(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119834
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】糸状菌を含む食用組成物およびその栽培のためのバイオリアクターシステム
(51)【国際特許分類】
A23L 31/00 20160101AFI20220809BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20220809BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220809BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220809BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220809BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220809BHJP
A23C 9/12 20060101ALI20220809BHJP
A23G 9/36 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A23L31/00
C12N1/14 A
C12N1/14 B
C12M1/00 D
A23L13/00 Z
A23L19/00 101
A23L5/00 K
A23C9/12
A23G9/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022081021
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2020512420の分割
【原出願日】2018-08-29
(31)【優先権主張番号】62/552,093
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/722,074
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518308809
【氏名又は名称】ザ・フィンダー・グループ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Fynder Group, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・コズバル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・イー・マカー
(72)【発明者】
【氏名】ユバル・シー・アブニール
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・ディベイン・ハミルトン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】食料品中の単体のタンパク源および/またはタンパク質成分としての食用糸状菌バイオマット配合物、および該配合物の生産方法であって、低いエネルギーを必要とし、わずかの天然資源を消費し、かつコストが低い生産方法を提供する。
【解決手段】食用糸状菌粒子を含む食用糸状菌の配合物であって、食用糸状菌粒子が未切断糸状菌フィラメント、切断糸状菌フィラメント、またはこれらの組合せを含み、食用真菌粒子が食用糸状菌バイオマットから単離される配合物、食用糸状菌配合物を製造する方法、ならびに少なくとも1つの区画を有する容器と、区画内に配置された原材料、真菌接種材料、ガス透過性の膜、および適宜液体栄養培地を含む、一回使用型または反復使用型内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用糸状菌粒子を含む食用糸状菌の配合物であって、食用糸状菌粒子が未切断糸状菌フィラメント、切断糸状菌フィラメント、またはこれらの組合せを含み、食用真菌粒子が食用糸状菌バイオマットから単離される、配合物。
【請求項2】
糸状菌がフザリウム・オキシスポラムMK7株(ATCC寄託番号PTA-10698)である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
糸状菌がフザリウム・ベネナタムである、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
糸状菌が、マッシュルーム(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(シャントレル)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ)、シクロシベ・アエジェリタ(ベルベットピオッピーニ)、霊芝(レイシ)、舞茸(マイタケ)、アミガサタケ属の種(モレル)、ブナシメジ(クラムシェル)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、ラエチポラス属の種(森の鶏肉)、椎茸(シイタケ)、エリンギ(エリンギ)、ヒラタケ(パールオイスターおよびブルーオイスター)、ナメコ(森林なめこ)、ハナビラタケ(カリフラワー)、およびセイヨウショウロ属の種(トリュフ)からなる群から選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項5】
液体である、請求項1に記載の配合物。
【請求項6】
固体である、請求項1に記載の配合物。
【請求項7】
ペースト、粉、通気塊または堅い塊である、請求項1に記載の配合物。
【請求項8】
請求項1に記載の食用糸状菌配合物を含む食料品。
【請求項9】
糸状菌がフザリウム・オキシスポラムMK7株(ATCC寄託番号PTA-10698)である、請求項8に記載の食料品。
【請求項10】
糸状菌がフザリウム・ベネナタムである、請求項8に記載の食料品。
【請求項11】
糸状菌が、マッシュルーム(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(シャントレル)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ)、シクロシベ・アエジェリタ(ベルベットピオッピーニ)、霊芝(レイシ)、舞茸(マイタケ)、アミガサタケ属の種(モレル)、ブナシメジ(クラムシェル)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、ラエチポラス属の種(森の鶏肉)、椎茸(シイタケ)、エリンギ(エリンギ)、ヒラタケ(パールオイスターおよびブルーオイスター)、ナメコ(森林なめこ)、ハナビラタケ(カリフラワー)、およびセイヨウショウロ属の種(トリュフ)からなる群から選択される、請求項8に記載の食料品。
【請求項12】
肉代用食品、肉増量剤、パン、パスタ、ペーストリー、ダンプリング、ジャーキー、スナック、飲み物、ヨーグルト、またはデザートである、請求項8に記載の食料品。
【請求項13】
肉代用食品がバーガー、ソーセージ、ホットドッグ、チキンナゲット、またはフィッシュフィレの食感を模倣する、請求項12に記載の食料品。
【請求項14】
デザートがムース、プディング、冷菓またはアイスクリーム類似食品である、請求項12に記載の食料品。
【請求項15】
デザートが糖菓またはキャンディーである、請求項12に記載の食料品。
【請求項16】
食料品を製造する方法であって、請求項1に記載の配合物を1つ以上の他の成分と接触させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の食用糸状菌配合物を製造する方法であって、
(a)炭素源を含有する液体増殖培地に食用糸状菌の小分生子、胞子、または菌糸体を接種することと、
(b)接種した増殖培地を室温でインキュベートすることと、
(c)接種した増殖培地上で表面発酵により凝集性の糸状菌バイオマットを増殖させることと、
(d)凝集性の糸状菌バイオマットを収穫することと、
(e)糸状菌バイオマットの大きさを縮小して少なくとも2つの食用糸状菌粒子を生産することと
を含む、方法。
【請求項18】
凝集性の糸状菌バイオマットの収穫が連続的に起こる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
インキュベーション工程中に時々または連続的に液体増殖培地を交換することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
炭素源がグリセロール、デンプン、コーンスティープリカー、酸ホエー、乳清、スイートホエー、加水分解水添デンプン、デンプン誘導体、小麦浸出液、工業リカー、食品精製所製品/廃棄物流、またはこれらの組合せである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項4に記載の配合物を製造する方法であって、
(a)糸状菌の子実体を表面殺菌することと、
(b)糸状菌の殺菌した子実体の大きさを縮小することと、
(c)糸状菌の粉砕された子実体を表面殺菌することと、
(d)適宜工程(b)および(c)を繰り返すことと、
(e)炭素源を含有する液体増殖培地に、糸状菌の殺菌し粉砕された子実体を接種することと、
(f)接種した増殖培地を室温でインキュベートすることと、
(g)凝集性の糸状菌バイオマットを増殖させることと、
(h)凝集性の糸状菌バイオマットを収穫することと、
(i)糸状菌バイオマットの大きさを縮小して少なくとも2つの食用糸状菌粒子を生産することと
を含む、方法。
【請求項22】
大きさが縮小した糸状菌バイオマットが5mm未満の長さの菌糸凝集体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
接種した増殖培地が約4.0~4.1のpHを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
炭素源がグリセロールを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
インキュベーション期間が10~20日である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
容器、原材料、真菌接種材料、少なくとも1つのガス透過性の膜、シール、および適宜液体栄養培地を含む、無菌シールされた内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項27】
容器が複数の増殖区画を含む、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項28】
少なくとも1つのガス透過性の膜が特定のガスに対して較正される、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項29】
少なくとも1つのガス透過性の膜がポリマー材料である、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項30】
ガス透過性の膜が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリピロロン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー複合材、および酢酸セルロースからなる群から選択される、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項31】
原材料が、天然または合成の尿、食品廃棄物、産業廃棄物および副産物、農業廃棄物および副産物、グリセロール、デンプン、デンプン誘導体、小麦浸出液、植物性材料、藻類、シアノバクテリア、食品加工廃棄物および副産物、植物性材料の加水分解物、廃油および副産物、工業リカー、食品精製所製品/廃棄物流、ならびに/またはこれらの組合せである、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項32】
真菌接種材料が子嚢菌または担子菌真菌および/またはこれらの組合せを含む、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項33】
真菌接種材料が子嚢菌真菌を含む、請求項32に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項34】
真菌接種材料が担子菌真菌を含む、請求項31に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項35】
子嚢菌真菌が、フザリウム・オキシスポラムMK7株、フザリウム・ベネナタム、フザリウム・アベナセウム、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、および/またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項36】
容器がマニホールドデザインおよび/またはバッフルシステムを有する、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【請求項37】
容器が1種以上の消耗原材料から製造される、請求項26に記載の内蔵式バイオリアクターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、食用菌類に関し、食料品に使用される食用菌類を製造する方法、食用菌類の液体および固体配合物、ならびにそれに関連する使用および方法、食用菌類を含有する食料品、ならびにその方法および使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
国際連合は、2017年8月、世界人口を75億とし、これが2023年には80億、2056年には100億になると予測している。関連報告で国際連合の食糧農業機関(FAO)は、世界の人口が2050年までに91億に達するならば、世界の食糧生産が70%増大し、発展途上世界では二倍になる必要があると推定している。この食糧生産の増大は、上昇するエネルギーコスト、減少する地下の帯水層資源、都市のスプロール現象による農地の喪失、および気候変動(例えば、温度上昇、干ばつの増加、洪水の増加、等)によりますます厳しくなる天候にもかかわらず起こる必要がある。これは、2009年の状況でタンパク質摂取量が既に不適切となっているアフリカならびにタンパク質摂取量が不適切になる危険性がある中国、インド、パキスタン、およびインドネシアのような国などの地方では特に問題である。加えて、世界的需要は2040年に肉が60%、そして乳製品が50%増大すると予想されている。
【0003】
しかし、全てのタンパク質源が等しく作り出されるわけではない。動物由来食糧(肉、卵、乳製品)は全ての必須アミノ酸、すなわち、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファンおよびリジンを含有するので「完全」タンパク質を提供する。植物由来食糧は、幾つかの必須アミノ酸を含有しているが、一般に完全な組合せを欠如している。例えば、デンプン質の根に見出されるタンパク質は必須アミノ酸のリジンを欠いており、その結果食事で別の食品から得なければならない。豆類およびマメ科植物は高レベルのリジンを含有しているが、必須アミノ酸のメチオニンを欠いている。植物性食物を組み合わせることにより完全タンパク質を組み立てることが可能であるが、栄養的にバランスの取れた食事の確保は完全タンパク質の方がずっと容易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
完全タンパク質の1つの非動物源はフザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)(以前はフザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)として分類されていた)のような食用糸状菌から得られる。しかしながら、今までこれらの源からのタンパク質生産はエネルギー資源および生産設備、例えば資本集約的なバイオリアクターおよび遠心分離機にかなりの投資を必要としていた。低いエネルギーを必要とし、わずかの天然資源を消費し、かつコストが低い培養、集菌、および食料品生産方法に対するニーズが残されている。本発明はこれらの問題を解決する。
【0005】
さらに、自然災害、ロジスティックに隔離された環境または軍隊および/または宇宙/地球外ミッションへの対応に関連するロジスティクスサプライを低減する1つの分野は、ミッションクリティカル製品、例えば栄養食品および食欲をそそる食品、燃料、代謝産物発現プラットフォーム、建築材料ならびに/または微生物工場を提供する一方での生命維持ループ、特に廃棄物流の閉鎖である。多くの場合、これらのタイプの環境は、殺菌設備にアクセスできないかもしくは限られており、および/または廃棄物流ならびに/または食糧、燃料および生成した物質を完全に収容するための密閉した無菌システムを必要とする。例えば、欧州宇宙機関による研究により(Expeditions 25-28, Growth and Survival of Colored Fungi in Space (CFS-A))、菌類は宇宙ステーション内部で増殖することができ、湿った条件で食品およびその他の有機物質を分解することができることが立証された。ここで、真菌システムの収容は補給品および表面の偶発的な汚染を防ぐのに優れている。発展する宇宙旅行の分野での食品および廃棄物を分解する必要性に加えて、これらのニーズは、自然災害に対処するとき、軍事行動の現場、荒野での作業、公衆衛生および冷蔵が信頼できない第三世界での状況、狭い空間、ロジスティック上困難なアリーナおよびある種の農作業/生産工程においても存在する。最小のスペース、エネルギー、およびメンテナンスで効率的に作動する内蔵式無菌システムを有することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多種多様な廃棄物流を多数の価値がある生成物に変換することができる頑丈で効率的なポータブル式内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターシステムはこれらの問題に対処する。本開示は、掻き混ぜも、能動的な通気も、発酵中のエネルギー源も(温度制御以外)必要とせず、生じる廃棄物残渣が最小ないし全くなく、水をほとんど必要とせず、しかも高密度の、容易に収穫される、テクスチャー化されたバイオマットを生成する簡単な無菌のバイオリアクタープラットフォームを記載する。加えて、この内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターシステムはポータブルで、および/またはより大きい、より集中したミッションおよび/または人口のためにスケールアップ可能である。
【0007】
概要
本開示は、食用糸状菌の配合物を提供する。食用糸状菌は表面発酵条件下液体培地上で増殖して糸状菌バイオマットを生成する。1つの実施形態において、食用真菌バイオマットの表面発酵生産方法が提供され、この方法は、炭素源を含有する液体の合成増殖培地にプランクトン様および/または小分生子真菌細胞を接種し、接種した増殖培地を室温でインキュベートし、真菌により産生された凝集性バイオマットを収穫することを含む。幾つかの実施形態において、接種した増殖培地は、開放トレイ内、または少なくとも半滅菌の環境に収容された開放トレイ内でインキュベートする。
【0008】
別の実施形態において、食用真菌バイオマットの表面発酵生産方法により、残りのバイオマットの増殖可能性を維持したままでバイオマットの一部分を収穫することが可能になる。
【0009】
さらなる実施形態において、糸状菌はフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)MK7株(ATCC PTA-10698、American Type Culture Collection,1081 University Boulevard,Manassas,Virginia,USAに寄託されている)であり、これは46~51%の完全タンパク質含量を有しており、全ての必須アミノ酸を高レベルで、具体的には42~43%の必須アミノ酸および4~21%のBCAAを含んでおり、卵より高い。加えて、フザリウム・オキシスポラムMK7株は8~10%のミネラルおよび灰分を有しており、高レベルのカルシウム(1.3mg/100gサービング)、鉄(5.5mg/100gサービング)、1~2%の核酸、および6~11%の脂質を含み、このうち85%が不飽和である。
【0010】
別の実施形態において、糸状菌はフザリウム・ベネナタムまたはイネ馬鹿苗病菌(Fusarium fujikuroi)である。
【0011】
さらに別の実施形態において、糸状菌は、マッシュルーム(Agaricus bisporus)(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(Boletus edulis)(ポルチーニ)、アンズタケ(Cantarellus cibarius)(シャントレル)、セイヨウオニフスベ(Calvatia gigantea)(ジャイアントホコリタケ)、シクロシベ・アエジェリタ(Cyclocybe aegerita)(ベルベットピオッピーニ)、霊芝(Ganoderma lucidum)(レイシ)、舞茸(Grifola frondosa)(マイタケ)、アミガサタケ属の種(Morchella species)(モレル)、ブナシメジ(Hypsizygus tessellatus)(クラムシェル)、シロタモギタケ(Hypsizygus ulmarius)(エルムオイスター)、ラエチポラス属の種(Laetiporus species)[森の鶏肉(chicken of the woods)]、椎茸(Lentinula edodes)(シイタケ)、エリンギ(Pleurotus eryngii)(エリンギ、キングオイスター)、セイヨウオニフスベ(Calvatia gigantean)(ジャイアントパフボール)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)(パールオイスター)、ヒラタケコランビナス品種(Pleurotus ostreatus var.columbinus)(ブルーオイスター)および他のヒラタケ属の種(Pleurotus sp.)(例えば、タモギタケ(P.citrinopileatus)、ツベルレジウム(tuberregium))、シロタモギタケ(Hypsizygus ulmarius)(エルムオイスター)、ナメコ(Pholiota microspora)(森林なめこ)、ハナビラタケ(Sparassis crispa)(カリフラワー)、ならびにセイヨウショウロ属の種(Tuber species)(トリュフ)からなる群から選択される。
【0012】
追加の実施形態において、炭素源は、糖類(例えば、スクロース、マルトース、グルコース、フルクトース、希少糖、等)、糖アルコール(例えば、グリセロール、ポリオール、等)、デンプン(例えば、コーンスターチ、等)、デンプン誘導体、デンプン加水分解物、加水分解水添デンプン、リグノセルロースパルプまたは原材料(例えば、シュガービートパルプ、農業パルプ、木材パルプ、ジスチラードライグレイン、醸造所廃棄物、等)、コーンスティープリカー、酸ホエー、スイートホエー、乳清、小麦浸出液、工業リカー(industrial liquor)、食品精製所製品/廃棄物流、および/またはこれらの組合せである。
【0013】
またさらに別の実施形態において、糸状菌の子実体または胞子から始める食用糸状菌バイオマットの表面発酵生産方法が提供される。子実体から始めるバイオマットの場合、方法は、真菌の子実体を表面殺菌し、真菌の殺菌した子実体の大きさを縮小し、真菌の縮小した子実体を表面殺菌し、炭素源を含有する合成液体増殖培地に真菌の縮小し殺菌した子実体からの細胞を接種し、接種した増殖培地を室温でインキュベートし、真菌により産生された凝集性の糸状バイオマットを収穫することを含む。糸状菌の胞子から始めるバイオマットの場合、方法は、炭素源を含有する合成液体増殖培地に無菌の胞子を接種し、接種した増殖培地を室温でインキュベートし、真菌の胞子により産生された凝集性の糸状バイオマットを収穫することを含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、糸状菌の子実体または胞子は、マッシュルーム(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(シャントレル)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ)、シクロシベ・アエジェリタ(ベルベットピオッピーニ)、霊芝(レイシ)、舞茸(マイタケ)、アミガサタケ属の種(モレル)、ブナシメジ(クラムシェル)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、ラエチポラス属の種(森の鶏肉)、椎茸(シイタケ)、エリンギ(エリンギ)、ヒラタケ(パールオイスターおよびブルーオイスター)、ナメコ(森林なめこ)、ハナビラタケ(カリフラワー)、およびセイヨウショウロ属の種(トリュフ)からなる群から選択される。糸状菌の無菌胞子はMyco Direct(Huntley,Illinois)のような市販業者から入手した。
【0015】
さらに別の実施形態において、糸状菌のプランクトン様細胞、小分生子細胞、大きさが縮小した子実体、または胞子から生成した糸状バイオマットは菌糸体および/または菌糸の5mm未満の長さの凝集体を含む。またさらに別の実施形態において、大きさが縮小した糸状バイオマットは5mmより長い凝集体を含む。
【0016】
さらなる実施形態において、子実体細胞を接種した増殖培地のpHは約4.0~4.lのpHを有する。
【0017】
別のさらなる実施形態において、子実体および/または細胞の増殖のための合成増殖培地の炭素源はグリセロール、デンプン、コーンスティープリカー、酸ホエーまたはこれらの組合せを含み、および/またはインキュベーション期間は約2~10日またはそれ以上である。
【0018】
別の実施形態は、合成液体培地上の表面発酵で増殖した食用の真菌糸状バイオマットから単離された食用の真菌糸状バイオマット粒子を含む食用真菌糸状バイオマットの配合物に関する。
【0019】
さらなる実施形態は、液体、固体またはゲルの形態である配合物に関する。
【0020】
さらに多くの実施形態は、ペースト、粉、多孔質/通気塊および/または堅い塊である配合物に関する。
【0021】
さらに別の実施形態は、他の成分を含むかまたは含まない食用の真菌糸状バイオマットの配合物を含む食料品に関する。
【0022】
追加の実施形態は、配合物から作られた食料品、例えば肉代用食品、飲料(drink)、飲み物(beverage)、ヨーグルト、デザート、糖菓、またはキャンディーに関する。
【0023】
別の実施形態は、配合物から作られた、ムース(mouse)または室温で溶けないアイスクリーム類似食品のような冷菓である食料品に関する。
【0024】
さらなる実施形態は、食料品中の肉(例えば、バーガー、ソーセージ、ホットドッグ、チキンもしくはターキーナゲット、および/またはフィレ)の食感を増大および/または模倣するため、および/または食料品のタンパク質含量を増大するための成分としての配合物の使用に関する。またさらなる実施形態は、代用乳としての、および/またはミルク、乳製品および/または代用乳製品のタンパク質含量を増大するための液体分散配合物の使用に関する。
【0025】
さらに別の実施形態は、食用糸状菌バイオマットからの油の単離に関する。
【0026】
本開示はまた、内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターも提供する。1つの実施形態において、内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターは容器、ならびに容器内に入れられた原材料、真菌接種材料、ガス透過性の膜、および適宜液体栄養培地を含む。幾つかの実施形態においてリアクターは一回使用型のリアクターであり、一方他の実施形態においてリアクターは再利用することができる。
【0027】
通常、様々な実施形態において容器は密閉することができ、シールに加えて容器の蓋を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において容器は蓋付きトレイである。他の実施形態において容器は蓋付きペトリ皿または他のタイプの蓋付き容器である。さらに他の実施形態において容器は袋である。さらに他の実施形態において、容器は上部がガス透過性の膜(2)でできているパイプである(
図23参照)。幾つかの実施形態において容器は複数の増殖区画から成っている。幾つかの実施形態において容器はマニホールドデザインおよび/またはバッフルシステムを有する。幾つかの実施形態において容器は全部または一部が1種以上の消耗原材料から作成されている。
【0028】
幾つかの実施形態において、原材料には、例としてフザリウム・オキシスポラムMK7株(ATCC PTA-10698、American Type Culture Collection,1081 University Boulevard,Manassas,Virginia,USAに寄託されている)、フザリウム・ベネナタム、およびフザリウム・アベナセウム(Fusarium avenaceum)があるフザリウム(Fusarium)、イネ馬鹿苗病菌、クモノスカビ属の種(Rhizopus species)、アスペルギルス属の種(Aspergillus species)、および/またはこれらの組合せのような子嚢菌真菌菌株を接種する。
【0029】
他の実施形態において、原材料には、マッシュルーム(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(シャントレル)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ)、シクロシベ・アエジェリタ(ベルベットピオッピーニ)、霊芝(レイシ)、舞茸(マイタケ)、アミガサタケ属の種(モレル)、ブナシメジ(クラムシェル)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、ラエチポラス属の種(森の鶏肉)、椎茸(シイタケ)、エリンギ(エリンギ)、ヒラタケ(パールオイスターおよびブルーオイスター)、ナメコ(森林なめこ)、ハナビラタケ(カリフラワー)、および/またはセイヨウショウロ属の種(トリュフ)のような担子菌真菌菌株を接種する。
【0030】
幾つかの実施形態において原材料は自然に生じる尿および/または糞便、ならびに食品廃棄物および副産物、産業廃棄物および/または副産物、農業廃棄物および副産物、植物性材料、ならびに/またはこれらの組合せのような廃棄物である。他の実施形態において原材料は代用人尿のような合成または製造された代用品であり得る。植物性材料であるかまたはこれを含む原材料に関して、その植物性材料は通常リグノセルロースである。リグノセルロース材料は、農業作物残渣(例えば、麦わら、大麦わら、稲わら、エンドウ豆、オート麦、小穀物わら、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維(例えばトウモロコシ繊維ゴム(CFG)、ジスチラーズドライドグレイン(DDG)、コーングルテンミール(CGM)、スイッチグラス、ヘイアルファルファ、サトウキビバガス、非農業バイオマス(例えば、藻類バイオマス、シアノバクテリアバイオマス、都市の樹木残渣)、野菜(例えば、ニンジン、ブロッコリ、ニンニク、ジャガイモ、ビート、カリフラワー)、林産物および工業残渣(例えば、軟材一次/二次工場残渣、硬材軟材一次/二次工場残渣、リサイクル紙パルプスラッジ、嫌気性消化残渣)、リグノセルロース含有廃棄物(例えば、新聞印刷用紙、古紙、醸造穀粒、中古ゴムタイヤ(URT)、地方自治体の有機廃棄物、庭ゴミ、医療有機廃棄物、糖類、デンプン、廃油、オリーブ油、オリーブ油加工廃棄物、コオロギ糞、ならびにバイオ燃料の生産中に生じる廃棄物(例えば、加工藻類バイオマス、グリセロール)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。通常、ガス透過性の膜は、容器内に存在する1種以上の原材料、適宜の液体培地、および接種材料の表面と直接接触しておりその表面にシールされている。幾つかの実施形態において適宜培養培地が存在してもよい。
【0031】
幾つかの実施形態において、ガス透過性の膜は、ポリマー材料、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリピロロン(polypyrrolone)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー複合材、酢酸セルロース、ブタジエン-アクリロニトリル、TeflonAF2400、およびナイロンから成る。幾つかの実施形態においてガス透過性の膜の細孔径は0.05~1.5μmの範囲、例えば0.2μm、0.45μm、および1.0μmである。幾つかの実施形態においてガス透過性の膜は無菌の布様材料の形態であり、他の場合には膜は紙様の材料の形態である。幾つかの実施形態において表面は質感が滑らかであり、他の場合表面は質感が粗い。幾つかの実施形態においてガス拡散の通路は本質的にまっすぐであり、他の場合通路は曲がりくねっている。
【0032】
幾つかの実施形態においてリアクターは、タンパク源および/または油脂源のような食糧源として役立つバイオフィルム-バイオマットを生成する。他の実施形態においてバイオフィルム-バイオマットは皮革類似物および/またはバイオプラスチックとして役立つ。さらに他の実施形態においてバイオフィルム-バイオマットはバイオ燃料前駆物質の資源として、またはバイオ燃料自体として役立つ。さらに他の実施形態において、バイオフィルム-バイオマットは有機酸、抗生物質、酵素、ホルモン、脂質、マイコトキシン、ビタミン、色素および組換え異種タンパク質のような有機製品を生産するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】最初の4日間のバイオマット形成段階後毎日リフレッシュした栄養培地でのフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットの増殖。
【0034】
【
図2】(4日後の)毎日リフレッシュした液体栄養培地で生成したフザリウム・オキシスポラムMK7株の3センチメートルの厚さのバイオマット。バイオマットの下のナイロンメッシュスクリーンが示され、バイオマットを持ち上げ、新鮮な培地の方に動かすのに使用される。
【0035】
【
図3】フザリウム・オキシスポラムMK7株をバイオマットの増殖に連続的に供給し、培地から栄養素を取り出すように設計された連続流システム。接種時から7日間の増殖後の白色のバイオマットがチャンネル状に示されている。
【0036】
【
図4】接種時から10日間の増殖後のバイオマットの増殖(連続流下6日間+休止/静止条件下4日間)。
【0037】
【
図5】(A)12日目のバイオマットの最も成熟した部分の除去を示すバイオマットの半連続的生産。トレイの下端で最も成熟したバイオマットの1/3を収穫した後、残りのバイオマットを矢印の方向に、バイオマットの縁がトレイの端に触れるまで物理的に動かす(B)。バイオマットを動かすことで、トレイの上端に新たな開放空間が生じ、そこで新しいバイオマットが形成される。
【0038】
【
図6】半連続的な生産方法を用いたバイオマスの経時的な累積生産。破線は5日目から19日目までの線形回帰線である(y=0.57x-1.52、r
2=0.973)。エラーバーは3つの複製トレイの平均の標準偏差である。エラーバーはデータ点の記号より小さいときは見えない。
【0039】
【
図7】右側でバイオマットの最も成熟した部分の除去を示すバイオマットの連続生産。トレイの右側で最も成熟したバイオマットを連続的に収穫しながら、トレイの左端に新たな開放空間を作り出して、新しいバイオマットの生成を可能にする。トレイ内の液体培地は必要に応じて、または連続的に補給し、および/または増大することができる。
【0040】
【
図8】UVB光で4時間照射後のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットのオレンジ色の色素沈着(2つの切除したディスクを右側に示す)。照射していない対照バイオマットから切除した2つのディスクは左に示す。
【0041】
【
図9】MK7-1培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)をグリセロール、コーンスターチおよびコーンスティープリカーと共に用いて生産した4日齢のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットの電界放射型走査電子顕微鏡写真。画像A、BおよびCはEPSマトリックスがエタノール洗浄により除去されたバイオマットを示す。A)気中菌糸を有するバイオマットの上面の図。B)高密度の底層の横断面で、矢印はその層を示す。断面図はカミソリの刃でバイオマットを切断することによって作った。バイオマットの底は画像の左下隅に示されており、高密度の底層の上方の不十分に接着している遷移層が右上隅に示されている。C)バイオマットの底面の図。D)EPSマトリックスが適所にある(すなわち、EPSがエタノール洗浄で除去されていない)バイオマットの底面の図。
【0042】
【
図10】グリセロール、デンプンおよびコーンスティープリカー上で増殖させたバイオマットの透過光顕微鏡像(100×)。左の気中菌糸層の画像で、フィラメントの優勢なほぼ垂直の配向が明らかである。右の画像は高密度の底層および隣接する遷移層を示している。
【0043】
【
図11】A:左が鶏の胸肉、右がグリセロール上で増殖させた類似の食感を有する新鮮なバイオマット。B:有名なシェフBrooks Headleyが真菌バイオマットを用いて調製した「MycoBurger」。
【0044】
【
図12】開示されている方法を用いて生成したバイオマット。A:レイシマッシュルーム;B:パールオイスターマッシュルーム;C:ブルーオイスターマッシュルーム;D:カリフラワーマッシュルーム;E:エルムオイスターマッシュルーム;G:ジャイアントホコリタケマッシュルーム。
【0045】
【
図13】A.グリセロール、デンプンおよびコーンスティープリカーの混合物上で増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットから生成したチキンナゲット。B.麦芽培地001(40g麦芽、4gペプトン、1.2g酵母エキス、20滴/1mlのキャノーラ油、4gの挽いたオート麦、1000mLの水)上で増殖させたジャイアントホコリタケバイオマットから生成したチキンナゲット。
【0046】
【
図14】A.25%MK7液体分散液:75%全乳、B.50%MK7液体分散液:50%全乳、およびC.100%MK7液体分散液を用いた生のヨーグルト培養物から調製したヨーグルト。これらの培養物に使用したMK7液体分散液は酸ホエー上で増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットから調製した。
【0047】
【
図15】フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットから生成した菜食主義者のアイスクリーム類似食品。
【0048】
【
図16】酸素が容易に利用可能なガス透過性の膜に細胞が付着すると、カプセル化されたリアクター内でバイオフィルム-バイオマットの生成が開始する。時間と共に、バイオフィルム-バイオマットは下に増殖し、全ての液体および栄養物を消費して最終的にリアクターの空間を満たす。
【0049】
【
図17】(A)~(C)ポリプロピレンおよび(D)ポリカーボネートで構築した半透過性膜で蓋をしたペトリ皿内静止条件下で5日間増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマット。ペトリ皿内に残された自由液体はほとんどなく、全ての栄養素はバイオマット中に組み込まれた。リアクターの空隙/液体容量は本質的にバイオマットで充填された。
【0050】
【
図18】ガス透過性の膜により液体培地から分離されている添付の袋を使用して供給しガスを捕捉する。一体化された多機能性の膜が酸素の進入とCO
2およびその他の生成したガスの放出とを可能にする。より低い液体区画(黄色)で増殖させた真菌バイオマスが原材料および栄養物をバイオマットに変換し、これが増殖するにつれて区画を満たす。高密度の集約したバイオマットはリアクターの閉鎖システム(例えばZip-lock(登録商標)タイプ)を開封し袋から除去することにより容易に収穫することができる。
【0051】
【
図19】基本的ハーメチックリアクター(1)。共通の壁/バッフル(9)、フロントバルブ(6)およびバックバルブ(8)を有する多数のチャンネル(4)ならびにガス透過性の膜(2)が示されている。
【0052】
【
図20】単一のガス収集チャンバー(14)を有する基本的ハーメチックリアクター(1)。
【0053】
【
図21】チャンネル化ガス収集チャンバー(15、20)を有する基本的ハーメチックリアクター(1)。
【0054】
【
図22】ガス特異的透過性膜(2、50)と共にガス特異化チャンネル(30、40)を有するチャンネル化ガス収集チャンバー(15)を有する基本的ハーメチックリアクター(1)。
【0055】
【
図23】円筒状チャンネル(4)、壁/バッフル(9)、フロントバルブ(6)およびバックバルブ(8)ならびにガス透過性の膜(2)を有する基本的ハーメチックリアクター(1)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
食用糸状菌は、単独で、または食料品中に組み込まれてタンパク源として使用することができる。例えば、タンパク質含量は、パールオイスターマッシュルームで27.25%、ブルーオイスターマッシュルームで24.65%、レイシマッシュルームで15.05%(Stamets (2005) Int J Medicinal Mushrooms 7:103-110)、ジャイアントホコリタケで27.3%(Agrahar-Murugkar and Subbulakshmi (2005) Food Chem 89:599-603)、およびカリフラワーマッシュルームで32.61%(Kimura (2013) BioMed Res. Int. Article ID 982317)である。
【0057】
それにもかかわらず、マッシュルーム(クリームおよびホワイト)、ヤマドリタケ(ポルチーニ)、アンズタケ(シャントレル)、霊芝(レイシ)、アミガサタケ属の種(モレル)、ブナシメジ(クラムシェル)、ヒラタケ(パールオイスターおよびブルーオイスター)、エリンギ(エリンギ)、ナメコ(森林なめこ)、ハナビラタケ(カリフラワー)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、シクロシベ・アエジェリタ(ベルベットピオッピーニ)、舞茸(マイタケ)、椎茸(シイタケ)、ラエチポラス属の種(森の鶏肉)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ)、およびセイヨウショウロ属の種(トリュフ)のような担子菌門(Basidiomycota)糸状菌の子実体が一般に食料品に使用されているが、担子菌門または子嚢菌門(Ascomycota)糸状菌の栄養菌糸を主として含む製品はほとんどない。これは、一部は、菌糸体が通常地中に住んでいるか、またはそれがその上で増殖している物質からほとんど分離できないことが原因である。
【0058】
さらに、特定の条件下、糸状菌は嫌気性、微好気性、もしくは好気性の条件下またはこれらの組合せの下で表面発酵により真菌バイオマットを形成することができる。ここで、糸状菌バイオマットは真菌種および/または菌株および/またはその子孫を主として菌糸体、菌糸体の断片、菌糸、菌糸の断片の形態で含み、より少ない程度で分生子、小分生子、大分生子、またはそれらのいずれかおよび全ての組合せを含有し、場合によっては分生子殻および厚膜胞子も含有することができる。
【0059】
通常、糸状バイオマットは、主として菌糸体、すなわち、織り合わせた栄養菌糸フィラメントの複雑な網状組織から成っている。バイオマット内の非切断フィラメントの平均の長さは一般に少なくとも0.1mm、例えば0.1mm~0.5mm、0.5mm~50cm、0.6mm~40cm、0.7mm~30cm、0.8mm~25cm、1.0mm~20cm、1.4mm~15cm、1.6mm~10cm、1.7mm~8cm、1.8mm~6cm、2.5mm~4cm、および5mm~2cm、2cm~25cm、4cm~30cm、5cm~40cm、6cm~50cm、8cm~60cm、10cm~100cmである。
【0060】
糸状菌バイオマットの増殖は表面発酵により達成することができる。これは、炭素源および窒素源を含有する液体培地に糸状菌細胞を接種することを含む。適切な炭素源は糖類(例えば、スクロース、マルトース、グルコース、フルクトース、日本希少糖、等)、糖アルコール(例えば、グリセロール、ポリオール、等)、デンプン(例えば、コーンスターチ、等)、デンプン誘導体(例えば、マルトデキストリン、シクロデキストリン、グルコースシロップ、加水分解物および加工デンプン)、デンプン加水分解物、加水分解水添デンプン(HSH、例えば、水素添加グルコースシロップ、マルチトールシロップ、ソルビトールシロップ、等)、リグノセルロースパルプまたは原材料(例えば、シュガービートパルプ、農業パルプ、木材パルプ、ジスチラードライグレイン、醸造所廃棄物、等)、コーンスティープリカー、酸ホエー、スイートホエー、乳清、小麦浸出液、炭水化物、食品廃棄物、オリーブ油加工廃棄物、リグノセルロース材料由来加水分解物、および/またはこれらの組合せである。糸状菌細胞は増殖培地の表面に位置するバイオマットを生成する。すなわち、それらは本質的に増殖培地の上に浮かぶ。
【0061】
多くの場合、殊に子嚢菌門真菌では、増殖培地にプランクトン様の糸状菌細胞を含む接種材料を接種した。高品質の接種材料は、一緒に群れたり凝集したりせず、好ましくは指数増殖期から単離され、小分生子を含むことができる単細胞と定義されるプランクトン様細胞から成る。理想的には、接種材料の細胞は高い脂質含量を有する細胞のように増殖培地の表面に浮かび、上昇した増殖速度をもたらす。増殖培地内に沈む細胞または細胞の塊は、表面に浮かぶ細胞およびそれらが形成するバイオマットに負の影響を及ぼす。具体的には、かなりの数の群れて沈んだ細胞を含有する増殖培地から生じるバイオマットは通常変色し、均一に高密度のマットを増殖させない傾向がある。
【0062】
担子菌門胞子の接種では、胞子注射器(例えば、MycoDirect、Huntley、IL)からの脱イオン水に懸濁したおよそ2ccの無菌胞子を使用して、小さいPyrexトレイ内のおよそ75mLの増殖培地に接種する。或いは、胞子注射器からの脱イオン水に懸濁した1ccの胞子を、麦芽エキス寒天培地+CF(30g乾燥麦芽エキス、20g寒天、1000mL水+0.01%クロラムフェニコール)を有する容器に、標準的な無菌条件を用いて植え付けた。容器をパラフィルムで密閉し、菌糸体が寒天の表面を完全に覆うまで室温でインキュベートした。くさび状に切断した幅およそ2cmの寒天標本からの菌糸体の切片を次に可能な最小の大きさのさいの目に切った後増殖培地と共に管に移した。液体培養管を密閉し、室温でインキュベートし、1日に少なくとも5回手または機械的手段(すなわち連続振盪または連続撹拌槽リアクター)により約1分振盪して菌糸体を可能な限り破断した。液体培養物を濁って見えるようになるまで、通常3日以上インキュベートした。次いで液体培養物を使用して、トレイ内の全増殖培地容量の10%または15%の増殖培地に接種した。
【0063】
担子菌門子実体も、糸状バイオマットを開始するための接種材料を作成するのに使用した。幾つかの場合において、接種材料は、(a)子実体を、例えば5%漂白剤溶液で表面殺菌し、(b)無菌培地で濯ぎ、(c)無菌条件下で粉砕して、最終用途に応じて5mm未満の長さの凝集体または5mmより大きい凝集体にし、(d)粉砕されたマッシュルームバイオマスを、例えば5%漂白剤溶液で表面殺菌し、再び無菌培地で濯ぐことにより製造した。5グラムの、粉砕され表面殺菌された子実体バイオマスを直接接種材料として使用した。他の場合においては、子実体に由来する純粋な培養物を使用した。ここで、子実体の約3mm3の部分を、0.01%クロラムフェニコールを含有する寒天培地に載せ、室温でインキュベートした。2~5日間の増殖後、菌糸を新鮮な寒天+クロラムフェニコール培地上に移し、さらに3~7日間増殖させた。培養物純度は、DNAを抽出し精製し(FastDNA Spin Kit,MP Biomedicals)、16S rRNA配列および/またはITS領域を配列決定し、Blast(NCBIデータベース)を用いて配列の系統発生的分類を行うことによって確認した。確認後、菌糸を使用して50mLの無菌の液体培地に接種し、185rpmでおよそ5日間扇動/回転した後約7.5%の接種材料対92.5%の液体培地の比率の接種材料として使用した。
【0064】
幾つかのいろいろな培地を使用することができるが、Hansen’s培地(1リットルに付き=1.0gペプトン、0.3g KH2PO4・7H2O、2.0g MgSO4・7H2O、5.0gグルコース、C:N比26.9)のような幾つかの培地は糸状菌バイオマットの増殖にうまく適合していない。この培地では十分な凝集性バイオマットが生成しなかった。例外的にうまくいく培地には、MK7A、MK7-1、MK7-3(全て国際公開第2017/151684号に記載されている)、ならびに以下に示す培地がある。
【0065】
【0066】
MK-7 SF培地(C:N比7.5)
【表B】
【表C】
【0067】
NH
4NO
3を補充した麦芽培地001(C:N比7.5)
【表D】
【0068】
浸透圧の値は、250μlの培地を無菌的に取り出し、5000mOsmまで測定することができる直近に較正された浸透圧計(Model 3250 SN:17060594)を使用して取った。3つの測定値を取り、次の結果を得た。Hansen’s=39、39、38;Malt 001=169、168、169;MK-7 SF=1389、1386、1387;Malt 001+NH4NO3=288、287、286。
【0069】
加えて、我々の方法で使用した培地は得られるバイオマットのタンパク質含量を規定することができる。例えば、ブルーオイスターマッシュルームの子実体の天然のタンパク質含量は24.65%と報告されているが(Stamets (2005) Int J Medicinal Mushrooms 7:103-110)、我々の方法に従ってMalt 001培地上で増殖したブルーオイスターバイオマットは29.82%と、より高い水分補正したタンパク質含量を有しており、タンパク質含量が5.71%増大している。さらにより際立ったことに、ジャイアントホコリタケの子実体のタンパク質含量は27.3%と報告されているが(Agrahar-Murugkar and Subbulakshmi (2005) Food Chem 89:599-603)、それにもかかわらず我々の方法によりMalt 001培地上で増殖したジャイアントホコリタケバイオマットは32.04%の水分補正したタンパク質含量を有し、一方MK7-1 SF培地は46.33%の水分補正したタンパク質含量を生じ、Malt 001+NH4NO3培地は46.88%の水分補正したタンパク質含量を生じ、タンパク質含量がAgrahar-MurugkarおよびSubbulakshmiにより報告された値より本質的に19.85%増大している。
【0070】
バイオマットの収穫は通常2~3日間の増殖後であるが、幾つかの場合においては、例えばより厚いまたはより高密度のバイオマットが所望/必要とされるときなどには、より長い増殖期間が望ましい。例えば、3.5~4日間、3~5日月、4~6日か、5~7日2、6~9日に、7~10日ら、19~21日さ、またはさらに2か月間までの増殖期間が望ましいことがある。国際出願PCT/US2017/020050および本明細書に記載されている表面発酵条件下で増殖した糸状バイオマットの凝集性の構造に起因して、これらの糸状バイオマットは増殖期間の終わりに本質的に完全なまま培地の表面から持ち上げられるほどの十分な引張強さを有する。表1は測定した引張強さの幾つかの例を示す。
表1-幾つかの糸状菌バイオマットの平均引張強さ
【表1】
【0071】
表面発酵は、静的培地条件(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)、半静的培地条件、および連続培地流条件を含む様々な条件下で行うことができる。
【0072】
半静的培地条件下での増殖は、糸状菌バイオマットを収穫する前に培地の少なくとも一部分を交換することを意味する。これらの条件では、4日から18日までの線形の乾燥バイオマス生産が可能になり(r2=0.995)、その後バイオマス重量は約2.5Kg乾燥/m2で安定化する。
【0073】
バイオマットはまた、バイオマットの増殖が増殖培地の表面に制限され、そのマットの下の培地が連続的にリフレッシュされるかまたは半連続的にリフレッシュされる連続培地流条件下で生産することもできる。
【0074】
しかしながら、幾つかの場合においては、増殖するバイオマットを半連続的に収穫するのが望ましい。この際、バイオマットの幾らかの部分を取り出し、次いで残りの部分を、バイオマットの一部分の除去により作り出された培地の開放領域に物理的に移動する。これは、バイオマットを物理的につかみ、表面発酵容器の端に触れるまで引っ張ることにより、または他の機械的手段により達成することができる。得られる開放領域はその後、培地は既に生きている真菌細胞を含有しているので別のまたは追加の接種工程なしで新しいバイオマットの増殖に利用可能である。このプロセスは定期的に繰り返すことができ、これは培地をリフレッシュするかまたは限られて来た栄養素を再導入するときに特に有用である可能性がある。
【0075】
バイオマットの収穫はまた連続的に行うこともできる。連続の除去は幾つかのメカニズムにより容易にすることができる。1つのかかる例はバイオマットの成熟した端に付着させたローラーホイールである(
図7参照)。ローラーホイールはゆっくり回転し、成熟したバイオマットを収穫すると同時に、表面発酵容器の他端に新しいバイオマットの増殖のための開放した培地を作り出す。典型的な収穫速度は1.56cm/日であるが、これは特定のニーズに対して、またはユーザーの所望により変更することができる。
【0076】
膜カプセル化/密封シールバイオリアクター条件での増殖は、ガスヘッドスペースなしで適当なシステム/容器内に液体増殖培地をカプセル化することを含む。適当なシステム/容器は、例えば、トレイ、ペトリ皿、または比較的大きい表面積対深さ比を有する容器である。ガス透過性の膜を、液体培地の表面上に直接載せ、システム/容器にしっかりと密閉する。適当な膜としては、例えばほんの数例を挙げると、ポリプロピレン膜(例えばKC100 Kimguard,Kimberly-Clark,Roswell,GA)、ポリエステル膜、ポリカーボネート膜、シリコーン膜、ポリアミド膜、セルロース膜、およびセラミック膜がある。増殖するバイオマットと取り囲む大気とのガス交換はもっぱら半透過性の膜を介して起こる。
【0077】
場合によって、UVB光(290~320nm)は、フザリウム・オキシスポラムMK7株のような糸状菌による色素の産生を引き起こして色素沈着したバイオマットを生成することができる。様々な食効を作り出すのに有用な可能性がある色変化に加えて、UVBによる処理は真菌細胞膜に存在するエルゴステロールをビタミンD2に変換し、ベータカロチンおよびアスタキサンチンのようなカロチノイドの生産を増大させる。結果として、フザリウム・オキシスポラムMK7株のような糸状菌にUVBを照射することは、得られるバイオマット内のビタミンD2およびカロチノイドを増大するのに使用することができる。
【0078】
場合によって、生成した糸状菌バイオマットは外観が均一な細胞の層から成り、糸状バイオマットの1つの表面が空気と接触し、1つの表面が合成培地と接触する。他の場合、少なくとも2つの異なる層、すなわち、上面の気中菌糸層と、合成培地と接触する高密度の多細胞底層とが存在する。しばしば3つの違った層、すなわち、(a)上面の気中菌糸層、(b)高密度の最下層、及び(c)最上層と最下層との間の遷移層が存在する。バイオマットの残りの部分からの最下層の容易な分離を可能にする場合、遷移層は高密度の最下層にゆるく付着するのみであり得る。遷移層のフィラメント密度は、2つの層が会うゾーンの、高密度の最下層よりやや低い密度から、バイオマットの最上層の近くの、気中菌糸と同等な密度までの範囲である。
【0079】
糸状菌バイオマットの不活性化
不活性化プロセスは、栽培から少なくとも2日後に収穫したバイオマットで開始する。バイオマットを濯いで余分な増殖培地を除去することができるが、バイオマットを濯ぐ必要はない。場合によっては増殖培地または余分な増殖培地の除去が好ましい。同様に、バイオマットを搾って余分な増殖培地を除去することができるが、これも必要ではない。しかし、幾つかの用途では好ましいかもしれない。
【0080】
独立したタンパク源または食料品中のタンパク質成分としてバイオマットを使用する場合のように幾つかの場合においては細胞の生存性およびさらなるバイオマットの増殖の可能性の排除が望ましい。これは、加熱、照射、および/または蒸気処理によって達成することができる。
【0081】
加熱プロセスの場合、糸状菌バイオマットを、例えば国際公開第95/23843号または英国特許第1,440,642号に従って処理するか、または有機体のタンパク質組成に悪影響を及ぼさないで有機体のRNAの大部分を破壊する温度でインキュベートすることができる。
【0082】
照射の場合、糸状菌バイオマットを、60Co(またはまれに137Cs)放射性同位体、5MeVの公称エネルギー未満で作動する機械により生じたX線、および10MeVの公称エネルギー未満で作動する機械により生じた加速電子によって生成するようなイオン化エネルギーに曝露する。
【0083】
蒸気処理は幾つかの特定の代謝産物が生産されたならばそれらの代謝産物をバイオマット構築物から除去することもできるので、蒸気処理はフザリウム・オキシスポラムMK7株およびF.ベネナタム(F.venentatum)により生産したもののような幾つかの糸状菌バイオマットを不活化するのに好ましい方法である。この際、バイオマットは、バイオマットが分泌した液体および凝縮した蒸気がバイオマットから容易に滴ることができるようにされる。適切なバイオマット保持システムは多孔質のプラスチックメッシュおよび多孔質のトレイを含む。他のバイオマット保持システムには、限定されることはないが、ほんの数例を挙げれば、バイオマットの少なくとも1つの端を固定する一方でバイオマットの残りの端はバイオマットの少なくとも2つの辺を固定する前記クランプおよびメッシュシステムから吊るされるクランプ機構付きのシステムのような、バイオマットを垂直の位置に固定するシステムがある。
【0084】
バイオマットは、85℃より高い、例えば95℃の温度の蒸気のような加熱された蒸気がバイオマットと接触するようにスチーマーに入れられる。多数のトレイを単一のスチーマーに、例えば1つのトレイを他の上に入れる場合、より低い位置にあるバイオマットをより高い位置にあるバイオマットの滴から保護するのが好ましい。保護は、蒸気がバイオマットと接触することによりバイオマットの生存性を失活させ、またスチーマー内のより高いレベルで生成するバイオマットが分泌した液体および凝縮した蒸気を、スチーマー内のより低いレベルに位置するバイオマットと接触しないようにそらす形態であるべきである。1つの実施形態において、コーンを上方のトレイと下方のトレイとの間に配置してこの結果を達成する。他の実施形態において、上方と下方のトレイの分離はまた、円柱、立方体および/または直方体、ピラミッド、球、円環、および/または他のプラトンの立体のような少なくとも1つの他の幾何学形状も含む。またさらに別の実施形態において、トレイは少なくとも1つの円柱、立方体および/または直方体、ピラミッド、球、円環、その他のプラトンの立体、またはこれらの組合せを用いて分離される。
【0085】
バイオマットは、少なくとも、バイオマット内のさらなるバイオマットの増殖および/または細胞の複製が無視できるほどになるようにバイオマットの生存性が低減する点まで蒸気処理される。バイオマットの生存性は最初の基質、バイオマットの成長、蒸気/加熱伝達特性、スチーマー内のバイオマットの位置および発生蒸気に対するバイオマットの配向の関数である。一例を挙げると、グリセロールまたは酸ホエー基質上で増殖したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットは5分、場合によっては5分未満の蒸気処理の後生存不能である。蒸気処理したマットは、濯ぎ、および/または搾って、マット排泄物および凝縮した蒸気を除去することができる。
【0086】
不活化された食用糸状菌バイオマットは、タンパク源として、例えば、ほんの数例を挙げれば豆腐、ベーコン、およびジャーキーにほぼ匹敵する食料品を製造する際に直接使用することができる。
【0087】
不活化した食用糸状菌バイオマットはまた、食料品中にタンパク源として使用するために大きさを縮小することもできる。大きさの縮小は機械的手段により、例えば切断する、細断する、さいの目に切る、刻む、粉砕する、ブレンドすることにより、等または超音波処理により起こすことができ、他の成分もしくは液体と混合する前に行われる。大きさが縮小した粒子は大きさが均一であり得るか、または変化しやすい。通常、大きさが縮小した粒子の長さは0.05~500mm、幅は0.03~7mm、高さは0.03~1.0mmである。例えば、粉型の粒子は通常0.03mm~0.4mmの範囲であり、ジャーキー型の粒子は100mm~500の範囲、等である。より大きいサイズの粒子を生産することができ、バイオマットは66”の直径の完全に丸い単一のバイオマットを生成するゴムプール(66”の直径)で増殖させた。より大きい容器を使用してさらにより大きいマットを増殖させることができる。
【0088】
バイオマット毎に生成する大きさが縮小した粒子の数は初期のバイオマットの大きさおよびバイオマットの大きさが縮小した粒子が使用される目的に依存する。
【0089】
食料品に応じて、大きさが縮小した粒子は少なくとも0.1mm、例えば0.1mm~2.0mm、0.5mm~10cm、0.5mm~30cm、0.8mm~25cm、1.0mm~20cm、1.4mm~15cm、1.6mm~10cm、1.7mm~8cm、1.8mm~6cm、2.5mm~4cm、5mm~2cm、0.5~2.5mm、0.5~1.8mm、0.5~1.7mm、0.5~1.6mm、0.5~1.4mm、0.5~1.0mm、0.5~0.8mm、0.5~0.6mm、0.6~2.5mm、0.6~1.8mm、0.6~1.7mm、0.6~1.6mm、0.6~1.4mm、0.6~1.0mm、0.6~0.8mm、0.8~2.5mm、0.8~1.8mm、0.8~1.7mm、0.8~1.6mm、0.8~1.4mm、0.8~1.0mm、1.0~2.5mm、1.0~1.8mm、1.0~1.7mm、1.0~1.6mm、1.0~1.4mm、1.4~2.5mm、1.4~1.8mm、1.4~1.7mm、1.4~1.6mm、1.6~2.5mm、1.6~1.8mm、1.6~1.7mm、1.7~2.5mm、1.7~1.8mm、または1.8~2.5mmの平均の未切断フィラメント長さ、ならびに0.1~1.0cm、0.5~2.0cm、1.0~5.0cm、2.0~7.0cm、5.0~10.0cm、7.0~20cm、10.0~50.0cm、および15.0~100.0cmのより大きいサイズ分布を含有する。
【0090】
糸状菌バイオマットの大きさが縮小した粒子はまた切断フィラメントも含有しており、場合によって、切断フィラメントは主として、例えば100%切断フィラメント、99%切断フィラメント、98%切断フィラメント、97%切断フィラメント、96%切断フィラメント、および95%切断フィラメントで存在する。ここでも、切断フィラメントの大きさは生産する最終的な食料品のために選択される。平均の切断フィラメント長さは少なくとも0.01mm、例えば0.01~0.10mm、0.05~0.20mm、0.1~1.0mm、0.50~2.5mm、1.0~5.0mm、2.0~10.0mm、5.0mm~15.0mm、10.0mm~1.0cm、1.0cm~5.0cm、5.0cm~10.0cm、0.3mm~30cm、0.8mm~25cm、1.0mm~20cm、1.4mm~15cm、1.6mm~10cm、1.7mm~8cm、1.8mm~6cm、2.5mm~4cm、5mm~2cm、0.3~2.0mm、0.3~1.8mm、0.3~1.7mm、0.3~1.6mm、0.3~1.4mm、0.3~1.0mm、0.3~0.8mm、0.3~0.6mm、0.3~0.5mm、0.6~2.5mm、0.6~1.8mm、0.6~1.7mm、0.6~1.6mm、0.6~1.4mm、0.6~1.0mm、0.6~0.8mm、0.8~2.5mm、0.8~1.8mm、0.8~1.7mm、0.8~1.6mm、0.8~1.4mm、0.8~1.0mm、1.0~2.5mm、1.0~1.8mm、1.0~1.7mm、1.0~1.6mm、1.0~1.4mm、1.4~2.5mm、1.4~1.8mm、1.4~1.7mm、1.4~1.6mm、1.6~2.5mm、1.6~1.8mm、1.6~1.7mm、1.7~2.5mm、1.7~1.8mm、または1.8~2.5mmの範囲であり得る。
【0091】
場合によって、糸状菌バイオマットの縮小した粒子の平均の切断フィラメント長さは1um未満、例えば950nm未満、900nm未満、850nm未満、800nm未満、750nm未満、700nm未満、650nm未満、600nm未満、550nm未満、500nm未満、または400nm未満である。
【0092】
縮小した粒子の大きさの糸状菌バイオマットは食料品のタンパク質含量を増大するためにタンパク源として添加することができ、または唯一のタンパク質成分であり得る。全てが糸状菌バイオマットからなる食品の場合、大きさが縮小した粒子は特定の食感、口当たり、および噛み応えのために最適化することができる。例えば、ハンバーガーの形状でハンバーガーに似せた味付けをした糸状菌バイオマット食品は90%の粒子が1.5mm未満の長さをもち、長さの過半数が1mm以下であり、1mm未満の幅、および0.75mm未満の奥行きを有することができる。このタイプの食品は口内でより高い知覚密度を有することを特徴とし、噛むのがより容易であり、クリーム状の口当たりおよびより上品な食事体験を提供する。高度に加工処理されたバイオマット粒子は上質の食事施設で見出されるタイプのバーガーと比較されて来ている。バーガーレストランまたはBBQで一般に見出される調製されたタイプのバーガーと類似のより心のこもった食事体験の場合、粒子の90%が4mm~10mmの長さ、1.0mm~3mmの幅、および0.75mm未満の奥行きを有する。質感、口当たり、および噛み応えを変更する能力により、特別な食事の必要性を有する個人、例えば、噛むのが困難な人、または同じ栄養および味覚体験を提供しつつもより軟らかい食品を必要/所望とする人、またはより多くの質感、より良い口当たりおよびより良いそしゃくを有する食品を所望とする人の便宜を図るためにカスタマイズすることが可能になる。粒度を容易に制御する能力のため、糸状菌バイオマットを加えて増大したか、またはもっぱら糸状菌バイオマットから作られた食品は、表2から見ることができるように、それらが模倣する標準的なタンパク質食品に非常に類似した食感を有する。
表2-安定なミクロシステムTA XT+テクスチャーアナライザーの結果
【表2-1】
【表2-2】
【0093】
低減した粒度の糸状菌バイオマットのみを使用し、香味料を添加するかまたはしないで生産することができる食品、および/または低減した粒度のバイオマットで増大することができる食品の例は、肉製品(例えば、牛のひき肉、鶏のひき肉、七面鳥のひき肉、チキンナゲット、フィッシュスティックまたはパテ、ジャーキー、スナック(例えばチップス)、スープ、スムージー、飲み物、ミルクの類似食品、パン、パスタ、ヌードル、ダンプリング、ペーストリー(例えばパータシュー)、クッキー、ケーキ、パイ、デザート、冷菓、アイスクリーム類似食品、ヨーグルト、糖菓、およびキャンディーである。
【0094】
低減した粒度の糸状菌バイオマットで増大した食品はタンパク質含量をかなり増大することができ、これは完全菜食主義の食事に従う個人にとって特に重要である。例えば、カップ一杯のスープ(227g)を68.1gのMK7液体分散液(すなわち、1部のMK7対3部の水)で増大すると8.5gのタンパク質が添加され、ボウル一杯のスープ(340g)を136gのMK7液体分散液で増大すると17gのタンパク質が添加される。例えば菜食主義者のスープ、飲料、スムージー、等にMK7液体分散液を主成分として使用すると、これらの食品のタンパク質含量がさらに上昇する。MK7対水の比を変えると、今度はタンパク質増強の程度が変化する。
【0095】
低減した粒度のバイオマットが食品のタンパク質含量を増大するために使用されようと、または唯一のタンパク質成分として使用されようと、幾つかの場合において結合剤が所望の食感を達成するのに役立つ。卵アルブミン、グルテン、ベスン粉、菜食主義者用結合剤、クズウコン、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、カラギーナン、キサンタンゴム、ホエー、ひよこ豆水、粉砕亜麻仁、卵代替物、小麦粉、チアシード、オオバコ、等のような承認された食品結合剤が考えられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。食品結合剤に加えて、低減した粒度の糸状菌バイオマットはまた、承認された香味料、スパイス、調味料、脂肪、脂肪代替物、保存料、甘味料、着色添加物、栄養素、乳化剤、安定化剤、増粘剤、pH調節剤、酸味料、膨張剤、凝固防止剤、保湿剤、イースト栄養剤、生地強化剤、生地改良剤、安定剤、酵素製剤、ガス、およびこれらの組合せと混合することもできる。通常、結合剤、香味料、スパイス、等は特定の集団の要求を満たすように選択される。例えば、乳製品アレルギー/感受性のある個人に適応させるためには乳および/または乳固形分を使用しない、グルテンアレルギー/感受性のある人に適応させるためには小麦粉を使用しない、等である。
【0096】
幾つかの応用において、低減した粒度の糸状菌バイオマットは、チキンナゲット、シチメンチョウ、ポーク、フィッシュ、バーガー、ソーセージ、ジャーキー、ベーコン、などを模倣した食料品に使用される。この際、単一のタイプの低減した粒度、または様々な低減した粒度の糸状菌バイオマットを使用することができる。同様に、低減した粒度は、単一起源の糸状菌バイオマットまたはいろいろな起源の糸状菌のバイオマットの組合せ、例えばMK7単独またはMK7+ジャイアントホコリタケバイオマットに由来し得る。
【0097】
幾つかの応用において、低減した粒度の糸状菌バイオマットは、乾燥され、充分に小さい粒度に粉砕され、小麦粉として、増大したタンパク質の焼いた食品、例えばパン、ロールパン、マフィン、ケーキ、クッキー、パイ、等の生産に使用される。
【0098】
タンパク質を食料品中に導入する1つの局面は糸状菌バイオマットから作成された液体分散物をミルクまたはミルクの類似食品の代替成分として使用することである。液体分散物は、スープ、アイスクリーム、ヨーグルト、スムージー、ファッジ、ならびにキャンディー、例えばキャラメルおよびトリュフを含めて幾つかのレシピに使用することができる。場合によって、いろいろな原材料/炭素源から生成した糸状菌バイオマットはいろいろな香味料を有する液体分散物をもたらす。例えば、原材料/炭素源がグリセロールであるとき、フザリウム・オキシスポラムMK7株から生成する液体分散物はより甘く、酸ホエー原材料/炭素源上で増殖したフザリウム・オキシスポラムMK7株から得られる液体分散物はより酸っぱい傾向がある。糸状菌、例えばフザリウム・オキシスポラムMK7株の生来の甘さまたは酸味は最終的な食品製品に移る。例えば、酸ホエー液体分散物は自身にヨーグルトの性質を与え、グリセロール液体分散物は自身にムース、キャラメルまたはファッジの性質を与える傾向がある。
【0099】
糸状菌バイオマット:水の比率を調節して適当な粘稠度および密度の液体分散物を生産することができる。比率は1:2~10:1であり得、好ましい比率は1:3、1:4、および7:3である。例えば、1:3の相対密度比はアイスクリーム類似食品、飲み物およびヨーグルトに従う。
【0100】
場合によって、糸状菌バイオマットは油、例えばセイヨウショウロ属の種の表面発酵食用真菌バイオマットから生産されるトリュフオイルの源として使用することができる。
【0101】
価値がある微生物工場としての糸状菌の使用は従来利用されているが、一般にかなりの基礎構造および/または設備、エネルギー必要量、高価な試薬、および/またはかなりの人材を必要としていた。糸状菌は、広範な有機酸、抗生物質、酵素、ホルモン、脂質、マイコトキシン、ビタミン、有機酸、色素、および組換え異種タンパク質を生産する能力[Wiebi (2002) Myco-protein from Fusarium venenatum: a well-established product for human consumption. Appl Microbiol Biotechnol 58, 421-427; El-Enshasy (2007) Chapter 9 - Filamentous Fungal Cultures - Process Characteristics, Products, and Applications. In. Bioprocessing for Value-Added Products from Renewable Resources. Editor: Shang-Tian Yang. Elsevier; Gibbs et al (2000) Growth of filamentous fungi in submerged culture: problems and possible solutions. Crit. Rev. Biotechnol. 20, 17-48]、ならびにリグノセルロースおよび土壌中の腐植質の物質のような多くのタイプの扱い難い材料を分解する能力を含めて、地球上の全ての微生物の中で最大の代謝多様性を有することが周知である。
【0102】
広く使用されているが、深部発酵による生産にはなお多くの課題が存在しており、その中には制限された酸素利用率に起因する増殖制限および撹拌により生じる過度の剪断力のような重要な要因がある[Gibbs et al (2000) Growth of filamentous fungi in submerged culture: problems and possible solutions. Crit. Rev. Biotechnol. 20, 17-48]。地球表面条件下での水への酸素溶解度は約8mg/Lであるので、液内培養における急速な増殖中に容易に枯渇する。従って、複雑な高価でエネルギー集約的な通気および撹拌システムを使用する連続通気が高い増殖速度を維持するために必要とされる。糸状の形態は溶液への酸素移動をさらに抑制する非ニュートンレオロジー的挙動を付与するので糸状菌の栽培はさらにいっそう困難である(Norregaard et al. (2014) Filamentous Fungi Fermentation. In Industrial Scale Suspension Culture of Living Cells, H.-P. Meyer, and D.R. Schmidhalter, eds. (Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA), pp. 130-162)。培養密度が増大するにつれて、培養物に通気し混合するために必要とされるエネルギーの量は非線形に増大し、同様に高密度の培養物に通気するためのエネルギー必要量は非常に高くなる。多くの糸状菌種の場合、培養物の激しい撹拌および通気は菌糸の成長にとって有害となり、結果として増殖速度が劇的に低下する。糸状の微生物の深部発酵に対するこれらおよびその他の課題は宇宙船内および宇宙ステーションで利用可能な限定された資源でこれらの有機体を効果的に利用するために革新的な解決策を必要とする。
【0103】
開示されているハーメチックリアクターシステム(1)はこれらの問題に対処し、次の利点を有する:
- 液体培養物の能動的な通気または撹拌が必要ない
- かなりの引張強さ(バイオマット幅1cm当たり>0.1kg)を有する単一の密着したマットへのバイオマスのその場での凝集により、容易な収穫が可能になる
- テクスチャー化したバイオマットは、多種多様なミッションクリティカル製品(すなわち、食品、バイオプラスチック、バイオ燃料、栄養補助食品に、および様々な医薬品のための発現プラットフォームとして使用することができる
- 高いバイオマス生産(80~120g/m2/dまたは0.55g/L/h)を維持する一方で、水使用が最小である、ならびにプロセスからの残余廃水もしくは栄養物が最小であるおよび/またはない
- 増殖速度は早ければ2日以内に十分に形成されたバイオマットの生産に言い換えることができるか、または10日超さらに拡大することができる
- 高いバイオマス密度(バイオマットは通常100~180g/L)
- いろいろなプロセスに対して特定の利点を有する様々な糸状菌(極限環境微生物を含む)が増殖することができる
- スケールアップまたはダウンが比較的容易であり、生産性が低下しない。
- プロセスは、自然災害および/または宇宙探査ミッションから生ずる非常に多種多様なCおよびNに富む廃棄物基質を使用することができる。
【0104】
開示されているハーメチックリアクターシステム(1)は、容器ならびに容器内に入れられた原材料、真菌接種材料、ガス透過性の膜(2)、および適宜液体栄養培地を含む内蔵式バイオフィルム-バイオマットリアクターを提供する。状況に応じて、リアクターは一回使用型リアクターまたは再使用可能なリアクターであり得る。
【0105】
通常、容器はシールすることができ、シールに加えて容器の蓋を含んでいてもよい。幾つかの容器の例は蓋付きトレイ、蓋付きペトリ皿、別のタイプの蓋付き容器、または袋である。幾つかの用途のために、または幾つかの環境において、容器は、例えばマニホールドデザインおよび/またはバッフルシステムの後に、複数の増殖チャンバーを有する。幾つかの環境条件において効率を最大にするために、容器は1種以上の原材料から生産され、これらは容器内に入れられる原材料と同じであってもなくてもよい。
【0106】
原材料には、子嚢菌または担子菌の真菌菌株のような真菌菌株が接種される。子嚢菌菌株の例は、フザリウム・オキシスポラムMK7株(ATCC PTA-10698、American Type Culture Collection 1081 University Boulevard,Manassas,Virginia,USAに寄託されている)、フザリウム・ベネナタム、フザリウム・アベナセウム、および/またはこれらの組合せである。原材料の接種は、原材料を容器内に入れるときに行うことができるか、または原材料を入れた後しばらくして行うことができる。すなわち、ハーメチックリアクター(1)は、原材料と接触すると復活する凍結乾燥した糸状菌接種材料で刺激することができ、または原材料をハーメチックリアクターチャンネル(4)内へ配置した後直接接種することができ、または原材料に接種した後ハーメチックリアクターチャンネルに配置することができる。
【0107】
リアクター内に使用される原材料に関して、原材料は廃棄物、例えば自然に生じる尿および/または糞便、食品廃棄物、植物性材料、産業廃棄物、例えばグリセロール、および廃棄物副産物、デンプンおよび/またはデンプン加水分解の副産物、酸ホエー、糖アルコール、および/またはこれらの組合せであり得る。合成または製造された廃棄物代用品、例えば代用人尿も使用することができる。植物性材料の原材料は通常リグノセルロースである。リグノセルロース原材料の幾つかの例は、農業作物残渣(例えば、麦わら、大麦わら、稲わら、小穀物わら、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維(例えば、トウモロコシ繊維ゴム(CFG)、ジスチラーズドライドグレイン(DDG)、コーングルテンミール(CGM)、スイッチグラス、シュガービートパルプ、ヤシ油生産の廃棄物流、ヘイアルファルファ、サトウキビバガス、非農業バイオマス(例えば、藻類バイオマス、シアノバクテリアバイオマス、都市樹木残渣)、林産物および産業残渣(例えば、軟材一次/二次工場残渣、硬材軟材一次/二次工場残渣、再生紙パルプスラッジ)、リグノセルロース含有廃棄物(例えば、新聞印刷用紙、古紙、醸造穀粒、中古ゴムタイヤ(URT)、地方自治体の有機廃棄物および副産物、庭ゴミおよび副産物、臨床有機廃棄物および副産物、およびバイオ燃料の生産中に生成する廃棄物および副産物(例えば、加工藻類バイオマス、グリセロール)、ならびにこれらの組合せである。
【0108】
ガス透過性の膜(2)により、
図19~22に示されている幾つかの異なるやり方でシステムの最適化が可能になる。図に示されているハーメチックリアクターシステムは全部で9つのチャンネル(4)を有しているが、当業者には分かるように、ハーメチックリアクター(1)の配置に利用可能なスペースに応じて、単一のチャンネル(4)から多数のチャンネル(4)まで任意の数のチャンネル(4)が存在し得る。同様に、チャンネル(4)の形状は直角プリズムまたは円柱に限定されず、ハーメチックリアクター(1)に利用可能に適合するように適したあらゆる形状をとることができる。
【0109】
場合によって、膜(2)は
図16に示されているように容器内に存在する原材料、適宜の液体培地、および接種材料の表面と直接接触して配置される。膜はまた、例えば、一体化されたゴムガスケットと共にプラスチックフレームに取り付けることにより、原材料の表面に接触してシールすることもできる。
【0110】
他の場合において、膜は原材料の上方に吊るされて、真菌が増殖し、酸素を消費すると共に膜はマットの方に向かって、または膜と原材料との間に設置されたバッフルシステム上に下がり、これにより気中菌糸の成長が可能になる。かかるシステムを
図19に示す。ここで、ハーメチックリアクター(1)は、リアクターのフロント(7)の入口バルブ(6)で始まり、リアクターのバック(5)の出口バルブ(8)で終わり、バッフル/壁(9)により分離されている多数のチャンネル(4)から成っている。ガス透過性の膜(2)はリアクターの頂部を形成する。リアクターの底部(3)は、限定されることはないが硬質および軟質の両方のプラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸、ポリカーボネート、アクリル、アセタール、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ガラス、金属、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等および/またはこれらの組合せを始めとする任意の適切な物質で形成することができる。バッフル/壁(9)は同様の材料で作成することができる。適切なフロント(6)およびバック(8)バルブには、限定されることはないが、一方向バルブ、二方向バルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、プラグバルブ、グローブバルブ、ピンチバルブ、ディスクチェックバルブ、付着バルブ、脱着バルブ、および/またはこれらの組合せがある。入口バルブ(6)はチャンバーへの原材料/培地の配送のためのチャンバー(4)へのアクセスを提供するのに役立ち、一方出口バルブ(8)は排出される原材料および/または糸状菌バイオマットの除去を可能にする。ガス透過性の膜(2)はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリピロロン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー複合材、酢酸セルロース、ブタジエン-アクリロニトリル、TeflonAF2400、およびナイロンのようなポリマー性材料から成り得る。ガス透過性の膜(2)の細孔径は通常0.05~1.5μm、例えば0.2μm、0.45μm、および1.0μmの範囲であり、一方膜(2)は無菌の布様材料の形態または紙様材料の形態であり得る。幾つかの用途の場合膜の表面は滑らかな質感であり、他の場合表面は粗い質感である。加えて、ガス拡散のための通路は本質的にまっすぐからより曲がりくねった通路まで変化することができる。
【0111】
他の状況において、膜は真菌の増殖中酸素の進入および生成した他のガスの放出を容易にする(
図18)。この状況において、ハーメチックリアクター(1)はガス透過性膜(2)のすぐ上にガス収集チャンバー(14)を有する(
図20参照)。ガス収集チャンバー(14)はリアクターの壁/バッフル(9)または底部(3)に使用されるものと同様の材料、すなわち、硬質および軟質の両方のプラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸、ポリカーボネート、アクリル、アセタール、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ガラス、金属、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等および/またはこれらの組合せで作成することができる。或いは、ガス収集チャンバーは、ハーメチックリアクター(1)のチャンネル(4)を忠実に反映し得るか、またはハーメチックリアクターチャンネル(20)の1つより多くを含むチャンネル(15)から成る(
図21参照)。
【0112】
さらに他のシステムにおいては、ガスの進入および放出のために別のガス透過性の膜が使用される。
図22はかかるシステムを示す。この例の場合、2つの異なるガス透過性の膜(2、50)が別のガス収集チャンネル(30、40)に供給し、単一のリアクターチャンネル(4)の上に存在する。このタイプのシステムでは異なる有用なガスの進入、放出、および/または収集および/または分離が可能になる。一例として、1つの膜が酸素の通過を調整し、第2の膜が二酸化炭素もしくは水素の通過または他の関係するガスシステムを調整する。
【0113】
リアクター(1)はタンパク源および/または油脂源のような食糧源として役立つバイオフィルム-バイオマットを生産する。しかしながら、バイオフィルム-バイオマットはまた、皮革類似物、バイオプラスチック、バイオ燃料前駆物質の源、バイオ燃料、および/またはこれらの組合せとしても役立つことができる。さらに他の実施形態において、バイオフィルム-バイオマットは有機酸、抗生物質、酵素、ホルモン、脂質、マイコトキシン、ビタミン、色素および組換え異種タンパク質のような有機製品を生産するのに役立つ。
【0114】
開示されているバイオフィルム-バイオマットリアクター発酵技術は標準的ならびに極端な原材料および培地、例えばし尿(尿/糞便)での増殖を可能にし、分離または濃縮工程を必要とすることなく高度に確立されテクスチャー化された製品を生産する。活発な通気または撹拌をする必要なく、比較的高いバイオマス生産速度(0.55g/L/h乾燥バイオマス)および高い培養密度(100~180g/L)が達成される。システムの垂直方向、水平方向、および/または2つより多くの寸法のスケールアップが簡単であり、生産性が低下することはない。生産されるバイオフィルム-バイオマットは通常0.2~2.5cmの厚さで、乾物含量10~30%であり、ミッションクリティカルニーズ、例えば肉代替物、無数の他の食欲をそそる食品、および建築材料に容易に使用することができる。
【0115】
開示されているリアクターシステムで増殖した真菌バイオフィルム-バイオマットは、表面上で増殖する微生物バイオフィルムと多くの点で類似しているが、気液界面で液体培養物に懸濁されたペリクルと記載される。例えば、バイオフィルム内の細菌細胞は次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)および水酸化ナトリウムによる極端な消毒処理に耐えることが示されている(Corcoran,2013)。開示されているリアクターシステムはバイオフィルム組織をうまく利用し、極端な条件下で生じ得る厳しい人間および産業の廃棄物および副産物、例えば宇宙探査ミッションで、または自然災害により起こる他の過酷な条件により生成するような廃棄物および副産物上での増殖を可能にする。
【0116】
開示されているリアクターデザインは、液体表面上に直接位置するかまたはすぐ上に吊るされたガス透過性の膜を組み込んでいる。カプセル化されたリアクターデザインは外部の大気とのガス交換を可能にするが、汚染物質が入ったり、またはガス/液体が漏れ出たりしないように密閉される。カプセル化されたリアクターデザインはまた、ガス透過性の膜により、消費できるガスを発生ガスから分離することも可能である。これを達成するために、幾つかの場合において、同一または異なる性質を有するバルブおよび/または追加の多孔質膜を使用して、様々な性状の1つ以上の原材料と適宜の液体培地との間に異なる層を形成する。
【0117】
開示されているリアクターデザインを使用した急速なバイオフィルム-バイオマットの増殖は様々なガス透過性の膜材料で立証されている。
図17は、容器が、原材料/液体培地表面上に直接載せたポリプロピレン膜で蓋をしたペトリ皿であったリアクターにおけるおよそ7mmの厚さのバイオマット増殖を示す。初期のバイオフィルムは膜に直接付着して生成し、時間と共に下向きに液体培地の中に成長した(
図16参照)。5日間の増殖期間の終わりまでに、本質的に全ての原材料/液体培地が消費され、高密度のバイオマスが膜の下の容量を完全に満たした。
【0118】
生成したバイオマットは膜に少しだけ接着しており、単にバイオマットを膜から剥ぎ取ることによって容易に収穫された(
図17A~D参照)。ポリカーボネート膜を用いた追加の実験は同様の結果を生じている(データは示さない)。このように、リアクターの全容量が高密度の容易に収穫されるバイオマスを生産するために効率的に利用することができる。
【0119】
開示されているリアクターで一般に生産されるバイオフィルム-バイオマットは確立され(110~180g/L)、真菌および増殖条件に応じて、繊維質の質感を示す。繊維質のバイオマスの生産は、ある種のミッションクリティカル製品、例えば肉を模倣した食感を必要とする食品、ならびに皮革および木材を繊維質の物質にとって決定的である可能性がある。バイオマスの確立された特性はまた、濃縮工程(例えば、遠心分離、ろ過)を必要とすることなく容易な収穫も可能にする。
【0120】
無重力状態におけるバイオフィルム-バイオマットリアクターの使用
開示されているリアクターにおけるバイオフィルム-バイオマットの形成および増殖を制御する基本的な物理力は膜への付着である。理論に縛られることはないが、開示されているリアクター内での増殖は宇宙飛行で体験される無重力条件により影響を受けないと考えられる。重力により駆動される方向性増殖または物理的混合もしくは流れにより制御される増殖は、それが重力環境内にある傾向があるので、システムでの最も重要な要因ではない。宇宙での以前の実験は真菌の増殖をうまく立証し[European Space Agency, Expeditions 25-28, Growth and Survival of Colored Fungi in Space (CFS-A)]、開示されているリアクターシステムが宇宙環境で機能することの信頼のおける追加の証左を提供した。
【0121】
宇宙探査ミッションおよび配備の容易さのため、凍結乾燥した接種材料および特定の原材料上での増殖を支持するための必須成分(必要であれば)はリアクター内に予め装填することができる。その結果宇宙飛行士および宇宙旅行者は原材料、接種材料、およびあらゆる培地成分を調製することができる。インキュベーション時間は原材料、微生物の菌株、ならびに他の増殖パラメーター、例えばpH、温度および含水量に依存する。インキュベーション条件は、発酵が、リアクターを単に適所でインキュベートさせるという静止条件下で行われる点で単純である。高密度の確立されたバイオマットは、単にリアクター閉鎖具(例えば、ziplock(登録商標)-タイプ)を開放し、マットを取り出すことにより収穫される。
【実施例0122】
実施例1:フザリウム・オキシスポラムMK7株および他の真菌の静止トレイリアクター内増殖
糸状の好酸性フザリウム・オキシスポラムMK7株、霊芝(レイシ;
図1A)、ヒラタケ(パールオイスター、
図1B:およびブルーオイスター、
図1C)、ハナビラタケ(カリフラワー;
図1D)、シロタモギタケ(エルムオイスター;
図1E)、セイヨウオニフスベ(ジャイアントホコリタケ;
図1F)、およびフザリウム・ベネナタムのバイオマットを、国際出願PCT/US2017/020050号に記載されているように浅い静止トレイリアクターで増殖させた。
【0123】
実施例2:毎日リフレッシュした(半静止条件)栄養培地でのフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットの増殖
およそ3cmの厚さの高密度のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを毎日リフレッシュした栄養培地で21日間増殖させた。バイオマットは、pH3.0で7.5%のグリセロールを含有する無菌のMK7-1液体培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)を使用して12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)ガラストレイで生成させた。実験を開始するために、200mLの栄養培地に、以前に国際出願PCT/US2017/020050に記載されたように、後期指数増殖期の5%(容量/容量)のフザリウム・オキシスポラムMK7株培養物を接種した。200mLの接種した培地を、無菌の粗いナイロンメッシュスクリーンで裏打ちされた3つの無菌トレイの各々に加えた。培養物をそのままに4日間室温(約22℃)でインキュベートして、液体の表面に形成された最初のバイオマット層を成長させた。4日間の増殖後、ナイロンメッシュスクリーンを使用してバイオマットを静かにトレイから持ち上げ、45度の角度傾けてマットから液体を流し出した。5秒毎に1滴未満の液体が滴下するまでこの位置でバイオマットの水気を切った。平均して約3分後充分に水気が切れた。そのスクリーンで滴下させて乾燥したバイオマットを、200mLの新鮮なMK7-グリセロール培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)を含有する新鮮な予め秤量した12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)トレイに入れた。バイオマットを入れたトレイを再秤量した。バイオマットを、新鮮な培地を含有する別のトレイに移動するプロセスをおよそ毎日の割合で17日以上繰り返した。12、15および21日目にバイオマットの1つからサンプル採取し、これらのバイオマットの水分含量を決定した。バイオマットの平均の水分含量は17.3%(標準偏差=0.7)であり、この値を使用して実験の持続期間にわたって乾燥バイオマス生産を計算した。乾燥バイオマス生産は4日から18日まで線形であり(r
2=0.995)、その後バイオマス重量は約2.5Kg乾燥/m
2で安定化した(
図1、y-軸はm
2当たりに規格化した。増殖は通常0日~4日で指数的である)。この線形の増殖の期間にわたる平均増殖速度は6.04g/m
2/hであった。
図2は、この方法を使用して合計21日間の増殖後に成長した約3cmの厚さのバイオマットを示す。
【0124】
実施例3:連続流条件下でのバイオマットの増殖
流動する液体培地の表面でのバイオマットの増殖を立証するために連続流バイオリアクターシステムを組み立てた。システムは、フローチャンネルとして使用した一連のひだがある2.44mの長さの透明なプラスチックルーフィングパネルから組み立てた(
図3)。各々のチャンネルの端は、液体をチャンネル内に保持することができるようにシリコン(100%シリコーン、DAP Products Inc.,Baltimore,MD)でせき止められた。流れは、液体培地を蠕動ポンプによりチャンネルの一端に配送することによってチャンネルを通って促進され、液体はチャンネルの底の穴を通ってチャンネルの他端を出ていく。全体のプラスチックルーフィングパネルシステムは1m進むと1cm上がるという角度で傾斜していて各々のチャンネル内に約500mLの液体が保持され、着実な流れは液体の量および傾きの角度の関数となる。
【0125】
パネルシステムを消毒し、Saran(登録商標)様プラスチックラップに包んで周囲の室環境からシステムを隔離した。無菌の空気を400mL/minの速度でプラスチックラップの下にポンプで送ってシステム上に正圧を作り出した。流れを開始する前にバイオマットの成長を始めるために、所望の糸状菌を接種した500mLの容量の栄養培地をチャンネル毎に加え、休止/静止条件下で4日間インキュベートした。4日後、蠕動ポンプで400mL/dの連続パルス流を送ってバイオマットに「供給した」(ON、2.016mL/min、49min,39sec;OFF、5h 10min 21sec)。2つの独立した実験を行い、各々の実験では2つの別のフローチャンネルを複製として使用した(
図3)。
【0126】
栄養培地で10日間の増殖後確立されたバイオマットを収穫した。(休止/静止条件下で4日間、その後連続流下で6日間;
図4)。生成したバイオマスの平均乾燥重量は複製フローチャンネルで平均2.38gであった。連続流期間中(4日から10日)増殖するバイオマットによる流動する液体培地からのCおよびNの平均除去速度はそれぞれ11.9および1.2mg/L/hであった。液体培地からのCおよびN除去速度は、Costech合計CおよびNアナライザー(ECS 4010,Costech Analytical Technologies,Valencia,CA)を使用してバイオリアクターシステムの液体容量ならびに合計CおよびN流入および流出量を測定することによって決定した。こうして、連続流システムは表面におけるバイオマットの増殖を支持した。実験はまた、フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットの増殖の連続供給および確立されたバイオマットの生産に対する実験室規模の証明としても役に立った。このタイプのシステムで他の原材料、流速および得られる増殖速度を達成することができるということに留意されたい。例えば、MK7-1培地中10%グリセロール(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)でpH2.8において予期される収率は1日当たり1m
2に付き40グラムより多い乾燥バイオマスである。
【0127】
実施例4:フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットの半連続および連続生産
高密度のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを、19日間の期間にわたって半連続的に増殖させ収穫した。バイオマットは、pH4.0に調節された1/2強度MK7-1培地塩(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)で補充された酸ホエーを原材料/炭素源として使用して生成させた。実験を開始するために、後期指数増殖期のフザリウム・オキシスポラムMK7株(5%容量/容量)を接種した200mLの栄養培地を殺菌した12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)ガラストレイに加え、次いでこれをSaran(登録商標)ラップで覆い、室温でインキュベートした。5日間の増殖後、バイオマットの5.9×12.7cmの部分を切断し取り出すことにより(
図5A)トレイの一端から1/3のバイオマットを取り出した。次いで、バイオマットの残りの2/3を、バイオマットの1/3の部分の除去により作り出された培地の開放領域の方に物理的に移動させた。バイオマットを無菌の手袋をはめた指で物理的につかみ、バイオマットがトレイの端に触れるまで引っ張ることによってバイオマットを移して、トレイの他端に生成したバイオマットがないようにして培地を開放した(
図5B)。バイオマットの最も成熟した部分の1/3の部分を収穫した後バイオマットの残りの2/3を開放領域に移動するプロセスを定期的に繰り返した。50mLの培地を4日毎にトレイから無菌で取り出し、50mLの新鮮な無菌の培地(1/2強度のMK7-1を入れた酸ホエー)と交換してバイオマットの除去により液体培地から除去された栄養素を補給した。この方法を使用した乾燥バイオマス生産では、5~19日でトレイ当たり0.57g/日または25.2g/d/m
2であった(
図6)。このように、バイオマットの最も成熟した端を1.56cm/日の平均速度で収穫し、新鮮なバイオマット増殖をトレイの他端の培地の開放領域で開始した半連続生産システムが立証された。
【0128】
このシステムはまた、連続除去がバイオマットの成熟した端に付着するローラーホイールにより容易になっているバイオマットの連続収穫および増殖にも適している(
図7)。ローラーホイールはゆっくり回転し、成熟したバイオマットを収穫し、同時にトレイの他端に新しいバイオマットの増殖のための開放培地を作り出す。ローラーホイールは回転し、1.56cm/日の速度でバイオマットを収穫して上記半連続システムを再生する。液体培地中の栄養素はバイオマットによる栄養素除去の速度で補給するのが望ましい。
【0129】
実施例5:膜カプセル化バイオリアクター
高密度のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを、ガスヘッドスペースのないバイオリアクターシステムにカプセル化された液体増殖培地で増殖させた。無菌のペトリ皿底(55mmの直径)に、8%グリセロールを含有する57mLの接種されたMK7-1培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)をなみなみと満たした。ポリプロピレンおよびポリカーボネートのガス透過性/半透過性の膜を直接液体培地の表面に配置し、ゴムバンドでしっかりとシールした。増殖期間の開始時にガスヘッドスペースは提供されなかった。
【0130】
培地に接種し、膜をシールした後、バイオリアクターを収穫までそのまま動かさないで置いた。
図8は、それぞれポリプロピレン(
図17A~C)およびポリカーボネート(
図17D)膜の直下で5日間増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株の約5mmおよび約1mmの厚さのバイオマットを示す。バイオマットは膜に少し付着し、単にバイオマットを膜から剥ぎ取ることにより容易に収穫できた(
図17)。
【0131】
実施例6:フザリウム・オキシスポラムMK7バイオマットのUVB照射による色素およびビタミンD2の生産
UVB光(290~320nm)を使用してフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットによる色素生産を開始させた。7.5%グリセロールのMK7-1培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)で3日間生成させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットをUVB光で4時間の期間照射した。UVB光は、バイオマットの10cm上方に配置した50Wバルブ(Slimline Desert 50 UVB T8蛍光灯、46cm;Zilla,Franklin,WI)から発せられた。オレンジ色の色素沈着が0.5h照射後視覚的に検出され、4hの照射後に顕著であった(
図9)。加えて、UVB光に曝露しなかったバイオマットはバイオマット100g当たり50IU未満のビタミンD2含量を有するが、およそ12時間UVB光曝露後ビタミンD2含量はバイオマット100g当たりおよそ120万IUに増大する。
【0132】
実施例7:グリセロール、デンプンおよびコーンスティープリカーの混合物上で増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマット
フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを、グリセロール、デンプン、コーンスティープリカーおよびMK7-1塩(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)の混合物からわずか4日間で生成させた。グリセロールはDuda Energy LLCから購入した(Decatur, AL;99.7% Purity;USP Grade;Lot#466135376340);Argo Food Companies,Inc(Memphis,TN)により製造された100% Argo Corn StarchはBozeman,MTのAlbertson’s supermarketから購入し、コーンスティープリカーはSanta Cruz Biotechnology,Inc.(Dallas,TX;Lot#B0116)から購入した。増殖培地は7.5%グリセロール(重量/重量)、2.5%デンプンおよび2.5%コーンスティープリカーとMK7-1塩の混合物であった。適当な量のHClを加えることによって混合物をpH3.3に調節し、15分適切な容器中で煮沸した。室温に冷却した後、混合物のpHを3.3に再調整し、次いで国際出願PCT/US2017/020050で調製された5%フザリウム・オキシスポラムMK7株接種材料(vol/vol)を接種した。1.5Lの接種した培地の試料を3つの消毒した0.25m2のポリプロピレントレイに加え、暗状態を作り出すためにアルミホイルで完全に覆われた消毒したトレイラックシステムに入れ、23°±1℃でインキュベートした。培地の表面で増殖した糸状菌バイオマットを、4日後単にバイオマットをトレイから持ち上げることによって収穫した。
【0133】
3つのトレイ中の残りの液体の平均の最終pHは4.45であった(標準偏差=0.14)。3つの56.7cm2の円形部分を各々のバイオマットのランダムの位置から切り取って取り出し、これらの部分を50℃で48h乾燥して乾燥重量を得た。平均のバイオマス乾燥重量(標準偏差)は124.6g/0.25m2(43.4)または498.4g/m2(173.6)であった。湿ったバイオマットの平均の厚さは7.5mmで、乾燥重量基準の平均の密度は0.66g/cm3であった。
【0134】
バイオマットフィラメントを露出させ、電界放射型走査電子顕微鏡法(FE-SEM)による検査を可能にするために、フィラメント間の細胞外ポリマー性物質(EPS)をエタノールで洗浄することにより除去した。これを達成するために、バイオマットの1cm2の部分(1cm×1cm)を収穫する直前にカミソリの刃で切除し、切除した部分を、以下のようにサンプルを注記した時間40mLのエタノール混合物に連続して沈めることによって一連のエタノール洗浄/脱水に付した:25%エタノール、75%脱イオンH2O、20分;50%エタノール、50%脱イオンH2O、20分;75%エタノール、25%脱イオンH2O、20分;95%エタノール、5%脱イオンH2O、20分;100%エタノール、0%脱イオンH2O、60分。100%エタノール処理をさらに2回繰り返した後サンプルを100%エタノール中に保存した。
【0135】
FE-SEM用にバイオマットの微細構造完全性を保持するために、エタノール洗浄/脱水の後に、Tousimis Samdri-795臨界点乾燥器を使用し、製造業者の指示に従って臨界点乾燥した(Tousimis Samdri-795 Operations Manual;Tousimis,Rockville,MD)。臨界点乾燥後、サンプルを直接アルミニウムスタブに載せるか、またはカミソリの刃でスライスして<0.3mmの厚さの切片にしてから載せた。次いでサンプルをイリジウムでコートし(20μm、EMITECH K575X,Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)、JEOL 6100 FE-SEMで1keVの入射ビームエネルギーを使用して検査した(JEOL USA,Inc.,Peabody,MA)。
【0136】
FE-SEM画像により、織り合わせた菌糸フィラメントの複雑な網状組織が明らかになり(
図10)、これは国際出願PCT/US2017/020050に報告されているグリセロール上で増殖させたバイオマットの光学顕微鏡検査により明らかにされた組織と極めて類似していた。3つの異なる層、すなわち(a)上面の気中菌糸層、(b)高密度の最下層および(c)最上層と最下層との間の遷移層が観察された。遷移層は高密度の最下層に軽く付着しているのみであり、従ってバイオマットの最下層と残りの部分との容易な分離が可能であった。遷移層のフィラメント密度は、2つの層が出会うゾーンでの最下層よりやや低い密度から、バイオマットの頂部近くの気中菌糸に匹敵する密度までの範囲であった。
【0137】
切除したサンプルはまた、次の溶液に以下に示す順序および時間でゆっくり浸けることによって光学顕微鏡検査用にも調製した:
【0138】
キシレン、3分;キシレン、3分;100%エタノール、3分;100%エタノール、3分;95%エタノール、3分;95%エタノール、3分;70%エタノール、3分;脱イオン水、3分;ヘマトキシリン1、1.5分;水道水濯ぎ、1分;澄まし剤溶液、1分;水道水濯ぎ、1分;青味付け溶液、1分;水道水濯ぎ、1分;70%エタノール、30回浸す;95%エタノール、30回浸す;95%エタノール、30回浸す;100%エタノール、30回浸す;100%エタノール、30回浸す;100%エタノール、30回浸す;キシレン、30回浸す;キシレン、30回浸す;キシレン、30回浸す;カバーガラスをかける。
【0139】
上記手順に従って、100×の倍率の光学顕微鏡(B400B,Amscope,Irvine,CA)で可視化した(
図11)。
【0140】
収穫する直前にバイオマットのおよそ2cm2の大きさの部分をカミソリの刃で新鮮なバイオマットから切除した。次にこれらの部分を50mLの円錐形の底の遠心分離管中の35mLの脱イオン水に浸した。管を0、40、90または150秒間超音波処理して(CP200T Ultrasonic Cleaner,Crest Ultrasonics,Ewing,NJ)、フィラメントを液体中に分散させて顕微鏡観察を可能にした。これらの管の液体の試料(約100uL)をガラススライドに載せ、カバーガラスで覆い、100×の倍率の光学顕微鏡(B400B,Amscope,Irvine,CA)で観察した。非切断フィラメントの平均の長さ(標準偏差)を測定したところ、0、40、90および160秒の超音波処理に対してそれぞれ1.1(0.6)、1.2(0.4)、1.0(0.4)および1.2(0.2)mmと決定された。各々の処理で観察された最大のフィラメント長さはそれぞれ2.5、1.4、1.8、および1.4mmであった。これらのフィラメント長さは、平均の長さが0.02mm未満である液中振盪フラスコ培養によるフザリウム・オキシスポラムMK7株の増殖と比較してかなり長い。
【0141】
実施例8:グリセロール、デンプンおよびコーンスティープリカーの混合物上で増殖したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを使用するチキンナゲットの生産
上に記載したように生産したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを使用してチキンナゲットを作成した。湿ったバイオマットをポットスチーマー中97℃で0.5時間蒸気処理し、室温に冷却し、ベースとして使用してチキンナゲットを生産した。蒸気処理した湿ったバイオマット(200g)を0.5mm未満の長さに細かく刻み、4%(重量/重量;8g)チキンベースおよび4%卵白タンパク質(8g)と共にホモジナイズした。得られた混合物は90%を超えるフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを含んでいた。このバイオマット混合物の一部分(約30g)をナゲット形状にし、ポットスチーマー内で蒸気処理した。調製したナゲットを卵白でコートした後油で揚げる前に表面に付けたパン粉と混合することによってパン粉を付けた。調製したナゲットはチキン様食感を示し(
図13A)、チキンの典型的な匂いを発散した。5人による味覚試験では、ナゲットは味覚および食感の点で実際のニワトリ含有チキンナゲットをうまく模倣しているようであった。
【0142】
実施例9:フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマット抽出物の生産
高度に濃縮された粘稠な抽出物をフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットから生産した。先に記載したように4~16日間の栽培後に収穫したバイオマットを濯ぎ、蒸気処理し、多孔質のプラスチックメッシュ上に5分間滴下させて乾燥し、プラスチック袋に入れ、シールする。シールされた袋を-20℃または-80℃で24時間凍結した後、残りの培地液体のpH4~6へのpH調節後60℃のインキュベーターで元のシールした袋内で48時間インキュベートする。熱処理後、バイオマットを<1.5mmの細孔径のフィルターに通してプレスし、得られる液体を集める。集めた液体を非反応性の容器内で10分間煮沸し、次いで、含水量が約6~8%になるまで、60℃で乾燥して、粘着性のペースト抽出物を形成する。抽出物の栄養価は蒸気処理したバイオマットおよび蒸気処理したバイオマットから作成された粉の栄養価と同様である。
【0143】
実施例10:酸ホエー上で増殖させたフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットからのヨーグルトの生産
フザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを直接使用してヨーグルトを生産した。バイオマットをトレイ中、ギリシャヨーグルトの製造副産物として生成した酸ホエー原材料/炭素源上で増殖させ、6日後収穫し、収穫の20分以内に蒸気処理した。200gの冷却した湿ったバイオマスを600gの飲料品質の水道水と共にブレンドして、「MK7液体分散物」と称するミルク様懸濁液を生産した。MK7液体分散物を単独で、または牛乳と組み合わせて成分として使用してヨーグルトを生産した。
【0144】
いろいろな比率のMK7液体分散物/全乳を含有する3つの混合物を調製した:1)25%MK7液体分散物:75%全乳、2)50%MK7液体分散物:50%全乳、および3)100%MK7液体分散物。混合物を使用して、各々の混合物を83℃に加熱し、絶えず撹拌しながらその温度に14分間保持することによりヨーグルトの3つのバッチを作成した。混合物を43℃に冷却した後生のヨーグルト培養物を接種材料として加えた。得られた混合物をヨーグルトメーカー(Model YM80;EuroCuisine,Los Angeles,CA)中で8時間44℃でインキュベートした。得られた混合物は全てヨーグルトの外観および食感(
図14)、ならびに典型的なヨーグルトと同様の匂いおよび味を有していた。
【0145】
実施例11:グリセロール上でのマッシュルームバイオマットの増殖
Baby Bella Brownクリームマッシュルーム(マッシュルーム)およびホワイトマッシュルームから成るバイオマスバイオマットを、基本炭素源(原材料)としてグリセロールを使用して10日間だけ生成させた。これらの一般的な食用のマッシュルームをBozeman,MTのAlbertson’s supermarketから購入し、4℃で貯蔵した。マッシュルームを増殖させるのに使用した培地は1Lの7.5%グリセロールとMK7-1塩(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)からなり、これを10分間煮沸した後室温(約23℃)に冷却した。混合物のpHを2.7に調節し、200mLのpH調節した混合物を2つの無菌の12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)トレイに注いだ。接種材料は5gの、ブレンドして表面殺菌したクリームまたはホワイトマッシュルームからなり、各々のトレイの培地に加えた。マッシュルーム接種材料は以下のようにして調製した:1)10gの湿ったクリームまたはホワイトマッシュルームを200mLの5%漂白剤溶液に加え、懸濁液を2分間撹拌してマッシュルームを表面殺菌し、2)次いでマッシュルームを200mLの無菌のグリセロール/MK7-1塩培地(国際出願PCT/US2017/020050に記載されている)に移し、2分撹拌することによって濯ぎ、3)表面殺菌したマッシュルームを、70%エタノールで濯ぐことにより殺菌したコーヒーグラインダーで30秒間ブレンドし、4)粉砕されたマッシュルームバイオマス(<5mmの長さの凝集体)を、粉砕されたバイオマスを用いて工程1および2を繰り返すことによって再び表面殺菌し、5)5グラムの粉砕されたマッシュルームバイオマスをPyrex(登録商標)トレイ中の液体培地に加え(マッシュルームの添加後最終pH=4.0~4.1)、6)トレイを覆い、室温(22±2℃)において暗闇でインキュベートした。
【0146】
バイオマットは、3日間のインキュベーションの後培地の表面で成長するのが観察され、10日間の増殖の後確立されたバイオマットを収穫した。クリームマッシュルームのバイオマットはトレイ内の液体培地の表面全体を覆ったが、ホワイトマッシュルームのバイオマット増殖は5つの浮遊するバイオマット島として液体培地のおよそ1/2を覆った。バイオマットの平均の厚さはクリームが1.5mm、ホワイトマッシュルームが1.7mmであった。バイオマスバイオマットを50℃で48h乾燥し、トレイ当たり生成した乾燥重量はクリームおよびホワイトマッシュルームでそれぞれ1.14gおよび2.12gであった。乾燥バイオマスバイオマットの乾燥重量基準の密度はクリームおよびホワイトマッシュルームでそれぞれ0.033および0.111g/cm3であった。
【0147】
顕微鏡画像により、バイオマットの菌糸体特性が明らかになった。平均の菌糸厚さはクリームおよびホワイトマッシュルームバイオマットでそれぞれ25.2μm(標準偏差=6.2)および18.7μm(4.0)であった。
【0148】
生成したクリームバイオマットを使用してチキンナゲットを作成した。バイオマットを97℃で0.5時間蒸気処理し、室温に冷却し、チキンナゲットを生産するベースとして使用した。蒸気処理した湿ったバイオマス(2.5g)を3%(重量/重量;75mg)のBetter Than Bouillonチキンベース(Southeastern Mills,Inc.Rome,GA)および3%の卵白タンパク質(75mg;Now Foods,Bloomingdale,IL)と混合し、カミソリの刃を使用して2mm未満の長さに細かく刻んだ。混合物をナゲットにし、0.5時間蒸気処理した。調製したナゲットはわずかにマッシュルームの香りと共に典型的なチキンの匂いを生じた。味見したところ、ナゲットはチキンないしはっきりしない風味を有していた。
【0149】
実施例12:麦芽およびグリセロール培地上でのマッシュルームバイオマットの増殖
セイヨウオニフスベ(ジャイアントパフボール)、ヒラタケ(パールオイスター)、ヒラタケコランビナス品種(ブルーオイスター)、シロタモギタケ(エルムオイスター)、ハナビラタケ(カリフラワー)および霊芝(レイシ)から成るバイオマスバイオマットを、Malt Extract Medium 001、Glycerol Medium 002、Hansen’s Medium、MK7-SF Medium、Malt Extract + NH4NO3 Medium 003(表3)を使用してわずか5日間で生成させた。全ての最終培地は0.01%のクロラムフェニコールを含有していた。
表3. 栄養培地を調製するために脱イオンまたは飲料品質の水道水に加えた成分
【0150】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0151】
上記表3のレシピを使用して2LのPyrex(登録商標)瓶または8Lのステンレス鋼ポット中で、所望の培地の容量に応じて特定の容量の水中に規定の成分を混合することによって培地を調製した。液体を撹拌棒またはスプーンで連続的に撹拌しながら成分を水に加えた。培地の各成分を液体中に十分に混合した後次の成分を加え、MK7-SF培地のpHを5.0に調節し、溶液をオートクレーブ処理した。他の全てのpHは成分を単に混合したままであった。培地と容器を少なくとも20分間20psi、121℃でオートクレーブ処理した。Advanced Instruments,Inc.の浸透圧計Model 3250(Two Technology Way,Norwood,MA)を使用して液体の浸透圧を測定した。
【0152】
オートクレーブ処理した後、培地を室温まで冷却し、個々の容器に表4に示すマッシュルーム種を接種した。
【0153】
表4. マッシュルーム胞子(10cc注射器)はMycoDirect(12172 Route 47, Ste 199 Huntley, Il 60142)から購入し、8/2/2018に受領した。エルムオイスター胞子はEverything Mushrooms(1004 Sevier Ave Knoxville, TN 37920)から購入し、8/3/2018に受領した。
【表4】
【0154】
増殖培地の接種は、無菌法を用いて適用した次の方法を使用して行った。これらの実験での無菌の仕事は全てClass II安全キャビネットで実行した。胞子注射器を使用して、先にオートクレーブ処理した12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)ガラストレイ内でおよそ75mLの増殖培地に直接接種した。これは、液体培地をオートクレーブ処理したPyrex(登録商標)トレイに無菌で移し、胞子注射器に入れた2ccの懸濁液を接種することによって行った。トレイを無菌のアルミホイルで覆った後、静かに旋回させて接種した培地を混合した。
【0155】
麦芽エキス寒天(MEA;表5)プレートは、MEAをオートクレーブ処理し、50℃に冷却し、約25mLを100×15mmの無菌ペトリ皿中に注ぐことによって無菌で調製した。
【0156】
表5. 麦芽エキス寒天を調製するのに使用した成分
【表5】
【0157】
胞子注射器内に入れた懸濁液から1ccの液体をプレート上に試料として採取してMEAプレートを接種した。次いで寒天プレートをParafilm(登録商標)でシールし、室温でクリーンな暗い引き出しに入れた。
【0158】
菌糸体がMEAプレートの表面全体を覆った後2Lのバッフル付き振盪フラスコ内の1.5Lの培地に接種するのに使用した。表面上に菌糸体を有する寒天培地のおよそ2cm2の部分を無菌のカミソリの刃でプレートから切除し、約2mm2の部分にさいの目に切り、次いで1.5LのMalt Extract 001培地を含有する2つのフラスコに加えた。培地を断続的に手で振盪しながら3日間室温(23±1℃)でインキュベートした(フラスコを最低でも1日に5回手で1分間激しく振盪した)。
【0159】
次いで、振盪フラスコ内の培養物を6LのMalt Extract培地001および6LのMalt Extract+NH4NO3 003培地のための接種材料として使用した。培地に15%(vol:vol)の接種材料培養物を接種し、十分に混合した。2リットルの接種した培地を、トレイラックに入れた3つの0.25m2プラスチックトレイの各々に注いだ。ラックをSaran(登録商標)で包み、6日間インキュベートした。比較的高密度のバイオマットが4日以内に表面全体を覆い、バイオマットを6日後収穫した。
【0160】
12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)ガラストレイおよび0.25m2のプラスチックトレイのバイオマットをトレイから持ち上げ、手で穏やかに搾ることによってバイオマットを収穫した。バイオマットの一部分(3~50g)をキッチンオーブンバーナー上にセットしたポットスチーマー中沸騰水(水の約5cm表面上方)で20分間蒸気処理した。蒸気処理後、バイオマスを室温に冷却させ、すぐにZiploc(登録商標)袋に入れ、タンパク質分析(燃焼によるN、Test Code QD252)のためEurofins(Des Moines,IA)に送った。
【0161】
表6. トレイ内の様々なタイプの培地中一連のジャイアントホコリタケ増殖の結果
【表6】
【0162】
実施例13:フザリウム・オキシスポラムMK7株チキンナゲット
チキン風味のフザリウム・オキシスポラムMK7株は、パン粉をまぶしたかもしくはまぶしていないチキンナゲット、アジア料理、または他のチキン料理用のチキンを始めとする幾つかのレシピに対してチキン代替品としての基本成分である。いろいろな原材料/炭素源から生成するフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットは多少異なるチキン風味をもつ。グリセロールチキンはより甘く、酸ホエーチキンはほんの少しだけより酸っぱい傾向がある。
【0163】
食品加工の量および使用する刃(すなわち鋭い金属の刃、鈍い金属の刃、プラスチックの刃)は異なるチキンナゲット食感をもたらす。さらに、許容できるチキンナゲットは多種多様なバイオマスの大きさから生産することができる。すなわち、バイオマスをナイフで切断し、軽く食品加工するかまたは高度に食品加工し、それでも許容できるチキン類似物を得ることができる。
【0164】
50~20:1:1の比率のフザリウム・オキシスポラムMK7株:鶏がらスープ:結合剤をおよそ66.6%のフザリウム・オキシスポラムMK7株:脂肪比と共に、または伴わずに使用した。適切な脂肪には、アヒル脂肪、ココナツバター、およびココアバターがある。混合後、混合物をおよそ30分間蒸気処理して結合剤をセットする。しかしながら、幾つかの結合剤は多少の時間を必要とし得る。その後追加でパン粉をまぶすことができ、得られるナゲットにかかる食料品として典型的な加工処理を施す。
【0165】
実施例14:朝食用ソーセージおよび/またはホットドッグおよび/またはバーガー
所望の風味とするために必要に応じて適当なスパイスミックスを大きさが縮小したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットに加える。これは、20%までのある量のフザリウム・オキシスポラムMK7株に対して10wt.%のスパイスミックスであり得、しばしば10フザリウム・オキシスポラムMK7株:1スパイスミックスの比率であり得、追加の成分、例えばオニオン、結合剤、およびココアバターのような脂肪を含む、または含まない。次いで、混合物を油で揚げて適当な量の水分を除く。次いで、所望の形状に成形し調理する前にブルグア、野菜の煮汁、ジャガイモ、等のような追加の成分を加えることができる。
【0166】
実施例15:アイスクリームおよびムース
平均のフィラメント長さが900ミクロン未満の粒度で、およそ1:3の比率のフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマット:水を生成させる。この混合物をもはや真菌の香りがしなくなるまで穏やかに加熱し、次いでおよそ4:1の比率のカシューと共に、および適宜適当な量のキサンタンゴムおよび/または香味料と共に使用して、加熱した後冷却してムースを生成してもよいミックスを生成させる。冷菓の場合は、ミックスを次にアイスクリーム撹拌機に入れ、撹拌後、凍結させて溶けない冷菓を形成する(
図14)。
【0167】
実施例16:トリュフバイオマットからのトリュフオイルの生産
上記のように増殖させたトリュフ(セイヨウショウロ属の種(Tuber sp.)バイオマットから油抽出物を調製することができる。1つの例において、トリュフバイオマットを、麦芽エキス、グルコースおよびペプトンを基本炭素源(原材料)として使用して7日間だけトレイで増殖させた。食用のトリュフマッシュルームはAmazon MarketplaceでIGB Trading LLCから購入し、4℃で貯蔵した。購入したトリュフから、トリュフ(無菌のカミソリの刃で切断した)の約3mm3の部分をMalt Extract Agar+0.01%クロラムフェニコール(細菌の増殖を抑制するために使用した)上に載せることによって、セイヨウショウロ属の種の真菌の純粋な培養物を調製した。Malt Extract Agarは、20gの麦芽エキス、20gのグルコース、1gのペプトンおよび20gの寒天を1Lの脱イオン水中で混合した後、30分間オートクレーブ処理し、50℃に冷却してから0.01%のクロラムフェニコールを加えることによって調製した。次いで無菌の混合物を9cmの直径のPetriプレートに注ぎ、冷却し、凝固させた。
【0168】
3日後真菌がトレイ上で増殖するのが観察された。4日間の増殖後、菌糸を無菌の微生物ループで採取し、新鮮な一連のMalt Extract Agar+クロラムフェニコールプレートに画線した。真菌を前記プレート上で5日間増殖させた後、菌糸を微生物ループで採取し、DNA配列決定により培養純度を確認するために使用した。DNA(FastDNA Spin Kit,MP Biomedicals)を抽出し精製し、メタゲノムのITS領域を配列決定した後Blast(NCBIデータベース)を使用して配列の系統発生的分類を行うことによって、確認を行った。
【0169】
Malt Extract Brothを調製するために、20gの麦芽エキス、20gのグルコースおよび1gのペプトンを1Lの脱イオン水中で混合し、殺菌した。また、微生物ループで掻き取った菌糸のスクレープを使用して、無菌のガーゼ材料で覆った無菌のバッフル付き振盪フラスコ中の50mLの無菌のMalt Extract Brothに接種した。無菌のガーゼを使用するのは、それが振盪フラスコに出入りするガスの交換を可能にするからである。次いで振盪フラスコを185rpmで5日間回転させた。次いで回転した培養物を使用して無菌の12.7×17.8cmのPyrex(登録商標)ガラストレイ中の350mLの無菌のMalt Extract Brothに接種した。この培養培地の接種材料密度は92.5%のブロスに対して7.5%の接種材料であった。トレイ内で7日増殖させた後、表面に生成した糸状バイオマットを液体培地から持ち上げることによってバイオマットを収穫した。収穫したバイオマットを40℃で48h乾燥した。これらの収穫したバイオマットから機械的プレスまたはヘキサンを使用する溶剤抽出によって脂質/油を抽出したが、他の抽出法を使用することができる。Yuvalが送る別の抽出方法も使用できる。
【0170】
実施例17:MK7粉
上に記載したように生成したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを使用して、粒度および粒度分布が標準的なベーキングパウダーと同様の乾燥粉末を作成した。この際、湿ったバイオマットを97℃のポットスチーマーで0.5時間蒸気処理し、室温に冷却し、平均脱水時間を4時間としてCuisinart脱水機(モデルDHR-20)で2~8時間脱水した。脱水時間は脱水機に負荷したバイオマスの量、脱水機内の空気の流れに影響する脱水機内のバイオマットの分布およびバイオマットの含水量(平均含水量はおよそ75%)および室温の関数である。脱水後の含水量は4~14%で変化し、脱水後の平均含水量は12%未満である。脱水したバイオマスを、コーヒーグラインダー(KRUPS,Electricコーヒーおよびスパイスグラインダー、ステンレス鋼刃F2034251)を使用して細かく粉砕されるまで大きさを縮小した。粉砕されたバイオマット粉の平均粒度は75ミクロン~120ミクロンの範囲であった。大きめの粒子の小部分、およそ5wt%は180ミクロンより大きい粒度を有していた。小さめの粒子の小部分、およそ5wt%は75ミクロンより小さい粒度を有していた。前記小さめの粒子は小さい粒子を長時間浮遊したままにできる大きさを外れていた。粒度は、大きさが縮小したバイオマットの100グラムのサンプルを5分間180μm、120μmおよび75μmの開口を有する篩にかけることによって決定した。より高い含水量は乾燥し粉砕したバイオマスの凝集を引き起こすことができるので、6%未満の脱水後および大きさの縮小後の含水量が好ましい。
【0171】
次いで、バイオマット粉を他の標準的な粉(King Arthur粉、Bob’s Red Mill Flour & Bob’s Red Mill Wheat Flour)への添加物として使用し、様々な焼いた食品を調製した。バイオマット粉を5wt%、10wt%、20wt%および30wt%で負荷したところ、最終的な焼いた食品の味覚、発酵、食感、外観または匂いに有害な影響はなかった。製品は、パン(7穀粒、白色および小麦)、ペーストリー(パータシュー)、クッキー、パスタおよびダンプリングを包含した。得られた製品は味覚試験に合格し、MK7粉を含有することは製品を味見した人に分からなかった。
【0172】
実施例18:MK7増量剤
上に記載したように生成したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを使用して、増量剤(すなわち、他の既存の食料品にMK7を添加することにより食品製品の総量を増大する)として肉および魚に添加するのに使用したバイオマスの粒子を作成した。湿ったバイオマットを97℃のポットスチーマーで0.5時間蒸気処理し、室温に冷却した。バイオマットの大きさを望ましい粒度分布に縮小した(すなわち、ナイフで細断するかまたはフードプロセッサーで処理する)。次いで、大きさが縮小したバイオマスをいろいろな食品製品に添加して、肉の増量剤の場合は肉または魚の増量剤の場合は魚の量を増やした。肉の増量の一例として、大きさが縮小したバイオマスの10%、20%、30%、40%および50%の添加をハンバーガーの肉に加えた。バイオマスの大きさの縮小を幾つかの異なるサイズ分布で評価した。小さめの粒度はより高密度でよりクリーム状の食感を生じる傾向があった。大きめの粒子は、より多くの食感、より多くの口当たりを有し、飲み込むまでにより多くのそしゃくを必要とする製品を生成する傾向があった。次いで増量した肉は、バイオマスを添加しなかったかのように加工処理された。ハンバーガーの増量の場合、スパイスまたは結合剤を加えてもよく、増量した肉はパテまたはミートボールに形成され、肉が消費者の所望の温度に調理されるまで調理された。調理方法はコンロの上、オーブン、油で揚げるおよびグリルを含んでいた。味覚試験は、全ての負荷レベルおよび添加したバイオマスの全てのサイズ分布で許容できる食品製品が生成したことを示していた。チキンおよびポークの増量も同様の負荷レベルで試したが、同様の調理および味見結果であった。
【0173】
魚の増量も10%、20%、30%および40%の負荷で立証された。加工処理したMK7を小さい粒子(1.0mm未満)から大きい粒子(2mmより大きい)の範囲の様々な異なるサイズ分布で添加することによってフィレおよび魚の肉だんごを生成させたが、味覚、色、匂いまたは全ての食体験に有害な影響はなかった。小さい粒度の添加の場合、得られた食料品はよりクリーム状の食感を有していた。大きい粒度の添加の場合、得られた食料品は飲み込むまでにより多くのそしゃくを必要とする大きめの粒子により特徴付けられるより堅い食感を有していた。味覚試験は、全ての試験した負荷およびサイズ分布レベルで許容できる食品製品が生成したことを示していた。
【0174】
実施例19:MK7ジャーキー
上記のように生成したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを使用して外観および味覚がミートジャーキー(すなわち、ビーフジャーキー、バッファロージャーキー、ポークジャーキー、チキンジャーキー、シチメンチョウジャーキー、等)と類似のキノコジャーキーを作成した。湿ったバイオマットを97℃のポットスチーマーで0.5時間蒸気処理し、室温に冷却した。バイオマットの大きさを通常ジャーキー製品に見出されるのと一致する大きさに縮小した。大きさが縮小したバイオマットピースを場合によって味付けし、Cuisinart脱水機(モデルDHR-20)で20~200分脱水したが、平均の脱水時間は40~120分であった。脱水時間は脱水機に負荷したバイオマスの量、脱水機内の空気の流れに影響する脱水機内のバイオマットの分布、バイオマットの含水量(平均の含水量はおよそ75%)、室温および最終製品の所望の含水量の関数である。脱水後の含水量は所望の製品特性に応じて8%~12%で変化した。場合によって、脱水前にバイオマスに穴をあけて、より容易に小さいピースに引き裂かれることにより消費が容易になる製品を生成した。バイオマスの穴あけは、バイオマスに穴をあけると共にフィラメントの網状組織を破壊してより容易に引き裂かれるようにするフォーク、ナイフまたは肉たたき具を使用することによって行った。多種多様のスパイス混合物(すなわち、ケージャン、チーズ、大豆、食用酢、ハーブ、サワークリームおよびオニオン、燻煙液、菜食主義者の肉フレーバー、等)を評価した。スパイス混合物は脱水前と脱水後の両方で評価した。脱水前にスパイスを入れたサンプルは、脱水後に処理したものより、より多くの味覚を提供し、より良好にバイオマスに付着した。得られたジャーキーは全て味覚試験に合格した。
【0175】
実施例20:キノコチップ
上記のように生成したフザリウム・オキシスポラムMK7株バイオマットを、外観および味覚がポテトチップまたはコーンチップと同様のチップに使用した。湿ったバイオマットを97℃のポットスチーマーで0.5時間蒸気処理し、室温に冷却した。バイオマットの大きさを、通常チップ製品に見出されるのと一致する大きさに縮小し、高度に加工処理してペーストにし、チップ様形状に形成した。次いでキノコチップをフライパンの熱い油(温度はおよそ380°Fに等しい)に褐色になるまで入れた。調理時間はバイオマスの形状の関数として変化したが、極めて速く、通常15秒未満内に調理された。生成した油で揚げたチップは、極めて口当たりがよく、油で揚げる前にバイオマスに加えたか、または塗布されたスパイスに応じて多種多様な味覚体験を提供することができるということが証明された。
【0176】
実施例21:密封してシールしたバイオリアクター:バイオマット
Pyrex(登録商標)ガラストレイ12.7×17.8cmならびに100×15mmのペトリ皿をベーストレイとして使用する。ガラストレイに液体栄養培地(必要であれば)および接種材料と混合した200mLの原材料を負荷する。トレイを、一体化したゴムガスケットでプラスチックフレームに取り付けたガス透過性の膜で覆いシールする。シールシステムは膜とガラストレイとの間に有効な無菌のシールを提供し、容易な組み立てならびにサンプル採取および収穫の目的のリアクターの開放/閉鎖を可能にする。
【0177】
異なる厚さ、細孔径および質感(表面粗さ)を有する一連の異なるガス透過性の膜材料を気液界面の材料として使用する。初めに、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリピロロン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー複合材および酢酸セルロース(例えば、Specialty Silicone Products,Inc.Corporate Technology Park,NY;Thermo-Fisher,Waltham,MA;Merck Millapore,Burlington,MA)を含めて8種のポリマー材料を使用する。3つの細孔径(0.2、0.45、1.0μm)を、微生物を除いてポリマー自体を通るガスの直接拡散に加えてガス伝達を容易にする材料に使用する。さらに、異なる粗い表面質感およびガス拡散のための曲がりくねった通路を有する無菌の布様材料を使用する。豊富なかかる材料が3M、Solvay、Ube IndustryおよびSaint-Gobainを始めとする他の企業から市販されている。
【0178】
異なる環境およびミッション条件に対するパラメーターを分析し決定するために、トレイを横切る深さの関数として温度、溶存酸素およびpHをモニターするようにトレイリアクターをセンサーに適合させる。センサーおよび膜を横断してリアクターに入るワイヤのための口を、膜材料に応じてシリコーン、エポキシ、および/または接着剤でシールする。膜に一体化された隔膜を、GC-MS、ICP-MS、ICおよび総C/Nの分析のための液体サンプルを集めるサンプル採取口として使用する。標準ならびに微小電極を使用して、規則的な時間間隔(例えば、6、12、24、36、48時間)でガス透過性の膜を横切る、およびバイオマット内のpHおよび電子受容体流(O2)をリアルタイムで測定する。流束情報は、膜のガス透過率ならびに最適な増殖および原材料変換に必要な電子供与体(有機物)および栄養素(無機物)の変化する濃度および分布にリアルタイムの代謝要求を一致させるために重要である。
【0179】
実施例22:機器を備えていない(un-instrumented)リアクター
機器を備えていないリアクターはモデル糸状有機体として真菌菌株フザリウム・オキシスポラムMK7を用いた増殖研究に使用される。MK7株は、し尿、食品廃棄物、シアノバクテリアおよび藻類バイオマス、ならびにリグノセルロース材料を含めて多種多様な原材料で育つことが示されている好極限性細菌の真菌である。MK7株バイオマットはまた、高い尿素レベル(少なくとも26g/L)ならびに高い溶解有機炭素、および浸透圧(300g/Lグリセロール)に対する耐性を有することも示されている。
【0180】
試験した原材料は、1)窒素の基本資源としての代用人尿、2)基本炭素源としての代用食品廃棄物(ドッグフード)、3)追加の炭素源としての植物性材料(リグノセルロース)を含む。全ての原材料を有機および無機構成成分、pH、および生物学的酸素要求量について広範囲に分析する。代用人尿は、NASAの科学者またはミッション廃棄物の研究に関わる科学者により推奨される培地組成を使用して調製される。
【0181】
いろいろなガス透過性の膜の有効性は、様々な原材料およびMK7接種材料を含有するトレイおよびペトリ皿の表面にいろいろな膜をシールした比較のバイオフィルム-バイオマット増殖研究を行うことによって測定される。膜を液体相と直接接触させ、ガス/蒸気外部環境とバイオフィルム-バイオマット/液体培地との間のガス交換の唯一の手段とする。時間と共にリアクターを破壊してサンプルを採取して増殖(乾燥バイオマス重量、バイオマット厚さ)を測定する。増殖速度を膜のない対照トレイと比較する。原材料および膜の組合せからなる要因実験設計を試験して原材料および膜の最良の合致を提供する。初期原材料pHおよび無機栄養素添加を含めて追加の変数も評価する。さらに、実験は原材料由来の生きている細菌細胞数を時間の関数として追跡してバイオマットの増殖に結び付いた消毒動力学を定量する。
【0182】
実施例23
最良のパフォーマンスの膜/原材料の組合せは追加の実験に使用される。選択されたガス透過性の膜を介してガスの流束を最初に定量化し、非生物的実験によりモデル化する。リアクターの外の蒸気相から液体相中へのO2の流束は初期傾斜方法を使用し、溶存酸素プローブおよび最初無酸素である培地を使用して測定される。二酸化炭素で飽和した液体相から蒸気相中への二酸化炭素の流束も初期傾斜方法を使用し、総無機炭素分析によりpHプローブ(炭酸の尺度)を用いて測定される。溶解した無機炭素相は最初0%、0.5%および5%の二酸化炭素である。データを移動フロント真菌増殖モデルに組み込んでより正確なパラメーターを得る。
【0183】
次いで、観察された最良のパフォーマンスの膜/原材料の組合せは、真菌増殖モデルにより支援される詳細な生物最適化実験に使用される。ガラストレイおよびペトリ皿の両方が使用される。小さめのペトリ皿は経時的なバイオマスおよび液体分析のための集約的な破壊的サンプル採取を容易にする。加えた炭素および栄養素のほとんど全てが最小の廃棄物でバイオマスに変換される条件の創成が確認される。ここで、炭素および電子流ならびにリアクター条件は、電子供与体当たり生産されたバイオマスおよび電子受容体収率当たり生産されたバイオマスを測定することにより評価される。バイオマスの元素組成は、商業サービス(例えばMicroanalysis Inc.,Wilmington DE)を使用して物質収支を満たすように測定される。目的のパラメーターには、液体相の容量ならびに利用可能な原材料および栄養素(炭素基質、窒素源、無機栄養素、酸素)の濃度がある。得られるデータは、定量的な比較、そして最終的に増殖条件の最適化を容易にする真菌マット増殖の移動フロント数学モデルに使用される。