(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120564
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】膜状止水装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/22 20060101AFI20220810BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
E02B7/22
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017533
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下見 広司
【テーマコード(参考)】
2D019
2E139
【Fターム(参考)】
2D019AA71
2E139AA08
2E139AB00
2E139AB11
2E139AC19
2E139AD04
(57)【要約】
【課題】広範囲な径間の止水に対応でき、緊急時等に短期間で取り付けが可能となるように、各構成部材を軽量化した膜状止水装置を提供する。
【解決手段】膜状止水装置1において、膜体10が水圧により側面視曲線状に変形して、吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生して、一方、固定位置13ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、水路方向に沿う膜体10の吊り上げ位置15が設定されると共に、膜体10の下端から上端に至る全長が最小限に設定される。これにより、膜状止水装置1は、広範囲な径間の止水に対応でき、緊急時等に短期間で取り付けが可能となるように、各構成部材を軽量化することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が底部に固定され、且つ上端が前記下端の固定位置から下流側の上方の吊り上げ位置にて吊り上げられた膜体により、前記底部に沿う水の流れを止める膜状止水装置であって、
前記膜体が水圧により側面視曲線状に変形した際、水が流れる方向において、前記吊り上げ位置が、水圧により変形した膜体の最も下流側端面とほぼ同じ位置、またはその変形した膜体よりも下流側に位置するように設定されることを特徴とする膜状止水装置。
【請求項2】
前記膜体の上端は、前記吊り上げ位置において、径間方向に沿って複数設けられた梁部材に固定され、該各梁部材は、径間方向に沿って複数設けられた支柱により支持されることを特徴とする請求項1に記載の膜状止水装置。
【請求項3】
前記膜体が水圧により変形した際、前記吊り上げ位置ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、前記吊り上げ位置が設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の膜状止水装置。
【請求項4】
前記膜体が水圧により変形した際、前記固定位置ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、前記吊り上げ位置が設定されることを特徴とする請求項3に記載の膜状止水装置。
【請求項5】
前記膜体の下端部は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その下端部は、下部クランプ部材により前記底部に押圧されて固定され、
前記膜体の上端部は、前記吊り上げ位置において、梁部材に固定されており、
前記膜体の上端部は、上方に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その上端部は、上部クランプ部材により前記梁部材に押圧されて固定されることを特徴とする請求項4に記載の膜状止水装置。
【請求項6】
前記下部クランプ部材及び前記上部クランプ部材は、径間方向に沿って複数に分割されて設けられることを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載の膜状止水装置。
【請求項7】
前記膜体の下端から上端に至る全長が最小限に設定されることを特徴とする請求項4~6いずれかに記載の膜状止水装置。
【請求項8】
前記膜体の上端は、前記吊り上げ位置において、梁部材に固定されており、
該梁部材の外形を円形状に形成して、前記膜体の上端部を前記梁部材の外周面に巻き付けるようにして固定することを特徴とする請求項1に記載の膜状止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端が底部に固定され、且つ上端が前記下端の固定位置から下流側の上方に吊り上げられた膜体により水の流れを止める膜状止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洪水および高潮等の災害時において、通常止水を必要としない建築物および施設の入り口および境界において、止水が必要となる場合がある。また、河川や水路において、利水施設および治水施設の設置、及びその維持管理のための仮締切等の一時的な止水および堰上げをなす必要がある。
【0003】
これに対処する一つの方法として、土嚢等の土木工事で対処する方法があるが、緊急時の設置には、相当な時間と多大な労力を要する。他方、角落しおよび防水扉などの設備を設置する方法があるが、水圧荷重の支持に必要な強度および剛性を確保するためには、その設備の重量が大きくなり、設備自体も高価となる課題がある。また、角落しおよび防水扉などの設備を、精度良く水路などの土木構造物に設置する必要があり、施工コストが嵩む課題がある。
【0004】
このような観点から、比較的軽量な膜体を用いて、その張力により水圧荷重を支持すると共に、膜体の柔軟性を生かして土木構造物との取合い精度の必要のない設備が考えられている。例えば、このような従来技術として、特許文献1にシート状堰が開示されている。この特許文献1に記載のシート状堰では、膜体(シート)の下流側端部に水路の幅方向(径間方向)に亘って設けられた棒体を上流側からウインチで引き上げる構造とされている。膜体は剛性がないので、上流側からの水圧により変形して、下流側に張り出す構造となっている。
【0005】
そして、膜体においてその全径間に亘って発生した張力は、膜体の下端では、全径間に亘ってその底部に伝達され、一方、膜体の上端の吊り上げ位置では、棒体を介してウインチのワイヤロープに伝達される。このため、この方法では、径間が大きくなると、上端においては、棒体に対して必要な剛性や強度が大きくなり、結果として、棒体の外径が大きく、且つ重くなり、容易に設置できない構造となる。したがって、この特許文献1に記載のシート状堰は、比較的に小さな径間のみの適用に限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年の豪雨、洪水、高潮等の災害においては、建築物や施設における広範な径間の防水を必要とする場合があり、比較的広い径間への臨機の止水対応が求められている。また、河川工事における仮締切の用途においても、比較的広い径間への止水対応が必要となる場合があり、通常実施されている、土堰堤防や土嚢等の土木施工による仮締切工事では、費用および工程の面で実施が困難な場所も存在し、高価な角落し設備が設けられるなどしており、経済的な代替案の必要性が高まっている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、広範囲な径間の止水に対応でき、緊急時等に短期間で取り付けが可能となるように、各構成部材を軽量化した膜状止水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、下端が底部に固定され、且つ上端が前記下端の固定位置から下流側の上方の吊り上げ位置にて吊り上げられた膜体により、前記底部に沿う水の流れを止める膜状止水装置であって、前記膜体が水圧により側面視曲線状に変形した際、水が流れる方向において、前記吊り上げ位置が、水圧により変形した膜体の最も下流側端面とほぼ同じ位置、またはその変形した膜体よりも下流側に位置するように設定されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1の発明では、膜体の吊り上げ位置を、水が流れる方向において、水圧により変形した膜体の最も下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置、または変形した膜体よりも下流側の位置に設定するので、この吊り上げ位置から下流側に膜体が存在しない状態を形成することができる。これにより、膜体を支柱により、膜体と干渉することなく問題無く支持することができ、結果として、径間の全域に亘って、膜体を複数の支柱により支持することが可能になり、広範囲な径間の止水に対応することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記膜体の上端は、前記吊り上げ位置において、径間方向に沿って複数設けられた梁部材に固定され、該各梁部材は、径間方向に沿って複数設けられた支柱により支持されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の発明では、膜体の上端を、径間方向に沿って複数配置された梁部材及び支柱により支持することができる。その結果、各梁部材及び各支柱により、膜体の吊り上げ位置に付与される荷重(膜体からの張力)を分担することができ、広範囲の径間に対応することができる。しかも、各梁部材及び各支柱を小型化することができ、その結果、これらの軽量化に繋がり、ひいては、膜状止水装置を緊急時等にさらに短期間で取り付けることが可能になる。より詳細には、水圧により、膜体の吊り上げ位置には径間全域に亘って張力が作用し、この荷重が梁部材全域に伝達される。そこで、従来技術(特許文献1:特開平11-229357号公報に記載のシート状堰)では、梁部材に相当する棒体の両端2か所をワイヤロープで支持しており、小規模の水路では適用できるが、広範囲な径間には、棒体の強度上対応することができない。そして、請求項4の発明を採用することにより、径間方向に沿って複数設けられた支柱により梁部材からの荷重を底部に伝達できるため、径間長に影響されることなく広範囲な径間に対応することができる。また、梁部材は径間方向に沿って複数配置されており、径間長(幅長)に関わりなくその長さを短くすることができるので、曲げ応力が軽減され、梁部材の断面を小さくして軽量化することができる。また、支柱も同様に梁部材から伝達される荷重を複数で支持できるので、軽量化することができ、取り扱いが容易となり、臨機の施工性も向上する。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記膜体が水圧により変形した際、前記吊り上げ位置ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、前記吊り上げ位置が設定されることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明では、膜体が水圧により変形した際、膜体の吊り上げ位置ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生するので、鉛直方向(一方向)に沿う張力に対して十分な拘束力を確保すればよく、その構造が複雑化して大型化(重量化)するのを抑制することができる。その結果、各構成部材の軽量化に繋がり、ひいては、膜状止水装置を緊急時等に短期間で取り付けることが可能になる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、前記膜体が水圧により変形した際、前記固定位置ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、前記吊り上げ位置が設定されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の発明では、膜体が水圧により変形した際、膜体の固定位置では、ほぼ水平方向に沿う張力のみが発生するので、水平方向に沿う張力に対して十分な拘束力を確保すればよく、その構造が複雑化して大型化(重量化)するのを抑制することができる。その結果、各構成部材のさらなる軽量化に繋がり、ひいては、膜状止水装置を緊急時等にさらに短期間で取り付けることが可能になる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4に記載の発明において、前記膜体の下端部は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その下端部は、下部クランプ部材により前記底部に押圧されて固定され、前記膜体の上端部は、前記吊り上げ位置において、梁部材に固定されており、前記膜体の上端部は、上方に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その上端部は、上部クランプ部材により前記梁部材に押圧されて固定されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5の発明では、膜体の下端部と底部とが下部クランプ部材により固定される固定位置においては、膜体の下端部が楔状に形成されているので、膜体の、水平方向下流側への張力に対して十分な拘束力を確保することができる。一方、膜体の上端部と梁部材とが上部クランプ部材により固定される吊り上げ位置においては、膜体の上端部が楔状に形成されているので、膜体の、鉛直方向下方への張力に対して十分な拘束力を確保することができる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記下部クランプ部材及び前記上部クランプ部材は、径間方向に沿って複数に分割されて設けられることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6の発明では、下部クランプ部材及び上部クランプ部材を、作業者が容易に設置可能に軽量化することができる。しかも、上部クランプ部材及び下部クランプ部材は共に分割されているので、被取付相手側の構成部材の不陸についても対応し易くなり、結果として、良好な止水性を確保することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項4~6いずれかに記載の発明において、前記膜体の下端から上端に至る全長が最小限に設定されることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の発明では、膜体の下端から上端に至る全長、言い換えれば、膜体の大きさを最小限に抑えることができるので、膜体にかかる費用を抑えることができ、ひいては、装置全体の費用を抑えることができる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1に記載の発明において、前記膜体の上端は、前記吊り上げ位置において、梁部材に固定されており、該梁部材の外形を円形状に形成して、前記膜体の上端部を前記梁部材の外周面に巻き付けるようにして固定することを特徴とするものである。
【0024】
請求項8の発明では、膜体の上端部を、外形が円形状の梁部材に巻き付けることにより、膜体の張力による梁部材への締め付け荷重が増加し、その結果、この締め付け荷重の増加により、膜体の上端部と梁部材の外周面との間の摩擦力が増加するので、膜体の上端部と梁部材との固定をより強固にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る膜状止水装置によれば、広範囲な径間の止水に対応でき、緊急時等に短期間で取付が可能となるように、各構成部材を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置の全体像を示す斜視図であり、また膜体の裏側を透視した透視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置の一部を拡大した斜視図であり、また膜体の裏側を透視した透視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置の側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置であり、膜体の上端の吊り上げ位置の固定構造、及び梁部材と支柱との連結構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置であり、膜体の側部を水路の側部に固定した状態の断面図である。
【
図8】
図8は、膜体の上端部を梁部材に支持させる吊り上げ位置における他の実施形態を示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図8において、吊り上げ位置を拡大して示す側面図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態に係る膜状止水装置を示す模式図である。
【
図11】
図11は、さらに他の実施形態に係る膜状止水装置を示す模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る膜状止水装置と比較対象とした膜状止水装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図12に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る膜状止水装置1は、
図1に示すように、例えば、底部3と、互いに対向する一対の側部4、4とを有し、これら底部3と一対の側部4、4とで囲まれた水路5内の水の流れを止めるものである。以下の説明においては、水路5の幅方向を径間方向と称し、水路5内の水の流れに沿って、その上流側及び下流側と称する。
図3、
図10~
図12において、左側が上流側で、右側が下流側となる。
【0028】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る膜状止水装置1は、膜体10を備えている。当該膜体10は、その下端が固定位置13にて水路5の底部3と固定され、且つその上端が固定位置13から下流側の上方の吊り上げ位置15にて吊り上げられて構成される。なお、
図3では、膜体10が水圧を受けて(
図3において左側から右側に向かって水圧を受けて)、側面視曲線状に変形した状態を示している。
【0029】
図3を参照して、膜体10が水圧により側面視曲線状に変形して、膜体10の上端の吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向(
図5において吊り上げ位置15における水平面との角度αがほぼ90°)に沿う張力のみが発生して、一方、膜体10の下端の固定位置13ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、水路方向(水が流れる方向)に沿って膜体10の吊り上げ位置15が設定される。また、膜体10が水圧により側面視曲線状に変形して前述のような変形姿勢を維持できる構成で、且つ膜体10の下端から上端に至る全長、言い換えれば、膜体10の大きさが最小限に設定される。そして、本実施形態に係る膜状止水装置1では、膜体10が水圧により変形した際、膜体10の上端の吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生するので、水路方向において、吊り上げ位置15が、水圧により変形した膜体10の最も下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置に設定されることになる。
【0030】
本発明の実施形態に係る膜状止水装置1を
図1~
図9に基づいて、
図12も参照して具体的に説明する。
図1~
図3に示すように、膜体10は、ゴム引き布製であり、比較的重量が軽く、可撓性を有するシート状に形成される。なお、
図1及び
図2においては、膜体10はグレーにて示している。また、
図3~
図5、
図8~
図12において、膜体10は黒塗りで示している。膜体10は、ゴム引き布を採用することで、ゴムにより遮水機能を発揮すると共に、内挿された繊維により膜体10の張力を安全、確実に伝達する構成としている。膜体10は、展開された状態において、略矩形状に形成される。
【0031】
図3及び
図4から解るように、膜体10の下端部(上流側端部)は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成される。膜体10の下端部は、複数の下部クランプ部材17により水路5の底部3に固定される。言い換えれば、膜体10の下端部は、複数の下部クランプ部材17により水路5の底部3の上面に当接される。
図2及び
図3を参照して、下部クランプ部材17は板状に形成される。下部クランプ部材17は平面視矩形状に形成される。下部クランプ部材17は、径間方向に沿って複数配置される。言い換えれば、下部クランプ部材17は、径間方向に沿って複数に分割して設けられている。下部クランプ部材17は、その長手方向が径間方向に一致するように配置される。
【0032】
そして、
図3及び
図4を参照して、膜体10の下端部を水路5の底面に当接させて、その上から下部クランプ部材17の上流側端が膜体10の上流側端よりも上流側に突出するように載置される。そして、上流側アンカボルト19を、下部クランプ部材17の上流側端部に挿通すると共に水路5の底部3に固定する。このとき、下部クランプ部材17の上流側端と水路5の底面との間には、膜体10の楔状の下端部の最大厚み相当の空間が設けられる。なお、
図2を参照して、上流側アンカボルト19は、一枚の下部クランプ部材17に対して径間方向に沿って間隔を置いて複数配置される。
【0033】
また、
図3及び
図4を参照して、下流側アンカボルト20を、下部クランプ部材17の下流側端部に挿通すると共に膜体10の楔状部位の始点部分に挿通して、且つ水路5の底部3に固定する。その結果、膜体10の楔状の下端部(上流側端部)は、下部クランプ部材17と水路5の底部3との間に挟持された状態で、上流側アンカボルト19及び下流側アンカボルト20により固定される。なお、
図2を参照して、下流側アンカボルト20は、一枚の下部クランプ部材17に対して径間方向に沿って間隔を置いて複数配置される。
【0034】
このようにして、膜体10の下端部(上流側端部)は、下部クランプ部材17、上流側アンカボルト19及び下流側アンカボルト20により水路5の底部3に押圧されて固定される。この固定状態では、下部クランプ部材17は、膜体10における楔状の下端部(上流側端部)の上面に沿って、上流側から下流側に向かって若干下方傾斜した姿勢となる。なお、
図3及び
図4を参照して、膜体10の下端から上端までの全長は最小限に設定されることから、膜体10が水圧により変形した際、膜体10が水路5の底部3に当接されている範囲は、膜体10の下端部に設けた楔状の部位のみとなり、その他の部位が水路5の底部3に当接されることはない。
【0035】
そして、膜体10の下端部に設けた楔状の部位が、水路5の底部3との固定位置13となる。また、膜体10が水圧により変形した際、当該固定位置13には、ほぼ水平方向に沿ってのみ、膜体10からの張力が発生する。そのために、上述したように、膜体10の、水路5の底部3との固定位置13には、特に、下流側に向かう水平方向の張力に対して効果的に拘束できる固定構造が採用されている。
【0036】
一方、
図3及び
図5を参照して、膜体10の上端部(下流側端部)は、上方に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成される。膜体10の上端部は、上部クランプ部材23により各梁部材25に固定される。梁部材25はコ字状アングル材で構成される。梁部材25は径間方向に沿って延びる。梁部材25は径間方向に沿って複数配置される。なお、本実施形態では、梁部材25は、後述する、径間方向に沿って、間隔を置いて複数立設された支柱45、45間を掛け渡すようにして設けられている。1本の梁部材25に対してその長手方向に沿って複数の上部クランプ部材23が配置される。梁部材25は、互いに対向する上板部27及び下板部28と、正面板部29とが一体的に接続される側面視コ字状に形成される。梁部材25は、その開放側が下流側に指向した状態で設置される。
【0037】
図5及び
図6も参照して、各梁部材25の下流側には、径間方向に沿って間隔を置いて複数の固定部材33が設けられている。固定部材33はL字状アングル材で構成される。固定部材33は、取付板部35と補強板部36とが一体的に接続される上面視L字状に形成される。固定部材33は、立った状態で配置される。固定部材33は、その取付板部35がコ字状の梁部材25の開放側と対向する向きで配置される。なお、固定部材33の上端は梁部材25の上板部27から若干上方に突出しており、この部位が上部クランプ部材23との上端固定部位38となる。一方、固定部材33の下端も梁部材25の下板部28から若干下方に突出しており、この部位が上部クランプ部材23及び膜体10との下端固定部位39となる。
【0038】
図5及び
図6を参照して、上部クランプ部材23は板状に形成される。上部クランプ部材23は正面視矩形状に形成される。上部クランプ部材23は、径間方向に沿って複数配置される。言い換えれば、上部クランプ部材23は、径間方向に沿って複数に分割して設けられている。上部クランプ部材23は、その長手方向が径間方向に一致するように立設される。そして、膜体10の上端部を各梁部材25の正面板部29に当接させて、その上流側から上部クランプ部材23を、その上端が膜体10の上端よりも上方に突出するように当接させる。そして、上部取付ボルト41により、上部クランプ部材23の上端と固定部材33の上端固定部位38とを連結する。このとき、上部クランプ部材23の上端と固定部材33の取付板部35の上端固定部位38との間には、膜体10の楔状部位の最大厚みに梁部材25の上板部27の長さを加えた相当の空間が設けられる。
【0039】
また、
図5及び
図6を参照して、下部取付ボルト42を、上部クランプ部材23の下端部に挿通すると共に膜体10の楔状部位の始点部分に挿通し、且つ固定部材33の取付板部35の下端固定部位39に固定する。このとき、膜体10と固定部材33の取付板部35の下端固定部位39との間には、梁部材25の下板部28の長さ相当の空間が設けられる。その結果、膜体10の楔状の上端部は、上部クランプ部材23と各梁部材25の正面板部29との間に挟持された状態で上部取付ボルト41及び下部取付ボルト42により固定される。なお、上部取付ボルト41及び下部取付ボルト42は、固定部材23の数量に対応して径間方向に沿って間隔を置いて複数配置される。
【0040】
このようにして、膜体10の上端部は、上部クランプ部材23、上部取付ボルト41及び下部取付ボルト42により梁部材25の正面板部29に押圧されて固定される。なお、この固定状態では、上部クランプ部材23は、膜体10における楔状の上端部の上流側面に沿って、上方に向かって上流側に若干傾くように傾斜した姿勢となる。そして、
図3も参照して、膜体10の上端部に設けた楔状の部位が吊り上げ位置15となる。当該吊り上げ位置15は、水路方向において、膜体10が水圧により変形した際の膜体10の下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置に設定される。また、膜体10が水圧により変形した際、当該吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向に沿ってのみ、膜体10からの張力が発生する。そのために、上述したように、膜体10の吊り上げ位置15には、特に、鉛直方向下方に向かう張力に対して効果的に拘束できる固定構造が採用されている。
【0041】
なお、
図12に示す、比較する他の膜状止水装置100として、膜体10が水圧(同じ条件下)により変形した際、吊り上げ位置における水平面との角度αが90°より大きく、該吊り上げ位置が膜体10の下流側端面より上流側に位置する形態では、吊り上げ位置において、膜体10の上端部を支持する梁部材や支柱を配置することができず、広範囲な径間の止水に対応することができない。しかも、この形態では、膜体10が水圧により変形した際、吊り上げ位置に対して、鉛直方向及び水平方向双方からの張力が発生することになる。そのために、当該吊り上げ位置では、鉛直方向及び水平方向双方からの張力に対して拘束する形態を採用しなければならず、その固定構造が複雑化(重量化を含む)して好ましくない。
【0042】
また、
図2及び
図6を参照して、各梁部材25は、径間方向に沿って間隔を置いて複数配置される支柱45、45によって支持される。梁部材25は、径間方向に沿って隣接する支柱45、45間を掛け渡すように配置される。言い換えれば、梁部材25は、径間方向に沿って隣接する支柱45、45によって支持される。
図2及び
図3を参照して、各支柱45は、水路5の底部3に複数のアンカボルト47により固定される。
図6を参照して、各支柱45の頂面に各梁部材25が載置される。
【0043】
そして、複数の取付シャフト48、48が、梁部材25の上板部27及び下板部28に挿通されて、支柱45の上部に固定されることで、梁部材25が支柱45に支持される。詳しくは、各支柱45、45のうち、水路5の両側部4、4に近接して配置される支柱45と、梁部材25との連結においては、図示は省略するが、梁部材25の上板部27及び下板部28における水路5の側部寄りの位置に、互いに間隔を置いた2本の取付シャフト48、48が挿通されると共に、支柱45の上部にそれぞれ固定されて、梁部材25が支柱45に支持される。
【0044】
また、
図2及び
図6を参照して、水路5の両側部4、4に近接して配置される一対の支柱45、45間に配置される複数の支柱45は、径間方向に沿って隣接する梁部材25、25の長手方向端部を跨るようにして配置される。言い換えれば、径間方向に沿って隣接する梁部材25、25の互いに対向する端部が支柱45の頂面にそれぞれ載置される。そして、一方の梁部材25の上板部27及び下板部28の長手方向端部(互いに対向する一方の端部)に取付シャフト48が挿通されると共に、当該支柱45の上部に固定される。同様に、他方の梁部材25の上板部27及び下板部28の長手方向端部(互いに対向する他方の端部)に取付シャフト48が挿通されると共に、当該支柱45の上部に固定される。
【0045】
このようにして、各梁部材25、25が、各支柱45、45により支持される。なお、
図3を参照して、上述した、膜体10の上端の支持構造(吊り上げ構造)では、各支柱45の軸心が、膜体10の上端における吊り上げ位置15よりも若干下流側に位置しているが、各支柱45に付与される曲げモーメントを比較的小さく抑えることができる。その結果、支柱45を軽量化することができる。
【0046】
図1及び
図2を参照して、膜体10に両側部は、水路5の両側部4、4に一体的にそれぞれ固定される。詳しくは、膜体10の側部は、水圧を受けた際の側面視曲線状に変形した形状に合わせて、水路5の両側部4、4の壁面に沿って一体的に固定される。その際には、膜体10の側部を水路5の側部4の壁面に沿うように上方に向かって折り曲げて、また
図7も参照して、膜体10の下端から上端に向かう適宜箇所(襞)を折り畳むようにして、側部クランプ部材50で固定している。
図2及び
図7を参照して、側部クランプ部材50は板状に形成される。側部クランプ部材50は矩形状に形成される。側部クランプ部材50は、膜体10の曲線状に延びる側部に沿って間隔を置いて複数配置される。
【0047】
そして、
図2及び
図7を参照して、膜体10の側部を、水路5の側部4の壁面に沿うように上方に向かって折り曲げて、膜体10の下端から上端に向かって複数設けた襞(折り目)を折り畳むようにして当接させる。続いて、膜体10の側部で、折り畳んだ部位の両側にゴムライナー52、52をそれぞれ配置する。続いて、側部クランプ部材50を各ゴムライナー52、52、及び膜体10の折り畳んだ部位上に載置する。そして、アンカボルト53を側部クランプ部材50の長手方向両端部に挿通する共に各ゴムライナー52に挿通して、水路5の側部4に固定する。これにより、膜体10の側部を、水路5の側部4の壁面に、側部クランプ部材50、各ゴムライナー52、52及びアンカボルト53により一体的に固定することができる。
【0048】
なお、
図1~
図7に示す本実施形態に係る膜状止水装置1では、吊り上げ位置15まで水位Hがあると仮定した場合、膜体10に対して水から受ける力や、膜体10の強度、剛性等の機械的特性にもよるが、一実施例として、膜体10の固定位置13をゼロとし、固定位置13から水路方向に沿う吊り上げ位置15までの距離がほぼ0.6Hとなり、膜体10の下端から上端までの全長がほぼ1.3H(最小限の全長)となる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る膜状止水装置1は、膜体10が水圧により側面視曲線状に変形した際、膜体10の吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生して、一方、膜体10の固定位置13ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢となり、その変形姿勢を維持できるように、水路方向に沿う膜体10の吊り上げ位置15を設定すると共に、膜体10の下端から上端に至る全長(膜体10の大きさ)を最小限に設定するように構成される。
【0050】
これにより、膜体10の吊り上げ位置15を、水路方向において、水圧により変形した膜体10の最も下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置に設定することができ、支柱45、45(梁部材25、25を含む)により、膜体10を、該膜体10と干渉することなく支持することができる。その結果、径間の全域に亘って、膜体10を複数の支柱45、45により支持することが可能になり、広範囲な径間の止水に対応することができる。
【0051】
また、膜体10が水圧により変形した際、膜体10の吊り上げ位置15では、その張力はほぼ鉛直方向に沿ってのみ発生して、詳しくは、その張力はほぼ鉛直方向下方に向かってのみ付与されるので、鉛直方向下方(一方向)への張力に対して十分な拘束力を確保すればよく、その固定構造を簡素化することができる。一方、膜体10の下端の固定位置13では、その張力はほぼ水平方向に沿ってのみ発生して、詳しくは、その張力はほぼ水平方向下流側に向かってのみ付与されるので、水平方向下流側(一方向)への張力に対して十分な拘束力を確保すればよく、その固定構造を簡素化することができる。その結果、固定構造にかかわる各構成部材の軽量化に繋がり、ひいては、膜状止水装置1を緊急時等に短期間で取り付けることが可能になる。
【0052】
また、本発明の実施形態に係る膜状止水装置1では、膜体10の上端は、吊り上げ位置15において、径間方向に沿って複数設けられた梁部材25、25に固定され、該各梁部材25、25は、径間方向に沿って複数設けられた支柱45、45により支持される。
【0053】
これにより、各梁部材25及び各支柱45により、膜体10の吊り上げ位置15に付与される荷重(膜体10からの張力)を分担することができ、広範囲の径間に対応することができる。しかも、各梁部材25及び各支柱45を小型化することができ、その結果、これらの軽量化に繋がり、ひいては、膜状止水装置1を緊急時等にさらに短期間で取り付けることが可能になる。
【0054】
詳しくは、径間方向に沿って複数設けられる支柱45、45により梁部材25からの荷重を水路5の底部3に伝達できるため、径間長に影響されることなく広範囲な径間に対応することができる。また、梁部材25は径間方向に沿って複数設けられており、径間長(幅長)に関わりなくその長さを短くすることができる。その結果、単一の梁部材25への曲げ応力が軽減され、当該梁部材25の断面を小さくして軽量化することができる。また、支柱45、45も複数設けられているので、単一の支柱45を軽量化することができる。
【0055】
さらに、本発明の実施形態に係る膜状止水装置1では、膜体10の下端部は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その下端部は、下部クランプ部材17により水路5の底部3に押圧されて固定され、膜体10の上端部は、上方に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、その上端部は、上部クランプ部材23により梁部材25に押圧されて固定される。
【0056】
これにより、膜体10の下端部の下部クランプ部材17による固定位置13においては、膜体10の、水平方向下流側への張力に対して十分な拘束力を確保することができる。一方、膜体10の上端部の上部クランプ部材23による吊り上げ位置15においては、膜体10の、鉛直方向下方への張力に対して十分な拘束力を確保することができる。これにより、前記固定位置13及び前記吊り上げ位置15において、複雑な構造を採用することなく、膜状止水装置1の設置に際して、その作業効率を向上させることができる。
【0057】
さらにまた、本発明の実施形態に係る膜状止水装置1では、下部クランプ部材17及び上部クランプ部材23は、径間方向に沿って複数に分割されて構成される。
これにより、下部クランプ部材17及び上部クランプ部材23を軽量化することができ、作業者によるその取り扱いが容易となり、その作業効率をさらに向上させることができる。また、下部クランプ部材17、及び上部クランプ部材23を共に分割して設けたことで、取付相手側である、底部3の上面、及び梁部材25の正面板部29の不陸についても対応し易くなり、結果として、良好な止水性を確保することができる。
【0058】
なお、膜体10の上端部を梁部材25に支持させる吊り上げ位置15における他の実施形態を
図8及び
図9に基づいて説明する。この実施形態では、梁部材25’は、円筒状に形成される。梁部材25’の外周面の下端から下方に向かって断面矩形状の支持部60が突設される。支持部60は、径間方向に沿って延びる。一方、各支柱45の頂面には、側面視矩形状の支持溝部61が形成される。支持溝部61は、径間方向に沿って延びる。そして、梁部材25’の支持部60が各支柱45の支持溝部61に収容されることで、梁部材25’が支柱45の頂面に支持される。また、膜体10の上端部は梁部材25の外周面に巻回されるように配置され、膜体10の上端が、梁部材25’の支持部60に、径間方向に沿って複数設けられる取付ボルト63によりそれぞれ固定される。
【0059】
この実施形態を採用することで、吊り上げ位置15においては、膜体10の張力がほぼ全てほぼ鉛直方向下方に向かって付与されるので、膜体10の上端部を、梁部材25’の外周面に巻き付けることにより、膜体10からの張力により梁部材25’へ締め付け荷重が増加して、ひいては、膜体10の上端部と梁部材25’の外周面との間の摩擦力が増加するので、膜体10の上端部と梁部材25’との固定をより強固にすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、膜体10の下端を、後施工タイプの各上流側アンカボルト19及び各下流側アンカボルト20により水路5の底部3に固定し、また、膜体10の側部を後施工タイプのアンカボルト53により水路5の側部4に固定して、さらに各支柱45を後施工タイプのアンカボルト47により水路5の底部3に固定しているが、水路5等の構造物の所定位置に取付金具等を埋設するなどすることで、膜体10及び支柱45を容易に構造物に取り付けることもできる。
【0061】
なお、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1が最良の形態であるが、他の実施形態としての膜状止水装置1’を採用することもできる。当該実施形態に係る膜状止水装置1’は、
図10に示すように、膜体10が水圧により変形した際、膜体10の下端の固定位置13から連続する下流側が、該固定位置13を始点に水路5の底部3の上面に当接しない状態を許容しつつ、膜体10の吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向(吊り上げ位置15における水平面との角度αがほぼ90°)に沿う張力のみ発生するように構成されている。
【0062】
この実施形態によれば、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1と同様に、膜体10の吊り上げ位置15を、水路方向において、水圧により変形した膜体10の最も下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置に設定することができる。これにより、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1と同様に、支柱45、45(梁部材25、25を含む)により、膜体10を、該膜体10と干渉することなく支持することができる。その結果、径間の全域に亘って、膜体10を複数の支柱45、45により支持することが可能になり、広範囲な径間の止水に対応することができる。
【0063】
この上述した作用効果は、膜体10の下端から上端に至る全長を、
図10に示す膜体10の全長よりも短く(膜体10の大きさを小さく)しても達成することが可能である。この実施形態では、膜体10の吊り上げ位置15における水平面との角度αが90°より小さくなり、吊り上げ位置15が、水圧により変形した膜体10よりも下流側に位置するようになる。この実施形態では、
図10に示す実施形態に比べて、膜体10に付与される張力(単位長さ当たりの張力)が大きくなるが、その張力が許容できる範囲内であればこの実施形態を採用することもできる。
【0064】
また、さらに他の実施形態として膜状止水装置1’’も採用することができる。当該実施形態に係る膜状止水装置1’’は、
図11に示すように、膜体10が水圧により変形した際、膜体10の下端の固定位置13から連続してその下流側の一定区間が水路5の底部3の上面に当接される状態を許容しつつ、膜体10が水圧により変形した際、膜体10の吊り上げ位置15ではほぼ鉛直方向に沿う張力のみが発生して、且つ膜体10の固定位置13ではほぼ水平方向に沿う張力のみが発生する変形姿勢を維持できるように、膜体10の吊り上げ位置15が設定される。
【0065】
この実施形態によれば、膜体10の下端から上端に至る全長(膜体10の大きさ)が、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1に採用した膜体10の下端から上端に至る全長(膜体10の大きさ)よりも若干長くなるが、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1と同様に、膜体10の吊り上げ位置15を、水路方向において、水圧により変形した膜体10の最も下流側端面(下流側端)とほぼ同じ位置に設定することができる。これにより、上述した
図1~
図9に示す本実施形態に係る膜状止水装置1と同様に、支柱45、45(梁部材25、25を含む)により、膜体10を、該膜体10と干渉することなく支持することができる。その結果、径間の全域に亘って、膜体10を複数の支柱45、45により支持することが可能になり、広範囲な径間の止水に対応することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、1’、1’’ 膜状止水装置,3 底部,5 水路,10 膜体,13 固定位置,15 吊り上げ位置,17 下部クランプ部材,23 上部クランプ部材,25 梁部材,25’ 梁部材,45 支柱