変異および利用し得る。
【0251】
細胞毒性抗体の開発
一部の実施形態では、本発明の抗体は、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)および/または抗体依存性細胞食作用(ADCP)を誘発することができ得る。ADCCは、免疫機序であり、それによって免疫細胞の攻撃の結果として細胞は溶解される。このような免疫細胞は、CD56+細胞、CD3-ナチュラルキラー(NK)細胞、単球および好中球を含み得る(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ストロール,W.R.(Strohl,W.R.)、治療用抗体工学(Therapeutic Antibody Engineering.)、ウッドヘッドパブリッシング(Woodhead Publishing)、フィラデルフィア、PA.、2012年、第8章、186頁)。
【0252】
場合によって、本発明の抗体は、ADCCまたはADCPが抗体結合によって望ましいかどうかによって、所与のアイソタイプを含むように工学処理し得る。このような抗体は、例えば、オールダーソン,K.L.(Alderson,K.L.)ら著、バイオ医薬品およびバイオテクノロジージャーナル(J Biomed Biotechnol.)、2011年、2011年:379123頁)によって開示された方法のいずれかによって工学処理し得る。マウス抗体の場合、抗体の異なるアイソタイプは、ADCCを促進することにおいてより有効である。IgG2aは、IgG2bより、例えば、ADCCを誘発することにおいてより有効である。マウスIgG2b抗体を含めた本発明のいくつかの抗体は、IgG2a抗体となるように再工学処理し得る。このような再工学処理された抗体は、細胞関連抗原を結合することによって、ADCCを誘発することにおいてより有効であり得る。一部の実施形態では、1つもしくは複数の翻訳後修飾を修飾または導入することによって抗体は再工学処理され、ADCCおよび/またはCDC生物活性を改善する。
【0253】
一部の実施形態では、本発明の方法によって開発された抗体の可変領域をコードする遺伝子は、ヒトFc領域をコードする哺乳動物の発現ベクター中にクローニングし得る。このようなFc領域は、ヒトIgG1κからのFc領域であり得る。IgG1κFc領域は、Fc-受容体結合および抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)を増進することが公知であるアミノ酸変異を含み得る。
【0254】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の治療用途のために開発し得る。ADCは、1つもしくは複数のカーゴ(例えば、治療剤)が付着している[例えば、直接、またはリンカー(例えば、開裂可能なリンカーもしくは開裂可能でないリンカー)を介して]抗体である。ADCは、1つもしくは複数の標的細胞または組織への治療剤(例えば、薬物または細胞毒性剤)の送達のために有用である(パノウスキ,S.(Panowski,S.)ら著、2014年、mAbs、6巻:1号、34~45頁)。場合によって、ADCは、標的とされた細胞上の表面抗原に結合するように設計し得る。結合によって、全抗体-抗原複合体は内部移行され、細胞のリソソームに向けられ得る。次いで、ADCは分解され、結合したカーゴを放出し得る。カーゴが細胞毒性剤である場合、標的細胞は死滅するか、またはその他の方法で無能にされる。細胞毒性剤には、これらに限定されないが、細胞骨格阻害剤[例えば、チューブリン重合阻害剤、例えば、メイタンシンまたはアウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE[MMAE]およびモノメチルアウリスタチンF[MMAF])]ならびにDNA傷害剤(例えば、DNA重合阻害剤、例えば、カリケアマイシンおよびデュオカルマイシン)が含まれてもよい。
【0255】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、ADCとして開発されたとき、細胞死を促進するこれらの能力について試験し得る。細胞生存率アッセイは、二次抗体-薬物コンジュゲートの存在下および非存在下で行い得る。次いで、強力な細胞成長阻害を有する抗体は、直接の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を設計するために使用し得る。セルベース細胞毒性アッセイにおけるこのような二次抗体-薬物コンジュゲートの使用は、多くのADC候補の迅速な事前スクリーニングを可能とし得る。このようなアッセイに基づいて、コンジュゲートしていない抗体候補は、1種もしくは複数の細胞毒性剤にコンジュゲートされた二次抗体の存在下で細胞に直接加える(本明細書において、2°ADCと称される)。高密度の標的とされる抗原を発現している細胞中への抗体/2°ADC複合体の内部移行は、細胞内で用量依存的な薬物放出を達成し、細胞毒性効果が細胞(例えば、腫瘍細胞)を死滅させることをもたらすことができ、一方、低密度の標的とされる抗原を発現している細胞は影響を受けない(例えば、正常細胞)。
【0256】
本発明のADCは、がん細胞を標的とするように設計し得る。このようなADCは、1種もしくは複数の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)に向けられる抗体を含み得る。場合によって、本発明のADCは、抗STn抗体である。
【0257】
キメラ抗原受容体の開発
一部の実施形態では、本発明の抗体配列は、キメラ抗原受容体(CAR)を開発するために使用し得る。CARは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の認識および死滅を促進する免疫細胞上に発現している膜貫通受容体である。CARは典型的には、3つの基本的部分を含む。これらは、外部ドメイン(認識ドメインとしてもまた公知である)、膜貫通ドメインおよび細胞内(シグナル伝達)ドメインを含む。外部ドメインは標的細胞上の細胞性抗原への結合を促進し、一方、細胞内ドメインは典型的には、結合した標的細胞の死滅を促進する細胞シグナル伝達機能を含む。さらに、これらは、本明細書に記載されている1種もしくは複数の抗体可変ドメインまたはそのフラグメントを有する細胞外ドメインを有し得る。本発明のCARはまた、膜貫通ドメインおよび細胞質側末端を含む。CARは、このようなCARが免疫エフェクター細胞上に発現しているとき、免疫エフェクター細胞はCARの抗体部分によって認識される任意の細胞を結合および排除するように、抗体、抗体可変ドメインおよび/または抗体CDRの1つもしくは複数のセグメントを含むように設計し得る。
【0258】
CARの特徴は、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、非MHCに制限された様式で選択した標的に対するT細胞の特異性および反応性を再方向付けするそれらの能力を含む。非MHCに制限された抗原認識は、CARを発現しているT細胞に、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を与え、このように、腫瘍エスケープの主要な機序を迂回する。さらに、T細胞において発現しているとき、CARは有利に、内因性T細胞受容体(TCR)アルファ鎖およびベータ鎖と二量体化しない。
【0259】
腫瘍を標的とするように工学処理されたCARは、1つもしくは複数の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)に対する特異性を有し得る。一部の実施形態では、これらのCARの外部ドメインは、1種もしくは複数の抗体可変ドメインまたはそのフラグメントを含み得る。一部の実施形態では、CARはT細胞において発現しており、「CAR工学処理されたT細胞」または「CAR-T」と称し得る。CAR-Tは、1種もしくは複数の抗体可変ドメインを有するCAR外部ドメインと共に工学処理し得る。
【0260】
キメラ抗原受容体の構造的フィーチャ
遺伝子移入技術によって、T細胞は、それらの表面上で抗体を安定して発現するように工学処理され、所望の抗原特異性を与えることができる。キメラ抗原受容体(CAR)は、単一のキメラ融合タンパク質へと、特異的抗体の抗原認識ドメインと、T細胞活性化特性を有するCD3-ゼータ鎖またはFcγRIタンパク質の細胞内ドメインとを合わせる。CAR技術は、T細胞による標的細胞のMHCに制限されない認識を実現する。T細胞のMHC制限を取り除くことは、それぞれ、MHC I型またはII型エピトープに通常制限されている、任意の患者における、ならびにまた、CD8およびCD4T細胞の両方におけるこれらの分子の使用を促進する。Ab結合領域の使用によって、T細胞が、タンパク質によってだけではなく、炭水化物および脂質によって形成されるエピトープに応答することを可能とする。このキメラ受容体アプローチは、がんの免疫療法に特に向いており、それによって腫瘍が免疫認識を回避する機序の多く、例えば、MHCダウンレギュレーション、共刺激分子の発現の欠乏、CTL抵抗性、およびT細胞抑制の誘発を迂回することができ、CD8CTLおよびCD4T細胞の両方の使用は最適な抗腫瘍の有効性のために最良に合わせられる。このアプローチは、ウイルス、例えば、HIVに加えて、広範囲の腫瘍抗原に適用可能であることが示されてきた(フィニィ(Finney)ら著、免疫学ジャーナル(J.Immunology)、2004年、172巻:104~113頁)。
【0261】
内因性T細胞受容体のそれと同様の様式で実際に、キメラ抗原受容体はT細胞の活性化をトリガーすることができるが、CAR技術の臨床適用は、キメラ抗原受容体T細胞の不適切なin vivoでの増殖によって妨害されてきた。例えば、第一世代CARは、それらのシグナル伝達ドメインとして、CD3ζまたはFc受容体γ鎖の細胞質領域を含んだ。これらの第一世代CARは、卵巣がん、腎臓がん、リンパ腫、および神経芽細胞腫を有する患者における第1相臨床研究において試験し、中程度の応答を誘発し、T細胞の細胞毒性を効果的に再方向付けするが、繰り返される抗原曝露によってT細胞増殖および生存を可能にすることができないことが見出された。第二世代CARについてのプロトタイプは、CD28およびCD3ζの両方を包含する受容体を伴い、第二世代CARは、B細胞悪性腫瘍および他のがんの処置について試験されてきた(サデレイン(Sadelain)ら著、(2009年)、カレントオピニオン(Current Opinion)、免疫学(Immunology)、21巻(2号):215~223頁)。このように、CARは、異なる機能特性を有する受容体の多様なアレイに急速に拡張してきた。
【0262】
より最近では、CARが媒介するT細胞応答は、共刺激ドメインの添加によって増進することができることが発見された。前臨床モデルにおいて、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメインを含むことは、CD3-ゼータ鎖単独を含むことと比較して、抗腫瘍活性およびキメラ抗原受容体のin vivoでの持続を有意に増加させることが見出された(ポーター(Porter)ら著、ニューイングランドジャーナルオブメディシン(N.Engl.J.Med.)、2011年、365巻:725~733頁)。
【0263】
このように、本開示の一部の実施形態では、本発明の抗体配列は、キメラ抗原受容体(CAR)を開発するために使用し得る。一部の実施形態では、CARは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の認識および死滅を促進する免疫細胞上に発現している膜貫通受容体である。
【0264】
多くのがんにおいて、標的化のための腫瘍特異的抗原が定義されてきたが、B細胞新生物において、CD19は、魅力的な標的である。CD19の発現は、正常および悪性のB細胞およびB細胞前駆体に制限される。抗CD19キメラ抗原受容体(CART19)を発現している自己T細胞による処置のパイロット臨床治験は、進行性p53欠乏性慢性リンパ性白血病(CLL)を有する患者において行った。骨髄におけるCD19特異的免疫応答が生じることは、キメラ抗原受容体T細胞のピーク浸潤と同時に起こるサイトカインの一時的放出および白血病細胞の消失によって示された。(ポーター(Porter)ら著、ニューイングランドジャーナルオブメディシン(N.Engl.J.Med.)、2011年、365巻:725~733頁)。
【0265】
CARのさらなる構造的フィーチャは、シティオブホープ(City of Hope)に譲渡され、共有発明者マイケルジェンセン(Michael Jensen)を有するいくつかの国際公開に開示されているもののいずれかを含み得る。例えば、国際公開第00/23573号パンフレットは、CD20に対して特異的な受容体を含む細胞外ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および膜貫通ドメインを有する、細胞表面タンパク質を発現している遺伝子工学処理されたCD20特異的再方向付けされたT細胞について記載している。CD20悪性腫瘍の細胞免疫療法のための、任意の有害なB細胞機能を抑止するためのこのような細胞の使用。一実施形態では、細胞表面タンパク質は、単鎖FvFc:ζ受容体であり、ここで、Fvは、ペプチドによって連結されたCD20への単鎖モノクローナル抗体のVHおよびVL鎖を示し、Fcは、ヒトIgG1のヒンジ-CH2-CH3領域を表し、ζは、ヒトCD3のゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを表す。受容体をコードするネイキッドDNAを使用した電気穿孔によってキメラT細胞受容体を発現している再方向付けされたT細胞を作製する方法。同様に、国際公開第02/077029号パンフレットは、CD19に対して特異的な受容体を含む細胞外ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および膜貫通ドメインを有する、細胞表面タンパク質を発現している遺伝子工学処理されたCD19特異的再方向付けされた免疫細胞について記載している。CD19悪性腫瘍の細胞免疫療法のため、および任意の有害なB細胞機能を抑止するためのこのような細胞の使用。一実施形態では、免疫細胞はT細胞であり、細胞表面タンパク質は、単鎖svFvFc:ζ受容体であり、ここで、scFcは、CD19への単鎖モノクローナル抗体のVHおよびVL鎖を示し、Fcは、IgG1の定常領域の少なくとも部分を表し、ゼータは、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖(ヒトCD3のゼータ鎖)の細胞内シグナル伝達ドメインを表す。細胞外ドメインscFvFcおよび細胞内ドメインゼータは、膜貫通ドメイン、例えば、CD4の膜貫通ドメインによって連結している。受容体をコードするネイキッドDNAを使用したエレクトロポレーションによってキメラT細胞受容体を発現している再方向付けされたT細胞を作製する方法。これらのキメラ抗原受容体は、T細胞において発現しているとき、モノクローナル抗体の特異性に基づいた抗原認識を再方向付けする能力を有する。scFvFcの設計:腫瘍細胞表面エピトープに対して標的特異性を有する受容体は、既存の抗腫瘍免疫に依存しないため、養子療法のための抗腫瘍免疫エフェクター細胞を生じさせるための概念的に魅力的な戦略である。これらの受容体は、MHC非依存的様式で抗原を結合するという点で「ユニバーサル」であり、このように、1つの受容体構築物は抗原陽性腫瘍を有する患者の集団を処置するために使用することができる。シティオブホープ(City of Hope)の国際公開第02/088334号パンフレット、国際公開第2007/059298号パンフレットおよび国際公開第2010/065818号パンフレットは、細胞外ドメインを細胞表面、膜貫通領域および細胞内シグナル伝達ドメインに繋ぎ止めることができる支持領域に連結した可溶性受容体リガンドを含む細胞外ドメインで構成されている「ゼータカイン」について記載している。ゼータカインは、Tリンパ球の表面上で発現しているとき、T細胞活性を、それに対して可溶性受容体リガンドが特異的である受容体を発現しているそれらの特異的細胞に向けられる。
【0266】
CARのさらなるフィーチャは、テキサス大学に譲渡され、共有発明者ローレンスクーパー(Lawrence Cooper)を有する2つの国際公開において開示されているもののいずれかを含み得る。国際公開第2009/091826号パンフレットは、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含むヒトCD19特異的キメラT細胞受容体(またはキメラ抗原受容体、CAR)ポリペプチド(hCD19CARと命名)を含む組成物について記載しており、細胞外ドメインは、ヒトCD19結合領域を含む。別の態様において、CD19結合領域は、F(ab’)2、Fab’、Fab、FvまたはscFvである。細胞内ドメインは、ヒトCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを含み得、ヒトCD28細胞内セグメントをさらに含み得る。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。国際公開第2013/074916号パンフレットは、遺伝子改変されてT細胞受容体および/またはHLAの発現が排除されるCART細胞を用いる、免疫療法についての方法および組成物について記載している。特定の実施形態では、T細胞受容体陰性および/またはHLA陰性T細胞は、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して生じさせる。健康な同種異系ドナーからのCART細胞は、医学的状態、例えば、がん、自己免疫、および感染症の既製の処置のためのユニバーサル試薬として作用し、移植片対宿主病(GVHD)をもたらすことなく任意の患者に投与することができる。
【0267】
米国保健社会福祉省に譲渡された国際公開第2011/041093号パンフレットは、KDR-1121またはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む抗血管内皮成長因子受容体-2キメラ抗原受容体、ならびにがんの処置におけるこれらの使用について記載している。
【0268】
そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、国際公開第2012/079000号パンフレットおよび国際公開第2013/040557号パンフレットは、ペンシルバニア大学に譲渡され、共有発明者カールH.ジュン(Carl H.June)を共有している。これらの公開資料は、それぞれ、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達領域、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCAR、ならびにRNAキメラ抗原受容体(CAR)をトランスフェクトしたT細胞を生じさせる方法について記載している。
【0269】
またペンシルバニア大学に譲渡され、共有発明者カールH.ジュン(Carl H.June)を共有する国際公開第2013/126712号パンフレットは、リガンド非依存性であり、かつがんの処置のために有用である外因性サイトカインまたは支持細胞の添加と無関係である、培養液中で長期に亘る指数関数的増殖を示すT細胞の持続性の集団を生じさせるための組成物および方法について記載している。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗cMet結合ドメインである。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗メソテリン結合ドメインである。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗CD19結合ドメインである。ヒンジドメインは、IgG4であり、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。一部の実施形態では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28シグナル伝達領域である。また提供するのは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列と、抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達領域、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCARとを含むベクターである。
【0270】
ペンシルバニア大学に譲渡された国際公開第2014/039513号パンフレットは、細胞の細胞溶解活性を増進するための、細胞において1つもしくは複数のジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)アイソフォームを阻害するための組成物および方法について記載している。細胞は、養子T細胞移入において使用してもよく、ここで細胞は改変されて、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。養子T細胞移入において使用されるT細胞におけるDGKの阻害は、T細胞の細胞溶解活性を増加させ、このように、がん、感染症、および免疫障害を含めた種々の状態の処置において使用し得る。
【0271】
ペンシルバニア大学に譲渡された国際公開第2014/055771号パンフレットは、卵巣がんを処置するための組成物および方法について記載している。具体的には、本発明は、卵巣がんを処置するためにアルファ-葉酸受容体(FR-アルファ)結合ドメインおよびCD27同時刺激ドメインを有する遺伝子改変されたT細胞を投与することに関する。一実施形態では、FR-アルファ結合ドメインは、完全ヒトであり、それによって宿主免疫応答を防止すると言われる。
【0272】
一部の実施形態では、本発明のCARは工学処理して、腫瘍を標的とし得る。このようなCARは、1種もしくは複数のTACAに対する特異性を有し得る。場合によって、これらのCARの外部ドメインは、本明細書において提示する1種もしくは複数の抗体可変ドメイン、またはそのフラグメントを含み得る。一部の実施形態では、本発明のCARは、本明細書において、「CAR-工学処理されたT細胞」または「CAR-T」と称されるT細胞において発現している。CAR-Tは、本明細書において提示する1種もしくは複数の抗体可変ドメインを有するCAR外部ドメインと共に工学処理し得る。
【0273】
多重特異的抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体は、複数のエピトープを結合し得る。本明細書において使用する場合、用語「マルチボディ」または「多重特異的抗体」は、2つもしくはそれよりも多い可変領域が異なるエピトープに結合する抗体を指す。エピトープは、同じまたは異なる標的上にあり得る。ある特定の実施形態では、多重特異的抗体は、同じまたは異なる抗原上の2つの異なるエピトープを認識する「二重特異的抗体」である。
【0274】
二重特異的抗体
二重特異的抗体は、2つの異なる抗原を結合することができる。このような抗体は典型的には、少なくとも2つの異なる抗体からの抗原結合性の領域を含む。例えば、二重特異的モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、2つの異なるモノクローナル抗体のフラグメントから構成され、このように、BsAbが2つの異なるタイプの抗原に結合することを可能とする人工的なタンパク質である。この技術についての1つの一般の用途は、がん免疫療法においてであり、BsMAbは、細胞毒性細胞(受容体、例えば、CD3を使用して)および破壊される標的、例えば、腫瘍細胞に同時に結合するように工学処理される。
【0275】
二重特異的抗体は、このそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、リエスマラー,G.(Riethmuller,G.)、2012年、がん免疫(Cancer Immunity.)、12巻:12~18頁;マーヴィン,J.S.(Marvin,J.S.)ら著、2005年、アクタファルマコロジカシニカ(Acta Pharmacologica Sinica.)、26巻(6号):649~58頁;およびシェーファー,W.(Schaefer,W.)ら著、2011年、PNAS.、108巻(27号):11187~92頁に記載されているもののいずれかを含み得る。
【0276】
「三機能性二重特異的」抗体と称される新世代のBsMAbが開発されてきた。これらは2個の重鎖および2個の軽鎖からなり、それぞれの1個は2つの異なる抗体からのものであり、2つのFab領域(アーム)は2つの抗原に対して向けられており、Fc領域(フット)は2個の重鎖を含み、第3の結合部位を形成する。
【0277】
二重特異的抗体の可変ドメインのトップを形成する2つのパラトープのうち、1つは標的抗原に対して向けられており、他方はTリンパ球抗原、例えば、CD3に対して向けられることができる。三機能性抗体の場合、Fc領域は、Fc受容体を発現している細胞、例えば、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞または樹状細胞にさらに結合し得る。要するに、標的とされる細胞は、免疫系の1個もしくは2個の細胞に接続しており、これらはそれに続いて標的とされる細胞を破壊する。
【0278】
他のタイプの二重特異的抗体は、特定の問題、例えば、短い半減期、免疫原性、およびサイトカイン遊離によってもたらされる副作用を克服するために設計されてきた。これらは、Fab領域のみからなる化学的に連結されたFab、ならびに様々なタイプの二価および三価の単鎖可変フラグメント(scFv)、2つの抗体の可変ドメインを模倣する融合タンパク質を含む。これらのより新しいフォーマットのさらに開発されたものは、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)およびmAb2、Fc定常領域の代わりにFcab抗原結合性フラグメントを含有するように工学処理された抗体である。
【0279】
二重特異的単鎖抗体Fvフラグメント(Bs-scFv)は、がん細胞を死滅させるために成功裏に使用した。いくつかのヒトがんは、p53における機能的欠点によってもたらされ、これは野生型p53による遺伝子療法によって回復する。ウェイスバート(Weisbart)らは、生きている結腸がん細胞を透過し、細胞内p53を結合し、その野生型機能を標的とし、回復する二重特異的単鎖抗体の構築および発現について記載している(ウェイスバート(Weisbart)ら著、腫瘍学国際ジャーナル(Int.J.Oncol.)、2004年10月;25巻(4号):1113~8頁;およびウェイスバート(Weisbart)ら著、腫瘍学国際ジャーナル(Int.J.Oncol.)、2004年12月;25巻(6号):1867~73頁)。これらの研究において、二重特異的、単鎖抗体Fvフラグメント(Bs-scFv)は、(i)生細胞を透過し、細胞核において局在化している、mAb3E10の単鎖Fvフラグメント、および(ii)p53のC末端を結合する非透過性抗体、mAb PAb421の単鎖Fvフラグメントから構築された。PAb421結合は、SW480ヒト結腸がん細胞のそれらを含めていくつかのp53変異体の野生型機能を回復する。Bs-scFvはSW480細胞を透過し、細胞毒性であったが、変異体p53への活性を回復する能力を示唆する。COS-7細胞(野生型p53を有するサル腎細胞)は、p53へのPAb421の結合を阻害するSV40ラージT抗原の存在によって、PAb421に対して非応答性であるため、対照としての役割を果たした。Bs-scFvはCOS-7細胞を透過したが、細胞毒性ではなく、それによってp53の結合とは無関係なBs-scFvの非特異的毒性を除去した。Fvフラグメント単独は、細胞毒性でなかったが、死滅はp53の形質導入によるものであったことを示す。PAb421VHのCDR1における単一の変異は、p53へのBs-scFvの結合を除去し、細胞の透過を変化させることなくSW480細胞についての細胞毒性を抑止し、細胞毒性についてのp53へのPAb421結合の必要性をさらに指示した(ウェイスバート(Weisbart)ら著、腫瘍学国際ジャーナル(Int.J.Oncol.)、2004年10月;25巻(4号):1113~8頁;およびウェイスバート(Weisbart)ら著、腫瘍学国際ジャーナル(Int.J.Oncol.)、2004年12月;25巻(6号):1867~73頁)。
【0280】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、二特異性抗体であり得る。二特異性抗体は、機能的二重特異的単鎖抗体(bscAb)である。これらの二価抗原結合性分子は、scFvの非共有結合的二量体から構成され、組換え方法を使用して哺乳動物細胞において産生することができる。(例えば、マック(Mack)ら著、科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、92巻:7021~7025頁、1995年を参照されたい)。少数の二特異性抗体が臨床開発に入っている。抗CEAキメラ抗体cT84.66のヨウ素-123-標識二特異性抗体バージョンは、シティオブホープのベックマン研究所(Beckman Research Institute of the City of Hope)(クリニカルトライアルズドットガブ(Clinicaltrials.gov)NCT00647153)によって援助された研究において、結腸直腸がんの前外科的イムノシンチグラフィー検出について評価されてきた(ネルソン,A.L.(Nelson,A.L.)、MAbs.2010年1月~2月;2巻(1号):77~83頁)。
【0281】
分子遺伝学を使用して、2つのscFvは、単一のポリペプチド中にタンデムで工学処理され、リンカードメインによって分離され、「タンデムscFv」(tascFv)と称することができる。TascFvは難溶性であることが見出されてきており、細菌において産生されたときリフォールディングを必要とするか、またはこれらは哺乳動物細胞培養系において製造してもよく、これはリフォールディングの必要性を回避するが、乏しい収率をもたらし得る。2つの異なるscFvについての遺伝子を有するtascFvの構築は、「二重特異的単鎖可変フラグメント」(bis-scFv)を生じさせる。2つのみのtascFvが、企業によって臨床的に開発されてきており、両方は、腫瘍の適応症のためにマイクロメット(マイクロメット)によって活発に前期開発中にある二重特異的薬剤であり、「二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)」と記載されている。ブリナツモマブは、第2相におけるB細胞非ホジキンリンパ腫へのT細胞応答を増強する抗CD19/抗CD3二重特異的tascFvである。MT110は、第1相における固形腫瘍へのT細胞応答を増強する抗EP-CAM/抗CD3二重特異的tascFvである。二重特異的四価「TandAb」はまた、アファームド(Affimed)(ネルソン,A.L.(Nelson,A.L.)、MAbs.2010年1月~2月;2巻(1号):77~83頁)によってリサーチされている。
【0282】
また含まれるのは、IgGのマキシボディである(Fc(CH2-CH3ドメイン)のアミノ末端に融合した二価scFV)。
二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体は、選択した標的細胞の溶解のために細胞毒性T細胞を一過的に会合するように設計されている。これらは典型的には、2個のscFv(1個の結合はT細胞上のCD3に、および1個の結合は破壊の標的とされている細胞の表面上の標的抗原に)を含む。一部の実施形態では、2個のscFvは、リンカーによって接合されている。他の実施形態では、2個のscFvは、抗体上の異なる領域である。BiTE抗体の臨床活性は、腫瘍組織に由来するか、または特定のT細胞受容体でトランスフェクトされたex vivoで増殖した自己T細胞が、固形腫瘍の処置における治療可能性を示してきたという知見を実証する。これらの個別化されたアプローチは、T細胞単独が後期のがんにおいてでさえかなりの治療活性を有することができることを証明する一方で、これらは広範なベースで行うには煩雑である。これは、腫瘍特異的T細胞クローンの産生を促進する細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体によって、ならびにまた、がん細胞溶解のために患者のT細胞の大きな割合を直接会合する二重および三重特異的抗体によって異なる。T細胞会合抗体によるヒトがん療法についての包括的T細胞会合の可能性は、活発な調査中である(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ボイエルレPA(Baeuerle PA)ら著、カレントオピニオン(Current Opinion)、分子療法(Molecular Therapeutics)、2009年、11巻(1号):22~30頁およびボイエルレPA(Baeuerle PA)およびラインハルトC(Reinhardt C)、がんリサーチ(Cancer Res)、2009年、69巻(12号):4941~4頁)。
【0283】
第三世代分子は、「ミニチュア化された」抗体を含む。mAbミニチュア化さの最良の例の中には、トルビオンファーマシューティカルズ(Trubion Pharmaceuticals)からの小モジュラー免疫医薬(SMIP)がある。一価または二価でよいこれらの分子は、全てリンカードメインによって接続している1個のV、1個のV抗原結合性ドメイン、および1個または2個の定常「エフェクター」ドメインを含有する組換え単鎖分子である。おそらく、このような分子は、定常ドメインによって与えられる免疫エフェクター機能を保持する一方で、フラグメントによるものと主張される増加した組織または腫瘍浸透の利点を提供し得る。少なくとも3種の「ミニチュア化された」SMIPが、臨床開発に入っている。ワイス(Wyeth)と共同して開発されたTRU-015、抗CD20SMIPは、最も進行したプロジェクトであり、関節リウマチ(RA)のために第2相まで進行している。全身性エリテマトーデス(SLE)およびB細胞リンパ腫における以前の試みは、最終的に中断された。トルビオン(Trubion)およびファセットバイオテクノロジー(Facet Biotechnology)は、CLLおよび他のリンパ性新組織形成の処置のための、TRU-016、抗CD37SMIPのTRU-016、抗CD37SMIPの開発において協力しており、第2相に達したプロジェクトである。ワイス(Wyeth)は、RA、SLEおよび恐らく多発性硬化症を含めた自己免疫疾患の処置のための抗CD20SMIP SBI-087を許可してきたが、これらのプロジェクトは、臨床試験の最も早い段階に留まっている。(ネルソン,A.L.(Nelson,A.L.)、MAbs.2010年1月~2月;2巻(1号):77~83頁)。
【0284】
ジェンマブ(Genmab)は、ヒンジ領域がIgG4分子から除去されている、これらの「ユニボディ」技術の適用についてリサーチしている。一方、IgG4分子は不安定であり、軽鎖-重鎖ヘテロ二量体を交換することができ、ヒンジ領域の欠失は、重鎖-重鎖対形成を全体的に防止し、高度に特異的な一価軽鎖/重鎖ヘテロ二量体を残し、一方、Fc領域を保持して、in vivoでの安定性および延長された半減期を確実にする。この立体配置は、IgG4はFcRと不十分に相互作用し、一価ユニボディは細胞内シグナル伝達複合体形成を促進できないため、免疫活性化または癌化成長の危険性を最小化し得る。しかし、これらの論点は、臨床上の証拠よりはむしろ実験室の証拠によって大いに支持される。バイオテクノール(Biotecnol)はまた、前臨床リサーチにおける「コンパクト化された」100kDaの抗HER2抗体である「ミニチュア化された」mAb、CAB051を開発している(ネルソン,A.L.(Nelson,A.L.)、MAbs.2010年1月~2月;2巻(1号):77~83頁)。
【0285】
単一の抗原結合性ドメインから構成される組換え治療剤がまた開発されてきたが、これらは現在臨床パイプラインの4%のみを占める。これらの分子は極めて小さく、分子量はフルサイズのmAbについて観察されるものの概ね10分の1である。アラナ(Arana)およびドマンティス(Domantis)は、ヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖抗原結合性ドメインから構成される分子を工学処理しているが、アラナ(Arana)のみが、臨床試験において候補である、乾癬および関節リウマチの処置のための第2相研究における抗TNFα分子であるART-621を有する。アブリンクス(Ablynx)は、軽鎖を欠いている、ラクダおよびラマにおいて見出される重鎖抗体の抗原結合性可変重鎖領域(VHH)に由来する「ナノボディ」を産生する。2つのアブリンクス(Ablynx)抗フォンウィルブランド因子ナノボディは、急性冠症候群についての経皮的冠動脈インターベンションを受けている患者における血栓症を予防するための静脈内治療として第2相開発にあるALX-0081、および急性冠症候群および血栓性血小板減少性紫斑病を有する両方の患者を対象とした皮下投与のための第1相分子であるALX-0681を含めて臨床開発に進んでいる(ネルソン,A.L.(Nelson,A.L.)、MAbs.2010年1月~2月;2巻(1号):77~83頁)。
【0286】
多重特異的抗体の開発
一部の実施形態では、本発明の抗体配列を使用して、多重特異的抗体(例えば、二重特異的、三重特異性、またはそれ超の多重特異性)を開発し得る。多重特異的抗体は、本発明の標的抗原の異なるエピトープに対して特異的でよいか、または本発明の標的抗原、および異種エピトープ、例えば、異種グリカン、ペプチドまたは固体支持体材料の両方に対して特異的であり得る。(例えば、国際公開第93/17715号パンフレット;国際公開第92/08802号パンフレット;国際公開第91/00360号パンフレット;国際公開第92/05793号パンフレット;タット,A.(Tutt,A.)ら、TCR/CD3複合体およびCD2を介して協同的シグナル伝達を使用し、休止している細胞毒性T細胞を活性化および再方向付けする三重特異的F(ab’)3誘導体(Trispecific F(ab’)3 derivatives that use cooperative signaling via the TCR/CD3 complex
and CD2 to activate and redirect resting cytotoxic T cells)、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、1991年7月1日;147巻(1号):60~9頁;米国特許第4,474,893号明細書;同第4,714,681号明細書;同第4,925,648号明細書;同第5,573,920号明細書;同第5,601,819号明細書;およびコステルニ,S.A.(Kostelny,S.A.)ら著、ロイシンジッパーの使用による二重特異的抗体の形成(Formation of a bispecific antibody
by the use of leucine zippers)、免疫学ジャーナル(J.Immunol.)、1992年3月1日;148巻(5号):1547~53頁;米国特許第5,932,448号明細書を参照されたい)。
【0287】
スローンケッタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)への国際公開第2014144573号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、二量体化の能力を伴わない多重特異的結合剤を超えた改善された特性を有する二量体の多重特異的結合剤(例えば、抗体構成要素を含む融合タンパク質)を作製するための多量体化技術である。
【0288】
メルクパテントGMBH(Merck Patent GMBH)への国際公開第2014144357号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、四価の二重特異的抗体(TetBiAb)、ならびにTetBiAbを作製する方法、および診断法、およびがんまたは免疫障害の処置のためにTetBiAbを使用する方法である。TetBiAbは、抗体のC末端に付着した第2の抗原特異性を有するFabフラグメントの第2の対をフィーチャし、このように、2つの抗原特異性のそれぞれについて二価である分子を提供する。四価抗体は、遺伝子工学方法によって、抗体重鎖を、その同族の同時発現したFab重鎖と関連しているFab軽鎖に共有結合的に連結することによって産生される。
【0289】
IBCファーマセウティカルズ社(IBC Pharmaceuticals,Inc.)への国際公開第2014028560号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、疾患の処置のために、T細胞抗原について少なくとも1つの結合部位、および異常細胞または病原体上の抗原について少なくとも1つの結合部位を有する、T細胞を再方向付けする二重特異的抗体(bsAb)である。好ましくは、このbsAbは、抗CD3×抗CD19二重特異的抗体であるが、他のT細胞抗原および/または疾患関連抗原に対する抗体を使用し得る。複合体は、エフェクターT細胞を標的とし、疾患、例えば、がん、自己免疫疾患または感染症と関連する細胞のT細胞が媒介する細胞毒性を誘発することができる。細胞毒性免疫応答は、インターフェロン-α、インターフェロン-bgr;インターフェロン-λ1、インターフェロン-λ2またはインターフェロン-λ3を含むインターフェロンをベースとする薬剤の同時の投与によって増進される。
【0290】
シュニムネGMBH(Synimmune GMBH)への国際公開第2013092001号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、二重特異的抗体分子、およびこれを産生する方法、その使用、および二重特異的抗体分子をコードする核酸分子である。特に、免疫細胞の標的細胞に制限された活性化を媒介することができる抗体分子を提供する。
【0291】
国際公開第2012007167号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、腫瘍細胞の表面上の少なくとも糖エピトープ、およびerbBクラスの受容体に特異的に結合し、それによって糖エピトープおよび受容体を架橋する、多重特異的モジュラー抗体であり、この抗体は、NK細胞と無関係に細胞溶解をもたらすアポトーシス活性を有する。
【0292】
国際公開第2012048332号パンフレットおよび国際公開第2013055404号パンフレットにおいて開示および特許請求されているのは、メディトープ、メディトープ結合抗体、メディトープ送達系、およびメディトープのためのモノクローナル抗体フレームワーク結合インターフェース、ならびにこれらの使用のための方法である。具体的には、2つの抗体結合ペプチドである、C-QFDLSTRRLK-C(「cQFD」;その中の配列識別番号1;本明細書において配列番号261)およびC-QYNLSSRALK-C(「cQYN」;その中の配列識別番号2;本明細書において配列番号262)は、新規なmAb結合特性を有することが示された。「メディトープ」とまた称される、cQFDおよびcQYNは、抗EGFR mAbセツキシマブのFabフレームワークの領域に結合し、抗原を結合する相補性決定領域(CDR)を結合しないことが示された。Fabフレームワーク上の結合領域は、他のフレームワーク結合抗原、例えば、スーパー抗原ブドウ球菌プロンテインA(SpA)(Grailleら著、2000年)およびペプトストレプトコッカスマグヌス(Peptostreptococcus magnus)タンパク質L(PpL)(Grailleら著、2001年)とは異なる。したがって、開示されている一実施形態は、環状メディトープを結合する、独自のマウス-ヒト抗体またはその機能的フラグメントのフレームワーク領域を含む、フレームワーク結合インターフェースである。
【0293】
例示的な目的の特許および特許公報は、全てがプロテインデザインラブ社(Protein Design Labs,Inc.)に譲渡されている、米国特許第5,585,089号明細書;同第5,693,761号明細書;および同第5,693,762号明細書(全て1995年6月7日に出願)、ならびに米国特許第6,180,370号明細書であり、1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)、およびドナー免疫グロブリンからの可能なさらなるアミノ酸、および受容性ヒト免疫グロブリンからのフレームワーク領域を有するヒト化免疫グロブリンを産生するための方法、ならびにヒト化免疫グロブリンの組成物について記載している。各ヒト化免疫グロブリン鎖は、CDRに加えて、例えば、CDRと相互作用し、結合親和性をもたらすことができるドナー免疫グロブリンフレームワークからのアミノ酸、例えば、ドナー免疫グロブリン中のCDRと直接隣接した1個もしくは複数のアミノ酸、または分子モデリングによって予測されるように約3Å以内のものを通常含むと言われる。重鎖および軽鎖はそれぞれ、様々な位置の基準の任意の1つまたは全てを使用することによって設計し得る。インタクトな抗体中に合わせたとき、本発明のヒト化免疫グロブリンは、ヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、かつ抗原、例えば、エピトープを含有するタンパク質または他の化合物へのドナー免疫グロブリンの親和性と実質的に同じ親和性を保持すると言われている。
【0294】
ルーヴァンカトリック大学(Universite Catholique De Louvain)およびバイオトランスプラント株式会社(Bio Transplant,Inc.)に譲渡された米国特許第5,951,983号明細書は、Tリンパ球に対するヒト化抗体について記載している。HUM5400として命名されているヒトVカッパ遺伝子(EMBL受託番号X55400)およびヒト抗体クローンAmu5-3(ジェンバンク受託番号U00562)からのフレームワーク領域が、その中に記載されている。
【0295】
クリエイティブバイオモレキュール社(Creative Biomolecules, Inc.)への米国特許第5,091,513号明細書は、事前に選択した抗原に対する親和性を有する合成タンパク質のファミリーについて記載している。タンパク質は、生合成抗体結合部位(BABS)のように挙動する領域を構成するアミノ酸の1つもしくは複数の配列によって特性決定される。部位は、1)非共有結合的に会合もしくはジスルフィド結合された合成VおよびV二量体、2)V-VもしくはV-V単鎖(ここで、VおよびVは、ポリペプチドリンカーによって付着している)、または3)個々のVもしくはVドメインを含む。結合ドメインは、別々の免疫グロブリンに由来し得る、連結したCDRおよびFR領域を含む。タンパク質はまた、例えば、酵素、毒素、結合部位、または固定化媒体への付着の部位、または放射性原子として機能する他のポリペプチド配列を含み得る。タンパク質を産生するための、抗体のin vivoでの産生によって引き出すことができる任意の特異性を有するBABSを設計するための、およびその類似体を産生するための方法が開示されている。
【0296】
ESBAテック、アルコンバイオメディカルリサーチユニット、LLC(ESBATech、Alcon Biomedical Research Unit、LLC)への米国特許第8,399,625号明細書は、抗体アクセプターフレームワーク、および特に適切な抗体アクセプターフレームワークを使用した、非ヒト抗体、例えば、ウサギ抗体をグラフトするための方法について記載している。
【0297】
細胞内抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体は、細胞内抗体であり得る。細胞内抗体は、それが産生される細胞から分泌されないが、代わりに、1種もしくは複数の細胞内タンパク質を標的とする抗体の1形態である。細胞内抗体は細胞内に発現および機能しており、使用されて、これらに限定されないが、細胞内輸送、転写、翻訳、代謝過程、増殖シグナル伝達および細胞分裂を含めた多数の細胞過程に影響を与え得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、細胞内抗体をベースとする治療を含む。一部のこのような実施形態では、本明細書において開示されている可変ドメイン配列および/またはCDR配列は、細胞内抗体をベースとする治療のための1つもしくは複数の構築物中に組み込まれている。例えば、細胞内抗体は、1種もしくは複数の糖化された細胞内タンパク質を標的とし得るか、または1種もしくは複数の糖化された細胞内タンパク質および代替タンパク質の間の相互作用をモジュレートし得る。
【0298】
20年超前、細胞内の標的に対する細胞内の抗体について最初に記載された(ビオッカ(Biocca)、ニューベルガー(Neuberger)およびカッターネオ(Cattaneo)、EMBO J.、9:101~108頁、1990年)。哺乳動物細胞の異なるコンパートメントにおける細胞内抗体の細胞内発現は、内因性分子の機能のブロッキングまたはモジュレーションを可能とする(ビオッカ(Biocca)ら著、EMBO
J.、9巻:101~108頁、1990年;Colbyら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、101巻:17616~21頁、2004年)。細胞内抗体は、タンパク質フォールディング、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-RNA相互作用およびタンパク質修飾を変化させることができる。これらは表現型ノックアウトを誘発し、標的抗原への直接の結合によって、その細胞内の交通を迂回させることによって、または結合パートナーとのその会合を阻害することによって、中和剤として作用することができる。これらは研究ツールとして多くは用いられてきており、ウイルス病理学、がんおよびミスフォールディング疾患としてのヒト疾患の処置のための治療用分子として登場している。組換え抗体の急成長しているバイオマーケットは、治療におけるこれらの使用のための、より低い免疫原性と一緒に増進された結合特異性、安定性および溶解性を伴う細胞内抗体を提供する(ビオッカ(Biocca)、抗体発現および産生、細胞工学(Antibody Expression and Production Cell Engineering)におけるアブストラクト、第7巻、2011年、179~195頁)。
【0299】
一部の実施形態では、細胞内抗体は、干渉RNA(iRNA)への利点を有する。例えば、iRNAは、複数の非特異的効果を発揮することが示されてきており、一方では、細胞内抗体は、標的抗原に対して高い特異性および親和性を有することが示されてきた。さらに、タンパク質として、細胞内抗体は、iRNAより非常により長い活性半減期を有する。このように、細胞内の標的分子の活性半減期が長いとき、iRNAによる遺伝子発現抑制は、効果を生じるのが遅いことがあり得、一方、細胞内抗体発現の効果は殆ど即時的であり得る。最後に、他のものを残す一方で、特定の標的分子の特定の結合相互作用をブロックする細胞内抗体を設計することが可能である。
【0300】
細胞内抗体の開発
細胞内抗体は、組換え核酸分子から発現し、かつ細胞内に保持されるように工学処理された(例えば、細胞質、小胞体、またはペリプラズム中に保持された)、単鎖可変フラグメント(scFv)であることが多い。細胞内抗体は、例えば、胞内抗体が結合するタンパク質の機能を除去するために使用し得る。細胞内抗体の発現はまた、細胞内抗体を含む核酸発現ベクターにおける誘導性プロモーターの使用によってレギュレートし得る。細胞内抗体は、当技術分野において公知の方法、例えば、(Marasco(マラスコ)ら著、1993年、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、90巻:7889~7893頁;Chen(チェン)ら著、1994年、ヒト遺伝子治療(Hum.Gene Ther.)、5巻:595~601頁;Chen(チェン)ら著、1994年、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、91巻:5932~5936頁;Maciejewski(マシエジェウスキ)ら著、1995年、ネイチャーメディシン(Nature Med.)、1巻:667~673頁;Marasco(マラスコ)、1995年、免疫技術(Immunotech)、1巻:1~19頁;Mhashilkar(マシルカー)ら著、1995年、EMBO J.、14巻:1542~51頁;Chen(チェン)ら著、1996年、ヒト遺伝子治療(Hum.Gene Therap.)、7巻:1515~1525頁;Marasco(マラスコ)、遺伝子治療(Gene Ther.)、4巻:11~15頁、1997年;Rondon(ロンドン)およびMarasco(マラスコ)、1997年、微生物学年次レビュー(Annu.Rev.Microbiol.)、51巻:257~283頁;コーエン(Cohen)ら著、1998年、癌遺伝子(Oncogene)、17巻:2445~56頁;Probaら著、1998年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、275巻:245~253頁;コーエン(Cohen)ら著、1998年、癌遺伝子(Oncogene)、17巻:2445~2456頁;ハサンザデ(Hassanzadeh)ら著、1998年、FEBSレターズ(FEBS Lett.)、437巻:81~6頁;リチャードソン(Richardson)ら著、1998年、遺伝子治療(Gene Ther.)、5巻:635~44頁;オハゲ(Ohage)およびステイプ(Steipe)、1999年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、291巻:1119~1128頁;オハゲ(Ohage)ら著、1999年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)、291巻:1129~1134頁;ワーツ(Wirtz)およびステイプ(Steipe)、1999年、タンパク質科学(Protein Sci.)、8巻:2245~2250頁;シュー(Zhu)ら著、1999年、免疫学的方法ジャーナル(J.Immunol.Methods)、231巻:207~222頁;アラファト(Arafat)ら著、2000年、がん遺伝子治療(Cancer Gene Ther.)、7巻:1250~6頁;デルマール(der Maur)ら著、2002年、生物化学ジャーナル(J.Biol.Chem.)、277巻:45075~85頁;Mhashilkar(マシルカー)ら著、2002年、遺伝子治療(Gene Ther.)、9巻:307~19頁;およびウィーラー(Wheeler)ら著、2003年、FASEB J.、17巻:1733~5頁;およびその中に引用された参照文献)において開示および概説されているものを使用して産生し得る。特に、CCR5細胞内抗体は、シュタインバーガー(Steinberger)ら、2000年、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、97巻:805~810頁)によって産生されてきた。一般に、マラスコ,WA(Marasco,WA)、1998年、「細胞内抗体:基礎研究および臨床遺伝子療法用途(Intrabodies:Basic Research and Clinical Gene Therapy Applications)」、シュプリンガー(Springer):ニューヨークを参照されたい;およびscFvの概説については、プルックサン(Pluckthun)、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」、1994年、第113巻、ローゼンバーグ(Rosenburg)およびムーア(Moore)編、シュプリンガー出版(Springer-Verlag)、ニューヨーク、269~315頁を参照されたい。
【0301】
一部の実施形態では、抗体配列は、細胞内抗体を開発するために使用される。細胞内抗体は、細胞内の単一ドメインフラグメント、例えば、単離したVHおよびVLドメインとして、または単鎖可変フラグメント(scFv)抗体として組み換え技術によって発現していることが多い。例えば、細胞内抗体は単一のポリペプチドとして発現し、柔軟なリンカーポリペプチドによって接合した重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む単鎖抗体を形成することが多い。細胞内抗体は典型的にはジスルフィド結合を欠いており、これらの特異的結合活性によって標的遺伝子の発現または活性をモジュレートすることができる。単鎖抗体はまた、軽鎖定常領域に接合した単鎖可変領域フラグメントとして発現することができる。
【0302】
当技術分野において公知のように、細胞内抗体は、組換えポリヌクレオチドベクター中に工学処理し、そのN末端もしくはC末端における細胞内輸送シグナルをコードし、標的タンパク質が位置している細胞内コンパートメントにおける高濃度での発現を可能とすることができる。例えば、小胞体(ER)に標的とされた細胞内抗体は、リーダーペプチド、および任意選択で、C末端ER保留シグナル、例えば、KDELアミノ酸モチーフを組み込むように工学処理される。細胞核において活性を発揮させることを意図する細胞内抗体は、核局在化シグナルを含むように工学処理される。脂質部分は、細胞内抗体を形質膜の細胞質ゾル側に繋ぎ止めるために細胞内抗体に接合している。細胞内抗体はまた標的とされ、細胞質ゾルにおいて機能を発揮することができる。例えば、細胞質ゾルの細胞内抗体は、細胞質ゾル内の因子を捕捉し、それによって因子がこれらの天然の細胞の目的場所に輸送されることを防止するために使用される。
【0303】
細胞内抗体発現には特定の技術的難関が存在する。特に、細胞内の新規に合成された細胞内抗体のタンパク質高次構造フォールディングおよび構造的安定性は、細胞内環境の還元条件によって影響を受ける。ヒト臨床治療において、細胞内の細胞内抗体発現を達成するために使用される、トランスフェクトされた組換えDNAの適用を取り囲む安全性の懸念が存在する。特に懸念されるのは、遺伝子操作において一般に使用される様々なウイルスをベースとするベクターである。このように、これらの問題を回避する1つのアプローチは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)をscFv抗体に融合して、「細胞透過性」抗体または「トランスボディ」を生じさせることである。トランスボディは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が単鎖可変フラグメント(scFv)抗体と融合している細胞透過性抗体である(ヘング(Heng)およびキャオ(Cao)、2005年、医学仮説(Med Hypotheses.)、64巻:1105~8頁)。
【0304】
標的遺伝子との相互作用によって、細胞内抗体は、標的タンパク質機能をモジュレートし、かつ/または、機序、例えば、標的タンパク質分解を加速し、非生理学的細胞内コンパートメント中に標的タンパク質を隔離することによって、表現型/機能的ノックアウトを達成する。細胞内抗体が媒介する遺伝子不活性化の他の機序は、細胞内抗体が向いているエピトープ、例えば、標的タンパク質上の触媒作用部位への、またはタンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、もしくはタンパク質-RNAの相互作用に関与しているエピトープへの結合によって決まり得る。
【0305】
一実施形態では、細胞内抗体を使用して、細胞核における標的を捕獲し、それによって、細胞核内のその活性を防止する。核標的化シグナルは、所望のターゲッティングを達成するために、このような細胞内抗体中に工学処理される。このような細胞内抗体は、特定の標的ドメインに特異的に結合するように設計される。別の実施形態では、標的タンパク質に特異的に結合する細胞質ゾルの細胞内抗体は、標的が細胞核にアクセスすることを防止し、それによって、標的が細胞核内で任意の生物活性を発揮することを防止する(例えば、標的が他の因子との転写複合体を形成することを防止する)ために使用される。
【0306】
このような細胞内抗体の発現を特定の細胞に特異的に方向付けるために、細胞内抗体の転写を、適当な腫瘍特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの調節性制御下に置く。細胞内抗体発現が特異的に前立腺を標的とするために、例えば、PSAプロモーターおよび/またはプロモーター/エンハンサーを利用することができる(例えば、1999年7月6日に発行された米国特許第5,919,652号明細書を参照されたい)。
【0307】
タンパク質形質導入ドメイン(PTD)は、非定型分泌経路および内部移行経路を通して、タンパク質が細胞膜を横切って転座し、細胞質ゾル内に内部移行されることを可能とする短いペプチド配列である。細胞内に発現している通常の細胞内抗体を超えて、「トランスボディ」が有するいくつかの別個の利点が存在する。第一に、「正しい」高次構造のフォールディングおよびジスルフィド結合形成は、標的細胞中への導入の前に起こることができる。より重要なことに、細胞透過性抗体または「トランスボディ」の使用は、細胞内の細胞内抗体発現のために必要とされる、ヒト臨床治療における組換えDNA技術の直接適用を取り巻く圧倒的な安全性および倫理的な懸念を回避する。細胞中に導入される「トランスボディ」は、永久の遺伝子変化をもたらすことなしに単に制限された活性半減期を有する。これは、ヒト臨床治療におけるこれらの適用に関する安全性の懸念を和らげる(ヘング(Heng)およびキャオ(Cao)、2005年、医学仮説(Med Hypotheses.)、64巻:1105~8頁)。
【0308】
細胞内抗体は、病理学的アイソフォームを含めたタンパク質の異なる高次構造と特異的に認識するこれらの実質的に無限の能力のため、およびこれらが凝集の潜在的部位(細胞内および細胞外部位の両方)を標的とすることができるため、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびプリオン病を含めたミスフォールディング疾患の処置のための有望な治療剤である。これらの分子は、これらの凝集を防止することによって、および/またはその潜在的な凝集部位からタンパク質をコース変更させることによって細胞内交通の分子シャンターとして、アミロイド原性タンパクに対する中和剤として作用することができる(カルディナーレ(Cardinale)、およびヒビオッカ(Biocca)、現在の分子医学(Curr.Mol.Med.)、2008年、8巻:2~11頁)。
【0309】
細胞内の抗体または細胞内抗体について記載している例示的な特許公報は、本明細書の下に記載し、これらのそれぞれは参照によりその全体が組み込まれている。
カッターネオ(Cattaneo)らに付与された国際公開第03014960号パンフレットおよび米国特許第7,608,453号明細書は、検証された細胞内の抗体の配列を含むデータベース(VIDAデータベース)を生じさせ、カバット(Kabat)によって検証された細胞内の抗体の配列を整列化するステップと;特定のアミノ酸が整列化した抗体の位置のそれぞれにおいて生じる頻度を決定するステップと;70%~100%の範囲の頻度閾値(LPまたはコンセンサス閾値)を選択するステップと;特定のアミノ酸の頻度がLP値と等しいかもしくはこれ超であるアラインメントの位置を同定するステップと;前記アラインメントの位置において最も頻度の高いアミノ酸を同定するステップとを含む、細胞内の抗体(ICS)について少なくとも1つのコンセンサス配列を同定する細胞内の抗体捕獲技術の方法について記載している。
【0310】
発明者カッターネオ(Cattaneo)らを含めた全て医療研究審議会に譲渡された、国際公開第0054057号パンフレット;国際公開第03077945号パンフレット;国際公開第2004046185号パンフレット;国際公開第2004046186号パンフレット;国際公開第2004046187号パンフレット;国際公開第2004046188号パンフレット;国際公開第2004046189号パンフレット;米国特許出願公開第2005272107号明細書;同第2005276800号明細書;同第2005288492号明細書;同第2010143939号明細書;登録米国特許第7,569,390号明細書および同第7,897,347号明細書および登録欧州特許第1560853号明細書;および欧州特許第1166121号明細書は、細胞内単一ドメイン免疫グロブリン、および細胞内環境における標的に結合する免疫グロブリン単一ドメインの能力を決定する方法、および細胞内の抗体を生じさせる方法について記載している。
【0311】
カッテネオ(Catteneo)が発明者として挙げられ、S.I.S.S.A.国際高等研究大学院大学(S.I.S.S.A.Scuola Internazionale Superiore)に譲渡された国際公開第0235237号パンフレット;米国特許出願公開第2003235850号明細書および登録欧州特許第1328814号明細書は、細胞内の抗原のエピトープのin vivoでの同定のための方法について記載している。
【0312】
レイラインジェノミクスSPA(Lay Line Genomics SPA)に譲渡され、カッテネオ(Catteneo)が発明者として挙げられている国際公開第2004046192号パンフレットおよび欧州特許第1565558号明細書は、細胞内のタンパク質リガンドxおよびタンパク質リガンドyの間の相互作用を撹乱および中和する細胞内の抗体を単離するための方法について記載している。また開示されているのは、xおよびyの間の相互作用をすることができる細胞内の抗体を使用して、既知のyリガンドに結合することができるタンパク質リガンドxを同定する方法;ならびに所与の細胞のタンパク質間相互作用の相当な割合(インタラクトーム)に対する、または細胞内経路もしくはネットワークを構成するタンパク質相互作用に対する一連の抗体フラグメントの単離のための方法である。
【0313】
「免疫反応の細胞内抗体が媒介する制御(Intrabody-mediated control of immune reactions)」という名称であり、ダナファーバーがん研究所(Dana Farber Cancer Institute Inc.)に譲渡され、発明者マラスコ(Marasco)およびマシルカー(Mhashilkar)が挙げられている、米国特許出願公開第2006034834号明細書および国際公開第9914353号パンフレットは、細胞をIRMに対する細胞内に発現された抗体、または細胞内抗体で形質導入することを含む、例えば、細胞上の個々のまたはクラスの免疫調節性受容体分子(IRM)を選択的に標的とすることによって、免疫系のレギュレーションを変化させる方法を対象とする。好ましい実施形態では、細胞内抗体は、IRM、例えば、MHC-1分子に対する単鎖抗体を含む。
【0314】
ダナファーバー癌研究所(Dana Farber Cancer Institute Inc.)およびホワイトヘッド研究所(Whitehead Biomedical Institute)に譲渡され、発明者ブラドナー(Bradner)、ラール(Rahl)およびヤング(Young)が挙げられている国際公開第2013033420号パンフレットは、ブロモドメインタンパク質および免疫グロブリン(Ig)調節エレメントの間の相互作用を阻害し、Ig座位と共に転座する癌遺伝子の発現をダウンレギュレートするために、およびIg座位と共に転座する癌遺伝子の発現の増加によって特徴付けられるがん(例えば、血液悪性腫瘍)を処置するために有用である方法および組成物について記載いている。細胞内抗体が一般に記載されている。
【0315】
「真核細胞において細胞内抗体を産生または同定する方法(Methods of producing or identifying intrabodies in eukaryotic cells)」という名称であり ロチェスター大学医療センターに譲渡され、発明者ザウダラー(Zauderer)、ウェイ(Wei)およびスミス(Smith)が挙げられている国際公開第02086096号パンフレットおよび米国特許出願公開第2003104402号明細書は、3分子組換え方法を使用して、真核細胞において細胞内免疫グロブリン分子および細胞内免疫グロブリンライブラリーを発現させる高効率の方法について記載している。さらに提供するのは、細胞内免疫グロブリン分子およびそのフラグメントについて選定およびスクリーニングする方法、ならびに細胞内免疫グロブリン分子を産生、スクリーニングおよび選択するためのキット、ならびにこれらの方法を使用して産生する細胞内免疫グロブリン分子およびフラグメントである。
【0316】
アフィニティバイオサイエンス株式会社(Affinity Biosciences
PTY LTD)に譲渡され、発明者ビーズレイ(Beasley)、ニーブン(Niven)およびキーフェル(Kiefel)が挙げられている国際公開第2013023251号パンフレットは、ポリペプチド、例えば、抗体分子、およびこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびそのライブラリーについて記載しており、ここで発現したポリペプチドは、高い安定性および溶解性を示す。特に、還元性環境または細胞内環境において可溶性発現およびフォールディングを示す対形成したVLおよびVHドメインを含むポリペプチドについて記載されており、ここでは、ヒトscFvライブラリーをスクリーニングし、ヒト生殖系列配列と同一のフレームワーク領域、ならびにscFvスカフォールド上へのCDR3グラフティングの著しい熱安定性および耐性を有する可溶性scFv遺伝子の単離をもたらした。
【0317】
エスバテックAG(Esbatech AG)およびチューリッヒ大学に譲渡され、発明者エバート(Ewert)、フーバー(Huber)、オネゲル(Honneger)およびプリュックテュン(Plueckthun)が挙げられている欧州特許出願公開第2314622号明細書および国際公開第03008451号パンフレットおよび国際公開第03097697号パンフレットは、ヒト可変ドメインの改変について記載し、非常に安定的および可溶性単鎖Fv抗体フラグメントを生じさせるためのフレームワークとして有用な組成物を提供している。これらのフレームワークは細胞内動作のために選択されてきており、したがって、安定性および溶解性が、例えば、細胞の還元性環境における抗体フラグメントの動作のための制限因子である用途のための、scFv抗体フラグメントまたはscFv抗体ライブラリーを生じさせるために理想的には適している。このようなフレームワークはまた、増進した溶解性および安定性を示す高度に保存された残基およびコンセンサス配列を同定するために使用することができる。
【0318】
「細胞内抗体標的化送達、および治療剤の再充填のためのシステム、装置および方法(Systems devices and methods for intrabody targeted delivery and reloading of therapeutic agents)」という名称の国際公開第02067849号パンフレットおよび米国特許出願公開第2004047891号明細書は、分子の細胞内抗体標的化送達のためのシステム、装置および方法について記載いている。より特定すると、いくつかの実施形態は、局在化および適時の様式で対象の組織領域への治療剤の標的化された送達を可能とする再充填可能な薬物送達システムに関する。
【0319】
アムジェン株式会社(Amgen Inc.)に譲渡され、発明者チョウ(Zhou)、シェン(Shen)およびマーチン(Martin)が挙げられている国際公開第2005063817号パンフレットおよび米国特許第7,884,054号明細書は、細胞内抗体を含めた機能的抗体を同定するための方法について記載いている。特に、ホモ二量体細胞内抗体について記載されており、ホモ二量体の各ポリペプチド鎖は、Fc領域、scFv、および細胞内局在化配列を含む。細胞内局在化配列は、細胞内抗体がERまたはゴルジに局在化することをもたらし得る。任意選択で、各ポリペプチド鎖は、1つ以下のscFvを含む。
【0320】
パーミオンバイオロジクス株式会社(Permeon Biologics Inc.)に譲渡されたボーガン(Vogan)らによる国際公開第2013138795号パンフレットは、細胞内の抗体および抗体様部分の送達のための細胞透過性組成物、ならびにこれら(本明細書において、「AAM部分(複数可)」と称される)を細胞中に送達する方法について記載いている。理論に束縛されるものではないが、本開示は、少なくとも部分的に、AAM部分と、表面の正の電荷を有する細胞透過性ポリペプチド(本明細書において、「表面+透過性ポリペプチド」と称される)とを複合体化することによって、AAM部分を細胞中に送達することができるという発見に基づいている。イントラフィリン技術のいくつかの適用の例がまた提供される。
【0321】
パスツール研究所(Pasteur Institute)に譲渡された国際公開第2010004432号パンフレットは、ラクダ科(camelidae)(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマおよびアルパカ)からの免疫グロブリンについて記載いており、これらの約50%は軽鎖を欠いている抗体である。これらの重鎖抗体は、VHH(複数可)、VHHドメイン(複数可)またはVHH抗体(複数可)と称される1個のみの単一の可変ドメインによって、抗原と相互作用する。軽鎖が存在しないにも関わらず、これらのホモ二量体抗体は、これらの超可変領域を拡大することによって広範な抗原結合性レパートリーを示し、VHHドメインが細胞内の標的に対するとき、トランスボディおよび/または細胞内抗体としてin vitroおよびin vivoで作用することができる。
【0322】
国際公開第2014106639号パンフレットは、細胞表現型を改変することができる細胞内抗体を同定し、かつ細胞内抗体の直接もしくは間接の細胞の標的を同定することによって、細胞表現型に関与している細胞の標的を同定する方法について記載している。特に、細胞内抗体3H2-1、3H2-VHおよび5H4は、アレルギー性の刺激によってトリガーされる肥満細胞における脱顆粒反応を阻害することができ、さらに、細胞内抗体3H2-1および5H4は、それぞれ、ABCF1ファミリーおよびC120RF4ファミリーのタンパク質を直接的または間接的に標的とした。これらのABCF1およびC120RF4阻害剤は、治療において、特に、アレルギー状態および/または炎症状態を処置するために有用であると言われる。
【0323】
ウロジェネシス社(Urogenesis Inc)に譲渡された国際公開第0140276号パンフレットは一般に、細胞内の抗体(細胞内抗体)を使用したSTEAP(前立腺の6回膜貫通上皮抗原)タンパク質の阻害の可能性について記載している。
【0324】
マンチェスター大学に譲渡され、発明者サイモン(Simon)およびベントン(Benton)が挙げられている国際公開第02086505号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2004115740号明細書は、標的分子の細胞内分析のための方法について記載しており、細胞内抗体が好ましいと言われている。一実施形態では、CFPにカップリングしている抗MUC1細胞内抗体を発現することができるベクター(pScFv-ECFPと命名)について記載されている。
【0325】
ジーンセラピーシステムズ社(Gene Therapy Systems Inc)に譲渡された国際公開第03095641号パンフレットおよび国際公開第0143778号パンフレットは、細胞内タンパク質送達のための組成物および方法について記載しており、細胞内抗体を全体的に記載している。
【0326】
セレクティブジェネティックス社(Selective Genetics Inc)に譲渡された国際公開第03086276号パンフレットは、細胞内感染の処置のためのプラットフォーム技術について記載している。その中で記載されている組成物および方法は、感染と関連する細胞表面受容体/部分を結合しそれによって内部移行する連結したリガンドを介して感染可能な細胞を標的とする非標的特異的ベクターを含む。ベクターは、標的細胞への内部移行によって発現する外因性核酸配列を含む。ベクター関連リガンドおよび核酸分子は、異なる感染病原体を標的とするために変更し得る。さらに、本発明は、ベクターの内部移行を方向付けることができ、かつウイルス侵入をブロックすることができるエピトープおよびリガンドを同定する方法を提供する。
【0327】
エラスムス大学に譲渡された国際公開第03062415号パンフレットは、異種抗原ガラクトースアルファ1,3ガラクトースの産生の触媒作用を撹乱する細胞内の抗体をコードするポリヌクレオチド構築物、および/またはレトロウイルスタンパク質、例えば、PERV粒子タンパク質に特異的に結合する細胞内の抗体をコードするポリヌクレオチド構築物を含む、トランスジェニック生物について記載いている。トランスジェニック生物の細胞、組織および器官は、異種移植において使用し得る。
【0328】
「タンパク質高次構造を検出するための手段およびその用途(Means for detecting protein conformation and applications thereof)」という名称の国際公開第2004099775号パンフレットは、高次構造のタンパク質状態を特に検出するための、高次構造特異的抗体としてscFvフラグメントの使用について記載いており、生細胞において、細胞内発現によって、内在性タンパク質の挙動を追跡するためのセンサーとしての用途を有すると言われる。
【0329】
イムクローンシステムズ社(Imclone Systems Inc)に譲渡された国際公開第2008070363号パンフレットは、細胞内タンパク質に、または細胞内タンパク質、例えば、非受容体チロシンキナーゼのTecファミリーのメンバーであるEtk、内皮および上皮チロシンキナーゼの細胞内ドメインに結合する、単一ドメイン細胞内抗体について記載している。また提供するのは、細胞内抗体または細胞内抗体を発現している核酸を投与することによって、細胞内酵素を阻害し、患者において腫瘍を処置する方法である。
【0330】
コーネルリサーチファンデーション社(Cornell Research Foundation Inc)に譲渡された国際公開第2009018438号パンフレットは、標的分子に結合するタンパク質をコードするDNA分子を含む構築物を提供することによって、標的分子に結合し、かつ細胞内機能性を有するタンパク質を同定する方法について記載いており、DNA分子は、ストール配列にカップリングしている。宿主細胞は構築物と共に形質転換され、次いで、宿主細胞内で、その翻訳がストールされているタンパク質の複合体、タンパク質をコードするmRNA、およびリボソームを形成するのに有効な条件下で培養される。複合体中のタンパク質は、適切にフォールドされた活性形態であり、複合体は細胞から回収される。この方法は、宿主細胞の代わりにリボソームを含有する細胞非含有の抽出物調製で行うことができる。本発明はまた、標的分子に結合するタンパク質をコードするDNA分子、およびDNA分子にカップリングしているSecMストール配列を含む構築物に関する。DNA分子およびSecMストール配列は、十分な距離を伴ってこれらの間でカップリングし、細胞内の適切にフォールドされた活性形態でのこれらのコードされたタンパク質の発現を可能とする。細胞内抗体の使用について一般に記載されている。
【0331】
モーガンバイオテックリサーチインスティテュート(Mogam Biotech Research Institute)に譲渡された国際公開第2014030780号パンフレットは、遺伝子構築物(標的タンパク質および抗生物質耐性タンパク質は、Tatシグナル配列に連結している)を調製し、次いで、これを大腸菌(E.coli)内で発現することによって、より高い溶解性および優れた熱安定性を有する標的タンパク質、特に、ヒト生殖細胞に由来する免疫グロブリン可変ドメイン(VHもしくはVL)をスクリーニングするための、Tat関連タンパク質工学(TAPE)という方法について記載している。また開示されているのは、TAPE方法によってスクリーニングされる、溶解性および優れた熱安定性を有する、ヒトまたは工学処理されたVHおよびVLドメイン抗体、ならびにヒトまたは工学処理されたVHおよびVLドメイン抗体スカフォールドである。また提供されるのは、TAPE方法によってスクリーニングされるヒトまたは工学処理されたVHもしくはVLドメイン抗体スカフォールドにおけるランダムCDR配列を含むライブラリー、その調製方法、ライブラリーを使用することによってスクリーニングされる標的タンパク質への結合能力を有するVHもしくはVLドメイン抗体、ならびにドメイン抗体を含む医薬組成物である。
【0332】
欧州特許出願公開第2422811号明細書は、細胞内エピトープに結合する抗体について記載している。このような細胞内抗体は、抗原を特異的に結合することができ、好ましくは、その分泌のための動作可能配列コーディングを含有せず、したがって細胞内に留まっている抗体の少なくとも一部を含む。一実施形態では、細胞内抗体は、scFvを含む。scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とするVHおよびVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。また記載されているのは、細胞内抗体がEph受容体の細胞質ドメインに結合し、そのシグナル伝達(例えば、自己リン酸化)を防止する特定の実施形態である。別の特定の実施形態では、細胞内抗体は、B型エフリンの細胞質ドメイン(例えば、EphrinB1、EphrinB2またはEphrinB3)に結合する。
【0333】
国際公開第2011003896号パンフレットおよび欧州特許出願公開第2275442号明細書は、増殖細胞核抗原(PCNA)に特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸分子を使用して作製された、細胞内機能的PCNA-Chromobodiesについて記載いている。1つまたは2つのフレームワーク領域において1個もしくは複数のアミノ酸の保存的置換を含むこのようなポリペプチドの例は、ポリペプチドのフレームワーク領域を含めて、
MANVQLNESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSDISPSGAVKAYSDSVKGRFTISRDNAKNRLYLQMNSLTPEDTGEYFCTKVQSPRTRIPAPSSQGTQVTVSS (配列番号263)および
MANVQLNESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSEISPSGAVKAYSDSVKGRFTISRDNAKNRLYLQMNSLTPEDTGEYFCTKVQSPRTRIPAPSSQGTQVTVSS (配列番号264)を含む。実施例において、フレームワーク領域、およびPCNAの結合に関与しているCDR領域は決定されてきた。
【0334】
欧州特許出願公開第2703485号明細書は、形質細胞または形質芽細胞を選択するための、ならびに標的抗原特異的抗体、および新規なモノクローナル抗体を産生するための方法について記載いている。一実施形態では、細胞内免疫グロブリンを発現している細胞を同定した。
【0335】
抗体をコーティングした薬剤
一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗体または抗体フラグメントを使用して、抗体をコーティングした薬剤を含む組成物を調製し得る。本明細書において使用する場合、用語「抗体をコーティングした薬剤」は、1種もしくは複数の表面関連抗体または抗体フラグメントを含む、任意の粒子、ナノ粒子、分子、タンパク質、融合タンパク質、脂質、リポソーム、細胞膜、細胞、または他の構造を指す。抗体をコーティングした薬剤は、コーティングのために使用される抗体または抗体フラグメントの特異性に基づいて、1種もしくは複数のグリカン、タンパク質、細胞、組織、および/または器官を標的とし得る。
【0336】
抗体をコーティングした薬剤は、会合された、封入された、または包埋されたカーゴを含み得る。カーゴは、検出可能な標識であり得る。いくつかのカーゴは、1種もしくは複数の治療剤を含み得る。このような治療剤には、これらに限定されないが、薬物、化学療法剤、および細胞毒性剤が含まれてもよい。細胞毒性剤は、細胞を死滅またはその他の方法で無能にするために使用し得る。細胞毒性剤には、これらに限定されないが、細胞骨格阻害剤[例えば、チューブリン重合阻害剤、例えば、メイタンシンまたはアウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE[MMAE]およびモノメチルアウリスタチンF[MMAF])]ならびにDNA傷害剤(例えば、DNA重合阻害剤、例えば、カリケアマイシンおよびデュオカルマイシン)が含まれてもよい。
【0337】
一部の実施形態では、抗体をコーティングした薬剤は、本明細書に記載されている1種もしくは複数の抗体または抗体フラグメントでコーティングされているナノ粒子を含み得る。このような抗体をコーティングした薬剤は、これらに限定されないが、細胞関連グリカンを含めた1種もしくは複数のグリカンを標的とし得る。いくつかのこのような抗体をコーティングした薬剤は、1種もしくは複数の細胞毒性剤を含む。
【0338】
タンパク質およびバリアント
本発明のグリカン相互作用抗体は、完全なポリペプチド、複数のポリペプチド、またはポリペプチドのフラグメントとして存在してもよく、これは1種もしくは複数の核酸、複数種の核酸、核酸のフラグメント、または上記のいずれかのバリアントによって独立にコードし得る。本明細書において使用する場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって殆どの場合、一緒に連結されるアミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを意味する。この用語は、本明細書において使用する場合、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。場合によって、コードされるポリペプチドは、約50個のアミノ酸より小さく、ポリペプチドはそのときペプチドと称される。ポリペプチドがペプチドである場合、これは少なくとも約2個、3個、4個、または少なくとも5個のアミノ酸残基の長さである。このように、ポリペプチドは、遺伝子産物、天然ポリペプチド、合成ポリペプチド、相同体、オーソログ、パラログ、フラグメント、ならびに上記の他の同等物、バリアント、および類似体を含む。ポリペプチドは単一分子でよいか、または複数分子錯体、例えば、二量体、三量体もしくは四量体でよい。これらはまた、単鎖または多鎖ポリペプチドを含んでもよく、会合または連結し得る。ポリペプチドという用語はまた、1個もしくは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに適用し得る。
【0339】
用語「ポリペプチドバリアント」は、これらのアミノ酸配列が天然または参照配列と異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、天然または参照配列と比較して、アミノ酸配列内の特定の位置において置換、欠失、および/または挿入を有し得る。通常、バリアントは、天然または参照配列と少なくとも約50%の同一性(相同性)を有し、好ましくは、これらは天然または参照配列と少なくとも約80%、より好ましくは、少なくとも約90%同一(相同)である。
【0340】
一部の実施形態では、「バリアント模倣物」が提供される。本明細書において使用する場合、用語「バリアント模倣物」は、活性化配列を模倣する1個もしくは複数のアミノ酸を含有するものである。例えば、グルタメートは、ホスホロ-トレオニンおよび/またはホスホロ-セリンについての模倣物としての役割を果たし得る。代わりに、バリアント模倣物は、非活性化、または模倣物を含有する不活化された産物をもたらしてもよく、例えば、フェニルアラニンは、チロシンの代わりの不活性化置換として作用し得るか、あるいはアラニンは、セリンの代わりの不活性化置換として作用し得る。本発明のグリカン相互作用抗体のアミノ酸配列は、天然アミノ酸を含み得、したがって、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、またはそのフラグメントであると考えてもよい。代わりに、グリカン相互作用抗体は、天然および非天然アミノ酸の両方を含み得る。
【0341】
用語「アミノ酸配列バリアント」は、天然または出発配列と比較してこれらのアミノ酸配列においていくつかの差異を伴う分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、アミノ酸配列内の特定の位置において置換、欠失、および/または挿入を有し得る。「天然」または「出発」配列は、野生型配列と混同すべきではない。本明細書において使用する場合、天然または出発配列は、それに対して比較を行い得る最初の分子を指す相対用語である。「天然」または「出発」配列または分子は、野生型(天然に見出されるその配列)を表し得るが、野生型配列である必要はない。
【0342】
通常、バリアントは、天然配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する。「配列同一性」は、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列に適用するように、配列を整列化し、ギャップおよびフラグメントを考慮に入れて、必要に応じて、最大パーセントの配列同一性を達成した後の、第2の配列における残基と同一である、候補配列における残基の百分率として定義される。2つのポリマー配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列を整列化することによって行うことができる(例えば、ギャップは、最適なアラインメントのための第1および第2のポリマー配列の1つもしくは両方に導入することができ、同一ではない配列は、比較目的のために無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較目的のために整列化された配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応する位置における残基を比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じ残基によって占められているとき、分子は、その位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列によって共有されている同一の位置の数の関数である。配列の比較、および2つの配列の間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、方法、例えば、分子計算生物学(Computational Molecular Biology)、レスク,A.M.(Lesk,A.M.)編、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年;バイオコンピューティング:インフォマティクスおよびゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、スミス,D.W.(Smith,D.W.)編,アカデミックプレス社(Academic Press)、ニューヨーク、1993年;分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、フォンハンジェ,G.(von Heinje,G.)、アカデミックプレス社(Academic Press)、1987年;配列データのコンピュータ分析、パートI(Computer Analysis of Sequence Data,Part I)、グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編、ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージー、1994年;および配列分析プライマー(Sequence Analysis
Primer)、グリブスコフ,M.(Gribskov,M.)およびデベロー,J.(Devereux,J.)編、Mストックトンプレス(M Stockton Press)、ニューヨーク、1991年(これらのそれぞれは参照により本明細書中に組み込まれている)に記載されているものを使用して決定することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、PAM120重み付け残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込んだ、マイヤース(Meyers)およびミラー(Miller)(CABIOS、1989年、4巻:11~17頁)のアルゴリズムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、代わりに、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用したGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを使用して決定することができる。配列の間の同一性パーセントを決定するために一般に用いられる方法には、これらに限定されないが、参照により本明細書中に組み込まれているカリージョ,H.(Carillo,H.)およびリップマン,D.(Lipman,D.)、SIAM応用数学ジャーナル(SIAM J Applied
Math.)、48巻:1073頁(1988年)において開示されているものが含まれる。同一性を決定するための技術は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列の間の相同性を決定する例示的なコンピュータソフトウェアには、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ、デベロー,J.(Devereux,J.)ら著、核酸リサーチ(Nucleic Acids Research)、12巻(1号)、387頁(1984年))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA、アルツシュール,S.F.(Altschul,S.F.)ら著、分子生物学ジャーナル(J.Molec.Biol.)、215巻、403頁(1990年))が含まれる。
【0343】
「相同体」は、アミノ酸配列に提供されるように、第2の種の第2の配列と実質的な同一性を有する他の種の対応する配列を意味する。
「類似体」は、1個もしくは複数のアミノ酸の変更、例えば、アミノ酸残基の置換、付加または欠失が異なるが、親ポリペプチドの特性をまだ維持する、ポリペプチドバリアントを含むことを意味する。
【0344】
本発明は、バリアントおよび誘導体を含めた、アミノ酸をベースとするいくつかのタイプのグリカン相互作用抗体を意図する。これらは、置換による、挿入による、欠失によるおよび共有結合的なバリアントおよび誘導体を含む。したがって、本発明の範囲内に含まれるのは、置換、挿入および/または付加、欠失および共有結合的改変を含有するグリカン相互作用抗体分子である。例えば、配列タグまたはアミノ酸、例えば、1個もしくは複数のリシンは、本発明のペプチド配列に加えることができる(例えば、N末端またはC端末側終端において)。配列タグは、ペプチド精製または局在化のために使用することができる。リシンは、ペプチド溶解性を増加させるか、またはビオチン化を可能とするために使用することができる。代わりに、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシおよびアミノ末端の領域に位置しているアミノ酸残基を任意選択で欠失させて、切断型配列を実現し得る。特定のアミノ酸(例えば、C末端またはN末端残基)は代わりに、配列、例えば、可溶性であるか、もしくは固体支持体に連結している、より大きな配列の部分としての配列の発現の使用によって欠失し得る。
【0345】
「置換によるバリアント」は、タンパク質に言及するとき、天然または出発配列における少なくとも1個のアミノ酸残基が除去され、かつ異なるアミノ酸がその場所において同じ位置にて挿入されているものである。分子における1個のみのアミノ酸が置換されている場合、置換は単一であり得るか、または2個もしくはそれよりも多いアミノ酸が同じ分子において置換されている場合、置換は複数であり得る。
【0346】
本明細書において使用する場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、同様のサイズ、電荷、または極性を有する異なるアミノ酸を有する配列において通常存在するアミノ酸の置換を指す。保存的置換の例は、別の非極性残基を非極性(疎水性)残基、例えば、イソロイシン、バリンおよびロイシンで置換することを含む。同様に、保存的置換の例は、別のものを1個の極性(親水性)残基で置換すること、例えば、アルギニンおよびリシンの間、グルタミンおよびアスパラギンの間、およびグリシンおよびセリンの間を含む。さらに、別の塩基性残基を、塩基性残基、例えば、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンで置換すること、または別の酸性残基を、1個の酸性残基、例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換することは、保存的置換のさらなる例である。非保存的置換の例は、極性(親水性)残基、例えば、システイン、グルタミン、グルタミン酸もしくはリシンを、非極性(疎水性)アミノ酸残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンで置換すること、および/または非極性残基を、極性残基で置換することを含む。
【0347】
「挿入バリアント」は、タンパク質に言及するとき、天然または出発配列における特定の位置におけるアミノ酸に直接隣接して挿入した1個もしくは複数のアミノ酸を有するものである。アミノ酸に「直接隣接した」は、アミノ酸のアルファ-カルボキシまたはアルファ-アミノ官能基に接続していることを意味する。
【0348】
「欠失バリアント」は、タンパク質に言及するとき、天然または出発アミノ酸配列における1個もしくは複数のアミノ酸が除去されているものである。通常、欠失バリアントは、分子の特定の領域において欠失した1個もしくは複数のアミノ酸を有する。
【0349】
本明細書において使用する場合、用語「誘導体」は用語「バリアント」と同意語として使用され、参照分子または出発分子に対して何らかの方法で改変または変更されている分子を指す。一部の実施形態では、誘導体は、有機タンパク質性または非タンパク質性誘導体化剤、および翻訳後修飾で修飾されている天然タンパク質または出発タンパク質を含む。共有結合的修飾は、タンパク質の標的とされたアミノ酸残基と、選択した側鎖もしくは末端残基と反応することができる有機誘導体化剤とを反応させることによって、または選択された組換え宿主細胞において機能する翻訳後修飾の機序を利用することによって、従来導入されている。結果として生じた共有結合性誘導体は、生物活性のため、免疫アッセイのため、または組換え糖タンパク質のイムノアフィニティー精製のための抗タンパク質抗体の調製のために重要である残基を同定することに向けられているプログラムにおいて有用である。このような修飾は当技術分野で通常の技量の範囲内であり、過度の実験をせずに行われる。
【0350】
特定の翻訳後修飾は、発現ポリペプチド上の組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基へと翻訳後に脱アミドされることが多い。代わりに、これらの残基は、穏やかな酸性条件下で脱アミドされる。これらの残基のいずれかの形態は、本発明によって使用されるタンパク質中に存在し得る。
【0351】
他の翻訳後修飾は、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のアルファ-アミノ基のメチル化を含む(T.E.クレイトン(T.E.Creighton)、タンパク質:構造および分子の特性(Proteins:Structure and Molecular Properties)、W.H.フリーマンアンドカンパニー(W.H.Freeman & Co.)、サンフランシスコ、79~86頁(1983年))。
【0352】
共有結合性誘導体は特に、本発明のタンパク質が非タンパク質性ポリマーに共有結合している融合分子を含む。非タンパク質性ポリマーは通常、親水性合成ポリマー、すなわち、天然ではその他に見出されないポリマーである。しかし、天然で存在し、かつ組換えまたはin vitroでの方法によって生成されるポリマーは、天然から単離されるポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンは、本発明の範囲内に入る。特に有用なのは、ポリビニルアルキレンエーテル、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールである。タンパク質は、米国特許第4,640,835号明細書;同第4,496,689号明細書;同第4,301,144号明細書;同第4,670,417号明細書;同第4,791,192号明細書または同第4,179,337号明細書に記載された様式で、様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンに連結し得る。
【0353】
「フィーチャ」は、タンパク質に言及するとき、分子の別個のアミノ酸配列をベースとする構成要素として定義される。本発明のタンパク質のフィーチャは、表面顕在化、局所高次構造の形状、フォールド、ループ、ハーフループ、ドメイン、ハーフドメイン、部位、末端または任意のこれらの組合せを含む。
【0354】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「表面顕在化」は、最も外側の表面上に現れる、タンパク質のポリペプチドをベースとする構成要素を指す。
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「局所高次構造の形状」は、タンパク質の限定できる空間内に位置している、タンパク質のポリペプチドをベースとする構造的顕在化を意味する。
【0355】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「フォールド」は、エネルギー最小化によるアミノ酸配列の結果として生じた高次構造を意味する。フォールドは、フォールディングプロセスの二次または三次レベルにおいて起こり得る。二次レベルフォールドの例は、ベータシートおよびアルファヘリックスを含む。三次フォールドの例は、エネルギー力の凝集または分離によって形成されたドメインおよび領域を含む。このように形成された領域は、疎水性および親水性ポケットなどを含む。
【0356】
本明細書において使用する場合、用語「ターン」は、タンパク質高次構造に関連するように、ペプチドまたはポリペプチドの骨格の方向を変更させる曲がりを意味し、1個、2個、3個もしくはそれ超のアミノ酸残基が関与し得る。
【0357】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「ループ」は、ペプチドまたはポリペプチドの骨格の方向を逆転させ、かつ4個もしくはそれ超のアミノ酸残基を含む、ペプチドまたはポリペプチドの構造的フィーチャを指す。オリバ(Oliva)らは、少なくとも5つのクラスのタンパク質ループを同定してきた(分子生物学ジャーナル(J.Mol Biol)、266巻(4号):814~830頁;1997年)。
【0358】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「ハーフループ」は、これが由来するループとしてアミノ酸残基の数の少なくとも半分を有する同定されたループの部分を指す。ループは、必ずしも偶数のアミノ酸残基を含有し得ないことが理解される。したがって、ループが奇数のアミノ酸を含有するか、または奇数のアミノ酸を含むと同定される場合、奇数のループのハーフループは、ループの整数部分または一番近い整数部分を含む(ループのアミノ酸の数/2+/-0.5個のアミノ酸)。例えば、7個のアミノ酸ループとして同定されるループは、3個のアミノ酸または4個のアミノ酸のハーフループを生じさせることができる(7/2=3.5+/-0.5は3または4である)。
【0359】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「ドメイン」は、タンパク質間相互作用のための部位としての役割を果たす、1つもしくは複数の同定可能な構造的または機能的な特徴または特性(例えば、結合能力)を有するポリペプチドのモチーフを指す。
【0360】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「ハーフドメイン」は、これが由来するドメインとしてアミノ酸残基の数の少なくとも半分を有する同定されたドメインの部分を指す。ドメインは、必ずしも偶数のアミノ酸残基を含有し得ないことが理解される。したがって、ドメインが奇数のアミノ酸を含有するか、または奇数のアミノ酸を含むと同定される場合、奇数のドメインのハーフドメインは、ドメインの整数部分または一番近い整数部分を含む(ドメインのアミノ酸の数/2+/-0.5個のアミノ酸)。例えば、7個のアミノ酸ドメインとして同定されるドメインは、3個のアミノ酸または4個のアミノ酸のハーフドメインを生じさせることができる(7/2=3.5+/-0.5は3または4である)。サブドメインは、ドメインまたはハーフドメイン内で同定し得ることがまた理解され、これらのサブドメインは、これらが由来するドメインまたはハーフドメインにおいて同定される構造特性または機能特性の全てに満たないものを有する。本明細書におけるドメインタイプのいずれかのアミノ酸は、ポリペプチドの骨格に沿って近接している必要はないことがまた理解される(すなわち、隣接していないアミノ酸は構造的にフォールドして、ドメイン、ハーフドメインまたはサブドメインを産生し得る)。
【0361】
本明細書において使用する場合、タンパク質に言及するとき、用語「部位」は、アミノ酸をベースとする実施形態に関するように、「アミノ酸残基」および「アミノ酸側鎖」と同意語として使用される。部位は、本発明のポリペプチドをベースとする分子内で改変するか、操作するか、変更するか、誘導体化するか、または変化し得るペプチドまたはポリペプチド内の位置を表す。
【0362】
本明細書において使用する場合、用語「末端」は、タンパク質に言及するとき、ペプチドまたはポリペプチドの先端を指す。このような先端は、ペプチドまたはポリペプチドの最初または最後の部位のみに限定されず、末端領域におけるさらなるアミノ酸を含み得る。本発明のポリペプチドをベースとする分子は、N末端(遊離アミノ基(NH2)を有するアミノ酸で終結)およびC末端(遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸で終結)の両方を有すると特性決定し得る。本発明のタンパク質は、場合によって、ジスルフィド結合または非共有結合力によって一緒になった複数のポリペプチド鎖(マルチマー、オリゴマー)で構成されている。これらの種類のタンパク質は、複数のN末端およびC末端を有する。代わりに、ポリペプチドの末端は、場合によっては、非ポリペプチドをベースとする部分、例えば、有機コンジュゲートで始まるかまたは終わるように改変し得る。
【0363】
フィーチャのいずれかが本発明の分子の構成要素として同定または定義されると、これらのフィーチャのいくつかの操作および/または改変のいずれかは、動かすか、交換するか、反転させるか、欠失させるか、ランダム化するか、または重複させることによって行い得る。さらに、フィーチャの操作は、本発明の分子への改変として同じ成果をもたらし得ることが理解される。例えば、ドメインを欠失させることが関与した操作は、全長分子に満たないものをコードする核酸の改変がそうであるように、分子の長さの変更をもたらす。
【0364】
改変および操作は、当技術分野において公知の方法、例えば、部位特異的突然変異誘発によって達成することができる。次いで、このように得られた改変された分子は、in vitroもしくはin vivoでのアッセイ、例えば、本明細書に記載されているもの、または当技術分野において公知の任意の他の適切なスクリーニングアッセイを使用して、活性について試験し得る。
【0365】
同位体のバリエーション
本発明のグリカン相互作用抗体は、同位体である1個もしくは複数の原子を含有し得る。本明細書において使用する場合、用語「同位体」は、1個もしくは複数のさらなる中性子を有する化学元素を指す。一実施形態では、本発明の化合物は、重水素化し得る。本明細書において使用する場合、用語「重水素化」は、1個もしくは複数の水素原子が重水素同位体で置き換えられている物質を指す。重水素同位体は、水素の同位体である。水素の原子核は、1個のプロトンを含有し、一方、重水素核は、プロトンおよび中性子の両方を含有する。グリカン相互作用抗体は、化合物の物理的特性、例えば、安定性を変化させるため、または化合物が診断および実験用途において使用されるのを可能とするために、重水素化し得る。
【0366】
コンジュゲートおよび組合せ
本発明のグリカン相互作用抗体は、1個もしくは複数の相同または異種分子と共に複合体化するか、コンジュゲートするか、または合わせ得ることが本発明によって意図される。本明細書において使用する場合、「相同分子」は、出発分子に対して構造または機能の少なくとも1つにおいて同様である分子を意味し、一方、「異種分子」は、出発分子に対して構造または機能の少なくとも1つにおいて異なるものである。したがって、構造的相同体は、実質的に構造的に同様である分子である。これらは同一でよい。機能的相同体は、実質的に機能的に同様である分子である。これらは同一でよい。
【0367】
本発明のグリカン相互作用抗体は、コンジュゲートを含み得る。本発明のこのようなコンジュゲートは、天然物質またはリガンド、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、もしくはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンもしくはヒアルロン酸);または脂質を含み得る。リガンドはまた、組換えまたは合成分子、例えば、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)であり得る。ポリアミノ酸の例は、ポリリシン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンである。ポリアミンの例は、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、プソイドペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣物ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはアルファヘリックスペプチドを含む。
【0368】
コンジュゲートはまた、標的化基、例えば、細胞または組織標的化剤または基、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、特定の細胞型、例えば、腎細胞に結合する抗体を含むことができる。標的化基は、サイロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化されたポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、ホレート、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣物またはアプタマーでよい。
【0369】
標的化基は、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、コリガンドへの特異親和性を有する分子、または抗体、例えば、特定の細胞型、例えば、がん細胞、内皮細胞、もしくは骨細胞に結合する抗体でよい。標的化基はまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含み得る。これらはまた、非ペプチド性種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、またはアプタマーを含むことができる。
【0370】
標的化基は、特異的受容体を標的とすることができる任意のリガンドでよい。例には、これらに限定されないが、ホレート、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDL、およびHDLリガンドが含まれる。特定の実施形態では、標的化基は、アプタマーである。アプタマーは、無改変であるか、または本明細書において開示されている改変の任意の組合せを有することができる。
【0371】
また他の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、細胞透過性ポリペプチドに共有結合的にコンジュゲートしている。細胞透過性ペプチドはまた、シグナル配列を含み得る。本発明のコンジュゲートは、増加した安定性;増加した細胞トランスフェクション;および/または変化した体内分布(例えば、特定の組織もしくは細胞型を標的とする)を有するように設計することができる。
【0372】
コンジュゲート部分は、クリアランスのために標的を標識するかまたはフラグ付けすることを可能とするようにグリカン相互作用抗体に加えてもよい。このようなタグ付け/フラグ付け分子には、これらに限定されないが、ユビキチン、蛍光分子、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)、c-myc[配列EQKLISEEDL(配列番号265)を有するヒト癌原遺伝子mycの10個のアミノ酸セグメント]、ヒスチジン(His)、フラグ[配列DYKDDDDK(配列番号266)の短いペプチド]、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、V5(サルウイルスの5つのエピトープのパラミクソウイルス)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびジゴキシゲニンが含まれる。
【0373】
一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、疾患または状態の処置において、互いにまたは他の分子と合わせ得る。
核酸
本発明は、核酸分子を包含する。一部の実施形態では、核酸は、本発明の抗体(これらに限定されないが、抗体、抗体フラグメント、細胞内抗体およびキメラ受容体抗原を含めた)をコードする。このような核酸分子には、これらに限定されないが、DNA分子、RNA分子、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、mRNA分子、ベクター、プラスミドおよび他の構築物が含まれる。本明細書において使用する場合、用語「構築物」は、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、自己複製ポリヌクレオチド分子、または直鎖状もしくは円状の一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNAポリヌクレオチド分子を含めた任意の組換え核酸分子を指す。本発明はまた、グリカン相互作用抗体をコードする核酸分子を発現するようにプログラムされているかまたは生じた細胞を包含する。このような細胞は、トランスフェクション、電気穿孔、ウイルス送達などの使用によって生じさせ得る。本発明の構築物と共に工学処理されるウイルスには、これらに限定されないが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびファージが含まれてもよい。場合によって、本発明の核酸は、コドンが最適化された核酸を含む。コドンが最適化された核酸を生じさせる方法は当技術分野において公知であり、これらに限定されないが、そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,786,464号明細書および同第6,114,148号明細書に記載されているものが含まれてもよい。一部の実施形態では、核酸配列は、タンパク質発現が改善されるか、または潜伏スプライス部位が除去されるように最適化されたコドンである。
【0374】
II、方法および使用
本開示の方法には、これらに限定されないが、治療目的、診断目的、定量目的、バイオプロセシング目的、実験目的、および/または調査目的のための1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体を利用する方法が含まれる。このようなグリカン相互作用抗体は、抗STn抗体を含み得る。
【0375】
治療剤
がん関連用途
異常なグリコシル化は、がん細胞形質転換の顕著な特徴である。特異的腫瘍ターゲッティングに適した1クラスの細胞表面分子として特定の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)を同定する複数の異常なグリコシル化形態が、ヒトがんにおいて記載されてきた(チーバー,M.A.(Cheever,M.A.)ら著、臨床がんリサーチ(Clin Cancer Res.)、2009年9月1日;15巻(17号):5323~37頁)。TACA抗原発現は、これらに限定されないが、乳房、結腸、肺、膀胱、子宮頸部、卵巣、胃、前立腺、および肝臓を含めた上皮がんにおいて見出されてきた。TACA抗原発現は、これらに限定されないが、卵黄嚢腫瘍および精上皮腫を含めた胎児性がんにおいて見出されてきた。さらに、TACA抗原発現は、様々な組織の多くの黒色腫、癌腫、および白血病において見出されてきた(ヘインバーグ-モリナロ(Heimburg-Molinaro)ら著、ワクチン(Vaccine.)、2011年11月8日:29巻(48号):8802~8826頁)。1つもしくは複数のTACAを標的とする本発明の抗体は、本明細書において、「抗TACA抗体」と称される。
【0376】
MUC1は、通常広範にグリコシル化されているが、腫瘍細胞においてグリコシル化が不十分である重要な細胞表面糖タンパク質である。MUC1の僅かなグリコシル化は、免疫原性抗原の曝露をもたらす。これらは、MUC1コアペプチド配列に沿って、またはコア炭水化物残基に沿ってであり得る。これらのTACAには、これらに限定されないが、N-アセチルガラクトサミン(Tn)、シアリル(α2,6)N-アセチルガラクトサミン(STn)およびガラクトース(β1-3)N-アセチルガラクトサミン(トムゼン-フリーデンライヒ抗原またはTFとしてもまた公知である)が含まれる。全ての癌腫の約80%は、MUC1のコア炭水化物においてTnを発現しており、STnはヒト癌腫細胞上に強く発現しており、かつがんの進行および転移と連結していると推定されてきた。殆ど例外なく、TnおよびSTnは、正常な健常組織において発現していない。シアル酸は、STn上で顕著なエピトープを形成する。本発明は、異常なNeu5Gc-STn(GcSTn)グリカン発現が様々な癌腫に高度に特異的であるようであるという事実を利用する。
【0377】
MUC1の場合、STnへのNeu5Gc組込みは、腫瘍組織を処置する抗体をベースとする治療のための魅力的な標的である部位である、腫瘍特異的標的を生じさせる。本発明の一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、Neu5Gcを含む、MUC1を発現しているがん細胞を標的とする。現在まで、Neu5Gcは、これらに限定されないが、結腸がん、網膜芽細胞腫組織、黒色腫、乳がんおよび卵黄嚢腫瘍組織を含めたいくつかのヒトがん組織からのグリココンジュゲートにおいて検出されてきた。本発明の一部の実施形態では、Neu5Gcを含むがん細胞の存在によって特徴付けられる、これらの形態のがん、およびここで特に列挙されていない他の形態のがんのグリカン相互作用抗体処置のための方法が意図される。
【0378】
がんと相関して発現されている、グリカンを含むさらなる抗原が同定されてきた(ヘインバーグ-モリナロ,J.(Heimburg-Molinaro,J.)ら著、がんワクチンおよび炭水化物エピトープ。(Cancer vaccines and carbohydrate epitopes.)、ワクチン(Vaccine.)、2011年11月8日;29巻(48号):8802~26頁)。これらの腫瘍関連炭水化物抗原には、これらに限定されないが、血液型ルイス関連抗原[これらに限定されないが、ルイス(Le)、ルイス(Le)、シアリルルイス(SLe)およびシアリルルイス(SLe)を含めた]、スフィンゴ糖脂質関連抗原[これらに限定されないが、グロボH、ステージ特異的胎児抗原-3(SSEA-3)、およびシアル酸を含むスフィンゴ糖脂質を含めた]、ガングリオシド関連抗原[これらに限定されないが、ガングリオシドGD2、GD3、GM2、フコシルGM1およびNeu5GcGM3を含めた]、ならびにポリシアル酸関連抗原が含まれる。
【0379】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、ルイス血液型抗原に対して方向付け得る。ルイス血液型抗原は、α1-3連結またはα1-4連結によってGlcNAcに連結しているフコース残基を含む。これらは、糖脂質および糖タンパク質の両方上で見出し得る。ルイス血液型抗原は、これらの抗原の分泌者である個体の体液において見出し得る。赤血球上でのこれらの出現は、赤血球による血清からのルイス抗原の吸収によるものである。
【0380】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、Leに対して方向付け得る。Le(CD174としてもまた公知である)は、Galβ1,4GlcNACで構成されており、α1,2-およびα1,3-連結フコース残基を含み、Fucα(1,2)Galβ(1,4)Fucα(1,3)GlcNAcエピトープを生じさせる。これは、α1,3フコースを親鎖のGlcNAc残基に付着させるα1,3フコシルトランスフェラーゼによってH抗原から合成される。Leは、これらに限定されないが、卵巣、乳房、前立腺、結腸、肺および上皮を含めた種々のがんにおいて発現し得る。正常組織におけるその低発現レベルおよび多くのがんにおける上昇した発現レベルによって、Le抗原は、治療用抗体についての魅力的な標的である。
【0381】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、Leに対して方向付け得る。Leは、エピトープGalβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ-Rを含む。これはまた、CD15およびステージ特異的胎児抗原-1(SSEA-1)として公知である。この抗原は、F9奇形癌細胞による免疫化に供したマウスから採取した血清と免疫反応性であると最初に認識された。Leはまた、特定の段階における胚発生と相関することが見出された。これはまた、がんの存在下および非存在下の両方において種々の組織において発現しているが、また乳がんおよび卵巣がんにおいて見出すことができ、ここではこれはがん性細胞によってのみ発現されている。
【0382】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、SLeおよび/またはSLeに対して方向付け得る。SLeおよびSLeは、それぞれ、構造Neu5Acα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ-RおよびNeu5Acα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ-Rを含む。これらの発現は、がん細胞においてアップレギュレートされる。血清におけるこれらの抗原の存在は、悪性腫瘍および予後不良と相関する。SLeは、ムチン末端エピトープとして大部分は見出される。これは、乳房、卵巣、黒色腫、結腸、肝臓、肺および前立腺を含めたいくつかの異なるがんにおいて発現している。本発明の一部の実施形態では、SLeおよびSLe標的は、Neu5Gc(本明細書において、それぞれ、GcSLeおよびGcSLeと称される)を含む。
【0383】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、糖脂質および/またはこれらに限定されないが、スフィンゴ糖脂質を含めた糖脂質上に存在するエピトープに対して方向付け得る。スフィンゴ糖脂質は、セラミドヒドロキシル基によってグリカンに連結した脂質セラミドを含む。細胞膜上で、スフィンゴ糖脂質は、「脂質ラフト」と称されるクラスターを形成する。
【0384】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、グロボHに対して方向付け得る。グロボHは、乳がん細胞において最初に同定されたがんに関連するスフィンゴ糖脂質である。グロボHのグリカン部分は、Fucα(1-2)Galβ(1-3)GalNAcβ(1-3)Galα(1-4)Galβ(1-4)Glcβ(1)を含む。いくつかの正常な上皮組織において見出されるが、グロボHは、これらに限定されないが、小細胞肺、乳房、前立腺、肺、膵臓、胃、卵巣および子宮内膜の腫瘍を含めた多くの腫瘍組織と関連して同定されてきた。
【0385】
一部の実施形態では、本発明の治療剤は、ガングリオシドに対して方向付け得る。ガングリオシドは、1種もしくは複数のシアル酸を含むスフィンゴ糖脂質である。ガングリオシドの命名法によると、Gは、ガングリオシドについての略語として使用される。この略語に、付着しているシアル酸残基の数(それぞれ、1、2または3)を意味する文字M、D、またはTが続く。最後に、数1、2または3は、薄層クロマトグラフィーによって分析したときに、それぞれが移動した距離の順序を指すために使用される(ここで、3は最も長い距離を移動し、それに続いて、2、次いで、1である)。ガングリオシドは、がんに関連する成長および転移に関与していることが公知であり、腫瘍細胞の細胞表面上に発現し得る。腫瘍細胞上で発現しているガングリオシドには、これらに限定されないが、GD2、GD3、GM2およびフコシルGM1(本明細書において、Fuc-GM1とまた称される)が含まれてもよい。本発明の一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、GD3に対して方向付けされる。GD3は、細胞成長のレギュレーターである。一部の実施形態では、GD3に向けられる抗体を使用して、細胞成長および/または血管形成をモジュレートする。一部の実施形態では、GD3に向けられる抗体を使用して、細胞付着をモジュレートする。本発明の一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、GM2に対して方向付けられる。一部の実施形態では、GM2に向けられる抗体を使用して、細胞と細胞の接触をモジュレートする。一部の実施形態では、本発明のガングリオシド標的は、1個もしくは複数のNeu5Gc残基を含む。一部の実施形態では、このような標的は、Neu5Gcを有するGM3バリアント(本明細書において、GcGM3と称される)を含み得る。GcGM3のグリカン構成要素は、Neu5Gcα2-3Galβ1-4Glcである。GcGM3は、腫瘍細胞の公知の構成要素である。
【0386】
一部の実施形態では、本発明の抗TACA抗体によって標的とされるTACAには、これらに限定されないが、そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2013/0236486A1号明細書、同第2013/0108624A1号明細書、同第2010/0178292A1号明細書、同第2010/0104572A1号明細書、同第2012/0039984A1号明細書、同第2009/0196916A1号明細書、および同第2009/0041836A1号明細書において列挙されているもののいずれかが含まれてもよい。
【0387】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書において教示される抗グリカン抗体の投与、またはこのような抗体の組成物(例えば、少なくとも1種の添加剤を有する抗グリカン抗体の組成物)の投与を含む、がんを処置する方法を提供する。
【0388】
一部の実施形態では、本開示の方法は、腫瘍細胞を完全に根絶して、1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体の投与による長期の最初の寛解を誘発することを含む。他の方法は、ある期間、場合によって、過剰な毒性を伴わずに腫瘍の復活を阻害することを含む。このような期間は、約1カ月~約18カ月、約1年~約5年、約2年~約10年、または10年超であり得る。
【0389】
がんにおけるSTn
免疫系は、先天性免疫および適応免疫活性の両方を含めた抗腫瘍細胞免疫活性を促進するための複数の機序を有する。本明細書において使用する場合、用語「抗腫瘍細胞免疫活性」は、腫瘍細胞を死滅させ、または腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を防止する免疫系の任意の活性を指す。場合によって、抗腫瘍免疫活性は、ナチュラルキラー(NK)細胞による認識および腫瘍細胞死滅、ならびにマクロファージによる食作用を含む。適応抗腫瘍免疫応答は、腫瘍抗原取込み、および抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞(DC)による提示を含み、T細胞抗腫瘍活性のモジュレーションおよび/または腫瘍特異的抗体の分泌によるB細胞の増殖をもたらす。腫瘍への腫瘍特異的抗体の結合は、腫瘍細胞死の抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)機序をもたらすことができる。
【0390】
本明細書において使用する場合、用語「免疫耐性腫瘍細胞」は、抗腫瘍細胞免疫活性を低減させるか、または逃れる腫瘍細胞を指す。いくつかの研究は、腫瘍細胞表面上、もしくは腫瘍細胞微小環境中に分泌されたSTn(公知のTACA)の発現が、抗腫瘍免疫活性の腫瘍細胞の回避を促進することができることを示す。本明細書において使用する場合、用語「腫瘍細胞微小環境」は、腫瘍細胞に隣接するかその周囲の任意のエリアを指す。このようなエリアには、これらに限定されないが、腫瘍細胞の間、腫瘍および非腫瘍細胞の間、細胞外マトリックスの周囲の液体および周囲の構成要素のエリアが含まれる。
【0391】
STnを有するシアル酸付加されたムチンは、オガタ(Ogata)らによって腫瘍細胞のNK細胞標的化を低減させることが示された(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、オガタ,S.(Ogata,S.)ら著、1992年、がんリサーチ(Canc.Res.)、52巻:4741~6頁)。ヒツジ、ウシおよびブタの顎下ムチン(それぞれ、OSM、BSMおよびPSM)の存在が、細胞毒性の概ね100パーセント阻害をもたらしたことをこの研究によって見出された(オガタ(Ogata)らの表2を参照されたい)。ジャンダス(Jandus)らによるさらなる研究は、いくつかの腫瘍細胞が、NK細胞シグレック受容体と相互作用し、NK阻害をもたらすことができるシアログリカンリガンドの発現によってNK破壊を逃れることができることを示す(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ジャンダス,C.(Jandus,C.)ら著、2014年、JCI.pii:65899)。
【0392】
トダ(Toda)らによる研究は、STnが、B細胞上のCD22受容体を結合し得、シグナル伝達の減少およびB細胞活性化の低減をもたらすことを示す(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、トダ,M.(Toda,M.)ら著、2008年、生化学および生物物理学のリサーチコミュニケーション(Biochem Biophys Res Commun.)、372巻(1号):45~50頁)。樹状細胞(DC)は、T細胞活性をモジュレートすることによって適応免疫活性に影響を与えることができる。カラスカル(Carrascal)らによる研究は、膀胱がん細胞によるSTn発現がDCにおける耐性を誘発し、T細胞における抗腫瘍細胞免疫活性を誘発するこれらの能力を低減させたことが見出された(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、カラスカル,MA(Carrascal,MA)ら著、2014年、分子腫瘍学(Mol Oncol.)、pii:S1574-7891巻(14号)、00047~7頁)。STn陽性膀胱がん細胞と接触したDCが、CD80、CD86、IL-12およびTNF-αの低発現を伴ってトロリジェニック発現プロファイルを示したことをこれらの研究は明らかにした。さらに、DCは、T細胞が低発現のIFNγおよび高発現のFoxP3を有するように、調節性T細胞をモジュレートすることが見出された。ファンフリート(van Vliet)およびその他による他の研究は、マクロファージガラクトース型レクチン(MGL)のDC表面発現が、腫瘍組織へのこれらの細胞の標的化をもたらすことができることを示す(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、バンブリエット,SJ.(van Vliet,SJ.)、2007年、アムステルダム:アムステルダム自由大学(Vrije Universiteit.)、1~232頁およびバンブリエット,SJ.(van Vliet,SJ.)ら著、2008年、免疫学ジャーナル(J Immunol.)、181巻(5号):3148~55頁、ノロー,P.(Nollau,P.)ら著、2013年、組織化学および細胞化学ジャーナル(J Histochem Cytocnhem.)、61巻(3号):199~205頁)。MGL相互作用によって組織に到達するDCは、3つの方法の1つにおいてヘルパーT(Th)細胞に影響を与え得る。DCは、T細胞耐性、T細胞免疫活性、またはエフェクターT細胞のダウンレギュレーションを誘発し得る。MGLは、AcSTnおよびGcSTnの両方に結合することが示されてきており、親和性は徹底的に分析されてきた(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、モルテツァイ,N.(Mortezai,N.)ら著、2013年、糖生物学(Glycobiology.)、23巻(7号):844~52頁)。興味深いことに、腫瘍上のMUC1発現は、T細胞耐性をもたらし、腫瘍細胞を免疫根絶から保護することを示した。
【0393】
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体(これらに限定されないが、抗STn抗体を含めた)は、1種もしくは複数のTACAを発現している1個もしくは複数の腫瘍細胞を有する対象を処置するために使用し得る。場合によって、本発明のグリカン相互作用抗体(これらに限定されないが、抗STn抗体を含めた)は、STnを発現している腫瘍細胞に対する抗腫瘍細胞免疫活性を増加させるために使用し得る。このような抗体は、免疫耐性腫瘍細胞に対する適応性免疫応答および/または先天性免疫応答を増加し得る。いくつかのグリカン相互作用抗体は、NK抗腫瘍細胞活性を増加させるために使用し得る。このようなグリカン相互作用抗体は、場合によって、NK細胞上に発現しているグリカン受容体、およびがん細胞上または周辺組織中のSTnグリカンの間の相互作用をブロックし得る。
【0394】
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体(これらに限定されないが、抗STn抗体を含めた)は、B細胞抗腫瘍細胞活性を増加させるために使用し得る。このような抗体は、B細胞上のCD22受容体、およびがん細胞上または周辺組織中のSTnグリカンの間の相互作用を低減し得る。シェーベリ(Sjoberg)らによる研究は、糖タンパク質上のα2,6-連結シアル酸の9-O-アセチル化がまた、B細胞CD22受容体およびこのような糖タンパク質の間の相互作用を低減させたことを示す(シェーベリ,E.R.(Sjoberg,E.R.)ら、1994年、JCB.126巻(2号):549~562頁)。シ(Shi)らによる別の研究は、マウスの赤白血病細胞上のより高いレベルの9-O-アセチル化シアル酸残基によって、これらの細胞が、補体媒介の溶解の影響をより受けやすくなることを明らかにした(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、シ,W-X.(Shi,W-X.)ら著、1996年、生物化学ジャーナル(J of Biol Chem.)、271巻(49号):31526~32頁)。一部の実施形態では、本発明の抗STn抗体は、非9-O-アセチル化STnを選択的に結合することができ、全体的なSTn結合を低減させるが、腫瘍細胞成長および/または増殖を低減させる。(例えば、増加したB細胞抗腫瘍活性および増加した補体媒介の腫瘍細胞破壊による)。一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体(これらに限定されないが、抗STn抗体を含めた)は、DC抗腫瘍活性を増加させるために使用し得る。このような抗体は、腫瘍細胞に対するDC耐性を低減させるために使用し得る。低減したDC耐性は、CD80、CD86、IL-12および/またはTNF-αの増加するDC発現を含み得る。場合によって、DC抗腫瘍細胞活性は、T細胞抗腫瘍細胞活性の促進を含み得る。このような抗体は、DC MGLおよび、がん細胞上もしくは周りに発現しているグリカンの間の結合を防止し得る。
【0395】
イブラヒム(Ibrahim)らによる研究は、内分泌療法を伴う高レベルの抗STn抗体が、転移性乳がんを有する女性において全生存期間および無増悪期間(TTP)を増加し得ることを示唆する(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、イブラヒム,N.K.(Ibrahim,N.K.)ら著、2013年、4巻(7号):577~584頁)。この研究において、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に連結したSTnによるワクチン接種の後で、抗STn抗体レベルは上昇した。一部の実施形態では、本発明の抗STn抗体は、内分泌療法(例えば、タモキシフェンおよび/またはアロマターゼ阻害剤)と組み合わせて使用し得る。
【0396】
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、がん性細胞および/またはSTnを発現している細胞を低減または排除するために使用し得る。このような細胞は、腫瘍の部分であり得る細胞を含む。
【0397】
場合によって、本発明は、1つもしくは複数の腫瘍を有する対象に本発明の抗グリカン抗体を投与することによって腫瘍体積を低減させる方法を提供する。腫瘍体積の低減は、処置の前および後の対象における腫瘍体積を比較することによって、または抗グリカン抗体で処置された対象および対照で処置された対象の間の腫瘍体積を比較することによって決定し得る。
【0398】
場合によって、本発明の抗グリカン抗体は、対象における腫瘍体積の所望の低減パーセントを達成するために投与し得る。これは、抗グリカン抗体による処置の前および後の対象において1つもしくは複数の腫瘍の容量を決定し(例えば、カリパスまたはイメージング技術、例えば、CTスキャンの使用による)、次いで、2つの値からの腫瘍体積の低減パーセントを計算することによってアセスメントし得る。一部の実施形態では、抗グリカン抗体で処置されている対象における腫瘍体積は、約0.1%~約2%、約1%~約5%、約3%~約12%、約10%~約30%、約20%~約50%、約40%~約60%、約50%~約75%、約60%~約85%、または約80%~約99%低減し得る。場合によって、抗グリカン抗体で処置されている対象における腫瘍体積は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減し得る。
【0399】
場合によって、本発明の抗グリカン抗体は、所望の腫瘍成長阻害パーセント(T/C%)を達成するために投与し得る。T/C%は、処置されている対象において腫瘍体積を決定し、これらを非処置対象またはプラセボ処置対象における腫瘍体積と比較することによって計算する。一部の実施形態では、本発明は、抗グリカン抗体を投与することによって対象において腫瘍体積を低減させる方法を提供し、ここで、T/C%は、約0.1%~約1%、約0.5%~約5%、約2%~約20%、約3%~約16%、約10%~約30%、約20%~約60%、または約40%~約80%である。場合によって、T/C%は、少なくとも80%である。場合によって、T/C%は、0.1%未満である。
【0400】
一部の実施形態では、対象における腫瘍体積を低減させるために使用される抗体は、細胞表面グリカン(例えば、STn)を結合するこれらの能力、および/またはがん性細胞を死滅されるこれらの能力に基づいて選択し得る。場合によって、抗体は、細胞表面STnを有する細胞を結合するためのこれらの最大半量有効濃度(EC50)に基づいて選択し得る。このような抗体についてのEC50値は、例えば、細胞表面STnを有する細胞によるフローサイトメトリー分析によって決定し得る。このような抗体は、約0.1nM~約2nM、約0.5nM~約5nM、約1nM~約10nM、約5nM~約20nM、または約10nM~約30nMのEC50値を有し得る。
【0401】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書において提示する1種もしくは複数の抗体を投与することによって、がん細胞、例えば、腫瘍細胞を死滅させる方法を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、がん細胞(これらに限定されないが、がん幹細胞を含めた)を単離し、かつ/または対象から生検材料を得て、STn発現についてがん細胞および/または生検材料をスクリーニングすることによって、抗STn抗体処置を必要としている対象を同定する方法を提供する。このような方法によると、STnを発現しているがん細胞および/または生検材料を有する対象は、抗STn抗体処置から恩恵を受ける可能性が高いか、または抗STn抗体処置(例えば、本明細書に記載されている1種もしくは複数の抗体による処置)を必要とすると見なされる。場合によって、本明細書に記載されている抗体は、がん細胞および/または生検材料のスクリーニングのために使用し得る。がん細胞は、がん細胞を培養し、標準的な免疫学的アッセイ(例えば、ELISA、ウエスタンブロット、または他の標準的な免疫学的アッセイ)を使用してSTn発現を検出することによって、in vitroでスクリーニングし得る。場合によって、がん細胞は、フローサイトメトリー技術を使用してSTn発現についてスクリーニングし得る。他の実施形態では、がん細胞は、培養液中で成長させ、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である抗STn抗体による処置の後、生存率について試験し得る。このようなADCは、これらに限定されないが、本明細書に記載されているものを含めた細胞毒性剤を含み得る。細胞毒性剤は、MMAEを含み得る。抗STn抗体は、これらに限定されないが、本明細書に記載されているものを含めたヒト化抗体を含み得る。他の実施形態では、がん細胞は、がん細胞を使用して、マウス(例えば、NOD/SCIDマウス)において腫瘍を形成させることによってスクリーニングし得る。マウスにおいて発生した腫瘍は、このような腫瘍から組織切片を調製し、これらに限定されないが、本明細書に記載されている抗STn抗体を含めた抗STn抗体を使用して組織切片を免疫組織化学分析に供することによってスクリーニングし得る。場合によって、マウスにおいて形成された腫瘍は、これらに限定されないが、本明細書に記載されている抗STn抗体を含めた抗STn抗体によるマウスの処置の後に、腫瘍体積の変化についてアセスメントし得る。このような抗STn抗体は、ADCを含み得る。ADCは、これらに限定されないが、本明細書に記載されているもののいずれか(例えば、MMAE)を含めた1種もしくは複数の細胞毒性剤を含み得る。スクリーニングの後にSTn発現を示すがん細胞を有する対象は、抗STn抗体処置を必要としていると決定し得る。
【0402】
一部の実施形態では、本開示は、対象からがん細胞(これらに限定されないが、がん幹細胞を含めた)を単離し、STn発現についてがん細胞をスクリーニングし、STnを発現しているがん細胞と、STnに対して特異的な1種もしくは複数の候補抗体とを接触させ、1種もしくは複数の候補抗体のいずれかががん細胞を結合することができるかを決定することによって、がんを処置するのに適した抗体を同定する方法を提供する。本明細書において使用する場合、用語「候補抗体」は、1つもしくは複数の目的について評価されている抗体または抗体の群の1つを指す。対象がん細胞は、標準的な免疫学的アッセイ(例えば、ELISA、ウエスタンブロット、もしくは他の標準的な免疫学的アッセイ)によるSTn検出抗体を使用して、またはフローサイトメトリー技術を使用して、がん細胞を培養し、STn発現を検出することによってin vitroでスクリーニングし得る。本明細書において使用する場合、用語「STn検出抗体」は、STnを結合し、かつ組み込まれた検出可能な標識の存在によって、または検出可能な標識を有する二次抗体の使用によって、このような結合の観察を可能とする抗体を指す。他の実施形態では、がん細胞をスクリーニングすることは、これらを使用して、マウス(例えば、NOD/SCIDマウス)において腫瘍を形成することが関与し得る。スクリーニングは、これらに限定されないが、ADCを含めた抗STn抗体の投与の後で、STnの発現についてまたは体積の低減について、マウス腫瘍をアセスメントすることによって行い得る。
【0403】
一部の実施形態では、本発明は、対象からのがん細胞を得て、がん細胞を使用してマウス(例えば、NOD/SCIDマウス)において腫瘍を形成させ、抗STn抗体をマウスに投与し、マウスにおける腫瘍体積の変化を測定することによって、対象においてがんを処置するための抗体の適合性を評価する方法を含み、マウスにおける腫瘍体積が減少する場合、抗STn抗体は、対象においてがんを処置するのに有用であると決定される。場合によって、抗STn抗体は、複数回投与される。このような方法によって、抗体は、毎時、毎日、毎週、毎月、および/または毎年投与し得る。場合によって、抗体は、約2~約12週間の期間、毎週投与される。場合によって、抗体は、少なくとも12週間の期間、毎週投与される。
【0404】
STn発現は、がん細胞の転移能の一因となることにおいて結び付けられてきた。本開示のいくつかの方法によると、グリカン相互作用抗体は、転移を低減させるために使用し得る。このような方法は、約1%~約15%、約5%~約25%、約10%~約50%、約20%~約60%、約30%~約70%、約40%~約80%、約50%~約90%、約75%~約95%、または少なくとも95%の転移の低減を含み得る。
【0405】
治療標的としてのがん幹細胞
がん幹細胞またはCSC(腫瘍開始細胞とまた称される)は、原発性および転移性腫瘍の開始、成長、蔓延、および再発を推進する不均一な腫瘍集団内のがん細胞のサブセットであり(カルステン(Karsten)およびゴレツ(Goletz)、シュプリンガープラス(SpringerPlus)、2013年、2巻、301頁)、これは腫瘍タイプによって変動する割合の総集団において起こり得る。CSCは、自己再生し、非CSC、分化した子孫を生じさせるそれらの能力によって、最終分化細胞と区別される(グプタ(Gupta)ら著、ネイチャーメディシン(Nature medicine)、2009年、15巻、1010~1012頁)。これらの特性は、正常な幹細胞の特性と類似している。正常な幹細胞およびCSCの間のこのような区別は、治療のための重要な意味を有する。
【0406】
これらの非CSCカウンターパートからCSCを分化すると主張する増加する数の細胞表面バイオマーカーが同定されてきた(メデマ(Medema)ら著、ネイチャー細胞生物学(Nature cell biology)、2013年、15巻、338~344頁;ゾラー(Zoller)、がん(Cancer)、2011年、11巻、254~267頁)。これらは、これらに限定されないが、CD44、CD133、CD117、およびアルデヒドデヒドロゲナーゼアイソフォーム1(ALDH1)を含み得る。これらのいくつかはマウス腫瘍およびヒト細胞系の研究に由来するが、その他は原発性ヒト腫瘍試料を使用して検証されてきた。これらの1つである膜貫通CD44糖タンパク質、または種々の腫瘍タイプの周知の構成物であるヒアルロナン受容体はまた、ヒトがんにおける真実のCSCマーカーとして最近認められてきており、実際、最も頻繁に観察されるものである(ロボ(Lobo)ら著、2007年、23巻、675~699頁)。
【0407】
CD44は、完全長CD44遺伝子の20個のエクソンおよび19個のイントロンの間で起こる選択的スプライシング事象によって生じるいくつかのバリアントアイソフォームで存在する(ウィリアムズ(Williams)ら著、実験生物学および医薬(Experimental biology and medicine)、2013年、238巻、324~338頁)。増大する実験的根拠は、部分的に、細胞内シグナル伝達経路のモジュレーションによって(ウィリアムズ(Williams)ら著、実験生物学および医薬(Experimental biology and medicine)、2013年、238巻、324~338頁)、CSCの生得的な転移性および薬物耐性表現型をもたらすことにおけるCD44およびそのバリアントの支持をする役割に注意が向いている(Negiら著、薬物ターゲッティングジャーナル(Journal of drug targeting)、2012年、20巻、561~573頁)。さらに、高レベルのCD44細胞を示す、いくつかの他のがんタイプと共に、三種陰性乳がんを有する患者は、予後不良およびより高い死亡率を有することが公知である(Negiら著、薬物ターゲッティングジャーナル(Journal of drug targeting)、2012年、20巻、561~573頁)。これらの観察は、CD44を標的とすることは、成熟がん細胞に加えてCSCの阻害または排除によってがんを処置する手段を提供するという概念を支持する。実際に、CD44を標的とする多数のアプローチは、変動する程度の成功を伴って実験的に試みされてきた。これらは、コンジュゲートしている抗体およびコンジュゲートしていない抗体、ナノ担体薬物系、およびヒアルロナンがコンジュゲートした薬物の使用を含む広範囲の技術を含む(Negiら著、薬物ターゲッティングジャーナル(Journal of drug targeting)、2012年、20巻、561~573頁)。しかし、いくつかの場合では、毒性効果がin vivoでの研究において観察された。これらの有害な副作用は、標的とされるCSCおよび成熟腫瘍細胞の表面上のその存在に加えて、大部分の脊椎動物細胞の膜上のCD44およびバリアントの広範な出現に起因し得る(ナオール(Naor)ら著、がん生物学のセミナー(Seminars in cancer biology)、2008年、18巻、260~267頁)。正常なヒト幹細胞の構成物であるCD44タンパク質を標的とすることは(ウィリアムズ(Williams)ら著、実験生物学および薬物(Experimental biology and medicine)、2013年、238巻、324~338頁)また、正常な幹細胞機能を害し得る(レス-ラーセン(Leth-Larsen)ら著、分子医学(Molecular medicine)、2012年、18巻、1109~1121頁)。大規模リサーチはCSC上および成熟腫瘍細胞上のCD44タンパク質を標的とする望ましさを指摘するが、このアプローチに関連する固有の問題は、正常組織および正常な幹細胞を残す阻害剤を設計することにおける現在の困難が残ることである。
【0408】
CSC生物学への意味を伴う別の周知の腫瘍抗原は、腺癌の大部分上では高レベルで異なって発現しているが、正常な上皮細胞上では低レベルで発現しているか、または全く発現していない、膜に繋ぎ止められた糖タンパク質である上皮のムチンMUC1である。MUC1は最近、乳がん(エンゲルマン(Engelmann)ら著、がんリサーチ(Cancer research)、2008年、68巻、2419~2426頁)、および膵臓がんを含めた種々の新組織形成に対するCSCバイオマーカーとして同定されてきており、その発現は、高い転移および予後不良と相関する。CSCの構成物として、MUC1は、細胞接着、増殖、生存、およびシグナル伝達において機能することが示されてきており(エンゲルマン(Engelmann)ら著、がんリサーチ(Cancer research)、2008年、68巻、2419~2426頁)、またCD44と共に共発現し得る(レス-ラーセン(Leth-Larsen)ら著、分子医学(Molecular medicine)、2012年、18巻、1109~1121頁)。がんにおいてMUC1を標的とする免疫療法アプローチが、ワクチンおよび他のアプローチを使用して探究されているが、主に、成熟がん細胞治療との関連である(Julien(ジュリアン)ら著、生体分子(Biomolecules)、2012年、2巻、435~466頁;アクレス(Acres)ら著、ワクチンのエキスパートレビュー(Expert review of vaccines)、2005年、4巻、493~502頁)。
【0409】
がん幹細胞は、上皮間葉(EMT)転換(グプタ(Gupta)ら著、ネイチャーメディシン(Nature medicine)、2009年、15巻、1010~1012頁)、および/または逆に、転移の部位において起こる間葉上皮(MET)転換(レス-ラーセン(Leth-Larsen)ら著、分子医学(Molecular medicine)、2012年、18巻、1109~1121頁)(CSC可塑性とまた称され、非CSCはCSCを生じさせることができる)によって生じると仮定されてきた。この発見は、腫瘍集団においてCSCおよび非CSCの両方を排除する必要性をさらに強調する。
【0410】
濃縮されたCSC集団による最近の研究によって、これらの細胞が、腫瘍の塊とは異なり、相対的に静止状態であり、化学療法および放射線を含めた多くのタイプの現在の治療に対して優先的に耐性であることが明らかになってきた(レス-ラーセン(Leth-Larsen)ら著、分子医学(Molecular medicine)、2012年、18巻、1109~1121頁)。このように、現在の治療方針は、腫瘍の非CSC構成要素を標的とし、CSCを殆ど影響されないままとし、適当なきっかけの後で再出現して、最初の部位において再発性原発性腫瘍を再編成するか、または遠い部位に蔓延し、コロニー形成し、がん死亡の主要な原因である転移性疾患を生じさせる。
【0411】
がん幹細胞の特性の現在の理解は明らかに、完全な治癒を潜在的にもたらすために、現在実践されているように腫瘍中に存在する細胞の塊のみでなく、CSCコンパートメントもまた標的とする必要性を強調した。
【0412】
上記で考察するように、腫瘍(CSCを含む)関連バイオマーカーに基づいて開発されてきた戦略は、大部分のがんバイオマーカーがまた、正常な幹細胞を含めた正常細胞中に存在するという難問に直面している。CSCを排除するためにタンパク質バイオマーカーを標的とする治療はまた、正常な幹細胞を標的とし、正常細胞の排除をもたらし得る。
【0413】
CSCにおける腫瘍特異的グリカン
特異的腫瘍ターゲッティングに適した完全に新規なクラスの腫瘍関連炭水化物抗原としてグリカンを同定する、トムゼン-ヌーヴォー(Tn)抗原(GalNAc-O-Ser/Thr)の出現を含むグリコシル化の異常な形態が、多数のヒトがんにおいて記載されてきた(ラブ(Rabu)ら著、将来の腫瘍学(Future oncology)、2012年、8巻、943~960頁)。Tn(STn)のシアリル誘導体の形成は、Tn抗原にα2,6連結におけるシアル酸を加えるシアリルトランスフェラーゼST6GalNAc-Iによって媒介される。STnのシアル酸付加はさらなる糖添加を防止し、このようにさらなるグリカン延長部を切り詰める(シュルツ(Schultz)ら著、がん転移レビュー(Cancer metastasis reviews)、2012年、31巻、501~518頁)。
【0414】
正常な成人ヒト組織におけるSTnの存在はまれである一方、STnは、とりわけ、卵巣、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、および肺がんを含めた様々なヒトがんにおいて発生する(Ferreira(ファレイラ)ら著、分子腫瘍学(Molecular oncology)、2013年、7巻、719~731頁;Kinney(キニー)ら著、がん(Cancer)、1997年、80巻、2240~2249頁)。さらに、腫瘍におけるSTnの存在は、転移性疾患、予後不良、および全生存期間の低減と関連する(Ferreira(ファレイラ)ら著、分子腫瘍学(Molecular oncology)、2013年、7巻、719~731頁;Kinney(キニー)ら著、がん(Cancer)、1997年、80巻、2240~2249頁)。したがって、STnは、がん検出および治療のための高度に魅力的な標的であると考えられる。STnの末端位置において位置している2つの別個の形態のシアル酸(Neu5AcおよびNeu5Gc)が存在する。Neu5Ac-シアル酸付加形態は、ヒトが、不活性なCMP-Neu5Acヒドロキシラーゼ(CMAH)遺伝子によってNeu5Gcを合成することができないため、ヒトにおいて優勢である。しかし、Neu5Gcに富んだ食物の消費は、ヒト細胞への、特に、癌腫における異種Neu5Gc組込みをもたらす。従前の研究は、固形腫瘍がシアル酸のNeu5Gc形態を取り込み、発現することを示してきた(Inoueら著、糖生物学(Glycobiology)、2010年、20巻、752~762頁;Malykhら著、生化学(Biochimie)、2001年、83巻、623~634頁;パドラー-カラヴァニ(Padler-Karavani)ら著、がんリサーチ(Cancer research)、2011年、71巻、3352~3363頁)。mAbは、潜在的ながん標的であるSTnの両方のグリコアイソフォーム:Neu5Ac-STn(AcSTn)およびNeu5Gc-STn(GcSTn)に結合する(すなわち、汎STn抗体と命名される)。
【0415】
STn蓄積は、固形腫瘍において繰り返し観察される特定の体細胞変異と、および活性T-シンターゼの形成のために必要とされる分子シャペロンコア1ベータ3-ガラクトシルトランスフェラーゼ特異的分子シャペロン(COSMC)をコードする遺伝子の不活性化と関連している(ジュ(Ju)ら著、ネイチャー(Nature)、2005年、437巻、125頁)。T-シンターゼは、GalNAc基質についてST6GalNAc-Iと競合し、したがって、変異によって不活性化されるとき、STn合成の増加をもたらす。さらに、STn蓄積はまた、ST6GalNAc-Iの発現の増加に起因し得、これは観察されることが多い(ブロックハウゼン(Brockhausen)ら著、生物化学(Biological chemistry)、2001年、382巻、219~232頁;イケハラ(Ikehara)ら著、糖生物学(Glycobiology)、1999年、9巻、1213~1224頁)。STnの新規の発現は、癌腫細胞をモジュレートし、悪性の表現型を変化させ、より攻撃的な細胞挙動をもたらすことができる(ピンホー(Pinho)ら著、がんレター(Cancer letters)、2007年、249巻、157~170頁)。したがって、STnは、興味深いがんバイオマーカーおよび治療標的であるだけでなく、STn機能を妨げることは、かなりの機能的、抗転移性の治療上の利点を有するという興味深い可能性を提供する。
【0416】
細胞糖タンパク質のグリコシル化はがんにおいて変化していることは周知であるが、異常なグリコシル化は、問題になっている糖タンパク質およびグリカンの両方に関して選択的であるようである。実際は、ヒト腫瘍CSCにおいて、CD44およびMUC1のみは、STn抗原の主要な担体であり(カゼット(Cazet)ら著、乳がんリサーチ(Breast cancer research):BCR,2010年、12巻、204頁;Julien(ジュリアン)ら著、糖生物学(Glycobiology)、2006年、16巻、54~64頁)、成熟腫瘍細胞だけではなく、CSCもまた標的とするための選択的なアプローチを直ちに示唆する。MUC1は、これがバリア機能を果たすいくつかの上皮細胞の正常な表面構成物である一方、腫瘍関連MUC1は、成熟がん細胞において観察されるのと同じ様式でCSC上の低グリコシル化および増加したシアル酸付加によって特性決定され、STnはCSCおよび成熟腫瘍細胞の両方についての特異的マーカーとして現れる(カリー(Curry)ら著、外科的腫瘍学ジャーナル(Journal of surgical oncology)、2013年、107巻、713~722頁)。MUC1の異常なオリゴ糖類プロファイルは、ネオマーカー、例えば、シアリル-Le(CA19-9試験において使用)、シアリル-Le、およびシアリル-Tn(TAG-72)、ならびに潜在性エピトープ、例えば、がん細胞(例えば、CSC)におけるTnの発現を生じさせる。さらに、低グリコシル化によって、コア内のエピトープ(正常組織由来のMUC1内で到達可能でない)が潜在的な抗原としての役割を果たし得るように、ムチンのペプチドコアは曝露される。
【0417】
STnを標的とする臨床アプローチは、ここまではもっぱらSTnワクチンからなった。最も進行した臨床候補は、キーホールリンペットヘモシアニンにカップリングしたSTnからなる治療ワクチンであるテラトープ(Theratope)である。in vivoでのマウス研究において、テラトープ(Theratope)免疫化は、注射したSTnを発現している乳癌細胞の成長における遅延を媒介することが示された強力な抗体応答を誘発した(Julien(ジュリアン)ら著、イギリスがんジャーナル(British journal of cancer)、2009年、100巻、1746~1751頁)。しかし、テラトープ(Theratope)は、転移性乳がんにおける第III相臨床治験においてその一次エンドポイントを満たすことができなかった。なぜテラトープ(Theratope)トライアルがその一次エンドポイントを逃したかについての主要な仮説は、患者集団が登録の前にSTn発現について評価されなかったことである。乳がんにおけるSTn発現は、研究および検出方法によって25%から80%まで変動し患者の間で高度に不均一であるため、STn発現と応答とを相関させる能力がないことは、テラトープ(Theratope)からの利点をマスクしてきた。重要なことに、ホルモン療法を受けている患者のサブセットは、ホルモン療法単独と比較してテラトープ(Theratope)で処置したときに、全生存期間中央値における有意な7.5カ月の増加を示しており(イブラヒム(Ibrahim)ら著、臨床腫瘍学ジャーナル:米国臨床腫瘍学会の学会誌(Journal of clinical oncology :official journal of the American Society of Clinical Oncology)、2004年、22巻、2547頁;およびマイルズ(Miles)ら著、腫瘍学者(The oncologist)、2011年、16巻、1092~1100頁)、特定の患者集団におけるSTnを標的とすることの治療可能性を検証する。さらに、免疫応答はワクチン接種した患者の間でかなり変動することが多いため、ワクチンアプローチは抗体力価を制御またはモジュレートする能力を欠いており、患者の間で広範な治療用抗体への曝露をもたらす。それにもかかわらず、テラトープ(Theratope)は最小の毒性を伴って耐容性良好であったが、これはがん療法のためにSTnを標的とする安全性を示す。
【0418】
がん細胞におけるSTn発現の分子基盤の高まりつつある理解は、任意の細胞表面タンパク質上でSTnを発現している細胞がまた、(全部ではないが)多くの他のO-グリコシル化された細胞表面タンパク質上でSTnを発現させており、優れた広範に分布したがん関連治療標的となっていることを強く示唆している。このように、STn陽性がん細胞集団は、CSCについて濃縮され得る。さらに、最近のデータは、STn発現の抑止は、転移性挙動におけるかなりの低減を伴ってがんをより攻撃的でないものとすることを示す(ジル(Gill)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、2013年、110巻、E3152~3161頁)。
【0419】
がん処置としてのCSCを評定とする抗STn抗体
いくつかの抗STn抗体は当技術分野において記載されてきたが、いくつかはSTn抗原またはシアル酸付加されたアイソフォームに対する低い特異性を示す。例えば、市販のB72.3抗STn抗体は、STnだけではなく、Tn抗原にも結合することが示されてきた(バパット,S.A.(Bapat,S.A.)(2010年)、ヒト卵巣がん幹細胞(Human ovarian cancer stem cells.)。生殖(Reproduction)、140巻、33~41頁)。抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞毒性(CDC)を誘発するように工学処理されるか、または細胞毒性ペイロード[例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC)]とコンジュゲートされた、STnを標的とするモノクローナル抗体(mAb)の利用可能性は、STnを発現している腫瘍を有するがん患者についての相当な治療上の利点の可能性を提供する。さらに、このような抗体はまた、治療に応答する可能性が最も高い患者を事前選択するコンパニオン診断の開発を可能とする。
【0420】
STnは、CSC表面抗原の1つもしくは複数上に存在することが多く、一緒にこれらはCSCと関連する幹細胞性および化学療法耐性の特性を促進する役割を果たす。このように、抗STn抗体は、直接の会合および/もしくはADCCを介してCSCを直接死滅させるだけでなく、細胞表面タンパク質の広範なアレイに結合し、かつCSC生存率、自己再生、および複製に必須であるこれらの関連する機能を妨げる独特の機会を提供する可能性を伴う、CSC関連がん標的化剤を提供する。
【0421】
本明細書において考察するように、CSC上のSTnを標的とする理論的根拠および利点は、(1)多くの腫瘍特異的切断型糖タンパク質は、がんにおいてSTnを担持すること;(2)STnは、増殖状態に関わらず、CSCおよび成熟腫瘍細胞の両方上のCD44、MUC1、および潜在的に他の重要な細胞表面マーカー上に優先的に発現している独自のグリカン標的であり、単一の治療剤によるこれらの腫瘍構成要素の両方の標的化を可能とすること;(3)STnはまた、卵巣がんなどのバイオマーカーであるCA-125の構成要素であること;(4)STnは、卵巣CSCマーカーCD44の構成要素であることを含み得る。したがって、Tnに連結したシアル酸のNeu5AcおよびNeu5Gc形態の両方を包含するエピトープを標的化する汎STnマウスmAbの使用は、CSC、および共通のエピトープによって、非CSC腫瘍細胞に結合するか、死滅させるか、または機能を損なわせる。
【0422】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトCSCおよび成熟腫瘍細胞の特異的排除のための新規な抗汎STn mAb(複数可)を提供する。本発明の一態様では、抗STn抗体は、特定の糖ペプチドまたは担体タンパク質ではなく検証されたSTnグリカン自体を標的とし、これはCSCおよび非CSC腫瘍集団の両方上のCD44、MUC1、または他のSTn-グリコシル化されたマーカーへの結合の広範な可能性を提供するはずである。一部の実施形態では、本開示のグリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数の関連するグリカンを有する幹細胞関連タンパク質を標的とするために使用し得る。本明細書において使用する場合、用語「幹細胞関連タンパク質」は、1種もしくは複数の幹細胞と会合している任意のタンパク質を指す。このようなタンパク質には、これらに限定されないが、細胞表面タンパク質、マーカー、細胞内タンパク質、転写因子、ならびに幹細胞の生存、成長、複製、および/または維持に影響を与える細胞シグナル伝達に関与しているタンパク質が含まれてもよい。場合によって、このようなグリカンは、STnを含む。幹細胞関連タンパク質には、これらに限定されないが、ノッチ、ヘッジホッグ、CD44、CD117、CD133、およびインテグリンが含まれてもよい。
【0423】
腫瘍関連STnの標的化における並外れた特異性を所与として、本発明は、正常な成体幹細胞を含めた正常組織を残し、それによって優れた治療濃度域を可能とし得る。
本発明によると、本明細書において提供するのは、腫瘍コンパートメント内に含有されるCSCおよび成熟がん細胞の両方を排除することによってヒト新組織形成を根絶することを目的とする独特の免疫療法のソリューションである。本発明は、CSCを標的とし、したがって、これらの潜在的な標的の関連する腫瘍特異的炭水化物部分を標的とすることによって治療濃度域を拡大することを含む、腫瘍を特異的に標的とする治療および方法を提供する。排除は、がん幹細胞を含めたがん組織において独自に存在する腫瘍関連細胞表面シアル酸付加されたTn抗原(STn)構造を標的とすることによって特に行われる。
【0424】
卵巣CSC
卵巣がんは、米国の女性に影響を与えている主要な婦人科がんである。2013年において、22,240人の女性がこの疾患であると診断され、14,030人がこの疾患で死亡すると推定され、米国において女性が関連するがん死亡の第5の主要原因および最も致命的な婦人科の悪性腫瘍となっている(シーゲル(Siegel)ら著、がん統計(Cancer statistics)、2013年、CA:臨床医のためのがんジャーナル(a cancer journal for clinicians)、63巻、11~30頁)。この高死亡率は、非症候性の発症、後期における最初の診断、このタイプのがんの攻撃性、および治療的に標的とし得る遺伝的変化が一般に欠けていることに帰することができる。現在の標準治療は、腫瘍の減量、それに続くタキサンおよび白金をベースとする化学療法である。この最初の処置は患者の約70%が最初の完全な臨床応答を達成することをもたらす一方、これらの患者の大部分は、残念ながら化学療法耐性疾患を再発する(フォスター(Foster)ら著、がんレター(Cancer letters)、2013年、338巻、147~157頁;およびマッカン(McCann)ら著、プロスワン(PloS one)、2011年、6巻、e28077頁)。部分的に、再発性疾患は、他のがんタイプと同様に、総腫瘍集団内のCSCの存在に帰せられてきた。実際に、卵巣CSCは、化学療法および放射線療法に対して耐性であることが同定され、示されてきた(ブルゴス-オジェダ(Burgos-Ojeda)ら著、がんレター(Cancer letters)、2012年、322巻、1~7頁)。このように、再び他の形態のがんの場合のように、腫瘍集団における成熟細胞と共にCSCを排除することは、再発性疾患を管理し、理想的には治癒をもたらす一番の期待を提供する。
【0425】
本発明の一部の実施形態では、卵巣CSCは、卵巣がん処置のために標的とし得る。CD133は、推定上の卵巣CSCマーカーの中で最も広範に研究されているが、上記で考察するようにSTnの公知の担体であるCD44は、卵巣がんと関連しており、卵巣CSCを同定する一連のマーカーに含まれることが認識されている(チャン(Zhang)ら著、がんリサーチ(Cancer research)、2008年、68巻、4311~4320頁;フォスター(Foster)ら著、がんレター(Cancer letters)、2013年、338巻、147~157頁;およびゾラー(Zoller)、がん(Cancer)、2011年、11巻、254~267頁)。さらに、STnは、周知の卵巣がんバイオマーカーであるCA-125(MUC16)上、およびMUC1上で発現しており、血清中のこれらのSTn関連ムチンのレベルは、がんに対して良性の卵巣疾患のさらなる区別する要因として最近使用されてきた。STnの血清レベルの上昇は卵巣がん患者の約50%において起こり、より低い5年生存率と相関する(コバヤシ(Kobayashi)ら著、臨床腫瘍学ジャーナル:米国臨床腫瘍学会の学会誌(Journal of clinical oncology :official journal of the American Society of Clinical Oncology)、1991年、9巻、983~987頁;コバヤシ(Kobayashi)ら著、臨床腫瘍学ジャーナル:米国臨床腫瘍学会の学会誌(Journal of clinical oncology :official journal of the American Society of Clinical Oncology)、1992年、10巻、95~101頁;およびChen(チェン)ら著、プロテオームリサーチジャーナル(Journal of proteome research)、2013年、12巻、1408~1418頁)。最後に、ヴァチパジエカル(Vathipadiekal)らは、ヒト原発性卵巣癌CSCおよび非CSC集団の間の識別的遺伝子発現の研究において、STnを生じさせるシアリルトランスフェラーゼST6GalNAc-Iの発現が、2つのコンパートメントからの細胞の間で異ならなかったことが見出された。
【0426】
一部の実施形態では、本発明は、CSCに関連するがんを予防するか、制御するか、または治癒させるためにCSCを標的とするための抗体を提供する。このような抗体は、これらに限定されないが、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている国際出願番号PCT/US14/60079号パンフレットに記載されたもののいずれかを含めた(または記載されたもののいずれかに由来する)抗STn抗体を含み得る。3F1および/またはヒト化誘導体からのCDRを有する組換え抗体を含めたさらなる抗STn抗体は、抗体3F1(SBHサイエンスSBH Sciences)、ナティック、MA)またはその誘導体を含み得る。
【0427】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、他の形態の処置に対して耐性である卵巣がん幹細胞を標的とするために使用し得る。このような処置は、化学療法を含み得る。化学療法による処置は、本明細書に記載されているもののいずれかを含んでもよく、これらに限定されないが、カルボプラチンおよび/またはパクリタキセルによる処置が含まれてもよい。化学療法耐性卵巣がん幹細胞を標的とする方法は、化学療法による処置の後に起こる卵巣がん幹細胞における細胞表面グリカン発現の変化を利用し得る。場合によって、化学療法耐性卵巣がん幹細胞は、化学療法による処置の前および/または後にSTnを発現する。化学療法による処置の後、いくつかの化学療法耐性卵巣がん幹細胞は、増殖し、これらの細胞を周囲の細胞と区別する、1つもしくは複数の細胞表面グリカン(例えば、STn)を発現している腫瘍細胞の集団をもたらし得る。これらに限定されないが、本明細書において提示するものを含めた抗グリカン抗体は、これらの区別をつけるグリカンを標的とすることによって、卵巣がん幹細胞のこのような集団を死滅させるために使用し得る。場合によって、抗STn抗体は提供し得る。このような抗体には、これらに限定されないが、本明細書に記載されている抗体のいずれかが含まれてもよい。場合によって、このような抗体は、ヒトまたはヒト化である少なくとも1つの可変ドメインを有し得る。一部の実施形態では、1つもしくは複数の化学療法耐性卵巣がん肝細胞を有する対象は、カルボプラチンおよび/またはパクリタキセルによる処置に後で、本発明の抗STn抗体で処置し得る。
【0428】
結腸直腸がん
結腸直腸がん(CRC)は4番目に多い発生率を有し、現在米国におけるがんに関連する死亡の第3の主要原因である。現在、患者の20%は転移性疾患と診断されており、CRCを有する患者の概ね50%は転移を最終的に発生させる。転移性疾患と診断された者について、5年生存率は、13.1%である。転移性結腸がん(mCRC)を有する患者において、治療用抗体(例えば、モノクローナル抗体)、例えば、抗上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体および抗VEGFモノクローナル抗体の使用について先行事例がある。
【0429】
一部の実施形態では、本開示のグリカン相互作用抗体を使用して、CRCおよび/またはmCRCを処置し得る。場合によって、このようなグリカン相互作用抗体は、これらに限定されないが、本明細書に記載されているもののいずれかを含めた抗STn抗体である。CRCおよび/またはmCRCを処置するために使用されるグリカン相互作用抗体は、細胞毒性剤(例えば、MMAEおよびMMAF)とコンジュゲートし得る。グリカン相互作用抗体は、他の治療、例えば、化学療法剤(例えば、フルロピリミジン、オキサリプラチン、および/もしくはイリノテカン)ならびに/または治療用抗体(例えば、ベバシズマブおよび/もしくは抗EGFR)による治療と組み合わせて使用し得る。
【0430】
一部の実施形態によれば、結腸直腸がんを処置するために使用されるグリカン相互作用抗体は、約0.5mg/kg~約20mg/kgの用量で投与し得る。例えば、抗体は、約0.5mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2.5mg/kg~約10mg/kg、または約5mg/kg~約20mg/kgの用量で投与し得る。
【0431】
併用がん療法
一部の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、1つもしくは複数のさらなる形態のがん処置と合わせ得る。場合によって、このようなさらなる形態は、化学療法処置を含み得る。したがって、本発明のいくつかの方法は、がんを有する対象に少なくとも1種の化学療法剤を投与し、グリカン相互作用抗体を投与することによって、がんを処置する方法を含む。このような抗体は、本明細書に記載されている抗STn抗体を含み得る。
【0432】
本明細書において使用する場合、用語「化学療法」は、化学物質を使用した処置の一形態を指す。このような化学物質は、本明細書において、「化学療法剤」と称される。がんの処置において、化学療法剤は、がん細胞の増殖を遅延させるか、または阻害する薬剤である。
【0433】
一部の実施形態では、本発明の化学療法剤は、核酸拮抗剤であり得る。このような薬剤は主に、増殖性細胞、例えば、がん細胞に影響を与え、典型的には、DNA修復および/または合成を撹乱することによって機能する。場合によって、核酸拮抗剤は、アルキル化剤(例えば、二官能性アルキル化薬または単官能性アルキル化薬)である。アルキル化剤は、分裂細胞におけるDNA合成を撹乱するために使用し得る反応性化合物である。本発明のアルキル化剤には、これらに限定されないが、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロランブシル、メルファラン、デカルバジン、ニトロソ尿素、およびテモゾロミドが含まれてもよい。
【0434】
他の実施形態では、本発明の核酸拮抗剤は、アントラサイクリンを含み得る。アントラサイクリンは、核酸合成を撹乱する細菌由来の化合物である。本発明のアントラサイクリンには、これらに限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびバルルビシンが含まれてもよい。一部の実施形態では、アントラサイクリンは、リポソームにカプセル化し得る。
【0435】
さらなる実施形態では、核酸拮抗剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤および/またはトポイソメラーゼ阻害剤であり得る。これらの阻害剤は、DNA合成および修復のために必要とされるDNA高次コイル形成における変化を防止する。トポイソメラーゼIの阻害剤には、これらに限定されないが、イリノテカンおよびトポテカンが含まれてもよい。トポイソメラーゼIIの阻害剤には、これらに限定されないが、エトポシド、テニポシド、およびタフルポシドが含まれてもよい。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤には、これらに限定されないが、ボリノスタットおよびロミデプシンが含まれてもよい。
【0436】
一部の実施形態では、本発明の核酸拮抗剤は、ヌクレオチド類似体および/またはヌクレオチド前駆体類似体を含み得る。増殖性細胞は、結果として生じた娘細胞中の核酸中への組込みのためにヌクレオチドを必要とする。ヌクレオチド類似体は、このような核酸の形成を撹乱するか、またはこれらを非機能性とし得る。本発明のヌクレオチド類似体には、これらに限定されないが、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メソトレキセート、およびチオグアニンが含まれてもよい。一部の実施形態では、ロイコボリンは、これらの効果を増進し、かつ/または有害な副作用を低減させるために、ヌクレオチド類似体と共に投与される。
【0437】
一部の実施形態では、本発明の核酸拮抗剤は、白金をベースとする薬剤である。これらの薬剤は、核酸を架橋することによってこれらを撹乱する。本発明の白金をベースとする薬剤には、これらに限定されないが、オキサリプラチン、シスプラチン、およびカルボプラチンが含まれてもよい。
【0438】
場合によって、本発明の化学療法剤は、細胞骨格撹乱剤を含む。活発に分裂している細胞は、これらの化合物によって撹乱し得る主要な細胞骨格の変化を起こす。本発明の細胞骨格撹乱剤には、これらに限定されないが、ビンカアルカロイド、エポチロン、パクリタキセル、ABRAXANE(登録商標)(注射用懸濁剤のためのパクリタキセルタンパク質結合粒子)、およびドセタキセルが含まれてもよい。
【0439】
増殖性がん細胞を標的とするのに有効ではあるが、化学療法剤は、いくつかの非がん性細胞にも影響を与えることが多い。このために、これらの投与は典型的には、用量、処置の長さ、または処置のエリアによって制限される。さらに、化学療法剤は主に増殖性細胞に影響を与えるため、非増殖性がん幹細胞は、処置の後に生存可能であり続けることがあり、がん性細胞を再編成することができる。したがって、一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1種の化学療法剤ががんを有する対象に最初に投与され、それに続いて、グリカン相互作用抗体が投与される、がんを処置する方法を含む。場合によって、グリカン相互作用抗体は、化学療法耐性細胞と会合している特異的細胞表面グリカンを標的とするように選択される。本明細書において使用する場合、用語「化学療法耐性」は、化学療法による処置によって影響をされないか、または化学療法による処置に対して限定された感受性を有する細胞を指すために使用される。
【0440】
化学療法耐性細胞(例えば、化学療法耐性がん幹細胞)を標的とする方法は、化学療法による処置の後に起こるこれらの細胞におけるSTn発現の変化を利用し得る。場合によって、化学療法耐性細胞は、化学療法による処置の前および/または後にSTnを発現している。場合によって、化学療法耐性細胞における細胞表面STn発現は、化学療法による処置に続いて増加し得る[例えば、STn合成に関与している因子(例えば、STnGalNAc I、T-シンターゼ、もしくはCosmc)の発現の変化、分解の減少、または細胞表面STn発現の増加をもたらす他の機序による]。化学療法による処置の後、細胞表面STnを発現しているいくつかの化学療法耐性細胞は増殖して、化学療法耐性であるSTnを発現している腫瘍細胞の集団をもたらし得る。一部の実施形態では、抗STn抗体を使用して、化学療法耐性細胞を標的とし得る。場合によって、これらの細胞は、がん幹細胞である。したがって、本発明の方法は、1種もしくは複数の化学療法剤の投与の後に存在するSTnを発現している化学療法耐性細胞を標的とするために抗STn抗体を投与する方法を含み得る。
【0441】
化学療法耐性細胞上の細胞表面グリカンの同定は、これらの細胞を周囲の細胞から区別する細胞表面グリカンの同一性のために、化学療法による処置の後、化学療法耐性細胞を分析することによって行い得る。一部の実施形態では、このような細胞表面グリカンには、これらに限定されないが、ムチン関連抗原(これらに限定されないが、Tn、STnおよびトムゼン-フリーデンライヒ抗原を含めた)、血液型ルイス関連抗原[これらに限定されないが、ルイス(Le)、ルイス(Le)、シアリルルイス(SLe)およびシアリルルイス(SLe)を含めた]、スフィンゴ糖脂質関連抗原[これらに限定されないが、グロボH、ステージ特異的胎児抗原-3(SSEA-3)およびシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質を含めた]、ガングリオシド関連抗原[これらに限定されないが、ガングリオシドGD2、GD3、GM2、フコシルGM1およびNeu5GcGM3を含めた]、ならびにポリシアル酸関連抗原が含まれてもよい。このような抗原の多くは、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2015054600号パンフレットに記載されている。化学療法の後に残存するがん幹細胞上に発現している細胞表面グリカンを同定するために行われる分析は、当技術分野において公知の任意の方法によって行い得る。場合によって、このような分析は、組織試料を得て、1つもしくは複数の免疫学的アッセイ(例えば、免疫組織化学分析、ELISA分析、フローサイトメトリー分析、抗体アレイ、または質量分析法)を使用して組織試料中の細胞表面グリカンの発現についてアセスメントすることによって行う。
【0442】
一部の実施形態では、化学療法耐性細胞を分析して、細胞表面STnの発現レベルをアセスメントする。これは、組織試料を得て、細胞表面STnの発現について試料を分析する[例えば、1つもしくは複数の免疫学的アッセイ(例えば、免疫組織化学分析、ELISA分析、フローサイトメトリー分析、抗体アレイ、または質量分析法)を使用した]ことによって行い得る。化学療法耐性細胞がSTnを発現している場合、抗STn抗体は、化学療法剤の投与の後で対象に投与し得る。
【0443】
一部の実施形態では、1つもしくは複数の腫瘍は、腫瘍と少なくとも1種の化学療法剤とを接触させることによって、1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体による処置のために予備刺激される。このような実施形態によると、グリカン相互作用抗体処置のために腫瘍を予備刺激することは、腫瘍における増殖性細胞を低減させ、1つもしくは複数の化学療法耐性腫瘍細胞を残すことを指す。このような方法によると、グリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数の化学療法剤による処置の後に残る化学療法耐性細胞を排除することによって、腫瘍体積をさらに低減させるために使用し得る。
【0444】
1種もしくは複数の化学療法剤の投与の後のグリカン相互作用抗体の投与は、1種もしくは複数の化学療法剤による処置の後、約1日~約1年行い得る(例えば、約1日~約10日、1週間~約4週間、約2週間~約10週間、約1カ月~約3カ月、約2カ月~約6カ月、または約3カ月~約12カ月)。場合によって、グリカン相互作用抗体の投与は、1種もしくは複数の化学療法剤による処置の後、少なくとも1年行い得る。
【0445】
一部の実施形態では、1種もしくは複数の化学療法剤による複数のラウンドの投与は、グリカン相互作用抗体の投与が続き得る(例えば、2ラウンド、3ラウンド、4ラウンド、5ラウンド、6ラウンド、7ラウンド、8ラウンド、9ラウンド、10ラウンド、または少なくとも10ラウンド)。場合によって、組織分析によってがん性細胞および/または化学療法耐性細胞が低減または排除されたことが明らかにされるまで処置のラウンドは繰り返される。
【0446】
化学療法剤の用量は、処置を受けている対象のサイズに基づいて調節し得る。一部の実施形態では、用量は、カルボ(Calvo)ら、2014年(カルボ,E.(Calvo,E.)ら著、2014年、化学療法剤、およびこれらの使用、投与量、および毒性(Chemotherapeutic agents and their uses,dosages,and toxicities.)、がんネットワーク(Cancer Network.)、1~12頁)によって記載されているものを含む。場合によって、用量は、処置される対象の表面積に基づいて調節される[典型的には、平方メートル(m)で測定される]。本発明の化学療法剤は、約0.01mg/m~約1mg/m、約0.1mg/m~約5mg/m、約1mg/m~約20mg/m、約10mg/m~約100mg/m、約50mg/m~約500mg/m、約200mg/m~約2000mg/m、または約1000mg/m~約10000mg/mの用量で投与し得る。場合によって、本発明の化学療法剤は、少なくとも10000mg/mの用量で投与される。いくつかの方法によると、化学療法剤は、静脈内に投与される。
【0447】
一部の実施形態では、化学療法剤の投与は、カルボプラチンの投与を含む。いくつかの方法によると、カルボプラチンは、約200mg/m~約400mg/mの用量で投与される。一部の実施形態では、化学療法剤の投与は、パクリタキセルの投与を含む。いくつかの方法によると、パクリタキセルは、約20mg/m~約300mg/mの用量で投与される。
【0448】
一部の実施形態では、本開示のグリカン相互作用抗体は、抗血管新生治療(例えば、ベバシズマブ)と組み合わせて投与される。一部の実施形態によれば、がん処置を必要としている対象(対象は、少なくとも1種のポリ-ADP-リボースポリメラーゼ阻害剤による処置に対して完全に応答性ではないがんを有する)を同定し、抗STn抗体を対象に投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。このような抗STn抗体は、当技術分野において公知であるか、または本明細書に記載されているもののいずれかを含み得る。
【0449】
免疫関連標的
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、免疫調節性抗体であり得る。本明細書において使用する場合、免疫調節性抗体は、1つもしくは複数の免疫機能または経路を増進または抑制する抗体である。
【0450】
多くの細菌グリカンはシアル酸を含むことが公知である。場合によって、このようなグリカンは、細菌が、これらに限定されないがヒトを含めた宿主の先天性免疫系を逃れることを許容する。一例では、細菌グリカンは、H因子認識によって代替の補体経路活性化を阻害する。別の例では、細菌グリカンは、抗原性であり得る根底にある残基をマスクする。いくつかの細菌グリカンは、特定のシアル酸付加部分を含む実体への免疫応答を弱める阻害性シアル酸結合Ig様レクチン(シグレック)の活性化によって細胞シグナル伝達事象に関与する(チェン,X.(Chen,X.)ら、シアル酸の生物学および化学の進展(Advances in the biology and chemistry of sialic acids)、ACSケミカルバイオロジー(ACS Chem Biol.)、2010年2月19日;5巻(2号):163~76頁)。一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、細菌グリカンと関連する免疫合併症を処置するために使用し得る。
【0451】
本明細書に記載のようなNeu5Gcの外来性の性質によって、いくつかのNeu5Gcグリカンは、これらのグリカンが発現し得る細胞および他の実体の免疫関連の破壊をもたらすように免疫原性である。このような自己免疫性の破壊は、病原性であり得る。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、Neu5Gcグリカンと関連する自己免疫障害を患っている患者を処置するために使用し得る。
【0452】
一部の実施形態では、本発明の免疫調節性抗体は、T細胞が媒介する免疫を促進または抑制するために使用し得る。このような抗体は、T細胞、T細胞関連タンパク質および/またはT細胞と相互作用する1つもしくは複数の他の細胞型上に存在する1種もしくは複数のグリカンと相互作用し得る。T細胞が媒介する免疫を増進する免疫調節性抗体は、T細胞が媒介するがん細胞の標的化を刺激するために使用し得る。
【0453】
いくつかの腫瘍において、腫瘍関連マクロファージ(TAM)による浸潤は、免疫抑制促進腫瘍細胞の生存および成長をもたらし得る。これは、TAM上に存在する骨髄C型レクチン受容体(CLR)と腫瘍関連ムチンとの間の相互作用から生じる免疫抑制細胞シグナル伝達によるものと考えられる(アラベナ,P.,P.(Allavena,P.)ら著、臨床および発生免疫学(Clin Dev Immunol.)、2010年;2010年:547179頁)。一部の実施形態では、1種もしくは複数の腫瘍関連ムチンまたはTACAへの本発明の免疫調節性抗体の結合は、TAMにおいて免疫抑制細胞シグナル伝達を防止する。
【0454】
抗ウイルス用途
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、ウイルスを標的とし得る。ウイルスコートタンパク質およびウイルス外被は、本明細書においてウイルス表面グリカンと称されるグリカンを含むことが多い。このようなグリカンは、グリカン相互作用抗体の標的であり得る。一部の実施形態では、ウイルス表面グリカンは、シアリル-STnを含む。さらなる実施形態では、ウイルス表面グリカンは、GcSTnを含み得る。グリカン相互作用抗体によって標的とし得るウイルスには、これらに限定されないが、HIV、インフルエンザ、ライノウイルス、水痘帯状疱疹、ロタウイルス、ヘルペス(例えば、1型および2型)、肝炎(例えば、A型、B型、C型、D型およびE型)、黄熱病ならびにヒトパピローマウイルスが含まれる。
【0455】
他の治療用途
一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、タンパク分解事象を変化させるか、または制御するように作用し得る。一部の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、標的への結合の前に細胞中に内部移行し得る。
【0456】
獣医学用途
本発明のグリカン相互作用抗体は、ヒトではない脊椎動物のケアおよび処置を含めた獣医学のケアの領域において有用性を見出すことが意図されている。本明細書に記載のように、用語「ヒトではない脊椎動物」は、ヒト(Homo sapiens)を例外として、野生種および飼い慣らされた種、例えば、ペット動物および家畜を含めた全ての脊椎動物を含む。ヒトではない脊椎動物は、哺乳動物、例えば、アルパカ、バンテン、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ウマ、ラマ、ラバ、ブタ、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、水牛、およびヤクを含む。家畜は、材料、例えば、食物、労働、および誘導製品、例えば、繊維および化学物質を生産するために農業の状況において飼育された飼い慣らされた動物を含む。一般に、家畜は、潜在的な農業の重要性を有する全ての哺乳動物、鳥類および魚を含む。特に、四つ足の食肉処理動物は、去勢ウシ、若雌ウシ、雌ウシ、子ウシ、雄ウシ、ウシ、ブタおよびヒツジを含む。
【0457】
バイオプロセシング
本発明の一部の実施形態は、細胞と、遺伝子発現をモジュレートするか、または産生されるグリカンのレベルおよび/もしくはタイプを変更することができる1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体(例えば、抗体または融合タンパク質)とを接触させることによって、宿主細胞において生物由来物を産生する方法であり、このようなモジュレーションまたは変更は、生物由来産物の産生を増進する。本発明によれば、バイオプロセシング方法は、本発明のグリカン相互作用抗体の1つもしくは複数を使用することによって改善し得る。これらはまた、1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体を補充するか、置き換えるか、または加えることによって改善し得る。
【0458】
診断
一部の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、診断として使用し得る。場合によって、本発明の抗体は、標的抗原を発現している細胞、組織、器官などを同定、標識または染色するために使用し得る。さらなる実施形態では、本発明の抗体は、がん性細胞を有することが公知であるかまたは疑われている組織を含めた組織切片(すなわち、組織学的組織切片)中に存在するSTnを同定するために使用し得る。本発明の抗体を使用するこのような方法は、場合によって、組織切片においてがん性細胞または腫瘍を同定するために使用し得る。組織切片は、これらに限定されないが、乳房、結腸、膵臓、卵巣、脳、肝臓、腎臓、脾臓、肺、皮膚、胃、腸、食道、または骨を含めた任意の組織または器官からでよい。
【0459】
一部の実施形態では、本発明の診断法は、免疫組織化学技術を使用した1つもしくは複数の細胞または組織の分析を含み得る。このような方法は、本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体のいずれかの1つもしくは複数の使用を含み得る。本発明の免疫組織化学法は、1つもしくは複数のグリコシル化されたタンパク質または他のマーカーの存在および/またはレベルを決定するための組織切片の染色を含み得る。組織切片は、対象腫瘍(例えば、患者の腫瘍および動物の腫瘍、例えば、動物モデルの腫瘍)に由来し得る。組織切片は、ホルマリン固定したか、もしくは固定していない新鮮な凍結した組織から由来し得る。場合によって、組織切片は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から由来し得る。本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体は、一次抗体として使用し得る。一次抗体は、組織切片を直接接触させ、標的エピトープに結合するために使用される。一次抗体は、検出可能な標識と直接コンジュゲートし得るか、または検出剤、例えば、二次抗体の使用によって検出し得る。一部の実施形態では、一次抗体または検出剤は、目に見える生成物(例えば、沈殿物)を生じさせるために基質と反応させるために使用することができる酵素を含む。このような酵素には、これらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、およびカタラーゼが含まれてもよい。
【0460】
本明細書に記載されている抗STn抗体は、組織または細胞におけるSTn-グリコシル化されたタンパク質を検出するために本開示の免疫組織化学法によって使用し得る。場合によって、これらの抗体は、腫瘍組織におけるSTnのレベルを検出および/または決定するために使用される。このような腫瘍組織は、腫瘍マイクロアレイ中に含まれる腫瘍組織を含み得る。適切な腫瘍タイプは、これらに限定されないが、乳房、結腸、卵巣、膵臓、皮膚、腸、肺、および脳の腫瘍を含む。免疫組織化学染色技術において使用される抗STn抗体のレベルは、目に見える染色を増加させるか、または染色のバックグラウンドレベルを減少させるために変化し得る。一部の実施形態では、約0.01μg/ml~約50μg/mlの抗体濃度を使用する。例えば、約0.01μg/ml~約1μg/ml、約0.05μg/ml~約5μg/ml、約0.1μg/ml~約3μg/ml、約1μg/ml~約10μg/ml、約2μg/ml~約20μg/ml、約3μg/ml~約25μg/ml、約4μg/ml~約30μg/ml、または約5μg/ml~約50μg/mlの抗体濃度を使用し得る。
【0461】
一部の実施形態では、本発明の診断法は、STn-連結糖タンパク質プロファイルを生じさせる方法を含む。本明細書において使用する場合、用語「STn-連結糖タンパク質プロファイル」は、試料または対象中のSTn-連結糖タンパク質のレベルおよび/または同一性を示す一連の情報を指す。STn-連結糖タンパク質プロファイルを生じさせる方法は、対象から得た試料上で行い得る。このような試料は、これらに限定されないが、本明細書に記載されているもののいずれかを含めた生体試料であり得る。生体試料は、細胞試料であり得る。場合によって、細胞試料は、少なくとも1個の腫瘍細胞を含み得る。一部の実施形態では、腫瘍細胞試料は、BRCA1変異腫瘍細胞または非BRCA1変異腫瘍細胞を含み得る。
【0462】
STn-連結糖タンパク質プロファイルに含まれる糖タンパク質には、これらに限定されないが、がん細胞マーカー、幹細胞マーカー、がん幹細胞マーカー、および幹細胞関連タンパク質が含まれてもよい。一部の実施形態では、STn-連結糖タンパク質プロファイルの部分として同定および/または定量化される糖タンパク質には、これらに限定されないが、CD44、CD133、CD117、インテグリン、ノッチ、およびヘッジホッグが含まれてもよい。
【0463】
STn-連結糖タンパク質プロファイルにおけるSTn-連結糖タンパク質のレベルおよび/またはアイデンティティーは、タンパク質を同定し、かつ/またはタンパク質レベルを定量化するための当技術分野において公知の任意の方法によって決定し得る。一部の実施形態では、このような方法には、これらに限定されないが、質量分析法、アレイ分析(例えば、抗体アレイまたはタンパク質アレイ)、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫沈降、およびELISAが含まれてもよい。STn-連結糖タンパク質は、場合によって、分析の前に試料から免疫沈降し得る。このような免疫沈降は、抗STn抗体を使用して行い得る。STn-連結糖タンパク質の免疫沈降のために使用される抗STn抗体は、当技術分野において公知または本明細書に記載されているもののいずれかを含み得る。一部の実施形態では、STn-糖タンパク質は、抗STn抗体を使用して生体試料から免疫沈降し、次いで、質量分析法を使用して同定および/または定量化される。
【0464】
一部の実施形態では、がん処置は、STn-連結糖タンパク質プロファイル情報によって情報を得られる。したがって、本開示は、がん処置を必要としている対象から試料を得ることと、試料からSTn-連結糖タンパク質プロファイルを生じさせることと、STn-連結糖タンパク質プロファイルからSTn-グリコシル化されたタンパク質に結合するグリカン相互作用抗体を選択することと、対象にグリカン相互作用抗体を投与することとを含む、がんを処置する方法を提供する。このような方法によって投与されるグリカン相互作用抗体は、本明細書において教示される1つもしくは複数のCDRまたは可変ドメインを含み得る。
【0465】
一部の実施形態では、本開示の方法は、コンパニオン診断として使用し得る。本明細書において使用する場合、用語「コンパニオン診断」は、その結果が対象の診断または処置において助けるアッセイを指す。コンパニオン診断は、患者の疾患、障害または状態の重症度レベルを層別化し、処置レジメンおよび用量のモジュレーションを可能としてコストを低減させ、臨床治験の期間を短縮し、安全性を増加させ、かつ/または有効性を増加させるために有用であり得る。コンパニオン診断は、疾患、障害または状態の発生を予想し、かつ予防治療の処方を助けるために使用し得る。いくつかのコンパニオン診断は、1つもしくは複数の臨床治験のために対象を選択するために使用し得る。場合によって、コンパニオン診断アッセイは、処置の最適化を促進する特定の処置と提携し得る。
【0466】
一部の実施形態では、本開示の方法は、がんに関連する疾患、障害および/もしくは状態のためのコンパニオン診断として有用である。本発明のいくつかのコンパニオン診断は、1つもしくは複数の形態のがんの重症度を予想および/または決定するために有用であり得る。本発明のいくつかのコンパニオン診断は、がんの1つもしくは複数の形態を発生する危険性によって対象を層別化するために使用し得る。本発明のいくつかのコンパニオン診断は、がん治療のための薬物開発を促進および早めるために使用し得る。
【0467】
STn発現-改変された細胞
一部の実施形態では、本開示は、変化したSTnレベルを有する改変された細胞を提供する。このような細胞は、様々な目的(例えば、実験、治療、抗体試験など)のために使用し得る。場合によって、本開示の方法は、1つもしくは複数の細胞または組織においてST6GalNAc Iの発現を増進させる方法を含む。これは、細胞のSTn(例えば、表面に発現したSTn)の増加した発現を有する1つもしくは複数の細胞が生じることをもたらし得る。ST6GalNAc Iの発現は、例えば、ST6GalNAc I発現構築物を担持する1つもしくは複数のベクターを導入することによって増進し得る。このような発現構築物は、天然ST6GalNAc Iプロモーターと共にまたは遺伝子発現を増進するプロモーターと共に設計し得る。遺伝子発現の増進のために構成されたプロモーターは、恒常的または過度に活性のプロモーターエレメントを有し得る。場合によって、プロモーターは、誘導性遺伝子発現のために構成し得る。このようなプロモーターは、プロモーターの誘導性エレメントを活性化する因子と接触したときに、活性となるか、または上昇した活性を有し得る。STn発現構築物は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ジュリアン,S.(Julien,S.)ら著、2001年、グリココンジュゲートジャーナル(Glycoconj J)、18巻:883~93頁に記載されているように、hST6GalNAc I pRc-CMVを含み得る。一部の実施形態では、発現構築物は、STn合成および/または発現に関与する他の因子をコードし得る。このような因子には、これらに限定されないが、T-シンターゼ、およびコア1ベータ3-ガラクトシルトランスフェラーゼ特異的分子シャペロン(COSMC)が含まれてもよい。一部の実施形態では、最小のSTn発現を伴う細胞は、STn発現細胞に変換される。このような細胞には、これらに限定されないが、SKOV3細胞、BRCA1変異細胞、および非変異BRCA1細胞が含まれてもよい。
【0468】
また提供するのは、改変されていない細胞に対して減少したSTn発現を有する改変された細胞である。したがって、本開示の方法は、STn発現を抑圧する方法を含む。このような方法は、ST6GalNAc I発現を低減させることを含み得る。一部の実施形態では、このような方法は、ST6GalNAc I発現を抑圧する1個もしくは複数の核酸分子の投与を含み得る。このような核酸分子には、これらに限定されないが、阻害性RNA(例えば、RNAiまたはサイレンサーsiRNA)が含まれてもよい。一部の実施形態では、STn合成および/または発現に関与する他の因子は、低減させ得る。このような因子には、これらに限定されないが、T-シンターゼおよびCOSMCが含まれてもよい。一部の実施形態では、STnを天然に発現している細胞は、STn欠乏性細胞に変換される。このような細胞には、これらに限定されないが、OVCAR3細胞およびOVCAR4細胞が含まれてもよい。
【0469】
III.医薬組成物
一部の実施形態では、本開示は、医薬組成物を含む。このような医薬組成物は、本開示の抗体、および/またはこのような抗体に由来するフラグメント、ペプチド、もしくはタンパク質を含み得る。医薬組成物は、バイオアベイラビリティー、治療濃度域および/または分布容積の1つもしくは複数によって特徴付けられてもよい。
【0470】
バイオアベイラビリティー
グリカン相互作用抗体は、本明細書に記載のような送達剤/製剤化剤またはビヒクルと共に組成物中に製剤化されるとき、本明細書に記載のような送達剤を欠いている組成物と比較して、バイオアベイラビリティーの増加を示すことができる。本明細書において使用する場合、用語「バイオアベイラビリティー」は、哺乳動物に投与された所与の量のグリカン相互作用抗体の全身的アベイラビリティーを指す。バイオアベイラビリティーは、哺乳動物への化合物の投与に続いて化合物の未変化形態の曲線下面積(AUC)または最大血清もしくは血漿濃度(Cmax)を測定することによってアセスメントすることができる。AUCは、横座標(X軸)に沿った時間に対する、縦座標(Y軸)に沿った化合物の血清または血漿濃度をプロットする曲線下面積の決定である。一般に、特定の化合物についてのAUCは、当業者には公知の方法を使用して、および参照により本明細書中に組み込まれているG.S.バンカー(G.S.Banker)、現在の薬剤学、薬物および薬学(Modern Pharmaceutics,Drugs and the Pharmaceutical Sciences)、第72巻、マルセルデッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク社(New York,Inc.),1996年に記載されているように計算することができる。
【0471】
max値は、哺乳動物への化合物の投与に続いて哺乳動物の血清または血漿において達成される化合物の最高濃度である。特定の化合物のCmax値は、当業者には公知の方法を使用して測定することができる。語句「バイオアベイラビリティーを増加させる」または「薬物動態を改善する」は、本明細書において使用する場合、哺乳動物においてAUC、Cmax、またはCminとして測定されるグリカン相互作用抗体の全身的なアベイラビリティーが、このような同時の投与が起こらないときより、本明細書に記載のような送達剤と同時投与したときより大きいことを意味する。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体のバイオアベイラビリティーは、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%増加させることができる。
【0472】
治療濃度域
グリカン相互作用抗体は、本明細書に記載のような送達剤を有する組成物中に製剤化されたとき、本明細書に記載のような送達剤を欠いている本明細書に記載のような送達剤を欠いている投与されたグリカン相互作用抗体組成物の治療濃度域と比較して、投与されたグリカン相互作用抗体組成物の治療濃度域の増加を示すことができる。本明細書において使用する場合、「治療濃度域」は、作用の部位における、治療的活性物質の血漿濃度の範囲、またはレベルの範囲を指し、治療効果を引き出す高確率を伴う。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体の治療濃度域は、本明細書に記載のような送達剤と同時投与するとき、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%増加させることができる。
【0473】
一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、投与後、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも14日、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年の間、対象試料中で検出可能である。抗体が細胞毒性剤(例えば、MMAE)とコンジュゲートされている場合、薬物と抗体の比(DAR)は、依然として安定的であり得る。場合によって、DARは、所与の期間(例えば、抗体レベルが対象試料中で検出可能である期間)に亘り、1%未満、5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、または75%未満で変化し得る。
【0474】
分布容積
グリカン相互作用抗体は、本明細書に記載のような送達剤を有する組成物中に製剤化されるとき、本明細書に記載のような送達剤を欠いている組成物に対して、改善された分布容積(Vdist)(例えば、低減したか、または標的とした)を示すことができる。分布容積(Vdist)は、体内の薬物の量を、血液または血漿中の薬物の濃度と関連付ける。本明細書において使用する場合、用語「分布容積」は、血液または血漿中と同じ濃度での体内の薬物の総量を含有するのに必要とされる液量を指し、Vdistは、体内の薬物の量/血液または血漿中の薬物の濃度と等しい。例えば、10mgの用量および10mg/Lの血漿濃度について、分布容積は、1リットルである。分布容積は、薬物が血管外組織中に存在する程度を反映する。大きな分布容積は、血漿タンパク質結合と比較して、組織構成要素に結合する化合物の傾向を反映する。臨床現場において、Vdistは、定常状態濃度を達成する充填用量を決定するために使用することができる。一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体の分布容積は、本明細書に記載のような送達剤と同時投与されるとき、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%減少させることができる。
【0475】
一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数の薬学的に許容される添加剤と共に組成物および/または複合体中に含まれる。医薬組成物は、1種もしくは複数のさらなる活性物質、例えば、治療的および/または予防的活性物質を任意選択で含み得る。医薬品の製剤化および/または製造における全般的な考察は、例えば、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコットウィリアムズアンドウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年(参照により本明細書中に組み込まれている)において見出し得る。
【0476】
一部の実施形態では、組成物は、ヒト、ヒト患者または対象に投与される。本開示の目的のために、語句「活性成分」は一般に、本明細書に記載のように送達されるグリカン相互作用抗体を指す。
【0477】
本明細書において提供される医薬組成物の説明は、ヒトへの投与に適した医薬組成物を主に対象としているが、このような組成物は一般に、任意の他の動物、例えば、ヒトではない動物、例えば、ヒトではない哺乳動物への投与に適していることを当業者は理解する。組成物を様々な動物への投与に適したものとするためのヒトへの投与に適した医薬組成物の改変はより理解されており、通常の技能の獣医学の薬理学者は、もしあれば単に通常の実験法によってこのような改変を設計し、かつ/または行うことができる。医薬組成物の投与が意図される対象には、これらに限定されないが、ヒトおよび/または他の霊長類;商業的に関連性のある哺乳動物を含めた哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラット;ならびに/または商業的に関連性のある鳥を含めた鳥、例えば、家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウが含まれる。
【0478】
本明細書に記載されている医薬組成物の製剤は、薬理学の当技術分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製し得る。一般に、このような調製方法は、活性成分を添加剤および/または1種もしくは複数の他の補助成分と会合させるステップと、次いで、必要および/もしくは望まし場合、生成物を所望の単回用量もしくは複数用量単位へと分割し、形作り、かつ/もしくはパッケージするステップを含む。
【0479】
本発明による医薬組成物は、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単一の単位用量として調製し、パッケージし、かつ/または販売し得る。本明細書において使用する場合、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む医薬組成物の別個の量である。活性成分の量は一般に、対象に投与される活性成分の投与量および/またはこのような投与量の好都合な画分、例えば、このような投与量の2分の1もしくは3分の1と等しい。
【0480】
本発明による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される添加剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および/または状態によって、ならびにさらに組成物が投与される経路によって変化する。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、5~50%、1~30%、5~80%、または少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。一実施形態では、活性成分は、がん細胞に向けられる抗体である。
【0481】
製剤
本発明のグリカン相互作用抗体は、(1)安定性を増加させ;(2)細胞透過性を増加させ;(3)(例えば、グリカン相互作用抗体の製剤からの)持続放出もしくは遅延放出を可能とし;かつ/または(4)体内分布を変化させる(例えば、特定の組織もしくは細胞型へとグリカン相互作用抗体を標的とする)ための1種もしくは複数の添加剤を使用して製剤化することができる。伝統的な添加剤、例えば、ありとあらゆる溶媒、分散媒、賦形剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤に加えて、本発明の製剤には、これらに限定されないが、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、グリカン相互作用抗体をトランスフェクトされた細胞(例えば、対象への移植のため)、およびこれらの組合せが含まれることができる。
【0482】
添加剤
本明細書において使用する場合、用語「添加剤」は、使用前に本発明の化合物および/または組成物と合わせる任意の物質を指す。一部の実施形態では、添加剤は不活性であり、本発明の化合物および/または組成物のための担体として主に使用される、賦形剤またはビヒクルとして主に使用される。医薬組成物を製剤化するための様々な添加剤、および組成物を調製するための技術は、当技術分野において公知である(参照により本明細書中に組み込まれている、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、A.R.ジェンナーロ、リピンコット、ウィリアムズおよびウイルキンス(A.R.Gennaro、Lippincott、Williams & Wilkins)、ボルティモア、MD、2006年を参照されたい)。
【0483】
通常の添加剤媒体の使用は、任意の通常の添加剤媒体が、例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生じさせるか、または有害な様式で医薬組成物の任意の他の構成要素(複数可)とその他の方法で相互作用することによって、物質もしくはその誘導体と不適合性であり得る限りを除いて、本開示の範囲内で意図される。
【0484】
本明細書に記載されている医薬組成物の製剤は、薬理学の当技術分野で公知であるか、または今後開発される任意の方法によって調製し得る。一般に、このような調製方法は、活性成分と添加剤および/または1種もしくは複数の他の補助成分とを会合するステップ含む。
【0485】
本開示による医薬組成物は、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単一の単位用量として調製し、パッケージし、かつ/または販売し得る。
本開示による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される添加剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および/または状態によって、ならびにさらに組成物が投与される経路によって変化し得る。
【0486】
一部の実施形態では、薬学的に許容される添加剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の純度である。一部の実施形態では、添加剤は、ヒトにおける使用および獣医学での使用のために承認されている。一部の実施形態では、添加剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。一部の実施形態では、添加剤は、医薬グレードである。一部の実施形態では、添加剤は、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の標準を満たす。
【0487】
医薬組成物の製造において使用される薬学的に許容される添加剤には、これらに限定されないが、不活性な賦形剤、分散化剤および/または造粒剤、表面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤、および/または油が含まれる。このような添加剤は、任意選択で医薬組成物中に含み得る。
【0488】
例示的な賦形剤には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉糖など、および/またはこれらの組合せが含まれる。
【0489】
例示的な造粒剤および/または分散化剤には、これらに限定されないが、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木からの生成物、海綿、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物など、および/またはこれらの組合せが含まれる。
【0490】
例示的な表面活性剤および/または乳化剤には、これらに限定されないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVEEGUM(登録商標)[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、およびモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン[TWEEN(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEENn(登録商標)60]、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン[TWEEN(登録商標)80]、モノパルミチン酸ソルビタン[SPAN(登録商標)40]、モノステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)60]、トリステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[SPAN(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSOLUTOL(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニル-ピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLUORINC(登録商標)F68、ポロキサマー(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウムなど、ならびに/またはこれらの組合せが含まれる。
【0491】
例示的な結合剤には、これらに限定されないが、デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびデンプン糊);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成のガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイルランドコケの抽出物、パンワールガム、ガッティガム、イサポール皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))、およびカラマツアラビノガラクタン);アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール;など;ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0492】
例示的な保存剤には、これらに限定されないが、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および/または他の保存剤が含まれてもよい。例示的な抗酸化剤には、これらに限定されないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および/または亜硫酸ナトリウムが含まれる。例示的なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、および/またはエデト酸三ナトリウムを含む。例示的な抗微生物保存剤には、これらに限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポル、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサールが含まれる。例示的な抗真菌保存剤には、これらに限定されないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、および/またはソルビン酸が含まれる。例示的なアルコール保存剤には、これらに限定されないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、および/またはフェニルエチルアルコールが含まれる。例示的な酸性保存剤には、これらに限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、および/またはフィチン酸が含まれる。他の保存剤には、これらに限定されないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテルオキシム、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、および/またはEUXYL(登録商標)が含まれる。
【0493】
例示的な緩衝剤には、これらに限定されないが、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオナートカルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、第二リン酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、および/またはこれらの組合せが含まれる。
【0494】
例示的な滑沢剤には、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、モルト、ベヘン酸グリセリル、硬化植物性油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびこれらの組合せが含まれる。
【0495】
例示的な油には、これらに限定されないが、アーモンド、キョウニン、アボカド、ババス、ベルガモット、クロスグリ種、ルリヂサ、カデ、カモミール、キャノーラ、キャラウェー、カルナウバ、トウゴマ、ケイヒ、カカオバター、ココナツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ヒョウタン、グレープシード、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンディン、ラベンダー、レモン、リトシーキュービバ(litsea
cubeba)、マカダミアナッツ、アオイ、マンゴー種、メドウフォーム種、ミンク、ナツメッグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラッフィー、パーム、パーム核、トウニン、ピーナッツ、ケシの実、カボチャ種、ナタネ、コメ糠、ローズマリー、ベニバナ、ビャクダン、サスカナ、セイバリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油が含まれる。例示的な油には、これらに限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、および/またはこれらの組合せが含まれる。
【0496】
添加剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および/または香料は、配合者の判断によって組成物中に存在することができる。
【0497】
一部の実施形態では、本発明の抗グリカン抗体は、シトレートおよび/またはNaClを含む添加剤と共に製剤化される。このような組成物は、約1mM~約10mM、約2mM~約20mM、約5mM~約50mM、約10mM~約100mM、約50mM~約200mM、または約100mM~約1,000mMのシトレートを含み得る。さらなる組成物は、約1mM~約10mM、約5mM~約20mM、約15mM~約50mM、約30mM~約60mM、約50mM~約200mM、約100mM~約300mM、または約250mM~約1000mMのNaClを含み得る。
【0498】
ビヒクル
リポソーム、リポプレックスおよび脂質ナノ粒子
本発明のグリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数のリポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を使用して製剤化し得る。一実施形態では、グリカン相互作用抗体を含む医薬組成物は、リポソームをさらに含む。リポソームは、1つもしくは複数の脂質二重層を含み得る人工的に調製した小胞であり、栄養素および医薬製剤の投与のための送達ビヒクルとして使用し得る。リポソームは、これらに限定されないが、直径が数百ナノメートルであり得る多重膜小胞(MLV)などの異なるサイズのものでよく、狭い水性コンパートメントによって分離された一連の同心円状の二重層、直径が50nm未満であり得る小さな単細胞小胞(SUV)、および直径が50nm~500nmであり得る大きな単膜小胞(LUV)を含有し得る。リポソーム設計には、これらに限定されないが、不健全組織へのリポソームの付着を改善するたえに、またはこれらに限定されないが、エンドサイトーシスなどの事象を活性化するために、オプソニンまたはリガンドが含まれてもよい。リポソームは、医薬製剤の送達を改善させるために低または高pHを含有し得る。
【0499】
リポソームの形成は、これらに限定されないが、捕捉された医薬製剤およびリポソームの成分、脂質小胞が分散している媒体の性質、捕捉された物質およびその潜在的な毒性の有効濃度、小胞の用途および/または送達の間に関与する任意のさらなるプロセス、最適化サイズ、意図する用途のための小胞の多分散性および保存寿命、ならびに安全および効率的なリポソーム生成物の大規模な生成のバッチ間の再現性および可能性などの物理化学的特徴によって決まり得る。
【0500】
一実施形態では、異なる細胞型にin vivoで受動的または能動的に向けられるように、このような製剤は、また構築されるか、または組成物は、変化し得る。
製剤はまた、これらに限定されないが、ホレート、トランスフェリン、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、および抗体標的アプローチによって例示されるように、これらの表面上の異なるリガンドの発現によって選択的に標的とすることができる。
【0501】
これらの製剤は、グリカン相互作用抗体による細胞トランスフェクションを増加し得るため、リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子は、グリカン相互作用抗体機能の有効性を改善するために使用し得る。リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子はまた、グリカン相互作用抗体の安定性を増加させるために使用し得る。
【0502】
抗体カーゴのために特に配合されるリポソームは、当技術分野で公知の技術によって調製され、例えば、エップシュタイン(Eppstein)らによって記載されている(エップシュタイン,D.A.(Eppstein、D.A.)ら、リポソームにカプセル化されたマウスインターフェロンガンマの生物活性は細胞膜受容体によって媒介される(Biological activity of liposome-encapsulated murine interferon gamma is mediated by a cell membrane receptor)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、1985年6月;82巻(11号):3688~92頁);ウォン(Hwang)ら(ウォン,K.J.(Hwang,K.J.)ら著、単膜スフィンゴミエリン/コレステロールリポソームの肝臓の取込みおよび分解:動力学的研究。(Hepatic uptake and degradation of unilamellar sphingomyelin/cholesterol liposomes:a kinetic study.)、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、1980年7月;77巻(7号):4030~4頁);米国特許第4,485,045号明細書および米国特許第4,544,545号明細書。持続する循環時間を伴うリポソームの産生はまた、米国特許第5,013,556号明細書に記載されている。
【0503】
本発明のグリカン相互作用抗体を含むリポソームは、脂質、例えば、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびポリエチレングリコール誘導体化されているホスファチジルエタノールアミンを利用して、逆相蒸発を使用して生じさせ得る。画定した孔径を有するフィルターを使用して、所望の直径のリポソームを押し出す。別の実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、マーティン(Martin)らによって記載されているように、ジスルフィド交換反応によってリポソームの外表面にコンジュゲートすることができる(マーチン,F.J.(Martin,F.J.)ら、事前形成された小胞への免疫グロブリンフラグメントの不可逆的カップリング。リポソーム標的化のための改善された方法。Irreversible coupling of immunoglobulin fragments to preformed vesicles.An improved method for liposome targeting.、生物化学ジャーナル(J Biol Chem.)、1982年1月10日;257巻(1号):286~8頁)。
【0504】
ポリマーおよびナノ粒子
本発明のグリカン相互作用抗体は、天然および/または合成ポリマーを使用して配合することができる。送達のために使用し得るポリマーの非限定的例には、これらに限定されないが、DMRI/DOPE、ポロキサマー、キトサン、シクロデキストリン、およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ポリマーが含まれる。これらは、生分解性であり得る。
【0505】
ポリマー製剤は、グリカン相互作用抗体の持続放出または遅延放出を許容することができる(例えば、筋内または皮下注射に続いて)。グリカン相互作用抗体についての変化した放出プロファイルは、長期間に亘って、例えば、グリカン相互作用抗体の放出をもたらすことができる。ポリマー製剤はまた、グリカン相互作用抗体の安定性を増加させるために使用し得る。
【0506】
ポリマー製剤はまた、これらに限定されないが、ホレート、トランスフェリン、およびN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)によって例示されるような異なるリガンドの発現によって選択的に標的化することができる(ブノワ(Benoit)ら著、生体高分子(Biomacromolecules.)、2011年、12巻:2708~2714頁;ロゼマ(Rozema)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A.)、2007年、104巻:12982~12887頁;デイビス(Davis)、分子薬剤学(Mol Pharm.)、2009年、6巻:659~668頁;デイビス(Davis)、ネイチャー(Nature)、2010年、464巻:1067~1070頁;その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれている)。
【0507】
本発明のグリカン相互作用抗体はまた、ポリマー、脂質、および/またはこれらに限定されないが、リン酸カルシウムなどの他の生分解性薬剤の組合せを使用して、ナノ粒子として製剤化することができる。構成要素は、コア-シェル、ハイブリッド、および/または層が重なった構造において合わせ、ナノ粒子の微調整を許容してもよく、グリカン相互作用抗体の送達を増進し得る。グリカン相互作用抗体について、自己アセンブルしてポリマーソームとしてまた公知であるナノメートルサイズの小胞を生理学的pHにて形成するポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン)-block-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)、(PMPC-PDPA)、pH感受性ジブロックコポリマーに基づいた系を使用し得る。これらのポリマーソームは、生細胞内で相対的に高い抗体ペイロードをうまく送達することが示されてきた。(マシグナニ(Massignani)ら著、抗体の細胞送達:有効な標的とされる細胞内イメージングおよび新規な治療ツール(Cellular delivery of antibodies:effective targeted subcellular imaging and new therapeutic tool.)、ネイチャープロシーディングス(Nature Proceedings)、2010年5月)。
【0508】
一実施形態では、PEG電荷変換型ポリマー(ピテラ(Pitella)ら著、生体材料(Biomaterials.)、2011年、32巻:3106~3114頁)は、本発明のグリカン相互作用抗体を送達するナノ粒子を形成するために使用し得る。PEG電荷変換型ポリマーは、酸性pHでポリカチオンへと切断され、それ故にエンドソームからの脱出を増進させることによって、PEG-ポリアニオンブロックコポリマー改善し得る。
【0509】
コア-シェルナノ粒子の使用は、カチオン性架橋ナノゲルコアおよび様々なシェルを合成するハイスループットなアプローチにさらに焦点を合わせてきた(ジークバルト(Siegwart)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci
U S A.)、2011年、108巻:12996~13001頁)。ポリマーナノ粒子の複合体形成、送達、および内部移行は、ナノ粒子のコアおよびシェル構成要素の両方における化学組成を変化させることによって正確に制御することができる。
【0510】
一実施形態では、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックスは、本発明のグリカン相互作用抗体を送達するために使用される。このようなマトリックスは、ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、10巻、1446~1449頁(1992年)において記載されている。
【0511】
抗体製剤
本発明のグリカン相互作用抗体は、静脈内投与または血管外投与のために製剤化し得る(ドアティ(Daugherty)ら、モノクローナル抗体療法のための製剤化および送達の問題(Formulation and delivery issues for
monoclonal antibody therapeutics.)、先進的薬物送達レビュー(Adv Drug Deliv Rev.)、2006年8月7日;58巻(5~6号):686~706頁、米国特許出願公開第2011/0135570号明細書、これらの全ては本明細書においてその全体が組み込まれている)。血管外投与経路には、これらに限定されないが、皮下投与、腹腔内投与、脳内投与、眼球内投与、病巣内投与、局所投与および筋内投与が含まれてもよい。
【0512】
抗体構造は改変して、治療剤としてのこれらの有効性を改善し得る。改善には、これらに限定されないが、改善された熱力学的安定性、低減したFc受容体結合特性および改善されたフォールディング効率が含まれてもよい。改変には、これらに限定されないが、アミノ酸置換、グリコシル化、パルミトイル化およびタンパク質コンジュゲーションが含まれてもよい。
【0513】
グリカン相互作用抗体は抗酸化剤と共に製剤化して、抗体の酸化を低減させ得る。グリカン相互作用抗体はまた添加物と共に製剤化して、タンパク質凝集を低減させ得る。このような添加物には、これらに限定されないが、アルブミン、アミノ酸、糖、尿素、塩酸グアニジニウム、多価アルコール、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールおよびデキストラン)、界面活性剤(これらに限定されないが、ポリソルベート20およびポリソルベート80を含めた)またはそれどころか他の抗体が含まれてもよい。
【0514】
本発明のグリカン相互作用抗体は、抗体の構造および機能に対する水の影響を低減させるために配合し得る。このような製剤における抗体調製物は、凍結乾燥し得る。凍結乾燥に供する製剤は、抗体構造を保護および安定化する炭水化物またはポリオール化合物を含み得る。このような化合物には、これらに限定されないが、スクロース、トレハロースおよびマンニトールが含まれる。
【0515】
本発明のグリカン相互作用抗体は、ポリマーと共に製剤し得る。一実施形態では、ポリマー製剤は、疎水性ポリマーを含有し得る。このようなポリマーは、水中油中固体カプセル化方法によってポリラクチド-co-グリコリドと共に配合されたミクロスフィアであり得る。エチレン-酢酸ビニルコポリマーを含むミクロスフィアはまた、抗体送達のために意図され、送達の部位における抗体放出の時間経過を伸ばすために使用し得る。別の実施形態では、ポリマーは、水性ゲルであり得る。このようなゲルは、例えば、カルボキシメチルセルロースを含み得る。水性ゲルはまた、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含み得る。抗体は、これらに限定されないが、中枢神経系の組織を含めた組織における持続送達を可能とするヒドラゾン連結を介して、このようなゲルに共有結合的に連結し得る。
【0516】
ペプチドおよびタンパク質製剤
本発明のグリカン相互作用抗体は、ペプチドおよび/またはタンパク質と共に製剤化し得る。一実施形態では、これらに限定されないが、細胞透過性ペプチドおよびタンパク質、ならびに細胞内送達を可能とするペプチドなどのペプチドは、医薬製剤を送達するために使用し得る。本発明の医薬製剤と共に使用し得る細胞透過性ペプチドの非限定的例は、細胞内空間への送達を促進するポリカチオンに付着した細胞透過性ペプチド配列、例えば、HIV由来TATペプチド、ペネトラチン、トランスポータン、またはhCT由来細胞透過性ペプチドを含む(これらの全てが参照により本明細書中に組み込まれている、例えば、キャロン(Caron)ら著、分子治療(Mol.Ther.)、3巻(3号):310~8頁(2001年);ランゲル(Langel)、細胞透過性ペプチド:プロセスおよび用途(Cell-Penetrating Peptides:Processes and Applications)(CRCプレス(CRC Press)、ボカラトン、FL、2002年);El-Andaloussi(エル-アンダルーシ)ら著、現在の医薬設計(Curr.Pharm.Des.)、11巻(28号):3597~611頁(2003年);およびデエー(Deshayes)ら著、細胞および分子ライフサイエンス(Cell.Mol.Life Sci.)、62巻(16号):1839~49頁(2005年)を参照されたい)。組成物はまた、細胞内空間への組成物の送達を増進する細胞浸透剤、例えば、リポソームを含むように配合することができる。本発明のグリカン相互作用抗体は、細胞内送達を可能とするために、これらに限定されないが、エイルロンセラピューティクス(Aileron Therapeutics)(ケンブリッジ、MA)およびパーミオンバイオロジクス(Permeon Biologics)(ケンブリッジ、MA)からのペプチドおよび/またはタンパク質などのペプチドおよび/またはタンパク質と複合体化し得る(クロニカン(Cronican)ら著、(ACS Chem.Biol.)、2010年、5巻:747~752頁;マクノートン(McNaughton)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、2009年、106巻:6111~6116頁;ソーヤー(Sawyer)、ケミカルバイオロジー薬物設計(Chem Biol Drug Des.)、2009年、73巻:3~6頁;バーディン(Verdine)およびヒリンスキ(Hilinski)、酵素学における方法(Methods Enzymol.)、2012年;503巻:3~33頁;これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)。
【0517】
一実施形態では、細胞透過性ポリペプチドは、第1のドメインおよび第2のドメインを含み得る。第1のドメインは、超荷電ポリペプチドを含み得る。第2のドメインは、タンパク質結合パートナーを含み得る。本明細書において使用する場合、「タンパク質結合パートナー」は、これらに限定されないが、抗体およびその機能的フラグメント、スカフォールドタンパク質、またはペプチドを含む。細胞透過性ポリペプチドは、タンパク質結合パートナーのための細胞内結合パートナーをさらに含み得る。細胞透過性ポリペプチドは、グリカン相互作用抗体を導入し得る細胞から分泌されることができ得る。
【0518】
本発明の製剤において、ペプチドまたはタンパク質は、グリカン相互作用抗体による細胞トランスフェクションを増加させるか、またはグリカン相互作用抗体の体内分布(例えば、特定の組織または細胞型を標的とすることによって)を変化させるために組込み得る。
【0519】
細胞製剤
本発明のグリカン相互作用抗体組成物の細胞をベースとする製剤は、細胞トランスフェクション(例えば、細胞の担体における)を確実にするか、または(例えば、細胞担体を特定の組織または細胞型に標的とすることによって)組成物の体内分布を変化させるために使用し得る。
【0520】
細胞移入方法
種々の方法は当技術分野において公知であり、ウイルスおよび非ウイルスが媒介する技術を含めて、細胞中への核酸またはタンパク質、例えば、グリカン相互作用抗体の導入に適している。典型的な非ウイルスが媒介する技術の例には、これらに限定されないが、電気穿孔、リン酸カルシウムが媒介する移入、nucleofection、ソノポレーション、熱ショック、マグネトフェクション、リポソームが媒介する移入、マイクロインジェクション、イクロプロジェクタイルが媒介する移入(ナノ粒子)、カチオン性ポリマーが媒介する移入(DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール(PEG)など)または細胞融合が含まれる。
【0521】
ソノポレーション、または細胞超音波処理の技術は、細胞形質膜の透過性を改変するための音(例えば、超音波周波数)の使用である。ソノポレーション方法は当業者に公知であり、核酸をin vivoで送達するために使用される(ユーン(Yoon)およびパーク(Park)、エキスパートオピニオンオンドラッグデリバリー(Expert Opin Drug Deliv.)、2010年、7巻:321~330頁;ポステマ(Postema)およびジルジャ(Gilja)、現在の医薬バイオテクノロジー(Curr Pharm Biotechnol.)、2007年、8巻:355~361頁;ニューマン(Newman)およびベティンジャー(Bettinger)、遺伝子治療(Gene Ther.)、2007年、14巻:465~475頁;全ては参照によりそれらの全体が本明細書中に組み込まれている)。ソノポレーション方法は当技術分野において公知であり、また、例えば、細菌と関連しているように、米国特許出願公開第20100196983号明細書において、および他の細胞型と関連しているように、例えば、米国特許出願公開第20100009424号明細書(これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書中に組み込まれている)において教示されている。
【0522】
電気穿孔技術はまた当技術分野で周知であり、核酸をin vivoでおよび臨床的に送達するために使用される(アンドレ(Andre)ら著、現在の遺伝子治療(Curr
Gene Ther.)、2010年、10巻:267~280頁;チアレラ(Chiarella)ら著、現在の遺伝子治療(Curr Gene Ther.)、2010年、10巻:281~286頁;ホグマン(Hojman)、現在の遺伝子治療(Curr Gene Ther.)、2010年、10巻:128~138頁;全ては参照により本明細書中にそれらの全体が組み込まれている)。一実施形態では、グリカン相互作用抗体は、電気穿孔によって送達し得る。
【0523】
投与および送達
本発明の組成物は、当技術分野において公知の標準的な方法または経路のいずれかによって投与し得る。
【0524】
本発明のグリカン相互作用抗体は、治療的に有効な成果をもたらす任意の経路によって投与し得る。これらには、これらに限定されないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮的、硬膜外(硬膜上)、脳内(大脳中へ)、側脳室内(脳室中へ)、皮膚上への(皮膚上への適用)、皮内(皮膚自体中へ)、皮下(皮膚下)、経鼻投与(鼻を通した)、静脈内(静脈中へ)、動脈内(動脈中へ)、筋内(筋肉中へ)、心臓内(心臓中へ)、骨内注入(骨髄中へ)、くも膜下腔内(脊柱管中へ)、腹腔内(腹膜中への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内(目を通した)、海綿体注射(陰茎のベース中への)、腟内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮的(全身的分布のための傷のない皮膚を通した拡散)、経粘膜的(粘膜を通した拡散)、吹送(鼻から吸い込む)、舌下、唇下、浣腸、点眼薬(結膜上への)、または点耳薬が含まれる。特定の実施形態では、組成物は、これらが血液脳関門、血管関門、または他の上皮性関門を通過することを可能とする方法で投与し得る。本発明のグリカン相互作用抗体のための非限定的な投与経路は、下記に記載する。
【0525】
非経口および注射剤投与
経口および非経口投与のための液体剤形には、これらに限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、および/またはエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性な賦形剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。不活性な賦形剤に加えて、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、および/または香料を含むことができる。非経口投与のためのある特定の実施形態では、組成物は、可溶化剤、例えば、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはこれらの組合せと混合する。他の実施形態では、界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。
【0526】
注射用調製物、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁剤は、適切な分散化剤、湿潤剤、および/または懸濁化剤を使用して公知技術によって製剤化し得る。無菌注射用調製物は、無毒性の非経口的に許容される賦形剤および/または溶媒中の無菌注射用溶液剤、懸濁剤、および/または乳剤、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としてでよい。用いてもよい許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張食塩液がある。無菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として従来通り用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含めて任意の刺激の少ない不揮発性油を用いることができる。脂肪酸、例えば、オレイン酸は、注射剤の調製において使用することができる。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、および/または使用前に滅菌水または他の無菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる無菌固体組成物の形態中に滅菌剤を組み込むことによって無菌化することができる。
【0527】
活性成分の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅延することが望ましいことが多い。これは、乏しい水溶解性を有する結晶性またはアモルファスの材料の液体懸濁剤の使用によって達成し得る。次いで、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度によって決まり、これは、結晶サイズおよび結晶形態によって決まり得る。代わりに、非経口的に投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射用のデポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド中に薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物とポリマーの比、および用いられる特定のポリマーの性質によって、薬物放出の速度は制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)を含む。デポー注射用製剤は、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによって調製する。
【0528】
直腸および膣投与
直腸または膣投与のための組成物は典型的には、組成物と、適切な非刺激性の添加剤、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスとを混合することによって調製することができる坐剤であり、これは周囲温度にて固体であるが、体温にて液体であり、したがって、直腸または膣腔において溶融し、活性成分を放出する。
【0529】
経口投与
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤を含む。このような固体剤形において、活性成分は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される添加剤、例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムおよび/または充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア)、保湿剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、および滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、ならびにこれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含み得る。
【0530】
局所的または経皮的投与
本明細書に記載のように、本発明のグリカン相互作用抗体を含有する組成物は、局所的投与のために製剤化し得る。皮膚は、容易に到達可能であるため、送達のための理想的な標的部位であり得る。遺伝子発現は、非特異的毒性を潜在的に回避して、皮膚のみでなく、また皮膚内の特定の層および細胞型に制限し得る。
【0531】
送達された組成物の皮膚の発現の部位は、核酸送達の経路によって決まる。3つの経路がグリカン相互作用抗体を皮膚へと送達するために考慮される。(i)局所用途(例えば、局所/領域性処置および/または化粧用途のため);(ii)皮内注射(例えば、局所/領域性処置および/または化粧用途のため);ならびに(iii)全身的送達(例えば、皮膚および真皮外領域の両方に影響を与える皮膚病の処置のため)。グリカン相互作用抗体は、当技術分野において公知のいくつかの異なるアプローチによって皮膚に送達することができる。
【0532】
一実施形態では、本発明は、本発明の方法を好都合および/または効果的に行うための種々の被覆材(例えば、創傷被覆材)または包帯(例えば、粘着包帯)を提供する。被覆材または包帯は、使用者が対象(複数可)の複数の処置を行うことを可能とする十分な量の医薬組成物および/または本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体を含み得る。
【0533】
一実施形態では、本発明は、複数の注射において送達されるグリカン相互作用抗体を含む組成物を提供する。
組成物の局所的および/または経皮的投与のための剤形は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤および/またはパッチを含み得る。一般に、活性成分は、無菌状態下にて、薬学的に許容される添加剤ならびに/または必要に応じて任意の必要とされる保存剤および/もしくは緩衝液と混合される。
【0534】
さらに、本発明は、経皮パッチの使用を意図し、これは、体への化合物の制御された送達を実現する加えた利点を有することが多い。このような剤形は、例えば、化合物を適切な培地に溶解および/または分注することによって調製し得る。代わりにまたはさらに、速度は、律速膜を提供することによって、ならびに/または化合物をポリマーマトリックスおよび/もしくはゲルに分散させることによって制御し得る。
【0535】
局所投与に適した製剤には、これらに限定されないが、液体および/または半液体調製物、例えば、リニメント剤、ローション剤、水中油型および/もしくは油中水型乳剤、例えば、クリーム剤、軟膏剤および/またはペースト剤、および/または溶液剤および/または懸濁剤が含まれる。
【0536】
局所的に投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含み得るが、活性成分の濃度は、溶媒中の活性成分の溶解限度と同じ高さでよい。局所投与のための製剤は、本明細書に記載されているさらなる成分の1つもしくは複数をさらに含み得る。
【0537】
デポー投与
本明細書に記載のように、一部の実施形態では、本発明の組成物は、延長放出のためにデポーにおいて製剤化される。一般に、特定の器官または組織(「標的組織」)は、投与のために標的とされる。
【0538】
本発明のいくつかの態様では、グリカン相互作用抗体は、標的組織内でまたは近位で空間的に保持される。組成物、特に、組成物のグリカン相互作用抗体構成要素(複数可)が、標的組織中に実質的に保持されるような条件下で、1つもしくは複数の標的組織(1つもしくは複数の標的細胞を含めた)と組成物とを接触させることによって、哺乳動物対象の1つもしくは複数の標的組織に組成物を提供する方法を提供し、組成物の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、または99.99%超が、標的組織中に保持されることを意味する。有利なことには、保持は、標的組織および/または細胞に入る組成物中に存在するグリカン相互作用抗体のレベルを測定することによって決定される。例えば、対象に投与されたグリカン相互作用抗体の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、または99.99%超は、投与に続いてある期間において細胞内に存在する。例えば、哺乳動物対象への筋肉内注射は、1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体およびトランスフェクション試薬を含む水性組成物を使用して行ってもよく、組成物の保持は、筋細胞中に存在するグリカン相互作用抗体のレベルを測定することによって決定し得る。
【0539】
本発明のある特定の態様は、組成物が標的組織において実質的に保持されるような条件下で、標的組織(1個もしくは複数の標的細胞を含有する)と組成物とを接触させることによって、哺乳動物対象の標的組織に組成物を提供する方法を対象とする。組成物は、目的の効果が少なくとも1個の標的細胞において生じるように、有効量のグリカン相互作用抗体を含有する。組成物は一般に、細胞透過剤および薬学的に許容される担体を含有するが、「ネイキッド」グリカン相互作用抗体(例えば、細胞透過剤または他の薬剤を伴わないグリカン相互作用抗体)がまた意図される。
【0540】
一部の実施形態では、組成物は、複数種の異なるグリカン相互作用抗体を含み、グリカン相互作用抗体の1つもしくは複数は、目的のグリカンを標的とする。任意選択で、組成物はまた、組成物の細胞内送達において補助する細胞透過剤を含有する。所定の容量の標的組織内に含有される相当な百分率の細胞中の目的のグリカンを標的とするのに必要とされる組成物用量について決定が行われる(一般に、所定の容量に隣接した組織における、または標的組織とは遠位での、グリカンを標的とすることなしに)。この決定に続いて、決定された用量は、哺乳動物対象の組織中に直接導入し得る。
【0541】
一実施形態では、本発明は、複数の注射においてまたは分割用量注射によって送達されるグリカン相互作用抗体を提供する。
肺への投与
医薬組成物は、口腔を介した肺への投与に適した製剤で調製し、パッケージし、かつ/または販売し得る。このような製剤は、活性成分をさらに含み、かつ約0.5nm~約7nmまたは約1nm~約6nmの範囲の直径を有する乾燥粒子を含み得る。このような組成物は、それに対して噴射剤の流れが向けられ、粉末を分散し得る乾燥粉末レザバーを含む装置を使用した、ならびに/または自動推進式溶媒/粉末分注容器、例えば、シール容器において低沸点の噴射剤に溶解および/もしくは懸濁した活性成分を含む装置を使用した、適切な投与のための乾燥粉末の形態であり得る。このような粉末は、粒子を含んでもよく、粒子の少なくとも98重量%は、0.5nm超の直径を有し、数によって粒子の少なくとも95%は、7nm未満の直径を有する。代わりに、粒子の少なくとも95重量%は、1nm超の直径を有し、数によって粒子の少なくとも90%は、6nm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、固体微粉賦形剤、例えば、糖を含み得、単位用量形態で好都合に提供される。
【0542】
低沸点の噴射剤は一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に、噴射剤は、組成物の50%~99.9%(w/w)を構成し得、活性成分は、組成物の0.1%~20%(w/w)を構成し得る。噴射剤は、さらなる成分、例えば、液体非イオン性および/もしくは固体アニオン性界面活性剤、ならびに/または固体賦形剤(活性成分を含む粒子と同じ程度の粒径を有し得る)をさらに含み得る。
【0543】
肺への送達のために製剤化された医薬組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の形態の活性成分を提供し得る。このような製剤は、活性成分を含む、任意選択で無菌の、水性および/または希アルコール性の溶液および/または懸濁液として調製し、パッケージし、かつ/または販売してもよく、任意の噴霧および/または微粒化装置を使用して好都合に投与し得る。このような製剤は、これらに限定されないが、香味剤、例えば、サッカリンナトリウム、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤、および/または保存剤、例えば、メチルヒドロキシベンゾエートを含めた1種もしくは複数のさらなる成分をさらに含み得る。この投与経路によって提供される液滴は、約0.1nm~約200nmの範囲の平均直径を有し得る。
【0544】
鼻腔内、経鼻およびバッカル投与
肺への送達のために有用であるような本明細書に記載されている製剤は、医薬組成物の鼻腔内送達のために有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、かつ約0.2μm~500μmの平均粒子を有する粗末である。このような製剤は、鼻から吸い込む様式で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻道を通した急速な吸入によって投与される。
【0545】
経鼻投与に適した製剤は、例えば、概ねせいぜい0.1%(w/w)から100%(w/w)と同量の活性成分を含んでもよく、本明細書に記載されているさらなる成分の1つもしくは複数を含み得る。医薬組成物は、バッカル投与に適した製剤で調製し、パッケージし、かつ/または販売し得る。このような製剤は、例えば、通常の方法を使用して作製された錠剤および/またはロゼンジ剤の形態でもよく、例えば、0.1%~20%(w/w)の活性成分でよく、残余は、経口的に溶解可能および/または分解可能な組成物、ならびに任意選択で、本明細書に記載されているさらなる成分の1つもしくは複数を含む。代わりに、バッカル投与に適した製剤は、活性成分を含む、粉末ならびに/またはエアロゾル化および/もしくは微粒化された溶液ならびに/または懸濁液を含み得る。このような粉末化、エアロゾル化、および/またはエアロゾル化製剤は、分散されたとき、約0.1nm~約200nmの範囲の平均粒子および/または液滴径を有し得、本明細書に記載されている任意のさらなる成分の1つもしくは複数をさらに含み得る。
【0546】
眼へのまたは耳への投与
医薬組成物は、眼へのまたは耳への投与に適した製剤で調製し、パッケージし、かつ/または販売し得る。このような製剤は、例えば、例えば、水性または油性の液体添加剤中の活性成分の0.1/1.0%(w/w)の溶液および/または懸濁液を含む点眼薬または点耳薬の形態であり得る。このようなドロップ剤は、緩衝剤、塩、および/または本明細書に記載されている任意のさらなる成分の1種もしくは複数の他のものをさらに含み得る。有用である他の眼から投与可能な製剤は、微結晶形態および/またはリポソーム調製物中に活性成分を含むものを含む。網膜下のインサートはまた、投与形態として使用し得る。
【0547】
ペイロード投与
本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体は、いくつかの異なるシナリオにおいて使用してもよく、ここでは生物学的標的への物質(「ペイロード」)の送達、例えば、標的の検出のための検出可能な物質の送達、または治療剤もしくは診断用剤の送達が望ましい。検出方法には、これらに限定されないが、両方のイメージングであるin vitroおよびin vivoでのイメージング方法、例えば、免疫組織化学、バイオルミネセンスイメージング(BLI)、磁気共鳴イメージング(MRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、電子顕微鏡法、X線コンピュータ断層撮影法、ラマンイメージング、光干渉断層撮影法、吸収イメージング、熱イメージング、蛍光反射率イメージング、蛍光顕微鏡法、蛍光分子トモグラフィーイメージング、核磁気共鳴イメージング、X線イメージング、超音波イメージング、光音響イメージング、実験室アッセイが含まれることができるか、あるいはタグ付け/染色/イメージングが必要とされる任意の状況。
【0548】
グリカン相互作用抗体は、任意の有用な配向でリンカーおよびペイロードの両方を含むように設計することができる。例えば、2つの端部を有するリンカーを使用して、1つの端部をペイロードに付着させ、他の端部をグリカン相互作用抗体に付着させる。本発明のグリカン相互作用抗体は、複数のペイロードおよび開裂可能なリンカーを含むことができる。別の例において、リンカーを介してグリカン相互作用抗体に付着してもよく、かつ蛍光性標識してもよい薬物は、薬物をin vivoで、例えば、細胞内でトラックするために使用することができる。
【0549】
他の例には、これらに限定されないが、細胞中への可逆的な薬物送達におけるグリカン相互作用抗体の使用が含まれる。
本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体は、特定の細胞小器官へのペイロード、例えば、検出可能薬剤または治療剤の、細胞内の標的化において使用することができる。さらに、本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体は、例えば、生きている動物における細胞または組織に治療剤を送達するために使用し得る。例えば、本明細書に記載されているグリカン相互作用抗体は、化学療法剤を送達してがん細胞を死滅させるために使用し得る。リンカーを介して治療剤に付着しているグリカン相互作用抗体は、メンバー透過を促進して、治療剤が細胞中に移動して、細胞内標的に達すことを可能とすることができる。
【0550】
一部の実施形態では、ペイロードは、治療剤、例えば、細胞毒、放射性イオン、化学療法剤、または他の治療剤であり得る。細胞毒または細胞毒性剤は、細胞には有害であり得る任意の薬剤を含む。例には、これらに限定されないが、タキソール(taxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、マイタンシノイド、例えば、マイタンシノール(本明細書においてその全体が組み込まれている米国特許第5,208,020号明細書を参照されたい)、ラケルマイシン(CC-1065、これらの全てが参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第5,475,092号明細書、同第5,585,499号明細書、および同第5,846,545号明細書を参照されたい)、ならびにその類似体または相同体が含まれる。放射性イオンには、これらに限定されないが、ヨウ素(例えば、ヨウ素125またはヨウ素131)、ストロンチウム89、リン、パラジウム、セシウム、イリジウム、リン酸、コバルト、イットリウム90、サマリウム153、およびプラセオジムが含まれる。他の治療剤には、これらに限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メソトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロランブシル、ラケルマイシン(CC-1065)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(従前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(従前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール(taxol)およびマイタンシノイド)が含まれる。本発明の抗STn抗体の場合、腫瘍死滅は、このような抗STn抗体への毒素のコンジュゲーションによって後押しし得る。
【0551】
一部の実施形態では、ペイロードは、検出可能な薬剤、例えば、様々な有機小分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素または酵素基質、蛍光材料、発光材料(例えば、ルミノール)、生物発光材料(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン)、化学発光材料、放射性物質(例えば、18F、67Ga、81mKr、82Rb、111In、123I、133Xe、201Tl、125I、35S、14C、H、または99mTc(例えば、ペルテクネテート(テクネテート(VII)、TcO )として)、およびコントラスト剤(例えば、金(例えば、金ナノ粒子)、ガドリニウム(例えば、キレートGd)、酸化鉄(例えば、超常磁性酸化鉄(SPIO)、単結晶酸化鉄ナノ粒子(MION)、および極小超常磁性酸化鉄(USPIO))、マンガンキレート(例えば、Mn-DPDP)、硫酸バリウム、ヨウ化造影剤(イオヘキソール)、超微粒気泡、またはペルフルオロカーボン)であり得る。このような光学的に検出可能な標識は、例えば、これらに限定されないが、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸;アクリジンおよび誘導体(例えば、アクリジンおよびアクリジンイソチオシアネート);5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS);4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート;N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;BODIPY;ブリリアントイエロー;クマリンおよび誘導体(例えば、クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、および7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151));シアニン色素;シアノシン;4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]-ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、塩化ダンシル);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよび誘導体(例えば、エオシンおよびエオシンイソチオシアネート);エリスロシンおよび誘導体(例えば、エリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネート);エチジウム;フルオレセインおよび誘導体(例えば、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、X-ローダミン-5-(および-6)-イソチオシアネート(QFITCまたはXRITC)、およびフルオレサミン);2-[2-[3-[[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-2H-ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]エチリデン]-2-[4-(エトキシカルボニル)-1-ピペラジニル]-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-ベンゾ[e]インドリウム水酸化物、分子内塩、n,n-ジエチルエタンアミン(1:1)を有する化合物(IR144);5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート(IR140);マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロンオルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B-フィコエリトリン;o-フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体(例えば、ピレン、ピレンブチレート、およびスクシンイミジル1-ピレン);ブチレート量子ドット;リアクティブレッド4(CIBACRON(商標)ブリリアントレッド3B-A);ローダミンおよび誘導体(例えば、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサス赤色)、N,N,N’,N’テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)テトラメチルローダミン、およびテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC));リボフラビン;ロゾール酸;テルビウムキレート誘導体;シアニン-3(Cy3);シアニン-5(Cy5);シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7);IRD700;IRD800;アレクサ647(Alexa647);ラホーヤブルー;フタロシアニン;ならびにナフタロシアニンを含む。
【0552】
一部の実施形態では、検出可能な薬剤は、活性化によって検出可能となる、検出可能でない前駆体であり得る(例えば、蛍光発生テトラジン-フルオロフォア構築物(例えば、テトラジン-BODIPY FL、テトラジン-オレゴングリーン488、もしくはテトラジン-BODIPY TMR-X)または酵素活性化可能な蛍光発生剤(例えば、PROSENSE(登録商標)(ビセンメディカル(VisEn Medical))))。酵素標識された組成物を使用することができるIn vitroでのアッセイには、これらに限定されないが、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、およびウエスタンブロット分析が含まれる。
【0553】
組合せ
グリカン相互作用抗体は、1種もしくは複数の他の治療剤、予防剤、診断剤、または造影剤と組み合わせて使用し得る。「組み合わせた」とは、薬剤が同時に投与され、かつ/または送達のために一緒に製剤化されなければならないことを意味することを意図しないが、送達のこれらの方法は本開示の範囲内である。組成物は、1つもしくは複数の他の所望の治療剤または医療処置と併行的に、その前に、またはそれに続けて投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤のために決定される用量でおよび/またはタイムスケジュールで投与される。一部の実施形態では、本開示は、これらのバイオアベイラビリティーを改善させ、これらの代謝を低減および/もしくは改変し、これらの排泄を阻害し、かつ/または体内でのこれらの分布を改変し得る薬剤と組み合わせた、医薬組成物、予防用組成物、診断用組成物、および/またはイメージング組成物の送達を包含する。
【0554】
投与量
本開示は、薬物送達の科学における有望な進歩を考慮に入れて、治療、医薬、診断またはイメージングのいずれかのための任意の適当な経路によるグリカン相互作用抗体の送達を包含する。送達は、ネイキッドであるか、または配合し得る。
【0555】
ネイキッド送達
本発明のグリカン相互作用抗体は、細胞、組織、器官または生物へとネイキッド形態で送達し得る。本明細書において使用する場、用語「ネイキッド」は、トランスフェクションまたは透過性を促進する薬剤または改変を伴わずに送達されるグリカン相互作用抗体を指す。ネイキッドグリカン相互作用抗体は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている投与経路を使用して、細胞、組織、器官および/または生物へと送達し得る。ネイキッド送達は、単純な緩衝液、例えば、食塩水またはPBS中の製剤を含み得る。
【0556】
製剤化された送達
本発明のグリカン相互作用抗体は、本明細書に記載されている方法を使用して製剤化し得る。製剤は、改変してもよくかつ/または改変しなくてもよいグリカン相互作用抗体を含み得る。製剤はさらに、これらに限定されないが、細胞透過剤、薬学的に許容される担体、送達剤、生体侵食性または生体適合性ポリマー、溶媒、および持続放出送達デポーを含む。配合されたグリカン相互作用抗体は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている投与経路を使用して細胞に送達し得る。
【0557】
組成物はまた、これらに限定されないが、直接の浸漬もしくは槽に漬けること、カテーテルを介する、ゲル剤、散剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、および/またはドロップ剤による、組成物をコーティングもしくは含浸させた基材、例えば、布帛もしくは生分解性材料を使用することによるなどを含めた当技術分野におけるいくつかの方法のいずれかで、器官または組織への直接の送達のために製剤化し得る。
【0558】
投薬
一部の実施形態では、本開示は、本発明による1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。グリカン相互作用抗体をコードする核酸、グリカン相互作用抗体を含むタンパク質もしくは複合体、またはその医薬、イメージング、診断用、もしくは予防用組成物は、疾患、障害および/もしくは状態を予防、処置、診断、または画像処理するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して対象に投与し得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、投与のそのモード、活性のそのモードなどによって、対象毎に変化する。本発明による組成物は典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与量単位形態で製剤化される。しかし、本発明の組成物の毎日の総用法は、主治医によって正しい医学的判断の範囲内で決定されることが理解される。任意の特定の患者のための特定の治療的に有効な、予防的に有効な、または適当なイメージング用量レベルは、処置される障害、および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、身体全体の健康、性別および食事;用いられる特定の化合物の投与の時、投与経路、および排せつ率;処置の期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて、もしくは同時に使用される薬物;ならびに医学の技術分野において周知の同様の要因を含めた種々の要因によって決まる。
【0559】
ある特定の実施形態では、本発明による組成物は、所望の治療、診断、予防、またはイメージング効果を得るために、1日当たり、1日1回もしくは複数回、約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約20mg/kg、0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約2.5mg/kg~約5.0mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg対象体重を送達するのに十分な投与量レベルで投与し得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、2日おき、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に送達し得る。ある特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれ超の投与)を使用して送達し得る。
【0560】
本発明によれば、グリカン相互作用抗体は、分割用量レジメンにおいて投与し得る。本明細書において使用する場合、「分割用量」は、単一の単位用量または総1日用量を2つもしくはそれよりも多い用量への分割、例えば、単一の単位用量の2つもしくはそれよりも多い投与である。本明細書において使用する場合、「単一の単位用量」は、1つの用量で/1回/単一の経路/単一の接触のポイントで、すなわち、単回投与事象で投与される任意の治療剤の用量である。本明細書において使用する場合、「総1日用量」は、24時間の期間において与えられるかもしくは処方される量である。これは、単一の単位用量として投与し得る。一実施形態では、本発明のグリカン相互作用抗体は、対象に分割用量で投与される。グリカン相互作用抗体は、緩衝液のみ中にまたは本明細書に記載されている製剤中に配合し得る。本明細書に記載のようなグリカン相互作用抗体を含む医薬組成物は、本明細書に記載されている剤形、例えば、局所、鼻腔内、気管内、または注射剤(例えば、静脈内、眼球内、硝子体内、筋内、心臓内、腹腔内もしくは皮下)に製剤化し得る。医薬品の製剤化および/または製造における全般的な考察は、例えば、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコットウィリアムズアンドウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年(参照により本明細書中に組み込まれている)において見出し得る。
【0561】
一部の実施形態では、グリカン相互作用抗体の投与量は、バイスタンダー効果を低減させるために調節し得る。本明細書において使用する場合、「バイスタンダー効果」は、非標的細胞または標的細胞に隣接する細胞(また、本明細書において、バイスタンダー細胞と称される)上へのネガティブ効果を指す。このような方法によると、抗体の用量またはコンジュゲートタイプは、バイスタンダー効果を低減させるために調節し得る。このような調節は、バイスタンダー細胞の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、50%超、45%超、40%超、35%超、30%超、または25%超が生存可能なままである処置をもたらし得る。
【0562】
コーティングまたはシェル
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、および医薬製剤の技術分野において周知の他のコーティングと共に調製することができる。これらは任意選択で乳白剤を含んでもよく、活性成分(複数可)のみを、または優先的に、腸管の特定の部分において、任意選択で遅延した様式で放出する組成のものでよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの添加剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟および硬ゼラチンカプセル中の充填剤として用い得る。
【0563】
IV.キットおよび装置
キット
本明細書に記載されている組成物のいずれかは、キットに含まれてもよい。非限定例において、抗原分子を含む、グリカン相互作用抗体を生じさせるための試薬がキットに含まれる。キットは、グリカン相互作用抗体を生じさせるか、または合成するための試薬または説明書をさらに含み得る。これはまた、1種もしくは複数の緩衝液を含み得る。本発明の他のキットは、グリカン相互作用抗体タンパク質または核酸アレイまたはライブラリーを作製するための構成要素を含んでもよく、このように、例えば、固体支持体を含んでもよい。
【0564】
一部の実施形態では、本開示は、1種もしくは複数のグリカン相互作用抗体を含む、対象をスクリーニングし、モニターし、かつ/または診断するためのキットを含む。このようなキットは、単独で、またはスクリーニング、モニタリング、および/もしくは診断(例えば、コンパニオン診断として)の1つもしくは複数の他の方法と組み合わせて使用し得る。いくつかのキットは、緩衝液、生物学的標準品、二次抗体、検出試薬、および試料事前処理のための組成物(例えば、抗原回収、ブロッキングなどのため)の1つもしくは複数を含む。
【0565】
キットの構成要素は、水性媒体中でまたは凍結乾燥した形態でパッケージし得る。キットの容器手段は一般に、その中に構成要素が入れられ、好ましくは、適切に等分される、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含む。キットにおいて複数の構成要素が存在する場合(標識化試薬および標識は一緒にパッケージし得る)、キットはまた一般に、その中にさらなる構成要素が別々に入れられてもよい、第2、第3または他のさらなる容器を含有する。キットはまた、無菌の薬学的に許容される緩衝液および/または他の賦形剤を含油するための第2の容器手段を含み得る。しかし、構成要素の様々な組合せは、バイアル中に含み得る。本発明のキットはまた典型的には、グリカン相互作用抗体を含有するための手段、例えば、タンパク質、核酸、および商業的販売のために厳重に閉じ込める任意の他の試薬容器を含む。このような容器は、その中に所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0566】
キットの構成要素が1種および/もしくはそれ超の溶液中で提供されるとき、溶液は水溶液であり、無菌水溶液が特に好ましい。しかし、キットの構成要素は、乾燥粉末として提供し得る。試薬および/または構成要素が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、適切な溶媒を添加することによって再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段中で提供し得ることが想定される。一部の実施形態では、標識化色素は、乾燥粉末として提供される。10、マイクログラム20、マイクログラム30、マイクログラム40、マイクログラム50、マイクログラム60、マイクログラム70、マイクログラム80、マイクログラム90、マイクログラム100、マイクログラム120、マイクログラム120、マイクログラム130、マイクログラム140、マイクログラム150、マイクログラム160、マイクログラム170、マイクログラム180、マイクログラム190、マイクログラム200、マイクログラム300、マイクログラム400、マイクログラム500、マイクログラム600、マイクログラム700、マイクログラム800、マイクログラム900、1000マイクログラムまたは少なくとも1000マイクログラムまたは最大で10gの乾燥色素は、本発明のキットにおいて提供されることが意図されている。次いで、色素は、任意の適切な溶媒、例えば、DMSOに再懸濁し得る。
【0567】
キットは、キット構成要素を用いるため、およびキットには含まれていない任意の他の試薬の使用の説明書を含み得る。説明書は、実施することができるバリエーションを含み得る。
【0568】
装置
本明細書に記載されている組成物のいずれかは、装置と合わせるか、装置上にコーティングされるか、装置中に包埋し得る。装置には、これらに限定されないが、歯科インプラント、ステント、骨置換、人工関節、バルブ、ペースメーカーまたは他の埋め込み可能な治療用装置が含まれる。
【0569】
V.同等物および範囲
当業者であれば本明細書に記載されている本発明による特定の実施形態に対する多くの同等物を理解するか、または単に通例の実験法を使用して確認することができる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図せず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0570】
特許請求の範囲において、冠詞、例えば、「a」、「an」、および「the」は、逆の記載がない限り、または文脈から他に明らかでない限り、1つもしくは複数を意味し得る。群の1つもしくは複数のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または明細書は、群メンバーの1つ、複数、または全てが所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、所与の生成物もしくはプロセスにおいて用いられるか、または所与の生成物もしくはプロセスに対して他に関連性がある場合、逆の記載がない限り、または文脈から他に明らかでない限り、満たされると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、所与の生成物もしくはプロセスにおいて用いられるか、または所与の生成物もしくはプロセスに対して他に関連性のある実施形態を含む。本発明は、複数のメンバー、または全群メンバーが所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、所与の生成物もしくはプロセスにおいて用いられるか、または所与の生成物もしくはプロセスに対して他に関連性がある実施形態を含む。
【0571】
用語「含む」は、オープンであることを意図し、さらなるエレメントまたはステップを含むことを許容するが、含むことを必要としないことがまた留意される。用語「含む」が本明細書において使用されるとき、用語「からなる」はこのようにまた包含および開示されている。
【0572】
範囲が示されている場合、エンドポイントは含まれる。さらに、他に示さない限り、または文脈および当業者の理解から他に明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態における記述した範囲内の任意の特定の値または部分範囲を仮定することができることを理解すべきである。
【0573】
さらに、従来技術の範囲に入る本発明の任意の特定の実施形態は、特許請求の範囲の任意の1つもしくは複数から明示的に除外し得ることを理解すべきである。このような実施形態は当業者には公知であると見なされるため、除外が本明細書において明示的に記載されていないとしても、これらは除外し得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の核酸またはそれによってコードされるタンパク質;産生の任意の方法;使用の任意の方法など)は、任意の理由のために、従来技術の存在に関連してももしくはしなくても、任意の1つもしくは複数の特許請求の範囲から除外することができる。
【0574】
全ての引用した源、例えば、本明細書において引用した参照文献、公開資料、データベース、データベースエントリー、および技術は、たとえ引用において明確に記述されなくても参照により本出願に組み込まれている。引用した源および本出願が矛盾した記述である場合、本出願における記述が優先する。
【0575】
セクションおよび表の見出しは限定的なものではない。
(実施例)
実施例1
グリカンアレイ分析
最適化されたグリカンアレイは、単一の実験における複数のグリカンについての抗体の親和性および特異性を試験するために利用する。グリカンアレイは、71の化学的に合成され、詳細に明らかにされたグリカンを含み、これらの大部分はNeu5AcおよびNeu5Gcグリカン対である。アレイスライドは、商業的に得られ(アレイイット社(ArrayIt Corp)、サニーベール、CA)、下記の表において列挙したグリカンを含む。
【0576】
【表12-1】
【0577】
【表12-2】

300mlのエポキシブロッキング緩衝液は、15mlのトリス緩衝液(pH8、2M)と0.9mlのエタノールアミン(16.6M)および284.1mlの蒸留水とを合わせることによって調製する。HClで溶液を9.0の最終pHとする。0.2μMのニトロセルロース膜を使用して溶液を濾過する。エポキシ緩衝溶液および1Lの蒸留水は50℃に事前に温める。スライドガラスはスライドホルダーに配置し、温めたエポキシブロッキング緩衝液を有する染色タブ中に迅速に浸す。スライドをエポキシブロッキング緩衝液中で周期的に振盪しながら50℃にて1時間インキュベートし、エポキシ結合部位を不活性化する。次に、スライドをすすぎ、1%OVAを有するPBSで25℃にて1時間ブロックする。ポリクローナル抗体(1:1000)または精製したモノクローナル抗体(1ug/mL)を有する血清試料は、1%OVAを有するPBSに希釈し、グリカンアレイに1時間25℃にて加える。広範な洗浄の後、抗体の結合は、グリカンマイクロアレイスライドをCy3がコンジュゲートされた抗マウスIgG(ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、ウエストグローブ、PA)と共に1時間インキュベートすることによって検出する。次いで、スライドは広範に洗浄し、乾燥させ、ジェネピックス4000B(Genepix4000B)スキャナー(100%でのレーザー;350でのゲイン;10μmのピクセル)でスキャンする。スキャンしたイメージからの生データは、Genepixソフトウェアを使用して抽出し、生データの分析を行う。抗体は、これらが両方の分子への結合を示し、アレイ上のTnまたは任意の他のグリカンへの結合を示さない場合、AcSTnおよびGcSTnについて高度に特異的であると考えられる。
【0578】
アレイ分析に基づいて、抗体は、アレイグリカン結合プロファイルによって分類される。抗体は、これらがグリカン5、6、23および24に結合する場合、AcSTnおよびGcSTnを結合することができる「群1」抗体として分類される。このような抗体は、より広範囲のSTn構造および図1Aにおいて大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連するこれらの能力によって汎STn抗体と称される。抗体は、これらがグリカン5、6、23、24、27および31に結合する場合、STn、およびセリンまたはトレオニンへのO-連結を含むいくつかの関連する構造を結合することができる「群2」抗体として分類される。これらの抗体は、図1Bにおいて大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連していると考えられる。いくつかの群2抗体は好ましくは、GcSTnを有する構造を上回って、AcSTnを有する構造に結合する。抗体は、これらがグリカン5、6、23、24、17、3、19、37、27および31を結合する場合、「群3」抗体として分類される(STnを結合することができるが、また、より広範な一連の関連する構造を結合し得る)。群2抗体とは異なり、群3抗体は、このような構造がセリンまたはトレオニンへのO-連結を有することを必要としない。群3抗体は、図1Cにおいて大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連していると考えられる。最後に、抗体は、これらがグリカン5、6、23、24および47に結合する場合、AcSTnおよびGcSTnの両方ならびに非シアル酸付加されたTn抗原に結合することができる(したがって、より広範な特異性を有する)「群4」抗体である。群4抗体は、図1Dにおいて大きな楕円によって示されるSTnの部分と関連していると考えられる。
【0579】
実施例2
抗体結合のフローサイトメトリーをベースとする分析
フローサイトメトリーをベースとする分析は、細胞表面抗原への抗体の結合についての用量応答曲線を解明するために行う。これらの分析のために、様々な細胞系が用いられる。
【0580】
MDA-MB-231細胞は、ヒト乳がん細胞である。これらは、10%ウシ胎仔血清(FCS)、100μg/mlのペニシリン、100UI/mlのストレプトマイシンおよび45μg/mlのゲンタマイシンを補充したアールの最小必須培地において成長させる。MCF-7細胞はまたヒト乳がん細胞であり、MDA-MB-231細胞と同じ条件下で成長させる。(アルファ-N-アセチル-ノイラミニル-2,3-ベータ-ガラクトシル-1,3)-N-アセチルガラクトサミニドアルファ-2,6-シアリルトランスフェラーゼI(GalNAcα2,6-シアリルトランスフェラーゼIまたはST6GalNAc I)を過剰発現している、MDA-MB-231(MDA-MB-231-STn、クローンTAH3.P10)およびMCF-7細胞(MCF-7細胞についてクローンA12.1)の安定的にトランスフェクトされたバージョンはまた、導入遺伝子を発現している細胞をサポートする加えた1mg/mlのG418を例外として同じ条件下で培養する。ST6GalNAc Iは、GalNAcをシアル酸付加することができる酵素である。過剰発現の結果として、トランスフェクトされた細胞は、高レベルのNeu5Ac-STnを発現している(その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ジュリアン,S.(Julien,S.)ら著、グリココンジュゲートジャーナル(Glycoconjugate journal.)、2001年、18巻、883~93頁を参照されたい)。
【0581】
E3細胞は、マウス乳がん細胞である。これらは10%FCSを有するダルベッコのE4培地中で培養する。高レベルのNeu5Gc-STn(E3-STn)を発現しているE3細胞の安定にトランスフェクトされたバージョンは、600μg/mlのG418および200μg/mlのハイグロマイシンと共に培養する。実験用細胞の成長および維持の間に、トリプシンは細胞継代のために使用しない。
【0582】
OV90およびOVCAR3細胞がまた使用される。これらは、従前に記載したヒト卵巣がん細胞系である。
SNU-16細胞がまた使用される。これらは、低レベルのSTnを発現している胃がん細胞系である。
【0583】
分析のために、細胞はStemPro Accutase(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、カールズバッド、CA)を使用して収集し、5%FBSを含むPBSで洗浄し、その後、軽い遠心分離によってペレット化する。細胞数および生存率はトリパンブルー色素排除分析によって決定し、細胞濃度は5%FBSを有するPBS中で5×10個の細胞/mlに調節する。50μlの細胞はアッセイプレートの各ウェルに加える。細胞は分析される抗体または対照抗体の50μl溶液と合わせ、4℃にて1時間インキュベートする。細胞を洗浄し、5%FBSを有するPBSと共に2回ペレット化し、その後、アロフィコシアニン(APC)とコンジュゲートした1:1,500希釈の抗マウスIgG(サザンバイオテック(Southern Biotech)、バーミングハム、アラバマ)を含む5%FBSを有する100μlのPBSで処理する。細胞を4℃にて30分間インキュベートし、その後、洗浄し、5%FBSを有するPBS中で1:1000希釈した200μlのヨウ化プロピジウム(PI)に再懸濁させる。次いで、処理した細胞はフローサイトメトリー分析に供し、10,000の事象を各試料について得る。
【0584】
実施例3
抗体ヒト化
完全ヒト化重鎖および軽鎖は、本明細書において提示するCDRと共に設計する。可変領域のタンパク質モデルは、テンプレートとして現存する抗体構造を使用して生じさせる。出発重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列のセグメントは、完全ヒト化配列において含まれることの可能性についてヒト配列と比較する。一連のヒト化重鎖および軽鎖可変領域は、T細胞エピトープが回避される目的を伴って、ヒト可変領域配列のセグメントから全体的に設計される。in silicoでの技術によって決定するような潜在的なT細胞エピトープの有意な発生率を伴うバリアントヒト配列セグメントは廃棄する。
【0585】
ヒト化重鎖および軽鎖可変領域遺伝子は、リガーゼ連鎖反応(LCR)を使用して全長遺伝子にアセンブルされるオーバーラップオリゴヌクレオチドから構築される。LCR産物は増幅し、発現ベクター中へのクローニングのために適切な制限部位を加える。PCR産物は中間ベクター中にクローニングし、配列決定によって確認する。
【0586】
ヒト定常領域を有する完全ヒト化抗体をコードする発現プラスミドの構築のために、各可変領域についてのDNA配列は、上流のサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー(CMV IE)プラス免疫グロブリンシグナル配列、および下流の免疫グロブリン定常領域遺伝子の間の哺乳動物の発現ベクター中に挿入する。DNA試料は、哺乳動物細胞へのトランスフェクションのために調製する。
【0587】
細胞系の産生、およびリード完全ヒト化抗体の選択のために、重鎖および軽鎖プラスミドDNA対は、哺乳動物細胞(NS0)中にトランスフェクトする。ヒト化抗体を産生する細胞系は増殖し、抗体試料は精製する。抗体は一次および二次結合アッセイにおいて試験し、主要な抗体候補を決定する。3つの主要な候補は、さらなる分析のために使用される。
【0588】
実施例4
免疫原性試験
リード抗体は、健康なボランティアのドナーからの最小で20の血液試料を使用して、エピスクリーン(EpiScreen)(アンチトープ(Antitope)、パラダイスヴァレー、AZ)全抗体ヒトT細胞アッセイに供する。リード抗体の免疫原性は、出発抗体可変領域およびマッチしたヒト定常領域を有する対照キメラ抗体と比較する。データは、臨床段階生物製剤についてのエピスクリーン(EpiScreen)総タンパク質データに対してベンチマークする。
【0589】
実施例5
抗体配列分析
抗グリカン抗体可変ドメイン配列は、配列類似性について、および抗体の機能、発現、安定性または免疫原性に影響を与え得る特徴について分析した。使用した抗体は市販であるか、またはその内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2016/0264684号明細書および米国特許出願公開第2016/0130356号明細書において従前に記載されているように開発した。分析によって、重鎖可変ドメインと比較して、軽鎖可変ドメインにおけるはるかにより大きな可変性が明らかとなった。さらに、抗グリカン抗体の重鎖可変ドメインが、当技術分野において公知の抗STn抗体:抗体3F1(SBHサイエンス(SBH Sciences)、ナティック、MA)、抗体B72.3(Colcher,D.ら著、1981年、PNAS.78巻(5号):3199~203頁を参照されたい)、および抗体CC49(Muraro,R.(ムラーロ,R.)ら著、1988年、がんリサーチ(Cancer Res.)、48巻:4588~96頁を参照されたい)と共有されている生殖系列遺伝子である、1つの生殖系列遺伝であるmuIGHV1S53に由来したことが決定された。分析に基づいた重鎖CDR配列の比較上の表示は、下記の表において提示する。
【0590】
【表13】

長さの中央値に対してプラスまたはマイナス1個のアミノ酸だけ変化するCDR-H3配列。
【0591】
興味深いことに、標的特異的軽鎖は、5つの軽鎖生殖系列ファミリー:IGKV6、IGKV15、IGKV8、IGKV1およびIGKV12に由来することが見出された。これらのうち、全ては、同じCDR-L2およびCDR-L3配列長を有した。2クラスのCDR-L1配列は持続することが見出され[長(IGKV8およびIGKV1)ならびに短(IGKV6、IGKV15、およびIGKV12)]、各クラスにおける統合されたトポロジーを潜在的提示した。
【0592】
軽鎖CDR配列の比較は、下記の表において提示する。
【0593】
【表14】

まとめると、配列分析は、特定の軽鎖生殖系列対形成と対応するCDR-H3多様性の別個のパターンを示唆する。3つの配列群[群A(部分群A1およびA2を有する)、群B(部分群B1およびB2を有する)、ならびに群C]は、これらの対形成に基づいて同定した。各群に分類される抗体のリストは、下記の表において提示する。
【0594】
【表15】

群Aは、抗体8C2-2D6、4G8-1E3および3F1を含む。これらの抗体は、CDR-H3長さに関して全ての他の抗体とは別個である(追加のアミノ酸を有し、より長いループを生じさせる)3F1を例外として、同様のCDR-H3配列を有する。群A抗体はまた、特に、CDR残基長さにおいて類似性を伴う軽鎖CDRを有する。
【0595】
群Bは、抗体2G12-2B2およびCC49を含む。重鎖配列における類似性の中で、これらの抗体は、CDR-H2において保存されたF残基およびD残基、ならびにCDR-H3において保存されたL残基を有する。さらに、群B抗体は、高度に同様の軽鎖配列を有する。
【0596】
群C抗体は、5G2-1B3およびB72.3を含む。これらの重鎖配列の間の類似性の中で、これらの抗体は、これらのCDR-H2配列において保存されたD残基、ならびにこれらのCDR-H3配列においてYYGモチーフを有する。群C抗体はまた、高度に同様の軽鎖配列を有する。
【0597】
同定された限定された数の群は、抗STn結合のために必要とされる相対的にまれな配列特異性を強調する。抗体の分類は、エピトープ結合への関連性のある群間の配列をベースとする寄与の同定を促進する。特に、群A内で、3F1は独自に、新規な結合プロファイルの一因となり得る延長されたCDR-H3ループを含有する。興味深いことに、免疫組織化学データは、内皮細胞への望ましくない結合を含めて、3F1がより広範な範囲の標的に結合し得ることを示す。
【0598】
実施例6
抗体バリアント
本発明の抗グリカン抗体についての可変ドメイン配列は、抗体の機能、発現、安定性および/または免疫原性に影響を与え得る配列特徴について分析した。
【0599】
分析された抗体の多くは、NG残基対を含有するCDR-H2配列を有したが、これによってアスパラギン脱アミドの影響を受けやすくなり、時間と共に3:1比のグルタメートおよびピログルタメートへの変換の可能性を伴う。これらの配列は、突然変異誘発に供して、NG残基対をSGまたはQG対に変換し、これらの部位における脱アミドを防止し得る。代わりに、これらの抗体は配合して、脱アミドを低減し得る。
【0600】
抗体2B2-2A7および5G2-1B3は、これらの軽鎖可変ドメインにおいてアスパルテート異性化部位(DGアミノ酸残基対によって同定される)を有した。これらの部位におけるアスパラギン酸は、時間と共にグルタメートおよびピログルタメートに3:1比で変換することができる。これらの配列は、突然変異誘発に供し、DG残基対をSGまたはQGに変換し、これらの部位における異性化を防止し得る。代わりに、これらの抗体は、異性化を低減するために配合し得る。
【0601】
抗体の多くは、N末端グルタミン残基を伴う重鎖を有する。これらの配列は、突然変異誘発に供され、N末端グルタミン残基をグルタメート残基に変換し得る。
凝集を起こしやすいパッチについての配列分析は、5G2-1B3のCDR-L3におけるHFWセグメントを明らかにしたが、これは抗体凝集を増加させる危険性を有する。凝集安定性研究は、このモチーフのバリアントで行って、凝集をより起こしやすくない抗体を同定し得る。
【0602】
実施例7
抗体のヒト化
リード抗体のヒト化バージョンは、配列および構造分析を使用して開発した。最初に、各抗体について、マウス生殖系列抗体配列を同定した(下記の表を参照されたい)。
【0603】
【表16】

次いで、抗体可変ドメイン配列をヒトフレームワーク配列と比較し、CDRグラフティングに適したヒトフレームワーク配列は、相同性によって同定した。可変ドメインの概略図は、図2において示すが、CDRと関連して、抗体可変ドメインフレームワーク領域のレイアウト[フレームワーク領域1(FR1)、フレームワーク領域2(FR2)、フレームワーク領域3(FR3)およびフレームワーク領域4(FR4)]を示す。下記の表は、抗体4G8-1E3、5G2-1B3、2G12-2B2、8C2-2D6、および3F1の対応するフレームワーク領域を置き換えるために選択されたヒトフレームワークまたはヒトコンセンサス配列を示す。ヒトコンセンサス1重鎖のFR4は、アミノ酸配列WGQGTLVTVSS(配列番号215)に対応し、ヒトコンセンサス1軽鎖のFR4は、アミノ酸配列FGQGTKVEIK(配列番号216)に対応する。
【0604】
【表17】

さらなる分析を行って、バッククロスして、抗体結合または他の特性を改善し得る残基を同定した。この分析に基づいて、いくつかのヒト化VLおよびVH配列は、合成および試験のために設計した。これらは、下記の表において提示する可変ドメイン配列を含む。表において、VHもしくはVLドメイン、それに続いてバリアント数を示す数字を示す。数字「0」を伴うドメインは、逆突然変異を有さないヒト化配列を表す。
【0605】
【表18-1】
【0606】
【表18-2】
【0607】
【表18-3】

可変ドメイン対は、完全抗体の最初の発現および試験のために選択した。5G2-1B3のために選択した対の中には、VL0およびVH0(逆突然変異なし);VL1およびVH1;VL1およびVH2;VL2およびVH1;VL2およびVH2;ならびにVL1およびVH3があった。4G8-1E3のために選択した対の中には、VL0およびVH0(逆突然変異なし);VL1およびVH1;VL1およびVH2;VL2およびVH1;VL2およびVH2;VL1およびVH3;VL3およびVH1;ならびにVL3およびVH3があった。2G12-2B2のために選択した対の中には、VL0およびVH0(逆突然変異なし);VL0およびVH1;VL0およびVH2;VL2およびVH1;VL2およびVH2;ならびにVL0およびVH3があった。8C2-2D6のために選択した対の中には、VL0およびVH0(逆突然変異なし);VL1およびVH1;VL1およびVH2;VL2およびVH1;VL2およびVH2;ならびにVL1およびVH3があった。8C2-2D6(V2)のために選択した対の中には、VL0およびVH0(逆突然変異なし);VL1およびVH1;VL1およびVH2;VL2およびVH1;VL2およびVH2;VL3およびVH2;ならびにVL1およびVH3があった。
【0608】
3F1全長重鎖アミノ酸配列(配列番号40)は、不対システイン残基の存在についてアセスメントした。重鎖の残基80は、IgGの部分であるとき対形成しないシステインであると同定された。システインは、溶液中にあるとき溶媒が到達可能であり、したがって反応性であると決定された。マウス3F1VHバリアントは、この残基(配列番号40の残基80)を、セリン残基
(QVQLQQSDAELVKPGASVKISCKASGYTFTDHAIHWVKQKPEQGLDWIGYISPGNGDIKYNEKFKDKVTLTADKSSSTASMHLNSLTSEDSAVYFCKRSLLALDYWGQGTTLTVSS; 配列番号42)
で置換するように設計した。
【0609】
ヒト化3F1抗体可変ドメインがまた設計されたが、下記の表において提示する。表において、VHもしくはVLドメイン、それに続いてバリアント数を示す数字を示す。数字「0」を有するドメインは、逆突然変異を伴わないヒト化配列を表す。提示した全てのVHバリアントは、不対システイン残基(配列番号40の残基80)をセリン残基で、または疎水性側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン)で置換して設計される。
【0610】
【表19】

可変ドメイン対は、完全抗体の最初の発現および試験のために選択した。3F1のために選択した対の中には、VL0およびVH0、VL1およびVH1、VL1およびVH2、VL1およびVH3、VL1およびVH4、VL0およびVH3があった。
【0611】
実施例8
ヒト化抗体の特性決定
従前の実施例に記載されているような可変ドメインを有するヒト化IgG1抗体を発現させ、MDA-MB-231-STn細胞によるフローサイトメトリーをベースとする結合分析;BSM ELISAによる結合分析;およびグリカンアレイ分析を含めた特性決定分析に供した。
【0612】
フローサイトメトリーをベースとする結合研究において、0~300nMの濃度範囲に亘り抗体をスクリーニングし、トランスフェクションによって誘発されるSTn発現を伴うもしくは伴わないMDA-MB-231細胞への結合を比較した。結合は抗ヒトAPCがコンジュゲートした二次抗体を使用して決定し、生細胞のみを考慮した(ヨウ化プロピジウムネガティブゲーティングに基づいて)。試料毎に平均して5,000の事象を集めた。フロージョー(FlowJo)ソフトウェア(アスランド(Asland)、OR)を使用してデータを分析し、結果として生じたAPC平均およびAPC%を得た。これらのデータはログ変換し、次いで、非線形回帰モデルにフィットさせ、用量応答曲線およびEC50結合情報を得た。ヒトアイソタイプIgG1抗体は、アイソタイプ陰性対照として使用した。上皮成長因子受容体(LA22、EMDミリポア(EMD Millipore)、ビルリカ、MA)は、陽性対照として使用した。
【0613】
BSM ELISA分析のために、ウシの顎下ムチン(BSM)をコーティングしたウェル上で0~100nMの濃度範囲に亘り抗体をスクリーニングした。ウェルのサブセットは抗体結合の前に穏やかな過ヨウ素酸溶液で処理し、末端シアル酸残基上の側鎖を除去した(STn抗原を破壊する)。過ヨウ素酸および非過ヨウ素酸で処理されたウェルの光学濃度を決定し、ログ変換し、次いで、非線形回帰モデルにフィットさせ、用量応答曲線を得た。過ヨウ素酸で処理されたウェルから得た光学密度値は非過ヨウ素酸で処理されたウェルから減算し、過ヨウ素酸感受性STn結合曲線および対応するEC50値を得た。
【0614】
グリカンアレイ分析は従前に記載されたように行い、抗体はその中に記載されているパラメーターによって、アレイグリカン結合プロファイルを割り当てられた。
フローサイトメトリー、ELISA、およびグリカンアレイ分析からの結果は、下記の表において提示する。
【0615】
【表20】

試験した全ての抗体は、細胞関連およびBSM関連STnへの結合を示した。ヒトIgG1アイソタイプ対照(サザンバイオテック(Southern Biotech)、バーミングハム、AL)では結合は観察されなかった。ヒト化5G2-1B3結合は、信頼できるEC50をBSM ELISAによって決定することができなかったため、ELISAアッセイにおいて過ヨウ素酸感受性でなかった。
【0616】
特性決定実験の結果に基づいて、1リットル発現のために各クローン群からの2つの抗体を選択し、結果として生じた抗体は同じ手順によって再び試験した(下記の表において提示した結果を参照されたい)。
【0617】
【表21】

発現した全ての抗体は、細胞関連およびBSM関連STn結合の両方について2nM未満のEC50を示した。
【0618】
実施例9
抗体-薬物コンジュゲートによるヒト化抗体の分析
従前の実施例に記載されているヒト化抗体の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)バージョンは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)とのコンジュゲーションによって開発した。これは、抗体と、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-モノメチルアウリスタチンE(MC-γc-PAB-MMAE、本明細書においてCL-MMAEと称する)とを接触させることによって行った。このように得られたコンジュゲーションは、マレイミド-システインをベースとし、ここで、抗体鎖間ジスルフィド結合はTCEPで還元し、次いで、薬物のマレイミド部分に連結させる。
【0619】
コンジュゲートされた抗体はセファデックスG50(Sephadex G50)カラム上で脱塩し、残留する非反応性の毒素を除去し、次いで、150mMのNaClを有する30mMのHEPES(pH7.7)中で透析した。
【0620】
次いで、ADC抗体は、MDA-MB-231細胞(親細胞またはSTnの増進された発現のためにトランスフェクト)を使用してADC細胞毒性アッセイにおいてアセスメントした。親細胞は、10%FBS、1×ペニシリン/ストレプトマイシンおよび45μg/mLのゲンタマイシンを補充したイーグル最小必須培地(EMEM)中で成長させた。STn陽性細胞は、抗生物質選択のために1mg/mLのG418を添加する以外は、同じ培地中で成長させた。細胞は、上記の適切な培地を使用して96ウェルプレートにおいて別々に播種した(親細胞について4,000個の細胞/ウェルまたはSTn陽性細胞について2,000個/ウェル)。細胞は一晩成長させた。16~20時間後、細胞を変動する濃度の試験抗体によって3連で(50nMから0.012nM)72時間処理した。次いで、ADC CELLTITER-GLO(登録商標)発光細胞生存率アッセイキット(プロメガ(Promega)、マディソン、WI)を使用して細胞を分析し、代謝的に活性細胞の指標である存在するATPの量を決定した。アッセイは、血清-補足培地中の培養細胞に直接加えられる単一の試薬を使用する。試薬は細胞を溶解し、存在するATPの量に比例した発光シグナルを生じさせる。発光シグナルは分析し、STn陽性細胞を死滅させるこれらの能力に基づいて使用される各抗体についてのIC50値を計算するために使用した(下記の表を参照されたい)。
【0621】
【表22】

試験した全ての抗体は、一桁のナノモル範囲におけるIC50値を示したが、それぞれについてのSTn発現細胞を死滅させる強力な能力を示す。
【0622】
実施例10
MDA-MB-231異種移植片モデル研究
異種移植片モデル研究は、ヒト化ADC抗体をin vivoで試験するために行う。がん性細胞の皮下注射によってマウスにおいて腫瘍を誘発する。注射のために使用されるがん性細胞は、(1)STnの発現を誘発するようにトランスフェクトされた細胞(MDA-MB-231STn+細胞)、(2)それらの表面上にSTnを天然に発現するがん細胞系、および(3)原発性ヒト患者腫瘍から採取した患者に由来する腫瘍細胞から選択される。
【0623】
患者の腫瘍細胞を使用するモデルは、ヒト腫瘍生物学をより忠実に複製し、他のモデルより薬物応答をより良好に予測し得る。いくつかの実験において、患者の腫瘍細胞は、結腸直腸がん患者に由来する。いくつかの実験において、RNA配列データベースをサーチして、ST6GalNAc Iを発現している細胞を同定した後で患者の腫瘍細胞が選択される。いくつかの実験において、患者の腫瘍細胞は、抗STn抗体を使用した免疫染色またはフローサイトメトリー分析によってアセスメントするように、STnの発現をベースとして選択する。
【0624】
腫瘍細胞が研究マウスに注射されると、所望の腫瘍体積(典型的には、約175mm~約225mm)に達するまで腫瘍を発生させる。この時点で、マウスは処置群に隔離する。次いで、マウスは、ヒト化MMAEがコンジュゲートされた抗体、無関係の対照抗体またはネイキッド(コンジュゲートしていない)抗体対照を含む組成物で処置する。用量は、1キログラムのマウス体重当たり約1~約20mgの抗体を送達するのに十分である。マウスは、単回用量もしくは複数回用量(例えば、3週間の間週1回)を受ける。処置の間、マウスは、重量の変化および腫瘍体積についてモニターされる。ヒト化ADC抗体で処置したマウスにおける腫瘍体積は、約20~100%低減する。
【0625】
実施例11
組織研究
ヒト化抗体は、ビオチンで直接標識されるか、または抗ヒトIgGビオチン標識二次抗体と事前複合体化させる。ホルマリン固定したパラフィン包埋された組織マイクロアレイ組織切片は、ビオチン化抗体または抗体複合体による処理の前に、脱パラフィンし、再水和し、抗原回収に供する。組織への抗体結合は、VECTASTAIN(商標)ABCキット(ベクターラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリンゲーム、CA)を使用して検出され、目に見える沈殿物を生成させる。ヘマトキシリンによる対比染色に続いて、スライドは、染色強度、頻度、および局在化について顕微鏡的に盲検法でスコア化する。各候補抗体について、60個の試料(30の器官、または器官の小領域についてそれぞれ2人のヒトドナー)を含有する正常組織マイクロアレイ(AC1、スーパーバイオチップス(Super Bio Chips)、ソウル、韓国)は、正常組織結合をアセスメントするために使用される。118のドナー腫瘍試料を含有するヒトがん組織マイクロアレイ(MA2およびMA4、スーパーバイオチップス(Super
Bio Chips)、ソウル、韓国)を試験して、がん性細胞への抗体結合をアセスメントする。全部で13の異なる一般の腫瘍タイプは全体的に試験し、各腫瘍タイプについて捕獲した多数の細分類アノテーションを伴う。ヒト化抗体は、ヒトがん組織切片におけるがん性細胞(膵臓および結腸直腸がん細胞を含めた)に結合し、正常な組織切片における細胞には最小の結合を伴うか、または結合しない。
【0626】
実施例12
In vitroでの生存率アッセイ
STnを内因的に発現しているがん細胞系(例えば、膵臓および結腸直腸の細胞系)を同定するために実験を行う。試験したものの中には、結腸直腸がんの細胞系[例えば、LS180(CL-187)、COLO205(CL-222)、TB4(CCL-248)、HT29(HTB-38)、RKO(CRL-2577)、SW480(CCL-228)およびSNU-C2A(CCL-250.1)細胞系]ならびに膵臓の細胞系[例えば、Panc-1(CRL-1469)、CFPAC1(CRL-1918)、HPAC(CRL-2119)、ASPC1(CRL-1682)、BXPC3(CRL-1687)、CPAN1(HTB-79)、およびHPAFII(CRL-1997)細胞系]がある。
【0627】
フローサイトメトリーは、STn発現をアセスメントするために利用する。抗STn抗体は、試験されている細胞系からの細胞と合わせる。APCがコンジュゲートされた二次抗体を使用して結合を決定し、生細胞のみを考慮する(ヨウ化プロピジウムネガティブゲートを使用して死細胞を除去する)。試料毎に平均して5,000の事象を集める。フロージョー(FlowJo)ソフトウェア(アシュランド、OR)を使用してデータを分析し、結果として生じたAPC平均およびAPC%を得る。アイソタイプ対照として、正常なIgG1抗体を利用する。STnを発現している細胞系を同定する。STnを発現していることが見出された細胞系を使用して、フローサイトメトリーをヒト化抗体で繰り返す。ヒト化抗体は、STnを発現しているがん細胞系に結合することが見出される。
【0628】
細胞生存率研究は、同定されたSTnを発現しているがん細胞系で行う。ヒト化抗体を使用して、MMAEとコンジュゲートしたADC抗体を形成させる。細胞はヒト化ADC抗体で処理し、各細胞系についてIC50値を計算する。試験したヒト化ADC抗体は、試験したSTnを発現しているがん細胞系を死滅させることにおいて有用である。
【0629】
実施例13
組織交差反応性研究
組織交差反応性(TCR)研究は、非臨床安全性試験において使用されるヒトおよび関連性のある種に対する抗体の結合プロファイル(オンターゲットおよび潜在的なオフターゲット結合の両方)をアセスメントするために行う。最初の特性決定および最適化のために、予備的なTCR研究は、ヒト組織(正常に対してがん)におけるヒト化リードADC抗体の染色パターンをアセスメントするために行う。リード候補は、最適な染色プロファイルを示し、特定のがん細胞の染色、および正常組織において染色されないかまたは最小の染色を伴う。
【0630】
ヒト、マウス、ラット、およびカニクイザルの正常組織パネル(例えば、脳、結腸、心臓、肝臓、肺、膵臓、小腸、脾臓、および胃)の凍結切片は、抗STn抗体結合についてプローブする。ヒト膵臓の新生物内の癌腫細胞を陽性対照組織として使用し、同じ組織内のストローマ細胞を陰性対照として使用する。検出は、間接的免疫ペルオキシダーゼ技術、それに続いてABC三次システムを利用し、抗STnヒト化抗体は、組織のインキュベーションの前にビオチン化二次抗体と事前複合体化されている。検証染色の実行は、全組織パネルを染色する前に、組織の限定されたパネルによって行われ、適切な抗体濃度および条件を決定する。
【0631】
実施例14
毒性学および薬物動態研究
毒性学研究は、毒性効果を有する抗体を同定し、各抗体についての無毒性量(NOAEL)を決定するために、ヒト化ADC抗体を使用してラットにおいて行う。マウスはADC抗体の細胞毒性構成要素であるアウリスタチンに対して耐性であるため、ラットは適切なモデルである。単回用量および複数回用量研究の両方は、1mg/kg、2.5mg/kg、または5mg/kgの用量を使用して行う。複数のラットが各処置群に含まれる。単回用量研究のために、動物の健康および体重をモニターし、処置の72時間後および処置の2週間後を含めた腹腔内(IP)の抗体投与の後の異なる時点においてラットを殺処分する。複数回用量研究のために、ラットは、0日目、2週目および4週目においてIP抗体注射を受ける。これらの研究において、ラットの健康および体重をモニターし、最後の用量の24時間後および最後の用量の2週間後を含めた投与後の異なる時点においてラットを殺処分する。
【0632】
殺処分の後、器官(副腎、脳、結腸、腸、心臓、腎臓、肺、顎下唾液腺、パンクレアーゼ、脾臓、胃、および甲状腺)を収集し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色および病理学的評価のために、ホルマリン固定し、パラフィン包埋する。
【0633】
試験したヒト化ADC抗体の単回および複数回用量投与に供したラットは、体重減少または有害な健康効果の徴候を示さない。器官はまた、試験した全ての時点において正常のように思われる。
【0634】
薬物動態分析のために利用されたラットにおいて、研究期間の前および研究期間に亘り血液試料を得て、研究抗体の血清濃度レベルを定量化し、薬物動態モデリングを行う。単回用量の結果および複数回用量研究デザインに基づいて、投薬の少なくとも24時間前に、1日目に(投与の概ね1時間後、4時間後、および8時間後に)、2日目に(投与の概ね24時間後に)、3日目に(投与の概ね48時間後に)、4日目に(投与の概ね72時間後に)、ならびに投与の後の様々な時間に血液を得る。
【0635】
血液試料は凝血させ、血清は遠心分離によって分離する。結果として生じた試料は、臨床病理評価(臨床化学、血液学、および凝固)に供する。臨床化学評価は、ナトリウム、クレアチニン、総タンパク質、カリウム、アルカリホスファターゼ、トリグリセリド、クロリド、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、カルシウム、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アルブミン、無機リン、グルコース、グロブリン、尿素、窒素、コレステロール、およびアルブミン/グロブリン比の分析を含む。血液学評価は、ヘマトクリット、平均赤血球ヘモグロビン濃度、ヘモグロビン、網状赤血球数(絶対的および相対的)、血小板数、赤血球数、平均血小板容積、総白血球数、平均赤血球ヘモグロビン量、白血球百分率数(絶対的および相対的)、平均赤血球容積、ならびに赤血球分布幅の評価を含む。凝固分析のために、プロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間を決定する。臨床病理評価は、ヒト化ADC抗体による処置からの有害効果を示さない。
【0636】
実施例15
患者に由来する腫瘍細胞の評価
患者に由来する異種移植片(PDX)細胞のSTn発現プロファイルを特性決定するために実験を行う。従前に記載したように、患者に由来するがん細胞を使用して、NOD/SCIDマウスにおいて腫瘍を生じさせる。結果として生じたPDX腫瘍からの細胞を取り出し、解離し、STn発現についてスクリーニングする。スクリーニングは免疫組織化学(IHC)によって最初に行い、次いで、フローサイトメトリー分析によって確認する。連続した研究のために、STnの最良の発現を伴うPDX腫瘍からの細胞を選択する。
【0637】
1つの連続した研究において、選択したPDX腫瘍からの細胞は、in vitroで培養する。いくつかの培養物は細胞毒性剤であるMMAEとコンジュゲートした本明細書に記載されているヒト化抗STn抗体で処理し、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成させる。これらのADCが培養細胞を死滅させる能力は、細胞生存率アッセイを使用して決定する。化学療法剤を伴うもしくは伴わないこれらの培養物の処理を比較するために研究を行う。ヒト化抗STn ADCは、STnを発現しているPDX腫瘍からの細胞を死滅させることができる。細胞を化学療法剤で最初に処理したとき、ヒト化抗STn ADCがこれらの細胞を死滅させる能力は増進される。
【0638】
別の連続した研究において、選択したPDX腫瘍からの細胞をin vitroで培養し、化学療法剤を伴ってまたは伴わずに処理する。化学療法剤処置の前および後のSTn発現を評価する。評価した細胞におけるSTn発現は、化学療法剤処置の後に増加する。
【0639】
実施例16
OVCAR3異種移植片モデルを使用した抗体試験
in vivoでの腫瘍モデルにおいてがん細胞を低減させるヒト化抗STn抗体の有効性を評価する。NOD/SCIDマウスに、MATRIGEL(登録商標)(コーニングライフサイエンス(Corning Life Sciences)、コーニング、NY)懸濁液中の5×10個のOVCAR3細胞を注入し、OVCAR3腫瘍形成を誘発させる。マウスが175~225mmの範囲の腫瘍体積を示すと、これらを本質的に同等である群平均腫瘍体積を伴う群に無作為化する。MMAEコンジュゲートを伴うヒト化抗STn抗体、アイソタイプ対照抗体、またはビヒクル対照[20mMのシトレート(pH5.5)および150mMのNaCl]は、2.5mg/kgの用量で投与し、処置の後、週2回、4週間、マウスは腫瘍体積および体重の変化についてモニターする(または腫瘍サイズが≧1000mmのエンドポイント体積に達するまで)。次いで、腫瘍は抽出し、生存腫瘍細胞の存在およびSTn発現について評価する。腫瘍体積を阻害もしくは低減させ;がん細胞数を低減させることができる抗体;および/または腫瘍におけるSTn発現は、さらなる研究において同定および使用される。
【0640】
実施例17
単一の抗体処置の後のPDX試料の評価
異なる抗体用量における抗STn抗体療法に対する異なる特徴を有するPDXモデルの応答性を比較するために実験を行う。継代された卵巣癌PDX腫瘍からのゆっくり凍結した組織をNOD/SCIDマウスに埋め込み、これらのマウスにおいて16週間に亘りPDX腫瘍を生じさせる。腫瘍を収集し、25匹のNOD/SCIDマウスに再注入し、12週間に亘りPDX腫瘍を生じさせる。結果として生じた腫瘍を再び収集し、52匹のNOD/SCIDマウスに再注入し、12週間の間、腫瘍を形成させる。次いで、これらのマウスは、2.5mg/kgまたは5mg/kg用量でのヒト化抗STn抗体(MMAEとコンジュゲートしている);アイソタイプ対照抗体;またはビヒクル対照[20mMのシトレート(pH5.5)および150mMのNaCl]の腹腔内注射で処置する。マウスの体重および腫瘍体積の変化は、処置の後(または腫瘍サイズが≧1000mmのエンドポイント体積に達するまで)週に2回モニターする。次いで、腫瘍を抽出し、フローサイトメトリーを使用して腫瘍細胞生存率およびSTn発現について評価する。抗STn抗体処置に応答するPDX腫瘍を同定する。
【0641】
実施例18
PDX腫瘍の複数用量処置
ヒト化抗STn処置への応答性を示すPDX腫瘍からの細胞は、複数用量抗体処置研究において使用するために選択する。継代された卵巣癌PDX腫瘍からのゆっくり凍結した組織はNOD/SCIDマウスに埋め込み、16週間に亘りこれらのマウスにおいてPDX腫瘍を生じさせる。腫瘍は収集し、25匹のNOD/SCIDマウスに再注入し、12週間に亘りPDX腫瘍を生じさせる。結果として生じた腫瘍は再び収集し、52匹のNOD/SCIDマウスに再注入し、腫瘍を12週間形成させる。次いで、これらのマウスは、5mg/kgの用量のヒト化抗STn抗体(MMAEとコンジュゲートしている);アイソタイプ対照抗体;またはビヒクル対照[20mMのシトレート(pH5.5)および150mMのNaCl]の腹腔内注射によって、4週間の間毎週処置する。マウスの体重および腫瘍体積の変化は、処置の後週2回モニターする(または腫瘍サイズが≧1000mmのエンドポイント体積に達するまで)。次いで、腫瘍は抽出し、腫瘍細胞生存率およびSTn発現についてフローサイトメトリーを使用して評価する。抗STn抗体処置に応答性であるPDX腫瘍が同定される。MMAEがコンジュゲートされたヒト化抗STn抗体は、腫瘍体積を低減させるのに最も有効である。
【0642】
実施例19
交差反応性、毒性学
交差反応性研究を行って、組織パネルを使用した免疫組織化学染色によって、ヒト、イヌ、およびラット対象の間のヒト化抗STn抗体の交差反応性を決定する。ヒト化抗STn抗体は、イヌおよびラット対象の両方と交差反応することが見出される。ラットにおいてさらなる毒物学的研究を行い、ヒト化抗STn抗体の毒性をアセスメントする。アセスメントは、生存中のアセスメント、例えば、死亡率/罹患率、臨床所見、体重、摂食量、体温、局所刺激、および眼科学を含む。ヒト化抗STn抗体は、10mg/kgおよびそれ未満の用量で毒性であることが見出されない。
【0643】
実施例20
薬物動態研究
MMAEとコンジュゲートしたヒト化抗STn抗体は、げっ歯類(例えば、ラット)または霊長類研究モデルに2.5mg/kgまたは5mg/kgの用量で投与し、抗体半減期および臨床病理学(例えば、臨床化学、血液学、および凝固)を評価する。アセスメントは、72時間、2週および4週の時点で行う。
【0644】
半減期分析のために、抗体投与の1時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後および72時間後に、抗体体液濃度を決定する。
臨床病理学のために、血液試料は、投薬の前(事前試験)、および投薬後の複数の時点において研究対象から集める。臨床化学のために、ナトリウム、クレアチン、総タンパク質、カリウム、アルカリホスファターゼ、トリグリセリド、クロリド、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、カルシウム、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アルブミン、無機リン、グルコース、グロブリン、尿素、窒素、コレステロール、およびアルブミン/グロブリン比を測定する。血液学のために、ヘマトクリット、平均赤血球ヘモグロビン濃度、ヘモグロビン、網状赤血球数(絶対的および相対的)、血小板数、赤血球数、平均血小板容積、総白血球数、平均赤血球ヘモグロビン量、白血球百分率数(絶対的および相対的)、平均赤血球容積、ならびに赤血球分布幅を決定する。凝固のために、プロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間を評価する。
【0645】
最後に、研究動物は安楽死させ、器官(副腎、脳、結腸、腸、心臓、腎臓、肺、顎下唾液腺、膵臓、脾臓、胃および甲状腺)を収集し、ホルマリン固定し、H&E染色のためのパラフィン包埋、専門委員会に認可された病理学者による病理学的評価を行う。試験したヒト化抗体では有害効果は観察されない。
【0646】
実施例21
ヒト化抗STn抗体を産生する安定的な細胞系
産生のためのGMP施設への移行に適した安定的な細胞系は、ヒト化抗STn抗体を産生するために産生される。FREEDOM(登録商標)pCHO1.0ベクター(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、ウォルサム、MA)は、本明細書において提示する可変ドメインの1つもしくは複数を有するヒト化抗体を発現している構築物を生じさせるために使用する。構築物は、Gibco FREEDOM(登録商標)CHO-S(登録商標)キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、ウォルサム、MA)を使用してトランスフェクションによってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)浮遊細胞中に導入し、細胞はキット説明書によって培養し、統合された構築物の安定発現を示すピューロマイシン耐性細胞を選択する。結果として生じた安定的な細胞系は、抗体産生および貯蔵のために成長させる。
【0647】
実施例22
増進されたST6GalNAc I発現を伴うSKOV3細胞系の生成
SKOV3細胞は、ST6GalNAc I発現構築物(hST6GalNAc I_pRc-CMV)を送達するレンチウイルスベクターで形質導入した。安定的な細胞プールを生じさせ、[定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析によって決定するように]変動する発現のST6GalNAc Iを伴う6つのクローンを選択した(下記の表を参照されたい)。
【0648】
【表23】

クローン7、8、および13は、形質導入されていない細胞系におけるレベルと比較したときに、最も高いレベルのST6GalNAc I mRNAを示した。
【0649】
実施例23
変動するSTn発現レベルを伴う細胞を使用した異種移植片腫瘍モデル研究
ヒト化抗STn抗体処置に対する変動するレベルのSTn発現を伴う異種移植片腫瘍の応答性を比較するために実験を行う。変動するレベルのSTn発現(すなわち、STn発現を伴わない細胞、低レベルのSTn発現を伴う細胞、中間レベルのSTn発現を伴う細胞、および高レベルのSTn発現を伴う細胞)を伴う腫瘍細胞を得る。これらは、ST6GAlNAC Iを過剰発現するように改変された細胞;ST6GalNAc I発現がノックダウンされた細胞;およびSTnが発現されていない、低発現レベル、中発現レベル、または高発現レベルの改変されていない細胞を含む。腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに埋め込み、腫瘍を生じさせる。
【0650】
次いで、マウスは、ヒト化抗STn抗体(コンジュゲートしたMMAEを有するもしくは有さない);アイソタイプ対照抗体;またはビヒクル対照[20mMのシトレート(pH5.5)および150mMのNaCl]の腹腔内注射で8週間処置する。マウスの体重および腫瘍体積の変化は、処置後に週2回モニターする。8週間後、抗STn抗体処置を受けているマウスは、さらに8週間の初期治療を続けるか、またはビヒクル対照での8週間の処置に無作為化する。16週の期間の終わりに、血清試料を得て、腫瘍細胞生存率およびSTn発現についてのフローサイトメトリーを使用した評価のために腫瘍を抽出する。
【0651】
MMAEとコンジュゲートした抗STn抗体は、最も高いレベルの抗腫瘍活性を生じさせる。無作為化による抗STn-MMAE処置の中止は腫瘍の復活を促進し、一方、抗STn-MMAE抗体による持続性の治療は腫瘍の復活を防止する。
【0652】
実施例24
STnの発現のための細胞系のスクリーニング
乳房、結腸、卵巣、リンパ球、骨髄、胃、膵臓、結腸直腸、皮膚細胞および他の腫瘍学的徴候の細胞系は、STn発現についてスクリーニングする。試験した細胞系は、SNU-16細胞、LS-174T細胞、MC38細胞、COLO205、RKO、HT29、Panc1、HPAC、HPAFII、TOV-112D細胞、TOV-21G細胞、Jurkate E6.1細胞、K-562細胞、B16-F0細胞、およびB16-F10細胞を含む。
【0653】
結腸直腸細胞系[例えば、LS180(CL-187)、COLO205(CL-222)、TB4(CCL-248)、HT29(HTB-38)、RKO(CRL-2577)、SW480(CCL-228)、およびSNU-C2A(CCL-250.1)]は、ST6GalNAcI発現および望ましい特徴(例えば、倍増時間、腫瘍化特性、化学療法抵抗性および抗原発現)に基づいてスクリーニングのために選択する。表面および酵素発現が発生および分化の間の細胞成長条件に基づいて異なり得ることを考え、STn発現は、in vitroおよびin vivoで成長した両方の細胞上で試験する。
【0654】
細胞系は、フローサイトメトリーによってSTn発現分析に供する。ヒト化抗STn抗体はSTn発現についてプローブするために使用され、ヒトアイソタイプ対照は陰性対照として利用する。
【0655】
各細胞系は培養液中で増殖し、異なる成長フォーマットの間で分配する。in vivoでのフォーマットのために、細胞はMATRIGEL(商標)(コーニングライフサイエンス(Corning Life Sciences)、コーニング、NY)懸濁液[1:1(v/v)の比で5×10個の細胞、MATRIGEL(商標)を伴う]中でNOD/SCIDマウスに注入し、異種移植片モデルを生じさせる。200mm、400mm、600mm、または1000mmの平均腫瘍体積を有するマウスを殺処分し、フローサイトメトリーによるSTn発現分析のために、および免疫組織化学分析のためのホルマリン固定したパラフィン包埋のために腫瘍を抽出する。
【0656】
STn発現を示す細胞は、抗STn抗体の選択、特性決定、および試験を含めたさらなる研究のために使用する。STnの低発現または無発現を示すいくつかの細胞は、さらなる研究(例えば、抗STn抗体の選択、特性決定、および試験)において使用する前に、STnを発現するようにトランスフェクトする。
【0657】
実施例25
STnを発現している結腸直腸細胞系におけるヒト化抗STn抗体の試験
ヒト化抗STn抗体は、STnを発現している結腸直腸細胞系中に内部移行するこれらの能力についてアセスメントする。抗CEA抗体は、陽性対照として使用する。CEAは、多くのタイプの結腸がん細胞の表面上で発現していることが公知であり、CEAを発現している他の細胞型と共に、結腸直腸細胞中に内部移行し得る。抗STn抗体および対照は、メーカーの指示によってALEXA FLUOR(商標)488(サーモフィッシャー(Thermo Fisher)、ウォルサム、MA)で共有結合的に標識する。フローサイトメトリーによって内部移行をアセスメントする前に、表面結合した抗体シグナルは、抗ALEXA FLUOR(商標)488抗体を使用してブロックする。結果は、抗STn抗体がSTnを発現している結腸直腸細胞系によって内部移行することを示す。
【0658】
実施例26
バイスタンダー死滅アッセイ
STn-陽性細胞はtranswell中に播種し、STn-低または陰性expressorはプレートの底上に播種する。STn陽性細胞のみまたはSTn陰性細胞のみを有するウェルは、対照として含める。MMAEコンジュゲートを伴う0~300nMの用量の抗STn抗体は、培養物(および毒性対照としていくつかのウェルにおける遊離MMAE)に加え、プロメガ(Promega)(マディソン、WI)ADC CELLTITER-GLO(登録商標)発光細胞生存率アッセイキットを使用して、STn低発現または陰性発現細胞の生存率を決定し、これは代謝的に活性な細胞の指標として存在するATPの量を決定する。
【0659】
結果は、STn発現細胞が、抗STn MMAEがコンジュゲートした抗体を内部移行することを示す。死にかけている細胞は切断された遊離MMAEを放出し、これはtranswell膜を横切って移動し、僅かから皆無のバイスタンダー死滅が非/低STn発現細胞における毒性を通して観察される。
【0660】
実施例27
血漿安定性研究
ヒト化抗STn抗体の血漿安定性は、ヒト、カニクイザル、ラットおよびマウス血漿において評価する。抗体はヒト、カニクイザル、ラットおよびマウスの血漿中にin vitroでスパイクし、次いで、37℃にて14日間までインキュベートする。血漿試料中の総ヒト化抗体、ヒト化抗体MMAEコンジュゲート、および遊離MMAEの濃度は、免疫アッセイおよびLC-MSをベースとする方法を使用して異なる日において定量化する。薬物と抗体の比(DAR)はまた、同じ試料においてアセスメントする。抗体は血漿中で相対的に安定的であり続け、DARは研究に亘って僅かなバリエーションを示す。
【0661】
実施例28
抗体マイクロアレイを使用したSTn含有タンパク質の同定
STn発現を誘発するトランスフェクションを伴うもしくは伴わないがん細胞(MDA
MB231)は、STnグリコシル化を担持するタンパク質を同定するために使用した。MDA-MB-231STn+/-からの粗細胞ライセートは、プリントされた抗体マイクロアレイでプローブした(Rhoら著、2013年)。各アレイは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-エステル反応性3D薄膜表面スライド(ネクステリオンHスライド(Nexterion H slide)、ショット(Schott))によって共有結合的に不動化された、概ね2100の独自のタンパク質を標的とする概ね3500のヒトタンパク質特異的抗体を三連で含有する。プリントされた抗体の標的は、がんに関連するタンパク質、シグナル伝達タンパク質、および従前に同定された血漿がんタンパク質から選択した。
【0662】
凍結したマイクロアレイスライドは、室温へと30分間平衡化し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の0.5%Tween20中で水和し、次いで、蒸留/脱イオン水(dd HO)ですすいだ。次いで、50mMのホウ酸ナトリウムpH8中の0.3%(v/v)エタノールアミンで30分間、それに続いて、PBS中の1%BSA(w/v)、0.5%Tween20で30分間インキュベートすることによってスライドをブロックした。次に、アレイは、PBS中の0.5%Tween20、それに続いてdd HOで洗浄した。次いで、スライドラックホルダー((ソーバルレジェンドRT)Sorvall Legend RT)を有するスインギングバケットロータにおいて、アレイは500rpmでの8分間の遠心分離によって乾燥させた。アレイの抗体をプリントされたエリアはカバーガラス(mシリーズリフタースリップ(mSeries Lifter Slips)、22×25×1mm、サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific))でカバーした。
【0663】
STn含有タンパク質の存在を検出するために、STn+/-細胞を培養し、3つの生物学的反復試験片で粗細胞ライセートを集め、試料を得た(STn+についてN=3およびSTn-についてN=3)。ライセートはスライド上にマイクロアレイ/カバーガラスのジャンクションにおいてピペット処理し、60分間室温にてインキュベートした。次いで、スライドは、PBS中の0.5%Tween20で5分間、2回洗浄した。蛍光シアニン5色素にコンジュゲートしたシアマブ(Siamab)のSTn抗体(Hu3F1、L1H1;Hu2G12-2B2、L2H2;Hu5G2-1B3、L1H2およびHu3F1、L1H1)と共にインキュベートした後で、STn含有糖タンパク質が検出された。アレイはPBS中の0.5%Tween20で2回、5分間、それに続いてPBSで2回(それぞれ5分)、およびdd HO水で1回洗浄し、それに続いて遠心分離による乾燥を行った。シグナルのバックグラウンドレベルを決定するために、アレイは単にSTn抗体(細胞ライセートは加えない)と共にインキュベートし、このように得られたシグナルはバックグラウンド除去法のために使用した。次いで、スライドはジェネピックス(Genepix)4200Aマイクロアレイスキャナー(アクソンインストルメンツ(Axon Instruments))上でスキャンし、赤い(Cy5)イメージを生じさせた。スキャンしたアレイイメージのスポット蛍光強度は、ジェネピックスプロ(GenepixPro)6.0イメージ分析ソフトウェアを使用して得た。
【0664】
STn+およびSTn-条件の間の蛍光強度(FI)の差異は、3つの統計的方法によって分析した。(1)エフェクトサイズ(((平均FI STn+細胞-平均FI STn-細胞))/STn-細胞の標準偏差)。エフェクトサイズ>3は、このアッセイにおいて望ましと考えられる。(2)p値。p値<0.25は、このアッセイにおいて望ましい。(3)比(2(対数平均FI STn+細胞)-対数平均FI STn-細胞)。比>1.2は、タンパク質がSTn+細胞において増加していることを示し、比<0.8は、タンパク質がSTn+細胞において減少していることを示唆する。
【0665】
各抗体異なる結合特性を有するように見えたが、異なる抗体の間の特定のタンパク質結合の確認は、がんのシアリルTn含量の全体的なアップレギュレーションの強力な証拠であった。さらに、公知のSTn担体であるMUC16およびMUC1が、このアッセイにおいて検出された。トップ35ヒットは、形質膜(7)、細胞外空間(8)、細胞核(6)および細胞質(17)に位置しているタンパク質からなった。全体的に、Hu3F1、L1H1は、最も広範な特異性を有し、検出した全部で86のタンパク質の63においてアップレギュレーションを検出した。このアッセイにおいてHu3F1,L1H1、Hu2G12-2B2、L2H2、Hu5G2-1B3、L1H2を使用して検出したSTnグリコシル化を有するいくつかのタンパク質の一例を、下記の表において列挙する。
【0666】
【表24】

列挙した全てのタンパク質は、少なくとも1種のSTn抗体に対する親和性を示したが、これはSTnグリコシル化の存在を示唆する。IHHは、リスト上に3つの別々のエントリーとして現れる。これらはIHHに対する3種の独自の抗体によって捕獲される。下記のタンパク質は、2つの異なる抗体クローン:IL10、SPP1、LY6D、MUC16、F5、PDPK1、SMS、MAPK3、OAS1、CRADD、GRB2、PRDX6、PCNAおよびCUX1との結合を示し、これらのSTnグリコシル化を強力に示した。
【0667】
これらのIL10、SPP1、LY6DおよびMUC16は、細胞外または細胞膜局在化を有し、がんバイオマーカーとして従前に結び付けられてきた。
IL10:インターロイキン-10は、活性化されたマクロファージおよびヘルパーT細胞によって産生される、IFN-ガンマ、IL-2、IL-3、TNFおよびGM-CSFを含めたいくつかのサイトカインの合成を阻害する。
【0668】
SPP1:オステオポンチンは、リガンド、シアル酸によって活性化され、I型免疫のために必須である。これは、CD44と相互作用することができる。SPP1は、サイトカインとして作用し、インターフェロン-ガンマおよびインターロイキン-12の産生を増強し、インターロイキン-10の産生を減少させる。
【0669】
MUC16:ムチン-16またはCA-125は、卵巣がんについての公知のがんバイオマーカーである。
LY6D:リンパ球抗原6Dは、B細胞およびT細胞発生の間のリンパ球の特異化段階においてB細胞特異化マーカーとしての役割を果たす。
【0670】
スクリーニングによって同定されるタンパク質のいくつかは、1種のみのSTn抗体クローンに特有であった。Hu3F1、L1H1によってグリコシル化を示すタンパク質は、下記の表において表す。
【0671】
【表25】

TLN1:タリン-1は、細胞骨格構造および形質膜の間の接続の部分である。TLN1は、マウス挿入突然変異誘発実験において従前に同定されたが、がんにおける原因となる役割を示唆する。TLN1発現は、がん細胞の浸潤および移動と相関する。
【0672】
MUC1:ムチン-1のベータサブユニットは、リン酸化およびタンパク質間相互作用によって細胞シグナル伝達に関与しているC末端ドメインを含有し、これを通してこれは腫瘍成長を促進することができる。B細胞において、Muc1は、ERK、SRCおよびNF-カッパ-Bシグナル伝達経路をモジュレートする。一方、活性化T細胞において、これはRas/MAPK経路をモジュレートする。
【0673】
Hu2G12-2B2、L2H2によるグリコシル化を示すタンパク質は、下記の表において表す。
【0674】
【表26】

ALDH1A1:レチナールデヒドロゲナーゼは、がん幹細胞マーカーである。これはまた化学療法耐性において結び付けられてきた。
【0675】
ANO1:アノクタミン-1は、カルシウム活性化クロライドチャネルであり、これは経上皮アニオン輸送において役割を果たす。ANO1は、乳がん細胞系および原発性腫瘍において増幅され、高度に発現されている。
【0676】
Hu5G2-1B3、L1H2によるグリコシル化を示すタンパク質は、下記の表において表す。
【0677】
【表27】

GPC3:グリピカン-3は、ヘパラン硫酸を担持する細胞表面プロテオグリカンである。これは主に中胚葉組織および器官における成長の抑制に関与している。抗GPC3モノクローナル抗体は、マウスにおいて抗がん活性を有することが示されてきた。
【0678】
Hu3F1、L1H1抗体によってSTnグリコシル化を示すタンパク質は、Mu3F1を使用してグリコシル化を示すタンパク質と比較した。結果は、下記の表におい提示する。
【0679】
【表28】

実施例29
代替グリカンアレイを使用したヒト化抗体試験
列挙した全てのタンパク質は、両方のSTn抗体に対して親和性を示し、STnグリコシル化の存在を示した。これらのCOL4A3、CCR5、およびMUC1は、細胞外または細胞膜局在化を有し、がんバイオマーカーとして従前に結び付けられてきた。
【0680】
COL4A3:コラーゲンアルファ-3(IV)鎖。IV型コラーゲンは、ラミニン、プロテオグリカンおよびエンタクチン/ナイドジェンと一緒に「チキンワイヤー」網目構造を形成する、糸球体基底膜(GBM)の主要な構造的構成要素である。コラーゲンアルファ3(IV)NC1ドメインに対応する切断フラグメントであるタムスタチンは、抗血管新生および抗腫瘍細胞活性の両方を有する。
【0681】
CCR5:C-Cケモカイン受容体5型は、いくつかの炎症性CC-ケモカインについての受容体である。CCR5は、血液からヒト結腸直腸がんにおける腫瘍部位への調節性T細胞(Treg)の動員において結び付けられてきた。腫瘍成長はCCR5-/-マウスにおいて遅延しており、腫瘍Treg浸潤の低減と関連している。
【0682】
13の化学的に合成され、詳細に明らかにされたグリカンを有する代替グリカンアレイはまた、単一の実験において複数のグリカンについての抗体の親和性および特異性を試験するために利用した。代替グリカンアレイは、下記の表において列挙したNeu5AcおよびNeu5Gcグリカン対を含む。
【0683】
【表29】

ポリアクリルアミド(PAA)がコンジュゲートされた、ヒト血清アルブミン(HAS)がコンジュゲートされた、またはアミンがコンジュゲートされたグリココンジュゲートは、グリカンプローブ調製のために利用した。グリココンジュゲートは、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ユー,H.(Yu,H.)ら著、2007年、有機化学および生体分子化学(Org Biomol Chem.)、5巻:2458~63頁において記載された方法によって化学酵素的に合成した。シアログリカンは、ユー(Yu)らによって記載されているように「ワンポット3酵素」アプローチを使用して合成される(そのそれぞれの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、ユー,H.(Yu,H.)ら著、ネイチャープロトコル(Nat Protoc.)、2006年、1巻(5号):2485~92頁、ユー,H.(Yu,H.)ら著、アメリカ化学会誌(J Am Chem Soc.)、2005年、127巻:17618~9頁およびユー,H.(Yu,H.)ら著、2006年、アンゲヴァンテケミーインターナショナルエディション英語版(Angew Chem Int Ed Engl.)、45巻:3938~44頁)。化合物構造は、HRMS(ESI)質量分析法によって確認した。それぞれの合成されたグリカンの純度はHPLC分析によってアセスメントし、95%超の純度を伴うグリカン調製物のみを使用した。
【0684】
アレイは、各スライド上に16のサブアレイブロックを有する946MP3マイクロアレイプリンティングピン(アレイイット社(Arrayit Corporation)、サニーベール、カリフォルニア)を備えたナノプリント(NanoPrint)LM-60マイクロアレイヤーでエポキシド誘導体化スライド(コーニング(Corning)、ニューヨーク)上にプリントした。グリカンプローブは、試料毎に4つの複製ウェルおよびウェル毎に8μLを使用して384ウェル源プレート中に分配した。グリカンプローブを、プリント緩衝液(300mMのリン酸緩衝液、pH8.4)中でグリカン毎に100μMの濃度で調製した。さらに、リンカー(O(CH2)2CH2NH2)単独および緩衝液単独(300mMのリン酸緩衝液、pH8.4)は、4連でアレイ上にプリントした。プリント品質をモニターするために、マウスIgGおよびヒトIgGはまた、各スライド上にプリントした(10%グリセロールを含有するPBS中40ng/uLおよび20ng/uL、ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories)、ウエストグローブ、ペンシルベニア)。アレイは4個の946MP3ピンでプリントした(5μmのチップ、0.25uLの試料チャネル、概ね100μmのスポット直径、アレイイット社(Arrayit Corporation))。各ブロック(サブアレイ)は、10列、8カラム、275μmのスポット間の間隔を有した。アレイチャンバーにおける湿度レベルは、プリントの間に約70%に維持した。プリントされたスライドはアレイヤーデッキ上に一晩静置し、湿度を周囲レベル(40~45%)に低下させた。次いで、スライドをパックし、真空シールし、室温にて貯蔵した。
【0685】
グリカンアレイは、Hu2G12-2B2、L0H2、Hu8C2-2D6、L1H1、Hu5G2-1B3、L1H2、Mu2G12-2B2、およびMu3F1を使用してアッセイした。
【0686】
さらに、対照抗体およびレクチンはまたアレイ上で試験し、アレイにおけるグリカンが公知のグリカン結合剤によって認識することができるかを決定した。これらは、(a)Gc含有グリカン、Neu5Gcα6GalNAcαO(CH2)2CH2NH2(GcSTn)(グリカン識別番号2)、Neu5Gcα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号4)、Neu5Gcα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号6)、Neu5Gcα6GalβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号8)およびNeu5Gcα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号13)に結合する抗Gc抗体;(b)(2,3)-連結シアル酸を含有するグリカン、例えば、Neu5Acα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号12)およびNeu5Gcα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号13)に結合するMAL-II(イヌエンジュ(Maackia Amurensis)レクチンII);(c)末端ガラクトースに連結した(2、6)シアル酸を含有するグリカン、例えば、Neu5Acα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号3)、Neu5Gcα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号4)、Neu5Acα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号5)およびNeu5Gcα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2(グリカン識別番号6)に優先的に結合するSNA(セイヨウニワトコ(Sambucus Nigra)レクチン);ならびに(d)アイソタイプ陰性対照として、予想どおりグリカンも、リンカー/緩衝液プリントされた対照も結合していないパリビズマブを含む。
【0687】
エポキシブロッキング緩衝液(300ml)は、15mlのトリス緩衝液(pH8、2M)と、0.9mlのエタノールアミン(16.6M)および284.1mlの蒸留水とを合わせることによって調製した。0.2μMのニトロセルロース膜を使用して溶液を濾過した。エポキシ緩衝溶液および1Lの蒸留水を50℃に事前に温めた。スライドガラスはスライドホルダー中に配置し、温めたエポキシブロッキング緩衝液を有する染色タブに迅速に浸した。スライドをエポキシブロッキング緩衝液中で定期的に振盪しながら50℃にて1時間インキュベートし、エポキシ結合部位を不活性化した。次に、スライドを蒸留水ですすぎ、プロプレート(ProPlate)スライドホルダー(グレースバイオラボ(Grace Bio-Labs)#204862 16、四角、7×7mmチャンバー)中に置き、次いで、1%OVAを有するPBSで25℃にて1時間ブロックした。試験抗体およびアイソタイプ対照抗体は、1ug/mLおよび2.5ug/mLで試験した。対照抗体抗Gcは、0.5ug/mLおよび1ug/mLで試験した。対照ビオチンタグ付けレクチンは、MALIIについて40ug/mLで、およびSNAについて20ug/mLで試験した。全ての抗体/レクチンは、ブロッキング緩衝液(1%OVA/PBS)に希釈し、グリカンアレイと共に25℃にて1時間インキュベートした。広範な洗浄の後、ポリクローナル血清抗体の結合は、グリカンマイクロアレイスライドをCy3がコンジュゲートされた抗SA、抗マウスIgGまたは抗ヒトIgG(ジャクソンイミュノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、ウエストグローブ、PA)と共に1時間インキュベートすることによって検出した。次いで、スライドは広範に洗浄し、乾燥させ、ジェネピックス(Genepix)4000Bスキャナー(100%でのレーザー;350でのゲイン;10μmピクセル)でスキャンした。スキャンしたイメージからの生蛍光強度データはジェネピックス(Genepix)ソフトウェアを使用して抽出し、生データの分析を行った。抗体は、両方の分子への結合を示すが、アレイ上のTnまたは任意の他のグリカンへの結合を示さなかった場合、AcSTnおよびGcSTnに対して高度に特異的であると考えられた。
【0688】
抗体Hu2G12-2B2、L0H2、Hu8C2-2D6、L1H1、Hu5G2-1B3、L1H2、Mu2G12-2B2、およびMu3F1は、AcSTnおよびGcSTn(グリカン識別番号1および2)への結合を示すが、アレイにおける他のグリカンへの結合を示さなかったが、これは、これらの抗体が特異的にSTnグリカンのみについて親和性を有することを示す。予想どおりに、Gcを含有するアレイ中の全てのグリカンに結合する抗Gc抗体、(2,3)-連結シアル酸を含有するアレイ中のグリカンに結合するMALII、末端ガラクトースに連結した(2、6)シアル酸を含有するアレイ中のグリカンに結合するSNA、およびパリビズマブ対照は、グリカンへの結合を示さなかった。これらの結果は、グリカンアレイが、プリントされたグリカンに対して特異的である抗体およびタンパク質によって認識することができるグリカンを含有することを示した。
【0689】
実施例30
ネオ糖脂質アレイ分析
ネオ糖脂質プローブは、下記の表に記載されている化学的に合成したグリカンから調製する。
【0690】
【表30】

ネオ糖脂質は、グリカンを、アミノリン脂質N-アミノアセチル-N-(9-アントラセニルメチル)-1,2-ジヘキサデシル-sn-glycero-3-ホスホエタノールアミン(ADHP)にコンジュゲートすることによって蛍光プローブを生じさせるか、または還元的アミノ化によってL-1,2-ジヘキサデシル-sn-glycero-3-ホスホエタノールアミン(DHPE)とコンジュゲートするか、またはオキシム連結によってN-アミノオキシアセチル-1,2-ジヘキサデシル-sn-glycero-3-ホスホエタノールアミン(AOPE)とコンジュゲートし非蛍光プローブを生じさせることによって調製する。コンジュゲーション反応は、NGLが固体マトリックス上に固定化されることを可能とする。糖タンパク質から還元的に放出されてきたグリカンは、コンジュゲーションの前に穏やかな過ヨウ素酸反応に供する。コンジュゲーションの後に、NGL産物を精製し、過剰な脂質および塩を除去し、質量分光光度法によって分析し、デンシトメトリーによる高性能薄層クロマトグラフィー上で定量化する。
【0691】
ネオ糖脂質アレイは、リポソーム製剤において、ニトロセルロースをコーティングしたスライドガラス上にネオ糖脂質プローブをロボットにより分注することによって生成される。プローブは複数の濃度および密度でプリントし、最適なハイブリダイゼーション条件を決定する。
【0692】
スライドは、精製した抗STn抗体溶液、または抗STn抗体を含有するポリクローナル血清でプローブする。抗体結合は、ビオチン化二次抗体、それに続いて蛍光標識されたストレプトアビジンを使用して検出する。スライドはプロスキャンアレイ(ProScanArray)(パーキンエルマーライフサイエンス(Perkin Elmer Life Sciences))を使用してスキャンし、蛍光結合シグナルはスキャンアレイエキスプレス(ScanArray Express)ソフトウェア(パーキンエルマーライフサイエンス(PerkinElmer Life Sciences))を使用して定量化する。精製した抗体または血清は、両方の分子への結合を示すが、アレイ上のTnまたは任意の他のグリカンへの結合を示さない場合、AcSTnおよびGcSTnに対して高度に特異的であると考えられる。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
[項目1]
配列番号115、114、116~120、140、および141からなる群から選択されるアミノ配列と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有するCDR-H3相補性決定領域を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む、抗体。
[項目2]
前記VHが、
配列番号105、106、および136からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-H1;ならびに
配列番号107~113、および137~139からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するCDR-H2を含む、項目1に記載の抗体。
[項目3]
配列番号89、91、93、95~98、101~103、133~135、および148からなる群から選択されるアミノ配列と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有するCDR-L3を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体。
[項目4]
前記VLが、
配列番号121~129、および142~146からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-L1;ならびに
配列番号77、79~81、83~86、88、130~132、および147からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有するCDR-L2を含む、項目3に記載の抗体。
[項目5]
配列番号206~216からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのヒトフレームワーク領域を含む、項目1から4のいずれか一項に記載の抗体。
[項目6]
配列番号220~224、230~234、237~241、249~253、および256~260からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するVHを含む抗体。
[項目7]
配列番号217~219、225~229、235、236、242~248、254、および255からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するVLを含む抗体。
[項目8]
配列番号220~224からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH;および
配列番号217~219からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVLを含む、項目6または7に記載の抗体。
[項目9]
配列番号237~241からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH;ならびに
配列番号235および236からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVLを含む、項目6または7に記載の抗体。
[項目10]
IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、およびIgG4からなる群から選択されるアイソタイプを含む、項目1から9のいずれか一項に記載の抗体。
[項目11]
前記抗体が、ヒト抗体またはヒト化抗体である、項目1から10のいずれか一項に記載の抗体。
[項目12]
前記抗体が、ヒトIgG1抗体である、項目1から10のいずれか一項に記載の抗体。
[項目13]
項目1から12のいずれか一項に記載の抗体をコードする構築物。
[項目14]
項目13に記載の構築物を含む細胞。
[項目15]
項目13に記載の構築物を含むベクター。
[項目16]
項目14に記載の細胞によって産生される抗体。
[項目17]
約0.01nM~約30nMの最大半量有効濃度(EC50)を伴って細胞関連STnに結合する、項目1から12のいずれか一項に記載の抗体。
[項目18]
前記抗体が、治療剤にコンジュゲートしている、項目1から12のいずれか一項に記載の抗体。
[項目19]
前記治療剤が、細胞毒性剤である、項目18に記載の抗体。
[項目20]
前記細胞毒性剤が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される、項目19に記載の抗体。
[項目21]
前記細胞毒性剤が、MMAEであり、前記抗体が、約0.1nM~約20nMの最大半量阻害濃度(IC50)を伴ってSTn関連細胞を死滅させることができる、項目20に記載の抗体。
[項目22]
項目1~12または17~21のいずれか一項に記載の抗体を投与することを含む、がんを処置する方法。
[項目23]
前記がんが、少なくとも1個の腫瘍を含む、項目22に記載の方法。
[項目24]
前記少なくとも1個の腫瘍の体積が低減する、項目23に記載の方法。
[項目25]
前記少なくとも1個の腫瘍の体積が、少なくとも20%低減する、項目24に記載の方法。
[項目26]
前記少なくとも1個の腫瘍が、少なくとも1個の腫瘍細胞を含み、前記少なくとも1個の腫瘍細胞が、少なくとも1種の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)を含む、項目23~25のいずれか一項に記載の方法。
[項目27]
前記少なくとも1種のTACAが、シアリル(α2,6)N-アセチルガラクトサミン(STn)を含む、項目26に記載の方法。
[項目28]
前記がんが、乳がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、前立腺がん、および肝臓がんの1つもしくは複数を含む、項目22~27のいずれか一項に記載の方法。
[項目29]
前記抗体が、化学療法剤および治療用抗体の少なくとも一方と組み合わせて投与される、項目22~28のいずれか一項に記載の方法。
[項目30]
前記化学療法剤が、フルロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンの少なくとも1つから選択される、項目29に記載の方法。
[項目31]
前記治療用抗体が、ベバシズマブおよび抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体の少なくとも1つから選択される、項目28または29に記載の方法。
[項目32]
前記抗体が、約0.1mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される、項目22~31のいずれか一項に記載の方法。
[項目33]
前記抗体が、約2.5mg/kg~約5mg/kgの用量で投与される、項目32に記載の方法。
[項目34]
前記抗体が、処置の約1日後から処置の約1カ月後に得た少なくとも1つの対象試料において検出可能である、項目32または33に記載の方法。
[項目35]
前記抗体が、MMAEとコンジュゲートしており、前記MMAEと前記抗体の、薬物と抗体の比(DAR)が、前記少なくとも1つの対象試料において50%未満変化する、項目34に記載の方法。
[項目36]
少なくとも1種のTACAの存在について細胞または試料をスクリーニングする方法であって、前記細胞または試料と項目1~12のいずれか一項に記載の抗体とを接触させることを含む、方法。
[項目37]
前記少なくとも1種のTACAが、STnを含む、項目36に記載の方法。
[項目38]
前記試料が、生体試料であり、前記生体試料が、対象から得られる、項目36または37に記載の方法。
[項目39]
前記対象が、がんを有するか、またはがんを有することが疑われている、項目38に記載の方法。
[項目40]
前記生体試料が、細胞、組織、組織切片、および体液の1つもしくは複数を含む、項目38または39に記載の方法。
[項目41]
前記抗体が、検出可能な標識を含む、項目36~40のいずれか一項に記載の方法。
[項目42]
前記抗体が、検出剤を使用して検出される、項目36~40のいずれか一項に記載の方法。
[項目43]
前記検出剤が、二次抗体である、項目42に記載の方法。
[項目44]
前記二次抗体が、検出可能な標識を含む、項目43に記載の方法。
[項目45]
項目38~44のいずれか一項に記載の方法によって試料をスクリーニングすることを含む、対象においてがんを診断する方法。
[項目46]
コンパニオン診断の一部である、項目45に記載の方法。
[項目47]
前記コンパニオン診断が、がんの重症度を層別化し、がんの危険性を層別化し、臨床治験のために対象を選択し、治療レジメンを開発し、治療レジメンをモジュレートし、処置の安全性を増加させ、処置の有効性をモジュレートすることの1つもしくは複数のために使用される、項目46に記載の方法。
[項目48]
前記試料が、タンパク質アレイを含む、項目36~40のいずれか一項に記載の方法。
[項目49]
前記タンパク質アレイが、1種もしくは複数のタンパク質を結合するように構成された1種もしくは複数の抗体を含み、前記1種もしくは複数のタンパク質の少なくとも1つが、前記試料中に存在する、項目48に記載の方法。
[項目50]
項目1~12のいずれか一項に記載の抗体を含む、項目36~49のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
[項目51]
二次抗体を含む、項目50に記載のキット。
[項目52]
前記二次抗体が、検出可能な標識を含む、項目51に記載のキット。
[項目53]
項目1~12および17~21のいずれか一項に記載の抗体の1つもしくは複数を含む組成物。
[項目54]
少なくとも1種の添加剤を含む、項目53に記載の組成物。
[項目55]
前記少なくとも1種の添加剤が、薬学的に許容される添加剤を含む、項目54に記載の組成物。
[項目56]
抗体をコーティングした薬剤を含む、項目53に記載の組成物。
[項目57]
前記抗体をコーティングした薬剤が、粒子、ナノ粒子、タンパク質、融合タンパク質、脂質、リポソーム、および細胞の1つもしくは複数を含む、項目56に記載の組成物。
[項目58]
前記抗体が、抗体フラグメントである、項目56または57に記載の組成物。
[項目59]
前記抗体フラグメントが、Fabフラグメントおよび単鎖Fvの1つもしくは複数から選択される、項目58に記載の組成物。
[項目60]
合成構築物を含む改変された細胞であって、前記合成構築物が、因子をコードし、前記因子が、細胞のSTnレベルをモジュレートする、細胞。
[項目61]
前記因子が、STn合成に関与する少なくとも1種の因子を含む、項目60に記載の改変された細胞。
[項目62]
前記少なくとも1種の因子が、(アルファ-N-アセチル-ノイラミニル-2,3-ベータ-ガラクトシル-1,3)-N-アセチルガラクトサミニド、アルファ-2,6-シアリルトランスフェラーゼI(ST6GalNAc I)、T-シンターゼ、およびコア1ベータ3-ガラクトシルトランスフェラーゼ特異的分子シャペロン(COSMC)の少なくとも1つから選択される、項目61に記載の改変された細胞。
[項目63]
少なくとも1種の改変されていない細胞と比較したときに、上昇したSTnレベルを含む、項目60~62のいずれか一項に記載の改変された細胞。
[項目64]
前記因子が、ST6GalNACの発現を低減させる、項目60に記載の改変された細胞。
[項目65]
前記因子が、阻害性リボ核酸(RNA)分子である、項目64に記載の改変された細胞。
[項目66]
改変された卵巣腫瘍細胞である、項目60~65のいずれか一項に記載の改変された細胞。
[項目67]
前記改変された卵巣腫瘍細胞が、SKOV3細胞、OVCAR3細胞、OVCAR4細胞、BRCA1変異腫瘍細胞、および非BRCA1変異腫瘍細胞の1つもしくは複数から選択される、項目66に記載の改変された細胞。
[項目68]
抗体の結合を特性決定する方法であって、グリカンアレイと前記抗体とを接触させることを含み、前記グリカンアレイが、複数のグリカンを含む、方法。
[項目69]
前記グリカンアレイが、グリカンのパネルを含み、前記グリカンのパネルが、
Neu5Acα6GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Gcα6GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Acα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Gcα6Galβ4GlcNAcβO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Acα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Gcα6Galβ4GlcβO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Acα6GalβO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Gcα6GalβO(CH2)2CH2NH2;
GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;
Galβ3GalNAcβO(CH2)2CH2NH2;
Gal3βGalNAcαO(CH2)2CH2NH2;
Neu5Acα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2;および
Neu5Gcα3Galβ1-3GalNAcαO(CH2)2CH2NH2のそれぞれの1つもしくは複数からなる、項目68に記載の方法。
[項目70]
前記複数のグリカンのそれぞれが、ネオ糖脂質プローブの部分である、項目68または69に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
【配列表】
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