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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120303
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】塗工装置及びブレード測定器
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/04 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B05C11/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017114
(22)【出願日】2021-02-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】394020815
【氏名又は名称】株式会社野上技研
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】諸田 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英幸
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA25
4F042DD02
4F042DD07
4F042DD19
4F042DD44
(57)【要約】
【課題】塗工膜厚を微少な単位で手間なく精密に調節でき、かつ、塗工膜厚の均一性を保つことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工装置11は、平面上をスライド可能なスライドベース12と、スライドベース12の上部に取り付けられたヘッド部13と、ヘッド部13内に設けられたスライドカム21及びカムスペーサー22を介してヘッド部13の下方に保持され、スライドベース12の左脚部12aと右脚部12bとの間に位置する板状のブレード14とを備え、ブレード14は、下端が下向きに尖ったエッジ部14aをなしてスライドベース12の載置面との間に一定の高さの隙間をなし、スライドベース12の載置面に対するブレード14のエッジ部14aの高さを調節可能な高さ調節部17と、スライドベース12の載置面に対するブレード14のエッジ部14aの平行度を調節可能な平行度調節部18が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上をスライド可能な一対の脚部を有するスライドベースと、該スライドベースの上部に取り付けられるヘッド部と、該ヘッド部の下方に保持され、該スライドベースの両脚部の間に位置するブレードとを備え、前記ブレードは、下端が下向きに尖ったエッジ部をなして前記スライドベースの載置面との間に所定の膜厚で塗工可能な隙間をなすように配置される塗工装置であって、
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の高さを調節可能な高さ調節部と
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の平行度を調節可能な平行度調節部と
を備えていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記高さ調節部は、
前記ヘッド部の内部に配置され、左右方向に沿って平行移動可能で下面が傾斜したスライドカムと、
下面に前記ブレードを固定し、上面が該スライドカムの下面と同方向に同角度で傾斜して前記スライドカムの下面に密接しているカムスペーサーと、
前記ヘッド部の側面から内部に挿通され、前記スライドカムを回転量に応じて平行移動させる高さ調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
【請求項3】
前記平行度調節部は、
前記スライドベースの一方の脚部に、前後方向を軸として前記ヘッド部を上下方向に回動可能に連結するヒンジと、
前記スライドベースの他方の脚部に設けられる台座部と、
前記ヘッド部の側面に固定され、前記台座部にスピンドル部が当接し、回転量に応じて前記ヘッド部の傾斜度を変化させる平行度調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の塗工装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の塗工装置のブレード高さを測定するブレード測定器であって、
前記スライドベースを載置可能な平面状の天板と、該天板の上方に位置する物体の該天板に対する高さを検出する複数の変位計と、前記複数の変位計が取得した高さをそれぞれ表示する表示部とを有し、
前記複数の変位計は、前記ブレードの前記エッジ部に沿って所定の間隔で前記天板に配置されていることを特徴とするブレード測定器。
【請求項5】
前記天板には、前記天板に載置した前記塗工装置の前記スライドベースを突き当てられることで前記複数の変位計の直上に前記ブレードを位置させるガイド部材が取り付けられていることを特徴とする請求項4記載のブレード測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工装置及びブレード測定器に関し、詳しくは、塗工剤をブレードで基材に塗工でき、塗工膜厚を1μm単位で調節可能な装置及び該ブレードの高さと平行度とを測定可能な測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムや金属箔等の平面状の基材に塗工剤を膜厚一定に塗布するために、接地面に対して一定間隔の隙間をなして塗工剤を均一にならす塗工用のブレードを備え、基材上をスライド可能に形成された、ブレードの高さを調節可能な塗工装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-138134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような塗工装置では、ブレードの高さを調節するマイクロメータの目盛りに準じた精度の調節しかできなかった。したがって、塗工膜厚をμm単位で微少に変更するのは難しく、例えば、リチウムイオン電池用の電極材の活物質を基材に塗工するときに、塗工膜厚をμm単位で高精度に調節したいというニーズに対応できていなかった。
【0005】
また、ブレードの取り付け方によってはブレードが載置面に対して傾斜して平行に保たれないことで塗工膜厚が均一にならないおそれもあった。
【0006】
そこで本発明は、塗工膜厚を微少な単位で手間なく精密に調節でき、かつ、塗工膜厚の均一性を保つことができる塗工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の塗工装置は、平面上をスライド可能な一対の脚部を有するスライドベースと、該スライドベースの上部に取り付けられるヘッド部と、該ヘッド部の下方に保持され、該スライドベースの両脚部の間に位置するブレードとを備え、前記ブレードは、下端が下向きに尖ったエッジ部をなして前記スライドベースの載置面との間に所定の膜厚で塗工可能な隙間をなすように配置される塗工装置であって、前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の高さを調節可能な高さ調節部と前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の平行度を調節可能な平行度調節部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記高さ調節部は、前記ヘッド部の内部に配置され、左右方向に沿って平行移動可能で下面が傾斜したスライドカムと、下面に前記ブレードを固定し、上面が該スライドカムの下面と同方向に同角度で傾斜して前記スライドカムの下面に密接しているカムスペーサーと、前記ヘッド部の側面から内部に挿通され、前記スライドカムを回転量に応じて平行移動させる高さ調節用マイクロメーターヘッドとを備えていることを特徴としている。
【0009】

また、前記平行度調節部は、前記スライドベースの一方の脚部に、前後方向を軸として前記ヘッド部を上下方向に回動可能に連結するヒンジと、前記スライドベースの他方の脚部に設けられる台座部と、前記ヘッド部の側面に固定され、前記台座部にスピンドル部が当接し、回転量に応じて前記ヘッド部の傾斜度を変化させる平行度調節用マイクロメーターヘッドとを備えていることを特徴としている。
【0010】
また、上記の塗工装置のブレード高さを測定するブレード測定器であって、前記スライドベースを載置可能な平面状の天板と、該天板の上方に位置する物体の該天板に対する高さを検出する複数の変位計と、前記複数の変位計が取得した高さをそれぞれ表示する表示部とを有し、前記複数の変位計は、前記ブレードの前記エッジ部に沿って所定の間隔で前記天板に配置されていることを特徴としている。
【0011】
さらに、前記天板には、前記天板に載置した前記塗工装置の前記スライドベースを突き当てられることで前記複数の変位計の直上に前記ブレードを位置させるガイド部材が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗工装置によれば、塗工装置のヘッド部に保持されたブレードが、高さ調節部と平行度調節部とによって、ブレードを取り替えることなくエッジ部の高さと平行度とを微調整できる。
【0013】
また、高さ調節部がスライドカムとカムスペーサーと高さ調節用マイクロメーターヘッドとを備えていることにより、高さ調節用マイクロメーターヘッドの回転量に応じてスライドカムを平行移動させることで、マイクロメーターヘッドで直接的に高さ調節する場合よりも小さなスケールでの調節が可能になるので、ブレードの高さをより精密に調節することができる。
【0014】
さらに、平行度調節部がヒンジと台座部と平行度調節用マイクロメーターヘッドとを備えていることにより、高さ調節とは別にエッジ部の平行度を調節できるので、塗工膜厚の厚みと均一さとを微少な単位で調節可能になる。
【0015】
また、ブレード測定器を用いることで、塗工装置を天板に載置した状態でブレードのエッジ部の高さを複数の変位計によって検出でき、検出した値を表示部で目視により確認できるので、エッジ部の高さ及び平行度の調節を精密に行うことができる。
【0016】
そして、天板にガイド部材が設けられていることにより、確実に変位計の直上にブレードを位置させることができるので、測定の準備が容易になるとともに、位置ずれによる測定の誤りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一形態例である塗工装置の平面図である。
図2】同じく側面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】塗工装置のブレードのエッジ部の高さ及び平行度を測定するブレード測定器の正面図である。
図6】同じく平面図である。
図7】同じく側面図である。
図8】ブレード測定器により塗工装置のブレードのエッジ部の高さ及び平行度を測定する様子を示す正面図である。
図9】同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一形態例である塗工装置11の平面図であり、図2は、塗工装置11の側面図である。以下では、塗工装置11について、図1におけるF方向を前方とし、B方向を後方とし、L方向を左方、R方向を右方とする。
【0019】
図1及び図2に示されるように、塗工装置11は、平面上をスライド可能な左右一対の脚部を有するスライドベース12と、スライドベース12の上部に取り付けられ、下部が開口した中空箱型のヘッド部13と、ヘッド部13内に設けられた後述するスライドカム21及びカムスペーサー22を介してヘッド部13の下方に保持され、スライドベース12の左脚部12aと右脚部12bとの間に位置する板状のブレード(ドクターブレード)14とを備えている。
【0020】
ヘッド部13は、上面を覆う上板13aと、前後左右の周囲を囲う周壁13bとによって構成されている。また、図示していないが、上板13aは、周壁13bにネジ止めされて固定されている。
【0021】
ブレード14は、左右の長さXが所定の値(本形態例では100mm)に形成され、下端が下向きに尖ったエッジ部14aをなしてスライドベース12の載置面との間に一定の高さY(最大で0.4mm)の隙間をなすように配置されている。
【0022】
したがって、塗工装置11を平面状の基材上に載置して、スライドベース12の左脚部12aと右脚部12bとの間でヘッド部13よりも前方のスペースSに位置する基材の上に塗工剤を厚めに塗布し、塗工装置11を前方にスライドさせると、ブレード14によって載置面に対するエッジ部14aの高さYに応じた膜厚で塗工剤が薄く延ばされ、基材に塗工される。
【0023】
ヘッド部13の周壁13bの後面には、スライドベース12の左脚部12a及び右脚部12bに重なる位置に、それぞれ、縦に延びた深型のザグリ穴13dが設けられている。左右のザグリ穴13dには、それぞれ、頭付きで端部がネジ状のベース接続ピン15(15a、15b)が通されてスライドベース12の左脚部12aと右脚部12bとにネジ止めされて固定されている。
【0024】
左右のザグリ穴13dには、それぞれ、コイル状の弾性部材であるベース引き上げバネ16(16a、16b)がはめ込まれてベース接続ピン15(15a、15b)の頭部に下方から当接しており、ベース接続ピン15(15a、15b)を上方に付勢することでヘッド部13をスライドベース12に圧着している。
【0025】
また、塗工装置11には、スライドベース12の載置面に対するブレード14のエッジ部14aの高さを調節可能な高さ調節部17と、スライドベース12の載置面に対するブレード14のエッジ部14aの平行度を調節可能な平行度調節部18が設けられている。
【0026】
さらに、塗工装置11を把持・スライドさせやすいように、スライドベース12の前方には前部レバー19が、スライドベース12の後方には後部レバー20が、それぞれ取り付けられている。
【0027】
図3は、高さ調節部17の構造を示す図1のIII-III断面図である。図3に示されるように、高さ調節部17は、ヘッド部13の内部に設けられたスライドカム21及びカムスペーサー22と、ヘッド部13の周壁13bの左側面から内部に挿通された高さ調節用マイクロメーターヘッド23とによって構成されている。
【0028】
高さ調節用マイクロメーターヘッド23は、スピンドル部23aがヘッド部13の内部に突き出るように取り付けられており、シンブル部23bを回すことでスピンドル部23aの突き出る長さを調節可能に形成されている。
【0029】
スライドカム21は、下面が左右方向に所定の角度で傾斜し、カムスペーサー22も、上面が同方向に同角度で傾斜しており、スライドカム21の下面にカムスペーサー22の上面が密接している。また、カムスペーサー22の下面には、ブレード14がネジ止めされて、着脱可能に固定されている。
【0030】
ヘッド部13の周壁13bの内部空間は、スライドカム21を左右方向に移動可能に形成されており、その空間の右端には、コイル状の弾性部材であるスライドカム拘束バネ24が取り付けられている。スライドカム拘束バネ24は、スライドカム21の左端の凹部21bに差し込まれてスライドカム21を左方へ付勢している。また、周壁13bの内部空間の左端には、高さ調節用マイクロメーターヘッド23のスピンドル部23aの先端が突き当たりスライドカム21の左方への移動を規制している。
【0031】
また、カムスペーサー22は、ヘッド部13の上板13a及びスライドカム21を貫通する、頭付きで端部がネジ状のヘッド接続ピン25によってヘッド部13に連結されている。
【0032】
上板13aは、深型のザグリ穴13cが設けられてヘッド接続ピン25を挿通可能に構成されている。ザグリ穴13cには、コイル状の弾性部材であるカム引き上げバネ25aがはめ込まれてヘッド接続ピン25の頭部に下方から当接しており、ヘッド接続ピン25を上方に付勢している。
【0033】
また、スライドカム21には、ヘッド接続ピン25を通す貫通孔21aが設けられている。貫通孔21aは、左右方向に遊びができるように、左右の幅Wがヘッド接続ピン25の径よりも長く形成されているため、スライドカム21の位置を、貫通孔21aの幅Wを上限に左右方向にずらすことができる。
【0034】
スライドカム21の下面が傾斜していることで、スライドカム21が左右方向にずらされると、傾斜により横方向の移動が縦方向に変換されるので、スライドカム21に密接しているカムスペーサー22は上下方向にずらされる。
【0035】
したがって、高さ調節部17は、高さ調節用マイクロメーターヘッド23の回転量に応じてスライドカム21を左右方向に平行移動させ、スライドカム21の平行移動に応じて上下移動するカムスペーサー22によってブレード14を上下させることで、ブレード14のエッジ部14aの高さYを調節することができる。
【0036】
なお、高さ調節用マイクロメーターヘッド23のシンブル部23bに刻まれた目盛り数は100目盛りとなっており、10回転でスライドカム21が1mm平行移動するように設定されている。
【0037】
また、スライドカム21とカムスペーサー22との間の傾斜角度は、スライドカム21の平行移動1mmに対して、カムスペーサー22が0.1mm上下移動するように設定されている。
【0038】
したがって、高さ調節用マイクロメーターヘッド23の1つ分の回転量に対するブレード14の上下移動量は、0.1mm/10回転/100目盛り=0.0001mm=0.1μm、つまり、載置面に対して0.0~0.4mmの範囲で、0.1μmずつ上下移動するように設定されている。
【0039】
図4は、平行度調節部18の構造を示す図1のIV-IV断面図である。図4に示されるように、平行度調節部18は、スライドベース12の左脚部12aにヘッド部13を前後方向を軸として上下方向に回動可能に連結するヒンジ26と、ヘッド部13の周壁13bの右側面に取り付けられて下部が右方に突き出たL字状の板部材27と、板部材27の下部の直下に位置するように右脚部12bに固定された台座部28と、板部材27の下部を通貫する平行度調節用マイクロメーターヘッド29とによって構成されている。
【0040】
平行度調節用マイクロメーターヘッド29は、スピンドル部29aの下端が台座部28の上面に接しており、板部材27の下部から下方に突き出るスピンドル部29aの長さを、シンブル部29bを回すことにより調節可能である。
【0041】
また、スピンドル部29aの板部材27の下部から突き出る長さが変わると、ヘッド部13の右側がヒンジ26を支点にわずかに回動してヘッド部13の左右方向の傾斜度に変化が生じるので、ヘッド部13に保持されているブレード14のエッジ部14aの平行度も変化する。
【0042】
なお、スライドベース12の右脚部12bにはピン孔30が設けられており、ピン孔30には、ヘッド部13の右下部から下方に延びた位置決めピン31が遊挿されている。これにより、ヘッド部13のスライドベース12に対する水平方向の移動が規制されるので、ヘッド部13の水平方向の位置ずれが防止される。
【0043】
図5は、図1の塗工装置11のブレード14の高さ及び平行度を測定するブレード測定器32の正面図であり、図6は平面図であり、図7は側面図である。以下では、ブレード測定器32について、図6におけるF方向を前方とし、B方向を後方とし、L方向を左方、R方向を右方としている。
【0044】
図5乃至図7に示されるように、ブレード測定器32は、矩形の筐体33を有し、筐体33の上面がスライドベース12を載置可能な平面状の天板34となっており、筐体33の内部に、天板34の上方に位置する物体の天板34に対する高さを検出する2つの変位計35(35a、35b)と、2つ変位計35(35a、35b)が取得した距離をそれぞれ表示する2つの表示部36(36a、36b)とを有している。
【0045】
2つの変位計35(35a、35b)は、それぞれ、伸縮する端子37(37a、37b)を有し、基準位置から物体に接触するまで伸びた端子37(37a、37b)の長さによって物体との距離及びその変位を測定する接触式のものであり、いずれも、0.1μmの精度で検出可能に構成されている。
【0046】
また、変位計35aと変位計35bとは、図1の塗工装置11のブレード14のエッジ部14aの長さX(100mm)よりも短い間隔(80mm)で左右方向に離され、いずれも、端子37a、37bを垂直上方に向けた状態で筐体33の内部に配置されている。
【0047】
また、天板34の、各変位計35(35a、35b)が位置する箇所には、それぞれ、貫通孔である突出孔38(38a、38b)が設けられて変位計35(35a、35b)の端子37(37a、37b)を天板34よりも上方に突出可能に構成されている。
【0048】
さらに、変位計35(35a、35b)によって検出された、突出孔38(38a、38b)の上方に位置する物体の天板34との距離は、それぞれ、表示部36(36a、36b)に表示されるように構成されている。
【0049】
なお、天板34には、図1の塗工装置11を載置させた際に突出孔38(38a、38b)の直上にブレード14を位置させやすいように、塗工装置11のスライドベース12を突き当てられるブロック状のガイド部材39が取り付けられている。
【0050】
また、変位計35の端子37の基準位置は、測定前に、天板34の上面の高さ位置と等しくなるように校正されていることが望ましい。この校正は、例えば、底面を平坦に形成した基準ブロック(図示せず)を、突出孔38(38a、38b)を塞ぐように天板34に載置した状態で、変位計35(35a、35b)による測定を行い、その検出値を0点に設定することで実行可能である。
【0051】
図8は、ブレード測定器32により塗工装置11のブレード14のエッジ部14aの高さ及び平行度を測定する様子を示す正面図であり、図9は、その側面図である。
【0052】
図8及び図9に示すように、塗工装置11のブレード14のエッジ部14aの高さ及び平行度を測定する場合、塗工装置11を電源を入れたブレード測定器32の天板34の上に載置し、スライドベース12の前部をガイド部材39に突き当てて突出孔38の直上にブレード14を位置させる。
【0053】
この状態で測定を開始すると、変位計35(35a、35b)から端子37(37a、37b)が上方に伸ばされて、突出孔38(38a、38b)から天板34より上に突き出るので、端子37(37a、37b)が塗工装置11のブレード14のエッジ部14aに接触する
【0054】
これにより、変位計35(35a、35b)は天板34からエッジ部14aまでの高さYを左右の位置でそれぞれ検出して、検出値を表示部36(36a、36b)に表示する。
【0055】
このとき、エッジ部14aの左側の高さYLが表示部36aに、エッジ部14aの右側の高さYRが表示部36bに、それぞれ表示されるので、エッジ部14aの高さY(YL、YR)が数値的に把握可能になる。また、エッジ部14aの左側の高さYLと右側の高さYRとの差を比較し、その差が一定の範囲内に収まっているか否かで適正な平行度が保たれているか否かを判断可能となる。
【0056】
また、この状態で、高さ調節用マイクロメーターヘッド23又は平行度調節用マイクロメーターヘッド29を回しエッジ部14aの高さY(YL、YR)を変化させると、変位計35(35a、35b)の端子37(37a、37b)が変化に追従して伸縮するので、変化したエッジ部14aの高さY(YL、YR)が表示部36(36a、36b)に反映される。
【0057】
このように、本発明の塗工装置11によれば、塗工装置11のヘッド部13に保持されたブレード14が、高さ調節部17と平行度調節部18とによって、ブレードを取り替えることなくエッジ部14aの高さと平行度とを微調整できる。
【0058】
また、高さ調節部17が、スライドカム21とカムスペーサー22と高さ調節用マイクロメーターヘッド23とを備えていることにより、高さ調節用マイクロメーターヘッド23の回転量に応じてスライドカム21を平行移動させることで、マイクロメーターヘッドで直接的に高さ調節する場合よりも小さなスケールでの調節が可能になるので、ブレード14の高さをより精密に調節することができる。
【0059】
また、平行度調節部18が、ヒンジ26と台座部28と平行度調節用マイクロメーターヘッド29とを備えていることにより、高さ調節とは別にエッジ部14aの平行度を調節できるので、塗工膜厚の厚みと均一さとを微少な単位で調節可能になる。
【0060】
しかも、ブレード14に対し、高さ調節部17が0.1μm単位でエッジ部14aの高さを調節でき、平行度調節部18が1μm単位でエッジ部14aの平行度を調節できるので、塗工膜厚の厚みと均一さとを微少な単位で調節可能になる。
【0061】
また、本発明のブレード測定器32を用いることで、塗工装置11を天板34に載置した状態でブレード14のエッジ部14aの左右の高さを2つの変位計35(35a、35b)によって検出でき、検出した値を表示部36(36a、36b)で目視により確認できるので、エッジ部14aの高さ及び平行度の調節を精密に行うことができる。
【0062】
また、天板34にガイド部材39が設けられていることにより、確実に変位計35の直上にブレード14を位置させることができるので、測定の準備が容易になるとともに、位置ずれによる測定の誤りを防止できる。
【0063】
なお、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、ブレード測定器には、ブレードの高さ及び平行度を検出するセンサとして接触式の変位計を2つ用いているが、ブレードの高さ及び平行度を検出できればよく、ダイヤルゲージや、デジタルマイクロメータ、デプス計等のセンサを用いてもよいし、2つ以上のセンサを用いてもよい。また、必ずしも接触式である必要はなく、レーザー式やエアー式、光学式、渦電流式といった非接触式の変位計を用いてもよい。
【0064】
また、本形態例の塗工装置では、ブレードの左右の長さXが100mmに、エッジ部とスライドベースの載置面との間の高さYが最大で0.4mmに、それぞれ設定されているが、長さX及び高さYの最大値はこれらに限定されず、いずれも、用途に応じて異なる設定値に変更してもよい。
【符号の説明】
【0065】
11…塗工装置、12…スライドベース、12a…左脚部、12b…右脚部、13…ヘッド部、13a…上板、13b…周壁、13c…ザグリ穴、13d…ザグリ穴、14…ブレード、14a…エッジ部、15(15a、15b)…ベース接続ピン、16(16a、16b)…ベース引き上げバネ、17…高さ調節部、18…平行度調節部、19…前部レバー、20…後部レバー、21…スライドカム、21a…貫通孔、21b…凹部、22…カムスペーサー、23…高さ調節用マイクロメーターヘッド、23a…スピンドル部、23b…シンブル部、24…スライドカム拘束バネ、25…ヘッド接続ピン、25a…カム引き上げバネ、26…ヒンジ、27…板部材、27a…ネジ穴、28…台座部、29…平行度調節用マイクロメーターヘッド、29a…スピンドル部、29b…シンブル部、30…ピン孔、31…位置決めピン、32…ブレード測定器、33…筐体、34…天板、35(35a、35b)…変位計、36…表示部、37(37a、37b)…端子、38(38a、38b)…突出孔、39…ガイド部材
S…スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上をスライド可能な一対の脚部を有するスライドベースと、該スライドベースの上部に取り付けられるヘッド部と、該ヘッド部の下方に保持され、該スライドベースの両脚部の間に位置するブレードとを備え、前記ブレードは、下端が下向きに尖ったエッジ部をなして前記スライドベースの載置面との間に所定の膜厚で塗工可能な隙間をなすように配置される塗工装置であって、
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の高さを調節可能な高さ調節部と
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の平行度を調節可能な平行度調節部とを備え
前記高さ調節部は、
前記ヘッド部の内部に配置され、左右方向に沿って平行移動可能で下面が傾斜したスライドカムと、
下面に前記ブレードを固定し、上面が該スライドカムの下面と同方向に同角度で傾斜して前記スライドカムの下面に密接しているカムスペーサーと、
前記ヘッド部の側面から内部に挿通され、前記スライドカムを回転量に応じて平行移動させる高さ調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記平行度調節部は、
前記スライドベースの一方の脚部に、前後方向を軸として前記ヘッド部を上下方向に回動可能に連結するヒンジと、
前記スライドベースの他方の脚部に設けられる台座部と、
前記ヘッド部の側面に固定され、前記台座部にスピンドル部が当接し、回転量に応じて前記ヘッド部の傾斜度を変化させる平行度調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする請求項記載の塗工装置。
【請求項3】
平面上をスライド可能な一対の脚部を有するスライドベースと、該スライドベースの上部に取り付けられるヘッド部と、該ヘッド部の下方に保持され、該スライドベースの両脚部の間に位置するブレードとを備え、前記ブレードは、下端が下向きに尖ったエッジ部をなして前記スライドベースの載置面との間に所定の膜厚で塗工可能な隙間をなすように配置される塗工装置であって、
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の高さを調節可能な高さ調節部と
前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の平行度を調節可能な平行度調節部とを備え、
前記平行度調節部は、
前記スライドベースの一方の脚部に、前後方向を軸として前記ヘッド部を上下方向に回動可能に連結するヒンジと、
前記スライドベースの他方の脚部に設けられる台座部と、
前記ヘッド部の側面に固定され、前記台座部にスピンドル部が当接し、回転量に応じて前記ヘッド部の傾斜度を変化させる平行度調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする塗工装置。
【請求項4】
前記高さ調節部は、
前記ヘッド部の内部に配置され、左右方向に沿って平行移動可能で下面が傾斜したスライドカムと、
下面に前記ブレードを固定し、上面が該スライドカムの下面と同方向に同角度で傾斜して前記スライドカムの下面に密接しているカムスペーサーと、
前記ヘッド部の側面から内部に挿通され、前記スライドカムを回転量に応じて平行移動させる高さ調節用マイクロメーターヘッドと
を備えていることを特徴とする請求項記載の塗工装置。
【請求項5】
前記スライドベースの他方の脚部にピン孔が設けられ、前記ピン孔に前記ヘッド部の下部から下方に延びる位置決めピンが遊挿されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の塗工装置。
【請求項6】
前記ヘッド部は上板と周壁とで構成され、
前記周壁は、前記スライドベースの一対の脚部と重なる位置に、縦に延びるザグリ孔がそれぞれ設けられ、
前記ザグリ孔には、端部がネジ状のベース接続ピンが挿入され、前記スライドベースの一対の脚部にネジ止めにより固定され、
前記ベース接続ピンの頭部に下方から当接するベース引き上げバネが前記ザグリ孔にはめ込まれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗工装置。
【請求項7】
平面上をスライド可能な一対の脚部を有するスライドベースと、該スライドベースの上部に取り付けられるヘッド部と、該ヘッド部の下方に保持され、該スライドベースの両脚部の間に位置するブレードとを備え、前記ブレードは、下端が下向きに尖ったエッジ部をなして前記スライドベースの載置面との間に所定の膜厚で塗工可能な隙間をなすように配置される塗工装置であって、前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の高さを調節可能な高さ調節部と前記スライドベースの載置面に対する前記エッジ部の平行度を調節可能な平行度調節部とを備える塗工装置のブレード高さを測定するブレード測定器であって、
前記スライドベースを載置可能な平面状の天板と、該天板の上方に位置する物体の該天板に対する高さを検出する複数の変位計と、前記複数の変位計が取得した高さをそれぞれ表示する表示部とを有し、
前記複数の変位計は、前記ブレードの前記エッジ部に沿って所定の間隔で前記天板に配置されていることを特徴とするブレード測定器。
【請求項8】
前記天板には、前記天板に載置した前記塗工装置の前記スライドベースを突き当てられることで前記複数の変位計の直上に前記ブレードを位置させるガイド部材が取り付けられていることを特徴とする請求項記載のブレード測定器。