(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120504
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】車両の冷却回路用配管、及びこれを用いた冷却回路
(51)【国際特許分類】
F01P 11/04 20060101AFI20220810BHJP
F01P 3/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
F01P11/04 B
F01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017433
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 浩
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三上 晋
(57)【要約】
【課題】冷却回路のレイアウトの簡略化を図ることができる車両の冷却回路用配管、及びそれを用いた冷却回路を提供する。
【解決手段】冷却回路用配管2は、車両において冷却媒体3が循環する冷却回路1に用いられる。車両の冷却回路用配管2は、筒状の外縁部20と、前記外縁部20の中を複数の流路23,25に隔てる仕切部21と、を備える。仕切部21には、仕切中空部21aが設けられていることが好ましい。外縁部20には、外縁中空部20aが設けられていることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における冷却媒体が循環する冷却回路に用いられる車両の冷却回路用配管であって、
筒状の外縁部と、
前記外縁部の中を複数の流路に隔てる仕切部と、
を備えることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の冷却回路用配管であって、
前記仕切部には、仕切中空部が設けられていることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の冷却回路用配管であって、
前記外縁部には、外縁中空部が設けられていることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の冷却回路用配管であって、
前記外縁中空部には、蓄熱部材が封入されていることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両の冷却回路用配管であって、
合成樹脂製であることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両の冷却回路用配管であって、
前記外縁部を形成するアウターチューブと、前記仕切部と前記複数の流路を形成するインナーチューブとが別体形成されていることを特徴とする車両の冷却回路用配管。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両の冷却回路用配管を備える冷却回路であって、
発熱部を備えた冷却回路。
【請求項8】
請求項7に記載の冷却回路であって、
他の熱交換部を備え、
前記複数の流路には、前記他の熱交換部から前記発熱部へ前記冷却媒体が送られる往路と、前記発熱部から前記他の熱交換部へ前記冷却媒体が戻される復路と、が少なくとも含まれていることを特徴とする冷却回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷却回路に用いられる車両の冷却回路用配管、及びこれを用いた冷却回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において内燃機関を冷却する冷却媒体が循環する冷却回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。冷却回路には、内燃機関を冷却して温まった冷却媒体の熱を利用するヒータコアなどの他の熱交換部も設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却回路に用いられる配管は、1本で冷却媒体が流れる一つの流路が形成されている。そして、ハイブリッド車では、内燃機関(エンジン)、モータ、バッテリ等、最適温度が異なる複数の装置を備えるため、各装置の最適温度に応じて独立した複数の冷却回路を車両に設ける場合がある。これは、電気自動車や燃料電池車においても同様であり、ハイブリッド車、電気自動車、及び燃料電池車では、特に、車両における冷却回路のレイアウトが複雑化する傾向にある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、冷却回路のレイアウトの簡略化を図ることができる車両の冷却回路用配管、及びそれを用いた冷却回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
車両において冷却媒体(例えば、実施形態の冷却媒体3。以下同一。)が循環する冷却回路(例えば、実施形態の冷却回路1。以下同一。)に用いられる車両の冷却回路用配管(例えば、実施形態の車両の冷却回路用配管2。以下同一。)であって、
筒状の外縁部(例えば、実施形態の外縁部20。以下同一。)と、
前記外縁部の中を複数の流路(例えば、実施形態の第1流路23、第2流路25。以下同一。)に隔てる仕切部(例えば、実施形態の仕切部21。以下同一。)と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、1つの配管の中に複数の流路が設けられているため、冷却回路の部品点数を削減することができ、冷却回路のレイアウトの簡略化を図ることができる。
【0008】
[2]また、本発明においては、前記仕切部には、仕切中空部(例えば、実施形態の仕切中空部21a。以下同一。)が設けられていてもよい。当該構成によれば、仕切中空部によって、仕切部を介した複数の流路の中を流れる冷却媒体の間での熱交換を防止又は抑制することができる。
【0009】
[3]また、本発明においては、前記外縁部には、外縁中空部(例えば、実施形態の外縁中空部20a。以下同一。)が設けられていてもよい。当該構成によれば、外縁部によって、車両の冷却回路用配管内を流れる冷却媒体が外気と熱交換することを防止又は抑制することができる。
【0010】
[4]また、本発明において、前記外縁中空部には、蓄熱部材が封入されていてもよい。このようにすると、外縁中空部に熱が蓄えられて、内燃機関の早期暖機や暖房性能を向上できる。
【0011】
[5]また、本発明において、車両の冷却回路用配管が合成樹脂製であってもよい。このようにすると、配管の取り扱いを容易にできる。
【0012】
なぜなら、ハイブリッド車、電気自動車、及び燃料電池車では特に、配管が長くなったり、フロアの下まで伸びたりする。このようなフロアの下まで伸びるような長い配管としてゴム製のホースを利用すると、弛みなどが生じて取り扱いが難しい。これに対して、冷却用配管を合成樹脂にした場合には、そのような問題がなく、配管の取り扱いを容易にできる。さらに、配管の重量が軽くなり、車両の軽量化にも貢献できる。
【0013】
[6]また、本発明は、前記外縁部を形成するアウターチューブと、前記仕切部と前記複数の流路を形成するインナーチューブとが別体形成されていてもよい。当該構成によれば、アウターチューブは外部環境や製造工程に適した材料、インナーチューブは内部に流れる冷却媒体に適した材料にする等、用途に即した材料を選択できる。
【0014】
[7]また、本発明は、車両の冷却回路用配管と発熱部とを備えた冷却回路とすることもできる。
【0015】
[8]また、本発明においては、冷却回路が発熱部に加えて他の熱交換部を備えており、前記複数の流路として、前記他の熱交換部から前記発熱部へ前記冷却媒体が送られる往路と、前記発熱部から前記他の熱交換部へ前記冷却媒体が戻される復路と、が少なくとも含まれているように構成することもできる。この場合、往路と復路とで内部を流れる冷却媒体の温度の差が生じるため、仕切中空部を形成することが車両の冷却回路用配管内での冷却媒体同士での熱交換を防止するために特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、発明の第1実施形態の車両の冷却回路用配管、及びこれを用いた冷却回路である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の車両の冷却回路用配管を切断して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、発明の第2実施形態の車両の冷却回路用配管を切断して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の変形例に係る車両の冷却用配管を切断して示す断面図である。
【
図5】
図5は、発明の第3実施形態の車両の冷却回路用配管を切断して示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の変形例に係る車両の冷却用配管を切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照して、発明の実施形態の車両の冷却回路用配管、及びこれを用いた冷却回路を詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、発明の第1実施形態の冷却回路1を示している。冷却回路1は、車両の冷却回路用配管2を介して、冷却水などの冷却媒体3を、内燃機関(エンジン)、モータ、バッテリ、パワーコントローラー、燃料電池等の発熱部4、やその他の熱交換部5(例えば、ラジエータ、ヒータコア、AT(自動変速機)/CVT(無段変速機)、EGR(排出ガス再循環)など。)に循環させて熱交換を行うものである。
【0019】
図1では、発熱部4とその他の熱交換部5とを接続する配管として、第1実施形態の車両の冷却回路用配管2を用いている図を示しているが、発明の冷却回路はこれに限らず、例えば、その他の熱交換部同士(例えば、ヒータコアとラジエータなど。)を接続する配管として用いることもできる。また、
図1では、車両の冷却回路用配管2を途中で切断して断面が見える状態で示している。
【0020】
図2は、車両の冷却回路用配管2の断面を拡大して示した図である。
図2に示すように、車両の冷却回路用配管2は、断面長円筒形状の外縁部20を備えている。その外縁部20の内部は、仕切部21で2つに隔たれており、この仕切部21によって、車両の冷却回路用配管2の内部には第1流路23と第2流路25とが画定されている。例えば、第1流路23がラジエータなどの他の熱交換部5から発熱部4へ冷却媒体が送られる往路としての流路となり、第2流路25が発熱部4からラジエータなどの他の熱交換部5へ冷却媒体が戻る復路としての流路となる。第1実施形態においては、第1流路23及び第2流路25が発明の複数の流路に該当する。
【0021】
仕切部21には、
図2における上下2つに区切られた仕切中空部21aが形成されており、この仕切中空部21aによって空気層を形成して仕切部21に断熱性を持たせている。これにより、往路としての第1流路23に冷却された冷却媒体3を流し、復路としての第2流路25に発熱部4を冷却して温度が上昇した冷却媒体3を流しても、車両の冷却回路用配管2内における第1流路23と第2流路25との間で熱交換が行われることを防止又は抑制することができる。
【0022】
第1実施形態の車両の冷却回路用配管2は、合成樹脂製であって、押出成形により一体に形成することができる。車両の冷却回路用配管2を合成樹脂製にすることで、配管が長く、車両のフロアの下まで伸びるものであったとしても、配管の取り扱いを容易にできる。さらに、配管の重量が軽くなり、車両の軽量化にも貢献できる。
【0023】
また、押出成形で車両の冷却回路用配管2を成型することにより、車両の冷却回路用配管2に第1流路23及び第2流路25の複数の流路を形成することが容易となる。車両の冷却回路用配管2の屈曲部分については、押出成形の工程と同一工程時に曲げてもいいし、押出成形工程の後の工程で曲げてもよい。
【0024】
第1実施形態の車両の冷却回路用配管2及びこれを用いた冷却回路1によれば、1つの車両の冷却回路用配管2が第1流路23と第2流路25との2つの流路を備えるため、1つの部材で、冷却媒体3を往復させることができ、冷却回路1の部品点数を削減して、冷却回路1のレイアウトの簡略化を図ることができる。なお、車両の冷却回路用配管2の材質は合成樹脂に限らず、他の材料を用いて製造しても、部品点数の削減、及びレイアウトの簡略化という発明の作用効果を得ることができる。
【0025】
[第2実施形態]
図3は、発明の第2実施形態の車両の冷却回路用配管2の切断断面を示す斜視図である。第2実施形態の車両の冷却回路用配管2の外縁部20には、外縁中空部20aが4つに区切られて設けられている。この4つの外縁中空部20aによって車両の冷却回路用配管2にも断熱性を持たせている。これにより、車両の冷却回路用配管2内を流れる冷却媒体3が外気と熱交換することを防止又は抑制している。他の構造は、第1実施形態の車両の冷却回路用配管2と同一であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
第2実施形態の車両の冷却回路用配管2及びこれを用いた冷却回路1によれば、1つの車両の冷却回路用配管2が第1流路23と第2流路25との2つの流路を備えるため、1つの部材で、冷却媒体3を往復させることができ、冷却回路1の部品点数を削減して、冷却回路1のレイアウトの簡略化を図ることができる。
【0027】
図4は、発明の第2実施形態に係る車両の冷却回路用配管2の変形例の断面図である。当該車両の冷却回路用配管2では、外縁中空部20a内にパラフィン等の蓄熱部材6が封入されている。これにより、内燃機関の早期暖機や暖房性能を向上できる。
図4では、第1流路23と第2流路25の外側の外縁中空部20aそれぞれに蓄熱部材6が封入されているが、例えば、往路となる第1流路23側の外縁中空部20aのみに蓄熱部材6が封入されていてもよい。
【0028】
[第3実施形態]
図5は、発明の第3実施形態の車両の冷却回路用配管2の断面図である。第3実施形態の車両の冷却回路用配管2は、外縁部20を形成するアウターチューブ7と、仕切部21と第1流路23及び第2流路25を形成する2本のインナーチューブ8とが別体形成された後、アウターチューブ7に2本のインナーチューブ8を挿入することで形成されている。これにより、アウターチューブ7は外部環境や製造工程に適した材料、インナーチューブ8は内部に流れる冷却媒体に適した材料にする等、用途に即した材料を選択できる。なお、第3実施形態の車両の冷却回路用配管2においては、2本のインナーチューブ8の円筒壁によって仕切部21が形成されている。他の構造は、第1実施形態及び第2実施形態の車両の冷却回路用配管2と同一であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
第3実施形態の車両の冷却回路用配管2及びこれを用いた冷却回路1によれば、1つの車両の冷却回路用配管2が第1流路23と第2流路25との2つの流路を備えるため、1つの部材で、冷却媒体3を往復させることができ、冷却回路1の部品点数を削減して、冷却回路1のレイアウトの簡略化を図ることができる。
【0030】
図6は、発明の第3実施形態に係る車両の冷却回路用配管2の変形例の断面図である。
図6に示すように、インナーチューブ8では、第1流路23及び第2流路25の各流路を形成する二本の内筒部80を一体形成してもよい。また、この第3実施形態の変形例においても外縁中空部20a内にパラフィン等の蓄熱部材6を封入して、内燃機関の早期暖機や暖房性能の向上を図ってもよい。
【0031】
なお、上述の各実施形態では、第1流路23及び第2流路25が円筒形状のものを説明したが、断面形状は円形に限らず、冷却媒体3を流すことができれば他の形状で合ってもよい。例えば、断面矩形状の角筒形状に第1流路23及び第2流路25を形成してもよい。
【0032】
また、上述の各実施形態では、第1流路23及び第2流路25の2つの流路を備えた車両の冷却回路用配管2を説明したが、流路の数は2つに限定されず、例えば、3つ以上の流路が画定されるように仕切部を構成してもよい。これによっても、部品点数削減及びレイアウトの簡略化という発明の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 冷却回路
2 車両の冷却回路用配管
3 冷却媒体
4 発熱部
5 その他の熱交換部
6 蓄熱部材
7 アウターチューブ
8 インナーチューブ
20 外縁部
20a 外縁中空部
21 仕切部
21a 仕切中空部
23 第1流路
25 第2流路
80 内筒部