(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120333
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】トランスファープレス化装置
(51)【国際特許分類】
B30B 13/00 20060101AFI20220810BHJP
B21D 43/05 20060101ALI20220810BHJP
B30B 15/30 20060101ALI20220810BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B30B13/00 E
B21D43/05 Z
B30B15/30 107
B21D28/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017169
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】521056135
【氏名又は名称】奥野 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】奥野 一樹
【テーマコード(参考)】
4E090
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB06
4E090BA02
4E090CC01
4E090EA02
4E090EB05
4E090FA09
4E090HA04
(57)【要約】
【課題】順送プレス設備にてトランスファープレス加工及び順送プレス加工を行うことができるトランスファープレス化装置を提供する。
【解決手段】順送プレス機103内に配置され、順送プレス機103の動作によりコイル材WからブランクBを生成するブランキング用金型12と、順送プレス機103内に配置され、順送プレス機103の動作によりプレス加工を行うトランスファープレス用金型17と、ブランクBをトランスファープレス用金型17へ搬送するブランク把持搬送機構16と、トランスファープレス用金型17内においてプレス成形が1工程終わる度に次工程に移載していくトランスファー機構18とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順送プレス機内に配置され、当該順送プレス機の動作によりコイル材からブランクを生成するブランキング用金型と、
順送プレス機内に配置され、当該順送プレス機の動作によりトランスファープレス加工を行うトランスファープレス用金型と、
前記ブランクを前記トランスファープレス用金型へ搬送するブランク把持搬送機構と、
前記トランスファープレス用金型内においてプレス成形が1工程終わる度に次工程に移載していくトランスファー機構とを備える
ことを特徴とするトランスファープレス化装置。
【請求項2】
前記ブランキング用金型は複数のパンチ部を備え、
前記コイル材に対し列ごとに対応する前記パンチ部がパンチ可能状態となることで、1つずつ前記ブランクを生成していく
ことを特徴とする請求項1に記載のトランスファープレス化装置。
【請求項3】
前記ブランキング用金型が前記コイル材の全列に対し1つずつ前記ブランクを生成する毎に、前記レベラーフィーダーが前記コイル材を1ピッチ分送るように制御する制御部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスファープレス化装置。
【請求項4】
前記ブランキング用金型により生成され、金型下方ブランク用コンベアにより搬送された前記ブランクを搬送する第1ブランク用コンベアと、
前記第1ブランク用コンベアにて搬送された前記ブランクを回転させ、一定の向きに揃えるブランク回転搬送機構と、
前記ブランク回転搬送機構により一定の向きに揃えられた前記ブランクを搬送する第2ブランク用コンベアと、
前記第2ブランク用コンベアにて搬送された前記ブランクを集合させるブランク集合機構とを備え、
前記ブランク把持搬送機構は、前記ブランクを前記ブランク集合機構から前記トランスファープレス用金型へ搬送するものである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトランスファープレス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス加工の一種であるトランスファープレス(例えば下記特許文献1等に記載)は、複数の独立したプレス機を隣接配置した設備を用意し、コイル材から一つ一つ切り離されたブランクを順次隣接するプレス機に搬送・供給し、成形していくものである。
【0003】
同じくプレス加工の一種である順送プレス(例えば下記特許文献2等に記載)は、複数のプレス部位を一定の間隔で配置したプレス機を有する設備を用意し、コイル材をこの間隔に合わせて1ピッチずつ送りながら成形していくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2669122号公報
【特許文献2】特開2010-188401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスファープレス加工は、コイル材からブランクを歩留まりよくとれるものの、ブランクの中間在庫が発生し、ブランキングプレス機とトランスファープレス機が必要となるため、設備価格が高額となる。また、この設備では順送プレス加工を行うことができない。
【0006】
順送プレス加工は、高速で加工することできるものの、コイル材からキャリアやブリッジと呼ばれるつなぎが必要となり歩留まりが悪い。また、この順送プレスを行う設備ではトランスファープレス加工を行うことができない。
【0007】
本発明では、このような課題に鑑み、順送プレス設備(順送プレスを行う設備)にてトランスファープレス加工及び順送プレス加工を行うことを可能とするトランスファープレス化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点におけるトランスファープレス化装置は、
順送プレス機内に配置され、当該順送プレス機の動作によりコイル材からブランクを生成するブランキング用金型と、
順送プレス機内に配置され、当該順送プレス機の動作によりトランスファープレス加工を行うトランスファープレス用金型と、
前記ブランクを前記トランスファープレス用金型へ搬送するブランク把持搬送機構と、
前記トランスファープレス用金型内においてプレス成形が1工程終わる度に次工程に移載していくトランスファー機構とを備える
ことを特徴とする。
【0009】
より好適には、
前記ブランキング用金型は複数のパンチ部を備え、
前記コイル材に対し列ごとに対応する前記パンチ部がパンチ可能状態となることで、1つずつ前記ブランクを生成していく
ことを特徴とする。
【0010】
より好適には、
前記ブランキング用金型が前記コイル材の全列に対し1つずつ前記ブランクを生成する毎に、前記レベラーフィーダーが前記コイル材を1ピッチ分送るように制御する制御部を備える
ことを特徴とする。
【0011】
より好適には、
前記ブランキング用金型により生成され、金型下方ブランク用コンベアにより搬送された前記ブランクを搬送する第1ブランク用コンベアと、
前記第1ブランク用コンベアにて搬送された前記ブランクを回転させ、一定の向きに揃えるブランク回転搬送機構と、
前記ブランク回転搬送機構により一定の向きに揃えられた前記ブランクを搬送する第2ブランク用コンベアと、
前記第2ブランク用コンベアにて搬送された前記ブランクを集合させるブランク集合機構とを備え、
前記ブランク把持搬送機構は、前記ブランクを前記ブランク集合機構から前記トランスファープレス用金型へ搬送するものである
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトランスファープレス化装置によれば、順送プレス設備にてトランスファープレス加工及び順送プレス加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の構成を説明する概略図である。
【
図2】本発明の実施例におけるブランキング用金型の構成を説明する概略図である。
【
図3】本発明の実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の上死点の状態を表わす正面図である(一部構成を省略している)。
【
図5】本発明の実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の下死点の状態を表わす正面図である(一部構成を省略している)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るトランスファープレス化装置について、実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例0015】
図1には、本実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられる順送プレス設備が表わされている。順送プレス設備は一般的なものであり、主たる構成として、アンコイラー101、レベラーフィーダー102、及び、順送プレス機103を備えている。
【0016】
アンコイラー101は、ドラム状のコイル材Cがセットされ、コイル材Wを(たわみを制御しつつ)繰り出し、レベラーフィーダー102に渡す装置である。
【0017】
レベラーフィーダー102は、アンコイラー101の下流側に配置され、レベラーフィーダー102から渡されたコイル材Wを、ロールの回転及び摩擦力によって順送プレス機103へ送り出す装置である。
【0018】
順送プレス機103は、レベラーフィーダー102の下流側に配置され、順送プレス加工を行うことが可能である。また、順送プレス機103には、プレス成形の全工程が完了した完成品を搬送する順送プレスコンベア111が備えられている。
【0019】
図4,5を用いて詳しく説明すると、順送プレス機103は、上方に設けられるクランクシャフト103Aと、クランクシャフト103Aの下方にコネクティングロッド103Bを介して取り付けられ、クランクシャフト103Aの回転運動により上下方向に動作するスライド103Cと、スライド103Cに対向するようにして下方に設けられるボルスター103Fとを備えている。ただし、本実施例にて用いる順送プレス機103はこれに限るものではなく、例えばサーボモータとボールねじによりスライドを動かす方式のもの等、一般的に用いられる順送プレス機103であればよい。
【0020】
そして、順送プレス機103には、スライド103C側に後述するトランスファープレス用金型17の上型ベースプレート103Dが、ボルスター103F側に後述する下型ベースプレート103Eが取り付けられ、(スライド103Cの)上下方向の動作によりプレス加工を行うことが可能である。
【0021】
一方、本実施例に係るトランスファープレス化装置は、順送プレス設備(特に順送プレス機103)に対し、後付けで(取り外し可能に)取り付けられるものであり、主たる構成として、制御部11、ブランキング用金型12、第1ブランク用コンベア13A、第2ブランク用コンベア13B、金型下方ブランク用コンベア13C、ブランク回転搬送機構14、ブランク集合機構15、ブランク把持搬送機構16、トランスファープレス用金型17、及び、トランスファー機構18を備えている。
【0022】
ブランキング用金型12は、レベラーフィーダー102の下流側、かつ、順送プレス機103内)に配置されるブランキング用の金型であり、上型側には上型ベースプレート103Dが設けられ、下型側には下型ベースプレート103Eが設けられる。
【0023】
そしてブランキング用金型12は、レベラーフィーダー102から送り出されてきたコイル材Wに対し、順送プレス機103のスライド103Cの上下方向の動作によりブランク加工を行う。また、ブランキング用金型12にはスクラップカッター12Aが設けられており、これによりブランク加工の際に生ずるスクラップのカット及び排出を行う。
【0024】
またブランキング用金型12は、カットパンチ選択カム駆動用サーボモータ21により駆動制御され、多列ブランクを1個ずつ生成するものである。詳しくは後述する。
【0025】
金型下方ブランク用コンベア13Cは、ブランキング用金型12の下方(下型ベースプレート103E上)に配置され、生成されたブランクBを第1ブランク用コンベア13Aに搬送するものである。
【0026】
第1ブランク用コンベア13Aは順送プレス機103内に配置される。より詳しくは、第1ブランク用コンベア13Aは(スライド103Cの上下方向の動作の影響を受けないようにして)下型ベースプレート103E上に載置される。そして第1ブランキング用コンベア13Aは、ブランキング用金型12により生成され、金型下方ブランク用コンベア13Cにより搬送されたブランクBをブランク回転機構14に搬送するものである。
【0027】
ブランク回転搬送機構14は、順送プレス機103内における第1ブランク用コンベア13Aの下流側に配置される。より詳しくは、ブランク回転搬送機構14は(スライド103Cの上下方向の動作の影響を受けないようにして)下型ベースプレート103E上における第1ブランク用コンベア13Aの下流側に載置される。そしてブランク回転搬送機構14は、第1ブランク用コンベア13Aにて搬送されたブランクBを回転させ、予め定められた一定の向きに揃え、第2ブランク用コンベア13Bへ搬送するものである。
【0028】
第2ブランク用コンベア13Bは、順送プレス機103内におけるブランク回転機構14の下流側に配置される。より詳しくは、ブランク回転搬送機構14は(スライド103Cの上下方向の動作の影響を受けないようにして)下型ベースプレート103E上におけるブランク回転搬送機構14の下流側に載置される。そしてブランク回転搬送機構14は、ブランク回転搬送機構14により搬送されたブランクBをブランク集合機構15へ搬送するものである。
【0029】
なお、ブランク回転搬送機構14は、複雑形状のブランクに対応するため、画像処理システム及びこれに基づき動作する多軸ロボットを備えるものとしてもよい。又は、単純な丸形状のブランクBであれば、第2ブランク用コンベア13Bを第1ブランク用コンベア13Aよりも下に配置することで、ブランク回転搬送機構14を用いずに、第1ブランク用コンベア13Aの下流側端部からブランクBを落下させて第2ブランク用コンベア13Bに乗せるようにしてもよく、あるいは、ブランク回転搬送機構14をエアーシリンダーを使用したプッシャー機構とし、これによりブランクBを押すことで第2ブランク用コンベア13Bに乗せるようにしてもよい。
【0030】
また、図示していないが、金型下方ブランク用コンベア13Cから第1ブランク用コンベア13AへのブランクBの受け渡しも、ブランク回転搬送機構14と同様の機構によって行われるものとしてもよい。
【0031】
ブランク集合機構15は、順送プレス機103内における第2ブランク用コンベア13Bの下流側に配置される。より詳しくは、ブランク集合機構15は(スライド103Cの上下方向の動作の影響を受けないようにして)下型ベースプレート103E上における第2ブランク用コンベア13Bの下流側に載置される。そしてブランク集合機構15は、第2ブランク用コンベア13Bにて搬送されたブランクBを集合させるものである。
【0032】
ブランク把持搬送機構16は、ブランク集合機構15に集合したブランクBを把持してトランスファープレス用金型17へ搬送するものである。さらに、トランスファー機構18は、トランスファープレス用金型17内においてプレス成形が1工程終わる度に次工程に移載していくものである。
【0033】
トランスファープレス用金型17は、トランスファープレス用の金型であり、上型側には上型ベースプレート103Dが設けられ、下型側には下型ベースプレート103Eが設けられる。なお、上型ベースプレート103D及び下型ベースプレート103Eは、ブランキング用金型12と共用される。
【0034】
またトランスファープレス用金型17は、工程毎に異なる形状の型が設けられている。これにより、トランスファープレス用金型17は、順送プレス機103のスライド103Cの上下方向の動作によりプレス加工を行うことができる。
【0035】
制御部11は、ブランキング用金型12、各コンベア13A,13B,13C、ブランク回転機構14、ブランク把持搬送機構16、トランスファー機構18、及び、レベラーフィーダー102を制御するものであり、間欠送り制御部20、カットパンチ選択カム駆動用サーボモータ21、ブランク把持搬送X軸用サーボモータ22、ブランク把持搬送Y軸用サーボモータ23、ブランク把持搬送Z軸用サーボモータ24、トランスファーX軸用サーボモータ25、トランスファーY軸用サーボモータ26、及び、トランスファーZ軸用サーボモータ27を備えている。
【0036】
カットパンチ選択カム駆動用サーボモータ21は、ブランキング用金型12の制御を行う。詳細には、後述する中央カム35の駆動制御を行う。
【0037】
ブランク把持搬送X軸用サーボモータ22は、ブランク把持搬送機構16のX軸方向の移動を制御するものである。ブランク把持搬送Y軸用サーボモータ23は、ブランク把持搬送機構16のY方向の移動を制御するものである。ブランク把持搬送Z軸用サーボモータ24は、ブランク把持搬送機構16のZ軸方向の移動を制御するものである。
【0038】
トランスファーX軸用サーボモータ25は、トランスファー機構18のX軸方向の移動を制御するものである。トランスファーY軸用サーボモータ26は、トランスファー機構18のY方向の移動を制御するものである。トランスファーZ軸用サーボモータ27は、トランスファー機構18のZ軸方向の移動を制御するものである(これらを纏めてトランスファー機構制御部28と呼称する)。
【0039】
間欠送り制御部20は、レベラーフィーダー102の送り動作をブランキング用金型12の動作に合せるように制御する。具体的には、後述するようにブランキング用金型12がコイル材Wを列数分加工(コイル材Wの全列に対し1つずつブランクBを生成)する毎に、レベラーフィーダー102がコイル材Wを1ピッチ分送るように制御する。
【0040】
ここでブランキング用金型12について
図2の概略的断面図を用いて詳述する。なお、
図2においてコイル材Wの幅方向は紙面向かって手前(又は奥)向きであるものとする。
【0041】
ブランキング用金型12は、上型側に第1パンチ部31、第2パンチ部32、第1カム33、第2カム34、及び、中央カム35を備えている。
【0042】
第1パンチ部31及び第2パンチ部32は、互いにコイル材進行方向及びコイル材幅方向に離隔して配置され、それぞれ鉛直方向に移動可能であり、コイル材Wの一部を打ち抜いて落下させるものである。この打ち抜かれた素材がブランクBである。また、第1カム33、第2カム34、及び、中央カム35は、第1パンチ部31及び第2パンチ部32を交互に上下動させるものである。以下この点について詳述する。
【0043】
まず、第1パンチ部31は、第2パンチ部32よりもコイル材進行方向上流側において鉛直方向に移動可能であり、スプリングやエアー圧力で常に鉛直方向上方側向きの力が加わっている。また、第1パンチ部31の上面は、水平方向に拡がる水平面H1、及び、水平面H1よりもコイル材進行方向下流側において、下流側へ向かうにつれ下方に傾斜する傾斜面S1から成る。
【0044】
第2パンチ部32は、第1パンチ部31よりもコイル材進行方向下流側において鉛直方向に移動可能であり、スプリングやエアー圧力で常に鉛直方向上方側向きの力が加わっている。また、第2パンチ部32の上面は、水平方向に拡がる水平面H2、及び、水平面H2よりもコイル材進行方向上流側において、上流側へ向かうにつれ下方に傾斜する傾斜面S2から成る。
【0045】
第1カム33は、第1パンチ部31の鉛直方向上部に、第1パンチ部31と常に摺接するようにして配置され、水平方向に移動可能であり、スプリングやエアー圧力で常にコイル材進行方向下流側向きの力が加わっている。また、第1カム33の底面は、水平方向に拡がる水平面H3、及び、水平面H3よりも上流側において端側に向かうにつれ上方に傾斜する傾斜面S3から成る。
【0046】
第2カム34は、第2パンチ部32の鉛直方向上部に、第2パンチ部32と常に摺接するようにして配置され、水平方向に移動可能であり、スプリングやエアー圧力で常にコイル材進行方向上流側向きの力が加わっている。また、第2カム34の底面は、水平方向に拡がる水平面H4、及び、水平面H4よりも下流側に向かうにつれ上方に傾斜する傾斜面S4から成る。
【0047】
中央カム35は、コイル材進行方向においては第1カム33と第2カム34との間、かつ、鉛直方向においては第1カム33及び第2カム34と同位置に配置される。また中央カム35は、球体の一部が水平方向に滑らかに延伸した形状(当該部分を延伸部35Aと呼称する)であり、
図2中の破線矢印で示すように、球体部分中央におけるコイル材幅方向と平行な軸心を中心として回転可能である。
【0048】
そして、第1カム33及び第2カム34にはスプリングやエアー圧力で常に中央カム35向きの力が加わっているため、第1カム33及び第2カム34において中央カム35側を向く側面L1,L2は、回転する中央カム35に対し常に摺接している。
【0049】
したがって、中央カム35が回転することで、第1カム33及び第2カム34に対し交互に延伸部35Aが摺接することになる。
【0050】
第1カム33は、延伸部35Aが摺接し始めるとともにコイル材進行方向上流側に押圧され移動する。その際、まず第1カム33の傾斜面S3と第1パンチ部31の傾斜面S1とが摺接し、その後、第1カム33の水平面H3と第1パンチ部31の水平面H1とが摺接することで、
図2に示すように、第1パンチ部31は、鉛直方向下方に押し出される。この状態において順送プレス機103のスライド103Cが下降することで、第1パンチ部31がコイル材Wの一部を打ち抜いて落下させ、ブランクBを生成することができる。
【0051】
そしてこれは、第2カム34側の動作においても同じことが言える。したがって、第1パンチ部31及び第2パンチ部32は交互にブランク材Bを生成することができる。また、第1カム33、第2カム34を動かす方法は電磁ソレノイドバルブで制御するエアー圧力や油圧を利用したシリンダー機構を使用しても良い。
【0052】
また、中央カム35の回転方向は、球体部分中央における鉛直方向と平行な軸心を中心として回転するようにしてもよい。さらに、上述では第1パンチ部31及び第2パンチ部32が設けられるものとして説明したが、パンチ部及びそれに対応するカムの数はいくつであってもよい。つまり、中央カムの周りに、中央カムに対し前後するように移動する(第1カム33、第2カム34のような)カムが複数設けられ、これらのカムの移動に伴い上下方向に移動するパンチ部を備えるようにしてもよい。さらには、中央カムを複数設け、それぞれの中央カムに対し、カム及びパンチ部が複数配置されるようにしてもよい。また、中央カム35を複数設ける場合に制御用のサーボモータを複数にしてもよい。
これによりブランク加工の列数と加工位置が決定する。
【0053】
たとえば、多列ブランクを5列とした場合、パンチ部及びそれに対応するカムの数はそれぞれ5つずつ必要となる。そしてこれらは中央カム35の回転方向(球体部分中央における鉛直方向と平行な軸心を中心とした回転)に沿って配置される。また、多列ではなく1列加工を行うこともできる。
【0054】
このようにしてブランキング用金型12は、多列ブランク加工を行いつつも、コイル材Wに対し列ごとに対応するパンチ部が順番にパンチ可能状態となり、順送プレス機103のスライド103Cの動作により、1つずつブランクBを生成していくことができる。既に説明したように、間欠送り制御部20によりレベラーフィーダー102の送り動作が制御されているため、ブランキング用金型12がコイル材Wの全列に対し1つずつブランクBを生成する度に、コイル材Wが1ピッチ進み、新たに全列に対し1つずつブランクBを生成していくことになる。
【0055】
以上が本実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の構成の説明である。以下では、これらの大まかな動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
ステップS1では、アンコイラー101によりコイル材Wを繰り出し、レベラーフィーダー102に渡す。
【0057】
ステップS2では、間欠送り制御部20により制御されるレベラーフィーダー102にて、コイル材Wを順送プレス機103へ送り出す。
【0058】
ステップS3では、カットパンチ選択カム駆動用サーボモータ21により制御されるブランキング用金型12にて、ブランクBを生成する。
【0059】
ステップS4では、生成されたブランクBを金型下方ブランク用コンベア13Cから第1ブランク用コンベア13Aに搬送する。
【0060】
ステップS5では、第1ブランク用コンベア13Aにより搬送されたブランクBをブランク回転機構14により回転させて向きを揃える。
【0061】
ステップS6では、ブランク回転機構14により回転させて向きを揃えられたブランクBを第2ブランク用コンベア13Bにより搬送する。
【0062】
ステップS7では、第2ブランク用コンベア13Bにより搬送されたブランクBをブランク集合機構15により集合させる。
【0063】
ステップS8では、ブランク把持搬送X軸用サーボモータ22、ブランク把持搬送Y軸用サーボモータ23、及び、ブランク把持搬送Z軸用サーボモータ24により制御されるブランク搬送機構16にて、ブランクBをトランスファープレス用金型17に送り、さらに、トランスファープレス用金型17内において1工程が終わる度に次工程に搬送していくことで、プレス加工を行う。これがトランスファープレス加工となる。
【0064】
以上が本実施例に係るトランスファープレス化装置、及び、これが取り付けられた順送プレス設備の大まかな動作説明である。
【0065】
本実施例に係るトランスファープレス化装置は、一般的な順送プレス設備に取り付けることで、多列ブランク加工で高歩留まりのトランスファープレス加工を行うことができ、さらに、順送プレス設備を用いているため順送プレス加工も可能であり、生産性が向上する。
【0066】
また、従来のトランスファープレス加工ではブランクを入れた籠やマガジンなどの中間在庫が多く発生するが、本実施例に係るトランスファープレス化装置は、順送プレス機内でブランクを加工するので中間在庫が発生しない。
【0067】
さらに、本実施例に係るトランスファープレス化装置は、順送プレス設備に対し、金型交換と、駆動装置及び配線コネクターの接続とを行うだけでトランスファープレス設備に変換することができるので、順送プレス加工とトランスファー加工との段取り替えが簡単である。
【0068】
また、本実施例に係るトランスファープレス化装置は、複数種類のブランキング用金型12、ブランク把持搬送機構16、トランスファープレス用金型17、トランスファー機構18、上型ベースプレート103D、下型ベースプレート103Eを予め用意し、これらの一部または全てを交換することで、他のプレス加工部品を加工することが可能である。
前記ブランキング用金型が前記コイル材の全列に対し1つずつ前記ブランクを生成する毎に、前記レベラーフィーダーが前記コイル材を1ピッチ分送るように制御する制御部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスファープレス化装置。