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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120383
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20220810BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61B 90/20 20160101ALI20220810BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B1/00 654
A61B90/20
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017242
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】314008079
【氏名又は名称】株式会社YYP
(71)【出願人】
【識別番号】521055976
【氏名又は名称】株式会社シマファインプレス
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 宗人
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 雅人
(72)【発明者】
【氏名】金岡 祐司
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040CA21
2H040DA02
2H040DA51
2H040DA54
4C161DD01
4C161GG13
4C161GG24
(57)【要約】
【課題】施術時のレトラクターの調整を締結部材の締緩に依存せずに行えて、施術をスムーズに行うことができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】各支持アーム31,32の他端側同士を、その各支持座面34が球面状部22に対しその中心回りに摺動可能な状態で離脱不能に保持されるように締結した状態で、互いが近接する方向への弾性力を手動によるコイルばね45の締緩により付与して各支持座面34を球面状部22に対し摺動抵抗を調整した状態で圧着している。また、筒部21の突起51を、挿通孔23の周面の挿通方向後端から凹部52を介して連通位置より挿通孔23に沿って周方向へ移動するに従い浅くなる溝部53で係合している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に筒状の挿入空間を確保しかつ内視鏡及び術具が挿通される筒部を備えたレトラクターを介して体内奥の術野を観察可能とする内視鏡装置であって、
前記レトラクターの筒部の外周には、球面状の外周面を有する球面状部が設けられている一方、
前記レトラクターの筒部を支持する支持部材には、
前記球面状部の周方向略全域をその周方向一点より連結部を介して挟み込むように互いに略半円弧状に形成された凹球面状の支持座面をそれぞれ一端側に有する一対の支持アームと、
前記各支持アームの前記連結部から離反する他端側同士を互いの離接方向から締結し、前記球面状部に対しその中心回りに前記各支持座面を摺動可能な状態で離脱不能に保持する締結保持手段と、
前記締結保持手段により締結した各支持アームの他端側に互いの近接方向への弾性力を付与し、前記球面状部に対し各支持座面の摺動抵抗を調整した状態で圧着する弾性圧着手段と、
を備えていることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記締結保持手段は、
前記各支持アームのうちの一方の支持アームを他方の支持アームに対し互いの他端側同士の間に隙間を有した状態で当該他方の支持アームに対し先端側の螺子部が締結する螺子部材を備えている一方、
前記弾性圧着手段は、
前記螺子部材の基端側の螺子部に螺着された手動緩締可能な螺着部材と、
前記螺着部材と前記一方の支持アームの他端側との間に縮装され、前記螺着部材の締付により圧縮するばね部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記球面状部は、前記筒部を挿通する挿通孔を有する挿通部材の外周面上に設けられ、前記筒部の外周面の挿通方向後端位置と前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置との間には、前記筒部を前記挿通孔に挿通した状態で当該両者を係脱可能に係合する係合手段が設けられ、
前記係合手段は、
前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、
前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、
前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部とを備えており、
前記溝部は、前記凹部との連通位置より周方向へ離間するに従い浅くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記球面状部は、前記筒部を挿通する挿通孔を有する挿通部材の外周面上に設けられ、前記筒部の外周面の挿通方向後端位置と前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置との間には、前記筒部を前記挿通孔に挿通した状態で当該両者を係脱可能に係合する係合手段が設けられ、
前記係合手段は、
前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、
前記突起の周方向両側を前記筒部の挿通方向後端より軸線方向へ切り欠いた切欠片と、
前記切欠片の先端を半径方向外方へ若干折曲させた折曲部と、
前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、
前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部と、前記凹部から周方向へ離間する前記挿通孔の周面の離間位置に凹設され、前記溝部を移動する前記突起と共に前記挿通孔の周面を周方向へ摺動する前記折曲部を周方向へ移動不能に収容する折曲部収容穴と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記球面状部は、前記筒部を挿通する挿通孔を有する挿通部材の外周面上に設けられ、前記筒部の外周面の挿通方向後端位置と前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置との間には、前記筒部を前記挿通孔に挿通した状態で当該両者を係脱可能に係合する係合手段が設けられ、
前記係合手段は、
前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、
前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、
前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部と、
前記凹部から離間する前記溝部の離間位置に設けられ、前記突起を周方向へ移動不能に収容する突起収容穴と、
前記突起収容穴よりも前記凹部寄りに位置する前記溝部の凹部寄り位置に設けられ、前記突起を前記突起収容穴へ向かって乗り越え可能となるように前記溝部の深さを調整する乗り越え部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を体内に挿入して術野を観察しながら施術可能な内視鏡装置に関し、特に、レトラクターの筒部で体内に筒状の挿入空間を確保する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年より、椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症等の脊椎疾患の低侵襲治療として、内視鏡装置を用いた内視鏡下手術が注目されている。例えば、特許文献1にあっては、患者の体に小さく穴をあけ、この穴にレトラクターの筒部を挿入して穴の大きさを確保する。この状態で、筒部を介して内視鏡や鉗子等の術具を体内に挿入し、内視鏡で術野を観察しながら施術するようにしている。
【0003】
このような内視鏡装置にあっては、レトラクターの筒部の外周に球面状の外周面を有する球面状部が設けられている一方、レトラクターの筒部を手術台などに支持する支持部材に、球面状部の周方向全域をその周方向一点よりヒンジなどの連結部材を介して挟み込むように互いに略半円弧状に形成された凹球面状の支持座面を有する一対の支持アームが設けられている。
【0004】
そして、各支持アームの連結部材から離反する他端側同士は、互いの離接方向から締結部材により締結され、これによって球面状部上での各支持アームの支持座面の摺動が禁止されたロック状態となっている。このとき、締結部材を緩めることで、各支持アームの支持座面が球面状部上でその中心回りに摺動自在となり、筒部の角度を変更してレトラクターの調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-126235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内視鏡で術野を観察しながら施術する際には、筒部の角度を変更してレトラクターを調整することがある。その場合、術野の範囲が広いほど施術時に締結部材の締緩を行う回数が増えるため、施術をスムーズに行うことができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施術時のレトラクターの調整が締結部材の締緩に依存することなく行えるようにして、施術をスムーズに行うことができる内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、体内に筒状の挿入空間を確保しかつ内視鏡及び術具が挿通される筒部を備えたレトラクターを介して体内奥の術野を観察可能とする内視鏡装置を前提とする。そして、前記レトラクターの筒部の外周に、球面状の外周面を有する球面状部を設ける。一方、前記レトラクターの筒部を支持する支持部材に、前記球面状部の周方向略全域をその周方向一点より連結部を介して挟み込むように互いに略半円弧状に形成された凹球面状の支持座面をそれぞれ一端側に有する一対の支持アームを設ける。更に、前記支持部材に、前記各支持アームの前記連結部から離反する他端側同士を互いの離接方向から締結し、前記球面状部に対しその中心回りに前記各支持座面を摺動可能な状態で離脱不能に保持する締結保持手段と、前記締結保持手段により締結した各支持アームの他端側に互いの近接方向への弾性力を付与し、前記球面状部に対し各支持座面の摺動抵抗を調整した状態で圧着する弾性圧着手段と、を設けることを特徴としている。
【0009】
また、前記締結保持手段に、前記各支持アームのうちの一方の支持アームを他方の支持アームに対し互いの他端側同士の間に隙間を有した状態で当該他方の支持アームに対し先端側の螺子部が締結する螺子部材を設ける。一方、前記弾性圧着手段に、前記螺子部材の基端側の螺子部に螺着された手動緩締可能な螺着部材と、前記螺着部材と前記一方の支持アームの他端側との間に縮装され、前記螺着部材の締付により圧縮するばね部材と、を設けていてもよい。
【0010】
更に、前記球面状部を、前記筒部を挿通する挿通孔を有する挿通部材の外周面上に設け、前記筒部の外周面の挿通方向後端位置と前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置との間に、前記筒部を前記挿通孔に挿通した状態で当該両者を係脱可能に係合する係合手段を設ける。そして、前記係合手段に、前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部とを設ける。加えて、前記溝部を、前記凹部との連通位置より周方向へ離間するに従い浅くなるように形成していてもよい。
【0011】
これに対し、前記係合手段に、前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、前記突起の周方向両側を前記筒部の挿通方向後端より軸線方向へ切り欠いた切欠片と、前記切欠片の先端を半径方向外方へ若干折曲させた折曲部と、前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部と、前記凹部から周方向へ離間する前記挿通孔の周面の離間位置に凹設され、前記溝部を移動する前記突起と共に前記挿通孔の周面を周方向へ摺動する前記折曲部を周方向へ移動不能に収容する折曲部収容穴と、を設けていてもよい。
【0012】
また、前記係合手段に、前記筒部の周面の挿通方向後端位置に突設された突起と、前記挿通孔の周面の挿通方向後端位置に凹設され、その挿通方向後端から前記筒部の軸線方向へ前記突起を移動させる凹部と、前記凹部と連通する連通位置より前記挿通孔の周面に沿って周方向へ凹設され、前記突起を周方向へ移動させる溝部と、前記凹部から離間する前記溝部の離間位置に設けられ、前記突起を周方向へ移動不能に収容する突起収容穴と、前記突起収容穴よりも前記凹部寄りに位置する前記溝部の凹部寄り位置に設けられ、前記突起を前記突起収容穴へ向かって乗り越え可能となるように前記溝部の深さを調整する乗り越え部と、を設けていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上、各支持アームの支持座面が球面状部に対し中心回りに摺動可能な状態で離脱不能に保持されるように各支持アームの他端側同士を互いの離接方向から締結し、この状態で、互いが近接する方向への弾性力を弾性圧着手段により付与して各支持座面を球面状部に対し摺動抵抗を調整した状態で圧着している。これにより、施術中であっても締結部材を緩めることなく各支持座面を球面状部に対し弾性力に抗して摺動させるだけで筒部の角度を変更して施術時のレトラクターの調整を簡単に行え、施術をスムーズに行うことができる。
【0014】
また、各支持アームの他端側同士を、螺子部材の先端側の螺子部により締結した状態で、螺子部材の基端側の螺子部に螺着する螺着部材の締付により圧縮するばね部材によって互いが近接する方向へ弾性力を付与することで、螺着部材の手動による締緩によって球面状部に対する各支持座面の摺動抵抗をより簡単に調整することができる。
【0015】
また、筒部の外周面上の突起を、挿通部材の挿通孔の周面の挿通方向後端(つまり挿通孔に対し挿通される筒部の挿通方向の後側の端)からその挿通方向の中心を通る軸線方向へ凹部により移動させ、その凹部との連通位置より挿通孔の周面に沿って周方向へ移動させる溝部を周方向へ離間するに従い浅くする係合手段によって、筒部を挿通孔に挿通した状態で当該両者を係脱可能に係合している。これにより、筒部を挿通孔に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部のみの交換が可能となってレトラクターの交換コストの低廉化を図ることができる。
【0016】
これに対し、挿通孔の凹部により軸線方向へ移動させた突起を連通位置より挿通孔の溝部に沿って周方向へ移動させると、突起の移動に伴い挿通孔の周面を摺動する折曲部の先端が凹部からの離間位置で折曲部収容穴に周方向へ移動不能に係合する。これにより、筒部を挿通孔に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部のみの交換を可能にしたレトラクターの交換コストの低廉化を図ることができる。
【0017】
しかも、突起の周方向への移動に伴い折曲部の先端を折曲部収容穴に周方向へ移動不能に係合していることにより、挿通孔からの筒部の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0018】
また、筒部の突起を、挿通孔の挿通方向後端から凹部を経て連通位置から溝部の乗り越え部を乗り越えてさらに周方向へ移動させると、乗り越え部よりも凹部から離間する離間位置溝部の突起収容穴に周方向へ移動不能に係合する。これにより、筒部を挿通孔に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部のみの交換を可能にしたレトラクターの交換コストの低廉化を図ることができる。
【0019】
更に、溝部を周方向へ移動する突起が乗り越え部を乗り越えて離間位置の突起収容穴に周方向へ移動不能に係合していることにより、挿通孔からの筒部の抜け落ちを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡装置を用いて施術する状態を模式的に示す側面図である。
図2図1の内視鏡装置のレトラクターを斜め正面側から見た斜視図である。
図3図1の内視鏡装置のレトラクターを斜め上方から見た斜視図である。
図4図2のレトラクターを締結保持手段による締結状態で上方から見た平面図である。
図5図4のレトラクターを弾性圧着手段による圧着状態で上方から見た平面図である。
図6図2のレトラクターの筒部と挿通部材との係合前の状態を上方から見た平面図である。
図7図2のレトラクターの筒部と挿通部材との係合前の状態を側方から見た側面図である。
図8図2のレトラクターの筒部と挿通部材との係合後の状態を上方から見た平面図である。
図9】第1の実施の形態の変形例に係る内視鏡装置のレトラクターを締結保持手段による締結状態で上方から見た平面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡装置のレトラクターの筒部と挿通部材とを上方から見て互いの係合状態を説明する説明図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る内視鏡装置のレトラクターの分解斜視図であって、(a)は筒部の斜視図、(b)は挿通部材の斜視図をそれぞれ示している。
図12図11のレトラクターの筒部と挿通部材との係合前の状態を上方から見た平面図である。
図13図11のレトラクターの筒部と挿通部材との係合後の状態を上方から見た平面図である。
図14図11のレトラクターの筒部と挿通部材との係合後の状態を側方から見た側面図である。
図15】第3の実施の形態の変形例に係る内視鏡装置のレトラクターの筒部の斜視図である。
図16】本発明の各実施の形態の変形例に係る内視鏡装置のレトラクターを締結保持手段による締結状態で上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡装置を用いて施術する状態を模式的に示す側面図を示している。この図1に示すように、内視鏡装置1は、例えば椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症等の脊椎疾患の治療(手術を含む)に用いられる脊椎内視鏡装置である。図示しない手術台又はその近くからフレキシブルアーム11が延びている。
【0023】
図2図1の内視鏡装置のレトラクターを斜め正面側から見た斜視図、図3図1の内視鏡装置のレトラクターを斜め上方から見た斜視図をそれぞれ示している。この図2及び図3に示すように、内視鏡装置1は、レトラクター2を備えている。
【0024】
レトラクター2は、患者Xの体内に挿通される略円筒形状の筒部21を備えている。この筒部21は、ステンレスなどの金属により形成され、体内に挿通された際に筒状の挿入空間を確保し、図示しない内視鏡及び術具が挿通される。このとき、ドリルなどの術具も挿通されることがある。
【0025】
レトラクター2の筒部21の外周には、球面状の外周面を有する球面状部22が設けられている。この球面状部22は、筒部21を挿通する略真円形状の挿通孔23を備えた挿通部材20の外周面上の下部位置に設けられている。挿通部材20は、ステンレスなどの金属により形成されている。また、球面状部22は、球体の中心を通る軸線方向の両端が互いに平行な平坦面により切り欠かれた形状に形成されている。球面状部22の中心を通る挿通孔23には、筒部21が軸線方向一側(図2及び図3では上側)から挿通される。なお、挿通部材20の挿通孔23の周面と筒部21の外周面とは略一致している。
【0026】
また、フレキシブルアーム11の他端には、レトラクター2の筒部21を支持する支持部材3が支持されている。支持部材3は、一対の第1及び第2支持アーム31,32を備え、第1支持アーム31の他端がフレキシブルアーム11の他端に取り付けられている。第1及び第2支持アーム31,32の一端同士は、連結部としてのヒンジ33を介して連結されている。第1及び第2支持アーム31,32の一端側には、球面状部22の外周方向ほぼ全域をその周方向一点よりヒンジ33を介して挟み込むように互いに略半円弧状に形成された凹球面状の支持座面34,34が設けられている。
【0027】
図4図2のレトラクター2を締結保持手段による締結状態で上方から見た平面図を示している。この図4にも示すように、支持部材3は、各支持アーム31,32のヒンジ33から離反する他端側(図4では右端側)同士を互いの離接方向(図4では上下方向)から締結する締結保持手段4を備えている。締結保持手段4は、軸線方向の先端側及び基端側にそれぞれ螺子部41,42を有する螺子部材40を備えている。
【0028】
第1支持アーム31の他端側には、螺子部41が螺着するねじ穴35が設けられている。一方、第2支持アーム32の他端側には、螺子部41よりも大径な挿通孔36が設けられている。そして、第1及び第2支持アーム31,32の他端側同士の間には、螺子部41を第2支持アーム32の挿通孔36を通して第1支持アーム31に螺着させた際に隙間Sが生じている。この隙間Sによって、各支持アーム31,32の支持座面34,34が球面状部22に対しその中心回りに摺動可能な状態で離脱不能に保持される。
【0029】
図5図4のレトラクター2を弾性圧着手段による圧着状態で上方から見た平面図を示している。この図5にも示すように、支持部材3は、締結保持手段4により締結した各支持アーム31,32の他端側において互いが近接する方向へ弾性力を付与する弾性圧着手段43が設けられている。弾性圧着手段43は、螺子部材40の基端側の螺子部42に螺着された手動緩締可能なリング状の螺着部材44と、螺着部材44と第2支持アーム32の他端側との間に縮装されたばね部材としてのコイルばね45とを備えている。このとき、第2支持アーム32の他端側は、螺着部材44の締付により圧縮されたコイルばね45により第1支持アーム31の他端側に近接する向きに押圧され、支持座面34,34が球面状部22に対する摺動抵抗を螺着部材44の締付加減に応じて調整させた状態で圧着する。
【0030】
図6図2のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合前の状態を上方から見た平面図、図7図2のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合前の状態を側方から見た側面図をそれぞれ示している。また、図8図2のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合後の状態を上方から見た平面図を示している。
【0031】
図6図8に示すように、筒部21の外周面の挿通方向後端位置とこの筒部21が挿通される挿通部材20の挿通孔23の周面の挿通方向後端位置との間には、筒部21を挿通孔23に挿通した状態で当該両者21,20を係脱可能に係合する係合手段5が設けられている。係合手段5は、筒部21の挿通方向後端位置においてその外周面上の単一箇所より突設された円弧状の突起51と、挿通孔23の周面の挿通方向後端位置に凹設された凹部52とを備えている。凹部52は、挿通孔23の周面の挿通方向後端から筒部21の軸線方向へ延び、突起51の軸線方向への移動を可能としている。
【0032】
また、係合手段5は、凹部52と連通する連通位置つまり当該凹部52より挿通孔23の周面に沿って周方向一側(図6及び図8では時計回りの向き)へ略150°の範囲に亘って凹設された溝部53を備えている。突起51は、筒部21の挿通時に凹部52を通過して溝部53に沿って周方向一側へ移動する。この溝部53は、凹部52より周方向一側の終端位置へ近付くに従い徐々に浅くなっている。
【0033】
したがって、本実施の形態では、各支持アーム31,32の他端側同士を、その各支持座面34が球面状部22に対しその中心回りに摺動可能な状態で離脱不能に保持されるように互いの離接方向から締結した状態で、互いが近接する方向への弾性力を手動によるコイルばね45の締緩により付与して各支持座面34を球面状部22に対し摺動抵抗を調整した状態で圧着している。これにより、施術中であってもコイルばね45を緩めることなく各支持座面34を球面状部22に対し弾性力に抗して摺動させるだけで筒部21の角度を変更して施術時のレトラクター2の調整を簡単に行え、施術をスムーズに行うことができる。
【0034】
また、筒部21の外周面上の突起51が、挿通孔23の周面の挿通方向後端から軸線方向へ凹部52により移動させ、その凹部52との連通位置より挿通孔23に沿って周方向へ移動させる溝部53を周方向へ離間するに従い浅くする係合手段5によって、筒部21を挿通孔23に挿通した状態で当該両者21,23を係脱可能に係合している。これにより、筒部21を挿通孔23に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部21のみの交換が可能となってレトラクター2の交換コストの低廉化を図ることができる。
【0035】
なお、前記第1の実施の形態では、螺着部材44と第2支持アーム32の他端側との間にコイルばね45を縮装したが、図9に示すように、ばね部材として台形ばね46が適用されていてもよい。この場合、螺着部材44には円筒状のボス部47が突設され、螺子部材40の螺子部42に対し拡径する台形ばね46によって、螺着部材44の締付時に台形ばね46が押し潰されないようにして、螺着部材44の締付をスムーズに行うことができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態を図10に基づいて説明する。
【0037】
この実施の形態では、係合手段の構成を変更している。なお、係合手段を除くその他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
図10は本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡装置のレトラクターの筒部と挿通部材とを上方から見て互いの係合状態を説明する説明図を示している。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、図10に示すように、係合手段6は、筒部21の挿通方向後端位置(図10では紙面手前側の位置)において外周面上の単一箇所より突設された略円弧状の突起61と、挿通孔23の周面の挿通方向後端位置に凹設された凹部62とを備えている。凹部62は、挿通孔23の周面の挿通方向後端から筒部21の軸線方向へ延び、突起61の軸線方向への移動を可能としている。
【0040】
また、係合手段6は、凹部62と連通する連通位置つまり当該凹部62より挿通孔23の周面に沿って周方向一側(図10では時計回りの向き)へ略90°の範囲に亘って凹設された溝部63を備えている。突起61は、筒部21の挿通時に凹部62を通過して溝部63に沿って周方向一側へ移動する。また、係合手段6は、凹部62から周方向一側へ離間する溝部63の離間位置となる終端位置(図10に二点鎖線で示す突起61の位置)に設けられた突起収容穴64を備えている。
【0041】
更に、係合手段6は、突起収容穴64よりも周方向他側(図10では反時計回りの向き)となる凹部62寄りに位置する溝部63の凹部寄り位置(図10に一点鎖線で示す突起61の位置)に設けられた乗り越え部65を備えている。この乗り越え部65は、突起収容穴64へ向かって溝部63の深さが微量だけ浅くなるように調整されていて、突起61が突起収容穴64へ向かって乗り越えられるようにしている。そして、溝部63を周方向一側へ移動する突起61は、乗り越え部65を乗り越えて終端位置の突起収容穴64に周方向へ移動不能に収容された状態で係合している。
【0042】
したがって、本実施の形態では、筒部21の突起61を、挿通孔23の周面の挿通方向後端から凹部62を経て連通位置から溝部63の終端位置を越えてさらに周方向へ移動させると、突起収容穴64に周方向へ移動不能に係合する。これにより、筒部21を挿通孔23に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部21のみの交換を可能にしたレトラクター2の交換コストの低廉化を図ることができる。
【0043】
しかも、溝部63を周方向へ移動する突起61が乗り越え部65を乗り越えて終端位置の突起収容穴64に周方向へ移動不能に係合していることにより、挿通孔23からの筒部21の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施の形態を図11図14に基づいて説明する。
【0045】
この実施の形態では、係合手段の構成を変更している。なお、係合手段を除くその他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0046】
図11は本発明の第3の実施の形態に係る内視鏡装置1のレトラクター2の分解斜視図を示し、(a)は筒部21の斜視図、(b)は挿通部材20の斜視図をそれぞれ示している。また、図12図11のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合前の状態を上方から見た平面図を示している。更に、図13図11のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合後の状態を上方から見た平面図、図14図11のレトラクター2の筒部21と挿通部材20との係合後の状態を側方から見た側面図をそれぞれ示している。
【0047】
すなわち、本実施の形態では、図11に示すように、係合手段7は、筒部21の挿通方向後端位置(図11では上端位置)において外周面上の単一箇所より突設された略円弧状の突起71と、突起71の周方向両側が筒部21の挿通方向後端(図11では上端)より軸線方向へ切り欠かれた切欠片72とを備えている。切欠片72には、その軸線方向の先端(図11では上端)を半径方向外方へ若干折曲させた折曲部73が設けられている。
【0048】
また、図12図14に示すように、係合手段7は、挿通部材20に対し若干偏心した位置に開口する挿通孔23の周面の挿通方向後端位置に凹設された凹部74を備えている。凹部74は、挿通部材20の挿通方向後端から筒部21の軸線方向へ延び、突起71の軸線方向への移動を可能としている。また、係合手段7は、凹部74と連通する連通位置つまり当該凹部74より挿通孔23の周面に沿って周方向全域に凹設された溝部75を備えている。挿通孔23への筒部21の挿通時に突起71のみが凹部74を通過して溝部75に沿って周方向一側へ移動する。このとき、切欠片72の折曲部73先端は、溝部75よりも挿通部材20の挿通方向後端側に位置しているために挿通孔23の周面に接触していて、溝部75を移動する突起71と共に挿通孔23の周面に沿って周方向一側へ摺動する。
【0049】
更に、係合手段7は、凹部74から周方向一側(図12及び図14では時計回りの向き)へ略60°離れた挿通孔23の離間位置に凹設された折曲部収容穴76を備えている。折曲部収容穴76は、凹部74との連通位置より溝部75を周方向一側へ移動する突起71と共に凹部74を超えて挿通孔23の周面に沿いつつ周方向一側へ摺動する切欠片72の折曲部73先端を周方向へ移動不能に収容する。
【0050】
したがって、本実施の形態では、挿通孔23の凹部74により軸線方向へ移動させた突起71を連通位置より挿通孔23の溝部75に沿って周方向へ移動させると、突起71に伴い挿通孔23の周面を摺動する折曲部73の先端が凹部74からの離間位置で折曲部収容穴76に周方向へ移動不能に係合する。これにより、筒部21を挿通孔23に対し簡単な構成で係脱することができ、筒部21のみの交換を可能にしたレトラクター2の交換コストの低廉化を図ることができる。
【0051】
しかも、挿通孔23の周面を摺動する折曲部73先端が突起61の周方向一側への移動に伴い折曲部収容穴76に周方向へ移動不能に係合していることにより、挿通孔23からの筒部21の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0052】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記第3実施の形態では、挿通孔23の周面と筒部21の外周面とを略一致させたが、図15に示すように、筒部21の外径が挿通部材20の挿通孔23よりも小径であれば、挿通部材20の挿通孔23の周面と略一致する外径となるように筒部21の外径を拡径させる略円弧状のスペーサ25が筒部21の外周面に取り付けられていてもよい。この場合には、挿通孔23に対し径の異なる小径な筒部21を取り付けることができる。
【0053】
また、前記各実施の形態では、螺子部材40の基端側の螺子部42に螺着した螺着部材44と第2支持アーム32の他端側との間に縮装したコイルばね45の弾性力を用いたが、コイルばね以外の弾性力が用いられるようにしてもよい。具体的には、図16に示すように、締付保持手段81に、第1支持アーム31の他端側のねじ穴35に第2支持アーム32の他端側に対し隙間Sを有した離接可能な状態で螺子部82がそれよりも大径な挿通孔36を介して締結する螺子部材83を設ける。一方、弾性圧着手段84に、各支持アーム31,32の他端部側においてそれぞれ長手方向へ延び、それぞれの他端側に近付くに従い互いに離間する直線状のスリット85,85と、各支持アーム31,32の他端部側に跨るように被せられ、各支持アーム31,32の長手方向へ摺動自在な摺動部材86と、摺動部材86にそれぞれ基端が固着され、各先端が各支持アーム31,32のスリット85,85にそれぞれ挿通されたピン部材87,87とを備える。そして、各支持アーム31,32の他端側への摺動部材86の摺動に伴い各スリット85,85上で互いに離間する各ピン部材87により各支持アーム31,32同士を近接させる際に各ピン部材87を撓ませて弾性力を発生させるようにしている。この場合、新たな弾性体を別途設けることなく既存の各ピン部材87を利用して弾性圧着手段84を構成することができる。
【0054】
また、前記第3の実施の形態では、溝部65を凹部62より挿通孔23の周面に沿って周方向一側へ略90°の範囲に亘って凹設したが、溝部が挿通孔の周面に沿って周方向全域に凹設されていてもよく、その場合、突起収容穴が凹部から離間する溝部の離間位置に、乗り越え部が突起収容穴よりも凹部寄りに位置する前記溝部の凹部寄り位置にそれぞれ設けられていればよい。しかも、前記第3の実施の形態では、乗り越え部65を、突起収容穴64へ向かって溝部63の深さが微量だけ浅くなるように調整したが、突起が乗り越え易くなるように溝部の深さをさらに浅くなるように調整されていてもよい。
【0055】
更に、前記第1の実施の形態では、ばね部材として、コイルばね45や台形ばね46を用いたが、皿ばねや板ばねが用いられていてもよい。
【0056】
また、前記各実施の形態では、第1及び第2支持アーム31,32の一端側の支持座面34,34をヒンジ33により連結したが、第1及び第2支持アームの一端側の支持座面がボルトなどの連結具により連結されていてもよく、球面状部の周方向略全域をその中心回りに摺動可能となるように周方向から挟み込む凹球面状の支持座面が一対の支持アームの一端側に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0057】
1内視鏡装置
2 レトラクター
20 挿通部材
21 筒部
22 球面状部
23 挿通孔
3 支持部材
31 第1支持アーム(支持アーム)
32 第2支持アーム(支持アーム)
33 ヒンジ(連結部材)
34 支持座面
4 締結保持手段
40 螺子部材
41 先端側の螺子部
42 基端側の螺子部
43 弾性圧着手段
44 螺着部材
45 コイルばね(ばね部材)
46 台形ばね(ばね部材)
5 係合手段
51 突起
52 凹部
53 溝部
6 係合手段
61 突起
62 凹部
63 溝部
64 突起収容穴
65 乗り越え部
7 係合手段
71 突起
72 切欠片
73 折曲部
74 凹部
75 溝部
76 折曲部収容穴
81 締付保持手段
82 螺子部
83 螺子部材
84 弾性圧着手段
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16