(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119904
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ウェアラブルパッチ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/202 20210101AFI20220809BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20220809BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20220809BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20220809BHJP
【FI】
H01M50/202 501P
A61B5/01 100
A61B5/0245 A
H01M50/284
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086316
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2018525800の分割
【原出願日】2018-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017000392
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017209560
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古谷 隆博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光俊
(72)【発明者】
【氏名】小野 博昭
(57)【要約】
【課題】使用後に確実に電池からの電力供給を停止させてそのまま廃棄することが可能なウェアラブルパッチを提供する。
【解決手段】身体に装着されるウェアラブルパッチ100であって、機能素子50と、前記機能素子を動作させる駆動回路部20と、電源としての電池10とを備え、前記ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とし、前記電池から前記駆動回路部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段70が形成され、前記電池と前記駆動回路部とを接続する導電経路31を有し、前記切断容易化手段によって前記導電経路が切断可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に装着されるウェアラブルパッチであって、
機能素子と、
前記機能素子を動作させる駆動回路部と、
電源としての電池とを備え、
前記ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とし、前記電池から前記駆動回路部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成され、
前記電池と前記駆動回路部とを接続する導電経路を有し、前記切断容易化手段によって前記導電経路が切断可能であることを特徴とする、ウェアラブルパッチ。
【請求項2】
前記切断容易化手段として、切断の起点となる切断開始部を有する、請求項1に記載のウェアラブルパッチ。
【請求項3】
前記切断開始部として、周囲部分に形成された切り込みを有する、請求項2に記載のウェアラブルパッチ。
【請求項4】
前記切断容易化手段として、周囲部分に位置する一端部を引き上げることで前記所定部分が切断されるように配置されたカットテープを有する、請求項1に記載のウェアラブルパッチ。
【請求項5】
前記切断容易化手段として、他の部分と比較して容易に切断可能な切断部を有する、請求項1に記載のウェアラブルパッチ。
【請求項6】
前記切断部としてミシン目の形成部分を有する、請求項5記載のウェアラブルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用などを目的として、人間の皮膚に直接装着されることで被装着者の生体情報を取得するなどの各種の機能を果たすウェアラブルパッチと、薄型であることからウェアブルパッチの動作電源としても使用可能なシート状電池に関し、特に、使用後の廃棄を容易に行うことができるウェアラブルパッチ、および、シート状電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の表面に直接貼り付けることで体温や心拍数などの生体情報を取得できる、パッチタイプの医療用生体情報取得デバイスが普及し始めている。
【0003】
このようなウェアラブルなデバイスは、樹脂製の基材の表面に、皮膚に触れることで生体情報を取得可能な機能素子であるセンサ電極と、センサ電極からの情報を取得するとともに、例えばスマートフォンなどの別の機器に取得した情報を伝送する送信装置を含む駆動回路部と、駆動回路部の動作電源となる電池とが配置され、センサ電極部分以外の皮膚に面した部分に接着層が形成されることで、皮膚に貼り付けることができるパッチとして構成され、身体に直接貼り付けて使用されるウェアラブルの医療機器となっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アノードとカソードとが印刷により形成された電源としての電気化学セルと、可撓性を有するセンサを含む電気回路とが、表面に接着剤層が形成された2つの樹脂製の基板層の間に配置されて構成され、スマートフォンとの間でデータ通信が可能な体温測定用パッチが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ユーザの心拍数や呼吸、身体の移動状況などを各種センサで測定可能な生体計測パッチとして、センサ、プロセッサ、アプリケーション、送信機などを有する再利用可能なセンサデバイスと亜鉛空気電池として例示される電池とを、気泡層や接着層を含む複数の層が積層された廃棄可能なパッチデバイスに収容するものが開示されている。
【0006】
特許文献3には、樹脂製基板に、センサや半導体装置を含む電子部品と、この電子部品の動作電源としてのコイン型の空気電池とが実装された医療用の絆創膏型の計測モジュールについて、基板を人体に接着させるための接着層を覆う保護シートが空気電池収容部の正極側を覆うシール部材を兼ねることで、保護シートを剥がして計測モジュールを人体に装着する際に、空気電池の正極に空気が接触して電力を供給し始めるものが開示されている。
【0007】
さらに、最近では、体温パッチなどのようなウェアラブルの各種センサや、ゴルフヘッド用の速度センサなどの電源に、シート状電池を適用することも試みられている。それに付随して、シート状電池の各種特性の改良も数多く行われ、正極、負極、セパレータ、電解質といった内部部材の他に、シート状外装体についての検討も行われている。例えば、特許文献4には、シート状外装体の周方向に伸びている接着部の一部に、優先的に剥離する優先剥離部と優先剥離部の周方向に隣接する位置の接着部に設けられた接着部の周方向に作用する張力に対する伸び率が接着部の部分よりも大きい張力緩衝部とを設けることで、内圧が上昇した場合に内部のガスを優先剥離部から安全に排出できるようにしたシート状電池(ラミネート型電池)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2016-505808号公報
【特許文献2】特表2016-515022号公報
【特許文献3】特開2017- 370号公報
【特許文献4】特開2006-351431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような医療用のパッチは、人体に直接貼り付けて使用するものであるため、衛生面を考慮して1回の使用毎に廃棄される。また、ウェアブルパッチの機能自体が、一度限りの使用を目的としているものがあり、このようなウェアラブルパッチは使用が終了すると廃棄される。
【0010】
使用後のウェアラブルパッチを廃棄する際に、パッチに搭載されている電池に電池容量が残っているにもかかわらずそのまま廃棄してしまうと、廃棄された後も駆動回路部が動作し続けて、不所望な化学反応が引き起こされたり、発熱、発火などの不測の事態を生じたりする恐れがある。また、欧州などでは、電力を供給できる状態の電池を他の廃棄物と一緒に捨てることができないなどの規制があり、使用後のウェアラブルパッチをどのようにして安全に廃棄するかが問題となる。
【0011】
例えば、上記特許文献2では、パッチデバイスであるシート部材と、電池を含む回路部分であるセンサデバイスとを分離可能として、シート部分は廃棄する一方で回路部分を再利用する形態となっている。しかし、再利用時には新たな電池を搭載し直す必要があるとともに、医療現場などの実際の使用環境の中で、シート部材から回路部分を分離した後にこれを回収して再利用に回すことには、手間やコストがかかってしまう。
【0012】
また、パッチの電源として用いられたシート状電池も、一次電池の場合には放電し切って使用を終えた際にユーザが廃棄することが想定される。また、シート状電池が二次電池であっても、ユーザが交換可能なタイプの機器に適用されているようなものについては、充放電を多数繰り返すことで容量が低下してしまった場合に、新たな電池と交換するために機器から取り出したユーザが廃棄することが想定される。
【0013】
このように、シート状電池がユーザによって廃棄されることを想定した場合にも、シート状電池の接続端子が金属製の部材に接触するなどにより電流が流れてしまう恐れがあり、やはりウェアラブルパッチの場合と同様に不測の事態を生じることも考えられる。このため、容易に電力の供給を停止させた安全な状態でシート状電池を廃棄できるようにすることが望ましい。
【0014】
本開示は、上記従来の課題を解決し、使用後に確実に電池からの電力供給を停止させてそのまま廃棄することが可能なウェアラブルパッチを提供することを第1の課題とする。また、本開示は、ウェアラブルパッチの電源などとして用いられるシート状電池について、使用後に確実に電力の供給を停止させて安全に廃棄することができるシート状電池を得ることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の課題を解決するために本願で開示するウェアラブルパッチは、身体に装着されるウェアラブルパッチであって、機能素子と、前記機能素子を動作させる駆動回路部と、電源としての電池とを備え、前記ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とし、前記電池から前記駆動回路部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成され、前記電池と前記駆動回路部とを接続する導電経路を有し、前記切断容易化手段によって前記導電経路が切断可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願で開示するウェアラブルパッチは、当該ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とし、電源としての電池から駆動回路部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成されている。このため、使用後のウェアラブルパッチを、容易に動作しない状態にして安全に廃棄することができる。
【0017】
また、本願で開示するシート状電池は、当該シート状電池の所定部分を200N以下の力で切断可能とし、電池から外部への電源としての電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成されている。このため、使用後のシート状電池を、外部に電力が供給されない状態にして安全に廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態にかかるウェアラブルパッチの概略構成を説明するための平面図である。
【
図2】第1の実施形態にかかるウェアラブルパッチの概略構成を説明するための断面構成図である。
【
図3】電源としての空気電池の構成を説明するための断面構成図である。
【
図4】電源としての空気電池の構成を説明するための平面図である。
【
図5】第1の実施形態にかかるウェアラブルパッチの第2の構成例を説明するための平面図である。
【
図6】第1の実施形態にかかるウェアラブルパッチの第3の構成例を説明するための平面図である。
【
図7】第2の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明するための要部拡大平面図である。
【
図8】第2の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明するための要部拡大断面図である。
【
図9】第3の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明するための平面図である。
【
図10】第4の実施形態にかかるシート状電池の概略構成を説明するための平面図である。
【
図11】第4の実施形態にかかるシート状電池の概略構成を説明するための断面構成図である。
【
図12】第4の実施形態にかかるシート状電池の第2の構成例を説明するための平面図である。
【
図13】第4の実施形態にかかるシート状電池の第3の構成例を説明するための平面図である。
【
図14】第5の実施形態にかかるシート状電池の構成を説明するための要部拡大平面図である。
【
図15】第5の実施形態にかかるシート状電池の構成を説明するための要部拡大断面図である。
【
図16】第6の実施形態にかかるシート状電池の構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示にかかるウェアラブルパッチは、身体に装着されるウェアラブルパッチであって、機能素子と、前記機能素子を動作させる駆動回路部と、電源としての電池とを備え、前記ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とし、前記電池から前記駆動回路部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成されている。
【0020】
本開示にかかるウェアラブルパッチは、上記の構成を備えることで、機能素子を動作させて、医療用の計測デバイスや投薬デバイスとして、また、被装着者の各種の身体情報を取得するウェアラブルデバイスとして使用できるとともに、廃棄時には、切断容易化手段によって所定部分を200N以下の比較的弱い力で、例えば、はさみなどを用いずに両手で切断することができるので、電池から駆動回路部への電力の供給を容易に停止させることができる。このため、医療現場や、家庭内での実際の使用状態において、使用後のウェアラブルパッチを安全に廃棄することができる。
【0021】
本開示のウェアラブルパッチにおいて、前記電池と前記駆動回路部と接続する導電経路を有し、前記切断容易化手段によって前記導電経路が切断可能である。切断容易化手段によって200N以下の力で導電経路を切断でき、容易に、かつ、確実に電池から駆動回路部への電力供給を停止することができる。
【0022】
また、前記電池は、シート状の外装体の内部に配置された正極と負極とを含む発電要素と、前記発電要素による電力を外部に導出する前記正極に接続された正極端子と、前記負極に接続された負極端子とを備え、前記切断容易化手段によって前記正極端子、および、前記負極端子の少なくとも一方が切断可能である。切断容易化手段によって、200N以下の力で電池の端子を切断することができ、電池からの電源供給を容易に停止させることができる。
【0023】
さらに、前記電池は、シート状の外装体の内部に、いずれもシート状に形成された正極と負極とを含む発電要素が配置されたシート状電池であり、前記切断容易化手段によって、前記発電要素が切断可能であるようにすることもできる。シート状電池の場合は、発電要素自体を切断することも可能であるため、切断容易化手段によって200N以下の力で発電要素を切断して、電池の動作を停止させて電池からの電力の供給を停止させることもできる。
【0024】
また、前記切断容易化手段として、切断の起点となる切断開始部を有する構成を採用することができ、さらにこの場合には、前記切断開始部として、周囲部分に形成された切り込みを有する形態を選択することができる。
【0025】
さらに、前記切断容易化手段として、周囲部分に位置する一端部を引き上げることで前記所定部分が切断されるように配置されたカットテープを有する構成を採用することができる。
【0026】
さらにまた、前記切断容易化手段として、他の部分と比較して容易に切断可能な切断部を有する構成を採用することができ、この場合において、前記切断部としてミシン目の形成部分を有する形態を選択することができる。
【0027】
また、本願で開示するシート状電池は、シート状外装体の内部に、いずれもシート状の正極と負極とを含む発電要素が封入されたシート状電池であって、前記シート状電池の所定部分を200N以下の力で切断可能とし、当該電池から外部への電力の供給を停止させるための切断容易化手段が形成されている。
【0028】
本開示にかかるシート状電池は、上記の構成を備えることで、廃棄時に、切断容易化手段によって所定部分を200N以下の比較的弱い力で、例えば、はさみなどを用いずに両手で切断することができる。このため、電池から外部への電力の供給を容易に停止させることができ、医療現場や、家庭内での実際の使用状態において、使用後のシート状電池を安全に廃棄することができる。
【0029】
本開示のシート状電池は、前記発電要素による電力を外部に導出する前記正極に接続された正極端子と、前記負極に接続された負極端子とを備え、前記切断容易化手段によって前記正極端子、および、前記負極端子の少なくとも一方が切断可能である。このようにすることで、切断容易化手段によって200N以下の力で正極端子、および/または、負極端子を切断でき、容易に、かつ、確実に電池から外部への電力供給を停止することができる。
【0030】
また、前記切断容易化手段によって前記発電要素が切断可能である構成とすることができる。このように、発電要素自体を切断することで、200N以下の力で電池の動作を停止させて電池からの電力の供給を停止させることができる。
【0031】
また、前記切断容易化手段として、切断の起点となる切断開始部を有する構成を採用することができ、さらにこの場合には、前記切断開始部として、周囲部分に形成された切り込みを有する形態を選択することができる。
【0032】
さらに、前記切断容易化手段として、周囲部分に位置する一端部を引き上げることで前記所定部分が切断されるように配置されたカットテープを有する構成を採用することができる。
【0033】
さらにまた、前記切断容易化手段として、他の部分と比較して容易に切断可能な切断部を有する構成を採用することができ、この場合において、前記切断部としてミシン目の形成部分を有する形態を選択することができる。
【0034】
以下、本開示にかかるウェアラブルパッチ、および、シート状電池について、図面を参照して説明する。
【0035】
なお、本実施形態の説明で用いるウェアラブルパッチ、および、シート状電池の構造を説明するための各図面は、ウェアラブルパッチ、または、シート状電池を構成する各部材の形状とその配置位置の相互関係とをわかりやすく説明するものであり、各図に示した部材の大きさは、必ずしも実際の大きさを反映するものではない。
【0036】
また、以下の説明はあくまで例示であって、本願で開示されるウェアラブルパッチ、および、シート状電池の構成は、下記実施形態として示されたものに限定されない。
【0037】
<本願で開示するウェアブルパッチの実施形態について>
まず、本願で開示するウェアラブルパッチの実施形態を説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
本願で開示するウェアラブルパッチは、ウェアラブルパッチを200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段を備えている。第1の実施形態では、切断容易化手段として、切断開始部を備えた構成について説明する。
【0039】
切断開始部は、ウェアラブルパッチの周囲部分に形成された、他の部分よりも弱い力で切断を開始することができる箇所であり、切断開始部より切断を開始することで、200N以下の比較的弱い力で、切断開始部を起点としてウェアラブルパッチを略直線状に切断することができる。すなわち、ウェアラブルパッチの切断において、はさみなどの器具を用いずに両手の力で切断する場合、通常は、切断開始時に必要とされる力が最も大きくなるが、前記切断開始部を設けてその値を低くすることによって、比較的弱い力での切断が可能となる。
【0040】
[ウェアラブルパッチの構成]
図1は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチの概略構成を説明するための平面図である。また、
図2は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチの概略構成を説明するための断面構成図である。
【0041】
図2は、
図1にA-A’で示す部分の断面を示している。また、
図1、および、
図2は、ウェアラブルパッチ100全体の概略構成を説明するものであって、ウェアラブルパッチ100を構成する各部材をブロック状に簡略化して表している。なお、以下の説明では、便宜上
図2の上下方向を、本実施形態で示すウェアラブルパッチ100の上下方向として説明する。すなわち、ウェアラブルパッチ100を身体に貼着した状態において、被装着者の皮膚に面する側がウェアラブルパッチ100の下側の表面であり、外側に向かう面がウェアラブルパッチ100の上側の表面となる。
【0042】
本実施形態で説明するウェアラブルパッチ100は、例えば被装着者の体温を検出する医療用パッチであり、直接皮膚に貼り付けて使用するものである。
【0043】
図1に示すように、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100は、動作電源である電池10と、ウェアラブルパッチ100を動作させる駆動回路部20とが、基材30の上面側に配置されている。電池10の下側面に形成された電極端子9と、駆動回路部20の下側面に形成された接続端子21とが、ウェアラブルパッチ100全体の基板としての役割を果たす基材30の上面に形成された導電経路としての電源配線31で接続されることで、電池10から駆動回路部20へと電力が供給される。
【0044】
基材30の上面は、電池10と駆動回路部20の配置領域を除いてカバー部材40で覆われている。
【0045】
基材30の下側面には、被装着者の皮膚に接触あるいは近接する機能素子50と、ウェアラブルパッチ100を被測定者に貼着するための粘着層60が形成されている。なお、駆動回路部20と機能素子50とは、図示しない接続配線等で接続されており、駆動回路部20での動作制御にしたがって、機能素子50は、体温や心拍数などの生体情報の検出や薬液の供給などの所定の機能を果たす。
【0046】
また、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100には、200N以下の力でウェアラブルパッチ100を切断可能とする切断開始部70としての切り込み71が、基材30とカバー部材40との積層部分であって、ウェアラブルパッチの周囲部分に形成されている。このため、ウェアラブルパッチ100を廃棄する際に、切断開始部70の切り込み71を起点としてウェアラブルパッチ100を切断することで、ウェアラブルパッチ100の所定部分である電池10から駆動回路部20へと電力を供給する導電経路(電源配線31)を切断して、電力の供給を確実に停止させることができる。
【0047】
以下、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100を構成する各部材の構成例について説明する。
【0048】
[電池]
皮膚の表面に貼り付けられるウェアラブルパッチ100に動作電源として搭載される電池10は、特に限定されるものではなく、水を溶媒とする電解液を有する電池(アルカリ電池、マンガン電池などの乾電池や、空気電池など)や、非水溶媒を用いた非水電解液を有する電池(リチウム電池など)の態様を取ることができる。ただし、被装着者に違和感を与えないように、薄型で、かつ、軽量であること、また、駆動回路部20が長時間動作可能であるように電池容量が大きいこと、という特性を備えることが好ましい。このため、本実施形態のウェアラブルパッチ100では、動作電源となる電池に、正極、負極を含む発電要素や外装体がシート状の部材で形成されたシート状空気電池10を用いている。
【0049】
図3は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100に用いられているシート状空気電池10の構成を説明するための断面構成図である。
【0050】
また、
図4は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100に用いられているシート状空気電池10の構成を説明するための平面図である。なお、
図3は、
図4に示すB-B’線での断面を示している。
【0051】
シート状の空気電池10は、正極1と負極2とを含む発電要素をはじめとする各部材をシート状に形成することで全体として可撓性を有するシート状に構成されている。
【0052】
図3にその断面を示すように、本実施形態で説明するシート状の空気電池10は、それぞれがシート状に形成された、正極1と負極2、正極1と負極2との間に配置されたセパレータ3と、図示を省略する電解液とが、その周囲部分がシールされたいずれもシート状に形成された正極1側の外装体6と、負極2側の外装体5との間に密閉されて構成されている。また、正極1と、正極1側の外装体6との間には、空気を透過するが水分(電解液)は透過しない撥水膜4が配置されていて、正極1側の外装体6に形成された空気孔7から撥水膜4を介して、正極1に正極活物質である空気(酸素)が供給される。
【0053】
なお、
図1、
図2に示したように、本実施形態で説明するウェアラブルパッチ100では、空気電池10は、基材30の上側表面に配置されていて、カバー部材40は、空気電池10の正極1側の外装体6に形成された空気孔7を覆わないように、空気電池10の表面を露出させる開口が形成されている。
【0054】
以下、シート状空気電池10の各部材について詳述する。
【0055】
(正極)
正極1は、触媒層を有するもの、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
【0056】
触媒層には、触媒やバインダなどを含有させることができる。
【0057】
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrO2などの白金/金属酸化物、La1-xCaxCoO3などのベロブスカイト酸化物、WCなどの炭化物、Mn4Nなどの窒化物、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物、カーボン[黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など]などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。
【0058】
なお、触媒層は、電解液の成分を除く重金属の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。重金属の含有量が前記のように少ない触媒層を有する正極の場合、特別な処理などを経ずに廃棄しても環境負荷が小さい電池とすることができる。この点からも、触媒としては前述のカーボンを使用することがより好ましい。触媒層中の重金属の含有量は、蛍光X線分析などにより測定することができ、例えば、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置「ZSX100e(製品名)」を用いて、励起源:Rh50kV、分析面積:φ10mmの条件で測定することができる。
【0059】
また、正極の反応性をより高める観点からは、触媒として使用するカーボンの比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることが更に好ましい。なお、カーボンの比表面積は、JIS K 6217に準じたBET法によって求められる値であり、例えば、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定することができる。なお、カーボンの比表面積の上限値は、通常、2000m2/g程度である。
【0060】
触媒層における触媒の含有量は、20~70質量%であることが好ましい。
【0061】
触媒層に係るパインダとしては、PVDF、PTFE、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体[フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HEP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-HEP-TFE)など]などのフッ素樹脂バインダなどが挙げられる。これらの中でもテトラフルオロエチレンの重合体(PTFE)または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるパインダの含有量は、3~50質量%であることが好ましい。
【0062】
触媒層を有する正極の場合、例えば、前記触媒、バインダなどを水と混合してロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また前記の触媒や必要に応じて使用するバインダなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することもできる。
【0063】
正極合剤層を有する正極や触媒層を有する正極に係る集電体には、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、銅などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンの網、多孔質シート;などを用いることができる。正極に係る集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0064】
また、正極の集電体には、シート状外装体を構成する樹脂製フィルムや、樹脂製フィルムと金属フィルムとの積層体の一部を利用することもできる。この場合、例えば、樹脂製フィルムや前記積層体の、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して集電体としたり、前記積層体の金属層を集電体としたりし、この表面に前記と同様の方法で正極合剤層や触媒層を形成することで、正極とすることができる。前記のカーボンペースト層の厚みは、30~300μmであることが好ましい。
【0065】
(負極)
負極2には、亜鉛系材料(亜鉛材料と亜鉛合金材料とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系材料(マグネシウム材料とマグネシウム合金材料とを纏めてこのように称する)、アルミニウム系材料(アルミニウム材料とアルミニウム合金材料とを纏めてこのように称する)などの金属材料で構成された金属粒子や金属箔などが使用される。このような負極では、亜鉛やマグネシウムやアルミニウムといった金属が、活物質として作用する。
【0066】
亜鉛合金材料の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で0.005~0.05%)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で0.005~0.05%)、 アルミニウム(例えば含有量が質量基準で0.001~0.15%)などが挙げられる。
【0067】
また、マグネシウム合金材料の合金成分としては、例えば、カルシウム(例えば含有量が質量基準で1~3%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.1~0.5%)、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.4~1%)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で8~10%)などが挙げられる。
【0068】
さらに、アルミニウム合金材料の合金成分としては、例えば、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.5~10%)、スズ(例えば含有量が質量基準で0.04~1.0%)、ガリウム(例えば含有量が質量基準で0.003~1.0%)、ケイ素(例えば含有量が質量基準で0.05%以下)、鉄(例えば含有量が質量基準で0.1%以下)、マグネシウム(例えば含有量が質量基準で0.1~2.05%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.01~0.5%)などが挙げられる。
【0069】
金属粒子を含有する負極の場合、その金属粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
【0070】
なお、電池の廃棄時の環境負荷の低減を考慮すると、負極に使用する金属材料は、水銀、カドミウム、鉛およびクロムの含有量が少ないことが好ましく、具体的な含有量が、質量基準で、水銀:0.1%以下、カドミウム:0.01%以下、鉛:0.1%以下、およびクロム:0.1%以下であることがより好ましい。
【0071】
亜鉛系材料の粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
【0072】
また、マグネシウム系材料およびアルミニウム系材料の粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が50~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
【0073】
なお、上記説明における金属粒子の粒度は、レーザー散乱粒度分布計を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
【0074】
金属粒子を含有する負極の場合には、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)やバインダを含んでもよく、これに電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極など)を使用することができる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましく、バインダの量は、0.5~3質量%とすることが好ましい。
【0075】
金属粒子を含有する負極に係る電解液には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
【0076】
負極における金属粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
金属粒子を含有する負極は、酸化インジウム、水酸化インジウムなどのインジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、金属粒子と電解液との腐食反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。
【0078】
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、金属粒子:100に対し、0.03~1であることが好ましい。
【0079】
また、負極には、前記亜鉛系材料や、前記マグネシウム系材料などで構成された金属シート(金属箔など)を用いることもできる。このような負極の場合、その厚みは、10~500μmであることが好ましい。
【0080】
また、負極には、集電性を高めるために、必要に応じて集電体を用いてもよい。負極の集電体としては、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンのシート、網;などが挙げられる。負極の集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0081】
負極の集電体には、前記正極の場合と同様に、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して用いたり、シート状外装体を構成する金属層を用いたりすることができる。カーボンペースト層の厚みは、50~200μmであることが好ましい。
【0082】
(セパレータ)
セパレータ3としては、樹脂製の多孔質膜(微多孔膜、不織布など)や、セロファンフィルムに代表される半透膜などの、各種電池で一般的に採用されているセパレータが挙げられる。なお、シート状電池の短絡防止および負荷特性を向上させる観点からは、半透膜をセバレータに使用することが好ましい。
【0083】
樹脂製の多孔質膜からなるセパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが挙げられる。
【0084】
樹脂製のセバレータの場合、空孔率は30~80%であることが好ましく、また、厚みは10~100μmであることが好ましい。
【0085】
また、セロファンフィルムなどの半透膜をセパレータに使用する場合、半透膜のみでセパレータを構成してもよい。しかしながら、半透膜は強度が小さいため、電池組み立て時の破損などの問題が発生しやすい。よって、特定の重合体で構成されるグラフトフィルムと、半透膜とを積層した積層体でセパレータを構成することも推奨される。
【0086】
グラフトフィルムを構成するグラフト重合体は、例えば、幹ポリマーであるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体が、グラフト重合した形態を有するものである。ただし、グラフト重合体は前記の形態を有していればよく、ポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸やその誘導体をグラフト重合させる方法により製造されたものでなくともよい。
【0087】
セロファンフィルムのみで構成されるセパレータの場合、その厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、また、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0088】
さらに、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体で構成されるセパレータの場合、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの合計厚みで、例えば、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、また、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0089】
さらに、グラフトフィルムとセロファンフィルムの積層体で構成されるセバレータの場合、グラフトフィルムの厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。
【0090】
セパレータを構成するためのグラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体としては、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステムから「YG9132」や「YG9122」、「YG2152」の名称で市販されているものが挙げられる。
【0091】
また、セロファンフィルムや、セロファンフィルムおよびグラフトフィルムと、ビニロン-レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを組み合わせてセパレータを構成してもよい。このような吸液層の厚みは20~500μmであることが好ましい。
【0092】
(外装体)
シート状の外装体5、6を構成する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム[ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど]などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20~100μmであることが好ましい。
【0093】
シート状外装体5、6の封止は、正極1側のシート状外装体6の端部と負極2側の外装体5の端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体5、6として用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20~100μmであることが好ましい。
【0094】
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10~150μmであることが好ましい。
【0095】
また、シート状外装体5、6を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
【0096】
シート状外装体の形状は、空気電池として求められる形状として、平面視で四角形としたものを示している。しかし、空気電池10に用いられるシート状外装体5、6の平面視形状は四角形には限られず、使用される機器の形状や、空気電池が収容される部分の形状に合わせて、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形や、円形や楕円形であってもよい。
【0097】
図3、
図4に示したように、本実施形態で説明する空気電池10では、正極1側の外装体6の正極1と重なる部分に、空気孔7が形成されている。
【0098】
空気孔7を介して、外部の空気が取り込まれて空気中の酸素が正極活物質として機能し、電力が供給される。なお、空気孔7は、一例として直径が50μmから1mm程度の円形の開口で、正極1側の外装体6にレーザー照射法や機械的なパンチング法などによって形成される。
【0099】
図4では、空気孔7として、縦方向と横方向とにそれぞれ3個ずつ、合わせて9個の空気孔7がマトリクス状に形成されている例を示したが、空気孔7の個数や配置形状には制約はなく、正極1で必要とされる量の酸素が供給できる範囲で、平面視したときになるべく均等に分散させた形で配置することが好ましい。また、空気孔7の形状も、例示した略円形のものに限らず、矩形や、楕円形状などでもよい。
【0100】
また本実施形態で説明する空気電池10では、正極1側の外装体6の一つの辺の近傍には、負極2側の外装体5と熱溶着されずに両面が露出した箇所が設けられており、その負極2側の表面に、2つの電極端子9が形成されている。
【0101】
電極端子9は、蒸着や印刷法などによって形成された金属薄膜やカーボンペーストなどの導電体で構成され、
図4では上側に位置する一方が正極1とリード線8などによって接続されている。また、図示は省略するが、他方の電極端子9は、負極2と電気的に接続されている。
図3、
図4に示すように、負極2側の外装体5の端部を電極端子9の略中間部分に位置するようにシールすることによって、電極端子9を空気電池10の下側面に露出させる構成とすることができ、基材30の上側面に形成された電源配線31(
図1、
図2参照)を介して駆動回路部20へと電源電力が供給される。
【0102】
また、前記方法以外に、負極2側の外装体5と正極1側の外装体6が熱融着される箇所において、あらかじめ負極2側の外装体5に開口部を設け、前記開口部と正極1側の外装体6との間に電極端子9が配置されるよう2つの外装体5、6の封止を行うことによっても、同様に、電極端子9を空気電池10の下側面に露出させる構成とすることができる。
【0103】
なお、空気電池10の電極端子は、図示したように正極1側の外装体6の内側面に形成する方法の他に、負極2側の外装体5を貫通するようにビア構造で形成することによっても、空気電池10の下側に配置される電源配線31と接触させることができる。
【0104】
(撥水膜)
シート状空気電池10の正極1と正極1側の外装体6との間には、撥水膜4が配置されている。撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用される。このような撥水膜の具体例としては、PTFEなどのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜などが挙げられる。撥水膜の厚みは、50~250μmとすることができる。
【0105】
なお、正極1側の外装体6と撥水膜4との聞に、外装体6内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、100~250μmとすることができる。
【0106】
(電解液)
2つのシート状外装体5、6内に収容される電解液の電解質塩としては、特に限定はされないが、塩化ナトリウムなどアルカリ金属の塩や、塩酸、硫酸および硝酸などより選択される強酸と、アンモニアや、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど金属元素の水酸化物に代表される弱塩基との塩が例示される。この中でも、強酸と弱塩基との塩が好ましく用いられ、そのうち、アンモニウム塩または特定の金属元素の塩がより好ましく用いられる。
【0107】
より具体的には、Cl-、SO4
2-、HSO4
-、および、NO3
-より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩であり、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム[(NH4)HSO4]、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化水酸化マグネシウム[MgCl(OH)]、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)[(NH4)2Fe(SO4)2]、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)などの鉄塩;が例示される。
【0108】
このように、強酸と弱塩基との塩を含有する水溶液は、負極活物質である金属材料を腐食させる作用が比較的小さく、また、比較的高い導電率を有している。よって、良好な放電特性を実現することができる。
【0109】
電解液のpHとしては、3以上12未満とすることで、安全性を向上させた、環境負荷が小さく、かつ、放電特性が良好な空気電池を実現することができる。なお、電解液のpHは、3以上、好ましくは5以上であって、12未満、好ましくは10以下、より好ましくは7未満である。前記の電解質塩を用いることにより、電解液のpHを前記範囲に調整しやすくなるだけでなく、皮膚への刺激性が比較的低い電解液を構成することができるので、例えば、電池の外装体が傷ついて電解液が漏出しウェアラブルパッチ100の被装着者の皮膚などに付着した場合でも、トラブルを生じる可能性が低いため、身体に直接装着されるウェアラブルパッチ100の電源として好適な電池とすることができる。
【0110】
電解液として使用する水溶液は、電解質として、Cl-、SO4
2-、HSO4
-、および、NO3
-より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩のうちの1種のみを含有していればよいが、2種以上を含有していてもよい。
【0111】
ただし、Cl-イオンとFe3+イオンとの塩[塩化鉄(III)]については、その他のイオンの組み合わせによる塩に比べて負極活物質である金属材料を腐食させる作用が強いため、塩化鉄(III)以外の塩を用いることが好ましく、負極活物質である金属材料を腐食させる作用がより低いことから、アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【0112】
なお、前記した強酸と弱塩基との塩であっても、過塩素酸塩は、加熱や衝撃により燃焼や爆発の危険を生じることから、環境負荷や廃棄時の安全性の観点から、電解液として使用する前記水溶液に含有させないか、あるいは含有しても過塩素酸イオンの量がわずかであること(具体的には100ppm未満、より好ましくは10ppm未満)が好ましい。
【0113】
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、塩化亜鉛や硫酸銅などに代表される重金属塩(鉄の塩を除く)は、有害であるものが多いため、環境負荷や廃棄時の安全性の観点から、電解液として使用する前記水溶液に含有させないか、あるいは含有しても鉄イオンを除く重金属イオンの量がわずか(具体的には100ppm未満、より好ましくは10ppm未満)であることが好ましい。
【0114】
電解液の導電率は、80mS/cm以上であることが好ましい。よって、電解液として使用する前記水溶液における前記電解質の濃度(1種のみを用いる場合は、その濃度であり、2種以上を用いる場合は、それらの合計濃度)は、このような導電率を確保できるような濃度とすればよく、通常は、5~50質量%である。なお、電解液の導電率の上限値は、通常700mS/cm程度である。
【0115】
電解液には、インジウム化合物が溶解していることが好ましい。電解液中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生をより良好に抑制することができる。
【0116】
電解液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
【0117】
インジウム化合物の電解液中の濃度は、質量基準で0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることが特に好ましい。また、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。
【0118】
また、電解液には前記の各成分の他に、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる金属材料の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
【0119】
(空気電池の諸元)
上述した各部材で構成されるシート状空気電池10の全体形状は、一例として、長辺が30~50mm、短辺が20~35mmとすることができる。なお、空気電池10の厚みは、ウェアラブルパッチ100への実装を容易にし、またウェアラブルパッチ100が身体に装着される際の変形を容易にするために、より薄く構成することが好ましく、一例として1mm以下とすることができる。なお、空気電池10の取り扱い上必要となる剛性や電池の容量を考慮すると、厚みの最小値は一例として0.2mmとすることができる。
【0120】
次に、4種類の電解液を用いて、実施例としての4つのシート状空気電池を実際に作成して放電容量を確認した。
【0121】
それぞれのシート状空気電池において、正極、負極、電解液、セパレータ、撥水膜、外装体は以下の材料を用いた。
【0122】
<正極>
DBP吸油量495cm3/100g、比表面積1270m2/gのカーボン(ケッチェンブラックEC600JD(商品名:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)):30質量部と、アクリル系分散剤:15質量部と、SBR:60質量部と、水:500質量部とを混合して触媒層形成用組成物を作製した。
【0123】
集電体として多孔性のカーボンシート〔厚み:0.25mm、空孔率:75%、透気度(ガーレー):70秒/100ml〕を用い、前記触媒層形成用組成物を、乾燥後の塗布量が10mg/cm2となるよう前記基材の表面にストライプ塗布し、乾燥することにより、触媒層が形成された部分と形成されていない部分とを有する集電体を得た。この集電体を、触媒層の大きさが15mm×15mmで、その一端に、触媒層が形成されていない5mm×15mmの大きさのリードとなる部分を有する形状に打ち抜いて、全体の厚みが0.27mmの正極(空気極)を作製した。
【0124】
<負極>
添加元素としてIn:0.05%、Bi:0.04%およびAl:0.001%含有する亜鉛合金箔(厚み:0.05mm)を、活物質として機能する15mm×15mmの大きさの部分と、その一端にリードとなる5mm×15mmの部分とを有する形状に打ち抜いて負極を作製した。
【0125】
<電解液>
電池1 20質量%の硫酸アンモニウム水溶液(pH=5.3)
電池2 20質量%の塩化アンモニウム水溶液(pH=4.3)
電池3 20質量%の塩化ナトリウム水溶液(pH=7)
電池4 30質量%の水酸化カリウム水溶液(pH=14)。
【0126】
<セパレータ>
ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(1枚当たりの厚み:15μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置したものを用いた。
【0127】
<撥水膜>
厚みが200μmのPTFE製シートを用いた。
【0128】
<外装体>
アルミニウム箔の外面にPETフィルムを有し、内面に熱融着樹脂層としてポリプロピレンフィルムを有する2.5cm×2.5cmの大きさのアルミラミネートフィルム2枚を用いた。
【0129】
<電池の組み立て>
上記した2枚の外装体であるラミネートフィルムにおいて、正極側に配置される一方のラミネートフィルムには、正極の触媒層の配置位置に対応して、直径0.5mmの空気孔9個を、縦4.5mm×横4.5mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5mm)でマトリクス状に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて撥水膜を熱溶着させた。また、負極側に配置されるもう一方のラミネートフィルムには、正極および負極のリードが配置される部分に、リードと外装体との熱溶着部の封止性を高めるため、外装体の辺と平行に、変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムを取り付けた。
【0130】
撥水膜を有するラミネートフィルムを下にして、その撥水膜の上に、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を順に積層し、さらに、もう1枚のラミネートフィルムを、前記正極および前記負極のリードの上に前記変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムが位置するようにして重ねた。次に、2枚のラミネートフィルムの周囲3辺を互いに熱溶着して袋状にし、その開口部から電解液を注液した後、開口部を熱溶着して封止してシート状空気電池とした。作製した電池の厚みは、ほぼ1mmであった。
【0131】
このようにして作製した空気電池を大気中で10分間放置した後、電池の設計容量に対して100時間率相当の電流で0.5Vまで放電した時の放電容量を測定した。その結果を表1に示す。
【0132】
【0133】
市販のコイン型空気電池の電解液として用いられている高濃度のアルカリ電解液を用いた空気電池(電池4)に対し、より安全性の高い電解液を用いた空気電池(電池1~3)においても、十分な放電容量を得ることができた。特に、強酸と弱塩基との塩を電解質塩とした電池1および電池2では、市販のボタン型空気電池の電解液と同様の構成とした電池4と同程度の優れた特性が得られた。
【0134】
以上の結果より、本実施形態で説明した空気電池は、薄型で取り扱いの容易性や安全性が高く、しかも、比較的大容量の空気電池となり、身体に直接装着されるデバイスの電源として好適であることがわかる。また、電源として用いられる空気電池が環境負荷の小さな材料で構成されていることは、簡単な構成で電池からの電力供給を停止させて容易に廃棄できるようにすることを目的とする本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100にとって、特に好ましい。
【0135】
なお、上記説明では、液体状の電解液を外装体5、6の間に封入した例を説明したが、電解液としては、他にゲル状の電解液を用いることができる。ゲル状の電解液を用いることにより、シート状の空気電池10を印刷工程で製造することが可能となり、空気電池10のコスト低減を図ることができる。また、電解液をゲル状とすることによって、空気電池10からの液漏れがなくなるとともに、
図6を用いて後述するシート状空気電池の発電要素を切断することで電池からの電源供給を停止させる構成を容易に採用することができる、などの利点がある。
【0136】
さらに、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100に用いられる電池としては、電池容量がウェアラブルパッチ100を所望の時間動作させることが可能である場合には、空気電池以外のマンガン電池などの既知のシート状電池を採用することができる。空気電池以外のシート状電池を用いる場合も、電池の外装体内部に液体としての電解液を有さない構成のものを採用することで、電池からの液漏れ防止の効果や、発電要素を切断する構成が採用できるなどの利点を有する。
【0137】
さらにまた、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100の電池としては、シート状電池以外の、コイン型電池(ボタン型電池)と称される電池を用いることができる。コイン型電池を用いる場合でも、補聴器などの電源として採用されている空気電池は、他のコイン型電池と比較してより薄型に構成することができ、電池容量が大きい点で好ましい。
【0138】
[駆動回路部]
駆動回路部20は、例えばフィルム基板上に銅などの金属薄膜で形成された配線と、メモリ、プロセッサ、送受信回路などとして機能する薄膜チップ化された、1つ、または複数の電子回路、さらに、外部との通信のために用いられる金属薄膜で形成されたアンテナ素子など、既知の薄膜電子回路部品として実現できる。なお、図面が煩雑となることを回避するため、駆動回路部20の各構成要素部材の図示は省略する。
【0139】
駆動回路部20の機能は、当然ながらウェアラブルパッチ100の目的に沿うように設計されていて、例えば、被装着者の体温を測定する場合には、後述する機能素子50であるセンサプレートの温度を、例えばセンサプレートを流れる電流値の変化などで検出するとともに、測定された体温の数値を、連携するスマートフォンなどの外部の機器からの制御信号によって、または、駆動回路部20自体が備えるロジック回路による制御にしたがって、アンテナ素子から外部機器へと送信する。
【0140】
また、機能素子50が薬液を被装着者に注射するユニットである場合には、駆動回路部20自体が備えるタイマー機能によって、または、外部機器からの操作信号にしたがって、所定の時間に、被験者の皮膚から所定量の薬液が注射されるように制御する。
【0141】
なお、前述のように、駆動回路部20の下側表面には、接続端子21が形成されていて、基材30の上側面に形成され、シート状空気電池10の2つの電極端子9にそれぞれ接続された電源配線31を介して、空気電池10からの電力が駆動回路部20の電子回路部品に供給される。
【0142】
[基材、カバー部材]
本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100では、パッチの全体形状を規定する基材30を有し、基材30の上面に電池10と駆動回路部20とが、基材30の下面に機能素子50と粘着層60とが形成されている。
【0143】
基材30は、一例として、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム[ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど]などの、厚さが20~500μm程度のシート状の樹脂フィルムを用いることができる。本実施形態のウェアラブルパッチ100では、廃棄時になるべく弱い力でウェアラブルパッチ100の所定部分を切断できるようにする観点から、基材30の厚みが厚すぎないことが好ましい。具体的には、樹脂製シートの厚さは、100μm以下とすることがより好ましく、50μm以下とすることがさらに好ましい。
【0144】
なお、基材30は、ウェアラブルパッチ100の全体を支持する基板としての役割を果たすものであるため、その厚さは搭載される電池10がシート状電池かコイン型電池か、また、機能素子50がセンサプレートかそれとも薬剤注射ユニットかなど、基材の両面に形成される部材の大きさや重さなどによって適宜定められる。
【0145】
図1、
図2に示すように、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100では、基材30の上面を覆うカバー部材40が配置されている。カバー部材は、主として基材30表面に形成された電源配線31部分を覆って保護する部材であり、特に、電池10が空気電池の場合には、空気電池の空気孔形成部分を覆わないように開口部が設けられている。
【0146】
なお、
図1、
図2では、カバー部材が駆動回路部20を覆わない構成例を示しているが、駆動回路部20を表面に電子回路部品が露出する形態としてカバー部材40で駆動回路部20を覆う構成とすることができる。
【0147】
カバー部材は、基材30と同様に、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム[ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど]などの、シート状の樹脂フィルムで構成することができる。カバー部材40の厚さは、基材と同様に20μm~500μmとすることができるが、基材30のようにウェアラブルパッチ100全体の基板となるものではないので、厚さを20~100μm程度と薄く構成することが、ウェアラブルパッチ100全体の軽量化のために、また、後述するウェアラブルパッチ100を廃棄する際に切断する上で、好ましい。
【0148】
また、電池10、駆動回路部20、電池10と駆動回路部20とを接続して電力を供給する導電経路が、例えば、それぞれの部材が隙間無く隣接配置されているなどの各種構成や配置状態によって外部に露出しない場合には、カバー部材40は不要であり、この点において、カバー部材40は本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100における必須の構成要素ではない。
【0149】
[機能素子]
図1、
図2に示す、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100における機能素子50は、薄膜、または、薄板状のセンサプレートであり、例えば、被装着者の皮膚に直接触れたり、皮膚に近接したりすることで、体温や脈拍、呼吸数などの生体情報を検知可能な部材である。なお、機能素子50は、図示したように必ずしもウェアラブルパッチ100の装着者の皮膚に直接触れる形態である必要は無く、薄いシートなどを介して被装着者の皮膚に近接することで、生体情報を取得することができるものもある。
【0150】
機能素子50は、ウェアラブルパッチ100の目的とする機能を果たす限りにおいて、例えば金属箔、樹脂膜の表面に金属やカーボン等の導電性部材等を形成したもの、または、基材30の下側表面側に形成された薄膜など、各種の形態で実現できる。
【0151】
機能素子50と駆動回路部20との間は、図示しない接続配線等によって接続されている。
【0152】
なお、機能素子50としては、上記例示したセンサプレートなどの被装着者の身体情報などを取得するものには限られず、例えば、所定の時間間隔で被装着者に薬液を注射する薬剤注射ユニットや、経皮性の薬剤を皮膚の表面に適宜のタイミングで供給する投薬ユニットなど、各種の機能を果たす部材を採用することができる。
【0153】
薬剤注射ユニットや投薬ユニットなどの能動的な機能素子50の場合には、薬剤を収納するタンクや薬剤を送出するマイクロポンプなどが必要となるため、センサプレートなどの場合と比較して機能素子50の厚みが厚くなる。このような場合には、ウェアラブルパッチ100の基板である基材30に開口部を設けて、被装着者の皮膚との接触部分を有したまま機能素子50の一部を基材30の上側に配置することで、ウェアラブルパッチ100の厚さが厚くならないように構成することができる。
【0154】
[粘着層]
本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100では、基材30の下側表面に、機能素子50を囲むようにして粘着層60が設けられている。
【0155】
粘着層60は、直接皮膚に接触するものであるため、一定以上の時間貼着していてもかぶれなどが生じないことが確認された医療用として認証された粘着剤で形成されている。
【0156】
なお、粘着層60は、大きさや厚さ、重量などのウェアラブルパッチ100の諸元と、ウェアラブルパッチ100が装着されることが想定される人体の部分の可動性との両面から、その接着力が検討されて、材料の選択と、形成場所とその面積が決定される。
【0157】
[切断開始部]
図1に示すように、本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100は、基材30とカバー部材40との積層部分の周囲部、一例として、一方の長辺において基材30の下側面に粘着層60が形成されていない部分に、切断開始部70としての略三角形状の切り込み71が形成されている。
【0158】
切り込み71の先端部分は、基板30とカバー部材40とにおいて、電池10と駆動回路部20とを接続して電池電力を供給する電源配線31の配置位置に向かって形成されているため、ウェアラブルパッチ100の廃棄時にユーザが切り込み71部分の両側を持って基材30をねじるように力を加えることで、切り込み71から基材30とカバー部材40に破断が生じて、切り込み31の延長部分でウェアラブルパッチ100が2つに分割されて接続配線31を容易に切断することができる。この結果、電池10から駆動回路部20への電力供給が停止して、駆動回路部20の動作を確実に停止させることができる。
【0159】
なお、切断開始部70における切り込み71の形状、より具体的には、三角形の切り込み71の2辺の傾斜角度や頂点の位置は、ウェアラブルパッチ100を切断するために必要な力が200N以下であるように設定されている。ここで、200Nの力とは、引き裂き強度としての荷重強さであって、例えば株式会社イマダ製のデジタルフォースゲージ「ZP-500N(商品名)」を用いて測定可能なものである。
【0160】
また、引き裂き強度を200N以下としているのは、引き裂き強度が200Nを超えるとなかなか引き裂くことが困難となるため、女性の場合も含めて成人が容易に引き裂くことができる範囲の値として200N以下を設定したものである。なお、切り込み71は、ユーザがウェアラブルパッチ100を切断したい場合に200N以下の力で引き裂くことができる一方で、ウェアラブルパッチ100を皮膚に貼着する場合などの使用状況下で不所望に切断してしまっては意味が無い。そのため、ウェアラブルパッチ100を切断するために必要な力が5N以上となるように、ウェアラブルパッチ100の強度を設定することが望ましい。
【0161】
なお、上記説明では、切り込み71を起点として生じる破断によって、電池10の正極と負極とにそれぞれ接続された2本の電源配線31を2本とも切断する構成を示したが、電池10から駆動回路部20への電力供給が確実に停止されるのであれば、2本の電源配線31の内のいずれか1本のみが切断される構成でもかまわない。基材30上に形成されている電源配線31の配置位置を考慮して、確実に電池10からの電力の供給が停止されるように切り込み71の位置と、切り込み71を起点として生じる破断線の方向を設計すれば良い。
【0162】
また同様に、切り込み71を起点とする破断線によって、ウェアラブルパッチ100が2つに分割されることは必須ではない。例えば、ウェアラブルパッチ100の幅方向の半分程度まで破断線が生じる状態であっても、電池10から駆動回路部20への導電経路を切断して電力の供給が停止され、仮に破断線を介して破断された部分同士が近接して、ウェアラブルパッチ100の形状がほぼ元の形に戻るような場合でも、電力供給の停止状態が維持されるのであれば、破断線が途中まで生じる構成も採用することができる。
【0163】
(切断開始部によりウェアラブルパッチの他の部分を切断する構成例)
図5は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチの第2の構成例を説明する平面図である。
【0164】
上記、
図1を用いて説明した本実施形態にかかるウェアラブルパッチ100では、電池10と駆動回路部20とを接続する導電経路31の配置位置の側方の周囲部に切断開始部70を設けて、切断開始部70を起点として生じる破断線で導電経路である電源配線31を200N以下の力で切断できるようにした構成を説明した。
【0165】
図5に示す第2の構成例であるウェアラブルパッチ200では、
図1に示したウェアラブルパッチ100と比較して、基材130上に配置されたシート状電池110が、電極端子(正極端子111、負極端子112)がシート電池110の主面方向(図中右方向)へと延在して形成されている点が、下側面に電源端子9が形成されていたシート状電池10と異なっている。
【0166】
ウェアラブルパッチ200では、シート状電池110から延在した正極端子111と負極端子112とが直接駆動回路部20の接続端子21に接続されて、電池110からの電力供給が行われる。なお、図示は省略するが、機能素子50、粘着層60などは
図1に示したウェアラブルパッチ100と同じ構成となっている。このため、これら
図1に示したウェアラブルパッチ100と同じ構成の部材には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0167】
このように構成されたウェアラブルパッチ200において、切断開始部70である切り込み71は、電池110と駆動回路部20との配置領域の間の基材130とカバー部材140とが積層されている周囲部分に形成されていて、切り込み71を起点としてその延長方向に生じる破断線がシート状電池110の電極端子(111、112)を切断するようになっている。
【0168】
このように、切断開始部70から生じる破断線によって、電池110の電極端子(111、112)が切断される構成とすることによっても、電池110から駆動回路部20への電力供給を停止することができ、ユーザがウェアラブルパッチ200を廃棄する際に切断開始部70を用いてウェアラブルパッチ200を200N以下の力で切断することで、安全に廃棄することができる。
【0169】
なお、電池110からの電力供給が確実に停止される限りにおいて、電池110の正極端子111と負極端子112との2つの電極端子の内のいずれか一方のみが切断されるような構成を採用することができる。例えば、
図5に示した例とは異なり、電池110からの電極端子が並んで配置されていない場合などでは、2つの接続端子の内のいずれか一方が配置されている基材130の側方部分に、切断開始部70を設ければよい。また、切断開始部70を起点として生じる破断線でウェアラブルパッチ200を切断する切断力が200N以下であること、さらに、ウェアラブルパッチ200が完全に2つに分断される必要が無いことは、上述のウェアラブルパッチ100の場合と同様である。
【0170】
図6は、本実施形態にかかるウェアラブルパッチの第3の構成例を説明する平面図である。
【0171】
図6に示す、第3の構成のウェアラブルパッチ300では、切断開始部70としての切り込み71が、シート状空気電池210の略中央部分、すなわち、電池210の正極や負極といった発電要素が配置されている部分の側方に当たる位置の、基材230の周囲部分に形成されている。
【0172】
このように、切断開始部70である切り込み71をシート状電池210の発電要素の側方に配置することで、切り込み71を起点として生じる破断線によって空気電池210の発電要素部分を切断することが可能となり、電池としての電力供給機能を停止させて、駆動回路部20の動作を確実に停止することができ、ウェアラブルパッチ300を安全に廃棄することができる。
【0173】
なお、
図6に示した、切断開始部70を起点とする破断線によって、電池210の発電要素を切断する構成は、コイン型電池を動作電源とするウェアラブルパッチには適用できないことは言うまでも無い。また、シート状電池が採用されている場合でも、正極や負極が金属製の薄板で構成されている場合など容易に切断できない場合や、電池が破壊されることで電解液などが漏出するなどの問題が生じる場合には適用できない。これらの点で、切断開始部を起点として生じる破断線によって電池の発電要素を切断する構成は、ウェアラブルパッチに搭載される電池の構成によって必ずしも採用できない構成である。
【0174】
また、
図6で示した構成とは異なるが、例えば、
図6において、基材230上に配置されたシート状電池210が左に90度回転している状態のように、切断開始部を起点として生じる破断線によってシート状電池の発電要素を切断したときに、電池の正極と負極とがそれぞれ異なる断片に分かれるように切断できれば、より確実にシート状電池の機能を停止できる。
【0175】
なお、
図6では、シート状電池の構成として、電極端子が側方へと延在する
図5で示した構成の電池を図示したが、切断開始部70を起点として生じる破断線によってシート状電池の発電要素を切断する構成は、シート状電池の電極端子が電池の下側表面に形成されて電源配線によって駆動回路部の接続端子に接続される
図1に示した電池の構成であっても適用可能であることは言うまでも無い。また、シート状電池の発電要素を切断して電力の供給を停止させる第3の構成においても、ウェアラブルパッチを切断するために必要な切断力を200N以下の力とすることも、上述した第1の構成、第2の構成と同様である。
【0176】
以上、第1の実施形態として示したウェアラブルパッチは、周囲部分に切断開始部を形成して、切断開始部を起点として生じる破断線によって、ウェアブルパッチにおける電池から駆動回路部への電力を供給する構成要素を切断するものである。
【0177】
切断開始部を設けることで、ウェアラブルパッチの樹脂製の基材を容易に切断することができるようになり、ユーザは、200N以下の力で電池から駆動回路部への電力の供給を確実に停止させて安全にウェアラブルパッチを廃棄することができる。これに対して、切断開始部が設けられていない場合には、ウェアラブルパッチの基材の厚さ等が薄くウェアラブルパッチ自体の切断強度が小さい場合でも、はさみなどの道具を用いない場合は、容易にはウェアラブルパッチを切断することができなくなる。
【0178】
なお、
図1~
図6では、切断開始部として、三角形の切り込みが設けられたウェアラブルパッチを例示して説明した。しかし、本実施形態にかかるウェアラブルパッチにおける切断開始部の構成としては、三角形の切り込み以外にも、例えばウェアラブルパッチに破断線を生じさせる内側部分が丸く形成された略半円形状、または、トラック形状を半分に切断した形状、矩形状、直線状の切り込み形状を採用することができる。
【0179】
さらに、切断開始部としては、切り込みを設ける以外にも、ウェアラブルパッチを構成する基材の周囲部分の一部において、厚みを薄くする、強度の弱い材料で構成する、厚み方向に押圧して変形させる、など、他の部分と比較して強度が弱い構成部分を設けて切断開始部とすることができる。なお、切断開始部を異なる色で着色する、矢印等のマークを形成するなどして、ユーザが切断開始部の位置を明確に判別できるようにすることが好ましい。
【0180】
また、図示は省略するが、切断開始部としての切り込みの延長上に、基材やカバー部材の厚さを他の部分よりも薄くするなどした低強度部を設けて、ウェアラブルパッチの切断をより容易に行うことができるようにしても良い。
【0181】
(第2の実施の形態)
次に、本願で開示するウェアラブルパッチの第2の実施形態として、ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段として、カットテープを設けた構成について説明する。
【0182】
図7は、第2の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明する要部拡大平面図である。
【0183】
また、
図8は、第2の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明する要部拡大断面構成図である。
【0184】
図7、
図8に示したウェアラブルパッチは、切断容易化手段であるカットテープを除いて、ウェアラブルパッチ自体の構成、すなわち、電池、駆動回路部、基材、カバー部材、機能素子、粘着層は、いずれも、
図1、
図2を用いて説明したウェアラブルパッチ100と同じである。このため、ウェアラブルパッチを構成する各部材については、
図1で示したものと同じ符号を付して説明は省略する。
図7、
図8は、ウェアラブルパッチにおける電池10と駆動回路部20とを電気的に接続する導電経路としての電極配線31の配置部分を拡大して示している。
【0185】
図7、
図8に示すように、第2の実施形態にかかるウェアラブルパッチでは、切断容易化手段80として、カットテープ81を有している。より具体的には、ウェアラブルパッチの基材30とカバー部材40との間で、電池10の電極端子9と駆動回路部20の接続端子21とを接続する電源配線31の下方の位置に、カットテープ81が配置されている。
【0186】
カットテープ81の一端部は、ウェアラブルパッチの周囲部分である側方部分に露出していて、ユーザがこの露出部分を持ってカットテープ81を上方側であるカバー部材40側へ引き上げることにより、カットテープ81上に配置されている電源配線31とカバー部材40とを容易に切断することができる。このようにして、導電経路である電源配線31が切断されることで、電池10から駆動回路部20への電力供給を停止することができる。
【0187】
なお、
図7に示すように、カットテープ81の端部の配置位置の両側部分に小さな切り込み82を形成することにより、カットテープ81を引き上げた際により容易にカバー部材40を切断できるため、確実に電源配線31を切断することができる。
【0188】
また、
図7では、カットテープ81の端部がウェアラブルパッチの側方に突出している構成を例示したが、カットテープ81の端部をウェアラブルパッチの長辺上に位置させて、ウェアラブルパッチの側方にカットテープ81を突出させないような構成とすることができる。この場合には、カットテープ81の配置位置で、少なくともカバー部材40の幅を小さく形成して、ユーザがカットテープ81の端部を容易につかめるようにすることが望ましい。
【0189】
カットテープは、樹脂材料、または、紙材料を用いて構成することができ、
図7、
図8に示したようなリボン状以外にもワイヤー状に形成することもできる。なお、カットテープを金属製材料で形成することもできるが、その場合には、切断する電極配線31との間の絶縁を確保することや、形状や配置位置がウェアラブルパッチの機能を害しないようにすること、さらに、端部がウェアラブルパッチの側方に突出する場合には、ウェアラブルパッチをユーザの皮膚に貼着した際に、ユーザを傷つけないようするなどの配慮が必要となる。なお、いずれの材料を用いる場合でも、カットテープの破断強度がウェアラブルパッチのカバー部材40と電極配線31よりも強く、カットテープ81を引き上げた際に、カットテープ81が切断されてしまって電極配線31を切断できない事態が生じないように設計する必要がある。
【0190】
なお、第2の実施形態にかかるウェアブルパッチにおいても、切断容易化手段であるカットテープ81を用いることで、200N以下の力で導電経路である電極配線31を切断可能としている。
【0191】
また、
図7、
図8では、切断容易化手段であるカットテープ81でウェアラブルパッチの電池10と駆動回路部20とを接続する電源配線31を切断する構成を示した。しかし、本実施形態にかかる切断容易化手段としてカットテープ81を用いた構成は導電経路である電極配線を切断する構成には限られず、第1の実施形態の説明時に
図5を用いて説明したような、電池の電極端子を切断する構成にカットテープ81を用いることができる。さらに、カットテープを用いて、上記第1の実施形態において
図6を用いて説明したような、シート状の電池10の電極要素を切断する構成とすることも可能である。
【0192】
また、
図7では、電池10の電極端子9と駆動回路部20の接続端子21を接続する2つの電極配線31のうち、図中上側に位置する一方の電極配線31のみを切断する構成を示したが、カットテープ81によって2本の電極配線31をともに切断する構成とすることも可能である。
【0193】
(第3の実施の形態)
次に、本願で開示するウェアラブルパッチの第3の実施形態として、ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段として、切断部を設けた構成について説明する。
【0194】
図9は、第3の実施形態にかかるウェアラブルパッチの構成を説明する平面図である。
【0195】
第3の実施形態にかかるウェアラブルパッチ400では、それ自体が容易に切断可能な切断部90が形成されていて、ユーザがウェアラブルパッチ400を廃棄する際に、切断部90を切断して電池310から駆動回路部320への電力の供給を停止させることができる。
【0196】
図9に示すように、第3の実施形態にかかるウェアラブルパッチ400では、切断部90として、基材330とカバー部材340とにミシン目91が形成されている。
【0197】
ウェアラブルパッチ400の全体を構成する基材330とカバー部材340とにミシン目91を形成することで、より容易にウェアラブルパッチ400を切断することができ、基材330とカバー部材340が切断されると同時にその間に形成されている電池310の電極端子(311、312)を切断して、電池310から駆動回路部320への電力供給を停止させることができる。
【0198】
なお、
図9では、第1の実施形態の説明において、
図5、
図6で示したような、電池の電極が側方に延在する構成で説明したが、電池の下側面に電極が形成され、導電経路である電源配線によって電極と駆動回路部の接続端子とを接続する構成において、電源配線の配置部分に切断部90としてのミシン目91を形成しても良い。
【0199】
一方で、ミシン目の形成部分では、ウェアラブルパッチをその厚み方向に貫通する貫通孔が形成されるために、一般には、ウェアラブルパッチに搭載されている電池の発電要素を切断して電池の発電機能を停止させる構成として、切断部としてのミシン目を採用することは困難である。
【0200】
ただし、ウェアラブルパッチに搭載されている電池が空気電池の場合には、通常、正極側の外装体に空気孔が形成されるため、前記空気孔を利用し、その形状および配置を調整することにより、発電要素を200N以下の力で切断することが可能な電池を構成することも考えられる。
【0201】
なお、
図9を用いて説明した第3の実施形態に係るウェアラブルパッチにおいて、切断容易化手段として切断部90であるミシン目91を形成する構成においても、ウェアラブルパッチ400を200N以下の力で切断可能であるように設定されている。
【0202】
なお、第3の実施形態のウェアラブルパッチにおいて、切断容易化部としてその部分自体が容易に切断可能となる切断部の具体的な構成としては、
図9を用いて例示したミシン目以外にも、例えば、他の部分よりも弱い力で切断できるように、基材やカバー部材を薄く形成する構成、他の部分よりも弱い材料で形成する構成などを採用することができる。
【0203】
このように、ミシン目以外による切断部を設ける場合には、ユーザか切断部を容易に認識して正確に切断部を切断するように力を加えることができるように、切断部を着色したり、ミシン目に相当する点線を印字したりすることが好ましい。
【0204】
以上説明したように、本願で開示するウェアラブルパッチでは、200N以下の力で切断可能な切断容易化手段が形成されていて、切断容易化手段によってウェアラブルパッチにおける、電池から駆動回路部への電力を供給する部材を容易に切断することができる。
【0205】
このため、ユーザが簡単にウェアラブルパッチを切断して、電池から駆動回路部への電力の供給を停止させることができ、駆動回路部が動作しない状態にして安全にウェアラブルパッチを廃棄することができる。
【0206】
なお、上記各実施形態では、ウェアラブルパッチとして、基材上に電池と駆動回路部とを並べて搭載する例を用いて説明した。しかし、本願で開示するウェアラブルパッチの構成は、このような構成には限られない。
【0207】
例えば、電池と駆動回路部とを厚さ方向に積層することで、または、電池と駆動回路部と機能素子とを厚さ方向に積層することで、表面積の小さなコンパクトなウェアラブルパッチを形成することができる。このような、コンパクトな構成のウェアラブルパッチにおいても、電池と駆動回路部とを接続する導電経路、電池の電極端子、電池の発電要素のいずれかを200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段を設けることで、安全にウェアラブルパッチを廃棄することができる。
【0208】
なお、ウェアラブルパッチとして、コンパクトな積層構造とした場合には、切断容易化手段によって、ウェアラブルパッチを構成する複数の部材が一度に切断されることとなって、より確実に駆動回路を停止させることが可能となる。一方で、ウェアラブルパッチがより厚みを増した構成となるために、200N以下の力で切断可能とすることが困難な場合が想定される。この場合には、例えば、切り込みとカットテープとの両方を用いるなど、上記各実施形態で説明した切断容易化手段を複数併用することや、切断容易化手段を設けるとともに実際に切断される部分のウェアラブルパッチの厚みを薄くするなどの強度を低下させる手段を併用するなどして、200N以下の力で切断可能とすることが重要である。
【0209】
また、上記実施形態の説明では省略したが、電池として空気電池を用いた場合には、ウェアラブルパッチを動作させる前の状態で空気電池の空気孔を覆うシール部材が必要となる。また、被測定者の皮膚に貼り付ける前に粘着層を保護するために、粘着層の表面を覆う剥離シートが必要となる。これら保護シートや剥離シートとしては、既知の部材を好適に用いることができる。
【0210】
なお、上記の各実施形態では、ウェアラブルパッチを身体に装着する方法としてウェアラブルパッチに形成された粘着層の粘着力を利用するものを説明した。しかし、ウェアラブルパッチを、被測定者に装着する方法としては、ウェアラブルパッチに粘着層を設ける方法に限られず、ウェアラブルパッチ全体を覆うカバーフィルムやベルトなどを用いて身体に固定する方法も採用できる。
【0211】
<本願で開示するシート状電池の実施形態について>
次に、本願で開示するシート状電池の実施形態について説明する。
【0212】
本願で開示するシート状電池は、上述したウェアラブルパッチに動作電源として搭載することができる。また、薄型である特長を活かして、各種ポータブル機器の電源など幅広い用途に利用することができる。
【0213】
本願で開示するシート状電池は、上述したウェアラブルパッチと同様に切断容易化手段を備えているため、200N以下の力で切断することができ、医療現場や家庭内での実際の使用状態において、電池からの電力供給を確実に停止させて安全に廃棄することができる。
【0214】
(第4の実施形態)
第4の実施形態として、シート状電池が、切断容易化手段である切断開始部を備えた構成を説明する。
【0215】
図10および
図11に本願で開示するシート状電池の構成例を示す。
図10は、本願で開示するシート状電池の片面を表す平面図であり、
図11は、
図10におけるC-C’線の断面図である。
【0216】
なお、
図10および
図11では、本実施形態にかかるシート状電池としてのシート状空気電池を例示している。
【0217】
図11に示すように、シート状電池500は、正極520、セパレータ540および負極530と、電解質(図示しない)とが、シート状外装体560内に収容されている。正極520は、電池500内でリード体522を介して、正極端子521に電気的に接続されている。また、
図10では図示していないが、負極530も、電池500内でリード体を介して負極端子531に電気的に接続されている。そして、
図10、
図11に示すように、正極端子521および負極端子531は、シート状外装体560外周の周囲部(シール部の端部に該当する)から外部に引き出されるように設けられている。なお、
図10に示した点線は、シート状外装体560内に収容された正極520に係る触媒層の大きさを表している。
【0218】
シート状外装体560は、正極520が配置された側の片面に、正極に空気を取り込むための空気孔561が複数設けられており、
図11に示すように、正極520のシート状外装体560側には、空気孔561からの電解質の漏出を防止するための撥水膜550が配置されている。
【0219】
正極520は、触媒層を有しており、例えば触媒層が集電体と積層された構造を有しているが、
図11では、図面が煩雑になることを避けるために、正極520の有する各層を区別して示していない。
【0220】
そして、シート状電池500は、シート状外装体560の周囲部分であるシール部のうち、正極端子521および負極端子531が設けられている側のシール部の側端に切断開始部570としての切り込み571を有しており、この切り込み571を起点として対向する辺までの間の部分(図中二点鎖線として示す箇所)が、引き裂き強度が200N以下の低強度部572となっている。
【0221】
このように、第4の実施形態として示すシート状空気電池500は、切断容易化手段として、切断開始部570である切り込み571と切り込み571の延長線上に設けられた低強度部572とを備えている。
【0222】
上述した切り込み571のように、切断の起点となる箇所がない場合は、引き裂き強度が200N以下の低強度部572を有していても、切り裂き始めの強度が200Nを超えてしまい、その結果、切り裂くことができない場合が生じたり、意図した箇所とは異なる箇所が切断されたりしやすくなる。このため、切り裂きを容易にするためには、前記切り込み571のように、切断の起点となる箇所を設けることが好ましい。
【0223】
図10に示すように、シート状電池においては、引き裂き強度が200N以下の低強度部572は、正極端子521および負極端子531の少なくとも一方が設けられているシール部に存在していることが好ましい。この場合、電池を引き裂いて破壊した際に、正極端子521および負極端子531の少なくとも一方を、その電極の本体部から切り離すことができるため、発電要素が残る引き裂き片は、外部に電力を取り出すための端子(正極端子および負極端子の少なくとも一方)が失われることになる。よって、このような電池であれば、破壊する際に電池容量が残存していたとしても、破壊(引き裂き)によって電池の機能を失わせることができるため、より安全な状態で廃棄することができる。
【0224】
なお、
図10では、シート状外装体の同一辺のシール部から正極端子および負極端子が引き出されている例を示しているが、電池の用途によっては、正極端子と負極端子とが、それぞれシート状外装体の別の辺から引き出されている場合もある。このような電池においては、正極端子および負極端子のいずれか一方が設けられているシール部に、引き裂き強度が200N以下の低強度部が設けられていればよく、これにより、電池を引き裂いた際に、発電要素が残る引き裂き片においては、正極および負極のいずれか一方が外部へと電力を供給する端子を失うため、電力が取り出せなくなる。
【0225】
なお、電池の発電要素から電力を取り出せなくするためには、必ずしも、電池を引き裂いて2つの断片に分ける必要はなく、元の電池形状をほぼ維持した状態で、正極端子と正極とを接続するリード体または負極端子と負極とを接続するリード体のうちの少なくとも一方を切断することにより、電池の機能を失わせることも可能である。
【0226】
図12に、本願で開示するシート状電池の第2の構成例を模式的に表す平面図を示す。
【0227】
図12で示すシート状電池600も、空気電池の例である。例えば、この
図12に示しているように、切断開始部670である切り込み671の延長上に形成された低強度部672を、正極端子621と負極端子61の間となる位置までしか設けなかったとしても、低強度部672により、正極端子621と正極とを接続するリード体を切断することができる。この場合、正極端子621は、独立した断片にはならず、外装体560により保持されたままとなるが、廃棄時に電池から外部への電力供給を停止させるという本発明の目的を達成することができる。
【0228】
図13に、本願で開示するシート状電池の第3の構成例を模式的に表す平面図を示す。
【0229】
図13で示すシート状電池700も、空気電池の例である。
図13に示すシート状空気電池700は、シート状外装体760のシール部のうち、正極端子721が設けられている箇所(引き出されている箇所)と、負極端子731が設けられている箇所(引き出されている箇所)との間に、切断開始部770としての切り込み771が形成されており、この切り込み771を起点として外装体760の対辺まで、引き裂き強度が200N以下の低強度部772(二点鎖線で示す)が存在している。この
図13に示すシート状空気電池700では、電池700を前記切断容易化部である切り込み771と低強度部772十が形成されている箇所で引き裂くことで、電池の発電要素を2つに分離することができ、正極端子721を有する引き裂き片と負極端子731を有する引き裂き片とに分割することができる。
【0230】
この
図13に示すように、シート状電池においては、引き裂き強度が200N以下の低強度部が、正極端子を含む引き裂き片と、負極端子を含む引き裂き片とに分割することができる箇所に存在していることも好ましい。この場合、引き裂き後のいずれの引き裂き片も、一方の電極の外部への接続端子しか持たないために、仮に電池容量が残存していたとしても、外部に電力を取り出すことができない。よって、このような電池の場合にも、破壊(引き裂き)によって電池の機能を失わせることができるため、より安全な状態で廃棄することができる。
【0231】
以上説明したように、第4の実施形態として示すシート状電池では、切断容易化手段として、シール部に切断開始部としての切り欠きとこの切り欠きの延長線上に形成された低強度部とを備えることで、廃棄時にユーザが200N以下の力でシート状電池を切断することができる。この結果、シート状電池の正極端子、および、負極端子の少なくともいずれか一方から外部への電力の供給を停止することができ、発電要素がまだ電力を供給できる状態であったとしても、安全に電池を廃棄することができる。
【0232】
なお、本実施形態において説明したシート状電池において、切断開始部である切り込みとして三角形状のものを例示したが、切り込みの形状は、三角形状には限られず、略半円形状、または、トラック形状を半分に切断した形状、矩形状、直線状などの各種の切り込み形状を採用することができる。また、切断開始部としては、切り込みを設ける以外にも、シート状電池のシール部において、厚みを薄くする、強度の弱い材料で構成する、厚み方向に押圧して変形させる、など、他の部分と比較して強度が弱い構成部分を設けて切断開始部とすることができる。この場合には、切断開始部を異なる色で着色する、矢印等のマークを形成するなどして、ユーザが切断開始部の位置を明確に判別できるようにすることが好ましい。
【0233】
さらに、ユーザがシート状電池を200N以下の力で切断できる場合には、切断開始部のみを設け、切断開始部の延長線上に低強度部を設けない構成を採用することができる。
【0234】
(第5の実施形態)
第5の実施形態として、シート状電池が、切断容易化手段であるカットテープを備えた構成を説明する。
【0235】
図11は、第5の実施形態としてのシート状電池の構成を説明するための要部拡大平面図である。
【0236】
また、
図14は、第5の実施形態としてのシート状電池の構成を説明するための要部拡大断面図である。
図14は、
図13のD-D’線部分の断面を示している。
【0237】
図14、
図15では、第5の実施形態にかかるシート状電池800のシート状の外装体860において、発電要素である正極(図示省略)と正極と接続された正極端子821とを接続するリード体822が配置されている部分を拡大して示している。また、
図14では、正極端子821の部分、および正極端子821と正極(図示しない)とを接続するリード体822とを点線で示し、シート状外装体860の内部に存在するカットテープ871の部分を二点鎖線で示している。
【0238】
図14および
図15に示すシート状電池800では、シート状外装体860の正極端子821が配置されているシール部に、切断容易化手段としてのカットテープ871を挟み込んでいる。そして、
図15に示すように、このカットテープ871を、正極と正極端子821とを接続するリード体822の図中下側に配置している。このため、
図14および
図15に示すシート状電池800では、カットテープ871を引き上げるように引っ張ることによって、シール部で貼り合わせた2つの外装体860のうちの上側の外装体を、正極のリード体822と共に引き破って、正極と正極端子821との導電接続を切断することができる。
【0239】
なお、
図14、および、
図15では、カットテープによって正極と正極端子とを導電接続するリード体を切断する例を示したが、本実施形態にかかるシート状電池はこれに限られない。カットテープによって、負極と負極端子とを接続するリード体を切断する構成、または、正極端子と負極端都市に接続された2つのリード体を両方とも切断する構成を採用することができる。さらに、正極や負極とそれぞれの接続端子とを接続するリード体を切断する構成ではなく、正極端子、および/または、負極端子自体を切断する構成を採用することも可能である。
【0240】
なお、
図14に示すように、カットテープ871の端部の配置位置の両側部分に小さな切り込みを形成することにより、カットテープ871を引き上げた際により容易に外装体860を切断できるため、確実にリード体822を切断することができる。
【0241】
また、
図14では、カットテープ871の端部がシート状電池800の側方に突出している構成を例示したが、カットテープ871の端部をシート状電池800の長辺から突出させないような構成とすることができる。この場合には、カットテープ871の配置位置で、少なくとも外装体860の幅を小さく形成して、ユーザがカットテープ871の端部を容易につかめるようにすることが望ましい。
【0242】
(第6の実施形態)
第6の実施形態として、シート状電池が、切断容易化手段として、容易に切断可能な切断部を備えた構成を説明する。
【0243】
図16に、第6の実施形態にかかるシート状電池の平面図を示す。
【0244】
第6の実施形態にかかるシート状電池900は、それ自体が容易に切断可能な切断部970が形成されていて、ユーザがシート状電池900を廃棄する際に、切断部970を切断して外部への電力の供給を停止させることができる。
【0245】
図16に示すように、第6の実施形態にかかるシート状電池900では、切断部970として、シート状の外装体960にミシン目971が形成されている。シート状電池900において、外装体960のシール部分にミシン目971を形成することで、ユーザは、200N以下の力で外装体960を切断することができ、外装体960が切断されるとその間に形成されている正極と負極とから電極端子(921、931)に接続されたリード体を切断して、外部への電力供給を停止させることができる。
【0246】
なお、
図16では、第4の実施形態の説明において
図10等で示したような、電池の電極端子がシール部の同じ辺に並んで配置された例を示したが、2つの電極端子が外装体の異なる辺に配置されている場合には、いずれか一方の電極と電極端子との接続体が配置されている部分にのみミシン目を形成することができる。
【0247】
なお、第6の実施形態のシート状電池において、切断容易化部としてその部分自体が容易に切断可能となる切断部の具体的な構成としては、
図16を用いて例示したミシン目以外にも、例えば、他の部分よりも弱い力で切断できるように、基材やカバー部材を薄く形成する構成、他の部分よりも弱い材料で形成する構成などを採用することができる。特に、上述の第4の実施形態に示したシート状電池が備える低強度部は、本実施形態で説明する切断容易化部としての切断部に該当する。
【0248】
このように、ミシン目以外による切断部を設ける場合には、ユーザか切断部を容易に認識して正確に切断部を切断するように力を加えることができるように、切断部を着色したり、ミシン目に相当する点線を印字したりすることが好ましい。
【0249】
以上説明したように、本願で開示するシート状電池は、200N以下の力でシート状電池の所定部分を切断できる切断容易化手段を備えることで、電池から外部への電力の供給ができない状態として安全に廃棄することができる。
【0250】
(シート状電池の構成)
以下、上記第4の実施形態から第6の実施形態に示したシート状電池の基本的な構成内容について説明する。なお、本願で開示するシート状電池としては、本願で開示するウェアラブルパッチに動作電源として搭載される上述したシート状空気電池をそのまま採用することができる。以下では、上述したシート状空気電池の構成の説明にさらに補足すべき内容を説明する。
【0251】
シート状電池の外装体は、樹脂製フィルムで構成されたシート状外装体である。
【0252】
樹脂製フィルムには、一軸延伸フィルムを用いてもよく、二軸延伸フィルムを用いてもよいが、一軸延伸フィルムは特定方向に裂けやすいといった特徴を有しているため、一軸延伸フィルムを用いた場合には、この特性を利用して、シート状電池に引き裂き強度が200N以下となる低強度部を形成することができる。
【0253】
シート状電池が、空気電池以外の場合、すなわち、アルカリ電池やマンガン電池、非水電解質電池などの場合、その正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
【0254】
シート状電池がアルカリ電池の場合に使用可能な正極活物質としては、酸化銀(酸化第一銀、酸化第二銀など);二酸化マンガンなどのマンガン酸化物;オキシ水酸化ニッケル;銀とコバルト、ニッケルまたはビスマスとの複合酸化物;などが挙げられる。また、シート状電池がマンガン電池の場合の正極活物質には、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物が使用される。
【0255】
更に、シート状電池が非水電解質電池の場合に使用可能な正極活物質としては、二酸化マンガン;バナジウム酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、二硫化鉄などの硫化物;フッ化黒鉛;LixMn3O6(0<x<2)、LixMnO2(0<x<1)などのリチウム含有マンガン酸化物、LixTi5/3O4(4/3≦x<7/3)、LiMn2O4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造の複合酸化物、Li1+xM1O2(-0.1<x<0.1、M1:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有複合酸化物、LiM2PO4(M2:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などの各種リチウム含有複合酸化物;などが挙げられる。
【0256】
前記層状構造のリチウム含有複合酸化物としては、LiCoO2などのコバルト酸リチウムやLiNi1-aCoa-bAlbO2(0.1≦a≦0.3、0.01≦b≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3O2、LiMn5/12Ni5/12Co1/6O2、LiNi3/5Mn1/5Co1/5O2など)などを例示することができる。
【0257】
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
【0258】
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
【0259】
正極合剤層中の組成としては、正極活物質の量が80~98質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5~10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.5~10質量%であることが好ましい。また、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30~300μmであることが好ましい。
【0260】
正極合剤層を有する正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0261】
また、正極の集電体には、シート状外装体を構成する樹脂製フィルムや、樹脂製フィルムと金属フィルムとの積層体の一部を利用することもできる。この場合、例えば、樹脂製フィルムや前記積層体の、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して集電体としたり、前記積層体の金属層を集電体としたりし、この表面に前記と同様の方法で正極合剤層や触媒層を形成することで、正極とすることができる。前記のカーボンペースト層の厚みは、30~300μmであることが好ましい。
【0262】
なお、
図13に示す態様の電池のように、引き裂き強度が200N以下の低強度部、すなわち電池を破壊する際に引き裂かれる箇所となる部分に、正極集電体が存在している場合には、電池の引き裂き強度を200N以下に調整することを容易にする観点から、前記のように、シート状外装体を構成する樹脂製フィルムや、樹脂製フィルムと金属フィルムとの積層体の一部を正極集電体として利用するか、または、正極集電体の厚みを200μm以下とすることが好ましい。
【0263】
正極は正極端子に接続されている。正極端子は、アルミニウム箔(板)や線、ニッケル箔(板)や線などを、正極の集電体とリード体を介して接続したり、正極の集電体に直接接続したりするなどして形成することができる。正極端子が箔(板)である場合の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。また、正極端子が線である場合の直径は、100μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0264】
また、前記集電体の一部を外部に露出させることにより、正極端子としてもよい。
【0265】
なお、
図10に示す態様の電池のように、引き裂き強度が200N以下の低強度部、すなわち電池を破壊する際に引き裂かれる箇所となる部分に、正極端子の一部またはリード体が存在している場合には、電池の引き裂き強度を200N以下に調整することを容易にする観点から、正極端子(正極集電体の露出部をそのまま正極端子とする場合を含む)の切断される箇所の厚みを500μm以下としたり直径を1500μm以下としたりすることが好ましい。
【0266】
低強度部の引き裂き強度をより低くするためには、引き裂かれる箇所に配置する正極外部端子またはリード体を、カーボンペースト層、金属箔で構成された集電体、または外装体を構成する金属フィルムのいずれかにより構成することが好ましい。
【0267】
シート状電池がアルカリ電池(一次電池または二次電池)やマンガン電池の場合の負極には、前述した亜鉛系材料(亜鉛材料と亜鉛合金材料とを纏めてこのように称する)が使用される。
【0268】
シート状電池が非水電解質電池(一次電池または二次電池)の場合の負極には、負極活物質およびバインダなどを含有する負極合剤層を集電体の片面または両面に形成した構造のものや、負極活物質となる金属箔などをそのまま用いたもの、更には、負極活物質となる金属箔と集電体とを積層した構造のものなどを使用することができる。
【0269】
シート状電池が非水電解質一次電池の場合の負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金(リチウム-アルミニウム合金)などが挙げられる。
【0270】
シート状電池が非水電解質二次電池の場合の負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金(リチウム-アルミニウム合金)などのほか、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソフェーズカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;Si、Snなどのリチウムとの合金化が可能な元素を含む合金;SiやSnの酸化物:などが挙げられる。
【0271】
負極合剤層を有する負極の場合のバインダには、正極合剤層に係るバインダとして先に例示した各種バインダと同じものを用いることができる。また、負極合剤層には導電助剤を含有させてもよく、その場合の導電助剤としては、正極合剤層に係る導電助剤として先に例示した各種導電助剤と同じものを用いることができる。
【0272】
負極合剤層と集電体とを有する形態の負極の場合、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを水またはNMPなどの有機溶媒に分散させて負極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0273】
負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質の含有量が70~99質量%であることが好ましく、バインダの含有量が1~30質量%であることが好ましい。また、導電助剤を使用する場合には、負極合剤層における導電助剤の含有量は、1~20質量%であることが好ましい。更に、負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、1~100μmであることが好ましい。
【0274】
負極合剤層を有する負極の集電体には、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金などからなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網;カーボンのシート、網;などを用い得るが、通常、厚みが5μm以上30μm以下の銅箔が好適に用いられる。
【0275】
なお、
図6に示す態様の電池のように、引き裂き強度が200N以下の低強度部、すなわち電池を破壊する際に引き裂かれる箇所となる部分に、負極集電体が存在している場合も、前記正極の場合と同様の構成とすればよい。
【0276】
シート状電池がアルカリ電池やマンガン電池の場合のセパレータには、前述した空気電池のセパレータと同様のものを用いることができる。
【0277】
また、シート状電池が非水電解質電池の場合のセパレータには、ポリオレフィン製の微多孔膜(微孔性ポリオレフィンフィルム)や不織布を好適に用いることができる。特に、二次電池の場合は、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、空孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましく、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)の微多孔膜が好ましく用いられる。
【0278】
前記以外のセパレータとしては、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、ポリフェニレンサルファイドなど耐熱性を有する樹脂の微多孔膜や不織布を例示することもできる。
【0279】
セパレータが微多孔膜である場合の厚みは、10~30μmであることが好ましく、不織布である場合の厚みは、20~500μmであることが好ましい。
【0280】
シート状電池がアルカリ電池である場合の電解質には、アルカリ電解液が使用される。アルカリ電解液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物の水溶液からなるアルカリ水溶液や、それに酸化亜鉛を添加したものなどを用いることができる。アルカリ電解液中のアルカリ金属の水酸化物の濃度としては、例えば水酸化カリウムの場合、28~38質量%であることが好ましく、また、酸化亜鉛を使用する場合、その濃度は、1.0~4.0質量%であることが好ましい。
【0281】
シート状電池がマンガン電池である場合、電解液としては、前述した空気電池の電解質として用いたものと同様のものを用いることができるが、塩化亜鉛の水溶液を用いることが好ましく、塩化亜鉛の濃度は、10~40質量%であることが好ましい。
【0282】
また、水溶液からなる電解液や非水電解液は、公知のポリマーなどのゲル化剤を用いてゲル状(ゲル状電解質)としてもよい。
【0283】
なお、シート状電池は、その破壊時に、電解質が外部へ漏出する場合があることを考慮すると、より安全性が高いことから、電解質として水を溶媒とする電解質液(すなわち、電解質が水溶液であるもの)を使用するアルカリ電池やマンガン電池、空気電池であることがより好ましい。
【0284】
また、シート状電池の破壊時の電解液の外部への漏出を抑制する観点からは、電池の種類に関わらず、電解液がゲル状のもの(ゲル状電解質)を使用したり、
図10や
図12、
図16に示すように、引き裂き強度が200N以下の低強度部がシート状外装体のシール部のみである形態(シール状外装体のシール部で引き裂いて、正極または負極と外部への接続端子との導電接続を切断することができる形態)としたりすることがより好ましい。
【0285】
シート状電池は、特に
図13に示すように、正極端子を含む引き裂き片と、負極端子を含む引き裂き片とに発電要素を分割する態様の場合、電池の厚みが厚すぎると、正極、負極、セパレータおよび外装体のそれぞれの引き裂き強度を調整しても、全体の引き裂き強度を200N以下に調整し難くなり、手で引き裂き難くなることから、その厚み(
図11中、tの長さ)が1mm以下であることが好ましい。
【0286】
一方、
図10や
図12、
図16に示すように、正極端子および負極端子の少なくとも一方が設けられているシール部に、引き裂き強度が200N以下の低強度部が存在する態様のシート状電池の場合には、電池の厚みに特に制限はなく、その用途などに応じて必要な厚みとすることも可能であるが、ごみとして廃棄された時に焼却されやすくするために、通常は1mm以下とするのが好ましい。
【0287】
また、シート状電池の厚みの下限値は、引き裂き強度が200N以下の低強度部が設けられた位置に寄らず、特に制限はないが、一定の容量を確保するために、通常は、0.2mm以上とするのが好ましい。
【0288】
本願で開示するシート状電池は、使用を終えた段階で容易に破壊して廃棄できるため、特にユーザが廃棄することが求められる用途に好ましく使用できるほか、各種の電池が使用されている各種用途に適用することができる。
【実施例0289】
以下、実施例に基づいて本願で開示するシート状電池を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本願で開示するシート状電池を制限するものではない。
【0290】
(実施例1)
<正極>
ケッチェンブラック:75質量部と、PTFE:25質量部と、水とを混合し、ロール圧延して触媒層用のシートを形成し、このシートを厚みが100μmのカーボンシート(集電体)に圧着させてから乾燥し、触媒層の大きさが30mm×30mmとなり、一端に集電体の露出部を有する形状に打ち抜いた。前記集電体の露出部をリードおよび正極端子として使用し、全体の厚みが200μmの正極(空気極)を作製した。
【0291】
<負極>
添加元素としてIn:0.05%、Bi:0.04%およびAl:0.001%含有する亜鉛合金粒子:95質量部と、CMC:5質量部とを、水に分散させて負極用のペーストを作製した。厚みが100μmのカーボンシート上に、前記負極用のペーストを、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布し、乾燥してから、亜鉛合金粒子およびCMCを含む層の大きさが30mm×30mmとなり、一端に集電体の露出部を有する形状に打ち抜いた。集電体の露出部をリードおよび負極端子として使用し、全体の厚みが200μmの負極を作製した。
【0292】
<電解液>
電解液には、1質量%濃度のアクリル樹脂系増粘剤を含む、20質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液(pH=6)を用いた。
【0293】
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置し、更にビニロン-レーヨン混抄紙(厚み:100μm)を積層したものを用いた。
【0294】
<撥水膜>
撥水膜には、厚みが200μmのポリエチレン製シートを用いた。
【0295】
<電池の組み立て>
アルミニウム箔の外面にPETフィルムを有し、内面に熱融着樹脂層としてポリプロピレンフィルムを有する5cm×5cmの大きさのアルミニウムラミネートフィルム2枚をシート状外装体として用いた。
【0296】
アルミニウムラミネートフィルムの一方に、
図1に示すように、直径1mmの空気孔9個を縦9mm×横9mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は10mm)で規則的に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着させた。
【0297】
更に、アルミニウムラミネートフィルム(撥水膜を持たないもの)、負極、セパレータ、正極および前記撥水膜を備えたアルミニウムラミネートフィルムを、この順序で積層し、2枚のアルミニウムラミネートフィルムの周囲3辺(正極および負極の集電体の露出部を取り出す辺以外)を互いに熱溶着して袋状にし、その開口部から前記電解液を注液した後、前記開口部を熱溶着して封止し、シート状空気電池とした。
【0298】
なお、正極および負極の集電体の露出部(リード)と外装体とのシール部(熱溶着部)には、封止性を高めるため、あらかじめ前記リードにテープ状のポリプロピレンを取り付けた後に熱溶着を行った。
【0299】
そして、得られたシート状空気電池における正極および負極の集電体の露出部(外部端子)が引き出されているシール部の
図1に示す箇所に、ナイフで長さ2mmの切り込みを入れ、引き裂き強度が200N以下となる低強度部の起点を形成した。
【0300】
(実施例2)
図13に示すように、シート状空気電池における正極の集電体の露出部(正極端子)および負極の集電体の露出部(負極端子)を引き出しているシール部の、両端子の中間に当たる箇所に、ナイフで長さ2mmの切り込みを入れることで、引き裂き強度が200N以下となる低強度部の起点を形成した以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
【0301】
(実施例3)
正極および負極の集電体を、厚みが100μmのニッケル箔に変更した以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
【0302】
(比較例1)
シート状外装体のシール部に切り込みを入れなかった以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
【0303】
(比較例2)
正極および負極の集電体に、厚みが1000μmのニッケル板を接続してリードおよび外部端子とした以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
【0304】
実施例1~3および比較例1、2のシート状空気電池について、前記の方法で引き裂き強度を測定すると共に、手で引き裂く引き裂き試験を行って、手による引き裂き性(引き裂き可能か否か)を調べた。なお、引き裂き強度測定および手での引き裂き試験では、実施例1~3および比較例2の電池は、切り込みを入れたシール部から対向するシール部へ向けて、切り込みを入れた箇所から真っ直ぐに引き裂くようにした。また、シール部に切り込みを形成していない比較例1の電池は、実施例1の電池などと同じ箇所での引き裂き強度測定および手での引き裂き試験と、実施例2の電池と同じ箇所での引き裂き強度測定および手での引き裂き試験とを実施した。
【0305】
これらの評価結果を表2に示す。なお、表2に示す比較例1の評価結果のうち、「A」は実施例1の電池などと同じ箇所での引き裂き強度測定および手での引き裂き試験の結果を意味し、「B」は実施例2の電池と同じ箇所での引き裂き強度測定および手での引き裂き試験の結果を意味している。
【0306】
【0307】
表2に示す通り、実施例1~3のシート状空気電池は、引き裂き強度が200N以下の低強度部を有しており、当該箇所で手による引き裂きが可能であった。
【0308】
これに対し、シート状外装体のシール部に切り込みを形成しなかった比較例1の電池、および正極および負極の外部端子を厚いニッケル板とした比較例2の電池は、引き裂き強度が200N以下の低強度部を有しておらず、手で引き裂くことができなかった。
【0309】
以上説明した、本願で開示するシート状電池は、(1)正極および負極の少なくとも一方において、外部に電力を供給する正極端子または負極端子との導電接続を切断することが可能となるように、あるいは、(2)発電要素が2つに分離可能となるように、引き裂き強度が200N以下となる切断容易化手段としての低強度部を有している。また、低強度部以外にも、200N以下の力で切断することができる切断容易化手段としての切断開始部、カットテープ、切断部を備えることで、例えば大人の手であれば切断容易化手段が形成された箇所で引き裂いて、2つの引き裂き片に分割したり、当該箇所で外装体の一部を切断して、互いに電気的な導通が遮断された2つの部分に分離したりすることができる。
【0310】
このため、本願で開示するシート状電池は、例えば使用の必要がなくなった時点で容易に破壊でき、実質的に電池としての機能を喪失させ得ることから、簡単かつ安全に廃棄することができる。
本開示のウェアラブルパッチは、ウェアラブルパッチの所定部分を200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段を有しているため、使用後のウェアラブルパッチの動作を簡易に、かつ、確実に停止することができる。
また、本開示のシート状電池は、シート状電池の所定部分を200N以下の力で切断可能とする切断容易化手段を有しているため、使用後のシート状電池からの外部への電力供給を簡易に、かつ、確実に停止することができる。
このため、医療現場や個人的な使用の場においても、使用したウェアラブルパッチ、または、シート状電池を安全に廃棄することができる点で、特に医療分野を中心に有用である。