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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119995
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】レチクル容器及び拡散板
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/66 20120101AFI20220809BHJP
   B65D 85/90 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03F1/66
B65D85/90
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092017
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2019532190の分割
【原出願日】2017-08-29
(31)【優先権主張番号】16186441.8
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519067976
【氏名又は名称】ブルックス オートメーション (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BROOKS AUTOMATION (GERMANY) GMBH
【住所又は居所原語表記】Daimlerstrasse 7, 78256 Steisslingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ レブストック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中に保管されたレチクルを浄化洗浄するよう適合されたレチクル容器を提供し、それによって浄化ガスのスループットを最小に抑える。
【解決手段】少なくとも2枚のレチクル22をレチクル保管部分14に保管するよう適合された、囲われた内部12を画定し、浄化ガスを囲われた内部に通して入れることができる入口ポート16と、浄化ガスを囲われた内部から通して出すことができる出口ポート18とを備える、レチクル容器であって、入口ポートとレチクル保管部分との間の囲われた内部に配置された、第1の拡散板24を更に備え、第1の拡散板には、浄化ガスが流れることができる開口部25a、25bが設けられ、第1の拡散板の中央セクションの開口部25aには、第1の拡散板の周辺セクションの開口部25bよりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供するレチクル容器に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル保管部分(14)内で、少なくとも2枚のレチクル(22)を保管するよう適合された囲われた内部(12)を画定し、浄化ガスを前記囲われた内部(12)に通して入れることができる入口ポート(16)と、前記浄化ガスを前記囲われた内部(12)から通して出すことができる出口ポート(18)とを備える、レチクル容器であって、前記入口ポート(16)と前記レチクル保管部分(14)との間であって、前記囲われた内部(12)に配置された、第1の拡散板(24)を更に備え、前記第1の拡散板(24)には、前記浄化ガスが流れることができる開口部(25a、25b)が設けられ、前記第1の拡散板(24)の中央セクションの開口部(25a)には、前記第1の拡散板(24)の周辺セクションの開口部(25b)よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供するレチクル容器。
【請求項2】
前記レチクル保管部分(14)と前記出口ポート(18)との間に配置された、第2の拡散板(26)が設けられる請求項1に記載のレチクル容器。
【請求項3】
前記第2の拡散板(26)に、前記浄化ガスが流れ通ることができる開口部(27a、27b)が設けられ、前記第2の拡散板(26)の中央セクションにおける開口部(27a)に、前記第2の拡散板(26)の周辺セクションの開口部(27b)よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供する請求項2に記載のレチクル容器。
【請求項4】
前記レチクル保管部分(14)が、少なくとも2枚のレチクルを保管するよう設けられ、それによって各レチクルが、前記第1の拡散板(24)及び/又は前記第2の拡散板(26)に対して実質的に垂直に延びる請求項1から3のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項5】
少なくとも一部が少なくとも一つの金属材料で作られ、前記金属材料が特にアルミニウム及び/又はステンレス鋼で構成される請求項1から4のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項6】
保持要素、特にスロット又は張り出し部を備え、前記スロット又は前記張り出し部の上又は間にレチクルを位置付けることができる請求項1から5のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項7】
前記保持要素に、ポリマー材料で作られた挿入物及び/又はライニングが設けられる請求項6に記載のレチクル容器。
【請求項8】
2、3、4、5、6、7、8、9、又は10枚以上のレチクル(22)を保管するよう適合される請求項1から7のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項9】
前記第1の拡散板(24)の開口部(25a、25b)及び/又は前記第2の拡散板(26)の開口部(27a、27b)に、少なくとも2つ、特に2、3、4、5又は6つの異なる個々の開口面積が提供され、前記開口面積が、前記第1及び/又は前記第2の拡散板の中央セクションにおける開口部の最大の個々の開口面積から、前記第1及び/又は前記第2の拡散板の前記周辺セクションの近傍における最小の開口面積まで減少する請求項1から8のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項10】
最も外側の開口部の全てが、前記中央セクションの開口部よりも小さい個々の開口面積である請求項1から9のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項11】
個々の前記開口部は、円形、及び/又は楕円形、及び/又は正方形、及び/又は三角形、及び/又は長方形、及び/又は卵形、及び/又は三日月形、及び/又はスリット形、及び/又は多角形の開口面積を備える請求項1から10のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項12】
レチクル容器の内部において、前記レチクル容器の入口ポートと、前記レチクル容器のレチクル保管部分との間、及び/又は、前記レチクル容器の前記レチクル保管部分と、前記レチクル容器の出口ポートとの間に使用されるよう適合された、拡散板であって、開口部が設けられ、前記拡散板の中央セクションの開口部に、前記拡散板の周辺セクションの開口部よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供する拡散板。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載のレチクル容器に使用されるよう適合される拡散板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクル容器、及びレチクル容器の内部に使用するよう適合される拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術において、レチクル又はフォトマスクは、集積回路デバイスの大量生産に用いられる。レチクルは、光が規定のパターンで透過できる穴又は透明部を有する、不透明板である。
【0003】
例えばレチクルに付着した塵粒又は有機物質など、任意のタイプの汚染物が、投射パターンの品質の劣化を生じさせ得ることが、よく知られている。したがって、レチクルを完全に清潔な環境に保管し、取り扱うことが、非常に重要である。
【0004】
レチクルを所謂容器ストッカに保管することが知られており、容器ストッカは数千までの個々のレチクルを保管することができる。このようなストッカ内のレチクルは、例えば指定されたレチクル容器に保管され、このレチクル容器はいくつかのレチクル、例えば1、2、4、6、8、又は10枚のレチクルを保持するよう設計される。
【0005】
米国特許第8,403,143(B2)号による、レチクルを保管する容器が知られている。この容器は、1枚のレチクルを保管するために設計されている。容器内に存在し得る汚染粒子の数を低減させるため、この書類には二つの方法が開示されている。すなわち、浄化ヘッドによって洗浄ガスでレチクル容器を満たすこと、及び代替えとして、真空ポンプによって容器内のガスを排気することである。
【0006】
浄化することは、有利には、洗浄ガスの一定の流れを容器に通すことを含み、ガスは容器の入口ポートによって入り、容器の出口ポートによって出る。
【0007】
通常の浄化ガスは、例えば非常に清潔な乾燥空気又は窒素である。このようなガスを提供することはコストの要因であり、その結果として、レチクル容器に流れ通すガスの量を低減させること、同時にガスの量が効果的な浄化のために十分であることは有利である。
【0008】
この態様は、多数のレチクルを保管するために適合されたレチクル容器の場合に、より重要となる。従来技術の浄化ガスの入口及び出口において、容器を流れ通る浄化ガスの顕著な乱流が発生して、より高い浄化ガスのスループットが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、中に保管されたレチクルを浄化洗浄するよう適合されたレチクル容器を提供し、それによって浄化ガスのスループットを最小に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1の特徴を備えるレチクル容器と、請求項12の特徴を備える拡散板とによって、実現される。本発明によるレチクル容器の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明によるレチクル容器は、より均一で乱流の少ない浄化ガスの流れを、複数のレチクルが保管された囲われた内部に通すことを保証する。特にこれは、入口ポートと、レチクルが保管されたレチクル内部の部分との間に配置される、拡散板の設計によって実現される。周辺セクションと比べて大きい個々の開口面積を有する、中央セクションの開口部を有する拡散板を設けること、及び/又は、このように中央セクションの開口部が、単位面積当たりで周辺領域の開口部よりも大きい合計開口面積を提供することによって、例えば拡散板面積の全体にわたって均一の開口サイズで設計された従来の拡散板と比べて、実質的により均一な流れを実現する。本発明によるこの拡散板の設計は、容器内の乱流も大幅に軽減させる。
【0012】
有利には、個々の開口部の開口面積が、拡散板の中央セクションから少なくとも1つの周辺セクションに向けて、累進的に小さくなる。代替えとして、又は加えて、単位面積当たりの合計開口面積は、単位面積当たりの開口部の数を減少させることによって、拡散板の中央セクションから少なくとも1つの周辺セクションに向けて、累進的に小さくすることができる。例えば、中央セクションにおいて、好適に規定した単位面積当たりに四つの開口部が設けられ、周辺セクションにおいて、単位面積当たり三つ、二つ、又は一つの開口部が設けられてもよい。中央セクションから周辺セクションに向けて、個々の開口面積を減少させること、及び単位面積当たりの合計開口面積を減少させることを、組み合わせてもよい。例えば、中央領域において、第1の個々の開口面積で、単位面積当たり四つの開口部が設けられ、周辺セクションにおいて、第2の個々の開口面積で、三つ、二つ、又は一つの開口部が設けられてもよい。第2の個々の開口面積は、第1の個々の開口面積よりも小さい。
【0013】
レチクル容器の有利な実施形態によると、レチクル保管部分とレチクル容器の出口ポートとの間に配置される、第2の拡散板が設けられる。レチクル容器の外側に、このような第2の拡散板を設けることによって、流れの均一性を更に促進して、乱流を軽減させる。有利には、両方の拡散板が平行に延びる。
【0014】
有利には、第2の拡散板が、実質的に第1の拡散板のように設計されること、すなわち、周辺セクションの開口部よりも大きい個々の開口面積が提供された、中央セクションの開口部を備える。単位面積当たりの開口部の数も、上述のように変更され得る。特に、互いに整列されたそれぞれの開口部の位置付け、及び開口面積又はサイズについて、同じ方法で両方の拡散板を設計することによって、浄化ガスの流れの均一性を更に促進して、同様に乱流を軽減させることができる。代替えとして、第1の拡散板とは異なる設計の、第2の拡散板を設けることが可能である。例えば、少なくとも一つのセクションにおいて第1の拡散板と比べて第2の拡散板は、個々の開口部の異なる配置を備えることができ、及び/又は、個々の開口部は異なる個々の開口面積、及び/又は、異なる単位面積当たりの合計開口面積を備える。
【0015】
有利には、レチクル保管部分が、各レチクルが第1の拡散板及び/又は第2の拡散板に対して実質的に垂直に延びるよう、レチクルを保管するために設けられる。拡散板に対する、保管したレチクルのこの直交する配置は、保管した各レチクルに沿った、浄化ガスの均一且つ滑らかな流れを保証する。特に、その均一な流れは、最小量の浄化ガスで、最適な浄化効果を確保するのに十分であることを保証する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、レチクル容器は、少なくとも一部が少なくとも一つの金属材料で作られる。この材料の選択によって、レチクル容器の材料の中に溶解、貯留、又は吸収されたガスの解放(ガス放出)を最小限に抑えることができる。従来技術のレチクル容器において、製作に使用された主材料はプラスチック材料であり、その中におけるガス放出の影響は大きく、より顕著である。好ましい金属材料は、アルミニウム及び/又はステンレス鋼である。有利には、レチクル容器の本体部材及び蓋が、アルミニウムで作られ、その一方で拡散板がステンレス鋼で作られる。
【0017】
便宜上、本発明によるレチクル容器は、保持要素、特にスロット又は張り出し部を備え、それらの上又は間に、レチクルを位置付けることができる。このような保持要素を適切な数だけ設けることによって、レチクル容器を、所望の数のレチクルを保管するために、具体的に適合させることができる。
【0018】
有利には、保持要素には、例えば熱可撓性材料又はそれらの合成物などの、ポリマー材料で作られた、挿入物及び/又はライニングが提供される。挿入物及び/又はライニングは、全体としてレチクル容器に比べて小さい容量及び/又は表面積を有するので、このような挿入物及び/又はライニングによるガス放出の影響は、軽減される。好適なポリマー材料として、限定ではないが、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロテトラフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET-P)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、及びそれらの合成物(例えばガラス及び/又はカーボン繊維合成物)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、他のポリマー材料に比べてガス放出の影響が比較的低いものが選択される。
【0019】
本発明によるレチクル容器は、複数のレチクルを清潔な環境で効率的に保管するよう有利に適合され、特に2、3、4、5、6、7、8、9、又は10枚以上のレチクルを保管することができる。
【0020】
好ましい実施形態によると、第1の拡散板の開口部及び/又は第2の拡散板の開口部には、少なくとも二つ、特に2、3、4、5又は6つの異なる個々の開口面積が提供される。開口面積は、第1及び/又は第2の拡散板の中央セクションにおける最大の個々の開口面積から、第1及び/又は第2の拡散板の周辺セクション又は縁部の近傍における最小の個々の開口面積まで減少する。これは具体的に、第1及び/又は第2の拡散板の周辺セクション又は縁部セクション、すなわち最も端の開口部に、最小の開口面積が提供され、開口部の開口面積が、第1及び/又は第2の拡散板の中央に向かって大きくなることを意味する。例えば、中央セクションの開口部には、各々が約15mmよりも大きい第1の開口面積が提供されてよく、第1及び/又は第2の拡散板の縁部の近傍の開口部、すなわち周辺セクションには、各々が約15mm未満の第2の開口面積が提供されてもよい。いくつかの実施形態において、中間セクションの開口部、すなわち第1及び/又は第2の拡散板の中央セクションと周辺セクションとの間には、第1の開口面積と第2の開口面積との中間の面積である、第3の開口面積が提供されてよい。例えばいくつかの実施形態において、第1の開口面積は各々約19~22mm、第2の開口面積は各々約11~14mm、及び第3の開口面積は各々約15~18mmである。いくつかの実施形態において、中央セクションの合計開口面積は、約450mmよりも大きく、周辺セクションの合計開口面積は、約450mm未満である。例えば、中央セクションの合計開口面積は約500~600mm、中間セクションの合計開口面積は約400~500mm、及び周辺セクションの合計開口面積は300~400mmであってもよい。
【0021】
好ましい実施形態によると、第1及び/又は第2の拡散板の最も外側の開口部の全ては、個々の開口面積が中央セクションの開口部よりも小さい。
【0022】
便宜的に、個々の開口部は、円形、及び/又は楕円形、及び/又は正方形、及び/又は三角形、及び/又は長方形、及び/又は卵形、及び/又は三日月形、及び/又はスリット形、及び/又は多角形の開口面積を備える。
【0023】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるレチクル容器の第1の実施形態における、概略の簡易側面図である。
図2】本発明による拡散板の好ましい実施形態における、平面図である。
図3】本発明によるレチクル容器の本体部材の好ましい実施形態における、斜視図である。
図4】本発明によるレチクル容器の蓋の好ましい実施形態の図であり、図3による本体と共にレチクル容器を形成する。
図5a】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5b】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5c】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5d】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5e】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5f】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5g】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5h】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
図5i】本発明による拡散板の別の様々な好ましい実施形態における、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、概略で簡易的に、本発明によるレチクル容器の好ましい実施形態を示し、全体的に10で表わす。
【0026】
レチクル容器は閉じられた内部12を画定し、レチクル保管部分14を備え、その中に複数のレチクル22を保管することができる。レチクルと容器との実際の相互作用は、図1には示されない。特に、個々のレチクルを支えるための保持要素は示されない。
【0027】
レチクル容器は入口ポート16を備え、入口ポート16を通して、浄化ガス(矢印16’で表示)がレチクル容器の囲われた内部12に入ることができる。レチクル容器は出口ポート18を更に備え、出口ポート18を通して、浄化ガスが囲われた内部12から出ることができ、矢印18’によって表示される。
【0028】
均一且つ実質的に乱流のない浄化ガスの流れを、確実にレチクル保管部分14の全容積に通すために、第1の拡散板12が、入口ポート16とレチクル保管部分14との間に配置される。第1の拡散板24は、複数の開口部25を備え、それらを通して、浄化ガスがレチクル保管部分14に入ることができる。図1に概略で表示したように、且つ図2で特に判るように、第1の拡散板24の中央セクションの開口部25aは、より大きい、すなわち周辺セクションの開口部25bよりも、大きい開口面積又は径が提供される。
【0029】
レチクル保管部分14と出口ポート18との間には、第2の拡散板26が設けられる。第2の拡散板26にも開口部27a及び27bが設けられる。
【0030】
有利には、開口部27a及び27bのパターンは、第1の拡散板24に対応する。すなわち、中央セクションの開口部27aは、周辺セクションの開口部27bよりも大きい開口面積を有する。
【0031】
図1で更に判るように、レチクル保管部分14に保管されたレチクル22は、第1及び第2の拡散板24、26に対して直交して配置される。この配置によって、レチクル容器を入口ポート16から出口ポート18へ流れ通る浄化ガスが、確実に均一に流れ、それによって全てのレチクル22は実質的に均等に浄化ガスに曝されるので、最適に浄化される。この均一な流れは、特に開口部25a、25b、27a、27bのパターンによって促進され、このパターンによって、より周辺に配置されたレチクル(例えば図1に表示されたレチクル22b)に沿った浄化ガスの流れを、より中央のレチクル(例えば図1に表示されたレチクル22a)に沿った浄化ガスの流れに、確実に対応させる。
【0032】
通常、レチクル容器は、個々のレチクルを支えるための保持要素が設けられた本体部材と、本体部材によって画定された容積を閉じるよう適合された蓋と、を備える。このような本体部材及び蓋の好ましい実施形態を、図3及び図4にそれぞれ示す。図1及び図2を参照してすでに説明した、同一又は類似の構成要素は、図3及び図4で同じ参照番号を有することに留意されたい。
【0033】
図3は、本体部材10aを示す。本体部材10aは、本体部材10aの対向する両内壁に、複数の保持要素11を備える。保持要素は、個々のレチクルを支えるよう適合される。これを例示するために、図3に一つのレチクル22を示す。このレチクル22は、両端が対応する保持要素11上に静止している。直接的に示されるように、保持要素11はレチクル22を水平に保管するよう適合される。図3の実施形態による保持要素11は、張り出し部として提供される。
【0034】
本体要素10aは、例えばアルミニウム又はステンレス鋼などの金属材料で製作される。
【0035】
本体部材10a又はレチクル容器と、その中に保管されたレチクル22との間の静電気の影響を防ぐために、各保持要素11には、ポリマー材料で作られた挿入物13が設けられる。したがって、レチクル容器10内の保持要素11上に保管されたレチクルは、これらの保持要素とは直接接触せず、挿入物13によって保持要素から絶縁されることになる。挿入物13は、本体部材10aの内側壁にも設けることができる。この電気絶縁は更に、レチクルがレチクル容器内の塵粒などの汚染物を引き付ける傾向を軽減させる。挿入物13は、レチクルの引っかき傷を防止するのにも役立つ。
【0036】
図3で判るように、本体部材10aの背面側には、図1の実施形態と類似の、拡散板26及び出口ポート(図3では不可視)が設けられる。拡散板26の中央セクションにおける開口部27aaには、周辺セクションの開口部27bよりも大きい開口面積が提供される。
【0037】
容器ストッカ内での取り扱いを容易にするため、本体部材10aには支持部10bが設けられる。
【0038】
図4に示すような蓋10cは、本体部材10aと相互作用するよう、すなわち本体部材10aによって画定された容量を堅く閉じて、レチクル容器10の囲われた内部を提供するよう適合される。
【0039】
蓋10cには、係止機構17が設けられる。係止機構17は、本体部材10aの外側壁に設けられた溝19と相互作用するよう適合される(図3参照)。蓋の内縁部41及び/又は本体部材10aの開口部の縁部31には封止部材が設けられ、係止機構17と溝19との相互作用により、蓋と本体部材との間でガスを通さない接続が実現される。
【0040】
蓋には拡散板24が設けられる。蓋10cに更に設けられた入口ポート16は、図4では不可視である。
【0041】
拡散板24の中央セクションにおける開口部25aには、上記の説明のように、周辺又は縁部セクションの開口部25bよりも大きい開口面積が提供される。特に、拡散板の少なくともいくつかの縁部の近傍における開口部には、最小の開口面積が提供される。いくつかの実施形態において、拡散板の上縁部及び/又は底縁部のみに、最小の開口面積が提供される。他の実施形態において、拡散板の全ての縁部に、最小の開口面積が提供される。
【0042】
蓋10cは、例えばアルミニウム及び/又はステンレス鋼などの金属材料で製作される。
【0043】
拡散板24、26は、ステンレス鋼で作られるのが好ましい。しかし、アルミニウムもまた使用され得る。
【0044】
図3を参照して説明したように、示されたレチクル容器は、レチクルを水平に保管するよう適合される。
【0045】
有利には、レチクルは、拡散板に対して直交して保管される。レチクル容器内で垂直に保管することも、可能である。この場合、安全な位置付け及び取り扱いを確保するために、保持要素が溝として有利に提供される。
【0046】
本体要素10a及び蓋10cを備えるレチクル容器10は、レチクル・ストッカ内にレチクルを保管するよう適合される。レチクルを挿入又は抜き出すために、蓋10cは本体部材から取り外される。
【0047】
レチクル・ストッカ内の通常の保管状態では、入口ポート16は、加圧した浄化ガス源に接続される。上述の方法でレチクル容器に流れ通した後、浄化ガスはレチクル・ストッカの中に放出され、そこから真空デバイスによってレチクル・ストッカから吸い出される。
【0048】
図5において、本発明による拡散板の好ましい実施形態の別の設計を示す。図5に示す拡散板は、上記で記述したように、第1及び/又は第2のいずれかの拡散板として使用できる。これらの拡散板設計のうちで異なるものを、第1及び第2の拡散板として、それぞれ利用することも可能である。図5aによる設計は、中央セクションに実質的に正方形の開口部50、及び周辺セクションにスリット形の開口部52を備える。この実施形態において、正方形の開口部50は、単位面積当たりでスリット形の開口部52よりも大きい合計開口面積を提供する。便宜上の単位面積サイズは、例えば図5aでは80で表わされる。このような単位面積は、図5の別の実施形態には示されない。
【0049】
図5bの実施形態によると、三角形の開口部54が設けられる。これらの三角形の開口部54の底部は、拡散板の中央セクションに位置され、先端部は、上部及び底部の周辺セクションに向けられる。また、中央セクションを上部及び底部の周辺セクションと比較すると、単位面積当たりの合計開口面積は、中央セクションの方が大きい。
【0050】
図5cの実施形態によると、より大きい正方形の開口部56が拡散板の中央セクションに設けられ、より小さい正方形の開口部58が周辺セクションに設けられる。また、単位面積当たりの合計開口面積は、中央セクションの方が大きい。
【0051】
図5dの実施形態によると、いくつかの長方形又は矩形の開口部58が設けられる。中央セクションの開口部は、左右の周辺セクションの開口部よりも大きく、したがって開口面積は、中央セクションからこれら周辺セクションに向かって減少する。
【0052】
図5eによる拡散板の実施形態は、図5cの実施形態との類似点を有する。しかし、ここで全ての正方形の開口部60は、同じ開口面積を有する。しかし、開口部の密度は、周辺セクションよりも中央セクションの方が高い。したがって、中央セクションは、周辺セクションと比べて単位面積当たりで大きい合計開口面積を有する。
【0053】
図5fの実施形態によると、長方形又は矩形の開口部62が設けられ、その開口面積は、拡散板の左右の周辺セクションに向かって減少する。
【0054】
図5gの実施形態によると、いくつかの楕円形の開口部64が設けられる。中央セクションの楕円形の開口部64は、左右の周辺セクションの開口部と比べて、大きい開口面積を有する。
【0055】
図5hの実施形態によると、いくつかの三角形の開口部66、68が設けられる。ここで再び図5bに類似して、三角形の開口部の底部が中央セクションに位置され、開口部の先端部が拡散板の周辺セクションに位置される。したがって、単位面積当たりの合計開口面積は、周辺セクションよりも中央セクションの方が大きい。
【0056】
図5iの実施形態によると、いくつかの矩形又は長方形の開口部70が設けられ、その開口面積は、中央セクションから左右並びに上部及び底部の周辺セクションに向かって減少する。
【0057】
理解されるように、且つ上記で部分的に詳述したように、これら全ての拡散板の設計には、周辺セクションに比べて中央セクションの方が、大きい個々の開口面積を有する開口部が設けられ、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供する。
【符号の説明】
【0058】
10 レチクル容器
11 保持要素
12 内部
13 挿入物
14 レチクル保管部分
16 入口ポート
17 係止機構
18 出口ポート
19 溝
22 レチクル
24 第1の拡散板
25 開口部
26 第2の拡散板
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図5i
【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル保管部分(14)内で、少なくとも2枚のレチクル(22)を保管するよう適合された囲われた内部(12)を画定し、浄化ガスを前記囲われた内部(12)に通して入れることができる入口ポート(16)と、前記浄化ガスを前記囲われた内部(12)から通して出すことができる出口ポート(18)とを備える、レチクル容器であって、前記入口ポート(16)と前記レチクル保管部分(14)との間であって、前記囲われた内部(12)に配置された、第1の拡散板(24)を更に備え、前記第1の拡散板(24)には、前記浄化ガスが流れることができる開口部(25a、25b)が設けられ、前記第1の拡散板(24)の中央セクションの開口部(25a)には、前記第1の拡散板(24)の周辺セクションの開口部(25b)よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供するレチクル容器であって、
個々の前記開口部は、円形、又は楕円形、又は正方形、又は三角形、又は長方形、又は卵形、又は三日月形、又はスリット形、又は多角形の開口面積を備えるレチクル容器
【請求項2】
前記レチクル保管部分(14)と前記出口ポート(18)との間に配置された、第2の拡散板(26)が設けられる請求項1に記載のレチクル容器。
【請求項3】
前記第2の拡散板(26)に、前記浄化ガスが流れ通ることができる開口部(27a、27b)が設けられ、前記第2の拡散板(26)の中央セクションにおける開口部(27a)に、前記第2の拡散板(26)の周辺セクションの開口部(27b)よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供する請求項2に記載のレチクル容器。
【請求項4】
前記レチクル保管部分(14)が、少なくとも2枚のレチクルを保管するよう設けられ、それによって各レチクルが、前記第1の拡散板(24)及び/又は前記第2の拡散板(26)に対して実質的に垂直に延びる請求項1から3のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項5】
少なくとも一部が少なくとも一つの金属材料で作られ、前記金属材料が特にアルミニウム及び/又はステンレス鋼で構成される請求項1から4のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項6】
保持要素、特にスロット又は張り出し部を備え、前記スロット又は前記張り出し部の上又は間にレチクルを位置付けることができる請求項1から5のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項7】
前記保持要素に、ポリマー材料で作られた挿入物及び/又はライニングが設けられる請求項6に記載のレチクル容器。
【請求項8】
2、3、4、5、6、7、8、9、又は10枚以上のレチクル(22)を保管するよう適合される請求項1から7のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項9】
前記第1の拡散板(24)の開口部(25a、25b)及び/又は前記第2の拡散板(26)の開口部(27a、27b)に、少なくとも2つ、特に2、3、4、5又は6つの異なる個々の開口面積が提供され、前記開口面積が、前記第1及び/又は前記第2の拡散板の中央セクションにおける開口部の最大の個々の開口面積から、前記第1及び/又は前記第2の拡散板の前記周辺セクションの近傍における最小の開口面積まで減少する請求項1から8のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項10】
最も外側の開口部の全てが、前記中央セクションの開口部よりも小さい個々の開口面積である請求項1から9のいずれか1項に記載のレチクル容器。
【請求項11】
レチクル容器の内部において、前記レチクル容器の入口ポートと、前記レチクル容器のレチクル保管部分との間、及び/又は、前記レチクル容器の前記レチクル保管部分と、前記レチクル容器の出口ポートとの間に使用されるよう適合された、拡散板であって、開口部が設けられ、前記拡散板の中央セクションの開口部に、前記拡散板の周辺セクションの開口部よりも、大きい個々の開口面積が提供され、及び/又は、単位面積当たりで大きい合計開口面積を提供する拡散板。
【請求項12】
請求項1から1のいずれか1項に記載のレチクル容器に使用されるよう適合される拡散板。
【外国語明細書】