(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120493
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】静電気除去装置および液滴吐出システム
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20220810BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20220810BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20220810BHJP
B05C 5/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
H05F3/04 A
B05C11/00
B05C9/10
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017417
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】小林 武司
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5G067
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AA03
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA22
4F042AA02
4F042AA08
4F042AA11
4F042BA10
4F042BA21
4F042DA00
4F042DH00
5G067AA32
5G067AA70
5G067DA01
5G067DA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トレイ搬送型の液滴吐出装置のトレイの静電気を効率良く除去する静電気除去装置を提供する。
【解決手段】静電気除去装置20は、トレイ12の移動によりトレイ12に押されて動く可動部22と、トレイ12の移動経路上に配置され、可動部22の動きに応じてイオンを発生するイオン発生部24と、を備え,可動部およびイオン発生部がトレイの移動と連動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイの静電気を除去する静電気除去装置であって、
前記トレイの移動により前記トレイに押されて動く可動部と、
前記トレイの移動経路上に配置され、前記可動部の動きに応じてイオンを発生するイオン発生部と、を備える
静電気除去装置。
【請求項2】
前記可動部および前記イオン発生部は、前記液滴吐出装置の本体の外側に配置され、
前記イオン発生部は、前記液滴吐出装置の本体から前記トレイの一部または全部が送り出された状態で、前記トレイの送り出された部分に向けてイオンを発生する
請求項1に記載の静電気除去装置。
【請求項3】
前記イオン発生部は、前記可動部に載置される
請求項1または2に記載の静電気除去装置。
【請求項4】
前記静電気除去装置は、
前記可動部または前記イオン発生部の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチを備え、
前記イオン発生部は、前記スイッチがオン状態のときにイオンを発生させる
請求項1から3のいずれか1項に記載の静電気除去装置。
【請求項5】
前記可動部、イオン発生部および前記スイッチを支持し、前記液滴吐出装置に着脱可能な基台を備える
請求項4に記載の静電気除去装置。
【請求項6】
前記基台は、前記可動部の一部分を支持する軸棒を有し、
前記可動部は、前記トレイに押されることにより前記軸棒を中心として回転するように可動である
請求項5に記載の静電気除去装置。
【請求項7】
前記イオン発生部の一部分は、前記軸棒に支持され、
前記イオン発生部の他の一部分は、前記可動部に載置され、
前記スイッチは、前記イオン発生部の動きによりオン状態とオフ状態とが切り替わる
請求項6に記載の静電気除去装置。
【請求項8】
前記可動部は、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度に達したとき、前記イオン発生部を載置することを解除する
請求項7に記載の静電気除去装置。
【請求項9】
前記静電気除去装置は、
前記イオン発生部に取り付けられた板状の団扇を備える
請求項8に記載の静電気除去装置。
【請求項10】
前記静電気除去装置は、
前記所定角度を指定する角度指定部を備える
請求項8または9に記載の静電気除去装置。
【請求項11】
前記静電気除去装置は、
前記基台と団扇26の側辺とを接続する面状のサイドガードを備える
請求項9に記載の静電気除去装置。
【請求項12】
トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイの静電気を除去する静電気除去装置であって、
前記トレイの移動により前記トレイに押されて動く可動部と、
前記可動部の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチと、
前記トレイの移動経路上に配置され、前記スイッチのオン状態に応じて前記トレイ上にイオンを発生するイオン発生部と、
前記可動部、イオン発生部および前記スイッチを支持し、前記液滴吐出装置に着脱可能な基台と、を備える
静電気除去装置。
【請求項13】
前記イオン発生部に取り付けられた面状の団扇を備え、
前記基台は、前記可動部の一部分および前記イオン発生部の一部分をそれぞれ支持する軸棒を備え、
前記イオン発生部の他の一部分は、前記可動部に載置され、
前記可動部は、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度に達したとき、前記イオン発生部を載置することを解除し、
前記イオン発生部は、前記解除により初期状態に戻り、前記スイッチを切り換える
請求項12に記載の静電気除去装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の静電気除去装置と、
前記静電気除去装置が取り付けられたトレイ搬送型の液滴吐出装置と、を備える
液滴吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気除去装置および液滴吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トレイ搬送型のプリンタを応用した流体液滴吐出システムを開示している。
【0003】
特許文献2は、キャリッジの走査時にイオンを生成することで、記録媒体に生じた静電気を除去するインクジェットプリンタを開示している。
【0004】
特許文献3は、除電気体を吹き付けるイオナイザを後付けにより組み込むことができるスクリーン印刷装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-122781号公報
【特許文献2】特許第6203659号公報
【特許文献3】特開2012-245622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレイ搬送型のプリンタ装置および液滴吐出装置において、トレイに溜まった静電気によって、液滴吐出ヘッドから吐出した液滴がターゲットから外れてしまい、印刷品質および吐出精度が劣化するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、トレイ搬送型の液滴吐出装置のトレイの静電気を効率良く除去する静電気除去装置および液滴吐出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る静電気除去装置は、トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイの静電気を除去する静電気除去装置であって、前記トレイの移動により前記トレイに押されて動く可動部と、前記トレイの移動経路上に配置され、前記可動部の動きに応じてイオンを発生するイオン発生部と、を備える。
【0009】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部およびイオン発生部がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部は、トレイがイオン発生部の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。
【0010】
ここで、前記可動部および前記イオン発生部は、前記液滴吐出装置の本体の外側に配置され、前記イオン発生部は、前記液滴吐出装置の本体から前記トレイの一部または全部が排出された状態で、前記トレイの排出された部分に向けてイオンを発生してもよい。
【0011】
これによれば、静電気除去装置は、既存の前記液滴吐出装置内部を変更することなく、外付けすることができる。
【0012】
ここで、前記イオン発生部は、前記可動部に載置されてもよい。
【0013】
これによれば、イオン発生部が可動部と共に可動であり、トレイの動きに応じた位置でイオンを発生することができる。
【0014】
ここで、前記静電気除去装置は、前記可動部または前記イオン発生部の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチを備え、前記イオン発生部は、前記スイッチがオン状態のときにイオンを発生させてもよい。
【0015】
これによれば、例えば、イオン発生部の下方にトレイが移動してきたときに、イオンを発生させるので、無駄なイオンを発生させることなく効率的に静電気を除去することができる。
【0016】
ここで、前記可動部、イオン発生部および前記スイッチを支持し、前記液滴吐出装置に着脱可能な基台を備えてもよい。
【0017】
これによれば、液滴吐出装置を静電気除去装置に対して着脱可能にすることができる。
【0018】
ここで、前記基台は、前記可動部の一部分を支持する軸棒を有し、前記可動部は、前記トレイに押されることにより前記軸棒を中心として回転するように可動であってもよい。
【0019】
これによれば、トレイは、可動部の接触部分を円周方向に動かすので、トレイに掛かる負荷を小さくすることができる。
【0020】
ここで、前記イオン発生部の一部分は、前記軸棒に支持され、前記イオン発生部の他の一部分は、前記可動部に載置され、前記スイッチは、前記イオン発生部の動きによりオン状態とオフ状態とを切り替えてもよい。
【0021】
これによれば、前記スイッチは、イオン発生部の動きにおける回転角度に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わることができる。
【0022】
ここで、前記可動部は、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度に達したとき、前記イオン発生部を載置することを解除してもよい。
【0023】
これによれば、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度に達したとき、イオン発生部の位置が初期状態に戻り、スイッチが切り替わることができる。その結果、初期状態から所定角度に達し、さらに初期状態に復帰するまでの期間だけイオン発生するように制限することができる。こうして、無駄なイオン発生を抑制することができ、効率的に静電気を除去することができる。
【0024】
ここで、前記静電気除去装置は、前記イオン発生部に取り付けられた面状の団扇を備えてもよい。
【0025】
これによれば、イオン発生部が前記所定角度の状態から初期状態に戻るときに、団扇によりトレイ上に気流を発生させて、トレイ上のイオンを移動させることができる。言い換えれば、静電気除去装置は、初期状態から所定角度に達するまでの期間は、無風除電を実施し、所定角度から初期状態に戻るまでの期間は、有風除電を実施することができる。
【0026】
ここで、前記静電気除去装置は、前記所定角度を指定する角度指定部を備えてもよい。
【0027】
これによれば、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度の達するまでの無風除電の期間および有風除電の期間を調整することができる。例えば、除電対象物の奥行き(y軸)に対して適切に角度に指定することができ、奥行きが短い場合小さい角度に、奥行きが長い場合大きい角度に指定できる。その結果、効率的に静電気を除去することができる。
【0028】
ここで、前記静電気除去装置は、前記基台と団扇の側辺とを接続する面状のサイドガードを備えてもよい。
【0029】
これによれば、イオンがトレイから散逸することを抑制し、除電の効率をさらに向上させることができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る静電気除去装置は、トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイの静電気を除去する静電気除去装置であって、前記トレイの移動により前記トレイに押されて動く可動部と、前記可動部の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチと、前記トレイの移動経路上に配置され、前記スイッチのオン状態に応じて前記トレイ上にイオンを発生するイオン発生部と、前記可動部、イオン発生部および前記スイッチを支持し、前記液滴吐出装置に着脱可能な基台と、を備える。
【0031】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部およびイオン発生部がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部は、トレイがイオン発生部の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。
【0032】
ここで、前記イオン発生部に取り付けられた面状の団扇を備え、前記基台は、前記可動部の一部分および前記イオン発生部の一部分をそれぞれ支持する軸棒を備え、前記イオン発生部の他の一部分は、前記可動部に載置され、前記可動部は、前記基台と前記可動部とのなす角度が所定角度に達したとき、前記イオン発生部を載置することを解除し、前記イオン発生部は、前記解除により初期状態に戻り、前記スイッチを切り換えてもよい。
【0033】
これによれば、イオン発生部が前記所定角度の状態から初期状態に戻るときに、団扇によりトレイ上に気流を発生させて、トレイ上のイオンを移動させることができる。言い換えれば、静電気除去装置は、初期状態から所定角度に達するまでの期間は、無風除電を実施し、所定角度から初期状態に戻るまでの期間は、有風除電を実施することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る液滴吐出システムは、上記の静電気除去装置と、前記静電気除去装置が取り付けられたトレイ搬送型の液滴吐出装置とを備える。
【0035】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部およびイオン発生部がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部は、トレイがイオン発生部の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記のような特徴的な処理を実行する制御部を備える静電気除去装置として実現することができるだけでなく、静電気除去装置に含まれる特徴的な処理をステップとする方法として実現することができる。
【0037】
また、本発明は、上記のような特徴的な処理を実行する制御部を備える液滴吐出システムとして実現することができるだけでなく、液滴吐出システムに含まれる特徴的な処理をステップとする方法として実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の静電気除去装置および液滴吐出システムは、トレイ搬送型の液滴吐出装置のトレイの静電気を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、実施の形態における液滴吐出システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、プリンタ装置の外観例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態における液滴吐出システムによる無風除電中の静電気除去装置の状態を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態における液滴吐出システムによる有風除電中の静電気除去装置の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態における液滴吐出システムによる可動部の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態における静電気除去装置をプリンタ装置に着脱可能な構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における液滴吐出システムの変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の静電気除去装置をプリンタ装置に着脱可能な他の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態における静電気除去装置におけるイオン発生部によるスイッチの押圧動作例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態における静電気除去装置におけるイオン発生部を含む回路構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態におけるプリンタ装置のトレイの構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態における液滴吐出システムの他の変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態における液滴吐出システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一態様に係る静電気除去装置および液滴吐出システムの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0041】
(実施の形態)
[液滴吐出システムの構成]
図1は、実施の形態における液滴吐出システムの構成例を示す図である。同図は、液滴吐出システム1の上面、正面および側面から見た三面図である。同図の液滴吐出システム1は、プリンタ装置10と静電気除去装置20とを備える。
【0042】
プリンタ装置10は、トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置の一例であり、トレイ上の対象物の印刷または液滴を吐出するインクジェットプリンタと同様の装置である。
図2は、プリンタ装置10の外観例を示す図である。
図2では、トレイ12の一部分がプリンタ本体11から排出された状態を示しているが、トレイ12の全体がプリンタ本体11内に収容可能である。
【0043】
図1に示すようにプリンタ装置10は、プリンタ本体11、トレイ12、カートリッジ13、および、スイッチ14を備える。
【0044】
プリンタ本体11は、x軸に沿う方向にカートリッジ13を移動させる第1搬送機構と、y軸に沿う方向にトレイ12を移動させる第2搬送機構とを有する。第1搬送機構は、トレイ12上でカートリッジ13をx軸に沿う方向に移動させる。第2搬送機構は、y軸に沿う方向にトレイ12を移動させる。プリンタ本体11の正面にはトレイ用の出入口が設けられている。第2搬送機構は、出入口からトレイ12の一部または全部を出し入れすることが可能である。例えば、対象物は、出入口からトレイ12の大部分が送り出された状態でユーザによってセットされる。また、静電気除去装置20のよるトレイ12の除電は、トレイ用の出入口からトレイ12の一部または全部が送り出される際と、引き込まれる際とに実施される。
【0045】
トレイ12は、印刷対象物または液滴吐出の対象物を載置し、第2搬送機構によってプリンタ本体11の開口27から外部に排出可能である。
【0046】
カートリッジ13は、インクまたは試料となる液滴を貯めるタンクと、液滴吐出ヘッドとを有し、トレイ12上の対象物に印刷または液滴を吐出する。
【0047】
スイッチ14は、電源スイッチである。
【0048】
静電気除去装置20は、基台21、可動部22、スイッチ23、イオン発生部24、角度指定ノブ25、および、団扇26を備える。
【0049】
基台21は、可動部22、スイッチ23およびイオン発生部24を支持し、プリンタ本体11に着脱可能な部材である。基台21は、可動部22の一部分と、イオン発生部24の一部分と、角度指定ノブ25とを支持する軸棒を有する。また、基台21は、プリンタ本体11のトレイ用の出入口に重なる開口27を有する。開口27の大きさは、プリンタ本体11の出入口と同程度、または、大きい。
【0050】
可動部22は、開口27から送り出されるトレイ12に押されることにより軸棒を中心として回転するように可動である。このときの可動部22の動きを
図3Aに示す。
図3Aに示すように、可動部22と基台21とがなす角度を角度Aと呼ぶ。可動部22とトレイ12とが非接触のとき、角度Aは0度である。可動部22がトレイ12にy方向に押されて動くと、角度Aは0度より大きくなる。プリンタ本体11からのトレイ12の送り出し量が大きいほど角度Aは大きくなる。
図3Aの状態でイオン発生部24に発生されるイオンでトレイ12を除電することを無風除電と呼ぶ。
【0051】
また、可動部22は、イオン発生部24を載置する。この載置により可動部22の動きに応じてイオン発生部24も可動である。さらに、トレイ12の送り出しに伴って角度Aが所定角度に達したとき、可動部22は、イオン発生部24の載置を解除する。この解除により、イオン発生部24の位置が初期状態に復帰する。イオン発生部24の初期状態は、基台21とイオン発生部24とのなす角度がほぼ0度の状態をいう。所定角度は、例えば、30度、または、45度などでよい。
【0052】
スイッチ23は、可動部22の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わる。このスイッチ23は、イオン発生部24にイオン発生を動作させないか動作させるかを切り替えるためのスイッチである。例えば、スイッチ23がオフ状態のときスイッチ23はイオン発生部24への電力供給を遮断し、または、イオン発生部24をディスエーブルにする。逆に、スイッチ23がオン状態のときスイッチ23はイオン発生部24への電力を供給し、または、イオン発生部24をイネーブルにする。そのため、例えば、可動部22がトレイ12と非接触のとき、つまり、角度Aが0度のとき、スイッチ23はオフ状態である。可動部22がトレイ12と接触して動かされたとき、例えば、角度Aが一定値以上のときスイッチ23はオン状態である。ここで一定値は、例えば、数度程度でよく、トレイ12の先端がイオン発生部24の下方に位置するまで送り出されたことに対応する。
【0053】
なお、スイッチ23は、可動部22ではなくイオン発生部24の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わってもよい。例えば、イオン発生部24がトレイ12と初期状態のとき、スイッチ23はオフ状態である。可動部22に載置されたイオン発生部24が動かされたとき、スイッチ23はオン状態である。
【0054】
イオン発生部24は、スイッチ23がオン状態のときにイオンを発生させる。例えば、プリンタ本体11からトレイ12の一部または全部が送り出される際に、イオン発生部24は、トレイ12上にイオンを発生する。
【0055】
また、イオン発生部24の一部分は、基台21の軸棒に支持される。イオン発生部24の他の一部分は、可動部22に載置される。その結果、イオン発生部24は、可動部22の動きに伴って、可動部22と同じように動く。つまり、イオン発生部24は、軸棒を中心として回転するように可動である。
【0056】
角度指定ノブ25は、所定角度を指定する。角度指定ノブ25は、所定角度として例えば30度および45度の一方を択一的に指定する。この場合、角度指定ノブ25は、30度に対応する回転位置と、45度に対応する回転位置とのうち、ユーザ操作により一方の回転位置に設定される。これによれば、上記の角度Aが所定角度の達するまでの無風除電の期間および有風除電の期間を調整することができる。例えば、除電対象物の奥行き(y軸)に対して適切に角度に指定することができ、奥行きが短い場合小さい角度に、奥行きが長い場合大きい角度に指定できる。その結果、効率的に静電気を除去することができる。なお、角度指定ノブ25が指定する所定角度は、30度と45度に限らず、N個の角度から択一的に指定してもよいし、ある角度範囲に含まれる任意の角度を指定してもよい。
【0057】
団扇26は、イオン発生部24の表面に取り付けられた板である。可動部22がイオン発生部24の載置を解除したとき、イオン発生部24は、所定角度の状態から初期状態に復帰する。この復帰では、所定角度のイオン発生部24が自重による振り子動作によって初期状態に戻る。このときのイオン発生部24の振り子動作を
図3Bに示す。
図3Bの示すように、可動部22の動きにより角度Aが所定角度に達すると、イオン発生部24および団扇26は、振り子動作をする。振り子動作により団扇26は、トレイ12上に気流を発生させる。気流は、トレイ12上のイオンを移動させる。これにより、トレイ12の除電効率をより高めることができる。このような所定角度から初期状態に戻るまでの期間の除電動作を、有風除電と呼ぶ。
【0058】
[可動部22の構成例]
図4は、実施の形態における液滴吐出システムによる可動部の構成例を示す図である。同図では角度指定ノブ25も図示している。
図4は、可動部22を正面から見た図を示している。図中の一点鎖線は、基台21の軸棒の軸を示す。同図の上段は、角度Aが所定角度に達していないときの可動部22を示す。同図の下段は、角度Aが所定角度に達したときの可動部22を示す。
【0059】
同図に示すように、可動部22は、第1アーム221、第2アーム222、第3アーム223および第4アーム224を備える。
【0060】
第1アーム221は、可動部22の上部に位置し、基台21の軸棒に取り付けられ、可動部22の動きの中心軸になる。
【0061】
第2アーム222は、可動部22の下部に、トレイ12に接触可能な位置に配置される。第2アーム222は、トレイ12に押されることにより円周方向に動く。
【0062】
第3アーム223は、第1アーム221の左側と、第2アーム222の左側とを接続する。ここで、左側とはx軸のマイナス方向をいう。第3アーム223は、第1アーム221および第2アーム222の完全に固定されるのではなく、x軸方向に所定幅の範囲内で動くように取り付けられる。
【0063】
第4アーム224は、第1アーム221の右側と、第2アーム222の右側とを接続する。ここで、右側とはx軸のプラス方向をいう。第4アーム224は、第1アーム221および第2アーム222の完全に固定されるのではなく、x軸の方向に所定幅の範囲内で動くように取り付けられる。
【0064】
同図の上段に示すように、角度Aが所定角度に達していないとき、第3アーム223と第4アーム224は、角度指定ノブ25にラッチされた状態である。この状態では第3アーム223と第4アーム224とは、第1の間隔になる。第1の間隔では、可動部22は、イオン発生部24および団扇26を載置する。
【0065】
これに対して、同図の下段に示すように、角度Aが所定角度に達したとき、第3アーム223と第4アーム224は、角度指定ノブ25によるラッチが外れた状態である。この状態では、例えば、ばねの力によって第3アーム223と第4アーム224とが、第1の間隔より大きい第2の間隔になる。第2の間隔では、可動部22は、イオン発生部24および団扇26を載置することを解除する。この解除により、イオン発生部24および団扇26は、重力によって所定角度から初期状態に復帰する振り子動作により、トレイ12上に気流を作り出す。なお、可動部22は、解除された後第2の間隔を維持し、トレイ12が引き込まれた後も角度指定ノブ25により所定角度も維持されるものとする。同図の下段の状態を上段の状態に戻すのは、ユーザ操作による。これにより、静電気除去装置20は、同図の下段の状態を上段の状態に戻す複雑な機構を備える必要がなく、低コスト化に適している。
【0066】
[静電気除去装置20の着脱可能な例]
図5は、実施の形態における静電気除去装置をプリンタ装置に着脱可能な構成例を示す図である。同図では、基台21がプリンタ本体11の正面のトレイ用の出入口17に着脱可能な例を示す。同図の(a)は、y軸の方向からプリンタ本体11の正面を見た出入口17を示す。同図の(b)は、z軸の方向から見た同図の(a)のVb-Vb線の断面を示す。同図の(c)は、z軸の方向から見た同図の(a)のVc-Vc線の断面を示す。
【0067】
図5のように、基台21は、出入口17に引っ掛ける爪部211を有する。例えば、ユーザは、基台21の爪部211をプリンタ本体11の出入口17に挿入することにより、静電気除去装置20をプリンタ本体11の正面に引っ掛けにより装着することができる。また、ユーザは、基台21を引っ張ることにより、静電気除去装置20をプリンタ本体11から取り外すことができる。
【0068】
なお、基台21は、プリンタ本体11の出入口17以外の部分に着脱可能にしてもよい。
【0069】
図6は、実施の形態における静電気除去装置20の着脱可能な変形例を示す図である。同図の静電気除去装置20は、プリンタ本体11の上面の交換口18を利用して着脱可能な例を示す。交換口18は、カートリッジ13の交換用である。同図の基台21は、側面から見てL字型であり、プリンタ本体11の交換口18に引っ掛ける例を示す。
【0070】
図7は、
図6の静電気除去装置20をプリンタ装置に着脱可能な構成例を示す図である。同図では、基台21がプリンタ本体11の上面のカートリッジ13交換用の交換口18に着脱される例を示す。同図の(a)は、z軸の方向からプリンタ本体11の上面を見た出入口17を示す。同図の(b)は、y軸の方向から見た同図の(a)のVIIb-VIIb線の断面を示す。同図の(c)は、y軸の方向から見た同図の(a)のVIIc-VIIc線の断面を示す。
【0071】
図7のように、基台21は、交換口18に引っ掛ける爪部212を有する。例えば、ユーザは、基台21の爪部212をプリンタ本体11の交換口18に挿入することにより、静電気除去装置20をプリンタ本体11の上面に引っ掛けにより装着することができる。また、ユーザは、基台21を引っ張ることにより、静電気除去装置20をプリンタ本体11から取り外すことができる。
【0072】
なお、静電気除去装置20は、磁石や、粘着剤を用いてプリンタ本体11に着脱可能にしてもよい。
【0073】
[スイッチ23の構成例]
図8は、実施の形態における静電気除去装置におけるイオン発生部24によるスイッチ23の押圧動作例を示す説明図である。同図の(a)は、イオン発生部24が初期状態、つまり、角度Aが0度のときのイオン発生部24の状態を示す。
【0074】
また、スイッチ23は、基台21に埋め込まれ、押圧されるボタンが基台21の表面から数mm突出しているものとする。同図の(a)の状態では、イオン発生部24は重力により角度Aがほぼ0度になり、スイッチ23のボタンを押し込んでいる。このときスイッチ23はオフ状態になる。
【0075】
同図の(b)は、可動部22の動きにより初期状態を脱したとき、つまり、角度Aが0より大きいときのイオン発生部24の状態を示す。この状態では、イオン発生部24は、スイッチ23のボタンを押圧しない。これにスイッチ23はオン状態になる。
【0076】
なお、スイッチ23は、イオン発生部24の代わりに団扇26に押圧されてもよい。
【0077】
[イオン発生部24の構成例]
図9は、実施の形態における静電気除去装置におけるイオン発生部24を含む回路構成例を示す図である。同図のように、静電気除去装置20は、回路構成として、ACアダプタ29、スイッチ23、イオン発生部24を含む。
【0078】
ACアダプタ29は、交流電源に接続され、例えば100Vの交流電力を直流電力に変換する。
【0079】
スイッチ23は、オン状態のとき、ACアダプタ29から直流電力をイオン発生部24に供給する。例えば、スイッチ23は、
図8のようなノンロック式の押しボタンスイッチでよい。
【0080】
イオン発生部24は、プラスイオン発生器240およびマイナスイオン発生器241を含み、プラスイオンとマイナスイオンとを発生する。
【0081】
なお、静電気除去装置20は、ACアダプタの代わりに、プリンタ本体11から直流電源の供給を受けるコネクタを備えてもよい。また、静電気除去装置20は、ACアダプタの代わりに、スイッチ23を介してイオン発生部24に直流電力を供給するバッテリーを備えてもよい。
【0082】
[トレイ12の構成例]
図10は、実施の形態におけるプリンタ装置10のトレイの構成例を示す図である。同図のトレイ12は、対象物としてウェルプレート15を載置する。ウェルプレート15は、分析、調査または研究に用いる試料である流体を分注するための複数のウェルを有する。例えば、ウェルの直径は7mmまたは5mmでよい。この場合、例えば96個のウェルが9mm間隔で配置される。また、ウェルの直径は3.3mmまたは3.7mmでもよい。この場合、例えば384個のウェルが4.5mm間隔で配置される。なお、ウェルの個数、穴径、間隔はこれに限らない。
【0083】
なお、
図10ではトレイ12に載置される液滴吐出の対象物としてウェルプレート15の例を示したが、これに限らない。対象物は、例えば、CD-ROM、DVD、紙媒体などの印刷対象物であってもよい。
【0084】
[静電気除去装置20の変形例]
図11は、実施の形態における静電気除去装置20の変形例を示す図である。同図の静電気除去装置20は、
図1、
図3A、
図3Bと比べて、サイドガード28が追加されている点が異なっている。以下、同じ点の説明の重複を避けて、異なる点を中心に説明する。
【0085】
サイドガード28は、基台21と団扇26の側辺とを接続する折り畳み可能な蛇腹状の膜体である。サイドガード28は、団扇26の両サイドのそれぞれに備えられる。サイドガード28により、イオンがトレイから発散することを抑制し、除電の効率をさらに向上させることができる。また、サイドガード28は、イオンの副産物として発生するオゾンの拡散も抑制する。これにより、オゾン劣化しやすい材質への影響を抑制することができる。
【0086】
[静電気除去装置20の動作例]
図12は、実施の形態における液滴吐出システムの動作例を示すフローチャートである。同図において、ステップS1からS3は、ユーザが行う操作を示す。ステップS11からS17は、主に静電気除去装置20による除電動作を示す。ステップS21は、印刷動作または試料の分注動作を示す。このときプリンタ装置10は、ステップS11からS16までの期間に亘ってトレイ12の大部分をプリンタ本体11の外部に送り出す動作をし、ステップS17でトレイ12を引き込む動作を行う。
【0087】
まず、ユーザは、空のウェルプレート15をトレイ12に設定し、試料を貯めたタンクを有するカートリッジをプリンタ本体11に装着する(S1)。次に、ユーザは、角度指定ノブ25で、所定角度を指定する(S2)。所定角度は、可動部22によるイオン発生部24および団扇26の載置を解除する条件として角度Aの大きさである。ユーザは、可動部22が所定角度に開いた状態において、可動部22の第3アーム223および第4アーム224の間隔を第1間隔に狭めてから、可動部22を初期状態に押し込む(S3)。さらに、ユーザは、プリンタ装置10に印刷動作を指示する印刷コマンドを送る(S4)。
【0088】
印刷コマンドを受信したプリンタ装置10は、印刷動作(S21)に先立って静電気除去装置20の除電動作させるために、プリンタ本体11外部へのトレイ12の送り出し動作および引き込む動作と行ってから、印刷動作を実施する。
【0089】
詳しく説明すると、印刷コマントを受信したプリンタ装置10は、トレイ12の送り出し動作を開始する。これにより、トレイ12が移動を開始する(S11)。トレイ12の移動により、可動部22およびイオン発生部24が押し出されることによりスイッチ23がオン状態になりイオン発生部24がイオン発生を開始する(S12)。これにより、角度Aが所定角度に達するまでの間(S13でno)
図3Aに示した無風除電が実施される。
【0090】
トレイ12の移動が進み、角度Aが所定角度に達したとき(S13でyes)、可動部22が外側に開き(S14)、つまり、可動部22の第3アーム223および第4アーム224の間隔が第1間隔から第2間隔に大きくなる。これにより、可動部22がイオン発生部24および団扇26を載置することを解除する。載置を解除された団扇26は、振り子動作をする(S15)。振り子動作によりトレイ12上に気流が発生し、イオンがトレイ12上を移動する。これにより、
図3Bに示した有風除電が実施される。
【0091】
また、振り子動作によりイオン発生部24が初期状態に復帰し、スイッチ23がオフ状態になり、イオン発生部24のイオン発生が停止する(S16)。イオン発生が停止しても、サイドガード28がトレイ12上からのイオンの散逸を抑制するので、イオンによる除電作用を残留することができる。
【0092】
プリンタ装置10は、トレイ12を引き込む動作を行う。これにより、トレイ12が印刷動作または分注動作に適した所定位置に戻る(S17)。
【0093】
このように、プリンタ装置10は、印刷動作の準備段階として、トレイ12をプリンタ本体11外部に送り出してから引き込む動作を少なくとも1回実施する。静電気除去装置20は、準備段階におけるトレイ12の送り出しと引き込み動作に連動して、トレイ12の除電動作として無風除電と有風除電とを実施する。
【0094】
図12の動作例によれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置であるプリンタ装置10においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部22およびイオン発生部24がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部24は、トレイがイオン発生部24の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部24の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。さらに、イオン発生部24が所定角度の状態から初期状態に戻るときに、団扇26によりトレイ上に気流を発生させて、トレイ12上のイオンを移動させる。その結果、静電気除去装置20は、初期状態から所定角度に達するまでの期間は、無風除電を実施し、所定角度から初期状態に復帰するとき、有風除電を実施することができる。
【0095】
以上説明してきたように実施の形態の一態様に係る静電気除去装置20は、トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイ12の静電気を除去する静電気除去装置20であって、トレイ12の移動によりトレイ12に押されて動く可動部22と、トレイ12の移動経路上に配置され、可動部22の動きに応じてイオンを発生するイオン発生部24と、を備える。
【0096】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部22およびイオン発生部24がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部24は、トレイがイオン発生部24の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部24の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。
【0097】
例えば、可動部22およびイオン発生部24は、液滴吐出装置の本体の外側に配置され、イオン発生部24は、液滴吐出装置の本体からトレイ12の一部または全部が送り出された状態で、トレイ12の送り出された部分に向けてイオンを発生してもよい。
【0098】
これによれば、静電気除去装置20は、既存の液滴吐出装置内部を変更することなく、外付けすることができる。
【0099】
例えば、イオン発生部24は、可動部22に載置されてもよい。
【0100】
これによれば、イオン発生部24が可動部22と共に可動であり、トレイの動きに応じた位置でイオンを発生することができる。
【0101】
例えば、静電気除去装置20は、可動部22またはイオン発生部24の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチ23を備え、イオン発生部24は、スイッチ23がオン状態のときにイオンを発生させてもよい。
【0102】
これによれば、例えば、イオン発生部24の下方にトレイが移動してきたときに、イオンを発生させるので、無駄なイオンを発生させることなく効率的に静電気を除去することができる。
【0103】
例えば、可動部22、イオン発生部24およびスイッチ23を支持し、液滴吐出装置に着脱可能な基台21を備えてもよい。
【0104】
これによれば、液滴吐出装置を静電気除去装置20に対して着脱可能にすることができる。
【0105】
例えば、基台21は、可動部22の一部分を支持する軸棒210を有し、可動部22は、トレイ12に押されることにより軸棒210を中心として回転するように可動であってもよい。
【0106】
これによれば、トレイは、可動部22の接触部分を円周方向に動かすので、トレイに掛かる負荷を小さくすることができる。
【0107】
例えば、イオン発生部24の一部分は、軸棒210に支持され、イオン発生部24の他の一部分は、可動部22に載置され、スイッチ23は、イオン発生部24の動きによりオン状態とオフ状態とが切り替わってもよい。
【0108】
これによれば、スイッチ23は、イオン発生部24の回転角度に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わることができる。
【0109】
例えば、可動部22は、基台21と可動部22とのなす角度が所定角度に達したとき、イオン発生部24を載置することを解除してもよい。
【0110】
これによれば、基台21と可動部22とのなす角度が所定角度に達したとき、イオン発生部24の位置が初期状態に戻り、スイッチを切り替えることができる。その結果、初期状態から所定角度に達し、さらに初期状態に復帰するまでの期間にだけイオン発生するように制限することができる。こうして、無駄なイオン発生を抑制することができ、効率的に静電気を除去することができる。
【0111】
例えば、静電気除去装置20は、イオン発生部24に取り付けられた板状の団扇26を備えてもよい。
【0112】
これによれば、イオン発生部24が所定角度の状態から初期状態に戻るときに、団扇26によりトレイ上に気流を発生させて、トレイ上のイオンを移動させることができる。言い換えれば、静電気除去装置20は、初期状態から所定角度に達するまでの期間は、無風除電を実施し、所定角度から初期状態に戻るまでの期間は、有風除電を実施することができる。
【0113】
例えば、静電気除去装置20は、所定角度を指定する角度指定部25を備えてもよい。
【0114】
これによれば、上記の角度の所定角度の達するまで無風除電の期間を調整することができる。例えば、トレイ上に静電気が大量に溜まりやすい状況では、所定角度を大きい角度に指定することができる。逆に、トレイ上に静電気が溜まりにくい状況では、所定角度を小さい角度に指定することができる。その結果、効率的に静電気を除去することができる。
【0115】
例えば、静電気除去装置20は、基台21と団扇26の側辺とを接続する面状のサイドガードを備えてもよい。
【0116】
これによれば、イオンがトレイから発散することを抑制し、除電の効率をさらに向上させることができる。
【0117】
また、実施の形態の一態様に係る静電気除去装置20は、トレイ搬送機構を有する液滴吐出装置のトレイの静電気を除去する静電気除去装置であって、トレイ12の移動によりトレイ12に押されて動く可動部22と、可動部22の動きに応じてオフ状態とオン状態とが切り替わるスイッチ23と、トレイ12の移動経路上に配置され、スイッチ23のオン状態に応じてトレイ12上にイオンを発生するイオン発生部24と、可動部22、イオン発生部24およびスイッチ23を支持し、液滴吐出装置に着脱可能な基台21と、を備える。
【0118】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。つまり、可動部22およびイオン発生部24がトレイの移動と連動する。例えば、イオン発生部24は、トレイがイオン発生部24の下方に移動してきたときにトレイ上にイオンを発生させ、トレイがイオン発生部24の下方に位置しないときにイオンを発生しない。このように、無駄なイオン発生を抑制し静電気の除去効率を高めることができる。
【0119】
例えば、イオン発生部24に取り付けられた面状の団扇を備え、基台21は、可動部22の一部分およびイオン発生部24の一部分をそれぞれ支持する軸棒210を備え、イオン発生部24の他の一部分は、可動部22に載置され、可動部22は、基台21と可動部22とのなす角度が所定角度に達したとき、イオン発生部24を載置することを解除し、イオン発生部24は、解除により初期状態に戻り、スイッチを切り換えてもよい。
【0120】
これによれば、イオン発生部24が所定角度の状態から初期状態に戻るときに、団扇によりトレイ上に気流を発生させて、トレイ上のイオンを移動させることができる。言い換えれば、静電気除去装置20は、初期状態から所定角度に達するまでの期間は、無風除電を実施し、所定角度から初期状態に戻るまでの期間は、有風除電を実施することができる。
【0121】
また、実施の形態の一態様に係る液滴吐出システム1は、上記の静電気除去装置20と、静電気除去装置20が取り付けられたトレイ搬送型の液滴吐出装置とを備える。
【0122】
これによれば、トレイ搬送型の液滴吐出装置においてトレイの静電気を効率良く除去することができる。
【0123】
なお、実施の形態では静電気除去装置20をプリンタ装置10に装着する例を示したが、静電気除去装置20はプリンタ装置10以外の装置に装着してもよい。プリンタ装置10以外の装置は、例えば、トレイまたは所定の物体を装置内部から装置外部に送り出して引き込むことが可能な搬送機構を有していればよい。この場合、静電気除去装置20は、所定の物体の移動に連動して、所定の物体の静電気を除去することができる。
【0124】
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る静電気除去装置20および液滴吐出システム1について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、トレイ搬送型の液滴吐出装置のトレイを除電する静電気除去装置および液滴吐出システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 液滴吐出システム
10 プリンタ装置
11 プリンタ本体
12 トレイ
13 カートリッジ
14 スイッチ
15 ウェルプレート
17 出入口
18 交換口
20 静電気除去装置
21 基台
22 可動部
23 スイッチ
24 イオン発生部
25 角度指定ノブ
26 団扇
27 開口
28 サイドガード
29 ACアダプタ
210 軸棒
211 爪部
212 爪部
221 第1アーム
222 第2アーム
223 第3アーム
224 第4アーム
240 プラスイオン発生器
241 マイナスイオン発生器