(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120330
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】還元水素水生成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
C02F1/68 510B
C02F1/68 530B
C02F1/68 540A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017164
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】508095429
【氏名又は名称】廣岡 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 圭
(57)【要約】
【課題】還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できる還元水素水の生成方法及び還元水素水生成装置を提供する。
【解決手段】複数のMg片20に対して水道水を連続的に供給することにより、複数のMg片20を通り過ぎる水道水中に、H
2、Mg
2+を生成すると共に、OH
-濃度を、複数のMg片20への供給前の水道水中の水酸化物イオン濃度よりも増大させ、水道水の流れによって、複数の各Mg片20の周囲に位置するH
2、Mg
2+及びOH
-をその複数の各Mg片20から離間させる方向に誘導する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む水調整材に対して被処理水を連続的に供給することにより、該水調整材を通り過ぎる被処理水中において、水素ガス、前記金属の金属イオンを生成すると共に、水酸化物イオン濃度を、該水調整材への供給前の被処理水中の水酸化物イオン濃度よりも増大させ、
前記被処理水の流れによって、前記水調整材の周囲に位置する前記水素ガス、前記金属の金属イオン及び水酸化物イオンを該水調整材から離間させる方向に誘導する、
ことを特徴とする還元水素水の生成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記水調整材を、複数の水調整材片を集合させて構成し、
前記水調整材に対して前記被処理水を連続的に供給したとき、該被処理水を前記複数の各水調整材片間を通過させると共に、該複数の各水調整材片を該被処理水中で浮遊状態とする、
ことを特徴とする還元水素水の生成方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記水調整材に対する前記被処理水の供給流速の調整により該処理水の酸化還元電位を調整する、
ことを特徴とする還元水素水の生成方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記水調整材における金属がミネラル成分である、
ことを特徴とする還元水素水の生成方法。
【請求項5】
流入口と流出口とを備え、該流入口から被処理水を連続的に流入させて該被処理水を該流出口に向けて流す装置本体と、
前記装置本体内に設けられ、その材料成分が、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含んでいる水調整材と、を備え、
前記水調整材が、前記被処理水の流れ領域に配置されている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記水調整材が、複数の水調整材片を集合させて構成され、
前記複数の各水調整材片は、前記被処理水が前記装置本体内に該装置本体の流入口から流入されているときには、該被処理水が該複数の各水調整材片の周囲を通過可能となるように設定されていると共に、該被処理水中において浮遊状態となるように設定されている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記装置本体の流入口側及び流出口側の少なくとも一方に、該装置本体内における被処理水の流量を調整する流量調整手段が設けられ、
前記流量調整手段が、前記被処理水の流量調整に基づき、前記装置本体内の被処理水の流速を調整可能としている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記装置本体内に複数の仕切り板を間隔をあけつつ順次、設けることにより、複数の収納室が直列配置をもって形成され、
前記複数の各仕切り板に、隣合う前記収納室間を連通させる連通孔がそれぞれ形成され、
前記複数の各収納室に、複数の水調整材片が余裕空間をあけつつそれぞれ収納されている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記各仕切り板の連通孔内面が、その孔を被処理水が通過するときに、その被処理水を螺旋流とするための案内面として形成されている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元水素水の生成方法及び還元水素水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
還元水素水は、溶存水素を含むアルカリ性水溶液として知られている。この還元水素水の生成には、一般に、特許文献1に示すように、電気分解(電解)が用いられており、その生成に当たっては、陰極から電子が被処理水に与えられる。これにより、被処理水中の水素イオン(H+)が水素原子(H)を経て水素分子(H2ガス)となり、それが被処理水中に溶存する一方、被処理水中の水素イオン(H+)濃度の減少に伴い、水酸化物イオン(OH-)濃度が増大してアルカリ性を示すことになる。
【0003】
ところで、本発明者は、還元水素水を簡易且つ効率的に還元水素水を生成するべく、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を水溶液(被処理水)中に浸漬したときに、局部電池が構成されることに着目している。具体的には、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を水溶液中に浸漬すれば、金属が水溶液に溶解して金属イオンになる一方で、電子が金属に残る。この金属上の電子が水溶液中の水素イオン(H+)に与えられ、その水素イオン(H+)は水素原子(H)を経て水素分ガス(H2)となり、それが被処理水中に溶存する。他方で、上記水素イオン(H+)濃度の減少に基づき、水酸化物イオン(OH-)濃度が増大してアルカリ性を示すことになる。この結果、電解を利用した場合同様、還元水素水を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記還元水素水の生成方法においては、水素(H2)が気泡として金属表面に張り付き、その多くの水素ガス(H2)は、水溶液の圧力に打つ勝つことができず、金属に付着した状態が維持される。また、水溶液中に溶出した金属イオンと、相対的に濃度が増大する水酸化物イオンとが金属周囲に近づき、金属の表面に金属水酸化物が不動体として覆うように付着する。このため、金属上の電子と水素イオン(H+)との結合が阻害され(以下、分極)、水素ガス(H2)が生成されることも、水酸化物イオン(OH-)濃度が増大することも抑制される(還元水素水生成の抑制)。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、金属を被処理水中に浸漬することによって還元水素水を生成する還元水素水の生成方法において、還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できるようにすることにある。第2の目的は、上記生成方法を使用した還元水素水生成装置を提供することにある。
【0007】
前記第1の目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)~(4)とした構成とされている。
【0008】
(1)水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む水調整材に対して被処理水を連続的に供給することにより、該水調整材を通り過ぎる被処理水中において、水素ガス、前記金属の金属イオンを生成すると共に、水酸化物イオン濃度を、該水調整材への供給前の被処理水中の水酸化物イオン濃度よりも増大させ、
前記被処理水の流れによって、前記水調整材の周囲に位置する前記水素ガス、前記金属の金属イオン及び水酸化物イオンを該水調整材から離間させる方向に誘導する、
ことを特徴とする還元水素水の生成方法とした構成とされている。
【0009】
この構成により、水調整材を通り過ぎる被処理水中において、水素ガス、前記金属の金属イオンが生成されると共に、水酸化物イオン濃度が、水調整材への供給前の被処理水中の水酸化物イオン濃度よりも増大されることから、溶存水素を含むアルカリ性水溶液である還元水素水を生成できる。しかもこの場合、水調整材の周囲に位置する水素ガス、金属水酸化物となる金属イオン及び水酸化物イオンが、被処理水の流れによって水調整材から離間させる方向に誘導されることから、水素ガス及び金属水酸化物(不動体)が水調整材表面(金属表面)に覆うように付着することを抑制でき(分極抑制)、金属上の電子と水素イオンとの結合を可能にすることができる。このため、還元水素水の生成の継続性を向上させることができ、還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できる。
【0010】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記水調整材を、複数の水調整材片を集合させて構成し、
前記水調整材に対して前記被処理水を連続的に供給したとき、該被処理水を前記複数の各水調整材片間を通過させると共に、該複数の各水調整材片を該被処理水中で浮遊状態とする構成とされている。
【0011】
この構成により、複数の水調整材片をもって水調整材の比表面積を増大させることができ、還元水素水を効果的に生成することができる。その一方で、各水調整材片の周囲に対して被処理水を流すことができ、各水調整材片において、水素ガス(H2)及び不動体である金属水酸化物が覆うように付着することを抑制することができる。しかも、仮に、各水調整材片に水素ガス及び金属水酸化物が付着しても、被処理水中での各水調整材片の浮遊状態に基づき、水調整材片同士を衝突させることもでき、その衝突に基づき、その水素ガス及び金属水酸化物を各水調整材片から離間させることができる。このため、還元水素水を効果的に生成しつつ、その還元水素水の生成の継続性を向上させることができる。
【0012】
(3)前記(1)又は(2)の構成の下で、
前記水調整材に対する前記被処理水の供給流速の調整により該処理水の酸化還元電位を調整する構成とされている。
【0013】
この構成により、本発明者の知見を利用して、酸化還元電位の観点から客観的に、所望の還元水素水を得ることができる。
【0014】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの構成の下で、
前記水調整材における金属がミネラル成分である構成とされている。
【0015】
この構成により、水調整材における金属として、人体にとって有効なミネラル成分を用いることができる。
【0016】
前記第2の目的を達成するために本発明にあっては、下記(5)~(9)とした構成とされている。
【0017】
(5)流入口と流出口とを備え、該流入口から被処理水を連続的に流入させて該被処理水を該流出口に向けて流す装置本体と、
前記装置本体内に設けられ、その材料成分が、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含んでいる水調整材と、を備え、
前記水調整材が、前記被処理水の流れ領域に配置されている、
ことを特徴とする還元水素水生成装置とした構成とされている。
【0018】
この構成により、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む水調整材に対して、被処理水が連続的に供給されることになり、その水調整材を通り過ぎる被処理水中において、水素ガス(H2)、金属の金属イオンが生成されると共に、水酸化物イオン濃度が、装置本体内に流入する前の被処理水中の水酸化物イオン濃度よりも増大することになる(還元水素水の生成)。しかもこの場合、被処理水の流れによって、水調整材の周囲に位置する前記水素ガス、金属の金属イオン及び水酸化物イオンが、その水調整材から離間させる方向に誘導されることになり、水素ガス及び不動体である金属水酸化物が水調整材表面(金属表面)に付着することを抑制でき(分極の抑制)、金属上の電子と水素イオンとの結合を可能にすることができる。このため、前述の(1)の生成方法を使用する還元水素水生成装置を提供できる。
【0019】
(6)前記(5)の構成の下で、
前記水調整材が、複数の水調整材片を集合させて構成され、
前記複数の各水調整材片は、前記被処理水が前記装置本体内に該装置本体の流入口から流入されているときには、該被処理水が該複数の各水調整材片の周囲を通過可能となるように設定されていると共に、該被処理水中において浮遊状態となるように設定されている構成とされている。
【0020】
この構成により、複数の水調整材片をもって水調整材の比表面積を増大させることができ、被処理水と水調整材との接触面積を増大させて、還元水素水を効果的に生成することができる。その一方で、各水調整材片の周囲に対して被処理水を流して、水素ガス、金属イオン、水酸化物イオンを各水調整材片から離間させることができ、各水調整材片において、水素ガス及び不動体である金属水酸化物が付着することを抑制できる。また、仮に、各水調整材片に水素ガス及び金属水酸化物が付着しても、被処理水中での各水調整材片の浮遊状態に基づき、水調整材片同士を衝突させ、各水調整材片と装置本体の内壁とを衝突させることもでき、その衝突に基づき、その水素ガス及び金属水酸化物を各水調整材片から離間させることができる(還元水素水生成の継続性向上)。
【0021】
(7)前記(5)又は(6)の構成の下で、
前記装置本体の流入口側及び流出口側の少なくとも一方に、該装置本体内における被処理水の流量を調整する流量調整手段が設けられ、
前記流量調整手段が、前記被処理水の流量調整に基づき、前記装置本体内の被処理水の流速を調整可能としている構成とされている。
【0022】
この構成により、水調整材に対する被処理水の供給流速を調整することができ、前述の(3)の方法を実施する装置を具体的に提供できる。
【0023】
(8)前記(6)又は(7)の構成の下で、
前記装置本体内に複数の仕切り板を間隔をあけつつ順次、設けることにより、複数の収納室が直列配置をもって形成され、
前記複数の各仕切り板に、隣合う前記収納室間を連通させる連通孔がそれぞれ形成され、
前記複数の各収納室に、複数の水調整材片が余裕空間をあけつつそれぞれ収納されている構成とされている。
【0024】
この構成により、各収納室において還元水素水の生成を担わせることになり、最終的に得られる還元水素水中の溶存水素量を増大させることができる。しかも、各収納室に複数の水調整材片が余裕空間をあけつつそれぞれ収納されていることから、各収納室において、具体的に、連通孔からの被処理水の流れにより各水調整材片を激しく浮遊させることができ、水調整材片同士を衝突させると共に、各水調整材片と装置本体の内壁とを衝突させて、各水調整材片に水素ガス及び金属水酸化物が付着していても、その水素ガス及び金属水酸化物を各水調整材から離間させることができる(還元水素水生成の継続性向上)。
【0025】
(9)前記(8)の構成の下で、
前記各仕切り板の連通孔内面が、その孔を被処理水が通過するときに、その被処理水を螺旋流とするための案内面として形成されている構成とされている。
【0026】
この構成により、仕切り板の孔からの被処理水の旋回流が各水調整材片同士の衝突を促進することになり、水素ガス及び金属水酸化物が各水調整材片に付着することを、一層抑制することができる(還元水素水生成の継続性の一層の向上)。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できる還元水素水の生成方法及びその生成方法を使用する還元水素水生成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る還元水素水生成装置を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る還元水素水生成装置の装置本体内の状態を説明する説明図。
【
図3】水道水中に浸漬されたMg片から還元水素水が生成される仕組みを説明する説明図。
【
図5】第2実施形態に係る還元水素水生成装置を示す図。
【
図6】第2実施形態に係る還元水素水生成装置の装置本体内の状態を説明する説明図。
【
図9】本実施例に係るサンプリングを説明する説明図。
【
図10】比較例に係る各試験水の調整方法を説明する説明図。
【
図11】所定重量のMg片が入れられたビーカー内に一定量の水道水を注入し、その水道水の注入時点からの酸化還元電位及びpHの経時変化値を示す図。
【
図12】
図11の値に基づいて作成された酸化還元電位及びpHの特性を示す特性図。
【
図13】比較例の試験結果値(酸化還元電位及びpHの計測値)を示す図。
【
図14】
図13の計測値に基づいて作成された酸化還元電位及びpHの特性を示す特性図。
【
図15】本実施例の試験結果値(酸化還元電位及びpHの計測値)を示す図。
【
図16】
図15の計測値に基づいて作成された酸化還元電位及びpHの特性を示す図。
【
図17】本実施例の下で、供給水道水流量の変化に対してその水道水の酸化還元電位及びpHの各計測値がどのように変化するかを示す図。
【
図18】
図17の計測値に基づいて作成された酸化還元電位及びpHの特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1~
図4は、第1実施形態における生成方法及びその生成方法を実施する生成装置を示す。この第1実施形態において、符号1は生成装置である。この生成装置1は、被処理水としての水道水を処理して、処理水としての還元水素水を生成する装置本体2と、その装置本体2内に水道水を供給する水道水の供給系3と、装置本体2からの処理水としての還元水素水を取り出す還元水素水の取出し系4とを備えている。これらは、設置面(図示略)上に配置される。
【0031】
前記装置本体2は、
図1、
図2に示すように、軸線が上下方向に円筒状に伸びる一定径(例えば内径14cm)の有底円筒体部5と、その有底円筒体部5の開口部にその開口を覆うように着脱可能且つ液密に取付けられる頭部6とを有している。この装置本体2は、その頭部6が有底円筒体部5よりも上側に位置するように設置され、この装置本体2内には、上下方向に伸びる内部空間7が形成されている。本実施形態においては、この装置本体2の上部に、内部空間7を外部に連通する流入口8が形成され、この装置本体2の下部に、内部空間7を外部に連通させる取出し口9が形成されている。
【0032】
前記水道水の供給系3においては、
図1に示すように、貯水タンク10と装置本体2の流入口8とが供給パイプ11を介して接続され、その供給パイプ11には、貯水タンク10から装置本体2に向けて順に、ポンプ12、流量調整弁13、浄化装置14が介装されている。貯水タンク10は、飲料可能な浄水を貯めるものであり、本実施形態においては、その貯水タンク10内に水道水が貯められる。このため、貯水タンク10内には、図示を略す水道水供給源から水道水が供給され、貯水タンク10内は、常に一定量の水道水が貯留される。ポンプ12は、貯水タンク10内の水道水を装置本体2に向けて送り出す役割を有しており、その吐出能力は、装置本体2の取出し口9からの還元水素水の流出量等を考慮して決められている。流量調整弁13は、装置本体2への流量を調整するものであり、その流量調整を通じて、装置本体2内をその軸線方向に流れる水道水の平均流速が調整されることになる。浄化装置14は、水道水をさらに浄化するものであり、その浄化装置14内には、本実施形態においては、活性炭等の吸着材が収納されている。
【0033】
この場合、浄化装置14が、水(H2O)から水素ガス(H2)を発生する還元反応に関与する電子のエネルギよりも低い電子のエネルギをもって還元される金属イオンを除去できる機能を有していれば、より好ましい。後述する如く、水調整材片(金属)20が保有する電子のエネルギを有効に利用すべく、それを極力、H2OからH2に還元される還元反応以外の還元反応に使用されないようにするためである。このため、水道水中に例えば銅イオンCu2+等が含まれている場合には、取り除くことが好ましい。
【0034】
前記装置本体2内(内部空間7)には、
図2に示すように、装置本体2の軸線方向に間隔をあけて円板状の複数の仕切り板15が設けられている。この各仕切り板15は、下側から上側に向けて順に、装置本体2の内壁に順次設けられる取付け具(図示略)に着脱可能に取付けられ、隣り合う仕切り板15は、後述の水調整材片20を収納するための収納室16を区画している。この場合、最上段の仕切り板15と装置本体2の上部内壁(頭部6の上部内壁)とは、前記流入口8から装置本体2内に水道水を流入させるための流入室17を区画し、最下段の仕切り板15と装置本体2の下部内壁(有底円筒体部5の下部内壁)とは、前記取出し口9から装置本体2外へ水道水を流出させるための流出室18を区画している。この各仕切り板15には、その各仕切り板15の肉厚方向に貫通する複数の連通孔19が形成されている。複数の連通孔19は、本実施形態では、上側から下側に向けての各仕切り板15において、径方向中央部、外周縁部の順に形成され、その各仕切り板15における各個所の複数の連通孔19は、装置本体2内に流入された水道水を
図2の矢印で示すような流れとする。この場合、各仕切り板15における複数の連通孔19の開口面積の総和は、装置本体2内への水道水の供給当初において、上側の収納室16から下側の収納室16に向けて順に、収納室16を水道水で満たすことになるように設定することが好ましい。
【0035】
前記装置本体2内の各収納室16には、
図2に示すように、水道水の水調整を行う水調整材としての複数の水調整材片20(
図2、
図4においては、簡易的に円形状をもって示す。また、
図2において、複数の水調整材片20は一部の収納室16においてのみ図示し、他の収納室16においては図示を略す。)が収納されている。各水調整材片20は、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含むものであり、その金属としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム等のミネラル成分が好ましい。この各水調整材片としては、前記好ましい金属に触媒(例えばFe,FeO,Fe
2O
3等)を含めて成形物(粉体同士を混ぜ合わせて成形としたもの)としたものや、そのような好ましい金属だけで構成するものを選択し得る。本実施形態においては、水調整材片として、金属マグネシウム片単独で構成されるもの(以下、Mg片といい、符号20を用いる。)が用いられる。これは、Mg片がミネラル成分であることに加えて、MgとMg
2+との間の平衡反応の標準電極電位(-2.36(V vs. SHE))が、H
2とH
+との間の平衡反応の標準電極電位(0(V vs. SHE))よりも格段に小さく(電子のエネルギが大きく)、前者が後者よりも酸化し易い(電子を放出し易い)ことに着目して選択されている。
【0036】
この場合、水調整材が複数の水調整材片(Mg片)20とされているのは、複数の水調整材片(Mg片)20ではない一つの塊に比べて水道水との接触面積を増やすべく、比表面積を増大させると共に、後述の通り、複数の各水調整材片20を激しく舞い上がらせるためである。この各収納室16への複数のMg片20の装填に当たっては、有底円筒体部5から頭部6及び仕切り板15を外した上で、各収納装置本体2の下側から上側に向けて順に、各収納室16の相当空間毎にその各相当空間にMg片20を入れ込み、それを終えると、その各相当空間の上側を仕切り板15の取付けにより塞ぐ。この各相当空間へのMg片20の装填が最上段の収納室16の相当空間まで行われると、有底円筒体部5に対して再び頭部6が取付けられ、これにより、Mg片20が装填された装置本体2となる。
【0037】
上記水調整材片としてのMg片20は、装置本体2内に供給される水道水中において、水素ガス(H
2)を生成すると共に、水道水中の水酸化物イオン(OH
-)濃度を増大させて、水道水を還元水素水に処理する役割を果たす。
図3により具体的に説明すれば、Mg片20が水道水(水溶液)中に浸漬されれば、Mg片20が水道水に溶解してMgイオン(Mg
2+)を生成する一方で、電子が、Mg片20表面に残ったり、或いはMg片から金属製(例えばSUS304等)の装置本体2内壁に移動する(局部電流)。このMg片20表面又は装置本体2の内壁上の電子が水道水中の水素イオン(H
+)に与えられ、そのH
+は水素原子(H)を経て水素分ガス(H
2)となり、それが被処理水中に溶存する。このとき、水素よりもイオン化傾向が小さい(電子のエネルギが小さい)金属の金属イオンが除去されていれば、Mg片20表面又は装置本体2の内壁上の電子のほとんどが水道水中のH
+に与えられる。他方で、上記H
+濃度の減少に基づき、水酸化物イオン(OH
-)濃度が増大してアルカリ性を示すことになる。これにより、還元水素水が生成される。
【0038】
前記複数の水調整材片としての複数のMg片20は、
図2に示すように、前記複数の各収納室16において、余裕空間をあけつつそれぞれ収納されている。装置本体2内に水道水が満たされた状態で水道水の流れ(
図2、
図4中、矢印をもって示す。)が生じたときに、その水道水の流れによって、Mg片20をその水道水中て激しく舞い上がらせた浮遊状態とし、その水道水の流れを、各収納室16において複数の各Mg片20の周囲を通る流れとすると共に、各Mg片20同士の衝突、さらには各Mg片20と装置本体2内壁との衝突を促進するためである。このときの水道水の流速(装置本体2内での下向きの平均流速)は、前述の流量調整弁13により調整される。本実施形態においては、各収納室16に収納される複数のMg片20の容積は、各収納室16の容積に対して50~90%が望ましく、60~70%がより好ましい。
【0039】
前記還元水素水の取出し系4においては、取出し口9に接続される取出し管21と、該取出し管21に介装される調整弁22とが備えられている。取出し管21内は、装置本体2内の流出室18に連通されており、その取出し管21から、装置本体2内で水道水の処理を終えたものが還元水素水として流出される。調整弁22は、前記流量調整弁13との関係で、水道水の流量又は装置本体2内の圧力を調整する必要があるときに用いられるものであり、本実施形態においては、一定の開度をもって開かれている。
【0040】
このような還元水素水生成装置1においては、水道水が浄化装置14を経て装置本体2の流入口8に供給されると、水道水は、流入室17から下側の収納室16に向けて順次、満たされていく。そして、装置本体2内が水道水で満たされた状態となると、その状況下で、
図2の矢印で示す水道水の流れが生じ、各収納室16の水道水中において、各Mg片20は、水道水の流れによって激しく舞い上がった浮遊状態となる。これにより、各収納室16において、水道水が複数の各Mg片20の周囲を通って流れると共に、各Mg片20同士の衝突等が促進されることになる。このため、Mg片20に対する水道水の接触面積が増大することになり、各収納室16において、前述のMg片20と水道水との作用関係により還元水素水が効果的に生成される。この結果、取出し管21からの最終的な一定品質の還元水素水を取り出すに当たり、金属(Mg)として複数のMg片20としない一塊のものを用いる場合に比して、その取出し流量を増大させることができ、さらには、その複数のMg片20を収納する複数の収納室16により、単一の収納室16を用いる場合よりも、その効果を一層高めることができる。
【0041】
他方で、各収納室16において、水道水が複数の各Mg片20の周囲を通って流れることになる。このため、各Mg片20の周囲にH2、Mg(OH)2となるMg2+及びOH-が位置しても、それらが水道水の流れによって各Mg片20から離間する方向に誘導されることになり、H2及びMg(OH)2がMg片20表面に覆うように付着することが抑制される(分極抑制)。また、各Mg片20同士の衝突等が水道水の流れに基づき促進されると、仮に、各Mg片20表面にH2及びMg(OH)2が付着しても、その衝突に基づき、そのH2及びMg(OH)2が各Mg片20から離間される。このため、還元水素水を効果的に生成しつつ、その還元水素水の的確な生成の継続性を向上させることができる。
【0042】
ポンプ12の駆動が停止され、又は流量調整弁13が閉弁されたときには、装置本体2内への水道水の供給が停止される。これに伴い、装置本体2内の還元水素水(水道水)の全部が、取出し管21から排出されることになり、当該生成装置1の不使用時には、装置本体2内に水道水(還元水素水)が残存しなくなる。この結果、当該生成装置1の不使用時に、Mg(OH)2等がMg片20表面に覆うように付着することが防止され、当該生成装置1は、次の使用時に的確に機能することになる。尚、装置本体2内の水道水(還元水素水)の全部を取出し管21から排出するために、装置本体2の上部に大気開放弁(図示略)を設けることが好ましく、また、水道水の供給停止後に装置本体2から排出される還元水素水については、その有効利用を図るべく、貯留容器に貯めておき、後に使用できるようにすることが好ましい。
【0043】
図5~
図7は第2実施形態、
図8は第3実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図5~
図7に示す第2実施形態は、前記第1実施形態の変形例を示す。この第2実施形態においては、装置本体2内にその下部から水道水が供給パイプ11を介して供給されることになっている。
【0045】
装置本体2には、その下部において、流入室17、それに連なる流入口8が形成され、その上部において、流出室18、それに連なる取出し口9が形成されている。流入口8に連なる供給パイプ11には、水道水供給源(図示略)から延びる接続ホース23にジョイント24を介して接続され、水道水供給源における水道水圧の下で流量調整弁13により流量調整された水道水が、浄化装置14を介して装置本体2内に供給される。取出し口9には、フレキシブルな取出しパイプ25が接続されており、その取出しパイプ25から処理水としての還元水素水が流出される。また、装置本体2の下部には、
図5に示すように、排水管26が接続され、その排水管26には開閉弁27が介装されている。排水管26及び開閉弁27は、装置本体2内の水道水を外部に排出するときに用いるものであり、通常、開閉弁27は閉じられている。
【0046】
装置本体2内の各収納室16には、前記第1実施形態同様、複数のMg片20が余裕空間をあけつつそれぞれ収納されている一方、その各収納室16を区画する各仕切り板15には、
図6に示すように、複数の連通孔19がそれぞれ形成されている。複数の連通孔19は、各仕切り板15全体において方々に配置されており、装置本体2下部の流入口8から該装置本体2内に流入された水道水は、下側から上側に向けて順に、各収納室16を満たしながら上昇し、装置本体2内全体が水道水で満たされた後に、その状態を維持しつつ、水道水は装置本体2内を上昇する。
【0047】
この第2実施形態においては、装置本体2内に水道水が満たされた状態の下で水道水が供給されると、装置本体2内において、各仕切り板15における複数の連通孔19を貫いて流れる噴流がそれぞれ生じる。この各噴流によって、各Mg片20がその水道水中て激しく舞い上がった浮遊状態となると共に、各収納室の水道水の流れが乱される。このため、各収納室16においては、水道水の流れが複数の各Mg片20の周囲を通って流れると共に、各Mg片20同士の衝突、各Mg片20と装置本体2の内壁との衝突が促進される。これにより、水調整材に対する水道水の接触面積を増大させて、各収納室16において、還元水素水の生成を効果的に行わせる一方で、水道水の流れが複数の各Mg片20の周囲を通って流れることにより、各Mg片20の周囲に位置するH2、Mg(OH)2となるMg2+及びOH-は、各Mg片20から離間する方向に誘導されることになり、H2及びMg(OH)2がMg片20表面を覆うように付着することが抑制される(分極抑制)。また、水道水の流れにより、各Mg片20同士の衝突、各Mg片20と装置本体2の内壁との衝突が促進されることは、仮に、各Mg片20表面にH2及びMg(OH)2が付着しても、その衝突に基づき、そのH2及びMg(OH)2を各Mg片20から離間させる。このため、この第2実施形態においても、還元水素水の的確な生成の継続性を向上させることができる。
【0048】
この第2実施形態においては、還元水素水の生成を停止するときには、流量調整弁13が閉弁されて、装置本体2内への水道水の供給が止められるが、その生成停止がしばらく続く場合には、流量調整弁13が閉弁されると共に、開閉弁27が開弁され、装置本体2内の水道水(還元水素水)の全部が外部に排出される。還元水素水の生成停止の間、滞留水中でのMg片20の酸化作用(Mg2+の生成)によりMg片20等の表面にMg(OH)2等が付着することを防止するためである。勿論この場合も、装置本体2から排出される還元水素水については、その有効利用を図るべく、貯留容器に貯めておき、後に使用できるようにすることが好ましい。
【0049】
図8に示す第3実施形態は、前記第2実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、各仕切り板15の各連通孔19内面が、その各連通孔19を水道水が通過するときに、その水道水を螺旋流とするための案内面として形成されている。具体的には、各連通孔19内面に案内面として螺旋状のねじ山(図示略)が形成されている。これにより、仕切り板15の各連通孔19からの水道水の旋回流が、H
2、Mg
2+及びOH
-を各Mg片20の周囲から離間させること、各Mg片20同士の衝突、各Mg片20と装置本体2の内壁との衝突を、一層促進することになり、各Mg片20に対するH
2及びMg(OH)
2の付着抑制を高めることができる。この結果、還元水素水の的確な生成の継続性を一層向上させることができる。
【実施例0050】
以下に、上記実施形態を用いた実施例(本実施例)を、比較例との比較の上で説明する。
(1)還元水素水の生成、及びMg片の継続使用能力についての確認試験
(1-1)本実施例の試験内容
本実施例においては、
図9に示すように、第2実施形態に係る生成装置1(装置本体2)に所定供給流量の下で浄化装置14通過後の水道水を供給し、その生成装置1の取出し管21から、一定量(1000ml)の処理水を、順次、複数の各ビーカーB1内にサンプリングした。そして、その各サンプリング水の酸化還元電位(各図中における表示として「ORP」を使用し、基準電極として標準水素電極を使用(以下、同様))、pHをそれぞれ計測した。さらに、上記サンプリング後も、処理水を取出し管21から流し続け、試験開始(取出し管21から処理水が流れ始めた時点)から1時間後に、上記と同様、一定量(1000ml)の処理水を、順次、複数の各ビーカーB1内にサンプリングし、その各サンプリング水の計測を行った。このとき、装置本体2の複数の収納室16を上下方向に5段とし、その5段の各収納室にMg片を500g装填し(全体で2500g)、供給水道水(浄化装置14通過後の水道水)としては、供給流量が3(l/分)、酸化還元電位が304mV、pHが7.65であるものを用いた。
【0051】
(1-2)比較例の試験内容
比較例においては、
図10に示すように、所定重量(50g)のMg片が入れられたビーカーB2内に、一定量(100ml)の被処理水としての水道水(本件浄化装置により浄化した本実施例と同じもの(酸化還元電位304mV、pH7.65))を注入して試験水とし、その試験水の酸化還元電位(基準電極として標準水素電極を使用(以下、同様))、pHを計測した。この計測後、ビーカーB2内の所定重量のMg片をそのまま残しつつ試験水だけを捨て、新たな一定量(100ml)の水道水(最初に注入した水道水と同じ水道水)をそのビーカーB2内に注入して新たな試験水とし、その試験水の酸化還元電位、pHを計測した。同様の試験水の計測を、この後、複数回に亘って行った。この場合、各回の試験水の計測は、ビーカーB2内への水道水の注入から所定のタイミング(水道水注入から35分(共通計測タイミング))で行った。この所定タイミングについては、所定重量(50g)のMg片が入れられたビーカーB2内に一定量(100ml)の水道水を注入し、その水道水の注入時点からの酸化還元電位、pHの経時変化を求め、それらの値がほぼ安定した時点を求め、その遅い時点の方を計測時点tdとした。
図11、
図12がその結果を示すものである。
図11、
図12によれば、pHについては、ビーカーB2への水道水の注入後5分程度で、その値が安定する(略一定となる)一方で、酸化還元電位については、ビーカーB2への水道水の注入後35分程度でその値が安定し始めた。このことから、上述の通り、比較例における各試験水の計測の所定タイミングを、ビーカーB2内への水道水の注入から35分とした。
【0052】
(1-3)試験結果
(1-3-1)還元水素水の生成については、水溶液中において、酸化還元電位(計測値)がMgの標準電極電位(-2.36(V vs. SHE))よりも高ければ(酸化方向に進行する状態)、Mgの存在下、MgからMg
2+への移行(Mg表面での負電荷生成)が生じ、しかも、その酸化還元電位がH
2の標準電極電位(0(V vs. SHE))よりも低ければ(還元方向に進行する状態)、Mg表面でH
+からH
2への移行が生じる(還元水素水の生成)。これについては、比較例においては、
図11~
図14に示すように、ビーカーB2への注水後一定時間を経過すれば、試験水がアルカリ性を示すと共に、その酸化還元電位(計測値)が上記条件を満たす各値となり、本実施例においても、順次、サンプリングした各サンプリング水の計測値(酸化還元電位、pH)が、
図15、
図16に示すように、上記条件を満たす各値となった。したがって、比較例、本実施例のいずれにおいても、還元水素水の生成が認められる。
【0053】
(1-3-2)比較例におけるMg片の継続使用能力の試験結果(各回のORP、pH)については、
図13、
図14に示されている。比較例においては、酸化還元電位に関して、いずれの試験水においても、その各計測値は注入時の値(304mV)よりも低下するものの、1回目の試験水の計測値(-89mV)が最も低く、2回目以降、各計測値は、試験の順番が進むに伴い緩やかな勾配をもって次第に上昇した。この結果、1回目の計測値と4回目の値との間で比較的な大きな差分ΔEを示した(
図13,
図14参照)。一方、pHに関しては、1回目の試験水の計測値が注入時における水道水の値(pH7.65)よりも上昇したものの、それ以降の試験水においては、その試験の順番が進むに従って多少、低下する傾向を示した(pH9.30~9.05)。
【0054】
上記試験結果によれば、上記酸化還元電位の傾向に基づき(試験水中の全てのイオン(Mg
2+、H
+等)による電位である酸化還元電位が、試験の順番が進むにつれて次第に上昇すること)、試験水中における各平衡反応(Mg
2++2e=Mg,2H
++2e=H
2等)において、電子を含む側(酸化側)の活性化エネルギが次第に増加し、電子を含まない側(還元側)の活性化エネルギが次第に減少することになる。このため、各Mg片20においては、そのMgの酸化(Mg
2+)が促されて、各Mg片20に負電荷(電子)が帯電し、基本的には、試験水中のH
+がMg片表面でHを経てH
2になる。その一方で、2H
++2e=H
2の反応においては、試験の順番が進むにつれて次第に酸化還元電位が上昇することに基づき、電子を含む側(酸化側)の活性化エネルギが次第に増加し、H
2の生成が低下されると考えられる。これは、各試験において、試験水の注入の度に、Mg片上で生成されたH
2がそのMg片表面に付着して、試験水中の新たなH
+とMg片表面上の電子との結合が抑制されるためだけでなく、各試験において、試験水中に溶出したMg
2+とその試験水中のOH
-とがMg(OH)
2を生成し、Mg片表面に対するそのMg(OH)
2の付着量(被覆面積)が、試験の順番が進むにつれて増し、試験水中の新たなH
+とMg片表面上の電子との結合を抑制するためと考えられる。このことは、
図14において、H
+濃度に関係するpHが、試験の順番が進むに従って多少、低下する(H
+濃度が多少、増加する)ことによっても示されていると考えられる。
【0055】
(1-3-3)本実施例におけるMg片の継続使用能力の試験結果(各回のORP、pH)については、
図15、
図16に示されている。本実施例においては、水中の全てのイオンによる電位である酸化還元電位に関して、いずれのサンプリング水においても、その各計測値は、供給水道水の値(304mV)よりも低下し、取出し管21による処理水の取出し開始直後からの複数(4回)の各サンプリング水だけでなく、処理水の取出し開始から1時間経過後における複数(4回)の各サンプリング水においても、各計測値にほとんど差分が生じなかった(
図15、
図16参照)。pHに関しては、いずれのサンプリング水においても、その各計測値は、注入時の値(pH7.65)よりもアルカリ性域に上昇し、その各サンプリング水の計測値は、処理水の取出し開始直後からの複数(4回)のサンプリングだけでなく、処理水の取出し開始から1時間経過後における複数(4回)の各サンプリングにおいて、ほとんど差分が生じなかった(
図15、
図16参照)。このことから、本実施例は、サンプリングの順番が進んでも、各サンプリング水の各平衡反応の活性化エネルギに変化がなく、比較例に比して、分極等を生じにくく、還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できる点で、優位性を有すると考えられる。
【0056】
(2)装置本体2での水道水の流速による影響についての確認試験
第2実施形態に係る装置1を用いて、流量調整弁13をもって水道水の供給流量を調整することにより、装置本体2内の上昇平均流速を変化させ、そのときの取出し管21からの処理水を1000mlサンプリングし、その各サンプリング水の酸化還元電位、pHを計測した。この場合、装置本体2の複数の収納室16を上下方向に5段とし、その5段の各収納室にMg片を300g装填し(全体で1500g)、供給水道水としては、酸化還元電位が303mV、pHが7.65であるものを用いた。
【0057】
図17、
図18は、上記試験結果を示す。試験結果によれば、pHについては、1回目のサンプリング以降、アルカリ性(pH10.23)の下で、水道水の供給流量(装置本体2内の上昇平均流速)の増大に伴い若干、値が低下傾向を示し、酸化還元電位については、水道水の供給流量(装置本体2内の上昇平均流速)の増大に伴い緩やかな勾配をもって次第に上昇する傾向を示した。これにより、酸化還元電位を低くしたいときには、水道水の供給流量(装置本体2内における水道水の平均流速)を小さくすればよいとの知見を得た。
【0058】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)第1実施形態に係る仕切り板15の構成を第2実施形態に係る仕切り板15に適用し、第2実施形態に係る仕切り板15の構成を第1実施形態に係る仕切り板15に適用すること。
(2)複数の収納室16を適宜の数とし、各収納室16にMg片を装填すること。
(3)還元水素水の溶存水素量等から、各収納室16に対するMg片の装填量を適宜決めること。
(4)Mg片の各大きさ(粒子径)を、供給水道水の流速との関係で、互いに衝突が促進されるような浮遊状態とする観点から、適宜決めること。
(5)各収納室16内に、その軸心を中心とした水道水の螺旋流を形成すること。このため、例えば、装置本体2内の複数の仕切り板15を、それらを貫通する軸棒により一体化し、その軸棒をその軸心を中心として回転させることができる。この場合、仕切り板15の表面に、螺旋流を形成するための案内翼を設けることが好ましい。これにより、各収納室16において、複数のMg片20に、浮遊した状態で乱れた挙動を取らせることができると共に、その動きにより遠心分離効果を生じさせ、複数のMg片20を収納室16の径方向外方側に移動させる一方で、分離されたH2等を収納室16の径方向内方側に移動させること。
(6)装置本体2の内壁を、水調整材としてのMg等の金属により形成すること。
(7)水調整材片20の金属として、種々のものを用い、又は種々のものを混在させること。
(8)各収納室16毎に異なった金属(水調整材)をそれぞれ収納したり、各収納室16内に複数の異なった金属を混在させること。
還元水素水は、溶存水素を含むアルカリ性水溶液として知られている。この還元水素水の生成には、一般に、特許文献1に示すように、電気分解(電解)が用いられており、その生成に当たっては、陰極から電子が被処理水に与えられる。これにより、被処理水中の水素イオン(H+)が水素原子(H)を経て水素分子(H2ガス)となり、それが被処理水中に溶存する一方、被処理水中の水素イオン(H+)濃度の減少に伴い、水酸化物イオン(OH-)濃度が増大してアルカリ性を示すことになる。
ところで、本発明者は、還元水素水を簡易且つ効率的に還元水素水を生成するべく、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を水溶液(被処理水)中に浸漬したときに、局部電池が構成されることに着目している。具体的には、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を水溶液中に浸漬すれば、金属が水溶液に溶解して金属イオンになる一方で、電子が金属に残る。この金属上の電子が水溶液中の水素イオン(H+)に与えられ、その水素イオン(H+)は水素原子(H)を経て水素分ガス(H2)となり、それが被処理水中に溶存する。他方で、上記水素イオン(H+)濃度の減少に基づき、水酸化物イオン(OH-)濃度が増大してアルカリ性を示すことになる。この結果、電解を利用した場合同様、還元水素水を得ることができる。
この構成により、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む水調整材に対して、被処理水が連続的に供給されることになり、その水調整材を通り過ぎる被処理水中において、水素ガス(H2)、金属の金属イオンが生成されると共に、水酸化物イオン濃度が、装置本体内に流入する前の被処理水中の水酸化物イオン濃度よりも増大することになる(還元水素水の生成)。しかもこの場合、被処理水の流れによって、水調整材の周囲に位置する前記水素ガス、金属の金属イオン及び水酸化物イオンが、その水調整材から離間させる方向に誘導されることになり、水素ガス及び不動体である金属水酸化物が水調整材表面(金属表面)に付着することを抑制でき(分極の抑制)、金属上の電子と水素イオンとの結合を可能にすることができる。このため、還元水素水の生成の継続性を向上させることができ、還元水素水を極力、長期に亘って的確に生成できる還元水素水生成装置を提供できる。
この構成により、仕切り板の孔からの被処理水の旋回流が各水調整材片同士の衝突を促進することになり、水素ガス及び金属水酸化物が各水調整材片に付着することを、一層抑制することができる(還元水素水生成の継続性の一層の向上)。
(4)前記(1)の構成の下で、
前記流入口に、被処理水を浄化するための浄化装置が接続され、
前記浄化装置が、水素よりもイオン化傾向が小さい金属の金属イオンを除去するように設定されている構成とされている。
この構成によれば、水調整材片が保有する電子のエネルギを有効に利用すべく、それを極力、水(H
2
O)から水素(H
2
に)に還元される還元反応以外の還元反応に使用されないようにすることができる。
(5)前記(1)の構成の下で、
前記連通孔が、前記各仕切り板において、複数設けられ、
前記複数の連通孔は、前記各仕切り板において、該各仕切り板の配設方向に順番に、径方向中央部、外周縁部の配置順の繰り返しをもって形成されている構成とされている。
(6)前記(1)の構成の下で、
前記複数の水調整材片が、ミネラル成分である構成とされている。
この構成により、水調整材片における金属として、人体にとって有効なミネラル成分を用
いることができる。
(7)前記(1)の構成の下で、
前記各収納室に収納される前記複数の水調整材片の容積が、該各収納室の容積に対して50~90%に設定されている構成とされている。
(8)前記(1)の構成の下で、
前記複数の仕切り板に軸棒が、該複数の仕切り板を貫通した状態で一体化され、
前記軸棒が、該軸棒の軸心を中心として回転可能とされている構成とされている。
この構成によれば、各収納室において、複数の水調整材片に、浮遊した状態で乱れた挙動を取らせることができると共に、その動きにより遠心分離効果を生じさせ、複数の水調整材片を収納室の径方向外方側に移動させる一方で、分離されたH
2
等を収納室の径方向内方側に移動させることができる。
前記還元水素水の取出し系4においては、取出し口9に接続される取出し管21と、該取出し管21に介装される調整弁22とが備えられている。取出し管21内は、装置本体2内の流出室18に連通されており、その取出し管21から、装置本体2内で水道水の処理を終えたものが還元水素水として流出される。調整弁22は、前記流量調整弁13との関係で、水道水の流量又は装置本体2内の圧力を調整する必要があるときに用いられるものであり、本実施形態においては、一定の開度をもって開かれている。
ポンプ12の駆動が停止され、又は流量調整弁13が閉弁されたときには、装置本体2内への水道水の供給が停止される。これに伴い、装置本体2内の還元水素水(水道水)の全部が、取出し管21から排出されることになり、当該生成装置1の不使用時には、装置本体2内に水道水(還元水素水)が残存しなくなる。この結果、当該生成装置1の不使用時に、Mg(OH)2等がMg片20表面に覆うように付着することが防止され、当該生成装置1は、次の使用時に的確に機能することになる。尚、装置本体2内の水道水(還元水素水)の全部を取出し管21から排出するために、装置本体2の上部に大気開放弁(図示略)を設けることが好ましく、また、水道水の供給停止後に装置本体2から排出される還元水素水については、その有効利用を図るべく、貯留容器に貯めておき、後に使用できるようにすることが好ましい。
この第2実施形態においては、装置本体2内に水道水が満たされた状態の下で水道水が供給されると、装置本体2内において、各仕切り板15における複数の連通孔19を貫いて流れる噴流がそれぞれ生じる。この各噴流によって、各Mg片20がその水道水中て激しく舞い上がった浮遊状態となると共に、各収納室の水道水の流れが乱される。このため、各収納室16においては、水道水の流れが複数の各Mg片20の周囲を通って流れると共に、各Mg片20同士の衝突、各Mg片20と装置本体2の内壁との衝突が促進される。これにより、水調整材に対する水道水の接触面積を増大させて、各収納室16において、還元水素水の生成を効果的に行わせる一方で、水道水の流れが複数の各Mg片20の周囲を通って流れることにより、各Mg片20の周囲に位置するH2、Mg(OH)2となるMg2+及びOH-は、各Mg片20から離間する方向に誘導されることになり、H2及びMg(OH)2がMg片20表面を覆うように付着することが抑制される(分極抑制)。また、水道水の流れにより、各Mg片20同士の衝突、各Mg片20と装置本体2の内壁との衝突が促進されることは、仮に、各Mg片20表面にH2及びMg(OH)2が付着しても、その衝突に基づき、そのH2及びMg(OH)2を各Mg片20から離間させる。このため、この第2実施形態においても、還元水素水の的確な生成の継続性を向上させることができる。
この第2実施形態においては、還元水素水の生成を停止するときには、流量調整弁13が閉弁されて、装置本体2内への水道水の供給が止められるが、その生成停止がしばらく続く場合には、流量調整弁13が閉弁されると共に、開閉弁27が開弁され、装置本体2内の水道水(還元水素水)の全部が外部に排出される。還元水素水の生成停止の間、滞留水中でのMg片20の酸化作用(Mg2+の生成)によりMg片20等の表面にMg(OH)2等が付着することを防止するためである。勿論この場合も、装置本体2から排出される還元水素水については、その有効利用を図るべく、貯留容器に貯めておき、後に使用できるようにすることが好ましい。