(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119829
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】自己免疫疾患を処置するためのIL-2変異体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20220809BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220809BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220809BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220809BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220809BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220809BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220809BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220809BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220809BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220809BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220809BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220809BHJP
A61P 27/00 20060101ALI20220809BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220809BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20220809BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P37/06 ZNA
A61P43/00 111
A61K38/20
A61P3/10
A61P25/00
A61P21/00
A61P17/06
A61P1/04
A61P9/14
A61P17/00
A61P17/14
A61P27/02
A61P27/00
C07K19/00
C07K14/55
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022080574
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2019523626の分割
【原出願日】2017-11-08
(31)【優先権主張番号】62/419,118
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518256614
【氏名又は名称】デリニア,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレーブ,ジェフリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
【解決手段】本開示は、必要とする対象に、治療有効量のIL-2受容体結合部分を含む化合物を投与することによって状態を処置する方法を提供する。本開示に記載される方法は、増強された薬物動態プロファイルを提供する。本開示はまた、治療有効量のIL-2変異体タンパク質を含む融合タンパク質を投与することを含む、自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患を処置する方法であって、必要とする対象に、
a. 配列番号2のアミノ酸配列と比較してD20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、
b. ペプチドリンカードメイン、並びに
c. IgG Fcタンパク質ドメイン
を含む治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、
組成物が、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、
前記方法。
【請求項2】
対象への医薬組成物の投与が、制御性T細胞(Treg)と従来のT細胞(Tconv)との比を少なくとも0.2に増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物が対象に投与されてから5日後に、Treg/Tconv比が少なくとも0.2である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
必要とする対象において制御性T細胞の増殖及び/又は活性を増加させる方法であって、対象に、
a. 配列番号2のアミノ酸配列と比較してD20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、
b. ペプチドリンカードメイン、並びに
c. IgG Fcタンパク質ドメイン
を含む治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、
組成物が、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、
前記方法。
【請求項5】
対象への医薬組成物の投与が、等モル量のアルデスロイキンを含む組成物と比較して、制御性T細胞の増殖及び/又は活性のより大きな増加をもたらす、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象への医薬組成物の投与が、医薬組成物による処置前の対象における制御性T細胞のレベルと比較して、制御性T細胞のレベルを少なくとも2倍増加させる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
対象への医薬組成物の投与が、従来のT細胞又はCD8+T細胞の増殖を増加させない、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
対象への医薬組成物の投与が、制御性T細胞におけるCD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS、及びCD39からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを増加させる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
自己免疫疾患の処置を必要とする対象において、自己免疫疾患の処置に十分なレベルで、制御性T細胞(Treg)と従来のT細胞(Tconv)との比を維持する方法であって、対象に、
a. 配列番号2のアミノ酸配列と比較してD20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、
b. ペプチドリンカードメイン、並びに
c. IgG Fcタンパク質ドメイン
を含む治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、
組成物が、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、
前記方法。
【請求項10】
医薬組成物が対象に投与されてから5日後に、Treg/Tconv比が少なくとも0.2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
自己免疫疾患を処置する方法であって、
(i)必要とする対象に、
a. 配列番号2のアミノ酸配列と比較してD20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、
b. ペプチドリンカードメイン、並びに
c. IgG Fcタンパク質ドメイン
を含む治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物の第1の用量を投与するステップであって、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成されるステップ、
(ii)第1の用量を対象に投与した後に対象から得られたサンプル中のバイオマーカーの発現を測定して、バイオマーカーのピークレベルを決定するステップであって、バイオマーカーが、CD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS、及びCD39からなる群から選択されるステップ、並びに
(iii)少なくとも1つのバイオマーカーのレベルがバイオマーカーのピークレベルと比較して少なくとも10%低下したときに、治療有効量の医薬組成物の第2の用量を対象に投与するステップ
を含む、前記方法。
【請求項12】
バイオマーカーがCD25である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
投薬頻度が、毎週1回から2週間ごとに1回の範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象への医薬組成物の投与が、対象において下痢を引き起こさない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較してN88R置換を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較してT3A置換を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較してC125S置換を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインが、配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインが、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドリンカードメインが、それぞれ独立してセリン又はグリシンであるアミノ酸残基の配列である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ペプチドリンカードメインが15アミノ酸残基である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ペプチドリンカードメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
IgG Fcタンパク質ドメインが、IgG1 Fcタンパク質ドメインである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
IgG Fcタンパク質ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
融合タンパク質が、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
治療有効量が約5μg/kg~約250μg/kgである、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
自己免疫疾患が、尋常性天疱瘡、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、自己免疫性血管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、強皮症、視神経脊髄炎からなる群から選択される、請求項1~3及び9~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
対象がヒトである、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
医薬組成物が、皮下投与によって対象に投与される、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、自己免疫疾患を処置するためのIL-2変異体に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2016年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/419,118号の優先権を主張し、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の提出
本出願に関連する配列表は、EFS-Webを介して電子フォーマットで提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、127754_00402_Sequence_Listingである。テキストファイルのサイズは13KBであり、テキストファイルは2017年11月4日に作成された。
【背景技術】
【0004】
自己免疫疾患は、内因性組織に対する免疫システムの過剰な反応によって特徴付けられる。免疫応答メカニズムは、特化した細胞の活性化及びエフェクター機能の獲得を含む。以前はサプレッサーT細胞とも呼ばれていた制御性T細胞(Treg)は、T細胞の特化したサブグループである。Tregは、免疫システムの活性化を抑制し、それによって免疫システムの自己寛容を制御する。したがって、Tregは自己免疫疾患の発症を予防するのに重要な役割を果たしており、Treg活性を増強することができる治療法は自己免疫疾患の処置に有用であり得る。
【発明の概要】
【0005】
特定の態様では、本発明は、自己免疫疾患を処置する方法であって、本方法は、必要とする対象に、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、D20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、ペプチドリンカードメイン、並びにIgG Fcタンパク質ドメインを含む、治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、組成物は、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、方法に関する。特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、制御性T細胞(Treg)の従来のT細胞(conventional T cell;Tconv)に対する比を少なくとも0.2に増加させる。特定の実施形態では、医薬組成物が対象に投与されてから5日後、Treg/Tconv比は少なくとも0.2である。
【0006】
特定の態様では、本発明は、必要とする対象において、制御性T細胞の増殖及び/又は活性を増加させる方法であって、対象に、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、D20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、ペプチドリンカードメイン、並びにIgG Fcタンパク質ドメインを含む、治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、組成物が、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、方法に関する。
【0007】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、等モル量のアルデスロイキンを含む組成物と比較して、制御性T細胞の増殖及び/又は活性のより大きな増加をもたらす。特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、医薬組成物による処置前の対象中の制御性T細胞のレベルと比較して少なくとも2倍、制御性T細胞のレベルを増加させる。特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、従来のT細胞又はCD8+ T細胞の増殖を増加させない。特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、制御性T細胞におけるCD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS、及びCD39からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを増加させる。
【0008】
特定の態様では、本発明は、自己免疫疾患の処置を必要とする対象において、自己免疫疾患の処置に十分なレベルに、制御性T細胞(Treg)の従来のT細胞(Tconv)に対する比を維持させる方法であって、対象に、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、D20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、ペプチドリンカードメイン、並びにIgG Fcタンパク質ドメインを含む、治療有効量の融合タンパク質を含む医薬組成物を少なくとも2用量投与するステップを含み、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、組成物が、毎週1回から毎月1回の投薬頻度で対象に投与される、方法に関する。特定の実施形態では、医薬組成物が対象に投与されてから5日後、Treg/Tconv比は少なくとも0.2である。
【0009】
特定の態様では、本発明は、自己免疫疾患を処置する方法であって、(i)必要とする対象に、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、D20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、ペプチドリンカードメイン、並びにIgG Fcタンパク質ドメインを含む融合タンパク質を含む、治療有効量の医薬組成物の第1の用量を投与するステップであって、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成されるステップ、(ii)第1の用量を対象に投与した後に対象から得られたサンプル中のバイオマーカーの発現を測定して、バイオマーカーのピークレベルを決定するステップであって、バイオマーカーが、CD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS、及びCD39からなる群から選択されるステップ、(iii)少なくとも1つのバイオマーカーのレベルがバイオマーカーのピークレベルと比較して少なくとも10%低下した場合に、治療有効量の医薬組成物の第2の用量を対象に投与するステップを含む、方法に関する。特定の実施形態では、バイオマーカーはCD25である。
【0010】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、投薬頻度は、毎週1回から2週間ごとに1回の範囲である。特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、対象において下痢を引き起こさない。特定の実施形態では、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と比較してN88R置換を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と比較してT3A置換を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と比較してC125S置換を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインは、配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインは、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカードメインは、それぞれ独立してセリン又はグリシンであるアミノ酸残基の配列である。特定の実施形態では、ペプチドリンカードメインは、15アミノ酸残基である。特定の実施形態では、ペプチドリンカードメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、IgG Fcタンパク質ドメインは、IgG1 Fcタンパク質ドメインである。特定の実施形態では、IgG Fcタンパク質ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0011】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、治療有効量は約5μg/kg~約250μg/kgである。特定の実施形態では、自己免疫疾患は、尋常性天疱瘡、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、自己免疫性血管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、強皮症、視神経脊髄炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、医薬組成物は、皮下投与によって対象に投与される。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法であって、必要とする対象に治療有効量の化合物を投与するステップを含み、化合物が、対象においてIL-2受容体に結合する部分を含み、50μg/kgで化合物を対象に投与することにより、対象において約2000ng-h/mLから約10,000ng-h/mLまでのAUC0~∞を提供する、方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法であって、必要とする対象に治療有効量の化合物を投与するステップを含み、化合物が、対象においてIL-2受容体に結合する部分を含み、50μg/kgで化合物を対象に投与することにより、対象において約4mL/h-kgから約20mL/h-kgまでのクリアランスを提供する、方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法であって、必要とする対象に治療有効量の化合物を投与するステップを含み、化合物が、対象においてIL-2受容体に結合する部分を含み、50μg/kgで化合物を対象に投与することにより、対象において約10時間から約30時間の半減期を提供する、方法を提供する。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法であって、必要とする対象に治療有効量の化合物を投与するステップを含み、化合物が、対象においてIL-2受容体に結合する部分を含み、50μg/kgで化合物を対象に投与することにより、対象において約6時間から約15時間までの半減期を提供する、方法を提供する。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法であって、必要とする対象に治療有効量の化合物を投与するステップを含み化合物は、対象においてIL-2受容体に結合する部分を含み、50μg/kgで化合物を対象に投与することにより、対象において約500ng/mLから約3,000ng/mLまでのCmaxを提供する、方法を提供する。
【0017】
前述の方法の特定の実施形態では、投与は、対象に、等量(例えば、等モル量)の野生型IL-2ポリペプチド又はC125S IL-2(例えば、アルデスロイキン)を投与することよりも対象における制御性T細胞数を増加させる。特定の実施形態では、投与は、対象に、等量の野生型IL-2又はC125S IL-2(例えば、アルデスロイキン)を対象に投与することによって得られる半減期よりも長い半減期を対象に提供する。特定の実施形態では、投与は、対象におけるTエフェクター細胞数と比較して、対象における制御性T細胞数を増加させる。特定の実施形態では、投与は、対象における従来のT細胞と比較して、対象における制御性T細胞を選択的に活性化する。特定の実施形態では、投与は、対象におけるIL2Rβγ受容体複合体よりも対象におけるIL2Rαβγ受容体複合体を選択的に活性化する。特定の実施形態では、治療有効量は、約5μg/kgから約250μg/kgである。特定の実施形態では、治療有効量は、約25μg/kgである。
【0018】
前述の方法の特定の実施形態では、状態は自己免疫疾患である。特定の実施形態では、状態は尋常性天疱瘡である。特定の実施形態では、状態は1型糖尿病である。特定の実施形態では、状態は全身性エリテマトーデスである。特定の実施形態では、状態は移植片対宿主病である。特定の実施形態では、状態は自己免疫性血管炎である。特定の実施形態では、状態は潰瘍性大腸炎である。特定の実施形態では、状態はクローン病である。特定の実施形態では、状態は乾癬である。特定の実施形態では、状態は多発性硬化症である。特定の実施形態では、状態は、筋萎縮性側索硬化症である。特定の実施形態では、状態は円形脱毛症である。特定の実施形態では、状態はブドウ膜炎である。特定の実施形態では、状態はデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。特定の実施形態では、自己免疫疾患は強皮症である。特定の実施形態では、自己免疫疾患は視神経脊髄炎である。
【0019】
前述の方法の特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、投与は静脈内である。特定の実施形態では、投与は皮下である。特定の実施形態では、医薬組成物はIL-2ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、野生型IL-2に対して少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列である。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、野生型IL-2を基準にしてN88Rである置換において野生型IL-2と相違する。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、対象においてIL-2受容体に結合する部分の、野生型IL-2を基準にして安定性を増加させる野生型IL-2に関する突然変異を含む。特定の実施形態では、対象におけるIL-2受容体に結合する部分の、野生型IL-2を基準にして安定性を増加させる突然変異は、野生型IL-2を基準にしてC125Sである置換である。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、野生型IL-2を基準にしてT3Aである置換において野生型IL-2と相違する。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体と結合する部分は、配列番号1を含む。特定の実施形態では、対象においてIL-2受容体に結合する部分は、配列番号1である。
【0020】
前述の方法の特定の実施形態では、化合物は、免疫グロブリンFcドメインを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、対応する野生型免疫グロブリンFcドメインと比較してエフェクター機能が欠損している。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、対象においてIL-2受容体に結合する部分のC末端にある。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、IgG1免疫グロブリンFcドメインである。特定の実施形態では、IgG1免疫グロブリンFcドメインは、野生型IgG1免疫グロブリンFcドメインを基準にしてN297Aである置換において野生型IgG1免疫グロブリンFcドメインと相違する。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、配列番号7を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、配列番号7である。
【0021】
前述の方法の特定の実施形態では、化合物は、対象においてIL-2受容体に結合する部分に共有結合し、免疫グロブリンFcドメインに共有結合しているリンカーペプチドを含む。特定の実施形態では、IL-2受容体に結合する部分は、リンカーペプチドのN末端にあり、免疫グロブリンFcドメインは、リンカーペプチドのC末端にある。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、6~20個のアミノ酸残基である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、12~17個のアミノ酸残基である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、それぞれ独立してセリン又はグリシンであるアミノ酸残基の配列である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、15個のアミノ酸残基である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)である。特定の実施形態では、化合物は、配列番号4を含む。特定の実施形態では、化合物は、配列番号4である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】カニクイザルに化合物1、化合物2、及びIL-2を投薬し、続いて血液サンプルを回収するための実験的なタイムラインを示す図である。
【
図2】
図2A:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、制御性T細胞におけるIL2(C125S)の効果を示す図である。
図2B:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、従来のT細胞におけるIL2(C125S)の効果を示す図である。
図2C:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、CD8細胞におけるIL2(C125S)の効果を示す図である。
【
図3】
図3A:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、化合物1及び化合物2による制御性T細胞の活性化を示す図である。
図3B:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、化合物1及び化合物2による従来のT細胞の活性化を示す図である。
図3C:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、化合物1及び化合物2によるCD8細胞の活性化を示す図である。
【
図4】
図4A:フローサイトメトリーによって決定された、血漿1μLあたりの制御性T細胞数における化合物1の効果を示す図である。
図4B:フローサイトメトリーによって決定された、血漿1μLあたりの従来のT細胞数における化合物1の効果を示す図である。
図4C:フローサイトメトリーによって決定された、血漿1μLあたりのCD8細胞数における化合物1の効果を示す図である。
【
図5】
図5A:フローサイトメトリーによって決定された、化合物1によるFOXP3の刺激を示す図である(MFI=平均蛍光強度)。
図5B:フローサイトメトリーによって決定された、化合物1によるCD25の刺激を示す図である(MFI=平均蛍光強度)。
図5C:フローサイトメトリーによって決定された、化合物1投与の過程中にKi67を発現する細胞のパーセンテージを示す図である。
【
図6】フローサイトメトリーにより決定された、化合物1又はIL2(C125S)で処置した後の1μLあたりの制御性T細胞を示す図である。
【
図7】フローサイトメトリーによって決定された、化合物1又はIL2(C125S)による処置レジメンの5日目における、制御性T細胞の従来のT細胞に対する比、及び代表的動物由来のそれらの集団内のマーカーの発現を示す図である。
【
図8】
図8A:Ki67を発現するTreg細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、化合物1、IL2(C125S)、又はFc-V91Kによる処置中のKi67を発現する制御性T細胞のパーセンテージを示す図である。
図8B:Ki67を発現するTconv細胞のパーセントのフローサイトメトリー測定によって決定された、化合物1、IL2(C125S)、又はFc-V91Kによる処置中のKi67を発現する従来のT細胞のパーセンテージを示す図である。
図8C:Ki67を発現するCD8+細胞のパーセントのFACS測定によって決定された、化合物1、IL2(C125S)、又はFc-V91Kによる処置中のKi67を発現するCD8細胞のパーセンテージを示す図である。
【
図9】経時的な化合物1のカニクイザル血清濃度を示す図である。
【
図10】静脈内又は皮下投薬による経時的な化合物1のカニクイザル血清濃度を示す図である。
【
図11】
図11A:化合物1による処置後のpSTAT-5を発現する異なる細胞型のパーセンテージを示す図である。
図11B:IL2による処置中(C125S)による処置後のpSTAT-5を発現する異なる細胞型のパーセンテージを示す図である。
【
図12】化合物1又はIL2(C125S)による処置によって活性化された異なるヒト細胞型のパーセンテージを示す図である。
【
図13】化合物1又はIL2(C125S)により処置されたpSTAT-5及びCD56発現細胞を示す図である。
【
図14A】
図14A、14B及び14Cは、異なる細胞型を同定するためのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す図である。
【
図15】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおけるB細胞レベルのベースラインに対する倍数変化を示す図である。B細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図16】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおけるナチュラルキラー(NK)細胞レベルのベースラインに対する倍数変化を示す図である。NK細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図17】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおけるCD8 T細胞レベルのベースラインに対する倍数変化を示す図である。CD8 T細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図18】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおける従来のT細胞レベルのベースラインに対する倍数変化を示す図である。従来のT細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図19】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおける制御性T細胞レベルのベースラインに対する倍数変化を示す図である。制御性T細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図20】
図19の拡大バージョンであり、ビヒクル、20μg/kgの化合物2、及び100μg/kgの化合物2の処置群の間の差をより明確に示す図である。
【
図21】1、7、14、21、及び28日目の皮下投薬によってビヒクル又は化合物2(IL2(T3A、N88R)-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)により処置されたカニクイザルにおける制御性T細胞と従来のT細胞との比を示す図である。T細胞レベルを各投薬の5日後に定量した。化合物2を20μg/kg、100μg/kg、又は2mg/kgの用量で投与した。
【
図22】週1回又は2週間ごとに1回の化合物1及び化合物2の投薬をアルデスロイキン(C125S IL-2)と比較する例示的な研究のための投薬レジメンを示す図である。
【
図23】化合物1及び化合物2についての薬物動態学/薬力学的関係を説明するためのモデルを示す図である。実線は化合物1又は化合物2のレベルを指示する。小さな破線は、制御性T細胞(Treg)の機能的活性化を指示する。大きな破線は、Tregレベルを指示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
免疫システムは、自己と非自己を識別できなければならない。自己/非自己識別が失敗した場合、免疫システムは、体の細胞及び組織を破壊し、結果として自己免疫疾患を引き起こす。制御性T細胞(Treg)は、他の免疫細胞、例えば、従来のT細胞(Tconv)及びCD8細胞の活性を抑制するCD4+CD25+ T細胞の一種である。Tregは免疫システム恒常性の中心であり、自己抗原に対する耐性及び外来抗原に対する免疫応答の調節における耐性を維持する。1型糖尿病(T1D)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及び移植片対宿主病(GVHD)を含む多発性自己免疫疾患及び炎症性疾患は、Treg細胞数又はTreg機能の欠損と関連している。制御性T細胞は、インターロイキン2(IL-2)によって活性化され得るが、IL-2はまた他の多くのT細胞型を活性化する。
【0024】
IL-2はIL-2受容体(IL-2R又はIL2R)に結合する。IL-2Rは、T細胞、NK細胞、好酸球、及び単球などの様々な異なる免疫細胞種に発現するヘテロ三量体タンパク質である。この広範な発現パターンは、免疫システムにおける多面的効果及びIL-2処置の高い全身毒性を与える。
【0025】
IL2-Rは、3つの異なるIL-2Rタンパク質:α(アルファ)、β(ベータ)、及びγ(ガンマ)の異なる組合せによって生成される3つの形態を有する。これらの受容体鎖は集合して3つの異なる受容体形態を生成する:(1)シグナル伝達をしない低親和性受容体、IL2RA、(2)従来のT細胞(Tconv)、NK細胞、好酸球、及び単球に広く発現される、IL2Rα、IL2Rβ、及びIL2Rγで構成される中間親和性受容体(IL2Rβγ)、並びに(3)活性化T細胞上で一過性に発現され、構成的にTreg細胞上で発現されるIL2Rα、IL2Rβ、及びIL2Rγで構成される高親和性受容体(IL2Rαβγ)。従来のT細胞は、抗原によって活性化され、免疫攻撃に参加するものである。従来のT細胞には、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、及びメモリーT細胞が含まれる。エフェクターT細胞(Teff)には、刺激に対する特異的免疫応答を引き起こす様々なT細胞型が含まれる。IL-2における突然変異は、異なるIL-2R受容体形態に対するIL-2の結合親和性を変化させることができる。
【0026】
本開示の方法及び組成物は、IL-2受容体(例えば、IL-2又はIL-2変異体)に結合する部分及び免疫グロブリンFcドメインを含む分子に関する。一部の実施形態では、分子はまた、IL-2受容体結合部分と免疫グロブリンFcドメインを接合するリンカーを含む。IL-2受容体に結合する部分は、免疫の原因となる白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))、しばしばリンパ球)の活性を制御する。免疫グロブリンFcドメインは、分子のインビボ安定性を高め、リンカーはドメインを共有結合により接合させる。
【0027】
IL-2受容体に結合する部分
IL-2受容体に結合する部分は、野生型IL-2の全長、それより短くても又は長くてもよい。IL-2受容体結合部分は、配列番号2:(APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFXQSIISTLT)に示されるように、野生型IL-2配列を有することができ、又はそれはIL-2の変異体であり得る。IL-2変異体は、野生型IL-2アミノ酸配列とは異なる1つ以上の置換、欠失、又は挿入を含有し得る。残基は、本明細書において、1文字のアミノ酸コード、それに続くIL-2アミノ酸の位置によって表され、例えば、K35は、野生型IL-2配列の35位がリシン残基である。置換は、本明細書において、1文字のアミノ酸コード、それに続くIL-2アミノ酸の位置、続いて1文字のアミノ酸コードの置換によって表され、例えば、K35Aは、アラニン残基による、配列番号2の35位のリシン残基の置換である。
【0028】
本明細書中の化合物は、野生型IL-2の特異性と類似する又は類似しない、異なるIL-2受容体クラスに対する特異性を呈することができる。本明細書中の化合物は、野生型IL-2と比較して、安定性又は生物学的効果の増加を呈することができる。例えば、突然変異は、野生型IL-2と比較して、特定のIL-2受容体に対する特異性が増加した化合物を提供することができる。例えば、IL-2 N88Rは、IL2Rβγ受容体よりもIL2Rαβγ受容体への結合に選択的である。IL-2は、IL2Rαβγを発現するNK細胞の増殖の3,000分の1に減少した刺激を呈しながら、野生型IL-2と同程度に効果的に、IL2Rαβγ発現PHA活性化T細胞の増殖を刺激することができる。IL2Rαβγに対する増加した選択性を呈する他の突然変異には、置換D20H、N88I、N88G、Q126L、及びQ126Fが含まれる。
【0029】
一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分は、本開示の化合物の安定性を増強する突然変異を含む。例えば、IL-2 C125S突然変異は、不対システイン残基を排除することによって安定性を促進し、それによってIL-2ポリペプチドのミスフォールディングを妨げる。ミスフォールディングは、タンパク質凝集をもたらし、インビボでのポリペプチドのクリアランスを増加させ得る。一部の実施形態では、IL-2ポリペプチドは、グリコシル化部位を作製又は除去する突然変異を含む。例えば、IL-2突然変異T3Aは、O結合型グリコシル化部位を除去する。一部の実施形態では、T3A突然変異を有するIL-2変異体はまた、N88R突然変異及び/又はC125S突然変異を含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、配列番号3のように、T3A、N88R、及びC125Sの突然変異を含む。
【0030】
一部の実施形態では、置換は、3、20、88、125、及び126位のうちの1つ以上で起こる。一部の実施形態では、置換は、上記位置の1、2、3、4又は5つの位置で起こる。一部の実施形態では、IL-2変異体は、88及び125位に突然変異、例えば、N88R及びC125Sを含む。一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分は、配列番号1:APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTに記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、配列番号3:APASSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTのように、3、88、及び125位に突然変異、例えば、T3A、N88R及びC125Sを含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、野生型IL-2配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の突然変異(例えば、置換)を含む。
【0031】
本明細書中の化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む本開示のIL-2変異体を含む。本明細書中の化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列(すなわち、配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するN88R突然変異を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。実施形態はまた、Treg細胞を優先的に刺激し、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するN88R及びC125S突然変異を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。実施形態はまた、Treg細胞を優先的に刺激し、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。
【0032】
様々な方法及びソフトウェアプログラム、例えば、NCBI BLAST、Clustal W、MAFFT、Clustal Omega、AlignMe、Praline、又は他の適切な方法若しくはアルゴリズムを使用して、2つ以上のペプチド間又は核酸間の相同性を決定することができる。一部の実施形態では、同一性パーセントは、以下のパラメーターに基づいてFastDBによって計算される:1のギャップペナルティ、0.33のギャップサイズペナルティ、及び30のジョイニングペナルティ。
【0033】
有用なアルゴリズムの例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを使用して、一群の関連配列から多重配列アラインメントを作製する。それはまた、アラインメントを作製するために使用されるクラスタリング関係を示す系統樹をプロットすることができる。有用なPILEUPパラメーターは、3.00のデフォルトギャップウェイト、0.10のデフォルトギャップ長ウェイト、及び加重エンドギャップを含む。
【0034】
有用なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムである。BLASTプログラムの有用な例は、WU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを使用するが、ほとんどはデフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは、以下の値に設定される:オーバーラップ範囲=1.0、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP S及びHSP S2のパラメーターは動的値であり、対象とする配列が検索されている特定配列の組成及び特定データベースの組成に応じて、プログラム自体によって確立される。しかしながら、これらの値は、感度を増加させるために調整され得る。
【0035】
追加の有用なアルゴリズムはギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTは、BLOSUM-62置換スコア、9に設定された閾値Tパラメーター、ギャップなしの伸長を開始するための2ヒット法、ギャップ長kに10+kのコストを負荷、16に設定されたXu、並びにデータベース検索段階で40に、及びアルゴリズムの出力段階で67に設定されたXgを使用する。ギャップ付きアライメントは、約22ビットに対応するスコアによって開示される。
【0036】
追加の有用なツールは、Clustalであり、これは多重配列アラインメントのために一般的に使用される一連のコンピュータープログラムである。Clustalの最近のバージョンには、ClustalW、ClustalX、及びClustal Omegaがある。Clustal法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメント及び配列の同一性パーセントの計算のためのデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、及びDIAGONALS SAVED=4である。
【0037】
突然変異は、選ばれた部位に又はランダムに組み込むことができる。例えば、標的コドン又は領域でのランダム突然変異誘発は、活性についてスクリーニングされるべき突然変異体を提供することができる。公知の配列を有するDNAの所定部位に置換突然変異を生じさせるための技法には、例えば、M13プライマー変異誘発法及びPCR変異誘発法が含まれる。突然変異体のスクリーニングは、例えば、本明細書に記載されるアッセイを使用して遂行することができる。
【0038】
アミノ酸置換は、単一又は複数の残基であり得る。挿入は、例えば、約1~約20個以上のアミノ酸残基であり得る。欠失は、例えば、約1~約20個以上のアミノ酸残基であり得る。置換、欠失、挿入、又はそれらの任意の組合せは、サンプル化合物において起こり得る。
【0039】
免疫グロブリンFcドメイン
免疫グロブリンFcドメインは、融合タンパク質に組み込まれた場合、多数の治療上の利点を有する。例えば、免疫グロブリンFcドメインは、(1)融合パートナータンパク質に免疫グロブリンFcエフェクター機能を付与することができ、及び/又は(2)融合パートナータンパク質の循環半減期を増加させることができる。IgGタンパク質の主なエフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)であり、それぞれ補体タンパク質C1q及びIgG-Fc受容体(FcγR)へのFc結合によって媒介される機能である。これらのエフェクター機能は、治療用タンパク質が特定の抗原標的又は細胞に対する免疫応答を指向又は増強させるために使用される場合に重要である。エフェクター機能は、必要とされず、有毒でさえあり得、一部の実施形態では存在しない。例えば、エフェクター機能コンピテントFcを有するIL-2受容体結合部分は、Treg細胞を活性化するというよりはむしろ、死滅させることができる。
【0040】
上記のように、本明細書に記載される融合タンパク質は、Fcドメインを含まないIL-2ポリペプチドと比較して、循環半減期を増加させることができる。一部の実施形態では、増加した循環半減期は、Fcドメインが融合タンパク質の凝集を妨げ、それによってその安定性を高め、クリアランスを遅くさせることによる。
【0041】
4つのヒトIgGサブクラスは、エフェクター機能(CDC、ADCC)、循環半減期、及び安定性において相違する。IgG1は、Fcエフェクター機能を有し、そして最も豊富なIgGサブクラスである。IgG2は、Fcエフェクター機能が欠損しているが、他のIgG2分子との二量体化、及びヒンジ領域におけるジスルフィド結合のスクランブリングによる不安定性の両方を受ける。IgG3は、Fcエフェクター機能を有し、長く堅いヒンジ領域を有する。IgG4は、Fcエフェクター機能が欠損していて、他のサブクラスよりも短い循環半減期を有する。IgG4二量体は、異なるIgG4分子間のH鎖の交換をもたらすヒンジ領域中に単一のジスルフィド結合のみを有するため、生化学的に不安定である。凝集を防ぐためにIgG2 Fcのヒンジ領域に対して、又は二量体を安定させるためにIgG4 Fcのヒンジ領域に対して、Fc配列修飾を行うことができる。
【0042】
IgG1のエフェクター機能欠損変異体を作製することができる。例えば、アミノ酸置換は、N結合型グリコシル化部位の場所であるN297位で行うことができる。一部の実施形態では、置換はN297Aである。このアスパラギン残基の置換は、グリコシル化部位を除去し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有意に低下させ、それによって望ましくない細胞溶解を妨げる。
【0043】
様々な他のエフェクター機能欠損IgG1変異体もまた当業者によって認識され得る。このような変異体の非限定的な一例はIgG1(L234F/L235E/P331S)であり、これはC1q及びFcγR結合部位のアミノ酸を突然変異させる。これらの(又は類似の)Fc変異体は、エフェクター欠損した安定なIL-2選択的アゴニスト-Fc融合タンパク質(IL2SA-Fc)を生成するために使用され得る。Fcタンパク質部分の形態はまた、二量体というよりもむしろ安定な単量体を作製するように操作することができる。これらの修飾Fcタンパク質部分はまた、本開示のIL-2化合物と組み合わせることができる。さらに、IL-2-FcH鎖ポリペプチドを含む機能的な単量体のヘテロ二量体は、Fc H鎖ポリペプチドと組み合わせられて、IL-2選択的アゴニストとともに二重特異性抗体技術を使用して組み立てることができる。IL-2 Fc融合タンパク質はまた、IgG部分における抗原特異性の有無にかかわらず、無傷のIgG抗体分子を用いて作製することができる。さらに、ヒンジ領域の一部又は全部を欠くFc変異体は、本明細書に記載される化合物及び方法とともに使用することができる。
【0044】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc部分の配列は、DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (SEQ ID NO: 7)である。一部の実施形態では、免疫グロブリンFc部分は、配列番号7のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
リンカー
Fcと融合パートナータンパク質の間の接合部での連結は、(1)2つのタンパク質配列の直接融合、(2)介在リンカーペプチドとの融合、又は(3)非ペプチド部分による融合であり得る。リンカーペプチドは、2つのタンパク質部分間のスペーサーとして含まれ得る。リンカーペプチドは、成分タンパク質部分の適切なタンパク質フォールディング、安定性、発現、及び生物活性を促進することができる。長い柔軟なリンカーペプチドは、グリシン、セリン、スレオニンで構成することができ、複数のグリシン残基が非常に柔軟な立体配置を提供する。セリン又はスレオニン残基は、ペプチド内又は成分融合タンパク質部分との疎水性相互作用を制限するための極性表面領域を提供する。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン及びセリンが豊富、例えば、配列GGGGSが反復している。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、(GGGGS)nの配列を有し、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、すなわち、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)の配列を有する。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号6のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0046】
一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分はリンカーペプチドのN末端にあり、免疫グロブリンFcドメインはリンカーペプチドのC末端にある。一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分はリンカーペプチドのC末端にあり、免疫グロブリンFcドメインはリンカーペプチドのN末端にある。
【0047】
特定の実施形態では、本開示の化合物は、配列番号2のアミノ酸配列と比較してD20H、N88I、N88G、N88R、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を含むヒトIL-2変異体タンパク質ドメイン、ペプチドリンカードメイン、並びにIgG Fcタンパク質ドメインであり、各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、ヒトIL-2変異体タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合ドメインを介してペプチドリンカードメインのN末端に融合し、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介してペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される。
【0048】
本開示の化合物の例は、N88R及びC125S置換を有するIL-2変異体、IL-2ポリペプチドのC末端のリンカーペプチド、並びにリンカーペプチドのC末端のIgG1(N297A)Fcドメインを含む化合物1である。化合物1は、配列番号4:APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGGGSGGGGSGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGの配列を有する。一部の実施形態では、本開示の化合物は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0049】
本開示の化合物のさらなる例は、化合物2であり、T3A、N88R及びC125S置換を有するIL-2変異体、IL-2変異体のC末端のリンカーペプチド、及びリンカーペプチドのC末端のIgG Fcドメインを含む。化合物2は、配列番号5:APASSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGGGSGGGGSGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGの配列を有する。特定の実施形態では、本開示の化合物は、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
制御性T細胞の増殖及び活性
一部の実施形態では、本開示の分子は、対象に投与した場合、制御性T細胞(Treg)数(すなわち、増殖)を増加させる。例えば、本開示の分子は、投与前の対象の制御性T細胞数と比較して、対象への投与後の対象における制御性T細胞数を増加させることができる。例えば、対象への本開示の分子を含む医薬組成物の投与は、投与前の対象の制御性T細胞と比較して、対象における制御性T細胞のレベルを少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍又は60倍増加させ得る。
【0051】
一部の実施形態では、本開示の分子は、IL-2(C125S)(例えば、アルデスロイキン)、例えば、等モル量のIL-2(C125S)(例えば、アルデスロイキン)の投与と比較して、対象への投与後に対象における制御性T細胞数を増加させることができる。アルデスロイキンは、N末端アラニンが除去されているヒト野生型IL-2(配列番号2)と比較して、C125S置換を含むIL-2変異体である。対象への本開示の分子を含む医薬組成物の投与は、等モル量のIL-2(C125S)(例えば、アルデスロイキン)と比較して、対象における制御性T細胞のレベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%又は500%増加させ得る。
【0052】
一部の実施形態では、本開示の分子は、対象における制御性T細胞(Treg)と従来のT細胞(Tconv)との比を増加させることができる。ヒトにおいて、毎日の低用量IL-2療法は、Tregのレベルを増大させることによって慢性GVHD患者を処置するために使用されている(Koreth Jら、Blood. 2016年7月7日;128(1):130~7、及びKoreth, J. N Engl J Med. 2011年12月1日;365(22):2055~66を参照されたい)。後者の試験では、IL-2(アルデスロイキン)を12週間、毎日皮下注射した。全体として、これらの試験の患者は、ベースライン(処置前のTregレベル)に対して5倍を超えるTregの増加、Treg/Tconv比の5倍を超える増加、及び61%の臨床応答率を実現した。臨床応答は、処置の最初の週の終わりにTreg/Tconv比≧0.2と強く関連し、これはベースラインのTreg/Tconv比よりも約2.9倍増加した。したがって、一部の実施形態では、本開示の分子を含む医薬組成物を対象に投与することにより、Treg/Tconv比を少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5に増加させ得る。Treg/Tconv比は、本開示の分子のいくつかの用量にわたって、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20用量にわたって、上記のレベルに維持され得る。
【0053】
本開示の分子は、Tregに対して高度に選択的であり得、他の免疫細胞の数をほとんど増加させ得ない。本開示の分子によって活性化され得ない免疫細胞には、従来のT細胞、例えば、ヘルパーT細胞及びキラーT細胞、並びに細胞傷害性T細胞としても公知であるCD8+T細胞が含まれる。
図3A、3B、及び3Cに示されるように、化合物1及び化合物2によるカニクイザルの処置は、Treg細胞における増殖の頑強な及び選択的な誘導をもたらしたが、CD4従来型T細胞(Tconv)又はCD8+T細胞(CD8)においてはもたらさなかった。カニクイザルにおける250μg/kgの化合物1の単回静脈内投与は、Treg細胞において2倍を超える増殖の誘導を引き起こした。さらに、化合物1と化合物2はともに、カニクイザルにおける単回IV用量の投与の7日後に、増殖の活性化が依然としてベースラインを超えている状態で、用量依存的なTregの増加を刺激した。Treg、Tconv及びCD8細胞における化合物1の効果のより明確な図は、
図3D、3E及び3Fに見ることができる。
図4A、4B、及び4Cに示されるように、カニクイザルに化合物1を投与することにより、循環Tconv細胞又はCD8+細胞の数を増加させることなく、総循環Treg細胞の14.9倍の増加をもたらした。
【0054】
本開示の分子はまた、制御性T細胞活性(例えば、免疫抑制活性)を増加させ得る。制御性T細胞機能は、限定されないが、CD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS及びCD39を含む1つ以上のバイオマーカーの発現を測定することによって決定され得る。例えば、250μg/kgの化合物1によるカニクイザルの処置は、
図5A及び5Bに示されるように、FOXP3及びCD25の発現の増加(平均蛍光強度、又はMFIによって測定される)をもたらした。Treg機能に必要なタンパク質であるFOXP3のレベルは、高度に抑制的なTregと相関している(Miyara Mら、Immunity. 2009年6月19日;30(6):899~911)。CD25(IL2RAタンパク質)のレベルは、増加したIL-2消費、Tregの主要な免疫抑制メカニズムと関連している(Chinen Tら、Nat Immunol. 2016年11月;17(11):1322~1333)。したがって、化合物1及び化合物2による処置は、Tregにおいて免疫抑制機能を刺激した。細胞分裂マーカーKi67を発現する細胞のパーセンテージはまた
図5Cに見られるように増加した。化合物1によるカニクイザルの処置は、
図6に見られるように、IL2(C125S)による処置よりもTreg細胞の大規模な誘導をもたらした。さらに、IL2(C125S)で処置されたカニクイザルはすべて下痢を示したが、一方、化合物1で処置されたカニクイザルにおいては、下痢は見られなかった。Treg細胞の改善された誘導はまた、化合物1及びIL2(C125S)で処置されたカニクイザルからの血液をフローサイトメトリーによって分析した場合に見られた。血液細胞をCD4発現にゲートし、CD127及びFOXP3発現によって分離した。ベースラインの未処理血液では、
図7に示されるように、Treg:Tconv細胞の比は0.04であった。化合物1で処置された動物からの血液では、Treg:Tconv細胞の比は0.7であった。IL2(C125S)で処置された動物からの血液では、Treg:Tconv細胞の比は0.3であり、化合物1で処置されたカニクイザルからの血液に見られる比の半分未満であった。さらに、これらのカニクイザルからの血液は、
図7に示されるように、Treg活性化を決定するためにKi67発現及びCD25発現によって分離され、Tconv及びCD8活性化を決定するための前方散乱(Fsc)によって分離された。化合物1は、未処置の血液中の17%又はIL2(C125S)によって誘導された55%の活性化と比較して、85%のTregの活性化をもたらした。対照的に、化合物1は、Tconv細胞(未処理血液中の10%と比較して10%)又はCD8細胞(未処理血液中の24%と比較して23%)を活性化しなかった。しかしながら、IL2(C125S)は、Tconv細胞を約3倍(10%ベースラインと比較して34%)及びCD8細胞をほぼ3倍(24%ベースラインと比較して62%)活性化した。化合物1はまた、
図8A~8Cに示されるように、Fcドメイン、5アミノ酸ペプチドリンカー及びIL2(V91K)を有する対照化合物であるFc-V91Kと比較して、Tconv細胞及びCD8細胞よりもTreg細胞に対する改善された選択性を示す。
【0055】
自己免疫疾患の処置(治療)
本発明の方法は、例えば、このような疾患又は状態を処置するために、様々な自己免疫疾患若しくは状態又は免疫関連疾患若しくは状態に適用することができる。自己免疫疾患には、臓器、例えば、心臓、腎臓、肝臓、肺、生殖器官、消化器系、又は皮膚に影響を及ぼす疾患が含まれる。自己免疫疾患には、内分泌腺、副腎、甲状腺、唾液腺及び外分泌腺、並びに膵臓を含む腺に影響を及ぼす疾患が含まれる。自己免疫疾患はまた、多腺性であり得る。自己免疫疾患は、1つ以上の組織、例えば、結合組織、筋肉、又は血液を標的にし得る。自己免疫疾患は、神経系又は眼、耳若しくは血管系を標的にし得る。自己免疫疾患はまた、全身性であり得、複数の臓器、組織及び/又は系に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、自己免疫疾患又は状態は、炎症性の疾患又は状態である。
【0056】
自己免疫若しくは免疫関連の疾患又は状態の非限定的な例としては、炎症、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性血管炎、セリアック病、自己免疫性甲状腺炎、輸血後免疫付与、母体-胎児間不適合、輸血反応、IgA欠損症などの免疫不全症、分類不能型免疫不全症、薬剤誘発性ループス、糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病、若年発症糖尿病、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、免疫不全、アレルギー、喘息、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、慢性皮膚疾患、筋委縮性側索硬化症、化学療法誘発性損傷、移植片対宿主病、骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、アトピー性湿疹、天疱瘡、ベーチェット病、慢性疲労症候群線維筋痛症、化学療法誘発性損傷、重症筋無力症、糸球体腎炎、アレルギー性網膜炎、全身性硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、凍瘡状エリテマトーデスを含む皮膚エリテマトーデス、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、自己免疫性血管炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性心臓炎、自己免疫性脳炎、自己免疫介在性の血液疾患、lc-SSc(限局皮膚硬化型強皮症)、dc-SSc(びまん皮膚硬化型強皮症)、自己免疫性甲状腺炎(AT)、グレーブス病(GD)、重症筋無力症、多発性硬化症(MS)、強直性脊椎炎、移植拒絶反応、免疫老化、リウマチ性/自己免疫性疾患、混合性結合組織病、脊椎関節症、乾癬、乾癬性関節炎、筋炎、強皮症、皮膚筋炎、自己免疫性血管炎、混合性結合組織病、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、ヒトアジュバント病、変形性関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、特発性炎症性ミオパチー、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫介在性の腎臓疾患、中枢神経系又は末梢神経系の脱髄疾患、特発性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、肝胆道系疾患、感染性又は自己免疫性の慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、自己免疫介在又は免疫介在性の皮膚疾患、水疱性皮膚症、多形紅斑、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症、じん麻疹、肺の免疫疾患、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、過敏性肺炎、移植関連疾患、移植片拒絶反応又は移植片対宿主病、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患関連応答、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー性状態、湿疹、T細胞浸潤及び慢性炎症性応答を伴う状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカイン介在性及びTリンパ球介在性の急性過敏及び遅延性過敏を伴う免疫応答、結核、サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠損、A型血友病、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体介在性の疾患、抗糸球体基底膜抗体疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多内分泌腺症候群、ライター病、スティッフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー又はIgM介在性のニューロパチー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性精巣炎及び自己免疫性卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、原発性甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、慢性甲状腺炎(橋本病甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、自己免疫性多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、リンパ性間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植性)対NSIP、大血管炎(リウマチ性多発筋痛及び巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中血管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(グルテン性腸疾患)、クリオグロブリン血症、及び筋委縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。
【0057】
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載される任意の医薬化合物と、他の化学成分、例えば、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤との組合せであり得る。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経口、非経口、眼内、皮下、経皮、経鼻、膣内、及び局所投与を含む様々な形態及び経路によって、医薬組成物として治療有効量で投与することができる。
【0058】
医薬組成物は、局所的に、例えば、化合物を臓器に直接注射することにより、任意選択的にデポー製剤若しくは持続放出製剤又はインプラントにして投与することができる。医薬組成物は、迅速放出製剤の形態、長期放出製剤の形態、又は中間放出製剤の形態で提供することができる。迅速放出形態は即時放出を提供することができる。長期放出製剤は、制御放出又は持続遅延放出を提供することができる。
【0059】
経口投与について、医薬組成物は、活性化合物を薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせることによって製剤化することができる。このような担体を使用して、対象による経口摂取のために、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、又は懸濁液を製剤化することができる。経口用溶解性製剤に使用される溶媒の非限定的な例としては、水、エタノール、イソプロパノール、食塩水、生理食塩水、DMSO、ジメチルホルムアミド、リン酸カリウム緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸ナトリウム緩衝液、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液(PIPES)、及び食塩クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)が含まれ得る。経口用溶解性製剤に使用される共溶媒の非限定的な例としては、スクロース、尿素、クレマフォア、DMSO、及びリン酸カリウム緩衝液が含まれ得る。
【0060】
医薬調製物は、静脈内投与用に製剤化することができる。医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルジョンとして非経口注射に適した形態であり得、処方剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤を含有し得る。非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。活性化合物の懸濁液は、油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド、又はリポソームが含まれる。懸濁液はまた、化合物の溶解度を高めて、高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定化剤又は薬剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態であり得る。
【0061】
活性化合物は局所投与することができ、種々の局所投与用組成物、例えば、溶液剤、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック、バーム剤、クリーム剤、及び軟膏剤に製剤化することができる。このような医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤及び防腐剤を含有し得る。
【0062】
化合物はまた、従来の坐剤基剤、例えば、カカオ脂又は他のグリセリド、並びに合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン及びPEGを含有する、直腸組成物、例えば、浣腸剤、直腸ゲル剤、直腸フォーム剤、直腸エアロゾル剤、坐剤、ゼリー坐剤、又は停留浣腸剤に製剤化することができる。組成物の坐剤形態では、低融点ワックス、例えば、脂肪酸グリセリドの混合物、任意選択的にはカカオ脂と組み合わせたものを融解させることができる。
【0063】
本明細書に提供される処置方法又は使用方法を実施する際には、治療有効量の本明細書に記載される化合物を医薬組成物にして、処置すべき疾患又は状態を有する対象に投与する。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的な健康状態、使用される化合物の効力、及び他の要因に応じて幅広く変化し得る。化合物は、混合物の成分として、単独で又は1種以上の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0064】
医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工することを容易にする、賦形剤及び助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を使用して製剤化することができる。選ばれる投与経路に応じて製剤を変更することができる。本明細書に記載される化合物を含む医薬組成物は、例えば、混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮プロセスによって製造することができる。
【0065】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、及び遊離塩基又は薬学的に許容される塩の形態として本明細書に記載される化合物を含むことができる。医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤及び防腐剤を含有し得る。
【0066】
本明細書に記載される化合物を含む組成物を調製する方法は、化合物を1種以上の不活性な薬学的に許容される賦形剤又は担体とともに製剤化して、固体、半固体、又は液体組成物を形成することを含む。固体組成物としては、例えば、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、及びカシェ剤が挙げられる。液体組成物としては、例えば、化合物が溶解されている溶液、化合物を含むエマルジョン、又は本明細書に開示される化合物を含むリポソーム、ミセル、若しくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固体組成物としては、例えば、ゲル、懸濁液及びクリームが挙げられる。組成物は、液体溶液又は懸濁液、使用前に液体に溶解若しくは懸濁するのに適した固体形態、又はエマルジョンであり得る。これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び他の薬学的に許容される添加剤を含有することができる。
【0067】
本発明での使用に適した剤形の非限定的な例としては、液体、粉末、ゲル、ナノ懸濁液、ナノ粒子、マイクロゲル、水性又は油性懸濁液、エマルジョン、及びそれらの任意の組合せが含まれる。
【0068】
本発明での使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、結合剤、崩壊剤、粘着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、コーティング剤、着色剤、可塑剤、防腐剤、懸濁剤、乳化剤、抗菌剤、球形化剤、及びそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0069】
本発明の組成物は、例えば、即時放出形態又は制御放出製剤であり得る。即時放出製剤は、化合物が迅速に作用することを可能にするように製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例には、容易に溶解可能な製剤が含まれる。制御放出製剤は、活性剤の放出速度及び放出プロファイルが生理学的及び経時治療的要件に合致し得るように適応されている、或いはプログラムされた速度で活性剤を放出させるように製剤化されている医薬製剤であり得る。制御放出製剤の非限定的な例としては、顆粒剤、遅延放出顆粒剤、ヒドロゲル剤(例えば、合成又は天然起源のもの)、他のゲル化剤(例えば、ゲル形成食物繊維)、マトリックスベースの製剤(例えば、製剤を通じて分散される少なくとも1つの活性成分を有するポリマー材料を含む製剤)、マトリックス内の顆粒剤、ポリマー混合物、及び顆粒塊が挙げられる。
【0070】
一部には、制御放出製剤は遅延放出形態である。遅延放出形態は、化合物の作用を長期間遅延させるように製剤化することができる。遅延放出形態は、例えば、約4、約8、約12、約16、又は約24時間、有効用量の1つ以上の化合物の放出を遅延させるように製剤化することができる。
【0071】
制御放出製剤は持続放出形態であり得る。持続放出形態は、例えば、化合物の作用を長期間にわたって持続するように製剤化することができる。持続放出形態は、約4、約8、約12、約16又は約24時間にわたって、本明細書に記載される有効用量の任意の化合物を提供する(例えば、生理学的に有効な血液プロファイルを提供する)ように製剤化することができる。
【0072】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、各々、その全体が参照により組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton, Pa.: Mack Publishing Company、1995)、Hoover, John E.、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania 1975、Liberman, H.A.及びLachman, L.、編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出すことができる。
【0073】
複数の治療剤は、任意の順序で又は同時に投与することができる。一部の実施形態では、本発明の化合物は、抗生物質と組み合わせて、その前に、又はその後に投与される。同時である場合、複数の治療剤は、単一の統一形態で、又は複数の形態で、例えば複数の別々の丸剤として提供することができる。薬剤は、単一の包装又は複数の包装に、一緒に又は別々に包装することができる。1つ又はすべての治療剤を複数回用量で与えることができる。同時でない場合、複数回用量の間のタイミングは、約1カ月程度に変化させることができる。
【0074】
本明細書に記載される治療剤は、疾患又は状態の発生前、発生中、又は発生後に投与することができ、治療剤を含有する組成物を投与するタイミングは変化させることができる。例えば、組成物は、予防薬として使用することができ、疾患又は状態の発生の可能性を少なくするために、状態又は疾患に対する傾向を有する対象に継続的に投与することができる。組成物は、症状の発症中又は発症後できるだけ早く対象に投与することができる。治療剤の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、症状の発症の最初の24時間以内、症状の発症の最初の6時間以内、又は症状の発症の3時間以内に開始することができる。初期投与は、実用的な任意の経路を介して、例えば、本明細書に記載される任意の製剤を使用する、本明細書に記載される任意の経路によることができる。治療剤は、疾患又は状態の発症が検出又は疑われた後に実行可能になり次第、例えば、約1カ月から約3カ月までなどの疾患の処置に必要とされる、ある長さの期間にわたって投与することができる。処置期間は各対象によって変化させることができる。
【0075】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1種以上の化合物を含有する単位用量に分けられる。単位投薬は、別々の量の製剤を含有する包装の形態であり得る。非限定的な例は、包装された注射剤、バイアル、又はアンプルである。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉できない容器に包装することができる。複数回投薬の再密閉可能な容器は、例えば、防腐剤と組み合わせて又は防腐剤なしで使用することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は防腐剤を含む複数回投薬の容器で提供することができる。
【0076】
本明細書で提供される医薬組成物は、他の治療法、例えば、化学療法、放射線、外科手術、抗炎症剤、及び選択されたビタミンと組み合わせて投与することができる。他の薬物は、医薬組成物の前、後、又はそれと同時に投与することができる。
【0077】
意図される投与様式に応じて、医薬組成物は、固体、半固体又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、又はゲル剤などの形態で、例えば、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。
【0078】
固体組成物について、非毒性の固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0079】
本開示における使用に適した剤形の非限定的な例としては、液剤、エリキシル剤、ナノ懸濁剤、水性又は油性懸濁剤、滴剤、シロップ剤、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。本開示における使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、造粒剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、甘味剤、流動促進剤、粘着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、ガム、コーティング剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、可塑剤、防腐剤、懸濁剤、乳化剤、植物セルロース材料及び球形化剤、並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0080】
本発明の組成物はキットとして包装することができる。一部の実施形態では、キットは、組成物の投与/使用についての書面による説明書を含む。書面による資料は、例えば、ラベルであり得る。書面による資料は、投与の条件方法を示唆することができる。説明書は、治療の投与から最適な臨床結果を達成するための最良の指針を対象及び監督医に提供する。書面による資料は、ラベルであり得る。一部の実施形態では、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、又は他の規制機関によって承認され得る。
【0081】
対象
対象は、例えば、高齢者、成人、青年、青年前、小児、幼児、乳児、及び非ヒト動物であり得る。一部の実施形態では、対象は患者である。非ヒト動物対象は、例えば、マウス、ラット、ニワトリ、ウサギ、イヌ、ネコ、又はウシであり得る。
【0082】
投薬
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1種以上の化合物を含有する単位用量に分けられる。単位投薬は、別々の量の製剤を含有する包装の形態であり得る。非限定的な例は、バイアル又はアンプル中の液体である。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉できない容器に包装することができる。複数回投薬の再密閉可能な容器は、例えば、防腐剤と組み合わせて使用することができる。非経口注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は防腐剤を含む複数回投薬の容器で提供することができる。
【0083】
本明細書に記載される化合物は、組成物中に、用量あたり約0.5μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、約125μg、約150μg、約175μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1000μg(1mg)、約1050μg、約1100μg、約1150μg、約1200μg、約1250μg、約1300μg、約1350μg、約1400μg、約1450μg、約1500μg、約1550μg、約1600μg、約1650μg、約1700μg、約1750μg、約1800μg、約1850μg、約1900μg、約1950μg、約2000μg(2mg)、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、又は約200mgの量で存在し得る。これらの値のいずれも、組成物中に存在する化合物の量の範囲を規定するために使用され得る。例えば、本明細書に記載される化合物は、用量あたり約0.5μg~約750μg、約1μg~約500μg、約1μg~約250μg、約1μg~約250μg、約1μg~25μg、約5μg~約50μg、約0.5μg~約15μg、約0.5μg~約10μg、約1mg~約7mg、又は約1mg~約100mgの範囲で組成物中に存在することができる。
【0084】
一部の実施形態では、用量は、対象の質量で割った薬物の量との関連で、例えば、対象のボディマス1キログラムあたりのマイクログラム又はミリグラムの薬物で表すことができる。一部の実施形態では、化合物は、約0.5μg/kg~約250μg/kg、1μg/kg~約200μg/kg、5μg/kg~約150μg/kg、約10μg/kg~約100μg/kg、又は約50μg/kg~約100μg/kgの範囲の量で投与される。
【0085】
開示された化合物は、所望される任意の間隔で投与することができる。特定の実施形態では、化合物は1日1回投与される。毎日の投薬の間隔は、任意の時間間隔、例えば、毎時、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、5時間ごと、6時間ごと、7時間ごと、8時間ごと、9時間ごと、10時間ごと、11時間ごと、又は12時間ごとであり得る。化合物の投与は、化合物を投与する者又は化合物を受け入れる対象のいずれかに提供するために不規則な投薬スケジュールを有することができる。このように、化合物は、例えば、1日1回、1日2回、又は1日3回投与することができる。
【0086】
一部の実施形態では、化合物は、1日に1回より少ない頻度で、例えば、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回投与される。一部の実施形態では、化合物は、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、週7回、週8回、週に9回、又は週に10回投与することができる。
【0087】
特定の実施形態では、化合物を週に1回又は週に1回より少ない頻度で投与する。例えば、化合物は、毎週1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、2週間ごとに1回、15日ごとに1回、16日ごとに1回、17日ごとに1回、18日ごとに1回、19日ごとに1回、20日ごとに1回、3週間ごとに1回、22日ごとに1回、23日ごとに1回、24日ごとに1回、25日ごとに1回、26日ごとに1回、27日ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、又は8週間ごとに1回投与され得る。一部の実施形態では、IL2化合物の投薬の間隔は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日である。
【0088】
特定の実施形態では、複数回用量の本発明の化合物を対象に投与し得る。例えば、特定の実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20用量の本発明の化合物、又はその化合物を含む医薬組成物が対象に投与される。
【0089】
特定の実施形態では、N88R突然変異を含むIL2化合物(例えば、化合物1又は化合物2)の頻度の低い投薬(例えば、週に1回又は2週間ごとに1回)の効果をカニクイザルにおいて評価する。例えば、化合物2(IL2 T3A/N88R/C125S-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)又はアルデスロイキン(IL-2 C125S)をカニクイザルに投与して、免疫細胞集団における効果を比較し得る。化合物は、下記の表1Aに記載される用量で皮下注射(SC)により投与し得る。
【0090】
【0091】
全血サンプルは、免疫細胞分析のために、以下の時点で回収され得る:
群1及び3:1(投薬前)、4、6、8(投薬前)、10、11、12、13、15、17及び19日目、
群2:1(投薬前)、4、6、8(投薬前)、10、12、15(投薬前)、18、20、22、24、及び26日目。
サンプルは、下記の表1Bに示されるフローサイトメトリーパネルを使用して、免疫細胞のレベルを決定するためにフローサイトメトリーによって分析され得る。同定され得るフローサイトメトリー抗原及び免疫細胞集団を表1Cに示す。
【0092】
【0093】
【0094】
化合物1又は化合物2を評価するための例示的な投薬及びサンプリングスケジュールを
図22に提供する。
【0095】
化合物1又は化合物2が8日目に皮下投薬として投与される場合、この第2の用量はTreg増殖のピーク、Treg数の増大、及びTreg機能的活性化の増大に近いと予想される。化合物1又は化合物2を15日目に投与する場合、Treg増殖数の増大、及び機能的活性化がベースラインレベル近くまで減少していると予想される。化合物1又は化合物2のレベル、制御性T細胞レベル、及び制御性T細胞活性化についての例示的な予想される結果は、実施例23において提供される。
【0096】
一部の実施形態では、投薬の頻度は、第1の用量の本発明の化合物を投与した後、制御性T細胞中のバイオマーカーのレベル(例えば、タンパク質レベル又はmRNAレベル)を測定することによって決定され得る。バイオマーカーには、限定されないが、CD25、FOXP3、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、ICOS(誘導性T細胞COS刺激剤)、及びCD39(NTPDase1、又はエクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-1)が含まれ得る。特定の実施形態では、バイオマーカーはCD25である。バイオマーカーレベルはまた、本発明の化合物のその後の投薬後、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10回目の投薬後に決定され得る。バイオマーカーレベルは、本発明の化合物の投与後のいくつかの時点で(例えば、1日1回)決定されて、バイオマーカーのピークレベル、すなわち、ある用量の本発明の化合物の対象への投与後であるが、その後の用量の投与前に達成されるバイオマーカーの最高レベルを同定し得る。例えば、一部の実施形態では、バイオマーカーレベルは、対象へのある用量の本発明の化合物の投与後、少なくとも1回、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10回決定される。バイオマーカーレベルは、バイオマーカーのピークレベルを同定するのに十分な任意の間隔で、例えば、8時間ごとに少なくとも1回、12時間ごとに少なくとも1回、1日ごとに少なくとも1回、2日ごとに少なくとも1回、3日ごとに少なくとも1回、4日ごとに少なくとも1回、5日ごとに少なくとも1回、6日ごとに少なくとも1回、又は1週間ごとに少なくとも1回決定され得る。
【0097】
バイオマーカーのレベルは、本発明の化合物の投与後に増加し、ピークレベルに達し、次に、経時的にピークレベルから減少することが予想される。バイオマーカーのレベルがピークレベルから低下したら、その後の用量を投与し得る。一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、バイオマーカーのピークレベルと比較して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%低下したら、その後の用量を対象に投与する。一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、バイオマーカーのピークレベルと比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%低下したら、その後の用量を対象に投与する。これらの値のいずれかを使用して、ピークレベルからのバイオマーカーの低下パーセントの範囲、例えば、5%~15%、5%~25%、又は10%~50%を定義し得る。
【0098】
特定の実施形態では、本発明は、自己免疫疾患を処置する方法であって、必要とする対象に本発明の治療有効量の医薬組成物の第1の用量を投与するステップ、バイオマーカーのピークレベルを決定するために、第1の用量が対象に投与された後に対象から得られたサンプル中のバイオマーカーの発現を測定するステップ、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルがバイオマーカーのピークレベルと比較して少なくとも10%低下した場合、治療有効量の医薬組成物の第2の用量を対象に投与するステップを含む、方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、対象からサンプルを回収するステップをさらに含む。特定の実施形態では、対象から得られたサンプルは、血液サンプル又は組織サンプル(例えば、皮膚サンプル)である。
【0099】
制御性T細胞中のバイオマーカーのレベルは、バイオマーカーの核酸レベル(例えば、mRNAレベル)又はタンパク質レベルを測定することによって決定され得る。バイオマーカーをコードする核酸(例えば、mRNA)のレベルを検出するために、任意の適切な方法を使用することができ、限定されないが、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、及び同第6,040,166号、「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」、Innisら(編)、1990、Academic Press: New Yorkを参照されたい)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、アンカーPCR、競合的PCR(例えば、米国特許第5,747,251号を参照されたい)、cDNA末端の迅速増幅(RACE)(例えば、「Gene Cloning and Analysis: Current Innovations」、1997、99~115頁を参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、欧州特許第01320308号を参照されたい)、片側PCR(Oharaら、Proc. Natl. Acad. Sci.、1989、86: 5673~5677)、インサイチュハイブリダイゼーション、定量的リアルタイムPCR、例えば、Taqmanベースのアッセイ(Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci.、1991、88: 7276~7280)、ディファレンシャルディスプレイ(例えば、Liangら、Nucl. Acid. Res.、1993、21: 3269~3275)及び他のRNAフィンガープリンティング技法、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、及び他の転写ベースの増幅システム(例えば、米国特許第5,409,818号及び同第5,554,527号を参照されたい)、Qベータレプリカーゼ、鎖置換増幅(SDA)、修復連鎖反応(RCR)、ヌクレアーゼ保護アッセイ、サブトラクションベースの方法、Rapid-Scan(登録商標)などが挙げられる。
【0100】
一部の実施形態では、バイオマーカーの遺伝子発現レベルは、mRNAから生成される相補的DNA(cDNA)又は相補的RNA(cRNA)を増幅し、それをマイクロアレイを使用して分析することによって決定され得る。多数の異なるアレイ構成及びそれらの製造方法は、当業者に公知である(例えば、米国特許第5,445,934号、同第5,532,128号、同第5,556,752号、同第5,242,974号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,472,672号、同第5,527,681号、同第5,529,756号、同第5,545,531号、同第5,554,501号、同第5,561,071号、同第5,571,639号、同第5,593,839号、同第5,599,695号、同第5,624,711号、同第5,658,734号、及び同第5,700,637号を参照されたい)。マイクロアレイ技術は、多数の遺伝子の定常状態のmRNAレベルを同時に測定することを可能にする。現在広く使用されているマイクロアレイには、cDNAアレイ及びオリゴヌクレオチドアレイが含まれる。マイクロアレイを使用した分析は、一般的に、マイクロアレイ上の既知の場所に固定化された核酸プローブとハイブリダイズするサンプルからのcDNA配列を検出するために用いられる標識プローブから受け取ったシグナルの強度の測定に基づく(例えば、米国特許第6,004,755号、同第6,218,114号、同第6,218,122号、及び第6,271,002号を参照されたい)。アレイベースの遺伝子発現方法は、当技術分野において公知であり、多数の科学刊行物並びに特許に記載されている(例えば、M. Schenaら、Science、1995、270: 467~470頁、M. Schenaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996、93: 10614~10619、J. J. Chenら、Genomics、1998、51: 313~324、米国特許第5,143,854号、同第5,445,934号、同第5,807,522号、同第5,837,832号、同第6,040,138号、同第6,045,996号、同第6,284,460号、及び同第6,607,885号を参照されたい)。
【0101】
制御性T細胞中のバイオマーカーのタンパク質レベルは、ポリペプチドを検出するための任意の適切な方法によって決定され得る。特定の実施形態では、検出方法は、バイオマーカーに特異的に結合する抗体を伴う免疫検出方法である。様々な有用な免疫検出方法のステップは、科学文献、例えば、Nakamuraら(1987年)に記載されている。一般的に、免疫結合方法は、制御性T細胞を含有する対象からサンプルを得ること、及びサンプルをバイオマーカーに特異的な抗体と接触させて免疫複合体を形成することを含む。一般的に、免疫複合体形成の検出は当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通じて達成され得る。これらの方法は、一般的に、ラベル又はマーカー、例えば、当技術分野において標準的に使用される任意の放射性、蛍光、生物学的若しくは酵素的タグ又はレベルの検出に基づく。このようなラベルの使用に関する米国特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号が含まれる。バイオマーカーのタンパク質レベルを検出する方法には、限定されないが、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、及びタンパク質質量分析が含まれる。
【0102】
対象に投与される本発明の化合物の量は、各用量において同じ量であり得る、又は投薬量は変わり得る。例えば、第1の量を朝に投薬し、第2の量を夕方に投薬することができる。対象は、高い第1の用量及びより低いその後の用量を受け得る。用量は、疾患の症状若しくはマーカーの改善、又は有害反応の発生に応じて増減させることができる。
【0103】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。薬学的に許容される担体の非限定的な例には、食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液が含まれる。液体担体は、液剤、懸濁剤、及びエマルジョンの調製に使用することができる。本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、若しくはその両方の混合物、又は薬学的に許容される油若しくは脂肪に溶解又は懸濁することができる。液体担体は、他の適切な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定化剤、及び浸透圧調整剤を含有することができる。非経口投与用の液体担体の例には、水、アルコール(一価アルコール及び多価アルコールを含み、例えばグリコール)及びそれらの誘導体、並びに油(例えば、分留されたヤシ油及び落花生油)が含まれる。非経口投与について、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチル又はミリスチン酸イソプロピルであり得る。滅菌液体担体は、非経口投与用の滅菌液体形態の組成物に使用される。特定の実施形態では、溶液のpHは、約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5又は8.0である。これらの値のいずれかを使用して、溶液のpHの範囲を規定し得る。例えば、溶液のpHは、約5~約8、約5~約7、約5.5~約6.5、又は約7~約7.5であり得る。
【0104】
一部の実施形態では、本開示の分子による処置は、野生型IL-2ポリペプチド又はIL-2(C125S)ポリペプチド(例えば、アルデスロイキン)による処置よりも耐容性が高い。一部の実施形態では、治療有効用量の本開示の分子による処置は、IL2(C125S)(例えば、アルデスロイキン)による処置と比較して、下痢の発生率が少ない。
図2Aに示されるように、単回用量のIL-2(IL2(C125S))は、有意なTreg増殖を誘導するのに不十分であったが、反復投薬は、本研究におけるすべての動物において下痢を引き起こした。対照的に、化合物1により処置された対象において有害反応は見られなかった(
図3A参照)。一部の実施形態では、治療有効量の本開示の分子による処置は、毛細血管漏出症候群を引き起こさない。一部の実施形態では、治療有効量の本開示の分子による処置は、好中球活性の低下又は感染の危険性の増大を引き起こさない。
【0105】
薬物動態
用量は、本明細書に記載されるように、所望の薬物動態(PK)又は薬力学プロファイル、例えば、所望の又は有効な血液プロファイルを達成するために調節することができる。
【0106】
薬物動態データ及び薬力学データは、様々な実験技法によって得ることができる。特定の組成物を記載する適切な薬物動態プロファイル及び薬力学プロファイル成分は、ヒト対象における薬物代謝の変動により変化し得る。薬物動態プロファイル及び薬力学プロファイルは、一群の対象の平均パラメーターの決定に基づくことができる。対象の群は、代表的な平均を決定するのに適した任意の妥当な数の対象、例えば、5対象、10対象、15対象、20対象、25対象、30対象、35対象、又はそれ以上を含む。平均は、例えば、測定された各パラメーターについてすべての対象の測定値の平均を計算することによって決定される。用量は、本明細書に記載されるように、所望の薬物動態学プロファイル又は薬力学プロファイル、例えば、所望の又は有効な血液プロファイルを達成するために調節することができる。
【0107】
薬力学パラメーターは、本発明の組成物を記載するのに適した任意のパラメーターであり得る。例えば、薬力学プロファイルは、投薬後の時点、例えば、約0分、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約31分、約32分、約33分、約34分、約35分、約36分、約37分、約38分、約39分、約40分、約41分、約42分、約43分、約44分、約45分、約46分、約47分、約48分、約49分、約50分、約51分、約52分、約53分、約54分、約55分、約56分、約57分、約58分、約59分、約60分、約0時間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、約8.5時間、約9時間、約9.5時間、約10時間、約10.5時間、約11時間、約11.5時間、約12時間、約12.5時間、約13時間、約13.5時間、約14時間、約14.5時間、約15時間、約15.5時間、約16時間、約16.5時間、約17時間、約17.5時間、約18時間、約18.5時間、約19時間、約19.5時間、約20時間、約20.5時間、約21時間、約21.5時間、約22時間、約22.5時間、約23時間、約23.5時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約144時間(7日)、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、又は約31日で得ることができる。
【0108】
薬物動態パラメーターは、化合物を記載するのに適した任意のパラメーターであり得る。Cmaxは、例えば、約1ng/mL以上、約5ng/mL以上、約10ng/mL以上、約15ng/mL以上、約20ng/mL以上、約25ng/mL以上、約50ng/mL以上、約75ng/mL以上、約100ng/mL以上、約200ng/mL以上、約300ng/mL以上、約400ng/mL以上、約500ng/mL以上、約600ng/mL以上、約700ng/mL以上、約800ng/mL以上、約900ng/mL以上、約1000ng/mL以上、約1250ng/mL以上、約1500ng/mL以上、約1750ng/mL以上、約2000ng/mL以上、約2500ng/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適した任意の他のCmaxであり得る。Cmaxは、例えば50μg/kgで、静脈内注射によって投与される場合、血液中で、例えば、約5~約10,000ng/mL、約50~約10,000ng/mL、約500~約10,000ng/mL、約5000~約10,000ng/mL、約1000~約5,000ng/mL、約1000~約3,000ng/mL、約5,000~約8,000ng/mL、又は約500~約1000ng/mLであり得る。Cmaxは、例えば50μg/kgで、皮下注射によって投与される場合、血液中で、例えば、約5~約50ng/mL、約50~約500ng/mL、約100~約250ng/mL、約1000~約5000ng/mL、約1000~約2000ng/mL、約2000~約5000ng/mL、約5000~約10000ng/mL又は約5000~約7000ng/mLであり得る。Cmaxは、受け入れた化合物の用量に依存し得る。受け入れた用量は、1μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、20μg/kg、30μg/kg、40μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、1500μg/kg、2000μg/kg、2500μg/kg又は3000μg/kgであり得る。
【0109】
本明細書に記載される化合物のTmaxは、例えば、約0.5時間以下、約1時間以下、約1.5時間以下、約2時間以下、約2.5時間以下、約3時間以下、約3.5時間以下、約4時間以下、約4.5時間以下、約5時間以下、約5.5時間以下、約6時間以下、約6.5時間以下、約7時間以下、約7.5時間以下、約8時間以下、約8.5時間以下、約9時間以下、約9.5時間以下、約10時間以下、約10.5時間以下、約11時間以下、約11.5時間以下、約12時間以下、約12.5時間以下、約13時間以下、約13.5以下時間、約14時間以下、約14.5時間以下、約15時間以下、約15.5時間以下、約16時間以下、約16.5時間以下、約17時間以下、約17.5時間以下、約18時間以下、約18.5時間以下、約19時間以下、約19.5時間以下、約20時間以下、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適切な任意の他のTmaxであり得る。Tmaxは、例えば、約0.1時間~約24時間、約0.1時間~約0.5時間、約0.5時間~約1時間、約1時間~約1.5時間、約1.5時間~約2時間、約2時間~約2.5時間、約2.5時間~約3時間、約3時間~約3.5時間、約3.5時間~約4時間、約4時間~約4.5時間、約4.5時間~約5時間、約5時間~約5.5時間、約5.5時間~約6時間、約6時間~約6.5時間、約6.5時間~約7時間、約7時間~約7.5時間、約7.5時間~約8時間、約8時間~約8.5時間、約8.5時間~約9時間、約9時間~約9.5時間、約9.5時間~約10時間、約10時間~約10.5時間、約10.5時間~約11時間、約11時間~約11.5時間、約11.5時間~約12時間、約12時間~約12.5時間、約12.5時間~約13時間、約13時間~約13.5時間、約13.5時間~約14時間、約14時間~約14.5時間、約14.5時間~約15時間、約15時間~約15.5時間、約15.5時間~約16時間、約16時間~約16.5時間、約16.5時間~約17時間、約17時間~約17.5時間、約17.5時間~約18時間、約18時間~約18.5時間、約18.5時間~約19時間、約19時間~約19.5時間、約19.5時間~約20時間、約20時間~約20.5時間、約20.5時間~約21時間、約21時間~約21.5時間、約21.5時間~約22時間、約22時間~約22.5時間、約22.5時間~約23時間、約23時間~約23.5時間、又は約23.5時間~約24時間であり得る。
【0110】
本明細書に記載される化合物のAUC(0-inf)(AUC(0-∞)とも呼ばれる)又はAUC(last)は、例えば、約1ng・hr/mL以上、約5ng・hr/mL以上、約10ng・hr/mL以上、約20ng・hr/mL以上、約30ng・hr/mL以上、約40ng・hr/mL以上、約50ng・hr/mL以上、約100ng・hr/mL以上、約150ng・hr/mL以上、約200ng・hr/mL以上、約250ng・hr/mL以上、約300ng・hr/mL以上、約350ng・hr/mL以上、約400ng・hr/mL以上、約450ng・hr/mL以上、約500ng・hr/mL以上、約600ng・hr/mL以上、約700ng・hr/mL以上、約800ng・hr/mL以上、約900ng・hr/mL以上、約1000ng・hr/mL以上、約1250ng・hr/mL以上、約1500ng・hr/mL以上、約1750ng・hr/mL以上、約2000ng・hr/mL以上、約2500ng・hr/mL以上、約3000ng・hr/mL以上、約3500ng・hr/mL以上、約4000ng・hr/mL以上、約5000ng・hr/mL以上、約6000ng・hr/mL以上、約7000ng・hr/mL以上、約8000ng・hr/mL以上、約9000ng・hr/mL以上、約10,000ng・hr/mL以上、約11,000ng・hr/mL以上、約12,000ng・hr/mL以上、約13,000ng・hr/mL以上、約14,000ng・hr/mL以上、約15,000ng・hr/mL以上、約16,000ng・hr/mL以上、約17,000ng・hr/mL以上、約18,000ng・hr/mL以上、約19,000ng・hr/mL以上、約20,000ng・hr/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適した任意の他のAUC(0-inf)であり得る。化合物のAUC(0-inf)は、例えば、約1ng・hr/mL~約10,000ng・hr/mL、約1ng・hr/mL~約10ng・hr/mL、約10ng・hr/mL~約25ng・hr/mL、約25ng・hr/mL~約50ng・hr/mL、約50ng・hr/mL~約100ng・hr/mL、約100ng・hr/mL~約200ng・hr/mL、約200ng・hr/mL~約300ng・hr/mL、約300ng・hr/mL~約400ng・hr/mL、約400ng・hr/mL~約500ng・hr/mL、約500ng・hr/mL~約600ng・hr/mL、約600ng・hr/mL~約700ng・hr/mL、約700ng・hr/mL~約800ng・hr/mL、約800ng・hr/mL~約900ng・hr/mL、約900ng・hr/mL~約1,000ng・hr/mL、約1,000ng・hr/mL~約1,250ng・hr/mL、約1,250ng・hr/mL~約1,500nng・hr/mL、約1,500ng・hr/mL~約1,750ng・hr/mL、約1,750ng・hr/mL~約2,000ng・hr/mL、約2,000ng・hr/mL~約2,500ng・hr/mL、約2,500ng・hr/mL~約3,000ng・hr/mL、約3,000ng・hr/mL~約3,500ng・hr/mL、約3,500ng・hr/mL~約4,000ng・hr/mL、約4,000ng・hr/mL~約4,500ng・hr/mL、約4,500ng・hr/mL~約5,000ng・hr/mL、約5,000ng・hr/mL~約5,500ng・hr/mL、約5,500ng・hr/mL~約6,000ng・hr/mL、約6,000ng・hr/mL~約6ng・hr/mL、約6,500ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mL、約7,000ng・hr/mL~約7,500ng・hr/mL、約7,500ng・hr/mL~約8,000ng・hr/mL、約8,000ng・hr/mL~約8,500ng・hr/mL、約8,500ng・hr/mL~約9,000ng・hr/mL、約9,000ng・hr/mL~約9,500ng・hr/mL、約9,500ng・hr/mL~約10,000ng・hr/mL、約10,000ng・hr/mL~約10,500ng・hr/mL、約10,500ng・hr/mL~約11,000ng・hr/mL、約11,000ng・hr/mL~約11,500ng・hr/mL、約11,500ng・hr/mL~約12,000ng・hr/mL、約12,000ng・hr/mL~約12,500ng・hr/mL、約12,500ng・hr/mL~約13,000ng・hr/mL、約13,000ng・hr/mL~約13,500ng・hr/mL、約13,500ng・hr/mL~約14,000ng・hr/mL、約14,000ng・hr/mL~約14,500ng・hr/mL、約14,500ng・hr/mL~約15,000ng・hr/mL、約15,000ng・hr/mL~約15,500ng・hr/mL、約15,500ng・hr/mL~約16,000ng・hr/mL、約16,000ng・hr/mL~約16,500ng・hr/mL、約16,500ng・hr/mL~約17,000ng・hr/mL、約17,000ng・hr/mL~約17,500ng・hr/mL、約17,500ng・hr/mL~約18,000ng・hr/mL、約18,000ng・hr/mL~約18,500ng・hr/mL、約18,500ng・hr/mL~約19,000ng・hr/mL、約19,000ng・hr/mL~約19,500ng・hr/mL、又は約19,500ng・hr/mL~約20,000ng・hr/mLであり得る。例えば、化合物のAUC(0-inf)は、50μg/kgで静脈内投与した場合には約8500ng・hr/mLであり、50μg/kgで皮下投与した場合には約4000ng・hr/mLであり得る。
【0111】
本明細書に記載される化合物の血漿濃度は、例えば、約1ng/mL以上、約5ng/mL以上、約10ng/mL以上、約15ng/mL以上、約20ng/mL以上、約25ng/mL以上、約50ng/mL以上、約75ng/mL以上、約100ng/mL以上、約150以上ng/mL以上、約200ng/mL以上、約300ng/mL以上、約400ng/mL以上、約500ng/mL以上、約600ng/mL以上、約700ng/mL以上、約800ng/mL以上、約900ng/mL以上、約1000ng/mL以上、約1200ng/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の任意の他の血漿中濃度であり得る。血漿濃度は、例えば、約1ng/mL~約2,000ng/mL、約1ng/mL~約5ng/mL、約5ng/mL~約10ng/mL、約10ng/mL~約25ng/mL、約25ng/mL~約50ng/mL、約50ng/mL~約75ng/mL、約75ng/mL~約100ng/mL、約100ng/mL~約150ng/mL、約150ng/mL~約200ng/mL、約200ng/mL~約250ng/mL、約250ng/mL~約300ng/mL、約300ng/mL~約350ng/mL、約350ng/mL~約400ng/mL、約400ng/mL~約450ng/mL、約450ng/mL~約500ng/mL、約500ng/mL~約600ng/mL、約600ng/mL~約700ng/mL、約700ng/mL~約800ng/mL、約800ng/mL~約900ng/mL、約900ng/mL~約1,000ng/mL、約1,000ng/mL~約1,100ng/mL、約1,100ng/mL~約1,200ng/mL、約1,200ng/mL~約1,300ng/mL、約1,300ng/mL~約1,400ng/mL、約1,400ng/mL~約1,500ng/mL、約1,500ng/mL~約1,600ng/mL、約1,600ng/mL~約1,700ng/mL、約1,700ng/mL~約1,800ng/mL、約1,800ng/mL~約1,900ng/mL、又は約1,900ng/mL~約2,000ng/mLであり得る。
【0112】
薬力学パラメーターは、本開示の組成物を記載するのに適した任意のパラメーターであり得る。例えば、薬力学プロファイルは、例えば、約24時間、約48時間、約72時間、又は1週間、Treg細胞数の増加を呈することができる。
【0113】
本発明の方法で投与される化合物について計算することができる薬力学パラメーター及び薬物動態パラメーターの非限定的な例には、以下が含まれる:a)投与された薬物の量、投薬量Dとして表すことができる、b)投薬間隔、τとして表すことができる、c)薬物が分配される見かけの体積、分配の体積Vdとして表すことができ、ここで、Vd=D/C0である、d)所与の体積の血漿中の薬物の量、濃度C0又はCssとして表すことができ、ここで、C0又はCss=D/Vdであり、複数のサンプルにわたる平均血漿濃度として表すことができる、e)薬物の半減期t1/2、ここで、t1/2=ln(2)/keである、f)薬物が身体から除去される速度ke、ここで、ke=ln(2)/t1/2=CL/Vdである、g)式を平衡させるのに必要な注入速度Kin、ここで、Kin=Css.CLである、h)単回用量の投与後の濃度-時間曲線の積分値、これは、AUC0-∞として表すことができ、ここで、
【0114】
【数1】
であり、又は定常状態において、AUCτ,
ssとして表すことができ、ここで、
【0115】
【数2】
である、i)単位時間あたりに薬物が取り除かれた血漿の体積、これは、CL(クリアランス)として表すことができ、ここで、CL=V
d.k
e=D/AUCである、j)薬物の体系的に利用可能な割合、fとして表すことができ、ここで、
【0116】
【数3】
である、k)投与後の薬物のピーク血漿濃度C
max、l)薬物がC
maxに達するのにかかる時間、t
max、m)次の用量が投与される前に薬物が達する最低濃度C
min、n)定常状態での1投薬間隔内のピークトラフ変動、
【0117】
【0118】
【0119】
本開示の化合物は、対象に投与された場合に高い安定性を有し得る。投与された化合物は、約6時間を超える、約7時間を超える、約8時間を超える、約9時間を超える、約10時間を超える、約11時間を超える、約12時間を超える、約13時間を超える、約14時間を超える、約15時間を超える、約16時間を超える、約17時間を超える、約18時間を超える、約19時間を超える、約20時間を超える、約21時間を超える、約22時間を超える、約23時間を超える、約24時間を超える、約25時間を超える、約26時間を超える、約27時間を超える、約28時間を超える、約29時間を超える、約30時間を超える、約31時間を超える、約32時間を超える、約33時間を超える、約34時間を超える、約35時間を超える、約36時間を超える、約37時間を超える、約38時間を超える、約39時間を超える、約40時間を超える、約41時間を超える、約42時間を超える、約43時間を超える、約44時間を超える、約45時間を超える、約46時間を超える、約47時間を超える、約48時間を超える、約49時間を超える、約50時間を超える、約51時間を超える、約52時間を超える、約53時間を超える、約54時間を超える、約55時間を超える、約56時間を超える、約57時間を超える、約58時間を超える、約59時間を超える、約60時間を超える、約61時間を超える、約62時間を超える、約63時間を超える、又は約64時間を超える生理学的な半減期を有し得る。
【0120】
本開示の化合物の半減期は、投与される用量に基づいて変化し得る。例えば、50μg/kgの用量で投与した場合の化合物の半減期は、100μg/kg又は250μg/kgの用量で投与した場合の同じ化合物の半減期よりも短くなり得る(例えば、
図9参照)。化合物の半減期は、使用される投与経路に基づいて変化し得る。化合物の半減期は、化合物が静脈内というよりもむしろ皮下に投与される場合にはより長くなり得る。例えば、皮下に送達された化合物の半減期は、約15時間~約25時間の間であり得、一方、静脈内に送達された化合物の半減期は、約5~約15時間の間であり得る。一部の実施形態では、50μg/kgで静脈内に投与された場合の化合物の半減期は、約6時間~約14時間、約7時間~約13時間、約8時間~約12時間、又は約9時間~約11時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで静脈内に投与された場合の化合物の半減期は、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、又は約15時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで皮下に投与された場合の化合物の半減期は、約15時間~約27時間、約16時間~約26時間、約17時間~約25時間、約18時間~約24時間、約19時間~約23時間、又は約20時間~約22時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで皮下に投与された場合の化合物の半減期は、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、又は約30時間である。血液からの化合物のクリアランスは、皮下に送達された化合物よりも静脈内に送達された化合物の方が速い場合がある。
図10A及び
図10Bに見られるように、化合物1は、50μg/kgの静脈内よりも50μg/kgの皮下に注射された場合に、より長い半減期及び血液からのより遅いクリアランスを有した。
【0121】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例証する目的で示されており、いずれの形式であっても本発明を限定することを意図しない。本実施例は、本明細書に記載される方法とともに、現在好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本発明の範囲に対する限定として意図されない。特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲内に包含されるその中の変更及び他の使用は、当業者に想起される。
【0122】
【実施例0123】
[実施例1]
カニクイザルにおけるIL-2に基づく分子の評価:単回又は毎日の投薬
3~8歳の雄性カニクイザルをこの研究に使用した。動物は、SNBL USAストックから供給され、カンボジアを起源とした。動物は、固有の皮膚刺青によって識別された。実験開始時に、サルは体重が2.5~4kgであった。動物は、温度及び湿度が制御された環境に収容された。温度及び相対湿度の標的とする範囲は、それぞれ18~29℃及び30~70%であった。自動照明システムは、12時間の明/暗サイクルを与えるように設定された。
【0124】
動物に1日2回、PMI LabDiet(登録商標)Fiber-Plus(登録商標)モンキーダイエット5049ビスケットを与えられた。動物を特定の手順(例えば、血清化学のための採血前に、尿を回収する)によって必要とされるため、絶食させた。食餌は汚染物質について定期的に分析され、製造元の仕様の範囲内であることが分かった。研究の結果を妨げるレベルで汚染物質は存在しないと考えられた。新鮮な飲料水をすべての動物に自由に与えた。水は汚染物質について日常的に分析された。動物には、標準的な操作手順に従って、研究の過程を通じて果物、野菜、他の栄養補助食品、及びケージ強化装置を与えた。
【0125】
この研究に利用した化合物を表1Dに列挙する。化合物1、化合物2、REF205、及びREF210をHEK-293細胞で発現させ、プロテインAクロマトグラフィーにより精製し、さらにLakepharma,Inc(Belmont、CA)によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。IL-2(C125S)は、Prometheus,Inc(San Diego、CA)によって製造された。
【0126】
【0127】
すべてのFc融合タンパク質のストック溶液は、<1EU/mgの内毒素レベルを有すると決定された。
【0128】
当初、REF205は、化合物1、化合物2、及びREF210と同じ中間用量レベル(50μg/kg)で試験されることが意図された。しかしながら、生産規模の拡大後、REF205タンパク質は、SECによって評価されるように高度に凝集していると決定され(25.6%モノマー)、50μg/kgの用量レベルで投薬するのに十分な収量では得られなかった。したがって、代わりにREF205を10μg/kgの用量レベルで投与した。
【0129】
用量レベルの一部は、比較的低い試験物質のタンパク質濃度で投与されたため、Fc融合タンパク質はすべて、表面及び投与装置への吸収を防ぐために、担体タンパク質を含有する緩衝液中に製剤化された。化合物1、化合物2、REF205、及びREF210はすべて、30mM HEPES/150mM NaCl/0.5%vol/vol滅菌カニクイザル血清(Bioreclamation Inc., Baltimore, MD)に製剤化され、投与まで-80℃で保管された。製造業者からのIL-2(C125S)のバイアルを注射用の1.2mlの滅菌水で再構成して、18MIU(1.1mg)のrhIL-2、50mgのマンニトール及び約180mcgのドデシル硫酸ナトリウムを含有する1.2mlの溶液を製造し、約170mcgの一塩基性リン酸ナトリウム及び890mcgの二塩基性リン酸ナトリウムを用いてpH7.5(範囲:7.2~7.8)で緩衝化した。IL-2(C125S)を水中の5%デキストロースで注射用の標的濃度までさらに希釈した。
【0130】
カニクイザルに表2に示した試験化合物を、単回用量又は1日5回用量で投与した。
図1に示されるように、0、1、3、5、7、9、11及び13日目に血液を回収した。各対象からの標本は、それぞれ約0.5mLをK2 EDTA回収チューブに引き入れた。実験室で処理されるまで標本を室温で保管した。
【0131】
【0132】
NHP全血中の細胞集団を同定するための免疫染色法
全血(100μL)を蛍光色素結合モノクローナル抗体に添加した(表3)。サンプルを混合し、暗所で2~8℃にてインキュベートした(25~30分間)。インキュベーション後、白血球は、白血球を保存しながら赤血球を溶解する1×BD FACS Lyse(ARTで暗所にて8~12分間)を用いた全血溶解によって単離された。サンプルを遠心分離し(1700rpm、5分間、ブレーキ付のART)、1×DPBS CMF(1mL)で1回洗浄した。サンプルをデカントし、混合し、200μLのFix/Perm緩衝液に添加した後、ボルテックスし、暗所にて30~35分間、2~8℃でインキュベートした。サンプルを1mLの1×Perm緩衝液で2回洗浄し(前述のように遠心分離される)、チューブ1用にアイソタイプPECy7:5μL/アイソタイプPE:5μLを含む、又はチューブ2用にKi67 PECy7:5μL/FoxP3 PE:5μLを含む100μLの1×Perm緩衝液中に再懸濁した(チューブ1はアイソタイプ対照を含有し、前処置対照サンプルについてのみ処理された)。サンプルを混合し、30~35分間、暗所で2~8℃にてインキュベートした。サンプルを1mLの1×Perm緩衝液で2回洗浄した(前述のように遠心分離した)。サンプルをデカントし、フローサイトメーターで取得するために150μLの1×DPBS CMFに再懸濁した。全白血球細胞数を血液分析器で計数した。
【0133】
フローサイトメーターに関して、SOPごとにBD Cytometer Set-up and Tracking Beads及びSpherotech Ultra Rainbow Beadsを実行することにより、テストの各日に定期的なフルイディクス及びキャリブレーションチェックを行った。ある蛍光シグナルの別のものへの潜在的な漏出に対処するための蛍光補償はまた、初期の機器設定時に行われた。
【0134】
フローサイトメトリーデータ取得は、2つの散乱パラメーター及び最大8つの色蛍光チャネルを評価するFACSCantoII(商標)を使用して行われた。データは、BD FACSDiva(商標)ソフトウェアを使用して取得された。白血球は、前方散乱対側方散乱に基づく電子ゲーティングによって、末梢血中の他の細胞型と区別された。機器は、100,000個の白血球事象(チューブ1)及び400,000個の白血球事象(チューブ2)を回収するように設定された。P(パラメーター)、LL(-/-)、LR(+/-)、UL(-/+)、及び/又はUR(+/+)ゲートを例証するために二重組合せサイトグラムを作製した。
【0135】
【0136】
表4に示されるように、血液中の異なる細胞集団を公知のマーカーの発現によって同定した。
【0137】
【0138】
個々の細胞サブセットの絶対数は、細胞の相対的な比率(リンパ球サブセットの%)×血液分析装置のデータからの細胞サブセットの絶対数から計算された。
【0139】
異なる細胞集団におけるIL2(C125S)の効果を決定するために、Ki67(増殖マーカー)を発現する各細胞型の割合を計算した。
図2Aに示されるように、単回用量のIL-2は、Tregの増殖を弱く刺激しただけであった。1日5回用量のIL2(C125S)を受けている動物は、Tregの増殖の増加を示したが、有意な毒性も呈した。反復投薬はまた、従来のT細胞(Tconv細胞)(
図2B)及びCD8+細胞(
図2C)における増殖を誘起したが、一方、単回用量は中程度の効果しか示さなかった。対照的に、本開示の2つの異なる化合物である化合物1及び化合物2による単回用量の静脈内処置は、Tconv(
図3B)又はCD8+細胞を活性化することなく(
図3C)、Tregの増殖を引き起こした(
図3A)。10μg/kg、50μg/kg及び250μg/kgの化合物1及び化合物2による単回処置は、用量依存的なTregの増殖の増加を示した。
【0140】
化合物1で処置されたサルにおける血漿1μLあたりのTreg細胞の総数は、(CD4+/FOXP3+/CD127-によるフローサイトメトリーゲーティングによって決定される)Tregである細胞の割合を、血液分析によって決定される細胞の総数で乗じることにより計算された。
図4Aに示されるように、250μg/kgの化合物1による単回用量処置は、循環Treg細胞の総数の14.9倍の増加をもたらした。より低い用量の化合物1は、Treg数における効果の減少を示した。化合物1による処置は、使用したいずれの用量でもTconv(
図4B、CD4+/FOXP3-/CD127+によりゲート)又はCD8+(
図4C)細胞の増加はもたらさなかった。
【0141】
250μg/kgの化合物1の単回用量処置による処置はまた、
図5A及び5Bにおける平均蛍光強度の増加、並びにKi67+細胞のパーセント(
図5C)によって見られるように、活性化マーカーFOXP3(
図5A)及びCD25(
図5B)の発現を刺激した。FOXP3は、Tregの発生及び機能に必要な転写因子であり、CD25は、IL2Rβ受容体サブユニットであり、Ki67は、増殖している細胞において独占的に見出される細胞マーカーである。3つすべての活性化応答の大きさは、化合物1と化合物2の両方について用量比例的であった。3つすべての活性化応答についての動態は類似しており、7日目までに活性化シグナルはベースラインレベル近くに戻った。
【0142】
化合物1は、低用量のIL2(C125S)と比較して増大した有効性を示した。最高用量の化合物1又は化合物2(250μg/kg)の単回用量は、モル基準で、単回用量のIL2(C125S)とほぼ同等であった。50μg/kgのIL2(C125S)の単回用量は3.3mol/kgと同等であり、一方、化合物1又は化合物2の単回用量は3.0mol/kgと同等である。1群あたり3匹である6匹のカニクイザルは、250μg/kgの化合物1の単回静脈内用量又は50μg/kgのIL2(C125S)の1日5回の皮下投薬で処置された。化合物1を受けている動物は、IL2(C125S)を受けている動物と比較して、Treg細胞のより大きいピーク誘導を示した(
図6参照)。IL2(C125S)の1日5回の注射と比較して、化合物1は1回だけ投与されたが、Treg細胞の誘導の期間は2つの処置について同等であり、両方の処置は、処置の7日目及び9日目に同数のTregをもたらした。比較として、化合物1は、血漿1μlあたりのTreg細胞の数によって証明されるように、IL2(C125S)よりも改善された治療効力を呈した。毎日5回IL2(C125S)で処置された3匹の動物すべてが、5~7日目から液体便又は軟便を有することが観察されたことは注目に値する。これらの知見は、処置群の3匹すべての動物において発生したことに起因して、及び化合物の反復投薬後に知見が生じたことから、IL2(C125S)による処置に関連すると考えられた。下痢は、ヒトにおいて2番目に多いIL2(C125S)有害事象である。
【0143】
化合物1は、IL2(C125S)よりも高いTreg活性化及びより選択的なTreg活性化をもたらした。
図7のパネルの最上列は、処置群についての代表的な動物由来の免疫細胞のフローサイトメトリーを示す。Treg細胞及びTconv細胞は、Foxp3とCD127の発現によって区別することができる。未処置動物において、Treg細胞とTconv細胞との比は0.04である。免疫細胞をさらに分析した場合、17%のTreg細胞は高いKi67及びCD25を発現しており、これは活性化を示している。10%のTconv細胞及び24%のCD8細胞は高いKi67を発現した。
図7の第2及び第3のパネルは、250μg/kgの化合物1を用いた単回用量処置又は50μg/kgのIL2(C125S)の1日5回用量のいずれかで処置された動物から5日目に抽出した免疫細胞のフローサイトメトリー分析を示す。化合物1で処置された動物において、5日目にTreg細胞とTconv細胞との比は0.7であったが、一方、IL2(C125S)で処置された動物においては、その比はわずか0.3であった。データは、化合物1で処置された動物における85%のTreg細胞の活性化、及びIL2(C125S)で処置された動物におけるわずか55%のTreg細胞の活性化に対応した。化合物1で処置された動物におけるTconv細胞及びCD8細胞のさらなる活性化は、未処置動物における活性化レベルと同等であった。対照的に、IL2(C125S)はこれらの細胞型の活性化を引き起こした。Tconv細胞の活性化は、未処置動物における10%と比較して34%増加し、CD8細胞の活性化は、未処置動物における24%と比較して62%であった。
【0144】
改善されたTreg活性化及び選択性は、
図8A~8Bにおいてさらに実証される。
図8Aは、化合物1(50μg/kg又は250μg/kg)、Fc-V91K、又はIL2(C125S)で処置された動物の血液中のTreg活性化(Ki67陽性)を示す。250μg/kgの化合物1及び50μg/kgのFc-V91Kは、Treg活性化の同様の誘導を示した。しかしながら、
図8B及び8Cに示されるように、Fc-V91Kは、Tconv及びCD8細胞の活性化をもたらした。データは、Fc-V91Kが化合物1の選択性を欠いていることを示唆している。
【0145】
薬物動態分析
カニクイザル血清サンプル中の試験物質(化合物1、化合物2、IL-2(C125S)、REF205、及びREF210)の濃度は、R&D Systems(Minneapolis、MN))の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用して決定された。アッセイキットは、血清サンプル中のHu-IL-2を定量するように設計されていたが、この研究で試験されたIL-2変異体分子で十分に機能した。
【0146】
試験物質標準、QC対照、及び試験サンプルは、アッセイ緩衝液で1:5の最小必要希釈に希釈され、供給業者によって提供された96ウェルマイクロタイタープレート上に固定化したマウス抗Hu-IL-2抗体とともにインキュベートされた。2時間のインキュベーション後、プレートを洗浄して、未結合物質を除去し、Hu-IL-2に特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに添加した。さらに2時間のインキュベーション及び洗浄の後、基質溶液を添加し、最初の工程で結合したTAの量に比例して発色した。発色を基質添加の20分後に停止し、色の強度を450nmで測定した。
【0147】
化合物1、化合物2、及びREF205のアッセイ範囲は、100%血清中で1.25ng/mL(LLOQ)~350ng/mL(ULOQ)であった。REF210のアッセイ範囲は、100%血清中で0.78ng/mL(LLOQ)~200ng/mL(ULOQ)であった。IL-2のアッセイ範囲は、100%サル血清中で0.63ng/mL(LLOQ)~40ng/mL(ULOQ)であった。
【0148】
非コンパートメント薬物動態分析は、Dynamikosの標準操作手順(DCS_SOP-PK-001r1、「血漿(血清)濃度時間データのPK解析(PK Analysis of Plasma (Serum) Concentration Time Data)」及びDCS_SOP-PK-002r1、「非コンパートメント法による薬物動態学/毒物動態学データ分析(Pharmacokinetic/Toxicokinetic Data Analysis by Non-Compartmental Method)」)に従ってPhoenix WinNonlin(バージョン6.3、Certara, L.P.、St. Louis、MO)を使用して実施した。この報告書において提示されている図は、Windows用のSigmaPlot(13.0、Systat Software Inc.、Chicago、IL)を使用して作成された。Tmaxを除いて、すべての毒物動態パラメーターは、3つの有意な図に報告されている。最初の日の投薬(処置開始)は、データ要約統計、図、及び薬物動態分析のために時間0として指定された。名目上のPKサンプル回収時間は、要約統計量の計算及び図における表示に使用された。サンプル回収時間が許容偏差範囲外である場合を除き、名目上のPKサンプル回収時間を非コンパートメント分析で使用した。
【0149】
アッセイの定量下限(BLQ)を下回る試験物質の血清濃度は、以下のように処理された:
●投薬前サンプルのBLQをゼロに設定した。
●記述統計量の計算前にBLQをゼロに設定した。LLOQ未満の平均濃度を報告しなかった。
●個人及び平均濃度のグラフ表示のためにBLQを0.00ng/mLに設定した。
以下の毒物動態パラメーターを推定した。
●観察された最大血清濃度Cmax及び最大濃度時間Tmaxは、血清濃度対時間データからの直接の観察であった。
●投薬時間から定量可能な濃度を有する最後のPK時点までの血清濃度-時間曲線下面積(AUC0-最後)は、台形法を使用して推定された。
●外挿による投薬時から無限時間までの血清濃度-時間曲線下面積(AUC0~∞)は、線形対数台形法を使用して推定された。
末端半減期(t1/2 λz)は、PK曲線の末端(対数線形)部分(λz)に関連する一次速度定数から計算された。λzは、時間対ログ濃度の線形回帰によって推定された。
【0150】
【数6】
IV用量の血清クリアランス(CL)は、1日目に投与された第1の用量を、得られたAUC0~∞で割って推定された。
【0151】
【数7】
SC用量の血清クリアランス(CL/F)は、1日目に投与された第1の用量又は5日目に投与された5回目の用量を、得られたAUC0~∞で割って推定された。
【0152】
【数8】
IV及びSC用量の終末期に基づく分布体積(それぞれVz及びVz/F)は、1回目及び5回目の用量のλz及びAUC(0~∞)を使用して推定された。
【0153】
【数9】
平均滞留時間(MRT)は、濃度-時間曲線下の面積及びモーメント曲線下の面積を使用して推定された。
【0154】
【数10】
皮下(SC)バイオアベイラビリティー(F%)は、SC用量からのAUC(0~∞)を静脈内に与えられた同用量のそれと比較することによって推定された。
【0155】
【0156】
化合物1及び2、REF205、REF210及びIL-2(C125S)についての薬物動態パラメーターを表5に示す。化合物1及び化合物2についての薬物動態パラメーターの比較を表6に示す。
【0157】
【0158】
IV注射によって与えられたすべての試験物質のTmaxは、最初のPK血液回収時点である、投与後2分のものであった。化合物1について、Cmaxは、10から250μg/kgの用量範囲にわたってIV投薬とともに増加し、この増加は用量にほぼ比例した(表5)。化合物1のAUC(0~∞)は用量に比例して増加し、10~250μg/kgの用量範囲にわたって、11.9±3.23から3.94±0.415mL/h-kgの平均血清クリアランスの付随的な減少を伴った。
【0159】
化合物2のAUC(0~∞)の増加は、それぞれ10、50、及び250μg/kg用量について用量類似の平均IVクリアランス値の10.4±4.73、6.11±2.33、及び5.50±1.06ml/h-kgにほぼ比例した(表6)。
【0160】
化合物1の皮下注射は、静脈内注射と比較して、48%のバイオアベイラビリティー及び増加した半減期を示した(
図10A及び表5を参照されたい)。化合物1及び2の静脈内注射(IV)及び皮下注射(SC)についてのAUC(0-∞)、Cmax、Tmax、クリアランス及び半減期の値の要約を表9に示す。AUC
(0-∞)(全身曝露)は、化合物1、化合物2、及びREF210について50μg/kgのIV用量間で同等であり、平均値はそれぞれ8520±1040、9150±3840、及び11300±2270ng-h/mLであった。対応する血清クリアランスは、化合物1について5.93±0.739mL/h-kg、化合物2について6.11±2.33mL/h-kg、及びREF210について4.56±0.972mL/h-kgであった。
【0161】
10μg/kgの用量で静脈内に与えた場合、野生型IL-2のFc融合タンパク質(C125S)(REF205)は、10μg/kgのIV用量の化合物1及び化合物2と比較して同様の全身曝露を与えた。平均AUC(0-∞)は、REF205、化合物1、及び化合物2について、それぞれ669±199、880±214、及び1180±718mL/h-kgであり、平均血清クリアランスは、それぞれ15.9±4.99、11.9±3.23、及び10.4±4.73mL/kgであった。
【0162】
皮下投与した場合、化合物1及び化合物2のTmaxは、投薬後の6~10時間の間に得られた(表5及び表9)。IV及びSCで与えられた50μg/kgについて得られた平均AUC(0-∞)は、化合物1及び化合物2についてそれぞれ48.2%及び33.0%の推定されるバイオアベイラビリティーを与えた。50μg/kgの化合物1のIV及びSC用量についてのT1/2λzは、それぞれ6.25±0.868及び21.1±6.05hであった。50μg/kgの化合物2のIV及びSC用量についてのT1/2λzは、それぞれ14.9±3.79及び24.9±1.94h間であった。
【0163】
同じタンパク質用量レベル(μg/kg)で化合物1及び化合物2のSC PK特性をIL-2(C125S)のそれと対比することにより、前者のタンパク質は、インビボ循環半減期の延長とともにより低い血清クリアランスを呈することが示された。化合物1及び化合物2の平均クリアランス(それぞれ12.5±2.37及び22.2±11.4mL/h-kg)は、IL-2(C125S)のそれ(715±39.3mL/h-kg)よりも7~12倍高かった。
【0164】
化合物1、化合物2、及びIL2(C125S)の皮下投与からのPK結果を比較すると、化合物1及び化合物2がIL2(C125S)よりも長い循環半減期を有することが明らかに示された(表8)。
【0165】
【0166】
表8に要約されるように、化合物1と2はともに、IL-2(C125S)よりも長い半減期、高いCmax、及びより大きいAUC(0~∞)を示した。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
活性化免疫細胞のマーカーは、リン酸化STAT5(pSTAT5)である。STAT5のリン酸化は、IL-2シグナル伝達経路における必須のステップであり、pSTAT5に特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定することができる。
図11A及び11Bに示されるように、化合物1は、ある範囲の用量にわたって他の細胞型よりもTregに対して非常に高い選択性を示した。化合物1は、Tconv及び他の免疫細胞よりもTregに対して1,000倍を超える選択性を示した。化合物1に応答するナチュラルキラー(NK)細胞の残りの画分は、CD56
brightNK細胞について濃縮される。Treg EC50はIL2(C125S)(0.7pmol)よりも化合物1(4.1pmol)の方が多少高かったが、IL2(C125S)は、狭い用量範囲にわたってTreg細胞に選択的であり、化合物1がTreg細胞の選択的活性化を呈する用量として他の細胞型の強力な活性化を引き起こした。
【0171】
[実施例2]
ヒト免疫細胞の化合物1による活性化
pSTAT5+活性化を評価するために、ヒト末梢血単核球を10
-8Mの化合物1又はIL2(C125S)で処理した。pSTAT5+活性化細胞のパーセンテージを未刺激対照と比較した。化合物1は、97%のTreg細胞及び41%のNK細胞において増殖を誘導した(
図12参照)。増殖しているCD25
low Tconv細胞、CD25
neg Tconv細胞、及びCD8+T細胞のパーセンテージは、未刺激細胞のパーセンテージと同様であった。対照的に、IL2(C125S)は、アッセイされたすべての細胞型の強力な活性化を引き起こした。
図12からの活性化NK細胞のさらなる分析は、化合物1がCD56
brightNK細胞を選択的に刺激したが、一方、IL2(C125S)が高と低CD56発現の両方でNK細胞を刺激したことを示した(
図13参照)。これらのデータは、Treg集団を選択的に活性化及び拡大する化合物1の能力を強調している。
【0172】
[実施例3]
カニクイザルにおける化合物1(IL-2 N88R/C125S-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)の評価:毎週の投薬
免疫細胞レベルにおける化合物1(IL-2 N88R/C125S-15アミノ酸ペプチドリンカー-Fc)の効果をカニクイザルにおいて評価した。サルの調達、収容及び給餌、並びに化合物1の調製及び製剤化は、本質的に実施例1に記載されている通りであった。サルは、研究の1、8、15及び22日目に皮下投薬によって化合物1を投与された。処置群を以下の表10に示す。
【0173】
各処置群は、5匹の雄性サル及び5匹の雌性サルを含んでいた。
【0174】
循環免疫細胞のレベルの変化をフローサイトメトリーによって定量化した。血液サンプルは、第1の用量の1日後及び各用量の5日後、すなわち2、6、13、20及び27日目に免疫細胞レベルを定量するために採取された。B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD8+T細胞、従来のT細胞(Tconv)、及び制御性T細胞(Treg)のレベルを決定した。細胞は、3つの変更:(1)CD3+CD4+CD127-CD25+である細胞としてのTregの指定、(2)CD3+CD4+CD127-CD25+としてのCD4Tconv細胞の指定、及び(3)CD3-CD20-CD8+細胞としてのNK細胞の指定を伴う、実施例1に記載したのと同様の方法で免疫表現型分析された。
【0175】
図15、16、17及び18に示されるように、化合物1は、それぞれ、B細胞、NK細胞、CD8+T細胞、又は従来のT細胞のレベルにおいてほんのわずかな影響しか及ぼさなかった。対照的に、化合物1による処置は、数回の投薬にわたって持続された制御性T細胞レベルの大幅な増加をもたらした。
図19及び20を参照されたい。例えば、2mg/kg用量の化合物1は、数回の用量にわたって持続された、ベースラインを超える制御性T細胞レベルの約40倍の増加をもたらした。
図19を参照されたい。これらの薬力学的分析からの結果は、投薬後5日目にTregレベルの用量依存的増加があったことを実証した。具体的には、投薬後5日目に、Tregは、それぞれ20μg/kg、100μg/kg、及び2mg/kgで投薬された動物において、ベースラインレベルを超えて1.76倍、8.65倍、及び28.6倍に増加した。これらのTregレベルは、3つの用量レベルのそれぞれについて、残りの研究にわたって比較的安定していた。これらの結果は、ベースラインに対するTregの増加倍数として
図19に示されており、各動物の絶対レベルは、試験前のレベル(第1の用量の10日前に取った)に対して正規化されている。
図15、16、17、18、及び19のY軸は、倍率変化をこれらの細胞集団と直接比較するために同じ縮尺である。
【0176】
まとめると、これらのデータは、制御性T細胞に対する化合物1の顕著な選択性を実証している。
【0177】
さらに、化合物1による処置は、制御性T細胞と従来のT細胞との比(Treg/Tconv)の大幅な増加をもたらした。例えば、2mg/kg用量の化合物1は、数回の投薬にわたって持続される約0.8のTreg/Tconv比をもたらし、100μg/kg用量の化合物1は、同様に数回の投薬にわたって持続される約0.2のTreg/Tconv細胞比をもたらした。
図21を参照されたい。具体的には、研究の6日目に、Treg/Tconv比は、それぞれ20μg/kg、100μg/kg及び2mg/kgの用量で0.09(2.9倍の増加)、0.15(6倍の増加)、及び0.77(23倍の増加)であることが分かった。
【0178】
この研究の過程で、処置された動物のいずれにも有害作用は見られなかった。
【0179】
これらの結果は、0.2のTreg/Tconv細胞比を達成するIL2で処置された移植片対宿主病(GVHD)患者が疾患改善の高い可能性を有することを考慮すると、特に重要である。例えば、ヒトにおいて、毎日の低用量IL-2は、Tregのレベルを増大させることによって慢性GVHDを有する患者を処置するために使用されている(2016、Koreth Jら、Blood、7月7日;128(1):130~7;2011、Koreth, J.、N Engl J Med.、12月1日;365(22):2055~66)。後者の試験において、IL-2(アルデスロイキン)を12週間、毎日皮下注射した。このようにして処置された患者は、ベースライン(処置前のTregレベル)に対して5倍を超えるTregの増加、及びTreg/Tconv比の5倍を超える増加、及び61%の臨床応答率を実現した。臨床応答は、処置の最初の週の終わりに0.2より大きいTreg/Tconv比と強く関連していた。
【0180】
まとめると、本明細書に提供されるデータは、カニクイザルにおいて、化合物1の1週間に1回の投薬が、ヒトにおいて治療的であると予測されるレベルを大幅に超えるレベルまで非常に選択的にTregレベルを刺激することを示す。
対象への医薬組成物の投与が、医薬組成物による処置前の対象における制御性T細胞のレベルと比較して、制御性T細胞のレベルを少なくとも2倍増加させる、請求項4に記載の医薬組成物。
対象への医薬組成物の投与が、制御性T細胞におけるCD25、FOXP3、CTLA-4、ICOS、及びCD39からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを増加させる、請求項4に記載の医薬組成物。
自己免疫疾患が、尋常性天疱瘡、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、自己免疫性血管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、強皮症、視神経脊髄炎からなる群から選択される、請求項1~3及び9~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。