(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119874
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】光学カモフラージュフィルター
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20220809BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220809BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20220809BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/20
G03B11/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084190
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2018538198の分割
【原出願日】2017-01-19
(31)【優先権主張番号】62/281,643
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
2.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,グワーンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ウィリアム ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ダオユン
(72)【発明者】
【氏名】リヴネス,ルーク ディー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視波長による望ましくない光学干渉を防止し、あるいは電磁放射源を視覚からカモフラージュし、その一方で、所望の近赤外波長が発光器によって透過されること、又は受光器によって受光されることを少なくとも部分的に可能にし、あるいはその一方で、比較的高い透明度による近赤外波長の透過を可能にする光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルターは波長選択性散乱層を含む。波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し得る。フィルターは、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し得る。本方法は、発光器及び受光器の一方又は両方に隣接して波長選択性散乱層を配置することを含み得る。物品は光学フィルターを含み得る。波長選択性散乱層は、60%未満の平均近赤外散乱、10%より大きい平均可視散乱、及び20未満の%全可視反射率と%拡散可視反射率との差を有し得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光器又は受光器の一方又は両方と、
前記発光器又は前記受光器の一方又は両方に隣接する光学フィルターであって、前記光学フィルターは波長選択性散乱層を含み、前記波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し、前記近赤外散乱比は、平均可視散乱に対する平均近赤外散乱の比であり、前記波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し、前記可視反射ヘイズ率は、平均可視全反射率に対する平均可視拡散反射率の比率である、光学フィルターと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記波長選択性散乱層が約0.7未満の近赤外散乱比を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記波長選択性散乱層が約0.6未満の近赤外散乱比を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記波長選択性散乱層が、約0.6より大きい可視反射ヘイズ率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記波長選択性散乱層が、約0.7より大きい可視反射ヘイズ率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記発光器又は前記受光器の一方又は両方が近赤外域内の動作波長を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%未満を透過し、前記波長選択性散乱層が入射近赤外光の約50%超を透過する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を散乱する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を白色光として散乱する、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約5μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.1未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約1μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.2未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.5μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.4未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.3μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.6未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.2μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約1.8未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線82の下の領域から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線84の下の領域から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線86の下の領域から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線88の下の領域から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記波長選択性散乱層が少なくとも25%の可視ヘイズを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記光学フィルターが表面光学微細構造を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記発光器が近赤外LED又は近赤外レーザを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記受光器が、近赤外カメラ、又は近赤外受光帯域を有する光センサを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記波長選択性散乱層が、バインダー、複数の粒子、及び複数の相互接続された空隙を含み、前記波長選択性散乱層内における前記複数の相互接続された空隙の体積分率が約20%以上であり、前記複数の粒子に対する前記バインダーの重量比が約1:2以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記光学フィルターが反射層を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記光学フィルターがビーズ状の拡散層を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記光学フィルターが、前記受光器を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、その一方で、前記受光器が近赤外波長を受光することを実質的に可能にするように構成されている、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記光学フィルターが、前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚からカモフラージュするように構成されている、請求項1~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記光学フィルターが、可視波長を散乱させることによって前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚から少なくとも部分的にカモフラージュするように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
発光器又は受光器の一方又は両方に隣接して光学フィルターを配置する工程を含む方法であって、前記光学フィルターは波長選択性散乱層を含み、前記波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し、前記近赤外散乱比は、平均可視散乱に対する平均近赤外散乱の比であり、前記波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し、前記可視反射ヘイズ率は、平均可視全反射率に対する平均可視拡散反射率の比率である、方法。
【請求項30】
前記光学フィルターと前記発光器又は前記受光器の一方又は両方との間に反射層を配置する工程を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
発光器又は受光器の一方又は両方を少なくとも部分的にカモフラージュすることを含む方法であって、前記カモフラージュすることは請求項29又は30に記載の方法を含む、方法。
【請求項32】
発光器又は受光器の一方又は両方を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽する工程を含む方法であって、前記遮蔽する工程は請求項29又は30に記載の方法を含む、方法。
【請求項33】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を散乱する、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を白色光として散乱する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
光学フィルターを備える物品であって、前記光学フィルターは波長選択性散乱層を含み、前記波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し、前記近赤外散乱比は、平均可視散乱に対する平均近赤外散乱の比であり、前記波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し、前記可視反射ヘイズ率は、平均可視全反射率に対する平均可視拡散反射率の比率である、物品。
【請求項36】
前記波長選択性散乱層が約0.7未満の近赤外散乱比を有する、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記波長選択性散乱層が約0.6未満の近赤外散乱比を有する、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記波長選択性散乱層が、約0.6より大きい可視反射ヘイズ率を有する、請求項35~37のいずれか一項に記載の物品。
【請求項39】
前記波長選択性散乱層が、約0.7より大きい可視反射ヘイズ率を有する、請求項35~37のいずれか一項に記載の物品。
【請求項40】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%未満を透過し、前記波長選択性散乱層が入射近赤外光の約50%超を透過する、請求項35~39のいずれか一項に記載の物品。
【請求項41】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を散乱する、請求項35~40のいずれか一項に記載の物品。
【請求項42】
前記波長選択性散乱層が入射可視光の約50%超を白色光として散乱する、請求項35~40のいずれか一項に記載の物品。
【請求項43】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約5μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.1未満である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項44】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約1μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.2未満である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項45】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.5μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.4未満である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項46】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.3μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約0.6未満である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項47】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率及び約0.2μm未満の平均粒径を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との絶対差が約1.8未満である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項48】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線82の下の領域から選択される、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項49】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線84の下の領域から選択される、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項50】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線86の下の領域から選択される、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項51】
前記波長選択性散乱層が第1の屈折率を有する光学媒体を含み、前記光学媒体が複数の粒子を含み、前記複数の粒子が第2の屈折率を有し、前記複数の粒子の平均粒径、前記第1の屈折率、及び前記第2の屈折率が
図15の線88の下の領域から選択される、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項52】
前記波長選択性散乱層が少なくとも25%の可視ヘイズを有する、請求項35~51のいずれか一項に記載の物品。
【請求項53】
前記光学フィルターが表面光学微細構造を含む、請求項35~52のいずれか一項に記載の物品。
【請求項54】
前記波長選択性散乱層が、バインダー、複数の粒子、及び複数の相互接続空隙を含み、前記波長選択性散乱層内における前記複数の相互接続空隙の体積分率が約20%以上であり、前記複数の粒子に対する前記バインダーの重量比が約1:2以上である、請求項35~42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項55】
前記光学フィルターが反射層を含む、請求項35~54のいずれか一項に記載の物品。
【請求項56】
前記光学フィルターがビーズ状の拡散層を含む、請求項35~55のいずれか一項に記載の物品。
【請求項57】
前記光学フィルターが、受光器を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、その一方で、前記受光器が近赤外波長を少なくとも部分的に受光することを可能にするように構成されている、請求項35~56のいずれか一項に記載の物品。
【請求項58】
前記光学フィルターが、受光器及び発光器の一方又は両方を視覚から少なくとも部分的にカモフラージュするように構成されている、請求項35~56のいずれか一項に記載の物品。
【請求項59】
前記光学フィルターが、可視波長を少なくとも部分的に散乱させることによって前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚から少なくとも部分的にカモフラージュするように構成されている、請求項58に記載の物品。
【請求項60】
前記光学フィルターが、前記波長選択性散乱層に隣接するインク受容コーティングを含む、請求項35~59のいずれか一項に記載の物品。
【請求項61】
前記光学フィルターが、前記インク受容コーティング上に配置されたインクパターンを含む、請求項35~60のいずれか一項に記載の物品。
【請求項62】
前記光学フィルターがシーラント層を含む、請求項35~61のいずれか一項に記載の物品。
【請求項63】
前記光学フィルターが保護コーティングを含む、請求項35~62のいずれか一項に記載の物品。
【請求項64】
前記波長選択性散乱層が少なくとも50%の全可視反射率を有する、請求項35~63のいずれか一項に記載の物品。
【請求項65】
前記波長選択性散乱層が少なくとも60%の全可視反射率を有する、請求項64に記載の物品。
【請求項66】
前記波長選択性散乱層が少なくとも70%の全可視反射率を有する、請求項65に記載の物品。
【請求項67】
光学フィルターを備える物品であって、前記光学フィルターは波長選択性散乱層を含み、前記波長選択性散乱層が60%未満の平均近赤外散乱を有し、前記波長選択性散乱層が、10%より大きい平均可視散乱を有し、%全可視反射率と%拡散可視反射率との差が20未満である、物品。
【請求項68】
前記波長選択性散乱層が40%未満の平均近赤外散乱を有し、前記波長選択性散乱層が、58%より大きい平均可視散乱を有し、前記%全可視反射率と前記%拡散可視反射率との前記差が18未満である、請求項67に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光は、例えば鏡面反射又は拡散反射として、異なる仕方で表面から反射され得る。不透明材料では、材料の最表面層上において、例えば空気/材料界面において、鏡面反射が生じ得、反射は入射光の全スペクトルを伝えることができる。鏡面反射は、全反射光の4%未満を占め得る、テカリ又は光沢として発現し得る。対照的に、拡散反射が材料の上面下では生じ得、選択された波長又は色を伝えることができる。例えば、非金属物体の拡散反射では色が見え得る。例えば、ハイブリッド表面、例えば、透明な仕上げ塗りで被覆されたペンキ塗膜を含む表面においては、両方の種類の反射が観察され得る。それゆえ、空気/仕上げ塗り界面では鏡面反射が生じ得、仕上げ塗り/ペイント塗膜界面では拡散反射が生じ得る。
【0002】
光学フィルターは、光通信システム、センサ、イメージング、科学及び産業光学機器、並びにディスプレイシステムなどの多種多様の用途において使用されている。光学フィルターは、光を含む入射電磁放射の透過を管理する光学層を含み得る。光学フィルターは入射光の一部分を反射又は吸収し、入射光の他の部分を透過させることができる。光学フィルター内の光学層は、波長選択性、光透過率、光学的透明性、光学ヘイズ、及び屈折率が異なり得る。
【発明の概要】
【0003】
一例では、本開示は、発光器又は受光器の一方又は両方を含み得る例示的なシステムを記載する。このシステムは、発光器又は受光器の一方又は両方に隣接する光学フィルターを含み得る。光学フィルターは波長選択性散乱層を含む。波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し得る。近赤外散乱比は、平均可視散乱に対する平均近赤外散乱の比である。波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し得る。可視反射ヘイズ率は、平均可視全反射率に対する平均可視拡散反射率の比率である。
【0004】
一例では、本開示は、発光器又は受光器の一方又は両方に隣接して光学フィルターを配置する工程を含む例示的な技術を記載する。光学フィルターは波長選択性散乱層を含む。波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し得る。波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し得る。
【0005】
一例では、本開示は、光学フィルターを含む例示的な物品を記載する。光学フィルターは波長選択性散乱層を含む。波長選択性散乱層は約0.9未満の近赤外散乱比を有し得る。波長選択性散乱層は、約0.5より大きい可視反射ヘイズ率を有し得る。
【0006】
一例では、本開示は、光学フィルターを含む例示的な物品を記載する。光学フィルターは波長選択性散乱層を含む。波長選択性散乱層は、60%未満の平均近赤外散乱、10%より大きい平均可視散乱、及び20未満の%全可視反射率と%拡散可視反射率との差を有し得る。
【0007】
本発明の1つ以上の態様の詳細を添付の図面及び以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上記及び他の態様は、以下の詳細な説明において、これを添付の図と併せて読むことで、より明らかになる。
【
図1A】光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【
図1B】光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【
図1C】光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【
図1D】光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【
図1E】光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【
図2A】光学フィルターを含む例示的なシステムの概念的略図である。
【
図2B】光学フィルターを含む例示的なシステムの概念的略図である。
【
図2C】光学フィルターを含む例示的なシステムの概念的略図である。
【
図2D】光学フィルターを含む例示的なシステムの概念的略図である。
【
図2E】光学フィルターを含む例示的なシステムの概念的略図である。
【
図3A】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3B】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3C】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3D】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。
【
図5】例示的な光学フィルターとインクパターンとを含む例示的な物品の写真である。
【
図6B】例示的な光学フィルターによってカモフラージュされたソーラーパネルの写真である。
【
図7】例示的な光学フィルターとインクパターンとを含む例示的な物品の写真である。
【
図8A】例示的な光学フィルターと近赤外LEDとを含む例示的なシステムの写真である。
【
図8B】例示的な光学フィルターと近赤外LEDとを含む例示的なシステムの写真である。
【
図8C】例示的な光学フィルターと近赤外LEDとを含む例示的なシステムの写真である。
【
図9】例示的な光学フィルターの表面の原子間力顕微鏡(atomic force microscopy、AFM)写真である。
【
図10A】例示的な光学フィルターの走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)写真である。
【
図10B】例示的な光学フィルターの走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)写真である。
【
図11】例示的な光学フィルターについての%反射率及び%透過率対波長を示すチャートである。
【
図12A】例示的な光学フィルターについての%透過率対波長を示すチャートである。
【
図12B】例示的な光学フィルターについての%透過率対波長を示すチャートである。
【
図13】例示的な光学フィルターについての%透過率対波長を示すチャートである。
【
図14】例示的な光学フィルターについての散乱効率対波長を示す、ミー散乱の結果を示すチャートである。
【
図15】媒体と複数の粒子とを含む例示的な波長選択性散乱層についての、近赤外散乱比を粒径及び屈折率差の関数として示すチャートである。 本開示の特定の図の特徴は必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らず、図は、本明細書に開示されている技術の非排他例であることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、「可視」は、約400nm~約700nmの範囲の波長を指し、「近赤外」は約700nm~約2000nmの範囲の波長、例えば約800nm~約1200nmの範囲の波長を指す。ULI(ultra-low index、超低屈折率)フィルムは、全体が本明細書において参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0038990号に記載されている、バインダー、複数の粒子、及び複数の相互接続空隙を含む光学フィルムを指す。
【0010】
周囲電磁放射源は、特定の波長の、又は特定の光源からの光を受光するように構成された受光器、あるいは特定の波長の光を発光するように構成された発光器と干渉し得る。例えば、可視波長は、例えば、受光器内又は発光器内のノイズを増大させることによって、近赤外波長の受光、感知、又は透過に干渉し得る。電磁放射源も意図せずに露見し得る。例えば、近赤外波長のみを発光するように構成された発光器によって発光された光は視認可能ではないが、発光を担う装置又は構造体、例えば発光器の筐体が視認可能になり得る。カモフラージュ技術は、所望の近赤外波長の透過の阻止、干渉、又は減少を不必要に生じさせ得るため、発光器のマスキング、隠蔽、又はその他の仕方のカモフラージュは課題を提示し得る。本開示の諸例に係る光学フィルターは、可視波長による望ましくない光学干渉を防止し、あるいは電磁放射源を視覚からカモフラージュし、その一方で、所望の近赤外波長が発光器によって透過されること、又は受光器によって受光されることを少なくとも部分的に可能にし、あるいはその一方で、比較的高い透明度による近赤外波長の透過を可能にするために用いられ得る。
【0011】
例えば、近赤外波長を受光又は感知するよう動作する受光器は可視波長から遮蔽され、可視波長によって生じ得る近赤外波長の受光又は感知との干渉を防止することができる。近赤外波長を送信するよう動作する光送信器は、可視波長を散乱させることによって、視覚に対してカモフラージュされ得る。例えば、散乱された可視波長は、近赤外波長の送信を妨げることなく、光送信器の存在を隠蔽することができる。
【0012】
表面からの鏡面反射量は、空気界面のフレネル反射によって決定され得る。透明な最上層を有する不透明な表面については、全ての鏡面反射は上部の空気界面から生じ、残りの反射は下層からの拡散反射であると想定され得る。不透明な着色材料もまた、その屈折率を用いて上面上におけるフレネル反射を算出し、他の全ての反射は拡散性であると扱いつつ、同様のモデルに従うことができるであろう。例示的な光学フィルターは、透明基板上又は反射フィルム上に配置された拡散コーティングを有し得る。透明基板上に拡散コーティングがコーティングされる場合には、それは、その下にある要素を隠すために、より高いヘイズを有し得る。反射体上にコーティングがコーティングされる場合には、コーティングは、入射光を反射によって2回拡散させることになる。この場合には、コーティングはより少ないヘイズを有し得る。
【0013】
それゆえ、例示的なシステムは、受光器及び発光器の一方又は両方と、可視波長の透過を少なくとも部分的に減少させることができ、その一方で、近赤外波長の透過を少なくとも部分的に可能にする波長選択性散乱層とを含む光学フィルターを含み得る。例えば、波長選択性散乱層は、入射可視光の大部分を拡散させることができる。本開示による例示的なシステム及び物品は、近赤外光を比較的高い透明度で透過させ、その一方で、例えば可視波長を選択的に散乱又は反射させることによって可視波長の透過を減少させる例示的な波長選択性散乱層を含む例示的な光学物品を含み得る。
【0014】
図1A~
図1Eは、光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
図1Aは例示的な物品10aの横断面図を示す。物品10aは、基板12と、波長選択性散乱層14とを含む。基板12は、ガラス、ポリマー、金属、又は任意の他の適切な硬質、半硬質又は軟質の膜(maters)、及びそれらの組み合わせを含み得る。
図1Aの例示的な物品10aでは、基板12が層として示されているが、諸例では、基板12は、平坦な表面、実質的に平坦な表面、又はテクスチャー化表面を有し得る任意の適切な三次元形状を取ることができる。諸例では、基板12は、デバイス、例えば電子デバイスの筐体、スクリーン、又は表面を含み得る。
【0015】
波長選択性散乱層14は、可視光を選択的に散乱させ、近赤外光を透過させる。諸例では、波長選択性散乱層は、約0.9未満、約0.8未満、約0.7未満、約0.6未満、又は約0.5未満の近赤外散乱比を有し得る。近赤外散乱比は、平均可視散乱に対する平均近赤外散乱の比である。例えば、波長選択性散乱層14は、約0.5より大きい、又は約0.7より大きい、又は約0.9より大きい可視反射ヘイズ率を有し得る。可視反射ヘイズ率は、平均可視全反射率に対する平均可視拡散反射率の比率である。諸例では、波長選択性散乱層14は入射可視光の約50%未満を透過させることができる。諸例では、波長選択性散乱層14は入射近赤外光の約50%超を透過させることができる。諸例では、波長選択性散乱層14は入射可視光の約50%未満を透過させ、入射近赤外光の約50%超を透過させることができる。諸例では、波長選択性散乱層14は入射可視光の約50%超を散乱させることができる。例えば、波長選択性散乱層14は、入射可視光の約50%超を散乱させることによって、入射可視光の約50%未満を透過させることができる。諸例では、波長選択性層14は入射可視光の約50%超を白色光として散乱させることができる。
【0016】
波長選択性散乱層14は、それぞれの所定の屈折率を有する媒体と複数の粒子とを含み得る。諸例では、波長選択性散乱層14はビーズ状の拡散層を含み得る。例えば、波長選択性散乱層14は、媒体と、媒体中に分散されたビーズとを含み得る。ビーズ状の拡散層の媒体は、ガラス、ポリマー、又は任意の他の好適な光学媒体、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。ビーズは、シリカ、ガラス、ポリマー、有機、無機、金属酸化物、ポリスチレン、又は他の好適な散乱材料、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。拡散層は、空気などの気体を含む細孔を含み得る。諸例では、気体を含む細孔はビーズ内に封入されていてもよい。
【0017】
波長選択性散乱層14は、第1の屈折率を有する光学媒体を含み得る。光学媒体は複数の粒子を含み得る。複数の粒子は、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差が約0.1未満となるように第2の屈折率を有し得る。諸例では、複数の粒子は約5μm未満の平均粒径を有し得、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差は約0.1未満であり得る。諸例では、複数の粒子は約1μm未満の平均粒径を有し得、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差は約0.2未満であり得る。諸例では、複数の粒子は約0.5μm未満の平均粒径を有し得、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差は約0.4未満であり得る。諸例では、複数の粒子は約0.3μm未満の平均粒径を有し得、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差は約0.6未満であり得る。諸例では、複数の粒子は約0.2μm未満の平均粒径を有し得、第1の屈折率と第2の屈折率との絶対差は約1.8未満であり得る。
【0018】
諸例では、複数の粒子の平均粒径、第1の屈折率、及び第2の屈折率は、下記の
図15の線82の下の領域から選択される。それゆえ、波長選択性散乱層14の近赤外散乱比は0.2未満になり得る。諸例では、複数の粒子の平均粒径、第1の屈折率、及び第2の屈折率は、
図15の線84の下の領域から選択される。それゆえ、波長選択性散乱層14の近赤外散乱比は0.4未満になり得る。諸例では、複数の粒子の平均粒径、第1の屈折率、及び第2の屈折率は、
図15の線86の下の領域から選択される。それゆえ、波長選択性散乱層14の近赤外散乱比は0.6未満になり得る。諸例では、複数の粒子の平均粒径、第1の屈折率、及び第2の屈折率は、
図15の線88の下の領域から選択される。それゆえ、波長選択性散乱層14の近赤外散乱比は0.8未満になり得る。諸例では、波長選択性散乱層14の近赤外散乱比は0.7未満になり得るか、又は0.5未満になり得る。諸例では、それぞれの線82、84、86、88の下の領域、又は任意の他の領域は、粒径下限によって境界付けされ得る。例えば、領域は、10nm、又は30nm、又は50nmを超える粒径、あるいはレイリー散乱が発現又は支配し得る粒径よりも大きい粒径のみを含み得る。
【0019】
諸例では、波長選択性散乱層14は、50%未満、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%の全可視反射率を有し得る。諸例では、全可視反射率は50%未満であってもよく、波長選択性散乱層14は可視ヘイズによって物体を隠蔽し得る。諸例では、全可視反射率は50%より大きくてもよく、波長選択性散乱層14は可視反射と可視ヘイズとの組み合わせによって物体を隠蔽し得る。諸例では、波長選択性散乱層14は、60%未満、又は40%未満の平均近赤外散乱を有し得る。諸例では、波長選択性散乱層は、10%より大きい、又は25%より大きい、又は58%より大きい平均可視散乱を有し得る。諸例では、波長選択性散乱層14の%全可視反射率と%拡散可視反射率との差は20未満であり得る。諸例では、波長選択性散乱層は、40%未満の平均近赤外散乱、及び58%より大きい平均可視散乱率を有し得、%全可視反射率と%拡散可視反射率との差は18未満であり得る。
【0020】
諸例では、波長選択性散乱層14は、少なくとも15%、又は少なくとも25%、又は少なくとも35%、又は少なくとも50%の可視ヘイズを有し得る。諸例では、光学フィルター10aは、微細複製表面構造などの表面光学微細構造を含み得る。
【0021】
諸例では、波長選択性散乱層14は、バインダーと、複数の粒子と、複数の相互接続空隙とを含むULI層を含み得る。光学フィルター中の複数の相互接続空隙の体積分率は約20%以上であり得る。バインダーと複数の粒子との重量比は約1:2以上であり得る。
【0022】
図1Bは、例示的な物品10bの横断面図を示す。物品10bは、基板12と、波長選択性散乱層14と、反射層16とを含み得る。物品10bにおいては、波長選択性散乱層14と基板12との間に反射層16が示されているが、諸例では、物品10bは基板12を含まなくてもよく、波長選択性散乱層は反射層16上に配置されていてもよい。諸例では、基板12は、例えば、基板12の主表面、又は内部中に、反射層16を含み得る。諸例では、反射層16は基板12の下方に配置されていてもよい。諸例では、反射層16は基板12の上方に配置されていてもよい。諸例では、反射層16は穿孔されていてもよい。諸例では、物品10bは可視光の50%未満を反射し、近赤外光の50%超を透過させることができる。諸例では、反射層16は、例えば選択された波長のみを反射する波長選択性であり得る。反射層16は、多層光学フィルム、ダイクロイック反射体、干渉フィルム、無機多層積層体、金属誘電体積層体、研磨された基板、ミラー、反射型偏光子、又は反射金属若しくはガラス表面などの反射表面を含み得る。諸例では、物品10bは、反射層と波長選択性散乱層14との間、又は波長選択性散乱層14の上方の、又は物品10b内の任意の層に隣接して位置する染料層(図示せず)を含み得る。染料層は、近赤外では透過性又は透明になり、可視では中性となることができ、それにより、反射層16の可視反射を低減する、スペクトル選択性染料を含み得る。諸例では、染料層は、少なくとも30%、50%、70%、又は90%の吸収を有し得る。諸例では、染料層は、可視色を有し、その一方で、近赤外では透過性のままであるように着色されてもよい。
【0023】
図1Cは、例示的な物品10cの横断面図を示す。物品10cは、基板12と波長選択性散乱層14とを含み得る。物品10cは、任意選択的に、
図1Cに示すように、反射層16、インク受容層18、印刷パターン層22、及び保護層24のうちの1つ以上を含み得る。
図1Cは物品10c内の層のための特定の配置を示しているが、それぞれの層は任意の適切な構成に再配置されてもよい。例えば、反射層12が存在する場合には、基板16を省略してもよい。保護層24はシーラント層を含み得る。諸例では、インクパターン層22は、インク受容層18上に堆積され得るインク又は顔料の印刷パターンを含む。諸例では、インク受容層は省略されてもよく、インクパターン層22は波長選択性散乱層14上に堆積されてもよい。諸例では、保護層24は、インクパターン層22と波長選択性散乱層14との間に配置されていてもよい。諸例では、2つの保護層24が配置されていてもよく、一方はインクパターン層22の上方に、他方は波長選択性散乱層14に隣接して配置されていてもよい。
【0024】
図1Dは、例示的な物品10dの横断面図を示す。物品10dは、基板12と、波長選択性散乱層14と、第1のシーラント層26と、第2のシーラント層28とを含み得る。第1のシーラント層26及び第2のシーラント層28の両方のうちの一方はラテックスコーティングを含み得る。各シーラント層は、例えば、水分又は他の反応物若しくは崩壊剤の侵入を防止又は低減することによって、波長選択性散乱層14の完全性を保護することができる。各シーラント層は、波長選択性散乱層14に対して構造支持及び物理的安定性をも提供し得る。例えば、第1のシーラント層26及び第2のシーラント28の一方又は両方は、波長選択性散乱層14が製造基板から剥離又は除去され、その後、製品基板、例えば基板12上に移送され、適用されることを可能にし得る。
【0025】
図1Eは、例示的な物品10eの横断面図を示す。物品10eは、基板12と、基板12に隣接する波長選択性散乱層14と、波長選択性散乱層14上に堆積されたインクパターン層24とを含み得る。各センサセグメント32a、32b、32c、32dを含むセンサ層32が、基板12に隣接して配置され得る。諸例では、基板12は省略されてもよく、波長選択性散乱層14はセンサ層32上に堆積されてもよい。諸例では、波長選択性散乱層14は、各センサセグメント32a、32b、32c、及び32dと整列され得る、各選択散乱セグメント14a、14b、14c、及び14dを含み得る。選択散乱セグメントのうちの1つ以上は省略されてもよく、そのため、波長選択性散乱層14は、各センサセグメントのうちの少なくとも1つと整列され得る少なくとも1つの穿孔を含み得る。異なる選択散乱セグメントは、近赤外散乱比、可視ヘイズ率、又は各選択散乱セグメントと整列したセンサセグメントの性能を向上させることができる他の光学特性を変更することによって調整され得る。
図1Eの波長散乱層14及びセンサ層32内には、4つのセグメントが表示されているが、諸例では、波長散乱層14及びセンサ層32は任意の適当な数のセグメントを有し得る。
図1Eの例では、センサ層32が記載されているが、諸例では、物品10eは、センサセグメントの代わりに光源32a、32b、32c、及び32dを含み得る。
【0026】
図1A~
図1Eは、それぞれの物品10a~10eを、平坦な層を含むように示しているが、様々な例では、物品10a~10eは、任意の好適な形状、周囲又は断面を取り得、物品10a~10eの層は、規則的、不規則、又は複合的な曲率を取り得るか、あるいは異なる領域内では、平坦な、若しくは湾曲した幾何形状を取るか、又はさもなければ、層若しくは物品10a~10eの真下の基板の外径に一致し得る。例えば、物品10a~10eは半球状又はレンズ状の形状を取り得る。
【0027】
図2A~
図2Eは、光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
図2Aは、光学フィルター10及び受光器40を含む例示的な光学システムの概念的略図である。諸例では、受光器40は、光センサ、カメラ、CCD、又は少なくとも光の所定の波長領域を感知するように構成された任意の他のセンサを含み得る。例えば、受光器40は近赤外センサを含み得る。諸例では、受光器40は、光を受光する物体、例えば、入射光を少なくとも部分的に吸収する物体、例えば、太陽熱ヒータ、又は光を受光する任意の他の物体を含み得る。光学フィルター10は、以上において
図1A~
図1Eを参照して説明されたとおりの、波長選択性散乱層を含む例示的な光学フィルターのうちの任意のもの、又は本開示に記載の他の例示的な光学フィルターを含み得る。
図2Aに示すように、光学フィルター10は受光器40に隣接して配置されていてもよい。入射近赤外線42aは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44aは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44aから少なくとも部分的に遮蔽され、近赤外線42aを少なくとも部分的に受光する。諸例では、受光器は光学フィルター10によって可視光線44aから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42aの実質的に全てを受光し得る。
【0028】
図2Bは、光学フィルター10、受光器40、発光器46、及び物体48を含む例示的な光学システムの概念的略図である。諸例では、発光器46は、可視波長、近赤外波長、又は紫外波長を含む、光又は電磁放射の任意の好適な波長の発生源を含み得る。諸例では、発光器46は、電球、白熱光源、小型蛍光灯、LED、ライトガイド、又は任意の自然光源若しくは人工光源を含み得る。諸例では、発光器46は光を発生しなくてもよく、光源によって発生された光を反射又は透過させるのみでもよい。光学フィルター10は受光器40と物体48との間に配置されていてもよい。発光器は、光学フィルター10の、受光器40と同じ側に配置されていてもよい。発光器46から透過された近赤外線42bは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して物体48へ実質的に透過され得る。光42bは物体48によって反射され得、反射光は物体48の光学特性によって変更され得る。反射光線42は光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44bは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40及び発光器46の一方又は両方は可視光線44aから少なくとも部分的に遮蔽される。諸例では、受光器は光学フィルター10によって可視光線44bから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42bの実質的に全てを受光し得る。
【0029】
図2Cは、光学フィルター10、受光器40、及び物体48を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は受光器40と物体48との間に配置されていてもよい。入射近赤外線42cは近赤外波長を含んでもよく、物体48及び光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44cは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44cから少なくとも部分的に遮蔽され、近赤外線42cを少なくとも部分的に受光する。諸例では、受光器40は光学フィルター10によって可視光線44cから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42cの実質的に全てを受光し得る。
【0030】
図2Dは、光学フィルター10及び受光器40を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は受光器40に隣接して配置されていてもよい。入射近赤外線42dは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10から受光器40へ実質的に反射され得る。入射可視光線44dは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44dを少なくとも部分的に受光し、その一方で、近赤外線42dを少なくとも部分的に受光する。
【0031】
図2Eは、光学フィルター10、受光器40、及び発光器46を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は、発光器46と受光器40との間に配置されていてもよい。発光器46から透過された近赤外線42eは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44eは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され、これにより、発光器46は可視光線44eから少なくとも部分的に遮蔽され得る。諸例では、発光器46は、光学フィルター10によって可視光線44eから実質的に又は完全に遮蔽され得る。
図2Eの例示的な光学システムにおいては、受光器40が記載されているが、諸例では、
図2Eの例示的な光学システムは受光器40を含まなくてもよい。例えば、例示的な光学システムは発光器46及び光学フィルター10を含み得、光学フィルター10は、発光器46を、視覚によって見えてしまうことから隠蔽し得る。
【0032】
諸例では、光学フィルター10は、少なくとも1つの取り外し可能又は再配置可能な層を含み得るか、あるいは光学フィルター10は全体として取り外し又は再配置可能であり、そのため、光学フィルター10は、光学フィルター10の下の、又はそれに隣接する基板に対して取り外し又は再配置可能である。諸例では、光学フィルター10の周囲は、発光器46又は受光器40の一方又は両方の周囲を越えて延びてもよく、あるいは光学フィルター10の主表面の領域は、発光器46又は受光器40の一方又は両方の表面積よりも大きいか小さくてもよい。諸例では、光学フィルター10は、電子機器、回路、基板、センサ、送信機などの他の構成要素を、光学フィルターによってこれらの構成要素を視覚から遮蔽することによって、カモフラージュするように構成され得る。諸例では、1つ以上の発光器46又は受光器40、例えばアレイを、光学フィルター10に隣接して配置することができるであろう。諸例では、発光器46又は受光器40の一方又は両方は、光学フィルター10から、例えば、少なくとも1cm、又は10cm、又は1m、又は10m、又は100m、又は1km、相対的に離れているか、あるいはなお更に離れていてもよい。
図2A~
図2Eでは、例えば、発光器46及び受光器40の一方又は両方と光学フィルター10との間の、直接経路が示されているが、諸例では、発光器46及び受光器40の一方又は両方と光学フィルター10との間の光は、光学的に導かれた経路、反射経路、又は屈折若しくはフィルタリングを含む光学的操作を含む経路、又は異なる光学媒体を通って進む経路を含む、非直接的経路をたどり得る。
【0033】
このように、諸例では、光学フィルター10は、受光器40を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、その一方で、受光器40が近赤外波長を受光することを実質的に可能にするように構成され得る。諸例では、光学フィルター10は、例えば可視波長を散乱させることによって、受光器40又は発光器46の一方又は両方を視覚からカモフラージュするように構成され得る。
【0034】
図3A~
図3Dは、例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。電荷結合素子(charge-coupled device、CCD)などの撮像センサは近赤外領域内で検出するため、可視的に反射可能なグラフィックを含む標示を生成することが可能であろう。標示は、カメラによって検出可能である不可視画像を隠蔽することができるであろう。例えば、画像は、例えば、バーコード、2Dバーコード、又はQRコードなどの、信号又は情報を符号化する所定のパターンを含むことができるであろう。QRコードの物理的サイズは、それらが包含し得る情報量を制限し得る。しかし、不可視QRコードは、可視グラフィックを乱す、又は損なうことなく、標示と同じ物理的大きさを有することができるであろう。一例では、電子ディスプレイ60は、ディスプレイ60の背後に隠蔽されたそれぞれの可視及び近赤外発光器によって放射された可視及び近赤外光パターンを同時に表示する能力を有し得る。電子ディスプレイ60は、以上において
図1A~
図1Eを参照して説明された例示的な光学フィルターで被覆されていてもよい。例えば、電子ディスプレイ60は、
図3Bに示すように、視認可能であるパターン62と不可視の近赤外線パターン64とを同時に表示し得る。パターン62は、相対的により小さいQRコード、又は相対的により小さい表示フットプリントを有する他の証印を含み得、パターン64は、相対的により大きいQRコード、又は相対的により大きなフットプリントを有する他の証印を含み得る。パターン62は、光学フィルター(図示されていない)による可視波長の反射又は散乱の結果、視認可能になり得る。
図3Aにおいて見られるように、パターン62のみが視認可能であり、パターン64は、近赤外波長において比較的高い透明度で提示されている一方で、視覚に対して不可視のままとなり得る。それゆえ、近赤外波長を感知する能力を有するカメラは、十分な解像度で、例えば、パターン64内に包含され得る情報を復号するのに十分な解像度で、パターン64を感知することができる。
図3Cに示す例では、所定のパターンのみがディスプレイ60上で視認可能であり、その一方で、
図3Dに示すように、近赤外カメラよってのみ検出可能な不可視の近赤外パターンがディスプレイ60上に同時に表示され得る。それゆえ、3A、3B、3C、及び3Dのそれぞれの例示的なシステムでは、例示的な光学フィルターを用いて、所定の可視パターンのみを見せつつ、近赤外線パターンの発生源を隠蔽又はカモフラージュすることができる。一部の例では、不可視の近赤外パターン64を用いて秘匿情報を符号化することができ、その一方で、視認可能なパターン62を用いて、視認可能な情報、又は少なくとも、符号化可能であるが符号化しても視認可能な情報を提示することができる。例えば、パターン62は、ウェブサイトなどの、情報の第1のセットを符号化することができ、その一方で、パターン64は、ディスプレイ60の位置などの、情報の第2のセットを符号化することができる。諸例では、電子ディスプレイ60は、可視パターン、不可視パターン、又はその両方を表示し得る。諸例では、電子ディスプレイ60は複数のパターンを表示し得る。諸例では、電子ディスプレイは、静的パターン又は動的パターンを表示し得る。それゆえ、例示的な光学フィルターは、高透明度の近赤外透過を有するカモフラージュをもたらし得る。
【0035】
図4は例示的な技術のフローチャートである。例示的な技術は、発光器46又は受光器40の一方又は両方に隣接して光学フィルター10を配置する工程(52)を含み得る。光学フィルター10は、以上において
図1A~
図1E及び
図2A~
図2Eを参照して説明されたとおりの、波長選択性散乱層を含む。例示的な技術は任意選択的に、光学フィルター10と発光器46又は受光器40の一方又は両方との間に反射層16を配置する工程(54)を更に含み得る。光学フィルター10は任意選択的に、発光器46又は受光器40の一方又は両方をカモフラージュし得る(56)。光学フィルター10は任意選択的に、発光器又は受光器の一方又は両方を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し得る(58)。
【0036】
このように、本開示による例示的なシステム、物品、及び技術は、例えば可視波長を選択的に散乱又は反射させることによって可視波長の透過を減少させながら近赤外光を比較的高い透明度で透過させる例示的な波長選択性散乱層を含む例示的な光学物品を含み得る。
【0037】
本開示に係る例示的な物品及び技術が、以下の非限定的実施例によって例示される。
【実施例0038】
実施例1
様々なサンプル光学フィルムのための光学特性を決定した。後述のようにサンプル光学フィルムS01~S34を調製した。サンプルS01~S33の各々について、分光計(Lambda 900、PerkinElmer)を積分球とともに用いて拡散及び鏡面反射率を取得することで、可視散乱、近赤外散乱、全可視反射率、及び拡散可視反射率を測定した。結果を表1に示す。提示された反射率値は、SPIN(鏡面含む、若しくは全)反射率、及びSPEX(鏡面除く、若しくは拡散)反射率を含む。各サンプルフィルムで被覆された近接センサの感度を決定し、「機能せず」、「機能」、「良」、及び「優良」のうちの1つとして分類した。ヘイズ計(Haze-gard Plus、BYK-Gardner)を用いて、サンプルS01~S34について、透過率、ヘイズ、及び透明度を決定した。結果を表2に示す。
【0039】
サンプルS01~S03はULIフィルムであり、サンプルS02は高ヘイズ高透明度ULIフィルムを含むものであった。サンプルS01は、Silquest A-174 75nmシラン粒子(Momentive)を、60%wt比のペンタエリスリトールトリアクリレートモノマー(SR444、Sartomer)、及び2.5%のIrgacure184(Ciba Specialty Chemicals Company、High Point N.C)と組み合わせることによって調製し、10μmのコーティング厚さに到達した。サンプルS04は、TiO
2ナノ粒子及びシリコーン微粒子のフィルムを含むものであった。サンプルS04は、19.13gのM1192(Miwon)、3.38gのCN9018(Sartomer)、2.5gのTospearl145(Momentive)、12.5gのSR415(Sartomer)、12.5gの、IBOA中42.3wt%TiO
2(UV-TITAN L-530、Sachtleben)、25gのメチルエチルケトン、及び0.5gの光開始剤TPO-L(BASF)を混合し、#8メイヤーバーを用いて調合物をコーティングすることによって調製した。サンプルS05は、微細複製表面構造を有するフィルムであった(
図9)。サンプルS6は、ペンタエリトリトールトリアクリレートバインダー(SR444、Sartomer)及びイソプロピルアルコール溶媒とともに、10μmの乾燥厚さのためにESR2フィルム(Enhanced Specular Reflector、3M)上にコーティングされた3μmのポリスチレンビーズを含むものであった。サンプルS07は、不織布材料(Sony TVモデル40W600Bから取り外した下部拡散板)を含むものであった。サンプルS08は、TiO
2コーティングPETフィルム、SH2FGST Fasara Film(3M)を含むものであった。サンプルS09及びS10は、ヘイズ値の異なるバルク拡散体である。サンプルS09は、PATTCLR0艶消しアクリレートシート(ePlastics、San Diego、CA)を含むものであった。サンプルS10は、TCL TV(モデル40FD2700)からの拡散板を含むものであった。サンプルS11は、iPad(第1世代、Apple)バックライトからの下部拡散シートであった。サンプルS12は、分散TiO
2(白色書き込みブロックを有するプラスチック6”x8”小型シールトップ食品袋、Elkay Plastics、Bensenville、ILから)を含むプラスチックフィルムを含むものであった。サンプルS13は、白色紙(HAmmermill Copy Plus多目的プリンタ用紙)を含む。サンプルS14は、微細複製表面構造(iPhone6バックライト)を有するフィルムを含む。サンプルS15~S22はULI材料のフィルムを含む。サンプルS23は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS04を含む。サンプルS24は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS03を含む。サンプルS25は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS15を含む。サンプルS26は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS16を含む。サンプルS27は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS17を含む。サンプルS28は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS18を含む。サンプルS29は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS19を含む。サンプルS30は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS20を含む。サンプルS31は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS21を含む。サンプルS32は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS2を含む。サンプルS33は、自分自身の上に折り重ねられたサンプルS22を含む。
【表1】
【表2】
【0040】
実施例2
図5は、例示的な光学フィルターとインクパターンとを含む例示的な物品の写真である。ESR2を反射層として用いた。ULI層(サンプルS01コーティング)を波長選択性散乱層と反射層に適用している。乾燥時に厚さ1ミルである、ラテックスコーティング(PrintRite DP 261、Lubrizol))の層をインク受容層とシーラント層との組み合わせとしてULI層上にコーティングしている。インク受容層の上には、インクジェット(溶剤インク)印刷パターンが印刷されている。
図5に示すように、インクジェット印刷パターンは鮮明であり、汚れ、ぼやけ、又はその他の欠陥がない。
【0041】
実施例4
図6Aはソーラーパネルの写真である。
図6Bは、例示的な光学フィルターによってカモフラージュされたソーラーパネルの写真である。ESR2層上にULI層(サンプルS01)を堆積させることによって多層光学フィルターを形成した。光学フィルターは、カモフラージュパターン(背景木目に類似した模造木材)を印刷したものであった。
図6AのCIGS(copper indium gallium selenide、セレン化銅インジウムガリウム)フィルムソーラーパネルを、
図6Bに示すように、例示的な光学フィルターでカモフラージュした。このフィルターは、3M 8211 Optically Clear adhesiveを用いてソーラーパネルに積層した。カモフラージュしたフィルムパネルは、その元の電力の45%を発生した。裏面のESR2フィルムはほぼ全ての可視光を反射した。電力は、IV5ソーラー出力試験装置(PV Measurements,Inc.、Boudler CO)によって測定した。
【0042】
実施例5
図7は、例示的な光学フィルターとインクパターンとを含む例示的な物品の写真である。光学フィルターは、反射基板上に堆積させたULI層で形成した。光学フィルターの右側は、インク受容層領域として、乾燥後に透明フィルムを形成したラテックスコーティング(PrintRite DP 261,Lubrizol)でコーティングした。インク受容コーティング領域及び非コーティング光学フィルター領域上にパターンをインクジェット印刷した。
図7に示すように、左側の非コーティング領域上の印刷品質は、右側のインク受容層をコーティングした領域内よりも劣っていた。例えば、非コーティング領域上の印刷パターンは不明瞭で筋があった。
【0043】
実施例7
図8A~
図8Cは、(
図2Eに示す例示的な光学システムと同様の)例示的な光学フィルターと近赤外LEDとを含む例示的なシステムの写真である。
図8Aには、近赤外発光LEDを含む構造が示されている。この構造を、ESR2層上にコーティングされたULIの層(サンプルS01)を含む例示的な光学フィルターによって被覆した。この被覆した構造を赤外線カメラを用いて撮像し、
図8Bに示す赤外画像を得た。
図8Bに示すように、LED光源の画像は、
図8Cに示す不明瞭な赤外画像と比較して、比較的明瞭である。
図8Bとは異なり、
図8Cの構造(サンプルS06)は、波長選択性散乱層を含む光学フィルターの代わりにビーズ層でコーティングした。
図8Cに示すように、非選択性ビーズ層は、非常に低い透明度でIR LEDの画像を透過した。
【0044】
実施例9
図9は、例示的な光学フィルターの表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。光学フィルターは表面テクスチャー化フィルム(サンプルS05)を含むものであった。
【0045】
実施例10
図10A及び
図10Bは例示的な光学フィルターの走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図10Aは、高ヘイズ低透明度ULI層(サンプルS22)を含む光学フィルターを示し、
図10Bは、高ヘイズ高透明度ULI層(サンプルS02)を含む光学フィルターを示す。
【0046】
実施例11
図11は、例示的な光学フィルターについての%反射率及び%透過率対波長を示すチャートである。曲線72は、第1のサンプルULI層(サンプルS01)の%透過を表す。曲線74は、第2のサンプルULI層(サンプルS01、ただし50%、より厚い)の%透過率を表す。曲線76は、第1のサンプルULI層の%透過率を表す。曲線78は、第2のサンプルULI層の%反射率を表す。
図11に示すように、両サンプルULI層は、近赤外波長を透過しつつ、可視波長を選択反射した。
【0047】
実施例12
図12A及び
図12Bは、例示的な光学フィルターについての%透過率対波長を示すチャートである。
図12Aは、ビーズをコーティングされ、PETで限定されたESR2を含む第1のサンプル光学フィルター(サンプルS06)についての%透過率を示す。
図12Bは、ULIをコーティングされ、PETを積層されたESR2を含む第2のサンプル光学フィルターについての透過率を示す。
図12A及び
図12Bに示すように、どちらのサンプル光学フィルターも近赤外波長を透過したが、ULIコーティングESRはビーズコーティングESRに比べて可視波長の透過を選択的に遮断した。ビーズコーティングESRは可視波長の遮断の程度がより低かった。
【0048】
実施例13
図13は、サンプルフィルムについての%透過率対波長を示すチャートである。最上部の曲線は、コーティングされていないPETについての%透過率を示し、%透過率はスペクトルの可視領域及び近赤外領域にわたって比較的平坦であることが分かる。中間の曲線及び下の曲線は、#3メイヤーバービーズコーティングPET層、及び#10メイヤーバービーズコーティングPET層についての%透過率をそれぞれ示す。ビーズコートは透過率を低下させたが、ビーズコートは透過率を選択的に低下させず、得られた透過率曲線はスペクトルの可視領域及び近赤外領域にわたって同じく比較的平坦であった。それゆえ、ビーズコーティングPETは、ULIをコーティングすることによって形成した波長選択性散乱層のようにうまく機能しなかった。
【0049】
実施例14
図14は、粒径の異なる粒子を含む光学フィルターについての散乱効率対波長を示す、ミー散乱の結果を表すチャートである。媒体中に分散された粒子を含む光学フィルターのために、媒体中に分散された粒子の粒径、及び媒体と粒子との屈折率の差の関数としての散乱効率のための、ミー散乱に基づくモデルを用意した。媒体の屈折率を1.5に設定し、散乱粒子の屈折率を1.0に設定することにより、モデルを評価した。粒径を0.2μmから1.0μmまで0.1μmの刻みで変化させた(左から右への曲線)。
【0050】
実施例15
図15は、媒体と、媒体中に分散された複数の粒子とを含む光学フィルターについての、近赤外散乱比を粒径及び屈折率差の関数として示すチャートである。モデルを用いて、近赤外散乱比に対する、粒径、及び媒体と粒子との屈折率の差の影響を評価し、
図15にモデルの結果が提示されている。X軸は屈折率の差(媒体-粒子)を表し、Y軸は粒径(μm単位)を表す。等高線は、0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.4、1.6、及び1.8などの異なる散乱比を表す。それゆえ、曲線82は0.2の近赤外散乱比を表す。曲線84は0.4の近赤外散乱比を表す。曲線86は0.6の近赤外散乱比を表す。曲線88は0.8の近赤外散乱比を表す。
【0051】
実施例16
表3は、空気界面上における、特定の屈折率を有するハイブリッド表面(又は非金属)を模擬することができる拡散コーティングの最小散乱(透過)を提示する。
【表3】
【0052】
表面は白色に処理されている。R%は、既知のRIを有する材料に対する空気のフレネル反射によって算出する。100%全反射=フレネル反射+拡散反射と仮定して、SPEX/SPINの理論的最大比(拡散/全可視反射)を算出した。
【0053】
実施例17
X-Riteを用いて多数のサンプルについての拡散反射率及び全反射率を測定した。結果を表4に示す。
【表4】
【0054】
本発明の様々な実施例を記載した。これら及び他の実施例は添付の特許請求の範囲内に含まれる。