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特開2022-119938アミン開始ポリオールを含む二成分無溶剤接着剤組成物を含む積層体を形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119938
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】アミン開始ポリオールを含む二成分無溶剤接着剤組成物を含む積層体を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/04 20060101AFI20220809BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 175/12 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/40 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
C09J5/04
C09J175/04
C09J175/12
C09J11/06
B32B27/40
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088900
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2018556281の分割
【原出願日】2017-04-25
(31)【優先権主張番号】102016000047944
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】201710165096.0
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ソーステン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヴィンチ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・フラスコーニ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二成分無溶剤ポリウレタン系積層接着剤組成物を含む積層体を形成するためのより迅速かつさらに効率的な方法を提供する。
【解決手段】接着剤組成物は、基材が一緒に接合されて、積層構造体を形成する前に、各成分が対応する基材に独立して塗布されるように配合される。接着剤組成物は、高反応性であり、速硬化性を提供するアミン開始ポリオールまたは触媒を含むことができる。アミン開始ポリオールは、2~12の官能基、5~1,830のヒドロキシル価、および40℃で500~20,000mPa・sの粘度を含む。触媒は、ビスマス触媒、亜鉛触媒、ジルコニウム触媒、スズ触媒、およびアルミニウム触媒であり得る。さらになお、この方法に従って形成された積層体が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造体を形成するための方法であって、
第1の基材に、イソシアネート成分を均一に塗布することであって、前記イソシアネー
ト成分は少なくとも1つのイソシアネートを含む、塗布することと、
第2の基材に、ポリオール成分を均一に塗布することと、
前記第1の基材および第2の基材を一緒に接合し、それによって前記イソシアネート成
分および前記ポリオール成分を混合し、反応させて、前記第1の基材と前記第2の基材と
の間に接着剤を形成することと、
前記接着剤を硬化させて、前記第1および第2の基材を接着させることと、を含み、
前記接着剤は、前記第1および第2の基材を一緒に接合した後、10分以内に10,0
00mPa-s超(40℃で)の粘度を含む、方法。
【請求項2】
前記イソシアネート成分およびポリオール成分は、それぞれ、イソシアネート成分対ポ
リオール成分が0.5:1~1.5:1の比で、前記第1の基材および第2の基材に塗布
される、請求項1に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項3】
前記イソシアネート成分およびポリオール成分は、それぞれ、0.25~1.5g/m
の塗布重量で、前記第1の基材および前記第2の基材にそれぞれ塗布される、請求項1
に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項4】
前記接着剤組成物は、前記第1の基材および前記第2の基材を一緒に接合した後、60
分以内に少なくとも0.5N/15mmの結合強度を含む、請求項1に記載の積層構造体
を形成するための方法。
【請求項5】
前記第1の基材および第2の基材を一緒に接合することは、ニップローラを介して前記
第1および第2の基材を通過させることを含む、請求項1に記載の積層構造体を形成する
ための方法。
【請求項6】
前記第1の基材および第2の基材を1つ以上のローラを介して通過させることによって
、前記第1の基材および第2の基材を一緒に接合した後に、前記イソシアネート成分およ
びポリオール成分を混合することをさらに含む、請求項1に記載の積層構造体を形成する
ための方法。
【請求項7】
前記第1の基材および前記第2の基材は、それぞれ、紙、織布、および不織布、金属箔
、ポリマーフィルム、金属被覆ポリマーフィルム、印刷フィルム、およびこれらのうちの
2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の積層構造を形成する
方法。
【請求項8】
前記第1の基材と第2の基材への塗布前に、前記イソシアネート成分およびポリオール
成分を、それぞれ、30~80℃に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の積層構
造体を形成するための方法。
【請求項9】
前記イソシアネート成分およびポリオール成分は、それぞれ、40℃で500~10,
000mPa-sの粘度を含む、請求項1の積層構造を形成するための方法。
【請求項10】
積層構造体を形成するための方法であって、
第1の基材に、イソシアネート成分を均一に塗布することであって、前記イソシアネー
ト成分は少なくとも1つのイソシアネートを含む、塗布することと、
第2の基材に、ポリオール成分を均一に塗布することであって、前記ポリオール成分は
、第1級ヒドロキシル基と第3級アミンを組み込んでいる骨格とを含む少なくとも1つの
アミン開始ポリオールを含む、塗布することと、
前記第1の基材および第2の基材を一緒に接合し、それによって前記イソシアネート成
分および前記ポリオール成分を混合し、反応させて、前記第1の基材と前記第2の基材と
の間に接着剤を形成することと、
前記接着剤を硬化させて、前記第1および第2の基材を接着させることと、を含む、方
法。
【請求項11】
前記接着剤は、前記第1および第2の基材を一緒に接合した後、10分以内に10,0
00mPa-s超(40℃で)の粘度を含む、請求項10の積層構造体を形成するための
方法。
【請求項12】
前記アミン開始ポリオールは、構造Iを有し、
【化1】
式中、R、R、およびRは独立して、直鎖または分枝アルキル基である、請求項
10の積層構造体を形成するための方法。
【請求項13】
前記アミン開始ポリオールは、4の官能基を含む、請求項10に記載の積層構造体を形
成するための方法。
【請求項14】
前記アミン開始ポリオールは、37のヒドロキシル価を含む、請求項10に記載の積層
構造体を形成するための方法。
【請求項15】
前記アミン開始ポリオールは、25℃で約1200mPa-sの粘度を含む、請求項1
0に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項16】
前記アミン開始ポリオールは、約6,000g/molの分子量を含む、請求項10に
記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項17】
前記イソシアネート成分およびポリオール成分は、それぞれ、イソシアネート成分対ポ
リオール成分が0.5:1~1.5:1の比で、前記第1の基材および第2の基材に塗布
される、請求項10に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項18】
積層構造体を形成するための方法であって、
第1の基材に、イソシアネート成分を均一に塗布することであって、前記イソシアネー
ト成分は少なくとも1つのイソシアネートを含む、塗布することと、
第2の基材に、ポリオール成分を均一に塗布することであって、前記ポリオール成分は
、ビスマス触媒、亜鉛触媒、ジルコニウム触媒、錫触媒、およびアルミニウム触媒からな
る群から選択される少なくとも1つの触媒を含む、塗布することと、
前記第1の基材および第2の基材を一緒に接合し、それによって前記イソシアネート成
分および前記ポリオール成分を混合し、反応させて、前記第1の基材と前記第2の基材と
の間に接着剤を形成することと、
前記接着剤を硬化させて、前記第1および第2の基材を接着させることと、を含む、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2016年5月10日に出願されたイタリア出願第10201600004
7944号、および2017年3月20日に出願された中国出願第2017101650
96.0号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、無溶剤接着剤組成物を含む積層構造体を形成するための方法に関する。より
具体的には、本開示は、基材を一緒に接合して、積層構造体を形成する前に、各成分が対
応する基材に独立して塗布するように設定されるように配合された二成分無溶剤ポリウレ
タン接着組成物を含む積層体を形成するための方法に関する。接着剤組成物は、硬化速度
が速く、変換効率が向上するアミン開始ポリオールを含むことができる。いくつかの実施
形態では、接着剤組成物は、ビスマス触媒、亜鉛触媒、ジルコニウム触媒、スズ触媒、お
よびアルミニウム触媒などの接着剤組成物の反応性を高めるための触媒を含むことができ
る。
【0003】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物のうちの1つの成分は、第1の基材の表面に均
一に塗布するように設定され、接着剤組成物の他の成分は、第2の基材の表面に塗布する
ように設定されている。その後、第1および第2の基材を一緒に接合し、それによって2
つの成分を混合し、反応させて、第1の基材と第2の基材の間に接着剤を形成する。この
ようにして、接着剤を硬化させ、それによって第1および第2の基材を接着させることが
できる。
【背景技術】
【0004】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、接着剤組成物は、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、紙、またはセロファンなどの基
材を一緒に接着させて複合フィルム、すなわち、積層体を形成するために使用される。異
なる最終使用用途における接着剤の使用は一般に知られている。例えば、接着剤は、パッ
ケージング産業において、特に食品パッケージングのために使用されるフィルム/フィル
ムおよびフィルム/ホイル積層の製造に使用することができる。積層用途で使用される接
着剤、すなわち「ラミネート接着剤」は、一般に、溶剤系、水系、および無溶剤の3つの
カテゴリーに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリーによって、また接着剤
が塗布される用途によって変わる。
【0005】
無溶剤ラミネート接着剤は、有機溶剤または水性担体のいずれも用いずに、固形分最大
100%を塗布することができる。塗布時に有機溶剤または水を接着剤から乾燥する必要
がないため、これらの接着剤は高いラインスピードで稼働させることができ、迅速な接着
用途を必要とする用途において好ましい。溶媒系および水系のラミネート接着剤は、接着
剤の塗布後に溶剤または水が効果的に乾燥し、積層構造体から除去され得る速度によって
限定される。環境、健康、および安全の理由から、ラミネート接着剤は、好ましくは水性
または無溶剤である。
【0006】
無溶剤ラミネート接着剤のカテゴリーには多くの種類がある。1つの特定の種類として
は、予め混合された二成分ポリウレタン系ラミネート接着剤が挙げられる。典型的には、
二成分ポリウレタン系ラミネート接着剤は、イソシアネート含有プレポリマーおよび/ま
たはポリイソシアネートを含む第1の成分と、ポリオールを含む第2の成分と、を含む。
プレポリマーは、過剰のイソシアネートと1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を含む
ポリエーテルおよび/またはポリエステルとの反応によって得ることができる。第2の成
分は、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基で官能化されたポリエーテルおよび/また
はポリエステルを含む。2つの成分は、所定の比率で組み合わされるか、または「予め混
合され」、その後、第1の基材(「担体ウェブ」)上に塗布される。次いで、第1の基材
を第2の基材と一緒に接合して、積層構造体を形成する。第1および第2の基材は、接着
剤組成物のポットライフ内に、通常30分未満以内で一緒に接合しなければならない。
【0007】
基材の追加の層は、それぞれ連続する基材との間に位置する接着剤組成物の追加の層を
有する構造体に加えることができる。次に、接着剤を、室温または高温のいずれかで硬化
させ、それによって基材を一緒に接合させる。
【0008】
積層構造体のさらなる処理は、接着剤の硬化速度に応じて異なる。接着剤の硬化速度は
、積層基材間の機械的結合がさらなる処理を可能にするのに十分な時間を要し、積層加工
が適用可能な規制(例えば、食品接触規制)に従う時間によって示される。硬化速度が遅
いと、変換効率が低下する。予め混合された二成分無溶剤積層接着剤は、従来の溶剤含有
接着剤と比較して、弱い初期結合および遅い硬化速度を示す。加工産業における一般的な
傾向は、積層接着剤をより速く硬化させることにある。より速い硬化は、コンバータの操
作効率を向上させる。具体的には、完成品を倉庫から迅速に移動させることで、直前の注
文(例えば、小売販促キャンペーン)を処理するための生産能力と柔軟性を増大させる。
操作効率を高めるために、既存の接着剤組成物よりも遥かに高い反応性を有する接着剤組
成物を使用して積層体を形成すべきである。しかしながら、そのような接着剤組成物は、
伝統的な接着剤塗布技術の課題を課し得る。
【0009】
したがって、二成分無溶剤ポリウレタン系積層接着剤組成物を含む積層体を形成するた
めのより迅速かつさらに効率的な方法が望ましい。
【発明の概要】
【0010】
積層構造体を形成するための方法が開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、
第1の基材に、イソシアネート成分を均一に塗布することを含む。イソシアネート成分は
、少なくとも1つのポリイソシアネートを含む。本方法は、第2の基材に、ポリオール成
分を均一に塗布することをさらに含む。次いで、第1および第2の基材を一緒に接合し、
それによって、イソシアネート成分およびポリオール成分を混合し、反応させて、第1の
基材と第2の基材との間に接着剤を形成する。次いで、混合した接着剤組成物を硬化させ
、それによって、第1および第2の基材を接着させる。接着剤組成物の成分の反応性のた
めに、接着剤組成物は、第1および第2の基材を一緒に接合した後、10分以内に10,
000mPa・sを超える粘度を達成することができる。
【0011】
開示された方法に従って作られた積層構造体は、積層後わずか2時間以内にスリットし
、顧客に2日以内に送達することができる。既存の汎用接着剤組成物を使用して作られた
積層体は、典型的には、スリッティングのために積層から2~3日、送達のために5~7
日を必要とする。したがって、開示された方法に従ってプロセス効率が大幅に向上する。
さらに、開示された方法で使用される接着剤組成物のポットライフは、既存の汎用接着剤
に対して20~30分のポットライフに比較して不定である。これは、以下に説明するよ
うに、開示された接着剤組成物のポットライフが硬化プロセスから完全に切り離されるた
めである。
【0012】
開示された方法で使用される接着剤組成物は既存の接着剤組成物よりも高反応性である
ように配合されているので、それらは理想的には既存の接着剤塗布装置での使用には適し
ていない。これは、2つの成分が非常に迅速に反応するため、接着剤がゲル化し、基材へ
の塗布に適合していない。この理由のために、開示される方法で使用される接着剤組成物
は、予め混合し、担体ウェブ上に塗布される代わりに、イソシアネート成分およびポリオ
ール成分が2つの異なる基材上に別々に塗布されるように配合される。
【0013】
特に、開示された方法で使用される接着剤組成物は、イソシアネート成分が第1の基材
の表面に均一に塗布することができ、ポリオール成分が第2の基材の表面に均一に塗布す
ることができるように配合される。次いで、第1の基材の表面を第2の基材の表面に接触
させて、2つの成分を混合し、反応させて、それによって、積層体を形成する。次いで、
接着剤組成物を硬化させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面を参照する:
【0015】
図1】接着剤組成物を含む積層体を形成するための塗布装置の概略図である。
図2】例示的な実施例および比較例の粘度対時間を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したように、開示された方法で使用される二成分無溶剤接着剤組成物は、イソシア
ネート成分およびポリオール成分を含む。
【0017】
イソシアネート成分
イソシアネート成分は、少なくとも一つのイソシアネートを含む。少なくとも1つのイ
ソシアネートは、イソシアネートプレポリマー、イソシアネートモノマー、ポリイソシア
ネート(例えば、ダイマー、トリマーなど)、およびそれらの2つ以上の組み合わせから
なる群から選択することができる。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」
は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物である。イソシアネートプレポ
リマーは、少なくとも1つのイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールを含む反
応物の反応生成物である。本明細書で使用される場合、「イソシアネートプレポリマー」
は、ポリイソシアネート自体であり得る。
【0018】
少なくとも一つのイソシアネートは、1.5~10、または1.8~5、または2~3
の官能基を含む。イソシアネート成分に関して使用される場合、「官能基」とは、1分子
当たりのヒドロキシル反応部位の数を指す。イソシアネート成分などのイソシアネート基
を有する化合物は、化合物の重量に基づく重量でイソシアネート基の量であるパラメータ
「%NCO」によって特徴付けられ得る。パラメータ%NCOは、ASTM D 257
2-97(2010)の方法によって測定される。開示されたイソシアネート成分は、少
なくとも3%、または少なくとも6%、または少なくとも10%の%NCOを有する。好
ましくは、イソシアネート成分は、25%、または18%、または14%を超えない%N
COを有する。
【0019】
さらに、少なくとも1つのイソシアネートは、0~50%、または5~40%、または
10~30%の遊離モノマー含有量を含む。さらに、少なくとも1つのイソシアネートは
、200~3,000g/mol、または300~2,000g/mol、または500
~1,000g/molの分子量を含む。さらになお、イソシアネート成分は、ASTM
D2196の方法によって測定されるように、25℃で300~40,000mPa-
s、または500~20,000mPa-s、または1,000~10,000mPa-
sの粘度を有する。
【0020】
イソシアネート成分の少なくとも1つのイソシアネートは、芳香族イソシアネート、脂
肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から
選択することができる。「芳香族ポリイソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有す
るイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」は芳香族環を含有しない。「脂
環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環構造を有する脂肪族ポリイソシアネートのサブ
セットである。
【0021】
本開示に従って使用するのに適した芳香族イソシアネートの例としては、例えば、4,
4-MDI、2,2-MDI、および2,4-MDIなどのメチレンジフェニルジイソシ
アネート(「MDI」)の異性体、2,4-TDI、2,6-TDIなどのトルエンジイ
ソシアネート(「TDI」)の異性体、1,5-NDIなどのナフタレンジイソシアネー
ト(「NDI」)の異性体、ノルボルナンジイソシアネート(「NBDI」)の異性体、
テトラメチルキシリレンジイソシアネート(「TMXDI」)の異性体、およびこれらの
2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。MDIの異性体、具体的
には、4,4-MDIおよび2,4-MDI(すなわち、液状MDI)または4,4-M
DI(すなわち、固体MDI)の混合物が好ましい。
【0022】
本開示による使用に好適な脂肪族および脂環式イソシアネートの例としては、ヘキサメ
チレンジイソシアネート(「HDI」)の異性体、イソホロンジイソシアネート(IPD
I)の異性体、キシレンジイソシアネート(「XDI」)の異性体、およびこれらの組み
合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
接着剤組成物中の少なくとも1つのイソシアネートの量は、接着剤組成物の重量に基づ
いて(すなわち、イソシアネート成分とポリオール成分の総重量)、少なくとも5重量%
、または少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%である。接着剤組成物中の
少なくとも1つのイソシアネートの量は、接着剤組成物の重量に基づいて100重量%を
超えない、または95重量%を超えない、または90重量%を超えない。
【0024】
イソシアネート成分は、一般的に当業者に公知の他の成分、例えば、ポリオール、触媒
などをさらに含むことができる。
【0025】
ポリオール成分
いくつかの実施形態では、無溶剤接着剤組成物は、少なくとも1つの高反応性アミン開
始ポリオールを含むポリオール成分をさらに含む。ポリオール成分中に少なくとも1つの
アミン開始ポリオールを含めることにより、既存の二成分無溶剤接着剤組成物で使用され
る従来のポリオールよりも高い反応性およびより速い硬化がもたらされる。アミン開始ポ
リオールは、第1級ヒドロキシル基と少なくとも1つの第3級アミンを組み込んでいる骨
格とを含む。いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、非アミン開始ポリオールであ
る別のタイプのポリオールを含むこともできる。各ポリオールタイプは、1種類のポリオ
ールを含み得る。あるいは、各ポリオールタイプは、異なる種類のポリオールの混合物を
含み得る。いくつかの実施形態では、一方のポリオールタイプは1種類のポリオールであ
ってもよく、他方のポリオールタイプは異なる種類のポリオールの混合物であってもよい
【0026】
アミン開始ポリオールは、第1級ヒドロキシル基と少なくとも1つの第3級アミンを組
み込んでいる骨格とを含む。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、Iの化
学構造を有する:
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R、R、およびRはそれぞれ独立して、直鎖または分枝鎖アルキル基であ
る。例えば、それぞれ独立して、C-Cの直鎖または分枝鎖アルキル基であり得る。
いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、第3級アミンおよび第2級アミンを
含む。
【0029】
少なくとも1つのアミン開始ポリオールは、2~12、または3~10、または4~8
の官能基を含む。ポリオール成分に関して使用される場合、「官能基」は、1分子当たり
のイソシアネート反応部位の数を指す。さらに、少なくとも1つのアミン開始ポリオール
は、5~1,830、または20~100、または31~40のヒドロキシル価を含む。
ポリオール成分に関して使用される場合、「ヒドロキシル価」は、反応に利用可能な反応
性ヒドロキシル基の量の尺度である。この数は、湿式分析法で決定され、1グラムの試料
中に見出されるヒドロキシル基に相当する水酸化カリウムのミリグラム数として報告され
る。ヒドロキシル価を決定するために最も一般的に使用される方法は、ASTM D 4
274Dに記載されている。さらになお、少なくとも1つのアミン開始ポリオールは、2
5℃で500~20,000mPa-s、または1,000~15,000mPa-s、
または1,500~10,000mPa-sの粘度を含む。
【0030】
本開示による使用に好適なアミン開始ポリオールは、1つ以上のアルキレンオキシドと
1つ以上のアミン開始剤をアルコキシル化することによって作製される。
【0031】
接着剤組成物中の少なくとも1つのアミン開始ポリオールの量は、接着剤組成物の重量
に基づいて(すなわち、イソシアネート成分とポリオール成分の総重量)、少なくとも2
重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%である。接着剤組成
物中の少なくとも1つのアミン開始ポリオールの量は、接着剤組成物の重量に基づいて、
100重量%を超えない、または95重量%を超えない、または90重量%を超えない。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、システムの反応性を増大させるための触
媒を含む。開示された方法に従って使用することができるように接着剤組成物の反応性を
十分に高めるのに好適な触媒としては、ビスマス触媒、亜鉛触媒、ジルコニウム触媒、錫
触媒、およびアルミニウム触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非アミン開始ポリオールは、任意に、接着
剤組成物中、例えば、ポリオール成分中に含まれてもよい。非アミン開始ポリオールの例
としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオ
ール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポ
リオール、天然油ポリオール、およびこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これ
らに限定されない。好ましくは、非アミン開始ポリオールは、ASTM D2196の方
法によって測定されるように、25℃で30~40,000mPa-s、または50~3
0,000mPa-s、または70~20,000mPa-sの粘度を有する。好ましく
は、非アミン開始ポリオールは、ASTM D2196の方法によって測定されるように
、25℃で100~10,000mPa-sの粘度を有する。
【0034】
接着剤組成物中の少なくとも1つの非アミン開始ポリオールの量は、少なくとも0重量
%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%である。接着剤組成物中の
少なくとも1つの非アミン開始ポリオールの量は、98重量%を超えない、または90重
量%を超えない、または80重量%を超えない。
【0035】
イソシアネート成分対ポリオール成分の混合比は、重量で、そのそれぞれの基材に各成
分の塗布重量を調整することによって制御される。いくつかの実施形態では、最終接着剤
組成物中のイソシアネート成分対ポリオール成分の混合比は、100:100、または1
00:90、または100:80であり得る。開示された接着剤組成物は、従来の接着剤
よりも寛容であり、いくらかの塗装重量誤差(例えば、約10%までの塗装重量誤差)を
調整し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は、任意に、接着剤組成物に含められ得る
。このような添加剤の例としては、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー改質剤、接着促進剤
、酸化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、触媒、溶媒、およびこれらの2つ以上の組
み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
ポリオール成分は、一般的に当業者に公知の他の成分、例えば、追加のポリオール、触
媒、イソシアネートなどをさらに含むことができる。
【0038】
積層形成
積層構造体を形成することが望まれるまで、開示された方法で使用される無溶剤接着剤
組成物のイソシアネート成分およびポリオール成分は、別々に配合され、保存されること
が企図される。好ましくは、イソシアネート成分およびポリオール成分は、25℃で液体
状態である。成分が25℃で固体であっても、必要に応じて成分を加熱して液体状態にす
ることが可能である。接着剤組成物のポットライフが硬化プロセスから切り離されるので
、成分は無期限に保存することができる。
【0039】
開示された方法に従って形成された積層体は、2つのフィルムのような2つの異なる基
材に別々に接着剤組成物のイソシアネート成分およびポリオール成分を塗布することによ
って形成することができる。本明細書で使用される場合、「フィルム」は、1つの寸法が
0.5mm以下であり、他の2つの寸法が両方とも1cm以上である任意の構造である。
「ポリマーフィルム」は、ポリマーまたはポリマーの混合物から作製されるフィルムであ
る。ポリマーフィルムの組成物は、典型的には、80重量%以上の1つ以上のポリマーで
ある。
【0040】
ここで図1を参照すると、方法を実施するための装置の概略図を、例示の目的のために
示す。この装置は、第1のアンワインダーウェブ104から巻出し可能な第1の基材10
2を含む。上述したように、第1の基材は、フィルムであり得る。第1の基材102は、
接着剤組成物のイソシアネート成分の層が第1の基材102に塗布される塗布ユニット1
06を通過する。塗布ユニットには、典型的には、30~40℃で操作される投与ローラ
が含まれる。塗布ユニットは、典型的には、30~60℃の間で操作される塗布ローラを
さらに含む。この装置は、第2のアンワインダーウェブ110から巻出し可能な第2の基
材108をさらに含む。第2の基材108は、フィルムであり得る。第2の基材は、接着
剤組成物のポリオール成分の層が第2の基材108に塗布される塗布ユニット112を通
って108を通過する。好ましくは、第1および第2の基材102、108に塗布される
第1および第2の層の厚さは、それぞれ、0.5~2.5μmである。各基材に塗布され
る層の厚さを制御することによって、成分の比率を制御することができる。
【0041】
次いで、第1および第2の基材102、108の表面は、ニップローラ114などの第
1および第2の基材102、108に外部圧力を加えるための装置を介して実行される。
ニップローラは、典型的には、30~50℃で、2~4バールの圧力で操作される。イソ
シアネート成分およびポリオール成分が一緒に接合されると、硬化性接着剤混合物層が形
成される。第1および第2の基材102、108の表面が一緒に接合されると、硬化性接
着剤混合層の厚さは1~5μmである。第1および第2の基材102、108が一緒に接
合され、成分が互いに接触すると、イソシアネート成分およびポリオール成分は、混合し
、反応し始める。これは、硬化プロセスの始まりを示す。
【0042】
第1および第2の基材102、108が、様々な他のローラ、例えば、ローラ116、
そして最終的にアンワインダーローラ118を介して実行されるため、さらなる混合およ
び反応が、達成される。第1および第2の基材102、108がローラを通過し、これら
の基材が、それぞれ、各ローラを横切って他の基材よりも長いまたは短い経路をとるため
、さらなる混合および反応が生じる。このようにして、2つの基材は、互いに対して移動
し、それぞれの基材上の成分を混合する。塗布装置におけるローラの配置は、当該技術分
野において一般的に知られている。次いで、硬化性混合物を硬化させるか、または硬化す
ることが可能になる。
【0043】
積層構造体における好適な基材には、紙、織布、および不織布、金属箔、ポリマー、お
よび金属被覆ポリマーのようなフィルムを含む。フィルムは、任意に、その上に画像がイ
ンクで印刷される表面を有し、そのインクは接着剤組成物と接触することができる。
【0044】
ここで図2を参照すると、本開示による接着剤組成物、すなわち、開示されるアミン開
始ポリオールを含む接着剤組成物の反応性プロファイル、およびアミン開始ポリオールを
含まない接着剤組成物の反応性プロファイル、を示すプロットが示される。図2では、ポ
リオール成分の重量に基づいて、13重量%のアミン開始ポリオールを含む接着剤組成物
は、最初に、積層時に40℃で約4,000mPa-sの粘度を含む。驚くべきことに、
積層後15分以内に粘度が10,000mPa・sを超えるまで急速に増大する。ポリオ
ール成分の重量に基づいて、8重量%のアミン開始ポリオールを含む接着剤組成物は、最
初に、積層時に40℃で約3,000mPa-sの粘度を含む。驚くべきことに、粘度は
、積層後、20分未満で10,000mPa・sを超えるまで急速に増大する。逆に、ア
ミン開始ポリオールを含まない接着剤組成物は、最初に、積層時に40℃で約1,000
mPa-sの粘度を含む。積層後、約60分まで、粘度は、10,000mPa-sを超
えない。この反応性プロファイルは、既存の無溶剤接着剤組成物に特有である。
【実施例0045】
本開示は、現在開示される接着剤組成物および既存の接着剤組成物を示す実施例(集合
的に「実施例」)を説明することによって、さらに詳細に説明するであろう。しかしなが
ら、本開示の範囲は、当然ながら、実施例に限定されない。
【0046】
実施例において、イソシアネート成分は、当業者に一般的に公知の芳香族イソシアネー
ト、例えば、TDI、MDIを含む。実施例のポリオール成分は、下の表1に列挙された
配合物に従って調製される。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に記載のポリオール成分を含む積層構造体は、Nordmeccanica LA
BO COMBI(商標)ラミネーターに調製される。次いで、調製された積層構造体を
、LABO COMBI(商標)ラミネーターで結合強度および第1級芳香族アミン減衰
について試験する。積層構造体の結合強度を、ASTM F904に従って試験する。第
1級芳香族アミン減衰分析は、水性食品刺激剤(3%酢酸)中の第1級芳香族アミンの測
定のための試験である。試験は、公式BrF方法第L00~00.6および委員会規則(
EU)第10/2011に基づいている。
【0049】
性能結果を、下の表2に示す。結合強度は、積層後、2時間、4時間、1日、および2
日でASTM F904に従って測定される。第1級芳香族アミン減衰は、積層後、24
時間、2日、3日で、BrF方法第L00~00.6および委員会規則(EU)第10/
2011に従って試験される。
【0050】
【表2】
【0051】
表2において、「a」は、接着剤が無傷のままであることを示し、「t」は積層構造体
のうちの1つが破れていることを示す。表2のデータに基づいて、アミン開始ポリオール
の含有は、接着剤組成物の反応性を増加させる。表3に示されるように、アミン開始ポリ
オールを含む配合物は、より速い結合発達およびより速いPAA減衰を示す。具体的には
、完全な結合の発生が2日間で達成される。完全な結合の発生は、少なくとも1つのイソ
シアネートおよびポリオールの全ての官能基(例えば、NCOおよびOH基)が反応して
、最終ポリマー鎖に組み込まれたときに生じ、すなわち、さらなる架橋反応が進行してお
らず、最終結合性能、熱的および化学的耐性が達成される。しかしながら、積層構造体を
スリットするのに十分な結合は、高反応性アミン開始ポリオールを含むポリオール成分を
用いて積層後、1時間以内に達成される。積層構造体は、少なくとも1N/15分の結合
強度および粘着性のない接着剤を有するときに、スリットするのに十分な結合を有する。
【0052】
本開示に従って想定されるように、積層構造体はまた、2つの塗布頭部との積層マシン
上にも形成される。次いで、調製された積層構造体を、結合強度および第1級芳香族アミ
ン減衰について試験する。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示されるように、開示されるアミン開始ポリオールを含む接着剤組成物は全て、
驚くべきことに、積層の2時間以内に1.0N/15分を上回る結合強度を達成した。実
施例の多くは、積層後、2時間以内に2.0N/15分を上回る結合強度をさらに示した
図1
図2