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特開2022-120319スピーカ振動板及び当該スピーカ振動板を備えたスピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120319
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】スピーカ振動板及び当該スピーカ振動板を備えたスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/14 20060101AFI20220810BHJP
   H04R 7/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H04R7/14 K
H04R7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017138
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】391023862
【氏名又は名称】テーダブリュ電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
(72)【発明者】
【氏名】釜渕 富次
【テーマコード(参考)】
5D016
【Fターム(参考)】
5D016AA09
5D016AA15
5D016BA01
5D016CA02
5D016EA03
(57)【要約】
【課題】低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカ振動板を提供する。
【解決手段】パルプ材で形成されたコーン紙からなるスピーカ振動板W1であって、振動して音を発生する表裏面を備えたボディ部10と、ボディ部10の外周部側に取り付けられるサラウンドエッジ部20とを有し、ボディ部10は、その裏面10bに、凹凸状のハニカムパターン12が形成されている。また、ハニカムパターン12は、平面視六角形状に凹んだコア部12aと、コア部12aの外周部に突出しているハニカムリブ部12bとにより形成されており、コア部12aのパルプ繊維の密度が、ハニカムリブ部12bのパルプ繊維の密度より小さくなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ材で形成されたコーン紙からなるスピーカ振動板であって、
振動して音を発生する表裏面を備えたボディ部と、
前記ボディ部の外周部側に取り付けられるサラウンドエッジ部とを有し、
前記ボディ部は、その表裏面の一方若しくは両方に、凹凸状のハニカムパターンが形成されていることを特徴とするスピーカ振動板。
【請求項2】
前記ハニカムパターンは、平面視六角形状に凹んだコア部と、コア部の外周部に突出しているハニカムリブ部とにより形成されており、
前記コア部のパルプ繊維の密度が、前記ハニカムリブ部のパルプ繊維の密度より小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ振動板。
【請求項3】
前記サラウンドエッジ部は、平面視・環状に形成されていると共に、径方向の略中央部で略円弧状に凹んだエッジロール部と、該エッジロール部の内側端部から径方向の内側に延設される板状の内側鍔片と、該エッジロール部の外側端部から径方向の外側に延設される板状の外側鍔片とを有し、
さらに、前記サラウンドエッジ部は、その内側鍔片が、前記ボディ部の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられており、前記エッジロール部の一部が、前記ボディ部の外側部分の一部と、該径方向に重複して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ振動板。
【請求項4】
前記ボディ部は、コーン形状、平板形状及びパラボリック形状のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスピーカ振動板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のスピーカ振動板を備えたスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ振動板及び当該スピーカ振動板を備えたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スピーカ振動板として、図8に示すように、ハニカム形状に形成された芯材(ハニカムコア)402の両面に、薄いスキン層401を張り合わせて三層構造に構成されたものが広く用いられている。このスピーカ振動板400は、芯材(ハニカムコア)403が主に「アルミニウム」で形成されており、薄いスキン層401が「カーボン繊維(CFRP)、ガラス繊維(GFRP)、アラミド繊維(AFRP)」等の材料で形成されている。
【0003】
なお、図示するような三層構造のスピーカ振動板400は、例えば、特許文献1や非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-28798号公報
【非特許文献1】佐伯多門監修、「スピーカー&エンクロージャー百科」、60頁、1999年発行、誠文堂新光社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術のスピーカ振動板400は、主にアルミニウムでハニカムコア402を形成し、そのハニカムコア402の両面に、カーボン繊維(CFRP)等のスキン層402を張り合わせて製造されており、コストがかかると共に、重量が大きいことにより高音域までの再生が難しいという課題を有している。なお、三層構造のスピーカ振動板400は、主に低音用や中音用に用いられている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、その目的は、低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカ振動板及びスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、パルプ材で形成されたコーン紙からなるスピーカ振動板であって、振動して音を発生する表裏面を備えたボディ部と、前記ボディ部の外周部側に取り付けられるサラウンドエッジ部とを有し、前記ボディ部は、その表裏面の一方若しくは両方に、凹凸状のハニカムパターンが形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように、本発明のスピーカ振動板は、パルプ材で形成されているコーン紙からなり、その表裏面の一方若しくは両方に、凹凸状のハニカムパターンが設けられている。すなわち、本発明のスピーカ振動板は、薄くて軽いコーン紙で形成されているため、高音域まで音を再生できる。また、本発明は、材質が安価なパルプ材であり、生産工程も従来技術の紙コーンのスピーカ振動板の製造工程と同等のため、スピーカの原価コストの低減が可能になる。
また、本発明は、薄くて軽いコーン紙製のスピーカ振動板でありながら、凹凸状のハニカムパターンにより剛性が上がっている。そして、本発明のスピーカ振動板は、周知のコーン紙で形成されているスピーカ振動板と比べて、剛性が上がっていることで、振動中の分割共振を抑えられ、歪の発生が少なくなり、フラットな特性の明瞭な音色を高音まで再生することができる。
さらに、本発明の構成によれば、大口径から小口径のスピーカに用いることができるスピーカ振動板を提供することができる。
【0009】
また、前記ハニカムパターンは、平面視六角形状に凹んだコア部と、コア部の外周部に突出しているハニカムリブ部とにより形成されており、前記コア部のパルプ繊維の密度が、前記ハニカムリブ部のパルプ繊維の密度より小さくなっていることが望ましい。
【0010】
このように、本発明では、ハニカムパターンのコア部のパルプ繊維の密度が、ハニカムリブ部のパルプ繊維の密度より小さくなっている。すなわち、本発明では、ハニカムパターンのコア部に適度な内部損失を持たせる一方で、ハニカムリブの剛性を強くしている。この構成により、本発明によれば、こもった音の原因となる中域成分が抑えられ、ダイナミックで豊かな低音とクリアで明瞭な音色の音が提供できる。
【0011】
また、前記サラウンドエッジ部は、平面視・環状に形成されていると共に、径方向の略中央部で略円弧状に凹んだエッジロール部と、該エッジロール部の内側端部から径方向の内側に延設される板状の内側鍔片と、該エッジロール部の外側端部から径方向の外側に延設される板状の外側鍔片とを有し、さらに、前記サラウンドエッジ部は、その内側鍔片が、前記ボディ部の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられており、前記エッジロール部の一部が、前記ボディ部の外側部分の一部と、該径方向に重複して配置されていることが望ましい。
なお、前記ボディ部は、コーン形状、平板形状及びパラボリック形状のいずれかに形成されていることが望ましい。
【0012】
この構成を採用したのは、以下の理由による。
従来技術のスピーカ振動板は、サラウンドエッジ部のエッジロール部の全体がボディ部の外側端部から、径方向・外側に突出した構成になっている。したがって、従来技術のスピーカ振動板は、外径寸法が、ボディ部の外径寸法と、サラウンドエッジ部のエッジロール部と、当該エッジロール部の外側端部から延設されている外側鍔片の径方向の寸法とを加算した値になっている。そして、スピーカ振動板は、その搭載される位置や用途により、外径寸法が制限されており、それにともない、振動して音を発生するボディ部の外径寸法も制限される。
一方、本発明では、上述したように、サラウンドエッジ部の内側鍔片が、ボディ部の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられており、エッジロール部の一部が、ボディ部の外側部分の一部と、該径方向に重複して配置されている。したがって、本発明によれば、従来技術のスピーカ振動板と比べて、振動して音を発生するボディ部の径方向の寸法を大きくすることができる。
その結果、本発明では、スピーカ振動板・自体の外径寸法を大きくすることなく、ボディ部の径方向の寸法を大きくすることができるため、従来技術の「同じ外径寸法のスピーカ振動板」と比べて、指向性を広げることができると共に、音圧を上げることができる。
【0013】
また、本発明は、前記スピーカ振動板を備えたスピーカであることを特徴とする。
このように、本発明によれば、低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカ振動板を提供することができる。また。本発明によれば、上記のスピーカ振動板を備えたスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態のスピーカ振動板を示した模式図であり、(a)がスピーカ振動板の表面である平面を示した模式図であり、(b)がスピーカ振動板の裏面である底面を示した模式図である。
図2図1(a)のA-A断面を示した模式図である。
図3】本発明の実施形態のスピーカ振動板のボディ部の形成されたハニカムパターンを説明するための模式図である。
図4】本発明の実施形態のスピーカ振動板のボディ部と、サラウンドエッジ部との配置を説明するために示した模式図である。
図5】本発明の実施形態のスピーカ振動板を備えたスピーカの構成を示した模式図である。
図6】本発明の実施形態のスピーカ振動板の変形例を説明するための模式図であり、(a)が対比のために示した本実施形態のスピーカ振動板を示した模式図であり、(b)がスピーカ振動板の第1変形例を示した模式図であり、(c)がスピーカ振動板の第2変形例を示した模式図である。
図7】本発明の実施形態のスピーカ振動板の構成を説明するために対比として示す従来技術のスピーカ振動板の模式図であり、(a)が従来技術のスピーカ振動板の表面を示した模式図、(b)が従来技術のスピーカ振動板の断面を示した模式図、(c)が従来技術のスピーカ振動板の裏面を示した模式図である。
図8】従来技術の3層構造のスピーカ振動板の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態のスピーカ振動板及びスピーカについて図面に基づいて説明する。
【0017】
先ず、本実施形態のスピーカ振動板について、図1~4を参照しながら説明する。ここで、図1は、本実施形態のスピーカ振動板を示した模式図であり、(a)がスピーカ振動板の表面である平面を示した模式図であり、(b)がスピーカ振動板の裏面である底面を示した模式図である。図2は、図1(a)のA-A断面を示した模式図である。図3は、本実施形態のスピーカ振動板のボディ部の形成されたハニカムパターンを説明するための模式図である。図4は、本実施形態のスピーカ振動板のボディ部と、サラウンドエッジ部との配置を説明するために示した模式図である。
【0018】
本実施形態のスピーカ振動板W1は、パルプ材で形成されたコーン紙により構成されている。具体的には、スピーカ振動板W1は、図1、2に示すように、振動して音を発生する表裏面(表面10a、裏面10b)を備えたボディ部10と、ボディ部10の外周部側に取り付けられるサラウンドエッジ部20とを有している。
なお、本実施形態では、「スピーカ振動板W1のボディ部10の構成」と、「ボディ部10とサラウンドエッジ部20の配置関係」とに特徴を有している。以下、スピーカ振動板W1に関して、「ボディ部10の構成」の特徴と、「ボディ部10とサラウンドエッジ部20の配置関係」の特徴とに分けて順に説明する。
【0019】
《ボディ部10の構成》
図示するように、ボディ部10は、コーン形状(円錐形状)に形成されており(図2参照)、その中心部に中心孔10cが形成されている。また、ボディ部10の裏面10bには、凹凸状のハニカムパターン12(図1(b)参照)が形成されている。
なお、後述するが、ボディ部10は、その外側端部に、下方に向けて、屈曲する折り曲げ部10d(図4参照(図2図5では省略))が設けられいる。
【0020】
このように、本実施形態のスピーカ振動板W1は、パルプ材で形成されているコーン紙からなり、ボディ部10の裏面10bに、凹凸状のハニカムパターン12が設けられている。すなわち、本実施形態のスピーカ振動板W1の振動して音を発生するボディ部10は、薄くて軽いコーン紙で形成されているため、高音域まで音を再生できる。また、本実施形態は、材質が安価なパルプ材であり、生産工程も従来技術の紙コーンのスピーカ振動板の製造工程と同等のため、スピーカの原価コストの低減が可能になる。
また、スピーカ振動板W1のボディ部10は、薄くて軽いコーン紙製の振動板でありながら、凹凸状のハニカムパターン12により剛性が上がっている。そして、本実施形態のスピーカ振動板W1は、周知のコーン紙で形成されているスピーカ振動板と比べて、剛性が上がっていることで、振動中の分割共振を抑えられ、歪の発生が少なくなり、フラットな特性の明瞭な音色を高音まで再生することができる。
なお、本実施形態の構成によれば、大口径から小口径のスピーカに用いることができるスピーカ振動板W1を提供することができる。
【0021】
なお、図示する説明では、ボディ部10の裏面10b側にだけ、凹凸状のハニカムパターン12が設けられているが特にこれに限定されるものではない。例えば、ボディ部10の裏面10bに加えて、ボディ部10の表面10a側にもハニカムパターン12が設けられていても良い(すなわち、ボディ部10の両面に、ハニカムパターン12が設けらていても良い)。或いは、ボディ部10の裏面10bではなく、ボディ部10の表面10a側にだけ、ハニカムパターン12が形成されていても良い。すなわち、ハニカムパターン12は、ボディ部10の表裏面の一方若しくは両方に設けれれていればよい。これらの構成においても、図示する例と同様の作用効果が得られる。
【0022】
また、ボディ部10の裏面10bのハニカムパターン12は、図3に示すように、平面視・正六角形状に凹んだコア部12aと、コア部の外周部に突出しているハニカムリブ部12b(六角形・環状に突出しているハニカムリブ部12b)とにより形成されている。また、ハニカムパターン12は、複数の「コア部12a及びハニカムリブ部12b」により形成されている。
さらに、本実施形態では、コア部12aのパルプ繊維の密度が、ハニカムリブ部12bのパルプ繊維の密度より小さくなっている。
【0023】
このように、本実施形態のスピーカ振動板W1は、コア部12aのパルプ繊維の密度と、ハニカムリブ部12bのパルプ繊維の密度とが異なるようにすることで、ハニカムパターン12のコア部12aに適度な内部損失を持たせることができる一方で、ハニカムリブ部12bの剛性が強くなっている。この構成により、本実施形態では、こもった音の原因となる中域成分が抑えられ、ダイナミックで豊かな低音とクリアで明瞭な音色の音が提供できる。
【0024】
《ボディ部10とサラウンドエッジ部20の配置関係》
次に、ボディ部10とサラウンドエッジ部20の配置関係について説明する。
本実施形態のスピーカ振動板W1を構成するサラウンドエッジ部20は、図1に示すように、平面視・環状に形成されている。また、サラウンドエッジ部20は、図2に示すように、その中央部(径方向の中央部)で略円弧状に下方に凹んだエッジロール部20aと、エッジロール部20aの内側端部から径方向の内側に延設される板状の内側鍔片20bと、エッジロール部20aの外側端部から径方向の外側に延設される板状の外側鍔片20cとを有している。
【0025】
また、サラウンドエッジ部20は、内側鍔片20bが、ボディ部10の外側端部より所定寸法分だけ径方向・内側の位置に貼り付けられることにより、ボディ部10に対して、エッジロール部20a及び外側鍔片20cが離間し且つ外側鍔片10cの先端側が自由端になるように取り付けられている。また、サラウンドエッジ部20は、エッジロール部20aの一部が、ボディ部10の外側部分の一部と、径方向に重複して配置されている。
【0026】
具体的には、図4に示すように、ボディ部10の外側端部が、サラウンドエッジ部20のエッジロール部20aの中心から内側(径方向・内側)方向に「tmm」オフセットした位置に配置されるように、サラウンドエッジ部20の内側鍔片20bが、ボディ部10の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられている。本実施形態では、エッジロール部20aは、半径よりも僅かに小さい寸法の部位が、ボディ部10の外側部分の一部と径方向に重複するように配置されている。
【0027】
また、ボディ部10には、その外側端部から下方に向けて「tmm」に折り曲げた折り曲げ部10dが形成されている。そして、本実施形態では、上記に加えて、さらに、折り曲げ部10dの下端(自由端)が、サラウンドエッジ部20の外側鍔片20cの上面と同じ高さ寸法になるように、サラウンドエッジ部20の内側鍔片20bが、ボディ部10に貼り付けられている。
【0028】
ここで、上記の構成を採用した理由について、従来技術のスピーカ振動板300の構成と対比しながら説明する。
なお、図6は、本発明の実施形態のスピーカ振動板の構成を説明するために対比として示す従来技術のスピーカ振動板の模式図であり、(a)が従来技術のスピーカ振動板の表面を示した模式図、(b)が従来技術のスピーカ振動板の断面を示した模式図、(c)が従来技術のスピーカ振動板の裏面を示した模式図である。
【0029】
図7に示すように、従来技術のコーン紙で形成されたスピーカ振動板300は、コーン形状のボディ部310と、ボディ部10の外周部側に取り付けられるサラウンドエッジ部320とを有している。
また、サラウンドエッジ部320は、略中央部で略円弧状に凸んだエッジロール部320aと、エッジロール部320aの内側端部から径方向の内側に延設される板状の内側鍔片320bと、エッジロール部320aの外側端部から径方向の外側に延設される板状の外側鍔片320cとを有している(図7(b)参照)。
なお、図示する例では、エッジロール部320が上方に凸んだアップロールの形状になっているが、本実施形態と同様、下方に凹んダウンロールの形状になっていても良い。
【0030】
そして、従来技術のサラウンドエッジ部320は、エッジロール部320aの内側端部から延設されている内側鍔片320bが、ボディ部320の外側端部に貼り付けられ、エッジロール部320aの全体がボディ部320の外側端部から、径方向・外側に突出した構成になっている。
このように、従来技術のスピーカ振動板320は、外径寸法が、ボディ部320の外径寸法と、サラウンドエッジ部320のエッジロール部320aの径方向の寸法と、外側鍔片320cの径方向の寸法とを加算した値になっている。そして、スピーカ振動板320は、その搭載される対象により、外径寸法が制限されており、従来技術の構成では、サラウンドエッジ部320の「エッジロール部320a及び外側鍔片320c」の径方向の寸法を考慮して、音を発生するボディ部310の外径寸法が設計されている。
【0031】
一方、本実施形態では、図2、4に示すように、サラウンドエッジ部20の内側鍔片20bが、ボディ部10の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられており、エッジロール部20aの一部が、ボディ部10の外側部分の一部と、径方向に重複して配置されている。したがって、本実施形態によれば、図7に示す、従来技術のスピーカ振動板320と比べて、振動して音を発生するボディ部20の径方向の寸法を大きくすることができる。
その結果、本実施形態では、スピーカ振動板W1の全体の外径寸法を大きくすることなく、ボディ部10の径方向の寸法だけを大きくすることができるため、従来技術の「同じ外径寸法のスピーカ振動板(例えば、図7に示すもの)」と比べて、指向性が広がると共に、音圧を上げることができる。すなわち、本実施形態によれば、スピーカ振動板W1の径方向の寸法を大きくすることなく、指向性を広げることができると共に、音圧を上げることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、一例として、図4に示すように、ボディ部10に、その外側端部から下方に向けて「tmm」に折り曲げた折り曲げ部10dが形成されている。これにより、本実施形態のスピーカ振動板W1は、ボディ部10の外周部の剛性を上げることができ、その結果、聴感的にメリハリがあり、スピード感がある音色を出すことができる。
【0033】
《スピーカ振動板W1の製造工程》
次に、本実施形態のスピーカ振動板W1の製造工程について説明する。
先ず、原料となるパルプ材をビータ内で水と合わせてすりつぶす工程(叩解(こうかい)工程)を行う。
次に、叩解した原料のパルプ繊維を抄紙機にセットされた型に合わせて脱水して立体加工する工程(抄紙工程)を行う。
次に、金型でプレスして熱乾燥させる工程(成型工程)を行い、ボディ部・中間品を製造する。この時、ハニカムパターンの形状も成型される。
なお、ボディ部・中間品の製造とは別に、予め、サラウンドエッジ部を製造しておく。
【0034】
最後に、ボディ部・中間品の中心部に、中心孔10cを開ける穴開け加工をしてボディ部10を作成し、ボディ部10に対して、予め製造しておいた、コーン紙製のサラウンドエッジ部20を貼り合わせる工程(仕上げ工程)を行う。このとき、サラウンドエッジ部20の内側鍔片20bが、ボディ部10の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けて、エッジロール部20aの一部が、ボディ部10の外側部分の一部と、径方向に重複するようじ配置する。これにより、本実施形態のスピーカ振動板W1が完成する。
【0035】
《スピーカ振動板W1を備えたスピーカSP》
次に、本実施形態のスピーカ振動板W1を備えたスピーカSPについて、図5を参照しながら説明する。
ここで、図5は、本実施形態のスピーカ振動板を備えたスピーカの構成を示した模式図である。
【0036】
図示するように、本実施形態のスピーカSPは、スピーカフレーム(以下、単に「フレーム」という)30と、フレーム30の中央の下側に配置されるセンターポール31と、センターポール31の周囲に設けられるマグネット32及びプレート33と、センターポール31の外周に設けられ、フレーム30の中央に立設するボイスコイル34と、ボイスコイル34とフレーム30とに取り付けられるダンパー35と、ボイスコイル34の先端部に設けられる緩衝材であるキャップ36と、ボイスコイル34の先端側に取り付けられるスピーカ振動板W1とを備えている。
【0037】
なお、フレーム30は、略円錐状に前端側が拡径された筒状に形成されており、前端側に保持部30aが形成され、その後端部がプレート33の上面に固定されている。また、スピーカ振動板W1は、その下端側において、ボディ部10の中心孔10cがボイスコイル34に取り付けられている。また、スピーカ振動板W1は、その上端側において、サラウンドエッジ部20の外側鍔片20cが、フレーム30の前端側に設けられた保持部30aに固定されている。
【0038】
このように、本実施形態のスピーカSPは、上述した機能のスピーカ振動板W1を備えている。したがって、本実施形態によれば、従来技術の三層構造のスピーカ振動板400(図8参照)を備えたスピーカに比べて、低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカSPを提供することができる。
また、本実施形態のSPは、上述したように、スピーカ振動板W1の径方向の寸法を大きくすることなく、スピーカ振動板W1のボディ部10を大きくできる。その結果、本実施形態のスピーカSPは、その径方向の寸法を大きくすることなく、指向性を広げることが出来ると共に、音圧を上げることができる。
【0039】
以上、説明したように、本実施形態によれば、低コストで明瞭な音色を高音域まで再生できるスピーカ振動板W1及びスピーカ振動板W1を備えたスピーカSPを提供することができる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、スピーカ振動板W1のボディ部10がコーン形状(円錐形状)に形成されているが、特にこれに限定されるものではない。ここで、本実施形態のボディ部10を変形した第1、2変形例について、図6を参照しながら説明する。
【0041】
ここで、図6は、本発明の実施形態のスピーカ振動板の変形例を説明するための模式図であり、(a)が対比のために示した本実施形態のスピーカ振動板を示した模式図であり、(b)がスピーカ振動板の第1変形例を示した模式図であり、(c)がスピーカ振動板の第2変形例を示した模式図である。
【0042】
具体的には、図6(b)に示すスピーカ振動板W2のように、ボディ部110が、平板形状になっていても良い。このボディ部110は、上述した実施形態と同様、裏面にハニカムパターン12が形成されている。また、図6(c)に示すスピーカ振動板W2のように、ボディ部210が、パラボリック形状になっていても良い。このボディ部210は、上述した実施形態と同様、裏面にハニカムパターン12が形成されている。
【0043】
なお、図6(b)、(c)では、サラウンドエッジ部120のエッジロール部120aが上方に凸んだアップロールの形状になっており、そのエッジロール部120aの全体がボディ部110(或いは210)の外側端部から、径方向・外側に突出した構成になっている例を示している。しかし、第1、2変形例においても、図6(a)に示す本実施形態と同様のサラウンドエッジ部20の構成を採用し、サラウンドエッジ部20bが、ボディ部110(或いは210)の外側端部より所定寸法分内側の位置に貼り付けられ、エッジロール部20aの一部が、ボディ部110(或いは210)の外側部分の一部と、径方向に重複して配置されていても良い。
【符号の説明】
【0044】
SP…スピーカ

W1…スピーカ振動板
10…ボディ部
10a…表面
10b…裏面
10c…中心孔
10d…折り曲げ部
12…ハニカムパターン
12a…コア部
12b…ハニカムリブ部
20…サラウンドエッジ部
20a…エッジロール部
20b…内側鍔片
20c…外側鍔片
W2…スピーカ振動板
110…ボディ部
W3…スピーカ振動板
210…ボディ部

30…フレーム
30a…保持部
31…センターポール
32…マグネット
33…プレート
34…ボイスコイル
35…ダンパー
36…キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8