(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119854
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】抗CD19抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220809BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220809BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220809BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220809BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220809BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220809BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220809BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220809BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61K9/19
A61K47/04
A61K47/26
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/12
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022081779
(22)【出願日】2022-05-18
(62)【分割の表示】P 2018567742の分割
【原出願日】2017-06-27
(31)【優先権主張番号】16176322.2
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ガリデル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ランゲル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘスリング,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインフルトナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ブロックス,ボド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗CD19抗体の安定な凍結乾燥医薬製剤を作製する方法、及び使用する方法を提供する。
【解決手段】20mg/ml~125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、緩衝液、0.005%(w/v)~0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含む安定な凍結乾燥医薬製剤において、a)180mM~240mMの濃度のトレハロース、又はb)180mM~240mMの濃度のマンニトール及び10mM~50mMの濃度のショ糖を更に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20mg/ml~125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、緩衝液、0.005%(w/v)~0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含む安定な凍結乾燥医薬製剤において、
a)180mM~240mMの濃度のトレハロース、又は
b)180mM~240mMの濃度のマンニトール及び10mM~50mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含むことを特徴とする安定な凍結乾燥医薬製剤。
【請求項2】
請求項1に記載の製剤において、前記製剤中の前記抗CD19抗体は、40mg/mlであることを特徴とする製剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製剤において、前記緩衝液は、クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液であることを特徴とする製剤。
【請求項4】
請求項3に記載の製剤において、前記クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液は、20~50mMの濃度であることを特徴とする製剤。
【請求項5】
請求項4に記載の製剤において、前記クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液は、25mMの濃度であることを特徴とする製剤。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の製剤において、前記製剤中の前記トレハロースは、200mMであることを特徴とする製剤。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の製剤において、前記製剤中の前記マンニトールは、219mMであり、及び前記製剤中の前記ショ糖は、29mMであることを特徴とする製剤。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の製剤において、前記製剤中の前記ポリソルベートは、ポリソルベート20であることを特徴とする製剤。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の製剤において、前記製剤中の前記ポリソルベートは、0.02%であることを特徴とする製剤。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の製剤において、前記抗CD19抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であることを特徴とする製剤。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の製剤において、2~8℃で少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも24カ月間又は少なくとも36カ月間にわたって安定であることを特徴とする製剤。
【請求項12】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の製剤において、前記抗CD19抗体は、40mg/mLの量であり、前記クエン酸緩衝液は、25mMの濃度であり、前記トレハロースは、200mMの濃度であり、ポリソルベートは、0.02%(w/v)の濃度であり、及び前記製剤は、6.0のpHを有することを特徴とする製剤。
【請求項13】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の製剤において、前記抗CD19抗体は、40mg/mLの量であり、前記クエン酸緩衝液は、25mMの濃度であり、前記マンニトールは、219mMの濃度であり、前記ショ糖は、29mMの濃度であり、ポリソルベートは、0.02%(w/v)の濃度であり、及び前記製剤は、6.0のpHを有することを特徴とする製剤。
【請求項14】
製品において、請求項1乃至13の何れか1項に記載の安定な凍結乾燥医薬製剤を保持する容器を含むことを特徴とする製品。
【請求項15】
対象における疾病又は疾患を処置する方法において、有効量の請求項1乃至13の何れか1項に記載の製剤を前記対象に投与するステップを含み、前記疾病又は疾患は、癌であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗CD19抗体の安定な凍結乾燥医薬製剤に関し、且つそのような製剤を作製する方法及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
B細胞は、液性免疫応答に大きい役割を果たすリンパ球である。B細胞は、殆どの哺乳動物の骨髄内で産生され、循環リンパ球プールの5~15%を占める。B細胞の主な機能は、様々な抗原に対する抗体を作ることであり、適応免疫系の必須成分である。
【0003】
免疫系の調節におけるB細胞の重大な役割に起因して、B細胞の調節不全は、リンパ腫及び白血病等の様々な疾患と関連している。リンパ腫及び白血病には、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及び急性リンパ性白血病(ALL)が含まれる。
【0004】
ヒトCD19分子は、プレB細胞、発生初期のB細胞{即ち未熟B細胞)、最終分化を介して形質細胞となる成熟B細胞、及び悪性B細胞を含むが、これらに限定されないヒトB細胞の表面上に発現する構造的に異なる細胞表面受容体である。CD19は、殆どのプレB急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)、プロリンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、一般的な急性リンパ性白血病、及びいくつかのヌル急性リンパ性白血病により発現される(Nadler et al,J.Immunol.,131:244-250(1983),Loken et al,Blood,70:1316-1324(1987),Uckun et al,Blood,71:13-29(1988),Anderson et al,1984.Blood,63:1424-1433(1984),Scheuermann,Leuk.Lymphoma,18:385-397(1995))。形質細胞上のCD19の発現は、これが、例えば、多発性骨髄腫、形質細胞腫、ワルデンストレーム腫瘍等の分化したB細胞腫瘍上に発現し得ることを更に示唆している(Grossbard et al.,Br.J.Haematol,102:509-15(1998);Treon et al,Semin.Oncol,30:248-52(2003))。
【0005】
従って、CD19抗原は、非ホジキンリンパ腫(本明細書に記載される各サブタイプを含む)、慢性リンパ性白血病及び/又は急性リンパ性白血病の処置における免疫療法のための標的である。
【0006】
MOR208(以前にはXmAb5574と命名)は、CD19に結合するFc操作されたヒト化モノクローナル抗体である。XmAb操作変異に起因したFcγRに対するMOR208 Fcの結合の増大は、非修飾抗体と比較して、腫瘍に対するインビトロ抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)、及び直接細胞傷害作用(アポトーシス)を有意に向上させる。MOR208は、補体依存性細胞傷害を仲介することが示されていない。
【0007】
MOR208は、CLL、ALL及びNHLにおいて臨床試験で研究されたか又は現在研究されている。詳細には、慢性リンパ性白血病におけるXmAb(登録商標)5574の安全性及び忍容性と題された第I相試験、並びにB細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)を処置するためのFc-最適化抗CD19抗体(MOR208)の研究と題された第IIa相試験が完了している。非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置するためのFc-最適化抗CD19抗体(MOR208)の研究と題された第IIa相試験は、リクルートメントを完了した。また、以下の試験が進行中である:再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する成人患者におけるベンダムスチン(BEN)を伴うMOR208対BENを伴うリツキシマブ(RTX)の有効性及び安全性を評価するための試験と題された第II/III相試験(B-MIND)、BTKiで前処置したR/R CLL/SLL患者におけるイデラリシブを伴うMOR208の有効性及び安全性を評価するための試験と題された第II相試験、R-R DLBCLを有する患者におけるMOR208を伴うレナリドミドの安全性及び有効性を評価するための試験と題された第II相試験、並びに再発又は難治性CLL、SLL若しくはPLLを有する患者、又は未処置CLL、SLL若しくはPLLを有する高齢患者のための、レナリドミドと組み合わせた第II相MOR208と題された第II相試験。
【0008】
治療抗体及び抗体断片は、大きく、且つ抗体が複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を有するため、従来の有機及び無機薬物小分子と比較してより複雑な分子である。従って、そのようなタンパク質の製剤は、特別な課題を課すものである。タンパク質が生物学的に活性な状態に留まるために、製剤は、少なくともタンパク質のアミノ酸のコア配列の立体構造の完全性を保つと共に、タンパク質の複数の官能基を分解から保護する必要がある。抗体の製剤は、保存期間が短い場合があり、処方された抗体は、化学的及び物理的不安定性に起因して保管中に生物学的活性を失う場合がある。タンパク質分解の最も一般的な3つの経路は、タンパク質凝集、脱アミド及び酸化である(Cleland et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377(1993))。特に、凝集は、潜在的に患者における免疫応答の増大をもたらす場合があり、これは、安全性への懸念に繋がり、最小限にするか又は防止する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、抗CD19抗体の製剤、特に好適な保存期間を有する抗CD19抗体の製剤を提供することである。
【0010】
治療用抗体のための好適な製剤は、水性医薬組成物又は再構成されて患者への投与のための溶液を提供し得る凍結乾燥物(lyophilisate)であり得る。
【0011】
抗体を含む凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供される。一態様において、製剤は、抗CD19抗体、緩衝液、ショ糖、及び界面活性剤を含み、製剤は、約6.0のpHを有し、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0012】
一態様において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、緩衝液、約0.005%(w/v)~約0.06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、製剤中の抗CD19抗体は、約20mg/ml~約80mg/mlの濃度を有する。いくつかの実施形態において、製剤中の抗CD19抗体は、約40mg/mlの濃度を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液である。
【0019】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記トレハロースは、約200mMである。いくつかの実施形態において、製剤中の前記トレハロースは、200mMである。
【0020】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記マンニトールは、約219mMであり、及び製剤中のショ糖は、約29mMである。いくつかの実施形態において、製剤中の前記マンニトールは、219mMであり、及び製剤中のショ糖は、29mMである。
【0021】
いくつかの実施形態において、製剤は、約6.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、6.0のpHを有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記ポリソルベートは、ポリソルベート20である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)は、約0.005%(w/v)~約0.06%(w/v)のものある。いくつかの実施形態において、製剤中の前記ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)は、約0.02%(w/v)である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%(w/v)である。
【0023】
更なる態様において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸、約200mMの濃度のトレハロース、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含む。
【0024】
更なる態様において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸、200mMの濃度のトレハロース、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含む。
【0025】
更なる態様において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸、約219mMの濃度のマンニトール、約29mMの濃度のショ糖、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含む。
【0026】
更なる態様において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸、219mMの濃度のマンニトール、29mMの濃度のショ糖、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、事前の凍結乾燥に供されず、例えば液体である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、ヒト化又はヒト抗体である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記抗CD19抗体は、抗原結合領域を含む抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗体断片は、Fab又はF(ab’)2断片である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、MOR208のアミノ酸配列を提供する。
【
図2】
図2は、40℃で3か月後のMOR208のサブビジブル(subvisible)粒子(SVP)数である。製剤3及び製剤9が比較され、マンニトール/ショ糖製剤は、特に2μm~1000μmの範囲内でより多くの粒子を経時的に生成した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
用語「抗体」は、任意のアイソタイプ、例えばIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを含むモノクローナル抗体を意味する。IgG抗体は、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖から構成され、これらは、ジスルフィド結合により連結されている。重鎖及び軽鎖の各々は、定常領域及び可変領域を含む。各可変領域は、主として抗原のエピトープの結合の役割を担う「相補性決定領域」(「CDRs」)又は「超可変領域」と称される3つの区域を含む。それらは、N-末端から順に番号を付けてCDR1、CDR2、及びCDR3と称される。CDRsの外側のより高く保存された可変領域の部分は、「フレームワーク領域」と称される。「抗体断片」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’F(ab’)2断片、又は少なくとも1つの可変重鎖若しくは可変軽鎖を含む他の断片を意味し、これらは、それぞれCDRs及びフレームワーク領域を含む。
【0030】
「VH」は、抗体又は抗体断片の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」は、抗体又は抗体断片の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0031】
用語「CD19」は、以下の同義語を有する、CD19として既知のタンパク質を指す:B4、Bリンパ球抗原CD19、Bリンパ球表面抗原B4、CVID3、分化抗原CD19、MGC12802、及びT細胞表面抗原Leu-12。
【0032】
【0033】
「MOR208」は、抗CD19抗体である。可変ドメインのアミノ酸配列は、
図1に提供されている。MOR208の重鎖及び軽鎖Fc領域のアミノ酸配列は、
図1に提供されている。「MOR208」及び「XmAb 5574」は、
図1に示す抗体を記載するために同義語として使用される。MOR208抗体は、米国特許出願公開第12/377,251号明細書(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。
【0034】
CD19に特異的な更なる抗体は、米国特許第7,109,304号明細書(Immunomedics)(その全体が参照により組み込まれる);米国特許出願公開第11/917,750号明細書(Medarex)(その全体が参照により組み込まれる);米国特許出願公開第11/852,106号明細書(Medimmune)(その全体が参照により組み込まれる);米国特許出願公開第11/648,505号明細書(Merck Patent GmbH)(その全体が参照により組み込まれる);米国特許第7,968,687号明細書(Seattle Genetics)(その全体が参照により組み込まれる);及び米国特許出願公開第12/710,442号明細書(Glenmark Pharmaceuticals)(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。
【0035】
加えて、CD19に特異的な更なる抗体は、国際公開第2005012493号パンフレット(米国特許第7109304号明細書)、国際公開第2010053716号パンフレット(米国特許出願公開第12/266,999号明細書)(Immunomedics);国際公開第2007002223号パンフレット(米国特許第8097703号明細書)(Medarex);国際公開第2008022152号パンフレット(12/377,251)及び国際公開第2008150494号パンフレット(Xencor)、国際公開第2008031056号パンフレット(米国特許公開第11/852,106号明細書)(Medimmune);国際公開第2007076950号パンフレット(米国特許出願公開第11/648,505号明細書)(Merck Patent GmbH);国際公開第2009/052431号パンフレット(米国特許出願公開第12/253,895号明細書)(Seattle Genetics);及び国際公開第2010095031(12/710,442)号パンフレット(Glenmark Pharmaceuticals)、国際公開第2012010562号パンフレット及び国際公開第2012010561号パンフレット(International Drug Development)、国際公開第2011147834号パンフレット(Roche Glycart)、並びに国際公開第2012/156455号パンフレット(Sanofi)に記載されており、これらは、全てその全体が参照により組み込まれる。
【0036】
用語「医薬製剤」は、対象に投与するための製剤を指す。そのような対象は、ヒトであり得る。
【0037】
「安定な」製剤は、保管後に患者に投与することができるものである。態様において、製剤は、保管後にその物理的及び化学的特性、並びにその生物学的活性を本質的に保持している。タンパク質安定性を測定する様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えばPeptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)で概説されている。
【0038】
安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて濁度を測定することにより、及び/又は目視検査により)を含む様々な異なる方法において、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)、SDS-PAGE分析を用いて電荷不均一性を評価して還元及びインタクト抗体を比較することにより、抗体の生物学的活性又は抗原結合機能を評価すること等により、定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド(例えば、Asn脱アミド)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N-末端延長、C-末端処理、グリコシル化相違等の任意の1つ以上を含むことができる。
【0039】
本明細書で使用するとき、モノクローナル抗体の「生物学的活性」は、抗体が抗原に結合する能力を指す。これは、インビトロで又はインビボで測定することできる測定可能な生物学的応答をもたらす、抗原に対する抗体の結合を更に含むことができる。
【0040】
本明細書で使用するとき、「緩衝液」は、その酸-塩基結合成分の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。本発明の緩衝液は、約4.5~約7.0、好ましくは約5.6~約7.0の範囲のpHを有することが好ましい。一実施形態において、緩衝液は、約6.0のpH又は6.0のpHを有する。例えば、クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液は、それぞれpHをこの範囲内に調節する緩衝液の例である。
【0041】
本明細書で使用するとき、「界面活性剤」は、表面-活性薬剤を指す。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が好ましい。本明細書の界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウレル(laurel)硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、又は二ナトリウムメチルオレイル-タウレート;及びMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、並びにエチレン及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニック、PF68等)等が挙げられる。一実施形態において、本明細書の界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0042】
「Fc領域」は、ヒトではIgG1、2、3、4サブクラス又はその他であり得る抗体の定常領域を意味する。ヒトFc領域の配列は、IMGT、Human IGH C-REGIONs、http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/protein/human/IGH/IGHC/Hu_IGHCallgenes.html(2011年5月16日に検索)で入手可能である。
【0043】
「投与される」又は「投与」は、例えば、静脈内、筋内、皮内若しくは皮下経路等の注射可能な形態、又は例えば経鼻噴霧等の粘膜経路、又は吸入のためのエアロゾルによる送達、又は消化可能な溶液、カプセル剤若しくは錠剤としての送達が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
化合物又は組み合わせの「治療的有効量」は、所定の疾病又は疾患及びその合併症の臨床症状を少なくとも部分的に停止させるのに十分な量を指す。特定の治療目的に有効な量は、疾病又は傷害の重篤さ、並びに対象の体重及び全身状態に依存するであろう。適切な投与量の決定は、日常的な実験を用いて値のマトリクスを構成し、マトリクス内の異なる点を試験することにより達成され得ることが理解されるであろう。これらの全ては、訓練された医師又は臨床科学者の通常の技能の範疇にある。
【0045】
本明細書の「CDRs」は、Chothia et al又はKabat et alの何れかにより定義される。Chothia C、Lesk AM.(1987)Canonical structures for the hypervariable region of immunoglobulins.J Mol Biol.,196(4):901-17(その全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。Kabat E.A,Wu T.T.,Perry H.M.,Gottesman K.S.and Foeller C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edit.,NIH Publication no.91-3242,US Dept.of Health and Human Services,Washington,DC(その全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0046】
「交差競合(cross compete)」は、標準的な競合結合アッセイにおいて、抗体又は他の結合剤がCD19に対する他の抗体又は結合剤の結合を妨げる能力を意味する。抗体又は他の結合剤がCD19に対する他の抗体又は結合分子の結合を妨げることができる能力又は程度、及び従って本発明に従って交差競合すると言うことができるか否かは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。1つの好適なアッセイは、Biacore技術の使用(例えば、BIAcore 3000機器(Biacore,Uppsala,Sweden)を使用することによる)を含み、これは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定することができる。交差競合を測定する他のアッセイは、ELISAベースの手法を用いる。交差競合に基づいた「エピトープ結合」抗体のためのハイスループットプロセスは、国際特許出願国際公開第2003/48731号パンフレットに記載されている。
【0047】
用語「エピトープ」は、抗体に対する特異的結合が可能であるか又は別様に分子と相互作用する任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基群(surface grouping)からなり、特定の三次元構造特性及び特定の荷電特性を有し得る。エピトープは、「線状」又は「立体構造的」であり得る。用語「線状エピトープ」は、タンパク質と相互作用分子(抗体等の)との相互作用地点の全てがタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する(連続的)エピトープを指す。用語「立体構造的エピトープ」は、不連続アミノ酸が一緒になって三次元立体構造をとるエピトープを指す。立体構造的エピトープにおいて、相互作用地点は、互いに分離した、タンパク質上のアミノ酸残基の全域にわたって存在する。
【0048】
「~と同じエピトープに結合する」は、抗体又は他の結合剤がCD19に結合する能力、及び例示した抗体と同じエピトープを有することを意味する。CD19に対する例示した抗体及び他の抗体のエピトープは、標準的なエピトープマッピング技術を用いて決定することができる。当技術分野で周知のエピトープマッピング技術としては、Molecular Biology,Vol.66(Glenn E.Morris,Ed.,1996)Humana Press,Totowa,New Jerseyの方法におけるエピトープマッピングプロトコルが挙げられる。例えば、例として大多数のペプチド(タンパク質分子の一部に対応するペプチド)を固体担体上で同時に合成し、ペプチドが担体になおも結合している間、そのペプチドを抗体と反応させることにより、線状エピトープを決定することができる。そのような技術は、当技術分野で既知であり、例えば米国特許第4,708,871号明細書;Geysen et al,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:3998-4002;Geysen et al,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:78-182;Geysen et al,(1986)Mol.Immunol.23:709-715に記載されている。同様に、例えば水素/重水素交換、X線結晶構造解析法及び2次元核磁気共鳴法等によってアミノ酸の空間立体配座を決定することにより、立体構造的エピトープが容易に特定される。例えば、上記のエピトープマッピングプロトコルを参照されたい。タンパク質の抗原領域は、例えば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmigaバージョン1.0ソフトウエアプログラムを用いて計算されるもの等、標準的な抗原性及び疎水性プロットを用いて特定することもできる。このコンピュータープログラムは、抗原性プロファイルを決定するためにHopp/Woods法、Hopp et al,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci USA 78:3824-3828;及び疎水性プロットのためにKyte-Doolittle技術、Kyte et al,(1982)J.Mol.Biol.157:105-132を使用する。
【0049】
実施形態
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、緩衝液、約0.005%(w/v)~約0.06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0050】
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、10~75mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、20~50mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、20~40mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、20~30mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、約25mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、25mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記緩衝液は、クエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液である。
【0052】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記クエン酸緩衝液は、10~75mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記クエン酸緩衝液は、20~50mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記クエン酸緩衝液は、20~30mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記クエン酸緩衝液は、約25mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記クエン酸緩衝液は、25mMの濃度である。
【0053】
いくつかの実施形態において、製剤中の前記リン酸緩衝液は、10~75mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記リン酸緩衝液は、20~50mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記リン酸緩衝液は、20~30mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記リン酸緩衝液は、約25mMの濃度である。いくつかの実施形態において、製剤中の前記リン酸緩衝液は、25mMの濃度である。
【0054】
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、20~50mMの濃度のクエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0055】
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0056】
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0057】
別の実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のリン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含む。
【0058】
更なる実施形態において、前記抗CD19抗体は、完全長抗体である。更なる実施形態において、前記抗CD19抗体は、IgGI、IgG2、IgG3又はIgG4抗体である。
【0059】
別の実施形態において、前記抗CD19抗体は、ヒト化又はヒト抗体である。更なる実施形態において、前記抗CD19抗体は、抗原結合領域を含む抗体断片である。更なる実施形態において、前記抗体断片は、Fab又はF(ab’)2断片である。
【0060】
別の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、2~8℃で少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも24カ月間又は少なくとも36カ月間にわたって安定である。
【0061】
別の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約40℃で少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16週間又はそれを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約40℃で少なくとも約1、2、3、4、5カ月間又はそれを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約25℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月間又それを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約5℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48カ月間又はそれを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約5+/-3℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48カ月間又はそれを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、約-20℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48カ月間又はそれを超えて安定である。特定の実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、5℃又は-20℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48カ月間又はそれを超えて安定である。
【0062】
更なる実施形態において、製剤中の抗CD19抗体は、保管後、その生物学的活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%を保持する。いくつかの実施形態において、生物学的活性は、CD19に結合する抗体により測定される。いくつかの実施形態において、生物学的活性は、FACS CD19結合アッセイにおいて、CD19に結合する抗体により測定される。いくつかの実施形態において、生物学的活性は、前記抗CD19抗体のADCC活性により測定される。いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤は、無菌である。
【0063】
更なる実施形態において、前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、対象に投与するのに好適である。更なる実施形態において、前記前記安定な凍結乾燥医薬製剤は、静脈内(IV)投与又は皮下投与に好適である。
【0064】
別の態様において、本明細書に開示した安定な凍結乾燥医薬製剤を保持する容器を含む製品が本明細書に提供される。実施形態において、前記容器は、ガラス製バイアル又は金属合金容器である。更なる実施形態において、金属合金は、316Lステンレス鋼又はハステロイである。
【0065】
別の態様において、有効量の本明細書に開示した製剤を対象に投与するステップを含む、対象における疾病又は疾患の処置方法が本明細書で提供され、疾病又は疾患は、癌である。別の態様において、有効量の前記製剤を対象に投与するステップを含む、対象における疾病又は疾患の処置のための、本明細書に開示した安定な凍結乾燥医薬製剤の使用が本明細書で提供され、疾病又は疾患は、癌である。更なる態様において、有効量の前記製剤を対象に投与するステップを含む、対象における疾病又は疾患の処置のための医薬の製造のための、本明細書に開示した安定な凍結乾燥医薬製剤の使用が本明細書で提供され、疾病又は疾患は、癌である。一実施形態において、疾病又は疾患は、非ホジキンリンパ腫(本明細書に記載される各サブタイプを含む)、慢性リンパ性白血病及び/又は急性リンパ性白血病sである。実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、周辺帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約20mg/ml~約125mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.005%(w/v)~約0,06%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、a)約180mM~約240mMの濃度のトレハロース、又は
b)約180mM~約240mMの濃度のマンニトール及び約10mM~約50mMの濃度
のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、
a)約200mMの濃度のトレハロース、又は
b)約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、
a)約200mMの濃度のトレハロース、又は
b)約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、
a)約200mMの濃度のトレハロース、又は
b)約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、
a)約200mMの濃度のトレハロース、又は
b)約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
に対して少なくとも85%、86%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有する可変重鎖と、配列
に対して少なくとも85%、86%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有する可変軽鎖とを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、
a)約200mMの濃度のトレハロース、又は
b)約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖
を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
に対して少なくとも85%、86%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有する重鎖定常ドメインと、配列
に対して少なくとも85%、86%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有する軽鎖定常ドメインとを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のクエン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、20~40mMの濃度のリン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、20~40mMの濃度のリン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のリン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、約25mMの濃度のリン酸緩衝液、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約6.0のpHを含み、製剤は、約219mMの濃度のマンニトール及び約29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、219mMの濃度のマンニトール及び29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖及び配列
の可変軽鎖を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、219mMの濃度のマンニトール及び29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の可変重鎖と、配列
の可変軽鎖とを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のリン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、200mMの濃度のトレハロースを更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のクエン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、219mMの濃度のマンニトール及び29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、安定な凍結乾燥医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、40mg/mlの濃度の抗CD19抗体、25mMの濃度のリン酸緩衝液、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び6.0のpHを含み、製剤は、219mMの濃度のマンニトール及び29mMの濃度のショ糖を更に含み、前記抗CD19抗体は、配列
の重鎖定常ドメインと、配列
の軽鎖定常ドメインとを含む。
【実施例0092】
作業実施例1:MOR208の生物物理学的特徴付け
特徴付け、予備処方スクリーニング及び高濃度実現可能性を目的として、MOR208の生物物理学的特性を分析した。
【0093】
MOR208の構造安定性を評価するために、DSF(示差走査型蛍光定量法)及びCD分光法を用いた熱融解実験を得た。MOR208サンプルを1.1mg/mLの濃度に希釈した。疎水性染料シプロオレンジを加えてタンパク質の変性を検出し、各融解曲線を生成した。サンプルは、47℃という比較的低い融解温度を示し、これは、蛍光の段階的増大により示された。
【0094】
MOR208は、B細胞及びその前駆体上のCD19に結合するヒト化モノクローナル抗体である。Fc領域は、操作(S239D/I332E)されて、B細胞枯渇を支持するエフェクター機能が向上されている。現在有効な仮説によれば、このFc領域の構成は、CH2ドメイン柔軟性をもたらし、それによりADCC効力が向上するが、Fcドメインの融解温度の低下が不随し得る。
【0095】
更に、DSC、RALS及びITFを使用してpHスクリーニング研究を行い、タンパク質の最も安定なpH範囲を特定した。3.5~8.0のpH範囲がこの研究に含まれていた。所望のpH範囲を含む混合緩衝液系中において測定を行った。MOR208の最も安定なpH範囲は、得られた結果に基づいてpH6.0~7.0と特定された。
【0096】
従って、pH6.0~7.0のpH範囲で十分な緩衝能を提供し、非経口使用において薬学的に許容可能な2つの緩衝液系が特定された。
- クエン酸(pH5.5;6.0)
- ヒスチジン(pH6.0;6.5;7.0)
【0097】
25mMクエン酸及び25mMヒスチジン緩衝液中でのMOR208の熱安定性を試験するために、更なるDSC、RALS及びITF測定を行った。5.5のpHのクエン酸のみが有意により低い遷移温度を示し、試験した他の全サンプルは、同等の熱安定性を示した。この結論は、RALS及びITF試験によっても確認された。
【0098】
更に、MOR208の熱安定性に対するイオン強度、糖、ポリオール及びポリソルベート20の影響を試験した。NaCl又は糖又はポリソルベート20を含むサンプルの製剤に対し、pH6.0の25mMクエン酸緩衝液を基本緩衝液系として選択した。この測定は、52℃の第1の遷移温度に基づいて、NaClの添加がMOR208の熱安定性を増大させることを示した。この観察事項は、ITF測定により確認された。RALS試験の結果は、MOR208の熱安定性に対するNaClのいかなる影響も特定しなかった。
【0099】
MOR208の熱安定性に対する糖(トレハロース及びショ糖)及びマンニトールの影響は、200mMトレハロース、210mMショ糖、及び180mMマンニトール/45mMショ糖混合物の濃度を用いて試験した。これらの濃度は、製剤を等張の範囲内にシフトするように選択した。DSC、RALS及びITF試験の結果は、トレハロース及びショ糖がMOR208の熱安定性に対する同等の影響を有する一方、マンニトール/ショ糖混合物が第1の遷移温度を僅かにおよそ0.8℃だけ低下させることを示した。
【0100】
0.02%、0.04%、0.08%及び0.12%の濃度を用いて、MOR208の熱安定性に対するポリソルベート20の影響を試験した。DSC及びRALS測定の結果は、試験濃度において、MOR208の熱安定性に対するポリソルベート20の有意な影響を示さなかった。
【0101】
1、5及び10mMの濃度を用いて、MOR208の熱安定性に対するMgCl2の影響を試験した。DSC及びRALS測定の結果は、試験濃度において、MOR208の熱安定性に対するMgCl2の有意な影響を示さなかった。
【0102】
作業実施例2:MOR208の液体製剤の安定性研究
MOR208の生物物理学的特徴付けに基づき、安定性研究において以下の6つの異なる液体製剤を試験した。
【0103】
安定性研究のために以下の製剤を選択した。
・製剤F1:10mMクエン酸、pH6.0+0.01% PS 20+150mM NaCl
・製剤F2:25mMクエン酸、pH6.0+0.02% PS 20+125mM NaCl
・製剤F3:25mMクエン酸、pH6.0+0.02% PS 20+200mMトレハロース
・製剤F4:25mMクエン酸、pH6.0+0.02% PS 20+210mMショ糖
・製剤F5:25mMヒスチジン、pH6.0+0.02% PS 20+140mM NaCl
・製剤F6:25mMヒスチジン、pH6.0+0.02% PS 20+230mMトレハロース
・製剤F7:25mMスクシナト(Succinat)、pH6.0+0.02% PS 20+215mMトレハロース
・製剤F8:25mMヒスチジン、pH6.5+0.02% PS 20+240mMトレハロース
【0104】
全製剤のタンパク質濃度は、20mg/mLであった。各製剤から10mLを10mLバイアルに満たし、被覆ゴム栓で閉鎖し、25℃の管理温度で12週間にわたり逆さまで保管した。保管前(t0)、4、8及び12週間後に分析試験を行った。
【0105】
製剤1、3、5及び7は、他の製剤と比較して、12週間にわたってより少ないサブビジブル粒子を生成した。粒子は、MFIにより測定した。製剤5は、>10μm~>25μmの範囲内で最小のSVP数を示した。
【0106】
製剤の凝集体及びモノマーレベルをHP SECにより試験した。製剤2、3、7及び8は、他の製剤と比較して、12週間にわたって凝集体のより高い増加を示した。
【0107】
製剤4の重量オスモル濃度は、4週間の保管後に増大し、これは、製剤中に含まれるショ糖の分解を示す可能性が最も高い。
【0108】
pHのシフトも製剤4中のショ糖の分解を示す。
【0109】
更なるHIC試験は、製剤6、7及び8が、他の製剤と比較して、ピーク3領域%のより強い低下を示すことを示した。特に製剤8は、12週間後、66.1%(初期値)から52.2%への強い低下を示した。
【0110】
MOR208の物理化学的特徴付けにより、pH6.0及び7.0の最も安定なpH範囲が特定された。
【0111】
言及したpH範囲内の薬学的に許容可能な緩衝液系としてクエン酸、ヒスチジン及びコハク酸緩衝液を選択した。全緩衝液系は、20mg/mLのタンパク質濃度において十分な緩衝能を提供する25mMの濃度で使用した。125mMの最小濃度のNaClの添加は、MOR208の熱安定性に対して弱い陽性作用を有した(DSCデータに基づく)。ショ糖、トレハロース、マンニトール/ショ糖及びポリソルベート20の添加は、MOR208の熱安定性を変化させなかった。
【0112】
分析結果に基づき、最も安定な製剤は、F1、F3及びF5であると特定された。
・製剤F1:10mMクエン酸、pH6.0+0.01% PS 20+150mM NaCl
・製剤F3:25mMクエン酸、pH6.0+0.02% PS 20+200mMトレハロース
・製剤F5:25mMヒスチジン、pH6.0+0.02% PS 20+140mM NaCl
【0113】
これらの3つの製剤のサンプルを更に25℃で8カ月間まで保持し、再度試験した。製剤1及び5は、最も高い安定性を提供したが、全液体製剤は、8カ月後に薬局方規格を上回るサブビジブル粒子を生成した(1バイアル当たりNMT 6000粒子≧10μm、及び1バイアル当たりNMT 600粒子≧25μm)。従って、2~8℃で少なくとも24カ月間の所望の保存期間は、20mg/mLタンパク質を有する試験された液体製剤の1つにより達成されなかった。
【0114】
この事実は、凍結乾燥剤形の開発を開始する決定を推進した。
【0115】
作業実施例3:凍結乾燥実現可能性の研究
40mg/mlの濃度のMOR208を用いた凍結乾燥実現可能性研究には、製剤3及び新たな製剤9が含まれていた。
【0116】
製剤3:25mMクエン酸
200mMトレハロース二水和物
0.02%ポリソルベート20
pH6.0
【0117】
製剤9:25mMクエン酸
219mMマンニトール
29mMショ糖
0.02%ポリソルベート20
pH6.0
【0118】
凍結乾燥薬物製品の外観
両方の製剤の凍結乾燥ケーキ(lyo cake)の外観は、許容できるものであった。トレハロース含有製剤は、完全に非晶質であり、より高い収縮度を示したが、これは、単に見かけ上の観察事項であり、一般に製品の品質又は安定性と関連性がない。マンニトール含有製剤は、部分的に結晶質であり、収縮のない、より高い医薬的上質性のケーキを提供する。
【0119】
凍結乾燥MOR208の品質を試験し、凍結乾燥前の製品品質と比較した。下記の表1に製剤3及び9の結果をまとめる。
【0120】
凍結乾燥前及び後のサブビジブル粒子(SVP)試験のみに焦点を当てた追加の凍結乾燥研究を行った。研究の結果は、表2に列挙され、凍結乾燥工程がSVP数を増大させなかったことを明確に示す。
【0121】
試験結果に基づき、製品品質に対する凍結乾燥工程の負の影響は認められなかった。両方の製剤は、許容可能なケーキ外観を提供する。再構成時間は、1mL当たり40mgのタンパク質を含む製剤の場合、60秒未満である。再構成は、5mLの注射用蒸留水を加えることにより行われる。マンニトール/ショ糖製剤の水分レベルは、トレハロース含有製剤と比較して高く、これは、凍結乾燥ケーキのより高い密度に起因する。重量オスモル濃度及びタンパク質含有量(UVスキャン)は、凍結乾燥後に低下し、これは、製品が再構成手順によって希釈されたためである。凝集レベルは、凍結乾燥中に増大せず、再構成後に少数のサブビジブル粒子が計数された。結果として、両方の製剤は、MOR208の凍結乾燥に好適であり、凍結乾燥実現可能性研究は、問題なく完了した。この研究後、両方の製剤を用いた促進された安定性研究を40℃で3カ月間にわたって行った。
【0122】
作業実施例4:促進された安定性研究
凍結乾燥実現可能性研究が問題なく終了した後、40℃(75% rH)で3カ月間の第1の安定性研究を行って両方の製剤を比較した。安定性試験は、色及び可視粒子に関する試験を含んでいた。更に、製品をHP-SEC(凝集)、HIC、IEC、結合アッセイ(CD16 Biacore)、MFI(サブビジブル粒子)及びSDS-Pageで試験した。
【0123】
HP-SEC試験は、3カ月間の保管後にF9の凝集体のより高い増加を示した(表3)。F3の凝集体レベルは、0.8%から1.7%に増大し、F9の凝集体レベルは、0.8%から2.6%に増大した。
【0124】
MFI方法を用いてサブビジブル粒子をt0、並びに4週、8週及び12週後に試験した。両方の製剤を比較すると、マンニトール/ショ糖製剤は、特に2μm~1000μmの範囲内でより多くの粒子を経時的に生成することが明らかであった(
図2)。
【0125】
分析結果に基づき、トレハロースを含有する製剤3は、製剤9と比較して40℃でより高い安定性を示した。安定性の相違は、SVP(MFI)及び凝集体レベル(HPSEC)において見られた。
【0126】
結論:
凍結乾燥実現可能性研究により、両方の製剤及び40mg/mLのタンパク質濃度を用いて、製品品質に影響を与えずにMOR208を凍結乾燥できることが示された。安定性条件は、40℃(75% rH)で3か月の期間であった。この安定性研究中、トレハロース含有製剤は、マンニトール/ショ糖製剤と比較して高い安定性を有するとして特定された。
【0127】
作業実施例5:保存期間割当て
長期安定性研究のために、製剤3中のMOR208を5℃±3℃でのリアルタイム保管及び25℃±2℃での促進された保管試験に供した。
【0128】
行った安定性研究は、安定性指示と、保管中の濃度、活性、純度、医薬及び微生物学的パラメーターに関して薬物製品を監視する最先端方法とを含む。
【0129】
以下のパラメーター方法を用い、これらを主要な安定性指示試験と見なす。
【0130】
- HP-SECによる純度:
HP-SECの安定性指示特性は、関連したストレスサンプルの分析により示された。また、凝集体検出の能力は、分析用超遠心分離法により検証された。
【0131】
- IEC及び還元/非還元CGEによる均一性及び純度:
断片の検出のために、非還元CGEを適用する。脱アミドのような荷電変異体をもたらす化学修飾をIECにより検出した。
【0132】
- 活性アッセイ:
製品特異的な活性アッセイ、CD19結合アッセイ(FACS)、CD16結合アッセイ(SPR)及びADCC効力アッセイは、関連したストレスサンプルに対する感受性を示した。
【0133】
5℃±3℃でのリアルタイム保管及び25℃±3℃での促進された保管をそれぞれ表4及び表5にまとめる。
【0134】
結果の考察:
含有量及び活性
3つの異なる活性アッセイ:CD19結合アッセイ(FACS)、CD16結合アッセイ(SPR)及びADCCベースの効力アッセイを用いて、MOR208の機能的活性を監視した。これらの3つのアッセイの組み合わせにより、抗原結合、関連エフェクター結合、及び主要な作用モード(ADCC)が包含される。
【0135】
両方の結合アッセイは、経時的に明らかな又は関連した傾向を示さない。ADCCベースの効力アッセイは、経時的に幾分かの増大(リアルタイム及び促進された条件下の両方で)を示すが、アッセイは、より高い可変性も示すため、傾向は、依然として有意であると見なされない。要約すると、全ての含有量及び活性アッセイは、十分規格の範囲内であり、36カ月間にわたって製品品質のいかなる重大な変化も示さない。
【0136】
純度
5±3℃の意図される保管温度での36カ月の保管中、純度アッセイ(即ちHP-SEC、IEC、還元及び非還元CGE)の何れも製品純度における重大な変化を示さない。25℃±2℃での促進された条件下において、HP-SECは、最近の試験時点において唯一の値の変化を示す(一増分に関するモノマーの低下/断片値の増大)が、これは、長期データに反映されず、従って無視できると見なされる。IECは、長期条件下の傾向を示さないが、促進された条件下での主要ピーク群の低下/塩基性ピーク群の増大の明らかな傾向を示す。
【0137】
要約すると、全ての純度アッセイは、十分に規格の範囲内であり、36カ月間にわたって製品品質の重大な変化を示さない。
【0138】
医薬試験
5±3℃の意図される保管温度での36カ月間の保管中、医薬試験の何れも経時的に重大な変化を示さなかった。要約すると、全医薬試験が十分に規格の範囲内であり、36カ月間にわたって製品品質の重大な変化を示さない。