(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120354
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】電気接続端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
H01R13/11 F
H01R13/11 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017194
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安藤 将哉
(72)【発明者】
【氏名】武田 真
(57)【要約】
【課題】接触抵抗の増大を抑制できる電気接続端子を提供する。
【解決手段】電気接続端子40は、基部50と、基部50から分岐して延びる2つの支持部60と、2つの支持部60の先端からそれぞれ延びる2つの挟持部70と、を備える。挟持部70は、第1主面から第2主面42に向かって凹む第1凹部80と、第2主面42から第1主面に向かって凹む第2凹部90と、を有する。板厚方向における平面視において、第2凹部90は第1凹部80よりも大きく、第1凹部80は第2凹部90に収まっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向と直交する2つの主面を接続する側面にせん断面及び破断面を有する電気接続端子であって、
基部と、
前記基部から分岐して延びる2つのアームと、を備え、
2つの前記主面のうち、前記せん断面に近い主面を第1主面とし、前記破断面に近い主面を第2主面としたとき、
前記アームは、前記第1主面から前記第2主面に向かって凹む第1凹部と、前記第2主面から前記第1主面に向かって凹む第2凹部と、を有し、
前記板厚方向における平面視において、前記第2凹部は前記第1凹部よりも大きく、前記第1凹部は前記第2凹部に収まっている
電気接続端子。
【請求項2】
前記第2凹部の前記板厚方向と直交する面積は、前記第2凹部の底面から前記第2凹部の開口に向かうにつれて大きくなる
請求項1に記載の電気接続端子。
【請求項3】
前記アームの先端部は、前記第1凹部及び前記第2凹部を有し、
前記アームの基端部は、前記第1主面から前記第2主面に向かって凹む第3凹部と、前記第2主面から前記第1主面に向かって凹む第4凹部と、を有する
請求項1又は請求項2に記載の電気接続端子。
【請求項4】
前記第1凹部は、前記第1主面において、前記アームの先端部から基端部にかけて設けられ、
前記第2凹部は、前記第2主面において、前記アームの先端部から基端部にかけて設けられる
請求項1又は請求項2に記載の電気接続端子。
【請求項5】
板厚方向と直交する2つの主面を接続する側面にせん断面及び破断面を有する電気接続端子であって、
基部と、
前記基部から分岐して延びる2つのアームと、を備え、
2つの前記主面のうち、前記せん断面に近い主面を第1主面とし、前記破断面に近い主面を第2主面としたとき、
前記第1主面は平坦面であり、
前記アームは、前記第2主面に前記第1主面に向かって凹む凹部を有する
電気接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、モータなどの電装品の給電端子と電気的に接続される電気接続端子が記載されている。
図15に示すように、電気接続端子200は、いわゆるフォーク型端子であり、先端が二股に分岐した2つの挟持片210を有する。電気接続端子200と給電端子300とを電気的に接続する場合には、給電端子300が、2つの挟持片210の間隔を押し広げつつ2つの挟持片210の間に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電気接続端子200は、ダイ上に配置した導電板をパンチでせん断加工することで製造される。このため、
図16に示すように、電気接続端子200の側面には、せん断方向に沿うせん断面211と、せん断面211を延長した面から退避する破断面212と、が生成される。こうして、上記のような電気接続端子200において、2つの挟持片210の間隔は、電気接続端子200の板厚方向に対して一定になりにくい。その結果、上記のような電気接続端子200は、給電端子300が接続されるときの接触抵抗が増大するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、接触抵抗の増大を抑制できる電気接続端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電気接続端子は、板厚方向と直交する2つの主面を接続する側面にせん断面及び破断面を有する電気接続端子であって、基部と、前記基部から分岐して延びる2つのアームと、を備え、2つの前記主面のうち、前記せん断面に近い主面を第1主面とし、前記破断面に近い主面を第2主面としたとき、前記アームは、前記第1主面から前記第2主面に向かって凹む第1凹部と、前記第2主面から前記第1主面に向かって凹む第2凹部と、を有し、前記板厚方向における平面視において、前記第2凹部は前記第1凹部よりも大きく、前記第1凹部は前記第2凹部に収まっている。
【0007】
電気接続端子をせん断加工で製造する場合には、側面にせん断面及び破断面が生成される点で、2つのアームの間隔が板厚方向に対して一定になりにくい。そこで、パンチなどの工具をアームに押し付けることで上記構成のような第1凹部及び第2凹部を設けると、アームの破断面が当該アームのせん断面よりも大きく変位する。その結果、板厚方向に対する2つのアームの間隔の変化が小さくなる。したがって、電気接続端子は、電装品の外部端子と接続されたとき、外部端子との接触面積が小さくなることを抑制できる。こうして、電気接続端子は、接触抵抗の増大を抑制できる。
【0008】
上記電気接続端子において、前記第2凹部の前記板厚方向と直交する面積は、前記第2凹部の底面から前記第2凹部の開口に向かうにつれて大きくなることが好ましい。
一般的に破断面は板厚方向に対して傾くため、2つのアームの破断面の間隔は、第2主面に向かうにつれて次第に大きくなりやすい。このため、2つのアームの破断面の間隔を一定とするためには、アームの第2主面にパンチなどの工具を押し付けることで第2凹部を設ける際に、破断面の第2主面に近い部分ほど大きく変位させる必要がある。この点、上記構成の電気接続端子において、第2凹部の板厚方向と直交する面積は、第2凹部の底面から第2凹部の開口に向かうにつれて大きくなる。このため、電気接続端子は、2つのアームの破断面の間隔をより一定にしやすくなる。
【0009】
上記電気接続端子において、前記アームの先端部は、前記第1凹部及び前記第2凹部を有し、前記アームの基端部は、前記第1主面から前記第2主面に向かって凹む第3凹部と、前記第2主面から前記第1主面に向かって凹む第4凹部と、を有することが好ましい。
【0010】
2つのアームの間に電装品の外部端子が挿入される際、アームには曲げ応力が発生する。この点、上記構成の電気接続端子は、アームの長手方向と直交する断面形状が矩形でなくなる点で、アームの断面二次モーメントが大きくなる。こうして、電気接続端子は、アームの剛性を高めることができる。
【0011】
上記電気接続端子において、前記第1凹部は、前記第1主面において、前記アームの先端部から基端部にかけて設けられ、前記第2凹部は、前記第2主面において、前記アームの先端部から基端部にかけて設けられることが好ましい。
【0012】
上記構成の電気接続端子は、第1凹部及び第2凹部がアームの先端部から基端部にかけて設けられる点でアームの剛性を高めることができる。また、電気接続端子は、アームの先端部に凹部を設け、当該凹部と独立した凹部をアームの基端部に設ける場合よりも、凹部の形成数を少なくできる。
【0013】
上記課題を解決する電気接続端子は、板厚方向と直交する2つの主面を接続する側面にせん断面及び破断面を有する電気接続端子であって、基部と、前記基部から分岐して延びる2つのアームと、を備え、2つの前記主面のうち、前記せん断面に近い主面を第1主面とし、前記破断面に近い主面を第2主面としたとき、前記第1主面は平坦面であり、前記アームは、前記第2主面に前記第1主面に向かって凹む凹部を有する。
【0014】
パンチなどの工具をアームの第2主面に押し付けることで上記構成のような凹部を設けると、アームの破断面がせん断面よりも大きく変位する。その結果、板厚方向に対する2つのアームの間隔の変化が小さくなる。したがって、電気接続端子は、電装品の外部端子と接続されたとき、外部端子との接触面積が小さくなることを抑制できる。こうして、電気接続端子は、接触抵抗の増大を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
電気接続端子は、接触抵抗の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の電気接続端子を備えるアクチュエータの部分断面図。
【
図5】第1実施形態の電気接続端子の中間体の平面図。
【
図6】第1実施形態において、せん断工程中の中間体の断面図。
【
図7】第1実施形態において、圧縮工程中の中間体の断面図。
【
図15】比較例の電気接続端子と外部端子とを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、電気接続端子の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、アクチュエータ10は、電装品の一例としてのモータ20と、モータ20を収容するハウジング30と、モータ20と電気的に接続される2つの電気接続端子40と、を備えている。また、
図1では図示を省略するが、アクチュエータ10は、モータ20の回転速度を減速する減速機構などを備えている。アクチュエータ10は、例えば、窓、サンルーフ、パワーシート及びドアクローザなどの駆動対象を駆動する車両用のアクチュエータである。
【0018】
図1に示すように、モータ20は、2つの外部端子21を有する。外部端子21は、板厚が一定の矩形板状をなしている。2つの外部端子21は、間隔をあけた状態で並行に延びている。モータ20は、例えば、ねじ及びボルトなどの締結部材を介してハウジング30に固定される。モータ20がハウジング30に固定される状態では、モータ20の2つの外部端子21が2つの電気接続端子40にそれぞれ接続される。
【0019】
以下、電気接続端子40について説明する。
図2に示すように、電気接続端子40は、板状をなすフォーク型端子である。電気接続端子40は、板厚方向における平面視(以下、単に「平面視」ともいう。)において、線対称な形状をなしている。電気接続端子40の材質は、銅及び真鍮などの導電性の高い金属であることが好ましい。
【0020】
図2~
図4に示すように、電気接続端子40は、基部50と、基部50から分岐して延びる2つの支持部60と、2つの支持部60の先端からそれぞれ延びる2つの挟持部70と、を有している。本実施形態では、支持部60及び挟持部70により「アーム」の一例が構成されている。言い換えれば、「アーム」は、支持部60及び挟持部70を有している。
【0021】
以降の説明では、電気接続端子40において、板厚方向と直交する2つの面を「第1主面41及び第2主面42」といい、第1主面41及び第2主面42を接続する面を「側面43」という。また、支持部60の延びる方向及び板厚方向の両方向と直交する方向を幅方向ともいい、幅方向における中央側を内側ともいい、幅方向における両側を外側ともいう。
【0022】
基部50は、
図1に図示しない部分において、ハウジング30内に配策される導線に接続されたり、他の端子に接続されたりする。
図2及び
図3に示すように、支持部60は、直線状をなす外側面61と、円弧状をなす内側面62と、を有している。一方の支持部60の内側面62は、同支持部60の外側面61に向けて凸となっている。このため、平面視において、2つの支持部60の間にできる空間は、楕円状をなしている。2つの支持部60の間隔、詳しくは、2つの支持部60の内側面62の間隔は、外部端子21の厚さ以上となっている。
【0023】
挟持部70は、支持部60の外側面61に沿って直線状に延びる第1外側面71と、第1外側面71から傾いた方向に延びる第2外側面72と、円弧状をなす内側面73と、を有している。また、挟持部70は、第1主面41から第2主面42に向かって凹む第1凹部80と、第2主面42から第1主面41に向かって凹む第2凹部90と、を有している。
【0024】
第1外側面71は、第2外側面72と支持部60の外側面61とを接続し、内側面73は、第2外側面72と支持部60の内側面62とを接続している。平面視において、一方の挟持部70の内側面73は、他方の挟持部70に向かって凸となっている。2つの挟持部70の間隔、詳しくは、2つの挟持部70の内側面73の間隔は、2つの支持部60の間隔よりも短くなっている。また、2つの挟持部70の間隔は、外部端子21の厚さ未満となっている。
【0025】
図2~
図4に示すように、第1凹部80は、第1凹部80の底面である第1底面81と、第1凹部80における外側の面である第1外壁面82と、第1凹部80における内側の面である第1内壁面83と、を含んでいる。一方、第2凹部90は、第2凹部90の底面である第2底面91と、第2凹部90における外側の面である第2外壁面92と、第2凹部90における内側の面である第2内壁面93と、を含んでいる。
【0026】
第1底面81は、板厚方向と直交する平面であり、第1外壁面82及び第1内壁面83は、板厚方向に沿う面である。平面視において、第1底面81は略半円状をなしている。このため、平面視において、第1外壁面82は直線状をなし、第1内壁面83は円弧状をなしている。第1内壁面83の曲率半径は、挟持部70の内側面73の曲率半径よりも小さくなっている。第2底面91は、板厚方向と直交する平面であり、第2外壁面92及び第2内壁面93は、板厚方向に沿う面である。平面視において、第2底面91は略半円状をなしている。このため、平面視において、第2外壁面92は直線状をなし、第2内壁面93は円弧状をなしている。
【0027】
図4に示すように、第1主面41から第1底面81までの距離、すなわち、第1凹部80の深さは、第2主面42から第2底面91までの距離、すなわち、第2凹部90の深さと略等しくなっている。
図2及び
図3に示すように、平面視において、第1外壁面82及び第2外壁面92は重なって位置し、第1内壁面83は第2内壁面93よりも一回り小さくなっている。このため、板厚方向に第1凹部80及び第2凹部90を重ねると、第1凹部80は第2凹部90に収まり、第2凹部90は第1凹部80よりも大きくなっているといえる。また、挟持部70の内側面73から第1凹部80の第1内壁面83までの距離は、挟持部70の内側面73から第2凹部90の第2内壁面93までの距離よりも長くなっている。言い換えれば、第2内壁面93は、第1内壁面83よりも挟持部70の内側面73に寄っている。
【0028】
第1実施形態において、挟持部70が第1凹部80及び第2凹部90を有する点で、第1凹部80及び第2凹部90は「アーム」の先端部に設けられているといえる。
以上説明した電気接続端子40に外部端子21が接続される場合には、外部端子21が電気接続端子40の2つの挟持部70の間に挿入される。このとき、2つの挟持部70の間隔が外部端子21の厚さ未満であることから、2つの挟持部70は外部端子21により押し広げられる。そして、外部端子21は、電気接続端子40の2つの挟持部70の内側面73に接触する。
【0029】
以下、
図5~
図7を参照して、電気接続端子40の製造方法について説明する。なお、
図6及び
図7は、説明理解の容易のために一部の部材構成を誇大に図示している。
電気接続端子40の製造方法は、せん断工程と、圧縮工程と、を備える。せん断工程及び圧縮工程は、ともにプレス加工により実現される工程である。
【0030】
図5及び
図6に示すように、せん断工程は、ダイD1上に載置した金属板に対してパンチP1を相対的に移動させることにより、電気接続端子40の中間体100を生成する工程である。パンチP1の移動方向は、金属板の板厚方向である。せん断工程で用いられるダイD1及びパンチP1は、中間体100の外形に応じた形状をなしている。また、せん断工程では、第1主面41がパンチP1に押される面となり、第2主面42がダイD1に載置される面となる。
【0031】
図5に示すように、中間体100は、電気接続端子40と略同様の形状をなしている。ただし、中間体100は、電気接続端子40と異なり、2つの挟持部70の第1主面41及び第2主面42に第1凹部80及び第2凹部90がそれぞれ設けられていない。また、中間体100は、電気接続端子40と比較して、2つの挟持部70の間隔が広くなっている。
【0032】
図6に示すように、中間体100をせん断加工することでできる側面43には、パンチP1の移動方向に沿って、丸みを帯びたダレ431と、平滑なせん断面432と、凹凸のできた破断面433と、突起状のバリ434と、が生成される。
【0033】
板厚方向において、ダレ431とせん断面432とは、第1主面41の近くに生成され、破断面433とバリ434とは、第2主面42の近くに生成される。言い換えれば、第1主面41は、板厚方向においてせん断面432に近い面であってダレ431に接続する面であるといえ、第2主面42は、板厚方向において破断面433に近い面であって、バリ434に接続する面であるといえる。
【0034】
せん断面432は、パンチP1により金属板がせん断されてできる面であり、破断面433は、金属板が破断されてできる面である。このため、せん断面432は、板厚方向に沿った比較的滑らかな面となり、破断面433は、板厚方向に対して傾いた比較的粗い面となる。破断面433は、第1主面41から第2主面42に向かうにつれて、せん断面432を第2主面42に向けて延長した面から退避するように傾いている。
【0035】
したがって、中間体100の2つの挟持部70の間隔は、板厚方向において一定でない。詳しくは、中間体100の2つの挟持部70において、2つの破断面433の間隔は、2つのせん断面432の間隔よりも広くなる。さらに、中間体100の2つの挟持部70において、2つの破断面433の間隔は、第2主面42に近付くにつれて次第に広くなる。
【0036】
圧縮工程は、せん断工程の後工程であって、せん断工程と別に実施される工程である。
図7に示すように、圧縮工程は、ダイD2上に載置した中間体100に対してパンチP2を相対移動させることにより、電気接続端子40を生成する工程である。圧縮工程におけるパンチP2の移動方向は、せん断工程と同じく、中間体100の板厚方向である。圧縮工程で用いられるパンチP2は、第1主面41の第1凹部80に対応する凸部を有し、圧縮工程で用いられるダイD2は、第2主面42の第2凹部90に対応する形状をなしている。圧縮工程では、第1主面41がパンチP2に押される面となり、第2主面42がダイD2に載置される面となる。
【0037】
図7に示すように、圧縮工程を実施すると、挟持部70の第1主面41に第1凹部80が形成され、挟持部70の第2主面42に第2凹部90が形成される。このとき、挟持部70は、ダイD2とパンチP2とによって板厚方向と直交する方向に押し広げられる。このため、2つの挟持部70は、内側面73が互いに接近する方向に変位する。言い換えれば、2つの挟持部70の内側面73において、2つのせん断面432が互いに接近する方向に変位し、2つの破断面433が互いに接近する方向に変位する。このとき、2つの挟持部70は塑性変形するため、パンチP2及びダイD2による2つの挟持部70に対する荷重を取り除いても2つの挟持部70は変形したままとなる。その結果、圧縮工程を実施する前後で、2つの挟持部70の間隔が狭くなる。
【0038】
さらに、圧縮工程において、第2主面42に形成される第2凹部90は、第1主面41に形成される第1凹部80よりも大きい。このため、2つの挟持部70の内側面73において、破断面433の変位量は、せん断面432の変位量よりも大きくなる。その結果、2つの挟持部70の間隔は、板厚方向において一定になりやすい。詳しくは、2つの挟持部70の内側面73において、2つの破断面433の間隔及び2つのせん断面432の間隔は略一定となりやすい。なお、第1凹部80及び第2凹部90の大きさの差は、圧縮工程の実施に伴い、2つの挟持部70の間隔が板厚方向において一定となるように設定されることが好ましい。
【0039】
また、挟持部70において、第1凹部80はパンチP2が第1主面41に押し付けられることで形成される点で、第1凹部80の第1外壁面82にはダレ821が生成され、第1凹部80の第1内壁面83にはダレ831が生成される。ダレ821は第1外壁面82及び第1主面41が接続する角部に生成され、ダレ831は第1内壁面83及び第1主面41が接続する角部に生成される。同様に、挟持部70において、第2凹部90はダイD2が第2主面42に押し付けられることで形成される点で、第2凹部90の第2外壁面92にはダレ921が生成され、第2凹部90の第2内壁面93にはダレ931が生成される。ダレ921は第2外壁面92及び第2主面42が接続する角部に生成され、ダレ931は第2内壁面93及び第2主面42が接続する角部に生成される。こうした点で、第1実施形態における第1凹部80及び第2凹部90は、凹部を構成する壁面に丸みを帯びたダレを有している。
【0040】
上述したように、電気接続端子40は、せん断工程及び圧縮工程を経て製造されるため、電気接続端子40の側面43には、ダレ431、せん断面432及び破断面433といった加工の痕跡が残る。詳しくは、圧縮工程を経た電気接続端子40においても、せん断面432は、破断面433よりも表面粗さが滑らかな面である。ただし、圧縮工程を経た電気接続端子において、破断面433はせん断面432と同様に板厚方向に延びる面となる。また、電気接続端子40の第1主面41と側面43とを接続する角部はダレ431が残る点で、第1主面41と側面43とを接続する角部は、第2主面42と側面43とを接続する角部よりも丸みを帯びている。言い換えれば、第2主面42と側面43とを接続する角部は、第1主面41と側面43とを接続する角部よりも角張っている。なお、第2主面42から突出するようにバリ434が生じていた場合には、圧縮工程の実施により、当該バリ434の突出が解消される。このため、電気接続端子40は、せん断工程を経ても、バリ434が残らない場合もある。
【0041】
第1実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)せん断工程を実施すると、中間体100の側面43にせん断面432及び破断面433が生成されるため、2つの挟持部70の間隔が板厚方向に対して一定になりにくい。この点、圧縮工程の実施により挟持部70の第2主面42に第2凹部90を設けるため、中間体100の2つの挟持部70の破断面433が互いに接近する方向に変位する。その結果、電気接続端子40の2つの挟持部70の間隔が板厚方向に対して不均一となることが抑制される。したがって、電気接続端子40は、モータ20の外部端子21と接続されたとき、接触抵抗の増大を抑制できる。
【0042】
(2)圧縮工程の実施により、挟持部70の第1主面41及び第2主面42に第1凹部80及び第2凹部90をそれぞれ設けるため、2つの挟持部70のせん断面432及び破断面433が互いに接近する方向に変位する。このため、電気接続端子40は、2つの挟持部70の間隔を狭くできる。言い換えれば、電気接続端子40は、板厚の薄い外部端子21に対応できる。また、第2凹部90を第1凹部80よりも大きくするため、2つの挟持部70の間隔が板厚方向に対して不均一となることが抑制される。したがって、電気接続端子40は、2つの挟持部70の間隔を狭くしつつ、2つの挟持部70の間隔を板厚方向に対して不均一となることを抑制できる。
【0043】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る電気接続端子40Aについて説明する。第2実施形態に係る電気接続端子40Aは、第1実施形態に係る電気接続端子40Aと比較したとき、第2凹部90の形状が僅かに異なる。このため、第1実施形態と共通する部材構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図8及び
図9に示すように、電気接続端子40Aは、基部50と、基部50から分岐して延びる2つの支持部60と、2つの支持部60の先端からそれぞれ延びる2つの挟持部70Aと、を有している。
【0045】
挟持部70Aは、第1主面41から第2主面42に向かって凹む第1凹部80と、第2主面42から第1主面41に向かって凹む第2凹部90Aと、を有している。
図9に示すように、第2凹部90Aは、第2凹部90Aの底面である第2底面91と、第2凹部90Aにおける外側の面である第2外壁面92と、第2凹部90Aにおける内側の面である第2内壁面93Aと、を含んでいる。
【0046】
図9に示すように、平面視において、第2底面91は、第2凹部90Aの開口よりも一回り小さくなっている。第2外壁面92は板厚方向に延び、第2内壁面93Aは板厚方向に対して傾いた方向に延びている。詳しくは、第2内壁面93Aは、第2底面91から第2主面42に向かうにつれて、挟持部70Aの内側面73に接近するように傾いている。このため、第2実施形態において、第2凹部90Aは、板厚方向と直交する面積が第2底面91から開口に向かうにつれて次第に大きくなっている。
【0047】
なお、第2内壁面93Aの板厚方向に対する傾きは、破断面433の板厚方向に対する傾きが大きいほど大きくすることが好ましい。また、挟持部70Aにおける第1凹部80及び第2凹部90Aの形成方法の関係で、第1外壁面82、第1内壁面83及び第2外壁面92が板厚方向に対して僅かに傾斜する場合も考えられるが、第2内壁面93Aの板厚方向に対する傾きは、第1外壁面82、第1内壁面83及び第2外壁面92の板厚方向に対する傾きよりも遥かに大きく設定される。
【0048】
第2実施形態に係る電気接続端子40Aの製造方法は、第1実施形態と同様に、せん断工程及び圧縮工程を備える。第2実施形態は、圧縮工程において、中間体100の第2主面42に第2凹部90Aを形成するためのダイの形状が第1実施形態と異なる。
【0049】
第2実施形態の作用及び効果について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の作用効果(1),(2)と同等の作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
(3)
図6に示すように、破断面433は板厚方向に対して傾くため、2つの挟持部70Aの破断面433の間隔は、第2主面42に向かうにつれて次第に大きくなりやすい。このため、2つの挟持部70Aの破断面433の間隔を板厚方向に対して一定とするためには、圧縮工程の実施により、破断面433の第2主面42に近い部分ほど大きく変位させる必要がある。この点、電気接続端子40Aにおいて、第2凹部90Aの板厚方向と直交する面積は、第2凹部90Aの開口から第2底面91に向かうにつれて小さくなる。詳しくは、第2内壁面93Aが第2底面91から離れるにつれて破断面433に接近するように傾く。このため、圧縮工程の実施により、破断面433の第2主面42に近い部分ほど大きく変位する結果、2つの挟持部70Aの破断面433の間隔をより一定にしやすくなる。
【0050】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る電気接続端子40Bについて説明する。第3実施形態に係る電気接続端子40Bは、第1実施形態に係る電気接続端子40と比較したとき、支持部60の構成が異なる。このため、第1実施形態と共通する部材構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図10及び
図11に示すように、電気接続端子40Bは、基部50と、基部50から分岐して延びる2つの支持部60Bと、2つの支持部60Bの先端からそれぞれ延びる2つの挟持部70と、を有している。
【0052】
支持部60Bは、第1主面41から第2主面42に向かって凹む第3凹部63と、第2主面42から第1主面41に向かって凹む第4凹部64と、を有している。第3凹部63及び第4凹部64は、支持部60Bの基端部に位置している。平面視において、第3凹部63及び第4凹部64は、略半円状をなしている。第3凹部63及び第4凹部64は、円弧状をなす部分が外側を向くように位置している。平面視において、第3凹部63は第4凹部64よりも小さくなっている。このため、板厚方向に第3凹部63及び第4凹部64を重ねると、第3凹部63は第4凹部64に収まっている。また、支持部60Bに第3凹部63及び第4凹部64を設けたことで、支持部60Bの外側面61Bは、第3凹部63及び第4凹部64に対応する位置が外側に向かって凸となる。
【0053】
第3実施形態において、支持部60Bが第3凹部63及び第4凹部64を有する点で、第3凹部63及び第4凹部64は「アーム」の基端部に設けられているといえる。
第3実施形態に係る電気接続端子40Bの製造方法は、第1実施形態と同様に、せん断工程及び圧縮工程を備える。第3実施形態は、圧縮工程において、中間体100の第1主面41及び第2主面42にそれぞれ第3凹部63及び第4凹部64を形成するためのダイ及びパンチの形状が第1実施形態と異なる。
【0054】
第3実施形態の作用及び効果について説明する。第3実施形態は、第1実施形態の作用効果(1),(2)と同等の作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
(4)中間体100の支持部60の基端部の断面形状が矩形であるのに対して、電気接続端子40Bの支持部60Bの基端部の断面形状は略H字状をなしている。つまり、支持部60Bは、基端部に第3凹部63及び第4凹部64を有するため、支持部60Bの基端部の断面二次モーメントが大きくなる。したがって、電気接続端子40Bは、2つの挟持部70の間にモータ20の外部端子21が挿入される際、2つの支持部60Bの基端部に発生する曲げ応力を低減できる。
【0055】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係る電気接続端子40Cについて説明する。第4実施形態に係る電気接続端子40Cは、第1実施形態に係る電気接続端子40と比較したとき、支持部60と挟持部70Cの構成が異なる。このため、第1実施形態と共通する部材構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図12及び
図13に示すように、電気接続端子40Cは、基部50と、基部50から分岐して延びる2つの支持部60Cと、2つの支持部60Cの先端からそれぞれ延びる2つの挟持部70Cと、を有している。
【0057】
支持部60Cと挟持部70Cとは、第1主面41から第2主面42に向かって凹む第1凹部80Cと、第2主面42から第1主面41に向かって凹む第2凹部90Cと、を有している。第1凹部80Cは、第1凹部80Cの底面である第1底面81Cと、第1凹部80Cにおける外側の面である第1外壁面82Cと、第1凹部80Cにおける内側の面である第1内壁面83Cと、第1外壁面82C及び第1内壁面83Cを接続する第1接続壁面84C,85Cと、を含んでいる。同様に、第2凹部90Cは、第2凹部90Cの底面である第2底面91Cと、第2凹部90Cにおける外側の面である第2外壁面92Cと、第2凹部90Cにおける内側の面である第2内壁面93Cと、第2外壁面92C及び第2内壁面93Cを接続する第2接続壁面94C,95Cと、を含んでいる。
【0058】
平面視において、第1外壁面82Cは支持部60Cの外側面61及び挟持部70Cの第1外側面71に沿った直線状をなし、第1内壁面83Cは支持部60Cの内側面62及び挟持部70Cの内側面73に沿った曲線状をなしている。同様に、第2外壁面92Cは支持部60Cの外側面61及び挟持部70Cの第1外側面71に沿った直線状をなし、第2内壁面93Cは支持部60Cの内側面62及び挟持部70Cの内側面73に沿った曲線状をなしている。平面視において、第2外壁面92Cは第1外壁面82Cより外側に位置し、第2内壁面93Cは第1内壁面83Cよりも内側に位置している。一方、第1接続壁面84C,85Cは第2接続壁面94C,95Cとそれぞれ重なっている。このため、板厚方向に第1凹部80C及び第2凹部90Cを重ねると、第1凹部80Cは第2凹部90Cに収まり、第2凹部90Cは第1凹部80Cよりも大きくなっているといえる。
【0059】
第4実施形態において、第1凹部80C及び第2凹部90Cが支持部60Cから挟持部70Cにかけて設けられている点で、第1凹部80C及び第2凹部90Cは、「アーム」の先端部から基端部にかけて設けられているといえる。
【0060】
第4実施形態に係る電気接続端子40Cの製造方法は、第1実施形態と同様に、せん断工程及び圧縮工程を備える。第4実施形態は、圧縮工程において、中間体100の第1主面41及び第2主面42に第1凹部80C及び第2凹部90Cをそれぞれ形成するためのダイ及びパンチの形状が第1実施形態と異なる。
【0061】
第4実施形態の作用及び効果について説明する。第4実施形態は、第1実施形態の作用効果(1),(2)及び第3実施形態の作用効果(4)と同等の作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0062】
(5)電気接続端子40Cは、第3実施形態と比較して、凹部の形成数を減少できる。したがって、電気接続端子40Cは、第3実施形態と比較して、製造が容易となる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・
図14に示すように、変更例に係る電気接続端子40Dの挟持部70Dは、第2主面42に第2凹部90を有していれば、第1主面41に第1凹部80を有しなくてもよい。言い換えれば、電気接続端子40Dにおいて、第1主面41は凹部のない平坦面であってもよい。この場合であっても、電気接続端子40Dは、第2主面42に第2凹部90を有する点で、第1実施形態の効果(1)と同等の効果を得ることができる。なお、挟持部70Dにおいて、第2凹部90は「凹部」の一例に相当する。
【0064】
・電気接続端子40において、第1凹部80及び第2凹部90は、一方の挟持部70だけに設けてもよい。同様に、電気接続端子40Bにおいて、第3凹部63及び第4凹部64は、一方の支持部60Bだけに設けてもよい。
【0065】
・電気接続端子40は、基部50から延びる部分をさらに備えてもよい。基部50から延びる部分は、基部50に対して屈曲していてもよい。
・電気接続端子40において、2つの支持部60は基部50に対して屈曲していてもよい。
【0066】
・電気接続端子40において、平面視における第1凹部80及び第2凹部90の形状は例えば円形状又は矩形状など適宜に変更できる。ただし、第1凹部80及び第2凹部90は、少なくとも第1内壁面83及び第2内壁面93が挟持部70の内側面73に沿った形状であることが好ましい。また、挟持部70における第1凹部80及び第2凹部90の数は2以上であってもよい。
【0067】
・電気接続端子40において、第1凹部80の深さ及び第2凹部90の深さは異なっていてもよい。例えば、板厚方向におけるせん断面432の長さ及び破断面433の長さに応じて、第1凹部80の深さ及び第2凹部90の深さを変えてもよい。詳しくは、破断面433の長さがせん断面432の長さよりも長い場合、第2凹部90の深さを第1凹部80の深さよりも深くすることが好ましい。
【0068】
・2つの電気接続端子40は、同一形状である必要はない。例えば、2つの外部端子21の形状が異なる場合には、2つの外部端子21の形状に合わせて2つの電気接続端子40の形状を変えることが好ましい。
【0069】
・電気接続端子40の適用先は、アクチュエータ10のハウジング30に限らず各種の電気機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…アクチュエータ
20…モータ
21…外部端子
30…ハウジング
40,40A~40D…電気接続端子
41…第1主面
42…第2主面
43…側面
431…ダレ
432…せん断面
433…破断面
434…バリ
50…基部
60,60B,60C…支持部
63…第3凹部
64…第4凹部
70,70A,70C,70D…挟持部
80,80C…第1凹部
90,90A,90C…第2凹部