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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120519
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】筆記具及び筆記量検出システム
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/08 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B43K29/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017463
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正史
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
(72)【発明者】
【氏名】牧 貴之
(57)【要約】
【課題】高精度に筆記量を検出する。
【解決手段】筆記具は、軸筒の内部に、軸筒の軸線方向に前後動可能に配置され、筆記芯を把持する把持部材と、軸筒の軸線周りに回転可能であり且つ筆記芯が受ける筆記圧による把持部材の後退動作に伴って後退するように設けられた回転子と、回転子の後退に応じて回転子を回転運動させる回転駆動機構と、回転子の回転運動を検出する検出部と、回転運動に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の内部に、前記軸筒の軸線方向に前後動可能に配置され、筆記芯を把持する把持部材と、
前記軸筒の軸線回りに回転可能であり且つ前記筆記芯が受ける筆記圧による前記把持部材の後退動作に伴って後退するように設けられた回転子と、
前記回転子の後退に応じて前記回転子を回転運動させる回転駆動機構と、
前記回転子の回転運動を検出する検出部と、
前記回転運動に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記軸筒に接続され、前記軸筒の軸線回りに回転可能である回転部材をさらに有し、
前記検出部は、前記軸筒が挿通される筒状の筐体に収容されると共に、前記回転部材を回転させる操作に応じて前記回転量を検出するか否かを切り替えるように構成される、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
筆記具及び通信端末を有する筆記量検出システムであって、
前記筆記具は、
軸筒の内部に、前記軸筒の軸線方向に前後動可能に配置され、筆記芯を把持する把持部材と、
前記軸筒の軸線回りに回転可能であり且つ前記筆記芯が受ける筆記圧による前記把持部材の後退動作に伴って後退するように設けられた回転子と、
前記回転子の後退に応じて前記回転子を回転運動させる回転駆動機構と、
前記回転子の回転運動を検出する検出部と、
前記回転運動に関する情報を出力する出力部と、を有し、
前記通信端末は、
前記出力された回転運動に関する情報を取得する取得部と、
前記回転運動に関する情報を表示する表示部と、を有する
ことを特徴とする筆記量検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具及び筆記量検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記行為に関するデータを取得することを可能とする筆記具が知られている。例えば、特許文献1には、加速度センサ及び角速度センサを備え、これらのセンサによる測定結果に基づいて筆記時間を計測する筆記具が知られている。特許文献1に記載の筆記具は、筆記量を可視化し、子どもの勉学への意欲を高めること等を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-211948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の筆記具は、加速度センサ及び角速度センサによる測定結果に基づいて筆記時間を計測する。したがって、筆記具に振動が生じた場合等に、実際に筆記がされていない時間を筆記時間として計測してしまう場合があった。そこで、より高精度に筆記量を検出することが求められていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、高精度に筆記量を検出することを可能とする筆記具及び筆記量検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る筆記具は、軸筒の内部に、軸筒の軸線方向に前後動可能に配置され、筆記芯を把持する把持部材と、軸筒の軸線回りに回転可能であり且つ筆記芯が受ける筆記圧による把持部材の後退動作に伴って後退するように設けられた回転子と、回転子の後退に応じて回転子を回転運動させる回転駆動機構と、回転子の回転運動を検出する検出部と、回転運動に関する情報を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る筆記具は、軸筒に接続され、軸筒の軸線回りに回転可能である回転部材をさらに有し、検出部は、軸筒が挿通される筒状の筐体に収容されると共に、回転部材を回転させる操作に応じて回転量を検出するか否かを切り替えるように構成される、ことが好ましい。
【0008】
本発明に係る筆記量検出システムは、筆記具及び通信端末を有する筆記量検出システムであって、筆記具は、軸筒の内部に、軸筒の軸線方向に前後動可能に配置され、筆記芯を把持する把持部材と、軸筒の軸線回りに回転可能であり且つ筆記芯が受ける筆記圧による把持部材の後退動作に伴って後退するように設けられた回転子と、回転子の後退に応じて回転子を回転運動させる回転駆動機構と、回転子の回転運動を検出する検出部と、回転運動に関する情報を出力する出力部と、を有し、通信端末は、出力された回転運動に関する情報を取得する取得部と、回転運動に関する情報を表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る筆記具及び筆記量検出システムは、高精度に筆記量を検出することを可能とする
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】筆記量検出システム1の概略構成の一例を示す図である。
図2】筆記具2の斜視図である。
図3】筆記具2の分解斜視図である。
図4】シャープペンシル4の斜視図である。
図5】シャープペンシル4の断面図である。
図6】シャープペンシル4の一部拡大断面図である。
図7】回転子451の斜視図である。
図8】回転子451の回転動作を説明するための模式図である。
図9】回転子451の回転動作を説明するための模式図である。
図10】後軸412の一部拡大断面図である。
図11】回転部材42の斜視図である。
図12】摺動部材47の斜視図である。
図13】後軸412、回転部材42及び摺動部材47の横断面図である。
図14】シャープペンシル4の一部拡大断面図である。
図15】筆記量検出部品5の斜視図である。
図16】筆記量検出部品5の断面図である。
図17】筆記量検出部品5の断面図である。
図18】筆記量検出部品5の概略構成の一例を示す図である。
図19】通信端末3の概略構成の一例を示す図である。
図20】検出処理の流れの一例を示すフロー図である。
図21】出力処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図22】筆記量表示画面6の一例を示す図である。
図23】回転子451eの斜視図である。
図24】回転子451hの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0012】
図1は、本発明に係る筆記量検出システム1の概略構成の一例を示す図である。筆記量検出システム1は、相互に通信可能に接続された筆記具2及び通信端末3を有する。筆記具2は、筆記芯が紙等の筆記対象媒体に接触したことによって受ける筆記圧に応じて回転運動する回転子を有し、回転子の回転運動に関する情報を出力する。回転運動に関する情報には、回転子の回転量が含まれる。回転量は筆記芯が筆記対象媒体に接触した回数と相関を有するため、回転量に基づいて筆記具2による筆記量が検出される。
【0013】
通信端末3は、ユーザが所有する携帯電話、スマートフォン、PC(Personal Computer)等の情報処理端末である。通信端末3は、筆記具2から回転運動に関する情報を取得して表示する。
【0014】
図2は、筆記具2の斜視図であり、図3は、筆記具2の分解斜視図である。筆記具2は、シャープペンシル4と、シャープペンシル4が挿通される円筒状の筆記量検出部品5を有する。シャープペンシル4は、一端から筆記芯が突出する軸筒41と、軸筒41の筆記芯側とは反対側に、軸筒41に対して軸線回りに回転可能に挿入されて接続された回転部材42を有する。以降では、シャープペンシル4の軸線方向において、筆記芯側を前側と称し、筆記芯側とは反対側を後側と称することがある。
【0015】
回転部材42の側面には前側に延伸するクリップ421が設けられる。筆記量検出部品5の側面には、後端部から前側に向かって切り欠き51が設けられる。切り欠き51は筆記量検出部品5の全周の約4分の1にわたって、回転検出部品5がクリップ421に干渉しないような深さに設けられる。これにより、回転部材42は約90度の範囲で軸筒41に対して回転可能となる。
【0016】
筆記量検出部品5は、シャープペンシル4に着脱自在である。図3に示すように、まず、回転部材42が取り外された軸筒41の後端部を筆記量検出部品5の前端部に挿入し、続いて、軸筒41に回転部材42を挿入することで、筆記量検出部品5をシャープペンシル4に取り付けることができる。また、まず、回転部材42を軸筒41から取り外し、続いて、軸筒41を筆記量検出部品5から前側に引き出すことで、筆記量検出部品5をシャープペンシル4から取り外すことができる。
【0017】
図4は、シャープペンシル4の斜視図であり、図5は、シャープペンシル4の縦断面図である。シャープペンシル4の軸筒41は、前軸411と、前軸411の後端部に嵌合又は螺合する後軸412と、前軸411の前端部に嵌合又は螺合する口先部材413とを有する。口先部材413の先端には、筆記芯が突出する先端パイプ414が設けられる。
【0018】
軸筒41の前端部の内部には、先端パイプ414が取り付けられたスライダ431が、軸線方向に移動可能且つ軸線回りに回転可能に配置される。スライダ431の内部には、中央に通孔が形成された保持チャック432が配置される。保持チャック432の通孔は、筆記芯の外周面に接し、筆記芯を一時的に保持する。
【0019】
スライダ431の後端部には、筆記芯を把持する把持部材であるチャックユニット433及び円筒状に形成された中継部材434が接続される。チャックユニット433は、筆記芯に筆記圧が加わった場合に、筆記芯を把持して筆記芯の後退を防ぎ、筆記芯に前方に引き出す力が加わった場合に、筆記芯を解放する。
【0020】
チャックユニット433及び中継部材434は、スライダ431と一体的に軸線方向に移動可能である。中継部材434の後端部は、後述する回転子451に連結される。チャックユニット433の後端部の外周面には、芯ケース435の前端部が嵌合する。芯ケース435は、円筒状に形成され、内部に筆記芯を収容する。
【0021】
軸筒41の後端部に挿入された回転部材42の内部には、ノック部材422が軸筒41に対して軸線方向に移動可能に設けられる。ノック部材422は、コイルスプリング44によって後方に押圧される。ノック部材422の後端部には、消去部材である消しゴム423が着脱可能に装着されるとともに、消しゴム423を覆うようにノックカバー424が着脱可能に装着される。
【0022】
ノック部材422を前方に押圧するノック操作により、芯ケース435が前進する。これにより、チャックユニット433を介して筆記芯が前進し、筆記芯が先端パイプ414から繰り出される。ノック操作による押圧が解除されると、コイルスプリング44による押圧によって、ノック部材422は後退して元の位置に復帰する。このとき、筆記芯はスライダ431内に配置された保持チャック432により保持されるため、筆記芯はチャックユニット433に対して前方に引き出される。その結果、ノック操作を繰り返すたびに、筆記芯は所定量ずつ繰り出される。
【0023】
図6は、回転子451及び回転駆動機構45の近傍を拡大した、シャープペンシル4の一部拡大断面図であり、図7は、回転子451の斜視図である。図7において、右上がシャープペンシル4の後側である。回転駆動機構45は、後軸412の内部に配置され且つ円筒状に形成された回転子451を回転運動させるための機構である。回転子451は、回転駆動機構45の前端面と前軸411の後端面との間に配置された軸スプリング46によって後方に押圧される。これにより、回転子451の後端面は後述する後軸412の後方に設けられる環状突起部481の前端面に当接する。芯ケース435は、中継部材434と回転子451と回転駆動機構45との内部を貫通し、回転子451及び回転駆動機構45とは離間している。
【0024】
回転駆動機構45は、円筒状に形成された上カム形成部材452と、円筒状に形成された下カム形成部材453と、円筒状に形成されたシリンダー部材454と、円筒状に形成されたトルクキャンセラー455と、コイル状のクッションスプリング456とを有する。
【0025】
回転子451の前端部の内周面には中継部材434の後端部の外周面が嵌合する。これにより、回転子451と中継部材434とは連動して軸線方向に回転する。回転子451の前端部近傍には、部分的に外径が大きいフランジ部451aが設けられ、フランジ部451aの後端面には第1カム面451bが形成され、フランジ部451aの前端面には第2カム面451cが形成される。図7に示すように、第1カム面451b及び第2カム面451cは、周方向に沿って鋸歯状に形成される。
【0026】
上カム形成部材452は、回転子451の第1カム面451bの後方において、回転子451を回転可能に包囲する。下カム形成部材453は、上カム形成部材452の前端部の外周面に嵌合する。回転子451の第1カム面451bに対向する上カム形成部材452の前端面には、第1固定カム面452aが形成される。回転子451の第2カム面451cに対向する下カム形成部材453の前端部内面には、第2固定カム面453aが形成される。
【0027】
上カム形成部材452の後端部の外周面には、円筒状に形成されたシリンダー部材454が嵌合する。シリンダー部材454の後端部には、芯ケース435が挿通される挿通孔454aが形成される。シリンダー部材454の内部には、トルクキャンセラー455が配置される。トルクキャンセラー455の前端部内面とシリンダー部材454の後端部内面との間には、クッションスプリング456が配置される。クッションスプリング456は、トルクキャンセラー455を介して回転子451を前方に押圧する。
【0028】
中継部材434は、筆記芯が受ける筆記圧によるチャックユニット433の後退動作及び前進動作(クッション動作)を回転駆動機構45の回転子451に伝達する。また、中継部材434は、筆記芯を把持するチャックユニット433を介して、クッション動作によって生ずる回転子451の回転運動を筆記芯に伝達する。
【0029】
筆記芯に筆記圧が加わっていない場合、すなわち、シャープペンシル4による筆記がされていない場合、回転子451はクッションスプリング456によって前方に押圧され、第2カム面451cが下カム形成部材453の第2固定カム面453aに当接する。このとき、第2カム面451cと第2固定カム面453aとは噛み合った状態となる。
【0030】
筆記芯に筆記圧が加わっている場合、すなわち、シャープペンシル4による筆記がされている場合、チャックユニット433がすることにより回転子451がクッションスプリング456による押圧に抗して後退し、第1カム面451bが上カム形成部材452の第1固定カム面452aに当接する。このとき、第1カム面451bと第1固定カム面452aとは噛み合った状態となる。
【0031】
下カム形成部材453の外周面のうち、回転子451のフランジ部451aと重なる部分には貫通孔453bが設けられる。なお下カム形成部材453に貫通孔453bを設けなくてもよい。この場合は、下カム形成部材をポリカーボネート等の透明度の高い樹脂材料で形成することが好ましい。また、後軸412の側面には、下カム形成部材453の貫通孔453bと重なるように貫通孔412aが設けられる。これにより、回転子451のフランジ部451aの外周面が軸筒41の外部から視認可能となる。
【0032】
また、図7に示すように、回転子451のフランジ部451aの外周面には、周方向の一部に所定の印刷が施された印刷領域451dが設けられる。
【0033】
図8及び図9は、回転駆動機構による回転子451の回転運動を説明する模式図である。上述したとおり、回転子451の第1カム面451b及び第2カム面451cは、回転子451の周方向に沿って鋸歯状に形成される。また、上カム形成部材452の第1固定カム面452a及び下カム形成部材453の第2固定カム面453aは、それぞれ第1カム面451b及び第2カム面451cと噛み合うように鋸歯状に形成される。第1カム面451b、第2カム面451c、第1固定カム面452a及び第2固定カム面453aは、鋸歯のピッチが互いに略同一となるように形成される。
【0034】
図8(A)は、筆記芯に筆記圧が加わっていない状態における回転子451、上カム形成部材452及び下カム形成部材453の関係を示す。この状態においては、回転子451の第2カム面451cは、下カム形成部材453の第2固定カム面453aに当接する。このとき、回転子451の第1カム面451bと上カム形成部材452の第1固定カム面452aとは、鋸歯が相互に位相(ピッチ)がずれた状態となる。
【0035】
図8(B)は、筆記芯に筆記圧が加わった直後の状態を示す。この状態においては、回転子451は、チャックユニット433の後退に伴って後退する。これにより、回転子451は、上カム形成部材452の第1固定カム面452aの側に移動する。
【0036】
図8(C)は、筆記芯に筆記圧が加わってから時間が経過し、回転子451が第1固定カム面452aに当接した状態を示す。図8(A)及び図8(B)では第1カム面451bと第1固定カム面452aとが半位相ずれていたため、回転子451が第1固定カム面452aに当接することにより、回転子451が半位相だけ回転運動する。これにより、第1カム面451bと第1固定カム面452aとが噛み合った状態となる。このとき、回転子451の第2カム面451cと下カム形成部材453の第2固定カム面453aとは、鋸歯が相互に半位相ずれた状態となる。なお、図8及び図9における回転子451の中央部に描いた○印は、回転子451の回転量を示すものである。
【0037】
図9(D)は、筆記芯に対する筆記圧が解除された直後の状態を示す。この状態においては、回転子451はクッションスプリング456によって押圧されて前進する。これにより、回転子451は、下カム形成部材453の第2固定カム面453aの側に移動する。
【0038】
図9(E)は、筆記芯に対する筆記圧が解除されてから時間が経過し、回転子451が第2固定カム面453aに当接した状態を示す。図8(C)及び図9(D)では第2カム面451cと第2固定カム面453aとが半位相ずれていたため、回転子451が第2固定カム面453aに当接することにより、回転子451が半位相だけ回転運動する。これにより、第2カム面451cと第2固定カム面453aとが噛み合った状態となる。
【0039】
このように、筆記芯が受ける筆記圧による回転子451の軸線方向への往復運動、すなわち前進動作又は後退動作に伴って、回転駆動機構45は回転子451を回転運動させる。中継部材434は、チャックユニット433を介して、回転子451の回転運動を筆記芯に伝達し、筆記芯を回転させる。これにより、シャープペンシル4は、使用者が長時間筆記を継続した場合にも、筆記芯が偏って摩耗することによる描線の太さや濃さの変化を抑制することを可能とする。
【0040】
なお、トルクキャンセラー455は、回転子451に対して軸線回りに回転可能である。これにより、回転子451の回転運動がクッションスプリング456に伝達されることがなくなるため、クッションスプリング456が捻れて回転子451の回転を阻害する方向のトルクを発生させることが防止される。
【0041】
次に、上述した回転子451をロックして回転運動をさせないようにするための回転ロック機構について説明する。回転ロック機構は、後軸412、回転部材42及び後述する摺動部材47が協働して回転駆動機構45に作用することにより実現される。
【0042】
図10は、後軸412の後部を拡大した一部拡大断面図である。図10において、上方がシャープペンシル4における後側である。後軸412の後部の内周面には、周方向に沿って、全周の約4分の3にわたって環状突起部481が設けられる。また、環状突起部481の周方向の両端部のそれぞれから離間して、2つの小突起部482が設けられる。これにより、環状突起部481の周方向の両端部と2つの小突起部482との間に、2つの係止凹部483がそれぞれ形成される。また、2つの小突起部482の間に凹部484が形成される。
【0043】
また、後軸412の後部の内周面には、相互に対向する位置に2つのキー突起部485が設けられる。一方のキー突起部485は環状突起部481の周方向における中央から前側に延伸するように設けられる。
【0044】
図11は、回転部材42の斜視図である。図11において、上方がシャープペンシル4における後側である。回転部材42は、後軸412の後端部に、軸線回りに回動可能に挿入されることにより接続される。回転部材42は、使用者が回転部材42を回転させる際に把持するための筒状の把持部425を有する。把持部425の外周面には、クリップ421が設けられる。把持部425の前方には、把持部425よりも小さい外径を有し且つ後軸412の内部に挿入される挿入部426が設けられる。
【0045】
挿入部426には、前端面から後側に向かって相互に対向するように2つの切り欠きが設けられる。これにより、相互に対向し且つ前側に延伸する2つのカムアーム427が形成される。2つのカムアーム427の前端面には、周方向に沿って同一方向に傾斜したカム面428が設けられる。挿入部426の前端面のうちカムアーム427が形成されていない部分には、前側に延伸する矩形突起部429が形成される。矩形突起部429の外面には、係止突起部429aが形成される。2つのカムアーム427の外周面には、軸線方向において係止突起部429aと同じ位置に、周方向に沿って摺動溝427aが設けられる。
【0046】
図12は、摺動部材47の斜視図である。図12において、上方がシャープペンシル4における後側である。摺動部材47は、摺動本体部471を有する。摺動本体部471の外周面には、軸線方向に沿って延伸する2つのキー溝472によって離間される2つのカム突起部473が設けられる。2つのカム突起部473の後端面には、回転部材42のカム面428に対応して傾斜するカム受け面474がそれぞれ設けられる。以降では、2つのカム受け面474のそれぞれにおいて、最も前側の部分を始端部474aと称し、最も後側の部分を終端部474bと称することがある。摺動本体部471には、軸線に沿って貫通孔475が設けられる。貫通孔475には、芯ケース435が挿通される。
【0047】
回転部材42は、後軸412の後端部から内部に挿入される。このとき、2つのカムアーム427が径方向において内側に撓み、摺動溝427aに後軸412の環状突起部481が嵌合する。これにより、回転部材42が後軸412に対して軸線回りに回転可能となり且つ回転部材42が後軸412から外れにくくなる。回転部材42が後軸412の内部に挿入されている状態では、回転部材42の係止突起部429aは凹部484に位置する。
【0048】
摺動部材47は、後軸412の前端部から内部に挿入される。摺動部材47が挿入されるとき、後軸412のキー突起部485が摺動部材47のキー溝472に嵌合するように、回転部材42のカムアーム427が摺動部材47のカム受け面474によって案内される。キー突起部485がキー溝472に嵌合することにより、摺動部材47は、後軸412に対して軸線回りに回転することなく軸線方向に摺動可能となる。また、摺動部材47の摺動本体部471の後端部は、回転部材42の挿入部426の内側に挿入される。これにより、回転部材42のカムアーム427が径方向において内側に撓むことがなくなり、回転部材42が後軸412から外れにくくなる。
【0049】
摺動部材47は、コイルスプリング476によって後方に押圧される。コイルスプリング476の一端は摺動部材47の後端部の内面に当接し、コイルスプリング476の他端は回転駆動機構45の後端面に当接する。回転駆動機構45は軸スプリング46によって後方に押圧され、回転駆動機構45の後端面がキー突起部485の前端面486に当接するまで後退する。
【0050】
図13は、回転ロック機構の動作について説明するための後軸412の横断面図であり、図14は、回転ロック機構の動作について説明するための後軸412の一部拡大縦断面図である。図13(A)及び図14(A)は、回転子451がロックされていない回転ロック解除状態を示し、図13(B)及び図14(B)は、回転子451がロックされた回転ロック状態を示す。
【0051】
図13(A)及び図14(A)に示される回転ロック解除状態では、コイルスプリング476による摺動部材47の後退は、回転部材42のカムアーム427が後軸412のキー突起部485と周方向に当接し且つカムアーム427が摺動部材47のカム突起部473と係合することにより規制される。このとき、回転部材42のカム面428は、摺動部材47のカム受け面474において始端部474aに位置する。
【0052】
この状態から、回転部材42が回転すると、回転部材42のカム面428及び摺動部材47のカム受け面474が協働することによって、回転部材42に加わる回転方向の力が摺動部材47を前進させる力に変換される。すなわち、摺動部材47は、カム面428及びカム受け面474において互いに同一方向に傾斜した斜面から軸線方向の分力を受け、コイルスプリング476による押圧に抗して前進する。回転部材42のカム面428が摺動部材47のカム受け面474の終端部474bまで移動すると、摺動部材47の前進は停止する。これにより、回転駆動機構45は、図13(B)及び図14(B)に示される回転ロック状態となる
【0053】
回転ロック状態では、摺動部材47が前進していることによって、コイルスプリング476がより圧縮される。コイルスプリング476の一端は摺動部材47に当接し、コイルスプリング476の他端は回転駆動機構45の後端面に当接している。したがって、図30(B)に示されるように、回転駆動機構45は、コイルスプリング476の圧縮によって増加した前方への弾性力と、軸スプリング46の後方への弾性力とのバランスによって、図30(A)に示された状態と比較して距離Dだけ前進する。
【0054】
回転駆動機構45が前進すると、軸筒41内の各部材間に存在していた微小なクリアランス、例えば、口先部材413、チャックユニット433や中継部材434等の間に存在していたクリアランスがなくなる。その結果、回転子451が回転駆動機構45において相対的に後退した状態となり、図8(C)に示された回転子451の状態となることから、回転子451の回転がロックされる。
【0055】
他方、回転ロック状態では、回転部材42を逆方向に回転させることによって、コイルスプリング476の付勢力を受けて摺動部材47が後退する。回転部材42のカム面428が摺動部材47のカム受け面474において始端部474aまで移動すると、摺動部材47の後退は停止する。これにより、回転駆動機構45は、図13(A)及び図14(A)に示される回転ロック解除状態となる。
【0056】
回転部材42の回転は、カムアーム427の側面が後軸412のキー突起部485の側面に当接することによって規制される。すなわち、図13(A)に示されるように、回転ロック解除状態では、カムアーム427の一方は、キー突起部485の一方に対して周方向において当接する。これに対し、図13(B)に示されるように、回転ロック状態では、カムアーム427の一方は、キー突起部485の他方に対して周方向において当接する。カムアーム427がキー突起部485の一方又は他方に当接している場合、回転部材42の係止突起部429aは、後軸412の係止凹部483に嵌合する。すなわち、係止突起部429aは、回転部材42の回転に応じて小突起部482を乗り越え、カムアーム427がキー突起部485に当接すると同時に、係止凹部483内に嵌合する。これにより、回転部材42が一時的に固定され、意図せず回転ロック状態又は回転ロック解除状態が解除されることが防止される。
【0057】
係止突起部429aが小突起部482を乗り越えるとき、矩形突起部429は、径方向における内方に撓む。これにより、係止突起部429aは、係止凹部483内にスナップ式に嵌合する。したがって、使用者は、回転が完了したことのフィードバックを、クリック音又はクリック感として得ることができる。小突起部482又は係止突起部429aの高さ等を変更することによって、クリック音又はクリック感の程度が自由に設計可能となる。
【0058】
なお、回転部材42の回転によって摺動部材47を前進又は後退させる操作と、ノック部材42を前方へ押圧することによって筆記芯を繰り出す操作とは、独立して操作可能である。したがって、シャープペンシル4は、回転ロック機構によって回転駆動機構45がオン又はオフにされても筆記芯を繰り出すことができる。
【0059】
このように、シャープペンシル4は、軸線回りに回転可能な回転部材42と、回転部材42の回転運動に伴って軸線方向に摺動し、回転駆動機構45を前進させることにより回転子451の回転運動をロックする摺動部材47と、を有する。これにより、シャープペンシル4は、使用者が筆記圧に伴う筆記芯の回転のオン及びオフを切り替えることを可能とする。
【0060】
図15は、筆記量検出部品5の斜視図であり、図16及び図17は筆記量検出部品5の横断面図である。図16は、筆記量検出部品5の軸線方向に直交し且つスイッチ56を含む断面における断面図であり、図17は、軸線方向に直交し且つ切り欠き51と交差しない断面における断面図である。図16及び図17は、何れも後方を視線方向とする断面図である。
【0061】
筆記量検出部品5は、切り欠き51が設けられた円筒状の筐体52、筐体52に収容された電源53、制御回路54及び回転センサ55並びにスイッチ56を有する。電源53、制御回路54、回転センサ55及びスイッチ56は、相互に配線によって接続される。図16及び図17には、これらの配線は図示されていない。また、図16及び図17には、電源53、制御回路54及び回転センサ55の内部構造は図示されていない。
【0062】
電源53は、筆記量検出部品5の各構成に給電するための部材であり、例えばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等の二次電池である。電源53は、図示されない電源回路を介して筐体52の後端面に設けられたコネクタ531と電気的に接続される。電源53は、コネクタ531に挿入される充電用のプラグから電流が供給されることにより充電される。
【0063】
制御回路54は、筆記量検出部品5を制御するための部材であり、例えばプリント回路基板である。制御回路54は、後述する記憶部57、通信部58及び処理部59として機能する。
【0064】
回転センサ55は、シャープペンシル4の回転子451の回転運動を検出するための構成であり、例えばカメラを備える。回転センサ55が備えるカメラは、筐体52の内周面に設けられた貫通孔551に対向して設けられる。貫通孔551は、シャープペンシル4が筆記量検出部品5に挿入されたときにシャープペンシル4の後軸412の貫通孔412aと対向するように設けられる。これにより、シャープペンシル4が筆記量検出部品5に挿入されたときに、カメラが貫通孔551及び412aを介して回転子451の外周面を撮像可能となる。回転センサ55は、カメラによって撮像された撮像画像を所定の形式でデータ化し、センサデータとして制御回路54に供給する。
【0065】
スイッチ56は、回転センサ55が回転量を検出するか否かを切り替えるための構成であり、ボタン及び検出回路を備える。ボタンは、筐体52の外部から押下可能である。検出回路は、ボタンが押下された場合に電気的に導通するように構成される。検出回路は、ボタンの押下により導通した場合に、ボタンが押下されたことを示す検出信号を生成して制御回路54に供給する。
【0066】
スイッチ56のボタンは、切り欠き51により形成された筐体52の側面から露出するように設けられる。したがって、筆記具2の使用者がシャープペンシル4を回転ロック状態にするために回転部材42を回転させる操作に応じて、ボタンは、クリップ421の側面により押下される。
【0067】
図18は、筆記量検出部品5の概略構成の一例を示す図である。筆記量検出部品5は、記憶部57、通信部58、回転センサ55、スイッチ56及び処理部59を有する。
【0068】
記憶部57は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば制御回路54に実装された半導体メモリを備える。記憶部57は、処理部59による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能且つ非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラムを用いて記憶部57にインストールされる。
【0069】
通信部58は、筆記量検出部品5を通信端末3と通信可能にするための構成であり、例えば制御回路54に実装された通信インタフェース回路を備える。通信インタフェース回路は、例えば無線LAN(Local Area Network)又はLTE(Long Term Evolution)等の無線通信のインタフェース回路である。通信部58は、通信端末3から受信したデータを処理部59に供給し、処理部59から供給されたデータを通信端末3に送信する。なお、通信部58は、有線通信のインタフェース回路を有してもよい。この場合、筆記量検出部品5は、コネクタ531を介して通信端末3と接続される。
【0070】
処理部59は、筆記量検出部品5の動作を統括的に制御するための構成であり、例えば制御回路54に実装された一又は複数のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部59は、例えばCPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processing)等を備える。処理部59は、記憶部57に記憶されているプログラムに基づいて筆記量検出部品5の各構成の動作を制御し、又は処理を実行する。
【0071】
処理部59は、取得部591、検出部592及び出力部593を機能ブロックとして備える。これらの機能ブロックは、処理部59がプログラムを実行することによって実現される機能モジュールである。これらの機能ブロックは、ファームウェアとして筆記量検出部品5に実装されてもよい。
【0072】
図19は、通信端末3の概略構成の一例を示す図である。通信端末3は、端末記憶部31、端末通信部32、表示部33、操作部34及び端末処理部35を有する。
【0073】
端末記憶部31は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。端末記憶部31は、端末処理部35による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0074】
端末通信部32は、通信端末3を筆記量検出部品5と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信インタフェース回路は、例えば無線LAN又はLTE等の無線通信のインタフェース回路である。端末通信部32は、筆記量検出部品5から受信したデータを端末処理部35に供給し、端末処理部35から供給されたデータを筆記量検出部品5に送信する。
【0075】
表示部33は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部33は、端末処理部35から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0076】
操作部34は、通信端末3に対する操作を受け付けるための構成であり、例えばキーパッド等を備える。操作部34は、表示部33と一体化したタッチパネルを備えてもよい。操作部34は、受け付けた操作に応じた信号を生成し、端末処理部35に供給する。
【0077】
端末処理部35は、通信端末3の動作を統括的に制御するための構成であり、一又は複数のプロセッサ及びその周辺回路を備える。端末処理部35は、例えばCPU、LSI、ASIC、DSP等を備える。端末処理部35は、端末記憶部31に記憶されているプログラムに基づいて通信端末3の各構成の動作を制御し、又は処理を実行する。
【0078】
端末処理部35は、受付部351、要求送信部352、情報取得部353及び表示制御部354を機能ブロックとして備える。これらの機能ブロックは、端末処理部35によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの機能ブロックは、ファームウェアとして通信端末3に実装されてもよい。
【0079】
図20は、筆記量検出部品5によって実行される検出処理の流れの一例を示すフロー図である。検出処理は、使用者がシャープペンシル4の回転部材を回転させる操作に応じて、回転駆動機構45が回転ロック解除状態になるとともに、スイッチ56の押下が解除された状態になったときに実行される。検出処理は、プログラムを実行する処理部59が筆記量検出部品5の各構成と協働することにより実現される。
【0080】
まず、筆記量検出部品5の取得部591は、回転センサ55からセンサデータを取得する(S101)。取得部591は、所定時間(例えば、10分の1秒)が経過するたびに、センサデータとして、回転センサ55が備えるカメラによって撮像された撮像画像を取得する。上述したとおり、回転センサ55は、筆記量検出部品5に挿入されたシャープペンシル4の回転子451のフランジ部451aに対向するため、撮像画像には、フランジ部451aの外周面が含まれる。
【0081】
続いて、検出部592は、回転子451の回転運動を検出する(S102)。図7に示されるように、回転子451のフランジ部451aには、周方向の一部に所定の印刷が施された印刷領域451dが設けられる。回転子451の回転運動に伴い、印刷領域451dと軸筒41の貫通孔412aとの位置関係が変化し、撮像画像における印刷領域451dの写り方が変化する。したがって、検出部592は、撮像画像における印刷領域451dの写り方に基づいて、回転運動を検出することができる。
【0082】
例えば、検出部592は、撮像画像を構成する複数の画素のうち、印刷領域451dの色又はその色に近似する色を示す画素の割合が所定値以上である場合に、印刷領域451dが回転センサ55の正面に位置すると判定する。検出部592は、印刷領域451dが回転センサ55の正面に位置すると判定され、且つ、直前に取得された撮像画像についてされた判定において印刷領域451dが回転センサ55の正面に位置しないと判定された場合に、回転子451が1回転したと判定する。検出部592は、このように、回転子451が1回転したことを判定することにより回転運動を検出する。
【0083】
続いて、検出部592は、スイッチ56が押下されたか否かを判定する(S103)。検出部592は、スイッチ56の検出回路から検出信号が供給されたか否かに基づいて、スイッチ56が押下されたか否かを判定する。
【0084】
スイッチ56が押下されていないと判定された場合(S103-No)、S101に戻り、取得部591は、回転センサ55からセンサデータを再び取得する。このように、スイッチ56が押下されるまで、取得部591は所定時間ごとに繰り返しセンサデータを取得する。
【0085】
スイッチ56が押下されたと判定された場合(S103-Yes)、検出部592は、回転運動に関する情報を記憶部57に記憶する(S104)。検出部592は、S102において回転子451が1回転したと判定された回数を計数することにより回転数を算出し、回転運動に関する情報として記憶部57に記憶する。
【0086】
図21は、筆記量検出システム1によって実行される出力処理の流れの一例を示すシーケンス図である。出力処理は、検出処理によって筆記量検出部品5の記憶部57に回転運動に関する情報が記憶された状態で実行される。出力処理は、プログラムを実行する処理部59及び端末処理部35がそれぞれ筆記量検出部品5及び通信端末3の各構成と協働することにより実現される。
【0087】
まず、通信端末3の受付部351は、操作部34に対する情報取得操作を受け付ける(S201)。情報取得操作は、例えば、端末記憶部31に記憶された筆記量表示アプリケーションの実行を通信端末3に指示する操作である。
【0088】
続いて、要求送信部352は、端末通信部32を介して、情報送信要求を筆記量検出部品5に送信する(S202)。
【0089】
続いて、筆記量検出部品5の出力部593は、回転運動に関する情報を出力する(S203)。出力部593は、通信部58を介して、記憶部57に記憶された回転数の情報を通信端末3に送信することにより出力する。
【0090】
続いて、通信端末3の表示制御部354は、回転運動に関する情報を表示する(S204)。表示制御部354は、端末通信部32を介して、回転数の情報を筆記量検出部品5から受信する。表示制御部354は、回転運動に関する情報として回転数の情報を含む筆記量表示画面6を表示部33に表示する。
【0091】
図22は、表示部33に表示される筆記量表示画面6の一例を示す図である。筆記量表示画面6は、筆記量グラフ61及び更新ボタン62を含む。筆記量グラフ61は、受信された回転数の情報に基づくグラフである。図22に示す例では、回転数の情報は、表示制御部354が回転数の情報を筆記量検出部品5から受信した日付と関連付けられて表示されている。これにより、使用者は、各日の筆記量の変化を容易に把握することができる。
【0092】
更新ボタン62は、筆記量グラフ61の表示を最新の状態に更新するためのオブジェクトである。更新ボタン62が選択されると、S201において情報取得操作が受け付けられた場合と同様に、要求送信部352は情報送信要求を筆記量検出部品5に送信する。
【0093】
以上説明したように、筆記具2は、筆記芯が受ける筆記圧に応じて回転子451を回転させる回転駆動機構45と、回転子の回転運動を検出する検出部592と、回転運動に関する情報を出力する出力部593とを有する。これにより、筆記具2は、高精度に筆記量を検出することを可能とする。
【0094】
また、通信端末3は、回転運動に関する情報を表示する表示部33を有する。これにより、筆記量検出システム1は、高精度に検出された筆記量に基づいて使用者の筆記意欲を向上させることを可能とする。
【0095】
上述した説明では、回転子451のフランジ部451aには、一つの印刷領域451dが設けられるものとしたが、このような例に限られない。回転子451には、複数の印刷領域451dが周方向に均等に設けられてもよい。これにより、筆記具2は、より細かく筆記量を検出することを可能とする。例えば、フランジ部451aの外周面に4つの印刷領域451dが設けられた場合、回転センサ55は、回転子451の回転量を4分の1回転単位で検出することができる。
【0096】
また、回転子451のフランジ部451aは、周方向に徐々に色彩が変化するように彩色されてもよい。これにより、筆記具2は、より細かく筆記量を検出することを可能とする。
【0097】
また、上述した説明では、筆記具2は印刷領域の色に基づいて回転運動を検出するものとしたが、このような例に限られない。例えば、筆記具2は、回転子の形状や表面加工等に基づいて回転運動を検出してもよい。
【0098】
図23は、形状に基づいて回転運動が検出される場合の回転子451eの斜視図である。回転子451eは、回転子451と同様にフランジ部451fを有する。フランジ部451fには、軸線方向に延伸する溝451gが設けられる。
【0099】
この場合、回転センサ55は、レーザ測距センサを備える。回転センサ55は、筆記量検出部品5の貫通孔551及び軸筒41の貫通孔412aを介して光を回転子451eに照射し、フランジ部451fの外周面において反射された反射光を受光するまでの時間に基づいて外周面までの距離を算出する。回転センサ55は、算出された距離を示す測距データをセンサデータとして生成し、制御回路54に供給する。
【0100】
算出される距離は、溝451gが回転センサ55の正面に位置し、溝451gの底面においてレーザ光が反射される場合に、溝451gが回転センサ55の正面に位置しない場合よりも溝451gの深さに相当する距離だけ大きくなる。したがって、測距データに基づいて溝451gが回転センサ55の正面に位置するか否かが判定可能となる。
【0101】
また、この場合、検出処理のS102において、検出部592は、測距データが示す回転センサ55からフランジ部451fの外周面までの距離が所定値以上である場合に、溝451gが回転センサ55の正面に位置すると判定する。検出部592は、溝451gが回転センサ55の正面に位置すると判定され、且つ、直前にされた判定において溝451gが回転センサ55の正面に位置しないと判定された場合に、回転子451が1回転したと判定する。検出部592は、このように、回転子451が1回転したことを判定することにより回転運動を検出する。
【0102】
図24は、表面加工に基づいて回転運動が検出される場合の回転子451hの斜視図である。回転子451hは、回転子451と同様にフランジ部451iを有する。フランジ部451iの外周面のうち、周方向の一部には鏡面加工が施された鏡面加工領域451jが設けられる。フランジ部451iの外周面のうち鏡面加工領域451j以外の領域は、梨地加工が施された梨地加工領域451kである。
【0103】
この場合、回転センサ55は、フォトセンサを備える。回転センサ55は、筆記量検出部品5の貫通孔551及び軸筒41の貫通孔412aを介して光を回転子451hに照射し、フランジ部451iの外周面において反射された反射光の強度を算出する。回転センサ55は、検出された反射光の強度を示す強度データをセンサデータとして生成し、制御回路54に供給する。
【0104】
鏡面加工領域451jで光が反射される場合、反射光の大部分は同一の方向に反射する。すなわち、鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置する場合、反射光の大部分が回転センサ55によって検出される。これに対し、梨地加工領域451kで光が反射される場合、反射光は様々な方向に散乱する。すなわち、梨地加工領域451kが回転センサ55の正面に位置する場合、反射光が散乱するため、相対的に少ない量の反射光のみが回転センサ55によって検出される。
【0105】
これにより、回転センサ55によって検出される反射光の強度は、鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置する場合に、溝451gが回転センサ55の正面に位置しない場合よりも大きくなる。したがって、強度データに基づいて鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置するか否かが判定可能となる。
【0106】
また、この場合、検出処理のS102において、検出部592は、強度データが示す反射光の強度が所定値以上である場合に、鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置すると判定する。検出部592は、鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置すると判定され、且つ、直前にされた判定において鏡面加工領域451jが回転センサ55の正面に位置しないと判定された場合に、回転子451が1回転したと判定する。検出部592は、このように、回転子451が1回転したことを判定することにより回転運動を検出する。
【0107】
上述した説明では、回転運動に関する情報に回転数の情報が含まれるものとしたが、このような例に限られない。例えば、回転運動に関する情報は回転速度の情報を含んでよい。この場合、検出処理のS102において、検出部592は、回転子451が1回転したと判定された場合に、その直前に回転子451が1回転したと判定された時点からの経過時間を算出する。経過時間は、直前の判定以降に取得された撮像画像の数に基づいて算出される。検出部592は、算出された時間の逆数を回転速度として算出する。また、検出部592は、S103において、各回転について算出された回転速度の情報を記憶部57に記憶する。
【0108】
通信端末3の表示制御部354は、回転速度の情報を含む筆記量表示画面6を表示する。回転速度は所定時間内に筆記芯が筆記対象媒体に接触した回数と相関を有するため、回転速度に基づいて筆記速度が検出できる。したがって、このようにすることで、筆記量検出システム1は、高精度に検出された筆記速度に基づいて使用者の筆記意欲を向上させることを可能とする。
【0109】
上述した筆記量検出部品5は、スイッチ56が押下されているか否かを示す表示機構であるLEDをさらに有してもよい。LEDは、筐体52の外部からその点等状態が視認可能となるように、例えば軸筒41の外周に設けられる。LEDは、例えば、スイッチ56が押下されているとき、すなわち、回転駆動機構45が回転ロック状態であるときに消灯し、スイッチ56が押下されていないとき、すなわち、回転駆動機構45が回転ロック解除状態であるときに点灯するように制御される。これにより、筆記具2は、筆記量の検出が可能であるか否かを使用者が容易に判断することを可能とする。
【0110】
上述した説明では、筆記具2はシャープペンシル4を有するものとしたが、このような例に限られず、ボールペン又はサインペン等の他の筆記具を有してもよい。例えば、筆記具2がボールペンを有する場合、筆記芯としてリフィルを有するように構成することで、上述した説明と同様に、筆記具2は高精度に筆記量を検出することを可能とする。この場合、筆記に伴って筆記芯が偏って摩耗することはないため、回転子451の回転運動は、筆記芯に伝達されなくてもよい。例えば、中継部材434と回転子451とが嵌合せず、これらは相互に独立して軸線回りに回転可能であってよい。
【0111】
上述した説明において、筆記量検出部品5の機能の一部は通信端末3によって実現されてもよく、通信端末3の機能は筆記量検出部品5によって実現されてもよい。
【0112】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 筆記量検出システム
2 筆記具
3 通信端末
351 受付部
352 要求送信部
353 情報取得部
354 表示制御部
4 シャープペンシル
433 チャックユニット
434 中継部材
45 回転駆動機構
451 回転子
5 筆記量検出部品
55 検出部
591 取得部
592 算出部
593 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24