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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120144
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】長尺部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096453
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2018177040の分割
【原出願日】2018-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
(57)【要約】
【課題】
平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には、長尺部材の剥がれ、めくれ、脱落等を防止し取り合い部の耐熱性を高めることができる長尺部材を提供する
【解決手段】
本発明の長尺部材は、接着剤層、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡層が積層された積層体であり、前記接着剤層が、合成樹脂及び架橋剤を含み、前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡層が積層された積層体であり、
前記接着剤層が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含むことを特徴とする長尺部材。
【請求項2】
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする請求項1に記載の長尺部材。
【請求項3】
基材に1または2以上の熱発泡性シートを被覆した後、
前記基材と前記熱発泡性シート端部の境界部、前記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または前記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる1種以上の取り合い部に貼着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の長尺部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートの被覆工法に使用する長尺部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物においては、建築物を火災から保護する目的で、柱、梁、床、壁等の主要構造物を耐熱構造にすることが求められている。
耐熱構造を施す方法の一つとして、主要構造物等の基材に熱発泡性シートを用いた工法が採用されている。熱発泡性シートは、平常時は薄くて軽量であり、火災等による温度上昇には、発泡・炭化して断熱層を形成し、耐熱保護性を発揮する効果を有するものである。
【0003】
熱発泡性シートは、構造物等の基材に対して、溶接ピン等の固定具や、粘着剤(接着剤)を介して固定される。この場合、固定方法、固定箇所等によっては、火災等による温度上昇に、熱発泡性シートの脱落や、ズレ等を生じる場合があった。特に、基材と熱発泡性シート端部、あるいは熱発泡性シート端部どうし等の取り合い部では、隙間が生じやすく、所望の耐熱性が得られにくい場合がある。そこで、熱発泡性シートのどうしが突き合わされて形成された目地部に耐火テープを貼着する等の方法(例えば、特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-68023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に耐火テープを目地部に貼着するのみでは、高温時に耐火テープの剥がれ、めくれ、脱落等のおそれがあり、所望の耐熱保護性能が維持しにくい場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意研究を行った結果、基材に1または2以上の熱発泡性シートを被覆した後、特定の長尺部材を使用することによって、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、十分な耐熱保護性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.接着剤層、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡層が積層された積層体であり、
前記接着剤層が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含むことを特徴とする長尺部材。
2.前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする1.に記載の長尺部材。
3.基材に1または2以上の熱発泡性シートを被覆した後、
前記基材と前記熱発泡性シート端部の境界部、前記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または前記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる1種以上の取り合い部に貼着することを特徴とする1.または2.に記載の長尺部材。
【発明の効果】
【0008】
基材に1枚または2枚以上の熱発泡性シートを被覆した後、前記基材と前記熱発泡性シート端部の境界部、前記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または前記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる1種以上の取り合い部に、本発明の長尺部材を使用することにより、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には、長尺部材の剥がれ、めくれ、脱落等を防止して取り合い部の耐熱性が高まり、その結果、熱発泡性シートの脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の長尺部材(積層体)の一例を示す斜視図である。
図2】基材に熱発泡性シートが被覆された態様の一例を示す斜視図である。
図3】取り合い部の一例を示す図である。
図4】基材に熱発泡性シートが被覆された態様の一例を示す斜視図である。
図5】取り合い部の一例を示す図である。
図6】被覆工法によって得られる被覆構造体の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0010】
1.長尺部材
11.接着剤層
12.熱発泡層
13.離型性シート
2.熱発泡性シート
21.接着剤(熱発泡性シート用)
22.固定部材(熱発泡性シート用)
3.基材
31.角型鉄骨(鉄骨角柱)
32.H型鉄骨(H型梁)
33.構造材(床材)
4.固定部材
A.取り合い部
A1.熱発泡性シートどうしの突合せ部
A2.熱発泡性シートどうしの重なり部
A3.基材と熱発泡性シート端部の境界部
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明の被覆工法は、基材に1または2以上の熱発泡性シートを被覆した後、前記基材と前記熱発泡性シート端部の境界部、前記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または前記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる取り合い部に長尺部材を貼着するものである。
【0012】
<基材>
基材としては、耐熱保護性を必要とするものであれば特に限定されないが、主として建築構造物の柱、梁、床、壁等を構成する材料が挙げられ、例えば、金属で形成されている角型鉄骨、丸型鉄骨、H型鉄骨、その他各種金属等の鋼材、あるいは、モルタル、コンクリート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、炭酸カルシウム発泡板、不燃火山性ガラス質複層板、繊維強化セメント板、軽量セメント板等の構造材が挙げられる。また、基材表面は、サビ止め剤やサビ止め塗料にて処理されたものでもよい。
【0013】
<熱発泡性シート>
本発明の熱発泡性シートは、温度上昇(好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上)によって発泡し、炭化層を形成するものである。熱発泡性シートの構成成分としてしては、例えば、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有するものが好適である。このうち、樹脂成分としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等、難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム等、発泡剤としては、例えば、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等、炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられる。
【0014】
各成分の配合比率は、好ましくは、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤50~1000重量部、発泡剤5~500重量部、炭化剤5~600重量部、及び充填剤10~300重量部である。
【0015】
本発明熱発泡性シートは、さらに、顔料、繊維等を含有することもできる。 顔料としては、一般の着色顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。さらに、耐熱保護性をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合しても良い。
【0016】
本発明で用いる熱発泡性シートは、公知の方法で製造することができる。例えば、前述の合成樹脂、難燃剤、発泡剤、炭化剤などを適量配合した組成物に、必要に応じて適当な溶媒を加えて型枠内に流し込み、乾燥後に脱型する方法;前記組成物を加温塗工機によって離型紙に塗付した後に巻き取る方法;ニーダーによって混練した前記組成物を押し出し成型機によってシート状に加工する方法;ニーダーによって混練した前記組成物を対ロールの間に供給してシート状に加工する方法;前記組成物をペレット状にした後に押し出し成型機によってシート状に加工する方法;バンバリーミキサー、ミキシングロール等で混練した前記組成物を複数の熱ロールからなるカレンダによって圧延してシート状に加工する方法等が挙げられる。
【0017】
また、熱発泡性シートには、補強シートを積層することもできる。補強シートとしては、例えば、織布又は不織布、メッシュ等が挙げられる。このような補強シートを積層することによって、接着性・密着性を高めるとともに、脱落防止性、ズレ落ち防止性をより防ぐことができる。
【0018】
本発明の熱発泡性シートの厚さは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm以上6mm以下である。また、その長さは、適宜設定すればよく、また熱発泡性シートの長尺体を作製し、渦巻き状に巻回した巻回体とすることもできる。巻回体は、必要な長さに応じてカットして使用できる。
【0019】
<長尺部材>
本発明の長尺部材は、接着剤層、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡層が積層された積層体であり、上記基材と上記熱発泡性シート端部の境界部、上記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または上記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる取り合い部に貼着して使用するものである。
【0020】
長尺部材の接着剤層は、合成樹脂及び架橋剤を含む接着剤により形成されるものであり、該合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含むことを特徴とする。このような接着剤を使用することによって、優れた接着性を有するとともに、温度上昇時には優れた耐熱性を発揮し、長尺部材の剥がれ、めくれ、脱落等を防止して取り合い部の耐熱性が高まり、その結果、熱発泡性シートの脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、基材の耐熱保護性を高めることができる。その作用機構は以下に限定されるものではないが、水酸基含有アクリル樹脂が形成する樹脂骨格中にフッ素樹脂が組み込まれることにより、樹脂骨格の分解温度が高温領域にシフトするため、優れた耐熱性を発揮し、本発明の効果が得られるものと考えられる。なお、本発明の接着剤には、粘着剤も包含される。
【0021】
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有モノマー、アルキル含有(メタ)アクリル系モノマーを必須成分とし、必要に応じて、その他のモノマーとを共重合することにより得られるものである。
【0022】
重合方法としては公知の方法を採用すればよく、例えば、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等が採用でき、重合時には、開始剤等を使用することもできる。
【0023】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー等の1級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
また、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
アルキル含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
その他のモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、
アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー、
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー、
γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ビニル系モノマー、
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニルモノマー、
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー、
塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー、
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα-オレフィン、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル、
エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル、
等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明で用いる接着剤において、上記水酸基含有アクリル樹脂と、併用する(混合して用いる)フッ素樹脂としては、特に限定されないが、例えば、
(i)含フッ素モノマーの単独又は共重合体、
(ii)含フッ素モノマーと、水酸基含有モノマー、その他の重合性モノマーとの共重合体、
等が挙げられる。また、フッ素樹脂の態様としては、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂等の溶剤系樹脂、あるいは粉末樹脂であってもよいが、本発明では、溶剤可溶型樹脂が好適である。
【0027】
上記(i)(ii)の含フッ素モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフルオロオレフィンモノマー、
パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等のフルオロアルキル基含有アクリル系モノマー、が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0028】
上記(i)の含フッ素モノマーの単独又は共重合体としては、具体的には、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの単独重合体;
テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が挙げられる。
【0029】
また、上記(i)は、アクリル樹脂で変性されたものも使用することができる。このようなアクリル樹脂複合フッ素樹脂としては、例えば、アクリル樹脂とフッ素含有樹脂との混合物及び/または反応物が使用でき、特に、粉末状のアクリル樹脂複合ポリテトラフルオロエチレンは、接着剤中での分散性に優れ、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
【0030】
上記(ii)の水酸基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0031】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル含有(メタ)アクリル系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
【0032】
本発明では、フッ素樹脂が上記(ii)含フッ素モノマーと、水酸基含有モノマーを必須成分とし、その他の重合性モノマーとを共重合することに得られる水酸基含有フッ素樹脂であることが好ましい。これにより、発明の効果をよりいっそう高めることができる。その作用機構は以下に限定されるものではないが、水酸基含有フッ素樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂が形成する樹脂骨格中に安定的に組み込まれやすいため、樹脂骨格の分解温度を安定して高温領域にシフトさせることができ、優れた耐熱性を発揮し、本発明の効果を高めることができると考えられる。
【0033】
上記水酸基含有アクリル樹脂と、上記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)は、好ましくは99.5~0.5~80:20(より好ましくは99:1~90:10、さらに好ましくは98:2~92:8)である。このような範囲の場合、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮することができる。上記範囲の上限値以下である場合には、優れた接着性を示し、上記範囲の下限値以上である場合には、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を十分に発揮することができる。
【0034】
本発明の接着剤に含まれる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基含有化合物等が挙げられる。
【0035】
上記イソシアネート基含有化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0036】
上記架橋剤の混合比率は、上記合成樹脂の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5~20重量部、(より好ましくは1~10重量部、さらに好ましくは2~5重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。上記範囲の上限値以下である場合には、優れた接着性を示し、上記範囲の下限値以上である場合には、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を十分に発揮することができる。
【0037】
本発明では、上記水酸基含有アクリル樹脂等と、上記架橋剤の反応を促進する硬化触媒を併用することができる。硬化触媒とは、例えば、イソシアネート基が反応して硬化するのを促進させる作用を有する物質である。硬化触媒としては、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒、及び無機系触媒等各種が挙げられる。
【0038】
本発明の接着剤は、上記合成樹脂及び架橋剤を含むものであれば特に限定されないが、この他に公知の添加剤が含まれていれもよい。添加剤としては、特に限定されないが、充填剤、着色剤、希釈剤、粘接着付与剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0039】
このうち酸化防止剤としては、例えば、リン系、硫黄系又はヒンダード型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような酸化防止剤を含むことにより、平常時だけでなく、火災等による温度上昇に際しても合成樹脂の劣化を抑制することができ、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0040】
熱安定剤としては、例えば、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属石鹸系熱安定剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような熱安定剤を含むことにより、接着剤の架橋性が向上し、それにより熱発泡性シートとの接着性が高まり、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0041】
長尺部材の熱発泡層としては、温度上昇(好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上)によって発泡し、炭化層を形成するものであれば特に限定されないが、本発明では、上記熱発泡性シートと同様の構成成分を含むシート状のものが好ましい。熱発泡層の厚さは、好ましくは0.2mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm以上6mm以下である。
【0042】
本発明の長尺部材[図1]は、上記接着剤層と熱発泡層の積層体であり、熱発泡層の一面に上記接着剤による接着剤層を積層した帯状の長尺体である。また、接着剤層の表面を離型性シートで覆うこともできる。このような積層体とすることにより、容易に貼着することができ、作業効率が向上する。
【0043】
上記離型性シートは、本発明の長尺部材の保管もしくは運搬中などにおいて、接着材層を保護し、長尺部材を使用する際には接着剤層から容易に剥離できるものである。このような離型性シートとしては、特に限定されず公知のものを使用することができる。例えば、シリコン、ワックス、弗素樹脂などの離型剤を塗布もしくは含浸した紙あるいはフィルム、又は該離型剤を含まずそれ自体離型性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0044】
長尺部材の幅(図1:W)は、適宜設定すればよいが、好ましくは10mm~200mm(より好ましくは15mm~150mm)である。また、長さ(図1:L)は、被覆工法に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10m以上(より好ましくは20m~30m)であり、積層体を巻回体として、必要な長さに応じてカットして使用することもできる。
【0045】
長尺部材(積層体)の製造方法としては、特に限定されないが、熱発泡層の一面に接着剤を塗付け、その上に離型性シートを積層する方法、あるいは、離型性シートの上に接着剤を塗付け、その上に熱発泡層を積層する方法等が挙げられる。上記方法において、接着剤を塗付け、その上に各熱発泡層を積層する場合は、そのまま(未乾燥のまま)積層しても、乾燥させた後に積層してもよい。この場合の接着剤の使用量としては、特に限定されないが、塗付け量(固形分量)が25g/m以上300g/m以下程度であればよい。また、本発明の長尺部材(積層体)は、長尺部材を渦巻き状に巻回した巻回体とすることもできる。巻回体とする場合、その外側になる層が、熱発泡性シート、離型性シートのどちらであってもよいが、離型性シートが外側になるように巻回することが好ましい。このような巻回体は、必要な長さに応じてカットして使用でき、施工時に巻回体から積層体を繰り出し、離型性シートを剥離して接着材層露出させ、該接着材層を基材側に向けて貼着して使用することができる。この際、必要に応じて圧着等を行うこともできる。
【0046】
<被覆工法>
本発明の熱発泡性シートを用いた被覆工法は、
例えば、
(1)基材に、1または2以上の熱発泡性シートを被覆する工程、
(2)基材と前記熱発泡性シート端部の境界部、前記熱発泡性シートどうしの突き合わせ部、または前記熱発泡性シートどうしの重なり部から選ばれる1種以上の取り合い部に長尺部材を貼着する工程、
を含むものである。
【0047】
上記(1)の工程において、基材に熱発泡性シートを被覆する方法としては、例えば、公知の接着剤(粘着剤)、あるいは固定部材(溶接ピン、タッカー、ステープラ等)を使用することができる。また、基材に熱発泡性シートが被覆された態様としては、例えば、基材に、必要に応じて接着剤(粘着剤)を介して直接(密着して)被覆された態様(図2)、空気層を介して被覆された態様(図4)等が挙げられる。
【0048】
具体的に、図2は、角型鉄骨31に熱発泡性シート2が接着剤21を介して、直接(密着して)被覆された態様を示す。また、図3は、図2の断面図であり、取り合い部Aの態様を示し、図3(I)のように、熱発泡性シート2の端部は突き合わせ部A1を有するように被覆されたものである。また、図3(II)のように、熱発泡性シート2の端部が重なり部(A2)を有するように被覆されたものでもよい。
図4は、H型鉄骨32に熱発泡性シート2が空気層を介して被覆され、熱発泡性シートの端部がH型鉄骨32に固定部材22で固定された態様を示す。また、図5は、図4の取り合い部Aの態様を示し、図5(I)のように、長手方向において熱発泡性シート2の端部が突き合わせ部A1を有するように被覆されたものである。また、図5(II)のように、熱発泡性シート2の端部が重なり部A2を有するように被覆されたものでもよい。さらに、図4の態様では、取り合い部Aとして、基材33と熱発泡性シート2の境界部A3等も挙げられる。
【0049】
上記(2)の工程は、上記(1)で被覆された被覆構造体の取り合い部A(A1~A3)の1種(箇所)以上に長尺部材1を貼着する。具体的に、基材3と熱発泡性シート2端部の境界部(図4;A3)、熱発泡性シート2どうしの突き合わせ部(図3;A1、図5;A1)、または熱発泡性シート2どうしの重なり部(図3;A2,図5;A2)から選ばれる取り合い部に長尺部材1を貼着する。この場合、取り合い部Aを跨ぐように長尺部材1を貼着することが好ましい。取り合い部Aが複数ある場合には、所望の耐熱保護性に応じて、少なくとも1つの取り合い部に長尺部材を貼着すればよく、全ての取り合い部に長尺部材を設けてもよい。また、長尺部材1は、取り合い部Aの少なくとも一部に貼着すればよいが、取り合い部Aの全体に貼着することが好ましい。なお、長尺部材1として、離型性シート13、接着剤12、熱発泡性層11が積層された積層体を用いる場合は、離型性シート13を剥離し、取り合い部に貼着すればよく、必要に応じて圧着等を行うこともできる。
【0050】
上記(1)(2)を含む被覆工法により得られた被覆構造体の例を図6に示す。本発明で得られた被覆構造体は、優れた耐熱保護性能を発揮することができるものである。
【実施例0051】
以下、実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0052】
<熱発泡性シートの製造>
エチレン‐酢酸ビニル樹脂100重量部、メラミン75重量部、ジペンタエリスリトール75重量部、ポリリン酸アンモニウム370重量部及び酸化チタン105重量部を含む原料混合物を、ニーダーを用いて充分に混練後、押出し成形機によってシート状に加工し、膜厚1mmの熱発泡性シートを作製した。
【0053】
<長尺部材の製造>
(接着剤の製造)
表1に示す配合に従って、各原料を常法により混合し、接着剤1~7として用いた。
なお、原料としては以下のものを使用した。
・水酸基含有アクリル樹脂(固形分54重量%、酢酸エチル、芳香族炭化水素溶媒含有)
・フッ素樹脂:水酸基含有フッ素樹脂(クロロトリフルオロエチレンービニルエーテルーヒドロキシアルキルビニルエーテル、水酸基価52mgKOH/g、固形分60重量%、芳香族炭化水素溶媒含有)
・架橋剤:イソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート系化合物、固形分45重量%、酢酸エチル溶媒)
・溶剤:酢酸エチル
・添加剤:可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、触媒
【0054】
【表1】
【0055】
(長尺部材1の製造)
上記熱発泡性シートの一方の面に接着剤1を100g/m塗付け、23℃で3時間乾燥させた。その後、幅30mm、長さ10mの大きさにカットしたものを長尺部材1とした。
(長尺部材2~7の製造)
接着剤2~7をそれぞれ使用した以外は、長尺部材1と同様の方法で長尺部材2~6を製造した。
【0056】
(実施例1)
図4に示すように構造材33(床板:ALC板)にH型鉄骨32(H400×200×8×13mm、長さ1200mm)を設置し、作製した熱発泡性シート2一方の端部を固定部材22で固定し、さらに、H型鉄骨32の周囲を熱発泡性シート2が覆う様に巻きつけ、熱発泡性シート2のもう一方の端部も同様にして固定部材22で固定し、H型鉄骨32の周囲に空気層を介して熱発泡性シート2を被覆した。なお、熱発泡性シート2は、図5(I)に示すように複数枚を突き合わせで被覆した。次いで、熱発泡性シート2の取り合い部A1、A3に、長尺部材1を貼着したものを試験体とした[図6(II)]。
【0057】
作製した試験体を24時間養生した後、熱発泡性シート2の取り合い部に貼着した長尺部材1の接着性(評価1)を評価した。評価基準は以下の通りである。また、結果は表2に示す。
A:剥がれ、脱落なし
B:めくれがやや生じるが、脱落なし
C:一部剥がれを生じた状態
D:脱落
【0058】
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行い、長尺部材の状態(評価2)、及び耐熱保護性(評価3)を評価した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表2に示す。
(評価2)長尺部材の状態
A:剥がれ、脱落もなく、良好な炭化断熱層を形成
B:めくれがやや生じるが、脱落はなく、良好な炭化断熱層を形成
C:一部剥がれ、脱落を生じ、不均一な炭化断熱層を形成
D:脱落
(評価3)耐熱保護性
(熱発泡性シートの発泡倍率)
A:発泡倍率30倍超
B:発泡倍率20倍超30倍以下
C:発泡倍率10倍超30倍以下
D:発泡倍率10倍以下
(鉄骨(鋼材)温度)
A:470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃以上
【0059】
(実施例2)
実施例1において、熱発泡性シートを重なり部を有するように被覆(熱発泡性シート同士の重なり幅20mm)、した以外は、試験例1と同様にして試験体を作成し、同様の評価を行った。その結果、長尺部材は、剥がれ、脱落等もなく、良好な炭化断熱層を形成し、さらに熱発泡性シートの炭化断熱層も脱落することなく、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱性能を示した。
【0060】
(実施例3~6、比較例1)
表2に示す長尺部材を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、試験体を作製し、同様の評価を行った。評価は表2に示す。
【0061】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6