(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120371
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】水底探知方法および水底探知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20220810BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20220810BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20220810BHJP
G01V 8/10 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G01V3/08 B
B63C11/00 B
B63C11/48 D
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017219
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】509202558
【氏名又は名称】JMUディフェンスシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】碓村 仁啓
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB05
2G105BB17
2G105DD01
2G105EE02
2G105GG03
2G105GG05
2G105LL02
(57)【要約】
【課題】確認作業を有効に行うことができ、さらに効率のよい探知を行うことができる水底探知方法および水底探知装置を得る。
【解決手段】開示に係る水底探知装置は、水中における堆積物下の目標物を探知する水底探知装置であって、物体を探知する金属探知器21を有する探知装置20と、探知装置20が探知した物体を撮像する撮像装置30と、探知装置20が探知した物体と撮像装置30との間における堆積物を除く排泥装置40と、撮像装置30が撮像した画像のデータを含む信号を外部に送る通信装置50とを備えるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中における堆積物下の目標物を探知する水底探知装置であって、
物体を探知する探知器を有する探知装置と、
前記探知装置が探知した前記物体を撮像する撮像装置と、
前記探知装置が探知した前記物体と前記撮像装置との間における前記堆積物を除く排泥装置と、
前記撮像装置が撮像した画像のデータを含む信号を外部に送る通信装置と
を備える水底探知装置。
【請求項2】
前記排泥装置は、
前記堆積物が吸引される吸引ノズルと、
吸引された前記堆積物が排出される排泥ノズルと、
前記吸引ノズルから吸引された前記堆積物を前記排泥ノズルに送る排泥ポンプと
を有する請求項1に記載の水底探知装置。
【請求項3】
前記排泥ノズルは、前記吸引ノズルが設けられた方向と異なる方向に向けて設けられ、1m以上3m以下の長さである請求項2に記載の水底探知装置。
【請求項4】
前記探知装置は、前記目標物が有する金属を探知する金属探知器を有する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の水底探知装置。
【請求項5】
前記探知装置、前記撮像装置および前記通信装置を搭載し、推進器を有する航走体を備える請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の水底探知装置。
【請求項6】
水中における堆積物下の目標物を探知する水底探知方法であって、
探知器を用いて探知を行う探知工程と、
前記探知器の探知に係る物体を撮像装置で撮像し、画像のデータを含む信号を外部に送る撮像工程と、
前記物体と前記撮像装置との間における前記堆積物を除く排泥工程と、
を有する水底探知方法。
【請求項7】
前記探知に係る前記物体が前記目標物であるかどうかおよび前記物体の位置の少なくとも一方を確認する確認工程をさらに有する請求項6に記載の水底探知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、海底などの水底にある目標物を探知する水底探知方法および水底探知装置に関するものである。特に、水底に埋もれるなどした物の確認に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浅海の海底などにある目標物を探知するには、探知装置を有する潜水士が潜水して、目視による探知が行われていた。探知装置が海底にある物を探知すると、潜水士が探知した物体の位置および探知した物体が目標とする目標物であるかどうかを確認する。また、カメラなどの撮像装置を搭載した無人潜水機を航走させて、探知した物体を撮像して目標物であるかどうかを確認する場合もある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水底には、浮遊塵、流動泥などが堆積などしていることがある。このような水底で目標物を探知しようとする場合、作業者が浮遊塵、流動泥などにより探知した物体を視認しづらく、探知した物体の位置および目標物かどうかの確認が困難になる。特に、撮像装置で撮像した画像による確認の場合に困難となる。潜水士の潜水による確認の方がより確実ではあるが、探知した物体などが危険物の場合があると、潜水士を潜水させられない。また、潜水士が潜ることができる場合でも、潜水士が潜ることができる深度および潜水時間は身体的な限界がある。また、法律的にも、深度によって潜水時間が決まっている、計画などの事前準備を行うなどの負担がある。このため、目標物を探知することができる範囲が狭くなる可能性がある。
【0005】
上記のような課題を解決するため、確認作業を有効に行うことができ、さらに効率のよい探知を行うことができる水底探知方法および水底探知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る水底探知装置は、水中における堆積物下の目標物を探知する水底探知装置であって、物体を探知する探知器を有する探知装置と、探知装置が探知した物体を撮像する撮像装置と、探知装置が探知した物体と撮像装置との間における堆積物を除く排泥装置と、撮像装置が撮像した画像のデータを含む信号を外部に送る通信装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この開示によれば、排泥装置が探知した物体周辺の排泥作業を行うようにしたので、物体の正確な位置および物体が目標物であるかどうかの確認作業をより有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る水底探知装置の構成を説明する図である。
【
図2】実施の形態1に係る目標物の探知について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、水底探知方法および水底探知装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ、説明する。ここで、以下の説明に係る図面における図は、概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略または構成の簡略化がなされる場合がある。また、図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、明細書全文に示されている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適宜、適用することができる。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る水底探知装置の構成を説明する図である。
図1に示すように、実施の形態1における水底探知装置は、無人潜水機(ROV:Remotely Operated Vehicle)100である。無人潜水機100は、航走体10、探知装置20、撮像装置30、排泥装置40および通信装置50を備える。
【0011】
航走体10は、本体部11およびスラスタ12を有する。本体部11は、潜水移動の本体となる部分であり、スラスタ12を駆動させる駆動機器(図示せず)、撮像装置30、無人潜水機100の各装置の動作を制御し、処理を行う制御機器(図示せず)などを内蔵する。また、スラスタ12は、噴射などにより無人潜水機100が海中を進む際の推進器である。また、排泥装置が排泥をする際の姿勢制御なども行う。実施の形態1の水底探知装置である無人潜水機100は、スラスタ12を有して自走できるものとする。ただし、これに限定するものではなく、他の船舶に曳航などされる船舶などであってもよい。
【0012】
探知装置20は、目標物を探知するための装置である。探知装置20は、金属探知器21および磁気シールド22を有する。金属探知器21は、磁気の変化に基づいて金属でできた物体を探知し、探知に基づく信号を発する。金属探知器21が発した信号は、後述する通信装置50から送られる。したがって、実施の形態1の水底探知装置における目標物は、金属探知器21が探知の対象とする金属を有する物体であるものとする。金属探知器21は、探知対象の金属に近接するまたは金属の部分の大きさにより、発する信号が強くなる。したがって、金属探知器21が発する信号の強さにより、無人潜水機100と探知した物体までの距離、物体の大きさなどがわかる。特に限定するものではないが、金属探知器21を複数台装備してもよい。複数台装備することで、探知精度をさらに高めることができ、目標物を探知する時間を短縮することができる。また、磁気シールド22は、金属探知器21から発生する磁気を遮断する金網である。
【0013】
撮像装置30は、探知装置20が探知した物体を含む画像を撮るための装置である。探知に係る作業者は、撮像装置30が撮った画像に基づいて、探知した物体が目標物であるかどうかを確認する作業を行う。撮像装置30は、光学カメラ31および水中ライト32を有する。光学カメラ31は、水底を撮像する。このため、光学カメラ31は、水底方向に向いて設置される。水中ライト32は、光学カメラ31の撮像対象を照らすライトである。
【0014】
排泥装置40は、探知した物体周辺の海水に含まれるまたは堆積する浮遊塵および流動泥など、撮像装置30と物体との間において視界を遮る物(以下、代表して泥とする)を除去する装置である。排泥装置40が探知した物体周辺の泥などを吸引し、他の場所に排出することで、作業者などが確認する際に、撮像装置30が撮像した画像内の物体を視認しやすくする。排泥装置40は、吸引ノズル41、排泥ポンプ42および排泥ノズル43を有する。排泥ポンプ42は、駆動することにより、吸引ノズル41から海水(流体)が流入し、排泥ノズル43から流出する流体の流れを形成する。ここで、排泥ポンプ42は、排泥装置40を用いる深度の水密に対応して、流体に加える圧力を多段階で調整することができる調圧機構を有するものとする。吸引ノズル41は、排泥ポンプ42の駆動により、泥などが吸引される吸引側のノズルである。排泥ノズル43は、排泥ポンプ42の駆動により吸引ノズル41が吸引した泥などを排出する側のノズルである。ここで、排泥ノズル43は、排出される泥などが再度物体周辺に戻らず、また、排出される物が物体周辺の海水をかき混ぜて濁らせないような長さおよび吸引ノズル41とは異なる方向に向けて配置する。特に限定するものではないが、排泥ノズル43の長さは約1m以上3m以下であるものとする。ここでは、排泥ノズル43の長さは約3mであるものとする。
【0015】
通信装置50は、たとえば、無人潜水機100を曳航する船に設置された外部の主制御装置(図示せず)との通信を行う装置である。通信装置50は、伝送ケーブル51およびピンガー52を有する。ピンガー52は、超音波などを発信する発信器である。主制御装置は、ピンガー52からの信号に基づいて、無人潜水機100の位置を特定する。また、伝送ケーブル51は、主制御装置と無人潜水機100とを接続する通信線である。たとえば、伝送ケーブル51は、主制御装置から指示に関する信号を無人潜水機100に送る。また、伝送ケーブル51は、無人潜水機100から撮像装置30が撮った画像のデータを含む信号を主制御装置に送る。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る目標物の探知について説明する図である。
図2に基づいて、実施の形態1に係る無人潜水機100を用いて行われる目標物を探知する手順について説明する。ここで、本船200は、無人潜水機100を搭載し、前述した主制御装置を搭載しているものとする。また、目標物が存在するおおよその位置および大きさなどが確認できているものとする。特に限定するものではないが、ここでは、おおよその位置は、目標物の正確な位置から、半径約20m~30mの範囲内の位置である。
【0017】
本船200は、無人潜水機100を搭載して目標物を探知する探知領域まで航行する(
図2(a)の(1))。そして、無人潜水機100が、本船200から、探知領域の海中に投入される(
図2(a)の(2))。
【0018】
たとえば、本船200の作業者は、無人潜水機100に指示を送り、スラスタ12を駆動させて無人潜水機100を航走させる(
図2(b)の(3))。場合によっては、本船200が無人潜水機100を曳航する。このとき、探知装置20は、探知を行う(探知工程)(
図2(b)の(4))。作業者は、探知装置20から送られる信号の強さに基づいて無人潜水機100を航走させ、探知した物体に接近させていく。
【0019】
探知した物体の位置が特定され、無人潜水機100が物体周辺に到着すると、作業者が排泥装置40に指示を送り、排泥ポンプ42を駆動させる。排泥装置40は、排泥ポンプ42を駆動して、吸引ノズル41から泥を含む海水を吸引し、排泥ノズル43から排出する排泥作業(排泥工程)を行う(
図2(c)の(5))。このとき、撮像装置30は、撮像を行う(撮像工程)(
図2(c)の(6))。通信装置50は、撮った画像のデータを含む信号を、伝送ケーブル51を介して本船200の主制御装置に送る。
【0020】
作業者は、たとえば、本船200において、撮像装置30が撮った画像を見て、探知した物体の視認または物体のより正確な位置および物体が目標物、危険な物などであるかどうかを確認する(確認工程)。作業者は、探知した物体が視認または目標物であるかどうかの確認などができれば、排泥装置40に指示を送り、排泥ポンプ42を停止させる。作業者は、無人潜水機100を本船200に回収する作業を行う(
図2(d)の(7))。
【0021】
以上のように、実施の形態1の無人潜水機100によれば、排泥装置40が探知した物体周辺の排泥作業を行うようにしたので、探知した物体の正確な位置および探知した物体が目標物であるかどうかの確認作業をより有効に行うことができる。また、排泥作業と確認作業とを並行して行うことができるので、作業時間の短縮をはかることができる。また、無人潜水機100が作業者の探知および確認作業に係る補助を行うようにしたので、作業者が海中で目標物の探知および確認作業を行う必要がない。このため、撮像した画像であっても、目標物の周辺に目標物以外の金属製の物体が存在する場合でも、確認工程を行うことができる。また、無人潜水機100が探知を行うことで、より深い深度で長時間の探知を継続して行うことができる。そして、作業者が目標物に近づいて確認しなくても、より効率よく確認することができるため、作業者が水底で作業を行う必要がなく、作業者の安全を確保することができる。
【0022】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、主制御装置は、本船200に搭載されているものとしたが、主制御装置の設置場所は本船200に限定するものではない。また、無人潜水機100が主制御装置を搭載し、排泥装置40の制御、目標物かどうかの確認などの処理を行うようにしてもよい。
【0023】
また、上述の実施の形態1では、金属探知器21を用いて探知を行うものとして説明したが、これに限定するものではなく、目標物に合わせて探知器を設定すればよい。たとえば、音波、電流または磁気などを用いて目標物の探知を行ってもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 航走体
11 本体部
12 スラスタ
20 探知装置
21 金属探知器
22 磁気シールド
30 撮像装置
31 光学カメラ
32 水中ライト
40 排泥装置
41 吸引ノズル
42 排泥ポンプ
43 排泥ノズル
50 通信装置
51 伝送ケーブル
52 ピンガー
100 無人潜水機
200 本船