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特開2022-119884運転支援装置、運転支援方法、プログラム、および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119884
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、プログラム、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20220809BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220809BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20220809BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G08G1/09 A
G08G1/16 D
G08G1/01 A
G09B29/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085032
(22)【出願日】2022-05-25
(62)【分割の表示】P 2016249340の分割
【原出願日】2016-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】321011767
【氏名又は名称】ジオテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】中尾 和浩
(72)【発明者】
【氏名】沓名 守通
(72)【発明者】
【氏名】松本 一也
(57)【要約】
【課題】右左折が可能であって信号機や停止線が設けられていない地点においても、車両
の停止の要否を適切に判定可能とする。
【解決手段】道路上の予め決められた位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を含む地図データを取得する取得部と、走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出部と、仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備え、仮想停止情報は、当該道路に関する複数の車両の走行履歴情報に基づいて、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられて設定された仮想停止線を含む運転支援装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の予め決められた位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を含む地図データを取得する取得部と、
走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出部と、
前記仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、
判定結果を出力する出力部と、を備え、
前記仮想停止情報は、当該道路に関する複数の車両の走行履歴情報に基づいて、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられて設定された仮想停止線を含む、
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記仮想停止情報は、現実には信号機が存在しない地点に対応付けられた仮想信号機を含むことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記仮想信号機は、一時停止を示す状態の信号機であることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転支援装置により実行される運転支援方法であって、
道路上の予め決められた位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を含む地図データを取得する取得工程と、
走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出工程と、
前記仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定工程と、
判定結果を出力する出力工程と、を備え、
前記仮想停止情報は、当該道路に関する複数の車両の走行履歴情報に基づいて、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられて設定された仮想停止線を含む、
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項5】
コンピュータを備える運転支援装置により実行されるプログラムであって、
道路上の予め決められた位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を含む地図データを取得する取得部、
走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出部、
前記仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定部、
判定結果を出力する出力部、
として前記コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記仮想停止情報は、当該道路に関する複数の車両の走行履歴情報に基づいて、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられて設定された仮想停止線を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援のために使用される運転支援装置、運転支援方法、プログラム、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転支援や自動運転に適した地図データの開発が進んでいる。特許文献1では、車線情報と信号機情報とを対応付けて記憶し、信号機に応じて運転支援を行う手法が記載されている。さらに特許文献1では、信号機と対応付けられた停止線の位置を示す停止線情報を記憶し、停止線の位置で車両が停止するように運転支援を行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-40644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、道路の右左折が可能な地点において、信号機や停止線が必ず設けられているとは限らない。そのため、右左折が可能であって信号機や停止線が設けられていない地点では適切な運転支援を行うことができない。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、右左折が可能であって信号機や停止線が設けられていない地点においても、車両の停止の要否を適切に判定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、道路上の予め決められた位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を含む地図データを取得する取得部と、走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出部と、仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備え、仮想停止情報は、当該道路に関する複数の車両の走行履歴情報に基づいて、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられて設定された仮想停止線を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る運転支援システムの構成を示す。
図2】道路及び車線の例を示す。
図3】道路リンクデータ及び車線リンクデータの例を示す。
図4】仮想停止線及び仮想信号機が設けられた交差点の例を示す。
図5】停止線データ及び信号機データの例を示す。
図6】仮想停止線が設けられた交差点とそのデータの例を示す。
図7】仮想停止線が設けられた交差点とそのデータの例を示す。
図8】運転支援装置の構成を示す。
図9】運転支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好適な実施形態では、地図を示す地図データ構造は、任意の位置に車両を停止させることを示す仮想停止情報を対象地点に対応付けて記憶している。この情報を参照することにより、現実には停止線や信号機が設けられていない交差点などにおいても適切な運転支援を行うことが可能となる。
【0009】
上記の地図データ構造の一態様では、前記対象地点は所定の距離以内にある2つの交差点であって、前記仮想停止情報は前記2つの交差点の間に存在する道路に対応付けられている。この態様では、2つの交差点が近接して設けられている場合など、一部の道路に停止線や信号機が設けられていないことが多い場所においても、適切な運転支援を行うことが可能となる。
【0010】
上記の地図データ構造の他の一態様では、前記仮想停止情報は、現実には停止線が存在しない地点に対応付けられた仮想停止線を含む。この態様では、現実には停止線が存在しない地点に仮想停止線を設けることにより、仮想停止線で車両を停止させるように運転支援を行うことが可能となる。好適には、前記仮想停止線の位置は、固定の地点であるか、又は、前記固定の地点から変更された地点である。仮想停止線の位置は、基本的には交差点から所定距離の地点など、固定の地点に設定される。但し、対象となる道路の勾配を考慮したり、多数の車両のプローブデータを参照するなどして仮想停止線の位置を適切な位置に変更してもよい。
【0011】
上記の地図データ構造の他の一例では、前記仮想停止情報は、現実には信号機が存在しない地点に対応付けられた仮想信号機を含む。この態様では、現実には信号機が存在しない地点に仮想信号機を設けることにより、仮想停止線で車両を停止させるように運転支援を行うことが可能となる。この場合、前記仮想信号機は、一時停止を示す状態の信号機とするのが好ましい。
【0012】
本発明の他の好適な実施形態では、送信装置は、上記の地図データ構造を有する地図データを記憶する記憶部と、前記地図データを、車両に送信する送信部と、を備える。この送信装置により、上記の地図データを車両に送信して利用させることができる。
【0013】
本発明の他の好適な実施形態では、運転支援装置は、上記の地図データ構造を有する地図データを取得する取得部と、走行中の道路における仮想停止情報を検出する検出部と、前記仮想停止情報に基づいて、車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備える。これにより、現実には停止線や信号機が設けられていない交差点などにおいても適切な運転支援を行うことが可能となる。
【実施例0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[システム構成]
図1は、本発明を適用した運転支援システムの構成を示す。運転支援システムは、サーバ10と、車両3に搭載された運転支援装置20とを含む。サーバ10と運転支援装置20とは無線通信可能に構成されている。なお、図1においては説明の便宜上1つの車両3のみが示されているが、実際には多数の車両3がサーバ10と通信する。
【0015】
サーバ10は、地図データを記憶しており、運転支援装置20からの要求により車両3の現在位置周辺の地図データを運転支援装置20へ提供する。本実施例では、車両3の走行車線を考慮した運転支援が行われるため、地図データとしては、道路毎の情報を含む道路リンクデータに加えて、車線毎の情報を含む車線リンクデータが用意されている。具体的に、サーバ10は、道路リンクデータベース(以下、データベースを「DB」と記す)11と、車線リンクDB12と、停止線DB13と、信号機DB14とを有する。道路リンクDB11は道路リンクデータを記憶しており、車線リンクDB12は車線リンクデータを記憶しており、停止線DB13は停止線データを記憶しおり、信号機DB14は信号機データを記憶している。
【0016】
[地図データ]
(道路リンクデータと車線リンクデータ)
まず、道路リンクデータと車線リンクデータについて説明する。いま、図2(A)に示すように、片側2車線の「道路1」があるとする。東行きの2車線を「道路1A」と呼び、西行きの2車線を「道路1B」と呼ぶことにする。東行きの道路1Aは「車線1A-1」と「車線1A-2」を有し、西行きの道路1Bは「車線1B-1」と「車線1B-2」を有する。
【0017】
この場合、道路1に関するデータは、図2(B)に示すように、道路リンクデータとして、道路1Aに対応する「道路リンクRL1A」と、道路1Bに対応する「道路リンクRL1B」が用意される。これに加えて、車線リンクデータとして、車線1A-1に対応する「車線リンクLL1A-1」と、車線1A-2に対応する「車線リンクLL1A-2」と、車線1B-1に対応する「車線リンクLL1B-1」と、車線1B-2に対応する「車線リンクLL1B-2」とが用意される。なお、図2の例では、各道路リンク及び車線リンクの両端であるノードは、「ノードN1」と「ノードN2」であるものとする。
【0018】
図3(A)は、図2の場合における道路リンクデータの例を示す。図3(A)に示すように、道路リンクデータは、道路リンクIDと、始点ノードと、終点ノードと、進行方向(方位)と、対応する車線リンクと、属性とを含む。
【0019】
「道路リンクID」は、各道路リンクに一意に付与された識別情報であり、「始点ノード」はその道路リンクの始点となるノードのIDであり、「終点ノード」はその道路リンクの終点となるノードのIDである。「進行方向(方位)」は、その道路において車両が走行する方向を示し、例えば真北を0°とした360°の方位により示される。「対応する車線リンク」は、図2(B)に示すような、その道路リンクに対応する車線リンクのIDである。「属性」は、その道路リンクに関する各種の属性情報であり、例えば車線数、道路幅などを含む。
【0020】
一方、図3(B)は、図2の場合における車線リンクデータの例を示す。図3(B)に示すように、車線リンクデータは、車線リンクIDと、始点ノードと、終点ノードと、進行方向(方位)と、対応する道路リンクと、属性とを含む。
【0021】
「車線リンクID」は、各車線リンクに一意に付与された識別情報であり、「始点ノード」はその車線リンクの始点となるノードのIDであり、「終点ノード」はその車線リンクの終点となるノードのIDである。「進行方向(方位)」は、その車線において車両が走行する方向を示し、例えば真北を0°とした360°の方位により示される。「対応する道路リンク」は、図2(B)に示すような、その車線リンクに対応する道路リンクのIDである。「属性」は、その道路リンクに関する各種の属性情報であり、例えば、道路幅、右折レーンの有無などを含む。
【0022】
なお、図3に示す道路リンクデータ及び車線リンクデータの内容は一例であり、両者の対応関係が明確になっていれば、共通する情報(例えば始点ノード、終点ノード、進行方向など)はいずれか一方のデータのみに含めても良い。
【0023】
(停止線データ及び信号機データ)
次に、停止線データ及び信号機データについて説明する。停止線データは、道路又は車線に設けられた停止線毎に用意され、その停止線においてどのような運転支援を行うべきかを決定する際に使用される。また、信号機データは、基本的に停止線に対応して用意され、その停止線においてどのような運転支援を行うべきかを決定するために使用される。地図データにおいては、基本的に現実の世界に存在する停止線及び信号機に対応して、停止線データ及び信号機データが用意されている。
【0024】
しかし、現実の世界においては、車両が右左折可能な交差点の全てに必要な停止線や信号機が設けられているとは限らない。よって、現実に停止線や信号機が設けられていない地点においては、地図データ中に停止線データや信号機データが用意されていないため、地図データに基づいた運転支援や自動運転を行うことができない。
【0025】
そこで、本実施例では、地図データにおいて、必要に応じて仮想停止線や仮想信号機を設定する。ここで、「仮想停止線」とは、現実には停止線が存在しない地点に仮想的に対応付けられた停止線であり、「仮想信号機」とは、現実には信号機が存在しない地点に仮想的に対応付けられた信号機である。仮想停止線と仮想信号機を含めて「仮想停止情報」とも呼ぶ。このように地図データ中に仮想停止線や仮想信号機を設けることにより、現実には停止線や信号機が設けられていない交差点などにおいても適切な運転支援や自動運転を行うことが可能となる。
【0026】
(第1の例)
図4は、仮想停止線及び仮想信号機が設けられた交差点の例を示す。この交差点Aは、相互に近接する2つの交差点CR1aとCR1bにより構成されている。このように、地図データにおいては、十分に近接した複数の交差点を全体として1つの交差点として取り扱うことがある。一例としては、2つの交差点を結ぶ道路リンクの属性を「交差点内リンク」とし、交差点内リンクで接続される2つの交差点を全体として1つの交差点として取り扱う。このように複数の交差点が近接するような場合には、その交差点を構成する一部の道路に停止線や信号機が設けられていないことがある。
【0027】
具体的に、図4の例では、道路R01に道路R02が接続して交差点CR1aを構成し、道路R01に道路R03が接続して交差点CR1bを構成している。そして、2つの交差点CR1aとCR1bが1つの交差点Aとして取り扱われる。この交差点Aでは、道路R01の北行きの車線に停止線ST01が存在し、停止線ST01に対応して信号機SIG01が設けられている。また、道路R01の南行きの車線に停止線ST02が存在し、停止線ST02に対応してSIG02が設けられている。さらに、道路R03の西行きの車線に停止線ST03が存在し、停止線ST03に対応して信号機SIG03が設けられている。しかしながら、現実には道路R02には停止線が存在せず、対応する信号機も存在していない。この場合、停止線データや信号機データが存在しないため、道路R02を東向きに走行してきた車両Vに対して運転支援を行うことができない。また、車両Vが自動運転車両である場合には、停止することなく交差点CR1aに進入してしまう恐れがある。
【0028】
そこで、地図データにおいては、図4に示すように、道路R02の東行きの車線に仮想停止線ST04を設ける。さらに、仮想停止線ST04に対応して仮想信号機SIG04を設ける。通常、仮想信号機は、仮想停止線で停止した車両の進行方向の位置に設けられる。これにより、道路R02を東向きに走行してきた車両Vに対して、仮想停止線ST04の位置で停止すべき旨の運転支援を行うことができる。また、車両Vが自動運転車である場合には、仮想停止線ST04の位置で車両Vを停止させることができる。
【0029】
この例では、さらに道路R03の北側の側線(道路の端の線)R03xを延長する形で仮想停止線ST05を設けることが好ましい。このような停止線を「側線延長線」とも呼ぶ。これにより、道路R02から交差点CR1aを右折して道路R01を南向きに走行する車両Vを、交差点CR1bに進入する前に停止させることができるようになる。即ち、道路R02から交差点CR1aを右折して道路R01を南向きに走行する車両と、道路R03から交差点CR1bに進入した車両との衝突を防止することができる。
【0030】
図5(A)は、図4に示す交差点Aの停止線データの例を示す。停止線データは、停止線IDと、位置情報と、対応する道路と、仮想フラグと、交差点内フラグとを含む。
【0031】
「停止線ID」は、各停止線に一意に付与された識別情報であり、仮想停止線に対しても現実に存在する停止線と同様に付与される。「位置情報」は、その停止線の地理上の位置を示し、具体的には緯度及び経度により示される。位置情報は、緯度、経度に加えて、高度の情報を含んでいても良い。ここで、仮想停止線の位置は、基本的には交差点から所定距離の地点とされる。例えば、仮想停止線ST04は、道路R01の西側の端部から所定距離Dの地点に設けられる(図4参照)。但し、車両の大きさや周囲の状況に応じて、仮想停止線の位置を変更してもよい。例えば、仮想停止線が設けられる道路の勾配に基づいて車両の止まりやすさを考慮し、その道路が上り勾配で交差点に接続している場合には仮想停止線を通常よりも交差点に近い地点に設け、その道路が下り勾配で交差点に接続している場合には仮想停止線を通常よりも交差点から遠い地点に設けてもよい。また、その交差点を通過した多数の車両のプローブ情報(走行履歴情報)を収集し、多数の車両が停止している位置が適切な位置であると推定して、その位置に仮想停止線を設けることとしてもよい。
【0032】
「対応する道路」は、その停止線が設けられている道路の道路リンクIDである。なお、図4の例では、各道路は片側一車線であるため、説明の便宜上、各停止線を道路リンクと対応付けているが、停止線を車線毎に設け、停止線IDを各車線の車線リンクIDと対応付けても良い。
【0033】
「仮想フラグ」は、その停止線が仮想停止線であることを示す属性情報である。具体的に、現実に存在する停止線については仮想フラグが「0」に設定され、仮想停止線については仮想フラグが「1」に設定される。「交差点内フラグ」は、その停止線が交差点内にあるか否かを示す属性情報である。具体的に、交差点内に存在しない停止線については交差点フラグが「0」に設定され、交差点内に存在する停止線については交差点フラグが「1」に設定される。
【0034】
図5(A)の停止線データは図4の交差点Aに対応しており、図4に示すように現実に存在する停止線ST01~ST03について仮想フラグが「0」に設定され、交差点内フラグが「0」に設定されている。また、仮想停止線ST04については、仮想フラグが「1」、交差点内フラグが「0」に設定されている。さらに、側線延長線である仮想停止線ST05については、仮想フラグが「1」、交差点内フラグが「1」に設定されている。
【0035】
図5(B)は、図4に示す交差点Aの信号機データの例を示す。信号機データは、信号機IDと、位置情報と、対応する道路と、対応する停止線と、仮想フラグとを含む。
【0036】
「信号機ID」は、各信号機に一意に付与された識別情報であり、仮想信号機に対しても現実に存在する信号機と同様に付与される。「位置情報」は、その信号機の地理上の位置を示し、具体的には緯度及び経度により示される。「対応する道路」は、その信号機が設けられている道路の道路リンクIDである。なお、対応する道路は、道路リンクIDの代わりに車線リンクIDと対応付けてもよい。「対応する停止線」は、その信号機に対応する停止線の停止線IDである。「仮想フラグ」は、その信号機が仮想信号機であることを示す属性情報である。具体的に、現実に存在する信号機については仮想フラグが「0」に設定され、仮想信号機については仮想フラグが「1」に設定される。なお、仮想信号機は、基本的には一時停止を示す状態、即ち赤色で点滅している状態の信号機とする。但し、その交差点に設けられた他の信号機の状態に基づいて、仮想信号機の色や状態を推定できる場合には、推定された色や状態の信号機として処理してもよい。
【0037】
図5(B)の信号機データは図4の交差点Aに対応しており、図4に示すように現実に存在する信号機SIG01~SIG03について仮想フラグが「0」に設定され、仮想信号機SIG04については仮想フラグが「1」に設定されている。
【0038】
(第2の例)
図6(A)は、仮想停止線が設けられた交差点の他の例を示す。この交差点Bは、相互に近接する2つの交差点CR2aとCR2bにより構成されている。具体的に、図6(A)の例では、道路R11に道路R13が接続して交差点CR2aを構成し、道路R11に道路R12が接続して交差点CR2bを構成している。そして、2つの交差点CR2aとCR2bが1つの交差点Bとして取り扱われる。この交差点Bでは、道路R11の西行きの車線に停止線ST11が存在し、停止線ST11に対応して信号機SIG11が設けられている。また、道路R11の東行きの車線に停止線ST12が存在し、停止線ST12に対応してSIG12が設けられている。さらに、道路R13の南西行きの車線に停止線ST13が存在し、停止線ST13に対応して信号機SIG13が設けられている。
【0039】
しかし、交差点Bでは、道路R11の南側の敷地に駐車場Pが存在しており、駐車場Pから出る車両が、道路R11の停止線ST11を超えた位置で、道路R11に対して北向きに合流するようになっている。この場合、駐車場Pから左折して道路R11に合流する車両Vは、合流後に停止線が無いため、そのまま交差点CR2aに進入した場合に道路R13を走行する車両と衝突する恐れがあり、さらに交差点CR2bに進入した場合に道路R12を走行する車両と衝突する恐れがある。
【0040】
そこで、交差点Bにおいては、道路R13の側線(道路の端の線)R13xを延長する形で仮想停止線ST14を設けることが好ましい。この仮想停止線ST14は側線延長線である。これにより、駐車場Pから左折して道路R11に合流し、西向きに走行しようとする車両Vについて、仮想停止線ST14の位置で停止すべき旨の運転支援を行うことができる。また、車両Vが自動運転車である場合には、仮想停止線ST14の位置で車両Vを停止させることができる。
【0041】
交差点Bの例においては、さらに駐車場Pの出口にも仮想停止線ST15を設けることが望ましい。これにより、駐車場Pを出て道路R11に合流しようとする車両に対して、仮想停止線ST15の位置で停止すべき旨の運転支援を行うことができる。また、車両Vが自動運転車である場合には、仮想停止線ST15の位置で車両Vを停止させることができる。
【0042】
図6(B)は、図6(A)に示す交差点Bの停止線データを示す。現実に存在する停止線ST11~ST13について仮想フラグが「0」に設定され、交差点内フラグが「0」に設定されている。側線延長線である仮想停止線ST14については、仮想フラグが「1」、交差点内フラグが「1」に設定されている。仮想停止線ST15については、仮想フラグが「1」、交差点内フラグが「0」に設定されている。図6(C)は、図6(A)に示す交差点Bの信号機データを示す。現実に存在する信号機SIG11~SIG13について仮想フラグが「0」に設定されている。
【0043】
(第3の例)
図7(A)は、仮想停止線が設けられた交差点のさらに他の例を示す。この交差点Cは、南北に延びる道路R21と東西に延びる道路R22により構成されている。また、交差点Cには、優先道路を示す白線Wが道路に設けられている。白線Wは、南北に延びる道路R21が、東西に延びる道路R22よりも優先することを示している。
【0044】
この交差点Cでは、優先道路を示す白線は設けられているものの、停止線や信号機は設けられていない。よって、道路R22を東西方向に走行する車両Vは、停止せずに交差点Cに進入し、道路R21を走行する車両と衝突する恐れがある。そこで、交差点Cにおいては、道路R22の交差点Cの手前の位置に仮想停止線ST21、ST22を設ける。これにより、道路R22を東西方向に走行する車両Vに対して、仮想停止線ST21、ST22の位置で停止すべき旨の運転支援を行うことができる。また、車両Vが自動運転車である場合には、仮想停止線ST21、ST22の位置で車両Vを停止させることができる。
【0045】
図7(B)は、図7(A)に示す交差点Cの停止線データを示す。仮想停止線ST21、ST22について、仮想フラグが「1」、交差点内フラグが「0」に設定されている。
【0046】
[運転支援装置]
次に、運転支援装置20について詳しく説明する。
(構成)
図8は、運転支援装置20の構成を示す。運転支援装置20は、車両3に搭載される。なお、運転支援装置20は、車両3に内蔵される他、ナビゲーション装置などとして車両に搭載されてもよい。
【0047】
運転支援装置20は、通信部21と、測位部22と、カメラ23と、地図DB24と、記憶部25と、制御部26と、表示部27と、音声出力部28とを備える。通信部21は、無線通信によりサーバ10と通信する。通信部21は、主としてサーバ10から地図データをダウンロードするために使用される。測位部22は、GPS受信機、自立型測位装置などを含み、車両3の現在位置を測位する。カメラ23は、車両3の前部又は車室内のフロントガラス付近などに取り付けられ、車両3の前方を撮影する。
【0048】
図DB24は、通信部21を通じてサーバ10からダウンロードされた地図データを記憶する。記憶部25は、RAM、ROMなどを含み、運転支援装置20を動作させるためのプログラムを記憶している。また、記憶部25は、各種の処理を実行する際の作業メモリを提供する。
【0049】
制御部26は、運転支援装置20の全体を制御する。具体的に、制御部26は、地図データをサーバ10からダウンロードする地図データ取得処理、停止線に関する運転支援処理などを実行する。運転支援処理により運転者に提供される情報は、表示部27に表示されたり、音声出力部28により音声メッセージとして出力される。なお、制御部26は本発明の取得部、検出部及び判定部の一例であり、表示部27及び音声出力部28は本発明の出力部の一例である。
【0050】
(地図データ取得処理)
まず、地図データ取得処理について説明する。制御部26は、測位部22から車両3の現在位置を受け取り、通信部21を通じて、その周辺の所定範囲における地図データをサーバ10へ要求する。そして、制御部26は、サーバ10から受信した地図データを地図DB24に記憶する。こうして、車両3の現在位置から所定範囲内の地図データが地図DB24に記憶された状態となる。なお、地図データは、前述のように道路リンクデータ、車線リンクデータ、停止線データ及び信号機データを含む。
【0051】
(運転支援処理)
次に、地図データを利用した、停止線に関する運転支援処理について説明する。図9は、運転支援処理のフローチャートである。この処理は、主として運転支援装置20の制御部26により実行される。なお、この処理は、車両3の走行中に所定時間毎に繰り返し実行される。
【0052】
まず、制御部26は、測位部22を利用して車両の現在位置を取得する(ステップS10)。次に、制御部26は、地図DB24内に記憶されている停止線データを参照し、自車位置の前方の所定距離内に停止線があるか否かを判定する(ステップS11)。ここで、対象となる停止線は、仮想停止線を含む。停止線がある場合(ステップS11:Yes)、処理はステップS13へ進む。
【0053】
一方、停止線が無い場合(ステップS11:No)、制御部26は、地図DB24内に記憶されている信号機データを参照し、自車位置の前方の所定範囲内に信号機があるか否かを判定する(ステップS12)。ここで、対象となる信号機は、仮想信号機を含む。信号機がある場合(ステップS12:Yes)、処理はステップS13へ進む。信号機が無い場合(ステップS12:No)、処理は終了する。
【0054】
ステップS13では、制御部26は、表示部27への表示や音声出力部28による音声メッセージの出力により、運転者に停止を指示する。次に、制御部26は、地図DB24内に記憶されている信号機データを参照し、自車位置の前方の所定範囲内に信号機があるか否かを判定する(ステップS14)。ここで、対象となる信号機は、仮想信号機を含む。信号機がある場合(ステップS14:Yes)、処理はステップS15へ進み、制御部26は信号機の表示に従うような指示を出力する。具体的には、制御部26は、表示部27への表示、音声出力部28からの音声出力、若しくは自動運転による制御を行う。そして、処理は終了する。一方、信号機が無い場合(ステップS14:No)、処理は終了する。
【0055】
以上のように、本実施例では、地図データ中に仮想停止線や仮想信号機を設けることにより、現実には停止線や信号機が設けられていない交差点などにおいても適切な運転支援や自動運転を行うことが可能となる。
【0056】
[変形例]
(変形例1)
上記の実施例では、現実に存在する停止線及び信号機と、仮想停止線及び仮想信号機とを仮想フラグにより区別しているが、本発明の適用はこれには限定されない。例えば、仮想停止線や仮想信号機には、IDの先頭又は末尾に所定の文字を付与するなどして、停止線IDや信号機IDにより両者を区別してもよい。また、仮想停止線や仮想信号機のデータを、現実に存在する停止線や信号機のデータベースとは独立に設けてもよい。
【0057】
(変形例2)
上記の実施例では、停止線データ及び信号機データを含む地図データを車両に搭載された運転支援装置により利用しているが、その代わりに、自動運転車両による自動運転に利用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
3 車両
10 サーバ
11 道路リンクDB
12 車線リンクDB
13 停止線DB
14 信号機DB
20 運転支援装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9