(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120584
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】手術支援ロボット、手術支援システムおよび手術支援ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20220810BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017565
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山守 啓文
(72)【発明者】
【氏名】一居 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 和樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS14
3C707JU12
3C707LS05
3C707MS10
(57)【要約】
【課題】医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することが可能な手術支援ロボットを提供する。
【解決手段】この医療用マニピュレータ1(手術支援ロボット)は、先端側に医療器具4が取り付けられるアーム60と、医療器具4が取り付けられるアーム60を動作させる制御を行う制御部31と、アーム60が動作する空間内における教示点TPを教示するためのピボット教示部材7および操作部80と、を備える。制御部31は、ピボット教示部材7および操作部80を用いて教示された教示点TPに基づいて、患者Pの周囲の空間に仮想的な接触禁止空間VPCを設定する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に医療器具が取り付けられるアームと、
前記医療器具が取り付けられる前記アームを動作させる制御を行う制御部と、
前記アームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部と、を備え、
前記制御部は、前記教示部を用いて教示された前記教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する、手術支援ロボット。
【請求項2】
前記教示部は、前記アームに取り付けられ、前記アームを操作する操作部を含む、請求項1に記載の手術支援ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部により操作された前記アームを用いて教示された前記教示点に基づいて、前記接触禁止空間を設定する、請求項2に記載の手術支援ロボット。
【請求項4】
前記教示部は、前記アームの先端側に取り付けられ前記医療器具を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置を教示するピボット教示部材、および、前記アームの先端側に取り付けられ手術部位の撮影を行う内視鏡のうち少なくとも1つをさらに含み、
前記制御部は、前記アームの先端側に取り付けられた前記ピボット教示部材、または、前記内視鏡の先端部により教示された前記教示点に基づいて、前記接触禁止空間を設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項5】
前記制御部は、前記接触禁止物としての患者の周辺を覆うように前記接触禁止空間を設定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記患者の手術部位以外の部位の周辺を覆うように前記接触禁止空間を設定する、請求項5に記載の手術支援ロボット。
【請求項7】
前記制御部は、前記教示部を用いて教示された前記教示点と、前記患者の体軸方向の長さの入力操作とに基づいて、前記接触禁止空間を設定する、請求項5または6に記載の手術支援ロボット。
【請求項8】
前記制御部は、前記接触禁止物の周囲に半円筒型の前記接触禁止空間を設定する、請求項1~7のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項9】
前記制御部は、前記接触禁止空間内に前記医療器具および前記アームの少なくとも一方が入った場合に、警告を通知する制御を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項10】
前記制御部は、前記接触禁止空間内に前記医療器具および前記アームが入らないように、前記アームを動作させる接触禁止制御を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項11】
前記操作部は、前記アームの移動方向を操作可能なジョイスティックを含む、請求項2および請求項2に従属する請求項3~10のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項12】
前記操作部は、押下されることにより前記アームの移動を許可するイネーブルスイッチを含む、請求項2および請求項2に従属する請求項3~11のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項13】
前記教示部により教示された前記教示点を登録操作するための入力部をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項14】
前記アームは、7軸以上の関節軸を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項15】
前記アームを複数備え、前記複数のアームのそれぞれの先端側に医療器具が取り付けられており、
前記制御部は、前記接触禁止空間内に前記複数の医療器具および前記複数のアームが入らないように、前記複数のアームを動作させる接触禁止制御を行う、請求項1~9のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項16】
前記アームを複数備え、前記複数のアームのそれぞれの先端側に医療器具が取り付けられており、
前記操作部を複数備え、前記複数の操作部は、前記複数のアームのそれぞれに取り付けられており、
前記制御部は、前記複数の操作部のうちの1つにより操作された前記複数のアームのうちの1つを用いて教示された前記教示点に基づいて、前記接触禁止空間を設定するように構成されており、
前記制御部は、前記接触禁止空間内に前記複数の医療器具および前記複数のアームが入らないように、前記複数のアームを動作させる接触禁止制御を行う、請求項3および請求項3に従属する請求項4~9のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項17】
先端側に医療器具が取り付けられるアームと、前記アームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部とを含む患者側装置と、
前記医療器具に対する操作を受け付ける操作者側装置と、
前記医療器具が取り付けられる前記アームを動作させる制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記教示部を用いて教示された前記教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する、手術支援システム。
【請求項18】
前記教示部は、前記アームに取り付けられ、前記アームを操作する操作部を含み、
前記制御部は、前記操作者側装置により前記アームを動作させる場合は、前記接触禁止空間内に前記医療器具および前記アームが入らないように、前記アームを動作させる接触禁止制御を行い、前記操作部により前記アームを動作させる場合は、前記接触禁止空間内に前記医療器具および前記アームが入る場合であっても前記操作部の操作に基づき前記アームを動作させる制御を行う、請求項17に記載の手術支援システム。
【請求項19】
先端部側に医療器具が取り付けられたアームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部を用いて教示された前記教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定するステップと、
設定された前記接触禁止空間内に前記医療器具および前記アームが入らないように、前記アームの動作を制御するステップと、を備える、手術支援ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術支援ロボット、手術支援システムおよび手術支援ロボットの制御方法に関し、特に、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止する手術支援ロボット、手術支援システムおよび手術支援ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止する手術支援ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、先端側に医療器具が取り付けられるマニピュレータアーム(アーム)と、マニピュレータアームを動作させる制御を行う制御装置とを備えるロボットシステム(手術支援ロボット)が開示されている。上記特許文献1のロボットシステムでは、制御装置は、障害物(接触禁止物)の表面を決定し、マニピュレータアームと障害物の表面との間の間隔を増大させるようにマニピュレータを動作させる制御部を行う。これにより、医療器具およびマニピュレータアームが障害物に対して接触することが禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、制御装置は、障害物の表面を遠隔センタ(ピボット位置)を通って延びる平面として規定している。このため、例えば、患者の腹部の手術を行う際には、腹部に設定された遠隔センタを通る平面が障害物表面として設定されるので、患者の顔の周辺を障害物として設定することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することが可能な手術支援ロボット、手術支援システムおよび手術支援ロボットの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による手術支援ロボットは、先端側に医療器具が取り付けられるアームと、医療器具が取り付けられるアームを動作させる制御を行う制御部と、アームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部と、を備え、制御部は、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する。
【0008】
この発明の第1の局面による手術支援ロボットでは、上記のように、制御部は、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する。これにより、医療器具を移動させる際の支点となるピボット位置に基づいてピボット位置を通る平面を障害物表面として設定する場合と異なり、ピボット位置に対して任意の位置に接触禁止空間を設定することができる。これにより、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させることができる。また、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定することにより、様々な形状および大きさの接触禁止物に対して、適した形状および大きさの接触禁止空間を容易に設定することができる。これらの結果、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することができる。
【0009】
この発明の第2の局面による手術支援システムは、先端側に医療器具が取り付けられるアームと、アームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部とを含む患者側装置と、医療器具に対する操作を受け付ける操作者側装置と、医療器具が取り付けられるアームを動作させる制御を行う制御部と、を備え、制御部は、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する。
【0010】
この発明の第2の局面による手術支援システムでは、上記のように、制御部は、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定する。これにより、医療器具を移動させる際の支点となるピボット位置に基づいてピボット位置を通る平面を障害物表面として設定する場合と異なり、ピボット位置に対して任意の位置に接触禁止空間を設定することができる。これにより、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させることができる。また、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定することにより、様々な形状および大きさの接触禁止物に対して、適した形状および大きさの接触禁止空間を容易に設定することができる。これらの結果、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することが可能な手術支援システムを提供することができる。
【0011】
この発明の第3の局面による手術支援ロボットの制御方法は、先端部側に医療器具が取り付けられたアームが動作する空間内における教示点を教示するための教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定するステップと、設定された接触禁止空間内に医療器具およびアームが入らないように、アームの動作を制御するステップと、を備える。
【0012】
この発明の第3の局面による手術支援ロボットの制御方法では、上記のように、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定するステップを設ける。これにより、医療器具を移動させる際の支点となるピボット位置に基づいてピボット位置を通る平面を障害物表面として設定する場合と異なり、ピボット位置に対して任意の位置に接触禁止空間を設定することができる。これにより、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させることができる。また、教示部を用いて教示された教示点に基づいて、接触禁止物の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間を設定することにより、様々な形状および大きさの接触禁止物に対して、適した形状および大きさの接触禁止空間を容易に設定することができる。これらの結果、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することが可能な手術支援ロボットの制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記のように、医療器具およびアームが接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による手術支援システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータのアームの構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの操作部の構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図10】アームの回転軸および直動軸を示す図である。
【
図11】並進移動機構部および医療器具の回転軸および直動軸を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態による接触禁止空間の一例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態による接触禁止空間の設定画面の一例を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態による接触禁止空間の設定手順を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の一実施形態による接触禁止空間の確認手順を説明するためのフローチャートである。
【
図16】本発明の一実施形態による接触禁止空間の確認を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1~
図15を参照して、一実施形態による手術支援システム100の構成について説明する。手術支援システム100は、患者P側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。なお、医療用マニピュレータ1は、特許請求の範囲の「手術支援ロボット」および「患者側装置」の一例である。また、遠隔操作装置2は、特許請求の範囲の「操作者側装置」の一例である。
【0017】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。操作用マニピュレータアーム21は、医療器具4に対する操作量を受け付ける。モニタ24は、内視鏡6により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサにより術者の頭部を検知することにより医療用マニピュレータ1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、医療用マニピュレータ1に送信される。なお、タッチパネル23は、特許請求の範囲の「入力部」の一例である。
【0018】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが設けられている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。
【0019】
また、医療用台車3には、入力装置33が設けられている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。なお、入力装置33は、特許請求の範囲の「入力部」の一例である。
【0020】
図1および
図2に示す医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。
図1に示すように、医療用マニピュレータ1は、手術台5上の患者Pに対して手術を行うように構成されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い棒形状(長尺形状)を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の根元部が、アームベース内のスライド用ベルト(図示せず)に連結されている。スライド用ベルトは、アームベース内に設けられている複数のプーリと駆動モータ(図示せず)に張架され、スライド用ベルトが回動することで、各々のアーム60の根本部が移動できるように構成されている。つまり、制御部31からの指令に基づき、アームベース50は、各々のアーム60の間隔を調整することができる。また、複数のアーム60は、折り畳まれた姿勢(収納姿勢)をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、図示しない滅菌ドレープにより覆われて使用される。
【0021】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50を移動させる。具体的には、ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させるように構成されている。
【0022】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。
【0023】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、医療器具4が取り付けられている。医療器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、内視鏡6(
図6参照)などを含む。なお、内視鏡6は、特許請求の範囲の「教示部材」および「医療器具」の一例である。
【0024】
図3に示すように、インストゥルメントには、アーム60のホルダ71に設けられたサーボモータM2(図示せず)によって駆動される被駆動ユニット4aが設けられている。また、インストゥルメントの先端には、エンドエフェクタの一例として鉗子4bが設けられている。なお、エンドエフェクタは、関節を有する器具として、鉗子、ハサミ、グラスバー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステーブルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤーなどを含む。また、エンドエフェクタは、関節を有しない器具として、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィスなどを含む。なお、鉗子4bは、2つのエンドエフェクタ部材4b1および4b2を有している。
【0025】
また、
図4に示すように、インストゥルメントは、エンドエフェクタ部材4b1および4b2の基端側をJ11軸周りに回転可能に支持する第1支持体4eと、第1支持体4eの基端側をJ10軸周りに回転可能に支持する第2支持体4fと、第2支持体4fの基端側に接続されるシャフト4cとを含む。被駆動ユニット4aと、シャフト4cと、第2支持体4fと、第1支持体4eと、鉗子4bとは、Za方向に沿って配置されている。J11軸は、シャフト4cが延びる方向(Za方向)に対して直交する。また、J10軸は、シャフト4cが延びる方向においてJ11軸と離間しかつシャフト4cが延びる方向およびJ11軸に対して直交する。
【0026】
第1支持体4eには、J11軸の回転軸線R1周りに回転するように鉗子4bが取り付けられている。また、第2支持体4fは、第1支持体4eをJ10軸について回転可能に支持している。つまり、第2支持体4fには、J10軸の回転軸線R2周りに回転するように第1支持体4eが取り付けられている。また、第1支持体4eの先端側(Za1方向側)の部分は、U字形状を有している。第1支持体4eのU字形状の先端側の部分の回転軸線R1方向における中央部にツールセンタポイント(TCP1、クレビス)が設定されている。
【0027】
また、
図6に示すように、内視鏡6のTCP2は、内視鏡6の先端に設定されている。内視鏡6は、アーム60の先端側に取り付けられ、手術部位の撮影を行う。内視鏡6は、たとえば、ステレオカメラを有しており、手術部位を3D画像として撮影することが可能である。
【0028】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0029】
図3に示すように、アーム60は、アーム部61(ベース部62、リンク部63、関節部64)と、アーム部61の先端に設けられる並進移動機構部70とを含む。アーム60は、アーム60の根元側(アームベース50)に対して先端側を3次元に移動させるように構成されている。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。
【0030】
並進移動機構部70は、アーム部61の先端側に設けられるとともに医療器具4が取り付けられている。また、並進移動機構部70は、医療器具4を患者Pに挿入する方向に並進移動させる。また、並進移動機構部70は、医療器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、医療器具4を保持するホルダ71が設けられている。ホルダ71には、サーボモータM2(
図9参照)が収容されている。サーボモータM2は、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるように構成されている。被駆動ユニット4aの回転体が回転されることにより、鉗子4bが動作される。
【0031】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。また、アーム部61は、アーム部61をアームベース50に取り付けるためのベース部62と、ベース部62に連結された複数のリンク部63とを含む。複数のリンク部63同士は、関節部64により連結されている。
【0032】
並進移動機構部70は、ホルダ71をZa方向に沿って並進移動させることにより、ホルダ71に取り付けられた医療器具4をZa方向(シャフト4cが延びる方向)に沿って並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70は、アーム部61の先端に接続される基端側リンク部72と、先端側リンク部73と、基端側リンク部72と先端側リンク部73との間に設けられる連結リンク部74とを含む。また、ホルダ71は、先端側リンク部73に設けられている。
【0033】
そして、並進移動機構部70の連結リンク部74は、基端側リンク部72に対して、先端側リンク部73を、Za方向に沿って相対的に移動させる倍速機構として構成されている。また、基端側リンク部72に対して先端側リンク部73がZa方向に沿って相対的に移動されることにより、ホルダ71に設けられた医療器具4が、Za方向に沿って並進移動するように構成されている。また、アーム部61の先端は、基端側リンク部72を、Za方向に直交するX方向を軸として回動させるように基端側リンク部72に接続されている。
【0034】
また、
図5に示すように、医療用マニピュレータ1は、アーム60に取り付けられ、アーム60を操作する操作部80を備えている。操作部80は、イネーブルスイッチ81と、ジョイスティック82とスイッチ部83とを含む。イネーブルスイッチ81は、ジョイスティック82およびスイッチ部83によるアーム60の移動を許可または不許可とする。また、イネーブルスイッチ81は、操作者(看護師、助手など)が操作部80を把持して押下されることによりアーム60による医療器具4の移動を許可する状態となる。また、イネーブルスイッチ81は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。ジョイスティック82は、アーム60の移動方向を操作可能に構成されている。なお、操作部80は、特許請求の範囲の「教示部」の一例である。
【0035】
また、スイッチ部83は、医療器具4の長手方向に沿った医療器具4を患者Pに挿入する方向側に医療器具4を移動させるスイッチ部83aと、医療器具4を患者Pに挿入する方向と反対側に医療器具4を移動させるスイッチ部83bとを含む。スイッチ部83aとスイッチ部83bとは、共に、押しボタンスイッチから構成されている。スイッチ部83は、操作部80の外周面80aの両側に設けられている。具体的には、スイッチ部83(スイッチ部83aおよびスイッチ部83b)は、操作部80の両側面に一対設けられている。
【0036】
また、
図5に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4の移動の支点(
図8参照)となるピボット位置PPを教示するピボットボタン85を含む。ピボットボタン85は、操作部80の面80bに、イネーブルスイッチ81に隣り合うように設けられている。そして、内視鏡6(
図6参照)の先端部6aまたはピボット教示部材7(
図7参照)の先端部7aが、患者Pの体表面Sに挿入されたトロカールTの挿入位置に対応する位置まで移動された状態で、ピボットボタン85が押下されることによりピボット位置PPが教示され、記憶部32に記憶される。なお、ピボット位置PPの教示において、ピボット位置PPは、1つの点(座標)として設定され、ピボット位置PPの教示は、医療器具4の方向を設定するものではない。ピボットボタン85は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。なお、ピボット教示部材7は、特許請求の範囲の「教示部」の一例である。
【0037】
図7に示すように、ピボット教示部材7は、アーム60の先端側に取り付けられ医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PP(
図8参照)を教示する。
【0038】
また、
図1に示すように、複数のアーム60のうちの一つのアーム60(たとえば、アーム60c)には内視鏡6が取り付けられ、残りのアーム60(たとえば、アーム60a、60bおよび60d)には、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられる。具体的には、手術において、4つのアーム60のうちの1つのアーム60に内視鏡6が取り付けられ、3つのアーム60に内視鏡6以外の医療器具4(鉗子4bなど)が取り付けられる。そして、内視鏡6が取り付けられているアーム60に対して、内視鏡6が取り付けられた状態でピボット位置PP1が教示される。また、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられるアーム60に対して、ピボット教示部材7が取り付けられた状態でピボット位置PP2が教示される。なお、内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのアーム60のうちの、中央に配置される2つのアーム60(アーム60bおよび60c)のうちのいずれかに取り付けられる。すなわち、ピボット位置PPは、複数のアーム60毎に個別に設定される。
【0039】
また、
図5に示すように、操作部80の面80bには、アーム60の位置を最適化するためのアジャストメントボタン86が設けられている。内視鏡6が取り付けられたアーム60に対するピボット位置PPの教示後、アジャストメントボタン86が押下さえることにより、他のアーム60(アームベース50)の位置が最適化される。アジャストメントボタン86は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。
【0040】
また、
図5に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4(または内視鏡6)を並進移動させるモードと、回転移動させるモードとを切り替えるモード切替ボタン84を含む。また、モード切替ボタン84の近傍には、モードインジケータ84aが設けられている。モードインジケータ84aは、切り替えられたモードを表示する。具体的には、モードインジケータ84aが点灯(回転移動モード)または消灯(並進移動モード)されることにより、現在のモード(並進移動モードまたは回転移動モード)が表示される。
【0041】
また、モードインジケータ84aは、ピボット位置PPが教示されたことを表示するピボット位置インジケータを兼ねている。
【0042】
アーム60を並進移動させるモードでは、医療器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、アーム60が移動される。また、アーム60を回転移動させるモードでは、ピボット位置PPが教示されていない時は、鉗子4bを中心に回転移動し、ピボット位置PPが教示されている時は、ピボット位置PPを支点として医療器具4が回転移動するように、アーム60が移動される。なお、医療器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入された状態で、医療器具4が回転移動される。
【0043】
また、
図9に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0044】
また、
図9に示すように、並進移動機構部70には、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM2と、医療器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE2およびエンコーダE3と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE2およびエンコーダE3は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0045】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0046】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪(図示せず)の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機(図示せず)およびブレーキ(図示せず)とが設けられている。エンコーダE5は、サーボモータM5の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0047】
また、医療用台車3のスロットル部34aには、ポテンショメータP1(
図1参照)が設けられており、スロットル部34aの捻りに応じてポテンショメータP1で検出した回転角に基づき、前輪のサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の図示しない後輪は、双輪形式であり、操作ハンドル34の左右(R方向)の回動に基づき、後輪は操舵される。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、ポテンショメータP2(
図2参照)が設けられており、医療用台車3の後輪には、サーボモータM6とエンコーダE6と図示しない減速機が設けられている。減速機は、サーボモータM6の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。操作ハンドル34の左右(R方向)の回動に応じてポテンショメータP2で検出した回転角に基づき、サーボモータM6は駆動される。すなわち、操作ハンドル34の左右(R方向)の回動による後輪の操舵は、サーボモータM6によりパワーアシストされるように構成されている。
【0048】
また、医療用台車3は、前輪が駆動されることにより、前後方向に移動する。また、医療用台車3の操作ハンドル34が回動されることにより、後輪が操舵されて、医療用台車3が左右方向に回動する。
【0049】
医療用台車3の制御部31は、指令に基づいて複数のアーム60の移動を制御するアーム制御部31aと、指令に基づいてポジショナ40の移動および医療用台車3の前輪および後輪(図示せず)の駆動を制御するポジショナ制御部31bとを含む。アーム制御部31aには、アーム60を駆動するためのサーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0050】
また、アーム制御部31aには、医療器具4を駆動するためのサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。また、アーム制御部31aには、並進移動機構部70を並進移動するためのサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0051】
そして、遠隔操作装置2に入力された動作指令が、アーム制御部31aに入力される。アーム制御部31aは、入力された動作指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1(C2、C3)に出力する。サーボ制御部C1(C2、C3)は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1(M2、M3)に出力する。これにより、アーム60は、遠隔操作装置2に入力された動作指令に応じて移動する。
【0052】
また、アーム制御部31aは、操作部80のジョイスティック82からの入力信号に基づいてアーム60を操作する。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1に出力する。これにより、アーム60は、ジョイスティック82に入力された動作指令に応じて移動する。
【0053】
アーム制御部31aは、操作部80のスイッチ部83からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、スイッチ部83から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、アーム60は、スイッチ部83に入力された動作指令に応じて移動する。
【0054】
また、
図9に示すように、ポジショナ制御部31bには、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の前輪(図示せず)を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の後輪(図示せず)を駆動するサーボモータM6を制御するためのサーボ制御部C6が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C6には、サーボモータM6の回転角を検出するためのエンコーダE6が電気的に接続されている。
【0055】
また、入力装置33からの動作指令が、ポジショナ制御部31bに入力される。ポジショナ制御部31bは、入力装置33から入力された動作指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C4に出力する。サーボ制御部C4は、ポジショナ制御部31bから入力された位置指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM4に出力する。これにより、ポジショナ40は、入力装置33に入力された動作指令に応じて移動する。詳細な説明は省略するが、同様な手順により、ポジショナ制御部31bは、操作ハンドル34からの動作指令に応じて、医療用台車3を移動させる。
【0056】
また、手術支援システム100には、
図1に示すように、モニタカート8が設けられている。モニタカート8は、表示部8aを含んでいる。モニタカート8の表示部8aには、遠隔操作装置2のモニタ24に表示される画像と同じ画像表示される。つまり、モニタ24に表示されて術者が見ている画像を、医療用マニピュレータ1および患者Pの周辺にいる作業者(看護師、助手など)がモニタカート8の表示部8aにより見ることが可能である。
【0057】
(アームの軸)
次に、
図10を参照して、アーム60の軸について説明する。
【0058】
本実施形態では、
図10に示すように、アーム60の関節軸は、7軸以上(本実施形態では8軸)設けられている。具体的には、アーム60は、回転軸としてのJ1~J7軸と、直動軸としてのJ8軸とを備えている。J1~J7軸は、アーム部61の関節部64の回転軸に対応する。また、J7軸は、並進移動機構部70(
図3参照)の基端側リンク部72に対応する。J8軸は、並進移動機構部70の先端側リンク部73を基端側リンク部72に対してZa方向(
図3参照)に沿って相対的に移動させる軸に対応する。すなわち、
図9に示すサーボモータM1は、アーム60のJ1~J7軸に対応するように設けられている。また、サーボモータM3は、J8軸に対応するように設けられている。
【0059】
(医療器具(鉗子)の軸)
次に、
図11を参照して、医療器具4(鉗子4b)の軸について説明する。
【0060】
図11に示すように、医療器具4(鉗子4b)は、シャフト4cの回転軸(シャフト4cが延びる方向に沿った軸)としてのJ9軸と、シャフト4cに接続される第2支持体4fの回転軸としてのJ10軸と、第1支持体4eに対して鉗子4bが回転する軸としてのJ11軸と、鉗子4bの開閉軸としてのJ12軸とを備えている。なお、アーム60のホルダ71に設けられたサーボモータM2は、複数(たとえば、4個)設けられており、複数のサーボモータM2によって、被駆動ユニット4aが駆動される。これにより、J9軸~J12軸周りに、医療器具4が駆動される。
【0061】
(アームの接触禁止制御を行うための制御部の構成)
次に、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60を動作させる接触禁止制御のための制御部31の具体的な構成について説明する。制御部31は、操作用マニピュレータアーム21によって受け付けられた操作に基づいて医療器具4を動作させる制御を行う。
【0062】
制御部31は、医療器具4が取り付けられるアーム60を動作させる制御を行う。また、制御部31は、内視鏡6またはピボット教示部材7と、操作部80とを用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止物(患者P)の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間VPCを設定する。また、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60を動作させる接触禁止制御を行う。なお、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60およびアームベース50を動作させて接触禁止制御を行ってもよい。
【0063】
制御部31は、操作用マニピュレータアーム21により受け付けられた術者の操作指令値、ポジショナ40のエンコーダE4から抽出した回転角、および内視鏡6を保持したアーム60のエンコーダE1およびE3から抽出した回転角、に基づき医療器具4およびアーム60の姿勢を算出する。そして、算出された医療器具4およびアーム60の姿勢が接触禁止空間VPC内に入る場合には、接触禁止空間VPC内であることを通知して、操作を受け付けずエンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角は現在値を維持する制御を行うか、または、医療器具4およびアーム60が接触禁止空間VPC内に入らないように、アーム60の経路を変更して、医療器具4を動作させる制御を行う。また、制御部31は、操作部80により受け付けられた操作者の操作指令値と、ポジショナ40のエンコーダE4から抽出した回転角に基づき医療器具4およびアーム60の姿勢を算出する。そして、算出された医療器具4およびアーム60の姿勢が接触禁止空間VPC内に入る場合には、接触禁止空間VPC内であることを通知するが、操作部80の操作指令値に基づいて医療器具4およびアーム60を動作させる制御を行う。つまり、制御部31は、操作用マニピュレータアーム21によりアーム60を動作させる場合は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60を動作させる接触禁止制御を行う。一方、制御部31は、操作部80によりアーム60を動作させる場合は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入る場合であっても、操作部80の操作に基づきアーム60を動作させる制御を行う。
【0064】
図12に示すように、教示部としての内視鏡6(
図6参照)またはピボット教示部材7(
図7参照)と、操作部80(
図5参照)とは、アーム60が動作する空間内における教示点TP(TP1、TP2およびTP3)を教示する。具体的には、操作部80により操作されるアーム60の先端側に取り付けられたピボット教示部材7(
図7参照)、または、内視鏡6の先端部6a(
図6参照)により教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCが設定される。つまり、操作部80の操作により、アーム60の先端側に取り付けられたピボット教示部材7の先端部7a、または、内視鏡6の先端部6aを教示したい位置まで移動させて、教示点TPが教示される。
【0065】
ここで、本実施形態では、制御部31は、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)を用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止物(患者P)の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間VPCを設定する。また、本実施形態では、制御部31は、設定した接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60を動作させる接触禁止制御を行う。
【0066】
また、制御部31は、操作部80により操作されたアーム60を用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。具体的には、制御部31は、操作部80により操作されるアーム60の先端側に取り付けられたピボット教示部材7、または、内視鏡6の先端部6aにより教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。
【0067】
また、
図12に示すように、制御部31は、接触禁止物としての患者Pの周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。具体的には、制御部31は、患者Pの手術部位以外の部位の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。また、制御部31は、手術部位に応じてアーム60を配置する側(展開する側)の患者Pの部位の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。たとえば、腹部が手術部位である場合、制御部31は、患者Pの頭部の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。また、頭部が手術部位である場合、制御部31は、患者Pの上半身の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。
【0068】
また、
図12に示すように、制御部31は、患者Pの左肩と、右肩と、頭上から所定の距離離れた位置を含む教示点TPに基づいて、患者Pの頭部の周辺を覆う接触禁止空間VPCを設定する。具体的には、制御部31は、左肩位置の教示点TP1と、右肩位置の教示点TP2と、頭上5cm位置の教示点TP3に基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。
【0069】
また、制御部31は、教示点TP(TP1、TP2およびTP3)と、患者Pの体軸方向の長さ(カバー長)の入力操作とに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。また、接触禁止空間VPCを設定する際に、作業者による登録操作は、入力装置33およびタッチパネル23により受け付けられる。具体的には、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)により教示された教示点TPを登録操作は、入力装置33およびタッチパネル23により受け付けられる。また、患者Pの体軸方向の長さ(カバー長)の入力操作は、入力装置33およびタッチパネル23により受け付けられる。なお、入力装置33およびタッチパネル23のいずれから操作を受け付けるかを切り替え可能にしてもよい。
【0070】
また、
図12に示すように、制御部31は、接触禁止物(患者P)の周囲に半円筒型の接触禁止空間VPCを設定する。具体的には、制御部31は、患者Pの体軸方向に見て、両肩および頭上5cmの位置に基づいて半円筒形状の直径および半円筒形状の位置を決定し、カバー長に基づいて半円筒形状の肩位置からの軸方向の長さを決定して、接触禁止空間VPCを設定する。
【0071】
また、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60の少なくとも一方が入った場合に、警告を通知する制御を行う。具体的には、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60の少なくとも一方が入った場合に、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、警告を表示する制御を行う。また、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60の少なくとも一方が入った場合に、接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を遠隔操作装置2、医療用台車3およびモニタカート8に内蔵するスピーカ(図示せず)より発する制御を行う。
【0072】
また、制御部31は、接触禁止空間VPC内に複数の医療器具4および複数のアーム60が入らないように、複数のアーム60を動作させる接触禁止制御を行う。具体的には、制御部31は、複数のアーム60のそれぞれに取り付けられた複数の操作部80のうちの1つにより操作された複数のアーム60のうちの1つを用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCを設定するように構成されている。そして、制御部31は、接触禁止空間VPC内に複数の医療器具4および複数のアーム60が入らないように、複数のアーム60を動作させる接触禁止制御を行うように構成されている。
【0073】
(接触禁止空間設定手順)
次に、
図13および
図14を参照して、接触禁止空間VPCの設定手順について説明する。なお、接触禁止空間VPCの設定は、ピボット位置PPが設定される前に行われる。つまり、ピボット位置PPが設定されると、アーム60は、ピボット位置PPに動作が拘束されて、自由に動作できなくなるためである。
【0074】
図14のステップS1において、作業者により、接触禁止空間設定画面(
図13参照)を開く操作が行われる。なお、操作は、医療用台車3の入力装置33または遠隔操作装置2のタッチパネル23により受け付けられる。ステップS2において、作業者により、ピボット教示部材7がアーム60の先端に取り付けられる。なお、内視鏡6の先端を用いて教示点TPを教示する場合は、ピボット教示部材7はこの時点で取り付けられていなくてもよい。
【0075】
ステップS3において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの左肩の教示点TP1(
図12参照)の位置に移動させる。ステップS4において、作業者により、操作画面(
図13参照)から左肩位置の登録操作が行われる。
【0076】
ステップS5において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの右肩の教示点TP2(
図12参照)の位置に移動させる。ステップS6において、作業者により、操作画面(
図13参照)から右肩位置の登録操作が行われる。
【0077】
ステップS7において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの頭上5cmの教示点TP3(
図12参照)の位置に移動させる。ステップS8において、作業者により、操作画面(
図13参照)から頭上5cm位置の登録操作が行われる。
【0078】
ステップS9において、作業者によりカバー長の長さが入力されてカバー長の登録操作が行われる。そして、ステップS10において、表示される接触禁止空間VPCの空間形状が確認されて、接触禁止空間VPCの設定登録操作が行われる。
【0079】
(接触禁止空間確認手順)
次に、
図15および
図16を参照して、接触禁止空間VPCの確認手順について説明する。
【0080】
図15のステップS11において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの左肩位置CP1(
図16参照)に移動させる。左肩位置CP1は接触禁止空間VPC内であるため、制御部31は、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告する表示を行うよう制御する。また、制御部31は、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を発する制御を行う。ステップS12において、作業者は、警告が正常に通知されていることを確認する。
【0081】
ステップS13において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの右肩位置CP2(
図16参照)に移動させる。右肩位置CP2は接触禁止空間VPC内であるため、制御部31は、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告する表示を行うよう制御する。また、制御部31は、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を発する制御を行う。ステップS14において、作業者は、警告が正常に通知されていることを確認する。
【0082】
ステップS15において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの頭上5cm位置CP3(
図16参照)に移動させる。患者Pの頭上5cm位置CP3は接触禁止空間VPCであるため、制御部31は、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告する表示を行うよう制御する。また、制御部31は、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を発する制御を行う。ステップS16において、作業者は、警告が正常に通知されていることを確認する。
【0083】
ステップS17において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)を患者Pの顎位置CP4(
図16参照)に移動させる。顎位置CP4は接触禁止空間VPC内であるため、制御部31は、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告する表示を行うよう制御する。また、制御部31は、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を発する制御を行う。ステップS18において、作業者は、警告が正常に通知されていることを確認する。
【0084】
ステップS19において、作業者が操作部80を操作することにより、ピボット教示部材7の先端部7a(
図7参照)をピボット教示部材7の先端部7aが届く範囲内におけるカバー後端位置CP5(
図16参照)(頭部から方向の位置)に移動させる。カバー後端位置CP5は接触禁止空間VPC内であるため、制御部31は、遠隔操作装置2のモニタ24およびモニタカート8の表示部8aに、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告する表示を行うよう制御する。また、制御部31は、ピボット教示部材7が接触禁止空間VPC内に入ったことを警告するアラーム音を発する制御を行う。ステップS20において、作業者は、警告が正常に通知されていることを確認する。その後、接触禁止空間VPCの確認手順が終了する。その後、ピボット教示部材7によるピボット位置の教示作業が行われる。
【0085】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、制御部31は、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)を用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止物(患者P)の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間VPCを設定する。これにより、医療器具4を移動させる際の支点となるピボット位置PPに基づいてピボット位置PPを通る平面を障害物表面として設定する場合と異なり、ピボット位置PPに対して任意の位置に接触禁止空間VPCを設定することができる。これにより、医療器具4およびアーム60が接触禁止物(患者P)に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させることができる。また、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)を用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止物(患者P)の周囲の空間に仮想的な接触禁止空間VPCを設定することにより、様々な形状および大きさの接触禁止物に対して、適した形状および大きさの接触禁止空間VPCを容易に設定することができる。これらの結果、医療器具4およびアーム60が接触禁止物に対して接触するのを禁止するための接触禁止範囲を設定する自由度を向上させるとともに、接触禁止範囲を容易に設定することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、操作部80により操作されたアーム60を用いて教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。これにより、操作部80によりアーム60を操作してアーム60を移動させながら教示点TPを教示することができるので、教示点TPの位置を容易に精度よく教示することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、操作部80により操作されるアーム60の先端側に取り付けられたピボット教示部材7、または、内視鏡6の先端部6aにより教示された教示点TPに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。これにより、接触禁止空間VPDを設定するための教示点TPを教示するための専用の部材を別途設ける必要がないので、部品点数が増加するのを抑制することができるとともに、装置構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、接触禁止物としての患者Pの周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。これにより、患者Pを離被架(カバー)により覆って患者Pに医療器具4およびアーム60が接触しないようにする場合と異なり、仮想的な接触禁止空間VPCを患者Pの周辺に設定して患者Pに医療器具4およびアーム60が接触しないようにすることができる。これにより、医療器具4およびアーム60が離被架に接触することがない。その結果、医療器具4およびアーム60が離被架に接触することに起因して、医療器具4およびアーム60の破損や位置ズレが生じるのを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、患者Pの手術部位以外の部位の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。これにより、患者Pの手術部位に医療器具4を挿入することができるとともに、患者Pの手術部位以外の部位に医療器具4およびアーム60が接触するのを抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、患者Pの頭部の周辺を覆うように接触禁止空間VPCを設定する。これにより、患者Pの腹部に医療器具4を挿入して手術を行う場合に、患者Pの腹膜を剥離させる際などに、医療器具4を倒してアーム60を頭部側に位置させる場合において、アーム60が患者Pの頭部に接触するのを抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、患者Pの左肩と、右肩と、頭上から所定の距離離れた位置とを含む教示点TPに基づいて、患者Pの頭部の周辺を覆う接触禁止空間VPCを設定する。これにより、患者Pの肩の教示点から患者Pの頭部の左右方向の長さに応じた接触禁止空間VPCを設定することができる。また、患者Pの頭上から所定の距離離れた位置の教示点TPにより患者Pの頭部の高さに応じた接触禁止空間VPCを設定することができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)を用いて教示された教示点TPと、患者Pの体軸方向の長さの入力操作とに基づいて、接触禁止空間VPCを設定する。これにより、患者Pの体軸方向の長さの入力により個々の患者Pの頭部の体軸方向の長さに応じた接触禁止空間VPCを設定することができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、接触禁止物(患者P)の周囲に半円筒型の接触禁止空間VPCを設定する。これにより、接触禁止空間VPCを比較的単純な半円筒型にすることができるので、接触禁止空間VPCの設定処理が複雑化するのを抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60の少なくとも一方が入った場合に、警告を通知する制御を行う。これにより、接触禁止空間VPC内に入ったか否かを操作者が容易に確認することができる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80は、アーム60の移動方向を操作可能なジョイスティック82を含む。これにより、ジョイスティック82の操作によりアーム60を所望の位置に容易に移動させることができるので、アーム60を用いて接触禁止空間VPCを設定するための教示点TPを容易に教示することができる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80は、押下されることによりアーム60の移動を許可するイネーブルスイッチ81を含む。これにより、イネーブルスイッチ81の押下により操作部80によるアーム60の移動が許可されるので、イネーブルスイッチ81を押下していない場合に意図せずにアーム60が移動するのを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)により教示された教示点TPを登録操作するための入力装置33およびタッチパネル23を設ける。これにより、教示部(内視鏡6またはピボット教示部材7、操作部80)により教示された教示点TPを入力装置33およびタッチパネル23の操作により容易に登録することができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、アーム60は、7軸以上の関節軸を有する。ここで、医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PPを維持するためのアーム60の姿勢は、アーム60の6軸の関節軸の回転量(移動量)によって決定することができるので、アーム60の関節軸が7軸以上設けられていることによって、冗長軸が発生することになる。すなわち、ピボット位置PPを維持しながら、アーム60bが異なる姿勢をとることができる。そこで、アーム60の関節軸を7軸以上設けることによって、ピボット位置PPを維持しながら、アーム60cの干渉を抑制するようにアーム60bの姿勢を変更することができる。また、アーム60の関節軸を7軸以上設けることによって、ピボット位置PPを維持しながら、接触禁止空間VPCを回避するようにアーム60の姿勢を変更することができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、制御部31は、操作用マニピュレータアーム21によりアーム60を動作させる場合は、接触禁止空間VPC内に医療器具4およびアーム60が入らないように、アーム60を動作させる接触禁止制御を行う。また、制御部31は、操作部80によりアーム60を動作させる場合は、操作部80の操作に基づきアーム60を動作させる制御を行う。これにより、何らかの要因により意図せずに医療器具4またはアーム60が接触禁止空間VPC内に入ってしまった場合でも、操作部80によりアーム60を動作させることができるので、医療器具4またはアーム60を接触禁止空間VPCから出すことができる。
【0101】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0102】
たとえば、上記実施形態では、操作部によりアームを移動させて接触禁止空間を設定するための教示点を教示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アームまたはアームベースまたはポジショナに、レーザ光発生部と、カメラとを設けて、レーザ光発生部から発生するレーザを用いて教示点を教示し、カメラによるレーザ光の撮影に基づいて、制御部が教示点を取得するようにしてもよい。また、アームまたはアームベースまたはポジショナにカメラを設けて、カメラにより撮影した画像に基づいて、接触禁止物を認識し、認識した接触禁止物の周囲に接触禁止空間を設定してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、半円筒型の接触禁止空間を設定する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、接触禁止空間は、多角柱型の形状を有していてもよいし、円錐形状または多角錐形状を有していてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、接触禁止物が患者である構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、接触禁止物は、手術台や、手術台近傍の機器や、患者に装着される器具であってもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、患者の左肩と、右肩と、頭上から所定の距離離れた位置とを含む教示点に基づいて、患者の頭部の周辺を覆う接触禁止空間を設定する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、患者の左肩と、右肩と、頭上から所定の距離離れた位置とのうち、少なくとも1つを含む教示点に基づいて、患者の頭部の周辺を覆う接触禁止空間を設定してもよい。また、患者の耳、鼻、顎または頭頂部など、患者の他の部位の位置を教示点として用いて、接触禁止空間を設定してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、アームを移動させる操作部とは別個に設けられた入力装置およびタッチパネルからの操作に基づいて、接触禁止空間を設定するための教示点を登録する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アームを移動させる操作部に教示点を登録するためのボタンを設け、操作部の操作により接触禁止空間を設定するための教示点を登録する構成でもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、ピボット教示部材または内視鏡を用いて、接触禁止空間を設定するための教示点を教示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アームの先端に取り付けられた、手術を行う鉗子などの医療器具を用いて、接触禁止空間を設定するための教示点を教示する構成でもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、アームが4つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アームの数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、アーム部およびポジショナが7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム部およびポジショナが7軸多関節ロボット以外の軸構成(例えば、6軸や8軸)の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、全てのアームが7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、4つのアームのうちの一部が7軸多関節ロボットから構成されていてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、医療用マニピュレータが、医療用台車と、ポジショナと、アームベースと、アームとを備えている例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、医療用台車と、ポジショナと、アームベースは必ずしも必要なく、医療用マニピュレータがアームだけで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 医療用マニピュレータ(手術支援ロボット、患者側装置)
2 遠隔操作装置(操作者側装置)
4 医療器具
6 内視鏡(教示部材、医療器具)
7 ピボット教示部材(教示部)
23 タッチパネル(入力部)
31 制御部
33 入力装置(入力部)
60、60a、60b、60c、60d アーム
80 操作部(教示部)
81 イネーブルスイッチ
82 ジョイスティック
100 手術支援システム
PP ピボット位置
TP、TP1、TP2、TP3 教示点