(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119888
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】荷受台昇降装置
(51)【国際特許分類】
B60P 1/44 20060101AFI20220809BHJP
B66F 7/22 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B60P1/44 J
B66F7/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085278
(22)【出願日】2022-05-25
(62)【分割の表示】P 2018065583の分割
【原出願日】2018-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小手森 俊紀
(57)【要約】
【課題】荷受台の角度を精度良く基準角度にできるようにする。
【解決手段】車両に対して上下に回動可能なリフトアームと、前記リフトアームの先端に上下に回動可能に連結した荷受台と、前記リフトアームを上下に回動させるリフトシリンダと、前記リフトアームに対して前記荷受台を上下に回動させるチルトシリンダと、重力方向を基準に前記荷受台の傾斜を測定する傾斜センサと、前記傾斜センサの出力を基に前記リフトシリンダ及び前記チルトシリンダを制御して前記荷受台の姿勢を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記荷受台の昇降動作中に前記傾斜センサの出力から前記荷受台の角度を演算し、前記荷受台の角度が予め設定された基準角度であるかを判定する荷受台昇降装置を提供する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して上下に回動可能なリフトアームと、
前記リフトアームの先端に上下に回動可能に連結した荷受台と、
前記リフトアームを上下に回動させるリフトシリンダと、
前記リフトアームに対して前記荷受台を上下に回動させるチルトシリンダと、
重力方向を基準に前記荷受台の傾斜を測定する傾斜センサと、
前記傾斜センサの出力を基に前記リフトシリンダ及び前記チルトシリンダを制御して前記荷受台の姿勢を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記荷受台の昇降動作中に前記傾斜センサの出力から前記荷受台の角度を演算し、前記荷受台の角度が予め設定された基準角度であるかを判定する荷受台昇降装置。
【請求項2】
請求項1の荷受台昇降装置において、
前記制御装置は、前記傾斜センサの出力から演算した前記荷受台の角度が前記基準角度であることを条件に前記リフトシリンダの駆動指令を実行するインタロック機能を有する制御装置を備えている荷受台昇降装置。
【請求項3】
請求項2の荷受台昇降装置において、
前記制御装置に記憶された前記荷受台の第1設定角度とは別に、前記車両に対する前記荷受台の第2設定角度を任意に設定する角度設定スイッチと、
第1モード及び第2モードのいずれかを選択するモードスイッチとを備え、
前記制御装置は、前記モードスイッチにより前記第1モードが選択されている場合は前記第1設定角度を前記基準角度とし、前記第2モードが選択されている場合は前記第2設定角度を前記基準角度とする荷受台昇降装置。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1つの荷受台昇降装置において、前記基準角度が水平である荷受台昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行リンクにより荷受台を昇降させる荷受台昇降装置に関し、特に荷受台を起立させて格納する荷受台昇降装置に係る。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置には、車両の荷台に対してアーム(平行リンク)を上下に回動させることで、アームに取り付けた荷受台を上下に平行移動させて荷役作業を支援するものがある。この種の荷受台昇降装置として、アームに対して荷受台を回動させるチルトシリンダを備え、荷受台を荷台の後面に沿って起立させて格納するものが知られている(特許文献1等参照)。同文献の荷受台昇降装置では、チルトシリンダに設けた検出対象(センシングプレート)を近接スイッチで検出し、チルトシリンダの所定ストロークを検知することで荷受台の水平が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地面と荷台との間で荷受台を昇降させる典型的な作業以外にも、荷受台を用いた荷役作業には色々な形態がある。例えば車両(車輪)の接地面(地面)よりも荷物の受け渡し場所が高い場合、受け渡し場所と荷台との間で台車を行き来させるために、荷台と受け渡し場所の間に荷受台で橋を架けることがある。特許文献1にも、荷台よりも受け渡し場所が低い場合にチルトシリンダを駆動して荷受台をチルト(後傾)させ、受け渡し場所と荷台とを傾斜した荷受台で繋ぐ様子が表されている。
【0005】
ここで、チルトシリンダを備えた荷受台昇降装置には、荷受台が基準角度(例えば水平)でなければリフトシリンダが駆動できないインタロック機能が備わっている場合がある。上記の例のように荷受台を傾斜させて使用した場合、昇降させるためには荷受台を基準角度に一旦戻す必要がある。しかし、特許文献1のように近接センサを用いて荷受台の水平を検知する構成では、近接スイッチの作動の確実性のために検出対象に一定の大きさが必要である。そのため荷受台を基準角度に後傾動作で戻す場合と前傾動作で戻す場合とで近接スイッチが作動するタイミングに検出対象の大きさに相応したずれがあり、ばらつきなく荷受台を基準角度にすることは難しい。
【0006】
本発明の目的は、荷受台の角度を精度良く基準角度にすることができる荷受台昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に対して上下に回動可能なリフトアームと、前記リフトアームの先端に上下に回動可能に連結した荷受台と、前記リフトアームを上下に回動させるリフトシリンダと、前記リフトアームに対して前記荷受台を上下に回動させるチルトシリンダと、重力方向を基準に前記荷受台の傾斜を測定する傾斜センサと、前記傾斜センサの出力を基に前記リフトシリンダ及び前記チルトシリンダを制御して前記荷受台の姿勢を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記荷受台の昇降動作中に前記傾斜センサの出力から前記荷受台の角度を演算し、前記荷受台の角度が予め設定された基準角度であるかを判定する荷受台昇降装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
センシングプレートと対で用いられる近接スイッチ等と異なり、傾斜センサは重力方向を基準とした自己の絶対的な角度を測定でき、前傾動作時と後傾動作時の測定値の誤差がほぼない。本発明によれば、荷受台に傾斜センサを設けたことにより、車両の姿勢(接地面の傾斜)によらず重力方向を基準とした荷受台の絶対的な角度が常時高精度に測定でき、荷受台の角度を精度良く基準角度にすることができる。加えて、傾斜センサを荷受台に取り付ける取り付け部材が円弧状のガイド穴を備えていることで、ピンを中心にして荷受台に対する傾斜センサの取り付け角度を荷受台の傾斜方向に調節することができる。傾斜センサの角度調節により傾斜センサの出力に対する荷受台の基準角度を機構的に柔軟に調節できる。例えば荷受台に対して傾斜センサを後傾させると、傾斜センサの同じ出力値における荷受台(基準角度)がその分だけ前傾する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る荷受台昇降装置を車両に取り付けた様子を表す斜視図
【
図2】本発明の一実施形態に係る荷受台昇降装置の側面図
【
図3】
図2の荷受台昇降装置に備えられた荷受台の基部の左側面図
【
図4】
図2の荷受台昇降装置に備えられた荷受台の基部の下面図
【
図10】
図2の荷受台昇降装置に備えられた駆動システムの油圧回路図
【
図11】
図2の荷受台昇降装置に備えられた駆動システムの電気回路図
【
図12】
図2の荷受台昇降装置に備えられた制御装置による荷受台の駆動装置への指令出力手順を表すフローチャート
【
図13】
図2の荷受台昇降装置に備えられた制御装置によるインタロックの設定手順を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0011】
-荷受台昇降装置-
図1は本発明の一実施形態に係る荷受台昇降装置を車両に取り付けた様子を表す斜視図、
図2は荷受台昇降装置の側面図である。本願明細書では車両を基準として前後を定義する。つまり車両の運転席(不図示)の正面方向(
図1では左斜め上方向)を前方とする。
図1及び
図2に示した荷受台昇降装置は平行リンクにより荷受台を昇降させて荷役作業を支援する装置であり、荷受台を起立させて格納する種のものである。この荷受台昇降装置は、支持フレーム1、左右のリフトアーム2、荷受台3、左右のリフトシリンダ4、左右のチルトシリンダ5(
図2)、及び駆動システム6(
図10、
図11)備えている。
【0012】
本実施形態では、荷受台3を駆動する駆動装置には2つの油圧シリンダが含まれる。上記リフトシリンダ4が荷受台3を昇降させる第1シリンダであり、上記チルトシリンダ5が荷受台3を傾斜させる第2シリンダである。荷役作業時には主に第1シリンダであるリフトシリンダ4が用いられ、荷受台3を格納する(格納姿勢に移行させる)際には、第2シリンダであるチルトシリンダ5が用いられる。リフトシリンダ4及びチルトシリンダ5は複動式でも良いが、本実施形態では単動式の油圧シリンダが用いてある。続いて、荷受台昇降装置の構成要素、具体的には、支持フレーム1、リフトアーム2、荷受台3、リフトシリンダ4、チルトシリンダ5の連結関係について説明する。
【0013】
まず支持フレーム1は荷受台昇降装置を車両に取り付けるための同装置の基部構造体であり、車両の車枠(シャシフレーム)の後部の下側に取り付けられている。支持フレーム1の後端面には左右に延びるバンパB1-B3が取り付けられている。バンパB1-B3は左右に並んでおり、中央のバンパB1と左右のバンパB2,B3との間には、上下に回動する左右のリフトアーム2を通すために所定の間隔が介在している。
【0014】
リフトアーム2は、車両に対して上下に回動する部材であり、チルトアーム7を介して支持フレーム1に連結されている。チルトアーム7は左右に延びるピンP0を介して上端部が支持フレーム1に連結されており、ピンP0を中心に支持フレーム1に対して回動自在である。リフトアーム2の基端部(前端部)はピンP0よりも下側の位置で左右に延びるピンP1を介してチルトアーム7に連結されている。リフトアーム2はピンP1を中心にチルトアーム7に対して回動自在である。リフトアーム2の先端部(後端部)は左右に延びるピンP2を介して荷受台3の基端部分の上部に連結されている。つまり荷受台3はリフトアーム2の先端にピンP2を中心にして上下に回動自在に連結されている。
【0015】
チルトシリンダ5は、リフトアーム2に対して荷受台3を上下に回動(傾斜)させる油圧シリンダである。チルトシリンダ5の基端部(前端部)はピンP1よりも下側の位置で左右に延びるピンP3を介して支持フレーム1に連結されている。チルトシリンダ5はピンP3を中心に支持フレーム1に対して回動自在である。チルトシリンダ5の先端部(後端部)は左右に延びるピンP4を介して荷受台3の基端部分の下部に連結されている。チルトシリンダ5と荷受台3はピンP4を中心に相対的に回動自在である。
【0016】
リフトシリンダ4は、リフトアーム2を上下に回動させて荷受台3を昇降させる油圧シリンダである。リフトシリンダ4の基端部(前端部)はピンP3よりも下側の位置で左右に延びるピンP5を介してチルトアーム7に連結されている。リフトシリンダ4はピンP5を中心にチルトアーム7に対して回動自在である。リフトシリンダ4の先端部(後端部)は左右に延びるピンP6を介してリフトアーム2の先端付近の下部に連結されている。リフトシリンダ4とリフトアーム2はピンP6を中心にして相対的に回動自在である。
【0017】
ここで、チルトシリンダ5は、チルトアーム7及びリフトアーム2と共に平行リンクを構成するリンクアームを兼ねる。例えば
図2においてチルトシリンダ5が収縮して荷受台3が水平になった場合(二点鎖線3a)ピンP4は位置Xに移動する。ピンP4が位置Xにあり荷受台3が接地していない状態では、ピンP1-P4を頂点とする四角形が平行四辺形になるように構成されている。ピンP1-P4が平行四辺形の頂点を形成する状態でリフトシリンダ4が伸縮すると、ピンP1,P3を支点としてリフトアーム2及びチルトシリンダ5が平行を保って矢印bのように回動し、荷受台3が上下に平行移動する。但し、荷受台3が接地(二点鎖線3b)してからリフトシリンダ4が更に収縮すると、チルトアーム7が矢印cのようにピンP0を支点に後方(
図2では反時計回り)に回動する。これにより支持フレーム1に装着されたピンP3に相対してチルトアーム7に装着されたピンP1が後方に移動し(チルトシリンダ5に対してリフトアーム2が後方に移動し)、先端が接地する(二点鎖線3c)まで荷受台3が矢印dのように後傾する。
【0018】
チルトシリンダ5を伸縮させると、矢印aのように荷受台3はリフトアーム2に対してピンP2を支点に回動し傾斜動作する。荷受台3が荷台Aの床面の高さにある場合にチルトシリンダ5を伸長させると、
図2に実線で示したように(
図1も参照)車両の荷台Aの後面に沿って荷受台3が起立し格納姿勢に移行する。反対にチルトシリンダ5を収縮させれば、格納姿勢の荷受台3を基準角度(例えば水平)に展開して荷役作業に使用できる状態にできる。
【0019】
-傾斜センサ-
図3は荷受台3の基部の左側面図、
図4は下面図(荷受台3の基部における荷受面と反対側の面の左側部分を表した図)である。これらの図に示したように、荷受台3には傾斜センサ8が設けられている。傾斜センサ8は荷受台3の傾斜角度を測定するセンサであり、例えばジャイロセンサを用いることができる。但し、ジャイロセンサの他にも、振り子式又はフロート式の傾斜センサ(吊るした錘や液面に対する荷受台3の傾きを検出するセンサ)や加速度センサ、慣性センサ等を傾斜センサ8として用いることができる。
【0020】
傾斜センサ8が設置される荷受台3の部位は例えば左右の少なくとも一方(本例では左側)のスチフナ3Aである。本実施形態におけるスチフナ3Aは中空の部材であり、荷受台3の下面(荷受面と反対側の面であって格納時に後方を向く面)の左右の領域に1本ずつ設けられている。荷受台3の荷受面が水平な状態を想定して説明すると、左右から見てスチフナ3Aは前後方向に細長い三角形状であり、上面は水平で厚みが後方(荷受台3の先端)に向かうにつれて薄くなっている。本実施形態では、スチフナ3Aの内部における比較的広い前部(荷受台3の基部側の部分)の空間に傾斜センサ8を収容してある。傾斜センサ8の配線もスチフナ3Aの内側に通してある。
【0021】
図5は
図3のV部の拡大図、
図6は荷受台3の傾斜センサ取付部の拡大図である。
図7-
図9は荷受台3に傾斜センサ8を取り付けるブラケットの三面図であり、
図7はブラケットの側面図、
図8は平面図、
図9は背面図である。傾斜センサ8は取り付け部材10を介して荷受台3に取り付けられている。取り付け部材10は、主要な要素として、後述するピン11、ガイド穴12、固定具13を含んで構成されている。
【0022】
本実施形態では、荷受台3との取り合いのために傾斜センサ8にブラケット14が装着されている。このブラケット14は、
図7-
図9に示したように平板をL字型に折り曲げて形成されており、荷受台3に対する取り付け板部14Aとセンサ装着板部14Bとを備えている。取り付け板部14Aは荷受台3との取り合い部位であり、センサ装着板部14Bは傾斜センサ8を装着する部位である。取り付け板部14Aとセンサ装着板部14Bがなす角は本実施形態では直角である。取り付け板部14Aには2つの貫通孔(バカ穴)H1,H2が設けられており、貫通孔H1,H2に対応してナットN1,N2が溶接されている。ナットN1,N2は、取り付け板部14Aの荷受台3との接触面と反対側(センサ装着板部14Bが存在する側)の面に設けられている。センサ装着板部14Bには2つの貫通孔(バカ穴)H3,H4が設けられており、これら貫通孔H3,H4に通したボルトB3,B4及びナットN3,N4(
図5)で傾斜センサ8にセンサ装着板部14Bが固定されている。傾斜センサ8は、本実施形態では
図5に示すように、センサ装着板部14Bに対して取り付け板部14Aが存在する側の面に装着されているが、反対側の面に取り付けても良い。
【0023】
対して荷受台3側のブラケット14との取り合い部(本実施形態ではスチフナ3Aの鉛直な内壁面)には、
図6に示したようにブラケット14の貫通孔H1,H2にそれぞれ対応して支点穴15及び上記ガイド穴12が設けられている。支点穴15及び貫通孔H1には、上記のピン11が挿し込まれる。ピン11は荷受台3に対する傾斜センサ8の回動中心となる。またピン11は左右方向(荷受台3の回動軸であるピンP2の延在方向)に延びており、ピン11を中心にして荷受台3に対して傾斜センサ8が荷受台3の回動方向に(つまり前後に延びる鉛直面内で)回動するように構成されている。ガイド穴12は支点穴15における傾斜センサ8の回動中心Oを中心とする円弧状の長穴であり、ガイド穴12及び貫通孔H2には上記の固定具13が挿し込まれる。ガイド穴12の中心線が描く円弧の半径はピン11及び固定具13の中心間距離L2に等しい。本実施形態ではピン11及び固定具13にボルトが用いてあり、スチフナ3Aの外側からピン11及び固定具13を挿し込み、それぞれブラケット14のナットN1,N2に締め込むことで傾斜センサ8がブラケット14を介して荷受台3に固定される。ボルトであるピン11及び固定具13を緩めることで、ピン11を中心として傾斜センサ8が回動可能となる。この機構の可動範囲(ガイド穴12の中心角αの範囲)で傾斜センサ8の角度が調節可能である。
【0024】
このとき、ガイド穴12の円弧の外周部又は内周部(本実施形態では内周部)には窪み12Aが形成されている。支点穴15はガイド穴12の円弧中心(回動中心O)から窪み12Aの窪み方向(本実施形態ではガイド穴12の円弧の径方向の内向き)に距離L1(窪み12Aの深さ程度)だけ直線状に延びる長穴としてある。言い換えれば、支点穴15の延長線上(支点穴15の開口形状の長軸の延長線上)に窪み12Aが位置している。また固定具13を窪み12Aに合わせて傾斜センサ8をガイド穴12の円弧の内側にシフトさせることで、固定具13を窪み12Aに入れ込むことができる。支点穴15が長穴であり、窪み12Aの窪み方向へのピン11の移動が許容されるためである。本実施形態では、固定具13が窪み12Aに入り込んだ状態で荷受台3(荷受面)に対してなす荷受台3の角度を傾斜センサ8の取り付け角度についての標準角度βとしている。本実施形態では標準角度βの場合で荷受台3(荷受面)に対して傾斜センサ8が相対的に45°傾斜しており、荷受台3が起立すると傾斜センサ8は45°、荷受台3が水平になると-45°を出力する。これにより角度測定範囲が90°程度しかない安価な傾斜センサでも水平から起立までの荷受台3の角度をモニタすることができる。また、本実施形態では、窪み12Aはガイド穴12が描く円弧の中点に位置し、窪み12Aの両側にα/2ずつ角度調節ができる構成としてある。
【0025】
-駆動システム-
駆動システム6は支持フレーム1の左右方向の一方側(本実施形態では左側)に取り付けられたユニットボックス9(
図1)に収容されている。ユニットボックス9には荷受台昇降装置を操作するための操作装置30(
図11)の収容スペースも備わっている。駆動システム6はリフトシリンダ4及びチルトシリンダ5を駆動するシステムである。操作装置30はコネクタ35(
図11)を有する有線操作式のリモコンである。この操作装置30は、ユニットボックス9の内部に配置されたコネクタ50(
図11)に接続して地上で使用することもできるし、荷台Aの内部に配置されたコネクタ(不図示)に接続して荷台A上(荷箱内)や荷受台3上で使用することもできる。無線操作式のリモコンが操作装置として使用される場合もある。以下の説明においては、代表して操作装置30を操作した場合を適宜例に挙げて説明するが、他の操作装置を用いた場合の荷受台昇降装置の動作も同様である。
【0026】
(油圧回路)
図10は駆動システム6の油圧回路図である。同図に示したように、荷受台昇降装置には、作動油タンク21、油圧ポンプ22、モータ23、切換弁V1-V6が備わっている。油圧ポンプ22は、作動油タンク21に貯留された作動油を吸い込んでポンプ油路L22に吐出する。後の
図11に示したようにモータ23はコンタクタリレーCTを介して電源BT(例えば車両のバッテリ)に接続しており、電源BTからの給電により駆動されて油圧ポンプ22を駆動する。ポンプ油路L22にはリリーフ弁RVが設けられており、リリーフ弁RVによってポンプ油路L22の圧力の最大値が規定されている。
【0027】
またポンプ油路L22はチェックバルブC1を介して油路L4に接続しており、リフトシリンダ4の油室と油圧ポンプ22とがポンプ油路L22及び油路L4を介して接続している。油路L4には上昇動作用の切換弁V1が設けられている。切換弁V1はノーマルクローズタイプで電磁駆動式の開閉弁であり、通常の状態では(消磁状態では)チェック弁により油路L4を遮断しているが、ソレノイドS1が励磁されると開いて油路L4を開通させる。
【0028】
切換弁V1とポンプ油路L22との間の位置において、作動油タンク21に接続するタンク油路LT1が油路L4から分岐している。タンク油路LT1には下降動作用の切換弁V2が設けられている。切換弁V2はノーマルクローズタイプで電磁駆動式の開閉弁であり、通常の状態では(消磁状態では)チェック弁によりタンク油路LT1を遮断しているが、ソレノイドS2が励磁されると開いてタンク油路LT1を開通させる。
【0029】
本実施形態では切換弁V1,V2及び後述する切換弁V5でリフトシリンダ4の動作を制御するように構成されているが、1つの3位置切換弁でリフトシリンダ4を制御する構成とすることもできる。タンク油路LT1における切換弁V2の下流側には絞り弁TV1が設けられている。絞り弁TV1には可変絞りが用いてあるが、流量調節機能が不要であれば固定絞りに変更しも良い。
【0030】
また、ポンプ油路L22は油路L5を介してチルトシリンダ5の油室にも接続している。油路L5の入口(ポンプ油路L22からの分岐部)は切換弁V1と油圧ポンプ22との間にある。油路L5には前傾動作用の切換弁V3が設けられている。切換弁V3はノーマルクローズタイプで電磁駆動式の開閉弁であり、通常の状態では(消磁状態では)チェック弁により油路L5におけるチルトシリンダ5への作動油の流れを遮断しているが、ソレノイドS3が励磁されると開いて油路L5を開通させる。
【0031】
切換弁V3とチルトシリンダ5との間の位置において、油路L5には切換弁V6が設けられている。切換弁V6はノーマルクローズタイプの電磁方向切換弁であり、ソレノイドS6が励磁されるとチルトシリンダ5からの作動油の排出を許容する。反対にソレノイドS6が消磁されると切換弁V6は、チェック弁によりチルトシリンダ5への作動油の供給を許容すると共にチルトシリンダ5からの作動油の排出を禁止する。
【0032】
切換弁V3,V6の間の位置において、作動油タンク21に接続するタンク油路LT2が油路L5から分岐している。タンク油路LT2には後傾動作用の切換弁V4が設けられている。切換弁V4はノーマルクローズタイプで電磁駆動式の開閉弁であり、通常の状態では(消磁状態では)チェック弁によりタンク油路LT2を遮断しているが、ソレノイドS4が励磁されると開いてタンク油路LT2を開通させる。
【0033】
本実施形態では3つの切換弁V3,V4,V6で各チルトシリンダ5の動作を制御する構成であるが、1つの3位置切換弁でチルトシリンダ5を制御する構成とすることもできる。タンク油路LT2における切換弁V4の下流側には絞り弁TV2が設けられている。絞り弁TV2には可変絞りが用いてあるが、流量調節機能が不要であれば固定絞りを用いても良い。
【0034】
上昇動作用の切換弁V1とリフトシリンダ4との間の位置において、作動油タンク21に接続するタンク油路LT3が油路L4から分岐している。タンク油路LT3は油路L4から分岐してタンク油路LT1をバイパスし、絞り弁TV2及びタンク油路LT2を介して作動油タンク21に接続している。つまり、リフトシリンダ4の油室と作動油タンク21は、第1タンク管路であるタンク油路LT1を介して作動油タンク21に接続される他、第2タンク油路であるタンク油路LT3を介して作動油タンク21に接続されている。この第2タンク油路であるタンク油路LT3には第2の下降動作用の切換弁V5が設けられている。切換弁V5はノーマルクローズタイプで電磁駆動式の開閉弁であり、通常の状態では(消磁状態では)チェック弁によりタンク油路LT3を遮断しているが、ソレノイドS5が励磁されると開いてタンク油路LT3を開通させる。
【0035】
タンク油路LT3には切換弁V5とリフトシリンダ4との間の位置に接地センサ24が設けられている。接地センサ24は荷受台3の接地を検出する検出器であり、本実施形態では圧力センサが用いてある。荷受台3が接地すると荷受台3の下降中に比べてリフトシリンダ4の油室の圧力が低下する。リフトシリンダ4の油室の圧力を接地センサ24により検出し、例えば制御装置(
図11)でその検出値を予め設定した値と比較し、検出値が設定値以下である場合に荷受台3の接地を検知することができる。なお、接地センサ24はリフトシリンダ4の油室の圧力が測定できれば良いため、油路L4における切換弁V1とリフトシリンダ4の間の位置に設けることもできる。また、例えばピンP1,P3,P5の回転角を検出する角度センサ、リフトシリンダ4のストロークを検出するストロークセンサ(近接センサや距離計)を接地センサとして用いることもできる。リフトアーム2又はリフトシリンダ4の傾斜角を検出する傾斜センサや近接センサを接地センサとして用いることもできる。
【0036】
(電気回路)
図11は駆動システム6の電気回路図である。同図に示したように、荷受台昇降装置には、操作装置(有線式リモコン)30、制御盤(マイコンボード)40、コネクタ50,60,70が備わっている。無線操作式の操作装置も使用可能であるが、同図では図示省略してある。コネクタ50は通常操作用であり、制御装置41(後述)に接続している。コネクタ60,70は緊急操作用であり、制御装置41をバイパスして駆動装置(リフトシリンダ4、チルトシリンダ5及びモータ23)の駆動系に直結している。コネクタ60,70は例えばユニットボックス9に設けることができるが、レイアウトは適宜変更可能である。コネクタ60,70の結線関係は後で説明するが、第1の緊急操作用のコネクタ60は、リフトシリンダ4及びモータ23の駆動系に直結している。リフトシリンダ4の駆動系には上昇駆動系及び下降駆動系が含まれる。上昇駆動系はリフトシリンダ4を油圧ポンプ22に接続する切換弁V1からなり、下降駆動系はリフトシリンダ4を作動油タンク21に接続する切換弁V1,V2,V5からなる。第2の緊急操作用のコネクタ70は、チルトシリンダ5及びモータ23の駆動系に直結している。チルトシリンダ5の駆動系には前傾駆動系及び後傾駆動系が含まれる。前傾駆動系はチルトシリンダ5を油圧ポンプ22に接続する切換弁V3からなり、後傾駆動系はチルトシリンダ5を作動油タンク21に接続する切換弁V4,V6からなる。モータ23の駆動系は、モータ23を電源BTに繋いで駆動するコンタクタリレーCTからなる。
【0037】
操作装置30は前述した通り有線操作式のリモコンであり、押しボタン式の3つのボタン(上スイッチ31、下スイッチ32及び開閉スイッチ33)を配した操作部の他、コネクタ35を有している。荷受台3の上昇(リフトシリンダ4の伸長)を指示する場合は上スイッチ31、荷受台3の下降(リフトシリンダ4の収縮)を指示する場合は下スイッチ32を操作する。開閉スイッチ33は上スイッチ31及び下スイッチ32の操作対象をリフトシリンダ4からチルトシリンダ5に切り換えるボタンである。本実施形態では、荷受台3の閉動作(チルトシリンダ5の伸長)を指示する場合は開閉スイッチ33と上スイッチ31を同時操作し、荷受台3の開動作(チルトシリンダ5の収縮)を指示する場合は開閉スイッチ33と下スイッチ32を同時操作する。荷受台3の開動作とは荷受台3を前傾つまり左側から見て左回り(反時計回り)に回動させる動作をいい、荷受台3の閉動作とは荷受台3を後傾つまり左側から見て右回り(時計回り)に回動させる動作をいう。
【0038】
操作装置30のコネクタ35は、4つの端子(A端子、B端子、C端子及びD端子)を備えている。このコネクタ35は、通常操作用のコネクタ50、緊急操作用のコネクタ60,70のいずれかに択一的に接続可能である。コネクタ50,60,70にも、操作装置30のコネクタ35に対応して4つの端子(A端子、B端子、C端子及びD端子)が備わっている。例えばコネクタ50にコネクタ35を繋いだ場合、コネクタ35,50のA端子同士、B端子同士、C端子同士、D端子同士が接続される。同様に、コネクタ60にコネクタ35を繋いだ場合、コネクタ35,60のA端子同士、B端子同士、C端子同士、D端子同士が接続される。コネクタ70にコネクタ35を繋いだ場合、コネクタ35,70のA端子同士、B端子同士、C端子同士、D端子同士が接続される。操作装置30のコネクタ35のA端子は、上スイッチ31、下スイッチ32及び開閉スイッチ33の一次側に結線されている。また、コネクタ35のB端子は下スイッチ32の二次側に、C端子は上スイッチ31の二次側に、D端子は開閉スイッチ33の二次側に、それぞれ結線されている。
【0039】
制御盤40は、制御装置(マイコン)41及び端子42a-42vを備えている。制御装置41は、主として傾斜センサ8、接地センサ24及び操作装置30からの信号を基に駆動装置(リフトシリンダ4及びチルトシリンダ5)を制御し、荷受台3の姿勢を制御する演算処理装置である。この制御装置41による荷受台3の制御には、後述するモードスイッチ25、インタロック解除スイッチ26及び角度設定スイッチ27の操作も適宜加味される。制御装置41の機能については後述する。
【0040】
端子42a-42vは制御盤40の入力端子又は出力端子である。そのうちの端子42a-42hは制御装置41の入力部に接続している。端子42aにはモードスイッチ25(後述)が結線されている。端子42bには接地センサ24が、端子42cには傾斜センサ8が、端子42dにはインタロック解除スイッチ26(後述)が、端子42eには角度設定スイッチ27(後述)が、それぞれ結線されている。また、端子42fにはコネクタ50のD端子が、端子42gにはコネクタ50のC端子が、端子42hにはコネクタ50のB端子が、それぞれ結線されている。モードスイッチ25は後述する第1モード及び第2モードのいずれかを選択するためのスイッチである。インタロック解除スイッチ26はインタロック機能(後述)を任意に解除するためのスイッチである。角度設定スイッチ27は車両に対して任意に設定される荷受台3の角度(第2設定角度θ2)の設定に用いるスイッチである。モードスイッチ25、インタロック解除スイッチ26及び角度設定スイッチ27は、例えば操作装置30及び他の操作装置或いはユニットボックス9(
図1)に設けることができる。
【0041】
上記のように結線されていることで、傾斜センサ8、接地センサ24、モードスイッチ25、インタロック解除スイッチ26、角度設定スイッチ27及び操作装置30から出力される信号が、それぞれ制御装置41に入力されるようになっている。コネクタ50を主体として結線関係を整理すると、まずコネクタ50のA端子は制御盤40の端子42j(後述)に、B端子は端子42hに、C端子は端子42gに、D端子は端子42fに、それぞれ結線されている。
【0042】
端子42i,42jは電源端子である。端子42iは電源の入力端子であり、電源スイッチ28を介して電源BT(例えば車両のバッテリ)に接続している。端子42jは電源の出力端子であり、通常操作時のコネクタ50のA端子、緊急操作時のコネクタ60のA端子、コネクタ70のD端子、及びリレースイッチCBのG端子に、それぞれ結線されている。リレースイッチCBは例えば車両に搭載された車載用リレーであり、5つの端子(E端子,F端子,G端子,H端子及びI端子)を備えている。E端子及びF端子はリレースイッチCBの内部でリレーを介して結線されている。G端子はリレースイッチCBの内部でスイッチを介して端子H,Iに選択的に接続される。通常時は(消磁状態では)スイッチを介して端子Gが端子Hに接続されているが、リレーが励磁されるとスイッチが切り換わって端子Gが端子Iに接続される。リレースイッチCBのE端子はアースに接続し、F端子には緊急操作用のコネクタ70のB端子及び制御盤40の端子42pが接続している。G端子には上記の通り制御盤40の電源出力用の端子42jが接続され、I端子は切換弁V6(
図10)のソレノイドS6に接続している。H端子は空き端子である。
【0043】
制御盤40の端子42k-42oは緊急操作用のコネクタ60,70が接続する入力端子である。端子42kにはコネクタ60のC端子が接続している。端子42lにはコネクタ60のB端子が、端子42mにはコネクタ70のC端子が、端子42nにはコネクタ70のB端子が、端子42oにはコネクタ60,70のC端子が、それぞれ接続している。コネクタ60,70を主体として結線関係を整理すると、まずコネクタ60のA端子は制御盤40の端子42jに、B端子は端子42lに、C端子は端子42k,42oに、それぞれ結線されている。コネクタ70のB端子は制御盤40の端子42n及びリレースイッチCBの端子Fに、C端子は制御盤40の端子42m,42oに、D端子は端子42jに、それぞれ結線されている。コネクタ60のD端子及びコネクタ70のA端子は空き端子である。
【0044】
制御盤40の端子42p-42vは制御盤40の出力端子である。端子42pは上記の通りリレースイッチCBのF端子に接続しており、また制御盤40の内部で制御装置41の出力部に結線されている。端子42qはコンタクタリレーCTに接続しており、また制御盤40の内部で上記端子42o及び制御装置41の出力部に結線されている。端子42rは切換弁V1(
図10)のソレノイドS1に接続しており、また制御盤40の内部で上記端子42k,42l及び制御装置41の出力部に結線されている。端子42sは切換弁V2(
図10)のソレノイドS2に接続しており、また制御盤40の内部で上記端子42l及び制御装置41の出力部に結線されている。端子42tは切換弁V3(
図10)のソレノイドS3に接続しており、また制御盤40の内部で上記端子42m及び制御装置41の出力部に結線されている。端子42uは切換弁V4(
図10)のソレノイドS4に接続しており、また制御盤40の内部で上記端子42n及び制御装置41の出力部に結線されている。端子42vは切換弁V5(
図10)のソレノイドS5に接続しており、また制御盤40の内部で制御装置41の出力部に結線されている。
【0045】
(制御装置)
制御装置41には、荷受台駆動機能、モード設定機能、インタロック機能、インタロック解除機能が備わっている。
【0046】
「荷受台駆動機能」とは、操作装置30からの操作信号に基づいて生成した信号をリフトシリンダ4又はチルトシリンダ5の駆動系に出力し、荷受台3を昇降させたり傾斜させたりして駆動する機能である。荷受台3の展開や格納、荷役作業の際に実行される基本的な機能である。具体的には
図12の手順が荷受台駆動機能の手順に該当する。
【0047】
「モード設定機能」とは、第1モード及び第2モードのどちらが選択されているかを判断し、選択されたモードに応じてインタロック機能に用いる荷受台3の基準角度θrを設定する機能である。本実施形態の場合、具体的には後述する
図13のS112a-S112cの手順がモード設定機能の手順に該当する。
【0048】
「第1モード」では重力方向を基準に基準角度θrが設定され、具体的には第1設定角度θ1が基準角度θrに設定される。第1設定角度θ1は、傾斜センサ8の出力値が予め(例えば製造段階で)設定されている特定の値(デフォルトのプリセット値)である場合の荷受台3の角度(例えば水平)である。本実施形態では前述した通り荷受台3に対する傾斜センサ8の取り付け角度が取り付け部材10により調節可能であるため、傾斜センサ8の取り付け角度によって基準角度θrを調節することができる。本実施形態では、荷受台3に対する傾斜センサ8の取り付け角度が標準角度β(
図5)である場合、荷受台3の基準角度θrは0°(水平)となる。
【0049】
「第2モード」では車両を基準に基準角度θrが設定され、具体的には第2設定角度θ2が基準角度θrに設定される。第2設定角度θ2は、例えばチルトシリンダ5を駆動して第1設定角度θ1とは別に任意に目視調節した荷受台3の所望の角度であり、第1設定角度θ1に合わせることはできるが、原則として第1設定角度θ1とは異なる角度である。例えば格納状態の荷受台3を荷台Aの床面の高さで水平に展開し、目視で荷受台3の角度を調節した上で角度設定スイッチ27を操作することで、その時の傾斜センサ8の出力値が第2設定角度θ2に対応する値として制御装置41のメモリ(不図示)に記憶される。
【0050】
「インタロック機能」とは、荷受台3の角度θが基準角度θrであることを条件としてリフトシリンダの駆動指令を実行する機能である。言い換えれば、荷受台3の角度θが基準角度θrに一致しない場合にはリフトシリンダの駆動系への信号出力を不能とする機能であって、荷受台3の角度θを基準角度θrに保って昇降させる機能である。本実施形態では、具体的には
図13のS112d-S112f,S112hの手順がインタロック機能の手順に該当する。
【0051】
「インタロック解除機能」とは、条件が満たされた場合にインタロック機能を解除し、荷受台3の角度θに関係なく操作に従ってリフトシリンダ4の駆動系に駆動指令を出力する機能である。インタロック機能を解除する条件の1つは、接地センサ24の信号を基に荷受台3が接地していると判定されていることである。また、本実施形態においては、インタロック解除スイッチ26が操作されてインタロック機能が解除されていることも、もう1つの解除条件である。具体的には
図13のS112d-S112gの手順がインタロック解除機能の手順に該当する。
【0052】
-動作-
(基本動作)
以下に説明する荷受台昇降装置の基本動作は制御装置41の上記荷受台駆動機能に該当する。制御装置41は、メモリ(不図示)に格納されたプログラムに従って操作装置30、傾斜センサ8、接地センサ24からの信号を基に指令信号を生成し、ソレノイドS1-S6やコンタクタリレーCTに出力してリフトシリンダ4やチルトシリンダ5を駆動する。また、操作装置30を操作した場合を例に説明するが、ここでは操作装置30のコネクタ35は通常操作用のコネクタ50に繋がれていることとする。前述した通り荷受台3を上昇させる場合には上スイッチ31を単独操作し、荷受台3を下降させる場合には下スイッチ32を単独操作する。荷受台3を前傾させる場合には開閉スイッチ33を上スイッチ31と同時操作し、荷受台3を後傾させる場合には開閉スイッチ33を下スイッチ32と同時操作する。これを踏まえて基本動作について以下に詳しく説明する。
【0053】
図12は制御装置による荷受台の駆動装置への指令出力手順を表すフローチャートである。制御装置41は同図の手順を所定のサイクルタイム(例えば0.01s)で繰り返し実行する。
【0054】
・閉動作(S101-S106)
電源スイッチ28が入って電源が投入されると制御装置41は
図12の手順を開始し、まず傾斜センサ8の信号Sa、接地センサ24の信号Sg、モードスイッチ25の信号Sm、インタロック解除スイッチ26の信号Srを入力する(S101)。その後、制御装置41は、開閉スイッチ33からの信号が入力されているかを判定し(S102)、入力されていれば上スイッチ31からの信号が入力されているかを判定する(S103)。開閉スイッチ33及び上スイッチ31が同時操作されていれば、制御装置41は荷受台3の角度θが基準角度θrと異なっているかを判定し(S104)、異なっていれば閉動作指令をすると同時にフラグF=1を設定して
図12の手順を終える(S105)。フラグFは操作装置30の操作中か否かを識別する値であり、無動作時にF=0、操作時にF=1に設定される。初期値(電源投入時)はF=0である。
【0055】
制御装置41により閉動作指令がされると、ソレノイドS1,S2,S4-S6は消磁状態のまま、コンタクタリレーCT及びソレノイドS3が励磁される。これにより切換弁V1,V2,V4-V6が閉じた状態で、切換弁V3が開くと同時にモータ23が電源BTに接続して駆動される。その結果、油圧ポンプ22から供給される作動油によりチルトシリンダ5が伸長し、荷受台3が前傾(左側から見て左回りに回動)する。荷受台3が荷台Aの床面の高さにある場合に以上の閉動作が実行されることにより、荷受台3を荷台Aの後面に沿って起立させて格納することができる。
【0056】
また、開閉スイッチ33及び上スイッチ31の同時操作が継続して行われ、S101-S105の手順が繰り返されるうちにθ=θrになった場合、制御装置41はF=1であるかを判定する(S106)。制御装置41は、F=1であれば閉動作指令を中止して
図12の手順を終える。例えば基準角度θrよりも荷受台3が後傾した姿勢から閉動作を開始する場合、θ=θrとなった時点で一旦荷受台3の前傾動作が停止する。開閉スイッチ33及び上スイッチ31の同時操作が継続して行われている間は、その後も荷受台3は動作しない。同時操作を中断する(開閉スイッチ33及び上スイッチ31の少なくとも一方をオフにする)と、F=0が設定される(S111,S114,S117-S119)。その後開閉スイッチ33及び上スイッチ31の同時操作が再開された場合、制御装置41はθ=θrであってもS106からS105に手順を移して閉動作指令をする。
【0057】
・開動作(S101-S103,S107-S111)
信号Sa,Sg,Sm,Sr及び開閉スイッチ33の信号が入力され、上スイッチ31の信号の入力がない場合、制御装置41は、下スイッチ32からの信号が入力されているかを判定する(S107)。制御装置41は、下スイッチ32からの信号の入力がない場合はF=0を設定して
図12の手順を終え(S111)、入力がある場合はS108に手順を移す。S108-S110の手順はS104-S106の手順に対応している。制御装置41は、開閉スイッチ33及び下スイッチ32が同時操作されていれば荷受台3の角度θが基準角度θrと異なっているかを判定し(S108)、異なっていれば開動作指令をすると同時にフラグF=1を設定して
図12の手順を終える(S109)。
【0058】
制御装置41により開動作指令がされると、ソレノイドS1-S3,S5及びコンタクタリレーCTは消磁状態のまま、ソレノイドS4,S6が励磁される。これにより切換弁V1-V3,V5が閉じモータ23が停止した状態で、切換弁V4,V6が開く。その結果、荷受台3の重量がチルトシリンダ5の収縮方向に作用し、タンク油路LT2を介してチルトシリンダ5から作動油タンク21に作動油が抜ける。こうしてチルトシリンダ5が収縮することにより、荷受台3が自重で後傾(左側から見て右回りに回動)する。
【0059】
また、開閉スイッチ33及び下スイッチ32の同時操作が継続して行われ、S101-S103,S107-S109の手順が繰り返されるうちにθ=θrになった場合、制御装置41はF=1であるかを判定する(S110)。制御装置41は、F=1であれば開動作指令を中止する。例えば基準角度θrよりも荷受台3が前傾した姿勢から開動作を開始する場合、θ=θrとなった時点で一旦荷受台3の後傾動作が停止する。開閉スイッチ33及び下スイッチ32の同時操作が継続して行われている間は、その後も荷受台3は動作しない。同時操作を中断する(開閉スイッチ33及び下スイッチ32の少なくとも一方をオフにする)と、F=0が設定される(S111,S114,S117-S119)。開閉スイッチ33及び下スイッチ32の同時操作が再開された場合、制御装置41はθ=θrであってもS110からS109に手順を移して開動作指令をする。
【0060】
・上昇動作(S101,S102,S112-S114)
信号Sa,Sg,Sm,Srが入力され、開閉スイッチ33の信号の入力がない場合、制御装置41はインタロック機能が解除されているかを判定する(S112)。S112の手順については後述する。制御装置41は、インタロック機能が解除されていない場合は
図12の手順を終え、解除されている場合は上スイッチ31からの信号が入力されているかを判定する(S113)。上スイッチ31が操作されていれば、制御装置41は上昇動作指令をすると同時にフラグF=1を設定して
図12の手順を終える(S114)。
【0061】
制御装置41により上昇動作指令がされると、ソレノイドS2-S6は消磁状態のまま、コンタクタリレーCT及びソレノイドS1が励磁される。これにより切換弁V2-V6が閉じた状態で、切換弁V1が開くと同時にモータ23が電源BTに接続して駆動される。その結果、油圧ポンプ22から供給される作動油によりリフトシリンダ4が伸長し荷受台3が上昇する。
【0062】
・下降動作(S101,S102,S112,S115-S119)
信号Sa,Sg,Sm,Srが入力され、開閉スイッチ33及び上スイッチ31の信号の入力がなく、インタロック機能が解除されている場合、制御装置41は、下スイッチ32からの信号が入力されているかを判定する(S115)。制御装置41は、下スイッチ32からの信号の入力がない場合はF=0を設定して
図12の手順を終える(S119)。下スイッチ32が操作されていれば、制御装置41は、荷受台3が接地しているかを判定し(S116)、接地していない場合は第1の下降動作指令をすると同時にフラグF=1を設定して
図12の手順を終える(S117)。S116の判定時に荷受台3が接地している場合、制御装置41は第2の下降動作指令をすると同時にフラグF=1を設定して
図12の手順を終える(S118)。
【0063】
制御装置41により第1の下降動作指令がされると、ソレノイドS3-S6及びコンタクタリレーCTは消磁状態のまま、ソレノイドS1,S2が励磁される。これにより切換弁V3-V6が閉じモータ23が停止した状態で、切換弁V1,V2が開く。その結果、荷受台3、リフトアーム2、リフトシリンダ4及びチルトシリンダ5の重量がリフトシリンダ4の収縮方向に作用し、タンク油路LT1を介してリフトシリンダ4から作動油タンク21に作動油が抜ける。こうしてリフトシリンダ4が収縮することにより、荷受台3が自重で下降する。
【0064】
制御装置41により第2の下降動作指令がされると、ソレノイドS3-S4,S6及びコンタクタリレーCTは消磁状態のまま、ソレノイドS1,S2,S5が励磁される。これにより切換弁V3-V4,V6が閉じモータ23が停止した状態で、切換弁V1,V2に加えて切換弁V5が開く。その結果、荷受台3の重量がリフトシリンダ4の収縮方向に作用し、タンク油路LT1を介するルートの他、タンク油路LT3,LT2を介するルートを介して、リフトシリンダ4から作動油タンク21に作動油が抜ける。こうしてリフトシリンダ4が収縮することにより、接地状態の荷受台3が前述したように後傾する。
【0065】
以上のように、荷受台3の上昇動作、下降動作、前傾動作、後傾動作は、いずれか選択的に実行されるようになっており、複数の動作(例えば上昇と前傾)が同時に実行されることはない。無操作状態では荷受台3は駆動されない。インタロックが機能している場合には荷受台3の傾斜動作のみ実行され、昇降動作は禁止される。インタロック機能が解除されている場合は昇降動作も傾斜動作も可能である。但し、傾斜中に荷受台3の角度が基準角度θrになった場合には一旦荷受台3の動作が停止し、操作装置30のスイッチ類から一度手を放すことで傾斜動作が再開できる。
【0066】
(インタロック機能の設定)
図13は制御装置によるインタロックの設定手順を表すフローチャートである。
図13に示した手順は
図12のS112の手順の詳細であり、前述したモード設定機能、インタロック機能、インタロック解除機能に該当する。
【0067】
S112の手順では、制御装置41はまず、モードスイッチ25の信号Smが第1モードの指定を識別する信号Sm1であるかを判定する(S112a)。Sm=Sm1であれば、制御装置41はモード設定を第1モードにし、前述した第1設定角度θ1を基準角度θrとして設定する(S112b)。信号Smが第2モードの指定を識別する信号Sm2であれば、制御装置41はモード設定を第2モードにし、前述した第2設定角度θ2を基準角度θrとして設定する(S112c)。θ1,θ2はメモリ(不図示)に記憶されており、S112b,S112cの手順において、制御装置41はメモリからθ1又はθ2を呼び出し、またθr=θ1又はθr=θ2の設定をメモリに記憶する。
【0068】
S112b又はS112cの手順を終えると、制御装置41は傾斜センサ8の信号を基に演算した荷受台3の角度θが基準角度θrであるかを判定する(S112d)。θ=θrであれば、制御装置41はインタロック機能を解除してS112の手順を終える(S112g)。θ≠θrであれば、制御装置41はインタロック解除スイッチ26により操作者により意図的にインタロック機能が解除されているかを判定する(S112e)。解除されていれば、制御装置41はインタロック機能を解除してS112の手順を終える(S112g)。インタロック機能が意図的に解除されていなければ、制御装置41は接地センサ24の信号を基に荷受台3が接地しているかを判定する(S112f)。荷受台3が接地していれば、制御装置41はインタロック機能を解除してS112の手順を終える(S112g)。荷受台3が接地していなければ、制御装置41はインタロック機能を有効にしてS112の手順を終える(S112g)。
【0069】
S112gの手順を経てインタロック機能が無効化された場合、制御装置41は、モード設定や荷受台3の角度θ、また荷受台3が接地しているか否かに関わらず、操作に応じてリフトシリンダ4の動作指令をする。
【0070】
第1モード下でS112hの手順を経てインタロック機能が有効化された場合、制御装置41は、荷受台3の角度θが第1設定角度θ1であることを条件に操作に応じてリフトシリンダ4の動作指令をし、荷受台3の角度θを第1設定角度θ1に保って昇降させる。第1設定角度θ1は重力方向を基準とする絶対的な角度であり、車両の姿勢(角度)とは無関係に昇降動作中の荷受台3の角度θが第1設定角度θ1(例えば水平、或いはそれよりも若干前傾した角度等)に保たれる。
【0071】
第2モード下でS112hの手順を経てインタロック機能が有効化された場合、制御装置41は、荷受台3の角度θが第2設定角度θ2であることを条件に操作に応じてリフトシリンダ4の動作指令をし、荷受台3の角度θを第2設定角度θ2に保って昇降させる。第2設定角度θ2は、典型的には、傾斜地等で車両の角度と相対関係を持つ角度(基本的に第1設定角度θ1を除く)として、その都度荷役作業に先行して角度設定スイッチ27により設定される角度である。傾斜センサ8の出力である以上は第2設定角度θ2も重力方向を基準とする絶対的な角度ではあるが、車両に対する相対角度の設定を包含していることから、第2モードでは車両に対して予め設定された角度で荷受台3が昇降する。
【0072】
(緊急時の動作)
仮に傾斜センサ8等の電気機器に不具合が生じた場合、制御装置41を介した荷受台3の動作制御に支障を来すことも考えられる。その場合、操作装置30のコネクタ35を通常操作用のコネクタ50から緊急操作用のコネクタ60又は70に繋ぎ換え、制御装置41をバイパスして荷受台昇降装置の駆動系に操作装置30を直結する。
【0073】
荷受台3の昇降動作を行う場合、操作装置30をコネクタ60に繋ぐ。コネクタ60に繋いだ場合、操作装置30のA端子が制御盤40の端子42jを介して電源BTに常時接続され、上スイッチ31又は下スイッチ32の操作により荷受台3を昇降動作させられるようになる。開閉スイッチ33は空き端子(コネクタ60のD端子)に接続されて操作無効となる。
【0074】
具体的には、操作装置30をコネクタ60に繋いだ状態で上スイッチ31を操作すると、操作装置30及びコネクタ60のA端子及びC端子を介し、制御装置41をバイパスしてソレノイドS1及びコンタクタリレーCTが電源BTに接続する。これにより
図12のS114の実行時と同様、ソレノイドS2-S6は消磁状態のままコンタクタリレーCT及びソレノイドS1が励磁され、切換弁V2-V6が閉じた状態で、切換弁V1が開くと同時にモータ23が電源BTに接続して駆動される。その結果、油圧ポンプ22から供給される作動油によりリフトシリンダ4が伸長し荷受台3が上昇する。
【0075】
操作装置30をコネクタ60に繋いだ状態で下スイッチ32を操作すると、操作装置30及びコネクタ60のB端子を介し、制御装置41をバイパスしてソレノイドS1,S2が電源BTに接続する。これにより
図12のS117の実行時と同様、ソレノイドS3-S6及びコンタクタリレーCTは消磁状態のまま、ソレノイドS1,S2が励磁される。その結果、切換弁V3-V6が閉じモータ23が停止した状態で切換弁V1,V2が開き、荷受台3が自重で下降する。
【0076】
荷受台3の傾斜動作を行う場合、操作装置30をコネクタ70に繋ぐ。コネクタ70に繋いだ場合、操作装置30の開閉スイッチ33が制御盤40の端子42jを介して電源BTに接続され、上スイッチ31又は下スイッチ32と同時に開閉スイッチ33を操作することで荷受台3を傾斜動作させられるようになる。
【0077】
具体的には、操作装置30をコネクタ70に繋いだ状態で開閉スイッチ33と共に上スイッチ31を操作すると、操作装置30及びコネクタ70のC端子及びD端子を介し、制御装置41を迂回してソレノイドS3及びコンタクタリレーCTが電源BTに接続する。これにより
図12のS105の実行時と同様、ソレノイドS1,S2,S4-S6は消磁状態のまま、コンタクタリレーCT及びソレノイドS3が励磁される。その結果、チルトシリンダ5が伸長し、荷受台3が前傾(左側から見て左回りに回動)する。
【0078】
操作装置30をコネクタ70に繋いだ状態で下スイッチ32を操作すると、操作装置30及びコネクタ70のB端子及びD端子を介し、制御装置41をバイパスしてソレノイドS4が電源BTに接続する。同時に操作装置30及びコネクタ70のB端子及びD端子を介してリレースイッチCBのF端子が電源BTに接続し、リレースイッチが切り換わって制御装置41をバイパスしてソレノイドS6が電源BTに接続する。これにより
図12のS109の実行時と同様、ソレノイドS1-S3,S5及びコンタクタリレーCTは消磁状態のまま、ソレノイドS4,S6が励磁される。その結果、荷受台3が自重で後傾(左側から見て右回りに回動)する。
【0079】
-効果-
(1)傾斜センサ8は、センシングプレートと対で用いられる近接スイッチ等と異なり、重力方向を基準とした自己の角度を測定でき、前傾動作時と後傾動作時の測定値の誤差がほぼない。本実施形態によれば、荷受台3に傾斜センサ8を設けたことにより、車両の姿勢(接地面の角度)によらず荷受台3の少なくとも前後方向の角度姿勢(重力方向を基準とした絶対的な角度)を常時高精度に測定することができる。これにより例えば傾斜地で車両が前後に傾斜した状態でも、車両の傾きとは関係なく荷役作業時の荷受台3の角度を精度良く基準角度θrに制御することができる。
【0080】
加えて、傾斜センサ8を荷受台3に取り付ける取り付け部材10が円弧状の長穴であるガイド穴12を備えていることで、ピン11を中心にして傾斜センサ8の角度を荷受台3の傾斜方向に調節することができる。リフトシリンダ4による昇降動作の際に傾斜センサ8の信号を基に荷受台3の角度θを判定する場合、荷受台3に対する傾斜センサ8の取り付け角度の調節により傾斜センサ8の出力に対する荷受台3の基準角度θrを機構的に柔軟に調節できる。例えば荷受台3の左方向から見てピン11を支点に傾斜センサ8を標準角度βから角度Δαだけ後傾させると、角度Δαだけ荷受台3の基準角度θrが前傾する。操作者によって荷役作業時に所望する基準角度θrが異なるため、ユーザフレンドリーの観点でもこのような調節機構の意義は大きい。また、傾斜センサ8には近接スイッチのセンシングプレートのようにセットで使用される特別な要素がないので、傾斜センサ8はレイアウトの自由度も高い。
【0081】
なお、本実施形態ではガイド穴12を荷受台3に設けた場合を例に挙げて説明したが、ブラケット14と荷受台3とが相対変位すれば良いので、ガイド穴12は荷受台3ではなくブラケット14に設けても良い。長穴としての支点穴15についても同様である。また、荷受台3に傾斜センサ8を取り付ける取り付け部材10がブラケット14を含む構成としたが、傾斜センサ8の仕様(測定する傾斜の方向等)によっては、ブラケット14を省略して荷受台3に傾斜センサ8を取り付ける構成としても良い。この場合も、ピン11、ガイド穴12、固定具13を介して荷受台3に傾斜センサ8を取り付ければ、上記と同様に傾斜センサ8の取り付け角度を調節することができる。
【0082】
(2)傾斜センサ8をスチフナ3Aの内部に収容した。スチフナ3Aで覆って保護することにより傾斜センサ8の故障を抑制することができる。また、傾斜センサ8がスチフナ3Aで覆われているので、荷受台昇降装置の美観性にも優れる。但し、本質的な上記効果(1)を得る限りにおいては傾斜センサ8の配置はスチフナ3Aの内部に限られず、荷受台3の他の部位に設置可能であれば傾斜センサ8の設置場所は適宜変更することができる。
【0083】
(3)ガイド穴12の窪み12Aに設け、固定具13を窪み12Aに合わせることで荷受台3に対する傾斜センサ8の取り付け角度が標準角度βとなるように構成されているので、荷受台3の基準角度θrをリセットして簡単に標準値に戻すことができる。本実施形態では、例として傾斜センサ8の取り付け角度が標準角度βの場合に荷受台3が水平(θr=0)になるように構成してあるので、荷受台3の水平を容易に設定することができる。また、ピン11を通す支点穴15が窪み12Aの窪み方向に延びる長穴であるため、固定具13を窪み12Aに合わせたら、傾斜センサ8を窪み方向にシフトさせることで、確りと標準角度βで固定することができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、このような傾斜センサ8の取り付け角度を標準角度βにリセットする構成は必ずしも必要なく、省略しても良い。この場合、支点穴15を円孔にすることができ、加工が容易化する。また、ピン11が自転するのみでシフトしないので、ピン11を締め込んだり緩めたりする必要がなくなる。そのため、ピン11にボルトを使用する必要がなくなり、ピン11としてネジのないピンを使用し適宜抜け止めした構成に変更することができる。更には、標準角度βにリセットする構成を設ける限りにおいては、単に標準角度βを表す照準をガイド穴12に表示しておくだけでも良い。
【0084】
(4)また、荷受台3の角度θが基準角度θrであることを条件にリフトシリンダ4の駆動指令を実行するインタロック機能を備えているので、例えば荷受台3が大きく傾斜した状態で誤操作により操作者の意図に反して荷受台3が昇降するようなことを回避できる。これに加え、本実施形態では傾斜センサ8の信号に基づいてインタロックが機能するため、第1モードの説明で述べたように車両(接地面)の傾きによらず重力方向を基準とした絶対的な角度に荷役作業時の荷受台3の角度を保つことができる。更には第2モードに切り換えることで、傾斜センサ8の取り付け角度を調節しなくても、車両が停車した地面の傾き等に柔軟に対応して、車両に対して任意に設定した荷受台3の相対角度を保って荷受台3を昇降させることができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、このような第2モードへの切換機能は必ずしも必要なく、省略しても良い。
【0085】
(5)本実施形態においては、リフトシリンダ4やチルトシリンダ5、モータ23といった駆動装置の駆動系に制御装置41を迂回して直結した緊急操作用のコネクタ60,70が備わっており、コネクタ60又は70に操作装置30を繋ぎ換えられる。傾斜センサ8等の電気機器の不具合により制御装置41による荷受台駆動機能の実行に支障を来しても、コネクタ60又は70に操作装置30を繋ぐことで、制御装置41を介することなく操作装置30から駆動装置の駆動系に直接信号を入力できる。これにより制御装置41を介した荷受台昇降装置の動作が不安定になっても、応急的に荷受台昇降装置を動作させ、例えば荷受台3を格納姿勢に移行させられる。加えて、緊急操作を行う際には操作者は明確な意図を持って操作装置30を繋ぎ換える必要があるため、例えば通常の荷役作業の際に操作者の意図に反して制御装置41の機能が解除されて荷受台昇降装置が不測の動作をするようなことを回避できる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいて緊急操作用のコネクタ60,70は必ずしも必要ない。
【0086】
(6)荷受台3を駆動する2つのシリンダ(リフトシリンダ4とチルトシリンダ5)を備え、リフトシリンダ4の駆動系に直結したコネクタ60と、チルトシリンダ5の駆動系に直結したコネクタ70とを別々に備えている。操作装置30のコネクタ35は、コネクタ50,60,70のいずれかに択一的に接続可能な構成であり、緊急の際に操作者はどの駆動装置を操作するかの明確な意図を持ってコネクタ60,70を選択することになり、誤操作抑制に寄与することができる。
【0087】
なお、本実施形態では緊急操作用に操作対象に応じて複数のコネクタ60,70を設けたが、上記効果(1)を得る限りにおいては緊急操作用のコネクタは単一であっても良い。その場合、緊急操作用のコネクタと駆動装置の駆動系との結線関係が、操作装置30をコネクタ50に繋いだ場合と同様の操作ができるような結線関係となるようにすれば良い。
【0088】
(7)本実施形態においては、リフトシリンダ4については上スイッチ31又は下スイッチ32のみで操作できる一方、チルトシリンダ5については開閉スイッチ33と同時に上スイッチ31又は下スイッチ32を操作しないと操作できないようになっている。つまりチルトシリンダ5は操作装置30を両手で操作しないと動作しない。荷受台3の傾斜動作に特に明確な意図が伴われるようにするための配慮である。コネクタ60,70と駆動装置の駆動系との結線関係についても、チルトシリンダ5については開閉スイッチ33と同時に上スイッチ31又は下スイッチ32を操作しないと操作できないようになっている。緊急操作の際は操作者に焦燥がある場合が考えられるため、このような構成が不測の動作を防止する上で有効である。但し、上記効果(1)を得る限りにおいてこの構成は必須ではない。
【0089】
(8)先に説明したしたように、切換弁V1,V2が開くことで、荷受台3の接地前はチルトアーム7に対してリフトアーム2及びチルトシリンダ5が回動し荷受台3が自重により下方に平行移動する。荷受台3の接地後は荷受台3の重量によりチルトアーム7が支持フレーム1に対して回動し荷受台3がピンP4を支点にして後傾する。荷受台3の下げ操作中において接地後に自動的に後傾動作に切り換わる機構である。荷受台3の下降動作は、切換弁V1,V2が開いてリフトシリンダ4と作動油タンク21がタンク油路LT1で接続し、荷受台3の重量により油室から作動油タンク21に作動油が排出されてリフトシリンダ4が収縮することによる。
【0090】
本実施形態においては、接地後の下げ操作で機構的に荷受台3が後傾する荷受台昇降装置において、タンク油路LT1を迂回してリフトシリンダ4の油室を作動油タンク21に繋ぐタンク油路LT2を追加し、これを切換弁V5で開閉する構成とした。操作装置30の下スイッチ32が操作され荷受台3を下降させる信号が入力されている間、制御装置41は、接地センサ24により荷受台3の接地が検出されていない場合は切換弁V1,V2,V5のうちタンク油路LT1に係る切換弁V1,V2のみを開く。それに対し、接地センサ24により荷受台3の接地が検出されている場合、制御装置41は下降動作時と同じ操作信号に従って、タンク油路LT1に係る切換弁V1,V2とタンク油路LT2に係る切換弁V5の双方を開く。荷受台3の接地前に比べて接地後はリフトシリンダ4の油室に加わる力が減少し作動油温等によっては荷受台3の動作(後傾)速度が不足し得るが、接地後はタンク油路LT2が開通し作動油排出流路の断面積が増加する。これにより作動油の排出流量を増加させてリフトシリンダ4による荷受台3の後傾速度の不足を補うことができる。その一方で、接地後と比較して油室に大きな力が加わる接地前においては、切換弁V5によりタンク油路LT2が遮断されてタンク油路LT1でのみリフトシリンダ4が作動油タンク21に繋がるので、下降速度が必要以上に早くなることはない。このように荷受台3の自重による下降動作及び接地後の後傾動作を適正で円滑なものとすることができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、タンク油路LT2を設ける必要は必ずしもない。
【0091】
(9)接地センサ24に圧力センサを用いたので、荷受台3の接地を検出するセンサを油圧回路に組み込むことができる。ここで、例えば荷受台3に地面との接触を検出するスイッチや距離計等を設けることでも荷受台3の接地を検出できる。また、リフトシリンダ4の一定のストロークやリフトアーム2の一定の角度を近接センサや距離計、角度計、回転センサ等で検出し荷受台3の接地を判定する構成も考えられる。しかし、これらの可動要素にセンサ類を設置する構成は装置構造を複雑化し、また地面その他の障害物との干渉によりセンサ類に不具合が発生し易くなる懸念もある。接地センサ24に圧力センサを用いることでこれらの欠点を解消することができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、接地センサ24を他のタイプのセンサで代替しても良い。
【0092】
(10)リフトアーム2と共に平行リンクを構成するリンクアームをチルトシリンダ5で兼ねたことで、荷受台3の昇降動作(平行移動)と傾斜動作を両立する機構をシンプルに構成することができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、例えば荷受台3を傾斜動作させるチルト機構を平行リンクとは別に構成し、平行リンクをリフトシリンダ4で駆動する一方で、平行リンクとは別途に設けたチルトシリンダでチルト機構を駆動する構成としても良い。
【0093】
(11)荷受台3が基準角度θrであることを条件にリフトシリンダ4の駆動指令を実行するインタロック機能を制御装置41に持たせているので、この条件で一律にインタロックが機能してしまうと前述した荷受台3の接地後の後傾動作が不能となる。荷受台3が傾斜することでリフトシリンダ4の駆動系への指令が途切れるためである。チルトシリンダ5を駆動して接地状態の荷受台3を後傾させることはできるが、意図的にインタロックを解除しない限り、チルトシリンダ5により荷受台3を基準角度θrに正確に戻さなければ荷受台3をその後上昇させることができない。いずれにしても通常の荷役作業を上スイッチ31及び下スイッチ32のみの操作でシンプルに行えるメリットが損なわれる。
【0094】
それに対し、本実施形態では接地センサ24により荷受台3の接地が検出されていることを条件にインタロック機能を解除するインタロック解除機能が制御装置41に備わっている。これにより荷役作業時の操作の容易性のメリットが損なわれることがない。タンク油路LT2を開通させることによる接地時の荷受台3の後傾速度の適正化とも相俟って荷役作業の効率化に貢献する。但し、接地センサ24と協働したインタロック解除機能を省略しても上記効果(1)は得られる。
【符号の説明】
【0095】
2…リフトアーム、3…荷受台、3A…スチフナ、4…リフトシリンダ、5…チルトシリンダ、8…傾斜センサ、10…取り付け部材、11…ピン、12…ガイド穴、12A…窪み、13…固定具、25…モードスイッチ、27…角度設定スイッチ、41…制御装置、P2…ピン(荷受台の回動軸)、15…支点穴、O…傾斜センサの回動中心、β…標準角度、θ…荷受台の角度、θ1…第1設定角度、θ2…第2設定角度、θr…基準角度