(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119957
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】凍結乾燥
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61J3/00 301
A61J3/00 300C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090043
(22)【出願日】2022-06-02
(62)【分割の表示】P 2021108632の分割
【原出願日】2015-06-09
(31)【優先権主張番号】62/009,629
(32)【優先日】2014-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/010,027
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/142,146
(32)【優先日】2015-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】コービン、フランク、3世
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンカ、デニス、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パレタ、ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラム、マーク、イー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凍結乾燥させた物質を後で使用する際の能力に影響を与えずに、該物質を凍結乾燥させるための効率を改善し、また凍結乾燥させる時間を短縮する。
【解決手段】第1面を有する第1プレートと、前記第1面に対向する第2面を有する第2プレートと、を備える。前記第2プレートは、流体を循環させるチャネルを有する。該システムはさらに、前記第1面と前記第2面との間の空間を増大及び減少させるように動作するプレート動作システムを有する。いくつかの実施形態において、前記第1プレートは、前記第1面を構成する第2層を有する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を凍結乾燥させる際に使用されるシステムであって、該システムは、
複数の凹部と複数の凸部とが交互に配置された第1面を有する第1プレートと、
前記第1面と対向する第2面を有し、流体を循環させるためのチャネルを備えた第2プレートであって、前記第2面には複数の凸部と複数の凹部とが交互に配置された前記第2プレートと、
前記第1面と前記第2面との間の空間を増大及び減少させるように動作するプレート動作システムと、
を備え、
前記第1面の各前記凹部は、前記第2面の前記凸部1つと対向し、前記第1面の各前記凸部は、前記第2面の前記凹部1つと対向することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、該システムは、前記第1プレートに赤外線放射物質をさらに備え、前記赤外線放射物質は、前記第1面であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面は、複数の半球状凸部及び半球状凹部を備え、前記第2プレートの前記第2面は、複数の半球状凹部及び半球状凸部を備えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、一定のパターンに配置され、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、前記一定のパターンに対応した一定のパターンに配置されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、同じサイズであり、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、同じサイズであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、異なるサイズであり、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、異なるサイズであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項3記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、不規則なパターンに配置され、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、前記不規則なパターンに対応した不規則なパターンに配置されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、同じサイズであり、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、同じサイズであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7記載のシステムにおいて、前記第1プレートの前記第1面の前記複数の半球状凸部及び半球状凹部は、異なるサイズであり、前記第2プレートの前記第2面の前記複数の半球状凹部及び半球状凸部は、異なるサイズであることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年6月9日に出願された米国特許仮出願第62/009,629号(タイトル:凍結乾燥)、2014年6月10日に出願された米国特許仮出願第62/010,027号(タイトル:凍結乾燥)、及び2015年4月2日に出願された米国特許仮出願第62/142,146号(タイトル:凍結乾燥用容器)の優先権を主張するものであり、該米国特許仮出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥は、生体物質、食品、薬剤等の物質を貯蔵保存しそれら物質の保存可能期間を増大するために使用されるプロセスである。凍結乾燥は、まず物質を凍結して固体化し、そして該物質を(大気圧より低い)低圧環境下におくことで該物質の一成分を昇華させることによって行われる。通常、該一成分は、標準温度且つ標準気圧において液体であり、一例として水が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
物質のタイプ及び凍結乾燥される体積によっては、プロセス完了に数日かかることがある。凍結乾燥させた物質を後で使用する際の能力に影響を与えずに、該物質を凍結乾燥させるための効率を改善し、また凍結乾燥させる時間を短縮するための要求がある。
【0004】
本発明の実施形態は、上記の点及び他の点を考慮してなされた。しかしながら、ここで記載される課題は、本発明の実施形態の用途を、制限するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡単な形式で説明するためのものであり、主張される本発明の重要な又は必須の要素を特定することを意図していないし、また、請求項の範囲を制限することを意図しているものでもない。
【0006】
いくつかの実施形態は、血液成分を凍結乾燥し、貯蔵し、輸液するための容器に関する。ある実施形態において、該容器は、可撓性高分子材料を含む第1壁と、前記第1壁に接合されることによって該容器の内部容積を画定する第2壁と、を備える。ある実施形態において、前記第2壁は、該容器の内部から外部へガスが移動できるようなガス透過性材料から作製される。いくつかの実施形態において、該容器は、処理後に凍結乾燥された物資が貯蔵される第2室(又は第2部分)を有する。
【0007】
他の実施形態は、多成分液体を凍結乾燥する方法に関する。ある実施形態において、該方法は、容器に前記多成分液体を保持させるステップと、前記多成分液体を、大気圧より低い第1圧力にさらすステップと、を有する。そして、前記多成分液体の少なくとも1成分を、所定の時間、蒸発させる。蒸発の後、前記多成分液体を凍結させて、固体を形成する。いくつかの実施形態において、前記多成分液体は、凍結中に、成形(例えば、圧縮力にて押圧)される。そして、前記固体は、前記第1圧力より低い第2圧力にさらされる。そして、前記固体の一部を昇華させる。そして、前記固体の中の一成分を前記固体から脱離させる。
【0008】
さらに別の実施形態は、多成分液体を凍結乾燥するためのシステムに関する。該システムの実施形態は、第1面を有する第1プレートと、前記第1面に対向する第2面を有する第2プレートと、を備える。前記第2プレートは、流体を循環させるチャネルを有する。該システムはさらに、前記第1面と前記第2面との間の空間を増大及び減少させるように動作するプレート動作システムを有する。いくつかの実施形態において、前記第1プレートは、前記第1面を構成する第2層を有する。いくつかの実施形態において、前記第2層は、被凍結乾燥物資にエネルギーを付加するための赤外線放射体である。
【0009】
非制限的且つ非包括的な実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、物質を凍結乾燥するための装置の第1実施形態の図である。
【
図2】
図2は、物質を凍結乾燥するための装置の第2実施形態の図である。
【
図4】
図4は、
図3の状態に対してプレートを移動させた状態にある
図3の棚システムの図である。
【
図5】
図5は、棚システムの第2実施形態の図である。
【
図6】
図6は、
図5の状態に対してプレートを移動させた状態にある
図5の棚システムの図である。
【
図7】
図7は、
図3~
図6に示されるシステムの一部である、棚システムの2枚のプレートを移動させるための機構の一実施形態の図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、棚システムの一部として使用される2枚のプレートの構造の第1実施形態の図である。
【
図9】
図9は、棚システムの一部として使用される2枚のプレートの構造の第2実施形態の図である。
【
図10】
図10は、棚システムの一部として使用される2枚のプレートの構造の第3実施形態の図である。
【
図11】
図11は、凍結乾燥のために物質を収容するために使用される容器の図である。
【
図14】
図14は、一実施形態に係る3つの壁で構成された容器の断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る3つの壁で構成された容器の断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る、凍結乾燥のために及び凍結乾燥の後に、物質を収容するために使用される容器の図である。
【
図18】
図18A及び
図18Bは、他の実施形態に係る、凍結乾燥のために及び凍結乾燥の後に、物質を収容するために使用される容器の図である。
【
図19】
図19A~
図19Cは、他の実施形態に係る、凍結乾燥のために及び凍結乾燥の後に、物質を収容するために使用される容器の図である。
【
図20】
図20A~
図20Cは、さらに他の実施形態に係る、凍結乾燥のために及び凍結乾燥の後に、物質を収容するために使用される容器の図である。
【
図21】
図21は、後で行われる凍結乾燥のために、生体流体を貯留し複数の容器に充填するためのシステムの一実施形態の図である。
【
図22】
図22は、後で行われる凍結乾燥のために、生体流体を貯留し、該生体流体の体積を減らし、複数の容器に該生体流体を充填するためのシステムの一実施形態の図である。
【
図23】
図23は、後で行われる凍結乾燥のために、生体流体を貯留し、該流体の病原体を減らし、複数の容器に該生体流体を充填するためのシステムの一実施形態の図である。
【
図24】
図24は、後で行われる凍結乾燥のために、生体流体を貯留し、該生体流体の体積を減らし、該体積が減らされた流体の病原体を減らし、複数の容器に該生体流体を充填するためのシステムの一実施形態の図である。
【
図25】
図25は、実施形態に係る、処理のための流体を含むバッグ及び流体に光源からの光を照射しながら流体を撹拌するための振動テーブルの図である。
【
図26】
図26は、実施形態に係る、病原体及び微生物を減少又は不活性化させるための装置の図である。
【
図27】
図27は、一実施形態に係る、血液成分に対して、凍結乾燥、収容、戻し、貯蔵及び輸液を行うためのプロセスの図である。
【
図28】
図28は、一実施形態に係る、物質を凍結乾燥するためのプロセスのフローチャートである。
【
図29】
図29は、一実施形態に係る、物質の病原体を減らし、物質を凍結乾燥するためのプロセスのフローチャートである。
【
図30】
図30は、IR放射を用いた物質を凍結乾燥するためのシステムの一実施形態の図である。
【
図31】
図31は、IR放射を用いた物質を凍結乾燥するためのシステムの他の実施形態の図である。
【
図32】
図32は、一実施形態に係る、IR放射を用いた物質を凍結乾燥するためのプロセスのフローチャートである。
【
図33】
図33は、実施形態を実施するために使用されるコンピュータシステムの一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の原理は、以下の詳細な説明及び添付図面に示される実施形態を参照することで、さらに理解されよう。詳細な実施形態において具体的な特徴が示され説明されるが、本発明は、以下で説明される実施形態に限定されないと理解されるべきである。
【0012】
以下では、添付図面で示される実施形態が詳細に説明される。可能な限り、同一の部材に関して言及する場合は、図面及び説明において、同一の参照符号が用いられる。
【0013】
図1は、本発明に係る、(例えば、液体、固体又はそれらの組み合わせの形態の)物質を凍結乾燥するための装置100の第1実施形態を示す。
図1に示されるように、装置100は、チャンバ104、ハウジング108、棚システム112、及びインターフェース116を有する。ハウジング108は、特に、真空システム、温度制御システム、及び制御システムを収容する。真空システムは、チャンバ104に(例えば、大気圧より低い)低圧環境を作り出す。温度制御システムは、棚システム112の温度を制御する。制御システムは、装置100の各種機能を制御し、(1以上のプロセッサを備える)コンピュータシステムを有してもよい。オペレータは、ユーザインターフェース116を使用することにより、データ、パラメータ、その他の情報を入力し、装置100の機能を制御することができる。一実施形態において、ユーザインターフェース116によって、オペレータは、マルチステップのプログラム可能なサイクルを有する凍結乾燥用のカスタムプロセスを作成して実行することができる。
【0014】
実施形態において、被凍結乾燥物質は、チャンバ104内の棚システム112に置かれる。続いて、真空システムは、チャンバ104内の環境を、第1圧力(大気圧より低い圧力)にする。いくつかの実施形態では、第1圧力は、被凍結乾燥物質の一成分の液体状態での蒸発に基づいて選択される。チャンバ104が第1圧力に到達した後、第1成分の少なくとも一部は、該物質から蒸発する。蒸発は、第1の期間にわたって、又は所定の量の第1成分が該物質から蒸発するまで行われる。
【0015】
第1成分の一部が蒸発した後、残った物質は冷却され、残留液体は凍結し、固体になる。実施形態において、上述の蒸発は、凍結ステップの一部である。理解できるように、いくつかの実施形態において、上記蒸発は、残った物質を、液体が凍結して固体になる程度に冷却する。他の実施形態において、上記凍結においては、蒸発に加えて、又は蒸発の代わりに、他の機構を用いた冷却を行ってもよい。
【0016】
真空システムによって、チャンバ104内の環境は、第2圧力にされる。実施形態において、第2圧力は第1圧力よりも低い。第2圧力下において、第1成分の第2の部分は、該物質から昇華する。いくつかの実施形態において、昇華は、該物質の他の成分の昇華を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、昇華後、物質は、追加の期間、第2圧力に維持され、物質から1以上の成分が脱離される。脱離される成分は、該物質によって、予め吸収又は吸着されている。
【0018】
以下で詳細に説明されるように、実施形態において、棚システム112は、凍結乾燥中の物質に対してエネルギーを輸送/付加又は除去する特徴を有する。エネルギーの付加又は除去は、上記ステップのうち1以上のステップにおいて、行われる。例えば、棚システム112を用いることによって、物質に対してエネルギーの付加を行い、物質からの成分の蒸発を行う。また、棚システム112を用いることによって、該システムからエネルギーを除去し、物質を冷却して、物質内の液体を凍結固化させてもよい。実施形態において、棚システム112を用いて、昇華ステップ中に、物質にエネルギーが付加されてもよい。
【0019】
図2は、本発明に係る、物質を凍結乾燥させる装置200の第2実施形態を示す。装置200は、装置100と同様の特徴を有し、ハウジング208内に収容されるチャンバ204を有する。装置200はさらに、棚システム212及びユーザインターフェース216を有する。実施形態において、装置200は、装置100と同様の機能を有し、同様に動作する。装置100及び装置200は、本発明は任意の凍結乾燥装置又は凍結乾燥システムにおいて実施可能であることを示す目的だけのために、説明されるのであって、ある特定の設計又はある特定のシステム構成に限定されない。
【0020】
以下では、種々の構成が、凍結乾燥装置(例えば、装置100や装置200)又は凍結乾燥システムの実施形態の一部として説明される。しかしながら、本発明は、これに限定されない。凍結乾燥プロセスの各種ステップは、異なる構造、装置、システムによって実施されてもよい。非制限的な一例として、いくつかの実施形態では、(上述の)蒸発ステップ、凍結ステップ及び昇華ステップは、3つの別体の装置によって各ステップが行われる。他の実施形態において、1以上の装置は各種機能を有し、凍結乾燥プロセスの1より多いステップを、1つの装置において行えるようにしてもよい。
【0021】
一例として、蒸発ステップを、凍結ステップを行う装置において行ってもよい。
図29に対して以下で説明するように、蒸発は、凍結ステップ中に、物質の冷却を行う。蒸発及び凍結の後、物質は、該物質の一成分を昇華させる装置に移送される。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1装置において、物質から液体成分が蒸発させられる。そして、該物質は、第2装置に移送され、凍結される。凍結後、該物質は、凍結乾燥のために、第1装置に戻される。
【0023】
他の実施形態では、蒸発ステップは、プロセスの一部として行われない。一装置において、物質は凍結され、昇華のための第2装置に移送される。上述のように、本発明は、任意の1つの装置においてプロセスを行うことに限定されない。複数の装置において実行されるステップを含んでよい。
【0024】
図3は、例えば、上述の装置100や装置200のような凍結乾燥プロセス/装置に使用される棚システム300の一実施形態を示す。棚システム300は、棚320を構成するプレート304を有する。プレート304は、被凍結乾燥物質を配置するための面を提供する。被凍結乾燥物質のタイプによって、該物質は、トレイ、バッグ、ボトル等の容器内に保持され、該容器は、プレート304に配置される。
図3は、プレート304に配置された容器を示している。該容器は、被凍結乾燥物質を収容している。棚システム300はさらに、エンドプレート308を有する。実施形態では、エンドプレート308は、以下で詳細に説明されるように、固定されている。
【0025】
さらに、棚システム300は、プレート304間距離を変更するために使用される動作制御システム312を有する。以下で詳細に説明されるように、プレート304間距離は変更可能であり、それによって、被凍結乾燥物質は、凍結乾燥プロセスの凍結ステップ中に、押圧されることによって成形される。実施形態において、動作制御システム312は、プレート304を互いに接近及び離間させるように構成される。
【0026】
図4は、凍結乾燥プロセスにおいて、特に該プロセスの凍結ステップにおいて、プレート304を、例えば完全圧縮位置に、移動させて、物質を圧縮した状態にある棚システム300を示す。
図4に示されるように、エンドプレート308は、
図3に示される位置と同じ位置に維持されているが、各プレート304は、第1プレート(エンドプレート308の直下)の移動量が最小で、第7プレート(エンドプレート308から最遠)の移動量が最大となるように、上昇している。
図4に示される圧縮位置において、圧力がプレート304上の各容器に付加され、容器及び物質が押圧される。すなわち、圧縮力が、容器及び容器内の物質にかかる。以下で詳細に説明されるように、圧力の付加、例えば容器の押圧、は、凍結乾燥プロセスにいくつかの効果をもたらし、いくつかの実施形態において用いられる。
【0027】
理解されるように、動作制御システム312は、プレート304を動かすために用いられる複数の異なる構成部分を含む。例えば、動作制御システム312は、コントローラのような、プロセッサ、メモリ、入力装置、出力装置、通信装置、それらの組み合わせを含むコンピュータシステムを有する。動作制御システム312はさらに、1以上のモータ、アクチュエータ、ポンプ、コンプレッサ、シリンダ、ピストン、配管、バルブ、空気袋(bladder)、センサ、レギュレータ、それらの組み合わせを含む液圧動作、空気圧動作又は機械動作システムのような他のサブシステムを有してもよい。
【0028】
システム300はさらに、熱流体システム316を有する。熱流体システム316は、棚320の少なくとも一部を介して熱流体を循環させ、プレート304の少なくとも一部の温度ひいては凍結乾燥のためにプレート304に配置された物質の温度を制御する。熱流体システム316は、凍結乾燥プロセスの各種ステップ中に、棚320のプレート304に対して、エネルギーの除去又は付加を行う際に、使用される。
【0029】
図5は、例えば、上述の装置100や装置200のような凍結乾燥プロセス/装置に使用される棚システム500の他の実施形態の図である。棚システム500は、被凍結乾燥物質を載置するための面を提供する棚520を有する。該物質は、トレイ、バッグ、ボトルのような容器内に保持され、該容器は、棚520の第1プレート504上に載置される。棚システム500はさらに、棚520の一部である第2プレート508を有する。第2プレート508は、第1プレート504と対向するように第1プレート504の上方に配置される。さらに、棚システム500は、動作制御システム512を有する。実施形態において、動作制御システム512は、棚の第1プレート504と第2プレート508との間の距離を変更するために使用される。以下で詳細に示すように、第1プレート504と第2プレート508との間の距離を変更することによって、凍結乾燥中の物質に対して圧力を付加することができる。ある実施形態では、動作制御システム512は、第1プレート504を固定された第2プレート508に対して接近及び離間させるように構成される。他の実施形態では、第2プレート508を、固定された第1プレート504に対して接近及び離間させるようにしてもよい。さらに他の実施形態では、動作制御システム512は、第1プレート504と第2プレート508を互いに接近及び離間させるように構成されてもよい。
【0030】
動作制御システム512は、棚520のプレート504及び/又はプレート508を動かすために適した任意のシステムを有する。ある実施形態では、コントローラのような、プロセッサ、メモリ、入力装置、出力装置、通信装置、それらの組み合わせを含むコンピュータシステムを有する動作制御システム312(
図3)と同様の構成部分を有する。システム512はさらに、1以上のモータ、アクチュエータ、ポンプ、コンプレッサ、シリンダ、ピストン、配管、バルブ、空気袋(bladder)、センサ、レギュレータ、それらの組み合わせを含む液圧動作、空気圧動作又は機械動作システムのような他のサブシステムを有してもよい。
【0031】
図6は、凍結乾燥プロセス中において、特に該プロセスの凍結ステップにおいて、棚520のプレート504、508を動かして物質が押圧された状態にある
図5の棚システム500を示す。
図6において、第2プレート508は、第1プレート504に向かって下方に移動された状態にある。
図6に示される位置において、第2プレート508によって圧力をかけることによって、第1プレート504に置かれた各容器に対して、圧力が付加される。このような圧力の付加、及び/又は凍結中の物質に対する成形加工は、凍結乾燥プロセスの効率を改善すると考えられ、またいくつかの実施形態において使用される。
【0032】
システム500はさらに、熱流体システム316と同様の熱流体システム516を有する。熱流体システム516は、棚520の少なくとも一部内において、熱流体を循環させ、プレート504、508の少なくとも一部の温度ひいては凍結乾燥のためにプレート504、508に配置された物質の温度を制御する。熱流体システム516は、以下で詳細に説明されるように、凍結乾燥プロセスの各種ステップ中に、棚520に対して、エネルギーの除去又は付加を行う際に、使用される。
【0033】
棚システム300、500の上記記載は、本発明のある実施形態におけるいくつかの特徴を例示する目的で行われている。本発明の実施形態は、上記において説明されていないが本発明の範囲にある特徴を含んでもよい。例えば、システムにおけるプレートの数を変更してもよい。いくつかの実施形態において、被凍結乾燥物質を保持するためのプレート(例えば、304、504)の数は、2より、又は3より、又は4より、又は5より、又は6より多くてもよい。他の実施形態において、被凍結乾燥物質を保持するためのプレート(例えば、304、504)の数は、12未満、又は11未満、又は10未満、又は9未満、又は8未満であってもよい。一実施形態において、被凍結乾燥物質を保持するためのプレート(例えば、304、504)の数は、7である。
【0034】
他の実施形態において、被凍結乾燥物質を保持するプレート(例えば、304、504)は、他の特徴を有する。例えば、プレートの周囲部に、一段高くした縁部を設けてもよい。これにより、漏れ物質がプレート上に保持されることになり、洗浄を容易に行える。また、プレートは、コネクタ、配管、継手、パイプ、アダプタ等の任意の適切なコネクタを用いて、動作制御システム(312、512)及び/又は熱流体システム(316、516)に接続されてもよい。一実勢形態において、プレートは、(例えば、クイックタイプ管継手を用いて)動作制御システム(312、512)及び/又は熱流体システム(316、516)から容易に取り外せるように接続される。これにより、洗浄が容易に行える。
【0035】
図7は、
図3~
図6に示される棚システム300又は500の一部である、2枚のプレート及びプレートを動かすための機構を有するシステム700の一実施形態を示す。第1プレート704は、面712が第2プレートの面716に対向するように、第2プレート708の上方に位置付けられる。
図7に示されるように、2つの面712、716との間に、凍結乾燥される物質が配置される空間720が形成され、矢印724で示されるように、1以上のプレート704、708の動作によって、空間720は増大又は減少可能である。空間720が減少することで、凍結乾燥プロセスの1以上のステップにおいて被凍結乾燥物質は押圧される。空間720を増大させて、圧力を解除する。或いは、被凍結乾燥物質をプレート708上で位置決めする際、空間720を増大させる。
【0036】
実施形態において、1以上のプレート704、708を動かすための任意の機構を使用することができる。
図7は、プレート704及び/又はプレート708を動かして、空間720のサイズを増大又は減少させるための機構の一例を示す。
図7に示される実施形態において、支持部材728には、プレート704、708が互いに接近及び離間動作が可能となるように取り付けられる。
【0037】
支持部材728は、外側支持部732と内側支持部736とを有する。例えば、外側支持部732は中空状筒であり、内側支持部736は該中空状筒内に配置されるシャフトである。いくつかの実施形態において、プレート704又はプレート708のうちの一方は、外側支持部732に取り付けられ、他方は、内側支持部736に取り付けられる。プレート704、708は、任意の適切な機構によって、支持部材728に取り付けられる。そのような機構の非制限的な例としては、L型ブラケット740のようなL型ブラケットの使用が挙げられる。さらに、いくつかの実施形態では、ねじ、ナット、ボルト、ワッシャ、又はそれらの組み合わせのような締結具を用いて、プレート704、708が支持部材728の各部分に取り付けられる。
【0038】
図7に示される実施形態において、外側支持部732は、開口部744を有し、それによって、L型ブラケット740が内側支持部736に取り付け可能となり、L型ブラケット740は鉛直方向に移動可能となる。L型ブラケット740には、プレート704、708のうちの一方が取り付けられ、L型ブラケット740が動くことによって、空間720を増大又は減少させることができる。
【0039】
実施形態において、支持部材728の少なくとも一部は、動作制御システム312(
図3及び
図4)や動作制御システム512(
図5や
図6)のような動作制御システムに接続される。上述のように、動作制御システムは、空間720の間隔を制御するために使用され、凍結乾燥プロセスにおける物質の載置及びいくつかのステップにおいて、空間720を増大させ、凍結乾燥中の物質を押圧するいくつかのステップにおいて、空間720を減少させる。
【0040】
支持部材728及びブラケット740は、プレート704、708を動かすための機構の一例である。他の実施形態では、プレート704、708を動かすための異なる機構の一部として、異なる構成部材が使用される。非制限的な例としては、ブラケット、レール、締結具、ベアリング、ブッシュ、シャフト、チューブ、プレート、溶接、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
図7のプレート704、708は、
図3~
図6に示される棚システム300又は棚システム500のような棚システムの一部であるプレート構造の一実施形態として例示されているにすぎない。他の実施形態では、異なる構造又は設計が利用されてよい。上述のように、他の実施形態は、プレート704とプレート708との間の空間720の間隔を変更するための異なる機構を有してもよい。他の棚システムでは、
図7で示される2つの支持部材728よりも多い支持部材が設けられてもよい。例えば、プレート704、708の4つの角部の近傍に4以上の支持部材を配置してもよい。これはあくまで例示であり、その他の実施形態は本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
図8A及び
図8Bは、
図3及び
図4に示されるシステム300のような棚システムの一部として使用される2枚プレート構造800の第1実施形態の図である。構造800は、第1プレート804と第2プレート808とを有する。第1プレート804は、第2プレート808の面816に対向する面812を有する。2つの対向する面812、816によって、該面間に空間820が形成される。
【0043】
実施形態において、プレート804とプレート808とは同様の構造を有する。プレート804は、第1層828を有し、実施形態において、第1層828は、熱伝導性材料で作製される。第1層828は、熱流体の流路となるチャネル824を有する。熱流体は、第1層828を加熱又は冷却することによって第1層828の温度を制御するために使用される。
【0044】
プレート804はさらに、第1層828と第2層836との間に境界832を有する。境界832は、断熱性材料を含み、これによって、第1層828の温度と第2層836の温度とを異ならせることができる。他の実施形態において、境界832は、上記の代わりに、又は上記に追加して、第1層828と第2層836との接着を助ける特性を有してもよい。
【0045】
一実施形態において、第2層836は、セラミック材料、金属材料、金属間化合物材料及び/又は複合材料等のIR放射材料を含む。ある実施形態において、該材料は、赤外線エネルギーを放射する赤外線(IR)放射体である。このような実施形態では、第2層836は、該層836を加熱することで面812からのIR放射を促進するための埋め込み素子を有してもよい。例えば、第2層836は、電極、加熱素子、センサ(例えば、熱電対)及び/又はそれらの組み合わせを有してよい。以下で詳細に説明するように、第2層836によって面812から放射されるIRエネルギーは、凍結乾燥プロセスのいくつかのステップを行う際に使用される。
図8A及び
図8Bの実施形態において示されるように、プレート808は、第1層848、第2層856、境界852、熱流体を循環させるチャネル844を有するように、プレート804と同様の構造を有する。
【0046】
実施形態において、プレート構造800は、棚システム300の少なくとも棚の周囲に低圧環境を生成する真空システムのような他の構成部分を含む凍結乾燥装置の一部として、棚システム300(
図3及び
図4)において使用される。これら実施形態において、プレート804、808は、棚320の一部を構成し、棚動作システム312及び熱流体システム316に接続される。
【0047】
動作において、(プレート構造800を有する)棚システム300は、システム300の少なくとも棚320(例えば、プレート804、808)の周囲に低圧(大気圧より低い)環境を作り出すために使用される真空チャンバ(例えば、104又は204)内に配置される。そして、棚動作システム312は、空間820を増大させ、(物質860(ある実施形態では生体液体のような液体)が入った)容器840をプレート808の面816上に載置する。そして、システム312は、1以上のプレート804及び/又はプレート808を動かし、空間820を減少させ、(
図8A及び
図8Bに示されるように)容器840をわずかに押圧する。そして、熱流体システム316は、プレート808のチャネル844を通じて熱流体を循環させ、プレート808の第1層848ひいては容器840内の物質860を冷却する。
【0048】
理論に制約されるものではないが、凍結ステップ中に、被凍結乾燥物質(例えば、容器840内の物質860)を押圧することによって、該物質を成形して、より一様な断面とすることができると考えられる。より一様な断面にすることによって、それに続く昇華ステップにおいて、物質860から一成分(例えば、氷)を除去する効率が増大する。すなわち、厚みのばらつきを減らすことで、昇華において、物質860の昇華面が進行していくレートを均一にすることができる。
【0049】
物質860が凍結した後、棚320の周囲環境を低圧にして、物質860の少なくとも一成分の昇華を促進させる。そして、棚動作システム312は、昇華ステップに備えて、空間820を増大させる。さらに、熱流体をチャネル844に循環させ、(熱伝導性材料で作製された第1層848を介して)容器840内の物質860に熱エネルギーを加えて、物質860における一成分の昇華を促進させる。
【0050】
上述のように、いくつかの実施形態では、第2層836は、IR放射体を備える。これらの実施形態では、IR放射体を活性化することで、IRエネルギーを容器840内の物質860に向ける。IRエネルギーは、物質860から一成分を昇華させるためのエネルギーをさらに追加する。これらの実施形態では、(チャネル844を循環する熱流体からの)熱エネルギー及び(プレート804の第2層836におけるIR放射体からの)IRエネルギーの両方を付加することによって、昇華ステップを、より迅速に完了させることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、昇華後、物質860は、エネルギー(熱及び/又はIR)が継続して付加されながら、低圧に維持される。いくつかの実施形態において、これは、物質860中の他の成分と化学的に結合している前記成分又は何らかの別の成分を除去するために行われる。一例として、このステップでは、水和水が除去される。
【0052】
該成分が昇華によって物質860から除去された後、棚320の周囲環境は大気圧にされ、物質860(及び容器840)は、貯蔵保存又は別の処理のために、プレート808から取り出される。
【0053】
理解されるように、構造800によって、プレート(例えば、プレート804又はプレート808)を使用して、該プレートの下方及び上方の両方に配置された物質を処理することができる。例えば、上述のように、第2層836は、IR放射体を有し、IR放射体の下方に配置された物質にエネルギーを付加する。しかしながら、第1層828は、第1層828の上方に配置された物質を冷却し、該物質中の液体を凍結して固体にし、また(例えば、チャネル824に熱流体を循環させることによって)該物質に熱エネルギーを付加するために、使用される。同様に、プレート808の第2層856は、第2層856の下方に配置された物質に対するIR放射体として使用され、また、上述のように、第1層848は、物質860を冷却し、該物質中の液体を凍結し、また昇華ステップにおいて熱エネルギーを付加するために、使用される。
【0054】
図8Bは、プレート構造800の他の実施形態の図である。この実施形態では、プレート808は、容器及び/又は凍結乾燥される物質を保持するように成形された特徴を有する。
図8Bに示されるように、プレート808は、容器840の形状の少なくとも一部に対応する縁部864を有する。縁部864によって、容器840がプレート808上に配置される箇所が画定される。また、いくつかの実施形態において、縁部864は、プレート804を用いて容器840を押圧する際にも有用である。縁部864によって、容器840がプレート804によって押圧される際に容器840を動かないようにすることができる。また、凍結ステップにおいては、凍結乾燥中の物質のための型枠として使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、縁部864は、容器の一部のみを囲む。例えば、縁部は、容器の2つの側面又は3つの側面に対して設けられてもよい。或いは、容器のある部分は囲み、他の部分は囲まないように不連続に設けてもよい。
【0056】
棚システム300におけるプレート構造800の使用に関する上記説明は、あくまで例示の目的で行われる。プレート構造800及び棚システム300を利用する凍結乾燥プロセスは、上記で説明されていないステップをさらに含んでもよい。上記説明は、全てを完全に説明するためのものではなく、あくまでプレート構造800のいくつかの特徴を例示する目的のものである。
【0057】
図9は、例えば、システム300における棚320(
図3及び
図4)の一部である、棚システムの一部として使用される2枚プレート構造900の第2実施形態を示す。構造900は、上述の構造800と同様の特徴をいくつか有する。構造900は、第1プレート904と第2プレート908とを有する。第1プレート904は、第2プレート908の面916に対向する面912を有する。2つの対向する面912、916によって、該面間に空間920が形成される。
【0058】
図9に示されるように、面916は、いくつかの形状(例えば、リッジ部960)を備える。これら形状を設けることによって、伝熱表面積及び/又は物質移動表面積が改善された表面が形成される。実施形態において、これは、マクロ構造を付与することによって実現される。例えば、リッジ部960、964は、凍結乾燥プロセスの凍結ステップにおいて、物質の表面に対してある構造を付与する。理論に制約されるものではないが、物質の伝熱表面積及び/又は物質移動表面積が改善されることによって、昇華ステップにおける(凍結乾燥されている物質の一成分の)昇華が促進されると考えられる。面912にはリッジ部964が、また面916にはリッジ部960が設けられた場合が図示されているが、面912、916は、伝熱特性及び物質移動特性が改善された表面積を与えるための他のタイプの構造を有してもよい。そのような構造の非制限的な例としては、面916が、同じサイズの又は異なるサイズの半球状凹部及び/又は半球状凸部の(ランダム又は一定)パターンを有してもよい。
【0059】
一実施形態において、上記形状のサイズ、形又は配置は、考慮すべき点によって決定される。例えば、面916上の形状に対しては、該形状は、凍結乾燥している物質への熱エネルギーの伝達に影響を与える因子(例えば、該物質が収容される容器の剛性)によって決定される。容器の剛性は、被凍結乾燥物質と面916との接触に影響を及ぼし、熱エネルギー伝達に影響を与えることになる。
【0060】
実施形態において、各プレート904、908とは同様の構造を有する。他の実施形態では、異なる構造を有してもよい。プレート904は、第1層928を有し、実施形態において、第1層928は、熱伝導性材料で作製される。第1層928は、熱流体の流路となるチャネル924を有する。熱流体を用いて、第1層928を加熱又は冷却することによって第1層928の温度が制御される。
【0061】
プレート904はさらに、第1層928と第2層936との間に境界932を有する。境界932は、断熱性材料を含み、これによって、第1層928の温度と第2層936の温度とを異ならせることができる。他の実施形態において、境界932は、上記の代わりに、又は上記に追加して、第1層928と第2層936との接着を助ける特性を有してもよい。
【0062】
一実施形態において、第2層936は、IR放射材料を備える。ある実施形態において、該材料は、赤外線(IR)エネルギーを放射する赤外線放射体である。このような実施形態では、第2層936は、該層936を加熱する埋め込み電極及びIRエネルギーを放射する面912を有する。IRエネルギーは、凍結乾燥プロセスのいくつかのステップを行う際に使用される。
図9の実施形態において示されるように、プレート908は、第1層948、第2層956、境界952、熱流体を循環させるチャネル944を有するように、プレート904と同様の構造を有する。
【0063】
図10は、
図5及び
図6に示されるシステム500の棚システム(例えば、棚520)の一部として用いられる2枚プレート構造1000の第3実施形態を示す。構造1000は、第1プレート1004と第2プレート1008とを有する。第1プレート1004は、第2プレート1008の面1016に対向する面1012を有する。2つの対向する面1012、1016によって、該面間に空間1020が形成される。該空間1020には、被凍結乾燥物質が配置される。
【0064】
実施形態において、プレート1004とプレート1008は、異なる構造を有する。プレート1004は、第1層1028を有し、実施形態において、第1層1028は、熱伝導性材料で作製される。第1層1028は、熱流体を循環させるチャネル1024を有する。プレート1004はさらに、第1層1028と第2層1036との間に境界1032を有する。境界1032は、断熱性材料を含み、これによって、第1層1028の温度と第2層1036の温度とを異ならせることができる。他の実施形態において、境界1032は、上記の代わりに、又は上記に追加して、第1層1028と第2層1036との接着を助ける特性を有してもよい。
【0065】
一実施形態において、第2層1036は、IR放射材料を備える。ある実施形態において、該材料は、赤外線(IR)エネルギーを放射する赤外線放射体である。このような実施形態では、第2層1036は、IRエネルギーを生成して放射するための埋め込み素子を有してもよい。例えば、第2層1036は、電極、加熱素子、センサ(例えば、熱電対)及び/又はそれらの組み合わせを有する。第2層1036によって放射されるIRエネルギーは、凍結乾燥プロセスのいくつかのステップを行う際に使用される。
【0066】
図10の実施形態に示されるように、プレート1008は、層1040を有する。実施形態において、層1040は、熱伝導性材料で作製される。層1040は、熱流体を循環させるための流路となるチャネル1044を有する。熱流体を用いて、第1層1040を加熱又は冷却することによって層1040及び面1016に配置された凍結乾燥される物質の温度が制御される。
【0067】
実施形態において、プレート構造1000は、棚システム500の周囲に低圧(大気圧より低い)環境を生成する真空システムのような他の構成部分を含む凍結乾燥装置の一部として、棚システム500(
図5及び
図6)において使用される。これら実施形態において、プレート1004、1008は、棚520の一部を構成し、棚動作システム512及び熱流体システム516に接続される。
【0068】
動作において、(棚520の一部として)プレート構造1000を有する棚システム500は、上記したプレート構造800を有する棚システム300と同様の動作を行う。棚520の一部としてのプレート構造1000は、システム500の少なくとも棚520の周囲に低圧(例えば、大気圧未満)環境を作り出すために使用される真空チャンバ内に配置される。そして、棚動作システム512は、空間1020を増大させ、(凍結乾燥される物質(例えば、生体液体)が入った)容器をプレート1008の面1016上に載置する。そして、システム512は、1以上のプレート1004及び/又はプレート1008を動かし、空間1020を減少させ、物質が入った容器を押圧し、略一様な厚みの物質の層を形成する。そして、熱流体システム516は、プレート1008のチャネル1044を通じて熱流体を循環させ、プレート1008の層1044ひいては被凍結乾燥物質を冷却する。
【0069】
上述のように、(理論に制約されるものではないが)凍結ステップにおいて、被凍結乾燥物質を押圧することによって、物質の断面をより一様にすることができると考えられる。より一様な断面にすることによって、それに続く昇華ステップにおいて、物質から一成分(例えば、氷)を除去する効率が増大すると考えられる。すなわち、厚みのばらつきを減らすことで、昇華において、物質中を昇華が進行していくレートを均一にすることができ、それによって、昇華ステップをより効率的にし、且つ可及的に短時間にすることができる。
【0070】
他の実施形態において、凍結ステップ中において、被凍結乾燥物質は、例えば、表面において、成形されるか又は形作られる。例えば、上述のように、物質上に、ある構造がインプリントされ、表面積が増大される(例えば、
図9参照)。他の実施形態では、物質は、棚の形状又は該物質を収容する容器の形状に基づいて成形される。
【0071】
面1016に配置された物質が凍結した後、(プレート構造1000を有する)棚520の周囲環境を低圧にして、該物質の少なくとも一成分の昇華を促進させる。そして、棚動作システム512は、昇華ステップに備えて、空間1020を増大させる。さらに、熱流体をチャネル1044に循環させ、該物質に熱エネルギーを加えて、該物質における一成分の昇華を促進させる。
【0072】
上述のように、いくつかの実施形態では、第2層1036は、IR放射体を備える層である。これらの実施形態では、IR放射体を活性化することで、IRエネルギーを面1016上の物質に向ける。IRエネルギーは、物質から一成分を昇華させるためのエネルギーをさらに追加する。これらの実施形態では、(チャネル1044を循環する熱流体からの)熱エネルギー及び(プレート1004の第2層1036におけるIR放射体からの)IRエネルギーの両方を付加することによって、昇華ステップを、より迅速に完了させることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、IRエネルギーのみを用いて、昇華ステップが行われる。上述のように、第2層1036のIR放射体は、凍結された物質にエネルギーを付加する。これら実施形態のいくつかでは、チャネル1044を循環する熱流体を用いて、凍結乾燥される物質が冷却される。理論に束縛されるものではないが、凍結乾燥プロセスにおいて、物質の昇華は、物質の表面において起こると考えられる。従って、熱エネルギーが、被凍結乾燥物質の底面に加えられる場合(例えば、
図10に示されるプレート構造を用いた場合)、該エネルギーは、昇華が起こる頂面に伝達されなければならない。しかしながら、熱は物質中を伝達する際、ある点において物質の温度を上昇させ、その結果、該点において、ある成分(例えば、氷)が溶融するため、熱エネルギーが物質の頂面に伝達することが、さらにいっそう困難となる。
【0074】
従って、いくつかの実施形態では、IRエネルギーのみを用いて、物質の昇華が行われる。さらに、溶融を回避するため、物質の底面から熱エネルギーを除去して物質を冷却し、溶融を回避する。例えば、
図10を参照すると、物質は、昇華のために、空間1020に配置される。第2層1036のIR放射体を用いて、IRエネルギーを物質に付与し、第2層1036に対向する物質の頂面から物質の一成分を昇華させる。起きる可能性のある溶融を回避するため、チャネル1044の熱流体を、エネルギーを取り除く(例えば、ヒートシンクとして機能するような)温度で循環させ、物質を低温維持し、溶融を回避する。これらは、
図10に示されるプレート構造を用いて行うプロセスの例である。他の実施形態では、
図10に示されるプレート構造を用いて、異なるステップを有するプロセスが行われてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、昇華後、物質は、エネルギー(熱及び/又はIR)が継続して付加されながら、低圧(例えば、大気圧未満)に維持される。いくつかの実施形態において、これは、物質中の他の成分と化学的に結合している前記成分又は何らかの別の成分を除去するために行われる。一例として、このステップでは、水和水が除去される。
【0076】
該成分(例えば、吸着成分)が昇華によって物質から除去された後、棚520の周囲環境は大気圧にされ、物質は、貯蔵保存又は引き続き行われる処理のために、プレート1008から取り出される。
【0077】
プレート構造800、900、1000の上記説明は、凍結乾燥装置又はシステム(例えば、装置100又は装置200)に該プレート構造を組み入れた実施形態に対して行われたが、本発明はそれに限定されない。他の実施形態において、プレート構造800、900、1000は、単一の装置において行われない凍結乾燥プロセスの一部において使用される異なる装置の一部であってもよい。非制限的な例として、上述の蒸発ステップ及び凍結ステップは、プレート構造800、900、1000の特徴のうち1以上の特徴を有する装置において行われてもよい。また、昇華ステップは、プレート構造800、900、1000の上記と同じ特徴又は異なる特徴を含む他の装置或いはそれらプレート構造の特徴を含まない他の装置において行われてもよい。
【0078】
他の例として、プロセスは、凍結ステップと昇華ステップのみを有するだけでもよい。凍結ステップは、プレート構造800、900、1000の1以上の特徴又は、例えば、凍結中に物質を成形する他の特徴を有する装置において実行されてもよい。昇華ステップは、プレート構造800、900、1000の上記特徴と同じ特徴又は異なる特徴を有する他の装置、又はプレート構造800、900、1000の特徴を含まない他の装置で行われてもよい。
【0079】
さらに別の例として、凍結ステップは、物質に対して、伝熱特性及び物質移動特性が改善された表面を形成する工程を有してもよく、そのような工程は、別の装置において実行されてもよい。これらの実施形態において、プレート構造900の特徴は、該装置において用いられる。前のステップ及び後続のステップは、1以上の異なる装置で行われてもよい。
【0080】
さらに、上記記載において、特定の特徴が説明されたが、他の実施形態は、本発明の範囲内であれば、他の構造、プロセス、ステップを含んでよい。非制限的な一例として、凍結乾燥プロセスは、無菌状態を維持する必要がある無菌物質を含む。これらの実施形態では、装置は、例えば、凍結乾燥プロセスにおいて用いられる棚システム、プレート又は他の構造の無菌状態を維持する特徴を有する。そのような無菌状態は、各種システムを用いて、維持される。そのようなシステムの非制限的な例としては、UV(紫外線)照射システム、マイクロ波システム、洗浄システム、蒸気システム、圧力システム、追加の真空システム、ろ過システム、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。一例として、UVランプ又はUV-LEDを有するUV照射システムを利用して、凍結乾燥装置又はシステムの構成部品を殺菌し、無菌状態を維持する必要のある凍結乾燥中の物質に対して無菌環境を維持する。
【0081】
図11は、凍結乾燥のための物質を収容するために使用される容器1100A、1100Bの一実施形態を示す。
図11に示されるように、容器1100A、1100Bは、装置100又は装置200のような凍結乾燥装置の棚システムの一部であるプレート1104、1108上に位置付けられる。
【0082】
図12は、容器1100A、1100Bと同様の特徴を有する容器1200の分解図である。容器1200は、第1壁1204、第2壁1208、及び3つのポートコネクタ1212、1216、1220を有する。
図12に示されるように、3つのポートコネクタ1212、1216、1220は、第1壁1204と第2壁1208との間に位置付けられる。ポートコネクタは、容器1200に被凍結乾燥物質を充填するため、容器1200に液体を加えて凍結乾燥された物質を元に戻すため、及び/又は容器1200から物質(例えば、凍結乾燥された物質を元に戻したもの)を取り出すため、他の容器に接続する際に用いられる。ポートコネクタ1212、1216、1220は、第1壁1204と第2壁1208との間に位置付けられなくてもよい。例えば、ポートコネクタ1212、1216、1220のうち1以上のポートを、壁1204、1208のうちの一方に統合してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1壁1204は、少なくともいくつかのガスに対して透過性を示す材料から作製される。例えば、第1壁1204は、水蒸気に対して高い透過性を示し、液体水に対しては低浸透性(すなわち、防水性)を示す材料から作製される。さらに、他の実施形態では、第1壁1204は、生体適合性材料から作製される。第1壁1204に使用される材料の非制限的な例として、フラッシュスパン(flashspun)高密度ポリエチレン(HDPE)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。一実施形態において、第1壁1204は、フラッシュスパンHDPEから作製された繊維を含む不織布を有する。他の実施形態では、第1壁1204は、ポリエチレン共重合体、ビニル共重合体、アクリル共重合体、ポリプロピレン共重合体、アミド共重合体のような共重合体を基体(例えば、織布又は不織布)上に形成(cast)することで、作製される。ある特定の実施形態では、第1壁1204は、ナイロン不織布にアクリル共重合体を形成することで、作製される。
【0084】
第1壁1204は、特定のプロセスによって製造される材料から作製されてもよい。例えば、上述のように該材料は、制限されないが、フラッシュスパン法、スパンボンド法、乾式法、湿式法、メルトブロー法、スパンレース法等を含む紡糸プロセスによって製造される。これらプロセスは不織布を製造する。或いは、該プロセスを用いて、繊維が作製され、該繊維は、例えば、引き伸ばしや編み織りによって、さらに処理される。該材料の他の例として、織布や不織布のような基体に形成される重合体や共重合体が挙げられる。第1壁1204の材料を作製する際、これらのプロセスうちの任意のプロセスを用いて、所望の特性、ガス透過性、引張強度、防水性等を有する第1壁1204の材料を作製することができる。
【0085】
ある実施形態では、第1壁1204は、約15metric permより大きい(以下では特に断りのない限り、permは、metric permである)、又は約20permより大きい、又は約25permより大きい、又は約30permより大きい、又は約35permより大きい水蒸気透過度を有する。他の実施形態では、第1壁1204の水蒸気透過度は、約50permより大きい、又は約75permより大きい、又は約100permより大きい、又は約150permより大きい、又は約200permより大きい。いくつかの実施形態において、第1層1204は、約10permから約70permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約15permから約65permの間、又は約20permから約60permの間にある。他の実施形態において、第1層1204は、約50permから約1000permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約100permから約750permとの間、又は約200permから約500permとの間にある。また、いくつかの実施形態では、第1層1204は、約100cmより大きい、又は約150cmより大きい、又は約200cmより大きい、又は約250cmより大きい耐水度(すなわち、静水頭)を有する。いくつかの実施形態において、第1層1204は、約50cmから約400cmの範囲に耐水度を有し、例えば、約100cmから約350cmとの間、又は約150cmから約300cmとの間にある。いくつかの実施形態において、第1層1204は、上記の水蒸気透過度のいずれかと上記の耐水度のいずれかとの組み合わせを有する。いくつかの実施形態において、第1壁1204は、紡糸プロセスによって製造されたポリマー繊維から形成された不織布を含む材料から作製される。他の実施形態では、第1壁1204は、不織布に形成された共重合体を含む材料から作製される。これらの材料は、上述の水蒸気透過度及び耐水度を有するように製造される。
【0086】
ある実施形態において、壁1208は、重合体を含む任意の適切な材料から作製される。いくつかの実施形態では、壁1208は、透明材料又は透光性材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。透明材料又は透光性材料は、容器1200内の物質に対して、光増感剤及び照明を用いる病原体減少プロセスを行う実施形態において有用である。これらの実施形態では、容器1200を、照射用容器として使用することができる。ある実施形態では、壁1208は、凍結乾燥プロセスに特有の温度及び圧力において、生体適合性である。ある実施形態では、壁1208は、ポリオレフィン材料を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、壁1208は、容器1200がバッグの場合、単一シートである。他の実施形態では、壁1208は、容器1200に収容される材料に対して深さを提供する。これらの実施形態において、壁1208は、トレイの形態をとる。
【0088】
図13は、容積1240を示す容器1200の断面図である。
図13に示されるように、壁1204は、1以上の接合部1224において、壁1208に接合される。従って、壁1204、1208の上述の特性に加えて、壁は、互いに接合されて容器1200を形成することができるような互いに親和性のある材料で作製される。壁1204、1208は、1以上の適当な技術を用いて互いに接合される。そのような技術の非制限的な例としては、ヒートシール、超音波溶着、RF溶着、溶剤接着、レーザ溶着、接着剤接合、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
一実施形態において、容器1200は、
図13に示されるように、容積1240内に保持される生体流体(血漿1244、例えば、ヒト血漿)を凍結乾燥するために使用される。この実施形態では、壁1204は、水蒸気透過度が約35permより大きく、耐水度が約100cmよりも大きい材料から作製される。これにより、氷の昇華において、水蒸気は、層1204を容易に通り抜けると同時に、液体血漿は、容積1240から漏れることがない。また、防水性は、水性溶液により血漿を元に戻す際に有用である。
【0090】
容器1200の他の特徴に加えて、容器は、被凍結乾燥物質を無菌に保つことができる。すなわち、壁1204及び壁1208の両方とも、病原体、細菌、又はその他の微生物の障壁となり、容器1200内の材料の汚染を防ぐ。この特徴は、被凍結乾燥物質が後で患者に注入される生体液体である場合に、特に有用である。容器1200内を密閉された無菌環境に維持できることにより、凍結乾燥中に物質環境の無菌状態を確保する必要がなくなる。すなわち、凍結乾燥プロセスにおいて、各種ステップを行う前に、使用する装置に対して滅菌処理する必要がなくなる。これにより、クリーンルーム環境において使用される高価な真空システム、フィルタシステム、又はその他のシステムが必要なくなる。これらの実施形態では、容器1200は、凍結乾燥及びさらなる処理(例えば、貯蔵、再水和(水を加えて元に戻す処理)、再水和した物質の利用)において、閉鎖系が維持される。
【0091】
図14は、例えば、血漿1444(例えば、ヒト血漿)のような生体液体を収容する容積1440を有する3つの壁で構成された容器1400の一実施形態の断面図である。
図14に示されるように、容器1400は、第3壁1404、第1壁1408、及び第2壁1412を有する。
図14に示されるように、第3壁1404は、第1壁1408の上方且つ近傍に位置付けられる。ある実施形態において、第3壁1404は、他の機能に加えて、第1壁1408のための保護層として使用される。第3壁1404を設けることで、容器1400をハンドリングする際に発生するであろう第1壁1408に対する損傷が防止される。さらに、手や他の物体が第1壁1408に直接接触することも回避される。
【0092】
ある実施形態において、第3壁1404及び第2壁1412は、同様の材料から作製される。ある実施形態では、該材料は、壁1208に対して説明された材料と同じである。第3壁1404及び第2壁1412は、高分子を含む任意の適当な材料で作製されてよい。いくつかの実施形態において、第3壁1404及び第2壁1412は、透明材料又は透光性材料から作製される。このような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。透明材料又は透光性材料は、容器1400内の物質に対して、光増感剤及び照明を用いる病原体減少プロセスを行う実施形態において有用である。これらの実施形態では、容器1400を、照射用容器として使用することができる。ある実施形態では、壁1404は、凍結乾燥プロセスに特有の温度及び圧力において、生体適合性である。ある実施形態では、第3壁1404及び壁1412は、ポリオレフィン材料を含む。ある実施形態では、壁1404、1408は、異なる材料で作製される。
【0093】
いくつかの実施形態において、第1壁1408は、少なくともいくつかのガスに対して透過性を示す材料から作製される。例えば、第1壁1408は、水蒸気に対して高い透過性を示し、液体水に対しては低浸透性(すなわち、防水性)を示す材料から作製される。さらに、他の実施形態では、第1壁1408は、生体適合性材料から作製される。第1壁1408に使用される材料の例として、フラッシュスパン(flashspun)高密度ポリエチレン(HDPE)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。一実施形態において、第1壁1408は、フラッシュスパンHDPEから作製された繊維を含む不織布を有する。他の実施形態では、第1壁1408は、ポリエチレン共重合体、ビニル共重合体、アクリル共重合体、ポリプロピレン共重合体、アミド共重合体のような共重合体を基体(例えば、織布又は不織布)上に形成することで、作製される。一実施形態では、第1壁1408は、ナイロン不織布にアクリル共重合体を形成することで、作製される。
【0094】
ある実施形態では、第1壁1408は、約15permより大きい、又は約20permより大きい、又は約25permより大きい、又は約30permより大きい、又は約35permより大きい水蒸気透過度を有する。いくつかの実施形態において、第1壁1408は、約10permから約700permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約20permから約650permの間、又は約30permから約600permの間にある。また、いくつかの実施形態では、第1壁1408は、約100cmより大きい、又は約150cmより大きい、又は約200cmより大きい、又は約250cmより大きい耐水度(すなわち、静水頭)を有する。いくつかの実施形態において、第1壁1408は、約50cmから約400cmの範囲に耐水度を有し、例えば、約100cmから約350cmとの間、又は約150cmから約300cmとの間にある。いくつかの実施形態において、第1壁1408は、上記の水蒸気透過度のいずれかと上記の耐水度のいずれかとの組み合わせを有する。
【0095】
図14に示されるように、第1壁1408は、1以上の接合部1424において、壁1404と壁1412の両方に取り付けられる。従って、他の特性に加えて、壁は、互いに接合されて容器1400を形成することができるような互いに親和性のある材料で作製される。壁1404、1408、1412は、1以上の適当な技術を用いて互いに接合される。そのような技術の非制限的な例としては、ヒートシール、超音波溶着、RF溶着、溶剤接着、レーザ溶着、接着剤接合等が挙げられる。
【0096】
一実施形態において、容器1400は、血漿1444のような生体流体を凍結乾燥するために使用される。この実施形態では、壁1408は、水蒸気透過度が約75permより大きく、耐水度が約100cmよりも大きい材料から作製される。これにより、昇華ステップ(例えば、氷の昇華)において、水蒸気は、壁1408を通り抜けて容積1448に入る。壁1404は、1以上の開口を有する。これによって、ガス(例えば、水蒸気)は、容積1448から外環境へ抜けることができる。壁1408の防水性は、容積1448において凝縮するであろう水蒸気が、容積1440内へと漏れ出して凍結乾燥された血漿が再水和されることを防止する。
【0097】
図15は、例えば、血漿1544のような生体流体を収容する容積1540を有する3つの壁で構成された容器1500の断面図である。
図15に示されるように、容器1500は、第3壁1528、第1壁1504、及び第2壁1508を有する。
図15に示されるように、第3壁1528は、第1壁1504の上方且つ近傍に位置付けられる。
【0098】
ある実施形態において、第2壁1508は、壁1208(
図12及び
図13)に対して説明された材料と同様の材料から作製される。第2壁1508は、高分子を含む任意の適当な材料で作製されてよい。いくつかの実施形態において、第2壁1508は、透明材料又は透光性材料から作製される。このような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。透明材料又は透光性材料は、容器1500内の物質に対して、光増感剤及び照明を用いる病原体減少プロセスを行う実施形態において有用である。これらの実施形態では、容器1500を、照射用容器として使用することができる。ある実施形態では、第2壁1508は、凍結乾燥プロセスに特有の温度及び圧力において、生体適合性である。ある実施形態では、第3壁1528は、ポリオレフィン材料を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、少なくともいくつかのガスに対して透過性を示す材料から作製される。例えば、第3壁1528及び第1壁1504は、水蒸気に対して高い透過性を示し、液体水に対しては低浸透性(すなわち、防水性)を示す材料から作製される。さらに、他の実施形態では、第3壁1528及び第1壁1504は、生体適合性材料から作製されてもよい。第3壁1528及び第1壁1504に使用される材料の例として、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。一実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、フラッシュスパンHDPEから作製された繊維を含む不織布を有する。他の実施形態では、第3壁1528は、不織布に形成された重合体を有する。
【0100】
ある実施形態では、第3壁1528及び第1壁1504は、約45permより大きい、又は約60permより大きい、又は約75permより大きい、又は約90permより大きい、又は約105permより大きい水蒸気透過度を有する。いくつかの実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、約50permから約900permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約100permから約850permの間、又は約150permから約800permの間にある。また、いくつかの実施形態では、第3壁1528及び第1壁1504は、約75cmより大きい、又は約125cmより大きい、又は約175cmより大きい、又は約225cmより大きい耐水度(すなわち、静水頭)を有する。いくつかの実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、約25cmから約500cmの範囲に耐水度を有し、例えば、約50cmから約400cmとの間、又は約100cmから約300cmとの間にある。いくつかの実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、上記の水蒸気透過度のいずれかと上記の耐水度のいずれかとの組み合わせを有する。
【0101】
図15に示されるように、第1壁1504(及びいくつかの実施形態では、第3壁1528)は、1以上の接合部1524において、壁1508に接合される。従って、他の特性に加えて、第1壁1504及び第2壁1508は、互いに接合されて容器1500を形成することができるような互いに親和性のある材料で作製される。壁1528、1504、1508は、1以上の適当な技術を用いて、各種を組み合わせて、互いに接合される。そのような技術の非制限的な例としては、ヒートシール、超音波溶着、RF溶着、溶剤接着、レーザ溶着、接着剤接合及び/又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、第3壁1528及び第1壁1504は、同じ又は同様の材料及び/又は同様の特性を有する材料から作製される。そのような特性の非制限的な例としては、厚さ、引き裂き強度、靱性、水蒸気透過度、耐水度等が挙げられる。しかしながら、他の実施形態において、第3壁1528と第1壁1504とは、特性が異なってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、容器1500の頑健性をさらに付加するため、第3壁1528は、第1壁1504よりも厚くてもよい。他の実施形態において、第3壁1528は、より高い水蒸気透過度を有してもよい。この場合、第1壁1504を通った水蒸気は、より容易に第3壁1528を通り抜けて周囲環境に出ていける。さらに他の例では、第3壁1528は、より高い防水性を有してもよいし、微生物に対して、より効果的な障壁となってもよい。その場合、水が容積1540に滲み出ることが防止され、容積1540の無菌状態が維持される。
【0103】
図示されていないが、ある実施形態において、容器1500は、第3壁1528の上方に第4壁を有してもよい。第4壁は、追加の保護層として設けられる。容器1400の第3層1404と同様に、第4層は、容器1500をハンドリングする際に発生するであろう第3壁1528への損傷を防止し、さらに、手又は他の物体が第3壁1528に直接接触することを回避する。
【0104】
図16~
図17Cは、凍結乾燥のための材料及び凍結乾燥後の材料を収容・貯蔵するために使用される容器1600の実施形態を示す。
図16は、容器1600の正面図である。
図17A~
図17Cは、(
図16に示される)AA線に沿った容器1600の種々の断面図である。いくつかの実施形態において、容器1600は、全血又は血液成分のような生体流体を凍結乾燥させるために使用される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらに限定されない。いかなる物質、液体、固体に対しても、容器1600の実施形態を用いて、凍結乾燥及び貯蔵を実施してよい。
【0105】
図16に示されるように、容器1600は、第1室1604及び第2室1608を有する。以下で説明するように、
図16~
図17Cに示される実施形態において、第1室1604は、物資の凍結乾燥において使用され、第2室1608は、凍結乾燥された物質を再水和して使用に供するまで該物質を収容・貯蔵するために使用される。他の実施形態では、凍結乾燥中において物質を収容するための第1室及び凍結乾燥後に物質を収容するための第2室を備える異なる構造、設計又は構成部品であってもよい。
【0106】
第1室1604は、ポート1612を有する。血液又は血液成分(例えば、ヒト血漿)のような物質は、該ポート1612を介して、第1室1604に入る。第2室1608は、ポート1616を有する。水和水は、該ポート1616を介して、第2室1608に入る。第2室1608はさらに、ポート1620を有する。再水和された物質は、該ポート1620を介して、第2室1608から出ていく(例えば、血漿のような再水和された血液成分がポート1620を介して第2室から出て、患者へ注入される)。
【0107】
図17A~
図17Cを参照すると、第1室1604は、第1壁1624及び第2壁1628を有する。第2壁は、第1壁に接合され、第1室1604の内部容積1632が構成される。上述したように、第1室1604は、凍結乾燥中に物質を収納するために使用される。凍結乾燥のための物質は、容積1632内に収納される。
【0108】
ある実施形態において、第1壁1624は、可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態では、第1壁1624は、透明又は透光性の高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
図16に示されるように、第2壁1628は、第1壁1624のガス透過度よりも大きいガス透過度を有する領域1656を有する。第1室1604は、凍結乾燥中に物質を収納するために使用されるので、凍結乾燥中に、ガス(例えば、水蒸気)を容積1632から外に逃がすために、領域1656が設けられる。
【0110】
ある実施形態において、領域1656は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、領域1656は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0111】
いくつかの実施形態において、領域1656は、例えば、壁1628の半分よりも大きい部分を占めるように、
図16に示されるより大きくてもよい。他の実施形態では、壁1628全体が、水蒸気のようなガスに対して透過性を示す材料から作製される。このような実施形態では、領域1656はなく、代わりに、壁1628全体が、ガス(例えば、水蒸気)を容積1632から外へ逃がすための領域となる。さらに他の実施形態では、壁1628の一部として、同じサイズ又は異なるサイズの複数の領域1656を設けてもよい。
【0112】
壁1628(及びある実施形態では、壁1624も)の残りの部分は、任意の適当な材料から作製される。ある実施形態では、壁1628及び/又は壁1624は、可撓性高分子材料から作製される。壁1628の一部及び壁1624に使用される可撓性高分子材料の例としては、制限はされないが、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
上述のように、容器1600は、第2室1608を有する。第2室1608は、第2壁1640に接合されて内部容積1644を画定する第1壁1636を有する。ある実施形態において、第2室1608は、凍結乾燥後に物質(例えば、全血又は血液成分)を貯蔵するように構成される。従って、壁1636、1640は、頑強で且つ長い貯蔵にも耐え、またかなりのハンドリングにも耐えうるような可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁1636、1640は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
第1室及び第2室1604、1608に加えて、容器1600は、
図17A、
図17B、
図17Cにそれぞれ1648A、1648B、1648Cとして示されるように経路1648を有する。容積1632と容積1644は、経路1648によって、連通(例えば、流体連通)するが、また、シール1652によって、容積1632と容積1644が連通しないようにシールもされる。
【0115】
図17Aは、シール1652によってシールされた経路1648Aを示す。この実施形態では、容積1632と容積1644間に連通(例えば、流体連通)はない。この実施形態は、室1604内の物質が凍結乾燥中の場合に使用される。シール1652は、物質(例えば、液体又は固体)が容積1644に入らないようにする。物質を容積1632に保持することによって、凍結乾燥プロセスが、より効率的になる。何故なら、(容積1632を画定する)壁1628には、ガス(例えば、水蒸気)を逃がすための領域1656が設けられているからである。
【0116】
シール1652は、任意の適当な材料、機構又はプロセスを用いて、形成される。シール1652として使用されるシールの非制限的な例としては、溶着部、接着部、破断可能部、クランプ、接合部、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。シール1652の形成としては、機械的締め、溶着(例えば、ラジオ周波数、超音波、誘導、レーザ等の溶着)、ヒートシール、接着剤による接着、又はその他の手段が挙げられる。ある実施形態では、シール1652は、開放されることで、容積1632と容積1644との連通が可能となる。
【0117】
図17Bは、容積1632と容積1644との連通を可能にするように開けられた経路1648Bを示す。同様に、
図17Cは、容積1632と容積1644との連通を可能にするように開けられた状態にある経路1648Cを示す。
図17B及び
図17Cは、経路1648の開放量が異なる2つの異なる実施形態を示す。開放量は異なるが、2つの実施形態とも、物質は容積1632から容積1644へ流れることができる。シールの種類に応じて、経路1648は異なる開放量で開放される。
【0118】
図17B及び
図17Cに示される実施形態は、凍結乾燥プロセスが終了した後に使用される。容積1632内の凍結乾燥された物質は、経路1648B又は経路1648Cを介して、容積1644に移送される。物質の移送後、経路1648B又は経路1648Cは、再度シールされ、物質が容積1632に戻らないようにされる。いくつかの実施形態では、第1室1604は、凍結乾燥された物質が容積1644へ移送され且つ経路1648B又は経路1648Cがシールされた後に取り外されてもよい。一例として、シール1652は、壁1636と壁1640とを溶着接合することによって形成され、さらに、壁1624と壁1628を切断することで、第1室1604が第2室1608から切り離される。
【0119】
以下では、全血又は血液成分(例えば、血漿)を凍結乾燥し貯蔵するための本発明の実施形態に係るプロセスが説明される。しかしながら、本発明はそれに限定されず、他の物質を凍結乾燥し貯蔵するために使用されてもよい。以下の説明では、
図16~
図17Cに示される容器1600の特定の特徴について言及されるが、本発明は、ある特定の構造によって実施されるということに限定されない。他の実施形態では、異なる特徴が利用されてもよい。
【0120】
ある実施形態において、液体状態の血漿分画製剤が、容器1600のような容器に入れられる。詳細には、血漿分画製剤は、ポート1612を介して、室1604に充填される。室1604は、無菌バリアを提供し、また、水蒸気を壁(例えば、領域1656)を介して逃がしながら、血漿の凍結乾燥を可能にする。
【0121】
液体血漿が室1604に充填された後、容器1600は、装置100(
図1)や装置200(
図2)のような、物質を凍結乾燥するための装置に配置される。そして、液体血漿に対して、凍結乾燥プロセスが行われる。
【0122】
血漿の凍結乾燥中は、シール1652のようなシールは経路1648に存在し、室1604の容積と室1608の容積との連通を妨げている。すなわち、容積1632と容積1644との間に流体連通はない。
【0123】
血漿の凍結乾燥後、容器1600は、凍結乾燥装置から取り外される。シール1652が取り外され/開放されることによって、経路1648を通じた連通が許可される。凍結乾燥された血漿は、容積1632から容積1644に移送される。そして、シール1652は、閉じられる或いは再度シールされる。いくつかの実施形態において、経路1648の再シールの後、又は、経路1648の再シール工程の一部として、室1604は室1608から取り外される。
【0124】
いくつかの実施形態において、室1608は、頑強に構成され、また、かなりのハンドリング(例えば、軍事環境下におけるバックパックによる搬送、傷病者輸送機(ヘリコプターや車両)のような移動しながらの使用におけるハンドリング)における過酷さに耐えられるような材料から作製される。従って、使用に供されるまで(例えば、再水和して患者に注入される状況になるまで)比較的長い期間にわたって、凍結乾燥された血漿は室1608に貯蔵される。
【0125】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥された血漿が使用される前、再水和液体は、ポート1616を通じて、室1608に移送される。血漿を水和するためにしばらくの時間の経過後(例えば、5分未満)、再水和された血漿は、ポート1620を介して、患者に注入される。
【0126】
容器1600を用いて、血漿を凍結乾燥、貯蔵及び輸液する実施形態の場合、2つの室1604、1608及び容器のその他の部分は、充填、凍結乾燥、室間の移送、貯蔵、及び使用のプロセスの全体にわたって、無菌状態に維持され、閉じられたシステムとして維持される。
【0127】
図18A及び
図18Bは、本発明の実施形態に係る他の容器1800の正面図である。
図18A及び
図18Bに示される実施形態では、容器1800は、内部容積1808を有する単一の室(チャンバー)1804を有する。容器1800は、第1部分1804A(例えば、上部)と第2部分1804B(例えば、底部)とを有する。
【0128】
容器1800は、第1壁(図示せず)と第2壁1828とを有する。第2壁1828と第1壁とが接合されて、室1804の内部容積1808を構成する。ある実施形態において、第1壁は、可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、第1壁は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0129】
図18Aに示されるように、壁1828の上部は、水蒸気のようなガスを容積1808から逃がすことができるガス透過性領域1856を有する。壁1828の底部には、ガス透過領域は設けられない。
【0130】
領域1856は、第1壁の透過度及び第2壁1828の残りの部分の透過度よりも大きいガス透過度を有する。領域1856は、凍結乾燥中にガス(例えば、水蒸気)を容積1808から逃がすために、設けられる。
【0131】
ある実施形態において、領域1856は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく被凍結乾燥物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、領域1856は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。壁1828の残りの部分は、任意の好適な材料から作製される。ある実施形態では、第2壁1828の一部は、可撓性高分子材料から作製される。壁1828の一部に使用される可撓性高分子材料の例としては、制限はされないが、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0132】
容器1800を使用する実施形態の場合、被凍結乾燥物質は、ポート1816及び/又はポート1820のうち1以上のポートを介して、容積1808内に移送される。該物質が凍結乾燥された後、凍結乾燥された物質は、手動又は自動で(例えば、機械システムによって)、室1804内に動かされ、その結果、凍結乾燥された物質の大部分は、底部1804Bに配置される。凍結乾燥された物質が底部1804Bに移動された後、底部1804Bは、
図18Bに示されるように、上部1804Aから切り離される。
【0133】
上部1804Aと底部1804Bとの切り離し工程の一部として、又は切り離し工程の前に、シール1860を、底部1804Bの上端に形成する。シール1860によって、凍結乾燥された物質は、底部1804Bを上部1804Aから切り離すプロセス全体にわたって、無菌環境に維持される。ある実施形態において、シール1860は、任意の好適なシール装置によって、形成される。シール1860を形成し、底部1804Bを上部1804Aから切り離すために使用される装置の非制限的な例としては、限定はされないが、超音波溶着装置、レーザ溶着装置、RF溶着装置、高周波溶着装置、誘導溶着装置、ホットバー溶着装置、パルス溶着装置、ホットガス溶着装置、赤外線溶着装置、及び/又はマイクロ波溶着装置等が挙げられる。
【0134】
いくつかの実施形態において、底部1804Bは、頑強に構成され、また、かなりのハンドリング(例えば、軍事環境下におけるバックパックによる搬送、傷病者輸送機(ヘリコプターや車両)のような移動しながらの使用におけるハンドリング)における過酷さに耐えられるように構成される。従って、使用に供されるまで、凍結乾燥された物質は底部1804Bに貯蔵される。
【0135】
いくつかの実施形態において、底部1804Bの凍結乾燥された物質が使用される前、再水和液体は、1以上のポート1816及び/又はポート1820を通じて、底部1804Bに移送される。物質を水和するためにしばらくの時間の経過後、該物質は、1以上のポート1816及び/又はポート1820を介して、底部1804Bから移送されて使用される。
【0136】
図19A~
図19Cは、凍結乾燥の物質を収容する及び凍結乾燥後の物質を貯蔵するために使用される容器1900の他の実施形態の側面図である。容器1900は、第1室1904と第2室1908とを有する。以下で記載されるように、ある実施形態では、第1室1904は、物質の凍結乾燥中に使用され、第2室1908は、凍結乾燥後に凍結乾燥された物質を貯蔵するために使用される。
【0137】
第1室1904は、ポート1912を有する。該ポート1912を介して、物質(例えば、血漿、全血、他の血液成分)が第1室1904に投入される。さらに、第1室1904は、側壁1924を介して第2壁1920に接合されることによって第1室1904の内部容積を画定する第1壁1916を有する。いくつかの実施形態において、側壁1924又はその一部は、第1壁1916又は第2壁1920の一部であってもよい。例えば、ある実施形態において、第1壁1916及び/又は第2壁1920は、折り曲げることによって側壁1924又はその一部を構成できるような大きさを有する1枚のシートから形成されてもよい。他の実施形態において、壁1920は、側壁1924を有するトレイの形状であってもよい。ある実施形態において、側壁1924は、第1壁1916と第2壁1920との間を、第1壁1916及び第2壁1920の周囲に沿って、延在する。
【0138】
図19A及び
図19Bに示されるように、側壁1924は、折り目1928A、1928B、1928Cを有する。これら折り目によって、側壁1924を折り畳んだり拡げたりすることができる。
図19Aは、折り畳まれて室1904の内部容積が小さくなった状態の側壁1924を示す。
図19Bは、拡げられて室1904の内部容積が大きくなった状態の側壁1924を示す。
【0139】
図19Bに示されるように、室1904は、経路1932を介して室1908に接続される。
図19Aでは、クリップ1936は、経路1932を閉じて及び/又はシールして、室1904と室1908との間の連通を回避するように位置付けられている。
【0140】
室1904に戻って、壁1920及び/又は側壁1924は、可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁1920及び/又は側壁1924は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0141】
壁1916は、ガス透過性の材料を含む。すなわち、壁1916は、壁1920のガス(例えば、水蒸気)の透過度よりも大きい透過度を有する材料を含む。室1904は、凍結乾燥中に物質を収容するために使用されるので、凍結乾燥中にガス(例えば、水蒸気)が室1904から逃げることができるようにするため、透過性の材料が用いられる。ある実施形態において、壁1916全体をガス透過性材料から作製してもよい。他の実施形態において、容器1800(
図18A)の壁1828と同様に、壁1916の一部の領域のみが透過性材料を含んでもよい。
【0142】
壁1916に使用される透過性材料は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁1916は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0143】
ある実施形態では、壁1916は、約65permより大きい、又は約85permより大きい、又は約105permより大きい、又は約125permより大きい、又は約145permより大きい水蒸気透過度を有する。いくつかの実施形態において、壁1916は、約70permから約825permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約95permから約775permの間、又は約120permから約725permの間にある。また、いくつかの実施形態では、壁1916は、約70cmより大きい、又は約85cmより大きい、又は約100cmより大きい、又は約115cmより大きい耐水度(すなわち、静水頭)を有する。いくつかの実施形態において、壁1916は、約20cmから約525cmの範囲に耐水度を有し、例えば、約25cmから約500cmとの間、又は約30cmから約475cmとの間にある。いくつかの実施形態において、壁1916は、上記の水蒸気透過度のいずれかと上記の耐水度のいずれかとの組み合わせを有する。
【0144】
壁1916の一部のみが透過性材料である実施形態の場合、残りの部分は、任意の適当な材料から作製される。壁1916の一部に使用される可撓性高分子材料の例としては、限定はされないが、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0145】
上述のように、容器1900は、室1908を有する。該室1908は、第1壁1940を有する。第1壁1940は、第2壁1944と接合されて、室1908(
図19B及び
図19C参照)の内部容積を画定する。ある実施形態において、室1908は、凍結乾燥後、物質(例えば、全血や血液成分)を貯蔵するように構成される。従って、壁1940、1944は、頑強で且つ長い貯蔵にも耐え、またかなりのハンドリングにも耐えうるような可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁1940、1944は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0146】
室1908はさらに、ポート1948を有する。ある実施形態において、ポート1948は、室1908から物質を取り出すために使用される。一実施形態において、室1908内の凍結乾燥された物質は、室1908において再水和されて、ポート1948を介して室1908から取り出される。一例として、凍結乾燥された血漿は、室1908内に貯蔵される。凍結乾燥された血漿に再水和液体を付加した後、再水和された血漿は、ポート1948を介して、患者へ注入される。他の実施形態において、室1908は、1より大きい数のポートを有する。このような実施形態の場合、ポート1948は、凍結乾燥された血漿を再水和するために再水和流体を投入するために使用され、他のポートは、患者に再水和された血漿を注入するために使用される。
【0147】
図19Aでは、室1908は巻かれており、そのため、
図19Bに示されるような拡げた状態と同じような空間を取らない。室1908を巻くことができることによって(
図19A)、例えば、凍結乾燥装置(例えば、100又は200)において、容器1900が棚を占めるスペースを、小さくすることができる。室1908を巻くことができない場合、容器1900は、追加で物質を凍結乾燥するために使うことができる棚スペースを占めることになってしまう。
【0148】
室1904、1908に加えて、容器1900はさらに経路1932を有する。経路1932によって、容積1904と容積1908との連通(例えば、流体連通)が可能になると同時に、シールによってシールされることで、容積1904と容積1908との間の連通を閉塞することもできる。
【0149】
図19Aは、クリップ1936によってシールされた経路1932を示す。この実施形態において、容積1904と容積1908との間の連通(例えば、流体連通)はない。この実施形態は、室1904の物質が凍結乾燥中の際に、使用される。クリップ1936によって、室1904にある物質(例えば、液体や固体)が、室1908の容積内に入ることが防止される。物質を容積1904に保持することにより、凍結乾燥プロセスが、より効率的になる。何故なら、壁1916は、ガス(例えば、水蒸気)を逃がすことが可能なガス透過性材料を含むからである。物質の室1908への移動が可能である場合、あらゆるガスは室1904へ移動して壁1916を介して逃げなければならなくなり、そのような状況は、凍結乾燥プロセスを引き延ばすことになる。
【0150】
他の実施形態において、クリップ1936の代わりに、任意の適切な材料、機構、又はプロセスを用いて、室1904と室1908との間にシールを形成してもよい。クリップ1936の代わりに使用されるシールの非制限的な例としては、溶着部、接着部、破断可能部、接合部、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。室1904と室1908との間のシールの形成としては、機械的締め、溶着(例えば、ラジオ周波数、超音波、誘導、レーザ等の溶着)、ヒートシール、接着剤による接着、及び/又はその他の手段が挙げられる。
【0151】
図19Bは、クリップ1936が取り外され、経路1932が開放され、容積1904と容積1908との間の連通が可能になった状態を示す。物質が室1904において凍結乾燥された後、クリップ1936は取り外されて、経路1932が開放される。経路1932が開放された状態において、凍結乾燥された物質は、長期貯蔵のため、室1904から室1908へ移送される。
【0152】
凍結乾燥された物質が室1908へ移送された後、室1904と室1908は再度シールされ、2つの室の間の連通が閉塞される。
図19Cに示されるように、室1904は、室1908をシール1952でシールした状態で、室1908から分離される。そして、室1908は、凍結乾燥された物質を、比較的長い期間(例えば、約2年)において貯蔵するために使用される。
【0153】
容器1900を使用する場合、被凍結乾燥物質(一実施形態において、該物質は血漿)は、ポート1912を介して、容積1904に移送される。血漿を室1904に投入した結果、側壁1924は、折り目1928A~1928Cによって、室1904の容積が拡げられる(
図19Bの室1904を参照)。室1908はまだ巻かれた状態にある(
図19Aの室1908を参照)場合は、容器1900は、装置100(
図1)や装置(
図2)のような凍結乾燥装置に配置され、血漿が凍結乾燥される。上述のように、凍結乾燥プロセスは、物質及び容器1900を大気圧より低い第1圧力の環境にさらすステップや、凍結ステップや、物質の一成分を昇華させるステップを有する。昇華プロセス中に発生するガスは、壁1916のガス透過性材料を通って、室1904から逃げる。
【0154】
物質が凍結乾燥された後、凍結乾燥された物質は、手動又は自動で(例えば、機械システムによって)、室1904から室1908に動かされる。詳細には、まずクリップ1936を取り外して、室1904と室1908との間を連通させる。そして、凍結乾燥された物質を室1908へ移動させる。室1908がシールされ、室1904は、
図19Cに示されるように、室1908から切り離される。
【0155】
室1904と室1908との切り離し工程の一部として、又は切り離し工程の前に、シール1952を、室1908の端部に形成する。シール1952によって、凍結乾燥された物質は、室1904と室1908とを切り離すプロセス全体にわたって、無菌環境に維持される。ある実施形態において、シール1952は、任意の好適なシール装置によって、形成される。シール1952を形成し、室1904と室1908とを切り離すために使用される装置の非制限的な例としては、限定はされないが、超音波溶着装置、レーザ溶着装置、RF溶着装置、高周波溶着装置、誘導溶着装置、ホットバー溶着装置、パルス溶着装置、ホットガス溶着装置、赤外線溶着装置、及び/又はマイクロ波溶着装置等が挙げられる。
【0156】
図20A~
図20Cは、凍結乾燥の物質を収容する及び凍結乾燥後の物質を貯蔵するために使用される容器2000の他の実施形態の側面図である。容器2000は、第1室2004と第2室2008とを有する。以下で記載されるように、ある実施形態では、室2004は、物質の凍結乾燥中に使用され、室2008は、凍結乾燥された物質を再水和して使用する状況になるまで、該物質を貯蔵するために使用される。
【0157】
第1室2004は、ポート2012を有する。該ポート2012を介して、物質(例えば、血漿、全血、他の血液成分)が第1室2004に投入される。さらに、第1室2004は、第2壁2020に接合されることによって第1室2004の内部容積を構成する第1壁2016を有する。いくつかの実施形態において、壁2020は、室2004に収容される物質に対して深さとなるようにしてもよい。このような実施形態の場合、壁2020は、トレイの形状になる。
【0158】
図20Bに示されるように、室2004は、経路2032を介して、室2008に接続される。
図20Aでは、クリップ2036は、経路2032を閉じて及び/又はシールして、室2004と室2008との間の連通を回避するように位置付けられている。
【0159】
室2004に戻って、壁2020は、可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁2020は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0160】
壁2016は、ガス透過性の材料を含む。壁2016は、壁2020のガス(例えば、水蒸気)の透過度よりも大きい透過度を有する材料を含む。室2004は、凍結乾燥中に物質を収容するために使用されるので、凍結乾燥中にガス(例えば、水蒸気)が室2004から逃げることができるようにするため、透過性の材料が用いられる。ある実施形態において、壁2016全体をガス透過性材料から作製してもよい。他の実施形態において、容器1800(
図18A)の壁1828と同様に、壁2016の一部の領域のみを透過性材料で形成してもよい。
【0161】
壁2016に使用される透過性材料は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁2016は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0162】
ある実施形態では、壁2016は、約135permより大きい、又は約150permより大きい、又は約165permより大きい、又は約180permより大きい、又は約195permより大きい水蒸気透過度を有する。いくつかの実施形態において、壁2016は、約115permから約725permの範囲に水蒸気透過度を有し、例えば、約130permから約700permの間、又は約145permから約675permの間にある。また、いくつかの実施形態では、壁2016は、約80cmより大きい、又は約90cmより大きい、又は約100cmより大きい、又は約110cmより大きい耐水度(すなわち、静水頭)を有する。いくつかの実施形態において、壁2016は、約20cmから約500cmの範囲に耐水度を有し、例えば、約30cmから約450cmとの間、又は約40cmから約400cmとの間にある。いくつかの実施形態において、壁2016は、上記の水蒸気透過度のいずれかと上記の耐水度のいずれかとの組み合わせを有する。
【0163】
壁2016の一部のみが透過性材料である実施形態の場合、残りの部分は、任意の適当な材料から作製される。壁2016の一部に使用される可撓性高分子材料の例としては、限定はされないが、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0164】
上述のように、容器2000は、室2008を有する。該室2008は、第1壁2040を有する。第1壁2040は、第2壁2044と接合されて、室2008(
図20B参照)の内部容積を画定する。ある実施形態において、室2008は、凍結乾燥後、物質(例えば、全血や血液成分)を貯蔵するように構成される。従って、壁2040、2044は、頑強であり且つ長い貯蔵にも耐え、またかなりのハンドリングにも耐えうるような可撓性高分子材料から作製される。いくつかの実施形態において、壁2040、2044は、透明又は透光性高分子材料から作製される。そのような材料の非制限的な例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0165】
室2008はさらに、ポート2048を有する。ある実施形態において、ポート2048は、室2008から物質を取り出すために使用される。一実施形態において、室2008内の凍結乾燥された物質は、室2008において再水和されて、ポート2048を介して室2008から取り出される。一例として、凍結乾燥された血漿は、室2008内に貯蔵される。凍結乾燥された血漿に再水和液体を付加した後、再水和された血漿は、ポート2048を介して、患者へ注入される。他の実施形態において、室2008は、1より大きい数のポートを有する。このような実施形態の場合、ポート2048は、凍結乾燥された血漿を再水和するために再水和流体を投入するために使用され、他のポートは、患者に再水和された血漿を注入するために使用される。
【0166】
図20Aでは、室2008は巻かれており、そのため、
図20Bに示されるような拡げた状態と同じような空間を取らない。室2008を巻くことができることによって(
図20A)、例えば、凍結乾燥装置(例えば、
図1又は
図2)において、容器2000が棚を占めるスペースを、小さくすることができる。室2008を巻くことができない場合、容器2000は、追加で物質を凍結乾燥するために使うことができる棚スペースを占めることになってしまう。
【0167】
室2004、2008に加えて、容器2000はさらに経路2032を有する。経路2032によって、容積2004と容積2008との連通(例えば、流体連通)が可能になると同時に、シールによってシールされることで、容積2004と容積2008との間の連通を閉塞することもできる。
【0168】
図20Aは、クリップ2036によってシールされた経路2032を示す。この実施形態において、容積2004と容積2008との間の連通(例えば、流体連通)はない。この実施形態は、室2004の物質が凍結乾燥中の際に、使用される。クリップ2036によって、室2004にある物質(例えば、液体や固体)が、室2008の容積内に入ることが防止される。物質を容積2004に保持することにより、凍結乾燥プロセスが、より効率的になる。何故なら、壁2016は、ガス(例えば、水蒸気)を逃がすことが可能なガス透過性材料を含むからである。
【0169】
他の実施形態において、クリップ2036の代わりに、任意の適切な材料、機構、又はプロセスを用いて、室2004と室2008との間にシールを形成してもよい。クリップ2036の代わりに使用されるシールの非制限的な例としては、溶着部、接着部、破断可能部、接合部、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。室2004と室2008との間のシールの形成としては、機械的締め、溶着(例えば、ラジオ周波数、超音波、誘導、レーザ等の溶着)、ヒートシール、接着剤による接着、又はその他の手段が挙げられる。
【0170】
図20Bは、クリップ2036が取り外され、経路2032が開放され、容積2004と容積2008との間の連通が可能になった状態を示す。物質が室2004において凍結乾燥された後、クリップ2036は取り外されて、経路2032が開放される。経路2032が開放された状態において、凍結乾燥された物質は、長期貯蔵のため、室2004から室2008へ移送される。
【0171】
凍結乾燥された物質が室2008へ移送された後、室2004と室2008は再度シールされ、2つの室の間の連通が閉塞される。
図20Cに示されるように、室2004は、室2008をシール2052でシールした状態で、室2008から分離される。そして、室2008は、凍結乾燥された物質を、比較的長い期間(例えば、約2年)において貯蔵するために使用される。
【0172】
図21は、容器に生体流体を充填するためのシステム2100の一実施形態を示す。一実施形態において、システム2100は、後で凍結乾燥される血液又は血液成分をプールするために使用される。一実施形態では、システム2100は、ヒト血漿をプールするために使用される。以下では、血漿をプールするための実施形態について説明されるが、他の実施形態において、他の生体流体がプールされてもよい。
【0173】
システム2100は、血漿を有する複数の容器(例えば、バッグ)が接続可能な複数のポート2104を有する。ある実施形態において、血漿は、種々のドナーからのものであり、血漿を含む各バッグはそれぞれ単一ドナーからのものである。いくつかの実施形態において、血漿は、ドナーの血液型に基づいて、選択される。例えば、血漿は、1つの血液型或いは適合する血液型の複数のドナーからのものである。一実施形態において、複数のドナーから複数の特定の血液型を選択して、万能な血液型を生成してもよい。ある実施形態において、血液型A、B、及びABのドナーからの血漿を用いて、いかなる血液型の患者にも輸液できる万能な血漿を作製してもよい。
【0174】
ポート2104に接続した後、血漿は、いくつかの成分又は汚染物質を除去するためのフィルタ2108を通る。一実施形態において、フィルタ2108は、血漿から、白血球のような細胞を除去するように構成される。システム2100では、1つのフィルタ2108のみが示されているが、他の実施形態では、システム2100は、上記した成分、又は異なる成分、又は汚染物質を血漿から濾過するための一連の複数のフィルタを有してもよい。
【0175】
濾過した後、血漿はまとめて、容器2112にプールされる。ある実施形態において、容器2112は、比較的大きな体積(例えば、少なくとも、複数のポート2104に接続された複数の容器の血漿の体積)の血漿を収納できるバッグである。容器2112に収納された状態で、血漿は、撹拌されて混合される。このような実施形態の場合、システム2100は、撹拌を実行する特徴をさらに有する。この特徴の非制限的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0176】
ある実施形態において、システム2100は、重力を利用して、システム2100の種々の部品から種々の部品への血漿の流れを生成する。他の実施形態では、ポンプを利用して、システム2100の種々の部品から種々の部品へ血漿をポンピングする。
図21に示される実施形態では、ポンプ2116を用いて、血漿を、容器2112から容器2120へ移動させる。他の実施形態では、ポンプを、システムの他の部品において使用してもよい。例えば、血漿を、フィルタ2108から容器2112に移動させるために、ポンプを用いてもよい。
【0177】
容器2120は、血漿の保持に適していれば任意の容器でよいが、ある実施形態では、容器は、容器1200(
図12及び
図13)、容器1600(
図17A~
図18B)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、及び/又は容器2000(
図20A~
図20C)と同様である。以下で詳細に説明されるように、システム2100は、生体流体(例えば、血漿)をプールして、該流体を凍結乾燥して固体にし、該固体を貯蔵し、該固体を元の生体流体に戻し、該生体流体を患者に対して使用するためのプロセスにおいて、容器2120と共に使用される。
【0178】
図22は、生体流体をプールして、容器に充填するために使用されるシステム2200の第2実施形態を示す。システム2200は、システム2100と同様の特徴を有するが、いくつかの他の特徴をさらに有する。システム2100と同様に、システム2200は、血漿を有する複数の容器(例えば、バッグ)が接続可能な複数のポート2204を有する。ある実施形態において、血漿は、種々のドナーからのものであり、血漿を含む各バッグはそれぞれ単一ドナーからのものである。上述のように、血漿は、ドナーの血液型に基づいて、選択され、1つの血液型の血漿が作製されるか或いはいかなる血液型の患者にも輸液できる万能な血漿が作製される。
【0179】
血漿は、ポート2204から、フィルタ2208を通って流れる。該フィルタ2208は、フィルタ2108と同様であり、血漿から、いくつかの成分(例えば白血球のような細胞)又は汚染物質を除去するために使用される。他の実施形態において、システム2200は、上記した成分、又は異なる成分、又は汚染物質を血漿から濾過するための一連の複数のフィルタを有してもよい。
【0180】
濾過した後、血漿はまとめて、容器2212にプールされる。ある実施形態において、容器2212はバッグである。システム2200は、血漿の撹拌を実行する部品をさらに有する。この部品の非制限的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0181】
システム2200はさらにポンプ2216を有する。該ポンプは、血漿を容器2212からフィルタ2220へ移動させるために使用される。他の実施形態では、ポンプを、システムの他の部品において使用してもよい。例えば、血漿を、フィルタ2208から容器2212に移動させるために、ポンプを用いてもよい。
【0182】
フィルタ2220は、血漿から水分及び塩を除去することによって、血漿を濃縮するために用いられる。一実施形態において、フィルタ2220は、血漿から水分、塩、及び小分子量分子を除去する中空繊維膜フィルタである。フィルタ2220からの水分、塩、及び分子は、容器2228内に集められ、後で使用するために貯蔵されるか、或いは廃棄される。システム2200では1つのフィルタ2220のみが図示されているが、他の実施形態では、システム2200は、血漿から、少なくとも水分又は他の成分を除去する一連の複数のフィルタを有してもよい。
【0183】
ポンプ2232は、血漿をフィルタ2220から容器2236へ移動させるために用いられる。容器2236は、濃縮された血漿を保持するのに適していれば任意の容器でよいが、ある実施形態では、容器は、容器1200(
図12及び
図13)、容器1600(
図16~
図17C)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、及び/又は容器2000(
図20A~
図20C)と同様である。システム2200は、生体流体(例えば、血漿)をプールして、該流体を凍結乾燥して固体にし、該固体を貯蔵し、該固体を元の生体流体に戻し、該生体流体を患者に対して使用するためのプロセスにおいて、容器と共に使用される。
【0184】
図23は、容器に生体流体を充填するためのシステム2300の実施形態を示す。システム2300は、上述のシステム2100と同様であるが、病原体を減少させる特徴をさらに有する。ある実施形態において、システム2300は、血液又は血液成分をプールして、凍結乾燥前に血液又は血液成分において病原体を減少させるために使用される。一実施形態において、システム2200は、ヒト血漿をプールして、病原体を減少させるために使用される。以下では、血漿をプールして、病原体を減少させる実施形態について説明されるが、他の実施形態において、他の生体流体がプールされてもよい。
【0185】
システム2300は、血漿を有する複数の容器(例えば、バッグ)が接続可能な複数のポート2304を有する。ある実施形態において、血漿は、種々のドナーからのものであり、血漿を含む各バッグはそれぞれ単一ドナーからのものである。いくつかの実施形態において、血漿は、ドナーの血液型に基づいて、選択される。例えば、血漿は、1つの血液型或いは適合する血液型の複数のドナーからのものである。一実施形態において、複数のドナーから複数の特定の血液型を選択して、万能な血液型を生成してもよい。ある実施形態において、血液型A、B、及びABのドナーからの血漿を用いて、いかなる血液型の患者にも輸液できる万能な血漿を作製してもよい。
【0186】
ポート2304に接続した後、血漿は、いくつかの成分又は汚染物質を除去するためのフィルタ2308を通る。濾過した後、血漿はまとめて、容器2312にプールされる。ある実施形態において、容器2312は、比較的大きな体積(例えば、少なくとも、複数のポート2304に接続された複数の容器の血漿の体積)の血漿を収納できるバッグである。容器2312に収納された状態で、血漿は、撹拌されて混合される。このような実施形態の場合、システム2300は、撹拌を実行する特徴をさらに有する。この特徴の非制限的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0187】
ある実施形態において、システム2300は、重力を利用して、システム2300の種々の部品から種々の部品への血漿の流れを生成する。他の実施形態では、ポンプを利用して、システム2300の種々の部品から種々の部品へ血漿をポンピングする。例えば、ポンプ2316を用いて、血漿を、容器2324から容器2320へ移動させる。
【0188】
システム2300はさらに、光増感剤を収納する容器2324を有する。光増感剤は、容器2312にプールされた血漿において病原体を減少させる際に使用される。ある実施形態において、容器2324は、内因性光増感剤を収納する。このような増感剤の非限定的な例としては、リボフラビンのようなフラビンが挙げられる。
【0189】
容器2312は、透明な又は少なくとも病原体減少プロセスにおいて使用される光の波長に対して透光性を示す材料から作製される。いくつかの実施形態において、容器2312は、透明な又は少なくとも約250nmから約600nmの範囲の波長の光に対して透光性を示す可撓性高分子材料から作製される。
【0190】
血漿が容器2312にプールされた後、光増感剤は容器2312において血漿と混合される。システム2300はさらに、血漿と光増感剤との撹拌を行う部材を有してもよい。そのような部材の非限定的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0191】
光増感剤が容器2312において血漿と混合された後、血漿は、光源2328のような光源にさらされる。ある実施形態において、光源2328は、光増感剤と相互作用する波長であり、該相互作用によって、血漿における病原体を減少させる。光の波長と光増感剤との組み合わせを含む、実施形態で使用される病原体減少に関する例及び詳細な説明は、米国特許第6,548,241号明細書、米国特許第6,258,577号明細書及び米国特許第6,277,337号明細書において提供される。該米国特許の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0192】
光源2328の照射の後、病原体が減少された血漿は、後で行われる凍結乾燥のために、(ポンプ2316によって)容器2320に移動させられる。容器2320としては、病原体が減少された血漿の保持に適していれば任意の容器を使用してよい。ある実施形態において、容器は、容器1200(
図12及び
図13)、容器1600(
図16C~
図17C)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、及び/又は容器2000(
図20A~
図20C)と同様でよい。
【0193】
図24は、容器に生体流体を充填するためのシステム2400の実施形態を示す。システム2400は、上述のシステム2200と同様であるが、病原体を減少させる特徴をさらに有する。ある実施形態において、システム2400は、凍結乾燥前に、血液又は血液成分をプールし、血液又は血液成分において病原体を減少させるために使用される。一実施形態において、システム2400は、ヒト血漿をプールして、病原体を減少させるために使用される。
【0194】
血漿は、ポート2404から、フィルタ2408を通って流れる。該フィルタ2408は、フィルタ2208と同様であり、血漿から、いくつかの成分(例えば白血球のような細胞)又は汚染物質を除去するために使用される。他の実施形態において、システム2400は、上記した成分、又は異なる成分、又は汚染物質を血漿から濾過するための一連の複数のフィルタを有してもよい。
【0195】
濾過した後、血漿はまとめて、容器2412にプールされる。ある実施形態において、容器2412はバッグである。システム2400は、血漿の撹拌を実行する部材をさらに有する。この部材の非制限的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0196】
システム2400はさらにポンプ2416を有する。該ポンプは、血漿を容器2412からフィルタ2420へ移動させるために使用される。他の実施形態では、ポンプを、システムの他の部品において使用してもよい。例えば、血漿を、フィルタ2408から容器2412に移動させるために、ポンプを用いてもよい。
【0197】
フィルタ2420は、血漿から水分及び塩を除去することによって、血漿を濃縮するために用いられる。一実施形態において、フィルタ2420は、血漿から水分、塩、及び小分子量分子を除去する中空繊維膜フィルタである。フィルタ2420からの水分、塩、及び分子は、容器2428内に集められ、後で使用するために貯蔵されるか、或いは廃棄される。システム2400では1つのフィルタ2420のみが図示されているが、他の実施形態では、システム2400は、血漿から、少なくとも水分又は他の成分を除去する一連の複数のフィルタを有してもよい。
【0198】
ポンプ2432は、血漿を、フィルタ2420から容器2440に移動させるために使用される。血漿が容器2440に移動させられた後、容器2244に収容された光増感剤は容器2440において血漿と混合される。システム2400はさらに、血漿と光増感剤との撹拌を行う部材を有してもよい。そのような部材の非限定的な例としては、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0199】
容器2440は、透明な又は少なくとも病原体減少プロセスにおいて使用される光の波長に対して透光性を示す材料から作製される。いくつかの実施形態において、容器2440は、透明な又は少なくとも約275nmから約625nmの範囲の波長の光に対して透光性を示す可撓性高分子材料から作製される。
【0200】
光増感剤が容器2440において血漿と混合された後、血漿は、光源2448のような光源にさらされる。ある実施形態において、光源2448は、光増感剤と相互作用する波長であり、該相互作用によって、血漿における病原体を減少させる。光の波長と光増感剤との組み合わせを含む、実施形態で使用される病原体減少に関する例及び詳細な説明は、米国特許第6,548,241号明細書、米国特許第6,258,577号明細書及び米国特許第6,277,337号明細書において提供される。該米国特許の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0201】
光源2448の照射の後、病原体が減少された血漿は、後で行われる凍結乾燥のために、ポンプ2432によって、容器2436にポンピングされる。容器2436としては、病原体が減少された血漿の保持に適していれば任意の容器を使用してよい。ある実施形態において、容器は、容器1200(
図12及び
図13)、容器1600(
図16~
図17C)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、及び/又は容器2000(
図20A~
図20C)と同様でよい。
【0202】
システム2300、2400において、光源(2328、2448)は、光源に加えて、他の構成部品及び特徴を備えてもよい。例えば、
図25では、光源2328(
図23)及び/又は光源2448(
図24)として、システム2500が用いられている状態が示されている。
図25に示されるように、システム2500は、光源2504及び撹拌機2508(例えば、振動テーブル)を有する。該撹拌機2508は、容器2518(ある実施形態では、容器2312又は容器2440)内の流体を光源2504で照射している際に該流体を撹拌する。
【0203】
図26は、装置2600(例えば、光源(2328、2448)の一部として使用される病原体減少装置)の他の実施形態を示す。
図26に示されるように、装置2600には、開閉可能なドア2616に光源2608が設けられる。ドア2616が開けられると、流体を有する容器が、テーブル2612上に配置される。ある実施形態では、テーブル2612には、窓部が設けられ、該窓部には、容器内の流体を照射するための第2光源2604が位置付けられる。ドア2616を閉じることで、容器内の流体は、光源2604、2608の両方に照射される。ある実施形態では、光源2604、2608の照射前又は照射後又は照射中に、テーブル2612は振動して容器内の流体を撹拌する。
【0204】
いくつかの実施形態において、システム2100、2200、2300、2400(又は該システムの一部)は、システムの常置部品(例えば、光源)と結合して動作するディスポーザブルセットとして提供されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、ポート、フィルタ、容器は、システムの各種部品に接続される配管を有するディスポーザブルセットして製造されてよい。ポンプ及び/又は光源のような常置部品は、ディスポーザブル部品と結合して動作する。
【0205】
図27は、生体流体(
図27では、血漿)を凍結乾燥し、貯蔵し、元の状態に戻し、貯蔵し、輸液するプロセス2700を示す。プロセス2700は、容器1200(
図12及び
図13)、容器1600(
図16~
図17C)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、容器2000(
図20A~
図20C)に対して上述された特徴を有するバッグのような適当な容器を用いて、実行される。以下では、バッグ1200として言及される容器を用いて行われる血漿に対する処理が説明されるが、他の実施形態はこれに限定されない。
【0206】
ステップ2704において、バッグ1200に血漿が充填される。ある実施形態において、バッグ1200は、システム2100、2200、2300及び/又は2400のような血漿をプールするシステムを用いて、充填が行われる。ステップ2708において、バッグ1200の血漿は、プレート構造800(
図8A及び
図8B)、プレート構造900(
図9)、及び/又はプレート構造1000(
図10)の1以上の特徴を備える装置を用いて、バッグ1200内で凍結乾燥される。凍結乾燥プロセスは、フローチャート2800に対して以下で説明されるステップを有する。該ステップには、例えば、限定されないが、血漿を第1圧力(例えば、大気圧より低い)にさらしながら、血漿から液体を蒸発させるステップ、残った血漿を押圧しながら凍結して、凍結血漿を作製するステップ、凍結血漿を第2圧力にさらしながら、凍結血漿の一部を昇華させるステップ等がある。
【0207】
図27では、容器1200のような容器が使用されているが、他の実施形態では、異なる容器が使用されてもよい。一例として、容器1600(
図16、
図17C)、容器1800(
図18A及び
図18B)、容器1900(
図19A~
図19C)、及び/又は容器2000(
図20A~
図20C)のような容器が使用される。このような実施形態の場合、容器のうちの1つの室(又は1つの部分)は、血漿の凍結乾燥のために使用される。凍結乾燥後、凍結乾燥された血漿は、容器の第2室又は第2部分に移動させられ、第1室(又は第1部分)は分離される。
【0208】
ステップ2712において、凍結乾燥された血漿が入ったバッグ1200は、貯蔵のためにパッケージされる。パッケージ工程は、種々のステップを有し、種々のパッケージ材料を利用する。プロセス2700において、強度を増すために、スリーブ2740がバッグ1200に配置され、通常は、後続のプロセスステップの間、バッグ1200に取り付けられている。スリーブ2740は、高分子のような任意の適当な材料で作製される。ある実施形態において、スリーブ2740は、可撓性の透明又は透光性高分子で作製される。そのような高分子の例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0209】
バッグ1200及びスリーブ2740は、ホイル製バッグ2744内に配置される。ホイル製バッグ2744は、さらなる保護機能を提供し、バッグ1200内の凍結乾燥された血漿の生存能力を引き延ばす。金属化層を有するホイル製バッグ2744は、遮光性であり、防水性であり、また、乾燥剤を有し、真空パックされる。これにより、凍結乾燥された血漿の保存可能期間を引き延ばす。可撓性バッグ1200、可撓性スリーブ2740、可撓性ホイル製バッグ2744を使用することにより、可撓性を有する製品となり、例えば、バックパックで、容易に貯蔵・搬送ができる。ある実施形態において、パッケージ工程を伴った血漿の凍結乾燥によって、血漿は、少なくとも2年の保存可能期間を有するようになる。
【0210】
再構成用流体を含むバッグ2748は、バッグ1200と共に、ホイル製バッグ2744内にパッケージされることができる。必要に応じて、バッグ1200の凍結乾燥された血漿は、バッグ2748の流体を用いて、再構成される(
図27のステップ2716参照)。バッグ2748は、バッグ1200に接続され、再構成用流体がバッグ1200へ流入できるようになる。短い時間の後(例えば、2分以内)、いくつかの実施形態では、さらに撹拌の後、再構成された血漿は、ステップ2720における患者への輸液に対して準備状態となる。
【0211】
他の実施形態において、ステップ2724において、再構成された血漿は、ステップ2728における再貯蔵のため、バッグ2748へ移動される。この実施形態では、バッグ2748は、液体がある期間にわたって貯蔵可能になる材料のような特徴を有する。いくつかの実施形態において、血漿の凍結乾燥及びバッグ2748の使用によって、再構成した血漿を、ステップ2720のバッグ2748から患者への輸液の前の少なくとも1日間、貯蔵しておくことができる。
【0212】
図28を参照して、ある実施形態に係る物質の凍結乾燥プロセスのためのフローチャート2800が説明される。以下では、フローチャート2800のステップを行うための特定の装置が記載されるが、実施形態はそれらに限定されない。例えば、いくつかのステップは、プロセッサによって行われ、他のステップは、凍結乾燥装置の1以上の特徴によって行われるとして説明される。これは、あくまで例示目的のためであり、フローチャート2800は、特定の装置、特徴、部品によって行われるということに限定されない。ある実施形態において、フローチャート2800は、
図8A及び
図8B、
図9、
図10において上記されたプレート構造800、900、1000の1以上の特徴を有する装置100、200のような凍結乾燥装置によって実施されてもよい。
【0213】
さらに、血液、血液成分のような生体液体を含む任意の物質が、フローチャート2800に示されるプロセスによって、凍結乾燥されてよい。特定の実施形態において、血漿は、
図28に示されるプロセスによって、凍結乾燥されるが、これはあくまで一例である。フローチャート2800の説明は、生体液体(例えば、血漿)に対して行われるが、これはあくまで例示の目的であり、他の物質を凍結乾燥するようなフローチャート2800の適用範囲を制限するものではない。
【0214】
フローチャート2800は、ステップ2804で開始される。ある実施形態において、フローチャート2800は、オプションとして、病原体減少ステップ2806を有する。病原体減少プロセスの一実施形態は、以下において、
図29のフローチャート2900を参照して説明される。
【0215】
オプションの病原体減少プロセス(ステップ2806)の後、ステップ2808において、液体(又は他の被凍結乾燥物質)は、容器内に保持される。ある実施形態において、容器は、凍結乾燥前に又は凍結乾燥において液体を収容するために、また、凍結乾燥された物質を比較的長い期間、貯蔵するために、さらにまた、凍結乾燥された物質を再構成するために、用いられるように構成される。また、いくつかの実施形態では、再構成した物質を患者に投入するために用いられるように構成される。一実施形態において、容器は、容器1200に対して上記された1以上の特徴を有する。他の実施形態において、容器の一方の室(又は一方の部分)が凍結乾燥に用いられ、他方の室(又は他方の部分)が凍結乾燥された物質の貯蔵に用いられる場合、容器1600、1800、1900、又は2000が使用される。ある実施形態において、ステップ2808は、容器を装置100、200のような凍結乾燥装置の棚に配置する等のサブステップを有する。
【0216】
フローチャート2800に戻り、ステップ2808からステップ2812へ進み、容器及び液体を第1圧力にさらす。ある実施形態において、該圧力は、凍結乾燥装置によって生成される。第1圧力は、大気圧より低い圧力であり、凍結乾燥される物質(例えば、液体)によって異なる。血漿が水を含む実施形態において、第1圧力は、絶対圧約100Torr未満、又は約75Torr未満、又は約50Torr未満、又は約25Torr未満である。他の実施形態では、第1圧力は、約5×10-2Torrより大きい、又は約1×10-1Torrより大きい、又は約5×10-1Torrより大きい、又は約1Torrより大きい、又は約1Torrより大きい、又は約5Torrより大きい、又は約10Torrより大きい。さらに他の実施形態では、第1圧力は、約40Torrから約0Torrの範囲に、又は約30Torrから約1Torrの範囲に、又は約20Torrから約2Torrの範囲に、又は約15Torrから約3Torrの範囲である。これらは、第1圧力の範囲のいくつかの例であり、他の実施形態においては、異なる圧力が使用されてもよい。
【0217】
ステップ2812からオプションのステップ2816に進み、凍結乾燥される物質から液体を蒸発させる。該物質が血漿であるような実施形態の場合、蒸発される液体は水である。該物質は大気圧より小さい圧力に置かれているので、物質から液体を蒸発させるには、比較的小さな量のエネルギーだけでよい。エネルギーは、例えば、棚のプレート内を循環する熱流体によって或いは凍結乾燥装置の棚の一部であるIR放射体によって供給される。
【0218】
いくつかの実施形態において、ステップ2816は、被凍結乾燥液体の体積を減少させるために行われる。理論に束縛されるものではないが、ステップ2816を行って液体の体積を減少させることによって、後続の昇華ステップが、より迅速に及び/又はより効率的に行われると考えられる。
【0219】
ステップ2816に続いて、ステップ2820が行われる。ステップ2820において、該液体が冷却され、凍結して固体になり、凍結製剤が形成される。ある実施形態において、棚のプレート内を循環する熱流体は、エネルギーを奪い、液体を冷却し、凍結して固体にする。いくつかの実施形態において、ステップ2820は、オプションとして複数のサブステップを有する。例えば、サブステップ2824は、液体の一部を蒸発させるステップである。蒸発によって、液体は、凍結して固体になる程度に、冷却される。いくつかの実施形態において、サブステップ2824は、上述のステップ2816の一部として行われてもよい。
【0220】
さらに、いくつかの実施形態において、サブステップ2828は、例えば、容器及び容器内の液体を押圧することによって成形するために行われる。理論に束縛されるものではないが、凍結ステップ2820の一部として行われる容器及び容器内の液体(又は他の物質)の押圧(又は他の方法での成形)は、液体(又はその他の物質)が冷却・凍結される際に、より均等な断面を形成することができると考えられる。従って、断面がより均等になることによって、後続の昇華ステップ中に、凍結製剤から氷のような成分を除去する効率が増加するであろうと考えられる。すなわち、厚みのばらつきを減らすことにより、該物質の昇華を同様のレートで起こすことができ、プロセスの効率が改善される。
【0221】
いくつかの実施形態において、圧力は、
図3~
図6に対して説明された棚システム300又は棚システム500を用いて、付加される。他の実施形態において、物質を押圧する圧力は、流体が充填可能な可撓性バルーン又は空気袋(bladder)のような異なるシステムによって与えられてもよい。バルーン又は空気袋は、被凍結乾燥物質の上方に位置付けられる。バルーン又は空気袋には、ある流体(例えば、気体や液体)が充填されて、バルーン又は空気袋は膨脹し、凍結中の液体を押圧する。これは、あくまで他の実施形態の一例であり、容器及び液体に対する圧力の付加においては、任意の方法を利用して、容器及び/又は物質(例えば、液体)を成形することができる。
【0222】
ステップ2832において、容器及び凍結製剤を第2圧力にさらす。ある実施形態において、該圧力は、凍結乾燥装置によって生成される。第2圧力は、大気圧より低く且つ第1圧力よりも低い圧力である。圧力は、凍結乾燥される物質によって異なる。物質が水を含む実施形態において、第2圧力は、約5×10-1Torr未満、又は約1×10-1Torr未満、又は約5×10-2Torr未満、又は約1×10-2Torr未満である。他の実施形態では、第2圧力は、約1×10-4Torrより大きい、又は約5×10-4Torrより大きい、又は約1×10-3Torrより大きい、又は約5×10-3Torrより大きい、又は約1×10-2Torrより大きい。これらは、第2圧力の範囲のいくつかの例であり、他の実施形態においては、異なる圧力が使用されてもよい。
【0223】
ステップ2832の後、ステップ2836において、凍結製剤の一部(例えば、ステップ2820において、残留液体から生成された固体)が昇華される。凍結製剤から物質を昇華させるには、エネルギーが必要となる。このエネルギーは、例えば、棚のプレート内を循環する熱流体によって供給される。いくつかの実施形態において、ステップ2836は、凍結乾燥装置の棚の一部であるIR放射体によって赤外線エネルギーを付加するサブステップ2840を有する。棚がプレート構造800、900と同様のプレート構造である実施形態の場合、IRエネルギーは上部から付加され、熱流体からの熱エネルギーは、底部から付加される。そして、フローチャートはステップ2844にて終了する。
【0224】
フローチャート2800が、複数のステップをある特定の順序で列挙して説明されたが、本発明はこれに限定されない。他の実施形態では、それらステップは異なる順序、又は並行して、又は異なる回数(例えば、別のステップの前後で)、行われてもよい。また、上記したように、フローチャート2800は、オプションとしてのステップ/サブステップを含む。しかしながら、オプションとして示されていない上記のステップは、本発明にとって必須であると考えるべきではなく、そのようなステップは、ある実施形態では行われ、他の実施形態では行われなくてもよい。
【0225】
いくつかの実施形態において、フローチャート2800の一部は、凍結乾燥装置又はシステムで実行されるカスタマイズされた凍結乾燥プロセスの一部として行われてもよい。例えば、オペレータは、コンピュータシステム(例えば、以下で記載されるコンピュータシステム3300)上で実行されるアプリケーションを利用して、フローチャート2800の1以上のステップを有するカスタムプロセスを作成してもよい。そして、該プロセスを凍結乾燥装置又はシステムにおいて実行することによって、物質の凍結乾燥を行う。いくつかの実施形態において、一度作成すれば、カスタムプロセスは、ボタンを押すだけで実行することができる。
【0226】
図29は、他の実施形態に係る物質を凍結乾燥させるプロセスのフローチャート2900を示す。以下では、フローチャート2900のステップを行うための特定の装置が記載されるが、実施形態はそれらに限定されない。例えば、いくつかのステップは、病原体減少装置によって行われ、他のステップは、凍結乾燥装置の1以上の特徴によって行われるとして説明される。これは、あくまで例示目的のためであり、フローチャート2900は、特定の装置、特徴、部品によって行われるということに限定されない。ある実施形態において、フローチャート2900は、装置100、200のような凍結乾燥装置によって実施されてよい。
【0227】
さらに、血液、血液成分のような生体液体を含む任意の物質が、フローチャート2900に示されるプロセスによって、凍結乾燥されてよい。特定の実施形態において、血漿は、
図29に示されるプロセスによって、凍結乾燥されるが、これはあくまで一例である。フローチャート2900の説明は、生体液体(例えば、血漿)に対して行われるが、これはあくまで例示の目的であり、他の物質を凍結乾燥するようなフローチャート2900の適用範囲を制限するものではない。
【0228】
フローチャート2900は、ステップ2904において始まり、ステップ2908に進む。ステップ2908では、液体が容器にプールされる。ある実施形態において、システム2400、2500のようなシステムは、複数単位の、例えば、血漿、をより大きな容器にプールするために使用される。ある実施形態において、ステップ2908は、容器内にプールされた液体を撹拌してプールされた液体を混合するステップを含む。撹拌は、液体を撹拌する機構を使用するが、そのような機構の非制限的な例として、ポンプ、振動器、エアレーター、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0229】
ステップ2908の後、ステップ2912に進み、病原体減少組成物を付加する。ある実施形態において、病原体減少組成物は、リボフラビンを含むフラビンのような内因性光増感剤である。他の実施形態では、病原体減少組成物は、他の組成物でもよい。例えば、病原体減少組成物としては、界面活性剤、緩衝剤、塩、pH調節剤、溶剤等がある。
【0230】
ステップ2916において、病原体減少組成物を含む液体は光に照射される。ステップ2916は、光源を備える任意の適当なシステムの使用を伴う。該光源は、病原体減少組成物を含む液体を、液体内の病原体を減少させるのに必要な波長で照射する。ある実施形態において、システム2500のようなシステムは、液体を撹拌すること及び光源で照射することの両方に使用される。他の実施形態において、
図26に示される装置2600のような病原体減少装置は、液体を撹拌すること及び光源で照射することの両方に使用される。撹拌は、液体を撹拌するための機構の使用を伴う。該機構の非制限的な例としては、ポンプ、振動器、エアレーター、ローラー、モータ、超音波振動子、動力源等が挙げられる。
【0231】
ステップ2916後、液体は、任意の適当な凍結乾燥プロセス2920によって、凍結乾燥される。例えば、いくつかの実施形態において、フローチャート2900は、上述のフローチャート2800へ進み、病原体が減少された液体が凍結乾燥される。他の実施形態では、凍結乾燥プロセスは、
図32に対して以下で説明されるフローチャート3200を伴ってもよい。そして、フローチャート2900は、ステップ2936で終了する。
【0232】
図30及び
図31は、主にIR(赤外線)エネルギーを用いて、物質を凍結乾燥するシステムの実施形態を示す。プレート構造800、900、1000、及びフローチャート2800(
図28)に対して上述したように、本発明は、熱エネルギーに加えて又は熱エネルギーの代わりにIRエネルギーを使用することを伴う凍結乾燥プロセスを提供する。システム3000(
図30)及びシステム3100(
図31)は、凍結乾燥プロセスの昇華ステップにおいて主にIRエネルギーを利用する実施形態において用いられるシステムの例である。従って、以下では、物質は、システム3000又はシステム3100の他の特徴によって凍結された或いは異なるシステム又は異なる装置(例えば、プレート構造800、900、及び/又は1000を用いたシステム100、200)において凍結されたと仮定して、説明が行われる。
【0233】
図30は、凍結乾燥プロセスの一部として容器3004内の物質を昇華させるシステム3000を示す。いくつかの実施形態において、容器3004は、2つの壁部を有する。該壁部は、互いに接合されることで、被凍結乾燥物質が配置される内部容積を画定する。容器3004の壁部に使用される材料は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、容器3004の壁部は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0234】
内部に凍結された物質を有する容器3004は、容器3004を介して移動するガスを放散させるように構成された棚3008に置かれる。ある実施形態において、棚3008には、ガスが容器3004から流出するように複数の穴が設けられる。他の実施形態において、棚3008は、ガスを容器3004から放散させることが可能なスクリーン構造又は他の多孔性構造から作製される。
【0235】
さらに、システム3000は、IR放射体3012、3016を有する。
図30に示されるように、IR放射体3012、3016は、容器3004の両側にIRエネルギーを照射するように位置付けられる。上述のように、昇華は、物質の表面で起こる。
図30に示される構造を用いる場合、2つの面において、同時に昇華が起こり、物質の凍結乾燥時間全体が減少する。
【0236】
図31は、凍結乾燥プロセスの一部として容器(3108、3112、3116、3120)内の物質を昇華させるシステム3100の他の実施形態を示す。容器3004と同様に、容器3108、3112、3116、3120は、2つの壁部を有する。該壁部は、互いに接合されることで、被凍結乾燥物質が配置される内部容積を画定する。容器3108、3112、3116、3120の壁部に使用される材料は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、漏洩することなく物質を保持するのに十分な強度を備えた材料から作製される。いくつかの実施形態において、容器3108、3112、3116、3120の壁部は、以下の材料のうちの1以上から作製される。すなわち、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0237】
システム3100は、内部に凍結された物質を有する容器3108、3112、3116、3120が掛けられるハンガー部3104を有する。ハンガー部3104は、容器3108、3112、3116、3120を鉛直に保持するための各種フック又は他の特徴を有するように構成される。
【0238】
システム3100は、IR放射体3124、3128、3132、3136、3140を有する。
図31に示されるように、IR放射体3124、3128、3132、3136、3140は、容器3108、3112、3116、3120の両側へIRエネルギーを照射するように配置される。上述のように、昇華は、物質の表面で起こる。
図31に示される構造を用いた場合、2つの面において、同時に昇華が起こり、物質の凍結乾燥時間全体が減少する。
【0239】
図32は、ある実施形態に係る物質を凍結乾燥するプロセスのフローチャート3200を示す。以下では、フローチャート3200のステップを実行するために、特定の装置が記載されるが、実施形態はそれらに制限されない。
【0240】
フローチャート3200は、ステップ3204から始まり、物質を容器に保持するステップ3208に進む。いくつかの実施形態において、物質は、血液又は血液成分のような液体である。一実施形態において、該物質はヒト血漿である。ある実施形態において物質を貯蔵する容器は、水蒸気のようなガスに対する透過度が比較的高く、プロセス中に物質を保持するのに十分な強度を備えた材料を含む壁部を有する。使用される材料の非制限的な例としては、フラッシュスパン高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、織布又は不織布に形成されたアクリル、織布又は不織布に形成されたアミド、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1以上から作製される。
【0241】
ある実施形態において、ステップ3208は、物質をある容器から別の容器へ移動させることを伴う。例えば、ヒト血漿の実施形態の場合、ステップ3208は、複数単位の血漿をプールし、血漿を複数の容器へ移送し、該複数の容器内で該血漿を保持することを伴う。
【0242】
ステップ3208の後、フローチャート3200は、ステップ3212へ進み、物質が凍結される。いくつかの実施形態において、ステップ3212は、プレート構造800(
図8A及び
図8B)、プレート構造900(
図9)、又はプレート構造1000(
図10)の特徴を含むプレート構造を有する棚の使用を伴う。例えば、ステップ3208は、容器を棚に置くことを伴う。該棚は、ステップ3212において物質を冷却して該物質内の液体を凍結させるための熱流体を循環させる経路を有する。
【0243】
ステップ3212は、他のサブステップを含んでもよい。例えば、一実施形態において、ステップ3212は、容器及び物質を成形する(例えば、凍結中に押圧する)サブステップ3216を有する。成形は、プレート構造800(
図8A及び
図8B)、プレート構造900(
図9)、及び/又はプレート構造1000(
図10)を使用するシステム300(
図3)又はシステム500(
図5)のような1以上の棚システムを用いて、行われる。他の実施形態において、ステップ3212は、凍結中に材料を成形する他のステップ又は他の構造(例えば、型枠、織地、スタンプ)を伴ってもよい。
【0244】
フローチャート3200は、ステップ3212からステップ3220へ進み、そこで物質は、大気圧より低い圧力にさらされる。圧力は、被凍結乾燥物質に応じて決められる。該物質が水を含む実施形態の場合、圧力は、約5×10
-1Torr未満、又は約1×10
-1Torr未満、又は約5×10
-2Torr未満、又は約1×10
-2Torr未満である。他の実施形態では、第2圧力は、約1×10
-4Torrより大きい、又は約5×10
-4Torrより大きい、又は約1×10
-3Torrより大きい、又は約5×10
-3Torrより大きい、又は約1×10
-2Torrより大きい。これらは、第2圧力の範囲のいくつかの例であり、他の実施形態においては、異なる圧力範囲が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、ステップ3220は、装置100(
図1)及び/又は装置200(
図2)のような凍結乾燥装置を用いて、行われる。
【0245】
フローチャートは、ステップ3220からステップ3224へ進み、IRエネルギーが物質に付加される。ある実施形態において、ステップ3224は、容器の片側のみにIRエネルギーを付加することを伴ってもよい。他の実施形態では、ステップ3224は、容器の2以上の側面にIRエネルギーを付加することを伴ってもよい。ステップ3224は、IRエネルギーを提供するシステムにおいて行われる。そのようなシステムの非制限的な例としては、システム3000(
図30)及び/又はシステム3100(
図31)が挙げられる。IRエネルギーを付加するために使用される構造の他の例としては、プレート構造800(
図8A及び
図8B)、プレート構造900(
図9)、又はプレート構造1000(
図10)が挙げられる。
【0246】
ステップ3224の一部として、IRエネルギーが与えられることによって、物質に変化をもたらす。例えば、IRエネルギーが与えられることによって、物質の一成分3228(例えば、氷)が昇華する。さらにIRエネルギーを与えることによって、成分を昇華させるだけでなく、物質に吸収又は吸着された成分(例えば、水和水)が除去される(ステップ3232)。フローチャート3200は、ステップ3236において終了する。
【0247】
図33は、本発明の実施形態が実行される基本コンピュータシステム3300の構成要素例を示す。例えば、システム100(
図1)又はシステム200(
図2)は、
図33に示される基本コンピュータシステム3300のいくつかの特徴を含んでよい。コンピュータシステム3300は、出力装置3304及び入力装置3308を有する。出力装置3304は特に、CRT、LCD及び/又はプラズマディスプレイのような1以上のディスプレイを含んでよい。出力装置3304はまた、プリンター、スピーカ等を含んでもよい。入力装置3308は、制限されないが、キーボード、タッチ式入力装置、マウス、音声入力装置、スキャナ等を含んでよい。
【0248】
本発明の実施形態において、基本コンピュータシステム3300は、1以上のプロセッサ3312、及びメモリ3316を有してもよい。ある実施形態において、プロセッサ3312は、メモリ3316に記憶されたプロセッサ実行可能命令を実行するために動作可能な汎用プロセッサであってよい。プロセッサ3312は、本発明の実施形態では、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含んでよい。さらに、実施形態では、各プロセッサは、個別に命令を読み込んで実行するための1以上のコアを有するシングルコア又はマルチコアプロセッサでよい。プロセッサは、実施形態において、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、その他の集積回路を含んでよい。
【0249】
メモリ3316は、データ及び/又はプロセッサ実行可能命令を短期に又は長期に記憶する任意の記憶媒体を含んでよい。メモリ3316は、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、又は電気的消去・プログラム可能型リード・オンリ・メモリ(EEPROM)を含む。他の記憶媒体としては、例えば、CD-ROM、テープ、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は、他の光学記憶装置、テープ、磁気ディスク装置、磁気テープ、その他の磁気記憶装置等がある。
【0250】
記憶装置3328は、任意の長期データ記憶装置又は部品でよい。記憶装置3328は、メモリ3316と関連して上記された装置のうちの1以上を含んでよい。記憶装置3328は、常設してもよいし、取り外し可能でもよい。
【0251】
コンピュータシステム3300はまた、通信装置3336を備える。通信装置3336は、システム3300をネットワーク(例えば、広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ストレージエリアネットワーク等)と通信できるようにする。通信装置3336は、モデム、ハブ、ネットワークインターフェースカード、無線ネットワークインターフェースカード、ルータ、スイッチ、ブリッジ、ゲートウェイ、無線アクセスポイント等のような複数の装置を含んでよい。
【0252】
コンピュータシステム3300の部品は、
図33に示されるように、システムバス3340によって接続されている。しかしながら、他の実施形態において、システム3300の部品は、複数のバスによって接続されてもよい。
【0253】
当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の方法及び構造に対して種々の変形及び変更を行えることは理解できよう。従って、本発明は、上記の特定の実施形態に限定されないと理解されるべきである。むしろ、本発明は、以下の請求項及びそれらの等価物の範囲内において、変形形態及び変更形態をも含むことが意図されている。
【0254】
本発明の実施形態及び用途が示され説明されてきたが、本発明は、上記した構成及び手段に制限されないと理解されるべきである。当業者に明らかな種々の変形、変更等は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の方法及びシステムにおける構成、動作、その他詳細において行うことが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥された血液成分を凍結乾燥及び保存するための容器であって、
第1チャンバであって、
可撓性高分子材料よりなり水蒸気に対する第1の透過性を有する第1壁と、
前記第1壁に接合されることで前記第1チャンバの内部容積を画定し、少なくとも一部が水蒸気に対する透過性が前記第1の透過性よりも高い第2の透過性を有する領域を有する第2壁と、を有する第1チャンバと、
流路を介して前記第1チャンバと流体的に接続可能な第2チャンバであって、
可撓性高分子材料よりなる第3壁と、
前記第3壁に接合され、前記第2チャンバの内部容積を画定する第4壁と、を有する第2チャンバと、
前記流路に設けられ、前記第1チャンバから前記第2チャンバを隔離するとともに、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを前記流路を通じて連通させるように開通可能なシール部と、を有する、容器。
【請求項2】
請求項1記載の容器であって、
前記シール部は、1又は複数のクランプ、溶着部、及び破断可能部のいずれか又はこれらの組み合わせよりなる、容器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の容器であって、
さらに、前記第1チャンバは、前記第1チャンバの前記内部容積に前記血液成分を導入するための第1ポートを有する、容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の容器であって、
さらに、前記第2チャンバは、前記第2チャンバの前記内部容積に再水和用の流体を導入するための第2ポートを有する、容器。
【請求項5】
請求項4記載の容器であって、
さらに、前記第2チャンバは、前記第1チャンバの前記内部容積から再水和された血液成分を除去するための第3ポートを有する、容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の容器であって、前記第2壁の少なくとも一部は、不織布よりなる、容器。
【外国語明細書】