(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120052
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】紙およびコーティング用の少なくとも92のGE輝度を有する熱処理カオリン顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 1/30 20060101AFI20220809BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220809BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09C1/30
C09D7/61
C09D201/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092921
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2018547471の分割
【原出願日】2017-03-08
(31)【優先権主張番号】62/305,252
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/449,298
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アショク コッカニ
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル イルディリム
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ビルーブ
(72)【発明者】
【氏名】シャラド マートゥル
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー エヌ. レイク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適切な形態と併せて、より細かい粒径およびより狭い粒度分布を有するカオリン、ならびにカオリン製品の製造方法および使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも約92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、熱処理カオリン、カオリン製品の製造方法および使用方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、熱処理カオリン。
【請求項2】
少なくとも約92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
熱処理カオリンの0.25質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、熱処理カオリン。
【請求項3】
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項2記載の熱処理カオリン。
【請求項4】
10ミクロン未満のe.s.d.を有する99質量%~100質量%の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%~100質量%の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%~98質量%の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%~92質量%の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%~46質量%の粒子
の粒度分布を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項5】
5ppm~300ppmの+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項6】
90ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項7】
70ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項8】
50ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項9】
熱処理カオリンの0.1質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項10】
熱処理カオリンの1.5質量%以下のチタニア含有量を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項11】
少なくとも約92~約96のGE輝度を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項12】
0.60ミクロン以下のメジアン粒径(d50)を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項13】
0.50~0.59ミクロンのメジアン粒径(d50)を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項14】
100ポンドの熱処理カオリンあたり100ポンドを上回る油の吸油量(油のlbs/熱処理カオリン100lbs)を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項15】
100lbsより高く140lbsまでの油/熱処理カオリン100lbsの吸油量を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項16】
105lbs~120lbsの油/熱処理カオリン100lbsの吸油量を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項17】
457ナノメートルで0.300m2/g以上の散乱係数を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項18】
457ナノメートルで約0.305m2/g~約0.335m2/gの散乱係数を有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項19】
577ナノメートルで0.220m2/g以上の散乱係数を有する、請求項1から18までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項20】
577ナノメートルで約0.223m2/g~約0.230m2/gの散乱係数を有する、請求項1から19までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項21】
17.0m2/g以上の表面積を有する、請求項1から20までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項22】
約17.0m2/g~約25.0m2/gの表面積を有する、請求項1から21までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項23】
約17.0m2/g~約21.0m2/gの表面積を有する、請求項1から22までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項24】
20.0m2/gを上回る表面積を有する、請求項1から23までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項25】
18mg/105回転以下のアインレーナー摩耗量を有する、請求項1から24までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項26】
9~18mg/105回転のアインレーナー摩耗量を有する、請求項1から25までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項27】
30%以上の光沢を有する、請求項1から26までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項28】
約30%~約45%の光沢を有する、請求項1から27までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項29】
完全に焼成された、請求項1から28までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項30】
メタカオリンである、請求項1から29までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項31】
請求項1から30までのいずれか1項記載のカオリンを含む製造品であって、紙製品、板紙製品、紙コーティング組成物、セラミック組成物、塗料組成物、ポリマー組成物、ゴム組成物、工業用プラスチック組成物、およびインク組成物からなる群から選択される、前記製造品。
【請求項32】
紙製品である、請求項31記載の製造品。
【請求項33】
紙が感熱紙である、請求項32記載の製造品。
【請求項34】
感熱紙が、カオリンを含むベースを有する、請求項33記載の製造品。
【請求項35】
塗料組成物である、請求項34記載の製造品。
【請求項36】
熱処理カオリン製品の製造方法であって、
1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含有する第1のカオリン供給流を供給する工程;
第1のカオリン供給流を遠心分離によって分級し、1μm以下のサイズを有する粒子が少なくとも約97~98質量%である微粒子サイズの分布をもたらす工程;
第1のカオリン供給流を濾過して濾過ケーキを生成する工程;
濾液を、ナトリウム不含の分散剤中に分散させて第2のカオリン供給流を供給する工程;および
第2のカオリン供給流を乾燥および熱処理する工程
を含み、還元漂白工程を含まない、前記方法。
【請求項37】
濾過工程の前に第1の供給流を凝集させる工程をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ナトリウム不含の分散剤が、アンモニア系分散剤である、請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
第2のカオリン供給流が、約10のpHを有する、請求項36から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
熱処理が、完全に焼成されたカオリンを製造するために約900℃~約1200℃の温度で焼成する工程を含む、請求項36から39までのいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
供給工程が、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料を、分級工程および選鉱工程によって処理して、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含有する第1のカオリン供給流を生成することを含む、請求項36から40までのいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
処理工程の選鉱工程が、磁気分離を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
処理工程が、浮選工程を含み、かつ第1のカオリン供給流が、0.3μm以下のサイズの粒子を少なくとも約70質量%含有する、請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
処理工程が、浮選工程の後にオゾン処理工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
処理工程が、選択的凝集工程を含み、かつ第1のカオリン供給流が、0.5μm以下のサイズの粒子を少なくとも約86質量%含有する、請求項41から44までのいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
剥離プロセスを排除する、請求項36から45までのいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
剥離プロセスには、ボールミル、撹拌媒体粉砕、および/または高エネルギーの媒体粉砕が含まれる、請求項46記載の方法。
【請求項48】
分級工程、濾過工程、分散工程、および乾燥・焼成工程において、ナトリウム系分散剤が除外される、請求項36から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
供給工程、分級工程、濾過工程、分散工程、および乾燥・焼成工程において、ナトリウム系分散剤が除外される、請求項36から48までのいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
少なくとも約92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項36から49までのいずれか1項記載の方法に従って製造された熱処理カオリン。
【請求項51】
少なくとも約92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
熱処理カオリンの0.25質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、請求項36から49までのいずれか1項記載の方法に従って製造された熱処理カオリン。
【請求項52】
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項51記載の熱処理カオリン。
【請求項53】
5ppm~300ppmの+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項50から52までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項54】
90ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項50から53までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項55】
70ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項50から54までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項56】
50ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項50から55までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項57】
熱処理カオリンの0.1質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、請求項50から56までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項58】
熱処理カオリンの1.5質量%以下のチタニア含有量を有する、請求項50から57までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月8日に出願された米国特許出願第62/305,252号明細書(U.S. Patent Application No. 62/305,252)および2017年1月23日に出願された米国特許出願第62/449,298号明細書(U.S. Patent Application No. 62/449,298)の利益および優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
発明の属する技術分野
本出願は、紙のコーティング用の顔料、特に熱処理カオリン顔料に関する。
【0003】
本開示の背景
以下の背景の議論では、特定の構造および/または方法について述べている。しかしながら、以下の参考文献において、これらの構造および/または方法が先行技術を構成するものとして解釈されるべきではない。出願人には、明らかに、このような構造および/または方法が先行技術としての資格がないことを証明する権利がある。
【0004】
カオリンは、六角形状の不規則な配向の積層小板の形の、天然に存在する水和ケイ酸アルミニウム結晶鉱物(カオリナイト)である。含水カオリンは、その細かい粒径、板状または層状の粒子形状、および化学的不活性によって特徴付けられる。
【0005】
焼成カオリンの現在の製造方法は、化学的に分散されて水と混ぜ合わされた/デグリットされたカオリン粗原料を調製し、これを遠心分離および磁気分離に付し、続いて噴霧乾燥、微粉砕、焼成および微粉砕に付すことを含む。より細かい粒径のカオリンを得るための現在の技術、例えば、媒体粉砕は、焼成カオリンの形態に有害な影響を及ぼし、そしてカオリン製品の最終用途における性能に悪影響を及ぼす。
【0006】
約1100℃までの温度でカオリンを焼成することにより、粒子が一緒にセメント化され、白色度および不透明度が向上した製品が製造される。このような顔料は、紙、プラスチック、ゴムおよび塗料産業で広く使用されている。Fanselowらによる米国特許第3,586,523号明細書(U.S. Pat. No. 3,586,523)は、ANSILEX(登録商標)およびANSILEX(登録商標)93の登録商標で供給される顔料などの低摩耗の細かい粒径の不透明な焼成カオリンクレーの製造に関する。このような顔料の平均粒径は約0.8ミクロンである。
【0007】
当該技術分野では、様々な用途での性能を向上させるために、より細かくかつ急峻な粒度分布および有用な性能特性を有する熱処理カオリン製品およびその製造方法について、現在、まだ満たされていない要求がある。本開示はこの要求に対処する。
【0008】
本開示の概要
以下の概要は、詳細な概説ではない。これは、様々な実施形態の必須のまたは重要な要素を特定することも、その範囲を示すことも意図していない。
【0009】
提供される熱処理カオリンは、少なくとも約92のGE輝度を有し、さらに次の粒度分布を有する:10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99%以上の粒子;5ミクロン未満のe.s.d.を有する93%以上の粒子;2ミクロン未満のe.s.d.を有する85%以上の粒子;1ミクロン未満のe.s.d.を有する77%以上の粒子;および0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25%以上の粒子(ここでパーセンテージ(%)は熱処理カオリン中の粒子の全質量を基準とする)。熱処理カオリンは、次の粒度分布を有し得る:10ミクロン未満のe.s.d.を有する99%~100%の粒子;5ミクロン未満のe.s.d.を有する93%~100%の粒子;2ミクロン未満のe.s.d.を有する85%~98%の粒子;1ミクロン未満のe.s.d.を有する77%~92%の粒子;および0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25%~46%の粒子(ここでパーセンテージ(%)は熱処理カオリン中の粒子の全質量を基準とする)。いくつかの実施形態では、熱処理カオリンは、300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有し得る。例えば、熱処理カオリンは、5ppm~300ppm(例えば、90ppm以下、70ppm以下、または50ppm以下)の+325メッシュ残渣含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、熱処理カオリンは、0.25質量%以下(例えば、0.1質量%以下)の酸化ナトリウム含有量を有し得る。熱処理カオリンのチタニア含有量は、1.5質量%以下であり得る。
【0010】
熱処理カオリンは、少なくとも約92~約96のGE輝度を有し得る。
【0011】
熱処理カオリンは、約0.65ミクロン以下のメジアン粒径(d50)を有し得る。熱処理カオリンは、0.50~0.65ミクロンのメジアン粒径(d50)を有し得る。
【0012】
熱処理カオリンは、100ポンドのクレイ(すなわち、熱処理カオリン)あたり100ポンド以上の油の吸油量(油のlbs/熱処理カオリン100lbs)を有し得る。熱処理カオリンは、100lbsより高く140lbsまでの油/100lbsの熱処理カオリン(例えば、100lbsより高く130lbsまで、105lbs~120lbs、または105lbs~115lbsの油/100lbsの熱処理カオリン)の吸油量を有し得る。
【0013】
熱処理カオリンは、457ナノメートルで0.300m2/g以上の散乱係数を有し得る。熱処理カオリンは、457ナノメートルで約0.305~約0.335m2/gの散乱係数を有し得る。
【0014】
熱処理カオリンは、577ナノメートルで0.220m2/g以上の散乱係数を有し得る。熱処理カオリンは、577ナノメートルで約0.223~約0.230m2/gの散乱係数を有し得る。
【0015】
熱処理カオリンは、17.0m2/g以上の表面積を有し得る。例えば、熱処理カオリンは、約17.0~約25.0m2/g、約17.0~約21.0m2/g、または20.0m2/gより大きな表面積を有し得る。
【0016】
熱処理カオリンは、18mg/105回転以下のアインレーナー(Einlehner)摩耗量を有し得る。熱処理カオリンは、9~18mg/105回転のアインレーナー摩耗量を有し得る。
【0017】
熱処理カオリンは、30%以上の光沢を有し得る。熱処理カオリンは、約30%~約45%の光沢を有し得る。
【0018】
熱処理カオリンは、完全に焼成されたカオリンまたはメタカオリンであり得る。
【0019】
また、本開示の熱処理カオリンを含む製造品も提供される。製造品は、紙製品、板紙製品、紙コーティング組成物、セラミック組成物、塗料組成物、ポリマー組成物、ゴム組成物、工業用プラスチック組成物、およびインク組成物からなる群から選択され得る。
【0020】
製造品は、紙製品であり得る。製造品は、感熱紙であり得る。製造品は、カオリンを含むベース層を有する感熱紙であり得る。
【0021】
製造品は、塗料組成物であり得る。
【0022】
また、本開示の熱処理カオリン製品の製造方法も提供される。この方法は、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含有する第1のカオリン供給流を供給する工程;第1のカオリン供給流を遠心分離によって分級し、1μm以下のサイズを有する粒子が少なくとも約97~98質量%である微粒子サイズの分布をもたらす工程;第1のカオリン供給流を濾過して濾過ケーキを生成する工程;濾液を、ナトリウム不含の分散剤中に分散させて第2のカオリン供給流を供給する工程;および第2のカオリン供給流を乾燥および熱処理する工程を含み、ここで、熱処理カオリンの製造方法は、還元漂白工程を含まない。ナトリウム不含の分散剤は、アンモニア系分散剤であり得る。第2のカオリン供給流は、約10のpHを有し得る。
【0023】
この方法は、濾過工程の前に第1の供給流を凝集させることをさらに含み得る。
【0024】
この方法の熱処理工程は、約900℃~約1200℃の温度で焼成して、完全に焼成されたカオリンを生成することを含み得る。
【0025】
この方法の供給工程は、水と混ぜ合わされた/デグリットされた(degritted)含水カオリン粗供給原料を、分級工程および選鉱工程によって処理して、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含有する第1のカオリン供給流を生成することを含み得る。この処理工程の選鉱工程は、磁気分離を含む。特定の実施形態では、この処理工程は、さらに浮選工程を含むことができ、第1のカオリン供給流は、0.3μm以下のサイズの粒子を少なくとも約70質量%含有する。いくつかの例では、この方法は、浮選工程の後にオゾン処理工程を行うことを含み得る。他の実施形態では、処理工程は、さらに選択的凝集工程を含むことができ、第1のカオリン供給流は、0.5μm以下のサイズの粒子を少なくとも約86質量%含有する。
【0026】
この方法では、剥離プロセスが除外され得る。除外された剥離プロセスには、ボールミル、撹拌媒体粉砕、および/または高エネルギーの媒体粉砕が含まれ得る。
【0027】
分級工程、濾過工程、分散工程、および乾燥・焼成工程においてナトリウム系分散剤が除外される方法が実施され得る。
【0028】
本発明の開示された方法および組成物に関して本開示で想定されるように、一態様では、本開示の実施形態は、本明細書で開示された成分および/または工程を含む。別の態様では、本開示の実施形態は、本質的に本明細書で開示された成分および/または工程からなる。さらに別の態様では、本開示の実施形態は、本明細書で開示された成分および/または工程からなる。
【0029】
発明の詳細な説明
当該技術分野では、所望の特性にとって適切な形態を保有しながら、より細かくてより急峻な粒度分布を有するカオリン製品(例えば、部分的にまたは完全に焼成されたカオリン)が求められる。本明細書では、現在の焼成カオリン製品と比較して、より細かくてより狭い粒度分布を有する熱処理カオリン製品が提供される。一実施形態では、カオリン製品は完全に焼成される。本開示の熱処理カオリンは、現在市販されている焼成カオリン製品と同等であるかまたはそれよりも良好な望ましい性能をもたらすための適切な形態を有する。例えば、熱処理カオリンには、光散乱係数の損失および/または不透明度の低下がなく、さらにより細かくてより急峻な粒度分布が得られる。本開示のカオリンは、現在市販されている焼成カオリン製品と比較して、増加した光散乱係数、増加した吸油量および/または増加した表面積を有し得る。開示されたカオリンの製造方法が提供される。この方法には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、特にナトリウム不含の分散剤の使用が含まれる。本開示のカオリンを含有する製品およびカオリンの使用方法も提供される。
【0030】
定義
本明細書で使用されるように、以下の各用語は、この節に関連する意味を有する。
【0031】
本明細書では、冠詞「a」および「an」は、1つのまたは1つよりも多い(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法的な対象を指すために使用されている。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つよりも多い要素を意味する。
【0032】
「約」という用語は、当業者によって理解されており、使用される文脈に応じてある程度変化することになる。本明細書で使用されるように、「約」とは、±20%、より好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。本明細書に記載された範囲内のすべての整数の全部または一部が本明細書に含まれることが理解される。
【0033】
組成物
改善されたカオリン、改善されたカオリンの製造方法、ならびに改善された焼成カオリンを含む製品および組成物が本明細書で提供される。
【0034】
本開示の熱処理カオリンは、標準的な市販の焼成カオリン製品と比較して、改善された形態および性能を有する。焼成カオリンの形態には、形状が不規則でありかつボイド体積が増加したものが含まれる。本発明の焼成カオリン顔料は、より細かい粒度分布、より細かいメジアン粒径、増加した表面積、増加した輝度、低減した摩耗量、改善された吸油量、低下した残渣含有量、低下した酸化ナトリウム含有量、および同等であるかまたは増加した散乱係数などの1つ以上の改善された特性を有する。特に、同程度の粒径を有する現在の市販品と比較して、本開示の焼成カオリン製品の吸油量は予想外に増加している。さらに、本開示のカオリン製品は、適切な形態を取り続けながら、より細かい粒度分布を有し、例えば、非常に望ましい散乱特性をもたらす。改善されたカオリンは、本明細書に開示された含水カオリンの処理方法から得られる。この処理方法は、より細かい粒径のカオリン供給流を焼成に使用すること、およびナトリウムなどのアルカリ金属を含む分散剤を使用しないことを含む。この方法は、一実施形態では、焼成前にアンモニア系分散剤を濾過分散剤として使用し、改善された焼成カオリン製品を製造する。この処理方法では場合により漂白剤を使用せず、その結果、粒子が粗くなり、焼成カオリン製品の残渣含有量および/または粒径などの特性が変化し得る。
【0035】
本明細書で使用される粒度分布(PSD)は、SEDIGRAPH 5100粒度分析器(Micromeretics Corporation)を用いて、水などの標準的な水性媒体に完全に分散した状態の焼成カオリンで測定される。データは、等価球径(e.s.d.)として質量パーセント基準で報告される。メジアン粒径d50とは、d50値より小さいe.s.d.を有する粒子が50質量%存在するように決められた粒子のe.s.d.値である。
【0036】
本開示の焼成カオリンは、より狭い粒度分布およびより細かいメジアン粒径を有する。
【0037】
焼成カオリンは、約0.65ミクロン以下のメジアン粒径(d50)を有し得る。例えば、焼成カオリンは、0.60ミクロン以下、0.59ミクロン以下、0.58ミクロン以下、0.57ミクロン以下、0.56ミクロン以下、0.55ミクロン以下、0.54ミクロン以下、または0.53ミクロン以下のメジアン粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、0.50ミクロン以上、0.51ミクロン以上、0.52ミクロン以上、0.53ミクロン以上、0.54ミクロン以上、または0.55ミクロン以上のメジアン粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、0.50~0.65ミクロン、0.50ミクロン以上0.60ミクロン未満、0.50~0.59ミクロン、0.50~0.58ミクロン、0.50~0.57ミクロン、または0.52~0.58ミクロンのメジアン粒径を有し得る。
【0038】
PSDの代表的な範囲および本開示の焼成カオリンの平均粒径を第1表に示す。代表的な焼成カオリンのPSDおよび平均粒径を第2表に示す。
【表1】
【表2】
【0039】
本開示の焼成カオリンは、改善された輝度、低減した摩耗量、改善された吸油量、および増加した表面積のうちの1つ以上を有する。
【0040】
本明細書で使用されるように、輝度は、TAPPI標準方式T452によって測定される。このデータは、波長457nmの光に対する反射率(GEB値)として報告されている。
【0041】
焼成カオリンは92%以上の輝度を有し得る。例えば、焼成カオリンは、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、または97%以上の輝度を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、92%~97%または92%~96%の輝度を有し得る。
【0042】
カオリンは、通常、チタニア鉱物を含有する。チタニア鉱物は、TiO2の組成を有する多形体として存在し得る。天然のチタニアは、低い輝度を示し、その存在によってカオリンの輝度は低下し得る。焼成カオリンは、1.5質量%以下のチタニア含有量を有し得る。例えば、焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として、1.45質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、または0.5質量%以下のチタニア含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として、0質量%以上、0.5質量%以上、または1質量%以上のチタニア含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として、0質量%~1.45質量%、0.5質量%~1.45質量%、または0.5質量%~1.2質量%のチタニア含有量を有し得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、アインレーナー摩耗量は、Einlehner AT 1000摩耗試験機によって固形分15質量%および100,000回転で測定される。アインレーナー摩耗は、mg損失/100,000回転(mg損失/105回転)で報告される。
【0044】
焼成カオリンは、18mg/105回転以下のアインレーナー摩耗量を有し得る。例えば、焼成カオリンは、15mg/105回転以下、12mg/105回転以下、10mg/105回転以下、または9mg/105回転以下のアインレーナー摩耗量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、5mg/105回転以上または9mg/105回転以上のアインレーナー摩耗量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、9~18mg/105回転、9~16mg/105回転、または9~15mg/105回転のアインレーナー摩耗量を有し得る。
【0045】
本明細書で使用されるように、吸油量は、ASTM D 281“Oil Absorption by Spatula Rub-out”を用いて測定される。データは、焼成カオリン100ポンド(グラム)あたりに吸収される油のポンド(グラム)(%)で報告される。
【0046】
焼成カオリンは、100%以上の吸油量(焼成(熱処理)カオリン100lbsあたり100lbs以上の油)を有し得る。例えば、焼成カオリンは、100%より高い、105%以上、110%以上、115%以上、120%以上、125%以上、130%以上、または135%以上の吸油量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、100%~115%、100%~130%、100%超~115%、100%超~130%、100%超~140%、105%~120%、105%~130%、105%~140%、109%~130%、または109%~120%の吸油量を有し得る。
【0047】
本明細書で使用されるように、表面積は、当業界で認められているブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer Emmett Teller)(BET)法によって吸着剤としてN2を用いて測定される。要するに、液体窒素中で凍結された焼成カオリン試料の表面積は、窒素ガスの吸着によって測定され、BET分析により定量される。
【0048】
焼成カオリンは、17m2/g以上の表面積を有し得る。例えば、焼成カオリンは、17m2/g、18m2/g以上、19m2/g以上、20m2/g以上、21m2/g以上、または22m2/g以上の表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、25m2/g以下、24m2/g以下、23m2/g以下、または22m2/g以下の表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、17m2/g~25m2/g、17m2/g~22m2/g、19m2/g~25m2/g、20m2/g超~25m2/g、または21m2/g~25m2/gの表面積を有し得る。
【0049】
本開示の焼成カオリンの輝度、摩耗量、吸油量および表面積の代表的な範囲を第3表に示す。代表的な焼成カオリンの輝度、摩耗量、吸油量および表面積の値を第4表に示す。
【表3】
【表4】
【0050】
本開示の焼成カオリンは、改善された光沢および/または光散乱を有する。
【0051】
本明細書で使用されるように、光沢は、0.25ミルのBird Barを使用して、顔料と水との混合物(固形分30(質量)%)から構成される顔料のフィルムを、光学的に滑らかな黒いガラス上に適用することによって測定される。光沢は、Technidyne T480光沢計(テクニダイン社(Technidyne Corporation)、ニューアルバニー、インディアナ州)を用いて75度(PL法50C)で測定される。
【0052】
焼成カオリンは、30%以上の光沢を有し得る。例えば、焼成カオリンは、32%以上、35%以上、38%以上、40%以上、42%以上、44%以上、45%以上、46%以上、48%以上、または50%以上の光沢を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、50%以下、48%以下、47%以下、または46%以下の光沢を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、30%~50%、30%~45%、35%~50%、または35%~45%の光沢を有し得る。
【0053】
本明細書で使用されるように、光散乱は、0.25ミルのBird Barを使用して、顔料と水との混合物(固形分30(質量)%)から構成される顔料のフィルムを、光学的に滑らかな黒いガラス上に適用することによって測定される。空気乾燥後の顔料フィルムの反射率は、エルレフォ・リフレクトメーター(Elrepho Reflectometer)のような一体化した球形状を有する反射率計を用いて457nmおよび577nmの波長で測定される。反射率の値は、クベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)の方程式を使って光散乱係数(m2/g)に変換される。
【0054】
焼成カオリンは、457ナノメートルで0.400m2/g以下の散乱係数を有し得る。例えば、焼成カオリンは、457ナノメートルで、0.380m2/g以下、0.350m2/g以下、0.340m2/g以下、0.335m2/g以下、0.330m2/g以下、0.325m2/g以下、0.320m2/g以下、0.315m2/g以下、0.310m2/g以下、0.305m2/g以下、または0.300m2/g以下の散乱係数を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、457ナノメートルで、0.300m2/gを上回る、0.305m2/g以上、0.310m2/g以上、または0.320m2/g以上の散乱係数を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、457ナノメートルで、0.300m2/g~0.400m2/g、0.300m2/g~0.350m2/g、0.300m2/g~0.335m2/g、または0.305m2/g~0.335m2/gの散乱係数を有し得る。
【0055】
焼成カオリンは、577ナノメートルで、0.300m2/g以下の散乱係数を有し得る。例えば、焼成カオリンは、577ナノメートルで、0.250m2/g以下、0.235m2/g以下、0.229m2/g以下、0.228m2/g以下、0.227m2/g以下、0.226m2/g以下、0.225m2/g以下、0.224m2/g以下、0.223m2/g以下、0.222m2/g以下、0.221m2/g以下、または0.220m2/g以下の散乱係数を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、577ナノメートルで、0.220m2/gを上回る、0.221m2/g以上、0.222m2/g以上、0.223m2/g以上、0.224m2/g以上、または0.225m2/g以上の散乱係数を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、577ナノメートルで、0.220m2/g~0.300m2/g、0.221m2/g~0.229m2/g、または0.221m2/g~0.227m2/gの散乱係数を有し得る。
【0056】
本開示の焼成カオリンの光沢および光散乱係数の代表的な範囲を第5表に示す。代表的な焼成カオリンの光沢および光散乱係数の値を第6表に示す。
【表5】
【表6】
【0057】
焼成カオリン製品は、わずかな割合の過大粒子(粗い残渣粒子)を含むことがあり、これらの粒子は押出工程においてダイの閉塞などの望ましくない影響を及ぼし得る。これらの粗い残渣粒子は、また、コート紙/感熱紙の表面に欠陥も生じさせ得る。さらに、粗い残渣粒子は、研磨性が高い傾向があり、したがって、適用装置の摩耗や損傷を招き得る。粗い残渣粒子は、一般に325メッシュのスクリーンに留まることになり、ここでは+325メッシュ残渣と呼ぶ。+325メッシュ残渣は、ASTM C-325-81(1997)で指定されているように測定され得る。
【0058】
焼成カオリンは、300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有し得る。例えば、焼成カオリンは、280ppm以下、250ppm以下、230ppm以下、200ppm以下、180ppm以下、150ppm以下、120ppm以下、100ppm以下、100ppm未満、95ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、または20ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、0ppm以上、5ppm以上、10ppm以上、15ppm以上、20ppm以上、30ppm以上、40ppm以上、50ppm以上、55ppm以上、60ppm以上、65ppm以上、または70ppm以上の+325メッシュ残渣含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、5ppm~300ppm、5ppm~250ppm、5ppm~200ppm、5ppm~150ppm、5ppm~100ppm、10ppm~300ppm、10ppm~200ppm、10ppm~100ppm、10ppm~80ppm、15ppm~300ppm、15ppm~200ppm、15ppm~100ppm、または15ppm~75ppmの+325メッシュ残渣含有量を有し得る。
【0059】
焼成カオリン製品は、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムなどを低アルカリ含有量で含み得る。酸化ナトリウムおよび酸化カリウムは、高い熱膨張値を有することで知られており、用途によっては望ましくない。焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として0.25質量%以下のアルカリ含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として0.20質量%以下、0.18質量%以下、0.15質量%以下、0.13質量%以下、0.10質量%以下、0.08質量%以下、または0.05質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、焼成カオリンは、焼成カオリンの全質量を基準として0.05質量%~0.20質量%、0.05質量%~0.15質量%、または0.05質量%~0.10質量%の酸化ナトリウム含有量を有し得る。
【0060】
本開示の熱処理カオリンは、本明細書に記載された特性のあらゆる組み合わせを含み得る。このように、本開示は、第1表に開示された平均粒径および/または第3表および第5表に開示された1つ以上の特性と併せて第1表に開示されたPSDを有する熱処理カオリンを包含する。本開示は、第1表に開示されたPSDおよび第5表に開示された光散乱値を有する熱処理カオリンを包含する。本開示は、第1表に開示されたPSDおよび第3表に開示された吸油量値を有する熱処理カオリンを包含する。
【0061】
カオリン製品の製造方法を示す。この方法を、
図1に模式的な形で示す。この方法は、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含む第1のカオリン供給流6を供給すること;濾過ケーキ10を生成するための第1の供給流の濾過工程8;第2のカオリン供給流14を供給するためのナトリウム不含の分散剤中への濾過ケーキの分散工程12;および熱処理カオリン18を製造するための第2のカオリン供給流の乾燥および熱処理工程16を含む。
【0062】
この方法の一実施形態を、
図2に模式的な形で示すが、ここでは、第1のカオリン供給流を、濾過工程8の前に分級工程20に付して、1μm以下のサイズを有する粒子を少なくとも97~98質量%含むより細かな粒径の供給流を生成する。より細かい粒径の供給流を、凝集工程22に付し、続いて濾過工程8に付して濾過ケーキ10を生成する。濾過ケーキ10を、分散工程12に付し、第2のカオリン供給流14を供給する。乾燥および加熱工程16は、第2のカオリン供給流14を第1の噴霧乾燥工程24に付した後、供給流14を微粉砕工程26に付し、続いて微粉砕されたカオリン材料を熱処理工程28に付して熱処理カオリン18を生成することを含む。任意選択で、熱処理カオリン18を、さらなる微粉砕工程30に付して、微粉砕された熱処理カオリン32を生成する。
【0063】
この方法は、第1のカオリン供給流6を処理工程4によって生成することをさらに含んでよく、処理工程4は、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料2を分級工程および選鉱工程によって処理して第1のカオリン供給流6を生成することを含む。
図3を参照されたい。
【0064】
水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料は、通常の技術を用いてカオリン粗原料から準備され得る。あらゆる含水カオリン粗原料が使用され得る。カオリン粗原料の色は、主に灰色、白色、クリーム色、ピンク色または赤色/茶色であってよく、本開示は、最終焼成カオリン製品を得るために多種多様な粗原料を使用するという多用途性をもたらす。
【0065】
典型的には、カオリン粗原料は粉砕され、ブランジャー(blunger)として知られる高エネルギーのミキサーを用いて1種以上のアニオン性分散剤によって(水と混ぜ合わされた)スラリーの形になる。この水と混ぜ合わせる(blunging)工程の後、分散されたスラリーのpHは、通常、約7~10である。いくつかの実施形態では、スラリーは約10(例えば、9~10または9.5~10)のpHを有する。分散剤は、有機分散剤または無機分散剤であり得る。無機分散剤としては、通常、リン酸塩およびケイ酸ナトリウムの分散剤が挙げられる。リン酸塩の例としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)およびピロリン酸四ナトリウム(TSPP)などの無機ポリリン酸塩およびピロリン酸塩(実際にポリリン酸塩の一種)が挙げられる。有機分散剤としては、典型的には、アンモニア系分散剤、スルホネート分散剤、カルボン酸分散剤、およびポリマー分散剤、例えば、ポリアクリレート分散剤、ならびにカオリン顔料の処理に通常使用される他の有機分散剤が挙げられる。米国特許第8,664,319号明細書(U.S. Pat. No. 8,664,319)に開示されているように、分散剤のブレンド、例えば、炭酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムのブレンドが使用されてもよい。
【0066】
大部分が砂粒子からなる過大粒子(粗粒子)は、したがって、ふるい、サンドボックス、重力沈降、またはハイドロサイクロンのうち1つ以上を用いる通常の方式によって水と混ぜ合わされた粗原料から除去される。湿式または乾式のデグリッティング(degritting)が使用され得る。例えば、デグリッティングは、粗カオリンと水とを合わせ、スラリー状の混合物を325メッシュのふるいまたは200メッシュのふるいなどのふるいに通すことによって行われ得る。
【0067】
これによって得られた、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料は、その後、分級工程および選鉱工程によって処理されて、第1の供給流を生成する。
【0068】
分級(分別としても知られる)および選鉱(精製としても知られる)は、公知の方法を用いて達成され得る。分級の方法としては遠心分離および沈降が挙げられる。適切な方法としては、重力沈降もしくは水簸、任意のタイプの液体サイクロン装置、または遠心分離が挙げられる。適切な遠心分離機の例としては、バードのソリッドボウル遠心分離機、ディスクノズル高速遠心分離機、水平三相遠心分離機等が挙げられる。高速遠心分離は、水と混ぜ合わされた/デグリットされた粗カオリンを2つの流れに分離する役割を果たす。非限定的な例では、遠心分離によって、カオリンは、粗い流れ(粒子の少なくとも約80質量%は2ミクロン以上のサイズを有する)と細かい流れ(粒子の少なくとも約85質量%は1ミクロン以下のサイズを有する)とに分離される。一実施形態では、遠心分離は、選鉱後に、第1の供給流において、粒子の少なくとも約88~89質量%が1μm以下のサイズを有するように行われる。
【0069】
選鉱の方法としては、磁気分離、選択的凝集、還元漂白、濾過、浮選、およびオゾン処理/酸化漂白が挙げられる。これらの方法は、任意の適切な方法で行われ得る。一実施形態では、選鉱工程は磁気分離である。一実施形態では、選鉱はオゾン処理/酸化漂白である。
【0070】
磁気分離は、高勾配磁気分離機(HGMS)を用いて行われ、着色した個別の常磁性不純物(主に鉄含有チタニア)が磁気的に除去され、したがって輝度を向上させることができる。これらの分離機は、HIMSユニット(高強度磁気分離機)としても知られている。従来のHGMS分離機または改良されたHGMS分離機は、磁気分離工程に使用することができる。適切な磁気分離機としては、商用または有標の「高強度」磁気分離機が挙げられる。
【0071】
凝集は、同じ種の鉱物から1つの種の鉱物を分離すること、例えば、微細または粗いカオリン粒子から超微細カオリン粒子を分離することを含む。凝集は、酸などのイオン性物質を用いて行われる(「酸凝集」)。硫酸は、安価で広く入手可能な酸である。凝集は、適切な方法で行われ得る。
【0072】
選択的凝集は、分級機または沈降濃縮機などの沈殿容器において調整化学物質(例えば、オレイン酸および二価カチオン塩)および高分子量/高アニオン性のアクリルアミドポリマーによって変色したチタニア-鉄系不純物から超微細カオリン粒子を分離することを含む。選択的凝集法を用いてチタニア-鉄系不純物からカオリン粒子を分離する方法は、米国特許第5,535,890号明細書(U.S. Pat. No. 5,535, 890)に記載されている。
【0073】
浮選は、湿式浮選、限外浮選(ultraflotation)、泡沫浮選、TREP浮選(チタニア除去および抽出処理)等の通常の方式で行われる。一般的な浮選方法は、Mathur, S., “Kaolin Flotation”, Journal of Colloid and Interface Science, 256, 153~158頁, 2002年(これに関して参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。例えば、米国特許第8,557,037号明細書(U.S. Pat. No. 8,557,037)も参照されたい。
【0074】
一般に、漂白は、カオリンの輝度を増加させることを含む。還元漂白は、粗カオリン流を、適量の1種以上のヒドロ亜硫酸塩(亜二チオン酸塩)、過マンガン酸カリウム、アルカリ重クロム酸塩、過硫酸アンモニウム等と接触させることを含む。米国特許第3,353,668号明細書(U.S. Pat. No. 3,353,668)を参照されたい。いくつかの実施形態では、カオリン製品の製造方法には、還元漂白は含まれない。したがって、カオリン流は、漂白処理に由来する可溶性塩を含有しないかまたは実質的に含有しないこともあり得る。過マンガン酸カリウムやヒドロ亜硫酸亜鉛などの可溶性塩の存在は、カオリン製品に影響を与え得る。例えば、可溶性塩が高濃度であると、+325メッシュ残渣含有量が高くなるか、粒径が粗くなるか、または吸油量が不必要に大幅に増加し得る。また、可溶性塩が存在することで、カオリンが凝集し、カオリンの処理に影響を及ぼし得る。例えば、可溶性塩の濃度が高いと、紙の使用においてカオリン製品の粘度が高くなるか、またはセラミックの使用においてガラス化の温度が低下し得る。
【0075】
オゾン処理/酸化漂白には、存在し得る有機変色剤(organic discolorant)などの成分を漂白するために、オゾンを用いる酸化漂白が含まれる。オゾンは、変色する有機物の大部分を破壊するだけでなく、有機分散剤をも、かかる化合物が存在する場合、酸化によって破壊する。しかしながら、オゾンは、無機分散剤を破壊しない。オゾン処理は、適切な方式で行われる。非限定的な例では、オゾン処理は、カオリン1トン当たり約0.1~約20ポンドのオゾンの用量レベルで行われ得る。別の実施形態では、オゾン処理は、カオリン1トン当たり約0.5~約10ポンドのオゾンの用量レベルで行われる。オゾンは、スラリーを上方向に通過し得る気泡の流れとして適用され得る。これは、オゾンの気泡が、管または他の導管、例えば混合カラムおよび充填カラムにおいてスラリーの流れに逆らって通過する、バッチプロセスまたは連続プロセスである。
【0076】
水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料が、分級工程および選鉱工程によって処理された後、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含む第1の供給流が得られる。
【0077】
任意選択で、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料は、2つの分級工程、例えば、粗いサイズの分級および細かいサイズの分級に付される。供給原料が2つの分級工程に付される一実施形態では、0.3ミクロンより小さいサイズの粒子を少なくとも70質量%含有する第1の供給流が生成する。供給原料が2つの分級工程に付される一実施形態では、0.5ミクロンより小さいサイズの粒子を少なくとも86質量%含有する第1の供給流が生成する。
【0078】
任意選択で、この方法は、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料をさらなる選鉱工程に付すことを含む。一実施形態では、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料は、オゾン処理工程および浮選選鉱工程に付される。一実施形態では、水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料は、磁気分離および酸性凝集選鉱工程に付される。
【0079】
第1の供給流は、次いで濾過の第2の選鉱工程に付され、濾過ケーキを生成する。濾過は、可溶化された不純物を、脱水し、続いて通常、きれいな水ですすぐことによって、副生成物の塩と共に除去する役割を果たす。
【0080】
一実施形態では、この方法は、濾過工程の前に第2の分級工程をさらに含む。具体的には、第1の供給流は、遠心分離によって分級され、1μm以下のサイズの粒子が少なくとも約97~98質量%である微粒子サイズの分布を有する微粉画分をもたらす。第1の供給流の微粉画分は、次いで濾過されて、濾過ケーキ生成物を生成する。微粉画分は、任意選択で濾過前に凝集されてもよい。
図2を参照されたい。
【0081】
遠心分離は、望ましい粒子の微粉度を得るために、ソリッドボウル遠心分離機またはディスクノズル遠心分離機を使用して、単一の工程または複数の工程で行われ得る。高速遠心分離処理において、遠心分離機は、約1,000超~約10,000の「g」力で動作し得る。別の実施形態では、高速遠心分離処理において、遠心分離機は、約2,000~約7,500の「g」力で動作し得る。さらに別の実施形態では、遠心分離機の高速遠心分離処理は、約2,500~約5,000を超える「g」力で動作し得る。
【0082】
濾過工程によって生成された濾過ケーキは、次いで、ナトリウム不含の分散剤中に分散され、第2の供給流を供給する。例示的なナトリウム不含の分散剤としては、アンモニア系分散剤が挙げられる。例示的なアンモニア系分散剤としては、アンモニア、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、AMP-95(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
第2の供給流は、次に乾燥されて、熱処理される。乾燥は、当該技術分野における通常の方法で行われ得る。カオリンの乾燥に適した例としては、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、回転乾燥または他の凝集技術が挙げられる。
【0084】
乾燥カオリンは、通常、熱処理前に微粉砕される。微粉砕は、任意の適切な方法で行われ得る。一実施形態では、カオリンは、少なくとも1回微粉砕される。別の実施形態では、カオリンは、少なくとも2つの別々の動作で微粉砕される(2回粉砕される)。この微粉砕により、存在し得る凝集塊が、分解され得る。このような凝集塊は、乾燥中に形成し、高速遠心分離および他の方法工程によって得られる粒径を変化させ得る。
【0085】
カオリンを加熱すると、示差熱分析(DTA)などの様々な方法によって検出可能な一連の特性変化が起こる。熱処理の温度/時間に応じて、メタカオリン、部分焼成カオリン、および完全焼成カオリンのうち1種以上を形成するために熱処理が使用され得る。一実施形態では、使用される熱処理により、完全に焼成されたカオリンが得られる。本明細書で使用される通り、「完全焼成カオリン」は、900℃~約1200℃の温度で熱処理されたカオリンを指す。一実施形態では、使用される熱処理によりメタカオリンが生じる。
【0086】
熱処理は、不活性雰囲気、酸化雰囲気、および還元雰囲気のいずれか1つで行われる。焼成によって、含水カオリンの結晶性が失われ、カオリンは実質的に非晶質になる。焼成は、約700℃~約1200℃の範囲の温度で十分な時間加熱した後に起こる。市販の垂直回転式および水平回転式のか焼炉を使用して、メタカオリン、部分焼成カオリン、および/または焼成カオリンを製造することができる。望ましくないムライト(3Al2O3.SiO2)を形成するような十分に高い温度での焼成を避けるように操作が制御される。
【0087】
熱処理カオリンは、さらなる湿式遠心分離または空気分級の工程を受けて、より微細なサイズ分布の生成をもたらし得る。例えば、完全焼成カオリンは、水中20質量%でスラリー化され、遠心分離に付されて、より微細なサイズの画分をもたらす。
【0088】
従来技術のいくつかの方法では、剥離工程は、カオリンの精製中に、例えば分級後に行われる。剥離プロセスには、ボールミル、媒体粉砕(撹拌媒体粉砕および/または高エネルギー媒体粉砕を含む)が含まれる。本方法の一実施形態では、この方法はいかなる剥離プロセスも排除する。
【0089】
特定の実施形態では、熱処理カオリン製品の製造方法は、1μm以下のサイズの粒子を少なくとも約88~89質量%含有する第1のカオリン供給流を供給すること;第1のカオリン供給流を遠心分離によって分級し、1μm以下のサイズの粒子が少なくとも約97~98質量%である微粒子サイズの分布をもたらすこと;第1のカオリン供給流を濾過して濾過ケーキを生成すること;濾液を、ナトリウム不含の分散剤中に分散させて第2のカオリン供給流を供給すること;および第2のカオリン供給流を乾燥および熱処理することを含んでよく、その際、前記熱処理カオリンの製造方法は、漂白工程を含まない。この方法は、本明細書に記載されるように熱処理カオリン製品を提供し得る。
【0090】
本開示のカオリンのより微細でかつ狭い粒度分布を有する改良された光学特性(光沢および光散乱)は、感熱紙、工業用および建築用コーティング等の用途にとって非常に有利であるべきである。建築用コーティングまたは工業用コーティングの場合、焼成カオリン顔料は、カバレッジ性および光学特性を改善しなければならず、したがって、同様の光学特性を得るために、従来技術に比べて焼成顔料の使用量が減るか、またはTiO2の量が減ることになる。
【0091】
一実施形態では、本明細書に開示されたカオリンは、感熱紙に使用される。感熱紙用途では、ベースコーティングとして使用される場合、本発明の顔料は、直接感熱紙に使用されるプレコートの絶縁能力、被覆率、滑らかさおよびワックス吸収性を改善しなければならない。感熱紙は、通常、基材層、画像を形成するための活性層、および基材層と活性層との間のベース層の少なくとも3層を有する。ベース層は、気孔率向上剤として結合剤および焼成カオリンを含み、さらに任意選択で分散剤、湿潤剤、および他の添加剤を含有し得る。気孔率向上剤は、ベース層の望ましい熱浸透性に寄与する。ベース層は、十分な量の気孔率向上剤を含有し、有益な熱浸透率などの絶縁性をもたらし、これらの特性は、活性層での高品質の画像形成を促す。一実施形態では、ベース層は、約5質量%以上および約95質量%以下の気孔率向上剤を含有する。別の実施形態では、ベース層は、気孔率向上剤を、約15質量%以上および約90質量%以下含有する。さらに別の実施形態では、ベース層は、気孔率向上剤を、約15質量%以上および約40質量%以下含有する。例えば、米国特許第7,902,117号明細書(U.S. Pat. No. 7,902,117)を参照されたい。
【0092】
さらに、焼成カオリン材料は、紙、特に、感熱紙ベースコーティング用の顔料、コーティング、ワイヤーおよびケーブル、プラスチック、タイヤおよびゴム、建築において使用され得る。焼成カオリンを含む紙コーティングまたは結合配合物の製造に使用する例示的なモノマーは、米国特許第8,642,182号明細書(U.S. Pat. No. 8,642,182)に開示されている。
【0093】
さらに、低い摩耗性や他の物理特性のために、本発明の焼成カオリンは、紙のコーティングや充填にも使用され得る。
【0094】
本開示の焼成カオリンは、ワイヤーおよびケーブルならびに他のエンジニアリングプラスチック用途のシランを用いて表面処理することもできる。
【0095】
一実施形態では、本開示の熱処理カオリンは、工業用または建築用コーティングにおいて使用され得る。本発明のカオリンは、現在市販されている市販のカオリンと比較して、かかるコーティングにおいて、高いコントラスト比をもたらし、改善された高出力、改善された白色度および輝度、および/または高い着色力を示す。
【0096】
したがって、本明細書に開示されたカオリンは、様々な用途に使用され得る。本明細書に開示された焼成カオリンの非限定的な使用としては、紙および板紙製品、紙コーティング、セラミック製品、塗料、ポリマー、ゴム、エンジニアリングプラスチックス、およびインキの製造が挙げられる。本明細書に記載されたカオリンプロセスは、また、あらゆる種類の粗カオリンクレー:軟質および硬質、様々な色(灰色、白色、クリーム色、黄色、茶色、赤色およびピンク色)ならびにそれらの混合物を処理するために使用され得る。
【0097】
様々な製品、組成物および方法を例示する目的で、図面には特定の実施形態が示される。しかしながら、製品、組成物、それらの製造方法、およびそれらの使用方法は、図面に示される実施形態の正確な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】
図1は、本開示のカオリンの製造方法の模式図である。
【
図2】
図2は、本開示のカオリンの製造方法の一実施形態の模式図である。
【
図3】
図3は、本開示のカオリンの製造方法の一実施形態の模式図である。
【
図4】
図4は、本開示による試料1~3および比較試料1についてグラフの形で示した(Sedigraph 5100粒度分析器を用いて得られた)粒度分布のデータである。
【0099】
実施例
製品、組成物、ならびに製造および使用方法を、以下の実験例を参照してさらに詳細に説明する。これらの例は、説明のためにのみ示されたものであり、特に明記しない限り、限定するものではない。したがって、本開示の製品、組成物および方法は、決して以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、あらゆるおよび全ての変形を包含するものと解釈されるべきであり、これらの変形は本明細書で示される教示の結果として明らかになる。
【0100】
以下の実施例に記載されている特性を、以下の方法で評価した。
【0101】
粒度分布(PSD)を、粒子材料の沈降により水などの標準的な水性媒体に完全に分散した状態で、SEDIGRAPH 5100粒度分析器(Micromeretics Corporation)を用いて測定した。データを、等価球径(e.s.d.)として質量パーセント基準で報告する。平均粒径d50とは、d50値より小さいe.s.d.を有する粒子が50質量%存在するように決められた粒子のe.s.d.の値である。
【0102】
輝度を、TAPPI標準方式T452によって測定した。このデータを、波長457nmの光に対する反射率(GEB値)として報告する。
【0103】
アインレーナー摩耗量を、15質量%の固形分および100,000回転を用いて、Einlehner AT 1000摩耗試験機によって測定した。アインレーナー摩耗量を、mg損失/100,000回転(mg損失/105回転)で報告する。
【0104】
吸油量を、ASTM D 281“Oil Absorption by Spatula Rub-out”によって測定した。データを、焼成カオリン100ポンドあたりに吸収される油のポンド(%)で報告する。
【0105】
表面積を、吸着質としてN2を用いて当業界で認められているBET法で測定した。
【0106】
実施例1および2を、3級の粗製種の灰色のカオリン粗原料のみから製造した。
【0107】
実施例1
この実施例は、本開示に従って製造された焼成カオリンおよび比較の市販の焼成カオリンのデータを示す。市販の焼成カオリン(本明細書では「対照カオリン」とも呼ぶ)は、化学的に分散されて水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料を、分級工程および選鉱工程に付し、供給流を生成して焼成することにより製造される。対照のカオリン供給流は、SEDIGRAPH 5100粒度分析器(Micromeritics Corporation、USA)で測定して88~89%が1ミクロン未満の粒径を有する。この実験における比較の焼成カオリン(比較試料1)を、対照のカオリン供給流の試料を採取し、これを実験室で噴霧乾燥することによって調製した。次に、乾燥した材料を、0.020”のスクリーンを備えたマイクロ粉砕機を用いて微粉砕し、実験室用マッフル炉にて1,079℃(すなわち、1,975°F)で60分の均熱時間(soak time)にわたり焼成した。得られた焼成カオリン製品を、次いで0.020”のスクリーンを備えたマイクロ粉砕機を用いて微粉砕した。
【0108】
試料1は、本発明の焼成カオリンの一実施形態である。試料1は、対照のカオリン供給流から得られるカオリンを、約30%の固形分に希釈し、続いて遠心分離を行って1ミクロン未満の粒径が97~98%である微粉画分を得ることによって調製した。次に、遠心分離工程から得られた微粉画分を、8lbs/トンのミョウバンおよび硫酸を用いてpH=3.5で凝集(「フロック」)させた後、実験室での真空濾過により脱水し、可溶性塩類を除去した。得られた濾過ケーキは、約55%の固形分を含有していた。次に、濾過ケーキを、pH約10.0の水酸化アンモニウムで再分散させた。その後、分散した濾過スリップを、比較試料1について説明したように、噴霧乾燥し、微粉砕し、実験室用マッフル炉にて1,079℃(すなわち、1,975°F)で60分の均熱時間にわたり焼成した。次いで、得られた焼成カオリンを、比較試料1について説明したように、マイクロ粉砕機を用いて微粉砕した。
【0109】
比較試料1および試料1の物理特性および光学特性を測定した。以下の第7表は、比較試料1(市販の焼成カオリン)および試料1(本発明の焼成カオリン)の特性を示す。
【表7】
【0110】
第7表に示すように、試料1は、比較試料1よりもGE輝度が著しく高く、かつアインレーナー摩耗値が低い。さらに、試料1は、比較試料1と比較して、分布の粗末端(>5ミクロン)と細末端(<2ミクロン)との双方で、はるかに細かくかつ狭い粒度分布を有し、またより細かいメジアン粒径を有する。また、試料1の吸油量値が大幅に増加し、これは建築用塗料、工業用塗料および感熱紙用途(ワックス吸収等)などの特定の用途にとって望ましい特性である。本発明の焼成カオリン製品は、比較試料1の0.0095%(95ppm)よりも低い0.0016%(16ppm)の+325メッシュ残渣含有量を有していた。また、データは、試料1の表面積が、比較試料1の16.9m2/gから本発明の焼成カオリンの19.9m2/gまで増加していることも示す。これは、本発明の焼成カオリン製品のより細かい粒度分布の別の指標である。したがって、試料1を調製するために用いられる追加の処理工程は、有利には、比較試料1と比較して、改善された光学特性、改善された吸油量、改善された表面積、および低減した摩耗を有する焼成カオリンをもたらす。
【0111】
実施例2
この実施例では、本開示に従って調製した別の焼成カオリンを調製し、比較試料1(通常のANSILEX(登録商標)93)と比較した。本発明の焼成カオリンの実施形態である、試料2は、試料1を調製するために用いられる追加の遠心分離工程を行わずに調製した。試料2は、通常のANSILEX(登録商標)93供給物から得られるカオリンを、約25%の固形分に希釈し、続いて8lbs/トンのミョウバンおよび硫酸を用いてpH=3.5で凝集させることによって調製した。次に、得られた凝集クレイを、実験室用の真空濾過システムを用いて濾過して脱水し、可溶性塩類を除去した。得られた濾過ケーキは、約55%の固形分を含有していた。次に、濾過ケーキを、pH約10.0の水酸化アンモニウムで再分散させた。その後、分散した濾過スリップを、実施例2に記載されているように、噴霧乾燥し、微粉砕し、実験室用マッフル炉にて1,079℃(すなわち、1,975°F)で60分の均熱時間にわたり焼成した。そして、得られた焼成カオリンを、実験室用マイクロ粉砕機で粉砕し、試料2の物理特性および光学特性を測定した。データを第8表に示す。
【表8】
【0112】
第8表に示すように、試料2の輝度は、比較試料1と同様である。しかしながら、試料2(本発明の焼成カオリン)は、比較試料1と比較して、分布の粗末端(>5ミクロン)と細末端(<2ミクロン)との双方で、はるかに細かくかつ狭い粒度分布を有し、またより細かいメジアン粒径を有する。また、データは、本発明の焼成カオリンの表面積が、通常のANSILEX(登録商標)93の16.9m2/gから本発明の焼成カオリンの17.8m2/gまでわずかに増加していることも示す。本発明の焼成カオリン製品は、比較試料1の0.0095%(95ppm)よりも低い0.0072%(72ppm)の+325メッシュ残渣含有量を有していた。また、本発明のカオリンの吸油量値も、比較試料1よりも増加している。
【0113】
実施例1および2(第7表および第8表)に示した結果は、より微細なか焼炉供給流を得るための追加の遠心分離工程の重要性を実証し、この工程により、比較試料1と比較して、はるかに細かくかつ狭い粒度分布、ならびに他の改善された特性(例えば、より高いGE輝度、より低いアインレーナー摩耗量、より大きい表面積、より高い吸油量)を有する焼成カオリン製品が得られる。また、実施例1および2のデータは、アンモニア系の濾過分散剤の使用と併せて濾過を行うことのさらなる利点も明確に示しており、この結果、より細かくかつ狭い粒度分布を有する本発明の焼成製品も同様に得られる。したがって、本発明の試料1および試料2を調製するために使用される追加の処理工程によって、従来技術よりも細かくかつ狭い粒度分布を有する焼成カオリンが有利に得られる。
【0114】
実施例3
本発明の焼成カオリンの実施形態である、試料3は、この実施例では、BASFのカオリン製造作業から得られた超微細含水カオリン供給流から製造した。この供給流中のカオリンは、約50%の灰色の粗原料を含有し、残りは、他の種類の粗原料、例えば、白色、クリーム色、茶色、赤色、ピンク色の着色粗原料である。超微細含水カオリン供給流は、化学的に分散された含水カオリン粗供給原料から製造され、この含水カオリン粗供給原料は、BASFの製造作業において粗いサイズの分級工程、浮選工程、オゾン処理工程、および超微細サイズの分級工程に付される。ディスクノズル遠心分離機(アルファ・ラバル社(Alpha Laval))を使用して、粒子の少なくとも70質量%が0.3ミクロン未満である超微細サイズを得る。
【0115】
この実施例では、実施例1に記載されているように、アルファ・ラバル遠心分離機のプラントから得られた微粉画分(0.3ミクロン未満の粒径が73%)を、凝集し、濾過し、そしてpH約10.0のアンモニアを分散剤として用いて再分散させた。次に、再分散した濾過生成物を、噴霧乾燥させ、続いてマイクロ粉砕機で微粉砕した。その後、調製した供給材料を、実験室用マッフル炉にて1,079℃(1975°F)の温度で60分の均熱時間にわたり焼成した。そして、得られた焼成生成物を、マイクロ粉砕機を用いて微粉砕し、試料3の物理特性および光学特性を測定した。
【0116】
比較試料2は、(アンモニアを使用する代わりに)ナトリウム系分散剤を使用して濾過ケーキを再分散させた以外は、試料3と同じ方法で調製した。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム/ソーダ灰/ヘキサメタリン酸ナトリウム(SAP)のブレンドを使用し、濾過生成物をpH約7で再分散させた。噴霧乾燥、微粉砕および焼成などの他のプロセスパラメーターは同じままであった。比較試料2の粒度分布を測定した。
【0117】
【0118】
第9表に示すように、濾過工程でアンモニアを用いて分散された本発明の焼成カオリンは、比較試料1と比較して、分布の粗末端(>5ミクロン)と細末端(<2ミクロン)との双方で、細かくかつ狭い粒度分布を有し、またより細かいメジアン粒径を有する。対照的に、比較試料2(ナトリウム系分散剤を用いて分散された濾過生成物)は、はるかに粗い粒径の焼成生成物をもたらす。この実施例から、より細かくかつ狭い粒径の本発明の焼成製品を得るための濾過工程にて、二次分散剤としてアンモニアを使用することの利点が理解され得る。
【0119】
試料3(本発明の焼成カオリン)は、比較試料1よりもGE輝度が著しく高く、かつアインレーナー摩耗値が低い。本発明の焼成カオリン製品は、比較試料1の0.0095%(95ppm)よりも低い0.0051%(51ppm)の+325メッシュ残渣含有量を有していた。また、本発明の焼成カオリンの表面積は、比較試料1の16.9m2/gから本発明の焼成カオリンの20.8m2/gまで著しく増加している。また、本発明のカオリンの吸油量値も、比較試料1よりも有意に増加している。
【0120】
試料1~3(本発明の焼成カオリンの実施形態)および比較試料1(市販の焼成カオリン)の粒度分布を
図4にグラフで示す。試料1~3の粒度分布の曲線は、比較試料の曲線よりも急であり、このことは、試料1~3の粒度分布が、比較試料1よりも狭いことを示す。
【0121】
実施例4
比較試料1および試料1~3(本発明の焼成カオリン)の光散乱データを第10表に示す。光散乱は、0.25ミルのBird Barを使用して、顔料と水との混合物(固形分30(質量)%)から構成される顔料のフィルムを、光学的に滑らかな黒いガラス上に適用することによって測定した。空気乾燥後の顔料フィルムの反射率を、エルレフォ・リフレクトメーターのような一体化した球形状を有する反射率計を用いて457nmおよび577nmの波長で測定する。反射率の値を、クベルカ-ムンクの方程式を使って光散乱係数(m
2/g)に変換する。光散乱と同様に、光沢を、0.25ミルのBird Barを使用して、顔料と水との混合物(固形分30(質量)%)から構成される顔料のフィルムを、光学的に滑らかな黒いガラス上に適用することによって測定する。光沢を、Technidyne T480光沢計(テクニダイン社、ニューアルバニー、インディアナ州)を用いて75度(PL法50C)で測定する。
【表10】
【0122】
第10表のデータは、本開示の方法によって、波長457nmと波長577nmとの双方において光散乱特性が改良された焼成カオリンが生成されることを実証している。また、本発明の焼成カオリン製品は、比較試料1と比較して顕著に光沢が改善されている。試料1は、特に光沢の大きな改善を示し、比較試料1より30%超高い光沢を有する。改善された光散乱特性および光沢特性は、比較試料1と比較して、同様またはより良好な形態の本発明の焼成製品の指標である。
【0123】
実施例5
比較試料1および本発明の焼成カオリン試料1~3の化学組成は、パナリティカルX線蛍光分析法(XRF)を用いてバルク元素組成を測定することによって得た。XRF装置によるこの分析測定手順では、試料をXRFカルーセルに入れる前に、まず各試料をオーブンで乾燥させて表面の水分を確実に除去し、続いて試料をマッフル炉にて1000℃で60分間焼成し、強熱減量(LOI)値を測定する。この工程の後、試料をデシケーターで冷却し、結合剤としてセルロースを用いてプレス加工し、ペレットにする(セルロースは、カオリン試料で行ったXRF分析の際に不活性であることに留意されたい)。
【0124】
第11表は、3種の本発明の焼成製品および比較試料1についてのXRFデータを含む。XRFによって、酸化物:SiO
2、Al
2O
3、Na
2O、K
2O、TiO
2、Fe
2O
3、CaO、MgOおよびP
2O
5として表した9つの化学元素(Si、Al、Na、K、Ti、Fe、Ca、MgおよびP)のパーセンテージのリストが得られる。結果を、揮発分なしの基準で報告する。各製品のLOI値も表に示す。
【表11】
【0125】
第11表のデータからわかるように、試料1~3は、比較試料1に含まれるナトリウムの約4分の1のナトリウムしか含んでいない。したがって、試料1~3を調製するために用いられる処理工程によって、有利にはナトリウム含有量が大幅に減少する。
【0126】
理論に縛られることなく、化学的に分散されて水と混ぜ合わされた/デグリットされた含水カオリン粗供給原料を調製する際に使用されるナトリウム分散剤などのナトリウムは、焼成中にカオリン粒子の細孔を充填するので、最終焼成製品の表面積および細孔容積を減少させると考えられる。そのため、ナトリウム含有量の減少は、本開示の方法に従って調製されたカオリンの吸油量および表面積特性の改善に寄与すると考えられる。
【0127】
さらに、変色したチタニア不純物を含む、粗くて緻密な粒子を除去するために追加の遠心分離工程を適用したため、変色したチタニア(アナターゼ)不純物の量は、比較試料1の約1.7%から試料1の1.45%まで大きく減少した。試料3においてもTiO2の量が減少し、このことは、試料3を調製するために用いられる方法によって、カオリン供給流中のチタン汚染物質が減少することを示す。
【0128】
したがって、試料1および試料3を調製するために用いられる処理工程によって、有利にはチタニア含有量が好都合に低下し、したがってより良好な焼成反応およびより高い輝度の製品が得られる(第7表の試料1および第9表の試料3を参照されたい)。
【0129】
実施例3に記載のアンモニア(試料3)またはナトリウム系分散剤(比較試料2)を用いて分散させたカオリン試料についても化学組成を求めた。焼成前の濾過工程の間に使用された分散剤を除いて、試料3および比較試料2を同様に調製する。データを第12表に示す。
【表12】
【0130】
実施例3に記載のアンモニア(試料3)またはナトリウム系分散剤(比較試料2)を用いて分散させたカオリン試料についても化学組成を求めた。焼成前の濾過工程の間に使用された分散剤を除いて、試料3および比較試料2を同様に調製する。データを第12表に示す。
【0131】
第12表に示される通り、試料3および比較試料2のデータは、ナトリウム系分散剤を用いて製造した焼成カオリン製品と比較して、アンモニア系分散剤の使用によって最終焼成製品のナトリウム含有量が有意に減少することを示す。例えば、比較試料2では、か焼炉の供給物がナトリウム系分散剤によって分散されており、その比較試料2に存在するナトリウムの約20%しか試料3にはナトリウムが含まれていない。また、本発明のカオリン製品のP2O5値が約32%低下することも注目されている。この結果は、リン酸塩(おそらくナトリウム系分散剤においてヘキサメタリン酸ナトリウムを使用した結果)も濾過工程中にカオリン表面から除去(濾液で除去)されていることを示唆する。か焼炉の供給材料中に過剰量のナトリウムなどのアルカリが存在すると、焼成中にフラクシングが起こり、粒子が凝集し得る。したがって、実施例1、2および3に示すように、本開示の方法によって生じるナトリウムが減少することで、焼成中のフラクシングの発生率および/または程度も減少し、したがって、本開示の方法によって得られる最終焼成カオリン製品の狭い粒度分布および形態の改善に寄与すると考えられる。
【0132】
実施例6
市販の微細な焼成カオリン(比較試料4)または本開示の焼成カオリン(試料4)のいずれかを含む塗料を調製した。塗料の配合を第13表に示す。
【表13】
【0133】
2つの塗料配合物の特性は、粘度、コントラスト比、輝度、白色度、黄色度、ハンターL、aおよびb値、20度および60度での光沢、85度での光輝、および着色力によって特徴付けられた。
【0134】
粘度は、流れ抵抗の尺度である。粘度は、ストーマー粘度計を用いて測定し、クレブス単位(KU)で表す。
【0135】
コントラスト比は、ハンター分光光度計を用いて、黒色基板上および白色基板上の反射率を測定することによって求めた。コントラスト比は、黒色の反射率/白色の反射率の比である。白色度、黄色度、およびハンターL、a、b値を、ハンター分光光度計を用いて測定した。
【0136】
光沢および光輝を、3つの入射角(20、60および85)で光沢計を用いて測定した。
【0137】
着色力を、着色したカオリンを含む(黒色の着色剤が加えられた)白色のベースを用いて評価し、対応する灰色の反射率を測定した。比較試料4を、試料4と対比させて測定し、モノクロ階調の明度に、反射率に基づく数値を与えた。着色力が高いほど、色調は明るくなる。
【0138】
【0139】
これらのデータは、比較試料4と比較して、本開示の焼成カオリンを含有する試料4の改善された隠蔽力(より高いコントラスト比)、改善された白色度および輝度、ならびにはるかに高い着色力を示す。着色力が高いと、TiO2が有利に減少し、それによって全体の配合コストを削減することができる。
【0140】
本明細書に引用されたそれぞれの特許、特許出願、および刊行物の開示は、それによって、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
特定の実施形態を参照して、製品、組成物、それらの製造方法、およびそれらの使用方法が開示されているが、記載された製品および方法の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および変形が当業者によって考え出され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および同等の変形を含むものと解釈されることが意図されている。
【0142】
添付の特許請求の範囲の組成物および方法は、本明細書に記載された特定の組成物および方法によって範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲のいくつかの態様の説明として意図されており、機能的に等価である任意の組成物および方法は、特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本明細書に示され説明されたものに加えて、組成物および方法の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本明細書で開示された特定の代表的な材料および方法工程しか具体的に記載されていないが、これらの材料および方法工程の他の組み合わせも、特に記載されていなくても、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。したがって、工程、要素、成分、または構成要素の組み合わせが、本明細書で明示的に言及されることもあるが、明示されていなくても、これらの工程、要素、成分、および構成要素の他の組み合わせも含まれる。
【0143】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」およびその変形は、用語「含む(including)」およびその変形と同義で使用されており、かつオープンで、非限定的な用語である。用語「含む(comprising)」および「含む(including)」は、本明細書では様々な実施形態を説明するために使用されているが、用語「~本質的にからなる(consisting essentially of)」および「~からなる(consisting of)」は、「含む(comprising)」および「含む(including)」の代わりに使用されて、より具体的な実施形態を示すことができ、これらも開示されている。本開示および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈で特に明記されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書におけるパーセンテージ範囲やその他の範囲の開示には、範囲の終点やその範囲内で与えられる任意の整数の開示が含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
a)熱処理カオリンの0.25質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、またはb)熱処理カオリンの0.25質量%以下の総アルカリ金属酸化物含有量を有する、熱処理カオリン。
【請求項2】
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1記載の熱処理カオリン。
【請求項3】
90ppm以下の+325メッシュ残渣含有量を有する、請求項1または2記載の熱処理カオリン。
【請求項4】
熱処理カオリンの0.1質量%以下の酸化ナトリウム含有量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項5】
少なくとも92~96のGE輝度を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項6】
100lbsより高く140lbsまでの油/熱処理カオリン100lbsの吸油量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項7】
457ナノメートルで0.305m2/g~0.335m2/gの散乱係数を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項8】
577ナノメートルで0.223m2/g~0.230m2/gの散乱係数を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項9】
17.0m2/g~25.0m2/gの表面積を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項10】
9~18mg/105回転のアインレーナー摩耗量を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項11】
30%~45%の光沢を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の熱処理カオリン。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のカオリンを含む製造品であって、紙製品、板紙製品、紙コーティング組成物、セラミック組成物、塗料組成物、ポリマー組成物、ゴム組成物、工業用プラスチック組成物、およびインク組成物からなる群から選択される、前記製造品。
【請求項13】
紙製品である、請求項12記載の製造品。
【請求項14】
塗料組成物である、請求項12記載の製造品。
【請求項15】
少なくとも92のGE輝度および以下の粒度分布:
10ミクロン未満の等価球径(e.s.d.)を有する99質量%以上の粒子;
5ミクロン未満のe.s.d.を有する93質量%以上の粒子;
2ミクロン未満のe.s.d.を有する85質量%以上の粒子;
1ミクロン未満のe.s.d.を有する77質量%以上の粒子;および
0.5ミクロン未満のe.s.d.を有する25質量%以上の粒子
を有し、
300ppm以下の+325メッシュ残渣含有量および100lbs~140lbsの油/熱処理カオリン100lbsの吸油量を有する、熱処理カオリン。
【請求項16】
120lbs~140lbsの油/熱処理カオリン100lbsの吸油量を有する、請求項15記載の熱処理カオリン。
【外国語明細書】