(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119833
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】複合材を成型するための装置およびセラミックス系複合材を作製する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
C04B38/00 302
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080987
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2019083952の分割
【原出願日】2019-04-25
(31)【優先権主張番号】P.428052
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(71)【出願人】
【識別番号】519153442
【氏名又は名称】メディカル インベンティ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ,クツマスゼウスキ
(72)【発明者】
【氏名】カミル,アナシエウィクツ
(72)【発明者】
【氏名】マシエジュ,ウロダーチク
(72)【発明者】
【氏名】トマス,ワルダ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ,ベルカルツ
(72)【発明者】
【氏名】グラチナ,ジナルスカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、均一に構築された成型複合部品を作製するための装置およびインプラント用複合材を作製するための方法を提供する。
【解決手段】装置の設計の本質は、それが分配アセンブリを有し、分注ユニットに対向して位置するガイドユニット(11)が型枠ユニット(14)の上にあり、垂直枠(19)上に摺動自在に取り付けられ、その端部にランマ(27)を有する少なくとも1つのピストンロッド(25)を備えた押圧アセンブリ(20)が前述のガイドユニット(11)の上にあり、その中に空気圧配管(23)が接続されるケーシング(24)内にピストンロッド(25)が配置されることにある。方法の本質は、予備成形トラフを完全に充填することによって予備成型を実施し、その後、物質を予備成形トラフから小分けに押し出し、その後、15%未満の空気を含有するコンシステンシーに達するまで各部分を別個に打ち固めることにある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水1リットル当たり76~175グラムのβ-1,3-グルカン(以下、カードランと呼ぶ)を含有する水懸濁液中に、合計で300~800g、好ましくは415~800gの重量の多孔質顆粒の形態のリン酸カルシウムセラミックスを加え、最適な均一性に達するまで混合し、その後、予備成形トラフに物質を完全に充填することによって予備成型を行い、その後、前記物質を型中に押し込み、15%未満の空気を含有するコンシステンシーに達するまで前記物質の各部分を別個に打ち固め、正確に打ち固めた後、前記物質を前記型と共に5~120分間、80~100℃の温度に保ち、その後、完成品を前記型から除去する、カードランを混合したリン酸カルシウムセラミックスに基づく複合材を作製する方法。
【請求項2】
前記顆粒は0.1~0.9mmの直径および50%~70%の開放気孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
好ましくは、前記顆粒の前記気孔率は60%~70%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記打ち固められた物質を含有する前記型は、加熱処理の前に、塞がれるか、または代わりに、他の手段を使用して前記打ち固められた物質の大気暴露が制限される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材ブロックを成型するための装置、およびインプラントのためのセラミックス、特にHApに基づく複合材を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアパタイトHApまたはリン酸三カルシウムTCPに由来するセラミックス顆粒はインプラントのための材料として使用されるが、その脆弱性および不十分な可塑性のため、手術、特に口腔および顔面手術でのその用途は限られる。
【0003】
特許明細書DE2238265から、粉末状材料から多層積層物を製造するための、独立して調節可能なステージを有するプレス機が知られている。これらのステージの数は使用される粉末状材料の数に依存する。各ステージはピストンを備えており、第1のピストンの下に配置される隣接ピストンの円筒部によって、ストロークがガイドされかつ制限される。パンチは油圧駆動であり、その位置は調節可能である。プレス機はフィーダを備える。
【0004】
40℃に加熱したカードランの水懸濁液を使用することにより、上述のセラミックス材料をより可鍛性にする方法が知られている。
【0005】
ポーランド特許PL212866では、顆粒の形態のリン酸カルシウムバイオセラミックスに基づく生体活性複合材を作製する方法が開示されており、該方法は、リン酸カルシウムバイオセラミックスを特定の式に従った割合でカードランと混合し、その後、混合物を80~100℃の温度に加熱する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可鍛性物質を成型しかつ打ち固めるための装置、ならびに高い機械的耐久性を特徴とするセラミックス系複合材を作製する方法を目的とする。
【0007】
意外にも、複合材構造物内の空気の存在を最小限まで減らすと、その耐久性が著しく改善することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、成形機は、好ましくは少なくとも1つのリニア駆動プッシュロッドを備える、分注ユニット、および好ましくは少なくとも1つのトラフを備える、予備成型ユニットを含む分配アセンブリを有し、これらのユニットの両方はリニアドライブに接続される台車のプレート上に摺動自在に取り付けられることを特徴とする。分注ユニットに対向して配置されたガイドユニットが型枠ユニットの上にある。垂直枠上に摺動自在に取り付けられた押圧アセンブリがガイドユニットの上にある。押圧アセンブリは、その端部にランマを有する少なくとも1つのピストンロッドを備える。ピストンロッドは、その中に空気圧配管が接続されるケーシング内に配置される。分配アセンブリは、ガイドユニットに対して平行に摺動自在に取り付けられる。動作アセンブリのすべての駆動装置は制御ユニットに接続される。ピストンロッドおよびトラフの数は、ランマおよび型の数に関係する。
【0009】
好ましくは、ランマは、円筒形状であり、その中間部に絞り部を有し、その側方環上にランマの軸に沿って位置付けられた浅い溝がある。
【0010】
好ましくは、型枠ユニットはクランプによって取り付けられ、したがって容易に取り外すことができる。
【0011】
装置は、複合材用の物質が適切に圧縮されることを保証する。ランマの設計の結果、物質からの空気の効率的な除去が保証され、それにより気泡がランマと型との間を動くことができる。複数の押圧装置および複数の型枠は、半製品を作製するプロセスを加速する。自動制御は再現性のある製造を保証する。
【0012】
本発明の目的の例を図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】台車側から見た成型装置の不等角投影図を示す。
【
図2】分注アセンブリを伴う台車のプレートの側面図である。
【
図3】ピストンロッドの軸に沿った縦断面図である。
【
図4】押圧アセンブリ側から見た装置の不等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ベッド1を有し、その上に、ガイド4上にリニアドライブ3を備えた台車2が摺動自在に取り付けられる成型装置。8つのプッシュロッド7を有する分注ユニット6およびプッシュロッド7の軸に沿って走る8つのトラフ9を有する予備成型ユニット8は両方とも、台車2のプレート5上にねじ留めされる。予備成型ユニット8は交換可能であり、心出しピンを使用して台車2のプレート5上に取り付けられる。台車2は一次リニアドライブ10に接続される。ベッド1上にガイドユニット11が設置され、ガイドユニット11は、垂直に位置付けられた8つの貫通孔12、および予備成型ユニットの側部に位置するその前壁から始まり貫通孔12までガイドユニット11に沿って位置付けられた8つの円筒形水平孔13を有する。水平孔13の軸は、プッシュロッド7の軸と同一平面にある。ガイドユニット11の下に、取り外しを容易にするクランプで枠19上に摺動自在に取り付けおよび固定された型枠ユニット14がある。型枠ユニット14は、その軸が貫通孔12の軸と同一平面にある8つの円筒形型枠15を有する。型枠ユニット14の下に、8つのプラグ17を有し、空気圧アクチュエータ18によって支持されるスラット16がある。
【0015】
ベッド1上に取り付けられた枠19上に、二次リニアドライブ21に連結された押圧ユニット20が嵌め込まれる。押圧ユニット20は8つの押圧機構22を備える。押圧機構22は、その中に2つの空気圧配管23が接続されるケーシング24からなる。ケーシング24中に、継手26をおよびねじ継手を介してランマ27に接続されたピストンロッド25がある。ランマ27は、側部に2つの環29を作り出す絞り部28を有する円筒形状を有する。ランマ27の環29の円筒面上に、型の直径に対して極小の間隔を有し、ランマ27の軸に沿って位置付けられた浅い溝30がある。動作アセンブリのすべての駆動装置は制御ユニット31に接続される。
【0016】
汚れる恐れがあるアセンブリのすべての要素、特に、予備成型ユニット8、プッシュロッド7、型枠ユニット14、およびガイドユニット11は、洗浄のために容易に取り外すことができる。型枠ユニット14は耐薬品性材料製である。
【0017】
装置は以下のように機能する:トラフ9を完全に充填された予備成型ユニット8が台車2のプレート5上に配置され、正確に位置決めされる。押圧ユニット20を持ち上げた後、前側に型枠ユニット14が配置される。空気圧アクチュエータ18は、個々の成形チャンバ15を密閉するプラグ17を有するスラット16を支持する。押圧ユニット20を下げた後、予めプログラムされた、プッシュロッド7の供給動作からなるサイクルで作動する打ち固めのプロセスが開始され、供給動作は複合材の一部をガイドユニット11の貫通孔12に供給し、ランマ27の動作と同期する。ランマ27およびプッシュロッド7は、ガイドユニット11内を相互に対して交互にかつ垂直に動く。複合材の一部が貫通孔12中に配置されると、ランマ27が3回動くことによって打ち固めが実行される。複合材のそれぞれの個々の部分を打ち固めるサイクルは、10~13回繰り返される。複合材物質が打ち固められた後、押圧ユニット20は後ろに動かされ、型枠ユニット14は取り外され、その後、型枠15の入り口は塞がれ、次に加熱処理に移る。
【0018】
本発明はまた、セラミックス系リン酸カルシウム複合材を作製する方法に関する。
【0019】
本発明によれば、セラミックス系リン酸カルシウム複合材を作製するための方法は、水1リットル当たり76~175グラムのβ-1,3-グルカン(以下、カードランと呼ぶ)を含有する水懸濁液中に、300~800g、好ましくは415~800gの合計重量の多孔質顆粒の形態のリン酸カルシウムセラミックスを加え、最適な均一性に達するまで混合し、その後、予備成形トラフに物質を完全に充填することによって予備成型を行い、その後、物質を型中に押し込み、15%未満の空気を含有するコンシステンシーに達するまで各部分を別個に打ち固め、正確に打ち固めた後、80~100℃の温度で5~120分間の加熱処理を経て、その後、完成品を型から除去することを特徴とする。
【0020】
好ましくは、顆粒は0.1~0.9mmの大きさおよび50%~70%の開放気孔率を有する。最も好ましい気孔率は60%~70%である。
【0021】
好ましくは、加熱処理の前に、打ち固められた物質を含有する型はプラグで密閉されるか、または、それ以外の場合は、他の手段を使用して打ち固められた物質の大気暴露が制限される。
【0022】
実施例
実施例I
170グラムのβ-1,3-グルカンを1,000mlの水と混合し、その後0.3~0.4mmの直径を有する350gのリン酸カルシウムセラミックスHAp顆粒を加え、均一なコンシステンシーに達するまで成分を混合した。結果として生じる物質から、約6.5cm3の体積を有する試料を取り、5,550mm3の容量を有する予備成形トラフにそれを完全に充填した。残りの過剰な物質を除去した。次のステップで、約0.4cm3の体積を有する物質の一部をトラフから13mmの直径を有する型中へ連続的に供給し、各部分を15Nの力で3回打ち固めた。得られた4cm3の体積を有する半製品を98℃で25分間加熱処理し、その後、室温に冷却し、その後、型から除去した。このようにして得られた均一な複合材は低い可塑性を有し、圧縮試験中、試料はその破壊の前に18%の変形を維持すると結論付けられた。
【0023】
複合材を40℃で12時間乾燥させた。複合材の乾燥試料中の気孔の総体積(空気量)は、マイクロトモグラフィー法による測定で(15μmの気孔検出の閾値で)、6.74%±1.15%に達した。試料中のすべての気孔の90%超が閉鎖型であった。
【0024】
実施例II
試験目的で、500mlの水と混合した40グラムのβ-1,3-グルカンを使用した。0.4~0.6mmの直径の225gのリン酸カルシウムセラミックスTCP顆粒を水懸濁液に加え、その後、均一な物質が得られるまで構成成分を混合した。
【0025】
得られた物質から、約10cm3の体積を有する試料を取り、8,350mm3の容量を有する予備成形トラフに入れ、完全に充填し、残りの過剰な物質を除去した。次のステップで、各々約750mm3の体積を有する物質の一部をトラフから15mmの直径を有する型中へ押し出し、各部分を20Nの力で3回打ち固めた。得られた7cm3の体積を有する製品を93℃で20分間加熱処理した。完成品を、冷却して型から除去した後、顕微鏡で検査し、検査中、成型プロセスを経た半製品中に残る空気に起因する空間は発見されなかった。
【0026】
複合材の乾燥試料中の気孔の総体積(空気量)は、マイクロトモグラフィー法による測定で(15μmの気孔検出の閾値で)、7.24%±1.11%に達した。これらの気孔の約30%は45~75μmの直径を有する。0.3mmを超える直径を有する気孔は検出されず、これは、製品の高度に均一な構造、および本明細書に記載される装置によって実施された成型プロセスの高い効率を示す。