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特開2022-120011カラムに基づく高度にスケーラブルなrAAVの製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120011
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】カラムに基づく高度にスケーラブルなrAAVの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20220809BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C07K1/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092235
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018550782の分割
【原出願日】2017-03-31
(31)【優先権主張番号】62/316,252
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518138077
【氏名又は名称】スパーク セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPARK THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】チィ, グワン
(72)【発明者】
【氏名】オ, ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, リン
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ジョン フレーザー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】rAAVベクターの工業規模製造のために適当なスケーラブルな精製プロセスを提供する。
【解決手段】rAAVベクター粒子を含む細胞及び細胞培養上清を回収して回収物を製造するステップと、回収物を溶解して溶解物を製造するステップと、溶解物を処理して核酸が減少した溶解物を製造するステップと、核酸が減少した溶解物を濾過して清澄化された溶解物を製造するステップと、清澄化された溶解物をアニオン交換カラムクロマトグラフィーに供してカラム溶出物を製造するステップと、カラム溶出物をサイズ排除カラムクロマトグラフィーに供して第2のカラム溶出物を製造するステップと、第2のカラム溶出物をカチオン交換カラムクロマトグラフィーに供してrAAVベクター粒子で構成される第3のカラム溶出物を製造するステップと、第3のカラム溶出物を濾過して、それにより精製されたrAAVベクター粒子を製造するステップとを含む方法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に実質的に記載される発明。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0002]遺伝子送達は、後天性及び遺伝性の疾患の治療のために有望な方法である。アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく系を含む遺伝子移動が目的の幾つかのウイルスに基づく系が記載されている。
【0002】
[0003]AAVは、ディペンドウイルス属に属するヘルパー依存型DNAパルボウイルスである。AAVは、増殖性感染を起こすためにヘルパーウイルス、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアの機能を必要とする。ヘルパーウイルス機能の非存在下で、AAVは、そのゲノムを宿主細胞の染色体中に挿入することにより潜伏状態を確立する。ヘルパーウイルスによるその後の感染により、組み込まれたウイルスのゲノムがレスキューされ、次にそのゲノムが複製されて、感染性AAVの子孫を産生し得る。
【0003】
[0004]AAVは、広宿主域を有しており、適当なヘルパーウイルスの存在下で任意の種からの細胞で複製することができる。例えば、ヒトAAVは、イヌのアデノウイルスに共感染したイヌの細胞で複製することができる。AAVは、いかなるヒト又は動物の疾患とも関連したことがなく、組み込まれて宿主細胞の生物学的性質に悪く影響するようには思われない。
【0004】
[0005]AAVベクターは、AAVゲノムの内部部分を全体又は一部で欠失させて、目的の核酸配列をITR間に挿入することにより、目的の異種核酸配列(例えば、治療用タンパク質、阻害性の核酸、例えば、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA等をコードする選択された遺伝子)を担持するように作り変えることができる。ITRは、目的の異種核酸配列を含有するrAAVの複製及びパッケージングを可能にするそのようなベクター中で依然機能する。異種核酸配列は、患者の標的細胞中における核酸の発現を推進することができるプロモーター配列にも典型的には連結される。ポリアデニル化部位などの停止シグナルも、ベクター中に含まれ得る。
【0005】
[0006]感染性の組換えAAV(rAAV)ベクターの構築は、幾つかの出版物に記載されている。例えば、米国特許第5,173,414号及び第5,139,941号;国際公開第92/01070号及び国際公開第93/03769号;Lebkowskiら(1988)Molec.Cell.Biol.8:3988~3996;Vincentら(1990)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3:533~539;Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97~129;及びKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793~801を参照されたい。
【0006】
[0007]組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、複数のグループによる幾つかの初期臨床試験で優れた治療の見込みを示した。承認に向けたこの新しいクラスの生物学的製品の開発は、ベクターの設計及び製造プロセスのパラメーターが、臨床グレードのベクターにおける不純物プロファイルにどのように影響するかという、より良い理解を含むベクターの特徴付け及び品質制御方法における改善を含むであろう。
【0007】
[0008]rAAV製造及び精製系の設計における重要な目的は、製造に関連する不純物、例えば、タンパク質、核酸、及び野生型/偽野生型AAV種(wtAAV)を含むベクター関連不純物、並びにAAVカプシド形成された残存DNA不純物の発生を最小限化/制御する戦略を実行することである。AAVベクター中の不純物の除去は、rAAVベクターが製造される方法のために複雑である。1つの製造プロセスでは、rAAVベクターは、3種のプラスミドを使用する一過性のトランスフェクションプロセスにより製造される。相当な量のプラスミドDNAが細胞中に導入されてrAAVベクターを産生する。加えて、rAAVベクターが産生する細胞から放出されるときに、細胞のタンパク質及び核酸も共に放出される。rAAVベクターがバイオマスの約1%に過ぎないことを考えると、rAAVベクターを臨床のヒト遺伝子療法製品として使用され得るレベルの純度に精製することは非常な難題である。(Smith PH Wright JF.Qu G.ら2003、Mo.Therapy、7:8348;Chadeuf G.ら、Mo.Therapy 2005、12:744。CHMP遺伝子療法のエキスパートグループのミーティングからの報告。欧州医薬品庁EMEA/CHMP 2005、183989/2004)。
【0008】
[0009]組換えAAVを、ヒトの疾患を治療するための製品として精製する製造プロセスの開発では、以下の目的を達成すべきである:1)一貫したベクター純度、力価及び安全性;2)製造プロセス大規模化の可能性;並びに3)許容される製造コスト。現行の「工業標準」のスケーラブルなAAVベクターの精製プロセスは、上に挙げた第1の目的(一貫したベクター純度、力価及び安全性)を満たすために重要な不純物の除去を適切に達成しない。その上、現行の工業標準のスケーラブルな精製プロセスを使用して不純物を適切に除去できなかったのは:1)ワクチン以外の用途の組換えAAVなどのウイルス製品の精製プロセスの開発(そこでは、免疫応答が、典型的には、避けられるよりもむしろ求められる)が比較的新しいこと;2)AAVベクターのためのスケーラブルな精製プロセスの開発に関与する多くのグループが、高レベルのベクター関連不純物に気づかないできたこと、及び/又はそのような不純物が、臨床的に有意なベクターの免疫原性に寄与しないと仮定してきたこと;並びに3)rAAVベクターの工業規模製造のために適当なスケーラブルな精製プロセスを開発することが技術的に難題であることのためである。
【0009】
[発明の概要]
[0010]本発明により、幾つかの態様では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター粒子を精製するための方法であって、(a)rAAVベクター粒子を含む細胞及び/又は細胞培養上清を回収して、回収物を製造するステップと、(b)任意選択でステップ(a)で製造された収穫物を濃縮して、濃縮された回収物を製造するステップと、(c)ステップ(a)で製造された回収物又はステップ(b)で製造された濃縮された回収物を溶解して、溶解物を製造するステップと、(d)溶解物を処理して溶解物中の混入核酸を減少させ、それにより核酸が減少した溶解物を製造するステップと、(e)ステップ(d)で製造された核酸が減少した溶解物を濾過して、清澄化された溶解物を製造し、任意選択で清澄化された溶解物を希釈して、希釈され清澄化された溶解物を製造するステップと、(f)ステップ(e)で製造された清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物を、アニオン又はカチオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成されるカラム溶出物を製造し、任意選択でカラム溶出物を濃縮して、濃縮されたカラム溶出物を製造するステップと、(g)ステップ(f)で製造されたカラム溶出物又は濃縮されたカラム溶出物を、サイズ排除カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第2のカラム溶出物を製造し、それによりタンパク質不純物からrAAVベクター粒子を分離して、任意選択で第2のカラム溶出物を希釈して、希釈された第2のカラム溶出物を製造するステップと、(h)ステップ(g)で製造された第2のカラム溶出物又は希釈された第2のカラム溶出物を、カチオン又はアニオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第3のカラム溶出物を製造し、それによりrAAVベクター粒子をタンパク質又は他の産生不純物から分離して、任意選択で第3のカラム溶出物を濃縮して、濃縮された第3のカラム溶出物を製造するステップと、(i)ステップ(h)で製造された第3のカラム溶出物又は濃縮された第3のカラム溶出物を濾過して、それにより精製されたrAAVベクター粒子を製造するステップとを含む方法が本明細書で提供される。以下の実施形態及び態様は、上のステップ(a)から(h)までの1つ又は複数に関連している。
【0010】
[0011]ある実施形態では、ステップ(f)は、ステップ(e)で製造された清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物を、アニオン交換クロマトグラフィーに供することを含み、及び/又はステップ(h)は、ステップ(g)で製造された第2のカラム溶出物又は希釈された第2のカラム溶出物をカチオン交換カラムクロマトグラフィーに供することを含む。ある実施形態では、ステップ(f)は、ステップ(e)で製造された清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物を、カチオン交換クロマトグラフィーに供することを含み、及び/又はステップ(h)は、ステップ(g)で製造された第2のカラム溶出物又は希釈された第2のカラム溶出物を、アニオン交換カラムクロマトグラフィーに供することを含む。
【0011】
[0012]幾つかの態様では、ステップ(b)及び/又はステップ(f)及び/又はステップ(h)の濃縮は、限外濾過/透析濾過によってなされ、任意選択でタンジェンシャルフロー濾過によってなされる。幾つかの実施形態では、ステップ(b)の濃縮は、回収された細胞及び細胞培養上清の体積を、約2~10分の1に減少させる。ある実施形態では、ステップ(f)の濃縮は、カラム溶出物の体積を約5~20分の1に減少させる。幾つかの態様では、ステップ(a)で製造された回収物又はステップ(b)で製造された濃縮された回収物の溶解は微小流動化による。
【0012】
[0013]ある実施形態では、ステップ(b)の後及びステップ(c)の前に、方法は、ステップ(b)(i)を含む。ある実施形態では、ステップ(b)(i)は、溶解物中の混入核酸を減少させることを含む。幾つかの実施形態では、ステップ(b)(i)は、溶解物をヌクレアーゼで処理して、それにより混入核酸を減少させることを含む。ある実施形態では、ヌクレアーゼはベンゾナーゼを含む。
【0013】
[0014]幾つかの実施形態では、ステップ(e)の清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物の濾過は、両端を含めて約0.1~0.8ミクロンの間の細孔直径を有するフィルターによる。ある実施形態では、ステップ(e)の清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物の希釈は、酢酸塩緩衝水溶液を用いる。
【0014】
[0015]幾つかの実施形態では、ステップ(g)の第2のカラム溶出物の希釈は、酢酸塩緩衝水溶液を用いる。ある実施形態では、酢酸塩緩衝水溶液は、両端を含めて約4.0~7.0の間のpHを有する。
【0015】
[0016]幾つかの実施形態では、rAAVベクター粒子は、界面活性剤を用いて製剤化され、AAVベクター製剤が製造される。ある実施形態では、ステップ(i)から生じたrAAVベクター粒子は、界面活性剤を用いて製剤化されて、AAVベクター製剤が製造される。
【0016】
[0017]幾つかの実施形態では、ステップ(f)のカチオン又はアニオン交換カラムクロマトグラフィーは、ポリエチレングリコール(PEG)調整カラムクロマトグラフィーを含む。ある実施形態では、ステップ(f)のカチオン又はアニオン交換カラムクロマトグラフィーは、rAAVベクター粒子のカラムからの溶出の前に、カラムをPEG溶液で洗浄することを含む。ある実施形態では、PEG溶液中のPEGは、両端を含めて約1,000~50,000の範囲の平均分子量を有する。幾つかの実施形態では、ステップ(e)のカチオン又はアニオン交換カラムは、rAAVベクター粒子のカラムからの溶出の前に、カラムを界面活性剤水溶液で洗浄することを含む。ある実施形態では、ステップ(h)のカチオン又はアニオン交換カラムは、カラムからのrAAVベクター粒子の溶出の前に、カラムを界面活性剤溶液で洗浄することを含む。幾つかの実施形態では、PEG溶液及び/又は界面活性剤溶液は、トリスCl/NaCl緩衝水溶液又はリン酸/NaCl緩衝水溶液を含む。ある実施形態では、NaCl緩衝液は、両端を含めて約20~250mMの間のNaCl、又は両端を含めて約50~200mMの間のNaClを含む。
【0017】
[0018]幾つかの実施形態では、rAAVベクター粒子は、ステップ(f)のカチオン又はアニオン交換カラムから、トリスCl/NaCl緩衝水溶液に溶出される。ある実施形態では、トリスCl/NaCl緩衝液は、50~200mMのNaClを含む。ある実施形態では、rAAVベクター粒子は、ステップ(h)のカチオン又はアニオン交換カラムから、リン酸/NaCl緩衝水溶液に溶出される。幾つかの実施形態では、リン酸/NaCl緩衝液は、両端を含めて約100~500mMの間のNaClを含む。ある実施形態では、ステップ(f)のカチオン交換カラムは、第四級アンモニウム官能基を含む。ある実施形態では、第四級アンモニウム官能基は、四級化されたポリエチレンイミンを含む。
【0018】
[0019]ある実施形態では、例えば、ステップ(g)のサイズ排除カラム、両端を含めて約10,000~600,000の間の分離範囲(分子量)を有する。幾つかの実施形態では、ステップ(h)のカチオン交換カラムは、スルホン酸を含む。幾つかの実施形態では、ステップ(h)のカチオン交換カラムは、スルホプロピルを含む。
【0019】
[0020]ある実施形態では、本明細書で開示される方法は、塩化セシウム勾配超遠心分離のステップを除外する。
【0020】
[0021]ある実施形態では、rAAVベクター粒子は、siRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム及びshRNAからなる群から選択される核酸をコードする導入遺伝子を含む。幾つかの実施形態では、rAAVベクター粒子は、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛膜性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、TGFβ、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3及びNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞成長因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ並びにチロシンヒドロキシラーゼからなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む。
【0021】
[0022]幾つかの実施形態では、rAAVベクター粒子は、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL1~IL-17)、単球走化性タンパク質、白血病阻止因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンド、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスIIのMHC分子からなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む。
【0022】
[0023]ある実施形態では、rAAVベクター粒子は、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネートシンテターゼ、アルギノスクシネートリアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテートヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンベータ-シンターゼ、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、RPE65、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)配列、及びジストロフィンcDNA配列からなる群から選択される先天性代謝異常の修正に有用なタンパク質をコードする導入遺伝子を含む。幾つかの実施形態では、rAAVベクター粒子は、第VIII因子又は第IX因子をコードする導入遺伝子を含む。
【0023】
[0024]ある実施形態では、本明細書で記載された方法は、ステップ(a)で製造された回収物、又はステップ(b)で濃縮された回収物から全rAAVベクター粒子の約40~70%を回収する。幾つかの実施形態では、本明細書で記載された方法は、AAV親和性カラム精製により製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する。幾つかの実施形態では、本明細書で記載された方法は、アニオン交換カラム精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する。ある実施形態では、本明細書で記載された方法は、アニオン交換カラム及びカチオン交換精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する。
【0024】
[0025]ある態様では、rAAVベクター粒子(例えば、真正のrAAVベクター粒子)は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAV10、AAVtyr-3、(3YAF、例えば、米国特許第8,445,267号を参照されたい)細胞を標的とするペプチドなどのペプチドが改変されたAAVカプシドからなる群から選択されるAAVから誘導される。
【0025】
[0026]幾つかの態様では、真正のrAAVベクター粒子は、最後(例えば、ステップ(h)の第3のカラム溶出物)に約100mg/mLの濃度で存在する。幾つかの態様では、真正のrAAVベクター粒子は、最後(例えば、ステップ(h)の第3のカラム溶出物)に1mL当たり1015粒子若しくはそれを超える、1mL当たり1016粒子若しくはそれを超える、又は、例えば、1mL当たり1017粒子若しくはそれを超える濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】アニオン、ゲル濾過(サイズ排除)及びカチオンクロマトグラフィーカラムを用いる代表的な全てのカラムのAAV精製スキームを示す図である。AIEX-アニオン交換クロマトグラフィー;UF/DF-限外濾過/透析濾過;SEC-サイズ排除クロマトグラフィー;及びCIEX、カチオン交換クロマトグラフィー。スキームは、逆の順で実施することもできる。
図2】カラムに基づくAAV精製プロセスを開発するための種々の設計の選択肢を示す図である。
図3】4通りの(1~4)異なる精製スキームを用いるAAV精製の比較結果を示す図である:(1)AVB(抗体に基づくAAV親和性カラム);並びに異なるカラムとの組合せ、即ち(2)AIEX及びCIEXと組み合わせたAVB(AAV親和性カラム);(3)AIEXと組み合わせたAVB(AAV親和性カラム);並びに(4)SEC-サイズ排除及びCIEXクロマトグラフィーと組み合わせたAIEX。結果は、精製スキーム(4)ではスキーム(1)及び(2)より不純物が少なく、スキーム(3)よりも少ない可能性もあることを示す。示したように、濃縮のためにUF/DF-限外濾過/透析濾過を使用したが、任意選択でカラムAAV精製スキームに含める。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0027]本発明は、現行の「工業標準」のスケーラブルなAAVベクター精製プロセスと区別される独特の特徴を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(rAAV)のベクター精製プラットフォームを提供する:1)プロセス不純物及び製造に関連する不純物の除去を含む、異なるAAVベクターの血清型/カプシド変異体の精製のために使用することができる規格ユニットで組み立てたプラットフォームプロセス。2)多くの異なる血清型/偽型のrAAVベクターを精製する予想外の大規模化の可能性を与えるクロマトグラフィーステップ及びプロセスステップの独特の組合せ。
【0028】
[0028]不純物には、タンパク質、核酸(例えばDNA)、細胞成分、例えば、AAVベクターとはっきり区別される不純物である細胞内及び膜の成分を含むAAVベクター製造に関連する不純物が含まれる。用語「ベクター-製造に関連する不純物」とは、AAV製造プロセス中に放出される任意の成分を指す。
【0029】
[0029]真正の(Bona fide)AAVベクターとは、標的細胞に感染することができる異種核酸(例えば導入遺伝子)を含むAAVベクター粒子を指す。フレーズは、空のAAVカプシド、パッケージングされたゲノム中に完全な挿入を欠くAAVベクター、又は混入宿主細胞の核酸を含有するAAVベクターを除外する。ある実施形態では、真正のAAVベクターとは、パッケージングされたベクターゲノム中に混入プラスミド配列も欠くAAVベクター粒子を指す。
【0030】
[0030]「空のカプシド」及び「空の粒子」とは、AAVカプシドシェルを含むが、片側又は両側にAAVのITRが隣接する異種核酸配列を含むゲノムを全体又は部分で欠くAAV粒子又はビリオンを指す。そのような空のカプシドは、異種核酸配列を宿主細胞又は生物体内の細胞中に移動させるように機能しない。
【0031】
[0031]用語「ベクター」とは、小さい担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えば、AAVベクター)、又は核酸の挿入若しくは組み込みにより操作され得る他のビヒクルを指す。ベクターは、ポリヌクレオチドを細胞中に導入/移動するために、及び挿入されたポリヌクレオチドを細胞中で転写又は翻訳するために、遺伝子操作(即ち、「ベクターをクローニング」)するために使用することができる。「発現ベクター」は、宿主細胞における発現のために必要な調節領域を有する遺伝子又は核酸配列を含有するベクターである。ベクター核酸配列は、少なくとも、細胞中における増殖のための複製の起点及び任意選択で追加の要素、例えば、異種核酸配列、発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー)、イントロン、逆位末端反復(ITR)、任意選択の選択可能なマーカー、ポリアデニル化シグナルを一般的に含有する。
【0032】
[0032]AAVベクターは、アデノ随伴ウイルスから誘導される。AAVベクターは、遺伝子療法ベクターとして有用であり、その理由は、AAVベクターが、細胞中に侵入して、核酸/遺伝子材料を導入することができて、その結果、核酸/遺伝子材料が細胞中で安定に維持され得るからである。加えて、これらのウイルスは、核酸/遺伝子材料を特定の部位、例えば、第19染色体上の特定の部位などに導入することができる。AAVは、ヒトにおける病原性疾患と関連しないので、AAVベクターは、異種核酸配列(例えば、治療用タンパク質及び作用物質)をヒトの患者に、実質的なAAV病原性又は疾患を引き起こすことなく送達することができる。
【0033】
[0033]rAAVベクターなどのベクターの変更遺伝子として、並びに組換えポリヌクレオチド及びポリペプチドなどの変更遺伝子の配列としての用語「組換え」は、一般的に天然では起こらない様式で、組成が操作された(即ち、作り変えられた)ことを意味する。組換えAAVベクターの特定の例は、野生型AAVゲノムには通常存在しない核酸が、ウイルスのゲノム内に挿入された場合であろう。例は、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする核酸(例えば、遺伝子)が、遺伝子がAAVゲノム内で通常関連する5’、3’及び/又はイントロン領域とともに又はそれなしでベクター中にクローニングされる場合であろう。本明細書では、用語「組換え」が、AAVベクター、並びにポリヌクレオチドなどの配列に関して使用されるとは限らないが、AAVベクター、ポリヌクレオチド等を含む組換え形態は、任意のそのような省略にも拘わらず明らかに含まれる。
【0034】
[0034]「rAAVベクター」は、AAVゲノムから野生型ゲノムを除去して、非天然の(異種)核酸、例えば治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする核酸で置き換える分子法を使用することにより、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムから誘導される。典型的には、AAVについて、AAVゲノムの片側又は両側の逆位末端反復(ITR)配列が、rAAVベクターで保持される。rAAVは、AAVゲノムの全部又は一部が、AAVゲノムの核酸に関して、非天然の配列で、例えば、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする異種核酸で置き換えられているので、AAVゲノムと明白に区別される。非天然の配列の組み込みは、それゆえに、AAVを「組換え」AAVベクターと定義し、「rAAVベクター」と称することができる。
【0035】
[0035]組換えAAVベクター配列は、パッケージングすることができて、エクスビボ、インビトロ又はインビボにおける細胞のその後の感染(形質導入)について、本明細書では「粒子」と称する。組換えベクター配列が、AAV粒子中にカプシド形成されているか又はパッケージングされている場合、粒子は、「rAAV」又は「rAAV粒子」又は「rAAVビリオン」と称することもできる。そのようなrAAV、rAAV粒子及びrAAVビリオンは、ベクターゲノムをカプシド形成するか又はパッケージングするタンパク質を含む。特定の例として、AAVの場合、カプシドタンパク質が含まれる。
【0036】
[0036]ベクター「ゲノム」とは、最終的にパッケージングされるか又はカプシド形成されてrAAV粒子を形成する組換えプラスミド配列の部分を指す。組換えプラスミドが組換えAAVベクターを構築するか又は製造するために使用される場合に、AAVベクターゲノムは、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」の部分を含まない。この組換えプラスミドの非ベクターゲノム部分は、「プラスミド骨格」と称され、プラスミド骨格は、プラスミドのクローニング及び増幅、増殖及び組換えウイルス産生のために必要なプロセスのために重要であるが、それ自体はrAAV粒子中にパッケージング又はカプシド形成されない。したがって、ベクター「ゲノム」とは、rAAVによりパッケージングされているか又はカプシド形成された核酸を指す。
【0037】
[0037]「AAVヘルパー機能」とは、AAV由来のコード配列(タンパク質)を指し、そのコード配列は、発現されてAAV遺伝子生成物及びAAVベクターを提供することができて、順送りで、transの形態で増殖性AAV複製及びパッケージングのために自動的に機能する。したがって、AAVヘルパー機能は、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)、rep及びcapの両方を含む。rep発現生成物は、とりわけ:DNA複製のAAV起源の認識、結合及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;並びにAAV(又は他の異種)プロモーターからの転写の調整を含む多くの機能を有することが示されている。cap発現生成物(カプシド)は必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターゲノムから消失しているAAV機能をtransの形態で補うために使用される。
【0038】
[0038]「AAVヘルパー構築物」とは、例えば、対象に対する遺伝子療法のために、目的の核酸配列を送達するための形質導入AVVベクターを製造するために使用されるべきAAVベクターから欠失されたAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸配列を一般的に指す。AAVヘルパー構築物は、AAVベクター複製に必要な消失しているAAV機能を補うために、AAVのrep及び/又はcap遺伝子を一過性で発現させるために、通常使用される。ヘルパー構築物は、AAVのITRを一般的に欠いて、それら自体で複製もパッケージングもできない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態にあることができる。幾つかのAAVヘルパー構築物は、Rep及びCap発現生成物の両方をコードするプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45などと記載されている(例えば、Samulskら(1989)J.Virol.63:3822~3828;及びMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936~2945を参照されたい)。Rep及び/又はCap発現生成物をコードする多くの他のベクターが記載されている(例えば、米国特許第5,139,941号及び第6,376,237号を参照されたい)。
【0039】
[0039]用語「補助機能」とは、AAVが複製のために依存する、AAVに由来しないウイルスの及び/又は細胞の機能を指す。用語は、AAV遺伝子転写の活性化、ステージ特異的なAAVのmRNAスプライシング、AAVのDNA複製、Cap発現生成物の合成及びAAVカプシドのパッケージングに関与する部分を含むAAV複製で必要とされるタンパク質及びRNAを含む。ウイルスに基づく補助機能は、任意の公知のヘルパーウイルス、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(1型単純ヘルペスウイルス以外)及びワクシニアウイルスから誘導することができる。
【0040】
[0040]「補助機能ベクター」とは、補助機能を提供するポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を一般的に指す。そのような配列は、補助機能ベクター上にあり、適当な宿主細胞にトランスフェクトされ得る。補助機能ベクターは、宿主細胞中におけるrAAVビリオン産生を支持することができる。補助機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン又はコスミドの形態にあることができる。加えて、全部のアデノウイルス遺伝子は、補助機能のために必要ではない。例えば、DNA複製及び晩発の遺伝子合成ができないアデノウイルス突然変異体は、AAV複製の複製を許容すると報告されている(Itoら、(1970)J.Gen.Virol.9:243;Ishibashiら、(1971)Virology 45:317)。同様に、E2B及びE3領域内の突然変異体は、AAV複製を支持することが示されており、E2B及びE3領域は、補助機能を提供することにおそらく関与しないことが示される(Carterら、(1983)Virology 126:505)。E1領域に欠陥があるか、又はE4領域が欠失しているアデノウイルスは、AAV複製を支持することができない。したがって、E1A及びE4領域は、直接又は間接的のいずれかで、AAV複製のために必要であると思われる(Laughlinら、(1982)J.Virol.41:868;Janikら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925;Carterら、(1983)Virology 126:505)。他のキャラクタライズされているアデノウイルス突然変異体には:E1B(Laughlinら(1982)、前出;Janikら(1981)、前出;Ostroveら、(1980)Virology 104:502);E2A(Handaら、(1975)J.Gen.Virol.29:239;Straussら、(1976)J.Virol.17:140;Myersら、(1980)J.Virol.35:665;Jayら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927;Myersら、(1981)J.Biol.Chem.256:567);E2B(I CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen編、1990)におけるCarter、Adeno-Associated Virus Helper Functions);E3(Carterら(1983)、前出);及びE4(Carterら(1983)、前出;Carter(1995))が含まれる。E1Bコード領域における突然変異を有するアデノウイルスにより提供される補助機能の研究は、相反する結果を生じたが、E1B55kはAAVビリオン産生のために必要である可能性があり、一方、E1B19kは必要ではない(Samulskiら、(1988)J.Virol.62:206~210)。加えて、国際公開第97/17458号及びMatshushitaら、(1998)Gene Therapy 5:938~945には、種々のアデノウイルス遺伝子をコードする補助機能ベクターが記載されている。例示的な補助機能ベクターは、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、及び完全E1B55kコード領域を欠くアデノウイルスE1B領域を含む。そのような補助機能ベクターは、例えば、国際公開第01/83797号に記載されている。
【0041】
[0041]本明細書において使用する用語「血清型」は、他のAAV血清型と血清学的に区別されるカプシドを有するAAVを指して使用される区別である。血清学的特殊性は、あるAAVを別のAAVと比較して抗体間の交差反応性の欠如を根拠に決定される。交差反応性の差は、カプシドタンパク質の配列/抗原決定基における差に通常起因する(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3配列のAAV血清型の差に起因する)。
【0042】
[0042]従来の定義に基づき、血清型は、目的ウイルスが、全ての既存の及びキャラクタライズされた血清型に対して特異的な血清に対して、中和活性について試験されて、目的ウイルスを中和する抗体が見出されなかったことを意味する。より多くの天然に生ずるウイルス単離体が発見されて及び/又はカプシド突然変異体が発生するので、現在存在する血清型のいずれかと血清学的差があることもあり、ないこともある。したがって、新しいウイルス(例えば、AAV)が血清学的差を有しない場合、この新しいウイルス(例えば、AAV)は、対応する血清型のサブグループ又は変異体である。多くの場合、カプシド配列が改変された突然変異体ウイルスについて、血清型の従来の定義による別の血清型のものであるかどうかを決定するために、中和活性についての血清学試験が、さらに実施されなければならない。したがって、便宜上及び繰り返しを避けるために、用語「血清型」とは、血清学的に区別されるウイルス(例えばAAV)並びに所与の血清型のサブグループ又は変異体の内であり得て血清学的に区別されないウイルス(例えば、AAV)の両方を広く指す。
【0043】
[0043]rAAVベクターは、任意のウイルス株又は血清型を含む。非限定的な例として、rAAVプラスミド又はベクターゲノム又は粒子(カプシド)は、任意のAAV血清型、例えば、AAV-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11などに基づき得る。そのようなベクターは、同じ株又は血清型に基づき得るか(又はサブグループ若しくは変異体)、又は互いに異なることもできる。非限定的な例として、1つの血清型のゲノムに基づくrAAVプラスミド又はベクターゲノム又は粒子(カプシド)は、ベクターをパッケージングするカプシドタンパク質の1種又は複数と同一であることができる。加えて、rAAVプラスミド又はベクターゲノムは、ベクターゲノムをパッケージングするカプシドタンパク質の1種又は複数と区別されるAAV(例えば、AAV2)の血清型ゲノムに基づき得、その場合、3種のカプシドタンパク質のうちの少なくとも1種が、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの変異体であることができる。rAAVベクターは、それゆえに、特定の血清型、並びに混合血清型に対して特徴的な遺伝子/タンパク質配列と同一の遺伝子/タンパク質配列を含む。
【0044】
[0044]種々の例示的な実施形態では、rAAVベクターは、1種又は複数のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、又はAAV11のカプシドタンパク質と少なくとも70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等)同一のカプシド配列を含むか又はそれらからなる。種々の例示的な実施形態では、rAAVベクターは、1種又は複数のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、又はAAV11のITR(複数可)と少なくとも70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等)同一の配列を含むか又はそれらからなる。
【0045】
[0045]rAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、及びAAV11、並びに変異体、ハイブリッド及びキメラ配列は、当業者に公知の組換え技法を使用して、1種又は複数の機能的AAVのITR配列が隣接する1種又は複数の異種ポリヌクレオチド配列(導入遺伝子)を含むように構築することができる。そのようなベクターは、全体又は一部が欠失した野生型のAAV遺伝子の1種又は複数を有するが、rAAVベクター粒子中に組換えベクターをレスキュー、複製、及びパッケージングするために必要なので、少なくとも1種の機能的な隣接して存在するITR配列(複数可)を保持する。rAAVベクターゲノムは、それゆえに、複製及びパッケージングのために必要な配列(例えば、機能的ITR配列)を、cisの形態で含む。
【0046】
[0046]用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書では、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む核酸、オリゴヌクレオチドの全て形態を指して互換的に使用される。核酸は、ゲノムDNA、cDNA及びアンチセンスDNA、及びスプライスされた又はスプライスされていないmRNA、rRNA、tRNA及び阻害DNA又はRNA(RNAi、例えば、小さい若しくは短いヘアピン(sh)RNA、ミクロRNA(miRNA)、小さい若しくは短い干渉(si)RNA、trans-スプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)を含む。核酸は、天然に生ずる、合成の、及び意図的に改変された又は変えられたポリヌクレオチドを含む。核酸は、一重、二重、又は三重、直鎖状又は環状であることができ、任意の長さのものであることができる。核酸を論ずる際に、本明細書では、特定のポリヌクレオチドの配列又は構造は、5’から3’方向で配列を提供する慣行に従って記載されることがある。
【0047】
[0047]「異種」核酸配列とは、ベクターに媒介される、ポリヌクレオチドの細胞中への移動/送達を目的として、AAVプラスミド又はベクターに挿入されたポリヌクレオチドを指す。異種核酸配列は、AAV核酸と区別される、即ち、AAV核酸に関して非天然である。細胞中に移動/送達されれば、ベクター内に含有される異種核酸配列が、発現され得る(例えば、適当ならば、転写されて翻訳される)。或いは、細胞中の移動/送達されたベクター内に含有される異種ポリヌクレオチドは、発現されなくてもよい。用語「異種」は、本明細書では、核酸配列及びポリヌクレオチドの言及に使用されるとは限らないが、核酸配列又はポリヌクレオチドに対する言及は、「異種」変更遺伝子の非存在下でさえ、省略にも拘わらず、異種核酸配列及びポリヌクレオチドを含むことが意図される。
【0048】
[0048]「核酸配列」によりコードされる「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」は、結果として、改変された形態又は変異体が天然の全長タンパク質のある程度の機能性を保持する限り、天然に生ずるタンパク質、並びに機能的部分配列、改変された形態又は配列変異体と同様に、天然の全長配列を含む。核酸配列によりコードされるそのようなポリペプチド、タンパク質及びペプチドは、処置される哺乳類で欠陥のある、又は発現が不十分若しくは不完全である内因性タンパク質と同一であることができるが、そうである必要はない。
【0049】
[0049]「導入遺伝子」は、本明細書では、細胞又は生物体に意図されるか又は導入されている核酸(例えば異種)を指して便利に使用される。導入遺伝子は、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする異種核酸などの任意の核酸を含む。
【0050】
[0050]導入遺伝子を有する細胞中で、導入遺伝子は、プラスミド又はAAVベクター、細胞の「形質導入」又は「トランスフェクション」により、導入/移動されている。用語「形質導入」及び「トランスフェクト」とは、核酸などの分子の宿主細胞(例えば、HEK293)又は生物体の細胞中への導入を指す。導入遺伝子は、受容細胞のゲノム核酸中に組み込まれてもよく組み込まれなくてもよい。導入された核酸が受容細胞又は生物体の核酸(ゲノムDNA)中に組み込まれれば、導入された核酸は、その細胞又は生物体中で安定に維持されることができ、受容細胞又は生物体の細胞の子孫細胞又は生物体にさらに受け渡され、又はそれらにより継承される。
【0051】
[0051]「宿主細胞」とは、AAVベクターのプラスミド、AAVヘルパー構造体、補助機能ベクター、又は他の転移DNAのレシピエントとして使用され得るか又は使用された、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物の細胞を指す。用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」とは、外来性DNA配列をトランスフェクトされた細胞を一般的に指す。単一の親細胞の子孫は、自然の、偶発性の、又は故意の突然変異に起因して、形態又はゲノム又は全DNAの相補体が、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいと理解される。例示的な宿主細胞は、HEK293などのヒト胚腎臓(HEK)細胞を含む。
【0052】
[0052]「形質導入された細胞」は、導入遺伝子が導入されている細胞である。したがって、「形質導入された」細胞は、外来性分子、例えば、核酸(例えば、導入遺伝子)の細胞中への組み込み後の細胞における遺伝的変化を意味する。したがって、「形質導入された」細胞は、外来性核酸が導入されている細胞又はその子孫である。細胞(複数可)は、増殖する(培養する)ことができ、細胞により、導入されたタンパク質が発現され若しくは核酸が転写され、又はrAAVなどのベクターが産生される。遺伝子療法の使用及び方法のために、形質導入された細胞は対象に存在し得る。
【0053】
[0053]細胞に関して、本明細書において使用する用語「安定」、又は「安定に組み込まれた」は、選択可能なマーカー若しくは異種核酸配列などの核酸配列、又はプラスミド若しくはベクターが、染色体に挿入されているか(例えば、相同性組換え、非相同性末端結合、トランスフェクション等により)、又は受容細胞若しくは宿主生物体の染色体外で維持され、及び染色体中にとどまるか、又はある期間、染色体外で維持されることを意味する。培養細胞の場合、染色体中に挿入された異種核酸配列などの核酸配列、又はプラスミド若しくはベクターは、複数の細胞継代の過程にわたり維持され得る。
【0054】
[0054]「細胞株」とは、インビトロの適当な培養条件下で連続した又は長期の成長及び分割が可能な細胞の集団を指す。細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローンの集団であり得るが、そうである必要はない。細胞株では、自発的な又は誘導された変化が、そのようなクローンの集団の貯蔵又は移動中、並びに組織培養における長期の継代中に核型で起こり得る。したがって、細胞株に由来する子孫細胞は、祖先細胞又は培養物と厳密には同一でないこともある。本発明の精製方法に適用可能な例示的な細胞株はHEK293である。
【0055】
[0055]「発現制御要素」とは、作動可能に連結した核酸の発現に影響する核酸配列(複数可)を指す。制御要素は、本明細書で説明されるプロモーター及びエンハンサーなどの発現制御要素を含む。rAAVベクターは1種又は複数の「発現制御要素」を含むことができる。典型的には、そのような要素が含まれて、適当な異種ポリヌクレオチドの転写及び適当ならば翻訳を容易にする(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAのフレーム内翻訳を可能にする遺伝子の正確な読み取りフレームの維持、及び停止コドン等)。そのような要素は、典型的には、cisの形態で作用して、「cis作用性」要素と称されるが、transの形態で作用することもある。
【0056】
[0056]発現制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージの安定性等のレベルで影響され得る。典型的には、転写を調整する発現制御要素は、転写される核酸の5’末端付近(即ち、「上流」)に並置される。発現制御要素は、転写される配列の3’末端(即ち、「下流」)に又は転写物内(例えば、イントロン中)に配置することもできる。発現制御要素は、転写される配列に隣接して、又は距離をおいて(例えば、ポリヌクレオチドから1~10、10~25、25~50、50~100、100~500、又はそれを超えるヌクレオチド)、かなりの距離でも配置され得る。それにも拘わらず、rAAVベクターの長さの制限があるので、発現制御要素は、典型的には、転写される核酸から1~1000ヌクレオチド以内である。
【0057】
[0057]機能的に、作動可能に連結した核酸の発現は、要素(例えば、プロモーター)により少なくとも部分的に制御可能であり、その結果、要素が核酸の転写及び、適当な場合には、転写物の翻訳を調整する。発現制御要素の具体的な例は、プロモーターであり、プロモーターは転写される配列の5’に通常位置する。プロモーターは、典型的には、作動可能に連結した核酸から発現される量を、プロモーターが存在しない場合に発現される量と比較して増大させる。
【0058】
[0058]本明細書において使用する「エンハンサー」は、選択可能なマーカーなどの核酸配列又は異種核酸配列に隣接して位置する配列を指すことができる。エンハンサー要素は、典型的には、プロモーター要素の上流に位置するが、機能しもする、そして配列の下流又は配列内部に位置することもできる。それゆえに、エンハンサー要素は、上流でも下流でも、例えば、選択可能なマーカー、及び/又は治療用タンパク質若しくはポリヌクレオチド配列をコードする異種核酸の100塩基対、200塩基対、又は300以上の塩基対以内に位置することができる。エンハンサー要素は、典型的には、作動可能に連結した核酸の発現を、プロモーター要素により生ずる発現を超えて増大させる。
【0059】
[0059]用語「作動可能に連結した」は、核酸配列の発現に必要な調節配列が、核酸配列の発現に効果をもたらすように、配列に対して適当な位置に置かれることを意味する。この同じ定義が、時には、発現ベクター、例えば、rAAVベクターにおける核酸配列及び転写制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び停止要素)の配置に適用される。
【0060】
[0060]核酸と作動可能に連結している発現制御要素の例では、関係は、制御要素が核酸の発現を調整するようになっている。より詳細には、例えば、作動可能に連結した2つのDNA配列は、2つのDNAがDNA配列の少なくとも1つが他の配列に対して生理学的効果を及ぼすことができる、そのような関係で配置されている(cis又はtrans)ことを意味する。
【0061】
[0061]したがって、ベクターのための追加要素は、AAVのITR配列、又はイントロンの1つ又は複数のコピーなどの配列に隣接して存在する、発現制御要素(例えば、プロモーター/エンハンサー)、転写停止シグナル又は停止コドン、5’又は3’の非翻訳領域(例えば、ポリアデニル化(polyA)配列)を含むが、これらに限定されない。
【0062】
[0062]さらなる要素は、例えば、パッケージングを改善し、混入核酸の存在を減少させるための、例えば、フィラー又はスタッファーのポリヌクレオチド配列を含む。AAVベクターは、典型的には、一般的に約4kb~約5.2kb、又は僅かにそれを超えるサイズ範囲を有するDNAの挿入を受け入れる。したがって、より短い配列に対して、rAAV粒子中へのベクターのパッケージングのために許容されるウイルスゲノム配列の正常サイズ近くに又は正常サイズに、長さを調節するために、スタッファー又はフィラーが含まれる。種々の実施形態では、フィラー/スタッファーの核酸配列は、核酸の非翻訳(非タンパク質コード)セグメントである。4.7Kb未満の核酸配列に対して、フィラー又はスタッファーのポリヌクレオチド配列は、配列と組み合わされたときに(例えば、ベクター中に挿入)、約3.0~5.5Kbの間、又は約4.0~5.0Kbの間、又は約4.3~4.8Kbの間の全長を有する長さを有する。
【0063】
[0063]「治療用タンパク質」は、一実施形態では、細胞又は対象におけるタンパク質の不十分な量、不在又は欠陥から生ずる症状を緩和するか又は軽減することができるペプチド又はタンパク質である。導入遺伝子によりコードされる「治療用」タンパク質は、対象に恩恵を与える、例えば、遺伝的欠陥を修正する、遺伝子の(発現又は機能的)欠損等を修正することができる。
【0064】
[0064]本発明により有用な遺伝子生成物(例えば、治療用タンパク質)をコードする異種核酸の非限定的な例は、「鬱血」又は血液凝固障害、例えば、血友病A、阻害抗体を有する血友病A患者、血友病B、凝固因子VII、VIII、IX及びX、XI、V、XII、II、フォンウィレブラント因子の欠損、組み合わされたFV/FVIII欠損、地中海貧血、ビタミンKエポキシドレダクターゼC1欠損、ガンマ-カルボキシラーゼ欠損;貧血、外傷、傷害、血栓症、血小板減少症、脳卒中、凝血異常、播種性血管内凝固(DIC)と関連する出血;ヘパリン、低分子量ヘパリン、五糖、ワーファリン、低分子抗血栓薬(即ち、FXa阻害剤)に関連する過抗凝固;並びに血小板障害、例えば、ベルナールスリエ症候群、グランツマン血小板無力症、及び貯蔵プール欠乏症を含むが、これらに限定されない疾患又は障害の治療で使用され得るものを含む。
【0065】
[0065]核酸分子、ベクター、例えば、クローニングベクター、発現ベクター(例えば、ベクターゲノム)及びプラスミドは、組換えDNA技法を使用して調製することができる。ヌクレオチドの配列情報が入手できることは、種々の手段による核酸分子の調製を可能にする。例えば、ベクター又はプラスミドを含む第IX因子(FIX)をコードする異種核酸は、種々の標準的クローニング、組換えDNA技術を使用して、細胞発現又はインビトロ翻訳及び化学合成技法により作製することができる。ポリヌクレオチドの純度は、配列決定、ゲル電気泳動等により決定することができる。例えば、核酸は、ハイブリダイゼーション又はコンピューターに基づくデータベーススクリーニング技法を使用して単離することができる。そのような技法は、(1)相同性ヌクレオチド配列を検出するプローブを用いるゲノムDNA又はcDNAライブラリーのハイブリダイゼーション;(2)例えば、発現ライブラリーを使用して、共有される構造的特徴を有するポリペプチドを検出する抗体スクリーニング;(3)目的の核酸配列とアニーリングすることができるプライマーを使用するゲノムDNA又はcDNAにおけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR);(4)関連する配列についての配列データベースのコンピューター検索;及び(5)差し引かれた核酸ライブラリーの示差的スクリーニングを含むが、これらに限定されない。
【0066】
[0066]用語「単離された」は、組成物の変更遺伝子として使用される場合、組成物がヒトの手により作製されるか、又は完全に若しくは少なくとも部分的に、天然に生ずるものからインビボ環境で分離されることを意味する。一般的に、単離された組成物は、通常天然に伴う1種又は複数の材料、例えば、1種又は複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜を実質的に含まない。
【0067】
[0067]タンパク質に関して、用語「単離されたタンパク質」又は「単離され精製されたタンパク質」は、時に、本明細書で使用される。この用語は、核酸分子の発現により産生するタンパク質を主として指す。或いは、この用語は、天然で伴われる他のタンパク質から十分に分離されて、その結果「実質的に純粋」な形態で存在するタンパク質を指すこともある。
【0068】
[0068]用語「単離された」は、ヒトの手によって製造した組合せ、例えば、組換えrAAV及び薬学的製剤を除外しない。用語「単離された」は、組成物の代替的物理的形態、例えば、ハイブリッド/キメラ、多量体/オリゴマー、改変(例えば、リン酸化、グリコシル化、脂質修飾)若しくは誘導体化された形態、又はヒト手により製造した宿主細胞中で発現された形態も除外しない。
【0069】
[0069]用語「実質的に純粋」とは、少なくとも50~60重量%の目的の化合物(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質等)を含む調製物を指す。調製物は、少なくとも75重量%、又は約90~99重量%の目的のある化合物を含むことができる。純度は、目的のある化合物に適当な方法(例えば、クロマトグラフィーの方法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析等)により測定される。
【0070】
[0070]「から本質的になる」というフレーズは、特定のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を指す場合、所与の配列の性質を有する配列を意味する。例えば、アミノ酸配列に関して使用される場合、フレーズは、配列それ自体及び配列の基本的及び新規特性に影響しない分子改変を含む。
【0071】
[0071]rAAVビリオンを発生させるための方法、例えば:AAVベクター及びAAVヘルパー配列を、1種のAAVヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルス)との共感染と併せて使用するトランスフェクション、又は組換えAAVベクター、AAVヘルパーベクター、及び補助機能ベクターを用いるトランスフェクションが当技術分野で公知である。rAAVビリオンを発生させるための非限定的な方法は、例えば、米国特許第6,001,650号及び第6,004,797号に記載されている。組換えrAAVベクターの産生(即ち、細胞培養系におけるベクターの発生)の後、rAAVビリオンが宿主細胞及び細胞培養上清から得られ、本明細書で説明されるように精製され得る。
【0072】
[0072]初期ステップとして、典型的には、rAAVビリオンを産生する宿主細胞が、任意選択で、rAAVビリオンを産生している宿主細胞が培養された細胞培養上清の回収と組み合わせて回収され得る。本明細書の方法では、回収された細胞及び任意選択で細胞培養上清は、適当な場合は、そのままで使用されても精製されてもよい。さらに、感染が補助機能を発現させるために用いられる場合、残存ヘルパーウイルスを、不活性化することができる。例えば、アデノウイルスは、約60℃の温度に例えば20分以上加熱することにより不活性化することができ、それにより、AAVは熱に安定であるがヘルパーのアデノウイルスは熱不安定性であることから、ヘルパーウイルスのみが不活性化される。
【0073】
[0073]回収物の上清及び細胞は、細胞を粉砕することにより、例えば、微小流動化して、rAAV粒子を放出することにより、溶解される。その後、ベンゾナーゼなどのヌクレアーゼを加えて、混入DNAを分解することもできる。典型的には、生じた溶解物を、清澄化して、濾過、遠心分離などで細胞残骸を除去して、清澄化された細胞溶解物にする。特定の例では、溶解物を、直径がミクロンサイズの細孔フィルターを用いて(例えば、0.45μm及び/又は0.2μmのフィルターを通して)濾過して、清澄化された溶解物を得る。
【0074】
[0074]清澄化された溶解物は、AAV粒子(真正のrAAVベクター、及びAAVの空のカプシド)及びAAVベクター製造に関連する不純物、例えば、細胞タンパク質、脂質、及び/又は核酸を含み得る宿主細胞からの可溶細胞成分、並びに細胞培養培地成分を含有する。清澄化された溶解物は、次に、クロマトグラフィーを使用して、追加の精製ステップに供して、不純物からAAV粒子(真正のrAAVベクターを含む)を精製する。クロマトグラフィーの第1のステップの前に、清澄化された溶解物を、適当な緩衝液で希釈してもよい。
【0075】
[0075]複数の逐次クロマトグラフィーステップが典型的には使用されて、rAAV粒子が精製される。そのような方法は、典型的には、塩化セシウム勾配超遠心分離のステップを除外する。
【0076】
[0076]本明細書で開示されるように、第1のクロマトグラフィーステップは、アニオン交換クロマトグラフィー又はカチオン交換クロマトグラフィーであってもよい。第1のクロマトグラフィーステップがアニオン交換クロマトグラフィーである場合、第3のクロマトグラフィーステップは、カチオン交換クロマトグラフィーであり得る。したがって、1つのrAAV精製方法では、精製はアニオン交換クロマトグラフィーにより、次にサイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、その後カチオン交換クロマトグラフィーにより精製する。
【0077】
[0077]第1のクロマトグラフィーステップがカチオン交換クロマトグラフィーである場合には、第3のクロマトグラフィーステップはアニオン交換クロマトグラフィーであり得る。したがって、別のrAAV精製方法では、精製は、カチオン交換クロマトグラフィーにより、次にサイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、その後アニオン交換クロマトグラフィーにより精製する。
【0078】
[0078]アニオン交換クロマトグラフィーは、清澄化された溶解物及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーからのカラム溶出物中に存在するタンパク質、細胞及び他の成分から、AAV粒子を分離するように機能する。アニオン交換樹脂は、ポリアミン樹脂に基づく樹脂及び他の樹脂を含むが、これらに限定されない。強アニオン交換樹脂の例は、トリアルキルベンジルアンモニウム樹脂などの第四級アンモニウム塩樹脂を含むが、これらに限定されない四級化された窒素原子に一般的に基づく樹脂を含む。適当な交換クロマトグラフィーには、MACRO PREP Q(強アニオン交換体、BioRad、Hercules、カリフォルニア州から入手可能);UNOSPHERE Q(強アニオン交換体、BioRad、Hercules、カリフォルニア州から入手可能);POROS 50HQ(強アニオン交換体、Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州から入手可能);POROS 50D(弱アニオン交換体、Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州から入手可能);POROS 50PI(弱アニオン交換体、Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州から入手可能);SOURCE 30Q(強アニオン交換体、Amersham Biosciences、Piscataway、ニュージャージー州から入手可能);DEAE SEPHAROSE(弱アニオン交換体、Amersham Biosciences、Piscataway、ニュージャージー州から入手可能);Q SEPHAROSE(強アニオン交換体、Amersham Biosciences、Piscataway、ニュージャージー州から入手可能)が含まれるが、これらに限定されない。追加の例示的なアニオン交換樹脂には、アミノエチル(AE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジエチルアミノプロピル(DEPE)及び第四級アミノエチル(QAE)が含まれる。
【0079】
[0079]カチオン交換クロマトグラフィーは、清澄化された溶解物及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーからのカラム溶出物中に存在する細胞及び他の成分から、AAV粒子をさらに分離するように機能する。広いpH範囲にわたってrAAVビリオンを結合することができる強カチオン交換樹脂の例には、アリール及びアルキル置換スルホネート、例えば、スルホプロピル又はスルホエチル樹脂を含むスルホネート官能基の存在により示される任意のスルホン酸系樹脂が含まれるが、これらに限定されない。代表的マトリックスには、POROS HS、POROS HS50、POROS SP、POROS S(強カチオン交換体、Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州から入手可能)が含まれるが、これらに限定されない。追加の例には、市販のDOWEX(登録商標)、AMBERLITE(登録商標)、及びAMBERLYST(登録商標)ファミリーの樹脂、Aldrich Chemical Company(Milliwaukee、ウィスコンシン州から入手可能)が含まれる。弱カチオン交換樹脂には、任意のカルボン酸系樹脂が含まれるが、これらに限定されない。例示的なカチオン交換樹脂には、カルボキシメチル(CM)、ホスホ(リン酸官能基に基づく)、メチルスルホネート(S)及びスルホプロピル(SP)樹脂が含まれる。
【0080】
[0080]カチオン交換、アニオン交換及びサイズ排除などのクロマトグラフィー媒体は、pH、及び緩衝体積などの種々の条件下で種々の緩衝液を用いて、平衡化、洗浄及び溶出され得る。以下では、特定の非限定的な例を記載することが意図されるが、本発明を限定することは意図されない。
【0081】
[0081]カチオン交換クロマトグラフィーは、標準的緩衝液を使用して、メーカーの仕様に従って平衡化することができる。例えば、クロマトグラフィー媒体は、5~50mM、又は10~40mM、例えば10~30mMの酢酸塩緩衝液、及び塩化ナトリウムを用いて平衡化することができる。平衡化後、次に、試料をロードする。その後、クロマトグラフィー媒体を、少なくとも1回以上、例えば、2~5回洗浄する。クロマトグラフィー媒体からの溶出は、少なくとも1回の高塩濃度緩衝液によるが、溶出は、2回以上同じか又はより高い塩濃度の緩衝液によることもできる。
【0082】
[0082]カチオン交換クロマトグラフィーのための洗浄及び溶出のための典型的な平衡緩衝液及び溶液は、約pH3~pH8、より典型的には約pH4~pH6、例えばpH4.1、4.2、4.3、4.4、4.5~5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、若しくは6.0、又は上述の範囲の若しくはその間の任意のpHの適当なpHである。
【0083】
[0083]カチオン交換カラムのための洗浄及び溶出のための適当な平衡緩衝液及び溶液は、当技術分野において公知であり、一般的にアニオン性である。そのような緩衝液には、以下の緩衝イオン:リン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、ホウ酸イオン、又は硫酸イオンを用いる緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
[0084]一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、最初に平衡化されて、試料を適用され、低い塩濃度、例えば、10~100mMのNaCl、例えば10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、60~100mM、又はこれらの範囲若しくはその範囲内の任意の濃度で洗浄される。試料適用に続いて、クロマトグラフィー媒体は、不純物を溶出させるためにより高い塩濃度で、例えば、より高いNaCl濃度で、又はより強いイオン強度の別の緩衝液で処理することもできる。第2の緩衝液として使用するための一例は、100mM~200mMのNaCl濃度の、又はこれらの上述の範囲若しくはその範囲内の任意の濃度の酢酸塩緩衝液である。追加の不純物がカラムから溶出された後、AAV粒子を溶出させるために、緩衝液のイオン強度を、NaCl、KCl、硫酸塩、ギ酸塩又は酢酸塩などの塩を使用して増大させて、回収することができる。
【0085】
[0085]アニオン交換クロマトグラフィー媒体の洗浄溶液には、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれることがある。これは、ポリエチレングリコール(PEG)調整カラムクロマトグラフィーと称される。PEG洗浄溶液は、AAVベクター粒子の溶出の前に、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に適用することができる。
【0086】
[0086]アニオン交換クロマトグラフィーのための洗浄及び溶出のための典型的な平衡緩衝液及び溶液は、約pH5~pH12、より典型的には約pH6~pH10、さらにより典型的には約pH7~pH9.5、例えば、pH7.1、7.2、7.3、7.4~8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5~9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5のpH、又は上述の範囲若しくはその範囲間の任意のpHで適当である。
【0087】
[0087]アニオン交換カラムのための洗浄及び溶出のために適当な平衡緩衝液及び溶液は、当技術分野で公知であり、性質は一般的にカチオン性又は双性イオン性である。そのような緩衝液には、以下の緩衝イオン:N-メチルピペラジン;ピペラジン;ビス-トリス;ビス-トリスプロパン;トリエタノールアミン;トリス;N-メチルジエタノールアミン;1,3-ジアミノプロパン;エタノールアミン;酢酸等を有する緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。試料を溶出させるために、出発時の緩衝液のイオン強度を、NaCl、KCl、硫酸塩、ギ酸塩又は酢酸塩などの塩を使用して増大させる。
【0088】
[0088]一実施形態では、アニオン交換クロマトグラフィー媒体は、最初に平衡化され、試料を適用され、低い塩濃度、例えば、10~100mMのNaCl、例えば、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、60~100mM、又はこれらの範囲若しくはその範囲内における任意の濃度で洗浄される。試料適用に続いて、クロマトグラフィー媒体を、不純物を溶出させるためにより高い塩濃度で、例えば、より高いNaCl濃度で、又はより強いイオン強度の別の緩衝液で処理することもできる。第2の緩衝液として使用するための一例は、100mM~200mMのNaCl濃度、又は上述の範囲若しくはその範囲内の任意の濃度を有するトリスに基づく緩衝液である。追加の不純物がカラムから溶出された後、AAV粒子をより高い濃度の塩を使用して回収することができる。
【0089】
[0089]アニオン交換クロマトグラフィー媒体の洗浄溶液には、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれることがある。これは、ポリエチレングリコール(PEG)調整カラムクロマトグラフィーと称される。PEG洗浄溶液は、AAVベクター粒子の溶出の前に、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に適用することができる。
【0090】
[0090]典型的には、そのような洗浄溶液中のPEGは、両端を含めて約1,000~50,000の範囲の平均分子量を有する。そのような洗浄溶液中のPEGの典型的な量は、約0.1%~約20%のPEGの範囲若しくは上述の範囲若しくはその範囲内の任意の量、又は約1%~約10%のPEG若しくは上述の範囲若しくはその範囲内における任意の量である。
【0091】
[0091]サイズ排除クロマトグラフィー媒体は、標準的緩衝液を使用して、メーカーの仕様に従って平衡化することができる。例えば、クロマトグラフィー媒体は、例えば、1~5mM、5~50mM、又は5~25mMのリン酸緩衝液、及び例えば、25~50mM、50~100mM、100~150mM又は125~175mMの塩化ナトリウムのリン酸緩衝液で平衡化することができる。
【0092】
[0092]平衡化後、次に、試料をロードする。その後、AAV粒子を含有する通過画分が回収される。緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)の追加の体積を、クロマトグラフィー媒体の量及び/又はカラムサイズに基づいて、AAV粒子回収のために加えることができる。
【0093】
[0093]特定の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー媒体は、両端を含めて約10,000~600,000の間の分離範囲(分子量)を有する。サイズ排除クロマトグラフィーのために適当な特定の樹脂(媒体)には、多孔質セルロースの粒子又はビーズ、架橋されたアガロース(セファロース(Sepharose))、架橋されたデキストラン(セファデックス(Sephadex))、スチレン-ジビニルベンゼン(ディアノン(Dianon) HP-20)、ポリアクリルアミド(バイオゲル(Bio Gel))、メタクリル系(トヨパール(Toyopearl))、及び制御された細孔ガラスが含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
[0094]溶出のための緩衝液の体積は、AAV粒子回収を達成するためのクロマトグラフィー媒体の量及び/又はカラムサイズに基づくことができる。典型的な体積はカラムの体積の1~10倍である。
【0095】
[0095]カラム溶出物は、クロマトグラフィーステップの各々からの溶出(複数可)/通過の後に捕集される。AAVは、260及び280nmにおけるUV吸収のモニタリングなどの標準的技法を使用して分画中で検出することができる。
【0096】
[0096]カチオン又はアニオン交換クロマトグラフィー媒体の使用、使用される媒体(即ち強又は弱イオン交換体)の性質並びに塩濃度、使用される緩衝液、及びpHの条件は、AAVカプシド(即ちAAVカプシドの血清型又は偽型)に基づいて変わり得る。AAVカプシドの構造は、典型的には、サイズ及び形状などの特徴を共有するが、カプシドは、異なるアミノ酸配列を有することができて、その結果、分子トポロジー及び表面電荷分布の微妙な差が生ずる。したがって、カプシドの配列変異体は、本発明の方法により精製することに適応すると期待され、関係する方法は、AAV粒子精製のためのAAVカプシド変異体のために、異なる条件が使用されるかを決定するために、クロマトグラフィー媒体及び緩衝液スクリーニングの研究を使用して、系統的様式で決定することができる。
【0097】
[0097]本明細書で記載された、アニオン、サイズ排除、又はカチオン交換クロマトグラフィーステップのいずれかからのAAV粒子を含む溶出物は、所望であれば、限外濾過/透析濾過により効率的に濃縮することができる。体積の減少は当業者により制御され得る。特定の非限定的な例では、達成される体積の減少は、両端を含めて約1~20分の1の間である。したがって、1分の1の減少は体積を半分減少させ、例えば、1000mlが500mLに濃縮される。10分の1の減少は、体積を10の倍率で減少させ、例えば、2000mlが200mLに濃縮される。20分の1の減少は、体積を20の倍率で減少させ、例えば、2000mlが100mLに濃縮される。
【0098】
[0098]限外濾過/透析濾過の非限定的な例は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)である。例えば、100kDaの分子量カットオフに対応する名目細孔サイズを有する中空繊維膜であり、それにより、大量のAAVベクターがより大きい体積の溶出物中に存在する場合に調製が可能である。
【0099】
[0099]本発明の方法によりAAV粒子の実質的回収が達成される。例えば、本発明の方法により、回収された宿主細胞及び宿主細胞培養上清からの全rAAVベクター粒子の約40~70%のAAV粒子の回収が達成される。別の例では、AAV粒子は、最終の(例えば、第3のカラムの)溶出物中に約100mg/mLの濃度で存在する。AAVベクター粒子は、最終の(例えば、第3のカラムの)溶出物中に、1mL当たり1015粒子以上、1mL当たり1016粒子、1mL当たり1017粒子の濃度で存在し得る。
【0100】
[0100]或いは、AAVベクター粒子濃度がより低い場合、精製されたAAV粒子を濃縮することができる。例えば、精製されたAAV粒子を、限外濾過/透析濾過(例えば、TFF)により1mL当たり1015粒子に濃縮することができる。より高い濃度のベクターが所望される場合、精製されたAAV粒子を、限外濾過/透析濾過(例えば、TFF)により、1mL当たり1016粒子に又はさらに高く濃縮することができる。
【0101】
[0101]清澄化された細胞溶解物からの全カラムクロマトグラフィープロセスによるAAV粒子の精製の組合せ、及び精製されたAAV粒子の限外濾過/透析濾過(例えば、TFF)による濃縮(必要であれば)により、大量の高度に精製された組換えrAAVベクターが提供される。
【0102】
[0102]他の実施形態では、パッケージングされたゲノムを有するrAAVビリオン(即ち、真正のrAAVベクター粒子)は、存在するビリオンの少なくとも約60%以上がパッケージングされたゲノムを有するrAAVビリオン(即ち、真正のrAAVベクター粒子)である場合、AAVカプシド形成された核酸不純物を「実質的に踏まない」。AAVカプシド形成された核酸不純物を実質的に含まない、パッケージングされたゲノムを有するrAAVビリオン(即ち、真正のrAAVベクター粒子)の産生は、AAVカプシド形成された核酸不純物を含む生成物の約40%~約20%又はそれ未満、約20%~約10%若しくはそれ未満、約10%~約5%若しくはそれ未満、約5%~約1%若しくはそれ未満、又はそれ未満であり得る。
【0103】
[0103]導入遺伝子を含有するAAVベクターの感染性力価を決定する方法は、当技術分野において公知である(例えば、Zhenら、(2004)Hum.Gene Ther.(2004)15:709を参照されたい)。空のカプシド及びパッケージングされたゲノムを有するAAVベクター粒子をアッセイするための方法は公知である(例えば、Grimmら、Gene Therapy(1999)6:1322~1330;Sommerら、Molec.Ther.(2003)7:122~128を参照されたい)。
【0104】
[0104]分解された/変性されたカプシドを決定するために、精製されたAAVを、3種のカプシドタンパク質を分離できる任意のゲル、例えば、勾配ゲルからなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して、次に試料が分離されるまでゲルを作動させて、ゲルをナイロン又はニトロセルロース膜上にブロッティングすることができる。次に、抗AAVカプシド抗体を、変性されたカプシドタンパク質に結合する1次抗体として使用する(例えば、Wobusら、J.Virol.(2000)74:9281~9293を参照されたい)。1次抗体に結合する2次抗体は、1次抗体を検出するための手段を含有する。1次と2次抗体との間の結合が、半定量的に検出されてカプシドの量が決定される。
【0105】
[0105]特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様な又は等価の方法及び材料が、本発明の実行又は試験で使用され得るが、適当な方法及び材料が本明細書に記載されている。
【0106】
[0106]本明細書に挙げた全ての特許出願、出版物、特許及び他の参考文献、GenBankの引用及びATCCの引用は、参照によりそれらの全体で組み込まれる。相容れない場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【0107】
[0107]本明細書で開示された特徴の全ては、任意の組合せで組み合わされてもよい。本明細書で開示された各特徴は、同じ、等価の、又は同様な目的に役立つ代替的特徴により置き換えることもできる。したがって、別段明確に述べられていない限り、開示された特徴(例えば、核酸配列、ベクター、rAAVベクター等)は、等価の又は同様な特徴の部類の例である。
【0108】
[0108]本明細書において使用する、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」は、文脈上別段明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「あるAAVベクター」、又は「AAV粒子」への言及は、複数のそのようなAAVベクター及びAAV粒子を含み、「ある細胞(a cell)」又は「宿主細胞(host cell)」への言及は、複数の細胞及び宿主細胞を含む。
【0109】
[0109]本明細書において使用する用語「約」は、基準値の10%(プラス又はマイナス)以内にある値を意味する。
【0110】
[0110]本明細書において使用する、全て数値又は数の範囲は、前後関係で他のように明確に示されない限り、そのような範囲内の整数及び範囲内の値の端数又は整数を含む。したがって、例示すると、80%以上の同一性への言及は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%等、並びに81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%等、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%等を含む。
【0111】
[0111]超又は未満を伴う整数への言及は、言及された数を超えるか又は未満の任意の数をそれぞれ含む。したがって、例えば、100未満への言及は、99、98、97等、ずっと下がって数1までの全てを含み;10未満は、9、8、7等、ずっと下がって数1までの全てを含む。
【0112】
[0112]本明細書において使用する、全て数値又は範囲は包括的である。さらに、全ての数値又は範囲は、文脈上別段明確に示されていない限り、そのような範囲内の値の端数及び整数、並びにそのような範囲内の整数の端数を含む。したがって、例示すると、1~10などの数の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等を含む。それゆえに、1~50の範囲への言及は、50を含め50までを含み、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20等、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5等(以下同様)を含む。
【0113】
[0113]一連の範囲への言及は、その一連の範囲内の異なる範囲の境界の値を組み合わせる範囲を含む。したがって、例示すると、一連の範囲、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、又は8,000~9,000への言及は、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000等の範囲を含む。
【0114】
[0114]本発明は、本明細書で肯定的言語を使用して一般的に開示され、多数の実施形態及び態様が説明されている。本発明は、物質若しくは材料、方法ステップ及び条件、プロトコール、又は手順などの特定の対象事物が全部又は一部除外される実施形態も特定して含む。例えば、本発明のある実施形態又は態様では、材料及び/又は方法ステップが除外される。したがって、本発明が含まないことに関して、たとえ本発明が本明細書で一般的に表現されていなくても、それにも拘わらず、本発明で明白に除外されていない態様が、本明細書で開示されている。
【0115】
[0115]本発明の幾つかの実施形態が記載されている。それにも拘わらず、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更及び改変を行って、本発明を種々の用途及び条件に適合させることができる。したがって、以下の例は、例示することを意図するが、特許請求された本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0116】
[関連出願]
[0001]本出願は、2016年3月31日出願の米国特許仮出願第62/316,252号に対する優先権を主張する。前述の出願の全内容は、本文、表、配列表及び図面の全てを含めて参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
[0116]本発明は以下であってもよい。
[1]
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター粒子を精製するための方法であって、
(a)rAAVベクター粒子を含む細胞及び細胞培養上清を回収して、回収物を製造するステップと、
(b)任意選択でステップ(a)で製造された前記回収物を濃縮して、濃縮された回収物を製造するステップと、
(c)ステップ(a)で製造された前記回収物又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物を溶解して、溶解物を製造するステップと、
(d)ステップ(c)で製造された前記溶解物を処理して、前記溶解物中の混入核酸を減少させ、それにより核酸が減少した溶解物を製造するステップと、
(e)ステップ(d)で製造された前記核酸が減少した溶解物を濾過して、清澄化された溶解物を製造し、任意選択で前記清澄化された溶解物を希釈して、希釈され清澄化された溶解物を製造するステップと、
(f)ステップ(e)で製造された前記清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物を、アニオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成されるカラム溶出物を製造し、任意選択で前記カラム溶出物を濃縮して、濃縮されたカラム溶出物を製造するステップと、
(g)ステップ(f)で製造された前記カラム溶出物又は前記濃縮されたカラム溶出物を、サイズ排除カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第2のカラム溶出物を製造し、それによりrAAVベクター粒子をタンパク質不純物から分離して、任意選択で前記第2のカラム溶出物を希釈して、希釈された第2のカラム溶出物を製造するステップと、
(h)ステップ(g)で製造された前記第2のカラム溶出物又は前記希釈された第2のカラム溶出物を、カチオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第3のカラム溶出物を製造し、それによりrAAVベクター粒子をタンパク質又は他の産生不純物から分離して、任意選択で前記第3のカラム溶出物を濃縮して、濃縮された第3のカラム溶出物を製造するステップと、
(i)ステップ(h)で製造された前記第3のカラム溶出物又は前記濃縮された第3のカラム溶出物を濾過して、それにより精製されたrAAVベクター粒子を製造するステップと
を含む方法。
[2]
ステップ(b)及び/又はステップ(f)及び/又はステップ(h)の前記濃縮が、限外濾過/透析濾過によってなされ、任意選択でタンジェンシャルフロー濾過によってなされる、[1]に記載の方法。
[3]
ステップ(b)の前記濃縮が、前記回収された細胞及び細胞培養上清の体積を約2~10分の1に減少させる、[1]に記載の方法。
[4]
ステップ(f)の前記濃縮が、前記カラム溶出物の体積を約5~20分の1に減少させる、[1]に記載の方法。
[5]
ステップ(a)で製造された前記回収物、又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物の前記溶解が微小流動化による、[1]に記載の方法。
[6]
ステップ(d)が、ヌクレアーゼで処理して、それにより混入核酸を減少させることを含む、[1]に記載の方法。
[7]
前記ヌクレアーゼがベンゾナーゼを含む、[6]に記載の方法。
[8]
ステップ(e)の前記清澄化された溶解物又は前記希釈され清澄化された溶解物の前記濾過が、両端を含めて約0.1~0.8ミクロンの間の細孔直径を有するフィルターによる、[1]に記載の方法。
[9]
ステップ(e)の前記清澄化された溶解物又は前記希釈され清澄化された溶解物の前記希釈が、酢酸塩緩衝水溶液を用いる、[1]に記載の方法。
[10]
ステップ(g)の前記第2のカラム溶出物の前記希釈が、酢酸塩緩衝水溶液を用いる、[1]に記載の方法。
[11]
前記酢酸塩緩衝水溶液が、両端を含めて約4.0~7.0の間のpHを有する、[10]に記載の方法。
[12]
ステップ(i)及び/又はステップ(i)から生じた前記rAAVベクター粒子が、界面活性剤を用いて製剤化されて、AAVベクター製剤が製造される、[1]に記載の方法。
[13]
ステップ(f)の前記アニオン交換カラムクロマトグラフィーが、ポリエチレングリコール(PEG)調整カラムクロマトグラフィーを含む、[1]に記載の方法。
[14]
ステップ(f)の前記アニオン交換カラムクロマトグラフィーが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムをPEG溶液で洗浄することを含む、[13]に記載の方法。
[15]
前記PEG溶液中のPEGが、両端を含めて約1,000~50,000の範囲の平均分子量を有する、[14]に記載の方法。
[16]
ステップ(f)の前記アニオン交換カラムが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムを界面活性剤水溶液で洗浄することを含む、[1]に記載の方法。
[17]
ステップ(h)の前記カチオン交換カラムが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムを界面活性剤溶液で洗浄することを含む、[1]に記載の方法。
[18]
前記PEG溶液及び/又は前記界面活性剤溶液が、トリスCl/NaCl緩衝水溶液又はリン酸/NaCl緩衝水溶液を含む、[14]~[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19]
前記NaCl緩衝液が、両端を含めて約20~250mMの間のNaCl、又は両端を含めて約50~200mMの間のNaClを含む、[18]に記載の方法。
[20]
前記rAAVベクター粒子が、ステップ(f)の前記アニオン交換カラムから、トリスCl/NaCl緩衝水溶液に溶出される、[1]に記載の方法。
[21]
前記トリスCl/NaCl緩衝液が50~200mMのNaClを含む、[20]に記載の方法。
[22]
前記rAAVベクター粒子が、ステップ(h)の前記カチオン交換カラムから、リン酸/NaCl緩衝水溶液に溶出される、[1]に記載の方法。
[23]
前記リン酸/NaCl緩衝液が、両端を含めて約100~500mMの間のNaClを含む、[22]に記載の方法。
[24]
ステップ(f)の前記アニオン交換カラムが、四級化されたポリエチレンイミンなどの第四級アンモニウム官能基を含む、[1]に記載の方法。
[25]
ステップ(g)の前記サイズ排除カラムが、両端を含めて約10,000~600,000の間の分離範囲(分子量)を有する、[1]に記載の方法。
[26]
ステップ(h)の前記カチオン交換カラムが、スルホン酸又はスルホプロピルなどの官能基を含む、[1]に記載の方法。
[27]
塩化セシウム勾配超遠心分離のステップが除外される、[1]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
前記rAAVベクター粒子が、siRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム及びshRNAからなる群から選択される核酸をコードする導入遺伝子を含む、[1]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29]
前記rAAVベクター粒子が、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛膜性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、TGFβ、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3及びNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞成長因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ並びにチロシンヒドロキシラーゼからなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む、[1]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]
前記rAAVベクター粒子が、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL1~IL-17)、単球走化性タンパク質、白血病阻止因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンド、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスIIのMHC分子からなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む、[1]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
前記rAAVベクター粒子が、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネートシンテターゼ、アルギノスクシネートリアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテートヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンベータ-シンターゼ、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、RPE65、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)配列、及びジストロフィンcDNA配列からなる群から選択される先天性代謝異常の修正に有用なタンパク質をコードする導入遺伝子を含む、[1]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[32]
前記rAAVベクター粒子が、第VIII因子又は第IX因子をコードする導入遺伝子を含む、[1]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[33]
ステップ(a)で製造された前記回収物又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物から全rAAVベクター粒子の約40~70%を回収する、[1]~[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34]
AAV親和性カラム精製により製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[1]~[33]のいずれか一項に記載の方法。
[35]
アニオン交換カラム精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[1]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
[36]
アニオン交換カラム及びカチオン交換精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[1]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
[37]
前記rAAVベクター粒子が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAV10からなる群から選択されるAAVから誘導される、[1]~[37]のいずれか一項に記載の方法。
[38]
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター粒子を精製するための方法であって、
(a)rAAVベクター粒子を含む細胞及び細胞培養上清を回収して、回収物を製造するステップと、
(b)任意選択でステップ(a)で製造された前記回収物を濃縮して、濃縮された回収物を製造するステップと、
(c)ステップ(a)で製造された前記回収物、又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物を溶解して、溶解物を製造するステップと、
(d)ステップ(c)で製造された前記溶解物を処理して、前記溶解物中の混入核酸を減少させ、それにより核酸が減少した溶解物を製造するステップと、
(e)ステップ(d)で製造された前記核酸が減少した溶解物を濾過して、清澄化された溶解物を製造し、任意選択で前記清澄化された溶解物を希釈して、希釈され清澄化された溶解物を製造するステップと、
(f)ステップ(e)で製造された前記清澄化された溶解物又は希釈され清澄化された溶解物を、カチオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成されるカラム溶出物を製造し、それによりrAAVベクター粒子をタンパク質又は他の産生不純物から分離して、任意選択で前記カラム溶出物を濃縮して、濃縮されたカラム溶出物を製造するステップと、
(g)ステップ(f)で製造された前記カラム溶出物又は前記濃縮されたカラム溶出物を、サイズ排除カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第2のカラム溶出物を製造し、それによりrAAVベクター粒子をタンパク質不純物から分離して、任意選択で前記第2のカラム溶出物を希釈して、希釈された第2のカラム溶出物を製造するステップと、
(h)ステップ(g)で製造された前記第2のカラム溶出物又は前記希釈された第2のカラム溶出物を、アニオン交換カラムクロマトグラフィーに供して、rAAVベクター粒子で構成される第3のカラム溶出物を製造し、任意選択で前記第3のカラム溶出物を濃縮して、濃縮された第3のカラム溶出物を製造するステップと、
(i)ステップ(h)で製造された前記第3のカラム溶出物又は前記濃縮された第3のカラム溶出物を濾過して、それにより精製されたrAAVベクター粒子を製造するステップと
を含む方法。
[39]
ステップ(b)及び/又はステップ(f)及び/又はステップ(h)の前記濃縮が、限外濾過/透析濾過によってなされ、任意選択でタンジェンシャルフロー濾過によってなされる、[38]に記載の方法。
[40]
ステップ(b)の前記濃縮が、前記回収された細胞及び細胞培養上清の体積を約2~10分の1に減少させる、[38]に記載の方法。
[41]
ステップ(f)の前記濃縮が、前記カラム溶出物の体積を約5~20分の1に減少させる、[38]に記載の方法。
[42]
ステップ(a)で製造された前記回収物又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物の前記溶解が微小流動化による、[38]に記載の方法。
[43]
ステップ(d)が、ヌクレアーゼで処理して、それにより混入核酸を減少させることを含む、[38]に記載の方法。
[44]
前記ヌクレアーゼがベンゾナーゼを含む、[43]に記載の方法。
[45]
ステップ(e)の前記清澄化された溶解物又は前記希釈され清澄化された溶解物の前記濾過が、両端を含めて約0.1~0.8ミクロンの間の細孔直径を有するフィルターによる、[38]に記載の方法。
[46]
ステップ(e)の前記清澄化された溶解物又は前記希釈され清澄化された溶解物の前記希釈が、酢酸塩緩衝水溶液を用いる、[38]に記載の方法。
[47]
ステップ(g)の前記第2のカラム溶出物の前記希釈が、酢酸塩緩衝水溶液を用いる、[38]に記載の方法。
[48]
前記酢酸塩緩衝水溶液が、両端を含めて約4.0~7.0の間のpHを有する、[47]に記載の方法。
[49]
ステップ(i)から生じた前記rAAVベクター粒子が界面活性剤で製剤化されて、AAVベクター製剤が製造される、[38]に記載の方法。
[50]
ステップ(h)の前記アニオン交換カラムクロマトグラフィーが、ポリエチレングリコール(PEG)調整カラムクロマトグラフィーを含む、[38]に記載の方法。
[51]
ステップ(h)の前記アニオン交換カラムクロマトグラフィーが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムをPEG溶液で洗浄することを含む、[38]に記載の方法。
[52]
前記PEG溶液中のPEGが、両端を含めて約1,000~50,000の範囲の平均分子量を有する、[51]に記載の方法。
[53]
ステップ(h)の前記アニオン交換カラムが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムを界面活性剤水溶液で洗浄することを含む、[38]に記載の方法。
[54]
ステップ(f)の前記カチオン交換カラムが、前記rAAVベクター粒子の前記カラムからの溶出の前に、前記カラムを界面活性剤溶液で洗浄することを含む、[38]に記載の方法。
[55]
前記PEG溶液及び/又は前記界面活性剤溶液が、トリスCl/NaCl緩衝水溶液又はリン酸/NaCl緩衝水溶液を含む、[50]~[54]のいずれか一項に記載の方法。
[56]
前記NaCl緩衝液が、両端を含めて約20~250mMの間のNaCl又は両端を含めて約50~200mMの間のNaClを含む、[55]に記載の方法。
[57]
前記rAAVベクター粒子が、ステップ(h)の前記アニオン交換カラムから、トリスCl/NaCl緩衝水溶液に溶出される、[38]に記載の方法。
[58]
前記トリスCl/NaCl緩衝液が50~200mMのNaClを含む、[57]に記載の方法。
[59]
前記rAAVベクター粒子が、ステップ(f)の前記カチオン交換カラムから、リン酸/NaCl緩衝水溶液に溶出される、[38]に記載の方法。
[60]
前記リン酸/NaCl緩衝液が、両端を含めて約100~500mMの間のNaClを含む、[59]に記載の方法。
[61]
ステップ(h)の前記アニオン交換カラムが四級化されたポリエチレンイミン官能基を含む、[38]に記載の方法。
[62]
ステップ(g)の前記サイズ排除カラムが、両端を含めて約10,000~600,000の間の分離範囲(分子量)を有する、[38]に記載の方法。
[63]
ステップ(f)の前記カチオン交換カラムが、スルホプロピル官能基を含む、[38]に記載の方法。
[64]
塩化セシウム勾配超遠心分離のステップが除外される、[38]~[63]のいずれか一項に記載の方法。
[65]
前記rAAVベクター粒子が、siRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム及びshRNAからなる群から選択される核酸をコードする導入遺伝子を含む、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[66]
前記rAAVベクター粒子が、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛膜性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、TGFβ、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3及びNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞成長因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ並びにチロシンヒドロキシラーゼからなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[67]
前記rAAVベクター粒子が、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL1~IL-17)、単球走化性タンパク質、白血病阻止因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンド、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスIIのMHC分子からなる群から選択される遺伝子生成物をコードする導入遺伝子を含む、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[68]
前記rAAVベクター粒子が、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネートシンテターゼ、アルギノスクシネートリアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテートヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンベータ-シンターゼ、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、RPE65、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)配列、及びジストロフィンcDNA配列からなる群から選択される先天性代謝異常の修正に有用なタンパク質をコードする導入遺伝子を含む、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[69]
前記rAAVベクター粒子が、第VIII因子又は第IX因子をコードする導入遺伝子を含む、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[70]
ステップ(a)で製造された前記回収物、又はステップ(b)で製造された前記濃縮された回収物から全rAAVベクター粒子の約40~70%を回収する、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[71]
AAV親和性カラム精製により製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[72]
アニオン交換カラム精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されるrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[73]
アニオン交換カラム及びカチオン交換精製と組み合わされたAAV親和性カラムにより製造又は精製されたrAAVベクター粒子よりも高い純度を有するrAAVベクター粒子を製造する、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[74]
前記rAAVベクター粒子が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAV10からなる群から選択されるAAVから誘導される、[38]~[64]のいずれか一項に記載の方法。

図1
図2
図3
【外国語明細書】