(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119844
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】相溶化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/06 20060101AFI20220809BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220809BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20220809BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L81/06
C08K3/26
C08L81/02
C08G81/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022081352
(22)【出願日】2022-05-18
(62)【分割の表示】P 2018555723の分割
【原出願日】2017-04-28
(31)【優先権主張番号】62/329,522
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16187800.4
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】モンタツ, マリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブッシェルマン, コリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】サティッチ, ウィリアム イー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)とポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)の相溶化された組成物を提供する。
【解決手段】i)ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)に対しii)ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を0.2~20の重量比で含みさらにiii)組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0.05~2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を含む組成物。ただし、PAESの少なくとも一部は反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
i)ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS);
ii)少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES);および
iii)前記組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩
を含み、
前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)との重量比は、0.2~20の範囲である、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、溶媒を含まないか、または2重量%(前記組成物の全重量に基づいて)を超えない量で溶媒を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)が、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリフェニルスルホン(PPSU)からなる群から選択される、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、またはそれらの組み合わせ、好ましくは炭酸カリウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩が、前記ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて約0.1~約0.5重量%の範囲の量の炭酸カリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
- 前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)との重量比が、0.5~5の範囲であり、かつ
- 前記ポリマー組成物が、前記組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0.15~0.4重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)が、酸洗浄ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
pKa≦7.5を有する酸成分、好ましくは無機酸成分、より好ましくはNaH2PO4をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
i)前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)が、反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)であるか、または
ii)前記ポリマー組成物が、少なくとも1種の反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)をさらに含み
前記反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)が、前記反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)の5μeq/gよりも大きい濃度で-OH末端基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、
- 分散粒子当たり≦約4μm2の表面積を有する分散相、
または
- 単一ポリマーのリボンの平均幅が約2μm以下である、共連続相であって、前記平均幅は、リボン幅の10の無作為測定値を採り、最長および最短測定値を捨て、残りの測定値の総和を8で除すことによって計算される、共連続相
のいずれかを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、ポリエーテルイミド(PEI)を含まないか、もしくは実質的に含まず、またはエポキシを含まないか、もしくは実質的に含まず、好ましくはポリエーテルイミド(PEI)とエポキシの両方ともを含まないか、または実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリマー組成物を作製する方法であって、
i)ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS);
ii)少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES);および
iii)前記組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩
を溶融混合する工程を含み、
- 前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)との重量比は、0.2~20の範囲であり、かつ
- 前記ポリマー組成物は、溶媒を実質的に含まず、好ましくは溶媒を含まない、方法。
【請求項13】
(a1)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)、前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、および前記アルカリ金属炭酸塩を接触させて、第1の初期混合物を形成する工程;
(a2)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)を前記アルカリ金属炭酸塩と接触させて、第2の初期混合物を形成し、その後、前記第2の初期混合物を前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)と接触させて、第2の混合物を形成する工程;
(a3)前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を前記アルカリ金属炭酸塩と接触させて、第3の初期混合物を形成し、その後、前記第3の初期混合物をポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と接触させて、第3の混合物を形成する工程;または
(a4)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)および前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン(PAES)と接触させて、第4の初期混合物を形成し、その後、前記第4の初期混合物をアルカリ金属炭酸塩と接触させて、第4の混合物を形成する工程;ならびに
(b)任意選択で、前記第1の初期混合物、前記第2の混合物、前記第3の混合物、または前記第4の混合物を、pKa≦7,5を有する酸成分と接触させる工程
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12および13のいずれか一項に記載の方法によって作製されたポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1~11、および14のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む、造形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年4月29日出願の米国仮特許出願第62/329,522号および2016年9月8日出願の欧州特許出願第16187800.4号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)および少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を含む、高性能相溶化ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーは、望ましい特性を有する新規な組成物を達成するためにブレンドされてもよいが、しかしながら、大半のポリマーは、互いに非混和性である。ポリマーをブレンドする試みはしばしば、ポリマーが互いに非混和性である場合、不均一多相組成物をもたらす。そのような組成物は、いくつかの熱的転移温度(Tg、Tm)を示し、通常は不良な機械的特性を示し、剥離および/または審美的欠陥を被る。
【0004】
事実、特定のブレンドの機械的特性および処理の容易さは、ポリマー成分の相溶性の程度に依存する。主要なポリマー成分は、通常は連続相またはマトリックスと称されるが、一方で主要でないポリマー成分は、典型的には分散相と定義される。相溶性の程度は、連続相中の分散相の寸法、およびマトリックスと分散相との間の接着のレベルで特徴付けることができる。ある特定の非常に非混和性のブレンドは、高いダイスウェル(die swell)のために通常の操作条件で押し出すことが不可能であり、したがって、商業的に利用可能でない。
【0005】
PPSは、非常に良好な耐化学薬品性および低い溶融粘度を有することが公知であり、PAESsは、優れた機械的特性および良好な熱安定性を有することが公知である。したがって、これらのポリマーをブレンドして、それらの特性の組み合わせを達成することが望ましい。しかしながら、PPSとPAESとのブンレドは、常に非常に相溶性であるとは限らず、一部の場合に、これらのポリマーのブレンド中の個別ポリマーの大きなドメインの存在、および相間の不良な付着のために、不良な引張り特性を示す。
【0006】
したがって、増加した相溶性を有する、PPSとPAESsとの新規なブレンドに対する必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1(
図1A)および比較例11(
図1B)の組成物の透過型電子顕微鏡法(TEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願人は今や、意外なことに、高度に非混和性のポリマー、例えば、ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)およびポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)のブレンドを含めて、増加した相溶性を有するポリマーブレンドを調製することが可能であることを発見した。
【0009】
例示的な実施形態は、PPS、少なくとも1種のPAES、および組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を含むポリマー組成物に関する。好ましくは、PPSと少なくとも1種のPAESとの重量比は、0.2~20の範囲である。
【0010】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、溶媒を含まないか、または実質的に含まず、すなわち、組成物は、溶媒を含まず、2重量%(組成物の全重量に基づいて)を超えない、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満の量で溶媒を含む。
【0011】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、ポリエーテルイミド(PEI)を含まないか、または実質的に含まず、すなわち、組成物は、PEIを含まず、2重量%(組成物の全重量に基づいて)を超えない、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満の量でPEIを含む。
【0012】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、エポキシを含まないか、または実質的に含まず、すなわち、組成物は、エポキシを含まず、2重量%(組成物の全重量に基づいて)を超えない、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満の量でエポキシを含む。
【0013】
明瞭さのために、本出願の全体を通して、
- 用語「アルカリ金属炭酸塩」には、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属炭酸塩が高温で処理中にその場で誘導され得る任意の試薬、例えば、アルカリ金属炭酸水素塩が含まれる;
- 用語「溶媒」は、ポリマー組成物中のポリマーの少なくとも1種が少なくとも部分的に溶解する液体を意味する;
- 「溶媒を実質的に含まない」は、2重量%未満、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満または0.1重量%未満(組成物の全重量に基づいて)の溶媒を意味する;
- 「実質的に同時に」は、30秒以内を意味する;
- 「ポリエーテルイミド(PEI)を実質的に含まない」は、2重量%未満、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満(組成物の全重量に基づいて)のポリエーテルイミド(PEI)を意味する;
- 「エポキシを実質的に含まない」は、2重量%未満、例えば、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満(組成物の全重量に基づいて)のエポキシを意味する;
- 「rPAESを実質的に含まない」は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、2重量%未満のrPAESを意味する;
- 「ダイスウェルを実質的に含まない」は、5%未満のダイスウェルを意味する;
- 用語「ハロゲン」には、特に断りのない限り、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。
【0014】
一般に、PPSおよびPAESは、5,000g/モル~150,000g/モル、好ましくは10,000g/モル~100,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0015】
本出願において、
- いずれの記載も、具体的実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、およびそれらと交換可能である;
- 要素または成分が、列挙された要素または成分の一覧に含まれ、および/またはそれらから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連実施形態において、要素または成分はまた、個別の列挙された要素もしくは成分のいずれか一つであり得るか、または明示的に列挙された要素もしくは成分の任意の2種以上からなる群から選択されることもでき;要素または成分の一覧中に列挙されたいずれかの要素または成分は、そのような一覧から省略されてもよい;ならびに
- 端点による数値範囲の本明細書でのいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含されるすべての数、ならびに範囲の端点および相当物を含む。
【0016】
ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)
本明細書で使用される場合、「ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)」は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(L):
の繰り返し単位(R
pps)である、任意のポリマーを表す。
【0017】
好ましくは、PPS中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは、すべては、繰り返し単位(Rpps)である。
【0018】
PPSは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCにより商品名Ryton(登録商標)PPSの下で製造および販売されている。
【0019】
PPSは、酸洗浄されても、または酸洗浄されなくてもよい。一部の実施形態において、PPSは、酢酸洗浄PPSである。
【0020】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)
本発明の目的のために、「ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)」は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(K):
[式中:
(i)それぞれのRは、互いに等しいかまたは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、および第四級アンモニウムから選択され;
(ii)それぞれのhは、互いに等しいかまたは異なり、0~4の範囲の整数であり;
(iii)Tは、結合、スルホン基[-S(=O)
2]、および基-C(R
j)(R
k)-(ここで、R
jおよびR
kは、互いに等しいかまたは異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、および第四級アンモニウムから選択され、R
jおよびR
kは、好ましくはメチル基である)からなる群から選択される]
の繰り返し単位(R
PAES)である任意のポリマーを表す。
【0021】
好ましくは、PAES中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは、すべては、繰り返し単位(RPAES)である。
【0022】
好ましい実施形態において、PAESは、ポリフェニルスルホン(PPSU)である。本明細書で使用される場合、「ポリフェニルスルホン(PPSU)」は、その繰り返し単位の50モル%超が、式(K’-A):
の繰り返し単位である、任意のポリマーを表す。
【0023】
好ましくは、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは、すべては、式(K’-A)の繰り返し単位である。
【0024】
PPSUは、公知の方法によって調製され得、特にSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRADEL(登録商標)PPSUとして入手可能である。
【0025】
一部の実施形態において、PAESは、ポリエーテルスルホン(PES)である。本明細書で使用される場合、「ポリエーテルスルホン(PES)」は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(K’-B):
の繰り返し単位である、任意のポリマーを表す。
【0026】
好ましくは、PES中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは、すべては、式(K’-B)の繰り返し単位である。
【0027】
PESは、公知の方法によって調製され得、特にSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からVERADEL(登録商標)PESUとして入手可能である。
【0028】
一部の実施形態において、PAESは、ポリスルホン(PSU)である。本明細書で使用される場合、「ポリスルホン(PSU)」は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(K’-C):
の繰り返し単位である、任意のポリマーを表す。
【0029】
好ましくは、PSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、最も好ましくは、すべては、式(K’-C)の繰り返し単位である。
【0030】
PSUは、公知の方法によって調製され得、特にSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUDEL(登録商標)PSUとして入手可能である。
【0031】
優れた結果は、PAESが、PPSU、PES、PSU、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される場合に得られた。
【0032】
アルカリ金属炭酸塩
ポリマー組成物は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%、約0.1~約1.8重量%、約0.1~約1.6重量%、約0.1~約1.5重量%、約0.1~約1.3重量%、約0.1~約1.0重量%、約0.1~約0.8重量%、約0.1~約0.5重量%の範囲の量で少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を含む。一部の実施形態において、アルカリ金属炭酸塩の量は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.1~約0.5重量%、約0.2~約0.5重量%、約0.4~約0.5重量%の範囲である。一部の実施形態において、アルカリ金属炭酸塩の量は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下である。
【0033】
アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、および炭酸リチウムから選択されてもよい。炭酸カリウムが好ましい。2種以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物が使用されてもよい。
【0034】
一部の態様において、粒子サイズD50(メジアン直径または粒子サイズ分布の中間値)は、2ミクロン~1000ミクロン、好ましくは2~500ミクロン、最も好ましくは3~200ミクロンの範囲である。
【0035】
任意選択の反応性ポリマー
PPSおよび少なくとも1種のPAESは、反応性形態(すなわち、反応性ポリマー)または非反応性形態のいずれかで存在してもよい。
【0036】
それらの反応性形態では、ポリマーは、グラム当たり少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも50マイクロ当量(μeq/g)のヒドロキシル(-OH)またはチオール(-SH)末端基を含む。そのような反応性ポリマーの一例は、反応性ポリエーテルスルホン(rPES)であり、これは、VIRANTAGE(登録商標)PESUとして、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能である。
【0037】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、PPSおよび少なくとも1種のPAESに加えて、少なくとも1種の反応性ポリ(アリールエーテルスルホン)(rPAES)を含む。rPAESは、好ましくは反応性ポリスルホン(rPSU)、反応性ポリエーテルスルホン(rPES)および反応性ポリフェニルスルホン(rPPSU)から選択される。
【0038】
好ましくは、ポリマー組成物中のrPAESの全量は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0~60重量%、1~50重量%、5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%、最も好ましくは約10重量%の範囲である。
【0039】
それらの非反応性形態では、PPSおよびPAESは、1種以上の非反応性末端基を含む。非反応性末端基は、好ましくは-Cl、-F、または-O-CH3である。好ましくは、非反応性ポリマーは、グラム当たり少なくとも20、好ましくは50マイクロ当量(μeq/g)超の非反応性末端基を含む。
【0040】
一部の態様において、ポリマー組成物は、rPAESを含まなくても、または実質的に含まなくてもよい。
【0041】
PPSは、好ましくはその反応性形態で存在する。本明細書で使用される場合の略語「PPS」には、反応性と非反応性の両方のポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)が含まれる。
【0042】
任意選択の補強性充填剤
幅広く選択した補強性充填材が、ポリマー組成物に添加されてもよい。それらは、好ましくは繊維状および粒子状充填材から選択される。繊維状補強性充填材は、平均長さが幅および厚さの両方よりも実質的に大きい、長さ、幅および厚さを有する材料であると本明細書で見なされる。好ましくは、そのような材料は、少なくとも5の、長さと最小の幅および厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。好ましくは、補強性繊維のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。粒子状充填剤は、多くても5、好ましくは多くても2のアスペクト比を有する。
【0043】
好ましくは、補強性充填剤は、鉱物充填剤、例えば、タルク、マイカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム;ガラス繊維;炭素繊維、炭化ホウ素繊維;ウォラストナイト;炭化ケイ素繊維;ホウ素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)などから選択される。
【0044】
補強性充填剤は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の量で存在する。
【0045】
補強性充填材はまた、好ましくは、ポリマー組成物の全重量に基づいて、好ましくは多くても60重量%、より好ましくは多くても50重量%、さらにより好ましくは多くても40重量%の量で存在する。
【0046】
好ましくは、補強性充填剤の量は、ポリマー組成物の0.1重量%~60重量%、より好ましくは5重量%~50重量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%の範囲である。一部の実施形態によれば、ポリマー組成物は繊維充填剤を含まない。あるいは、ポリマー組成物は、粒子状充填剤を含まなくてもよい。ある特定の実施形態では、ポリマー組成物は、好ましくは補強性充填剤を含まない。
【0047】
追加的な任意選択の原料
一部の態様において、ポリマー組成物は、PPS、少なくとも1種のPAESおよびアルカリ金属炭酸塩からなるか、または本質的になるが;しかしながら、他の態様において、ポリマー組成物は、1種以上の追加的添加剤を含んでもよい。
【0048】
ポリマー組成物は、他の原料、例えば、着色剤、例えば、染料および/もしくは顔料、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、例えば、有機亜リン酸塩および亜ホスホン酸塩、酸捕捉剤、加工助剤、核形成剤、潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、ならびに/または導電性添加剤、例えば、カーボンブラックをさらに任意選択で含んでもよい。
【0049】
1種以上の他の原料が存在する場合、それらの全重量は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、好ましくは20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。
【0050】
意外なことに、pKa<7.5、好ましくはpKa<7を有する、有機および無機酸成分は、本発明のポリマー組成物の溶融粘度を安定化することができることが発見された。pKa<7.5を有する有機および無機成分の非限定的な例は、リン酸水素ナトリウム(NaH2PO4)、クエン酸一ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、およびフタル酸水素ナトリウムである。pKa<7を有する無機成分、例えば、NaH2PO4などが好ましい。優れた結果は、以下のとおりのpKa、すなわち、2.5<pKa<7.5、好ましくは3<pKa<7を有する有機および無機成分で得られた。pKa<7.5を有する有機または無機酸成分は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.2重量%~1重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0051】
例示的なポリマーブレンド
好ましいポリマー組成物を表1に示す。それぞれのポリマー組成物は、列挙されたものに加えて他の原料を含んでもよい。それぞれの好ましいポリマー組成物は、0.05~約2重量%の範囲の量で、または本明細書に開示されるとおりの別の量で、アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムも含む。それぞれの好ましいポリマー組成物は、本明細書に記載されるとおりの酸成分を任意選択で含んでもよい。
【0052】
【0053】
ポリマー組成物では、PPS、PAES、およびrPAESのそれぞれの濃度は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量の0重量%、好ましくは少なくとも1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%から独立して選択される。
【0054】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約85重量%、好ましくは約75重量%、より好ましくは約65重量%、最も好ましくは約50重量%のPPSまたはPAES、および約15重量%、好ましくは約25重量%、より好ましくは約35重量%、最も好ましくは約50重量%の、それぞれ、PPSまたはPAESの他方を含む。
【0055】
一部の態様では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物中のポリマーの全重量に基づいて、(i)15重量%~85重量%、好ましくは25~75重量%、30~70重量%、40~60重量%、45~55重量%、最も好ましくは約45重量%のPPS、(ii)85~15重量%、好ましくは75~25重量%、70~30重量%、60~40重量%、55~45重量%、最も好ましくは約45重量%のPAES、および(iii)1重量%~20重量%、好ましくは約10重量%のrPAESを含む。
【0056】
好ましくは、PPSと少なくとも1種のPAESとの重量比は、0.2~20、0.3~15、0.4~10、0.5~5、最も好ましくは1~3の範囲である。
【0057】
一部の実施形態において、PPSと少なくとも1種のPAESの量との重量比は、0.5~5、好ましくは1~3の範囲であり、ポリマー組成物は、組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0.15~0.4重量%、好ましくは0.2~0.4重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムを含む。
【0058】
一部の実施形態において、ポリマー組成物は、
i)PPS;
ii)PPSU;および
iii)組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩
を含み、
ここで、PPS/PPSUの重量比は、0.2~20の範囲である。
【0059】
ポリマー組成物の例示的な特性
本発明のポリマー組成物は、連続相またはマトリックス中に分散されている分散相を含んでもよい。分散相の一例は、
図4Aに示される。
【0060】
一部の実施形態において、分散粒子当たりの平均表面積は、好ましくは約4μm2以下、約3μm2以下、約2μm2以下、約1μm2以下、約0.5μm2以下、約0.25μm2以下である。
【0061】
一部の実施形態において、分散相の粒子の最大直径は、≦3μm、好ましくは≦2μm、≦1μm、0.8μm、≦0.6μm、≦0.4μm、最も好ましくは≦0.1≦μmである。
【0062】
代替の実施形態において、ポリマーブレンドは、透過型電子顕微鏡法(TEM)により見られる場合にポリマー成分の連続リボンの存在によって特徴付けられる共連続相を含んでもよい。そのような実施形態において、リボンの平均幅は、好ましくは約3μm以下、より好ましくは約2μm以下であり、ここで、平均幅は、リボン幅の10の無作為測定値を採り、最長および最短測定値を捨て、残りの測定値の総和を8で除すことによって計算される。
【0063】
一部の実施形態において、本発明のポリマー組成物は、25~50ft-lbの範囲の、ASTM D3763に従うDynatup Impact全エネルギーを示す。
【0064】
ポリマー組成物は、少なくとも2つの異なるポリマーのそれぞれに対応する少なくとも2つの異なるガラス転移温度(Tg)を示してもよいが、しかしながら、これらのTgは、ポリマー組成物中に存在していない場合の同じポリマーのTgと比較して異なっていても(すなわち、シフトされていても)よい。一部の実施形態において、ポリマー組成物中のそれぞれのTg間の差(ΔTg)は、少なくとも0.5℃、好ましくは少なくとも1℃、より好ましくは5~50℃、さらにより好ましくは5~10℃である。
【0065】
ある特定の実施形態において、ポリマー組成物は、ポリマー組成物が押出機から溶融物として押し出されるときにダイスウェルを含まないか、または実質的に含まず、溶融物の温度は、300~430℃の範囲である。
【0066】
ポリマー組成物を作製する方法
一部の実施形態において、本発明は、i)PPS、ii)少なくとも1種のPAES、およびiii)組成物中のポリマーの全重量に基づいて、約0.05~約2重量%の少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を溶融混合することによって、本明細書に記載されるポリマー組成物を作製する方法を含む。好ましくは、PPSと少なくとも1種のPAESとの重量比は、0.2~20、好ましくは0.3~15、0.4~10、0.5~5、最も好ましくは1~3の範囲である。好ましくは、ポリマー組成物は、溶媒を含まないか、または実質的に含まない。PPSおよびPAESは、独立して反応性または非反応性であってもよい。PPSは、好ましくは反応性ポリマーである。PPSは、酸洗浄されても、または酸洗浄されなくてもよい。
【0067】
混合物の成分は、任意の順序、任意の量またはそれらの全量の任意の割合で添加または混合されてもよく、別個または同時に混合されてもよい。
【0068】
ポリマー組成物の調製は、熱可塑性成形組成物の調製に適切である任意の公知の溶融-混合方法によって行うことができる。そのようなプロセスは、ポリマーの溶融物を形成するために半結晶性ポリマーの溶融温度を超えて、および/または非晶性ポリマーのTgを超えてポリマーを加熱することによって行われてもよい。一部の実施形態において、加工温度は、約250~450℃、好ましくは280~420℃の範囲である。好ましくは、加工温度は、ポリマー組成物中の最高Tgポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも少なくとも15℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃高く、および/またはポリマー組成物中の最高Tmポリマーの溶融温度(Tm)よりも少なくとも15℃高い。
【0069】
ポリマー組成物の調製のためのプロセスの一部の態様おいて、ポリマー組成物を形成するための成分は、溶融混合装置に供給され、その装置で溶融混合される。適当な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機である。好ましくは、押出機のスロートまたは溶融物に、のいずれかで、押出機に所望の成分を投入するための手段が取り付けられた押出機が使用される。好ましくは、押出機は、押出プロセス中に異なるバレルで溶融物に投入すること可能にする1つ以上のポートを備えている。
【0070】
成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物もしくは顆粒混合物として同時に供給されてもよく、または別個に供給されてもよい。
【0071】
一部の実施形態において、ポリマーおよびアルカリ金属炭酸塩のすべては、押出機のスロートに、好ましくは同時または実質的に同時に添加される。他の態様において、ポリマーの1種以上が、アルカリ金属炭酸塩と一緒に押出機のスロートに添加されてもよく、1種以上の他のポリマーが、その後に押出機のバレルで溶融物に添加される。例えば、PPSおよびrPAES、好ましくはrPESがアルカリ金属炭酸塩と一緒に押出機のスロートに添加されてもよく、PAESが、その後に押出機の下流バレルで添加されてもよい。添加される場合、酸成分は、押出機のスロートで、または押出機のいずれかのバレルで溶融物に添加されてもよい。好ましくは、酸成分は、下流バレルで溶融物に添加され、その結果、それは、溶融物が押し出される直前に溶融物に接触する。好ましくは、酸成分は、アルカリ金属炭酸塩の添加後の時点で添加される。
【0072】
例示的な実施形態において、複数パス押出しが行われてもよい。複数パス押出しでは、第1のパスからの押出物は、押出機中に、好ましくはスロートにおいて再導入され、その結果、それは押出機をもう一度通過する。複数パス押出しでは、2度、3度、4度、またはそれ以上のパスが行われてもよく、ポリマー、アルカリ金属炭酸塩、酸成分、または他の原料は、いずれかのパスで押出機ライン上のいずれの点で添加されてもよい。例えば、PPSが、アルカリ金属炭酸塩と一緒に押出機のスロートに添加されてもよく、次いで、第1のパスからの押出物が少なくとも1種のPAESの添加とともに押出機に再循環されてもよく、そして酸成分が第2のパスの最後に向けて添加され得る。あるいは、第2のパスから得られる押出物が、第3のパスのために再循環されてもよく、その間に、例えば、酸成分および/または充填剤材料が、最終生成物の押出し前に溶融物に添加されてもよい。
【0073】
一部の態様において、少なくとも2度のパスが行われてもよく、成分は、押出物に添加され、および/または押出物に対してプロセスが行われてもよく(例えば、混合)、その後、それは、1度以上のさらなるパスのために押出機に再循環される。
【0074】
押出機は、任意の適当な速度で操作されてもよい。押出機速度および押出機バレルの温度は、一定であっても、変えられてもよい。好ましくは、押出機スクリューは、約100~約900、好ましくは約200~約500rpmで回転されるが;しかしながら、速度および温度は、ブレンドされる特定のポリマー組成物に基づいて調整されてもよい。
【0075】
本明細書で使用される場合の「全滞留時間」は、もしあれば、最長滞留成分が、もしあれば、複数のパスを含めて、押出機で過ごす合計時間を意味する。全滞留時間は、好ましくは、約15秒~4分、好ましくは約30秒~約2分の範囲である。
【0076】
本明細書に記載されるポリマー組成物は、有利にはペレットの形態で提供され、これは、当技術分野で公知の射出成形または押出成形で使用されてもよい。
【0077】
例示的な実施形態は、
(a1)PPS、少なくとも1種のPAES、およびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第1の初期混合物を形成する工程;
(a2)PPSをアルカリ金属炭酸塩と接触させて、第2の初期混合物を形成し、その後、第2の初期混合物を少なくとも1種のPAESと接触させて、第2の混合物を形成する工程;
(a3)少なくとも1種のPAESをアルカリ金属炭酸塩と接触させて、第3の初期混合物を形成し、その後、第3の初期混合物をPPSと接触させて、第3の混合物を形成する工程;または
(a4)PPSを少なくとも1種のPAESと接触させて、第4の初期混合物を形成し、その後、第4の初期混合物をアルカリ金属炭酸塩と接触させて第4の混合物を形成する工程;ならびに
(b)任意選択的に第1の初期混合物、第2の混合物、第3の混合物、または第4の混合物を本明細書で記載されるとおりの酸成分と接触させる工程
を含む方法に関する。
【0078】
代替の実施形態において、本方法は、
(a1)PPS、少なくとも1種のPAES、rPAESおよびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第1の初期混合物を形成する工程;
(a2)PPS、rPAES、およびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第2の初期混合物を形成し、その後、第2の初期混合物を少なくとも1種のPAESと接触させて、第2の混合物を形成する工程;
(a3)少なくとも1種のPAES、rPAES、およびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第3の初期混合物を形成し、その後、第3の初期混合物をPPSと接触させて、第3の混合物を形成する工程;または
(a4)PPS、少なくとも1種のPAES、およびrPAESを接触させて、第4の初期混合物を形成し、その後、第4の初期混合物をアルカリ金属炭酸塩と接触させて、第4の混合物を形成する工程;ならびに
(b)任意選択で、第1の初期混合物、第2の混合物、第3の混合物、または第4の混合物を、本明細書に記載されるとおりの酸成分と接触させる工程
を含む。
【0079】
一部の実施形態において、本方法は、
(a1)PPS、少なくとも1種のPAES、およびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第1の初期混合物を形成し、その後、第1の初期混合物をrPAESと接触させて、第1の混合物を形成する工程;
(a2)PPSおよびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第2の初期混合物を形成し、その後、第2の初期混合物を少なくとも1種のPAES、およびrPAESと接触させて、第2の混合物を形成する工程;
(a3)少なくとも1種のPAESおよびアルカリ金属炭酸塩を接触させて、第3の初期混合物を形成し、その後、第3の初期混合物をPPSおよびrPAESと接触させて、第3の混合物を形成する工程;または
(a4)PPSおよび少なくとも1種のPAESを接触させて、第4の初期混合物を形成し、その後、第4の初期混合物をアルカリ金属炭酸塩およびrPAESと接触させて、第4の混合物を形成する工程;ならびに
(b)任意選択で、第1の混合物、第2の混合物、第3の混合物、または第4の混合物を、本明細書に記載されるとおりの酸成分と接触させる工程
を含む。
【0080】
ポリマー組成物を含む造形物品
例示的な実施形態はまた、上記のポリマー組成物を含む物品を含む。
【0081】
物品は、任意の適当な溶融加工方法を使用してポリマー組成物から作製されてもよい。特に、それらは、射出成形、押出成形、ロト成形、またはブロー成形によって作製されてもよい。
【0082】
ポリマー組成物は、多種多様な最終使用に有用な物品の製造によく適し得る。
【0083】
本発明は、以下に、非限定的な実施例によって以下のセクションでより詳細に例証される。
【0084】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例0085】
実施例1~実施例10および比較例11~比較例14
実施例1~実施例10:K2CO3を含む、PPSUとPPSとのブレンド
比較例11~比較例14:K2CO3なしの、PPSUとPPSとのブレンド
【0086】
材料:
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRadel(登録商標)PPSU R-5900 NT
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QA200N
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QA250N
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QC160N
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QC220N
- K2CO3、UNID EF-90
【0087】
コンパウンディング:
48:1のL/D比を有するCoperion(登録商標)ZSK-26共回転二軸押出機を200~300rpmおよび12~18kg/時間で使用して、ブンレドをコンパウンドした。バレル温度設定点は、ゾーン1からゾーン6までについて360℃、ゾーン7からゾーン12までについて340℃、およびダイで360℃であった。
【0088】
測定:
溶融粘度は、360℃および400l/秒でASTM D5630に従って測定した。
【0089】
ブレンドの形態学は、透過型電子顕微鏡法(TEM)により調査して、分散相ドメインの最大直径を見出した。
【0090】
結果:
ブレンド組成物および測定値を以下の表2に示す。ブレンドの形態学は、
図1~
図7のTEM画像で示す。
【0091】
【0092】
実施例1、実施例2、実施例3、および実施例4を、比較例11、比較例12、比較例13、および比較例14とそれぞれ比較すると(
図1~
図4も参照)、予想外にも、0.4重量%のK
2CO
3の添加が、K
2CO
3が添加されたブレンドについてはるかにより小さい分散相ドメインサイズ(≧2μmと比較して≦0.5μm)および増加した溶融粘度により証明されるとおりに、PPSUとPPSとのブレンドの相溶性を著しく改善することが見出された。実施例1および実施例2と比較例11および比較例12との比較により、改善された相溶性は、連続相としてPPSUおよび分散相としてPPSを有するPPSU豊富ブレンドで達成されることが示されるが、一方で、実施例3および実施例4と比較例13および比較例14との比較により、改善された相溶性は、連続相としてPPSおよび分散相としてPPSUを有するPPS豊富ブレンドでやはり達成されることが示される。
【0093】
実施例5から実施例10まで(
図5~
図7)により、PPS:PPSU比およびK
2CO
3の量を変えることの効果が例証される。
【0094】
実施例15~実施例18および比較例19~比較例22
実施例15~実施例18:PPSU、PPS、およびK2CO3のブレンド、ここで、PPSは、酢酸で洗浄された。
【0095】
比較例19~比較例22:PPSU、PPS、およびK2CO3のブレンド、ここで、PPSは、酢酸で洗浄されなかった。
【0096】
材料:
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRadel(登録商標)PPSU R-5900 NT
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QA250N;酢酸洗浄
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QC220N;酢酸カルシウム洗浄
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS PR34;水洗浄
- K2CO3、UNID EF-90
【0097】
コンパウンディングおよび測定
ブレンドを実施例1におけるとおりにコンパウンドした。
【0098】
溶融粘度および形態学の測定は、実施例1におけるとおりに行った。
【0099】
結果:
ブレンド組成物および測定値を以下の表3に示す。
【0100】
【0101】
実施例15、実施例16、および実施例17を、比較例18、比較例19、比較例20、および比較例21と比較すると(
図8および
図9も参照)、酢酸で洗浄されたPPSポリマーの使用は、予想外にも、酢酸と接触されたPPSポリマーを使用するブレンドについてのより小さい分散相ドメインサイズにより証明されるとおりに、PPSUとPPSとのブレンドの相溶性を改善したことがわかる。それぞれの場合、水または酢酸カルシウムで洗浄されたPPSポリマーを使用するブレンドについての最大分散相ドメインサイズは、意外なことに、酢酸で洗浄されたPPSポリマーを使用するブレンドについての最大分散相ドメインサイズよりも大きかった。
【0102】
実施例22~実施例26
比較例22:PPS/PESのブレンド
実施例23~実施例27:PPS/PES/K2CO3のブレンド
組成物は、表4に記載する。
【0103】
材料:
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのVeradel(登録商標)PESU 3300ULT
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)PPS QA200N
- Howard Industries,Inc.からのK2CO3 LH-90
【0104】
コンパウンディング:
表4の組成物を、48:1のL/D比を有する、26mm直径Coperion(登録商標)ZSK-26共回転部分交差反転式二軸押出機を使用して、溶融コンパウンディングに供した。バレルセクション2から12までおよびダイは、以下のとおりの設定点温度に加熱した:
バレル2~6:360℃
バレル7~12:350℃
ダイ:360℃
【0105】
それぞれの場合、樹脂および添加剤は、範囲30~40ポンド/時間の処理量速度で重量式フィーダを使用してバレルセクション1およびバレルセクション5で供給した。押出機は、ほぼ200RPMのスクリュー速度で操作した。真空を約27インチの水銀の真空レベルによってバレルゾーン10でかけた。単一ホールダイをすべてのコンパウンドについて使用し、ダイを出る溶融ポリマーストランドを水トラフで冷却し、次いで、ペレタイザで切断した。
【0106】
射出成形:
射出成形をポリマー組成物に対して行って、3.2mm(0.125インチ)厚さのASTM引張りおよび曲げ試験片、ならびに機械的特性試験のための4×4×0.125インチプラークを生成させた。タイプI引張りASTM試験片および4×4×0.125インチプラークを、以下のバレルおよび型でのおよその温度条件を使用して射出成形した:
リアゾーン:680°F
ミドルゾーン:680°F
フロントゾーン:700°F
ノズル:700°F
型:285°F
【0107】
測定:
機械的特性は、Dynatup衝撃試験(D-3763:高速度穴あけ多軸衝撃(High Speed Puncture Multiaxial Impact))のための射出成形0.125インチ厚さのASTM試験片(プラークで4×4×0.125インチ)を使用して配合物すべてについて試験した。
【0108】
耐化学薬品性(耐環境応力亀裂性)は、屈曲性バーをメチルエチルケトンに可変応力下で24時間曝露することによって評価した。メチルエチルケトンへの曝露の時間は、材料が破壊またはクレージングをまったく示さなかった場合に増加させた。
【0109】
結果:
高速度穴あけ多軸衝撃(Dynatup Impact)データおよび熱エージング後の引張り特性を表4に報告する:
【0110】
【0111】
K2CO3の導入は、予想外にも、PPSとPESとのブレンドの衝撃特性および耐環境応力亀裂性を増強した。
【0112】
比較例27、比較例28、および比較例29、ならびに実施例30
比較例27:PPS/PES50/50部を5分の滞留時間の間ブレンドする。
比較例28:PPS/PES/rPES45/45/10部を5分の滞留時間の間ブレンドする。
比較例29:PPS/PES/rPES/ZnO45/45/10/2部を3分の滞留時間の間ブレンドする。
実施例30:PPS/PES/rPES/K2CO3 45/45/10/0.5部を3分の滞留時間の間ブレンドする。
【0113】
材料:
- DIC CorporationからのPPS参照T4G
- Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのVeradel(登録商標)PESU 3600P
- 反応性ポリ(エーテルスルホン)(rPES):溶媒としてスルホラン中4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、ビスフェノールS(過剰の)、炭酸カリウム(過剰の)から公知のプロセスに従って合成されたrPES。rPESポリマーの末端基滴定は、以下を与えた:
〇ヒドロキシル末端基[-OH]の濃度=219μeq/g
〇カリウムフェノキシド末端基[-OK]の濃度=60μeq/g
〇クロロ末端基[-Cl]の濃度=7μeq/g
〇数平均分子量(Mn)=2,000,000/([-OH]+[-OK]+[-Cl])=7,000g/モル
- 炭酸カリウムK2CO3 UNID EF-80
- 酸化亜鉛ZnO
【0114】
コンパウンディング:
380℃で加熱され、および滞留時間の制御を可能にする再循環ループを備えたDSM Xplore(登録商標)二軸(100rpm)押出機で、ブンレドをコンパウンドした。材料(合計で7g)を同時に導入し、ある時間(滞留時間)混合し、その後、ストランドに押し出した。
【0115】
測定:
押出機スクリューを回転させるために必要とされるトルクをブレンディングの間に測定した。トルクは、溶融ブレンドの粘度と相関し、より高い力は、より高い粘度を示す。
【0116】
ダイスウェルのレベルは、押出機の出口で観察し、以下のとおりにランク付けした:--非常に大きいダイスウェル、-いくらかのダイスウェル、+限定されたダイスウェル、++ダイスウェルなし。
【0117】
熱的特性、すなわち、溶融温度および結晶化温度は、DSCにより決定した。
【0118】
ブレンドの形態学は、走査型電子顕微鏡法(SEM)および透過型電子顕微鏡法(TEM)により分析して、分散相の最大直径を得た。
【0119】
結果:
ブレンド組成物および測定値を以下の表5に示す。ブレンドの形態学は、
図9~
図12に示す。
【0120】
【0121】
PPSおよびPESは、
図10に示されるとおりに明らかに非混和性である。
図11に示されるとおりに、rPES(ヒドロキシル末端PES)の導入は、ポリマーを有意には相溶化せず、非常に大きなダイスウェルが観察された。さらに、
図12に示されるとおりに、塩基ZnOのさらなる添加も、PPSおよびPESブレンドの形態学に劇的な変化をもたらさず、いくらかのダイスウェルが依然として観察された。
【0122】
しかしながら、意外なことに、別の塩基K
2CO
3をPPS、PESおよびrPESポリマー組成物に添加した場合、実施例30の分散相によって示されるとおり(
図13)、PPSおよびPESの良好な相溶化が観察された。さらに、実施例30のポリマー組成物も、予想外に、ダイスウェルをまったく示さず、これは、例えば、普通サイズのストランドを押し出す際に有利である。
【0123】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)が、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリフェニルスルホン(PPSU)からなる群から選択される、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
- 前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)との重量比が、0.5~5の範囲であり、かつ
- 前記ポリマー組成物が、前記組成物中のポリマーの全重量に基づいて、0.15~0.4重量%の前記少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(a1)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)、前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、および前記アルカリ金属炭酸塩を接触させて、第1の初期混合物を形成する工程;
(a2)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)を前記アルカリ金属炭酸塩と接触させて、第2の初期混合物を形成し、その後、前記第2の初期混合物を前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)と接触させて、第2の混合物を形成する工程;
(a3)前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を前記アルカリ金属炭酸塩と接触させて、第3の初期混合物を形成し、その後、前記第3の初期混合物を前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)と接触させて、第3の混合物を形成する工程;または
(a4)前記ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)および前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を接触させて、第4の初期混合物を形成し、その後、前記第4の初期混合物を前記アルカリ金属炭酸塩と接触させて、第4の混合物を形成する工程;ならびに
(b)任意選択で、前記第1の初期混合物、前記第2の混合物、前記第3の混合物、または前記第4の混合物を、pKa≦7.5を有する酸成分と接触させる工程
を含む、請求項14に記載の方法。