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特開2022-120227タッチペン及びタッチペンの製造方法
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  • 特開-タッチペン及びタッチペンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120227
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】タッチペン及びタッチペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220810BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/044 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016998
(22)【出願日】2021-02-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】521055530
【氏名又は名称】株式会社家具工房ゆうき
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず清掃維持が容易である、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペン及びタッチペンの製造方法を提供する。
【解決手段】万年筆型のタッチペン1において、木軸10の中空部11に導電管20を格納させると共に、複数の金属軸体30を、木軸10と交差する方向に、放射状に、導電管20に突き刺し、各々の金属軸体の少なくとも一方の端面31が、木軸の外面14と同一面をなすように分散させて配設させる。または、木軸を均等に二分割させると共に、導電管に接するように分割面全体に導電性薄膜体を備えさせ、導電性薄膜体の両側端面が木軸の外面と同一面をなすようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、
軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、複数の金属軸体とからなり、
前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、
前記導電管は前記中空部に格納され、
前記ペン先部は前記導電管に装着され、
各々の前記金属軸体が、ペン軸と交差する面に放射状に、少なくとも前記導電管の内方空間まで前記導電管を貫通され、
前記木軸の外面に露出された各々の前記金属軸体の端面が、前記木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設されている、
ことを特徴とするタッチペン。
【請求項2】
前記木軸が先方から後方に向けて均等に二分割され、
各々の金属軸体が、前記木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチペン。
【請求項3】
前記交差する面が、ペン軸に垂直に交差する垂直面とされ、
前記金属軸体のうち隣り合う一対の金属軸体が、前記垂直面に沿って、且つ、隣接するように配列されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチペン。
【請求項4】
前記一対の金属軸体が、前記木軸の先方に、指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、少なくとも3列配列されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のタッチペン。
【請求項5】
前記金属軸体が、前記木軸の先方から後方にかけて、ペン軸の周方向に分散されて配列されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチペン。
【請求項6】
静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、
軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、導電性薄膜体とからなり、
前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、先方から後方に向けて均等に二分割され、
前記導電管は前記中空部に格納され、
前記ペン先部は前記導電管に装着され、
前記導電性薄膜体が、前記木軸を二分割させた面に沿って先方から後方に向けて伸びると共に、前記導電管に接して前記木軸と一体とされ、
前記導電性薄膜体の両側端面が、前記木軸の外面と同一面をなしている、
ことを特徴とするタッチペン。
【請求項7】
前記ペン先部が、複数備えられ、
各々の前記ペン先部は、夫々の装着部の形状が同一とされると共に先端形状が異なった形状とされて、選択可能な群をなし、
前記群の中から選択されたいずれかのペン先が前記木軸に装着される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のタッチペン。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5に記載のいずれかのタッチペンの製造方法において、
前記中空部に前記導電管を格納させる第1の工程と、
前記木軸と前記導電管を一体にした状態で、前記金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、
前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程に加えて、
前記木軸と前記金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とする仕上工程とを有する、
ことを特徴とするタッチペンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンに関する。具体的には、ペン軸体を美観に優れた木軸としながらも、手で把持する位置を限定させないタッチペンに関する。より詳細には、ペン軸体を導電性が乏しい木質の生地とさせても、タッチパネルの反応が良好で清掃維持が容易なタッチペンに関する。また、ペン先が交換できると共にペン先が脱落しにくいタッチペンに関する。
【0002】
具体的には、木軸の中心軸に導電管を配し、複数の金属軸体をペン軸と交差する方向に放射状に、導電管を貫通させ、木軸の外面に露出された各々の金属軸体の端面が、木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設され、導電管の先端にタッチペンのペン先を交換可能に装着させるタッチペンに関する。または、前記木軸を均等に二分割させると共に、前記導電管に接するように分割面全体に導電性薄膜体を備えさせ、導電性薄膜体の両側端面が木軸の外面と同一面をなしているタッチペンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、木材を素材として、家具、日用品等が提供されている。木材のなかでもヒノキは、加工が容易であるだけでなく、緻密で狂いがなく、強い芳香を長期にわたって発し、建材として使用されるだけでなく、浴槽への入浴玉等としても使用されている。非特許文献1には、ヒノキ材の精油は100ppmから1000ppmの濃度で、カビ類、ブドウ球菌、大腸菌など細菌類に対して抗菌作用を発揮することが示されている。
【0004】
また、非特許文献2には、ヒノキだけでなく、スギも、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック素材に比較して、インフルエンザウイルスの不活化に著しい効果があるとの実験結果も示されている。かかる効果が、木材に認められることに加えて、人が触れる場所にスギやヒノキ等を素材とした日用品が提供され、その手触り、香りなどに馴染みがあるため、様々な樹種の木材を素材とした日用品が広く普及している。
【0005】
万年筆の軸体などにも、木肌の柄模様に特徴があるカエデ、紫檀、黒檀、ウォールナット、メープル等の様々の樹種の木質材が採用され、高級感のある万年筆が提供されている。近年ではタブレットの普及に伴い、筆記具として鉛筆、ボールペンに加えてタッチペンの需要も高まっている。例えば、銀行の窓口、現金自動預け払い機等においては、タッチパネルに数字が入力される、署名がされる等の用途に使用されることが求められている。
【0006】
従来、窓口に備えられているペンの軸体は、プラスチック素材が大部分であった。しかし、不特定多数の人が使ったペンの軸体は、汚れだけでなくウイルスも付着しているおそれがあり、感染症が拡がっている状況においては、自分専用のペンを持参する人も多くなっている。しかし、タッチパネルに入力する際には、鉛筆、ボールペンを使用することはできないため、自分の指でタッチするかタッチペンを使わざるを得なかった。
【0007】
そのためウイルスの不活化に効果があるともいわれ、衛生的で、高級感・香り・触感に優れた木質の軸体のタッチペンが求められていた。ところが、木質素材の導電性が乏しいために、木質の軸体にタッチペンのペン先を装着させただけでは、タッチパネルが殆ど反応せず、タッチペンとして安定して機能させることはできなかった。
【0008】
特許文献1には、指とタッチパッドの座標入力面との接触状態を変化させないで、精度良く座標情報を入力させることを課題とした入力パッド用入力ペンの技術が開示されている。この技術によれば、入力パッド用入力ペンは、使用者の手に把持されるペン本体と、ペン本体の先端部に導電性のペン先とを備えさせ、ペン本体の外周部で、通常手によって把持される部位近傍の所要位置に、導電性のペン先と電気的に導通する導電部位が形成され、他の部位が非導電体とされている。
【0009】
この技術によれば、ペン先と入力ペンを持つ手とが導電部位を介して電気的に導通され、入力パッドと使用者の手との間に生じる静電容量差を、ペン先の形状に応じて伝達させることができ、正確な座標情報の入力が可能となるとされている。具体例として、ペン軸体のペン先の近傍に、環状に導電部位を備えさせ、導電部位よりも後方のペン本体の非導電部位を把持する例が示されている。この例によれば、人差し指の先端を導電部位に接触させることにより、マウスのクリック等のボタン操作に代わる操作を簡単にすることができるとされている。
【0010】
しかし、この技術を、軸体を木製としたタッチペンに適用させ、ペン軸体のペン先近傍に、環状に導電部位を形成させると、非導電部位である軸体と導電部位との境界に、僅かな段差が発生しやすい。そうすると、同じ導電部位に常に指を触れさせて使用することに加えて、その僅かな段差に指を触れさせるために、汚れ等が付着しやすく、非常に不潔且つ不衛生になりやすかった。単に、タッチペン全体の外観を木質で統一し、高級感・香りに優れているという木質生地の利点が活かせないだけでなく、タッチペンがかえって不衛生になりやすいという課題があった。
【0011】
特許文献2には、タッチペンのペン先を有する入力体が軸筒に装着されたタッチペンの技術が開示されている。この技術は、入力体を木軸に装着させる際に入力体及び木軸双方が損傷されにくく、使用中に入力体が脱落することがないことを課題とした技術とされている。具体的には、入力ペンは、木軸と、棒状の入力体と、入力体を木軸に装着させる装着孔と、装着孔と入力体の隙間に固着させる固着剤とを有した物とされている。
【0012】
従来は、入力体が装着されている軸筒を木軸とした場合には、棒状の入力体を装着する際に圧力をかけると、入力体が破損しやすくなることがあったとされている。特に、入力体がアクティブ方式の入力ペンの場合には、入力体装着の際の圧力により、入力体に格納させた電子回路を損傷させず、且つ、木軸を損傷させないために、入力体を装着孔に遊嵌させるようにし、入力体と装着孔との間に固着剤を備えさせるとしている。
【0013】
しかし、この技術はアクティブ方式のタッチペンに適し、静電容量式のタッチペンとして使用する場合には、タッチする部分に導電性塗料を用いることが必要であるとされている。そのため木軸を把持して静電容量式のタッチペンとして使用する場合には、把持する部分に導電性塗料を塗装することが必要であり、木軸の木質の生地を全体に露出させて使用することができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10-171579号
【特許文献2】特開2020-95677号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「一般財団法人日本木材総合情報センターのHP」https://www.jawic.or.jp/health/kenkou2.php
【非特許文献2】「奈良県農林部奈良の木ブランド課(2016)「平成28年度『奈良の木で健康になる』実証事業」報告書」http://www.pref.nara.jp/secure/125932/04%20virusfukasseika.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の解決しようとする課題は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンであって、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であるタッチペンを提供することである。また、ペン先の交換が可能で且つ脱落しにくいタッチペンを提供することである。
【0017】
本発明の第1の発明は、静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、複数の金属軸体とからなり、前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、前記導電管は前記中空部に格納され、前記ペン先部は前記導電管に装着され、各々の前記金属軸体が、ペン軸と交差する面に放射状に、少なくとも前記導電管の内方空間まで前記導電管を貫通され、前記木軸の外面に露出された各々の前記金属軸体の端面が、前記木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設されていることを特徴としている。
【0018】
先方から後方まで全体が木質とされている木軸は、無垢の木材に限定されず、集成材であってもよい。染色した集成材を重ねて、多色からなる木軸としてもよい。木軸の材質は、不特定多数の人が使用する場合には、殺菌性があるとされるヒノキ、スギ、竹等が好適であるが、使用者の専用とする場合には、高級な美観を呈する紫檀、黒檀等の材質から選択されてもよい。
【0019】
導電性を有する金属軸体が、分散して、木軸と交差する面に放射状に複数配設されると共に、木軸の外面に露出された各々の金属軸体の端面が、木軸の外面と同一面をなしている。これにより使用者がタッチペンを把持した際に、使用者が特定の部位を意識して把持しなくても、いずれかの金属軸体の近傍位置に触れることになり、ペン先がタッチしたタッチパネル部分の表面電荷に変化を生じさせる。金属軸体は、細軸であり木軸と一体で同一面をなすように研磨しやすく、抗菌性又は殺菌性を有するとされている銅、または銅合金である真鍮が好適であるが、これに限定されない。また、木軸外面に露出された金属軸体の端面が、木軸と同一面をなしているため汚れが溜まりにくく、手触りのよいタッチペンとすることができる。
【0020】
導電管の管径は限定されず、木軸の先方の中空部に格納される管径であればよい。導電管の材質は、木軸と共に穿孔可能な銅、アルミ、鉄等の金属材質、導電性ポリアセチレン等の導電性樹脂であればよい。また金属軸体は、導電体を分断しないように、導電体の外径よりも細径とされればよい。金属軸体は、導電管に食い込むように、少なくとも導電管の内部空間まで貫通されればよい。金属軸体が導電管を貫通しているため、導電管がぐらつくことがないため、中空部よりも導電管が僅かに細くてもよく、導電管を中空部に格納させやすい。金属軸体が、木軸と導電管とを横断貫通されていると、金属軸体の両端面が木軸の外面に露出されるため、指と金属軸体とが接しやすく、より好適である。
【0021】
また、木軸と導電管をドリルビットで孔を穿孔させる際に、ドリルビットが貫入した側の導電管の管内壁の孔の周囲が、僅かに突起が立った状態となり、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となる。これにより、導電管の管開口から最も近い金属軸体まで接するように、押し込んで装着させたペン先部の基部が挟持された状態となり脱落しにくい。一方、ペン先部を挟持して保持させているに過ぎないため、異なる形状のペン先部に交換しやすい。
【0022】
金属軸体を分散配設させる位置は、鉛筆書きの使用態様に応じるようにペン軸の先方に分散配設させてもよく、毛筆書きの使用態様に応じるようにペン軸の中央から後方に分散配設させてもよい。ペン軸の中央から後方に分散配設させた場合には、ペンを把持した手のいずれの位置もタッチパネルに接しにくいため、ペン先部以外に人が触れることによる誤作動を発生させない。金属軸体と木軸とが同一面をなしているため、常時把持される木軸部分が汚れた場合であっても、金属軸体と木軸との表面を、同時に清掃・研磨することができる。
【0023】
本発明の第1の発明によれば、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であると共に、ペン先が交換可能で且つ脱落しにくいタッチペンとすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0024】
本発明の第2の発明は、第1の発明のタッチペンにおいて、前記木軸が先方から後方に向けて均等に二分割され、各々の金属軸体が、前記木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されていることを特徴としている。
【0025】
第2の発明によれば、木軸が軸方向に二分割されているため、分割面に沿って中空部を切削加工することができ、木軸の先方から後方まで延びる中空部を製造することが容易である。また分割面を重ね合わせて、中空部に導電管を格納した状態で、重ね合わせた分割面に対して、斜めに交差する方向に金属軸体が貫通しているため、分割片が分離しにくいという効果を奏する。
【0026】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明のタッチペンにおいて、前記交差する面が、ペン軸に垂直に交差する垂直面とされ、前記金属軸体のうち隣り合う一対の金属軸体が、前記垂直面に沿って、且つ、隣接するように配列されていることを特徴としている。
【0027】
第3の発明では、隣り合う一対の金属軸体が、ペン軸方向に垂直に隣接して配設されている。隣接してとは、隣り合う一対の金属軸体が接していると好適であるが限定されず、導電管が先方から後方まで繋がった状態で近い距離で配列されればよい。ペン軸方向に垂直に隣接して配設されているため、ペン先端から所望の位置に周囲に均等に4か所の金属軸体の端面が露出される。これにより、金属軸体の端面が露出された近傍に指を添えて把持すれば、導電状態となるという効果を奏する。
【0028】
本発明の第4の発明は、第3の発明のタッチペンにおいて、前記一対の金属軸体が、前記木軸の先方に、指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、少なくとも3列配列されていることを特徴としている。
【0029】
第4の発明では、木軸の先方に、把持する人の指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、3列以上の金属軸体が配列されているため、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態で、ペン先の位置から、やや後方まで把持する位置までの、どの位置を把持しても、導電状態となるという効果を奏する。
【0030】
本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明のタッチペンにおいて、前記金属軸体が、前記木軸の先方から後方にかけて、ペン軸の周方向に分散されて配列されていることを特徴としている。第5の発明では、金属軸体が、木軸の全体に、ペン軸の周方向に分散されて配列されているため、鉛筆書きの使用態様でタッチペンの先方を保持した状態だけでなく、毛筆書きの使用態様でタッチペンの後方を保持した状態でも、導電状態となるという効果を奏する。
【0031】
本発明の第6の発明は、静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、導電性薄膜体とからなり、前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、先方から後方に向けて均等に二分割され、前記導電管は前記中空部に格納され、前記ペン先部は前記導電管に装着され、前記導電性薄膜体が、前記木軸を二分割させた面に沿って先方から後方に向けて伸びると共に、前記導電管に接して前記木軸と一体とされ、前記導電性薄膜体の両側端面が、前記木軸の外面と同一面をなしていることを特徴としている。
【0032】
第6の発明によれば、導電性薄膜体が木軸を二分割させた面に沿って、先方から後方に向けて伸びている。導電性薄膜体とは、銅、アルミニウム等からなる金属箔に限定されず、金属箔と導電性接着剤層とが積層された導電性テープであってもよい。ほかにも、紙に導電性の粉末が混練されてなる導電紙であってもよく、樹脂基材に導電性接着剤層を積層させた導電性テープであってもよい。
【0033】
導電性薄膜体は被着体に沿って変形させやすいため、導電管の周面にも木軸の分割面にも馴染ませやすく、二分割させた木軸で導電性薄膜体を挟んで接合させるだけで木軸に良好な導電性を付与できるため、タッチペンの製造が容易となる。導電性薄膜体の両側端面を、研磨処理により木軸の外面と同一面とすることも容易である。
【0034】
また、導電性薄膜体に触れないようにタッチペンの木軸部分だけを指先で摘んだ場合であっても、タッチペンが良好に反応されることが確認された。これは、導電性薄膜体が木軸の分割面全体に添設されているため、導電性薄膜体と指先とが近接されていること、導電性薄膜体が導電管の周面を覆うように接触しているため、導電性薄膜体と導電管との接触抵抗が少なく、電荷を伝達させやすいこと、等の複数の要因が重なった結果と推察される。これにより、タッチペンを把持する位置だけでなく、把持の態様も限定されないタッチペンを容易に製造することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0035】
本発明の第7の発明は、第1から第6の発明のタッチペンにおいて、前記ペン先部が、複数備えられ、各々の前記ペン先部は、夫々の装着部の形状が同一とされると共に先端形状が異なった形状とされて、選択可能な群をなし、前記群の中から選択されたいずれかのペン先が前記木軸に装着されることを特徴としている。
【0036】
ペン先の形状には、導電性樹脂からなる円板形状、球形状、導電繊維を束ねた筆形状等、そのタッチパネルに導電させる目的に応じて様々な形状がある。例えば現金自動預け払い機で数字を入力するだけならば円板形状が良く、線の太さを様々に変えてタッチパネルにイラストを描くならば、細線に対応して球形状、太線に対応して筆形状がよい。第7の発明によれば、タッチパネルにタッチする目的に応じて、ペン先を変更できるだけでなく、容易にペン先を変更可能であると共に確実にペン先が保持されるという効果を奏する。
【0037】
本発明の第8の発明は、第1から第5のタッチペンの製造方法において、前記中空部に前記導電管を格納させる第1の工程と、前記木軸と前記導電管を一体にした状態で、前記金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程に加えて、前記木軸と前記金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とする仕上工程とを有することを特徴としている。
【0038】
タッチペンの製造方法においては、木軸の先方にくりぬくように中空部を形成してもよく、先方に半円柱状の窪みを有する分割片を重ね合わせて木軸の先方に中空部を形成してもよい。第8の発明のタッチペンの製造方法においては、木軸に形成された中空部に導電管を格納させる工程を第1の工程としている。第1の工程の後に、木軸と導電管を一体にした状態で、金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程を有し、仕上げ工程として木軸と金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とさせている。なお、金属軸体を挿嵌させる孔は、導電管の内部空間まで穿孔させれば足りるが、木軸と導電管を横断するように孔を穿孔させてもよい。これにより、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンでありながら、全体を美観に優れた木質生地の木軸とすることができると共に、清掃維持が容易なタッチペンを製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
・本発明の第1の発明のタッチペンによれば、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であると共に、ペン先が交換可能で且つ脱落しにくいタッチペンとすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明のタッチペンによれば、製造が容易であると共に、分割片が分離しにくいという効果を奏する。
・本発明の第3の発明のタッチペンによれば、金属軸体の端面が露出された近傍に指を添えて把持すれば、導電状態となるという効果を奏する。
・本発明の第4の発明のタッチペンによれば、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態で、ペン先の位置から、やや後方まで把持する位置までの、どの位置を把持しても、導電状態となるという効果を奏する。
【0040】
・本発明の第5の発明のタッチペンによれば、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態だけでなく、毛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態でも、導電状態となるという効果を奏する。
・本発明の第6の発明のタッチペンによれば、タッチペンを把持する位置だけでなく、把持の態様も限定されないタッチペンを容易に製造することができるという従来にない有利な効果を奏する。
・本発明の第7の発明のタッチペンによれば、タッチパネルにタッチする目的に応じて、ペン先を変更できるだけでなく、容易にペン先を変更可能であると共に確実にペン先が保持されるという効果を奏する。
・本発明の第8の発明のタッチペンの製造方法によれば、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンでありながら、全体を美観に優れた木質生地の木軸とすることができると共に、清掃維持が容易なタッチペンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】金属軸体が備えられた万年筆型のタッチペンの斜視図(実施例1)。
図2】万年筆型のタッチペンの製造工程の説明図(実施例1)。
図3】金属軸体を二分割させた面に斜めに貫通させたタッチペン説明図(実施例2)。
図4】木軸を二分割させた鉛筆型のタッチペンの斜視図(実施例3)。
図5】導電性薄膜体が備えられたタッチペンの斜視図(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
木軸の中空部に導電管を格納させると共に、複数の金属軸体を、木軸と交差する方向に、放射状に、導電管に突き刺し、各々の金属軸体の少なくとも一方の端面が木軸の外面と同一面をなすように分散させて配設させた。または、木軸を均等に二分割させると共に、前記導電管に接するように分割面全体に導電性薄膜体を備えさせ、導電性薄膜体の両側端面が木軸の外面と同一面をなすようにした。これにより、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させない。また、木軸が凹凸のない滑らかな外面をなし、清掃維持も容易である。
【実施例0043】
実施例1においては、木軸が円断面形状をなす万年筆型のタッチペン1を、図1図2を参照して説明する。図1はタッチペンと、タッチペンに装着させるペン先部の群の斜視図を示している。図1(A)図は、タッチペンの斜視図を示し、図1(B)図はタッチペンの内部構造とペン先部の一例を示す斜視図を示している。図1(B)図においては、理解を容易にするため、木軸を破線とし、導電管と金属軸体とを実線で示している。図1(C)図から図1(E)図には、導電管に装着されるペン先部を選択可能な群の例を示している。図2は、タッチペンの製造工程を図1(B)図のA-A位置における断面図により示している。
【0044】
万年筆型のタッチペン1は、軸方向の先方から中央部にかけて中空部を有する木軸10と、導電管20と、複数の金属軸体30と、交換可能なペン先部40とからなっている(図1参照)。木軸10は、先方から後方までの全体が円断面形状の木質素材からなる。より詳細には、木軸の先方側から中央部にかけての約3分の1の長さが、後方に向けて緩やかに膨らんで太径とされ、太径の中央部から後方に向けて緩やかに窄まって後方側が細径とされた万年筆形状をなしている。中空部11(図1(B)図参照)は、3列の金属軸体30,30,30が指先から第1関節までの約20mmの間隔をあけて軸方向に配列されるように、木軸の先端から約60mmよりも深い位置まで穿設されている。
【0045】
導電管20を格納させた木軸10は、木軸10と導電管20を横断する金属軸体の挿嵌孔12,13が穿設されている(図2(B)図参照)。金属軸体30の挿嵌孔は、周方向に配列される挿嵌孔12,13が隣接して直交されるように穿設される(図1(B)図,図2(E)図参照)と共に、隣接された挿嵌孔12,13がそれぞれ、木軸の先端から約20mmをあけて木軸の軸方向に3列、配列されている。木軸10は、無垢材に限定されず、集成材であってもよい。木軸は、例えば抗菌性があると共に、肌触りがよく加工しやすいヒノキ、スギが好適である。ほかにも抗菌作用・抗真菌作用を有すると共に、成長が早く環境負荷の小さい竹であってもよい。また、高級な美観を呈するカエデ、紫檀、黒檀、オークウッド、メープル、ウォールナット、チーク、マホガニー等であってもよい。
【0046】
導電管20は木軸10と共に、金属軸体30を挿し込むための穿孔加工ができればよく、材質は限定されない。例えば、金属管であれば銅、銅合金としての真鍮、銀、鉄であればよいが、導電性の高さと穿孔加工の容易さから銅、真鍮が好適である。導電管は、導電性樹脂管であってもよく、例えば、導電性ポリアセチレン、ポエリエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)に、金属粒子、カーボンナノチューブ等の導電性フィラーを添加させてなる導電性樹脂が好適である。導電管の外径は、木軸の中空部に格納可能であればよいが、中空部の内面と摺り合ってがたつきがない大きさとされるとより好適である。導電管20の内径は、ペン先部40の装着部をなす軸部41が脱落されない大きさとされる。
【0047】
金属軸体30の材質は限定されないが、木軸の外面14に露出されている金属軸体の端面31を、木軸の外面と同一面をなすように研磨加工しやすいように、柔らかい金属とするとよい(図1(A)図,図2(F)図参照)。例えば、銅、銅と亜鉛の合金である真鍮、金であれば、導電性に優れると共に、端面を容易に滑らかな面に研磨させやすい。特に、金属軸体を銅、真鍮とすると、銅にウイルスの失活効果があることから、人の指が触れる機会が多い金属軸体部分を衛生的に維持させることができ、好適である。
【0048】
木軸に挿嵌される金属軸体30は、隣り合う一対の金属軸体32が、木軸10の軸方向に垂直に隣接して配設されている(図1(B)図参照)。各々の金属軸体30は、木軸10と導電管20とを横断するように貫通されているため、タッチペン1の先端から所望の位置において、木軸の周方向に均等に4つの金属軸体の端面31が露出される(図1(A)図参照)。ここでは、隣り合う一対の金属軸体32の周面33が木軸の内部で接するように、金属軸体の直径と略同じ距離をずらして隣接配置させている(図2(F)図参照)。隣り合う一対の金属軸体32が接し合っているため、金属軸体30と導電管20とを確実に導通させることができ、タッチパネルに検知されやすいタッチペンとすることができる。
【0049】
なお、隣り合う一対の金属軸体は、金属軸体の直径よりも僅かに短い距離をずらして隣接配置させてもよい。この場合には、軸方向に配列される3つの挿嵌孔12,12,12を穿孔させ、金属軸体を木軸に挿嵌させてから、前記3つの挿嵌孔と隣接して交差する挿嵌孔13,13,13を、軸方向に3列をなすように穿孔加工させればよい(図1(B)図参照)。そうすると、先に挿嵌された金属軸体が、交差する挿嵌孔と重なっている部分については、木軸と導電管と共に切除されるため、交差する挿嵌孔に金属軸体を挿嵌させるときに、先に挿嵌された金属軸体に引っ掛かることがない。そのため、交差する挿嵌孔の穿孔位置を厳密に調整させなくても、隣り合う一対の金属軸体が接し合うように配置させることができる。
【0050】
また金属軸体は、木軸の軸方向に3列に並んで配置されている。隣り合う列同士の間隔は、指先から第1関節までの約20mmの間隔があけられている。具体的には、木軸の先端から約20mmの位置、約40mmの位置、約60mmの位置に配置されている。そのため、鉛筆書きのようにタッチペンの先方が把持された場合だけでなく、タッチパネルに手が触れないようにタッチペンの中央部が把持された場合であっても、タッチパネルを操作することができる。
【0051】
ペン先部40は、先端部42の形状が異なるペン先部の群から用途に合わせて交換可能とされている(図1(B)図から図1(E)図参照)。いずれのペン先部も、装着部が導電管に押し込まれて装着される円断面形状の軸部41であり、同一の外形形状をなしている。軸部41と先端部42との間には、導電管20の内径よりも太い径の膨出部43が備えられ、ペン先部40が導電管の適切な深さまで挿し込まれると、膨出部43の後方端面が導電管の先端部に引っ掛かる。ペン先が交換されるときには、膨出部43を摘んで引き抜けば、先端部42を損傷させることなくペン先部を交換させることができる。
【0052】
ペン先部の先端部42の形状は限定されず、市場に流通されている周知のペン先部であればよい。例えば、金属管からなる軸部41に導電性ゴム軸体44を挿通させ、導電性ゴム軸体の先端に円盤体45を備えさせたペン先部40であればよい(図1(B)図参照)。この場合には、導電性ゴム軸体44の金属管の先端から突出された部分46が自由に側方に変形可能であるため、円盤部をタッチパネルに当接させやすい。そのため、タッチパネルに署名がされる場合だけでなく、スマートフォン・タブレットのタッチ操作にも適している。
【0053】
ほかにも、先端部42の形状を導電性の毛束とし、絵画用の筆に近似させたペン先部47としてもよい(図1(C)図参照)。先端部42の形状を、先端が尖った鉛筆形状としたペン先部48としてもよい(図1(D)図参照)。先端部の形状42を、導電性繊維が半球形状に編まれたものとし、スマートフォン等のタッチ操作に適したペン先部49としてもよい(図1(E)図参照)。ペン先部の形状は、以上に限定されないことは勿論のことである。
【0054】
次に、タッチペンの製造方法について、図2を参照して説明する。図2(A)図は、角材100の中心位置に中空部11を穴開け加工する工程を示している。図2(B)図は、木軸10の中空部11に導電管20を格納させる第1の工程と、木軸10を万年筆形状に切削させる工程とを示している。図2(C)図は、木軸10と導電管20を一体にした状態で、金属軸体の挿嵌孔12を穿孔させる第2の工程を示している。図2(D)図と図2(E)図は、挿嵌孔12に金属軸体30を挿嵌させる第3の工程を示している。図2(F)図は、木軸10と金属軸体30の外面を同時に研磨して滑らかな外面とする仕上げ工程を示している。
【0055】
まず、木軸10をなす断面が正方形形状とされる角材100の後端部101を回転治具により保持させ、角材100を先端面の中心回りに回転させる。角材100の先端面にドリルビットを突き当て、角材の中心位置に穴開け加工をし、導電管20を格納させる中空部11を形成させる(図2(A)図参照)。次に、導電管20を中空部11に押し込んで格納させる(図2(B)図参照)。導電管20の先端は、後の工程で、木軸10との先端の位置を一致させるように研磨させるため、この段階においては木軸の先端から僅かに突出される状態となっている。併せて、前記角材を回転させながら周面に切削刃を押し当て、角材を大まかに万年筆型の木軸形状に旋削加工させる。この段階においては角材の後端部101だけは切削せずに、角材の形状のまま残しておく。
【0056】
第2の工程においては、V字溝を有する固定具(図示を省略している)に、正方形形状をなす前記後端部101の角部を嵌合させ、木軸10が周方向に回転しない状態に保持させる。この状態で、木軸10と導電管20とを横断貫通させるようにドリルビットを側方から押し当て、金属軸体を挿嵌させる挿嵌孔12を穿孔させる。この挿嵌孔12は、先端から約20mm間隔をあけて3列となるように穿孔される(図2(C)図参照)。この時に、ドリルビットが貫入した側の導電管20の管内壁において、挿嵌孔12の周囲が、僅かに突起21が立った状態となり、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となる。
【0057】
第3の工程においては、軸方向に並んだ3列の挿嵌孔12,12,12に、3本の金属軸体30,30,30を挿嵌させ、木軸の外面から突出された余剰部分34をニッパー等により切除させる(図2(D)図参照)。次に、木軸を周方向に90度回転させて、前記と同様に、固定具に木軸10を保持させる。そして、先に穿孔された各々の挿嵌孔12,12,12と隣接されるように、金属軸体30の直径と略同じ距離だけ、木軸の軸方向にずらした位置に、交差される挿嵌孔13,13,13を穿孔させる(図2(E)図参照)。前記と同様に、先に挿嵌させた金属軸体30に交差する金属軸体35を挿嵌孔13に挿嵌させ、木軸10の外面から突出された余剰部分を切除させる。この段階においては、木軸の外面14から金属軸体の尖った端面36が僅かに突出された状態となっている。
【0058】
次に、仕上げ工程として、未切削のままの前記後端部101を、回転治具に保持させ、木軸10を回転させながら金属やすりを前記尖った端面36に接触させるようにして、金属軸体30と木軸10とを一体に研磨させる(図2(F)図参照)。金属軸体の端面31と木軸の外面14とが略同一面となったら、紙やすりを木軸10の周面に巻き付けるようにして、金属軸体の端面31と木軸の外面14とが、滑らかな同一面をなすように研磨させる。そして、未切削のままの後端部101と木軸10との境界部分102(図2(E)図参照)に切削刃を押し当てて木軸10を切り離す。
【0059】
導電管20の先端面を木軸10の先端面に揃えるように、導電管の突出部分をディスクサンダーにより削り、導電管に所望のペン先部40を装着させ、タッチペン1が完成される(図2(F)図参照)。第2の工程で説明したように、導電管20の管内壁において挿嵌孔の周囲が、僅かに突起21が立った状態となると共に、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となっている(図2(C)図参照)。そのため、ペン先部40(図2(F)図参照)の軸部41を導電管に押し込むと、前記軸部41の外周面と導電管20の歪んだ管内壁とが摺り合って挟持され、ペン先部40が脱落されにくい状態で、木軸10に装着される。
【実施例0060】
実施例2においては、金属軸体が、木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されている万年筆型のタッチペン2について、図3を参照して説明する。図3(A)図はタッチペン2の斜視図を示している。図3(B)図は、タッチペンの各部品を組み立てる前の状態を示している。図3(C)図は、図3(A)図のA-A位置における断面図を示している。
【0061】
木軸50は、外形が万年筆型に整形され、先方から後方に向けて、軸方向に均等に二分割されている(図3(B)図参照)。木軸50が二分割されてなる各々の分割片51,51には、分割面52に導電管22を格納させる中空部53(図3(C)図参照)をなす半円柱形状の窪み54(図3(B)図参照)が形成されている。前記窪み54は、各々の分割片51の先方から後方まで長く延びている。中空部53は実施例1と同様にドリルビットにより穿孔してもよいが、木軸を二分割させてから切削させると細径の木軸であっても亀裂が入りにくく製造が容易となるため好適である。二分割された木軸50は、分割面52に接着剤が塗布されて重ね合わされ、分割片51,51同士が接合される(図3(C)図参照)。
【0062】
導電管22は、中空部53と同様に木軸の先方から後方まで長く延びている点以外は実施例1と同一としている。金属軸体30は、木軸を二分割させた分割面52に対して、斜めに交差する方向に、木軸50と導電管22とを横断して貫通されている(図3(C)図参照)。また、金属軸体30は交互に、直交する斜め二方向から木軸50を貫通されるように、軸方向に、約15mmの間隔をあけて分散されて、木軸の先方から後方まで9か所に配置されている(図3(A)図参照)。これにより、鉛筆書きの把持態様のように、タッチペン先方が把持される場合だけでなく、毛筆書きの把持態様のように後方が把持された場合であっても、タッチパネルをタッチ操作することができ、把持位置が限定されないタッチペン2とすることができる。
【実施例0063】
実施例3においては、鉛筆型のタッチペン3について、図4を参照して説明する。図4(A)図は鉛筆型のタッチペン3の斜視図を示している。図4(B)図は、タッチペンの各部品を組み立てる前の状態を示している。図4(C)図は、図4(A)図のA-A位置における断面図を示している。
【0064】
木軸60は、断面が正六角形状の鉛筆型をなしている。より詳細には、鉛筆の削られた先端部に近似した形状をなすように、先端部61が細径となるように削られている。先端部61を除いた部分は軸の形状が後方まで同一断面形状としている(図4(A)図参照)。また、木軸60は、各々の分割片62,62が均等に二分割されるように、対向する頂点を繋ぐ対角線に沿って分割されている(図4(B)図参照)。中空部63と導電管22は、実施例2と同様に、木軸60の先方から後方まで延びている(図4(C)図参照)。
【0065】
金属軸体70は、正六角形をなす6つの外面のうち、3つの外面64に均等に分散されて配置されている(図4(C)図参照)。金属軸体70は、一方の端面71が、各々の木軸の外面64と同一面をなし、他方の端面72が導電管の内部空間23まで、導電管に貫通されている。木軸の周方向に配列された3つの金属軸体は、ペン軸と直交する一つの面において放射状に配列されている(図4(C)図参照)。金属軸体70は、木軸60の先端から後方にかけて、約20mmの間隔をあけて、8列配列されている(図4参照)。タッチペン3を把持する場合には、金属軸体70が挿嵌されている3つの外面64に指をかければ、軸方向のいずれの位置が把持されても、指がいずれかの金属軸体70の近傍に接する。これにより、把持される位置が限定されず、感度の高いタッチペンとされる。
【実施例0066】
実施例4においては、二分割させた木軸で、導電性薄膜体を挟んでなるタッチペン4を、図5を参照して説明する。図5(A)図は、タッチペン4の斜視図を示し、図5(B)図は、タッチペン4の各部品を組み立てる前の状態を示している。図5(C)図は、導電性薄膜体の両端部を研磨する前の状態を示している。
【0067】
導電性薄膜体80(図5(B)図参照)は、導電性に優れた銅、アルミニウム、金、銀等からなる金属箔であればよい。特に、金属箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性テープであれば二分割させた木軸の接合も容易となるため、より好適である。導電性薄膜体80は、金属箔に限定されず、紙にカーボン粉末、金属粉末が混練されてなる導電紙であってもよく、樹脂基材に導電性接着剤層を積層させた導電性テープであってもよい。
【0068】
タッチペン4においては、導電性薄膜体80として、銅箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性両面テープ、又は、紙にカーボン粉末が混錬されてなる導電性カーボン紙が使用された試作品を作成し、タッチパネルが作動されることを確認している。前記導電性両面テープの厚さは、約0.06mmであり、前記導電性カーボン紙の厚さは、約0.08mmにすぎず、木軸の外面には導電性薄膜体の両側端部81が僅かに筋状に現れるだけであり、木軸の美観を損ねることもない(図5(A)図参照)。
【0069】
木軸90は、万年筆型の木軸を先方から後方まで均等に二分割させている(図5(B)図参照)。中空部91と導電管24の長さは、ペン先部の装着部を格納できればよく、木軸の先方のみに備えられればよく、例えば、約30mmの長さとされればよい。導電管24は、ペン先部が脱落されにくいように、予め後方側25を挟み潰し、僅かに扁平に変形させている。
【0070】
タッチペン4の製造工程は、まず一方の分割片92の中空部をなす半円柱形状の窪み93に導電管を嵌合させる。次に、分割片92よりも大きい導電性薄膜体80を、木軸の分割面94と導電管24の周面とに馴染むように貼着させる(図5(B)図参照)。次に、他方の分割片95を導電性薄膜体80に貼着させ、二つの分割片92,95を接合させる(図5(C)図参照)。最後に、導電性テープの余剰部分82と木軸の外面96とを一体に仕上げ研磨し、タッチペン4が完成される(図5(A)図参照)。二分割させた木軸で導電性両面テープ等を挟み、分割片同士を接合させるだけであるため、製造が容易であり、量産に適している。
【0071】
また、試作品においては導電性薄膜体の両側端部81(図5(A)図参照)を触らないように指先で木軸90部分だけを摘んだ場合であっても、スマートフォンのタッチパネルが反応することが確認された。換言すれば、導電性薄膜体80を分割面94の全面に貼着させた場合には、導電性薄膜体の両側端部82に直接触れなくても、タッチパネルを操作することができる。これにより、木軸を把持する位置、把持する態様もいずれも限定されず、木軸の美観を活かしたタッチペンとすることができる。
【0072】
(その他)
・本実施例においては、万年筆型と鉛筆型の木軸を説明したが、木軸の形状はこれに限定されないことは勿論のことである。
・実施例4のタッチペン4において、接合させた二つの分割片が分離されにくいように、分割面に対して斜めに交差する方向に金属軸体を配設させてもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3,4…タッチペン、
10…木軸、20…導電管、30…金属軸体、40…ペン先部、
11…中空部、12,13…挿嵌孔、14…外面
21…突起、22…導電管、23…内部空間、24…導電管、25…後方側、
31…端面、32…隣り合う一対の金属軸体、33…周面、
34…余剰部分、35…交差する金属軸体、36…尖った端面、
41…軸部、42…先端部、43…膨出部、44…導電性ゴム軸体、
45…円盤体、46…突出された部分、47,48,49…ペン先部、
50…木軸、51…分割片、52…分割面、53…中空部、54…窪み、
60…木軸、61…先端部、62…分割片、63…中空部、64…外面、
70…金属軸体、71…一方の端面、72…他方の端面、
80…導電性薄膜体、81…両側端部、82…余剰部分、
90…木軸、91…中空部、92…分割片、93…窪み、94…分割面、
95…分割片、96…外面、
100…角材、101…後端部、102…境界部分
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、
軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、複数の金属軸体とからなり、
前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、
前記導電管は前記中空部に格納され、
前記ペン先部は前記導電管に装着され、
各々の前記金属軸体が、ペン軸と交差する面に放射状に、少なくとも前記導電管の内方空間まで前記導電管を貫通され、
前記木軸の外面に露出された各々の前記金属軸体の端面が、前記木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設されている、
ことを特徴とするタッチペン。
【請求項2】
前記木軸が先方から後方に向けて均等に二分割され、
各々の金属軸体が、前記木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチペン。
【請求項3】
前記交差する面が、ペン軸に垂直に交差する垂直面とされ、
前記金属軸体のうち隣り合う一対の金属軸体が、前記垂直面に沿って、且つ、隣接するように配列されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチペン。
【請求項4】
前記一対の金属軸体が、前記木軸の先方に、指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、少なくとも3列配列されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のタッチペン。
【請求項5】
前記金属軸体が、前記木軸の先方から後方にかけて、ペン軸の周方向に分散されて配列されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチペン。
【請求項6】
前記ペン先部が、複数備えられ、
各々の前記ペン先部は、夫々の装着部の形状が同一とされると共に先端形状が異なった形状とされて、選択可能な群をなし、
前記群の中から選択されたいずれかのペン先が前記木軸に装着される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のタッチペン。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5に記載のいずれかのタッチペンの製造方法において、
前記中空部に前記導電管を格納させる第1の工程と、
前記木軸と前記導電管を一体にした状態で、前記金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、
前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程に加えて、
前記木軸と前記金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とする仕上工程とを有する、
ことを特徴とするタッチペンの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンに関する。具体的には、ペン軸体を美観に優れた木軸としながらも、手で把持する位置を限定させないタッチペンに関する。より詳細には、ペン軸体を導電性が乏しい木質の生地とさせても、タッチパネルの反応が良好で清掃維持が容易なタッチペンに関する。また、ペン先が交換できると共にペン先が脱落しにくいタッチペンに関する。
【0002】
具体的には、木軸の中心軸に導電管を配し、複数の金属軸体をペン軸と交差する方向に放射状に、導電管を貫通させ、木軸の外面に露出された各々の金属軸体の端面が、木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設され、導電管の先端にタッチペンのペン先を交換可能に装着させるタッチペンに関する。また、前記木軸を均等に二分割させると共に、前記導電管に接するように分割面全体に導電性薄膜体を備えさせ、導電性薄膜体の両側端面が木軸の外面と同一面をなしているタッチペンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、木材を素材として、家具、日用品等が提供されている。木材のなかでもヒノキは、加工が容易であるだけでなく、緻密で狂いがなく、強い芳香を長期にわたって発し、建材として使用されるだけでなく、浴槽への入浴玉等としても使用されている。非特許文献1には、ヒノキ材の精油は100ppmから1000ppmの濃度で、カビ類、ブドウ球菌、大腸菌など細菌類に対して抗菌作用を発揮することが示されている。
【0004】
また、非特許文献2には、ヒノキだけでなく、スギも、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック素材に比較して、インフルエンザウイルスの不活化に著しい効果があるとの実験結果も示されている。かかる効果が、木材に認められることに加えて、人が触れる場所にスギやヒノキ等を素材とした日用品が提供され、その手触り、香りなどに馴染みがあるため、様々な樹種の木材を素材とした日用品が広く普及している。
【0005】
万年筆の軸体などにも、木肌の柄模様に特徴があるカエデ、紫檀、黒檀、ウォールナット、メープル等の様々の樹種の木質材が採用され、高級感のある万年筆が提供されている。近年ではタブレットの普及に伴い、筆記具として鉛筆、ボールペンに加えてタッチペンの需要も高まっている。例えば、銀行の窓口、現金自動預け払い機等においては、タッチパネルに数字が入力される、署名がされる等の用途に使用されることが求められている。
【0006】
従来、窓口に備えられているペンの軸体は、プラスチック素材が大部分であった。しかし、不特定多数の人が使ったペンの軸体は、汚れだけでなくウイルスも付着しているおそれがあり、感染症が拡がっている状況においては、自分専用のペンを持参する人も多くなっている。しかし、タッチパネルに入力する際には、鉛筆、ボールペンを使用することはできないため、自分の指でタッチするかタッチペンを使わざるを得なかった。
【0007】
そのためウイルスの不活化に効果があるともいわれ、衛生的で、高級感・香り・触感に優れた木質の軸体のタッチペンが求められていた。ところが、木質素材の導電性が乏しいために、木質の軸体にタッチペンのペン先を装着させただけでは、タッチパネルが殆ど反応せず、タッチペンとして安定して機能させることはできなかった。
【0008】
特許文献1には、指とタッチパッドの座標入力面との接触状態を変化させないで、精度良く座標情報を入力させることを課題とした入力パッド用入力ペンの技術が開示されている。この技術によれば、入力パッド用入力ペンは、使用者の手に把持されるペン本体と、ペン本体の先端部に導電性のペン先とを備えさせ、ペン本体の外周部で、通常手によって把持される部位近傍の所要位置に、導電性のペン先と電気的に導通する導電部位が形成され、他の部位が非導電体とされている。
【0009】
この技術によれば、ペン先と入力ペンを持つ手とが導電部位を介して電気的に導通され、入力パッドと使用者の手との間に生じる静電容量差を、ペン先の形状に応じて伝達させることができ、正確な座標情報の入力が可能となるとされている。具体例として、ペン軸体のペン先の近傍に、環状に導電部位を備えさせ、導電部位よりも後方のペン本体の非導電部位を把持する例が示されている。この例によれば、人差し指の先端を導電部位に接触させることにより、マウスのクリック等のボタン操作に代わる操作を簡単にすることができるとされている。
【0010】
しかし、この技術を、軸体を木製としたタッチペンに適用させ、ペン軸体のペン先近傍に、環状に導電部位を形成させると、非導電部位である軸体と導電部位との境界に、僅かな段差が発生しやすい。そうすると、同じ導電部位に常に指を触れさせて使用することに加えて、その僅かな段差に指を触れさせるために、汚れ等が付着しやすく、非常に不潔且つ不衛生になりやすかった。単に、タッチペン全体の外観を木質で統一し、高級感・香りに優れているという木質生地の利点が活かせないだけでなく、タッチペンがかえって不衛生になりやすいという課題があった。
【0011】
特許文献2には、タッチペンのペン先を有する入力体が軸筒に装着されたタッチペンの技術が開示されている。この技術は、入力体を木軸に装着させる際に入力体及び木軸双方が損傷されにくく、使用中に入力体が脱落することがないことを課題とした技術とされている。具体的には、入力ペンは、木軸と、棒状の入力体と、入力体を木軸に装着させる装着孔と、装着孔と入力体の隙間に固着させる固着剤とを有した物とされている。
【0012】
従来は、入力体が装着されている軸筒を木軸とした場合には、棒状の入力体を装着する際に圧力をかけると、入力体が破損しやすくなることがあったとされている。特に、入力体がアクティブ方式の入力ペンの場合には、入力体装着の際の圧力により、入力体に格納させた電子回路を損傷させず、且つ、木軸を損傷させないために、入力体を装着孔に遊嵌させるようにし、入力体と装着孔との間に固着剤を備えさせるとしている。
【0013】
しかし、この技術はアクティブ方式のタッチペンに適し、静電容量式のタッチペンとして使用する場合には、タッチする部分に導電性塗料を用いることが必要であるとされている。そのため木軸を把持して静電容量式のタッチペンとして使用する場合には、把持する部分に導電性塗料を塗装することが必要であり、木軸の木質の生地を全体に露出させて使用することができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10-171579号
【特許文献2】特開2020-95677号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「一般財団法人日本木材総合情報センターのHP」https://www.jawic.or.jp/health/kenkou2.php
【非特許文献2】「奈良県農林部奈良の木ブランド課(2016)「平成28年度『奈良の木で健康になる』実証事業」報告書」http://www.pref.nara.jp/secure/125932/04%20virusfukasseika.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の解決しようとする課題は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンであって、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であるタッチペンを提供することである。また、ペン先の交換が可能で且つ脱落しにくいタッチペンを提供することである。
【0017】
本発明の第1の発明は、静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、複数の金属軸体とからなり、前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、前記導電管は前記中空部に格納され、前記ペン先部は前記導電管に装着され、各々の前記金属軸体が、ペン軸と交差する面に放射状に、少なくとも前記導電管の内方空間まで前記導電管を貫通され、前記木軸の外面に露出された各々の前記金属軸体の端面が、前記木軸の外面と同一面をなすように分散されて配設されていることを特徴としている。
【0018】
先方から後方まで全体が木質とされている木軸は、無垢の木材に限定されず、集成材であってもよい。染色した集成材を重ねて、多色からなる木軸としてもよい。木軸の材質は、不特定多数の人が使用する場合には、殺菌性があるとされるヒノキ、スギ、竹等が好適であるが、使用者の専用とする場合には、高級な美観を呈する紫檀、黒檀等の材質から選択されてもよい。
【0019】
導電性を有する金属軸体が、分散して、木軸と交差する面に放射状に複数配設されると共に、木軸の外面に露出された各々の金属軸体の端面が、木軸の外面と同一面をなしている。これにより使用者がタッチペンを把持した際に、使用者が特定の部位を意識して把持しなくても、いずれかの金属軸体の近傍位置に触れることになり、ペン先がタッチしたタッチパネル部分の表面電荷に変化を生じさせる。金属軸体は、細軸であり木軸と一体で同一面をなすように研磨しやすく、抗菌性又は殺菌性を有するとされている銅、または銅合金である真鍮が好適であるが、これに限定されない。また、木軸外面に露出された金属軸体の端面が、木軸と同一面をなしているため汚れが溜まりにくく、手触りのよいタッチペンとすることができる。
【0020】
導電管の管径は限定されず、木軸の先方の中空部に格納される管径であればよい。導電管の材質は、木軸と共に穿孔可能な銅、アルミ、鉄等の金属材質、導電性ポリアセチレン等の導電性樹脂であればよい。また金属軸体は、導電体を分断しないように、導電体の外径よりも細径とされればよい。金属軸体は、導電管に食い込むように、少なくとも導電管の内部空間まで貫通されればよい。金属軸体が導電管を貫通しているため、導電管がぐらつくことがないため、中空部よりも導電管が僅かに細くてもよく、導電管を中空部に格納させやすい。金属軸体が、木軸と導電管とを横断貫通されていると、金属軸体の両端面が木軸の外面に露出されるため、指と金属軸体とが接しやすく、より好適である。
【0021】
また、木軸と導電管をドリルビットで孔を穿孔させる際に、ドリルビットが貫入した側の導電管の管内壁の孔の周囲が、僅かに突起が立った状態となり、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となる。これにより、導電管の管開口から最も近い金属軸体まで接するように、押し込んで装着させたペン先部の基部が挟持された状態となり脱落しにくい。一方、ペン先部を挟持して保持させているに過ぎないため、異なる形状のペン先部に交換しやすい。
【0022】
金属軸体を分散配設させる位置は、鉛筆書きの使用態様に応じるようにペン軸の先方に分散配設させてもよく、毛筆書きの使用態様に応じるようにペン軸の中央から後方に分散配設させてもよい。ペン軸の中央から後方に分散配設させた場合には、ペンを把持した手のいずれの位置もタッチパネルに接しにくいため、ペン先部以外に人が触れることによる誤作動を発生させない。金属軸体と木軸とが同一面をなしているため、常時把持される木軸部分が汚れた場合であっても、金属軸体と木軸との表面を、同時に清掃・研磨することができる。
【0023】
本発明の第1の発明によれば、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であると共に、ペン先が交換可能で且つ脱落しにくいタッチペンとすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0024】
本発明の第2の発明は、第1の発明のタッチペンにおいて、前記木軸が先方から後方に向けて均等に二分割され、各々の金属軸体が、前記木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されていることを特徴としている。
【0025】
第2の発明によれば、木軸が軸方向に二分割されているため、分割面に沿って中空部を切削加工することができ、木軸の先方から後方まで延びる中空部を製造することが容易である。また分割面を重ね合わせて、中空部に導電管を格納した状態で、重ね合わせた分割面に対して、斜めに交差する方向に金属軸体が貫通しているため、分割片が分離しにくいという効果を奏する。
【0026】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明のタッチペンにおいて、前記交差する面が、ペン軸に垂直に交差する垂直面とされ、前記金属軸体のうち隣り合う一対の金属軸体が、前記垂直面に沿って、且つ、隣接するように配列されていることを特徴としている。
【0027】
第3の発明では、隣り合う一対の金属軸体が、ペン軸方向に垂直に隣接して配設されている。隣接してとは、隣り合う一対の金属軸体が接していると好適であるが限定されず、導電管が先方から後方まで繋がった状態で近い距離で配列されればよい。ペン軸方向に垂直に隣接して配設されているため、ペン先端から所望の位置に周囲に均等に4か所の金属軸体の端面が露出される。これにより、金属軸体の端面が露出された近傍に指を添えて把持すれば、導電状態となるという効果を奏する。
【0028】
本発明の第4の発明は、第3の発明のタッチペンにおいて、前記一対の金属軸体が、前記木軸の先方に、指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、少なくとも3列配列されていることを特徴としている。
【0029】
第4の発明では、木軸の先方に、把持する人の指先から第1関節までの長さより短い距離をあけて、3列以上の金属軸体が配列されているため、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態で、ペン先の位置から、やや後方まで把持する位置までの、どの位置を把持しても、導電状態となるという効果を奏する。
【0030】
本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明のタッチペンにおいて、前記金属軸体が、前記木軸の先方から後方にかけて、ペン軸の周方向に分散されて配列されていることを特徴としている。第5の発明では、金属軸体が、木軸の全体に、ペン軸の周方向に分散されて配列されているため、鉛筆書きの使用態様でタッチペンの先方を保持した状態だけでなく、毛筆書きの使用態様でタッチペンの後方を保持した状態でも、導電状態となるという効果を奏する。
【0031】
本発明の第6の発明は、第1から第5の発明のタッチペンにおいて、前記ペン先部が、複数備えられ、各々の前記ペン先部は、夫々の装着部の形状が同一とされると共に先端形状が異なった形状とされて、選択可能な群をなし、前記群の中から選択されたいずれかのペン先が前記木軸に装着されることを特徴としている。
【0032】
ペン先の形状には、導電性樹脂からなる円板形状、球形状、導電繊維を束ねた筆形状等、そのタッチパネルに導電させる目的に応じて様々な形状がある。例えば現金自動預け払い機で数字を入力するだけならば円板形状が良く、線の太さを様々に変えてタッチパネルにイラストを描くならば、細線に対応して球形状、太線に対応して筆形状がよい。第6の発明によれば、タッチパネルにタッチする目的に応じて、ペン先を変更できるだけでなく、容易にペン先を変更可能であると共に確実にペン先が保持されるという効果を奏する。
【0033】
本発明の第7の発明は、第1から第5のタッチペンの製造方法において、前記中空部に前記導電管を格納させる第1の工程と、前記木軸と前記導電管を一体にした状態で、前記金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程に加えて、前記木軸と前記金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とする仕上工程とを有することを特徴としている。
【0034】
タッチペンの製造方法においては、木軸の先方にくりぬくように中空部を形成してもよく、先方に半円柱状の窪みを有する分割片を重ね合わせて木軸の先方に中空部を形成してもよい。第8の発明のタッチペンの製造方法においては、木軸に形成された中空部に導電管を格納させる工程を第1の工程としている。第1の工程の後に、木軸と導電管を一体にした状態で、金属軸体を挿嵌させる孔を穿孔させる第2の工程と、前記孔に金属軸体を挿嵌させる第3の工程を有し、仕上げ工程として木軸と金属軸体の外面を同時に研磨して、滑らかな外面とさせている。なお、金属軸体を挿嵌させる孔は、導電管の内部空間まで穿孔させれば足りるが、木軸と導電管を横断するように孔を穿孔させてもよい。これにより、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンでありながら、全体を美観に優れた木質生地の木軸とすることができると共に、清掃維持が容易なタッチペンを製造することができる。
【0035】
また、本発明は、静電容量方式タッチパネルに使用するタッチペンにおいて、軸方向の先方に中空部を有する木軸と、導電管と、ペン先部と、導電性薄膜体とからなり、前記木軸が、先方から後方までの全体が木質からなり、先方から後方に向けて均等に二分割され、前記導電管は前記中空部に格納され、前記ペン先部は前記導電管に装着され、前記導電性薄膜体が、前記木軸を二分割させた面に沿って先方から後方に向けて伸びると共に、前記導電管に接して前記木軸と一体とされ、前記導電性薄膜体の両側端面が、前記木軸の外面と同一面とされるようにしてもよい。
【0036】
この発明によれば、導電性薄膜体が木軸を二分割させた面に沿って、先方から後方に向けて伸びている。導電性薄膜体とは、銅、アルミニウム等からなる金属箔に限定されず、金属箔と導電性接着剤層とが積層された導電性テープであってもよい。ほかにも、紙に導電性の粉末が混練されてなる導電紙であってもよく、樹脂基材に導電性接着剤層を積層させた導電性テープであってもよい。
【0037】
導電性薄膜体は被着体に沿って変形させやすいため、導電管の周面にも木軸の分割面にも馴染ませやすく、二分割させた木軸で導電性薄膜体を挟んで接合させるだけで木軸に良好な導電性を付与できるため、タッチペンの製造が容易となる。導電性薄膜体の両側端面を、研磨処理により木軸の外面と同一面とすることも容易である。
【0038】
また、導電性薄膜体に触れないようにタッチペンの木軸部分だけを指先で摘んだ場合であっても、タッチペンが良好に反応されることが確認された。これは、導電性薄膜体が木軸の分割面全体に添設されているため、導電性薄膜体と指先とが近接されていること、導電性薄膜体が導電管の周面を覆うように接触しているため、導電性薄膜体と導電管との接触抵抗が少なく、電荷を伝達させやすいこと、等の複数の要因が重なった結果と推察される。これにより、タッチペンを把持する位置だけでなく、把持の態様も限定されないタッチペンを容易に製造することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【発明の効果】
【0039】
・本発明の第1の発明のタッチペンによれば、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させず、清掃維持が容易であると共に、ペン先が交換可能で且つ脱落しにくいタッチペンとすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明のタッチペンによれば、製造が容易であると共に、分割片が分離しにくいという効果を奏する。
・本発明の第3の発明のタッチペンによれば、金属軸体の端面が露出された近傍に指を添えて把持すれば、導電状態となるという効果を奏する。
・本発明の第4の発明のタッチペンによれば、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態で、ペン先の位置から、やや後方まで把持する位置までの、どの位置を把持しても、導電状態となるという効果を奏する。
【0040】
・本発明の第5の発明のタッチペンによれば、鉛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態だけでなく、毛筆書きの使用態様でタッチペンを保持した状態でも、導電状態となるという効果を奏する。
・本発明の第6の発明のタッチペンによれば、タッチパネルにタッチする目的に応じて、ペン先を変更できるだけでなく、容易にペン先を変更可能であると共に確実にペン先が保持されるという効果を奏する。
・本発明の第7の発明のタッチペンの製造方法によれば、静電容量方式のタッチパネルに使用されるタッチペンでありながら、全体を美観に優れた木質生地の木軸とすることができると共に、清掃維持が容易なタッチペンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】金属軸体が備えられた万年筆型のタッチペンの斜視図(実施例1)。
図2】万年筆型のタッチペンの製造工程の説明図(実施例1)。
図3】金属軸体を二分割させた面に斜めに貫通させたタッチペン説明図(実施例2)。
図4】木軸を二分割させた鉛筆型のタッチペンの斜視図(実施例3)。
図5】導電性薄膜体が備えられたタッチペンの斜視図(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
木軸の中空部に導電管を格納させると共に、複数の金属軸体を、木軸と交差する方向に、放射状に、導電管に突き刺し、各々の金属軸体の少なくとも一方の端面が木軸の外面と同一面をなすように分散させて配設させた。または、木軸を均等に二分割させると共に、前記導電管に接するように分割面全体に導電性薄膜体を備えさせ、導電性薄膜体の両側端面が木軸の外面と同一面をなすようにした。これにより、ペン軸体の全体を美観に優れた木質生地の木軸としながらも、タッチパネルの反応が良好で、手で把持する位置を限定させない。また、木軸が凹凸のない滑らかな外面をなし、清掃維持も容易である。
【実施例0043】
実施例1においては、木軸が円断面形状をなす万年筆型のタッチペン1を、図1図2を参照して説明する。図1はタッチペンと、タッチペンに装着させるペン先部の群の斜視図を示している。図1(A)図は、タッチペンの斜視図を示し、図1(B)図はタッチペンの内部構造とペン先部の一例を示す斜視図を示している。図1(B)図においては、理解を容易にするため、木軸を破線とし、導電管と金属軸体とを実線で示している。図1(C)図から図1(E)図には、導電管に装着されるペン先部を選択可能な群の例を示している。図2は、タッチペンの製造工程を図1(B)図のA-A位置における断面図により示している。
【0044】
万年筆型のタッチペン1は、軸方向の先方から中央部にかけて中空部を有する木軸10と、導電管20と、複数の金属軸体30と、交換可能なペン先部40とからなっている(図1参照)。木軸10は、先方から後方までの全体が円断面形状の木質素材からなる。より詳細には、木軸の先方側から中央部にかけての約3分の1の長さが、後方に向けて緩やかに膨らんで太径とされ、太径の中央部から後方に向けて緩やかに窄まって後方側が細径とされた万年筆形状をなしている。中空部11(図1(B)図参照)は、3列の金属軸体30,30,30が指先から第1関節までの約20mmの間隔をあけて軸方向に配列されるように、木軸の先端から約60mmよりも深い位置まで穿設されている。
【0045】
導電管20を格納させた木軸10は、木軸10と導電管20を横断する金属軸体の挿嵌孔12,13が穿設されている(図2(B)図参照)。金属軸体30の挿嵌孔は、周方向に配列される挿嵌孔12,13が隣接して直交されるように穿設される(図1(B)図,図2(E)図参照)と共に、隣接された挿嵌孔12,13がそれぞれ、木軸の先端から約20mmをあけて木軸の軸方向に3列、配列されている。木軸10は、無垢材に限定されず、集成材であってもよい。木軸は、例えば抗菌性があると共に、肌触りがよく加工しやすいヒノキ、スギが好適である。ほかにも抗菌作用・抗真菌作用を有すると共に、成長が早く環境負荷の小さい竹であってもよい。また、高級な美観を呈するカエデ、紫檀、黒檀、オークウッド、メープル、ウォールナット、チーク、マホガニー等であってもよい。
【0046】
導電管20は木軸10と共に、金属軸体30を挿し込むための穿孔加工ができればよく、材質は限定されない。例えば、金属管であれば銅、銅合金としての真鍮、銀、鉄であればよいが、導電性の高さと穿孔加工の容易さから銅、真鍮が好適である。導電管は、導電性樹脂管であってもよく、例えば、導電性ポリアセチレン、ポエリエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)に、金属粒子、カーボンナノチューブ等の導電性フィラーを添加させてなる導電性樹脂が好適である。導電管の外径は、木軸の中空部に格納可能であればよいが、中空部の内面と摺り合ってがたつきがない大きさとされるとより好適である。導電管20の内径は、ペン先部40の装着部をなす軸部41が脱落されない大きさとされる。
【0047】
金属軸体30の材質は限定されないが、木軸の外面14に露出されている金属軸体の端面31を、木軸の外面と同一面をなすように研磨加工しやすいように、柔らかい金属とするとよい(図1(A)図,図2(F)図参照)。例えば、銅、銅と亜鉛の合金である真鍮、金であれば、導電性に優れると共に、端面を容易に滑らかな面に研磨させやすい。特に、金属軸体を銅、真鍮とすると、銅にウイルスの失活効果があることから、人の指が触れる機会が多い金属軸体部分を衛生的に維持させることができ、好適である。
【0048】
木軸に挿嵌される金属軸体30は、隣り合う一対の金属軸体32が、木軸10の軸方向に垂直に隣接して配設されている(図1(B)図参照)。各々の金属軸体30は、木軸10と導電管20とを横断するように貫通されているため、タッチペン1の先端から所望の位置において、木軸の周方向に均等に4つの金属軸体の端面31が露出される(図1(A)図参照)。ここでは、隣り合う一対の金属軸体32の周面33が木軸の内部で接するように、金属軸体の直径と略同じ距離をずらして隣接配置させている(図2(F)図参照)。隣り合う一対の金属軸体32が接し合っているため、金属軸体30と導電管20とを確実に導通させることができ、タッチパネルに検知されやすいタッチペンとすることができる。
【0049】
なお、隣り合う一対の金属軸体は、金属軸体の直径よりも僅かに短い距離をずらして隣接配置させてもよい。この場合には、軸方向に配列される3つの挿嵌孔12,12,12を穿孔させ、金属軸体を木軸に挿嵌させてから、前記3つの挿嵌孔と隣接して交差する挿嵌孔13,13,13を、軸方向に3列をなすように穿孔加工させればよい(図1(B)図参照)。そうすると、先に挿嵌された金属軸体が、交差する挿嵌孔と重なっている部分については、木軸と導電管と共に切除されるため、交差する挿嵌孔に金属軸体を挿嵌させるときに、先に挿嵌された金属軸体に引っ掛かることがない。そのため、交差する挿嵌孔の穿孔位置を厳密に調整させなくても、隣り合う一対の金属軸体が接し合うように配置させることができる。
【0050】
また金属軸体は、木軸の軸方向に3列に並んで配置されている。隣り合う列同士の間隔は、指先から第1関節までの約20mmの間隔があけられている。具体的には、木軸の先端から約20mmの位置、約40mmの位置、約60mmの位置に配置されている。そのため、鉛筆書きのようにタッチペンの先方が把持された場合だけでなく、タッチパネルに手が触れないようにタッチペンの中央部が把持された場合であっても、タッチパネルを操作することができる。
【0051】
ペン先部40は、先端部42の形状が異なるペン先部の群から用途に合わせて交換可能とされている(図1(B)図から図1(E)図参照)。いずれのペン先部も、装着部が導電管に押し込まれて装着される円断面形状の軸部41であり、同一の外形形状をなしている。軸部41と先端部42との間には、導電管20の内径よりも太い径の膨出部43が備えられ、ペン先部40が導電管の適切な深さまで挿し込まれると、膨出部43の後方端面が導電管の先端部に引っ掛かる。ペン先が交換されるときには、膨出部43を摘んで引き抜けば、先端部42を損傷させることなくペン先部を交換させることができる。
【0052】
ペン先部の先端部42の形状は限定されず、市場に流通されている周知のペン先部であればよい。例えば、金属管からなる軸部41に導電性ゴム軸体44を挿通させ、導電性ゴム軸体の先端に円盤体45を備えさせたペン先部40であればよい(図1(B)図参照)。この場合には、導電性ゴム軸体44の金属管の先端から突出された部分46が自由に側方に変形可能であるため、円盤部をタッチパネルに当接させやすい。そのため、タッチパネルに署名がされる場合だけでなく、スマートフォン・タブレットのタッチ操作にも適している。
【0053】
ほかにも、先端部42の形状を導電性の毛束とし、絵画用の筆に近似させたペン先部47としてもよい(図1(C)図参照)。先端部42の形状を、先端が尖った鉛筆形状としたペン先部48としてもよい(図1(D)図参照)。先端部の形状42を、導電性繊維が半球形状に編まれたものとし、スマートフォン等のタッチ操作に適したペン先部49としてもよい(図1(E)図参照)。ペン先部の形状は、以上に限定されないことは勿論のことである。
【0054】
次に、タッチペンの製造方法について、図2を参照して説明する。図2(A)図は、角材100の中心位置に中空部11を穴開け加工する工程を示している。図2(B)図は、木軸10の中空部11に導電管20を格納させる第1の工程と、木軸10を万年筆形状に切削させる工程とを示している。図2(C)図は、木軸10と導電管20を一体にした状態で、金属軸体の挿嵌孔12を穿孔させる第2の工程を示している。図2(D)図と図2(E)図は、挿嵌孔12に金属軸体30を挿嵌させる第3の工程を示している。図2(F)図は、木軸10と金属軸体30の外面を同時に研磨して滑らかな外面とする仕上げ工程を示している。
【0055】
まず、木軸10をなす断面が正方形形状とされる角材100の後端部101を回転治具により保持させ、角材100を先端面の中心回りに回転させる。角材100の先端面にドリルビットを突き当て、角材の中心位置に穴開け加工をし、導電管20を格納させる中空部11を形成させる(図2(A)図参照)。次に、導電管20を中空部11に押し込んで格納させる(図2(B)図参照)。導電管20の先端は、後の工程で、木軸10との先端の位置を一致させるように研磨させるため、この段階においては木軸の先端から僅かに突出される状態となっている。併せて、前記角材を回転させながら周面に切削刃を押し当て、角材を大まかに万年筆型の木軸形状に旋削加工させる。この段階においては角材の後端部101だけは切削せずに、角材の形状のまま残しておく。
【0056】
第2の工程においては、V字溝を有する固定具(図示を省略している)に、正方形形状をなす前記後端部101の角部を嵌合させ、木軸10が周方向に回転しない状態に保持させる。この状態で、木軸10と導電管20とを横断貫通させるようにドリルビットを側方から押し当て、金属軸体を挿嵌させる挿嵌孔12を穿孔させる。この挿嵌孔12は、先端から約20mm間隔をあけて3列となるように穿孔される(図2(C)図参照)。この時に、ドリルビットが貫入した側の導電管20の管内壁において、挿嵌孔12の周囲が、僅かに突起21が立った状態となり、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となる。
【0057】
第3の工程においては、軸方向に並んだ3列の挿嵌孔12,12,12に、3本の金属軸体30,30,30を挿嵌させ、木軸の外面から突出された余剰部分34をニッパー等により切除させる(図2(D)図参照)。次に、木軸を周方向に90度回転させて、前記と同様に、固定具に木軸10を保持させる。そして、先に穿孔された各々の挿嵌孔12,12,12と隣接されるように、金属軸体30の直径と略同じ距離だけ、木軸の軸方向にずらした位置に、交差される挿嵌孔13,13,13を穿孔させる(図2(E)図参照)。前記と同様に、先に挿嵌させた金属軸体30に交差する金属軸体35を挿嵌孔13に挿嵌させ、木軸10の外面から突出された余剰部分を切除させる。この段階においては、木軸の外面14から金属軸体の尖った端面36が僅かに突出された状態となっている。
【0058】
次に、仕上げ工程として、未切削のままの前記後端部101を、回転治具に保持させ、木軸10を回転させながら金属やすりを前記尖った端面36に接触させるようにして、金属軸体30と木軸10とを一体に研磨させる(図2(F)図参照)。金属軸体の端面31と木軸の外面14とが略同一面となったら、紙やすりを木軸10の周面に巻き付けるようにして、金属軸体の端面31と木軸の外面14とが、滑らかな同一面をなすように研磨させる。そして、未切削のままの後端部101と木軸10との境界部分102(図2(E)図参照)に切削刃を押し当てて木軸10を切り離す。
【0059】
導電管20の先端面を木軸10の先端面に揃えるように、導電管の突出部分をディスクサンダーにより削り、導電管に所望のペン先部40を装着させ、タッチペン1が完成される(図2(F)図参照)。第2の工程で説明したように、導電管20の管内壁において挿嵌孔の周囲が、僅かに突起21が立った状態となると共に、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となっている(図2(C)図参照)。そのため、ペン先部40(図2(F)図参照)の軸部41を導電管に押し込むと、前記軸部41の外周面と導電管20の歪んだ管内壁とが摺り合って挟持され、ペン先部40が脱落されにくい状態で、木軸10に装着される。
【実施例0060】
実施例2においては、金属軸体が、木軸を二分割させた面に対して、斜めに交差する方向に貫通されている万年筆型のタッチペン2について、図3を参照して説明する。図3(A)図はタッチペン2の斜視図を示している。図3(B)図は、タッチペンの各部品を組み立てる前の状態を示している。図3(C)図は、図3(A)図のA-A位置における断面図を示している。
【0061】
木軸50は、外形が万年筆型に整形され、先方から後方に向けて、軸方向に均等に二分割されている(図3(B)図参照)。木軸50が二分割されてなる各々の分割片51,51には、分割面52に導電管22を格納させる中空部53(図3(C)図参照)をなす半円柱形状の窪み54(図3(B)図参照)が形成されている。前記窪み54は、各々の分割片51の先方から後方まで長く延びている。中空部53は実施例1と同様にドリルビットにより穿孔してもよいが、木軸を二分割させてから切削させると細径の木軸であっても亀裂が入りにくく製造が容易となるため好適である。二分割された木軸50は、分割面52に接着剤が塗布されて重ね合わされ、分割片51,51同士が接合される(図3(C)図参照)。
【0062】
導電管22は、中空部53と同様に木軸の先方から後方まで長く延びている点以外は実施例1と同一としている。金属軸体30は、木軸を二分割させた分割面52に対して、斜めに交差する方向に、木軸50と導電管22とを横断して貫通されている(図3(C)図参照)。また、金属軸体30は交互に、直交する斜め二方向から木軸50を貫通されるように、軸方向に、約15mmの間隔をあけて分散されて、木軸の先方から後方まで9か所に配置されている(図3(A)図参照)。これにより、鉛筆書きの把持態様のように、タッチペン先方が把持される場合だけでなく、毛筆書きの把持態様のように後方が把持された場合であっても、タッチパネルをタッチ操作することができ、把持位置が限定されないタッチペン2とすることができる。
【実施例0063】
実施例3においては、鉛筆型のタッチペン3について、図4を参照して説明する。図4(A)図は鉛筆型のタッチペン3の斜視図を示している。図4(B)図は、タッチペンの各部品を組み立てる前の状態を示している。図4(C)図は、図4(A)図のA-A位置における断面図を示している。
【0064】
木軸60は、断面が正六角形状の鉛筆型をなしている。より詳細には、鉛筆の削られた先端部に近似した形状をなすように、先端部61が細径となるように削られている。先端部61を除いた部分は軸の形状が後方まで同一断面形状としている(図4(A)図参照)。また、木軸60は、各々の分割片62,62が均等に二分割されるように、対向する頂点を繋ぐ対角線に沿って分割されている(図4(B)図参照)。中空部63と導電管22は、実施例2と同様に、木軸60の先方から後方まで延びている(図4(C)図参照)。
【0065】
金属軸体70は、正六角形をなす6つの外面のうち、3つの外面64に均等に分散されて配置されている(図4(C)図参照)。金属軸体70は、一方の端面71が、各々の木軸の外面64と同一面をなし、他方の端面72が導電管の内部空間23まで、導電管に貫通されている。木軸の周方向に配列された3つの金属軸体は、ペン軸と直交する一つの面において放射状に配列されている(図4(C)図参照)。金属軸体70は、木軸60の先端から後方にかけて、約20mmの間隔をあけて、8列配列されている(図4参照)。タッチペン3を把持する場合には、金属軸体70が挿嵌されている3つの外面64に指をかければ、軸方向のいずれの位置が把持されても、指がいずれかの金属軸体70の近傍に接する。これにより、把持される位置が限定されず、感度の高いタッチペンとされる。
【実施例0066】
実施例4においては、二分割させた木軸で、導電性薄膜体を挟んでなるタッチペン4を、図5を参照して説明する。図5(A)図は、タッチペン4の斜視図を示し、図5(B)図は、タッチペン4の各部品を組み立てる前の状態を示している。図5(C)図は、導電性薄膜体の両端部を研磨する前の状態を示している。
【0067】
導電性薄膜体80(図5(B)図参照)は、導電性に優れた銅、アルミニウム、金、銀等からなる金属箔であればよい。特に、金属箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性テープであれば二分割させた木軸の接合も容易となるため、より好適である。導電性薄膜体80は、金属箔に限定されず、紙にカーボン粉末、金属粉末が混練されてなる導電紙であってもよく、樹脂基材に導電性接着剤層を積層させた導電性テープであってもよい。
【0068】
タッチペン4においては、導電性薄膜体80として、銅箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性両面テープ、又は、紙にカーボン粉末が混錬されてなる導電性カーボン紙が使用された試作品を作成し、タッチパネルが作動されることを確認している。前記導電性両面テープの厚さは、約0.06mmであり、前記導電性カーボン紙の厚さは、約0.08mmにすぎず、木軸の外面には導電性薄膜体の両側端部81が僅かに筋状に現れるだけであり、木軸の美観を損ねることもない(図5(A)図参照)。
【0069】
木軸90は、万年筆型の木軸を先方から後方まで均等に二分割させている(図5(B)図参照)。中空部91と導電管24の長さは、ペン先部の装着部を格納できればよく、木軸の先方のみに備えられればよく、例えば、約30mmの長さとされればよい。導電管24は、ペン先部が脱落されにくいように、予め後方側25を挟み潰し、僅かに扁平に変形させている。
【0070】
タッチペン4の製造工程は、まず一方の分割片92の中空部をなす半円柱形状の窪み93に導電管を嵌合させる。次に、分割片92よりも大きい導電性薄膜体80を、木軸の分割面94と導電管24の周面とに馴染むように貼着させる(図5(B)図参照)。次に、他方の分割片95を導電性薄膜体80に貼着させ、二つの分割片92,95を接合させる(図5(C)図参照)。最後に、導電性テープの余剰部分82と木軸の外面96とを一体に仕上げ研磨し、タッチペン4が完成される(図5(A)図参照)。二分割させた木軸で導電性両面テープ等を挟み、分割片同士を接合させるだけであるため、製造が容易であり、量産に適している。
【0071】
また、試作品においては導電性薄膜体の両側端部81(図5(A)図参照)を触らないように指先で木軸90部分だけを摘んだ場合であっても、スマートフォンのタッチパネルが反応することが確認された。換言すれば、導電性薄膜体80を分割面94の全面に貼着させた場合には、導電性薄膜体の両側端部82に直接触れなくても、タッチパネルを操作することができる。これにより、木軸を把持する位置、把持する態様もいずれも限定されず、木軸の美観を活かしたタッチペンとすることができる。
【0072】
(その他)
・本実施例においては、万年筆型と鉛筆型の木軸を説明したが、木軸の形状はこれに限定されないことは勿論のことである。
・実施例4のタッチペン4において、接合させた二つの分割片が分離されにくいように、分割面に対して斜めに交差する方向に金属軸体を配設させてもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3,4…タッチペン、
10…木軸、20…導電管、30…金属軸体、40…ペン先部、
11…中空部、12,13…挿嵌孔、14…外面
21…突起、22…導電管、23…内部空間、24…導電管、25…後方側、
31…端面、32…隣り合う一対の金属軸体、33…周面、
34…余剰部分、35…交差する金属軸体、36…尖った端面、
41…軸部、42…先端部、43…膨出部、44…導電性ゴム軸体、
45…円盤体、46…突出された部分、47,48,49…ペン先部、
50…木軸、51…分割片、52…分割面、53…中空部、54…窪み、
60…木軸、61…先端部、62…分割片、63…中空部、64…外面、
70…金属軸体、71…一方の端面、72…他方の端面、
80…導電性薄膜体、81…両側端部、82…余剰部分、
90…木軸、91…中空部、92…分割片、93…窪み、94…分割面、
95…分割片、96…外面、
100…角材、101…後端部、102…境界部分