(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120350
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】液晶調光装置駆動用電源
(51)【国際特許分類】
G02F 1/133 20060101AFI20220810BHJP
B60J 3/06 20060101ALI20220810BHJP
B60J 3/04 20060101ALI20220810BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20220810BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G02F1/133 520
B60J3/06
B60J3/04
E06B9/24 C
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017189
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 勇介
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
【Fターム(参考)】
2H088EA23
2H088EA34
2H088HA06
2H088MA20
2H193ZF05
2H193ZF09
2H193ZR06
2H193ZR18
(57)【要約】
【課題】簡素、且つ、低コストで実現可能な液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源を提供する。
【解決手段】液晶調光装置駆動用電源1は、入力された所定の電圧値の直流電圧を予め設定された第1電圧値の直流電圧に変換するDC/DCコンバータ13と、第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値からなる第2直流電圧を生成する第2直流電圧生成部32と、第2直流電圧生成部32と並列に設けられ、第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値よりも小さい第3電圧値からなる第3直流電圧を生成する第3直流電圧生成部33とを有する直流電圧生成部17と、第2直流電圧及び第3直流電圧の何れかに基づいて液晶調光装置2を駆動する交流電圧を生成するDC/ACインバータ18と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源であって、
入力された所定の電圧値の直流電圧を予め設定された第1電圧値の直流電圧に変換するDC/DCコンバータと、
前記第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値からなる第2直流電圧を生成する第2直流電圧生成部と、前記第2直流電圧生成部と並列に設けられ、前記第1電圧値の直流電圧に基づいて前記第2電圧値よりも小さい第3電圧値からなる第3直流電圧を生成する第3直流電圧生成部とを有する直流電圧生成部と、
前記第2直流電圧及び前記第3直流電圧の何れかに基づいて前記液晶調光装置を駆動する交流電圧を生成するDC/ACインバータと、
を備える液晶調光装置駆動用電源。
【請求項2】
前記第2直流電圧生成部は、前記直流電圧生成部が前記DC/DCコンバータと接続される第1端から前記直流電圧生成部が前記DC/ACインバータと接続される第2端への電流の流れを許容するダイオードと、当該ダイオードと直列に接続され、前記第1端から前記第2端への電流を遮断可能な第1スイッチング素子とを有し、
前記第3直流電圧生成部は、カソード端子が前記第1端に接続され、アノード端子が前記第2端に接続されるツェナーダイオードと、前記アノード端子と前記第3電圧値よりも低い第4電圧値の電位が印加される接続線との間に設けられる抵抗器とを有し、
前記第3直流電圧生成部は、前記第2直流電圧生成部が有する前記第1スイッチング素子が開状態であるときに前記第3直流電圧を生成する請求項1に記載の液晶調光装置駆動用電源。
【請求項3】
前記DC/ACインバータから出力される前記交流電圧の立上り及び立下りと同期し、且つ、前記交流電圧の半周期よりも短い第1時間に亘って前記第1スイッチング素子を閉状態とする制御部を更に備える請求項2に記載の液晶調光装置駆動用電源。
【請求項4】
前記制御部は、前記液晶調光膜の環境温度が低い程、前記第1時間を長くする請求項3に記載の液晶調光装置駆動用電源。
【請求項5】
前記制御部は、前記液晶調光膜の使用時間に応じて、前記第1時間を変更する請求項3又は4に記載の液晶調光装置駆動用電源。
【請求項6】
前記第3直流電圧生成部は、前記ツェナーダイオードに流れる電流を遮断可能な第2スイッチング素子を更に有する電圧生成部分を備えて構成され、前記電圧生成部分が互いに並列に複数設けられている請求項2から5のいずれか一項に記載の液晶調光装置駆動用電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶デバイスが広く利用されている。液晶デバイスは、2枚の透明電極付きガラス基板で液晶分子を含む液晶層を挟むように構成される。液晶分子は、透明電極間への電圧の印加に応じて配向が変更される。液晶デバイスは、このような液晶分子の配向と偏光板の偏光方向とを組み合わせて光の透過量が制御される。このような液晶デバイスの一つとして、下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には液晶の透過率を変化させて調光を行う液晶調光装置に関して記載されている。この液晶調光装置は、液晶調光フィルムと当該液晶調光フィルムを駆動する電源装置とを備えて構成され、フリッカや液晶調光フィルムの焼き付きが生じないように、液晶調光フィルムに印加する交流電圧の周波数を設定したり、駆動用交流信号に極性反転が生じる各半周期の初頭部分において絶対値がピーク電圧よりも高い初頭電圧を供給したりするように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、上述したピーク電圧と初頭電圧とを生成する具体的な構成については開示されておらず、簡素、且つ、低コストで実現する構成を検討する余地がある。
【0006】
そこで、簡素、且つ、低コストで実現可能な液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液晶調光装置駆動用電源の特徴構成は、液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源であって、入力された所定の電圧値の直流電圧を予め設定された第1電圧値の直流電圧に変換するDC/DCコンバータと、前記第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値からなる第2直流電圧を生成する第2直流電圧生成部と、前記第2直流電圧生成部と並列に設けられ、前記第1電圧値の直流電圧に基づいて前記第2電圧値よりも小さい第3電圧値からなる第3直流電圧を生成する第3直流電圧生成部とを有する直流電圧生成部と、前記第2直流電圧及び前記第3直流電圧の何れかに基づいて前記液晶調光装置を駆動する交流電圧を生成するDC/ACインバータと、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、直流電圧生成部において、第2直流電圧を生成する第2直流電圧生成部と、第3直流電圧を生成する第3直流電圧生成部とが並列に設けられているので、第2電圧値からなる第2直流電圧と第3電圧値からなる第3直流電圧とを所望のタイミングで切り替えて出力することができる。したがって、簡素、且つ、安価な構成で、液晶調光膜を駆動する交流電源を容易に生成することが可能となる。
【0009】
また、前記第2直流電圧生成部は、前記直流電圧生成部が前記DC/DCコンバータと接続される第1端から前記直流電圧生成部が前記DC/ACインバータと接続される第2端への電流の流れを許容するダイオードと、当該ダイオードと直列に接続され、前記第1端から前記第2端への電流を遮断可能な第1スイッチング素子とを有し、前記第3直流電圧生成部は、カソード端子が前記第1端に接続され、アノード端子が前記第2端に接続されるツェナーダイオードと、前記アノード端子と前記第3電圧値よりも低い第4電圧値の電位が印加される接続線との間に設けられる抵抗器とを有し、前記第3直流電圧生成部は、前記第2直流電圧生成部が有する前記第1スイッチング素子が開状態であるときに前記第3直流電圧を生成すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、DC/DCコンバータから出力された直流電圧を、ツェナーダイオードのツェナー電圧で低下させることで容易に第3直流電圧を生成することができる。また、第2直流電圧生成部の第1スイッチング素子の開閉状態の切り替えにより、簡素な構成で、第2直流電圧と第3直流電圧とを切り替えて出力することができる。
【0011】
また、前記液晶調光装置駆動用電源は、前記DC/ACインバータから出力される前記交流電圧の立上り及び立下りと同期し、且つ、前記交流電圧の半周期よりも短い第1時間に亘って前記第1スイッチング素子を閉状態とする制御部を更に備えると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、DC/ACインバータから出力される交流電圧の出力周波数に応じて第2直流電圧を出力することが可能となる。
【0013】
また、前記制御部は、前記液晶調光膜の環境温度が低い程、前記第1時間を長くすると好適である。
【0014】
環境温度が低い場合には液晶調光膜の応答性が低下することが知られている。そこで、上記構成のように、液晶調光膜の環境温度が低い程、第1時間を長くすることにより、液晶調光膜に対してピーク電圧を印加する時間を長くできるので液晶調光膜の応答性の低下を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記制御部は、前記液晶調光膜の使用時間に応じて、前記第1時間を変更すると好適である。
【0016】
例えば液晶調光膜の使用時間が短い程、第1時間を短くするように構成すると、液晶調光膜の使用時間が短い程、ピーク電圧を印加する時間を短くできるので液晶調光膜の劣化を抑制することが可能となる。あるいは、例えば液晶調光膜の使用時間が短い程、第1時間を長くするように構成すると、液晶調光膜の使用時間が短い程、ピーク電圧を印加する時間を長くできるので液晶調光膜の応答性の低下を抑制することが可能となる。
【0017】
また、前記第3直流電圧生成部は、前記ツェナーダイオードに流れる電流を遮断可能な第2スイッチング素子を更に有する電圧生成部分を備えて構成され、前記電圧生成部分が互いに並列に複数設けられていると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、第3直流電圧として、複数の電圧値からなる直流電圧を生成することができる。また、専用の回路部品を用いることなく、任意の透過率に制御することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】液晶調光装置駆動用電源の構成を示すブロック図である。
【
図2】液晶調光装置駆動用電源の回路構成を示す図である。
【
図4】その他の実施形態に係るピーク電圧生成部を示す図である。
【
図5】その他の実施形態に係るピーク電圧生成部により生成された電圧の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る液晶調光装置駆動用電源(以下「駆動用電源」とする)は、液晶調光装置の駆動用電力を供給可能に構成される。以下、本実施形態の駆動用電源1について説明する。本実施形態では、駆動用電源1が車両のサンルーフや窓ガラスに搭載される液晶調光膜を有する液晶調光装置2に電力供給を行う場合の例を挙げて説明する。
【0021】
図1は、駆動用電源1の構成を模式的に示したブロック図である。
図1に示されるように、駆動用電源1は、電源制御部11、1次側駆動部12、DC/DCコンバータ13、信号伝達部14、2次側電源部15、2次側駆動部(「制御部」の一例)16、ピーク電圧生成部17(「直流電圧生成部」の一例)、DC/ACインバータ18を備えて構成され、各機能部は、駆動用電力の供給に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0022】
駆動用電源1には、バッテリ3から電力が供給される。バッテリ3とは車両に搭載される補機用バッテリである。補機用バッテリとは、電気自動車や、ハイブリッド車や、プラグインハイブリッド車等のような電気エネルギーを動力源とする車両に、例えば電装品等に電力供給を行うために搭載される、主に12Vの直流電圧を出力する蓄電池である。本実施形態の駆動用電源1では、バッテリ3からの電力が後述する電源制御部11、1次側駆動部12、DC/DCコンバータ13に供給される。
【0023】
また、駆動用電源1は、車体制御ECU4から制御信号が伝達される。車体制御ECU4は液晶調光装置2等の車体装備品の動作を制御する。駆動用電源1は、車体制御ECU4から伝達される制御信号に基づき液晶調光装置2に対する電力の供給を制御する。本実施形態の駆動用電源1では、後述する電源制御部11に伝達される。
【0024】
電源制御部11は、車体制御ECU4からの制御信号に基づいて液晶調光装置2に供給する電力を制御する。液晶調光装置2に供給する電力を制御するとは、液晶調光装置2に供給する電圧の電圧値の制御や、当該電圧の電圧値を変更するタイミングの制御が相当する。このような電圧値の制御やタイミングの制御については後述する。電源制御部11は、車体制御ECU4から制御信号を受けると、1次側駆動部12及び信号伝達部14に対して起動信号を出力する。
【0025】
1次側駆動部12は、電源制御部11からの起動信号に基づき起動する。1次側駆動部12は、上述したようにバッテリ3からの直流電圧が印加される。本実施形態では、1次側駆動部12は、バッテリ3からの直流電圧の電圧値を所定の電圧値(例えば5V)に降圧するレギュレータと、DC/DCコンバータ13のスイッチング素子の駆動を制御する制御部とを有する。また、制御部はスイッチング素子に対して制御信号を出力するが、この制御信号のドライブ能力を向上するためにドライバを有していても良い。
【0026】
DC/DCコンバータ13は、入力された所定の電圧値の直流電圧を予め設定された第1電圧値の直流電圧に変換する。入力された所定の電圧値の直流電圧とは、バッテリ3から供給される主に12Vの直流電圧である。予め設定された第1電圧値の直流電圧とは、液晶調光装置2の液晶調光膜の調光に適した電圧値(例えば120V)の直流電圧である。したがって、本実施形態ではDC/DCコンバータ13は、入力電圧を昇圧して出力する昇圧DC/DCコンバータが相当する。DC/DCコンバータ13は、スイッチング素子を有して構成され、スイッチング素子は1次側駆動部12からの制御信号に基づいて開閉動作が行われる。DC/DCコンバータ13は、この開閉動作に応じてバッテリ3から供給される12Vの直流電圧を、液晶調光装置2の液晶調光膜の調光に適した電圧値の直流電圧に変換する。DC/DCコンバータ13により生成された直流電圧は、2次側電源部15及びピーク電圧生成部17に印加される。
【0027】
信号伝達部14は、電源制御部11からの制御信号を2次側駆動部16に対して絶縁された状態で伝達する。すなわち、信号伝達部14は、電源制御部11からの制御信号が入力される入力部分と、2次側駆動部16に制御信号に基づく信号を出力する出力部分とが電気的に絶縁された状態で構成されている。このような信号伝達部14は、例えばフォトカプラを用いて構成することが可能である。係る場合、フォトカプラの発光素子が入力部分を構成し、フォトカプラのフォトトランジスタが出力部分を構成すると良い。これにより、電源制御部11からの制御信号に応じた電流が発光素子に流れることにより発光素子が発光し、その光を開状態のフォトトランジスタが受けて閉状態になることで、電気的に絶縁された状態で電源制御部11からの制御信号を出力する(後段に伝達する)ことが可能となる。本実施形態では、信号伝達部14は、2次側駆動部16に制御信号を出力する。
【0028】
2次側電源部15は、DC/DCコンバータ13から出力された直流電圧を2次側駆動部16の駆動に適した電圧値(例えば12V)に降圧して、2次側駆動部16に供給する。本実施形態では、DC/DCコンバータ13からは20Vの直流電圧が出力される。したがって、2次側電源部15は、20Vの直流電圧を12Vに降圧する。このような2次側電源部15は、例えばレギュレータを用いて構成することが可能である。2次側電源部15により生成された直流電圧は2次側駆動部16に供給される。
【0029】
2次側駆動部16は、ピーク電圧生成部17及びDC/ACインバータ18を駆動する。2次側駆動部16は、上述した信号伝達部14を介して電源制御部11からの制御信号が伝達され、この制御信号に基づき起動する。2次側駆動部16は、上述したように2次側電源部15から直流電圧が供給される。本実施形態では、2次側駆動部16は、2次側電源部15からの直流電圧が供給され、信号伝達部14を介して伝達される電源制御部11からの制御信号に基づき駆動し、ピーク電圧生成部17のスイッチング素子の駆動を制御すると共にDC/ACインバータ18のスイッチング素子の駆動を制御する。また、2次側駆動部16はDC/ACインバータ18のスイッチング素子に対して制御信号を出力するが、この制御信号のドライブ能力を向上するためにドライバを有していても良い。
【0030】
ピーク電圧生成部17は、DC/DCコンバータ13から出力される直流電圧から、複数の電圧値からなる直流電圧を生成する。本実施形態では、ピーク電圧生成部17は、2種類の電圧値からなる直流電圧を生成する。一方の直流電圧をピーク電圧とし、他方の直流電圧をピーク電圧の電圧値よりも低い電圧値のベース電圧とする。ピーク電圧生成部17は、ピーク電圧及びベース電圧のうちいずれの直流電圧を出力するかについては2次側駆動部16により制御される、すなわち、ピーク電圧及びベース電圧の切替タイミングは2次側駆動部16により制御される。ピーク電圧生成部17から出力されるピーク電圧及びベース電圧はDC/ACインバータ18に出力される。
【0031】
DC/ACインバータ18は、ピーク電圧生成部17から出力されるピーク電圧及びベース電圧を交流電圧に変換して液晶調光装置2に出力する。本実施形態では、DC/ACインバータ18は、2次側駆動部16により動作が制御され、矩形波状の交流電圧を出力する。
【0032】
駆動用電源1は、以上のようにして液晶調光装置2に対してピーク電圧及びベース電圧を含む交流電圧を出力し、このような交流電圧に基づき液晶調光装置2が液晶調光膜を駆動することでフリッカや焼き付きを防止することが可能となる。
【0033】
次に、駆動用電源1におけるDC/DCコンバータ13、ピーク電圧生成部17、DC/ACインバータ18の具体的な回路例について説明する。
図2は、DC/DCコンバータ13、ピーク電圧生成部17、DC/ACインバータ18を構成する回路の一例である。また、
図3は、
図2の所定の個所における電圧波形及び電流波形である。
【0034】
DC/DCコンバータ13は、上述したようにバッテリ3から出力された直流電圧を予め設定された第1電圧値の直流電圧に変換する。
図3の(a)には、この直流電圧の電圧波形として、後述する第1端T1における電圧波形が示される。ただし、第1電圧値はV1〔V〕としている。DC/DCコンバータ13は、一対のスイッチング素子(
図2では、IGBT)Q1,Q2、トランスT、一対のダイオードD1,D2を有する絶縁型の昇圧回路で構成される。これにより、上述した信号伝達部14と共に、駆動用電源1の一次側と二次側とを電気的に絶縁分離することが可能となる。このような絶縁型のDC/DCコンバータ13の動作については、公知であるので説明は省略する。DC/DCコンバータ13により昇圧された電圧(V1〔V〕の直流電圧)はピーク電圧生成部17に出力される。
図2では、DC/DCコンバータ13として、プッシュプル型のセンタタップ付き両波整流回路で図示したが、DC/DCコンバータ13はその他の形式であっても良い。
【0035】
ピーク電圧生成部17は、第2直流電圧生成部32と第3直流電圧生成部33とを有する。第2直流電圧生成部32は、第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値からなる第2直流電圧を生成する。第1電圧値の直流電圧とは、DC/DCコンバータ13から出力されるV1〔V〕の直流電圧である。第2電圧値からなる第2直流電圧とは、第1電圧値の直流電圧と同程度の電圧値の直流電圧である。
【0036】
本実施形態では、第2直流電圧生成部32は、ピーク電圧生成部17がDC/DCコンバータ13と接続される第1端T1からピーク電圧生成部17がDC/ACインバータ18と接続される第2端T2への電流の流れを許容するダイオードD3と、当該ダイオードD3と直列に接続され、第1端T1から第2端T2への電流を遮断可能な第1スイッチング素子Q3とを有して構成される。DC/DCコンバータ13と接続される第1端T1とは、ピーク電圧生成部17における入力端子であり、DC/DCコンバータ13からのV1〔V〕の直流電圧が印加される端子である。ピーク電圧生成部17がDC/ACインバータ18と接続される第2端T2とは、ピーク電圧生成部17における出力端子であり、ピーク電圧生成部17が生成した電圧をDC/ACインバータ18に供給する端子である。本実施形態では、ダイオードD3のアノード端子が第1端T1に接続される。第1スイッチング素子Q3はN型MOS-FETを用いて構成され、ダイオードD3のカソード端子と第1スイッチング素子Q3のドレーン端子とが接続される。第1スイッチング素子Q3のソース端子は第2端T2に接続される。第1スイッチング素子Q3のゲート端子には2次側駆動部16からの制御信号が入力される。これにより、第1スイッチング素子Q3が開状態である時には、第1端T1から第2端T2へのダイオードD3を介した電流の流れを遮断し、第1スイッチング素子Q3が閉状態である時には、第1端T1から第2端T2へのダイオードD3を介した電流の流れを許容する。この時の第2端T2には、V1〔V〕から、ダイオードD3の順方向電圧と第1スイッチング素子Q3のドレーン-ソース間電圧との分だけ電圧が低下した電圧値の直流電圧が生じる。この電圧値の直流電圧が上述した第2電圧値からなる第2直流電圧に相当する。なお、
図2においてダイオードD3と第1スイッチング素子Q3とは、ダイオードD3が第1端T1側に設けられ、第1スイッチング素子Q3が第2端T2側に設けられているように図示したが、ダイオードD3が第2端T2側に設けられ、第1スイッチング素子Q3が第1端T1側に設けられるように構成しても良い。
【0037】
第3直流電圧生成部33は、第2直流電圧生成部32と並列に設けられ、第1電圧値の直流電圧に基づいて第2電圧値よりも小さい第3電圧値からなる第3直流電圧を生成する。第2直流電圧生成部32と並列に設けられるとは、第2直流電圧生成部32が設けられる第1端T1と第2端T2との間に第3直流電圧生成部33も設けられることを意味する。第2電圧値よりも小さい第3電圧値からなる第3直流電圧とは、V1〔V〕から、ダイオードD3の順方向電圧と第1スイッチング素子Q3のドレーン-ソース間電圧との分だけ電圧が低下した電圧値からなる第2直流電圧よりも小さい電圧値の直流電圧である。
【0038】
本実施形態では、第3直流電圧生成部33は、カソード端子が第1端T1に接続され、アノード端子が第2端T2に接続されるツェナーダイオードZD1と、アノード端子と第3電圧値よりも低い第4電圧値の電位が印加される接続線との間に設けられる抵抗器R1とを有して構成される。第3電圧値よりも低い第4電圧値の電位が印加される接続線とは、本実施形態では絶縁型のDC/DCコンバータ13における2次側の基準電位である。具体的には、トランスTの二次側センタタップと接続された電位が相当する。したがって、ツェナーダイオードZD1に電流が流れる時には、V1〔V〕から、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧だけ低下した電圧値からなる直流電圧が第2端T2に生じる。このような直流電圧が上述した第3電圧値からなる第3直流電圧に相当する。
【0039】
第3直流電圧生成部33は、第2直流電圧生成部32が有する第1スイッチング素子Q3が開状態であるときに第3直流電圧を生成する。すなわち、ツェナーダイオードZD3には、
図3の(b)に示されるような制御信号が第1スイッチング素子Q3に入力されていないときに、
図3の(c)に示されるような電流が流れることになる。
【0040】
したがって、
図3の(b)に示されるような制御信号が第1スイッチング素子Q3に入力されているときには、
図3の(d)に示されるようなVp〔V〕の直流電圧(ピーク電圧)がピーク電圧生成部17の第2端T2から出力され、制御信号が第1スイッチング素子Q3に入力されていないときには、
図3の(d)に示されるようなVb〔V〕の直流電圧(ベース電圧)がピーク電圧生成部17の第2端T2から出力される。なお、この時のVp〔V〕とVb〔V〕との差異が、上述したツェナー電圧に相当する。また、
図3の(d)では、第2端T2における電圧波形が示される。
【0041】
DC/ACインバータ18は、第2直流電圧及び第3直流電圧の何れかに基づいて液晶調光装置2を駆動する交流電圧を生成する。第2直流電圧とは第2直流電圧生成部32により生成された第2電圧値(上述したVp〔V〕)の直流電圧である。第3直流電圧とは第3直流電圧生成部33により生成された第3電圧値(上述したVb〔V〕)の直流電圧である。「第2直流電圧及び第3直流電圧の何れかに基づく」とは、後述するように、第2直流電圧に基づき生成された交流電圧と第3直流電圧に基づき生成された交流電圧とが同時に出力されることを意味するのではなく、第2直流電圧に基づき生成された交流電圧と第3直流電圧に基づき生成された交流電圧とが交互に出力されることを意味するものである。
【0042】
DC/ACインバータ18は、直列に接続されたハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子とからなるアーム部Aを2組備えた、所謂Hブリッジ回路から構成される。
図2の例では、一方のアーム部Aは、N型MOS-FETQ4,Q5から構成され、他方のアーム部Aは、N型MOS-FETQ6,Q7から構成される。N型MOS-FETQ4-Q7の夫々のゲート端子には、2次側駆動部16から制御信号が入力される。N型MOS-FETQ4,Q7の夫々のゲート端子に入力される制御信号が
図3の(e)に示され、N型MOS-FETQ5,Q6の夫々のゲート端子に入力される制御信号が
図3の(f)に示される。
図3の(e)及び(f)に示されるように、N型MOS-FETQ4,Q7と、N型MOS-FETQ5,Q6とは、互いに相補的に閉状態になるように制御される。
【0043】
すなわち、2次側駆動部16は、DC/ACインバータ18から出力される交流電圧の立上り及び立下りと同期し、且つ、交流電圧の半周期よりも短い第1時間t1に亘って第1スイッチング素子Q3を閉状態とする。これにより、DC/ACインバータ18の一方の端子T3から見た他方の端子T4に生じる電圧(V43)の波形が示される
図3の(g)のように、N型MOS-FETQ5,Q6を開状態としつつ、N型MOS-FETQ4,Q7を閉状態とすると同時に第1時間t1に亘って第1スイッチング素子Q3を閉状態とすることによりVp〔V〕の電圧を液晶調光装置2に供給し、第1時間t1の経過後に第1スイッチング素子Q3を開状態とすることによりVb〔V〕の電圧を液晶調光装置2に供給することが可能となる。続いて、N型MOS-FETQ4,Q7を開状態としつつ、N型MOS-FETQ5,Q6を閉状態とすると同時に第1時間t1に亘って第1スイッチング素子Q3を閉状態とすることにより-Vp〔V〕の電圧を液晶調光装置2に供給し、第1時間t1の経過後に第1スイッチング素子Q3を開状態とすることにより-Vb〔V〕の電圧を液晶調光装置2に供給することが可能となる。これにより、液晶調光膜の応答性を向上することが可能となる。
【0044】
ここで、2次側駆動部16は、液晶調光装置2が有する液晶調光膜の環境温度が低い程、第1時間t1を長くするように構成することが可能である。環境温度が低い場合には液晶調光膜の応答性が低下するが、液晶調光膜の環境温度が低い程、第1時間t1を長くすることにより、ピーク電圧を印加する時間を長くできるので液晶調光膜の応答性の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
また、2次側駆動部16は、液晶調光装置2が有する液晶調光膜の使用時間に応じて、第1時間t1を変更するように構成することも可能である。例えば液晶調光膜の使用時間が短い程、第1時間t1を短くするように構成すると、液晶調光膜の使用時間が短い程、ピーク電圧を印加する時間を短くできるので液晶調光膜の劣化を抑制することが可能となる。あるいは、例えば液晶調光膜の使用時間が短い程、第1時間t1を長くするように構成すると、液晶調光膜の使用時間が短い程、ピーク電圧を印加する時間を長くできるので液晶調光膜の応答性の低下を抑制することが可能となる。
【0046】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第2直流電圧生成部32は、ダイオードD3と第1スイッチング素子Q3とを有し、第3直流電圧生成部33は、ツェナーダイオードZD1と抵抗器R1とを有して構成されると説明したが、第2直流電圧生成部32及び第3直流電圧生成部33は夫々、上述したものとは異なる構成で実現することも可能である。
【0047】
例えば、第3直流電圧生成部33は、
図4に示されるように、ツェナーダイオードZD2,ZD3に流れる電流を遮断可能な第2スイッチング素子Q12,Q13を更に有する電圧生成部分34を備えて構成され、電圧生成部分34が互いに並列に複数、設けられるように構成することも可能である。
図4の例では、電圧生成部分34が2つ設けられている。一方の電圧生成部分34は、ツェナーダイオードZD2と第2スイッチング素子Q12とを備えて構成され、他方の電圧生成部分34は、ツェナーダイオードZD3と第2スイッチング素子Q13とを備えて構成される。ツェナーダイオードZD2とツェナーダイオードZD3とは、夫々のツェナー電圧が互いに等しいものであっても良いし、互いに異なるものであっても良い。例えば、互いに異なるツェナー電圧のツェナーダイオードを用いた場合には、第1スイッチング素子Q3が開状態である場合において、一方の第2スイッチング素子Q12を閉状態にし、他方の第2スイッチング素子Q13を開状態にしたときには、
図5の(a)に示されるように、Vp〔V〕からツェナーダイオードZD2のツェナー電圧だけ小さくなったVb2〔V〕を生成することが可能となる。また、第1スイッチング素子Q3が開状態である場合において、一方の第2スイッチング素子Q12を開状態にし、他方の第2スイッチング素子Q13を閉状態にしたときには、
図5の(b)に示されるように、Vp〔V〕からツェナーダイオードZD3のツェナー電圧だけ小さくなったVb3〔V〕を生成することが可能となる。ただし、
図5の例では、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧<ツェナーダイオードZD3のツェナー電圧である。このように構成することで、例えば液晶調光膜の環境温度や、液晶調光膜の使用時間に応じて、ベース電圧をVb2〔V〕の電圧としたり、Vb3〔V〕の電圧としたりすることができ、耐久性と実用性とを両立し易くすることが可能となる。もちろん、第1時間t1を除く交流電圧の所定の半周期内において、Vb2〔V〕の電圧及びVb3〔V〕の電圧の双方を生成(出力)するように構成することも可能である。具体的には、交流電圧の所定の半周期内に、第1時間t1に亘ってVp〔V〕のピーク電圧を出力し、当該第1時間t1の経過後、Vb2〔V〕の電圧及びVb3〔V〕の電圧の一方を出力し、その後、Vb2〔V〕の電圧及びVb3〔V〕の電圧の他方の出力を出力するように構成することも可能である。
【0048】
上記実施形態では、2次側駆動部16は、DC/ACインバータ18から出力される交流電圧の立上り及び立下りと同期し、且つ、交流電圧の半周期よりも短い第1時間t1に亘って第1スイッチング素子Q3を閉状態とするとして説明したが、DC/ACインバータ18から出力される交流電圧の立上り及び立下りと同期しないで第1スイッチング素子Q3を閉状態とすることも可能である。
【0049】
上記実施形態では、2次側駆動部16は、液晶調光膜の環境温度が低い程、第1時間t1を長くすることが可能であるとして説明したが、2次側駆動部16は、液晶調光膜の環境温度が低い程、第1時間t1を短くするように構成することも可能であるし、液晶調光膜の環境温度にかかわらず、第1時間t1を長くするように構成することが可能である。
【0050】
上記実施形態では、2次側駆動部16は、液晶調光膜の使用時間に応じて、第1時間t1を変更することが可能であるとして説明したが、2次側駆動部16は、液晶調光膜の使用時間にかかわらず、第1時間t1を変更するように構成することが可能である。
【0051】
本発明は、液晶調光膜を有する液晶調光装置に電力供給を行う液晶調光装置駆動用電源に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:液晶調光装置駆動用電源
2:液晶調光装置
13:DC/DCコンバータ
16:2次側駆動部(制御部)
17:ピーク電圧生成部(直流電圧生成部)
18:DC/ACインバータ
32:第2直流電圧生成部
33:第3直流電圧生成部
34:電圧生成部分
D3:ダイオード
Q12:第2スイッチング素子
Q13:第2スイッチング素子
Q3:第1スイッチング素子
R1:抵抗器
T1:第1端
T2:第2端
t1:第1時間
ZD1:ツェナーダイオード
ZD2:ツェナーダイオード
ZD3:ツェナーダイオード