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特開2022-120535イオン交換装置および超純水製造装置
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  • 特開-イオン交換装置および超純水製造装置 図1
  • 特開-イオン交換装置および超純水製造装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120535
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】イオン交換装置および超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
C02F1/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017487
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】蔦野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025AB05
4D025BA08
4D025BA13
4D025BA17
4D025BB02
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB07
4D025BB15
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
(57)【要約】
【課題】金属成分の溶出を最小限に抑えたイオン交換装置を提供する。
【解決手段】イオン交換装置1は、イオン交換樹脂2が充填された容器10と、容器10内の底面4に形成された開口部13bに連通し、イオン交換樹脂2で処理された処理水が流通する出口流路13aと、開口部13bに設けられ、容器10から出口流路13aへのイオン交換樹脂2の流出を防止するスクリーン6と、を有し、出口流路13aの処理水との接液部およびスクリーン6の処理水との接液部のそれぞれが、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂が充填された容器と、
前記容器内の底面に形成された開口部に連通し、前記イオン交換樹脂で処理された処理水が流通する出口流路と、
前記開口部に設けられ、前記容器から前記出口流路への前記イオン交換樹脂の流出を防止するスクリーンと、を有し、
前記出口流路の前記処理水との接液部および前記スクリーンの前記処理水との接液部のそれぞれが、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる、イオン交換装置。
【請求項2】
前記容器内の前記底面は、前記開口部が形成された水平面を含み、前記水平面が、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる、請求項1に記載のイオン交換装置。
【請求項3】
前記容器内の前記底面と側面とを接続する湾曲面が、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる、請求項2に記載のイオン交換装置。
【請求項4】
前記容器が、前記出口流路を規定するソケットを有し、前記ソケットが前記非金属材料からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項5】
前記容器の下部に取り付けられて前記出口流路に接続され、前記出口流路からの前記処理水が流通する配管を有し、
前記配管の内面が、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項6】
前記非金属材料がフッ素樹脂またはポリプロピレンである、請求項1から5のいずれか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項7】
前記鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料がチタンである、請求項1から6のいずれか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項8】
前記スクリーンは、一端が開口する円筒状に形成され、前記一端で前記開口部に取り付けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のイオン交換装置を有する超純水製造装置。
【請求項10】
イオン交換装置に用いられ、イオン交換樹脂が充填される容器であって、
前記容器内の底面に形成された開口部に、前記イオン交換樹脂で処理された処理水が流通する出口流路が連通するとともに、前記容器から前記出口流路への前記イオン交換樹脂の流出を防止するスクリーンが設けられ、
前記出口流路の前記処理水との接液部および前記スクリーンの前記処理水との接液部のそれぞれが、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換装置および超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶デバイスの製造プロセスでは、洗浄工程など様々な用途に、不純物が高度に除去された超純水が用いられている。超純水に含まれる金属成分は、それが微量であってもデバイスの特性に大きな影響を及ぼすことから、その濃度を厳しく管理することが求められている。近年では、半導体デバイスの急激な高集積化・微細化に伴い、超純水中の金属濃度に対する要求はますます厳しくなっており、金属濃度がpg/Lレベルの超純水が求められている。超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(サブシステム)で順次処理することで製造されるが、その製造過程で、使用する配管やポンプなどから金属成分が溶出することが知られている。そのため、このような超純水製造装置では、金属成分の溶出による影響を最小限に抑えるためにいくつかの提案がなされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-154713号公報
【特許文献2】特開2011-224489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したサブシステムの中には、内部にイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔(イオン交換装置)を備えたものがある。このようなイオン交換樹脂塔は、例えば、サブシステムの最も下流側に設置されることで、それより上流側で金属成分が溶出しても、その影響が超純水の水質に現れるのを抑制することができる。しかしながら、イオン交換樹脂塔には、それ自体からも金属成分の溶出があることが分かっており、超純水中の金属濃度に対する近年の厳しい要求を満たすためには、イオン交換樹脂塔からの金属成分の溶出を最小限に抑えることが求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、金属成分の溶出を最小限に抑えたイオン交換装置および超純水製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明のイオン交換装置は、イオン交換樹脂が充填された容器と、容器内の底面に形成された開口部に連通し、イオン交換樹脂で処理された処理水が流通する出口流路と、開口部に設けられ、容器から出口流路へのイオン交換樹脂の流出を防止するスクリーンと、を有し、出口流路の処理水との接液部およびスクリーンの処理水との接液部のそれぞれが、非金属材料、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなる。
【0007】
また、本発明の超純水製造装置は、上記のイオン交換装置を有している。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、金属成分の溶出を最小限に抑えたイオン交換装置および超純水製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るイオン交換装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の構成を示す概略図であり、図2は、その超純水製造装置を構成するイオン交換装置の概略断面図である。なお、図示した超純水製造装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0012】
超純水製造装置20は、一次純水タンク21と、ポンプ22と、熱交換器23と、紫外線酸化装置24と、イオン交換装置1と、膜脱気装置25と、限外ろ過(UF)膜装置26とを有している。これらは、二次純水システム(サブシステム)を構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水を順次処理して超純水を製造し、その超純水をユースポイント27に供給するものである。
【0013】
一次純水タンク21に貯留された被処理水(一次純水)は、ポンプ22により送出され、熱交換器23に供給される。熱交換器23を通過して温度調節された被処理水は、紫外線酸化装置24に供給されて紫外線を照射され、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。その後、被処理水は、イオン交換装置1においてイオン交換処理により金属イオンなどのイオン成分などが除去され、膜脱気装置25において溶存ガスが除去され、UF膜装置26において微粒子が除去される。こうして得られた超純水は、一部がユースポイント27に供給され、残りが一次純水タンク21に返送されるようになっている。一次純水タンク21には、必要に応じて、一次純水システム(図示せず)から一次純水が供給される。
【0014】
一次純水タンク21、ポンプ22、熱交換器23、紫外線酸化装置24、膜脱気装置25、およびUF膜装置26としては、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられているものを使用することができる。一方、イオン交換装置1としても、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的な、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混床で充填された非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)を使用することができるが、その構成には以下のような特徴がある。
【0015】
イオン交換装置1は、混床式のイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合物)2が充填された円筒状の容器である樹脂塔10を有している。樹脂塔10は、塔本体11と、塔本体11の上部に取り付けられた上部ソケット12と、塔本体11の下部に取り付けられた下部ソケット13とを有している。上部ソケット12は、紫外線酸化装置24からの被処理水が流通する入口流路12aを規定し、下部ソケット13は、イオン交換樹脂2で処理された処理水が流通する出口流路13aを規定している。樹脂塔10内の平坦で水平な上面3には、入口流路12aに連通する流入口(開口部)12bが形成され、樹脂塔10内の平坦で水平な底面4には、出口流路13aに連通する流出口(開口部)13bが形成されている。
【0016】
また、イオン交換装置1は、樹脂塔10内の流入口12bを覆うように設けられた(流入口12bに被せられた)上部コレクタスクリーン5と、流出口13bを覆うように設けられた(流出口13bに被せられた)下部コレクタスクリーン6とを有している。それぞれのコレクタスクリーン5,6は、一端が開口する円筒状に形成されたウェッジワイヤースクリーンで構成され、上部コレクタスクリーン5は、開口する上端で流入口12bに取り付けられ、下部コレクタスクリーン6は、開口する下端で流出口13bに取り付けられている。これにより、コレクタスクリーン5,6は、入口流路12aから樹脂塔10内部への被処理水の流入と樹脂塔10内部から出口流路13aへの処理水の流出とを許容しつつ、特に下部コレクタスクリーン6は、樹脂塔10内部から出口流路13aへのイオン交換樹脂2の流出を防止する機能を有している。なお、ウェッジワイヤースクリーンのスリット幅は、使用するイオン交換樹脂の粒径に応じて設定されるが、通水時に差圧を発生しない程度であれば、特に限定されるものではない。
【0017】
樹脂塔10の材料は、イオン交換樹脂2の充填量に見合った強度を有していれば、特に限定されず、例えば、塔本体11には、繊維強化プラスチック(FRP)などの複合材料を用いることができ、ソケット12,13には、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂を用いることができる。また、イオン交換樹脂2の充填量が1000Lを上回るような大型の樹脂塔10の場合、初期コストやメンテナンス性などを考慮すると、塔本体11と上部ソケット12と下部ソケット13とは一体に形成されていてもよく、その材料としては、より高強度の金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)を用いることができる。
【0018】
しかしながら、例えば、FRPからはカルシウムやコバルトなどの金属成分が、PVCからはカルシウムや亜鉛などの金属成分がそれぞれ溶出することが知られている。また、後述する実験結果によれば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素樹脂と比べて、SUSからも、鉄やニッケルなどの金属成分がより多く溶出することが確認されている。そこで、本実施形態では、このような金属成分の溶出を抑制するために、樹脂塔10の接液部となる内面には、非金属材料からなるライニングが施されている。この非金属材料としては、合成樹脂が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂やポリプロピレン(PP)が挙げられる。なお、入口流路12aおよび出口流路13aを規定するソケット12,13については、それ自体がPTFEなどのフッ素樹脂やPPから形成されていてもよい。
【0019】
ただし、特に大型の樹脂塔10の場合には、その内面全体に上述したライニングを施そうとすると、非常に多くのコストがかかることになる。例えば、内径が1000mm、高さが1000mmのSUS製の樹脂塔10において、表面積が7mの内面全体にフッ素樹脂からなるライニングを施そうとすると、500万円以上のコストがかかることになる。その一方で、仮に樹脂塔10の内面から金属成分が溶出しても、それより下部にイオン交換樹脂2が充填されていれば、そのイオン交換樹脂2により溶出した金属成分を除去することもできる。そのため、必ずしも樹脂塔10の接液部となる内面全体にライニングを施す必要はなく、すなわち、樹脂塔10の接液部のうち、そこから金属成分が溶出してもその金属成分がそれよりも後段においてイオン交換樹脂2で処理される可能性がある部分には、必ずしもライニングを施す必要はない。逆に言えば、樹脂塔10の接液部のうち少なくとも、そこから金属成分が溶出してもその金属成分がそれよりも後段においてイオン交換樹脂2で処理される可能性がない部分、具体的には、底面4と出口流路13bの接液部となる内面とには、ライニングが施されていることが好ましい。
【0020】
なお、このような考え方によれば、樹脂塔10内の底面4と側面7とを接続する湾曲面8には、必ずしもライニングが施されている必要はないが、より確実に金属成分の溶出を抑制するためには、そのような湾曲面8にもライニングが施されていることが好ましい。一方、底面4が平坦な水平面でなく、例えば円錐面や半球面などの曲面から構成され、その最底部に流出口13aが形成されている場合には、底面4にライニングが施されていなくてもよい。
【0021】
一方、コレクタスクリーン5,6の材料としては、金属成分の溶出を抑制するという観点からは、合成樹脂などの非金属材料を用いることが好ましいが、十分な強度を確保することも考慮すると、可能な限り溶出量が少ない金属材料を用いることが好ましい。具体的には、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料を用いることが好ましい。そのような金属材料としては、例えば、チタンが挙げられる。なお、上述した考え方によれば、2つのコレクタスクリーン5,6のうち上部コレクタスクリーン5については、強度のみを考慮して材料を選択してもよく、例えば、SUS製であってもよい。また、ここでいう「実質的に含まない」とは、それらが溶出しても処理水質にほとんど影響を与えない程度であれば、不純物として含まれていてもよいことを意味する。
【0022】
以下、樹脂塔10およびコレクタスクリーン5,6からの金属成分の溶出について、本発明者らが検証した試験結果について説明する。なお、こうした本発明者らの検証により、金属濃度がng/Lレベルの超純水が要求される場合には、樹脂塔10からの金属成分の溶出のみを考慮すれば十分であったかもしれないところ、近年の厳しい要求レベル(すなわちpg/Lレベル)を満たすためには、樹脂塔10からだけでなく、その他の構成部材、特にコレクタスクリーン5,6からの溶出も考慮することが重要であることが見出されている。
【0023】
(試験1)
まず、本発明者らは、金属製の容器からの金属成分の溶出を確認するために、容器に試料水を通水したときの容器出口での試料水中の金属成分の濃度を測定した。具体的には、試料水を、非再生型のイオン交換樹脂を充填したSUS(SUS316)製の容器の内部に通水した後、引き続き、容器出口に設置したモノリス状のイオン交換体に通水し、容器から流出した試料水中の金属成分をイオン交換体で捕捉した後、捕捉した金属成分を溶離液に溶離させ、溶離液中の各種金属量を測定した。容器として、内径が1200mm、高さが1000mmのものを用い、試料水として、容器内部に50L/(L-樹脂・h)の流量で超純水を通水した。溶離液として、多摩化学工業株式会社製の高濃度硝酸(商品名:TAMAPURE AA-100)を1N以上に希釈した100mLの硝酸を用いた。金属量の測定は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて行い、測定した金属量を溶離液の濃縮倍率で除した値を容器から流出した試料水中の金属濃度として算出した。
【0024】
なお、比較のために、非金属(PFA)製の容器からの金属成分の溶出量も同様に測定した。PFA製の容器として、内径が26mm、高さが1000mmのものを用い、上述した金属製容器の場合と同様の通水条件になるように試料水を通水したことを除いて、上述した試験と同様の手順および条件で試験を行い、容器から流出した試料水中の各種金属濃度を算出した。
【0025】
表1に、金属製容器と非金属製容器における測定結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示す測定結果から、測定対象とした金属のうちクロムを除いたすべてにおいて、非金属(PFA)製容器に比べて、金属(SUS316)製容器からの金属成分の溶出量が多くなっていることが確認された。このことから、樹脂塔として、例えばSUSなどの金属製のもの用いる場合、その内面には、合成樹脂などの非金属材料からなるライニングが施されていることが好ましいと考えられる。
【0028】
(試験2)
次に、本発明者らは、金属製のコレクタスクリーンからの金属成分の溶出を確認するために、樹脂塔に金属製のコレクタスクリーンを設置した場合と設置しない場合の金属成分の溶出量を比較した。具体的には、イオン交換樹脂が充填されていないことと接液部にライニングが施されていないことを除いて図1に示す樹脂塔と同様の樹脂塔の流入口と流出口に、SUS(SUS304)製のコレクタスクリーンを設置した場合と、設置しない場合のそれぞれにおいて、上述した試験1と同様の手順で試験を行い、試料水中の各種金属濃度を算出した。樹脂塔として、内径が400mm、高さが1000mmのFRP製の塔本体と、PVC製のソケットとからなるものを用い、試料水として、10L/minの流量で超純水を樹脂塔内部に通水した。その他の条件は、上述した試験1と同様である。
【0029】
表2に、コレクタスクリーンを設置した場合と設置しない場合の測定結果を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
金属(SUS304)製のコレクタスクリーンを設置したことにより、鉄の溶出量が大幅に増加していることが確認された。コレクタスクリーンは、上述したように、ウェッジワイヤースクリーンを円筒状に形成したものであり、その構造上、非金属材料からなるライニングを施すことが困難である。このことも考慮すると、表2に示す測定結果は、コレクタスクリーンの材料としては、非金属材料か、強度の点からは、SUSに含まれる金属元素(具体的には、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅)を実質的に含まない金属材料が好ましいことを示している。
【0032】
(試験3)
次に、本発明者らは、コレクタスクリーンを構成する金属材料の違いにより金属成分の溶出量がどのように変化するかを確認するために、樹脂塔に構成材料が異なる2種類のコレクタスクリーンを設置した場合の金属成分の溶出量を比較した。具体的には、接液部にライニングが施されていないことを除いて図1に示す樹脂塔と同様の(したがって、非再生型のイオン交換樹脂を充填した)樹脂塔の流入口と流出口に、SUS(SUS304)製のコレクタスクリーンを設置した場合と、チタン製のコレクタスクリーンを設置した場合のそれぞれにおいて、上述した試験1と同様の手順で試験を行い、容器から流出した試料水中の各種金属濃度を算出した。樹脂塔として、内径が400mm、高さが1000mmのFRP製の塔本体と、PTFE製のソケットとからなるものを用い、試料水として、10L/minの流量で純水を樹脂塔内部に通水した。その他の条件は、上述した試験1と同様である。
【0033】
表3に、SUS製のコレクタスクリーンを設置した場合とチタン製のコレクタスクリーンを設置した場合の測定結果を示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示す測定結果から、SUS製のコレクタスクリーンを設置した場合に比べて、チタン製のコレクタスクリーンを設置した場合に鉄の溶出量が大幅に低減されることが確認され、これにより、コレクタスクリーンの金属材料としてチタンを用いることが好ましいことが確認された。なお、試験2のコレクタスクリーンを設置しない場合に比べても、チタン製のコレクタスクリーンを設置した場合の鉄の溶出量は低減しているが、このことは、金属成分の溶出の抑制には、フッ素樹脂からなるソケットを用いることも有効であることを示している。
【0036】
以上のような試験結果を踏まえ、本実施形態では、上述したように、樹脂塔10の接液部のうち少なくとも底面4と出口流路13bの内面に、非金属材料からなるライニングが施されている。加えて、少なくとも下部コレクタスクリーン6の材料として、非金属材料か、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料、好ましくはチタンが用いられている。これにより、イオン交換装置1の接液部のうち、そこから金属成分が溶出してもその金属成分がそれより後段においてイオン交換樹脂で処理される可能性がない部分からの金属成分の溶出を抑制することが可能になる。なお、樹脂塔10のライニング材としては、上述したように合成樹脂などの非金属材料が好ましいが、可能な限り金属成分の溶出量が少ないものであれば、金属材料であってもよく、例えば、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料であってもよい。また、下部コレクタスクリーン6については、必ずしもそれ自体が上述した材料からなる必要はなく、処理水と接する表面(接液部)のみが上述した材料からなっていてもよく、すなわち、非金属材料か、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料からなっていてもよい。
【0037】
また、図示していないが、樹脂塔10の下部には、出口流路13aに接続する配管が取り付けられているが、その配管が、例えばSUSなどの金属製である場合、その内面にもライニングが施されていることが好ましい。その材料としては、樹脂塔10のライニング材と同様に、非金属材料、具体的には、フッ素樹脂などの合成樹脂が好ましく、あるいは、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉛、または銅を実質的に含まない金属材料であってもよい。
【0038】
なお、上述したように、超純水製造装置1の構成は、図示した構成に限定されず、したがって、イオン交換装置1の設置位置も、図示した位置に限定されるものではない。例えば、膜脱気装置25が省略され、それにより、サブシステムの最も下流側のUF膜装置26のすぐ上流側にイオン交換装置1が設置されてもよく、さらにUF膜装置26が省略され、それにより、サブシステムの最も下流側にイオン交換装置1が設置されてもよい。また、イオン交換装置1の上述した構成は、本実施形態のようにサブシステムに設置されるイオン交換装置のものに限定されず、一次純水システムを構成するイオン交換装置に適用されてもよい。また、イオン交換装置1に充填されるイオン交換樹脂の充填形態は、上述したカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混床形態に限定されず、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との複床形態であってもよく、カチオン交換樹脂またはアニオン交換樹脂が単床形態であってもよい。さらに、イオン交換樹脂の代わりに、あるいはそれに加え、キレート樹脂が充填されていてもよく、例えば、イオン交換装置1は、キレート樹脂が単床で充填されたものであってもよく、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の少なくとも一方とキレート樹脂とが複床または混床で充填されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 イオン交換装置
2 イオン交換樹脂
3 上面
4 底面
5 上部コレクタスクリーン
6 下部コレクタスクリーン
7 側面
8 湾曲面
10樹脂塔(容器)
11 容器本体
12 上部ソケット
12a 入口流路
12b 流入口
13 下部ソケット
13a 出口流路
13b 流出口(開口部)
20 超純水製造装置
21 一次純水タンク
22 ポンプ
23 熱交換器
24 紫外線酸化装置
25 膜脱気装置
26 限外ろ過膜装置
27 ユースポイント
図1
図2