(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120002
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ナット供給装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/14 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B23K11/14 310
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092164
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018166116の分割
【原出願日】2018-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】593049017
【氏名又は名称】セキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 直樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロッドの前進と気体吹出口からの気体の噴出とを同期させて操作を簡単にする。
【解決手段】ナット供給装置1は、ナットNのねじ孔に挿通する小径部13を先端部に有し、前進によってナットNを目的位置に供給するロッド8と、ロッド8の前進方向側が開放する有底筒状のシリンダ4と、シリンダ4に嵌挿され、シリンダ4内のロッド8の前進方向側とは反対側に空気室7を区画するピストン5とを備える。ロッド8は、ピストン5に同心状に設けられて前進方向側に突出している。ロッド8の小径部13の外周部には、ロッド8の前進方向側とは反対側に臨むように空気吹出口13bが開設されている。ピストン5及びロッド8には、その中心軸上に空気室7と空気吹出口13bとを連通する空気通路16が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットを目的位置に供給するためのナット供給装置であって、
ナットのねじ孔に挿通する小径部を先端部に有し、前進によってナットを上記目的位置に供給するロッドと、
上記ロッドの前進方向側が開放する有底筒状のシリンダと、
上記シリンダに嵌挿され、上記シリンダ内の上記ロッドの前進方向側とは反対側に気体室を区画するピストンとを備え、
上記ロッドは、上記ピストンに同心状に設けられて上記前進方向側に突出しており、
上記ロッドの上記小径部の外周部には、上記ロッドの前進方向側とは反対側に臨むように気体吹出口が開設され、
上記ピストン及び上記ロッドには、その中心軸上に上記気体室と上記気体吹出口とを連通する気体通路が形成されている、ナット供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定場所にナットを供給するための、例えば、ナット抵抗溶接機に対してナットを供給するためのナット供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナット供給装置として、種々の開示がされている。例えば、特許文献1では、部品供給装置が開示されている。この部品供給装置は、空気噴射口を送給通路の前方に向かって開口させ、空気噴射口の開口位置とほぼ同じかまたはそれよりも部品の送給方向の逆側に過小部品を送給通路から排除する排出口が設けられている。送給通路の長手方向に沿った排出口の長さは部品の送給方向の長さよりも長く設定され、排出口の両側に正常サイズの部品を滑動させるためのガイド面が送給通路の長手方向に沿って設けられている。これにより、排出口を跨ぐことができない過小部品は排出口から転落する。かかる構成より、過小部品の排出を確実に行うとともに、送給通路内の圧力変動に十分に追従して円滑な送給ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目的位置にナットを供給するナット供給装置に関して、ロッドの前進と気体吹出口からの気体の噴出とを同期させて、操作を簡単にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、ナットを目的位置に供給するためのナット供給装置を対象とする。このナット供給装置は、ナットのねじ孔に挿通する小径部を先端部に有し、前進によってナットを上記目的位置に供給するロッドと、上記ロッドの前進方向側が開放する有底筒状のシリンダと、該シリンダに嵌挿され、該シリンダ内の該ロッドの前進方向側とは反対側に気体室を区画するピストンとを備え、該ロッドは、該ピストンに同心状に設けられて該前進方向側に突出しており、該ロッドの該小径部の外周部には、該ロッドの前進方向側とは反対側に臨むように気体吹出口が開設され、該ピストン及び該ロッドには、その中心軸上に該気体室と該気体吹出口とを連通する気体通路が形成されている。
【0006】
この発明では、気体室に気体を供給することで、ピストンがロッドの前進方向側に押圧されて、ロッド(ピストン)が前進する。このとき、気体室に供給された気体の一部は気体通路を通じて、気体吹出口から噴出される。
【0007】
すなわち、ロッド(ピストン)が前進するとき、ナットのねじ孔に挿通した小径部の気体吹出口から、該ロッドの前進方向側とは反対側に向かって、つまりナットに向かて、気体が噴出される。これにより、ナットがロッドの小径部から外れにくくなり、ロッドの小径部がナットを確実に保持したまま、ナットを目的位置まで供給することができる。
【0008】
また、ナットをロッドの小径部に保持する必要があるロッドが前進するときは、気体室に気体が供給されるときであり、このときは、気体吹出口から気体が噴出されることになる。したがって、ロッドの前進と、気体吹出口からの気体の噴出が同期するので、操作が簡単である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロッドの前進と、気体吹出口からの気体の噴出が同期するので、操作が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るナット供給装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ナット供給装置の全体を示す一部断面で示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、ナット供給装置のうちロッドの前進方向側の詳細を示す正面断面図である。
【
図4】
図4は、ロッドの先端部の詳細を示す正面図である。
【
図5】
図5は、ナット受けを扉を除いた状態で示す斜視図である。
【
図7】
図7は、ナット受けを扉を除いた状態で示す側面図である。
【
図8】
図8は、ロッドが前進及び後退する動作の状態を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、正規ナットが目的位置に供給される動作の状態を扉を除いた状態で示す概略構成図である。
【
図10】
図10は、過小ナットが排出孔から排出される動作の状態を扉を除いた状態で示す概略構成図である。
【
図11】
図11は、過小ナットがロッドの前進方向に押し出される動作の状態を扉を除いた状態で示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
(実施形態)
-―装置構成-―
図1に示すナット供給装置1は、ナット抵抗溶接機の所定位置(目的位置)にナットNを供給するためのものである。
図1に示すように、ナット供給装置1は、エアシリンダ(ロッド駆動手段)2を有する。エアシリンダ2の先端部には、円筒状のロッドホルダー3がエアシリンダ2と同心状に連結されている。具体的には、
図2に示すように、エアシリンダ2は、円筒状のシリンダ4を有しており、このシリンダ4の先端部(
図2で左側)に、ロッドホルダー3の基端部が気密状に接続している。
【0013】
図2に示すように、前記シリンダ4内にはピストン5が、該シリンダ4内を気密状に摺動するように、該シリンダ4に同心状に嵌挿している。また、シリンダ4の基端にはシリンダヘッド6が、該シリンダ4の基端に蓋をするように気密状に固定されている(すなわち、シリンダ4は先端側が開放する有底円筒状であるといえる)。シリンダ4、ピストン5及びシリンダヘッド6によって、シリンダ4内の基端側に第1空気室7が区画されている。
【0014】
図2に示すように、前記ピストン5には、ピストン5から先端側に延びるようにロッド8がピストン5と同心状かつ気密状に接続している(ロッド8はピストン5に同心状に設けられて先端側に突出している)。このロッド8は、詳細は後述するが、前記エアシリンダ2の作動により、ピストン5と一体で前後に進退する(以下、先端側のことをロッド8の前進方向側、基端側のことをロッド8の前進方向側とは反対側という場合がある)。また、ロッド8は、基端ロッド9、連結ロッド10及び先端ロッド11から構成されている。ロッド8の構成について説明する。ピストン5には、ピストン5から先端側に延びるようにピストン5よりも外径の小さい円筒状の基端ロッド9がピストン5と同心状かつ気密状に接続している。具体的には、詳細な図示は省略するが、基端ロッド8の基端部に螺設された雄ねじと、ピストン5の中心孔5aの先端部に螺設された雌ねじとが気密状に螺合している。また、基端ロッド9の外径は、前記ロッドホルダー3の内径よりも小さい。
【0015】
図2に示すように、前記基端ロッド9の先端部には、円筒状の連結ロッド10が同心状に接続している。具体的には、基端ロッド9の先端部に螺設された雄ねじと、連結ロッド10の中心孔10aの基端部に螺設された雌ねじとが気密状に螺合している。また、連結ロッド10は、ロッドホルダー3内を摺動するように、ロッドホルダー3に同心状に嵌挿している。
【0016】
図2に示すように、前記連結ロッド10の先端部には、先端ロッド11が同心状に接続している。この先端ロッド11は、大径部12と、その先端側に該大径部12よりも外径の小さい小径部13とが同心状に続くように構成されている(すなわち、ロッド8は、先端部に小径部13を有する)。大径部12は円筒状であり、小径部13は軸心に中心穴13aが開いていて先端が塞がれている。連結ロッド10の前記中心孔10aの先端部に螺設された雌ねじと、先端ロッド11の大径部12の基端部に螺設された雄ねじとが気密状に螺合している。また、小径部13の先端部は、先端側に凸となるように丸みを帯びている。また、小径部13の外径は、
図4に示すように、後述する正規ナットN1のねじ孔32の内径D1よりも小さくなるように設定されている(すなわち、小径部13は正規ナットN1のねじ孔32に挿通することができる)。一方、大径部12の外径は、正規ナットN1のねじ孔32の内径D1及び過小ナットN2のねじ孔35の内径D2よりも大きくなるように設定されている。
【0017】
図3に示すように、前記先端ロッド11の前記大径部12と前記小径部13との境界部には、先端側(ロッド8の前進方向側)に臨む段差部14が形成されている。また、小径部13の外周部には、小径部13の中心穴13aに連通するように空気吹出口13bが開設されている。詳細は後述するが、空気吹出口13bは、
図4に示すように、該空気吹出口13bから噴出される空気が、段差部14に向かって噴出されるように該段差部14に臨むように(ロッド8の前進方向側とは反対側に臨むように)開口している。詳細は後述するが、本実施形態では、
図4に示すように、正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置に供給するとき、前記ピストン5及びロッド8を前進させて、ロッド8の小径部13を正規ナットN1のねじ孔32に挿通して、該正規ナットN1をロッド8の小径部13に保持するようにしている。そして、正規ナットN1に対して、空気吹出口13bから空気を噴出し、正規ナットN1を段差部14に押し付けることで、正規ナットN1をロッド8の小径部13から外れにくくしている。すなわち、小径部13の長さは、正規ナットN1の高さH1よりも大きくなければならないし、且つ、空気吹出口13bは、正規ナットN1を段差部14に押し付けることができる程度に、先端側に配置しなければならない。なお、空気吹出口13bは、小径部13の軸周に間隔をあけて複数開口させてもよい。
【0018】
前述したように、前記シリンダ4は、その先端部が前記ロッドホルダー3の基端部に気密状に接続されている。すなわち、
図2に示すように、シリンダ4内の前記ピストン5に対して前記第1空気室7の反対側(先端側)には、ロッドホルダー3,シリンダ4,ピストン5及び前記基端ロッド9によって、第2空気室15が区画されている。
【0019】
図2に示すように、前記ピストン5の前記中心穴5a、前記基端ロッド9の中心孔9a,前記連結ロッド10の前記中心孔10a,前記先端ロッド11の前記大径部12の中心孔12a及び前記小径部13の前記中心穴13aによって、前記第1空気室7と前記空気吹出口12bとを連通する空気通路16が形成されている(すなわち、ピストン5及びロッド8には、その中心軸上に第1空気室7と空気吹出口12bとを連通する空気通路16が形成されている)。
【0020】
次に、前記エアシリンダ2の駆動システムについて説明する。
図2に示すように、前記第1空気室7は、空気給排通路Aを通じて、ソレノイド式の切換弁17に接続している。一方、前記第2空気室15は、空気給排通路Bを通じて、該切換弁17に接続している。この切換弁17は、コンプレッサ等の空気供給手段P及び排気ダクト等の空気排出手段EA,EBに接続しており、後述する切換弁17のモードの切換えによって、これらの接続は切換えられる。切換弁17は、「前進モード」、「中立モード」、「後退モード」の3つのモードを有し、これらのモードは、切替え可能である。すなわち、切換弁17が「前進モード」のとき、空気給排通路Aを通って、空気供給手段Pから第1空気室7へ空気が供給される一方、空気給排通路Bを通って、第2空気室15から空気排出手段EBへ空気が排出される。切換弁17が「中立モード」のとき、空気給排通路Aを通って、第1空気室7から空気排出手段EAへ空気が排出される一方、空気給排通路Bを通って、第2空気室15から空気排出手段EBへ空気が排出される。切換弁17が「後退モード」のとき、空気給排通路Aを通って、第1空気室7から空気排出手段EAへ空気が排出される一方、空気給排通路Bを通って、空気供給手段Pから第2空気室15へ空気が供給される。切換弁17が「前進モード」のときロッド8(ピストン5)は前進し、「中立モード」のときロッド8は停止し、「後退モード」のときロッド8は後退する。これは、第1空気室7に供給された空気は、ロッド8の前進方向へピストン5を押圧することでロッド8(ピスト
ン5)を該前進方向へ前進させる一方、第2空気室15に供給された空気は、ロッド8の
前進方向とは反対方向へピストン5を押圧することでロッド8(ピストン5)を該前進方向とは反対方向へ後退させるからである。すなわち、エアシリンダ2は、ロッド8(ピストン5)を進退駆動させているといえる。また、切換弁17は、図示しないが、マイクロコンピュータ等の公知の制御手段によってモードの切換制御を行うことができる。
【0021】
図3,5に示すように、前記ロッドホルダー3の先端部には、ナット受け18が固定されている。ナット受け18はホース状のナットシュータ(ナット送り手段)19によって送られてきたナットNを受けるものである(ナットシュータ19はナット受け18にナットNを送るものである)。なお、
図5は、ナット受け18を後述する扉(蓋部)28を除いた状態で示す斜視図である。具体的には、ナット受け18は、ナットシュータ19から送られてきたナットNを受け止めるストッパ(ナット受け面)20を備えている。ここで、ナットNの送給方向について、ストッパ20側(
図3で下側)がナットNの送給方向の下流側、ナットシュータ19側(
図3で上側)がナットNの送給方向の上流側ということができる(以下、
図3で上側をナットNの送給方向上流側、
図3で下側をナットNの送給方向下流側という場合がある)。このストッパ20は、
図5に示すように、ロッド8の前進方向側に開口する該前進方向側からみて略矩形状の凹条からなる排出孔21を形成している(すなわち、ナット受け18は、ストッパ20に開口した排出孔21を備えている)。また、ストッパ20におけるナットNの送給方向上流側(
図3で上側)には、
図5に示すように、ロッド8の前進方向側に開口する該前進方向側から見て略矩形状の凹条からなる溝部22bを形成するガイド部材22が備えられている。これら排出孔21及び溝部22bの詳細については後述する。また、ガイド部材22には、ロッド8を挿通するためのロッド出入口22aが開設されている。ガイド部材22には、該ガイド部材22からナットNの送給方向上流側(
図3で上側)に向かって立ち上がったロッド8の前進方向側に開口する溝型のチャンネル部材23が固定されており、その内部にナットシュータ19におけるナットNの送給方向下流側の端部(
図3で下端部)を収容している。すなわち、ナットシュータ19におけるナットNの送給方向上流側の端部は、チャンネル部材23に対して、該チャンネル部材23におけるナットNの送給方向上流側の端(
図3で上端)から突出している。そして、チャンネル部材23には、その長さ方向(
図3で上下方向)の全てに亘って、該開口(溝)、すなわち、ロッド8の前進方向側を塞ぐように、プレート24が取付けられている。これにより、チャンネル部材23の内部に、ナットシュータ19におけるナットNの送給方向下流側の端部(図で下端部)を固定している。ストッパ20、ガイド部材22(溝部22b)、チャンネル部材23及びプレート24によって、ナット受け室25が形成されている。このナット受け室25には、ナットシュータ19からナットNが送られてくるようになっている。
【0022】
図3に示すように、前記ナット受け室25は、そのナットNの送給方向上流側の端(
図3で上端)がナットシュータ19からナットNを受け入れるナット入口26となって開口し、前記ストッパ20と前記プレート24との間がナット出口27となってロッド8の前進方向側の面に開口している。このナット出口27は前記ロッド出入口22aに対向しており、ロッド8の前進方向に回転して開く開閉自在の扉(蓋部)28によって塞がれている(すなわち、扉28は、ナット受け18におけるロッド8の前進方向側に設けられている)。具体的には、ストッパ20におけるナットシュータ19側とは反対側の端部(
図3で下端部)の両側端部から、それぞれロッド8の前進方向へ突出した軸受部材(図示せず)にヒンジ軸29が渡されている。そして、扉28は、そのナットシュータ19側とは反対側の端(
図3で下端)がヒンジ軸29に支持されて、ロッド8の前進方向へ回転して開くようになっている。ここで、扉28がナット出口27(ナット受け18におけるロッド8の前進方向側)を塞ぐ姿勢を閉姿勢とし、ナット出口27を開放する姿勢を開姿勢とする。すなわち、扉28は、閉姿勢から開姿勢まで開閉自在である。また、扉28は、ヒンジ軸29に設けた付勢手段としてのキックバネ30によって、所定の付勢力でナット出口27を閉じる閉方向に(閉姿勢に閉じるように)付勢されている(すなわち、扉28に負荷が加わらないときは、閉姿勢となる)。キックバネ30の付勢力に抗して、扉28を開姿勢に開くことで、扉28は、ナット出口27を開放する。
【0023】
図3に示すように、前記ナットシュータ19は、そのナットNの送給方向下流側の端部(
図3で下端部)が、前述したように、前記チャンネル部材23と前記プレート24によって、該チャンネル部材23内部に固定されている。一方、ナットシュータ19は、そのナットNの送給方向上流側の端部が、ナット選別機(図示せず)に接続されている。ナット選別機は、溶接すべき正規ナットN1よりも大径のナットが排除されるようにナットNを選別し、且つ選別した各ナットNの表裏を一定の向きにしてナットシュータ19に送るものである。具体的には、ナット選別機は、後述するナットNの突出部33,36が設けられている側の面をロッド8の前進方向に、該ナットNのねじ孔32,35の軸心をロッド8の進退方向に向けて、ナットNを、ナットシュータ19に送っている。そして、ナットNは、ナット受け18のナット受け室25に順次送られるようになっている。
【0024】
次に、ナットNの構成について説明する。
図6に示すように、本実施形態において対象とするナットNは、四角溶接ナットである。また、本実施形態では、ナットNを、正規サイズの正規ナットN1と、正規ナットN1よりも小さい過小ナットN2とに分類している。例えば、正規ナットN1をM8ナットとすれば、それよりも小さいナット(例えば、M6ナット)は、過小ナットN2となる。
【0025】
正規ナットN1は、正四角柱状の本体部31の中心部にねじ孔32が螺設され、該本体部31の底面の四隅の各頂点それぞれから、溶接用の突出部33が対角線方向外側に突出するように構成されている。ここで、外形寸法として、本体部31の各辺の長さをS1、ねじ孔32の内径をD1、辺方向に互いに対向する突出部33,33の外側同士の間隔をL1、高さ(突出部33を含む)をH1としている。なお、突出部33,33の外側同士の間隔L1は、本体部31の各辺の長さS1よりも大きい。ここで、本実施形態では、正規ナットN1の幅方向は、本体部31の辺方向とする。また、正規ナットN1の幅寸法は、該突出部33,33の外側同士の間隔L1とする(以下、幅寸法L1という場合がある)。
【0026】
過小ナットN2も、正規ナットN1と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。過小ナットN2は、正規ナットN1に相当する各構成要素として、本体部34,ねじ孔35及び突出部36を有する。正規ナットN1に相当する外形寸法として、S2,D2,L2及びH2を有する。正規ナットN1と同様に、過小ナットN2の幅方向は、本体部34の辺方向とし、過小ナットN2の幅寸法は、L2とする。なお、前述したように、前記ロッド8の小径部13の外径は、正規ナットN1のねじ孔32の内径D1よりも小さくなるように設定されている一方、ロッド8の大径部12の外径は、正規ナットN1のねじ孔32の内径D1及び過小ナットN2のねじ孔35の内径D2よりも大きくなるように設定されている。
【0027】
図7は、ナット受け18を扉28を除いた状態で示す側面図である。この
図7に示すように、前記ストッパ20におけるロッド8の前進方向側の面の略中央部には、前述したように、ロッド8の前進方向側に開口する該前進方向側からみて略矩形状の凹条からなる前
記排出孔21が形成されている。具体的には、排出孔21は、該ストッパ20におけるナットシュータ19側の端(
図7で上端)から反対側の端(
図7で下端)にかけて切欠かれることで形成されている。これにより、排出孔21は、詳細は後述するが、ナットシュータ19から前記ナット受け室25に送られてきた過小ナットN2を排出する。同様に、
図7に示すように、前記ガイド部材22におけるロッド8の前進方向側の面の略中央部には、前述したように、ロッド8の前進方向側に開口する該前進方向側から見て略矩形状の凹条からなる前記溝部22bが形成されている。具体的には、溝部22bは、該ガイド部材22におけるナットシュータ19側の端(
図7で上端)から反対側の端(
図7で下端)にかけて切欠かれることで形成されている。
【0028】
ここで、
図7に示すように、前記排出孔21の幅寸法L3は、正規ナットN1の幅寸法L1よりも小さく、且つ、過小ナットN2の幅寸法L2よりも大きくなるように設定されている。前記ナット受け室25は、該ナット受け室25に、正規ナットN1が送られてきたとき(正規ナットN1がストッパ20に受け止められたとき)、該正規ナットN1のねじ孔32の軸心と、前記ロッド8の前記小径部13の軸心とが、略一致するように、該正規ナットN1を保持するように構成されている。具体的には、ナット受け室25に正規ナットN1が送られてきたときに(正規ナットN1がストッパ20に受け止められたときに)、該正規ナットN1のねじ孔32の軸心とロッド8の小径部13の軸心とが略一致するように、ストッパ20の位置、傾き等、ナット受け室25の側面(ガイド部材22の溝部22b)の位置、傾き等が、調整されている。これにより、ストッパ20は、正規ナットN1をそのねじ孔32にロッド8の小径部13が前進によって嵌まるように受けることができる。
【0029】
また、前記ナット受け室25の幅寸法(ガイド部材22の溝部22bの溝幅寸法)は、正規ナットN1を嵌挿して収容することができる程度の、該正規ナットN1の幅寸法L1よりもやや大きい程度の寸法であることが望ましい。これは、ナット受け室25に、正規ナットN1が送られてきたとき、正規ナットN1のねじ孔32の軸心と、前記ロッド8の前記小径部13の軸心とが略一致する状態を維持するためである。
【0030】
次に、ナット供給装置1で、ナット受け室25に送られてきた正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置に供給するまでの動作の状態について説明する。
【0031】
前述したように、ナット選別機によって、正規ナットN1は、表裏が一定の向きになるように前記ナットシュータ19に供給され、前記ナット受け室25に送られてくる。具体的には、このとき、正規ナットN1は、
図9(a)に示すように、前記本体部31における前記突出部33がある側をロッド8の前進方向に向けて、そのねじ孔32の軸心がロッド8の小径部13の軸心と略一致するように、前記ストッパ20で受け止められる。なお、このとき、正規ナットN1の幅寸法L1は、前記排出孔21の幅寸法L3よりも大きいので、正規ナットN1が排出孔21から排出されることはない。また、このとき、
図2に示すように、前記ピストン5及びロッド8は後退端に位置しており、ロッド8の小径部13の先端が、前記ガイド部材22の前記ロッド出入口22aに相当する位置に位置している。前記切換弁17のモードを「前進モード」に切換えると、前記第1空気室7に空気が供給され、空気圧が上昇し、ピストン5がロッド8の前進方向に押圧されて、ロッド8(ピストン5)が前進する。このとき、第1空気室7に供給された空気の一部は、前記空気通路16を通じて、前記空気吹出口13bから前記段差部14に向かって(ロッド8の前進方向側とは反対側に向かって)噴出される(
図4参照)。
【0032】
前記ロッド8(ピストン5)の前進を続けると、
図9(b)に示すように、前記ナット受け室25に送られてきた(ストッパ20で受け止められた)正規ナットN1の前記ねじ孔32に前進するロッド8の前記小径部13が挿通される。そして、前記段差部14が、正
規ナットN1の前記本体部31における前記突出部33がない側の面(以下、表面という
場合がある)に当接する。このとき、小径部13の先端は、正規ナットN1の本体部31
における突出部33がある側の面(以下、裏面という場合がある)よりも、ロッド8の前進方向側に位置する。このとき、
図4に示すように、小径部13の前記空気吹出口13bから段差部14の方向に向かって噴出する空気は、正規ナットN1の裏面に向かって噴出され、該正規ナットN1を段差部14に押し付ける。これにより、正規ナットN1がロッド8の小径部13から外れにくくなり、正規ナットN1をロッド8の小径部13に確実に保持することができる。
【0033】
前記ロッド8(ピストン5)の前進を続けると、ロッド8の小径部13の先端が、前記扉28をロッド8の前進方向に押し付ける。そして、ロッド8の前進に伴い、
図8(a)に示すように、該前進方向に押し付けられた扉28は、前記キックバネ30の付勢力に抗して、開方向に開くようになる。そして、前記ナット出口27を開放する開姿勢となる。ここで、該開姿勢の扉28は、キックバネ30の付勢力により、閉姿勢に閉じようとするが、
図8(a)に示すように、ロッド8(先端ロッド11)の外周面が扉28の開姿勢を維持するように該扉28を押さえ付けている。
【0034】
さらに、前記ロッド8(ピストン5)の前進を続けると、ロッド8は、正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置に供給する。図示しないが、ナット抵抗溶接機の所定位置には、電気抵抗溶接機の固定電極が配置されており、この固定電極に鋼板部材が載置されている。固定電極の同軸上には、鋼板部材を挟んで該固定電極とは反対側に、可動電極が配置されている。そして、ロッド8は、鋼板部材おける固定電極及び可動電極の中心軸位置に、正規ナットN1を、該正規ナットN1の突出部33が鋼板部材と当接するように供給する。正規ナットN1が鋼板部材に供給されたとき、正規ナットN1は、ロッド8の小径部13の先端部に移動するので、小径部13の先端部に設けられた前記空気吹出口13bを塞ぐようになる。したがって、空気吹出口13bから噴出される空気が、正規ナットN1を前記段差部14に押し付けることがなくなるので、正規ナットN1は、小径部13から外れやすくなる。したがって、正規ナットN1を、スムーズに、鋼板部材における固定電極及び可動電極の中心軸位置(所定位置)に供給することができる。このように、ロッド8は、前進によって、ナット受け室25に送られてきた(ストッパ20で受け止められた)正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置に供給する。正規ナットN1を所定位置に供給した後、前記切換弁17のモードを「中立モード」に切換えると前記第1空気室7への空気の供給が停止し、ロッド8(ピストン5)の前進が停止する。
【0035】
次に、ナット供給装置1で、正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置に供給した後、ロッド8(ピストン5)を後退端に戻すまでの動作の状態について説明する。
【0036】
前記切換弁17のモードを「後退モード」に切換えると、前記第2空気室15に空気が供給され、空気圧が上昇し、前記ピストン5がロッド8の前進方向とは反対方向に押圧されて、前記ロッド8(ピストン5)が後退する。ロッド8(ピストン5)の後退を続けると、ロッド8の小径部13の先端が前記ナット出口27近傍を通過したあたりで、前記扉28の開姿勢を維持させていたロッド8(先端ロッド11)の外周面の扉28に対する押さえ付けがなくなり、扉28は、ロッド8(ピストン5)の後退に伴い、前記キックバネ30の付勢力によって、閉姿勢に閉じるようになる。そして、ロッド8(ピストン5)は、
図8(b)に示すように、後退端まで後退し、ロッド8の小径部13の先端は、前記ガイド部材22の前記ロッド出入口22aに相当する位置に位置する。なお、ロッド8(ピストン5)が後退するとき、前記第1空気室7には、空気が供給されていないので、ロッド8の小径部13の空気吹出口13bから空気は噴出されない。
【0037】
次に、ナット供給装置1で、ナット受け室25に送られてきた過小ナットN2を排出孔21から排出する又はナット出口27から落下させる動作の状態について説明する。
【0038】
前記ナット受け室25に過小ナットN2が送られてきたとき、その幅方向が前記排出孔21の幅方向と略一致した場合、
図10(a),(b)に示すように、過小ナットN2の幅寸法L2は、排出孔21の幅寸法L3よりも小さいので、過小ナットN2は、ストッパ20で受け止められず排出孔21から排出される。
【0039】
前記ナット受け室25に送られてきた過小ナットN2は、その幅方向が前記排出孔21の幅方向と略一致しないとき、例えば、
図11(a)に示すように、過小ナットN2の幅方向と排出孔21の幅方向とが略一致した状態から該過小ナットN2が約45°回転した状態のとき、過小ナットN2は、排出孔21から排出されずに該排出孔21の縁に引っ掛かって(縁に支えられて)止まる場合がある。このとき、
図11(a)に示すように、過小ナットN2は、そのねじ孔35の軸心がロッド8の小径部13の軸心に対してずれている。
【0040】
この状態で、前記ロッド8(ピストン5)を前進させると、前述したように、過小ナットN2のねじ孔35の軸心がロッド8の小径部13の軸心に対してずれているので、
図11(b)に示すように、前進するロッド8の小径部13が当該過小ナットN2のねじ孔35に嵌まらず、過小ナットN2は、前進するロッド8によって押される。そして、さらにロッド8を前進させると、ロッド8が過小ナットN2を介して閉姿勢の扉28を開方向に押し出すことになる。その結果、扉28は、キックばね30の付勢力に抗して、開姿勢に開くことで、ナット出口27(ナット受け18におけるロッド8の前進方向側)は開放される。そして、過小ナットN2は、前進するロッド8によってナット出口27から押し出されて落下する。つまり、過小ナットN2は、ナット抵抗溶接機の所定位置(目的位置)には供給されない。
【0041】
-―作用効果-―
このように、本実施形態に係るナット供給装置1は、ナット受け室25に過小ナットN2が送られてきたとき、先ず、過小ナットN2を排出孔21から排出しようとするが、仮に、過小ナットN2を排出孔21から排出することができなくても、該過小ナットN2のねじ孔35と軸心がずれたロッド8の前進によって、過小ナットN2は、ナット出口27(ナット受け18)から押し出されて落下する。このような二段構えの過小ナット排出機構を備えることによって、より確実に過小ナットN2を排出することができ、これにより、過小ナットN2がナット抵抗溶接機の所定位置(目的位置)に供給されてしまうことを確実に防ぐことができる。
【0042】
また、ナット出口27を閉姿勢で覆う扉28が備えられているので、過小ナットN2がロッド8によって、その前進方向に強く押されても、過小ナットN2は、キックバネ30による扉28の閉方向への付勢によって、外部に弾き飛ばされることが防がれる。よって、過小ナットN2のナット出口27(ナット受け18)からロッド8の前進方向外部への排出が安全に行われる。
【0043】
さらに、正規ナットN1のねじ孔35にロッド8の小径部13を挿通してロッド8(ピストン5)が前進するとき、第1空気室7に供給された空気の一部が空気通路16を通じて空気吹出口13bから正規ナットN1の裏面に向かって噴出し、正規ナットN1を段差部14に押し付けるようにしている。したがって、正規ナットN1がロッド8の小径部13から外れにくくなり、ロッド8の小径部13が正規ナットN1を確実に保持したまま、正規ナットN1をナット抵抗溶接機の所定位置まで供給することができる。また、正規ナットN1をロッド8の小径部13に保持する必要があるロッド8が前進するときは、第1空気室7に空気が供給されるときであり、このときは、空気吹出口13bから空気が噴出
されることになる。つまり、ロッド8の前進と、空気吹出口13bからの空気の噴出が同期するので、操作が簡単である。
【0044】
(他の実施形態)
上記実施形態では、ナットNを四角溶接ナットとしていたが、これに限らず、例えば、六角溶接ナット又は丸型溶接ナット等の他の形状のナットでもよい。六角溶接ナットの場合、二面幅を幅寸法とし、二面幅方向を幅方向とすればよい。丸型溶接ナットの場合、外径を幅寸法とし、幅方向は任意でよい。また、ナットNを四角溶接ナットのうち、突出部33,36を設けないタイプのものとしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、第1及び第2空気室7,17に供給する気体を空気としていたが、必ずしも空気でなくてもよく、例えば、窒素等の他の気体でもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ロッド駆動手段としてエアシリンダ2を用いているが、これに限らず、例えば、サーボモータ、ステッピングモータ、リニアモータ、ラックギヤ式モータ等、様々な駆動手段を代わりに用いることができる。
【0047】
なお、本発明は、ナット受けのナット受け面に、排出孔が開口されない構成においても適応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ナットを目的位置に供給するナット供給装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0049】
N ナット
N1 正規ナット
N2 過小ナット
1 ナット供給装置
2 エアシリンダ(ロッド駆動手段)
4 シリンダ
5 ピストン
7 第1空気室(気体室)
8 ロッド
13 小径部
13b 空気吹出口(気体吹出口)
16 空気通路(気体通路)
18 ナット受け
19 ナットシュータ(ナット送り手段)
20 ストッパ(ナット受け面)
28 扉(蓋部)
30 キックバネ(付勢手段)
32 ねじ孔
35 ねじ孔