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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120194
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】X線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61B6/03 350Y
A61B6/03 350S
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098897
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2021501428の分割
【原出願日】2019-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】516088329
【氏名又は名称】株式会社ANSeeN
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹
(72)【発明者】
【氏名】都木 克之
(72)【発明者】
【氏名】小池 昭史
(57)【要約】
【課題】X線センサの性能を十分に引き出す。
【解決手段】X線源2と、X線の強度情報を取得するX線センサ3と、撮像対象100の表面までの距離情報を得る距離センサ4と、強度情報及び距離情報を利用して、撮像情報を得る情報処理装置5と、を備える。情報処理装置5は、少なくとも距離情報を利用して、強度情報から撮像情報の生成に用いる情報を抽出する抽出部12と、強度情報を用いて撮像情報を生成する再構成部13と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象を透過したX線の強度を利用して前記撮像対象の内部構造を示す撮像情報を得るX線撮像装置であって、
前記撮像対象に向けて前記X線を出射するX線源と、
前記撮像対象を挟むように前記X線源と対向して配置され、前記撮像対象を透過した前記X線の強度情報を得るX線強度計測部と、
前記X線強度計測部に対して相対的に固定された位置に配置され、前記撮像対象の表面において反射する計測光を前記撮像対象に向けて照射し、前記撮像対象の表面において反射した前記計測光を用いて、前記撮像対象の表面までの距離情報を得る距離計測部と、
前記強度情報及び前記距離情報を利用して、前記撮像情報を得る情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
少なくとも前記距離情報を利用して、前記撮像情報の生成に用いる情報を複数の前記強度情報から抽出する抽出部と、
前記抽出部において抽出された前記強度情報を用いて前記撮像情報を生成する画像生成部と、を有する、X線撮像装置。
【請求項2】
前記抽出部は、
第1タイミングで取得した第1距離情報と第2タイミングで取得した第2距離情報との距離差分を取得する距離差分取得部と、
前記距離差分が許容範囲内であるか否かを評価し、前記距離差分が許容範囲内であるときに第1許可情報を出力する距離評価部と、
前記距離評価部の出力が前記第1許可情報であるときに、前記撮像情報の生成に用いることを示す情報を前記第2タイミングで取得した前記強度情報に付与するラベリング部と、を含む、請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記距離評価部は、前記距離差分が許容範囲内ではないとき第1禁止情報を出力し、
前記抽出部は、
前記第1タイミングで取得した第1強度情報と前記第2タイミングで取得した第2強度情報との強度差分を取得する強度差分取得部と、
前記強度差分が許容範囲内であるか否かを評価し、前記強度差分が許容範囲内であるときに第2許可情報を出力すると共に、前記強度差分が許容範囲内ではないときに第2禁止情報を出力する強度評価部と、
前記距離評価部の出力が前記第1禁止情報であり且つ前記強度評価部の出力が前記第2許可情報であるときには前記撮像対象が第1態様の変化を生じたと評価し、前記距離評価部の出力が記第1禁止情報であり且つ前記強度評価部の出力が前記第2禁止情報であるときには前記撮像対象が第2態様の変化を生じたと評価する、態様評価部と、をさらに含む、請求項2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記X線強度計測部は、前記X線源から出射され、前記撮像対象を透過した前記X線の強度分布を前記第1強度情報及び前記第2強度情報として取得し、
前記態様評価部は、前記第1強度情報が示す強度分布と前記第2強度情報が示す強度分布との比較結果に応じて、前記第1態様が前記撮像対象の変形であるか前記撮像対象の移動であるかを判別する、請求項3に記載のX線撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器は、医療分野及び工業分野などにおいて、非破壊で内部情報を画像化する手段として広く利用されている。特許文献1~4は、放射線を利用した装置を開示する。放射線検出器を利用した装置として、例えば、コンピュータ断層撮影装置(CT:Computed Tomography)がある。特許文献1~3は、コンピュータ断層撮影装置に関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-148110号公報
【特許文献2】特開2012-5695号公報
【特許文献3】特開2011-101741号公報
【特許文献4】特開2015-79011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンピュータ断層撮影装置は、撮像中において、X線センサと撮像対象との相対的な位置関係が不変であることを理想的な状態としている。つまり、X線センサと撮像対象との相対的な位置関係が不変であるとき、理論上最も高い解像度の画像を得ることができる。つまり、X線センサの性能を十分に発揮することができる。しかし、撮像中においてX線センサと撮像対象との相対的な位置関係は、いくつかの要因で変化する。従って、X線センサが有する性能を最大限に発揮できない。
【0005】
そこで、本開示は、X線センサの性能を十分に引き出すことが可能なX線撮像装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態は、撮像対象を透過したX線の強度を利用して撮像対象の内部構造を示す撮像情報を得るX線撮像装置であって、撮像対象に向けてX線を出射するX線源と、撮像対象を挟むようにX線源と対向して配置され、撮像対象を透過したX線の強度情報を得るX線強度計測部と、撮像対象の表面において反射する計測光を撮像対象に向けて照射し、撮像対象の表面において反射した計測光を用いて、撮像対象の表面までの距離情報を得る距離計測部と、強度情報及び距離情報を利用して、撮像情報を得る情報処理部と、を備え、情報処理部は、少なくとも距離情報を利用して、撮像情報の生成に用いる情報を複数の強度情報から抽出する抽出部と、抽出部において抽出された強度情報を用いて撮像情報を生成する画像生成部と、を有する。
【0007】
X線撮像装置の情報処理部は、少なくとも距離情報を利用して、強度情報から撮像情報の生成に用いる情報を抽出する。距離情報は、X線強度計測部と撮像対象との相対的な位置関係を示す。従って、情報処理部は、距離情報に基づいて撮像情報の生成に適したものを抽出することが可能である。その結果、撮像情報の質の低下が抑制されるので、X線強度計測部の性能を十分に引き出すことができる。
【0008】
上記のX線撮像装置の抽出部は、第1タイミングで取得した第1距離情報と第2タイミングで取得した第2距離情報との距離差分を取得する距離差分取得部と、距離差分が許容範囲内であるか否かを評価し、距離差分が許容範囲内であるときに第1許可情報を出力する距離評価部と、距離評価部の出力が第1許可情報であるときに、撮像情報の生成に用いることを示す情報を第2タイミングで取得した強度情報に付与するラベリング部と、を含んでもよい。この構成によれば、撮像情報の生成に適した強度情報を好適に抽出することができる。
【0009】
上記のX線撮像装置の距離評価部は、距離差分が許容範囲内ではないとき第1禁止情報を出力し、抽出部は、第1タイミングで取得した第1強度情報と第2タイミングで取得した第2強度情報との強度差分を取得する強度差分取得部と、強度差分が許容範囲内であるか否かを評価し、強度差分が許容範囲内であるときに第2許可情報を出力すると共に、強度差分が許容範囲内ではないときに第2禁止情報を出力する強度評価部と、距離評価部の出力が第1禁止情報であり且つ強度評価部の出力が第2許可情報であるときには撮像対象が第1態様の変化を生じたと評価し、距離評価部の出力が記第1禁止情報であり且つ強度評価部の出力が第2禁止情報であるときには撮像対象が第2態様の変化を生じたと評価する、態様評価部と、をさらに含んでもよい。この構成によれば、X線強度計測部と撮像対象との相対的な位置関係において、位置関係の変化の態様を判別することができる。
【0010】
上記のX線撮像装置のX線強度計測部は、X線源から出射され、撮像対象を透過したX線の強度分布を第1強度情報及び第2強度情報として取得し、態様評価部は、第1強度情報が示す強度分布と第2強度情報が示す強度分布との比較結果に応じて、第1態様が撮像対象の変形であるか撮像対象の移動であるかを判別してもよい。この構成によれば、X線強度計測部と撮像対象との相対的な位置関係において、位置関係の変化の態様をさらに詳細に判別することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示のX線撮像装置によれば、X線センサの性能を十分に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態のX線撮像装置の主要な構成を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態のX線撮像装置の機能ブロック図である。
図3図3は、情報処理装置が行う処理を示すフロー図である。
図4図4は、情報処理装置が行う一部の処理を詳細に示すフロー図である。
図5図5は、撮像対象が移動した場合の処理を説明するための図である。
図6図6は、撮像対象が変形した場合の処理を説明するための図である。
図7図7は、撮像対象が別の態様で変形した場合の処理を説明するための図である。
図8図8は、第2実施形態のX線撮像装置の機能ブロック図である。
図9図9は、撮像対象の態様を判別する方法を説明するための図である。
図10図10は、撮像対象の態様を判別する方法を説明するための図である。
図11図11は、第2実施形態のX線撮像装置の情報処理装置が行う一部の処理を詳細に示すフロー図である。
図12図12は、第2実施形態のX線撮像装置の情報処理装置が行う一部の処理をさらに詳細に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本開示のX線撮像装置を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1に示すように、X線撮像装置1は、撮像対象100の内部構造を示す撮像情報としての再構成画像を得る。さらに、X線撮像装置1は、複数の再構成画像を用いて撮像対象100の立体的な内部構造を示すボクセルデータを得る。X線撮像装置1は、撮像対象100を透過するX線を利用する。X線撮像装置1は、主要な構成要素として、X線源2と、X線センサ3(X線強度計測部)と、距離センサ4(距離計測部)と、情報処理装置5(情報処理部)と、を有する。
【0015】
X線源2は、撮像対象100に向けてX線を出射する。X線センサ3は、撮像対象100を挟むようにX線源2と対向して配置されている。X線センサ3は、撮像対象100を透過したX線の強度情報を取得する。X線センサ3は、X線検出部と読み出し回路とが積層された構成を有する。X線センサ3は、薄型であるので、理想的な位置に実装することができる。X線源2及びX線センサ3は、軸線A1の周りに公転する。この公転によれば、軸線A1に直交する撮像面Bに関する撮像情報を得ることができる。また、X線源2及びX線センサ3は、軸線A1に対して並行移動する。この平行移動によれば、複数の撮像面Bに関する撮像情報を得ることができる。これら複数の撮像面Bに関する撮像情報を用いることにより、撮像対象100の立体的な内部構造を示すボクセルデータを得ることができる。
【0016】
距離センサ4は、X線センサ3の近傍に配置されている。距離センサ4は、リアルタイム計測が可能な2次元距離センサである。距離センサ4として、例えば、ToFカメラ(ToF:Time of Flight)を用いてよい。距離センサ4は、X線センサ3に対する相対的な位置が固定されている。つまり、距離センサ4は、X線センサ3と共に軸線A1の周りを公転する。距離センサ4は、撮像対象100の表面までの距離情報を得る。距離センサ4は、撮像対象100の表面において反射する計測光10を撮像対象に向けて照射する。そして、距離センサ4は、撮像対象100の表面において反射した計測光10を用いて距離情報を得る。
【0017】
距離センサ4は、距離センサ4から撮像対象100までの距離情報を得る。この距離情報は、X線センサ3から撮像対象100までの距離情報として用いられる。例えば、X線源2及びX線センサ3の公転軌道OBを設定する。そして、X線源2とX線センサ3と結ぶ軸線A2を設定する。軸線A2は、撮像対象100と重複すると共に軸線A1に直交する。距離センサ4は、この軸線A1の方向から見て、軸線A2と重複する位置に配置されてもよい。また、距離センサ4は、軸線A1の方向から見て、公転軌道OBと重複する位置に配置されてもよい。このような配置によれば、距離センサ4から撮像対象100までの距離情報は、X線センサ3から撮像対象100までの距離情報と等価であるとして扱ってよい。
【0018】
なお、距離センサ4の配置は、例示であり、上記の配置に限定されない。X線センサ3から撮像対象100までの距離情報を得ることが可能な配置であれば、距離センサ4の配置は、特に制限されない。例えば、距離センサ4は、積層構造を有するX線センサ3のX線検出面上に配置されてもよい。この構成によれば、強度情報及び距離情報を得ることができるセンサを小型化することができる。
【0019】
情報処理装置5は、強度情報及び距離情報を利用して、ボクセルデータを得る。情報処理装置5は、有線又は無線によりX線源2、X線センサ3及び距離センサ4に接続されている。例えば、情報処理装置5は、X線センサ3からX線センサ3が受けたX線に関する強度情報を取得する。また、情報処理装置5は、距離センサ4から距離情報を取得する。
【0020】
図2に示すように、情報処理装置5は、物理的には、記憶装置6と、プロセッサ7と、を有する。
【0021】
記憶装置6は、例えば、RAM(Random Access Memory)、半導体メモリ、及びハードディスク装置といったデータの読み書きが可能な記録媒体によって構成される。記憶装置6は、再構成プログラム8と、強度情報記憶部9と、距離情報記憶部11と、を含む。
【0022】
強度情報記憶部9は、X線センサ3から出力された強度情報を格納している。距離情報記憶部11は、距離センサ4から出力された距離情報を取得している。強度情報及び距離情報には、これらの情報を取得したタイミングを示す情報が付されている。このタイミング情報は、時間であってもよいし、軸線A1を基準とした角度であってもよい。タイミング情報を利用することにより、強度情報と距離情報とを互いに関連付けることができる。つまり、ある強度情報を取得したときの、撮像対象100までの距離を得ることができる。
【0023】
なお、情報処理装置5は、X線センサ3及び距離センサ4が逐次出力する情報をリアルタイムに処理してもよい。この場合、情報処理装置5は、強度情報記憶部9及び距離情報記憶部11を省略してもよい。
【0024】
プロセッサ7の例としては、CPU(Central Processing Unit)、マイクロコントローラ、及びDSP(Digital Signal Processor)が挙げられる。プロセッサ7は、シングルプロセッサでもよく、マルチプロセッサでもよい。プロセッサ7は、機能的には、抽出部12と、再構成部13(画像生成部)と、を有する。プロセッサ7が記憶装置6に記憶されている再構成プログラム8を読み出して実行することにより、抽出部12と、再構成部13と、の各機能が実現される。
【0025】
情報処理装置5は、複数の強度情報を利用して、ボクセルデータを生成する。互いに異なる位置で取得された強度情報において、強度の違いは、撮像対象100の内部構造を示す。しかし、強度情報の取得期間中に撮像対象100が移動又は変形した場合にも、強度の違いが生じる。内部構造に起因しない強度変化を含む強度情報は、ボクセルデータの生成において、ノイズとなる。そこで、抽出部12は、ボクセルデータの生成に適する強度情報を再構成処理の対象として抽出する。
【0026】
抽出部12は、強度情報記憶部9に格納されている強度情報から、再構成に適した強度情報(以下「合成対象情報」ともいう)を抽出する。抽出部12は、X線センサ3から直接に強度情報を受け取ってもよい。抽出部12は、撮像対象100の状態に基づいて、合成対象情報を抽出する。具体的には、抽出部12は、撮像対象100の移動及び/又は変形の状態を評価し、移動及び/又は変形の状態が許容範囲である場合に、合成対象情報とする。
【0027】
また、抽出部12は、合成対象情報として抽出されなかったものを、非合成対象情報として記憶装置6に出力してもよい。
【0028】
以下、抽出部12についてさらに具体的に説明する。抽出部12は、距離差分取得部12aと、距離評価部12bと、ラベリング部12cと、を有する。これらの機能は、プロセッサ7が再構成プログラム8を読み出して実行することにより、実現される。
【0029】
距離差分取得部12aは、距離情報記憶部11に格納されている2個の距離情報を読み出す。2個の距離情報とは、第1タイミングで取得した第1距離情報と、第2タイミングで取得した第2距離情報と、である。第2タイミングとは、第1タイミングから所定時間経過後のタイミングである。なお、これらのタイミングは、時間として扱ってもよいし、軸線A1のまわりの角度として扱ってもよい。距離差分取得部12aは、第1距離情報と第2距離情報との差である距離差分を得る。そして距離差分取得部12aは、距離差分を距離評価部12bに出力する。
【0030】
距離評価部12bは、距離差分が許容範囲内であるか否かを評価する。距離評価部12bは、距離差分が許容範囲内であるとき第1許可情報をラベリング部12cに出力する。一方、距離評価部12bは、距離差分が許容範囲外であるとき第1禁止情報をラベリング部12cに出力する。
【0031】
ラベリング部12cは、強度情報に対して、許可情報又は禁止情報のいずれかを関連付ける。この許可情報とは、再構成に用いることを示す情報である。この禁止情報とは、再構成に用いないことを示す情報である。具体的には、ラベリング部12cは、距離評価部12bから第1許可情報又は第1禁止情報を受ける。さらに、ラベリング部12cは、第2距離情報に対応する強度情報を強度情報記憶部9から読み出す。そして、ラベリング部12cは、読み出した強度情報に許可情報又は禁止情報を関連付けし、強度情報記憶部9に格納する。
【0032】
再構成部13は、強度情報記憶部9に格納されている強度情報のうち、許可情報が付されている強度情報を読み出す。そして、再構成部13は、読み出した強度情報に基づいて再構成処理と、ボクセルデータの生成と、を行う。再構成処理及びボクセルデータの生成には、任意の手法を利用してよい。
【0033】
次に、図3を参照しながら、情報処理装置5の動作について説明する。図3は、図1及び図2のX線撮像装置1が行う一連の処理を示すフロー図である。図3に示す処理は、撮像対象100ごとに行われる。
【0034】
まず、X線源2とX線センサ3との位置関係を取得する(工程S2)。具体的には、X線源2に対するX線センサ3の相対的な距離と、傾きと、を得る。
【0035】
次に、撮像対象100を配置する(工程S3)。
【0036】
次に、撮像条件を設定する(工程S4)。撮像条件とは、例えば、X線源2及びX線センサ3等の回転速度、撮像ステップ数などが挙げられる。
【0037】
次に、撮像動作を行う(工程S5~工程S9)。撮像動作とは、強度情報及び距離情報を取得する動作をいう。まず、撮像が終了したか否かを評価する(工程S5)。撮像が終了していないとき(工程S5:NO)、情報処理装置5は、同期信号をX線源2、X線センサ及び距離センサ4に出力する(工程S6)。次に、情報処理装置5は、X線センサ3から強度情報を取得する(工程S7)。次に、情報処理装置5は、距離センサ4から距離情報を取得する(工程S8)。次に、X線源2、X線センサ3及び距離センサ4を所定角度だけ回転させる(工程S9)。そして、再び撮像が終了したか否かを評価する(工程S5)。なお、撮像動作では、X線源2及びX線センサ3を固定し、撮像対象100を回転させてもよい。
【0038】
撮像が終了したとき(工程S5:YES)、情報処理装置5は、情報処理動作を行う(工程S10~工程S14)。まず、情報処理装置5は、全ての情報について処理が終了したか否かを評価する(工程S10)。処理が終了していないとき(工程S10:NO)、情報処理装置5は、強度情報及び距離情報を利用して、撮像対象においてX線が透過した距離を算出する(工程S11)。次に、情報処理装置5は、距離情報を利用して強度情報を処理する(工程S12)。ここでいう強度情報の処理とは、ラベリング部12cにおける許可情報又は禁止情報の関連付けである。つまり、画像の再構成に用いる強度情報と、画像の再構成に用いない強度情報と、を弁別する。
【0039】
以下、図4図5図6及び図7を参照しながら、工程S12についてさらに詳細に説明する。図4は、図3に示す工程S12をさらに詳細に示すフロー図である。
【0040】
図5は、X線撮像装置1を軸線A1の方向から見た平面図である。今、X線源2から軸線A2に沿ってX線Rが照射されたとする。X線Rは、撮像対象100Aを透過する。透過後のX線Rは、撮像対象100Aの内部構造に応じて強度が減衰する。この内部構造とは、例えば、撮像対象100Aを構成する材料及びX線の透過距離(L1)を含む。そして、透過後のX線Rは、X線センサ3に入射する。X線センサ3は、入射したX線Rの強度を得る。ここで、撮像対象100Aを透過する際に生じるX線Rの強度の減衰は、例えば、撮像対象100Aを構成する材料及びX線の透過距離(L1)に応じると仮定する。この仮定に基づけば、X線Rの減衰は、軸線A2上の位置によらず、一定である。つまり、強度情報Nに示すように、距離(L2)にある撮像対象100Bを透過したX線Rの強度(PB)は、距離(L3)にある撮像対象100Aを透過したX線Rの強度(PA)に等しい。この「距離」とは、軸線A2におけるX線センサ3の受光面から撮像対象100A、100Bの表面までの長さをいう。つまり、撮像対象100Aが軸線A2に沿ってX線センサ3側に距離(LA)だけ移動したとしても、X線センサ3の出力(強度情報)には変化が現れない。強度情報の再構成をおこなうとき、撮像対象100Aの強度情報と、撮像対象100Bの強度情報とを用いると、再構成により得られる画像の解像度が低下してしまう。
【0041】
図6を用いて別の例をさらに説明する。上記の例では、軸線A2における撮像対象100A、100Bの位置が変化する場合を述べた。例えば、図6に示すように、撮像対象100Aが膨張して撮像対象100Cに変形した場合にも同様の現象が生じる。撮像対象100A、100Cの内部構成は、膨張の前後で均質であるとする。まず、膨張前の撮像対象100Aに照射されたX線Rは、所定の密度を有する領域を、透過距離(L1)だけ進む。次に、膨張後の撮像対象100Cに照射されたX線Rは、所定の密度を有する領域を、透過距離(L4)だけ進む。撮像対象100Cが均質に膨張したとし、さらに、膨張前後で質量の変化は生じないと仮定すると、膨張後の密度は、膨張前の密度より小さい。一方、膨張後の透過距離(L4)は、膨張に伴って、膨張前の透過距離(L1)よりも大きい。その結果、強度情報Nに示すように、膨張後の撮像対象100Cを透過したX線Rの強度(PC)は、膨張前の撮像対象100Aを透過したX線Rの強度(PA)と等しい。つまり、撮像対象100Aが変形したとしても、強度情報には変化が現れない。
【0042】
そこで、撮像対象100の位置の変化を検出するために、距離情報を利用する。図4に示すように、まず、距離差分取得部12aは、第1距離(L1)と第2距離(L2)との差分演算(L2-L1)を行い、差分距離(ΔL)を得る(工程S12a)。次に、距離評価部12bは、差分距離(ΔL)が許容範囲内であるか否かを判断する(工程S12b)。この許容範囲は、例えば、再構成画像のピクセルの大きさに基づくとしてもよい。差分距離(ΔL)が許容範囲内であるとき(工程S12b:YES)、距離評価部12bは、許可情報を出力する(工程S12c)。ラベリング部12cは、第2距離に関連付けられている第2強度情報を強度情報記憶部9から読み出す。そして、ラベリング部12cは、第2強度情報に許可情報を関連付けた後に、当該第2強度情報を強度情報記憶部9に格納する(工程S12d)。
【0043】
一方、差分距離(ΔL)が許容範囲外であるとき(工程S12b:NO)、距離評価部12bは、禁止情報を出力する(工程S12e)。ラベリング部12cは、第2距離(L2)に関連付けられている第2強度情報を強度情報記憶部9から読み出す。そして、ラベリング部12cは、第2強度情報に禁止情報を関連付けた後に、当該第2強度情報を強度情報記憶部9に格納する(工程S12f)。
【0044】
上記の工程S12を実行した結果、強度情報記憶部9に格納されている複数の強度情報において、再構成処理に用いてよい強度情報と、再構成処理に用いない強度情報とが弁別される。換言すると、再構成処理に用いてよい強度情報が注出される。
【0045】
工程S12の処理において判別されることは、X線センサ3から撮像対象100までの距離が変化したという現象である。この距離の変化には、図5に示すように撮像対象100の移動に起因する場合がある。また、図6に示すように撮像対象100の変形に起因する場合もある。工程S12の評価では、距離の変化がいずれの態様であるかを判別することはできない。しかし、いずれの態様であっても、それぞれの態様に関連する強度情報は、再構成処理への利用には適当でないので、再構成処理に用いないように除外する。
【0046】
なお、図6では、撮像対象100Cの膨張が均質であると仮定した。ここでいう「均質」とは、例えば、撮像対象100Cの密度分布が膨張の前後で変化しないことをいう。なお、密度そのものの値は、膨張前後で変化する。例えば、図7に示すように、撮像対象100Dの膨張が均質でない場合には、X線Rの減衰に差異が現れる。ここでいう「均質でない」とは、例えば、撮像対象100Dの密度分布が膨張の前後で変化したことをいう。つまり、膨張前の撮像対象100Aの密度分布は、一定であった。しかし、膨張後の撮像対象100Dの密度分布には一定でない。つまり、撮像対象100Dは、密度の高い部分D1と密度の低い部分D2とを含む。例えば、膨張後の撮像対象100Dを透過したX線Rの強度(PD)は、膨張前の撮像対象100Aを透過したX線Rの強度(PA)に対して変化することがある。この場合には、距離情報と強度情報とを用いて、撮像対象100Dが均質でない膨張が生じたことを判別できる。
【0047】
なお、実施形態の説明において、強度情報に差異が現れない変化の態様を「第1態様」と定義する。また、強度情報に差異が現れる変化の態様を「第2態様」と定義する。ここでいう強度情報とは、強度情報が示す強度分布におけるピーク強度である。従って、第1態様では、ピーク強度に差異がない場合であっても、強度分布には差異が現れる場合がある。この態様については、後に詳細に説明する。
【0048】
再び図3を参照する。情報処理装置5は、許可情報が付された強度情報を利用して再構成処理を行う。そして、再び情報処理装置5は、全ての情報について処理が終了したか否かを評価する(工程S10)。処理が終了しているとき(工程S10:YES)、情報処理装置5は、ボクセルデータを生成する(工程S14)。ボクセルデータを生成には、複数の再構成情報を利用する。
【0049】
ところで、放射線検出器は、医療、工業、保安、産業インフラの検査、社会インフラ検査などに用いられる。放射線検出器は、非破壊で内部情報を画像化できるので、これらの分野において広く利用されている。例えば、放射線検出器の応用例としてコンピュータ断層撮影装置がある。コンピュータ断層撮影装置は、三次元の断層画像を得ることができる。コンピュータ断層撮影装置の断層画像は、撮像対象100が固定されていることが理想状態とされている。つまり、撮像中に撮像対象が固定されている場合に、理論上の最大解像度を得られる。
【0050】
しかし、撮像対象100は人間を含め剛体でない場合が多い。例えば、生体の場合には停止できない動きもある。その結果、撮像対象100の動きに伴い解像度が低下してしまう。従って、X線センサ3の能力を十分に発揮できない。このような問題に対して、例えば、医科用コンピュータ断層撮影装置は、X線源とX線センサを有するガントリを高速回転させることにより解決しようとしている。具体的には、撮像対象が人間であるとする。撮像中に人間は呼吸を行うので、呼吸に伴う動きが生じる。そこで、医科用コンピュータ断層撮影装置は、ガントリを1秒間に3回転程度の回転速度で回転させている。一方、ガントリは重量物であるので、ガントリの駆動装置は、大型になる。
【0051】
実施形態のX線撮像装置1は、撮像対象100の動きを距離センサ4によって評価する。その結果、X線源2及びX線センサ3の回転数を高めることなく、解像度の低下を抑制することができる。さらに、実施形態のX線撮像装置1は、30FPS(Frames Per Second)又は60FPSといった高いフレームレートでの撮像が可能である。その結果、撮像対象100が高速で移動または変形する場合であっても、良好な断層画像を得ることができる。
【0052】
上記の効果は、X線センサ3と撮像対象100の間の距離を距離センサ4により評価していることによる。例えば、距離センサ4として、ToFカメラを用いることにより、高いフレームレートで距離情報を含む二次元画像を得ることが可能である。そこで、X線センサ3が強度情報を取得するタイミングに同期して、距離センサ4が撮像対象100までの距離情報を得る。その結果、強度情報を用いて画像の再構成を行う場合に、距離情報を利用することにより、再構成に適しない強度情報を除外することが可能になる。また、距離情報に基づいて強度情報を補正することも可能である。その結果、解像度の低下が抑制されるので、X線センサ3の性能を十分に発揮することができる。
【0053】
要するに、X線撮像装置1の情報処理装置5は、距離情報を利用して、強度情報から撮像情報の生成に用いる情報を抽出する。距離情報は、X線センサ3と撮像対象100との相対的な位置関係を示す。従って、情報処理装置5は、距離情報に基づいて撮像情報の生成に適した強度情報を抽出することが可能である。つまり、撮像対象100が動いた場合に、再構成に適する強度情報を選択する。その結果、撮像情報の質の低下が抑制される。換言すると、解像度の低下が抑制される。従って、X線センサ3の性能を十分に引き出すことができる。
【0054】
<第2実施形態>
第1実施形態のX線撮像装置1では、距離情報に基づいて、適当でない条件で得られた強度情報を再構成処理から除外した。しかし、適当でない条件で得られた強度情報であっても、撮像対象100の変化の態様が特定できれば、補正処理を行うことにより、再構成処理への利用に適する場合があり得る。第2実施形態のX線撮像装置1Aは、強度情報の補正処理を含む点で、第1実施形態のX線撮像装置1と相違する。以下、図8図9図10図11及び図12を参照しながら、第2実施形態のX線撮像装置1Aについて説明する。以下の説明では、第1実施形態のX線撮像装置1と共通する構成については、説明を省略する。そして、第1実施形態のX線撮像装置1と相違する構成について詳細に説明する。
【0055】
図8に示すように、X線撮像装置1Aは、情報処理装置5Aを有する。情報処理装置5Aは、抽出部12Aを有する。抽出部12Aは、距離差分取得部12a、距離評価部12b、ラベリング部12c及び再構成部13に加えて、強度差分取得部12d、強度評価部12eと、態様評価部12fと、補正部14と、をさらに有する。
【0056】
強度差分取得部12dは、第1強度情報における第1ピーク強度と第2強度情報における第2ピーク強度の差分を得る。
【0057】
強度評価部12eは、第1強度情報における強度分布を示す第1半値幅を取得する。また、強度評価部12eは、第2強度情報における強度分布を示す第2半値幅を取得する。そして、強度評価部12eは、第1半値幅と第2半値幅の大小関係を評価する。
【0058】
態様評価部12fは、距離評価部12bの結果と強度評価部12eの結果とに基づいて、撮像対象100の態様を評価する。撮像対象100の態様とは、撮像対象100の移動及び変形である。さらに、撮像対象100の移動とは、X線センサ3に対して近づく移動及び遠ざかる移動を含む。なお、撮像対象100の移動には、X線センサ3の受光面に対する平行移動を含んでよい。撮像対象100の変形とは、撮像対象100の膨張及び撮像対象100の収縮を含む。これらの態様の変化は、均質であるとする。
【0059】
態様評価部12fの動作について具体的に説明する。既に図5を用いて説明したように、軸線A1上における撮像対象100の移動は、強度情報に変化が現れないと述べた。また、図6を用いて説明したように、撮像対象100の均質な変形は、強度情報に変化が現れないと述べた。ここでいう強度情報の変化とは、強度情報が示す強度分布のピーク強度の変化である。
【0060】
例えば、図9に示すように、距離情報がX線センサ3と撮像対象100E、100Fの表面との距離が減少したことを示すとき、撮像対象100AがX線センサ3に近づいて撮像対象100Eとなった場合があり得る。また、撮像対象100の位置が変化することなく撮像対象100Aが膨張して撮像対象100Fとなった場合もあり得る。しかし、ピーク強度のみでは、これら2個の場合を判別できない。
【0061】
一方、図9に示す強度情報Nに注目する。撮像対象100AがX線センサ3に近づいた場合(撮像対象100E)の強度分布DEは、撮像対象100Aの強度分布DAとは異なっている。また、撮像対象100Aが膨張した場合(撮像対象100F)の強度分布DFは、撮像対象100Aの強度分布DAとは異なっている。さらに、近接した場合の強度分布DEは、膨張した場合の強度分布DFとも異なっている。従って、強度分布DA、DE、DFを評価することによって、距離が縮まったことを距離情報が示すとき、X線センサ3への近接であるか、膨張であるかを判別できる。強度分布DA,DE、DFの評価には、例えば、半値幅を用いてよい。具体的には、半値幅が減少したときには、X線センサ3への近接であると評価できる。一方、半値幅が増加したときには、膨張であると評価できる。
【0062】
図10に示すように、距離情報がX線センサ3と撮像対象100G、100Hの表面との距離が増加したことを示すときも同様である。例えば、X線センサ3から撮像対象100G、100Hの表面までの距離が距離L2から距離L6に変化したとする。この場合に、距離LBの増加が、撮像対象の移動に起因するかまたは変形に起因するかを判別する。つまり、半値幅の増減に基づいて撮像対象100Aの移動であるか変形であるかを判別する。具体的には、撮像対象100Hの強度分布DHが示すように、半値幅が撮像対象100Aの強度分布DAの半値幅よりも減少したときには収縮であると評価する。一方、撮像対象100の強度分布DGが示すように、半値幅が撮像対象100Aの強度分布DAの半値幅よりも増加したときには、X線センサ3からの離間であると評価する。
【0063】
補正部14は、態様評価部12fの結果に基づいて、第2強度情報を補正する。態様評価部12fの結果とは、撮像対象100の態様が、近接移動であるか、離間移動であるか、膨張であるか、収縮であるか、のいずれかである。補正部14は、4個の態様に応じて、X線源2から照射されるX線に関する拡大率などを利用して強度情報を補正する。
【0064】
X線撮像装置1Aは、図4のフロー図に示す工程S12に変えて工程S12Aを行う。以下、X線撮像装置1Aが行う工程S12Aについて図11及び図12を参照しながら詳細に説明する。
【0065】
まず、距離差分取得部12aは、距離差分を得る(工程S12a)。次に、距離評価部12bは、距離差分が許容範囲内であるか否かを評価する(工程S12b)。距離差分が許容範囲内であるとき、距離評価部12bは、許可情報を出力する(工程S12c)。そして、ラベリング部12cは、第2強度情報に許可情報を関連付ける(工程S12d)。以上、工程S12a、S12b、S12c及びS12dは、第1実施形態のX線撮像装置1の動作と同じである。
【0066】
一方、第2実施形態のX線撮像装置1Aは、距離差分が許容範囲外であるときの処理において、第1実施形態のX線撮像装置1とは異なる処理を含む。
【0067】
距離評価部12bは、距離差分を態様評価部12fに出力する。この距離差分は、正又は負の整数である。例えば、正の整数である距離差分は、X線センサ3から撮像対象100の表面までの距離が縮まったことを示す。一方、負の整数である距離差分は、X線センサ3から撮像対象100の表面までの距離が遠ざかったことを示す。なお、距離差分の正負と撮像対象100の近接及び遠隔との関係は、任意に設定してよい。
【0068】
まず、距離差分が許容範囲外であるとき(工程S12b:NO)、距離評価部12bは、禁止情報を出力する(工程S12e)。
【0069】
次に、強度差分取得部12dは、ピーク強度の差分を得る(工程S12g)。具体的には、まず、強度差分取得部12dは、第1タイミングに関連する第1強度情報と、第2タイミングに関連する第2強度情報と、を強度情報記憶部9から読み出す。第1強度情報及び第2強度情報は、一次元の分布を有する。強度差分取得部12dは、第1強度情報が示す強度分布から、第1ピーク強度を抽出する。さらに、強度差分取得部12dは、第2強度情報が示す強度分布から、第2ピーク強度を抽出する。そして、強度差分取得部12dは、第1ピーク強度と第2ピーク強度のピーク差分を得る。
【0070】
次に、強度評価部12eは、ピーク差分が許容範囲内であるか否かを評価する(工程S12h)。この工程S12hは、距離差分が許容範囲外である場合に、当該強度分布が補正可能であるか否かを判別する。例えば、撮像対象100の移動は、所定の演算によって補正可能である。同様に、撮像対象100の均質な膨張又は収縮も補正可能である。
【0071】
図5に示す撮像対象100Bの移動及び図6に示す撮像対象100Cの均質な変形では、ピーク強度の変化は、実質的に生じない。一方、図7に示す撮像対象100Dの均質でない変形では、ピーク強度の変化が生じる。従って、ピーク強度の差分が許容範囲であるか否かによって、補正可能な態様であるか否かを判別する。
【0072】
ピーク強度の差分が許容範囲外であるとき(工程S12h:NO)、強度評価部12eは、禁止情報を出力する(工程S12m)。そして、ラベリング部12cは、第2強度情報に禁止情報を関連付ける(工程S12f)。
【0073】
ピーク強度の差分が許容範囲内であると(工程S12h:YES)、強度評価部12eは、許可情報を出力する(工程S12i)。続いて、態様評価部12fは、撮像対象100の態様を評価する(工程S12j)。
【0074】
図12を参照しながら、工程S12jの詳細について説明する。
【0075】
まず、態様評価部12fは、距離差分取得部12aから距離差分を得る。そして、当該距離差分に基づいて、X線センサ3から撮像対象100までの距離が減少したか否かを判別する(工程S121)。距離が減少したとき(工程S121:YES)、態様評価部12fは、第1強度情報が示す第1強度分布の第1半値幅を得る(工程S122)。態様評価部12fは、第2強度情報が示す第2強度分布の第2半値幅を得る(工程S122)。続いて、態様評価部12fは、第1半値幅と第2半値幅との差分を得る。
【0076】
そして、態様評価部12fは、当該差分に基づいて、半値幅が減少したか否かを評価する(工程S123)。半値幅が減少したとき(工程S123:YES)、態様評価部12fは、撮像対象100の態様は、X線センサ3への近接であると評価する(工程S124)。一方、半値幅が増加したとき(工程S123:NO)、態様評価部12fは、撮像対象100の態様は、膨張であると評価する(工程S125)。
【0077】
一方、距離が増加したとき(工程S121:NO)、態様評価部12fは、工程S122と同様の処理を行う。つまり、態様評価部12fは、第1半値幅と第2半値幅との差分を得る。そして、態様評価部12fは、当該差分に基づいて、半値幅が減少したか否かを評価する(工程S127)。半値幅が減少したとき(工程S127:YES)、態様評価部12fは、撮像対象100の態様は、収縮であると評価する(工程S128)。一方、半値幅が増加したとき(工程S127:NO)、態様評価部12fは、撮像対象100の態様は、X線センサ3からの離間であると評価する(工程S129)。
【0078】
再び図11を参照する。補正部14は、工程S12jの結果に基づいて、第2強度情報の補正を行う(工程S12k)。続いて、ラベリング部12cは、補正後の第2強度情報に許可情報を関連付ける。そして、ラベリング部12cは、許可情報を付した第2強度情報を強度情報記憶部9に格納する。
【0079】
第2実施形態のX線撮像装置1Aによれば、第1実施形態のX線撮像装置1と同様に、画像の再構成に適した強度情報を抽出することができる。従って、再構成情報の質の劣化を抑制できる。
【0080】
さらに、第2実施形態のX線撮像装置1Aは、画像の再構成に適さない強度情報のうち、補正可能な強度情報を抽出する。そして、当該強度情報を補正することにより、再構成に適する強度情報に変換する。その結果、再構成に利用できる強度情報の数が増加するので、再構成情報の質を向上させることができる。
【0081】
本発明のX線撮像装置は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…X線撮像装置、2…X線源、3…X線センサ(X線強度計測部)、4…距離センサ(距離計測部)、5…情報処理装置(情報処理部)、6…記憶装置、7…プロセッサ、8…再構成プログラム、9…強度情報記憶部、10…計測光、11…距離情報記憶部、12…抽出部、13…再構成部、14…補正部、12a…距離差分取得部、12b…距離評価部、12c…ラベリング部、12d…強度差分取得部、12e…強度評価部、12f…態様評価部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12