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特開2022-120039ハンドオーバ制御方法、及びユーザ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120039
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ハンドオーバ制御方法、及びユーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/10 20090101AFI20220809BHJP
   H04W 36/36 20090101ALI20220809BHJP
【FI】
H04W36/10
H04W36/36
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092701
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2020553747の分割
【原出願日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】62/752,524
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘンリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハンドオーバ制御方法及びユーザ装置を提供する。
【解決手段】ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対してユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うためのハンドオーバ制御方法であって、ユーザ装置が、ソースセルから、ターゲットセルの候補である候補セルのリストとリスト中の候補セル毎に指定されるハンドオーバ条件とを含むハンドオーバ指令を受信することと、ユーザ装置が、受信したハンドオーバ指令に含まれるリスト中の特定の候補セルに対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、ハンドオーバ条件が満たされた特定の候補セルへのハンドオーバを行うことと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースセルを管理するソース基地局であって、
前記ソース基地局が、前記ソースセルに接続するユーザ装置に対して、前記ソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うために、前記ターゲットセルの候補である候補セルのリストと前記リスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むRRCメッセージを送信する制御部を備え、
前記制御部は、前記RRCメッセージを前記ユーザ装置が受信することに応じて、前記リスト中の特定の候補セルへのハンドオーバを前記ユーザ装置が行う前に、前記リスト中の候補セルを管理する候補基地局に対して、前記ユーザ装置の下りリンクデータの複製の転送を開始する
ソース基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記リスト中の候補セルのうち、前記特定の候補セル以外のセルを管理する候補基地局に対して、前記ユーザ装置の下りリンクデータの複製の転送を開始する
請求項1に記載のソース基地局。
【請求項3】
前記制御部は、前記特定の候補へのハンドオーバの実行を示す通知を前記ユーザ装置から受信する前に、前記リスト中の候補セルを管理する候補基地局に対して、前記ユーザ装置の下りリンクデータの複製の転送を開始する
請求項1に記載のソース基地局。
【請求項4】
ソースセルを管理するソース基地局を有する移動通信システムであって、
前記ソース基地局が、前記ソースセルに接続するユーザ装置に対して、前記ソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うために、前記ターゲットセルの候補である候補セルのリストと前記リスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むRRCメッセージを送信し、
前記ソース基地が、前記RRCメッセージを前記ユーザ装置が受信することに応じて、前記リスト中の特定の候補セルへのハンドオーバを前記ユーザ装置が行う前に、前記リスト中の候補セルを管理する候補基地局に対して、前記ユーザ装置の下りリンクデータの複製の転送を開始する
移動通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンドオーバ制御方法、及びユーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、ユーザ装置は、自身の移動に伴って、自身が接続するセルをソースセルからターゲットセルに変更するハンドオーバを行う。近年、ハンドオーバ中の通信中断時間の削減、及び無線状態が不安定な環境下におけるハンドオーバの信頼性の改善が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様に係るハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うためのハンドオーバ制御方法であって、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である候補セルのリストと前記リスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むハンドオーバ指令を受信することと、前記ユーザ装置が、前記受信されたハンドオーバ指令に含まれる前記リスト中の特定の候補セルに対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、前記ハンドオーバ条件が満たされた前記特定の候補セルへのハンドオーバを行うことと、を含む。
【0004】
第2の態様に係るユーザ装置は、前記ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行う場合において、前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である候補セルのリストと前記リスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する受信部と、前記受信されたハンドオーバ指令に含まれる前記リスト中の特定の候補セルに対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、前記ハンドオーバ条件が満たされた前記特定の候補セルへのハンドオーバを行う制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るユーザ装置の構成を示す図である。
図3】一実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
図4】一実施形態に係る無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
図5】一実施形態に係る無線フレームの構成を示す図である。
図6】一実施形態に係る移動通信システムの動作シーケンスを示す図である。
図7】一実施形態に係るハンドオーバ指令に含まれる情報(情報要素)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面を参照しながら、一実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0007】
(移動通信システムの構成)
まず、一実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。図1は、一実施形態に係る移動通信システムであるLTE(Long Term Evolution)システムの構成を示す図である。LTEシステムは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格に基づくシステムである。
【0008】
以下において、移動通信システムとしてLTEシステムを例示するが、移動通信システムには3GPP規格の第5世代(5G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0009】
図1に示すように、LTEシステムは、ユーザ装置(UE:User Equipment)100、無線アクセスネットワーク(E-UTRAN:Evolved-UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びコアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)20を備える。
【0010】
5Gシステムにおいては、無線アクセスネットワークはNG-RAN(Next Generation RAN)と呼ばれ、コアネットワークは5GC(5G Core Network)と呼ばれる。
【0011】
UE100は、移動型の通信装置である。UE100は、自身が在圏するセル(サービングセル)を管理するeNB200との無線通信を行う。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わないが、例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)やタブレット端末、ノートPC、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0012】
E-UTRAN10は、基地局(eNB:evolved Node-B)200を含む。eNB200は、基地局間インターフェイスであるX2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200は、1又は複数のセルを管理する。eNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0013】
5Gシステムにおいては、基地局はgNBと呼ばれ、基地局間インターフェイスはXnインターフェイスと呼ばれる。なお、gNBがEPCに接続することもでき、eNBが5GCに接続することもでき、gNBとeNBとが基地局間インターフェイス(Xnインターフェイス、X2インターフェイス)を介して接続されることもできる。
【0014】
EPC20は、モビリティ管理エンティティ(MME)及びサービングゲートウェイ(S-GW)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。MMEは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するトラッキングエリア(TA)の情報を管理する。トラッキングエリアは、複数のセルからなるエリアである。S-GWは、データの転送制御を行う。MME及びS-GWは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるS1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
【0015】
5Gシステムにおいては、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うコアネットワークエンティティはAMF(Access and Mobility Management Function)と呼ばれ、データの転送制御を行うコアネットワークエンティティはUPF(User Plane Function)と呼ばれ、基地局-コアネットワーク間インターフェイスはNGインターフェイスと呼ばれる。
【0016】
図2は、UE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0017】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0018】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0019】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
【0020】
図3は、eNB200(基地局)の構成を示す図である。eNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0021】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0022】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0023】
制御部230は、eNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
【0024】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイス(X2インターフェイス又はXnインターフェイス)を介して隣接eNB又は隣接gNBと接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイス(S1インターフェイス又はNGインターフェイス)を介してMME/S-GW300又はAMF/UPFと接続される。
【0025】
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1レイヤ乃至第3レイヤに区分されている。第1レイヤは物理(PHY)レイヤである。第2レイヤは、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤを含む。第3レイヤは、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含む。PHYレイヤ、MACレイヤ、RLCレイヤ、PDCPレイヤ、及びRRCレイヤは、AS(Access Stratum)レイヤを構成する。
【0026】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとeNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0027】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。eNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0028】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0029】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0030】
RRCレイヤは、制御情報を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッドモードである。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドルモードである。
【0031】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとMME300CのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等の機能を有する。
【0032】
5Gシステムにおいては、ユーザプレーンにおいてPDCPレイヤの上位にSDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤが設けられる。SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。
【0033】
図5は、LTEシステムにおいて用いられる無線フレームの構成を示す図である。無線フレームは、時間軸上で10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間軸上で2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msである。各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数軸上で複数個のリソースブロック(RB)を含む。各サブフレームは、時間軸上で複数個のシンボルを含む。各リソースブロックは、周波数軸上で複数個のサブキャリアを含む。具体的には、12個のサブキャリア及び1つのスロットにより1つのRBが構成される。1つのシンボル及び1つのサブキャリアにより1つのリソースエレメント(RE)が構成される。UE100に割り当てられる無線リソース(時間・周波数リソース)のうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
【0034】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御情報を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)として用いることができる領域である。
【0035】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に上りリンク制御情報を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主に上りリンクデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)として用いることができる領域である。
【0036】
(移動通信システムの動作)
次に、一実施形態に係る移動通信システムの動作について説明する。LTEシステムを例に挙げて説明するが、5Gシステムに適用してもよく、その場合、eNBをgNBと読み替えてもよく、X2インターフェイスをXnインターフェイスと読み替えてもよい。
【0037】
(1)条件付きハンドオーバの概要
一般的なハンドオーバプロシージャにおいて、UE100のハンドオーバをeNB200が決定する。例えば、UE100は、UE100とソースセルとの間の無線状態が悪化したこと、及び/又はUE100とターゲットセルとの間の無線状態が良化したことに応じて、無線状態に関する測定報告をソースセルに送信する。
【0038】
なお、UE100のハンドオーバとは、UE100のサービングセルをソースセルからターゲットセルへ切替える動作である。以下において、ソースセル及びターゲットセルが互いに異なるeNBに属している一例について説明するが、ソースセル及びターゲットセルが同じeNBに属していてもよい。
【0039】
ソースセルを管理するソースeNB200は、UE100から送信される測定報告に基づいてUE100のハンドオーバを決定し、ターゲットセルを管理するターゲットeNBに対して、UEコンテキストを含むハンドオーバ要求を送信する。そして、ソースeNB200は、ターゲットeNBからハンドオーバ要求確認応答を受信すると、UE100に対してハンドオーバ指令を送信する。UE100は、ハンドオーバ指令を受信すると、ターゲットeNBへのハンドオーバを開始し、ターゲットeNBに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0040】
これに対し、条件付きハンドオーバ(Conditional Handover)のプロシージャにおいて、UE100のハンドオーバをUE100自身が決定する。具体的には、ソースeNB200は、ターゲットセルの候補である候補セルを管理する候補eNBに対してハンドオーバ要求を予め送信する。ここで、候補eNBは、1つに限らず、複数であってもよい。このため、複数の候補eNBがハンドオーバ要求を受信し得る。
【0041】
ソースeNB200は、UE100に対してハンドオーバ指令を予め送信する。UE100は、ハンドオーバ指令を受信した後、ハンドオーバ条件が満たされるまでハンドオーバを保留し、ハンドオーバ条件が満たされたときにハンドオーバを開始して1つの候補eNBに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0042】
かかる条件付きハンドオーバは、ソースeNB200が測定報告に基づくハンドオーバ決定を行わずに、UE100自身でハンドオーバを決定する。このため、UE100とソースeNB200との間の無線状態が不安定である場合でも、無線状態に応じて即座にハンドオーバを行うことで、ハンドオーバの信頼性(ロバストネス)を改善できる。
【0043】
一実施形態において、UE100は、ソースセル(ソースeNB200)から、ターゲットセルの候補である候補セルのリスト(以下、セルリストと呼ぶ)と当該セルリスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する。UE100は、受信されたハンドオーバ指令に含まれるセルリスト中の特定の候補セルに対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、当該ハンドオーバ条件が満たされた特定の候補セルへのハンドオーバを行う。
【0044】
このように、ハンドオーバ指令にセルリストを含めている。ソースeNB200がUE100の移動方向を予測して移動先の1つのセルのみを候補セルとする方法も考えられるが、このような方法は、予測が外れたときに条件付きハンドオーバを行うことができないという問題がある。一実施形態においては、ハンドオーバ指令にセルリストを含めているため、そのような問題を解決しやすい。
【0045】
また、候補セルごとにハンドオーバ条件を指定することにより、候補セルの属性(例えば、セルの種別やサイズ)に応じてきめ細かにハンドオーバ条件を指定できる。
【0046】
なお、以下においてソースeNB200を「ソースeNB200S」と表記し、候補eNBを「候補eNB200T」と表記する。
【0047】
(2)動作シーケンスの一例
図6は、一実施形態に係る移動通信システムの動作シーケンスの一例を示す図である。なお、図6の破線で示すシグナリングは必須ではない。
【0048】
図6に示すように、ステップS101において、RRCコネクティッドモードのUE100は、ソースeNB200Sのセル(ソースセル)との無線接続(RRC接続)を確立している。
【0049】
ソースeNB200Sは、UE100をハンドオーバする場合のターゲットセルの候補である候補セル(候補eNB200T)を決定する。候補eNB200Tは、ソースeNB200Sに隣接する隣接eNBであってもよい。ソースeNB200Sは、UE100が自セルと接続した際に候補eNB200Tを決定してハンドオーバ要求を候補eNB200Tに送信してもよい。ソースeNB200Sは、複数のeNB(複数の候補eNB)に対してハンドオーバ要求を送信してもよい。ここでは、ソースeNB200Sは、候補eNB200T1のセル及び候補eNB200T2のセルを候補セルとして決定することを想定する。以下において、候補eNB200T1のセルを候補セル#1と呼び、候補eNB200T2のセルを候補セル#2と呼ぶ。
【0050】
ステップS102において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバのためのハンドオーバ要求メッセージを基地局間インターフェイス(X2インターフェイス)上で候補eNB200T1に送信する。
【0051】
また、ステップS103において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバのためのハンドオーバ要求メッセージを基地局間インターフェイス(X2インターフェイス)上で候補eNB200T2に送信する。
【0052】
ハンドオーバ要求メッセージは、UEコンテキストを含む。ハンドオーバ要求メッセージは、条件付きハンドオーバ専用の新たなメッセージであってもよい。或いは、ハンドオーバ要求メッセージは、条件付きハンドオーバを示す情報(情報要素)を含む既存のハンドオーバ要求メッセージであってもよい。
【0053】
候補eNB200T1及び候補eNB200T2のそれぞれは、ソースeNB200Sからハンドオーバ要求メッセージを受信し、ハンドオーバ要求メッセージに含まれるUEコンテキストを保持する。
【0054】
ステップS104において、候補eNB200T1は、ハンドオーバ要求確認応答(Ack)メッセージをX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信する。
【0055】
候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージは、候補eNB200T1により決定された無線通信設定を含む。無線通信設定は、UE100が候補eNB200T1にハンドオーバした場合に候補eNB200T1との無線通信に適用すべき設定である。無線通信設定は、レイヤごとの設定を含んでもよい。例えば、無線通信設定は、PDCP設定、RLC設定、MAC設定、及びPHY設定のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0056】
候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージは、UE100が候補eNB200T1に対するランダムアクセスプロシージャを省略するための情報を含んでもよい。このような情報は、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を含む。タイミングアドバンス情報は、UE100が候補eNB200T1に対して上りリンク送信を行う際に適用すべきタイミングアドバンス値(TA値)を示す情報である。上りリンク無線リソース情報は、UE100が候補eNB200T1に対して上りリンク送信を行う際に用いるべき上りリンク無線リソース(時間・周波数リソース)を示す情報である。上りリンク無線リソース情報は、上りリンクグラント(UL grant)と呼ばれることがある。上りリンク無線リソース情報は、上りリンク送信に適用すべき変調・符号化方式(MCS)を示す情報をさらに含んでもよい。
【0057】
ステップS105において、候補eNB200T2は、ハンドオーバ要求ACKメッセージをX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信する。
【0058】
候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージは、候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージと同様な情報(情報要素)を含んでもよい。すなわち、候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージは、候補eNB200T2により決定された無線通信設定を含む。候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求ACKメッセージは、UE100が候補eNB200T2に対するランダムアクセスプロシージャを省略するための情報として、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を含んでもよい。
【0059】
ソースeNB200Sは、これらのハンドオーバ要求ACKメッセージを受信することにより、各候補eNB200から無線通信設定を取得する。また、ソースeNB200Sは、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を取得する。
【0060】
ステップS106において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバに関する情報(情報要素)を含むハンドオーバ指令(例えば、RRC connection reconfigurationメッセージ)をUE100に送信する。
【0061】
図7は、一実施形態に係るハンドオーバ指令に含まれる情報(情報要素)の一例を示す図である。
【0062】
図7に示すように、ソースeNB200SがUE100に送信するハンドオーバ指令は、候補セルのリスト(セルリスト)を含む。セルリストは、各候補セル#1及び#2の識別子(例えば、物理セル識別子)からなるリストである。ここでは、セルリスト中の候補セルが2つである一例を示しているが、候補セルの数は3以上であってもよい。
【0063】
ソースeNB200SがUE100に送信するハンドオーバ指令は、セルリスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件を含む。ハンドオーバ条件は、例えば、UE100とソースeNB200(ソースセル)との間の無線状態が悪化したこと、及び/又はUE100と候補eNB(候補セル)との間の無線状態が良化したという条件である。ハンドオーバ条件は、ソースセルの無線状態と比較される第1の閾値及び候補セルの無線状態と比較される第2の閾値のうち少なくとも1つを含んでもよい。無線状態は、例えば、受信参照信号品質(RSRP、RSRQ、RS-SINR等)であってもよく、パケット再送回数(RLC再送回数等)であってもよい。
【0064】
また、ソースeNB200SがUE100に送信するハンドオーバ指令は、セルリスト中の候補セルごとに指定される無線通信設定を含む。
【0065】
さらに、ハンドオーバ指令は、セルリスト中の候補セルごとに指定されるタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報をさらに含んでもよい。これらの情報が含まれる場合、ハンドオーバ指令は、対応する候補セルについてランダムアクセスプロシージャを省略可能であることを示す情報をさらに含んでもよい。
【0066】
さらに、ハンドオーバ指令は、当該ハンドオーバ指令が有効である時間(有効期間)を指定する情報をさらに含んでもよい。
【0067】
ステップS107及びS108において、ソースeNB200は、UE100がハンドオーバを行う前に、セルリスト中の候補セルを管理する候補eNB200T1及び候補eNB200T2に対して、UE100の下りリンクデータの複製の転送を開始する。すなわち、ソースeNB200は、下りリンクデータの複製の転送処理(いわゆる、データフォワーディング)を開始する。
【0068】
ステップS109において、UE100は、ソースeNB200Sからハンドオーバ指令を受信すると、受信されたハンドオーバ指令に含まれるいずれかのハンドオーバ条件が満たされたか否かを判定する。例えば、UE100は、ソースeNB200S(ソースセル)及び各候補eNB200Tの無線状態を測定し、無線状態を閾値と比較することにより、ハンドオーバ条件が満たされたか否かを判定する。
【0069】
ステップS110において、UE100は、セルリスト中の特定の候補セルに対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、ハンドオーバ条件が満たされた特定の候補セルへのハンドオーバを行うことを決定する。ここでは、候補eNB200T1(候補セル#1)に対応するハンドオーバ条件が満たされたと仮定して説明を進める。
【0070】
ステップS111において、UE100は、ハンドオーバの実行を示す通知(ハンドオーバ通知)をソースeNB200Sに送信してもよい。ソースeNB200Sは、かかる通知に基づいて、UE100がハンドオーバを実行することを把握する。ハンドオーバ実行通知は、UE100がハンドオーバ先として選択したセルを示す情報を含んでもよい。
【0071】
ステップS112において、UE100は、ハンドオーバ先として選択した候補セル#1(候補eNB200T1)に対してランダムアクセスプロシージャを開始し、当該セルに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0072】
ステップS113において、候補eNB200T1は、ランダム信号に基づいてタイミングアドバンスを算出するとともに、UE100に割り当てる上りリンク無線リソースを決定し、算出したタイミングアドバンス及び決定した上りリンク無線リソースの情報を含むランダムアクセス応答をUE100に送信する。
【0073】
ここで、候補セル#1に対応するタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報(UL grant)がハンドオーバ指令に含まれている場合、UE100は、候補セル#1(候補eNB200T1)に対するランダムアクセスプロシージャ、すなわち、ランダムアクセス信号の送信(ステップS112)及びランダムアクセス応答の受信(ステップS113)を省略してもよい。ここでは、UE100がランダムアクセスプロシージャを省略したと仮定して説明を進める。
【0074】
ステップS114において、UE100は、候補セル#1(候補eNB200T1)へのハンドオーバを行う際に、候補セル#1に対応するタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を用いて、候補セル#1へのランダムアクセス信号の送信を省略するとともに、上りリンクメッセージを候補セル#1に送信する。ここで、上りリンクメッセージは、RRCメッセージの一種であるRRC再設定完了メッセージであってもよい。これにより、UE100と候補セル#1(候補eNB200T1)との間の接続処理が完了し、ハンドオーバが完了する。
【0075】
ステップS115において、UE100は、ハンドオーバが完了すると、ハンドオーバ指令に含まれていた候補セル#1(候補eNB200T1)に対応する無線通信設定を用いて、候補セル#1(候補eNB200T1)とデータを送受信する。候補eNB200T1は、UE100からデータフォワーディングにより予め転送された下りリンクデータをUE100に送信してもよい。
【0076】
ステップS116において、候補eNB200T1は、UE100が候補eNB200T1にハンドオーバ(接続)したことを示すハンドオーバ通知をX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信してもよい。
【0077】
ステップS117において、ソースeNB200Sは、候補eNB200T1からのハンドオーバ通知の受信に応じて、ハンドオーバキャンセルを候補eNB200T2に通知してもよい。候補eNB200T2は、ハンドオーバキャンセルの受信に応じて、ハンドオーバ要求(ステップS103)に含まれ且つ候補eNB200T2が保持していたUEコンテキストを破棄してもよい。
【0078】
以上説明したように、UE100が接続するソースセルからターゲットセルに対してUE100の条件付きハンドオーバを行うためのハンドオーバ制御方法において、UE100は、ソースセルから、ターゲットセルの候補である候補セルのリスト(セルリスト)とセルリスト中の候補セルごとに指定されるハンドオーバ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する。UE100は、受信されたハンドオーバ指令に含まれるセルリスト中の特定の候補セル(候補セル#1)に対応するハンドオーバ条件が満たされた場合に、ハンドオーバ条件が満たされた特定の候補セル(候補セル#1)へのハンドオーバを行う。
【0079】
このように、候補セルごとにハンドオーバ条件を指定することにより、候補セルの属性(例えば、セルの種別やサイズ)に応じてきめ細かにハンドオーバ条件を指定できる。
【0080】
一実施形態において、ハンドオーバ指令は、セルリスト中の候補セルごとに指定される無線通信設定をさらに含む。UE100は、特定の候補セル(候補セル#1)へ接続した後、特定の候補セル(候補セル#1)に対応する無線通信設定を用いて特定の候補セル(候補セル#1)との無線通信を行う。
【0081】
一実施形態において、ソースセルを管理するソースeNB200Sが、セルリスト中の候補セルを管理する候補eNB200Tから無線通信設定を取得する。ソースeNB200Sは、候補eNB200Tから取得された無線通信設定を含むハンドオーバ指令をUE100に送信する。
【0082】
これにより、条件付きハンドオーバの後において適切に無線通信を行うことができる。
【0083】
一実施形態において、ハンドオーバ指令は、セルリスト中の候補セルごとに指定されるタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報をさらに含む。UE100は、特定の候補セル(候補セル#1)へのハンドオーバを行う際に、特定の候補セル(候補セル#1)に対応するタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を用いて、特定の候補セル(候補セル#1)へのランダムアクセス信号の送信を省略するとともに上りリンクメッセージを特定の候補セル(候補セル#1)に送信する。
【0084】
一実施形態において、ソースセルを管理するソースeNB200Sは、セルリスト中の候補セルを管理する候補eNB200Tからタイミングアドバンス情報及び/又は無線リソース情報を取得する。ソースeNB200Sは、候補eNB200Tから取得されたタイミングアドバンス情報及び/又は無線リソース情報を含むハンドオーバ指令をUE100に送信する。
【0085】
これにより、条件付きハンドオーバの際にランダムアクセスプロシージャを省略できる。
【0086】
一実施形態において、ソースセルを管理するソースeNB200Sは、UE100がハンドオーバを行う前に、セルリスト中の候補セルを管理する候補eNB200Tに対して、ユーザ装置の下りリンクデータの複製の転送を開始する。
【0087】
これにより、条件付きハンドオーバの後に候補eNB200Tが下りリンクデータ送信を速やかに開始できる。
【0088】
(その他の実施形態)
上述した実施形態において、上りリンク無線リソース情報を含むハンドオーバ指令をソースeNB200SからUE100に送信する一例について説明した。しかしながら、各候補eNB200Tが上りリンク無線リソース情報をSIB(System Information Block)によりブロードキャストしている場合、UE100は、各候補eNB200Tから上りリンク無線リソース情報を受信し、受信された上りリンク無線リソース情報に基づいて、ランダムアクセスプロシージャ(図6のステップS112及びS113)を省略するとともに、上りリンクメッセージを送信(図6のステップS114)してもよい。
【0089】
UE100(又はeNB200)が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0090】
また、UE100(又はeNB200)が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100(又はeNB200)の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0091】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0092】
本願は、米国仮出願第62/752524号(2018年10月30日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7