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特開2022-119827S-アデノシルメチオニンの類似体を用いたS-アデノシルメチオニンのイムノアッセイおよび個別化治療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119827
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】S-アデノシルメチオニンの類似体を用いたS-アデノシルメチオニンのイムノアッセイおよび個別化治療法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20220809BHJP
   C07H 19/167 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61P35/00
A61K45/00
A61P25/00
A61K31/7076
C07H19/167
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022080393
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2020036341の分割
【原出願日】2020-03-04
(31)【優先権主張番号】61/801,547
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/218,928
(32)【優先日】2014-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522062151
【氏名又は名称】タイツォウ フイフェン ヘタイ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ハオ シュージュアン
(72)【発明者】
【氏名】アングレス アイザック エイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者における、S-アデノシルメチオニンのレベルの低下を伴う疾患の有無を検出する方法。
【解決手段】前記疾患の疑いのあるまたは該疾患を有するリスクがある患者を同定するステップと、前記患者から生体サンプルを得るステップと、S-アデノシルメチオニンのハプテン類似体から誘導された抗体を用いて前記生物学的サンプル中のS-アデノシルメチオニンのレベルを決定するステップと、S-アデノシルメチオニンのレベルを疾患の有無と対応付けるステップと、を含む方法である。本発明はまた、個体の健康状態の指標であるメチル化指数(体液中SAM/SAHの比率)を算出するために使用されるSAHを測定するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している哺乳動物における癌の治療を提供するための方法において、
(a)癌に罹患している前記哺乳動物の体液試料中のメチル化指数を測定するステップと、
(b)前記メチル化指数を前記哺乳動物における疾患の進行度に対応付けるステップと、
(c)(b)の結果に基づいて、癌に罹患している前記哺乳動物を治療するための適切な癌治療プロトコルを選択するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メチル化指数は、(a1)(i)試料を採集すること;(ii)S-アデノシルメチオニンに特異的な抗体と前記試料とを混合すること;(iii)前記試料中に存在するS-アデノシルメチオニンと前記抗体との結合を検出すること;および(iv)前記試料中に存在するS-アデノシルメチオニンの量の尺度として、前記結合を定量化すること;を含む前記哺乳動物におけるS-アデノシルメチオニンの濃度を測定するステップと、(a2)本発明で開発されたイムノアッセイ法に基づいて、S-アデノシルホモシステインの濃度を測定するステップと、(a3)前記生物学的試料のメチル化指数を提供するため、(a1)/(a2)の比を算出するステップと、を含む方法で測定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の腫瘍を治療するための癌治療レジメンを決定するための方法であって、
(a)患者試料中のメチル化指数を測定するステップと、
(b)前記指標のレベルが予測マーカーであるかどうかを判定するため、取得したメチル化指数のレベルをある対照メチル化指数と比較するステップと、
(c)患者が応答性の患者または非応答性の患者のいずれかであることを示しているメチル化指数値に基づいて、腫瘍を治療するための癌治療レジメンを決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
ヒトにおける気分障害を治療するための方法であって、
(a)(i)試料を採集すること;(ii)S-アデノシルメチオニンに特異的な抗体と前記試料とを混合すること;(iii)前記試料中に存在するS-アデノシルメチオニンと前記抗体との結合を検出すること;および(iv)前記試料中に存在するS-アデノシルメチオニンの量の尺度として、前記結合を定量化すること;を含む、前記ヒトのS-アデノシルメチオニンの濃度を測定するステップと、
(b)SAMのレベルを前記気分障害と対応付けるステップと、
(c)(b)の対応付ける結果に基づいて、前記気分障害の治療に有効な薬物の有効量を決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記薬物は、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ベンラファキシン、マプロチリン、アモキサピンです、トラゾドン、ブプロピオン、デュロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、ネファゾドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、レボキセチン、ミルタザピン、カバカバ、セントジョンズワート、S-アデノシルメチオニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン受容体拮抗剤、トリヨードサイロニン、神経ペプチド、神経ペプチド受容体を標的とする化合物、およびホルモンからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
被験者の精神または神経変性疾患を診断するための、または精神または神経変性疾患に対する被験者の罹患性を予測するための方法であって、(a)対象から1つ以上の生物学的サンプルを採集するステップと、(b)前記サンプルに関連するS-アデノシルメチオニンまたはメチル化指数のレベルを測定するステップと、(c)(b)で測定したバイオマーカーのレベルを、1つ以上の対照試料からのバイオマーカーのレベルと比較するステップと、を含み、1つ以上の対照サンプルと比べ、前記被験体からの試料(複数可)内の2つ以上のバイオマーカーが異常なレベルであることは、精神または神経変性疾患に対する被験者の罹患性を予測していることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記対照サンプルは、1人以上の、精神または神経変性疾患に罹患していないことが分かっている、または、ある特定の診断された精神または神経変性疾患に苦しんでいることが分かっている、個体に由来することを特徴とする方法。
【請求項8】
患者におけるS-アデノシルメチオニンのレベルの低下を伴う疾患の有無を検出する方法であって、前記疾患を持つ疑いがある、または該疾患を罹患するリスクがある患者を同定するステップと、前記患者から生体サンプルを得るステップと、S-アデノシルメチオニンのハプテン性の類似体から誘導された抗体を用い、前記生体サンプルにおけるS-アデノシルメチオニンのレベルを測定するステップと、S-アデノシルメチオニンのレベルを疾患の有無と対応付けるステップと、を含む方法。
【請求項9】
S-アデノシルメチオニン単独で、または、他の化学療法剤との組み合わせで、患者を治療する必要性を評価する方法であって、(a)そのような治療が必要と疑われる被験体から体液サンプルを収集するステップと、(b)前記サンプにおけるS-アデノシルメチオニンのレベルを測定するステップと、(c)S-アデノシルホモシステインのレベルを測定し、メチル化指数を計算するステップと、(d)前記サンプルのメチル化指数と通常の標準のメチル化指数とを比較するステップと、(e)前記メチル化指数はS-アデノシルメチオニン治療の必要性を示す正常範囲外にあるかどうかを判断するステップと、を含む方法。
【請求項10】
哺乳動物の疾患への治療を個別化する方法であって、疾患を有する被験体からの体液のメチル化指数を測定するステップと、前記体液におけるメチル化指数のレベルに基づいて前記被験者に対して有効の可能性がある治療法を提案するステップと、を含む方法。
【請求項11】
診断された患者における癌治療の有効性を監視するための方法であって、患者におけるメチル化指数のレベルをある第1時点で測定するステップと、患者をある癌治療法で治療するステップと、患者におけるメチル化指数のレベルをある第2の時点で測定するステップと、癌治療の有効性を判断するため、患者におけるメチル化指数の第1の時点でのレベル(複数可)と第2の時点でのレベルとを比較するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、合衆国法典第35編(すなわち米国特許法)の第119条に基づいて、「Immunoassay Of S-Adenosylmethionine In Personalized Medicine And Health Or Cancer Evaluation(個別化医療と健康または癌の評価におけるS-アデノシルメチオニンのイムノアッセイ)」という表題の、2013年3月15日に出願された米国仮出願第61/801,547号の優先権を主張する。この仮出願はその全体が参照することにより本書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、体液中S-アデノシルメチオニンのレベルを、たくさんの疾病のマーカーとして測定することに関する。
【0003】
また、本発明は、S-アデノシルメチオニンの類似体に対して作った抗体を利用して、体液中のS-アデノシルメチオニンのレベルを、たくさんの疾病のマーカーとして測定することに関する。
【0004】
本発明は、体液中のS-アデノシルメチオニンのレベルを疾病のマーカーとして測定すること、前記レベルを疾患の進行に対応付けること、およびS-アデノシルメチオニンのレベルに基づいて適切な治療方法を決定することに関する。
【0005】
本発明は、癌の診断、スクリーニング、早期発見に関し、癌およびその他の病理、生理プロセスの治療効果および再発を監視することにも応用可能である。
【0006】
本発明は、ある標的特異性薬に対して患者が反応するかどうかを判断する標的特異性分析システムの開発にも関し、もっと詳細には、高度経済的な、診断法および治療薬が並行開発される時に相乗効果を与えるシステムに関する。
【0007】
本発明はまた、疾患の進行と疾患の治療および治療への応答を関係付けるため、メチル化指数の測定を発見、スクリーニング、探索、識別、開発および/または評価するための方法に関する。
【0008】
本発明はまた、メチル化指数(文献によってメチル化状態とも呼ばれている。本出願ではメチル化指数がSAM/SAHを指す)を、癌、その他の疾患の発見、診断、および癌の進行状況の監視、および癌、その他の疾患の治療状況の監視のためのバイオマーカー、方法、装置、試薬、システムおよびキットとしての利用にも関する。癌の進行は広範囲のDNAの低メチル化、局所のCpGの過剰メチル化、およびゲノム不安定化の漸進的な増加が特徴とする。低下したメチル化指数はグローバルなDNAの低メチル化、およびゲノムの不安定化と相関する。そのため、それは健康状態および疾患の進行または段階を評価するのに役立つ優れたマーカーである。
【背景技術】
【0009】
S-アデノシルメチオニン(S-アデノシル-L-メチオニン、SAM、SAM-e、SAMe、AdoMet、ademethionineともいう)は、生体のほぼすべての組織および液体に発見された。SAMは、トランスメチレーションと呼ばれるプロセスに重要な役割を果たしている。メチル化は、生活のあらゆる側面に関与している。SAMは、体内のDNA、RNA、タンパク質、脂質、および低分子における様々なメチル転移反応の主要な「メチル」供与体である。適切なDNAメチル化は、正常な胚発生に必須である。メチルトランスフェラーゼ遺伝子のホモ接合欠失(ノックアウト)は致死的である(Pegg, A.E., Feith, D.J., Fong, L.Y., Coleman, C.S., O’Brian, T.G., and Shantz, L.M., 2003, Biochem. Soc. Trans. 31, 356-360)。不適切なメチル化DNAは、多くの腫瘍で発見された。DNAメチル化パターンの変化は、癌遺伝子の発現を誘導するか、または腫瘍抑制遺伝子の発現をサイレンシングする。メチル欠損食事はげっ歯類で肝臓癌を促進することが示されている。
【0010】
トランススルフレーションは、SAMがメチル基を寄付(トランスメチレーション)した後の残存構造、S-アデノシルホモシステイン(SAH)で始まる。SAHの加水分解でホモシステインが得られる。後者は順次にシスタチオニン、システイン、最終的には、肝細胞の酸化防止剤および救命解毒剤のグルタチオンに変換する。
【0011】
アミノプロピル化も、SAMの脱炭酸で始まる別のプロセスである。脱炭酸したSAMはその後、プトレシンと結合して、細胞の増殖、分化およびDNAとRNAの安定性に重要であるスペルミジンおよびスペルミンを生成する。さらに、ポリアミン合成の副生成物、メチルチオアデノシン(MTA)は、強力な鎮痛剤および抗炎症剤である。これは、骨関節炎、リウマチ性関節炎、および線維筋痛症のSAMを利用した治療で観察される臨床的利益に、少なくとも部分的に関与する。
【0012】
SAMは免疫系において役割を果たし、細胞膜を維持し、セロトニン、メラトニン、およびドーパミンなどの脳内化学物質の合成および分解するのに役立つ。ビタミンB12または葉酸のいずれかの欠損は、SAMのレベルを減少させることができる。SAMは、体内の活性酸素分子の損傷作用から身体を保護する酸化防止剤でもある。これらの反応性酸素分子は体内から、または環境汚染から来ることができ、老化のプロセスと変性疾患の発症における役割を果たしていると考えられています。一般的に、SAMは、体内の他のアミノ酸の機能のレベルを上昇させると考えられている。
【0013】
さらなる背景として、S-アデノシル-L-メチオニン分子はS-アデノシル-L-メチオニンをメチルチオアデノシンおよびホモセリンに変換する酵素リアーゼの基質である。それはtRNAにアミノ酪酸鎖を与える供与体である。それは、ビオチンの生合成におけるアミノ酸鎖の供与体である。SAM-eは、脱カルボキシル化の後、神経調節ポリアミンのスペルミジンおよびスペルミンの生合成のためのアミノプロピル基の供与体である。(Zappiaら(1979)、Biomedical and Pharmacologcial roles of Adenosylmethionine and the Central Nervous System, page 1, Pergamon Press. N.Y.))
【0014】
SAMは既に肝疾患(Friedel H, Goa, K. L., and Benfield P., (1989), S-Adenosyl-l-methionine: a review of its pharmacological properties and therapeutic potential in liver dysfunction and affective disorders in relation to its physiological role in cell metabolism. Drugs. 38, 389-416)、関節炎(Di Padova C, (1987), S-adenosyl-l-methionine in the treatment of osteoarthritis: review of the clinical studieSAM J. Med. 83, (Suppl. 5), 6-65.)、およびうつ病(Kagan, B, Sultzer D. L., Rosenlicht N and Gerner R. (1990), Oral S-adenosylmethionine in depression: a randomized, double blind, placebo-controlled trial. Am. J. Psychiatry 147, 591-595.)の臨床治療に利用した。アルツハイマー病患者は、脳脊椎液のS-アデノシル-L-メチオニンのレベルが減少した(Bottiglieri et al, (1990), Cerebrospinal fluid S-adenosyl-l-methionine in depression and dementia: effects of treatment with parenteral and oral S-adenosyl-l-methionine. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 53, 1096-1098)。ある予備的研究では、SAM-eは、アルツハイマー病患者の認知を改善することができた(Bottiglieri et al (1994), The clinical potential of admetionine (S-adenosyl-l-methioinine) in neurological disorders. Drugs 48, 137-152)。アルツハイマー病患者の脳中S-アデノシル-L-メチオニンのレベルも大幅に減少した(Morrison et al, (1996), Brain S-adenosylmethionine levels are severely decreased in Alzheimer's disease, Journal of Neurochemistry, 67, 1328-1331)。パーキンソン病を有する患者はまた、有意にSAM-eの血中濃度が低下していることが示されている(Cheng et al, (1997), Levels of L-methionine S-adenosyltransferase activity in erythrocytes and concentrations of S-adenosylmethionine and S-adenosylhomocysteine in whole blood of patients with Parkinson's disease. Experimental Neurology 145, 580-585)。
【0015】
抗悪性腫瘍薬のメトトレキサートで治療した患者におけるSAM-eのレベルが低減される。この薬物に関連する神経毒性は、SAM-eの同時投与によって減弱することができる。(Bottiglieri et al (1994), The Clinical Potential of Ademetionine (S-adenosylmethionine) in neurological disorders, Drugs, 48 (2), 137-152)
【0016】
SAM-eの脳脊髄液レベルは、HIV AIDS痴呆コンプレックス/ HIV脳症で調査し、非HIV感染患者におけるよりも有意に低いことが見出されている(Keating et al (1991), Evidence of brainMethyltransferase inhibition and early brain involvement in HIV positive patients Lancet: 337:935-9)。
【0017】
De La Cruzらは慢性的に投与したSAM-eは、抗酸化防御を強化することによって、脳内の酸化状態を変更できることを示している(De La Cruz et al, (2000), Effects of chronic administration of S-adenosyl-l-methionine on brain oxidative stress in rats. Naunyn-Schmiedeberg's Archives Pharmacol 361: 47-52.)。これは、肝臓と腎臓の組織においてSAM-eで得られた結果と類似している。したがって、SAM-eは酸化防止剤として有用であろう。
【0018】
肝疾患有り無し両方の患者への経口SAM-eの投与は肝グルタチオンレベルの増加をもたらしている(Vendemiale G et al, (1989), Effect of oral S-adenosyl-l-methionine on hepatic glutathione in patients with liver disease. Scand J Gastroenterol; 24: 407-15)。肝内胆汁うっ滞を罹患している患者へのSAM-eの経口投与は、そう痒症、ならびに胆汁うっ滞の生化学的マーカーの両方の改善を持っていた(Giudici et al, The use of admethionine (SAM-e) in the treatment of cholestatic liver disorders. Meta-analysis of clinical trials. InMato et al editors. Methionine Metabolism: Molecular Mechanism and Clinical Implications. Madrid: CSIC Press; 1992 pp 67-79)。一次線維筋痛症を患っている患者への経口SAM-eの投与が短期の試用後に有意な改善をもたらした(Tavoni et al, Evaluation of S-adenosylmethioine in Primary Fibromaylgia. The American Journal of Medicine, Vol 83 (suppl 5A), pp 107-110, 1987.)。同様に、SAM-eは変形性関節症の治療に使用されてきた。(Koenig B. A long-term (two years) clinical trial with S-adenosylmethionine for the treatment of osteoarthritis. The American Journal of Medicine, Vol 83 (suppl 5A), Nov. 20, 1987 pp 89-94)。
【0019】
SAM-eは基本的な代謝過程におけるその重要な機能により、多くの明らかに関係が持っていない臨床分野で有用である。その最も顕著な臨床用途の1つは、これまで、医学的に治療不可能なままであった、アルコール性肝硬変の治療である。マトらは、アルコール性肝硬変におけるSAM-eの経口投与が、プラセボ処置群と比較して、死亡および/または肝臓移植の総発生率を29%から12%に減少させた。(Mato et al (1999), S-adenosylmethionine in alcohol liver cirrhosis: a randomized, placebo-controlled, double blind, multi-center clinical trial, Journal of Hepatology, 30, 1081-1089.)
【0020】
SAM-eは、腫瘍壊死因子αによって引き起こされる損傷を減衰させ、また、細胞によって分泌する腫瘍壊死因子αの量を減少させることができる。したがって、この特定の炎症性因子が上昇した状況は、SAM-eの投与から利益を得るであろう(Watson WH, Zhao Y, Chawla RK, (1999) Biochem J Aug. 15; 342 (Pt 1): 21-5. S-adenosylmethionine attenuates the lipopolysaccharide-induced expression of the gene for tumour necrosis factor alpha)。SAM-eはまた、強力な免疫抑制剤シクロスポリンAの投与に関連する毒性を減少させる能力について研究されてきた。(Galan A, et al, Cyclosporine A toxicity and effect of the s-adenosylmethionine, Ars Pharmaceutica, 40:3; 151-163, 1999.)
【0021】
インビトロでヒト赤血球と一緒にインキュベートされたSAM-eは、細胞膜を貫通し、細胞内ATPを増加させ、したがって細胞の形状を復元した(Friedel et al, S-adenosyl-l-methionine: A review of its pharmacological properties and therapeutic potential in liver dysfunction and affective disorders in relation to its physiological role in cell metabolism, Drugs 38 (3):389-416, 1989)。
【0022】
SAM-eは偏頭痛を患っている患者において研究し、有益であることが見出された(Friedel et al, S-adenosyl-l-methionine: A review of its pharmacological properties and therapeutic potential in liver dysfunction and affective disorders in relation to its physiological role in cell metabolism, Drugs 38 (3): 389-416, 1989)。
【0023】
SAM-eは、末梢閉塞性動脈疾患を有する患者に投与され、主に赤血球変形能への影響を介して、血液の粘度を低下させることが示された。
【0024】
SAM-eは60と80%の純度の間で変化するSAM-e製剤をもたらす発酵技術で商業的に入手可能である。(つまり、最終製品は60~80%のアクティブな(S、S)-SAM-eと20~40%の非アクティブの(R、S)-SAM-eを含めている。)(Gross, A., Geresh, S., and Whitesides, Gm (1983) Appl. Biochem. Biotech. 8, 415)。酵素的合成方法は、60%を超える濃度で不活性な異性体を生じることが報告されている。(Matos, JR, Rauschel FM, Wong, CH. S-Adenosylmethionine: Studies on Chemical and Enzymatic Synthesis. Biotechnology and Applied Biochemistry 9, 39-52 (1987))。エナンチオマー分離技術がSAM-eの純粋な活性エナンチオマーを分離することが報告されている(Matos, JR, Rauschel FM, Wong, CH. S-Adenosylmethionine: Studies on Chemical and Enzymatic Synthesis. Biotechnology and Applied Biochemistry 1987, 9, 39-52; Hoffman, Chromatographic Analysis of the Chiral and Covalent Instability of S-adenosyl-l-methionine, Biochemistry 1986, 25 4444-4449; Segal D and Eichler D, The Specificity of Interaction between S-adenosyl-l-methionine and a nucleolar 2-0-methyltransferase, Archives of Biochemistry and Biophysics, Vol. 275, No. 2, December, pp. 334-343, 1989)。非常に経済的なコストで大規模な商業生産規模での鏡像異性体を分離するための新しい分離技術が存在する。また、特別な立体選択的方法で生物学的に活性な鏡像異性体を合成することも考えられが、これは現在までに達成されていない。
【0025】
デ・ラハーバは、硫黄がキラルであり、二つの可能なコンフィギュレーションのうちの一つだけが生物学的に合成され、使われることを初めて示した(De la Haba et al. J. Am. Chem. Soc. 81, 3975-3980, 1959)。 RNAとDNAのメチル化は正常な細胞成長に必須である。このメチル化は、SAM-eを唯一または主要なメチルドナーとして使って、メチルトランスフェラーゼ酵素により行われる。セガールとアイヒラーは、酵素が結合した(S,S)-SAM-eは生物学的不活発な(R,S)-SAM-eより10倍堅く、従って硫黄キラルセンターに斬新な結合の立体特異性を示した。他のメチルトランスフェラーゼは、(R,S)-SAM-eを(S,S)-SAM-eと同じ程度で結合することを報告され、従って、(R,S)-SAM-eはその酵素の競合的抑制剤として作動するかもしれない。(Segal D and Eichler D, The Specificity of Interaction between S-adenosyl-l-methionine and a nucleolar 2-0-methyltransferase, Archives of Biochemistry and Biophysics, Vol. 275, No. 2, December pp. 334-343, 1989; Borchardt RT and Wu YS , Potential inhibitors of S-adenosylmethionine-dependent methyltransferases. Role of the Asymmetric Sulfonium Pole in the Enzymatic binding of S-adenosyl-l-methionine, Journal of Medicinal Chemistry, 1976, Vol 19, No. 9, 1099-1103)
【0026】
SAM-eは(その光学的に純粋な鏡像異性体形態又は鏡像異性体またはラセミ混合物であれ)環境温度での安定性の面で一定の困難な問題があり、分子の分解で望ましくない分解生成物が生成する。その分子内部の不安定性は高温でも常温でも分子の不安定および破壊をもたらすので、SAM-e(およびその鏡像異性体)をさらに安定化しなければならない。したがって、SAM-eは、新しい安定した塩を得るに向けおよび工業的規模で実現することができる製造方法の提供に向けの多くの特許の対象となった。本特許は、このようにSAM-eの鏡像異性体形態を安定化するため、既に先行技術に開示されたSAM-eの塩のいずれかを使用することを想定している。
【0027】
臨床診断分野では近年、容易にかつ正確に測定できる興味のある材料の種類および測定する方法が多くなってきた。過去数十年にわたり、乱用薬物、または関心のある他の生体分子のような多数の物質についての検査が一般的になっている。近年では、抗原と抗体の相互作用に基づくイムノアッセイが広く、この目的のために検討されている。独特の特異性および抗体の高親和性に基づいて、イムノアッセイは、正確かつ精密に生物学的液体中に存在する非常に低い濃度の物質を定量することができる。
【0028】
したがって、癌および他の疾患の検出、診断方法、および疾患進行の監視方法、ならびに癌および他の疾患のための種々の治療の進捗状況の監視方法の、バイオマーカーとしてのメチル化指数を定量することによる改善が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、ELISA法によって測定された2つのモノクローナル抗体のクローンの力価を示す。y軸はOD450の値を示し、x軸は1μg/μLで作った精製腹水の希釈度を示す。
図2図2は、異なる競合性の類似体およびSAMを添加した結果を示し、クローン#84の 交叉反応は1.25%未満で測定された。x軸は使用したSAMおよび類似体の一部の濃度を示し、それらの単位はnMである。SAM:S-アデノシルメチオニン;SAH:S-アデノシルホモシステイン;MET:メチオニン;ADE:アデノシン。
図3図3は、AdaM-BSAでコーティングしたマイクロタイタープレートを用いて、競合的ELISAアッセイで観察されたSAM、SAH、メチオニン、およびアデノシンの異なる抑制能力を示した。y軸は、それぞれの(バックグラウンドを差し引いた後の)OD450値と空白対照の比、A/A0を示している。SAM:S-アデノシルメチオニン;SAH:S-アデノシルホモシステイン;MET:メチオニン;ADE:アデノシン。
図4図4は、SAMを定量化するためのELISA標準曲線である。x軸は、SAM濃度の対数値である。y軸は、ロジット値である。
図5図5は、本発明で改良された、ハプテンの合成プロセスを示す。
図6図6は、メチオニン硫黄転移経路を示している。図内の略称は次である。THF:テトラヒドロ葉酸;MS:メチオニンシンターゼ;BHMT:ベタイン-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ;MAT:メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ;SAM:S-アデノシルメチオニン;SAH:S-アデノシルホモシステイン;SAHH:SAH加水分解酵素;ADA:アデノシンデアミナーゼ;AK:アデノシンキナーゼ;CBS:シスタチオニンβ合成酵素。
【発明の概要】
【0030】
本発明は、癌に罹患している哺乳動物における癌の治療を提供するため、以下のステップ:(a)癌に罹患している前記哺乳動物の体液試料中のメチル化指数を決定するステップ;(b)前記メチル化指数を前記哺乳動物における疾患の進行に対応付けるステップ;および(c)(b)の結果に基づいて、癌に罹患している前記哺乳動物を治療するための適切な癌治療プロトコルを選択するステップを含む方法を提供する。
【0031】
メチル化指数は、以下のステップ:(a1)前記哺乳動物のS-アデノシルメチオニンの濃度を測定するステップであって、(i)サンプルを得る工程;(ii)S-アデノシルメチオニンの特異的な抗体と前記試料とを混合する工程;(iii)前記試料中のS-アデノシルメチオニンと前記抗体の結合を検出する工程;(iv)前記試料中のS-アデノシルメチオニンの含量の尺度として、前記結合を定量化する工程を含むステップ;(a2)公開された文献の手順に従って、S-アデノシルホモシステインの濃度を決定するステップ;および(a3)前記生物試料のメチル化指数を提供するため、(a1)/(a2)の比を算出するステップ;を含む方法により測定される。
【0032】
本発明はまた、患者の腫瘍を治療するための癌治療レジメンを決定するため、以下のステップ:(a)患者試料におけるメチル化指数を決定するステップ;(b)取得したメチル化指数のレベルと対照のメチル化指数とを比較し、前記メチル化指数のレベルが予測的マーカーであるかどうかを決定するステップ;および(c)メチル化指数値に基づいて腫瘍を治療するための癌治療レジメンを決定するステップを含み、前記メチル化指数値は、患者が応答性の患者または非応答性の患者のいずれかであることを示していることを特徴とする方法を提供する。
【0033】
本発明はまた、ヒトにおける気分障害を治療するための方法で、以下のステップ:(a)前記ヒトにおけるS-アデノシルメチオニンの濃度を測定するステップであって、(i)サンプルを得る工程;(ii)前記試料とS-アデノシルメチオニンの特異的な抗体とを混合する工程;(iii)前記試料中のS-アデノシルメチオニンと前記抗体の結合を検出する工程;(iv)前記試料中のS-アデノシルメチオニンの含量の尺度として、前記結合を定量化する工程を含むステップ;(b)SAMeのレベルを気分障害と対応付けるステップ;および(c)(b)の対応付けの結果に基づいて、前記気分障害の治療に有効な薬物の有効な量を投与するステップを含む方法を目指す。
【0034】
本発明はさらに、被験者における精神または神経変性障害を診断するため、またはその罹患性を予測するための、(a)被験者から1つ以上の生物学的サンプルを得るステップ;(b)前記サンプルのS-アデノシルメチオニンのレベルまたはメチル化指数を測定するステップ;および(c)(b)で測定したバイオマーカーのレベルを1つ以上の対照試料の前記バイオマーカーのレベルと比較するステップ;を含み、1つ以上の対照試料と比べ、前記被験者からの試料(複数可)内の2つ以上のバイオマーカーが異常なレベルにあることは精神または神経変性疾患に対する被験者の罹患性を予測していることを特徴とする方法を提供する。
【0035】
本発明は、また、患者にS-アデノシルメチオニンのレベル不足と関連する病気の有無を検出する方法と関し、以下のステップを含む:前記病気を持つ疑いがある、または前記病気を罹患するリスクがある患者を同定するステップ;前記患者から生体試料を得るステップ;S-アデノシルメチオニンのハプテン性類似体で免疫して生産した抗体を使って、前記生体試料のS-アデノシルメチオニンのレベルを測定するステップ;および、前記生体試料のS-アデノシルメチオニンのレベルを前記病気の有無と関係づけるステップ。
【0036】
本発明はまた、S-アデノシルメチオニンを単独で、または、他の化学療法剤との組み合わせで、ある患者を治療する必要性を評価するための方法であって、以下のステップ:(a)そのような治療が必要と疑われる被験者から体液サンプルを収集するステップ;(b)前記サンプル中のS-アデノシルメチオニンのレベルを測定するステップ;(c)S-アデノシルホモシステインのレベルを測定し、メチル化指数を計算するステップ;(d)前記サンプルのメチル化指数を通常の標準のそれと比較するステップ;および(e)メチル化指数がS-アデノシルメチオニン治療の必要性を示唆している正常範囲外にあるかどうかを決定するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【0037】
本発明は、様々な疾患を煩っている、それらの健康状態の評価が必要な患者におけるアッセイ、診断、治療および医学的評価を提供する。彼らの健康の状態は、S-アデノシルメチオニンおよびS-アデノシルホモシステインの正確な濃度を提供するアッセイを用いて、評価できる。上記分子の正確な測定を得られたら、人間の健康状態に関連する重要なパラメータであるメチル化指数の計算は可能になる。
【0038】
本発明のアッセイは、S-アデノシルメチオニンおよびその類似体の特異的な抗体を使用する。前記抗体は下式を有するS-アデノシルメチオニン・ハプテン、
【化1】
その鏡像異性体、ジアステレオマー、鏡像異性的に富化された混合物、そのラセミ混合物、その同位体富化形態、結晶形態、非結晶形態、その非晶質形態、その荷電および非荷電形態、その溶媒和物、その代謝物、およびその塩などに、直接的にまたは間接的に結合された免疫原性物質を含む免疫原を宿主動物に接種するステップ;およびその後、該宿主動物から血清を採取するステップにより用意される。前記式中のAは、以下からなる群から選択される:
【化2】
MはN、N +、C、S、S +、セレン、セレン+、およびPからなる群から選択される;----は上記で定義されたグループのそれぞれのボンディング位置を表す;
Xは、独立して、CH3、CH2OH、CH2NH2、OH、OCH3NH2、SH、CHO、およびCNからなる群から選択される;
Zは、独立して、CH3、CH2OH、CH2NH2、OH、OCH3、NH2、SH、CHO、およびCNからなる群から選択される;
BおよびCは、独立して、H、OH、NH2、SH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
Dは、独立して、NH2、OH、SH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
Yは、独立して、H、CH3、CH2OH、CH2NH2、OH、OCH3、NH2、SH、CHO、およびCNからなる群から選択される;
Wは、独立して、H、COOH、CONH2、COOCH3、CN、CHO、およびその官能誘導体からなる群から選択される;
前記抗体は、共同所有の米国特許第8344115号に詳細に記載されている。前記特許は参照によりその全体が本書に援用される。
【0039】
本発明は、また、共同所有の米国特許第8344115に記載されるような類似体を用いて、S-アデノシルメチオニンおよびS-アデノシルホモシステインに対するマウス・モノクローナルおよびウサギ・ポリクローナル抗体、組換え、ヒト化およびキメラ抗体を提供する。
【0040】
本発明はまた、SAM治療および総体的健康評価の指導および開発などにおいて、モノクローナル抗SAMおよびSAH抗体を用いてメチル化指数とSAMのレベルを測定するためのイムノアッセイを提供する。
【0041】
本発明は、更に、本発明において測定されるメチル化指数を、所定の被験体または多い人口の総体的な健康状態のスクリーン・マーカーとして、使用することに関する。
【0042】
本発明は、さらに、尿、血清、血漿、全血中のSAMとSAHレベルを測定するための迅速な信頼性の高い安価なイムノアッセイを提供する。半定量法は迅速テストストリップデバイスを使用して開発されている。本発明の実施形態では、膜を抗SAM(または抗SAH)抗体-色素(コロイド金)抱合体で予備浸漬する。二次抗体を対照ゾーンに固定化される。抗SAM(または抗SAH)抗体をテストゾーンに固定化される。試料は、膜に沿って移動する。SAM(またはSAH)が存在する場合、抗原-抗体複合体が形成され、テストおよび対照ゾーンの両方の抗体に捕捉され、したがって、ピンク色は両方のゾーンに見られる。SAM(またはSAH)が存在しない場合、抗体-色素複合体は対照ゾーンの二次抗体だけに捕捉され、したがって、ピンクのバンドが対照ゾーンだけに見られる。これはテストが正しく作用していることを示し、テストラインの結果が有効であると考えるべきである。標準液とサンプルを同時に実行し、テストゾーン信号の強度(陽性バンドの色と幅)を標準のものと比較し、SAM(またはSAH)のおよその濃度を判断する。これはSAM(またはSAH)を半定量化する方法である。
【0043】
上記と類似に競合イムノアッセイでは、テストゾーンは、SAM(またはSAH)で固定されています。試料からのSAM(またはSAH)は、限られた量の抗体-色素複合体に対して、テストゾーンに固定化されたSAM(またはSAH)と競合する。試料からのSAM(またはSAH)が多いほど、テストゾーンのピンクラインは薄くなる。試料からのSAM(またはSAH)が非常に低いまたは無い時、テストおよび対照両方ゾーンから、2つの強いラインが生成する。
【0044】
半定量的アッセイは、消費者や患者が疾患の治療としてSAM-eを取る前、SAM-eで治療中、または治療を中止すべきかどうかを判断するために使用されるのが理想的である。
【0045】
本発明はまた、哺乳動物の疾患への個別化医療の方法を提供する。この方法は、疾患を有する患者からの体液におけるメチル化指数を測定することを含む、前記体液におけるメチル化指数レベルに基づいて前記哺乳動物に有効の可能性がある治療法を提案する。
【0046】
本発明はまた、癌と診断された患者における癌治療の有効性を監視するための方法であって、第1の時点での患者におけるメチル化指数レベルを測定するステップと、癌治療で患者を治療するステップと、第2の時点での患者におけるメチル化指数レベルを測定するステップと、癌治療の有効性を決定するために、第1の時点での対象におけるメチル化指数のレベル(複数可)と第2の時点でのレベルとを比較するステップと、を含む方法である。
【0047】
また、本発明は癌に罹患している哺乳動物における癌の治療を提供するための方法を提供する。前記方法は以下のステップを含む:(a)癌に罹患している前記の哺乳動物の体液サンプルのメチル化指数を測定するステップ;(b)前記メチル化指数を前記哺乳動物における疾患の進行と関連付けるステップ;および(c)(b)の結果に基づいて、癌に罹患している前記哺乳動物を治療するための適切な癌治療プロトコルを選択するステップ。この方法は、I期、又はII期、またはIII期、またはIV期の癌を有する患者から血液サンプルを採取するステップと、SAMとSAHのレベルを測定するステップと、メチル化指数を計算するステップ、メチル化指数を癌のステージと関連付けるステップと、前記哺乳動物を治療するための適切な治療プロトコルを選択するステップと、を含む。
【0048】
また、本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ抑制剤が癌治療においての適応性と有効性を判断するのに有用である。メチル化指数は、特定の器官または組織において特定のDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)抑制剤の機能の状況、範囲および特異性を評価する最適なツール又は手段である。従って、本発明の成果として開発された測定方法によるメチル化指数の測定は、DNAメチルトランスフェラーゼ抑制剤の有効性の評価に使用することができる。
【0049】
本発明はさらに以下のことを提供する。
1.指導されたSAM-e治療
軽度から中度のうつ病、変形性関節症(非ステロイド性抗炎症薬よりも良い)、線維筋痛症の治療においてSAM-eが有効の研究とSAM-eが無効の研究の両方が報告されている。その最も可能性のある理由は、ほとんどの他の疾患や治療に似ている。すなわち、ある特定の患者は、他の患者と違って、SAM-eを使用する良い候補ではない。患者が特定の薬を使用する良い候補であるかどうかを事前に確認するために、いくつかの測定を実行する必要がある。出願人は、疾患を治療するためSAM-eを使用する前に、血液または尿サンプル中のSAMのレベルを測定することが望ましいことを発見した。
【0050】
SAM-eでの補助治療は、種々の疾患、例えば、肝障害、B12または葉酸欠乏症、癌、レボドパ(L-DOPA)を服用するパーキンソン病患者において、既に受け入れられている。その原因はこれらの疾患は体内のSAMレベルを低下させる可能性がある。SAMのレベルが実際に減少しているかどうかを確認するために、最善の方法は、直接血漿中のSAMのレベルを測定することである。SAMレベルは治療や病気そのものによる低下してしまう他の状況も存在する。治療薬中SAM-eを含むかどうかに関わらず、SAMのレベルを監視することは治療の全体的な有効性を改善するのに非常に重要である。うつ病、変形性関節症、線維筋痛症、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、肝疾患、滑液包炎、腱炎、慢性腰痛、多発性硬化症、脊髄損傷、片頭痛、鉛中毒、および老化を遅くするなどの治療の最中に、SAMレベルが特定の許容レベルを下回る場合、SAM-eを適切な投与量で補うことが全体的な治療に利益をもたらす。治療がまだ開始されていないケースについて、もしSAM不足が検出されたら、上記疾患のためSAM-eを静脈注射(IV)投与すれば、症状を素早く緩和するだろう。
【0051】
一方、薬物または食品とSAMeの相互作用に関する情報は非常に有限で、より重要な精神と心血管系の副作用の危険性がないわけではないことから、消費者がプライマリ・ヘルスケア・プロバイダーと十分な議論が行われるまで、この栄養補助食品の監視されていない消費を避けるように指示する必要がある(Fetrow, C. W. et al. Efficacy of the dietary supplement S-adenosyl-L-methionine. Annals of Pharmacotherapy 35 no. 11 (November 2001): 1414-1425)。SAMeを処方された抗うつ剤と一緒に服用することは、相当危険なセロトニン症候群を引き起こす可能性がある。米国特許第8344115号に説明したように、SAMのイムノアッセイは、臨床ラボや患者自身がSAMのレベルを素早くに見つけるための最良の方法である。特許に記載のイムノアッセイは、高価な設備を用いることなく、簡単に敏感な、迅速である。アッセイの間で同等な結果が得られる。また、血漿中の正常なSAM濃度は、主に性別(通常、男性>女性)、個人の体重に応じて、また、おそらく民族、食事、健康状態、薬を服用しているか否かにもよって、異なる。ゆえに、個別化された、指導のあるSAM-eの投与において、最良の治療結果を達成するために、SAMのレベルを監視することが重要である。
【0052】
2.病気発展と予後におけるメチル化指数
メチル化指数はSAMの濃度対SAHの濃度の比率として定義される。特定の状況下においては、SAM自体のレベルの代わりに、メチル化指数を使用することが重要であり、より正確である。理由は、(1)SAH+はメチルトランスフェラーゼ(COMT)後のSAMのメチル化反応の直接最終生成物である。メチオニン硫黄転移経路は図6に描かれている。他の酵素が一方通行であるのに対し、SAHHは可逆酵素で、SAHH反応の平衡ダイナミクスはホモシステインの合成より、強いSAHの合成に傾く(SJ James, et al. Elevation of S-Adenosylhomocysteine and DNA Hypomethylation: Potential Epigenetic Mechanism for Homocysteine-Related Pathology. J. Nutri.132:2361S-2366S, 2002)。SAHの蓄積はメチルトランスフェラーゼの活性を抑制し、ゆえに、SAMのレベルを低下させる。細胞中のメチル基の唯一のドナーとして、SAMはDNA、RNA、タンパク質、リン脂質、神経伝達物質、ペプチド、ホルモン、などにメチル基を提供すると、SAHが生成される。したがって、SAM/SAHは、メチル化反応をより高感度かつ正確に反映し、特にSAM変動が微妙な場合の、生体臓器中の重要な分子のメチル化状態/レベルの直接かつ正確な指標である。(2)SAMのレベルは、人種、性別、体重および食事などに応じて変化する。メチル化指数は、これらおよび他の要因に起因する変動を低減することができる。
【0053】
癌が遺伝的な病因を持つだけでなく、エピジェネティック疾患と考えられている。DNAメチル化は、最も重要なエピジェネティック修飾の一つである。ますます多くの発見は一度無視されたエピジェネティックの多くの生命現象における影響の重要性を明らかにした。これは、癌におけるメチル化の影響は、我々が今日知っているものより、もっと重要かつ深刻であろうと示唆する。癌細胞におけるDNAメチル化のレベルは、癌発生の異なる段階で変化する。癌において異常なDNAメチル化は一般的に、ゲノム全域にわたるハイポメチル化と局所のハイパーメチル化の特別な形式で発生する。グローバルのDNAハイポメチル化は、c-JUN、c-MYC、およびc-Ha-Rasのような癌原遺伝子の活性化、およびゲノムの不安定性の生成と関連している。腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域に位置するCpGアイランドのハイパーメチル化は転写サイレンシングとゲノムの不安定化を招く。CpGハイパーメチル化は、遺伝子の不活性化を引き起こす遺伝子突然変異の代替および/または相補的なメカニズムとして作用し、それは現在、発癌における重要な機構として認識されている。そのプロモーター領域に位置するCpGアイランドのCpGアイランドハイパーメチル化による腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53遺伝子)の不活性化は、癌の進行と予後不良に関連している。研究の結果は、ヒト肝細胞癌(HCC)におけるメチル化パターンの治療および化学予防の両方においての有意性を確認し、効率的にHCCの発症および進行を抑制するために、本研究で同定されたものを含む、分子標的を使用する可能性を開いた(Diego F. Calvisi et al. “Mechanistic and Prognostic Significance of Aberrant Methylation in the Molecular Pathogenesis of Human Hepatocellular Carcinoma.” J Clin Invest. 2007;117(9):2713-2722.)。
【0054】
DNAのメチル化のレベルを低下させる薬物-脱メチル化剤は、癌を治療するための有望な化学療法薬として、使用されており、さらに多くが検討されている(Esteller M. “DNA methylation and cancer therapy: new developments and expectations.” Curr Opin Oncol. 2005 Jan;17(1):55-60.)。
【0055】
本発明の文脈において、「癌」または「腫瘍」は、初期の腫瘍および任意の転移を含む、患者における任意の腫瘍性増殖を含むことが意図される。癌は、液体または固形腫瘍型であることができる。液性腫瘍は、血液学的起源の腫瘍、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ球性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む。固形腫瘍は器官に由来し、例えば、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓、および肝臓などの癌が含まれる。本明細書で使用される場合、腫瘍細胞を含む癌細胞は、異常な(増加した)速度で分裂する細胞をいう。癌細胞は、これらに限定されないが、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、皮脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支癌、黒色腫、腎細胞癌、肝癌-肝細胞癌、胆管癌、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、乳癌、消化管癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および首と頭領域の扁平上皮癌などの癌腫;線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、腱肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫と中皮腫などの肉腫;骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ性白血病)、およびリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網細胞肉腫、またはホジキン病)などの血液癌;そして、神経膠腫、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫や上衣腫などの神経系の腫瘍を含む。
【0056】
3.胚発生と人間の総体的な健康におけるメチル化指数
SAMおよびSAHのレベルは、DNAのメチル化のレベルに影響を与えることによって、体細胞胚形成の制御に関与することができ、遺伝子の活性化における特異な変化を引き起こす可能性がある。SAMのレベルの上昇は、胚発生の進行と完全な胚の発育の前提条件である可能性がある(Munksgaard D, et al. “Somatic embryo development in carrot is associated with an increase in levels of S-adenosylmethionine, S-adenosylhomocysteine and DNA methylation.” Physiologia Plantarum, Volume 93, Issue 1, Article first published online: 9 OCT 2008)。
【0057】
一般的なヒトの健康評価およびスクリーニングにおけるメチル化指数
メチルトランスフェラーゼ(MT)は、ヒト疾患の発症に重要な役割を果たしている。統合失調症の原因に関連するドーパミン(DA)仮説は、統合失調症患者の活動しすぎるDA経路を記述している。カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)は、中枢神経系におけるDAを減生する。COMTは、統合失調症の治療のための基礎を築く(Renson J et al “Action of the inhibitors of catechol ortho-methyl transferase on the adrenal catecholamines in the rat.” Arch Int Physiol Biochim. 1960 May; 68:534-7.)。人間の機能に重要な様々な物質に作用するMTは30以上の異なる種類がある。
【0058】
メチル化指数は、ヒトの総体的な健康の重要な指標/マーカー、「活力」インジケータ、または「ウェルネス」のマーカーと考えられている。
【0059】
また、血漿中のSAMの正常濃度は、性別(通常、男性>女性)、個人の体重、そしておそらく民族/人種、および食事などに応じて、大幅に異なるように思われる。SAMとSAHは代謝に密接に結びついているので、同様の依存性は、SAH濃度にも存在する。[SAMは]と[SAH]の比を利用することにより、これらの変数を排除または減少させることができる可能性がある。
【0060】
心血管疾患、うつ病、がん、およびアルツハイマー病などの老化関連疾患へのSAMとSAHの関連は十分に立証されている。メチル化は主に、DNA、RNA、およびヒストンのメチル化を介したて、胎児の成長に、分化に、タンパク質の発現のエピジェネティック制御に非常に重要である。S-アデノシルメチオニンおよびメチル化能力指数の評価は、「活力」インジケータまたは「ウェルネス」のマーカーとしての科学的根拠がある。
【0061】
本発明は、以下を提供するため、特に重要である。
1.すべてのタイプのバイオサンプルのメチル化指数の直接、正確かつ定量的な測定。
2.すべてのタイプの研究室の設備でメチル化指数を直接、正確かつ定量的な測定。
3.総体的な健康状態の評価、癌予測と予後、すべての病気の(SAM-eの有り無しでの)治療の評価に関してのメチル化指数の直接、正確かつ定量的な測定。
4.癌の鑑別診断に関してのメチル化指数の直接、正確かつ定量的な測定。
5.癌患者における化学療法耐性に関してのメチル化指数の直接、正確かつ定量的な測定。
6.胎児の発育、分化および老化プロセスの評価に関してのメチル化指数の直接、正確かつ定量的な測定。
7.クレーム1-6に説明した理由に関連して、消費者により便利に、簡単に使用するためのストライプや他のメディアでのメチル化指数の半定量的および定性的な免疫測定法。
8.様々な状況や病気のために店頭または処方されたSAMeを服用する消費者により便利に、簡単に使用するためのストライプや他のメディアでのSAMの半定量的および定性的な免疫測定法。
9.消費者により簡便かつ簡単に使用するためのストライプや他のメディアでの尿と血液サンプルのSAMの半定量的および定性的な免疫測定法。
10.さまざまな理由や目的のためにSAM-eの指導下服用に関してのSAMの定量分析。
【0062】
また、本発明は、SAM-eおよびSAM-eと複数の治療薬との組み合わせでの治療を提供する。本発明は、SAM-eと他の治療法との組み合わせを意図している。
【0063】
本発明はまた、SAMに対する抗体を作製するために使用されるアザアデノシル(デアミノ)メチオニン(Azaadenosyl(deamino)methionine)・ハプテンを製造するための改良した合成法を提供する。合成方法は、以下のスキーム1および図5に概説される。
【0064】
【化3】
【0065】
本発明の方法を実施する際に、血液サンプルは、所定の疾患状態を有する患者から採取され、本発明の方法に従って生み出したELISA法および抗体を使用して、SAMとSAHレベルについて分析される。ELISAアッセイ・フォーマットは、次のとおりである。
【0066】
フォーマット1:
(1)サンプルまたはキャリブレータ(複数可)、(2)抗体、(3)ハプテン-酵素抱合体、(4)二次抗体でコーティングされたストリップ/マイクロタイタープレート(二次抗体の例:ヤギ抗マウス抗体またはヤギ抗ウサギ抗体)、(5)洗浄溶液、(6)基質(複数可)、(7)停止試薬(「エンドポイント」モードが使用されている場合は随意で、「速度」モードに停止試薬の必要はない。)
【0067】
フォーマット2:
(1)サンプルまたはキャリブレータ(複数可)、(2)抗体、(3)二次抗体-酵素抱合体、(4)免疫原(ハプテン-キャリアタンパク質)コーティングされたストリップ/マイクロタイタープレート、(5)洗浄溶液、(6)基質(複数可)、(7)停止試薬(「エンドポイント」モードが使用されている場合は随意で、「速度」モードに停止試薬の必要はない。)
【0068】
フォーマット3:
(1)ある分子の2つの異なるエピトープに対する対になる二つの抗体、(2)サンプルまたはキャリブレータ(複数可)、(3)(1)の抗体の一つは酵素と抱合した。(4)洗浄溶液、(5)基質(複数可)。(6)停止試薬(「エンドポイント」モードが使用されている場合随意で、「速度」モードに停止試薬の必要はない。)
【0069】
本発明は、また、SAMの免疫学的検出のため、免疫アッセイ(例えば、ELISA検査)に基づいてのS-アデノシルメチオニンに対する抗体などを含まれている検査キットを提供する。ELISA検査キットは、上記のELISAフォーマットのいずれかであることができる。例えば、以下の成分:(a)固相に結合された二次抗体;(b)固定化されたハプテン、ハプテン誘導体、免疫原または類似体(小分子は、ハプテン-キャリア結合体を介してコーティングされている);(c)固体又は溶解した形の酵素基質(複数可);(d)トレーサー標識ハプテンまたはその誘導体(普通に使われるトレーサーは、酵素、蛍光分子、ビオチン、化学発光性または放射性物質を含む);(e)緩衝および洗浄溶液;(f)非特異的吸着および凝集などを防止するための添加剤;(g)ピペット、インキュベーション容器、参照標準、較正曲線、およびカラーテーブル。
【0070】
SAMおよびSAHのレベルが決定されると、メチル化指数を計算し、個体の健康状態を判断するために応用する。
【0071】
11の健康な個体からの測定値に基づいて、一般的には、SAMの平均レベルが約147±16nMで、SAHレベルは29±11nMでした。メチル化指数は5+1でした。通常メチル化指数が4以上である。
【0072】
がん患者のSAMの平均レベルは、103±52nMでした。
【0073】
アテローム性動脈硬化症の患者さんにSAMの平均レベルは113±15nMでした。SAHに対するウサギモノクローナル抗体を用いてのSAH定量ELISAの予備的な結果は、実質的により高いSAHのレベルを示した。したがって、SAM/SAHは、アテローム性動脈硬化症の患者において有意に低減された。
【0074】
肝疾患の患者の血漿中のSAMの(26サンプルからの)平均レベルは45±8nMで、正常な人よりはるかに低い。
【0075】
SAMとSAHレベルの比を算出し、メチル化指数と呼ぶ。これは、SAMまたはSAHのいずれかの単一の値と比べ、一般的な健康、病気の状態、発展および予後を評価するためのより正確かつ説得力のある尺度である。通常、メチル化指数は>4である。いくつかの病理学的な状況では、SAMのレベルを減少し、SAHレベルを増加させるため、これは4未満、またはさらに1未満までに下がる。次に、減少したメチル化指数は、DNA、RNA、ペプチド、ホルモン、神経伝達物質、などの多くの重要な分子のメチル化プロセスに影響を与える。
【0076】
メチル化指数は、化学療法プロトコルを決定するために使用される。有意に減少したメチル化指数レベルを有する癌患者は、より積極的なプロトコルを用いて治療されている。メチル化指数は各患者に適切な治療を選択するために、癌の病期と対応付けている。
【実施例0077】
(発明を実施するための形態)
以下の実施例は、本発明の方法および治療組成物の有用性を実証することを意図しており、いずれにせよ本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
[実施例1]
SAMとSAHに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の生成
【0078】
試薬と略称:
AdaM:アザアデノシル(デアミノ)メチオニン、SAM類似体またはSAMハプテン
ASAM:アザ-SAM、または窒素(N)-アデノシルメチオニン、SAM類似体またはSAMハプテン
BgG:ウシガンマグロブリン
BSA:ウシ血清アルブミン
BTG:ウシサイログロブリン
CSAM:炭素(C)-アデノシルメチオニンまたはS-6-メチル-6-デアミノシネフンギン
daH:デアミノ-5-アデノシルホモシステイン
daHSO:daHスルホキシド
DCC:N、N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMF:ジメチルホルムアミド
EDAC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ELISA:酵素結合免疫吸着検定法
GAMプレート/ストリップ:ヤギ抗マウスIgG被覆したマイクロプレートまたはストリップ
GARプレート/ストリップ:ヤギ抗ウサギIgG被覆したマイクロプレートまたはストリップ
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IB:インキュベーションバッファー
KLH:Keho limpet ヘモシアニン
NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
RT:保持時間(HPLC用)、または室温
SAH:S-アデノシルホモシステイン
SAM:S-アデノシルメチオニン
PLL:ポリ-リジン
【0079】
1.AdaM-NHSの調製:一晩真空乾燥したAdaM(15.1mg、約0.041mmol)を含むフラスコに、21.7mg(0.107mmol)のDCCと、7.2mg(0.061mmol)のNHSとを、添加した。固体塊は、真空ラインに放置し、3~4時間乾燥した。約1.5mLの乾燥DMFを窒素雰囲気下でフラスコに添加し、次いでフラスコを密封した。この溶液を室温で一晩撹拌した。(10%メタノールを含むジクロロメタン溶液での)TLC分析で、NHSエステルの形成を示した。
【0080】
2.AdaM-BSAの調製:59.8mgのBSAを量り分け、丸底フラスコに入れ、5mLの新たに調製した100mMのpH8.25のリン酸ナトリウム溶液を追加した。そのBSA溶液を4℃の水浴中に置いて激しく撹拌する。上記のように用意されたAdaM-NHSを数分ごとに10μLアリコートでゆっくり添加した。合計150μLを加えた後、このコンジュゲート混合物は旋転する曇状となった。溶解を助けるためにDMSO溶液を1mL添加した。また50μLのAdaM-NHSをDMF中に添加すると、混合物は再び濁った。その後、AdaM-NHSを10μLの5回加えたごとに、5分間の水浴超音波を適用した。DMFに合計AdaM-NHS150μLを添加した後、混合物を20分間の超音波で処理した。抱合体に如何なるハプテンも含まないことを確保するために、プールをPBS(1.5リットル×4)に対して2日間透析した。コンジュゲートの最終容量は約36mLで、BSA濃度は推定1.66mg/mLである。
【0081】
3.AdaM-KLHの調製:上記の方法を用いて、17.5mgのKLH、15.1mgのAdaMを量り分ける。透析後の最終容量は29.5mLで、濃度は0.6mg/mLである。
【0082】
4.AdaM-PLLの調製:4.72mgのAdaMを1mLのDMFに溶解し、6.5mgのEDC.HClと4.0mgのNHSを添加し、次いで、混合物を十分に密封し、室温の暗所で一晩中撹拌した。1.5mgのPLLを量り分け、1mLのpH8.2の10mMのPBSで溶解した。活性化されたAdaMはその後PLL溶液にゆっくりと添加し、混合物を暗所で一晩放置した。その反応混合物をpH7.3の10mMのPBSで48時間透析した。透析後の最終容量は3.5mLで、1.4mg/mLの濃度である。
【0083】
5.SAH-BSAの調製:3.8mgのSAH(Sigma)を1.5mLのDMF中に溶解し、10mgのEDC.HClと4.5mgのNHSを添加し、混合物を十分に封止し、室温の暗所で24時間撹拌しました。12.9mgのBSAを量り分け、2mLの10mMのpH7.8のPBSで溶解した。SAH溶液をBSA溶液にゆっくりと添加し、混合物を撹拌とともに4℃暗所で一晩放置した。反応混合物を10mMのpH7.3のPBSで72時間透析した。透析後の最終容量は8.4mLで、1.4mg/mLの濃度である。
【0084】
6.SAH-PLLの調製:SAH1.5mgを1mLのDMFに溶解し、EDC.HCl4mgとNHS2mgを加え、次いで混合物をよく密封し、室温暗所で一晩撹拌した。1.5mgのPLLを量り分け、4.7mLの50mMのpH9.6のPBSで溶解した。その後、活性化されたSAHをPLL溶液にゆっくりと添加し、混合物を暗所で一晩放置した。その反応混合物を10mMのpH7.3のPBSで48時間透析した。透析後の最終容量は7.0mLで、0.93mg/mLの濃度である。
【0085】
7.SAMとSAHに対するモノクローナル抗体を生成するための一般手順:
マウス・モノクローナル生成はKolher氏とMilstein氏の先駆的な仕事で開発された手順(Nature, 256, 495-497, 1975)に基づいての一般的な方法である。Balb/cマウスを、モノクローナル抗体の免疫化および腹水の生成に使用した。複数部位に皮下注射(1mLの総体積)で免疫を行った。最初の注射は完全フロイントアジュバントとAdaM-BSAの1:1の混合物、およびPBS中に乳化したAdaM-KLHコンジュゲートソリューションを使用する。その後の注射は不完全フロイントアジュバントを使用する。
【0086】
免疫した動物から定期的に血液を採取し、細胞を遠心分離により除去した。その後、このようにして得られた抗血清の免疫応答および抗体力価を検査した。用途により、抗体を直接使用することができる。必要に応じて、それらはさらに、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムまたはプロテインAカラム・クロマトグラフィーなどを用いて、免疫グロブリンレベルに精製することができる。
【0087】
モノクローナル抗体については、そのクローンが得られた後、腹水生産のために、それを宿主に注入することができる。次いで、プロテインA親和性カラムにより腹水から抗体を精製した。また、抗体を生成するために、中空繊維法でハイブリドーマ・クローンを培養することができる。
【0088】
マウスは、実験終了する3日前に、静脈注射で免疫原(刺激)を与えた。マウスの脾臓を回収し、フレンチプレスで均質化した。脾臓細胞を骨髄腫NS-1細胞と5:1の比で融合させた。融合した細胞懸濁液は、その後、96ウェルマイクロタイタープレート上に播種した。ハイブリドーマを18%ウシ胎児血清、HATおよびHTサプリメントで強化されたRPMI1640で成長させ、スクリーニングした。AdaM-PLL抱合体に陽性なクローンをさらなる研究のために選択した。最終的な選択は、アッセイの表現および 交叉反応性・プロフィールに基づいた。選択されたクローンは、その後、腹水を生成するためにマウスに注射した。
【0089】
シリアルスクリーニングおよび選択によって、私たちはより良い特異性がある、他の類似体と交差反応の少ないいくつかのクローンを同定した。2つのモノクローナル抗体の力価を検査し、結果を図1に示した。
【0090】
8.SAMとSAHに対するウサギのポリクローナル抗体
ニュージーランドホワイト・ウサギをポリクローナル抗体の生成のために使用した。免疫を、複数部位に皮下注射(1mLの総体積)で行った。免疫方法は、モノクローナル生成のためにマウスを免疫した場合と同じである。回収した前、ウサギ抗血清を検査した。その力価は、抗SAMも、抗SAH血清も1:12000を超えた。
[実施例2]
抗体特異性
【0091】
さらに、クローンの特異性を検査する。クローン#84の交差反応が非常に低くて、<1.25%である(図2を参照)。 交叉反応に使用される三つの類似体はSAH、メチオニンおよびアデノシンである。競合ELISAにおいて、SAMより約80倍高い用量の類似体を使用した。SAH、メチオニンおよびアデノシンの10μMの投与量で、コーティングされた抗原との競合が発生しなかった。しかし、3つの類似体に抑制は見られなかった一方、類似体よりはるかに低い投与量でSAMを添加した場合、抑制は明らかに示した。図2から理解し得るように、SAMによる抑制は、この実験で見られた約40%より、簡単に高くなることができる。
【0092】
クローン#118のSAH、メチオニンおよびアデノシンとの交差反応も非常に低い(図3)。競合ELISAにおいて、同じ投与量のSAM、SAH、メチオニンおよびアデノシンを使用した。結果として、遊離SAMはAdaM-コーティングされたマイクロタイタープレートにモノクローナル抗SAM抗体の結合を大きく抑制したが、SAH、メチオニン、およびアデノシンはしなかった。
[実施例3]
競合ELISAアッセイ
【0093】
試薬:
IB:10mMリン酸塩、150mMNaCl、0.2%BSA、0.1%トゥイーン20、0.1%プロクリン、pH7.4。サンプル:(a)SAMトルエンスルホナート(トシラート)二硫酸塩(Sigma社);(b)SAHナトリウム(分子量406.39);(c)アデノシン(Sigma社);(d)メチオニン(Sigma社)。HRPヤギ抗マウスIgG(H+L)(EarthOx、サンフランシスコ、CA)。HRP基質:単一試薬基質溶液NeA-Blueテトラメチルベンジジン基質。抗原希釈緩衝液:0.5%BSAを含むIB。コーティング緩衝液:50mMの炭酸塩緩衝液、pH9.6。洗浄バッファー:PBS、pH7.5、0.1%Tween-20。
【0094】
(1)AdaM-BSAコートしたマイクロプレートをブロットし、デカントし、その後、競合的SAM、SAH、メチオニン、及びアデノシンを、40μLの抗原希釈緩衝液にて添加した。0.025μg/mLの精製SAMに対するモノクローナル抗体44μLとIB+トリス緩衝液(100mM、pH8.5)16μLを加え、一緒に37℃で1~2時間インキュベートした。
(2)マイクロタイタープレートをPBSTで3回洗浄し、吸い取り乾燥した。
(3)次いでに、各ウェルに、適切に希釈したHRPヤギ抗マウス抗体を100μL添加し、37℃で20分間インキュベートした。
(4)その後、アッセイ混合物をデカントし、洗浄し、吸い取り乾燥した。
(6)各ウェルにHRP基質を100μL/ウェルを添加し、10~15分間インキュベートした。
(7)50μL/ウェルの2N硫酸で基質反応を停止する。
(8)OD450を記録した。
【0095】
生体試料中のSAMを定量するために、競合ELISAを開発した。
競合ELISAでのSAMとSAHの競合ELISAの標準曲線は、図4に示されている。
ロジットは、Ln(A/A0)/(1-A/A0)で定義され、Aはサンプルまたは標準のOD450値で、A0が対照ウェルのOD450値である。負のロジット値は、A/A0が50%未満で、抑制率(1-A/A0)が50%以上であることを示し、異常な状況で、正常に評価されるべきではない。
【0096】
標準物12.60mgを正確に秤量し、少量のDMFに溶解し、次いで250mLのフラスコで0.1mMのHClに十分に溶解させた。それから、5μg/mL、2.5μg/mL、1.25μg/mL、0.625μg/mL、0.3125μg/mL、および0.15625μg/mLの標準溶液を、それぞれ100mLのフラスコで作った。
【0097】
[実施例4]
HRP抱合モノクローナル抗体#84を作成した。別のモノクローナル抗体クローンはクローン#84と対になって、SAMのレベルを定量化するためのサンドイッチELISAを実現する。
【0098】
[実施例5]
(血液サンプルの採取手順)
血液サンプルは、同意を得た正常のヒト及び患者から採集した。末梢静脈血をEDTAチューブに採取した。試験管を直ちに4℃で冷却し、採血後30分以内に2000g以上で10分間遠心分離し、血漿を得た。SAMとSAHを測定するサンプルに、100μL血漿に対して約10μLの1N酢酸を加えた。プラズマは、測定に使用されるか、または将来の使用のために-70℃下で凍結した。血漿を除去した後の全血細胞のアリコートも、SAMとSAHを測定するために、またはDNAを作るために用意した。いくつかの状況では、白血球を全血細胞から単離し、将来DNAを抽出するために凍結した。
【0099】
[実施例6]
前述したように、通常の体格がある、年齢が20~50歳の正常のアジア男性と女性11人からの血液のSAMとSAHサンプルを直接競合ELISAアッセイで測定した。SAMの平均値は147±16nMで、SAHは29±11nMで、メチル化指数は約5±1であった。より多くのサンプルを収集している。イムノアッセイによって検出されたSAMとSAH値は、人種、年齢、性別、体重、食事、ライフスタイルなどに着目した血漿中SAMとSAHレベルに関する大規模研究を行うために使用される予定である。SAM/SAHに関する大規模疫学研究を実行し、以下および本発明の本文に記載した様々な疾患の状況と比較した後、メチル化指数は真新しい総体的ヘルスインディケーターとして使用される可能性がある。
【0100】
[実施例7]
血液サンプルは、化学療法のために入院した癌患者から得た。サンプルは、SAMおよびSAHレベルについて直接競合ELISAアッセイで測定した。がん患者の12サンプルからのSAMの平均レベルは103±52nMで、SAHレベルが250±90nMであった。平均メチル化指数は0.5未満であった。人間のメチル化指数およびそれと異なるレベルの癌の様々な側面との関係の完全なプロファイルを生成するために、診断内容、症状、癌の段階、進行、治療、再発および予後情報を含むより多くのサンプルや観測が行われている。血液サンプルは、また、化学療法前および後の他のタイプの癌の様々な患者から採取している。DNAメチル化レベルは、同様に、白血球から測定される。癌患者からの特定のDNAメチル化の障害とメチル化指数またはグローバルDNAメチル化との関係は、健康の状態および治療プロトコルにさらに影響を与えることが期待される。
【0101】
[実施例8]
血漿は、アテローム性動脈硬化症の障害および心臓発作(集中治療室の患者)を有する患者から得られ、次いで、(市販のELISAキットを使用して)直接競合ELISAアッセイおよびホモシステインで、SAM/SAHを分析した。このような患者10例の血液サンプルから、検出されたSAMの平均レベルは113±15nMで、SAHは680±258nMであった。ウサギモノクローナルSAHに対する抗体(ab111903、abcam社、Cambridge、MA)を用いたSAH定量的ELISAの予備的結果は、心臓発作患者のレベルが有意な増加を示した。冠動脈、脳、および末梢血管のアテローム性動脈硬化症を持つ患者においてのSAM/SAHの有意の減少、およびそれと心血管死亡率の予測因子として考えられていたホモシステインのレベルとの関係を示すために、より多くのデータが生成されている。心臓発作の予後およびその治療効果の評価において、SAM/SAHはホモシステインよりも良いかつ直接的な指標である可能性がある。
【0102】
[実施例9]
伝染性肝炎(何人かは、胆汁うっ滞など胆汁の問題も付随した)、肝硬変、線維症などの肝臓障害を有する患者から血液サンプルを採集し、その後、直接競合ELISAでSAMとSAHレベルについて分析した。26サンプルからの血漿中のSAMの平均レベルは45±8nMであった。肝疾患におけるSAMのレベルは、正常な人よりもはるかに低かった。SAHレベルは、しかし、普通の人より高くて、342±129nMであった。メチル化率は約0.13であった。
【0103】
[実施例10]
うつ病と診断された患者から血液サンプルを得た、その後、次のようにSAMについて分析した。
【0104】
明らかな臓器損害または疾患のないうつ病患者らの血液サンプルを第二湘雅医科大学病院精神健康医学研究所から、いくつかの臓器疾患が伴ううつ病患者らの血液サンプルを第二寧波病院神経科およびリハビリテーション科から、それぞれ採集した。我々は、特にうつ病の治療の前と後にSAM-eまたは他の薬を服用するうつ病患者のSAMとSAHのレベルを比較した。10サンプルから、SAMのレベルは20±18nMで、SAHは340±180nMであった。メチル化指数は約0.064であった。
【0105】
SAMまたはメチル化指数は、うつ病の個別化治療するための良い指標となり、予後予測にも助ける可能性がある。定性的および半定量的SAMの迅速なテストストリップはSAM-eまたは他の抗うつ薬を服用するかどうかを判断する必要がある患者の利用できる便利な選択肢である。これは患者に最もっとも適切な薬の選択を指導するのに役立つ。
【0106】
[実施例11]
血液サンプルは、パーキンソン病を有する患者から採集した後、次のようにSAMについて分析した。
【0107】
第2寧波病院神経科・リハビリテーション科からパーキンソン病と診断された患者の血液サンプルはこの研究に含まれる。血漿中のSAMとSAHのレベルは、本発明で開発されたイムノアッセイを用いて測定する。
【0108】
[実施例12]
血液サンプルは、関節リウマチおよび多発性硬化症を有する患者から得られ後、下記のようにSAMを分析した。
【0109】
第2寧波病院の神経科とリハビリテーション科から変形性関節症の疾患または多発性硬化症と診断されている患者の血液サンプルはこの研究に含まれる。血漿中のSAMとSAHのレベルは、上述のようにイムノアッセイを用いて測定される。研究は、SAMまたはメチル化指数は変形性関節症および多発性硬化症によってどのように変化するかについて行われる。SAMおよびSAHのレベルは、変形性関節症および多発性硬化症の処置前後にSAM-eまたは他の薬を服用する骨関節炎および多発性硬化症患者の間で比較する。SAMまたはメチル化指数が変形性関節症および多発性硬化症の個別化治療するための良い指標で、予後予測にも助ける。定性的および半定量的SAMの迅速なテストストリップは、変形性関節症および多発性硬化症の症状を治すために、SAM-eまたは他の薬を服用するかどうかを決定する必要がある患者が利用できる便利な選択肢である。これは患者に最もっとも適切な薬の選択を指導するのに役立つ。
【0110】
[実施例13]
実施例6~12で使用したサンプルのメチル化指数は次のように測定した。
本発明で開発された免疫アッセイを使用して、SAMとSAHを同時に測定する。SAMとSAHのレベルの比を算出し、メチル化指数と呼ぶ。これは、SAMまたはSAHのいずれかの単一値より、総体的な健康、病気の状態、発展および予後を評価するためのより正確かつ説得力のある尺度である。通常、メチル化指数は>4である。いくつかの病理学的な状況では、SAMのレベルの減少およびSAHレベルの増加で、これは、4未満、またはさらに1未満になる。次に、減少メチル化指数は、DNA、RNA、ペプチド、ホルモン、神経伝達物質、などの多くの重要な分子のメチル化プロセスに影響を与える。
【0111】
[実施例14]
化合物1:2',3'-O-イソプロピリデンアデノシン(25g、82mmol、1当量)と乾燥ピリジン(20mL)を、磁気攪拌棒と共に、50mLの一口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下に置いた。次いで、フラスコを激しく撹拌しながらヒートガンで加熱した。約5分後、すべての固体が溶解した。溶液になったら、混合物を氷水浴で冷却し、20分間撹拌した。塩化トシルを固体として、顕著な発熱を防ぐため、8回に分けて、1時間かけて加えた。混合物を5日間0℃で維持した。反応をTLCによって完了したら、混合物を10mLのH2Oおよび酢酸エチル30mLで希釈した。混合物を分液漏斗に移し、3NのHClを10mL加えた。層を分離し、有機層を過剰の塩酸ピリジニウムを除去するため、200mLの水で5回洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、次いで、残渣をジクロロメタン100mLで溶解した。これは、添加漏斗を介して、ゆっくりと、ヘプタン(1.12L)の撹拌溶液に添加した。灰白色の沈殿物を濾過して分離し、純粋な生成物31.1gを生成した。これは質量分析および1H NMRによって確認した。
【0112】
[実施例15]
化合物2:化合物1(32.2g、70mmol)を、磁気撹拌棒と一緒に300mL密封チューブに添加した。2MメチルアミンTHF溶液約200mLをこのチューブに注ぎ、チューブを密封した。容器は50℃のオイルバスに浸漬して、2日間攪拌した。反応容器をオイルバスから取り出し、次いで、氷水浴中に入れ、30分間攪拌した。キャップを除去し、過剰のメチルアミンは、穏やかな窒素注入で吹き出された。残渣を丸底フラスコに移し、減圧下で濃縮した。ガム状残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(5%メタノールDCM溶液)で精製し、3.51gの化合物2を得た。その構造は、1H NMRによって確認した。
【0113】
[実施例16]
化合物3:アミン2(5.0g、15.6mmol、1当量)を500mLの一口丸底フラスコに入れた。乾燥アセトニトリル150mLを添加した後、ジイソプロピルエチルアミン(2.1g、16.38mmol、1.05当量)を加え、35℃で30分間攪拌した。ブロモブチラート(2.55g、14.1mmol、0.9当量)をシリンジで滴入した後、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(288mg、0.78mmol、5mol%)を加えた。混合物を5日間40℃で撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、82%の収率で所望の生成物5.36gをフラッシュクロマトグラフィー(5%メタノールDCM溶液)で精製した。
【0114】
[実施例17]
化合物4:メチルエステル3(7.76g、18.4mmol、1当量)を250mLの丸底フラスコに入れ、15mLメタノールと15mLH2Oで溶解させ、10分間撹拌した。固体の水酸化リチウム(1.55g、36.8mmol、2当量)を加え、混合物を約2時間(出発物質の完全な消失をTLCおよびLCMSで示すまで)撹拌した。粗混合物を乾燥するまで濃縮し、さらに精製することなく次のステップに移した。
【0115】
[実施例18]
化合物5:約7gの粗製したリチウム塩4を150mLの3N HClに溶解し、次にNH 4 OHを加えてpHを9にし、室温で4時間(出発物質がTLCおよびLCMSに完全消失したまで)撹拌した。粗製の混合物を濾紙で濾過し、次いで減圧下で濃縮乾固した。40%メタノール水の勾配で生成物を溶出する120g逆相カラムで、5分画に粗製の残渣を精製した。精製した分画をプールし、次いで高真空下、40℃で、乾燥するまで濃縮した。製品は、放置すると茶色の油に戻る、茶色の泡状物質であった。生成物をHPLC、マススペクトル、および1H NMRにより確認した。次に、純度(HPLC)99.55%の生成物4.8gを分割し、メタノールと水の1:1混合物を有する九つのバイアルに移した。各サンプルは、その後、質量が一定になるまで、高真空下40℃で濃縮乾燥した。
【0116】
[実施例19]
1期の癌を有する患者を検査し、それらのSAMレベルとSAHレベルを測定し、メチル化指数を算出する。メチル化指数が2未満の患者は、化学療法を受けながら、一日一回のSAM服用を開始する。
【0117】
[実施例20]
尿サンプル(もし尿はその中のいくつかの特別な成分で正常に使用できない、または尿中のSAM濃度が低すぎる場合は、血液サンプル)のメチル化指数は、うつ病治療を個別化するための良い方法である。SAMe治療のプロトコルは、下記のような実施が可能である。
【0118】
成人患者について、気分や他の健康問題の重症度に応じて、多くのレジメンを使用されている。例えば、
【0119】
毎日800-1600mgのSAMeを、最大6週間まで経口投与したことがある。
毎日200から400mgのSAMeを静脈注射又は筋肉注射で、最大8週間与えたことがある。
毎日1000-1600mgの用量を15日間から6週間まで、内服したことがある。
毎日150~400mgの用量を3-4週間IVで投与するのは、最も一般的である。
毎日400mgのs-adenosyl-L-methionine 1,4-butanedisulphonate安定塩(SAMe)(Knoll Farmaceutici S.p.A., Liscate, Milan, Italy)を、筋肉内に注入したことがある。
75~200mg用量のSAM-eを筋肉内に14-30日間注入したことがある。
治療の最初の3日間にSAMe200~400mgの用量を250mLの生理食塩水に溶解してIVで与えられた後、SAMeを毎日400mgで4-14日間服用したことがある。
【0120】
高い用量(毎日400mgより多い)を服用する患者のSAMe投与量をタイムリー調整するために、3~5日間ごとに一回で、本発明で開発されたメチル化指数ELISAキットを使用してメチル化指数を測定してください。メチル化指数の増加が速すぎる(2回測定の間に5倍、または0.5の増加がある、または患者がSAMeの使用と関連する明らかな症状を感じた)場合、特に高血圧や他の心血管障害を有する患者に対して、投与量を減らすことをお勧めする。ハイリスクグループは、SAM投与の安全性を確保し、その副作用を回避するために、毎日メチル化指数をテストさせ、またはSAMとSAHの迅速検査キットを使用して血液や尿中のSAMとSAHのレベルを定性的または半定量的に毎日テストするべきである。
【0121】
SAM-eを毎日400mgより少ない用量を経口服用する患者は、その投与量は患者に適切かどうか、またはいつ薬の服用を中止するかを判断するために、必要な時に、または簡単に週に1回のペースで、メチル化指数、または少なくともSAMをテストしてもらおう。
【0122】
メチル化指数が正常に戻って、1週間または2週間で安定化されるまで、SAMの投与を停止しないでください。
【0123】
正常または正常に近いメチル化指数を持っているうつ病患者は、SAMeを治療の第一選択としないでください。その代わりに、他のタイプの抗うつ薬を使用してください。しかし、それでも、メチル化指数は、他の治療の有効性を監視するための優れたマーカーであり得る。メチル化指数を定期的にテストしてもらうことは、治療を停止することができるときを決定するためにも重要である。
[実施例21]
【0124】
尿サンプル(もし尿はその中のいくつかの特別な成分で正常に使用できない、または尿中のSAMの濃度が低すぎる場合は、代わりに血液サンプル)のメチル化指数測定は、肝臓および/または胆汁うっ滞治療を個別化するための良い方法である。SAMe治療のプロトコルは、次のようになれる。
【0125】
成人患者に対して、肝臓および/または胆汁うっ滞、および他の健康上の問題の重症度に応じて、多くのレジメンが使用されている。例えば、
SAMeを毎日1,600mg、2週間服用したことがある。
SAMeを毎日1,000mg、静脈(IV)内に4週間注入したことがある。
妊娠中の胆汁の流れの問題を治療するために、Transmetil(R)500mg、毎日2回ゆっくり注入によって14日間与えた後、出産するまでまたはその後も、SAMeを500mg一日二回、口より服用したことがある。SAMyr(R)600mgを、口より単独で服用したことがある。
SAMyr(R)の1,800mgの用量は、毎日ベータアドレナリン作動薬と一緒に口から服用したことがある。
500mgの用量は、一日二回口から服用したことがある。
与えたことのあるSAMe用量は以下のとおりである。出産まで毎日1,000mgを筋肉に注入、20日間毎日200または800mgを静脈注射(IV)で投与、出産まで毎日800mgを2回に分けてIVで投与、800mgをIVで投与。20日間毎日800mgを3時間以上かけてIVで投与。二硫酸-p-トルエンスルホン酸の安定塩(BioResearch,S.p.A, Milan, Italy)を毎日800mg、IVで投与したことがある。
【0126】
より高い(毎日600mgより多い)用量を取る患者のSAMeの投与量を適時に調整するために、本発明で開発されたメチル化指数ELISAキットを使用して、3日ごとに1回のメチル化指数測定をしてください。メチル化指数の増加が速すぎる(2回測定の間に5倍またはある一定の値の増加があり、患者はSAMeの使用に付随した明らかな症状を感じた)場合、特に高血圧や他の心血管障害を有する患者に対して、投与量を減らすことをお勧めする。ハイリスクグループは、SAMの投与の安全性を確保し、その副作用を回避するために、メチル化指数を毎日テストさせてもらい、またはSAMとSAH迅速検査のキットを使用して血液や尿中のSAMとSAHのレベルを定性的または半定量的に毎日テストすべきである。
【0127】
SAM-eを600mgより少ない用量を毎日経口服用する患者は、その投与量は患者に適切かどうか、またはいつ薬の服用を中止するかを判断するために、必要な時にまたは簡単に週に1回のペースで、テストメチル化指数、または少なくともSAMをテストしてもらおう。
【0128】
メチル化指数が正常に戻って、さらに1週間または2週間で安定化されるまで、SAMの投与を停止しないでください。
【0129】
本出願に引用された全ての特許、特許出願および刊行物は、それらの引用文献を含む、それらの全体が引用を通じて本書に援用される。
【0130】
本発明の多くの実施形態は、上記に開示され、現在の好ましい実施形態を含んでいるが、本開示の範囲内および添付の特許請求の範囲内に、他の多くの実施形態および変形が可能である。したがって、提供される好ましい実施形態および実施例の詳細は、限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で使用される用語は、限定ではなく単に説明的であること、および、特許請求される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、種々の変更、多数の等価物がなされ得ることを、理解されたいである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】