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特開2022-119796高電力パルス生成のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119796
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】高電力パルス生成のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 7/10 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
H05H7/10
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077147
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2019565151の分割
【原出願日】2018-01-31
(31)【優先権主張番号】15/427,672
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519291124
【氏名又は名称】スタンジネス インダストリーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STANGENES INDUSTRIES, INC.
【住所又は居所原語表記】1052 East Meadow Circle, Palo Alto, California 94303 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェケル, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】キャセル, リチャード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キッカー磁石を起動及び停止するためのパルスを生成する装置並びに方法が提供される。
【解決手段】キッカー磁石が停止されると、回路はインダクタ内で、磁界を生成及び蓄積する。キッカー磁石が起動されると、回路は、インダクタに蓄積された磁界及び電流がキッカー磁石を起動するために必要な電流を最小限の時間で提供できるように構成を変更する。この回路の構成は、スイッチの使用を介して変化する。このスイッチは、キッカー磁石が粒子線を偏向させる状況で用いられるときにスイッチに衝突し得る高電圧事象及びルーグニュートリノに対する保護を提供するように配置されたツェナーダイオードを使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッカー磁石内に電流パルスを生成する装置であって、
1つ以上の第1のスイッチであって、
前記1つ以上の第1のスイッチがオンにされた場合に、
前記装置が、電源からインダクタへと電流を流す経路を生成するよう構成されている、1つ以上の第1のスイッチと、
1つ以上の第2のスイッチであって、
前記1つ以上の第2のスイッチがオンにされた場合に、
前記装置が、前記インダクタから前記キッカー磁石へと電流を流す経路を生成するよう構成されている、1つ以上の第2のスイッチと、を備え、
第1の期間中に前記1つ以上の第1のスイッチをオンにし、及び前記1つ以上のスイッチをオフにするように構成され、並びに、
第2の期間中に前記1つ以上の第2のスイッチをオンにし、及び前記1つ以上のスイッチをオフにするように構成される、装置。
【請求項2】
第1の期間中に、前記キッカー磁石が停止されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の期間中に、前記装置が、前記インダクタ内に磁界を生成及び蓄積するよう構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の期間中に、前記装置が、前記キッカー磁石を起動するよう構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の期間中に、前記装置が、前記第1の期間中に前記インダクタ内に生成され及び蓄積された前記磁界を使用して、前記キッカー磁石内に電流を誘導するよう構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記インダクタのインダクタンスと前記キッカー磁石のインダクタンスの比率が、電流が前記キッカー磁石に送達される時間を最小化するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのコレクタに接続され、及び、前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのゲートに接続される1つ以上の第1のツェナーダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧が、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードに接続されるスイッチの定格電圧未満であるように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのコレクタと接続され、及び前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのゲートに接続される1つ以上の第2のツェナーダイオードを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第2の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧が、前記第2の1つ以上のツェナーダイオードに接続されるスイッチの定格電圧未満であるように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのコレクタと接続され、及び前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのゲートに接続される1つ以上の第1のツェナーダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧が、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードに接続されるスイッチの定格電圧未満であるように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのコレクタと接続され、及び前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのゲートに接続される1つ以上の第2のツェナーダイオードを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第2の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧が、前記第2の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧に接続されるスイッチの定格電圧未満であるように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
キッカー磁石内に電流パルスを生成する方法であって、
装置を第1の構成で動作させることであって、
1つ以上の第1のスイッチをオンにすることであって、
オンになっている時の前記1つ以上の第1のスイッチが、電流を電源から前記1つ以上の第1のスイッチを通って及びインダクタへと流すための経路を提供するように構成並びに配置されている、1つ以上の第1のスイッチをオンにすることと、
1つ以上の第2のスイッチをオフにすることと、を備え、
第1の期間中に、前記1つ以上の第1のスイッチをオンにすること、及び前記1つ以上の第2のスイッチをオフにすることが生じる、第1の構成の装置を動作させること、並びに、
前記装置を第2の構成で動作させることであって、
1つ以上の第2のスイッチをオンにすることであって、起動している時の前記1つ以上の第2のスイッチが、前記インダクタから前記キッカー磁石まで電流を流すための経路を提供するために構成及び配置されている、1つ以上の第2のスイッチをオンにすることと、
前記1つ以上の第1のスイッチをオフにすることと、を備え、
第2の期間中に、前記1つ以上の第2のスイッチをオンにすること、及び前記1つ以上の第1のスイッチをオフにすることが生じる、第2の構成の装置を動作させることと、
を備える、方法。
【請求項16】
前記装置を前記第1の構成で動作させることは、前記キッカー磁石が停止されていることに対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記回路が前記第1の構成で動作している間に、前記インダクタにおいて、磁界が生成及び蓄積される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記装置を前記第2の構成で動作させることは、前記キッカー磁石が停止されていることに対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記装置が前記第2の構成で動作している間に、前記第1の期間中に前記インダクタ内で生成及び蓄積された前記磁界は、前記キッカー磁石内に電流を誘導する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記インダクタのインダクタンスと前記キッカー磁石のインダクタンスとの比率は、前記キッカー磁石に電流が送達される時間を最小限に抑えるように構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチは、前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのコレクタを前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのゲートに接続する1つ以上の第1のツェナーダイオードを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードが接続される前記1つ以上の第1のスイッチの前記スイッチの定格電圧よりも低い降伏電圧を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチは、前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのコレクタを前記1つ以上の第1のスイッチの各スイッチのエミッタに接続する第2の1つ以上のツェナーダイオードを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧は、前記第1の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧よりも大きく、前記第1の1つ以上のスイッチの定格電圧よりも小さい、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチは、前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのコレクタを前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのゲートに接続する第3の1つ以上のツェナーダイオードを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3の1つ以上のツェナーダイオードは、前記第3の1つ以上のツェナーダイオードが接続される前記1つ以上の第2のスイッチの前記スイッチの定格電圧よりも低い降伏電圧を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチは、前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのコレクタを前記1つ以上の第2のスイッチの各スイッチのエミッタに接続する第4の1つ以上のツェナーダイオードを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第4の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧は、前記第3の1つ以上のツェナーダイオードの降伏電圧よりも大きく、前記第2の1つ以上のスイッチの定格電圧よりも小さい、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、「高電力パルス生成器のためのシステム及び方法」という名称の、2017年2月8日に出願された米国特許出願第15/427,672号の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は粒子線をターゲットから離れるように、またはターゲットに向かって偏向させるように設計された磁石に迅速に電力を供給するために高電力パルスを必要とするキッカー磁石などの装置に電力を供給する際に使用するための、最小立ち上がり時間を有する高電力パルスの生成に関する。
【背景技術】
【0003】
指向性粒子線は様々な利益を達成するために、研究、産業、及び医療用途で使用することができる。一例として、指向性粒子線は、癌性細胞をイオン化し、それによって癌性細胞の特性を変化させ、及び、しばしば癌性細胞の増殖能力を妨げるために、用いられることができる。
【0004】
安全機構として、指向された粒子線を制御するオペレータは、粒子線を、しばしば非常に迅速に、ターゲットから離れるように、終了または再指向させることができなければならない。粒子線を終了させる1つの方法は単純に粒子線をオフにすることであるが、このビームをオフにするために必要な時間は長くなる可能性があり、及び、したがって、緊急事態においてビームがターゲットに衝突するのをやめさせる有効な方法であることが証明されない場合がある。
【0005】
粒子線をターゲットから離れるように迅速に再指向させることは、ビームがターゲットの本体に衝突するのを即座に停止する効果的な方法であり得る。高電力磁石は、ビームを再指向させるために用いられることができる。高電力磁石によって生成される磁界は、粒子線を構成する加速された粒子のストリームとのその相互作用によって、ビームに、その方向を変化させることができる。磁界は、ビームをターゲットから離れるように偏向させるために使用されることができる。
【0006】
高速キッカー磁石を必要とする多くの加速器の出願では、粒子線によって生成される放射線が磁石に対する変調器の物理的近接を制限することがある。従来、変調器は放射線環境から数百フィート離れて配置される可能性があり、変調器及びケーブルの複雑さ及びコストを増大させる可能性がある。
【0007】
磁界がキッカー磁石内で蓄積している期間中には、ビームは部分的に偏向されているだけであり、及び、粒子線に関連するハードウェア構成要素または他の周辺領域などの意図しない表面に衝突し始める可能性があるという事実のために、ビームを迅速に偏向させるために使用される磁石の電源を投入することは重要であり得る。粒子線は可能な限り迅速にターゲットから離れるように偏向されるべきであり、これは、キッカー磁石が迅速に電源投入されることを必要とし得る(すなわち、回路が、結果として高速な電流上昇をもたらす大きな印加電圧を有する時間は最小化されるべきである)。さらに、粒子線及びその関連する電子機器が動作する放射線環境を考慮すると、高電圧の印加時間は、放射線粒子が電子機器を損傷することを回避するために最小化されるべきである。
【0008】
粒子線を偏向させるのに十分な強度を有する磁界を生成するために必要とされる電流及び電圧の量を考慮すると、従来のパルス生成器は、磁界を構築するのに必要な高電圧及び電流のために適切ではない場合がある。その生成器の構成要素が、キッカー磁石を動作させるのに必要な電流及び電圧の大きさを扱うことができ、同時に、迅速な立ち上がり時間を有するパルスを生成もする、専門化された高電力パルス生成器が、キッカー磁石を効果的に動作させるために必要となり得る。
【発明の概要】
【0009】
従って、キッカー磁石に高電力パルスを生成及び送達するためのシステム及び方法が提供される。このシステム及び方法は、キッカー磁石が起動されていない期間中にインダクタに電荷を蓄積するように構成された回路を含むことができる。キッカーが起動されると、この回路は、インダクタに蓄積された電荷が直ちにキッカー磁石内に送り込まれるように構成され得る。この回路の構成要素は、粒子線高電力環境に存在する可能性がある異常から回路が悪影響を受けるようにならないことを保証する、ツェナーダイオードなどの保護機構を含むことができる。
【0010】
パルス生成器回路で放射線誘起故障に対して主に影響を受けやすいのは、回路によって用いられており、高電圧を阻んでいる開状態にあるソリッドステートスイッチでありうる。多数のインダクタンスを通ってキッカー磁石に流れるDC電流を切り替えるために誘導駆動トポロジを使用することによって、高電圧がソリッドステートスイッチの内にある時間は、最小限にされることができ、及び、キッカー磁石における電流の立ち上がり時間及び立ち下がり時間と実質的に等しくなることができ、したがって、放射線環境におけるパルス生成器の平均故障時間(MTTF)を増大させる。
【0011】
一次エネルギ源の複雑さは低電圧大電流供給源へと低減されることもでき、これは放射線から離れた制御装置とともに配置され及び大電流DCケーブルによって連結されることができる。この方法は、最初の高速上昇後にドループを最小限にしながら、キッカー内の実質的に無制限のDC電流だけでなく、任意のパルス幅及び反復率を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施例による例示的な高電力パルス生成回路を示す。
【0013】
図2】本開示の例による、キッカー磁石がオフ状態にあるときの図1の例示的な回路等価物を示す。
【0014】
図3】本開示の例による、キッカー磁石がオン状態にあるときの図2の例示的な回路等価物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、キッカー磁石で使用されるような磁気負荷を駆動する際に使用するための、高速立ち上がり時間を有する高電力パルスを生成するためのシステム及び方法が説明される。本明細書に記載されるシステム及び方法は磁石のキッカーのユーザがその磁石を起動するときに、キッカー磁石が最小の立ち上がり時間で高電力電流パルスを受け取ることを確実にするために使用されてもよい。
【0016】
このシステム及び方法はキッカー磁石が動作されていない期間中に磁界を構築及び蓄積するために、大きなインダクタンスを有する第1のインダクタを含む回路を用いる。キッカー磁石が起動されると、回路の構成は、第1のインダクタに蓄積されたエネルギーがキッカー磁石の内に大きな電圧を迅速に誘導し、それによってキッカー磁石が、迅速に起動され、及び、粒子線を偏向させるのに十分な電流及び磁界を有することを確実にするように切り替えられる。
【0017】
図1は、本開示の実施例による例示的な高電力パルス生成回路を示す。回路100は、キッカー磁石124を迅速に起動するように構成されてもよい。キッカー磁石124は、磁石が起動されると粒子線を再指向させることができる低インピーダンス電磁石であってもよい。キッカー磁石124は磁界がキッカー磁石内で蓄積している間(キッカー磁石を通る電流が上昇している間)、ビームは部分的に偏向されるのみである可能性があり、及び、一度キッカー磁石が全量の電流を受け取ると、ビームは完全に偏向されるのみであろうという事実のために、迅速に起動されるべきである。高エネルギー粒子線の例では、部分偏向により、大量のエネルギー(熱または放射線)を、増加された量のエネルギーに対応することができない可能性のある、加速器の一団(すなわち、真空管)に加える可能性がある。
【0018】
一例では、迅速に電源投入するために、キッカー磁石124は、キッカー磁石を通って流れる電流が0アンペアから700まで1マイクロ秒以内に増加することを必要とすることができる。この要件のために、装置を電源投入する従来の方法は、十分ではない場合がある。一例として、700アンペアを流すことができる電源にキッカー磁石を単に接続することは、そのような方法が通常、電流がランプアップするために1ミリ秒以上を必要とするという事実のために、十分ではない場合がある。これは、キッカー磁石124内のインダクタンスが、高速電流立ち上がり時間を得るためにそれに印加される高電圧を必要とする場合があるという事実による可能性がある。
【0019】
したがって、回路100は、キッカー磁石124が必要とする、磁石が動作するシステムによって必要とされる速度の電流で、キッカー磁石124を駆動することができるシステムを含んでいてもよい。回路100は、回路の主要な電力の実質的に全てを生成することができる装置外/内の電源102によって電力供給されることができる。一例として、電源102は、電源が投入されたときのシステムの操作中に、それが、キッカー磁石が起動されたか否かにかかわらず生成されることができる、キッカー磁石124によって要求される700アンペアを生成していることができるように、800アンペアで約12.5ボルトを生成するように構成されることができる。
【0020】
回路100は、2つの別個のセットのスイッチを含むことができる。第1のセットのスイッチ104、106、108、110は、キッカー磁石が起動されていない期間中、電源102をインダクタ120に接続することができる。スイッチ104、106、108、及び110は、高電力用途向けに定格化されたトランジスタ(それぞれベース、コレクタ、及びエミッタを有する)として実装されることができる。この回路100は4つの別個のスイッチを含むものとして示されているが、当業者はスイッチの数がより多くても少なくてもよく、並びに、回路100を実施するために使用されるスイッチの電力定格及び定格電圧に依存することを理解するだろう。一例ではスイッチ104、106、108、110、112、114、116、及び118は絶縁ゲートバイポーラ(IBGT)トランジスタとして実装されることができる。
【0021】
回路100は、スイッチの第2のセット112、114、116、及び118を含むことができる。このスイッチの第2のセット112、114、108、110は起動されると、キッカー磁石が起動される期間中に、電源102及び第2のインダクタ120をキッカー磁石124に接続することができる。スイッチ112、114、116、及び118は、高電力用途向けに定格化されたトランジスタ(それぞれベース、コレクタ、及びエミッタを有する)として実装されることができる。この回路100は4つの別個のスイッチを含むものとして示されているが、当業者はスイッチの数がより多くても少なくてもよく、並びに、回路100を実施するために使用されるスイッチの電力定格及び定格電圧に依存することを理解するだろう。
【0022】
スイッチの第1の及び第2のセットを使用して、回路100は、それぞれ互いに排他的であり得る2つの別個の構成で動作されることができる。一構成では、回路100がキッカー磁石が起動されていない期間中に第2のインダクタ120を充電するように構成されることができる。別の構成では、回路100がキッカー磁石が起動されている期間中に、第2のインダクタ120に蓄積された電荷をキッカー磁石124に転送するように構成されることができる。
【0023】
図2は、本開示の例による、キッカー磁石がオフ状態にあるときの図1の例示的な回路等価物を示す。図2の例は、キッカー磁石がオフ状態のときの図1の回路100の構成を示している。このキッカー磁石124がオフ状態にあるとき、スイッチ112、114、116、及び118をオフに切り換えられることができる。スイッチ112、114、116及び118は、ゲートドライバ132a及び132bを使用して電圧のゲートに適切な量の電圧を印加することによってオフに切り換えられることができる。ゲートドライバ132a及び132bはスイッチ112、114、116、及び118に、それぞれのコレクタとエミッタとの間に電流が流れないようにさせるために必要な電圧を提供することができる。このようにして、スイッチ112、114、116、及び118は、電流にスイッチを通過させない実質的な開回路であることができる。図2の例では、スイッチ112、114、116、及び118は、それらが開いていることを表すために、それらを通して「X」で示されている。
【0024】
スイッチ112、114、116、及び118が開いている間、スイッチ104、106、108、及び110は閉じている。ゲート電圧ドライバ132d及び132cはスイッチを閉じるために、スイッチ104、106、108、及び110のゲートに適切な電圧をそれぞれ提供することができ、したがって、各スイッチのコレクタとエミッタとの間に流れる経路を提供することができる。スイッチを通る電流経路を確立することによって、電源102から流れる電流は、大きなインダクタンスを有し得る第2のインダクタ120を通ることができる。例えば、第2のインダクタ120は、360μΗのインダクタンスを有することができる。回路100のこの構成中の電源102は、800アンペアで約5ボルトを生成していることができる。電源102によって生成された電流は電源102に戻る前に、第2のインダクタ120を通って流れ、及び、次いで、スイッチ104、106、108、及び110を通って流れることができる。
【0025】
上述したように、図2に示される構成では、電源102が第2のインダクタ120を介して電流をポンピングすることができる。第2のインダクタ120を通って流れる電流は、インダクタ内に磁界を構築することができる。磁界は、回路が定常状態に達し、及び第2のインダクタ120内の磁界が一定のままになるまで、第2のインダクタ120内で蓄積することができる。この磁界は、回路100が第2の構成に切り替えられるまで、第2のインダクタ120内に留まることができる。
【0026】
図3は、本開示の例における、キッカー磁石がオン状態にあるときの図2の例示的な回路等価物を示す。図2の例は、キッカー磁石が起動されたときの図1の回路100の構成を示すことができる。キッカー磁石が起動されると、スイッチ112、114、116、及び188が起動することができ(すなわち、各スイッチのコレクタとエミッタとの間に電流を流れさせるように、それらのゲートそれぞれに電圧が印加されることができ)、一方で同時に、スイッチ104、106、108、及び110はオフに切り替えられることができる(すなわち、各スイッチのコレクタとエミッタとの間に実質的に電流が流れないように、それらのゲートそれぞれに電圧が印加されることができる)。スイッチ104、106、108、及び110がオフに切り換えられると、これらのスイッチは実質的に開回路(この図において「X」で示される)として働き、一方でスイッチ112、114、116、及び118は、電源102によって生成された電流が流れるための新しい経路を提供することができる。
【0027】
キッカー磁石が起動しておらず、及びその回路が図2に関して説明された構成にあるときに第2のインダクタ120内に磁界を構築した後、スイッチ112、114、116、及び118を起動し、及び同時に、スイッチ104、106、108、及び110を停止することによって、回路100の電流の流れを、起動スイッチを介してキッカー磁石124内に再経路指定することができる。
【0028】
前述のように、図2に関して、第1の構成では700アンペアの電流が第2のインダクタを通って流れていたので、回路の構成が図3に示される構成に変更されると、第2のインダクタ120は切り替えスイッチによって引き起こされる電流の流れの変化に抵抗することができ、電流の流れの変化に抵抗するようにインダクタ内に任意の電圧を生成することができる。この事実を利用して、第2のインダクタ120とキッカー磁石124内のインダクタンスとの間のインダクタンスの比率は、第2のインダクタ120がキッカー磁石124内に700アンペアを1マイクロ秒以内に押し込むのに十分な電圧を生成するように設計されることができる。上述のように、第2のインダクタ120は、360μΗのインダクタンス値を有することができる。700アンペアの電流をキッカー磁石124に流すように回路が切り替えられたときに、第2のインダクタ120の電圧を十分高くするために、そのキッカー磁石のインダクタンスは約6.5μΗに構成されることができる。したがって、第2のインダクタ120のインダクタンスとキッカー磁石124のインダクタンスとの間の比率を設定することによって、そのキッカー磁石が起動されるとき、キッカー磁石124に加えられる電圧は、約5000Vであり得、したがって、キッカー磁石124を通って流れる電流を約700Aにすることができる。電圧の上昇及び電流の送達は、約1マイクロ秒以内に起こり得る。
【0029】
キッカー磁石を通る電流が700Aに等しくなると、これは第2のインダクタ120を通って流れる電流と同じ量であり得、その第2のインダクタ内の高電圧は700Aで電流フローを維持するためにもはや必要とされなくなるかもしれず、及び、そのキッカー磁石の抵抗が小さくなり得るという事実のために、電圧は最小値に低下し得る。したがって、その電流がキッカー磁石内で所望の値に上昇した後、電源102は、第2のインダクタ120を介して、スイッチ112、114、116、及び118を介して、キッカー磁石124を介して、並びに次いで電源に戻るように、約700Aを提供することができる。
【0030】
回路のオペレータがキッカー磁石をオフにすることを望むとき、回路が図2に関して上述された第1の構成に戻り、及び、第2のインダクタ120が磁界の構築を開始するように、スイッチ112、114、116、及び118が開かれることができ、一方、スイッチ104、106、108、及び110が閉じられることができる。
【0031】
コンデンサを使用するのではなく、インダクタを使用して電流を駆動することによって、パルス生成器が高電圧で動作する時間が最小限に抑えられることができる。コンデンサを使用して電圧を記憶するキッカー磁石用の電流ドライバでは、コンデンサが、無期限の間、高電圧に留まることがある。それから、この電圧は、1つ以上のスイッチを介して転送され、最後にそのキッカー磁石に転送され得る。この転送は、キッカー磁石上に、無期限の時間にわたってキッカー磁石上に留まることができる高電圧を生成させることができる。この無期限の時間の間、(粒子線からの)放射線はビームに近接しているためにスイッチに衝突し、誤ってそれを閉じることがある。これは、スイッチ内の高電圧がスイッチが閉じるための圧力を既に提供出来ているために、特に当てはまり得る。したがって、このキッカー磁石はオペレータの介入なしに起動される可能性があり、システムに損傷を引き起こす可能性がある。
【0032】
コンデンサの代わりにインダクタを使用して電流を駆動することにより、電圧を蓄積するのではなく、このシステムは電流を蓄積する。これは、その回路が、キッカー磁石内で電流が上昇及び下降するのに要する約1μ秒の間存在する高電圧のみを有することを可能にし、したがって、放射線がスイッチ内で不発事象を引き起こす機会を最小限に抑えることができる。
【0033】
回路100が図2に示された構成から図3に示された構成に切り換えられるとき、その回路に受け取られる過渡的な高電圧は、回路の個々の構成要素を損傷を受けやすいままにする可能性がある。具体的には、その高電圧はスイッチ104、106、108、110、112、114、116、及び18を損傷させる可能性がある。スイッチにロバストな保護を提供するために、回路100は、スイッチを保護するための方法を用いることができる。
【0034】
再び図1を参照すると、各スイッチ104、106、108、110、112、114、116、及び118は、高電圧事象によって損傷を受けることからスイッチを保護するために、それぞれツェナーダイオード126a~hによって構成されることができる。各ツェナーダイオード126a~hは、各スイッチのコレクタをそのゲートに接続することができる。各ツェナーダイオードの降伏電圧は、それを、ダイオードに取り付けられたスイッチが回路100の動作中に観察するであろう可能性が高い電圧に適したものにするように選択されることができる。したがって、一例として、スイッチ112、114、116、及び118にそれぞれ取り付けられるツェナーダイオード126e~hは、約500Vの降伏電圧を有するように選択されることができる。スイッチ112、114、116、及び118はスイッチの全体の電力定格と、スイッチを保護するために使用されるダイオードのツェナーダイオード降伏電圧との間にかなりの量のマージンを残すように、1200Vの定格にされることができる。したがって、この回路の動作中、スイッチ112、114、116、及び118がオフ状態(すなわち、図2の構成)にあるときに、それらのスイッチ内の電圧が500Vを超える場合には、ツェナーダイオード126e~hは起動されることができ、したがって、各スイッチのゲートをオンに戻し、及びスイッチを導通させることができる。スイッチ112、114、116、及び118がツェナーダイオード126e~hによって強制的に導通されると、各スイッチ内の電圧はその内の電圧を崩壊/減少させることができ、それによって、スイッチを損傷から保護することができる。
【0035】
スイッチ104、106、108及び110に関連するツェナーダイオード126a~dは、実質的に同じ方法で動作することができる。スイッチ104、106、108、及び110は6500Vの定格とされることができ、一方、ツェナーダイオード126a~dは4kVの降伏電圧を有するように選択されることができ、それによって、スイッチの定格とツェナーダイオード降伏電圧との間にマージンを提供することができる。上述したものと実質的に同じ方法で、スイッチ104、106、108、及び110内の電圧が4kVを超えると、ツェナーダイオード126a~dが起動されることができ、それによって、各スイッチのコレクタとゲートとの間に導通経路を提供することができる。導通経路は、各スイッチ内の電圧を崩壊/減少させるために使用されることができ、それによって回路に保護を提供することができる。
【0036】
回路100内のスイッチに保護を提供する第2の手段として、各々のスイッチ104、106、108、110、112、114、116、及び118は、スイッチ全体の内に配置されたより大きなツェナーダイオード128a~dを有することができる。図1に示されるように、大きなツェナーダイオード128aはスイッチ104と106との内に配置されていてもよく、128bはスイッチ108と110との内に配置されていてもよく、128cはスイッチ116と118との内に配置されていてもよく、並びに128dはスイッチ112と114との内に配置されていてもよい。この大きなツェナーダイオード128a~dは、ツェナーダイオード126a~hよりも高い定格とされることができる。一例として、ツェナーダイオード128a及び128bは700Aで5kVの定格とされることができ、一方でツェナーダイオード128c及び128dは、700Aで600Vの定格とされることができる。このようにして、ツェナーダイオード126a~hが何らかの理由で故障した場合、必要が生じた場合には、より大きなツェナーダイオードは、スイッチ内の電圧を崩壊させるように構成されることができる。
【0037】
上述の保護メカニズムに加えて、回路100は、専用の診断ハードウェアを含むこともできる。図1を参照すると、回路100は、キッカー磁石124に流れる電流を測定することができる電流計134a及び134bを含むことができる。回路100はまた、キッカー電圧124内の電圧を測定することができる分圧回路136を含むことができる。これらの診断装置は、回路100のオペレータが、キッカー磁石が起動された時に所望の時間で所望の量の電流をキッカー磁石124が受信することを確実にすることを可能にすることができる。
【0038】
前述の説明は、説明の目的で、特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、または開示を開示された厳密な形態に限定することを意図していない。上記の教示に鑑みて、多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、技術の原理及びそれらの実際の応用を最も良く説明するために選択、及び説明された。これにより、当業者であれば、想定される特定の用途に適した様々な修正を加えて、本技術及び様々な実施形態を最良に利用することができる。
【0039】
本開示及び実施例は添付の図面を参照して十分に説明されてきたが、当業者には様々な変更及び修正が明らかとなることに留意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定義される開示及び実施例の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
図1
図2
図3
【外国語明細書】