(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120289
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220810BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220810BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017094
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 成宏
(72)【発明者】
【氏名】神野 大介
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】永野 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】花光 悟
(72)【発明者】
【氏名】植田 尚良
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH06
(57)【要約】
【課題】新たな構造により反発性能を高めうるゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】ヘッド4は、開口b10を有するボディ部材b1と、打撃フェース10aを有し且つ開口b10を塞いでいるフェース部材f1とを備えている。フェース部材f1が、打撃フェース10aを構成するフェース部10と、フェース部10の周縁からバック側に向かって延びる周縁部32と、を有している。周縁部32において、フェース部材f1がボディ部材b1に溶接されている。周縁部32とボディ部材b1との境界位置に、ヘッド4の内面で盛り上がる溶接ビードwbが形成されている。溶接ビードwbのフェース側の端点における肉厚t11が、溶接ビードwbのボディ側の端点における肉厚t21よりも大きい。周縁部32の長さL1は、6mm以下である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド外面及びヘッド内面を有する中空のゴルフクラブヘッドであって、
開口を有するボディ部材と、
打撃フェースを有し、前記開口を塞いでいるフェース部材と、
を備えており、
前記フェース部材が、前記打撃フェースを構成するフェース部と、前記フェース部の外縁からバック側に向かって延びる周縁部と、を有しており、
前記フェース部材の前記周縁部が前記ボディ部材に溶接されており、
前記周縁部と前記ボディ部材との境界位置に、前記ヘッド内面で盛り上がる溶接ビードが形成されており、
前記溶接ビードのフェース側の端点における肉厚が、前記溶接ビードのボディ側の端点における肉厚よりも大きく、
前記周縁部の長さが6mm以下である、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記周縁部が、前記フェース部よりもバック側に突出する後方延在部を有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記フェース部の外縁から前記溶接ビードまでの間がフェース側溶接近傍部とされ、
前記溶接ビードの中心点からボディ側に6mm隔てた地点から前記溶接ビードまでの間がボディ側溶接近傍部とされるとき、
前記フェース側溶接近傍部の肉厚が、前記フェース部から離れるにつれて薄くなっており、
前記ボディ側溶接近傍部の肉厚が、前記フェース部から離れるにつれて薄くなっている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース側溶接近傍部の内面の曲率半径が、7mm以上であり、
前記フェース側溶接近傍部の外面の曲率半径が、7mm以上である請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記周縁部の長さが、前記フェース部の最小厚みよりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記周縁部が、前記フェース部材のソール側に形成されたソール側周縁部である請求項1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
フェース部材とヘッド本体とが溶接されたゴルフクラブヘッドが知られている。また、フェース部材がカップフェース構造を有するゴルフクラブヘッドが知られている。特開2020-191938号公報は、周縁部を有するフェース部材とヘッド本体とが溶接で接合されたゴルフクラブヘッドを開示する。このヘッドでは、前記周縁部が、前記ヘッド本体の開口の端面と接合される厚肉部と、前記厚肉部と前記フェース部とを連結する連結部とを有している。前記連結部は、前記厚肉部よりも薄い薄肉部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高い反発性能を有するヘッドが望まれている。本発明者は、フェース部材とボディ部材とが接合されたヘッドにおいて、反発性能を高めうる新たな構造を見出すに至った。従来構造において屈曲しやすい部分の剛性を高め、屈曲の位置をシフトさせることで、反発性能が向上しうることが判明した。本開示の目的の一つは、新たな構造により反発性能を高めることができるゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、ヘッド外面及びヘッド内面を有し、中空である。このヘッドは、開口を有するボディ部材と、打撃フェースを有し、前記開口を塞いでいるフェース部材と、を備えている。前記フェース部材が、前記打撃フェースを構成するフェース部と、前記フェース部の外縁からバック側に向かって延びる周縁部と、を有している。前記フェース部材の前記周縁部が前記ボディ部材に溶接されている。前記周縁部と前記ボディ部材との境界位置に、前記ヘッド内面で盛り上がる溶接ビードが形成されている。前記溶接ビードのフェース側の端点における肉厚が、前記溶接ビードのボディ側の端点における肉厚よりも大きい。前記周縁部の長さが6mm以下である。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面では、新たな構造により反発性能を高めうるゴルフクラブヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態のヘッドを備えたゴルフクラブを示す。
【
図2】
図2(a)は第1実施形態のヘッドをフェース側から見た正面図であり、
図2(b)は
図2(a)のE1線に沿った断面である。
図2(b)では、ヘッド外面の断面線のみが示されている。
【
図3】
図3は、第1実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のヘッドをソール側から見た底面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のヘッドの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本開示が詳細に説明される。
【0009】
本願では、基準状態、基準垂直面、トウ-ヒール方向、フェース-バック方向、上下方向、フェースセンター、縦断面及び曲率半径が定義される。
【0010】
所定のライ角で接地平面HP上にヘッドが載置された状態が、基準状態とされる。
図10が示すように、この基準状態では、接地平面HPに対して垂直な平面VPに、シャフト軸線Zが含まれている。シャフト軸線Zは、シャフトの中心線である。シャフト軸線Zは、ホーゼル孔の中心線である。前記平面VPが、基準垂直面とされる。所定のライ角は、例えば製品カタログに掲載されている。
【0011】
この基準状態では、フェース角が0度とされる。すなわち、上側から見た平面視において、打撃フェースのフェースセンターにおける接線がトウ-ヒール方向に平行とされる。フェースセンター及びトウ-ヒール方向の定義は、後述の通りである。
【0012】
本願においてトウ-ヒール方向とは、前記基準垂直面VPと前記接地平面HPとの交線NLの方向である(
図10参照)。トウ-ヒール方向におけるトウ側が、単に「トウ側」とも称される。トウ-ヒール方向におけるヒール側が、単に「ヒール側」とも称される。
【0013】
本願においてフェース-バック方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記接地平面HPに対して平行な方向である。フェース-バック方向におけるフェース側が、単に「フェース側」とも称される。フェース-バック方向におけるバック側が、単に「バック側」とも称される。
【0014】
本願において上下方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース-バック方向に対して垂直な方向である。換言すれば、本願において上下方向とは、前記接地平面HPに対して垂直な方向である。
【0015】
本願において、フェースセンターは次のように決定される。まず、上下方向およびトウ-ヒール方向において、打撃フェースの概ね中央付近の任意の点Prが選択される。次に、この点Prを通り、当該点Prにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Paが決定される。次に、この中点Paを通り、当該点Paにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが決定される。次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。この工程を繰り返して、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に0.5mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェースセンターである。
【0016】
本願において縦断面とは、トウ-ヒール方向に対して垂直な平面による断面である。縦断面は、フェース-バック方向に対して平行である。縦断面は、接地平面HPに対して垂直である。縦断面における断面線が、縦断面線とも称される。縦断面は、トウ-ヒール方向の各位置で設定されうる。
【0017】
曲面の曲率半径は、縦断面において測定される。すなわち、曲面の曲率半径は、縦断面線において測定される。縦断面は、トウ-ヒール方向の各位置に存在する。これら縦断面のそれぞれで、曲率半径が測定される。
【0018】
この曲率半径は、縦断面線上の各点において決定される。この曲率半径の決定では、測定点と、その点の両側にそれぞれ0.5mm隔てた点との、3点が特定される。この3点を通る円の半径が、その測定点の曲率半径と定義される。この0.5mmは、当該断面線に沿った道のり距離である。0.5mmは、当該測定点の曲率半径を評価するのに充分なほど微小である。また、測定点から0.5mm離れた2つの点を設定することで、断面線の微分方程式を解くことなく、自由曲線上の各点における曲率半径を決定することができる。
【0019】
このように、曲率半径は点毎に定まる。本願において、ある領域における曲率半径がXmm以上Ymm以下であるという規定は、その領域に属するあらゆる点において曲率半径がXmm以上Ymm以下であることを意味する。
【0020】
本願では、縦断面において、ヘッドの内面上の点とヘッドの外面上の点とが対応づけられる。ヘッドの外面上の点Aは、法線を有する。この法線とヘッドの内面との交点が点Bとされるとき、点Aと点Bとは互いに対応している。この場合、点Aは点Bに対応するといっても良いし、点Bは点Aに対応するといっても良い。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態のヘッド4を含むゴルフクラブ2の全体図である。
図2(a)はヘッド4の正面図であり、
図2(b)は
図2(a)のE1線に沿った断面である。
図2(b)では、ヘッド4の外面の断面線のみが示されている。
図3は、ヘッド4をクラウン側から見た平面図である。
図4は、ヘッド4をソール側から見た底面図である。
図5は、
図2(a)のA-A線に沿った断面図である。
図5は、フェースセンターFcを通る縦断面である。
図6は、ヘッド4の分解斜視図である。
【0022】
図1が示すように、ゴルフクラブ2は、ゴルフクラブヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを含む。シャフト6は、チップ端Tpとバット端Btとを有する。ヘッド4は、シャフト6のチップ端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6のバット端部に取り付けられている。
【0023】
ゴルフクラブ2は、ドライバー(1番ウッド)である。好ましくは、ゴルフクラブ2は、ウッド型ゴルフクラブ又はハイブリッド型ゴルフクラブである。
【0024】
シャフト6は、管状体である。シャフト6は中空構造を有する。シャフト6の材質は、炭素繊維強化樹脂である。軽量化の観点から、シャフト6の材質として、炭素繊維強化樹脂が好ましい。シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグ以外のプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。シャフト6は、金属線を含んでいてもよい。シャフト6の材質は限定されず、例えば金属であってもよい。
【0025】
グリップ8は、スイング中においてゴルファーにより握られる部分である。グリップ8の材質として、ゴム組成物及び樹脂組成物が例示される。グリップ8の前記ゴム組成物は、気泡を含んでいてもよい。
【0026】
図5がよく示すように、ヘッド4は中空構造を有する。本実施形態では、ヘッド4は、ウッド型である。ヘッド4は、ハイブリッド型であってもよい。ヘッド4は、アイアン型であってもよい。ヘッド4は、パター型であってもよい。好ましくは、ヘッド4はウッド型又はハイブリッド型であり、より好ましくはウッド型である。ヘッド4の好ましい材質として、金属及び繊維強化プラスチックが例示される。この金属として、チタン合金、純チタン、ステンレス鋼、マレージング鋼及び軟鉄が例示される。繊維強化プラスチックとして、炭素繊維強化プラスチックが例示される。ヘッド4は、金属部分と繊維強化プラスチック部分とを有する複合ヘッドであってもよい。
【0027】
図2(a)から
図4が示すように、ヘッド4は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。打撃フェース10aは、単にフェースとも称される。打撃フェース10aは、フェースセンターFcを有する。フェースセンターFcの定義は上述の通りである。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。
【0028】
打撃フェース10aの外縁は、次のように定義されうる。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、ヘッド4の重心CGとスイートスポットSSとを結ぶ直線N1を含む各断面E1、E2、E3・・・が存在する。
図2(a)の正面視では、直線N1は点である。これらの各断面E1等において、ヘッド外面の断面線の曲率半径rがスイートスポットSS側から打撃フェース10aの外側に向かって初めて200mmとなる位置Feが決定される。この位置Feが、打撃フェース10aの外縁として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド4の重心CGから打撃フェース10aに下ろした垂線の足である。
【0029】
図5が示すように、フェース部10は、フェース外面10aと、フェース内面10bとを有する。フェース外面10aは、打撃フェースである。フェース内面10bは、ヘッド4の内部空間(中空部)に面している。クラウン部12は、クラウン外面12aとクラウン内面12bとを有する。クラウン内面12bは、ヘッド4の内部空間(中空部)に面している。ソール部14は、ソール外面14aとソール内面14bとを有している。ソール内面14bは、ヘッド4の内部空間(中空部)に面している。
【0030】
なお、フェース外面10aにはスコアライン(溝)が設けられているが、本願の各図面において、このスコアラインの記載は省略されている。
【0031】
中空のヘッド4は、肉厚を有する。肉厚は、ヘッド4の内面とヘッド4の外面との間の厚みである。例えば、フェース部10の肉厚は、打撃フェース10aとフェース内面10bとの間の厚みである。例えば、ソール部14の肉厚は、ソール外面14aとソール内面14bとの間の厚みである。肉厚は、ヘッド外面の法線に沿って測定される。この法線の向きは、ヘッド外面上の位置により相違する。
【0032】
図3がよく示すように、クラウン部12は、クラウン外面12aに、クラウン凸部20を有する。クラウン凸部20は中空である。すなわち、クラウン凸部20は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面において凹を形成している。クラウン凸部20は、輪郭線CL20と、上面22と、側壁面24とを有する。ヘッド4の平面図(
図3)において、クラウン凸部20は、略四角形(略台形)である。クラウン凸部20は、フェースセンターFcよりもヒール側に設けられている。
【0033】
フェース外面10aは、ヘッド4の外側に向かって凸の三次元曲面である。フェース外面10aは、バルジ及びロールを有する。
【0034】
構成部材の観点からは、ヘッド4は、ボディ部材b1と、フェース部材f1とを有する。ボディ部材b1は、フェース開口b10を有している。フェース開口b10に、フェース部材f1が配置されている。フェース部材f1は、打撃フェース10aの全体を有する。フェース部材f1は、フェース開口b10を塞いでいる。フェース部材f1は、フェース開口b10に溶接されている。フェース部材f1は、クラウン部12の一部を有する。フェース部材f1は、ソール部14の一部を有する。ボディ部材b1は、クラウン部12の一部を有する。ボディ部材b1は、ソール部14の一部を有する。ボディ部材b1は、ホーゼル部16の全体を有する。
【0035】
図3及び
図4において2点鎖線で示されるのは、ヘッド外面におけるフェース部材f1とボディ部材b1との境界線k1である。
【0036】
ボディ部材b1の材質は限定されず、金属及び繊維強化プラスチックが例示される。この金属として、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン-ニッケル合金から選ばれる一種以上の金属が例示される。繊維強化プラスチックとして、炭素繊維強化プラスチックが例示される。ボディ部材b1は、その全体が一体成形されていてもよい。ボディ部材b1は複数の部材を接合することで形成されていてもよい。例えばボディ部材b1は、金属製の部材と炭素繊維強化プラスチック製の部材とが接合されることで形成されていてもよい。本実施形態では、ボディ部材b1の全体が金属により形成されている。ボディ部材b1の製造方法は限定されない。本実施形態では、ボディ部材b1は、鋳造(ロストワックス精密鋳造)により製造されている。
【0037】
フェース部材f1の材質は限定されず、金属が好ましい。ただし、少なくとも周縁部32(後述)は、ボディ部材b1の開口b10と溶接可能な材質により形成されている。強度の観点から、フェース部材f1の好ましい材質として、チタン合金及びマレージング鋼が挙げられる。フェース部材f1の製造方法は限定されない。強度の観点から、フェース部材f1は、板材をプレス加工することによって製造されてもよい。この板材として、圧延材が用いられうる。圧延材は、欠陥が少なく、強度に優れる。更に、圧延材は、厚みの精度が高い。圧延材を用いることで、フェース部10の厚みの精度が高まる。フェース部材f1は、例えば鍛造によって製造されてもよい。フェース部材f1は、鋳造によって製造されてもよい。後述の通り、本実施形態のフェース部材f1は周縁部の長さが小さい。このため、フェース部材f1は、プレス加工又は鍛造により容易に成形されうる。本実施形態では、フェース部材f1は、圧延材をプレス加工することにより製造されている。より詳細には、フェース部材f1の製造工程は、板材(圧延材)にCNC加工で肉厚を加工する第1工程と、前記第1工程後の板材をプレスする第2工程と、前記第2工程後の材料を用いてCNC加工で周縁部を整形する第3工程とを含んでいてもよい。第2工程では、フェース部の曲面(バルジ、ロール)が付与されると共に、曲がった周縁部が形成される。ただし、フェース部材f1の周縁部32のように、周縁部が短い場合、曲げ加工が難しく、プレスのみで周縁部を完全に成形することが出来ない場合がある。この場合、プレス工程の後で、周縁部を整形する第3工程を実施するのが好ましい。この第3工程の整形として、周縁部の長さを整えること、及び/又は、周縁部の外面形状を整えることが挙げられる。周縁部の長さを整えるのに、レーザーカットが用いられうる。周縁部の外面形状を整えるのに、CNC加工が用いられうる。第3工程で周縁部の外面形状を整える場合、第1工程では、第3工程での外面の削り量を考慮して、肉厚が設定されうる。なお、CNCは、Computerized Numerical Controlの略である。
【0038】
図7は、
図5におけるフェース部10近傍の拡大図である。
図8は、
図5の円A内の拡大図である。前述の通り、ヘッド4は、フェース部材f1を有する。フェース部材f1は、全体として一体成形されている。フェース部材f1はボディ部材b1に溶接されている。
図7及び
図8において一点鎖線で示されているのは、フェース部材f1とボディ部材b1との境界面k2である。境界面k2は、フェース部材f1の後端面と、ボディ部材b1の前端面との界面である。縦断面において、境界面k2は、断面境界線k3を構成する。
【0039】
図9は、
図8の円B内の拡大図である。断面境界線k3は、ヘッド内面側の点P1と、ヘッド外面に位置する点P2とを有する。点P1は、溶接ビードwbに覆われている。断面境界線k3は、点P1と点P2とを結ぶ線分である。前述の境界線k1は、点P2の集合である。
【0040】
フェース部材f1は、打撃フェース10aを構成するフェース部10と、フェース部10の周縁からバック側に向かって延びる周縁部32とを有する。
図6が示すように、周縁部32は、ホーゼル部16の近傍部を除き、フェース部材f1の全周に亘って設けられている。しかし、
図6及び
図7に示されるように、周縁部32の長さは短い。周縁部32は、ソール側周縁部34と、クラウン側周縁部36とを含む。ソール側周縁部34は、フェース部10の下縁からバック側に延びている。クラウン側周縁部36は、フェース部10の上縁からバック側に延びている。フェース部材f1の後端面は、周縁部32の後端面である。
【0041】
溶接部には、溶接ビードwbが形成されている。周縁部32とボディ部材b1との境界位置に、溶接ビードwbが形成されている。溶接ビードwbは、ヘッド4の内面に形成されている。溶接ビードwbは、ヘッドの内面において盛り上がっている。本願の断面図において、溶接ビードwbは、模式的に半円で示されている。
【0042】
なお、溶接の種類は限定されず、レーザー溶接、アーク溶接、ガス溶接及び抵抗溶接が例示される。溶加材(溶接棒等)は、用いられても良いし、用いられなくても良い。本実施形態では、レーザー溶接が採用されている。溶接ビードwbは、母材のみにより形成されていてもよいし、溶加材のみにより形成されていてもよいし、母材及び溶加材により形成されていてもよい。本実施形態では、溶加材は使用されておらず、溶接ビードwbは溶融して凝固した母材(ボディ部材b1及びフェース部材f1)により形成されている。
【0043】
図7が示すように、縦断面において、打撃フェース10aの断面線は、中点Paを有する。中点Paは、ソール側の外縁Feとクラウン側の外縁Feとの間に延びる断面線の中点である。中点Paは、縦断面毎に定まる。中点Paは、接線Taを有する。接線Taは、打撃フェース10aの断面線の、中点Paにおける接線である。フェース内面10bは、点Pbを有する。点Pbは、点Paに対応する点である。すなわち、点Pbは、中点Paにおける法線D1とフェース内面10bとの交点である。点Pbを通り接線Taに平行な直線Tbが決定される。
【0044】
周縁部32は、フェース部10よりもバック側に突出する後方延在部38を有する。後方延在部38は、直線Tbよりもバック側に延びている部分である。後方延在部38は、ソール側後方延在部40と、クラウン側後方延在部42とを含む。
【0045】
図7及び
図9が示すように、周縁部32は、長さL1を有する。周縁部32の長さL1は、外縁Feから外面境界点P2までの長さである。この長さL1は、フェース法線方向に沿って測定される。フェース法線方向は、中点Paにおける法線D1の方向である(
図7参照)。よってフェース法線方向は、接線Taに垂直であり、直線Tbにも垂直である。
図9では、ソール側周縁部34の長さL11が示されている。
図7では、クラウン側周縁部36の長さL12が示されている。長さL11及び長さL12は、長さL1の例である。
【0046】
図7が示すように、ソール側周縁部34は、フェース-バック方向長さL2を有する。長さL2は、ソール側の外縁Feからソール側の外面境界点P2までの長さである。クラウン側周縁部36は、フェース-バック方向長さL3を有する。長さL3は、クラウン側の外縁Feからクラウン側の外面境界点P2までの長さである。長さL3は長さL2よりも大きい。本開示では、周縁部32の長さL1は、フェース-バック方向長さL2,L3ではなく、フェース法線方向の長さと定義している(
図7、
図9の両矢印L1参照)。
【0047】
図9において両矢印L4で示されるのは、後方延在部38の長さである。後方延在部38は、長さL4を有する。長さL4は、直線Tbから端点P2までの長さである。この長さL4は、フェース法線方向に沿って測定される。
図9では、ソール側後方延在部40の長さL41が示されている。
図7では、クラウン側後方延在部42の長さL42が示されている。長さL41及び長さL42は、長さL4の例である。
【0048】
フェース部材f1とボディ部材b1とが溶接されると、境界面k2は不明となりうる。図示しないが、溶接により、境界面k2の近傍は一旦溶融した後に固化した溶接部が形成される。図示しないが、この溶接部の縦断面は、不定形であって、幅を有している。
【0049】
この溶接部により、境界面k2は不明となりうる。境界面k2が不明である場合、断面境界線k3の両端点P1,P2は不明となりうる。この場合、点P1及び点P2は次のように決定されうる。
図9が示すように、縦断面において、溶接ビードwbのフェース側の端点P3と、溶接ビードwbのボディ側の端点P5とが決定される。更に、点P3と点P5とを結ぶ線分の中点が決定される。この中点が、上記点P1と定義される。一方、点P2は、ヘッド4の外面に露出した前記溶接部の断面線の中点と定義されうる。点P2は、曲線である前記断面線の中点として決定されうる。これら点P1とP2とを結ぶ線分が、縦断面における断面境界線k3とされうる。断面境界線k3を特定することで、溶接された状態のフェース部材f1において、その寸法等が特定されうる。なお通常、溶接ビードはヘッド4の外面にも形成されるが、この外面の溶接ビードは研磨で除去される。
【0050】
点P1は、溶接ビードwbの中心点であり、ビード中央点とも称される。点P2は、外面境界点とも称される。
【0051】
縦断面において、ヘッド4の外面には、点P4及び点P6が定まる(
図9参照)。点P4は、溶接ビードwbのフェース側の端点P3に対応する点である。点P6は、溶接ビードwbのボディ側の端点P5に対応する点である。
【0052】
縦断面において、ヘッド4の内面には、点P7が定まる(
図8参照)。点P7は、打撃フェース10aの外縁Feに対応する点である。外縁Peと点P7とを結ぶ直線は、フェース部10の外縁を構成する。
【0053】
縦断面において、ヘッド4の内面には、点P9が定まる(
図8参照)。点P9は、ビード中央点P1からボディ部材b1側に6mm隔てた点である。この6mmは、断面線に沿った道のり距離である。すなわち、6mmは、点P1から点P9までの断面線の長さである。縦断面において、ヘッド4の外面には、点P8が定まる。点P8は、点P9に対応する点である。
【0054】
図8はソール側周縁部34の近傍のみを示しているが、クラウン側周縁部36の近傍においても、点P1からP9が定義される。
【0055】
図8が示すように、ヘッド4は、フェース側溶接近傍部50と、ボディ側溶接近傍部52とを有する。フェース側溶接近傍部50は、フェース部材f1の溶接近傍部である。フェース側溶接近傍部50は、打撃フェース10aの外縁Feから溶接ビードwbまでの部分である。ボディ側溶接近傍部52は、ボディ部材b1の溶接近傍部である。ボディ側溶接近傍部52は、ビード中央点P1からボディ側に6mm隔てた地点から溶接ビードwbまでの部分である。ソール側において、ボディ側溶接近傍部52の外面は、ソール外面14aの一部を構成している。
【0056】
フェース側溶接近傍部50の内面50bは、端点P3から点P7までの領域である。フェース側溶接近傍部50の外面50aは、点P4から外縁Feまでの領域である。ボディ側溶接近傍部52の内面52bは、端点P5から点P9までの領域である。ボディ側溶接近傍部52の外面52aは、点P6から点P8までの領域である。ボディ側溶接近傍部52の外面は、外面境界点P2を含む。
【0057】
フェース側溶接近傍部50とボディ側溶接近傍部52との間には、厚肉接合部54が形成されている。厚肉接合部54の外面は、点P4から点P6までの領域である。厚肉接合部54の内面は、溶接ビードwbの表面である。厚肉接合部54により、フェース側溶接近傍部50とボディ側溶接近傍部52とが繋がっている。
【0058】
同様の構造は、クラウン側にも形成されている。
図7が示すように、縦断面において、ヘッド4は、そのクラウン側に、フェース側溶接近傍部50と、ボディ側溶接近傍部52とを有する。クラウン側のボディ側溶接近傍部52の外面は、クラウン外面12aの一部を構成している。フェース側溶接近傍部50とボディ側溶接近傍部52との間には、厚肉接合部54が形成されている。
【0059】
図9が示すように、フェース側溶接近傍部50の肉厚t1は、フェース部10から離れるにつれて薄くなっている。肉厚t1は、フェース部10から離れるにつれて連続的に薄くなっている。肉厚t1は、フェース部10から離れるにつれて段階的に薄くなっていてもよい。
【0060】
図9が示すように、ボディ側溶接近傍部52の肉厚t2は、フェース部10から離れるにつれて薄くなっている。肉厚t2は、フェース部10から離れるにつれて連続的に薄くなっている。肉厚t2は、フェース部10から離れるにつれて段階的に薄くなっていてもよい。
【0061】
なお、肉厚に関して、「段階的に」とは、階段状の形態を含んでいなくてもよい趣旨である。すなわち、肉厚が一定の部分と肉厚が連続的に変化する部分とが段差なく繋がっている構成は、「段階的に」の概念に含まれる。
【0062】
肉厚t1は、溶接ビードwbのフェース側の端点P3における肉厚t11を含む。肉厚t11は、点P3と点P4とを結ぶ線分の長さである。肉厚t11は、溶接ビードwbのフェース側の端点P3における肉厚である。肉厚t11は、肉厚t1の最小値である。
【0063】
肉厚t2は、溶接ビードwbのボディ側の端点P5における肉厚t21を含む。肉厚t21は、点P5と点P6とを結ぶ線分の長さである。肉厚t21は、溶接ビードwbのボディ側の端点P5における肉厚である。肉厚t21は、肉厚t2の最大値である。
【0064】
溶接ビードwbのフェース側の端点P3における肉厚t11は、溶接ビードwbのボディ側の端点P5における肉厚t21よりも大きい。
【0065】
フェース側溶接近傍部50の内面は、滑らかに連続する曲面を構成している。フェース側溶接近傍部50の内面は、所定範囲の曲率半径を有する。ボディ側溶接近傍部52の内面は、滑らかに連続する曲面を構成している。ボディ側溶接近傍部52の内面は、所定範囲の曲率半径を有する。フェース側溶接近傍部50の外面とボディ側溶接近傍部52の外面とは、厚肉接合部54の外面を介して連続している。これらの外面は、所定範囲の曲率半径で、滑らかに連続している。
【0066】
図7が示すように、フェース部10は、最大厚みtmaxと最小厚みtminとを有する。最大厚みtmaxは、フェース部10の肉厚の最大値である。最小厚みtminは、フェース部10の肉厚の最小値である。
図7に最大厚みtmax及び最小厚みtminが示されているが、実際には、フェースセンターFcを通る縦断面に最大厚みtmax及び最小厚みtminが存在しなくてもよい。
【0067】
このヘッド4は、以下の作用効果を奏する。
【0068】
フェース部材f1はカップ状フェースであり、周縁部32が存在する。このため、フェース部10に溶接部が存在しない。溶接部では、溶接ビードの存在に起因して肉厚が増大し、剛性が高まる。よって、フェース部10に溶接部が存在すると、当該溶接部に起因してフェース部10のたわみが抑制されうる。フェース部材f1ではフェース部10に溶接部が存在しないため、フェース部10の全体がたわみ易い。
【0069】
ヘッド4では、周縁部32の長さL1が6mm以下と短くされている。このため、フェース部材f1とボディ部材b1との溶接部が、フェース部10とクラウン部12との境界の近傍に配置される。また、フェース部材f1とボディ部材b1との溶接部が、フェース部10とソール部14との境界の近傍に配置される。この溶接部には、ヘッド内面で盛り上がる溶接ビードが形成されている。この構成により、フェース部10の境界部(フェース部とクラウン部又はソール部との境界部)の近傍の剛性が高くなる。このため、フェース部10とクラウン部12との境界、及び、フェース部材f1とソール部14との境界が、屈曲し難くなる。この結果、インパクト時における屈曲の起点を、ボディ側(バック側)に移動させることができる。
【0070】
溶接ビードwbのフェース側の端点P3における肉厚t11は、溶接ビードwbのボディ側の端点P5における肉厚t21よりも大きい。このため、フェース部10に近い側において剛性が高くなり、インパクトにおける屈曲の起点をボディ側に移動させることができる。
【0071】
屈曲の起点をボディ側に移動させることで、インパクト時のたわみが、フェース部10から離れたボディ部材b1に及ぶ。このため、ボディ部材b1(クラウン部12、ソール部14)が変形することで、フェース部10の境界部が屈曲する場合と比較して、フェース部10の全体の変位量が増大する。この結果、反発性能が高まる。この効果が、ボディたわみ効果とも称される。
【0072】
ボディたわみ効果の観点から、周縁部32の長さL1は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL1は、2.5mm以上が好ましく、2.7mm以上がより好ましく、3.0mm以上がより好ましい。
【0073】
ソール側におけるボディたわみ効果の観点から、ソール側周縁部34の長さL11は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL11は、2.5mm以上が好ましく、2.7mm以上がより好ましく、3.0mm以上がより好ましい。
【0074】
クラウン側におけるボディたわみ効果の観点から、クラウン側周縁部36の長さL12は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL12は、2.5mm以上が好ましく、2.7mm以上がより好ましく、3.0mm以上がより好ましい。
【0075】
溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、周縁部32の長さL1は、最小厚みtminよりも大きいのが好ましく、最大厚みtmaxよりも大きいのがより好ましい。
【0076】
ソール側において、溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、ソール側におけるフェース部10の変形が抑制されうる。この観点から、ソール側周縁部34の長さL11は、フェース部10の最小厚みtminよりも大きいのが好ましく、最大厚みtmaxよりも大きいのがより好ましい。
【0077】
クラウン側において、溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、クラウン側におけるフェース部10の変形が抑制されうる。この観点から、クラウン側周縁部36の長さL12は、最小厚みtminよりも大きいのが好ましく、最大厚みtmaxよりも大きいのがより好ましい。
【0078】
ボディたわみ効果の観点から、後方延在部38の長さL4は、3.3mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.8mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL4は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がより好ましい。
【0079】
ソール側におけるボディたわみ効果の観点から、ソール側後方延在部40の長さL41は、3.3mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.8mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL41は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がより好ましい。
【0080】
クラウン側におけるボディたわみ効果の観点から、クラウン側後方延在部42の長さL42は、3.3mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.8mm以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、長さL42は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がより好ましい。
【0081】
ボディたわみ効果の観点から、後方延在部38の長さL4は、最大厚みtmaxよりも小さいのが好ましく、最小厚みtminよりも小さいのがより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、後方延在部38が存在するのが好ましい。
【0082】
ソール側におけるボディたわみ効果の観点から、ソール側後方延在部40の長さL41は、最大厚みtmaxよりも小さいのが好ましく、最小厚みtminよりも小さいのがより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、ソール側後方延在部40が存在するのが好ましい。
【0083】
クラウン側におけるボディたわみ効果の観点から、クラウン側後方延在部42の長さL42は、最大厚みtmaxよりも小さいのが好ましく、最小厚みtminよりも小さいのがより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、クラウン側後方延在部42が存在するのが好ましい。
【0084】
L4/L1は、後方延在部38の長さL4の、周縁部32の長さL1に対する比である。ボディたわみ効果の観点から、L4/L1は、0.55以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.45以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、L4/L1は、0.08以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.15以上がより好ましい。
【0085】
L41/L11は、ソール側後方延在部40の長さL41の、ソール側周縁部34の長さL11に対する比である。ソール側におけるボディたわみ効果の観点から、L41/L11は、0.55以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.45以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、L41/L11は、0.08以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.15以上がより好ましい。
【0086】
L42/L12は、クラウン側後方延在部42の長さL42の、クラウン側周縁部36の長さL12に対する比である。クラウン側におけるボディたわみ効果の観点から、L42/L12は、0.55以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.45以下がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、L42/L12は、0.08以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.15以上がより好ましい。
【0087】
フェース側溶接近傍部50の肉厚t1は、フェース部10から離れるにつれて薄くなっている(
図9参照)。このため、インパクト時の屈曲の起点をより効果的にバック側に移動させることができる。肉厚t1は、フェース部10から離れるにつれて連続的に又は段階的に薄くなっているのが好ましく、フェース部10から離れるにつれて連続的に薄くなっているのがより好ましい。
【0088】
フェース側溶接近傍部50の屈曲を抑制し、インパクト時の屈曲の起点をバック側に移動させる観点から、肉厚t1は、1.2mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.4mm以上がより好ましい。フェース部10からボディ部材b1にかけての肉厚分布を適切として、屈曲の起点をバック側に移動させる観点から、肉厚t1は、2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下がより好ましい。肉厚t1は、フェース部10の最大厚みtmaxよりも小さいのが好ましく、フェース部10の最小厚みtminよりも小さいのがより好ましい。
【0089】
ボディ側溶接近傍部52の肉厚t2は、フェース部10から離れるにつれて薄くなっている(
図9参照)。このため、インパクト時の屈曲の起点をより効果的にボディ側(バック側)に移動させることができる。肉厚t2は、フェース部10から離れるにつれて連続的に又は段階的に薄くなっているのが好ましく、フェース部10から離れるにつれて連続的に薄くなっているのがより好ましい。
【0090】
ボディ側溶接近傍部52の屈曲を抑制し、インパクト時の屈曲の起点をバック側に移動させる観点から、肉厚t2は、0.8mm以上が好ましく、0.9mm以上がより好ましく、1.0mm以上がより好ましい。フェース部10からボディ部材b1にかけての肉厚分布を適切として、屈曲の起点をバック側に移動させる観点から、肉厚t2は、1.8mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.4mm以下がより好ましい。肉厚t2は、フェース部10の最大厚みtmaxよりも小さいのが好ましく、フェース部10の最小厚みtminよりも小さいのがより好ましい。肉厚t2は、溶接ビードwbのフェース側の端点における肉厚t11よりも小さいのが好ましい。
【0091】
フェース側溶接近傍部50の内面50bの曲率半径を大きくすることで、フェース側溶接近傍部50での屈曲変形が抑制される。このため、インパクト時における屈曲の起点を、より効果的にボディ側(バック側)に移動させることができる(
図8参照)。この観点から、内面50bの曲率半径は、6mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、8mm以上がより好ましい。この曲率半径が過大であると、打撃フェース10aの外縁Feからソール部14までの縦方向幅が過大となり、打撃フェース10aの縦方向幅が小さくなる。この観点から、内面50bの曲率半径は、34mm以下が好ましく、32mm以下がより好ましく、29mm以下がより好ましい。
【0092】
フェース側溶接近傍部50の外面50aの曲率半径を大きくすることで、フェース側溶接近傍部50での屈曲変形が抑制される。このため、インパクト時における屈曲の起点を、より効果的にボディ側(バック側)に移動させることができる(
図8参照)。この観点から、外面50aの曲率半径は、7mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、9mm以上がより好ましい。この曲率半径が過大であると、打撃フェース10aの外縁Feからソール部14までの縦方向幅が過大となり、打撃フェース10aの縦方向幅が小さくなる。この観点から、外面50aの曲率半径は、35mm以下が好ましく、33mm以下がより好ましく、30mm以下がより好ましい。
【0093】
ボディ側溶接近傍部52の内面52bの曲率半径を大きくすることで、インパクト時における屈曲の起点を、より効果的にボディ側(バック側)に移動させることができる(
図8参照)。この観点から、内面52bの曲率半径は、7mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、9mm以上がより好ましい。この曲率半径が過大であると、フェース側溶接近傍部50からソール部14にかけての曲面形状の連続性が損なわれうる。この観点から、内面52bの曲率半径は、34mm以下が好ましく、32mm以下がより好ましく、29mm以下がより好ましい。
【0094】
ボディ側溶接近傍部52の外面52aの曲率半径を大きくすることで、インパクト時における屈曲の起点を、より効果的にボディ側(バック側)に移動させることができる(
図8参照)。この観点から、外面52aの曲率半径は、7mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、9mm以上がより好ましい。この曲率半径が過大であると、フェース側溶接近傍部50からソール部14にかけての曲面形状の連続性が損なわれうる。この観点から、外面52aの曲率半径は、35mm以下が好ましく、33mm以下がより好ましく、30mm以下がより好ましい。
【0095】
上述の通り、基準状態においてヘッド4は接地平面HPに載置される。フェースセンターFcを通る縦断面において、外面境界点P2は、接地平面HPに接していない(
図7参照)。フェースセンターFcを通る縦断面において、外面境界点P2は、接地平面HPから浮いている。
図7において両矢印L5で示されるのは、フェースセンターFcを通る縦断面における、接地平面HPと外面境界点P2との距離である。この距離は、接地平面HPに垂直は方向に沿って測定される。ボディたわみ効果の観点から、距離L5は、1.2mm以上が好ましく、1.4mm以上がより好ましく、1.6mm以上がより好ましい。溶接ビードwbがフェース部10に近すぎると、フェース部10の変形は抑制され、フェース部10の境界部は屈曲しやすくなる。この観点から、距離L5は、5.0mm以下が好ましく、4.5mm以下がより好ましく、4.0mm以下がより好ましい。
【0096】
前述の通り、上記縦断面は、トウ-ヒール方向の各位置において設定される。上述した形状がトウ-ヒール方向に拡がることで、ボディたわみ効果が高まる。上述された全ての構成は、フェースセンターFcを通る縦断面で充足されるのが好ましく、フェースセンターFcのトウ側10mmからヒール側10mmまでのあらゆる縦断面で充足されるのがより好ましく、フェースセンターFcのトウ側15mmからヒール側15mmまでのあらゆる縦断面で充足されるのがより好ましく、フェースセンターFcのトウ側20mmからヒール側20mmまでのあらゆる縦断面で充足されるのがより好ましい。
【0097】
ボールとの衝突によりフェース部10に付加された力をクラウン部12に伝達し、クラウン部12を変形させる観点から、フェース部10とクラウン部12との成す角度は直角に近いのが好ましい。ボールとの衝突によりフェース部10に付加された力をソール部14に伝達し、ソール部14を変形させる観点から、フェース部10とソール部14との成す角度は直角に近いのが好ましい。これらの観点から、ロフト角は小さいほうがよい。リアルロフト角は、16度以下が好ましく、15度以下がより好ましく、14度以下がより好ましい。適正な打ち出し角度の観点から、リアルロフト角は、7度以上が好ましく、7.5度以上がより好ましく、8度以上がより好ましい。
【0098】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
ヘッド外面及びヘッド内面を有する中空のゴルフクラブヘッドであって、
開口を有するボディ部材と、
打撃フェースを有し、前記開口を塞いでいるフェース部材と、
を備えており、
前記フェース部材が、前記打撃フェースを構成するフェース部と、前記フェース部の外縁からバック側に向かって延びる周縁部と、を有しており、
前記フェース部材の前記周縁部が前記ボディ部材に溶接されており、
前記周縁部と前記ボディ部材との境界位置に、前記ヘッド内面で盛り上がる溶接ビードが形成されており、
前記溶接ビードのフェース側の端点における肉厚が、前記溶接ビードのボディ側の端点における肉厚よりも大きく、
前記周縁部の長さが6mm以下である、
ゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記周縁部が、前記フェース部よりもバック側に突出する後方延在部を有している付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記フェース部の外縁から前記溶接ビードまでの間がフェース側溶接近傍部とされ、
前記溶接ビードの中心点からボディ側に6mm隔てた地点から前記溶接ビードまでの間がボディ側溶接近傍部とされるとき、
前記フェース側溶接近傍部の肉厚が、前記フェース部から離れるにつれて薄くなっており、
前記ボディ側溶接近傍部の肉厚が、前記フェース部から離れるにつれて薄くなっている付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記フェース側溶接近傍部の内面の曲率半径が、7mm以上であり、
前記フェース側溶接近傍部の外面の曲率半径が、7mm以上である付記3に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記周縁部の長さが、前記フェース部の最小厚みよりも大きい付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記周縁部が、前記フェース部材のソール側に形成されたソール側周縁部である付記1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0099】
4・・・ゴルフクラブヘッド
10・・・フェース部
10a・・・打撃フェース
12・・・クラウン部
14・・・ソール部
32・・・周縁部
34・・・ソール側周縁部
36・・・クラウン側周縁部
38・・・後方延在部
40・・・ソール側後方延在部
42・・・クラウン側後方延在部
50・・・フェース側溶接近傍部
52・・・ボディ側溶接近傍部
f1・・・フェース部材
b1・・・ボディ部材
wb・・・溶接ビード
Fc・・・フェースセンター
Fe・・・打撃フェースの外縁
P1・・・ビード中央点
P2・・・外面境界点