(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120511
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム及びこれを用いた化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20220810BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220810BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220810BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20220810BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B32B27/36
B32B27/00 E
C08J7/046 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017443
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿又 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 和嗣
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB43
4F006AB65
4F006BA02
4F006EA03
4F100AK01B
4F100AK42A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA07B
4F100EJ54
4F100GB07
4F100GB81
4F100JB14
4F100JK06
4F100JK12B
4F100JL09B
4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】耐光性に優れたハードコートフィルム及びこれを用いた化粧シートを提供する。
【解決手段】本発明に係るハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなる基材と、基材の一方面側に積層されるハードコート層とを備え、ハードコート層は、紫外線吸収剤を含有し、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm
2の条件下における24時間の耐光性試験前後の黄変度ΔYIが0~0.8であるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートからなる基材と、
前記基材の一方面側に積層されるハードコート層とを備え、
前記ハードコート層は、紫外線吸収剤を含有し、
温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下における24時間の耐光性試験前後の黄変度ΔYIが0~0.8である、ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記耐光性試験前後の視感透過率Yの変化量の絶対値が0.3以下である、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記耐光性試験前後の色相a*の変化量の絶対値が0.2以下である、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記耐光性試験前後の色相b*の変化量の絶対値が0.5以下である、請求項1~3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の厚みが4~6μmである、請求項1~4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記基材の厚みが75~100μmである、請求項1~5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤が280~330nmに極大吸収波長を有する、請求項1~6のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤が、前記ハードコート層の3~7質量%の割合で含有される、請求項1~7のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のハードコートフィルムを備える、化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性を有するハードコートフィルム及びこれを用いた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
家具や建材の表面を装飾する材料として、樹脂フィルムや紙等のシート材に木目や石目等を印刷した化粧シートが広く用いられている。化粧シートの構成として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の基材フィルム上にハードコート層を積層したハードコートフィルムを、表面保護の目的で印刷層の前面側に設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-43374号公報
【特許文献2】特許第5605587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PETフィルムは、紫外線の照射により劣化しやすい。PETフィルムを基材としたハードコートフィルムを化粧シートに設けた構成において、PETフィルムが劣化により黄変すると、化粧シートの見栄えの悪化に繋がる。
【0005】
そこで、化粧シートに設けられるハードコートフィルムの耐光性を向上させるため、ハードコート層に紫外線吸収剤等の耐光剤を添加することが従来行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、ハードコート層に紫外線吸収剤を添加した従来のハードコート性フィルムは、耐光性の面で改良の余地があった。
【0006】
それ故に、本発明は、耐光性に優れたハードコートフィルム及びこれを用いた化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなる基材と、基材の一方面側に積層されるハードコート層とを備え、ハードコート層は、紫外線吸収剤を含有し、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下における24時間の耐光性試験前後の黄変度ΔYIが0~0.8であるものである。
【0008】
本発明に係る化粧シートは、上記のハードコートフィルムを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐光性に優れたハードコートフィルム及びこれを用いた化粧シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るハードコートフィルムを模式的に示す断面図
【
図2】実施形態に係る化粧シートを模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係るハードコートフィルムを模式的に示す断面図であり、
図2は、実施形態に係る化粧シートを模式的に示す断面図である。
【0012】
図1に示すハードコートフィルム100は、透明基材1と、透明基材1の一方面側に順に積層される易接着層2及びハードコート層3とを備える。
図2に示す化粧シート200は、家具や建材の表面装飾材として用いられるシートであって、
図1に示すハードコートフィルム100を備える。より詳細には、化粧シート200は、基材10の一方面に設けた印刷層11の上に、接着層12を介してハードコートフィルム100の透明基材1の他方面を貼り合わせたものである。ハードコートフィルム100は、化粧シート200の表面保護材として機能する。
【0013】
以下、ハードコートフィルム100について詳細に説明する。
【0014】
透明基材1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムである。PETは、耐熱性、耐寒性及び耐薬品性に優れ、透明性も高いことから、化粧シート200の保護フィルムの基材として好適である。透明基材1の表面には、コロナ処理やプラズマ処理等により改質処理が施されていても良い。
【0015】
易接着層2は、透明基材1とハードコート層3との密着性を向上させるために設けられる層であり、例えば、アンカーコート剤を塗布することにより形成される。ただし、易接着層2は、必須ではなく、透明基材1上に直接ハードコート層3を積層しても良い。
【0016】
ハードコート層3は、紫外線硬化型樹脂、紫外線吸収剤、光重合開始剤及び溶剤を含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させることによって形成することができる。
【0017】
紫外線硬化型樹脂は、紫外線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0018】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0021】
また、紫外線硬化型樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0023】
上述した紫外線硬化型樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した紫外線硬化型樹脂は、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0024】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、280~330nmに極大吸収波長を有するものを使用することが好ましい。紫外線吸収剤は、PETからなる基材の劣化による黄変を抑制するために添加される。ただし、ハードコート層形成用組成物の塗膜を硬化させる際に、紫外線吸収剤による紫外線吸収量が多くなりすぎると、硬化反応が活性化されず、紫外線吸収剤が紫外線硬化型樹脂の硬化阻害を引き起こす。この場合、紫外線硬化型樹脂の硬化が不十分であるために、塗膜剥がれが生じやすく、ハードコート層3の表面硬度やハードコート層3と透明基材1との密着性が不足する。そこで、本発明においては、紫外線領域における吸収波長域が、光重合開始剤の紫外線領域における吸収波長域に対して十分に狭い紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤を含有する際の硬化阻害を抑制する。紫外線吸収剤としては、上述した280~330nmに極大吸収波長を有するヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を好適に用いることができる。
【0025】
紫外線吸収剤の配合量は、硬化後のハードコート層3(ハードコート層形成用組成物の全固形分)の3~7質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量がハードコート層3の3質量%未満の場合、ハードコート層3の紫外線吸収能が低下し、PETからなる透明基材1の劣化抑制が不十分となる。また、紫外線吸収剤の配合量がハードコート層3の7質量%を超える場合、紫外線吸収剤の量が多すぎることによって、紫外線硬化型樹脂の硬化阻害が生じ、ハードコート層3の密着性や表面硬度が不足する。
【0026】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、200~380nmに吸収波長域を有するものを使用することが好ましい。200~380nmに吸収波長域を有する光重合開始剤を用いた場合、光重合開始剤の吸収波長域に対して、上述した280~330nmに極大吸収波長を有する紫外線吸収剤の吸収波長域が十分に狭くなるため、紫外線吸収剤による硬化阻害を回避しつつ、紫外線硬化型樹脂の硬化反応を進行させることができる。光重合開始剤としては、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。
【0027】
溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0028】
また、ハードコート層形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有してもいい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0029】
また、ハードコート層形成用組成物は、撥水性及び/または撥油性を付与し、防汚性を高める珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。
【0030】
その他の添加剤として、ハードコート層形成用組成物に、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、導電材料等を加えても良い
【0031】
ハードコート層形成用組成物の透明基材1への塗工方法は特に限定されず、ウェットコーティング法とされる、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を採用することができる。
【0032】
ハードコート層形成用組成物の塗膜の硬化は、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用して紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射量は、100~800mJ/cm2であることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る透明基材1及びハードコート層3の厚みは特に限定されないが、化粧シートの保護フィルムとして用いる場合、基材の厚みが75~100μmであることが好ましく、ハードコート層の厚み(項化後の膜厚)が4~6μmであることが好ましい。ただし、透明基材1及びハードコート層3の厚みは、ハードコートフィルム100に求められる表面硬度や全体の厚みに等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
本実施形態に係るハードコートフィルムを用いて、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下で24時間の紫外線を照射する耐光性試験を行った場合、耐候性試験前後のハードコートフィルムの黄変度ΔYIが0~0.8である。本実施形態に係るハードコートフィルムは、耐候性試験前後の黄変度ΔYIが小さいため、化粧シートの保護フィルムとして紫外線に暴露される環境下で使用された場合でも、経年により保護フィルムが黄変しにくく、化粧シートの意匠性を維持することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るハードコートフィルムを用いて、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下で24時間の紫外線を照射する耐光性試験を行った場合、耐光性試験前後の視感透過率Yの変化量の絶対値が0.3以下であることが好ましい。耐光性試験前後の視感透過率Yの変化量の絶対値が0.3以下である場合、ハードコートフィルムが化粧シートの保護フィルムとして紫外線に暴露される環境下で使用された場合でも、経年により保護フィルムが黄変しにくく、化粧シートの意匠性を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るハードコートフィルムを用いて、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下で24時間の紫外線を照射する耐光性試験を行った場合、耐光性試験前後の色度a*の変化量の絶対値が0.2以下であることが好ましい。耐光性試験前後の色度a*の変化量の絶対値が0.2以下である場合、ハードコートフィルムが化粧シートの保護フィルムとして紫外線に暴露される環境下で使用された場合でも、経年により保護フィルムの色味が変化しにくく、化粧シートの意匠性を維持することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るハードコートフィルムを用いて、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下で24時間の紫外線を照射する耐光性試験を行った場合、耐光性試験前後の色度b*の変化量の絶対値が0.5以下であることが好ましい。耐光性試験前後の色度b*の変化量の絶対値が0.5以下である場合、ハードコートフィルムが化粧シートの保護フィルムとして紫外線に暴露される環境下で使用された場合でも、経年により保護フィルムの色味が変化しにくく、化粧シートの意匠性を維持することができる。
【0038】
尚、上記のa*及びb*は、La*b*色空間(CIELAB)における座標値である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るハードコートフィルム100は、ハードコート層3が紫外線吸収剤を含有しており、温度62℃、紫外線照射量75mW/cm2の条件下における24時間の耐光性試験前後の黄変度ΔYIが0~0.8であることから、紫外線照射による劣化が少なく、耐光性に優れる。
【実施例0040】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0041】
(ハードコートフィルムの作製)
紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤、紫外線吸収剤(比較例1を除く)及び溶剤を含有するハードコート層形成用組成物を調製した。使用した紫外線吸収剤及び添加量は表1に記載の通りとした。紫外線吸収剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物の全固形分中の部分に示す質量割合である。表1に示す紫外線吸収剤の極大吸収波長は、次の通りである。
A:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(大吸収波長345nm)
B:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(極大吸収波長336nm)
C:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(極大吸収波長322nm)
【0042】
【0043】
調製したハードコート層形成用組成物を厚み100μmの易接着層付きPETフィルム上に、硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布し、乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて365nmに輝線スペクトルを有する紫外線を照射して塗膜を硬化させて各実施例及び各比較例に係るハードコートフィルムを得た。
【0044】
(試験方法)
分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製、型式:U-4100)を用いて、各実施例及び各比較例にかかるハードコートフィルムの透過率を測定し、C光源、2度視野を条件として、耐光性試験前後の視感透過率Y、黄変度ΔYI、色度a*及びb*を算出した。
【0045】
尚、耐光性試験は、超促進耐光性試験機(岩崎電気(株)製、型式:アイ スーパーUVテスター)を用いて、各実施例及び各比較例に係るハードコートフィルムに、温度62℃、照射量75mW/cm2にて24時間紫外線を照射した。
【0046】
また、密着性試験として、2mm碁盤目法によるセロハンテープ密着試験を行った。具体的には、2mm角の区画が100マス形成されるように、カッターナイフを用いてハードコート層にクロスカットを施し、クロスカットした部分にセロハンテープを密着させた後、瞬間的にセロハンテープを引き剥がした。100マスの区画のうち、剥離せずに透明基材上に残った残数をカウントし、この残数を以下の区分に分類した。
○:残数が95以上
△:残数が50以上94未満
×:残数が50未満
【0047】
(評価)
黄変度ΔYI、密着性、視感透過率Y、色度a*及びb*を、次の評価基準に基づいて評価した。
【0048】
(i)黄変度ΔYI
耐光性試験前の黄色度をYI0、耐光性試験後の黄色度をYI24とし、黄変度ΔYIを、ΔYI=YI24-YI0により算出し、以下の基準により評価した。
○:ΔYIが0以上0.8以下
Δ:ΔYIが0.8を超える
【0049】
(ii)密着性試験
耐光性試験前後に上記の密着性試験を行い、以下の基準により密着性を評価した。
○:耐光性試験前の初期密着性が○、耐光性試験後の密着性が○
△:耐光性試験前の初期密着性が○、耐光性試験後の密着性が△
×:耐光性試験前の初期密着性及び耐光性試験後の密着性の一方または両方が×
【0050】
(iii)視感透過率Yの変化量
耐光性試験後の視感透過率をY24から耐光性試験前の視感透過率をY0を引いた視感透過率Yの変化量を以下の基準により評価した。
○:視感透過率Yの変化量の絶対値が0.3以下
×:視感透過率Yの変化量の絶対値が0.3を超える
【0051】
(iv)色度a*
耐光性試験後のa*
24から耐光性試験前のa*
0を引いたa*の変化量を以下の基準により評価した。
○:a*の変化量の絶対値が0.2以下
×:a*の変化量の絶対値が0.2を超える
【0052】
(v)色度a*
耐光性試験後のb*
24から耐光性試験前のb*
0を引いたb*の変化量を以下の基準により評価した。
○:b*の変化量の絶対値が0.5以下
×:b*の変化量の絶対値が0.5を超える
【0053】
表2に、各実施例及び各比較例に係るハードコートフィルムの評価を示す。表2における総合評価は、黄変度、視感透過率の変化量、a*の変化量及びb*の変化量の全ての評価項目が○である場合を「○」、1以上の評価項目が×である場合を「×」、それ以外を「△」とした。
【0054】
【0055】
表2に示すように、実施例1-1~1-5に係るハードコートフィルムは、ハードコート層がヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含有しており、耐光性試験前後の黄変度ΔYIが0以上0.3以下であり、紫外線照射による黄変が抑制されることが確認された。また、実施例1-1~1-5に係るハードコートフィルムは、視感透過率Yの変化量、a*の変化量及びb*の変化量も抑制されており、ハードコート層と透明基材との密着性も良好であることから、化粧シートの保護フィルムに適していることが確認された。
【0056】
比較例1に係るハードコートフィルムは、ハードコート層が紫外線吸収剤を含有しないため、紫外線吸収性が十分に得られず、耐光性試験前後の黄変度ΔYIが大きく、PETフィルムの劣化抑制が不十分であった。また、比較例1においては、耐光性試験後の密着性が低下したと共に、耐光性試験前後の視感透過率Y、色度a*及びb*の変化量を十分に抑制できないため、化粧シートの保護フィルムに適していなかった。
【0057】
比較例2-1~2-4に係るハードコートフィルムは、ハードコート層がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有しているが、紫外線吸収性が十分に得られず、耐光性試験前後の黄変度ΔYIが大きく、PETフィルムの劣化抑制が不十分であった。また、比較例1と同様に、耐光性試験後の密着性低下を生じ、耐光性試験前後の視感透過率Y、色度a*及びb*の変化量を十分に抑制できないため、化粧シートの保護フィルムに適していなかった。
【0058】
比較例3-1~3-8に係るハードコートフィルムは、ハードコート層がヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含有しているが、耐光性試験前後の黄変度ΔYIを十分に抑制できず、PETフィルムの劣化抑制が不十分であった。また、比較例1と同様に、耐光性試験前後の視感透過率Y、色度a*及びb*の変化量を十分に抑制できないため、化粧シートの保護フィルムに適していなかった。比較例3-1~3-5では、比較例1と同様に、耐光性試験後の密着性低下を生じた。また、比較例3-6~3-8においては、紫外線吸収剤の配合量が多すぎることにより、ハードコート層形成用組成物の硬化阻害を生じ、耐光性試験前の密着性が悪かった。尚、比較例3-6及び3-7における耐光性試験後の密着性評価が○となったのは、耐光性試験での紫外線照射により硬化が促進されたためと考えられる。
【0059】
比較例4-1~4-4に係るハードコートフィルムは、ハードコート層に実施例1-1~1-5と同じ紫外線吸収剤を添加したものである。比較例4-1及び4-2に係るハードコートフィルムにおいて、紫外線吸収剤の配合量が少なすぎることにより紫外線吸収性が十分に得られず、耐光性試験前後の黄変度ΔYIを十分に抑制することができなかった。また、比較例1と同様に、耐光性試験前後の色度a*及びb*の変化量を十分に抑制できないため、化粧シートの保護フィルムに適していなかった。比較例4-3及び4-4に係るハードコートフィルムにおいては、紫外線吸収剤の配合量が多すぎることにより、ハードコート層形成用組成物の硬化阻害を生じ、耐光性試験前の密着性が低下した。また、比較例4-3及び4-4においては、実施例と比べて耐光性試験前後の黄変度ΔYIを十分に抑制することができなかった。