(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120593
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】車輪位置検出装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B60C23/04 140E
B60C23/04 140D
B60C23/04 130E
B60C23/04 150H
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017577
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宣哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌紘
(72)【発明者】
【氏名】村山 孝二
(57)【要約】
【課題】車輪の位置を安定して検出可能な車輪位置検出装置を提供する。
【解決手段】車輪位置検出装置は、車体6にタイヤを含む複数の車輪5a~5dが取り付けられた車両1に適用される。車輪位置検出装置は、複数の車輪に設けられたタイヤセンサ2と、車体6における複数の車輪5a~5dと異なる距離となる位置に設けられ、タイヤセンサ2と通信可能な車載無線機31を含む車載機3と、を備える。タイヤセンサ2は、車載機3と通信可能なタイヤ無線機を含む。車載機3は、車載無線機31とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機31とタイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。そして、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtに基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
前記車体における複数の前記車輪と異なる距離となる位置に設けられ、前記タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
前記タイヤセンサは、前記車載機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または前記時間差に相関性を有する物理量に基づいて、前記車載無線機と前記タイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、前記車載機タイヤ距離に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、車輪位置検出装置。
【請求項2】
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差を前記物理量として算出し、前記位相差に基づいて前記車載機タイヤ距離を算出する、請求項1に記載の車輪位置検出装置。
【請求項3】
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の到来時間を前記時間差として算出し、前記到来時間に基づいて前記車載機タイヤ距離を算出する、請求項1に記載の車輪位置検出装置。
【請求項4】
前記車載機は、前記車体における前記車載機の位置および前記車載機タイヤ距離の大小関係に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項5】
前記車載機は、前記車載無線機から前記タイヤ無線機までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を前記車載機タイヤ距離として算出する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項6】
前記車載機は、前記車両の室内に配置され、
前記タイヤ無線機は、前記車載無線機に加えて自身を除く他の前記タイヤセンサと通信可能であって、前記タイヤ無線機同士の間で通信を行う際に前記タイヤ無線機同士の距離をタイヤ間距離として算出し、
前記車載機は、前記車載機タイヤ距離に加えて、前記タイヤセンサから取得した前記タイヤ間距離に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項7】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
前記車体に設けられ、前記タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
前記タイヤセンサは、自身を除く他の前記タイヤセンサおよび前記車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、前記タイヤ無線機同士の間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第1時間差または前記第1時間差に相関性を有する第1物理量に基づいて、前記タイヤ無線機同士の距離をタイヤ間距離として算出し、
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第2時間差または前記第2時間差に相関性を有する第2物理量に基づいて、前記車載無線機から前記タイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、前記車載機タイヤ距離および前記タイヤセンサから取得した前記タイヤ間距離に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、車輪位置検出装置。
【請求項8】
前記車載機は、前記車載機タイヤ距離に基づいて前記車載機との距離が最も小さい前記タイヤセンサを基準センサとして特定し、前記基準センサと前記基準センサ以外の他のセンサとの前記タイヤ間距離に基づいて、前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、請求項7に記載の車輪位置検出装置。
【請求項9】
前記タイヤセンサは、前記タイヤ無線機同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差を前記第1物理量として算出し、前記位相差に基づいて前記タイヤ間距離を算出する、請求項7または8に記載の車輪位置検出装置。
【請求項10】
前記タイヤセンサは、前記タイヤ無線機同士で通信を行う際の信号の到来時間を前記第1時間差として算出し、前記到来時間に基づいて前記タイヤ間距離を算出する、請求項7または8に記載の車輪位置検出装置。
【請求項11】
前記車載機は、前記車載機タイヤ距離の大小関係および前記タイヤ間距離の大小関係に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、請求項7ないし10のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項12】
前記タイヤセンサは、前記タイヤ無線機同士の距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を前記タイヤ間距離として算出する、請求項7ないし11のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項13】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
前記車体側に設けられ、前記タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
前記車両には、左右に設けられた乗降ドア用の電子鍵(KEY)を検知するための鍵検知用アンテナ(71A、71B)が設けられており、
前記タイヤセンサは、前記車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または前記時間差に相関性を有する物理量に基づいて、前記車載無線機と前記タイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、前記車載機タイヤ距離に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出し、さらに、前記タイヤセンサから送信される信号を前記鍵検知用アンテナが受信した際の電波強度に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出する、車輪位置検出装置。
【請求項14】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
前記車体側に設けられ、前記タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
前記タイヤセンサは、前記車載無線機および前記車両の利用者が携帯する携帯端末(8)と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
前記携帯端末は、前記タイヤ無線機と前記携帯端末との距離または前記タイヤ無線機から送信された信号の電波強度のうち少なくとも一方を特徴量として算出し、
前記車載機は、前記車載無線機と前記タイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または前記時間差に相関性を有する物理量に基づいて、前記車載無線機と前記タイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、前記車載機タイヤ距離および前記特徴量に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪の位置を検出する、車輪位置検出装置。
【請求項15】
前記タイヤセンサは、前記車輪の回転に伴って変化する第1加速度および第2加速度を出力する加速度センサ(22)を含み、
前記車載機は、前記第1加速度と前記第2加速度との関係に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出する、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車輪位置検出装置。
【請求項16】
前記車載機は、前記車両の前後方向において後輪よりも前輪の近くに配置され、前記車載機タイヤ距離が最も小さくなる前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を前輪として検出する、請求項15に記載の車輪位置検出装置。
【請求項17】
前記車載機は、前記車両の前後方向において前輪よりも後輪の近くに配置され、前記車載機タイヤ距離が最も小さくなる前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を後輪として検出する、請求項15に記載の車輪位置検出装置。
【請求項18】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪に設けられ、前記車輪の回転に伴って変化する第1加速度および第2加速度を出力する加速度センサ(22)とタイヤ無線機(24)とを含むタイヤセンサ(2)と、
車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
前記タイヤ無線機は、自身を除く他の前記タイヤ無線機および前記車載無線機と通信可能になっており、
前記タイヤセンサは、前記タイヤ無線機同士の間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または前記時間差に相関性を有する物理量に基づいて、前記タイヤ無線機同士の距離をタイヤ間距離として算出するとともに、前記車輪の周方向の任意の位置を0°として、前記加速度センサの検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が存在する位置を回転角度として検出し、
前記車載機は、
前記第1加速度と前記第2加速度との関係に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出し、
前記タイヤセンサが前記車輪の回転軸よりも前方または後方に位置する前記回転角度になっている状態で算出した前記タイヤ間距離の比較結果に基づいて、前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出する、車輪位置検出装置。
【請求項19】
前記車載機は、前記タイヤセンサが前記車輪の回転軸よりも前方に位置する前記回転角度になっている状態で算出した前記タイヤ間距離を比較し、前記タイヤ間距離が小さい前記車輪を後輪として検出し、前記タイヤ間距離が大きい前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を前輪として検出する、請求項18に記載の車輪位置検出装置。
【請求項20】
前記車載機は、前記タイヤセンサが前記車輪の回転軸よりも後方に位置する前記回転角度になっている状態で算出した前記タイヤ間距離を比較し、前記タイヤ間距離が小さい前記車輪を前輪として検出し、前記タイヤ間距離が大きい前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を後輪として検出する、請求項18に記載の車輪位置検出装置。
【請求項21】
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
車載無線機(31)を含む車載機(3)と、
複数の前記車輪に設けられ、前記車輪の回転に伴って変化する第1加速度および第2加速度を出力する加速度センサ(22)および前記車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含むタイヤセンサ(2)と、を備え、
前記タイヤセンサは、前記車輪の周方向の任意の位置を0°として、前記加速度センサの検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が存在する位置を回転角度として検出し、
前記タイヤ無線機は、前記車輪の回転軸の下方に位置する前記回転角度になっている第1状態で前記車両の後方に指向性を持つ電波を放射し、前記車輪の回転軸の上方に位置する前記回転角度になっている第2状態で前記車両の前方に指向性を持つ電波を放射し、
前記車載無線機は、前記車両の前後方向において前輪と後輪との間に配置され、
前記車載機は、
前記第1加速度と前記第2加速度との関係に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出し、
前記タイヤ無線機が前記第1状態および前記第2状態となる際の前記タイヤセンサと前記車載機との間の通信の成否に基づいて前記タイヤセンサが設けられた前記車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出する、車輪位置検出装置。
【請求項22】
前記車載機は、前記タイヤ無線機が前記第1状態で前記車載機との通信が成立し、前記第2状態で前記車載機との通信が不成立となる前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を前輪として検出する、請求項21に記載の車輪位置検出装置。
【請求項23】
前記車載機は、前記タイヤ無線機が前記第2状態で前記車載機との通信が成立し、前記第1状態で前記車載機との通信が不成立となる前記タイヤセンサが設けられた前記車輪を後輪として検出する、請求項21または22に記載の車輪位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体にタイヤを含む複数の車輪が取り付けられた車両に適用される車輪位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1には、各車輪の近くにRF検知器が設置され、各車輪に取り付けられたタイヤモニタが発した電波をRF検知器で受信した際の電波強度に基づいて、タイヤモニタが設けられた車輪の位置を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、タイヤモニタがタイヤとともに回転する。このため、タイヤモニタが発した電波をRF検知器で受信する際に、その電波強度が車輪の回転角度に応じて変動する。したがって、RF検知器とタイヤモニタとの距離が近くなるほど電波強度が高くなるとは限らず、RF検知器で受信する際の電波強度の大小関係だけでタイヤモニタが設けられた車輪の位置を安定して検出することは困難である。
【0005】
本開示は、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出可能な車輪位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
車体における複数の車輪と異なる距離となる位置に設けられ、タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
タイヤセンサは、車載機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
車載機は、車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機とタイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、車載機タイヤ距離に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出する。
【0007】
車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、信号の送受信間の時間差または当該時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離を用いてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。
【0008】
請求項7に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
車体に設けられ、タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
タイヤセンサは、自身を除く他のタイヤセンサおよび車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、タイヤ無線機同士の間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第1時間差または第1時間差に相関性を有する第1物理量に基づいて、タイヤ無線機同士の距離をタイヤ間距離として算出し、
車載機は、車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第2時間差または第2時間差に相関性を有する第2物理量に基づいて、車載無線機からタイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、車載機タイヤ距離およびタイヤセンサから取得したタイヤ間距離に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出する。
【0009】
車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差およびタイヤ無線機同士で通信を行う際の信号の送受信間の時間差は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、送受信間の時間差または当該時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離およびタイヤ間距離を用いてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。加えて、車載機タイヤ距離およびタイヤ間距離に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出すれば、例えば、各タイヤ無線機と車載無線機との距離差が小さい場合であっても、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を適切に検出することができる。
【0010】
請求項13に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
車体側に設けられ、タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
車両には、左右に設けられた乗降ドア用の電子鍵(KEY)を検知するための鍵検知用アンテナ(71A、71B)が設けられており、
タイヤセンサは、車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
車載機は、車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機とタイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、車載機タイヤ距離に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出し、さらに、タイヤセンサから送信される信号を鍵検知用アンテナが受信した際の電波強度に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出する。
【0011】
このように、信号の送受信間の時間差等に基づいて求めた車載機タイヤ距離を用いてタイヤセンサが設けられた車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。
【0012】
ここで、車両の左右の乗降ドアに鍵検知用アンテナが設けられている場合、タイヤ無線機と鍵検知用アンテナとの間での信号の送受信時の電波強度に基づいて、タイヤセンサが車両の左側および右側のいずれにあるかを検出可能である。このため、タイヤセンサから送信される信号を鍵検知用アンテナが受信した際の電波強度に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出することが望ましい。このような構成は、例えば、車載機が車両の左右の略中央に設けられ、車載機タイヤ距離だけでタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを判別が困難な場合に特に有効である。
【0013】
請求項14に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪に設けられたタイヤセンサ(2)と、
車体側に設けられ、タイヤセンサと通信可能な車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
タイヤセンサは、車載無線機および車両の利用者が携帯する携帯端末(8)と通信可能なタイヤ無線機(24)を含み、
携帯端末は、タイヤ無線機と携帯端末との距離またはタイヤ無線機から送信された信号の電波強度のうち少なくとも一方を特徴量として算出し、
車載機は、車載無線機とタイヤ無線機との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機とタイヤ無線機までの距離を車載機タイヤ距離として算出するとともに、車載機タイヤ距離および特徴量に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出する。
【0014】
このように、送受信間の時間差または当該時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離を用いてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。
【0015】
ここで、例えば、車両の利用者が乗降ドア近傍にいる場合、タイヤ無線機と乗員の携帯端末との間での信号の送受信に基づいて、両者の対応関係を特定することで、タイヤセンサが車両の左側および右側のいずれにあるかを検出可能である。このため、タイヤ無線機と携帯端末との距離またはタイヤ無線機から送信された信号の電波強度のうち少なくとも一方に基づいて、タイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出することが望ましい。このような構成は、例えば、車載機が車両の左右の略中央に設けられ、車載機タイヤ距離だけでタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを判別が困難な場合に特に有効である。
【0016】
請求項18に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪に設けられ、車輪の回転に伴って変化する第1加速度および第2加速度を出力する加速度センサ(22)とタイヤ無線機(24)とを含むタイヤセンサ(2)と、
車載無線機(31)を含む車載機(3)と、を備え、
タイヤ無線機は、自身を除く他のタイヤ無線機および車載無線機と通信可能になっており、
タイヤセンサは、タイヤ無線機同士の間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、タイヤ無線機同士の距離をタイヤ間距離として算出するとともに、車輪の周方向の任意の位置を0°として、加速度センサの検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が存在する位置を回転角度として検出し、
車載機は、
第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出し、
タイヤセンサが車輪の回転軸よりも前方または後方に位置する回転角度になっている状態で算出したタイヤ間距離の比較結果に基づいて、タイヤセンサが設けられた車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出する。
【0017】
タイヤ間距離および第1加速度および第2加速度との対応関係は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、タイヤ間距離および第1加速度と第2加速度との関係に基づいて、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。このような構成では、車両における車載機の位置を制限されないので、車載機の搭載の自由度を高めることができる。
【0018】
請求項21に記載の発明は、
車体(6)にタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
車載無線機(31)を含む車載機(3)と、
複数の車輪に設けられ、車輪の回転に伴って変化する第1加速度および第2加速度を出力する加速度センサ(22)および車載無線機と通信可能なタイヤ無線機(24)を含むタイヤセンサ(2)と、を備え、
タイヤセンサは、車輪の周方向の任意の位置を0°として、加速度センサの検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が存在する位置を回転角度として検出し、
タイヤ無線機は、車輪の回転軸の下方に位置する回転角度になっている第1状態で車両の後方に指向性を持つ電波を放射し、車輪の回転軸の上方に位置する回転角度になっている第2状態で車両の前方に指向性を持つ電波を放射し、
車載無線機は、車両の前後方向において前輪と後輪との間に配置され、
車載機は、
第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が左輪および右輪のいずれであるかを検出し、
タイヤ無線機が第1状態および第2状態となる際のタイヤセンサと車載機との間の通信の成否に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪が前輪および後輪のいずれであるかを検出する。
【0019】
第1加速度と第2加速度との関係は、電波強度の変動の影響を受けない。また、タイヤ無線機が第1状態および第2状態となる際のタイヤセンサと車載機との間の通信の成否は、電波強度の変動の影響が小さい。このため、第1加速度と第2加速度との関係およびタイヤセンサと車載機との間の通信の成否に基づいてタイヤセンサが設けられた車輪の位置を検出することで、タイヤセンサが設けられた車輪の位置を安定して検出することができる。
【0020】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式的な側面図である。
【
図2】第1実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式的な平面図である。
【
図6】第1実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の各タイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態の車載機による車載機タイヤ距離の算出方法を説明するための説明図である。
【
図9】各タイヤセンサが発する信号を車載機で受信した際の信号の電波強度を説明するための説明図である。
【
図10】第2実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態の各タイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式図である。
【
図13】
図12に示す車両におけるタイヤ間距離を説明するための説明図である。
【
図14】第3実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図15】第3実施形態の各タイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図16】第3実施形態の車載機による車載機タイヤ距離の算出方法を説明するための説明図である。
【
図17】第3実施形態の基準センサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図18】第3実施形態の他のタイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図19】第3実施形態の基準センサによるタイヤ間距離の算出結果を説明するための説明図である。
【
図20】第4実施形態の基準センサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図21】第4実施形態の他のタイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図22】第5実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式図である。
【
図23】鍵検知用アンテナを含む鍵検知装置のブロック構成図である。
【
図24】第5実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図25】第6実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式図である。
【
図27】第6実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図28】携帯端末が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図29】加速度センサの検出軸を説明するための説明図である。
【
図30】第7実施形態の車輪位置検出装置が適用される車両の模式図である。
【
図31】右輪に設置されたタイヤセンサの加速度センサの出力を説明するための説明図である。
【
図32】左輪に設置されたタイヤセンサの加速度センサの出力を説明するための説明図である。
【
図33】第7実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図34】第7実施形態に係る車載機の搭載位置の変形例を説明するための説明図である。
【
図35】車輪の回転角度と加速度センサの出力との関係を説明するための説明図である。
【
図36】後輪が所定の回転角度となる際のタイヤ間距離を説明するための説明図である。
【
図37】前輪が所定の回転角度となる際のタイヤ間距離を説明するための説明図である。
【
図38】第8実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図39】第8実施形態の各タイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図40】第8実施形態の各タイヤセンサが実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図41】第9実施形態に係るタイヤセンサのタイヤ無線機の指向性を説明するための説明図である。
【
図42】後輪のタイヤセンサと車載機との通信の成否を説明するための説明図である。
【
図43】前輪のタイヤセンサと車載機との通信の成否を説明するための説明図である。
【
図44】第9実施形態の車載機が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図45】第9実施形態のタイヤセンサが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態では、本開示の車輪位置検出装置をタイヤ空気圧監視システム(以下、TPMSという)に適用した例について説明する。各図面に示す上下、前後、左右を示す各矢印は、車両1における上下方向DR1、前後方向DR2、左右方向DR3を示している。
【0024】
図1、
図2に示すように、TPMSは、車両1に搭載されるもので、タイヤセンサ2、TPMS用の電子制御装置(以下、TPMS-ECUという)等を含む車載機3およびメータ4を備えている。
【0025】
TPMSは、車輪位置を検出する車輪位置検出装置を含んでいる。この車輪位置検出装置は、TPMSに備えられる各タイヤセンサ2および車載機3を用いるとともに、ブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECU10という)からの情報を利用して車輪位置検出を行う。ブレーキECU10では、各車輪5a~5dに対応して備えられた車輪角度センサ11a~11dの検出信号から得られる車輪速度パルスを取得しており、車輪位置検出のためにその情報を車載機3に伝えるようにしている。
【0026】
車輪角度センサ11a~11dは、一般的には車輪速度センサと呼ばれているものである。このセンサは、車軸と共に回動する歯車の歯位置に応じた信号を車輪速度パルスとして出力するものであるが、ここでは各車輪5a~5dの回転軸CLに対してタイヤセンサ2が存在する角度を取得するために用いていることから、“車輪角度センサ”と呼ぶ。また、以下では、4つのタイヤセンサ2を区別して説明する場合等に、4つのタイヤセンサ2をタイヤセンサ2A、2B、2C、2Dと表記することがある。さらに、4つの車輪5a~5dを区別して説明する場合等に、4つの車輪5a~5dを左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRと表記することがある。
【0027】
タイヤセンサ2は、各車輪5a~5dに取り付けられるもので、車輪5a~5dに取り付けられたタイヤの空気圧等を検出するとともに、その検出結果を示すタイヤ空気圧に関する情報をフレーム内に格納して送信する。
図3に示すように、タイヤセンサ2は、タイヤバルブVに対して取り付けられている。車載機3は、車両1における車体6側に取り付けられるもので、タイヤセンサ2から送信されたフレームを受信するとともに、その中に格納された情報に基づいて各種処理や演算等を行うことでタイヤ空気圧検出を行う。タイヤセンサ2は、例えばFSK(周波数偏移変調)によりフレームを送信し、車載機3は、そのフレームを受信して復調することでフレーム内の情報を読取っている。
【0028】
図4に示すように、タイヤセンサ2は、センシング部21、加速度センサ22、第1マイクロコンピュータ23、およびタイヤ無線機24を備えており、図示しない電池からの電力供給に基づいて各部が駆動される。
【0029】
センシング部21は、圧力センサ21aや温度センサ21bを備え、タイヤ空気圧に応じた検出信号や温度に応じた検出信号を出力する。加速度センサ22は、タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dでのタイヤセンサ2自身の位置検出、つまりタイヤセンサ2の回転角度θの検出や車速の検出を行うために用いられる。
【0030】
加速度センサ22は、第1加速度および第1加速度とは異なる第2加速度を検出可能に構成されている。具体的には、加速度センサ22は、2軸加速度センサで構成されている。加速度センサ22は、例えば、車輪5a~5dの回転時に車輪5a~5dに働く加速度のうち、各車輪5a~5dの径方向、つまり周方向に垂直な双方向の加速度に応じた検出信号を第1加速度として出力する。また、加速度センサ22は、例えば、車輪5a~5dの回転時に車輪5a~5dに働く加速度のうち、各車輪5a~5dの周方向の加速度に応じた検出信号を第2加速度として出力する。
【0031】
第1マイクロコンピュータ23は、タイヤセンサ2の制御部を構成し、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第1マイクロコンピュータ23は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。メモリには、各タイヤセンサ2を特定するための固有の識別情報と自車両を特定するための車両固有の識別情報とを含む個別のID情報が格納されている。
【0032】
例えば、第1マイクロコンピュータ23は、圧力センサ21aや温度センサ21bの検出信号を受け取り、それを信号処理するとともに必要に応じて加工し、それらタイヤ空気圧に関する情報を各タイヤセンサ2のID情報とともにフレーム内に格納する。また、第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出信号をモニタし、各タイヤセンサ2の角度や車両1の走行中であるか否かを判定する車両走行判定を行っている。そして、第1マイクロコンピュータ23は、フレームを作成すると、車両走行判定の結果に基づいて、タイヤ無線機24から車載機3に向けてフレーム送信を行う。以下、タイヤ空気圧に関する情報を単にタイヤ情報とも呼ぶ。具体的には、第1マイクロコンピュータ23は、車両1が走行中に、所定のタイミングで繰り返しフレーム送信を行っている。第1マイクロコンピュータ23は、車両1が走行中であるか否かを、例えば、加速度センサ22の検出結果に基づいて判定する。
【0033】
また、加速度センサ22によって各車輪5a~5dの回転に応じた検出信号を出力させていることから、走行時には、その検出信号に重力加速度成分が含まれることになり、車輪回転に応じた振幅を有する信号となる。このため、この振幅に基づいて加速度センサ22の位置、すなわちタイヤセンサ2の角度を把握できる。
【0034】
本実施形態のタイヤセンサ2は、第1マイクロコンピュータ23によって、加速度センサ22の検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が存在する位置の角度を回転角度θとして算出する。例えば、回転角度θは、タイヤセンサ2の車輪5a~5dの中心軸を中心として周方向の任意の角度を0°、例えばタイヤセンサ2が最下方位置に位置しているときを0°としたときのタイヤセンサ2が位置している角度として定義される。この場合、タイヤセンサ2が頂点に位置しているときが180°、水平位置に位置しているときがそれぞれ90°、270°として、回転角度θを表すことができる。本実施形態では、タイヤセンサ2が最下方位置に位置しているときの回転角度θを0°とする。
【0035】
第1マイクロコンピュータ23は、後述の車載無線機31とタイヤ無線機24との間の距離を算出するために必要な情報や処理等を要求する要求信号を受信すると、要求信号に対する応答信号をタイヤ無線機24から車載機3に向けて送信する。具体的には、第1マイクロコンピュータ23は、要求信号を受信すると、タイヤ情報等をフレーム内に格納し、当該フレームを含む信号に異なる周波数成分を重畳させたものを応答信号として送信する。
【0036】
タイヤ無線機24は、第1送受信回路241および第1通信アンテナ242を備える。第1送受信回路241は、第1通信アンテナ242を通じて、車載機3と双方向に通信を行う通信回路である。第1送受信回路241は、2.4GHz帯の電波を用いたBLE等の通信方式に基づいて無線通信を行う。BLEは、Bluetooth(登録商標) Low Energy の略称である。なお、第1送受信回路241は、BLE以外の通信方式に基づいて無線通信を行うようになっていてもよい。
【0037】
第1通信アンテナ242は、車載機3との間で双方向に通信を行うためのアンテナである。タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24を備えることで、タイヤセンサ2から車載機3への単方向の通信に限らず、車載機3との間で双方向に通信が可能になっている。
【0038】
このように構成されるタイヤセンサ2は、タイヤ空気圧やタイヤ内温度を検出し、車両1が走行中の場合に、タイヤセンサ2の角度が所定角度になるタイミングで繰り返し、各タイヤセンサ2に備えられた第1通信アンテナ242を通じてフレーム送信を行う。これに加えて、タイヤセンサ2は、車載機3からの要求信号を受信する度に、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。
【0039】
一方、車載機3は、車体6に備えられている。
図5に示すように、車載機3は、車載無線機31および第2マイクロコンピュータ33等を備えている。車載機3は、CAN(Controller Area Network)等の車内LAN(Local Area Network)を通じて、ブレーキECU10から車輪速度パルスを取得することで各車輪5a~5dと共に回転させられる歯車の歯のエッジ数もしくは歯数で示される歯位置を取得している。なお、車載機3は、その構成の一部に車両1の外部に配置される機器(例えば、外部サーバ)が含まれていてもよい。
【0040】
車載無線機31は、タイヤセンサ2等と無線で通信するための機器である。車載無線機31は、車体6における各車輪5a~5dと異なる距離となる位置に設けられている。
図2に示すように、本実施形態の車載無線機31は、車体6のうち右前輪FRの前方に位置する部位に配置されている。車載無線機31は、右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt2が最も小さく、左後輪RLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt3が最も大きい。また、車載機3は、左前輪FLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt1が右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt4よりも小さい。車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24までの距離は、以下の関係式F1で示す関係になっている。
Lvt2<Lvt1<Lvt4<Lvt3 ・・・(F1)
車載無線機31は、第2通信アンテナ311および第2送受信回路312を備える。第2通信アンテナ311は、各タイヤセンサ2との間で双方向に通信を行うためのアンテナである。第2通信アンテナ311は、各タイヤセンサ2から送られてくるフレームの受信に加えて、各タイヤセンサ2への要求信号の送信にも用いられる。第2通信アンテナ311は、本体に内蔵された内部アンテナであってもよいし、本体から配線を引き伸ばした外部アンテナであってもよい。
【0041】
第2送受信回路312は、第2通信アンテナ311を通じて各タイヤセンサ2と双方向に通信を行う通信回路である。第2送受信回路312は、2.4GHz帯の電波を用いたBLE等の通信方式に基づいて無線通信を行う。第2送受信回路312は、第2通信アンテナ311によって受信された各タイヤセンサ2からの送信フレームを入力し、そのフレームを第2マイクロコンピュータ33に送る入力部としての機能を果たす。第2送受信回路312は、第2通信アンテナ311を通じてフレームを受信すると、その受信した信号を第2マイクロコンピュータ33に伝えている。また、第2送受信回路312は、車両徐行中や駐停車中において、所定のタイミングで車載無線機31とタイヤ無線機24との間の距離を算出するために必要な情報や処理等を要求する測距等を要求する要求信号を送信する。
【0042】
第2マイクロコンピュータ33は、車載機3における制御部を構成し、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第2マイクロコンピュータ33は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、車輪位置検出処理およびタイヤ空気圧検出処理を実行する。
【0043】
車輪位置検出処理では、タイヤセンサ2が車輪5a~5dのいずれに取り付けられたものであるかを特定する車輪位置検出が行われる。第2マイクロコンピュータ33は、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差または時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機31とタイヤ無線機24までの距離を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。第2マイクロコンピュータ33は、車載機タイヤ距離Lvtに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。なお、この車輪位置検出処理の具体的な内容については後で詳細に説明する。
【0044】
タイヤ空気圧検出処理では、各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dのタイヤ空気圧の検出等を行う。具体的には、第2マイクロコンピュータ33は、車輪位置検出の結果に基づいて、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。その後は、各タイヤセンサ2からの送信フレーム内に格納されたID情報およびタイヤ情報に基づいて所定温度でのタイヤ空気圧換算値を算出することで、各車輪5a~5dのタイヤ空気圧検出を行う。そして、タイヤ空気圧検出結果に応じた電気信号をCAN等の車内LANを通じてメータ4に出力する。例えば、第2マイクロコンピュータ33は、各車輪5a~5dのタイヤ空気圧を示す信号をメータ4に出力する。また、第2マイクロコンピュータ33は、タイヤ空気圧を所定の判定閾値と比較することでタイヤ空気圧の低下を検知し、タイヤ空気圧の低下を検知するとその旨の信号をメータ4に出力する。これにより、4つの車輪5a~5dのタイヤ空気圧もしくはいずれかのタイヤ空気圧が低下したことがメータ4に伝えられ、メータ4を通じてそれが表示されるようにしている。
【0045】
メータ4は、車室内に備えられた表示部として各種情報を表示する役割を果たすものである。メータ4は、電源オン時、具体的にはアクセサリー(以下、ACCという)スイッチもしくはイグニッションスイッチ等の発進スイッチがオンされているときを電源オンとして、電源オンの際に各種情報を表示する。メータ4による表示は、基本的には電源オンのとき行われる。
【0046】
メータ4は、ドライバが視認可能な場所に配置され、例えば車両1におけるインストルメントパネル内に設置されるマルチインフォメーションディスプレイやナビゲーション装置のディスプレイ等によって構成される。メータ4は、例えば車載機3における第2マイクロコンピュータ33からタイヤ空気圧が低下した旨を示す信号が送られてくると、該当車輪を特定しつつタイヤ空気圧の低下を示す表示を行うことでドライバに該当車輪のタイヤ空気圧の低下を報知する。
【0047】
次に、本実施形態のTPMSで行われる車輪位置検出処理について
図6、
図7に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図6に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0048】
図6に示すように、車載機3は、ステップS1100にて、車載機タイヤ距離Lvtを算出するために必要な処理を要求する要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0049】
一方、
図7に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS1200にて、車載無線機31から要求信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信した場合にステップS1210に移行する。なお、タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信するまでステップS1200の処理を繰り返す。
【0050】
タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信すると、ステップS1210にて、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。この応答信号には、応答信号の送信時の信号の位相に関する情報が含まれている。なお、応答信号には、タイヤ空気圧に関する情報が格納されたフレームが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0051】
図6に示すように、車載機3は、ステップS1110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS1120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS1110の処理を繰り返す。
【0052】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS1120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。具体的には、車載機3は、応答信号の送信時の信号の位相と応答信号の受信時の信号の位相との差を位相差PDとして算出する。応答信号の送信時の信号の位相は、応答信号に含まれている情報である。
【0053】
信号の位相差PDは、車載無線機31とタイヤ無線機24との間の距離に比例し、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に相関性を有する。
【0054】
車載機3は、信号の位相差PDと車載無線機31とタイヤ無線機24との間の距離との関係を規定した制御マップまたは関係式を用いて、信号の位相差PDから車載機タイヤ距離Lvtを算出する。この演算で用いる制御マップまたは関係式は、シミュレーションや実機テスト等によって予め算出することができる。
【0055】
ここで、
図8は、車両1の走行時に車載機3で算出した車載無線機31と各タイヤ無線機24との距離と各車輪5a~5dの回転角度θとの関係を示している。
図8では、車載無線機31と左前輪FLのタイヤ無線機24との距離の変化を実線で示し、車載無線機31と右前輪FRのタイヤ無線機24との距離の変化を破線で示している。また、
図8では、車載無線機31と左後輪RLのタイヤ無線機24との距離の変化を一点鎖線で示し、車載無線機31と右後輪RRのタイヤ無線機24との距離の変化を二点鎖線で示している。
【0056】
図8によれば、右前輪FRのタイヤ無線機24、左前輪FLのタイヤ無線機24、右後輪RRのタイヤ無線機24、左後輪RLのタイヤ無線機24の順に車載機3との距離が大きくなっていることが判る。
【0057】
但し、タイヤ無線機24は、タイヤバルブVに取り付けられている。このため、車載機3と各車輪5a~5dのタイヤ無線機24との距離が、車輪5a~5dの回転角度θに応じて若干変動する。
【0058】
これらを加味して、本実施形態の車載機3は、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。車載機3は、例えば、各車輪5a~5dが一回転するまでの間に、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。
【0059】
続いて、車載機3は、ステップS1130にて、車体6における車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいて、各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。
【0060】
具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2の位置を右前輪FRとし、車載機タイヤ距離Lvtが2番目に小さくなるタイヤセンサ2の位置を左前輪FLとする。また、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も大きくなるタイヤセンサ2の位置を左後輪RLとし、車載機タイヤ距離Lvtが2番目に大きくなるタイヤセンサ2の位置を右後輪RRとする。この結果に基づいて、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0061】
ここで、
図9は、車両1の走行時に各タイヤセンサ2が発する信号を車載機3で受信した際の信号の電波強度と各車輪5a~5dの回転角度θとの関係を示している。
図9では、左前輪FLのタイヤセンサ2からの信号の電波強度の変化を実線で示し、右前輪FRのタイヤセンサ2からの信号の電波強度の変化を破線で示している。また、
図9では、左後輪RLのタイヤセンサ2からの信号の電波強度の変化を一点鎖線で示し、右後輪RRのタイヤセンサ2からの信号の電波強度の変化を二点鎖線で示している。
【0062】
図9によれば、左前輪FLのタイヤ無線機24、右後輪RRのタイヤ無線機24、左後輪RLのタイヤ無線機24が発する信号の電波強度が略同等となっている。このように、車載無線機31とタイヤ無線機24との距離が近くなるほど信号の電波強度が高くなるとは限らない。このため、各タイヤセンサ2が発する信号を車載機3で受信した際の信号の電波強度の大小関係だけで各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することは困難である。
【0063】
これ対して、本実施形態の車載機3は、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に相関性を有する物理量に基づいて、車載無線機31とタイヤ無線機24までの距離を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。そして、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。
【0064】
車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、信号の送受信間の時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離Lvtを用いることで、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0066】
(1)車載機3は、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDを算出し、当該位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。これによれば、信号の電波強度に基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する場合に比べて、車載機タイヤ距離Lvtを精度良く算出することができる。
【0067】
(2)車載機3は、車体6における車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。本実施形態では、車載機3が各車輪5a~5dと異なる距離となる位置に配置されているため、車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出することができる。
【0068】
(3)車載機3は、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。車輪5a~5dの回転角度θによってタイヤ無線機24の位置が変動することから、車載機タイヤ距離Lvtは、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定した際の測定結果の平均値とすることが望ましい。
【0069】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、車体6における車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出したものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、車載機タイヤ距離Lvtと車輪5a~5dとの対応関係を予め設定したものを用いて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出するようになっていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0070】
第1実施形態では、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出するものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、信号の位相差PDに基づいて算出した車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を車輪5a~5dの回転角度θで補正し、その補正値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出するようになっていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図10、
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0072】
本実施形態の車輪位置検出処理では、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に基づいて、車載無線機31とタイヤ無線機24までの距離を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図10、
図11に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図10に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0073】
図10に示すように、車載機3は、ステップS2100にて、車載機タイヤ距離Lvtを算出するために必要な処理を要求する要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0074】
一方、
図11に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS2200にて、車載無線機31から要求信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信した場合にステップS2210に移行する。なお、タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信するまでステップS2200の処理を繰り返す。
【0075】
タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信すると、ステップS2210にて、要求信号に対する応答信号を送信する。具体的には、タイヤセンサ2は、要求信号の受信から応答信号の送信までに要した時間を含む信号を応答信号として送信する。なお、応答信号は、要求信号の受信時刻および応答信号の送信時刻を含む信号でもよい。また、応答信号には、タイヤ空気圧に関する情報が格納されたフレームが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0076】
図10に示すように、車載機3は、ステップS2110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS2120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS2110の処理を繰り返す。
【0077】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS2120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の到来時間ΔTに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。具体的には、車載機3は、要求信号を発してから応答信号を受信するまでの時間からタイヤセンサ2が要求信号を受信してから応答信号の送信までに要した時間を減算した値の半分を到来時間ΔTとして算出する。この到来時間ΔTは、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差である。
【0078】
車載機3は、到来時間ΔTと車載無線機31とタイヤ無線機24との間の距離との関係を規定した制御マップまたは関係式を用いて、到来時間ΔTから車載機タイヤ距離Lvtを算出する。例えば、車載機3は、到来時間ΔTを電波速度(すなわち、光速)に乗ずることで車載機タイヤ距離Lvtを算出する。本実施形態の車載機3は、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。車載機3は、例えば、各車輪5a~5dが一回転するまでの間に、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出する。
【0079】
続いて、車載機3は、ステップS2130にて、車体6における車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいて、各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0080】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0081】
(1)本実施形態の車載機3は、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の到来時間ΔTを算出し、到来時間ΔTに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。到来時間ΔTは、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に対応している。このため、信号の電波強度に基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する場合に比べて、車載機タイヤ距離Lvtを精度良く算出することができる。
【0082】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出するものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、信号の到来時間ΔTに基づいて算出した車載無線機31からタイヤ無線機24までの距離を車輪5a~5dの回転角度θで補正し、その補正値を車載機タイヤ距離Lvtとして算出するようになっていてもよい。
【0083】
また、要求信号を発してから応答信号を受信するまでの時間からタイヤセンサ2が要求信号を受信してから応答信号の送信までに要した時間を減算して到来時間ΔTを算出するものを例示したが、到来時間ΔTの算出方法はこれに限定されない。車載機3は、例えば、車載機3が要求信号を送信してからタイヤセンサ2で要求信号を受信するまでに要した時間やタイヤセンサ2が応答信号を送信してから車載機3で応答信号を受信するまでに要した時間を到来時間ΔTとして算出するようになっていてもよい。なお、この場合は、車載機3とタイヤセンサ2とで時刻を同期させる同期処理を適宜行うことが望ましい。
【0084】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図12~
図19を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。本実施形態では、車載機3が車両1の室内に配置されている例について説明する。
【0085】
本実施形態の各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24は、自身を除く他のタイヤセンサ2と通信可能に構成されている。各タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24同士の間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第1時間差または当該第1時間差に相関性を有する第1物理量に基づいて、タイヤ無線機24同士の距離をタイヤ間距離Lttとして算出する。
【0086】
本実施形態の車載機3は、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差としての第2時間差または当該第2時間差に相関性を有する第2物理量に基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。
【0087】
また、
図12に示すように、本実施形態の車載機3は、車両1の室内のうち、右後方に配置されている。車載無線機31は、右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt4が最も小さく、左前輪FLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt1が最も大きい。また、車載機3は、左後輪RLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt3が右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt2よりも小さい。車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24までの距離は、以下の関係式F2で示す関係になっている。
Lvt4<Lvt3<Lvt2<Lvt1 ・・・(F2)
本実施形態の車載無線機31は、車両1に右後輪RRの近傍に配置されている。本実施形態のように車載機3が車両1の室内に配置されている場合、第1実施形態のように車載機3が車両1の室外に配置されている場合に比べて、車載無線機31と各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24との距離の差が小さくなる。例えば、車載無線機31と左前輪FLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt1は、車載無線機31と右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt2に比べて大きいものの、その差が小さくなっている。
【0088】
一方、
図13に示すように、左前輪FLに配置されるタイヤ無線機24は、右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Ltt1が、車載無線機31との距離Lvt1よりも大きい(すなわち、Lvt1<Ltt1)。また、右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24は、右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Ltt2が、車載無線機31との距離Lvt2よりも小さい(すなわち、Ltt2<Lvt2)。そして、車載機タイヤ距離Lvt1、Lvt2の差(すなわち、Lvt1-Lvt2)とタイヤ間距離Ltt1、Ltt2の差(すなわち、Ltt1-Ltt2)の関係は、以下の関係式F3で示す関係になっている。
Lvt1-Lvt2<Ltt1-Ltt2 ・・・(F3)
これらを考慮して、本実施形態の車輪位置検出処理は、車載機タイヤ距離Lvtに加えて、タイヤ無線機24同士の距離Lttに基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図14、
図15に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図14に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0089】
図14に示すように、車載機3は、ステップS3100にて、車載機タイヤ距離Lvtを算出するために必要な処理を要求する要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0090】
一方、
図15に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS3200にて、車載無線機31から要求信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信した場合にステップS3210に移行する。なお、タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信するまでステップS3200の処理を繰り返す。
【0091】
タイヤセンサ2は、車載無線機31から要求信号を受信すると、ステップS3210にて、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。この応答信号には、応答信号の送信時の信号の位相に関する情報が含まれている。なお、応答信号には、タイヤ空気圧に関する情報が格納されたフレームが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0092】
図14に示すように、車載機3は、ステップS3110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS3120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS3110の処理を繰り返す。
【0093】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS3120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。車載機タイヤ距離Lvtの算出方法は、第1実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0094】
ここで、
図16は、車両1の走行時に車載機3で算出した車載無線機31と各タイヤ無線機24との距離と各車輪5a~5dの回転角度θとの関係の一例を示している。
図16では、車載無線機31と左前輪FLのタイヤ無線機24との距離の変化を実線で示し、車載無線機31と右前輪FRのタイヤ無線機24との距離の変化を破線で示している。また、
図16では、車載無線機31と左後輪RLのタイヤ無線機24との距離の変化を一点鎖線で示し、車載無線機31と右後輪RRのタイヤ無線機24との距離の変化を二点鎖線で示している。
【0095】
図16によれば、右後輪RRのタイヤ無線機24、左後輪RLのタイヤ無線機24の順に車載機3との距離が大きくなっていることが判る。また、
図16によれば、右前輪FRのタイヤ無線機24と車載機3との距離Lvt2が、左前輪FLのタイヤ無線機24と車載機3との距離Lvt1と同程度になっていることも判る。このように、車載機3が車両1の室内に配置されている場合、車載無線機31と各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24との距離の差が小さくなることがあり得る。
【0096】
このため、車載機3は、ステップS3130にて、車載機タイヤ距離Lvtの差が小さいか否かを判定する。例えば、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtの差が所定の基準値よりも小さいか否かを判定する。所定の基準値は、例えば、各車輪5a~5dの回転角度θに伴う車載機タイヤ距離Lvtの変動量の平均値に設定される。
【0097】
車載機タイヤ距離Lvtの差が大きい場合、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを特定することができる。このため、車載機タイヤ距離Lvtの差が大きい場合、車載機3は、ステップS3140にて、車体6における車載機3の位置および車載機タイヤ距離Lvtの大小関係に基づいて、各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2の位置を右後輪RRとし、車載機タイヤ距離Lvtが2番目に小さくなるタイヤセンサ2の位置を左後輪RLとする。また、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も大きくなるタイヤセンサ2の位置を左前輪FLとし、車載機タイヤ距離Lvtが2番目に大きくなるタイヤセンサ2の位置を右前輪FRとする。この結果に基づいて、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0098】
一方、車載機タイヤ距離Lvtの差が小さい場合、車載機3は、ステップS3150に移行する。車載機3は、ステップS3150にて、車載機タイヤ距離Lvtの算出結果に基づいて、車載機3との距離が最も小さいタイヤセンサ2を基準センサとして特定する。具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtの算出結果に基づいて右後輪RRに設けられたタイヤセンサ2Dを基準センサとして特定する。そして、車載機3は、ステップS3160にて、基準センサからタイヤ間距離Lttを取得する。
【0099】
具体的には、車載機3は、基準センサに向けてタイヤ間距離Lttの算出結果を要求する要求信号を出力する。基準センサは、車載機3からの要求信号を受けると、タイヤ間距離Lttの算出処理の結果を車載機3に向けて出力する。
【0100】
ここで、基準センサは、車載機3側で車輪位置検出処理が実行されると、それと並行して、タイヤ間距離Lttの算出処理を実行する。なお、基準センサは、車載機3側からの要求信号を受けた際に、タイヤ間距離Lttの算出処理を実行するようになっていてもよい。以下、基準センサが実行するタイヤ間距離Lttの算出処理について
図14、
図15を参照しつつ説明する。
【0101】
図17に示すように、基準センサは、ステップS3300にて、自身以外の他のタイヤセンサ2に向けて、タイヤ間距離Lttを算出するために必要な処理を要求する要求信号を送信する。
【0102】
一方、
図18に示すように、基準センサ以外の他のタイヤセンサ2は、ステップS3400にて、基準センサから要求信号を受信したか否かを判定する。他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信した場合にステップS3410に移行する。なお、他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信するまでステップS3410の処理を繰り返す。
【0103】
他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信すると、ステップS3410にて、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。この応答信号には、応答信号の送信時の信号の位相に関する情報が含まれている。なお、応答信号には、タイヤ空気圧に関する情報が格納されたフレームが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0104】
図17に示すように、基準センサは、ステップS3310にて、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。基準センサは、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS3320に移行する。なお、基準センサは、他のタイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS3310の処理を繰り返す。
【0105】
基準センサは、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS3320にて、タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいてタイヤ間距離Lttを算出する。信号の位相差PDに基づくタイヤ間距離Lttの算出方法は、第1実施形態で説明した信号の位相差PDに基づく車載機タイヤ距離Lvtの算出方法と同様であることから、その説明を省略する。
【0106】
ここで、
図19は、車両1の走行時に基準センサで算出した基準センサと他のタイヤセンサ2との距離と各車輪5a~5dの回転角度θとの関係を示している。
図19では、基準センサと右前輪FRのタイヤセンサ2Bとの距離の変化を実線で示し、基準センサと左前輪FLのタイヤセンサ2Aとの距離の変化を破線で示している。
図19によれば、基準センサと左前輪FLのタイヤセンサ2Aが、基準センサと右前輪FRのタイヤセンサ2Bとの距離よりも大きくなっていることが判る。
【0107】
但し、タイヤ無線機24は、タイヤバルブVに取り付けられている。このため、基準センサのタイヤ無線機24と他のタイヤセンサ2のタイヤ無線機24との距離が、車輪5a~5dの回転角度θに応じて若干変動する。このことを考慮し、基準センサは、他のタイヤセンサ2までの距離を複数回測定し、その測定結果の平均値をタイヤ間距離Lttとして算出する。基準センサは、例えば、各車輪5a~5dが一回転するまでの間に、基準センサと他のタイヤセンサ2との距離を複数回測定し、その測定結果の平均値をタイヤ間距離Lttとして算出する。
【0108】
図14に戻り、車載機3は、基準センサからタイヤ間距離Lttを取得すると、ステップS3140に移行する。車載機3は、ステップS3140にて、車載機タイヤ距離Lvtの大小関係およびタイヤ間距離Lttの大小関係に基づいて、各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。
【0109】
具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2の位置を右後輪RRとし、車載機タイヤ距離Lvtが2番目に小さくなるタイヤセンサ2の位置を左後輪RLとする。
【0110】
また、車載機3は、タイヤ間距離Lttが最も大きくなるタイヤセンサ2の位置を左前輪FLとし、タイヤ間距離Lttが2番目に大きくなるタイヤセンサ2の位置を右前輪FRとする。この結果に基づいて、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0111】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0112】
(1)車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の送受信間の時間差およびタイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の送受信間の時間差は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、送受信間の時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離Lvtおよびタイヤ間距離Lttを用いることで、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。特に、本実施形態の車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtおよびタイヤ間距離Lttに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。これによると、例えば、各タイヤ無線機24と車載無線機31との距離差が小さい場合であっても、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を適切に検出することができる。
【0113】
(2)具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて車載機3との距離が最も小さいタイヤセンサ2を基準センサとして特定する。そして、車載機3は、基準センサと基準センサ以外の他のセンサとのタイヤ間距離Lttに基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。これによると、基準センサが車載機3の最も近くにある右後輪RRとして検出することができる。加えて、基準センサと他のタイヤセンサ2との距離が判れば、各車輪5a~5dの相対的な位置関係から他のタイヤセンサ2が設けられた車輪5の位置についても検出することができる。したがって、各タイヤ無線機24と車載無線機31との距離差が小さい場合であっても、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を適切に検出することができる。
【0114】
(3)タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDを第1物理量として算出し、当該位相差PDに基づいてタイヤ間距離Lttを算出する。各タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDは、各タイヤ無線機24同士の距離に比例し、各タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に相関性を有する。このため、各タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差に基づいて、タイヤ間距離Lttを精度良く算出することができる。
【0115】
(4)車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtの大小関係およびタイヤ間距離Lttの大小関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。車載機タイヤ距離Lvtの大小関係だけでなく、タイヤ間距離Lttの大小関係を用いれば、各タイヤ無線機24と車載無線機31との距離差が小さい場合であっても、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を適切に検出することができる。
【0116】
(5)タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24同士の距離を複数回測定し、その測定結果の平均値をタイヤ間距離Lttとして算出する。車輪5a~5dの回転角度θによってタイヤ無線機24の位置が変動することから、タイヤ間距離Lttは、タイヤ無線機24同士の距離を複数回測定した際の測定結果の平均値とすることが望ましい。
【0117】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、車載機3との距離が最も小さい基準センサで算出されたタイヤ間距離Lttを用いて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出するものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、第3実施形態では、基準センサ以外の他のタイヤセンサ2で算出されたタイヤ間距離Lttを用いて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出するようになっていてもよい。
【0118】
第3実施形態では、車載機タイヤ距離Lvtの大小関係およびタイヤ間距離Lttの大小関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出したものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、車載機タイヤ距離Lvtと車輪5a~5dとの対応関係およびタイヤ間距離Lttと車輪5a~5dとの対応関係を予め設定したものを用いて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出するようになっていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0119】
第3実施形態では、各タイヤ無線機24同士の距離を複数回測定し、その測定結果の平均値をタイヤ間距離Lttとして算出するものを例示したが、タイヤセンサ2は、これに限定されない。タイヤセンサ2は、例えば、信号の位相差PDに基づいて算出した各タイヤ無線機24同士の距離を車輪5a~5dの回転角度θで補正し、その補正値をタイヤ間距離Lttとして算出するようになっていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0120】
車載機3は、車体6における複数の車輪5a~5dと異なる距離となる位置に設けられていることが望ましいが、これに限定されない。車載機3は、例えば、複数の車輪5a~5dのうち一部との距離が同様となる位置に設けられていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0121】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図20、
図21を参照して説明する。本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0122】
本実施形態の基準センサは、各タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に基づいて、各タイヤ無線機24同士の距離をタイヤ間距離Lttとして算出する。以下、本実施形態の基準センサが実行するタイヤ間距離Lttの算出処理について
図20、
図21に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図20に示す制御フローは、例えば、車載機3側で車輪位置検出処理が実行されると、それと並行して基準センサによって実行される。
【0123】
図20に示すように、基準センサは、ステップS3500にて、タイヤ間距離Lttを算出するために必要な処理を要求する要求信号を自身以外の他のタイヤセンサ2に向けて送信する。
【0124】
一方、
図21に示すように、他のタイヤセンサ2は、ステップS3600にて、基準センサから要求信号を受信したか否かを判定する。他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信した場合にステップS3610に移行する。なお、他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信するまでステップS3610の処理を繰り返す。
【0125】
他のタイヤセンサ2は、基準センサから要求信号を受信すると、ステップS3610にて、要求信号に対する応答信号を送信する。具体的には、他のタイヤセンサ2は、要求信号の受信から応答信号の送信までに要した時間を含む信号を応答信号として送信する。なお、応答信号は、要求信号の受信時刻および応答信号の送信時刻を含む信号でもよい。また、応答信号には、タイヤ空気圧に関する情報が格納されたフレームが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0126】
図20に示すように、基準センサは、ステップS3510にて、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。基準センサは、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS3520に移行する。なお、基準センサは、他のタイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS3510の処理を繰り返す。
【0127】
基準センサは、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS3520にて、タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の到来時間ΔTに基づいてタイヤ間距離Lttを算出する。到来時間ΔTは、例えば、基準センサが要求信号を発してから応答信号を受信するまでの時間から他のタイヤセンサ2が要求信号を受信してから応答信号の送信までに要した時間を減算した値とすればよい。なお、信号の到来時間ΔTに基づくタイヤ間距離Lttの算出方法は、第2実施形態で説明した信号の到来時間ΔTに基づく車載機タイヤ距離Lvtの算出方法と同様であることから、その説明を省略する。
【0128】
その他は、第3実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第3実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
【0129】
(1)本実施形態の基準センサは、各タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の到来時間ΔTを算出し、到来時間ΔTに基づいてタイヤ間距離Lttを算出する。到来時間ΔTは、各タイヤ無線機24で通信を行う際の信号の送受信間の時間差に対応している。このため、信号の電波強度に基づいてタイヤ間距離Lttを算出する場合に比べて、タイヤ間距離Lttを精度良く算出することができる。
【0130】
(第4実施形態の変形例)
タイヤ間距離Lttは、各タイヤ無線機24までの距離を複数回測定した際の平均値であってもよいし、各タイヤ無線機24までの距離を車輪5a~5dの回転角度θで補正した補正値であってもよい。
【0131】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図22~
図24を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0132】
図22に示すように、本実施形態の車載機3は、車両1の室内のうち、後方の略中央に配置されている。車載無線機31は、左後輪RLおよび右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt3、Lvt4が、左前輪FLおよび右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt1、Lvt2よりも小さい。そして、車載無線機31と左前輪FLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt1は、車載無線機31と右前輪FRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt2と略同等である。また、車載無線機31と左後輪RLに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt3は、車載無線機31と右後輪RRに配置されるタイヤ無線機24との距離Lvt4と略同等である。
【0133】
ここで、車両1は、左右に設けられた乗降ドア(すなわち、左側ドアLDおよび右側ドアRD)の双方に、鍵検知装置7A、7Bが設けられている。鍵検知装置7A、7Bは、乗降ドア用の電子鍵KEYを検知する。電子鍵KEYは、固有の識別コードを有し、鍵検知装置7A、7Bから識別コードの送信要求がなされると、識別コードを含むフレームを鍵検知装置7A、7Bに向けて送信する。
【0134】
図23に示すように、鍵検知装置7A、7Bは、鍵検知用アンテナ71A、71B、第3送受信回路72A、72B、第3マイクロコンピュータ73A、73Bを有する。
【0135】
鍵検知用アンテナ71A、71Bは、電子鍵KEY等との間で通信を行うためのアンテナである。鍵検知用アンテナ71A、71Bは、電子鍵KEYから送られてくるフレームの受信に加えて、電子鍵KEYへのフレームの送信要求にも用いられる。鍵検知用アンテナ71A、71Bは、電子鍵KEYだけでなく、各タイヤセンサ2から送信される信号を受信可能になっている。
【0136】
第3送受信回路72A、72Bは、鍵検知用アンテナ71A、71Bを通じて電子鍵KEYと通信を行う通信回路である。第3送受信回路72A、72Bは、鍵検知用アンテナ71A、71Bによって受信された電子鍵KEYからの送信フレームを入力し、そのフレームを第3マイクロコンピュータ73A、73Bに送る入力部としての機能を果たす。第3送受信回路72A、72Bは、鍵検知用アンテナ71A、71Bを通じてフレームを受信すると、その受信した信号を第3マイクロコンピュータ73A、73Bに伝えている。
【0137】
第3マイクロコンピュータ73A、73Bは、鍵検知装置7A、7Bにおける制御部を構成し、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第3マイクロコンピュータ73A、73Bは、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、ドアロック制御を行う。ドアロック制御では、例えば、電子鍵KEYからの送信フレームに基づいてドアロック、ドアアンロックを行う。また、第3マイクロコンピュータ73A、73Bは、各タイヤセンサ2から送信される信号を受信した際、その信号の電波強度を検出する。第3マイクロコンピュータ73A、73Bは、CAN等の車内LANに接続されている。これにより、車載機3は、車内LANを通じて、各タイヤセンサ2から送信される信号を鍵検知用アンテナ71A、71Bが受信した際の電波強度を取得可能になっている。
【0138】
本実施形態の車輪位置検出処理は、車載機タイヤ距離Lvtに加えて、各タイヤセンサ2から送信される信号を鍵検知用アンテナ71A、71Bが受信した際の電波強度に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図24に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図24に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0139】
図24に示すように、車載機3は、ステップS4100にて、車載機タイヤ距離Lvtを算出するために必要な処理を要求する要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。タイヤセンサ2は、車載機3から要求信号を受信すると、第1実施形態と同様に、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。
【0140】
続いて、車載機3は、ステップS4110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS4120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS4110の処理を繰り返す。
【0141】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS4120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。車載機タイヤ距離Lvtの算出方法は、第1実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0142】
続いて、車載機3は、ステップS4130にて、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪・後輪のいずれであるかを特定する。
具体的には、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが所定距離よりも大きい場合にタイヤセンサ2が前輪に設けられているとし、車載機タイヤ距離Lvtが所定距離以下の場合にタイヤセンサ2が後輪に設けられているとする。所定距離は、例えば、車載機3から後輪までの最長距離から車載機3から前輪までの最短距離までの範囲に設定される。
【0143】
続いて、車載機3は、ステップS4140にて、各タイヤセンサ2から送信された応答信号を鍵検知用アンテナ71A、71Bが受信した際の信号の電波強度を鍵検知装置7A、7Bから取得する。そして、車載機3は、ステップS4150にて、鍵検知用アンテナ71A、71Bが受信した際の信号の電波強度に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。
【0144】
車載機3は、例えば、左側ドアLDに設けられた鍵検知用アンテナ71Aが受信した際の信号の電波強度が所定値以上となる場合に、タイヤセンサ2が左輪に設けられているとする。また、車載機3は、例えば、右側ドアRDに設けられた鍵検知用アンテナ71Bが受信した際の信号の電波強度が所定値以上となる場合に、タイヤセンサ2が右輪に設けられているとする。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0145】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0146】
(1)本実施形態の車載機3は、信号の送受信間の時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離Lvtに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出する。これにより、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。さらに、車載機3は、各タイヤセンサ2から送信される信号を鍵検知用アンテナ71A、71Bが受信した際の電波強度に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。このような構成は、例えば、車載機3が車両1の左右の略中央に設けられ、車載機タイヤ距離Lvtだけでタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを判別が困難な場合に特に有効である。
【0147】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態では、鍵検知用アンテナ71A、71Bが各タイヤセンサ2からの送信信号を受信した際の電波強度に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを検出するものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、乗降ドアのドアロック操作またはドアアンロック操作時に鍵検知装置7等から発信される信号を各タイヤセンサ2で受信した際の信号の電波強度に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを検出するようになっていてもよい。
【0148】
第5実施形態では、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出するものを例示したが、車載機3は、これに限定されない。車載機3は、例えば、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で通信を行う際の信号の到来時間ΔTに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出するようになっていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0149】
第5実施形態では、車載機3が車両1の室内の後方の略中央に配置されているものを例示したが、車載機3の配置形態は、これに限定されない。車載機3は、例えば、車両1の室内の前方の略中央に配置されていてもよい。また、車載機3は、例えば、車両1の室内の左側および右側の一方に偏って配置されていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0150】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図25~
図28を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0151】
図25に示すように、本実施形態の車載機3は、第5実施形態と同様に、車両1の室内のうち、後方の略中央に配置されている。また、本実施形態の各タイヤセンサ2は、車両1の利用者が携帯する携帯端末8と通信可能に構成されている。具体的には、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24は、携帯端末8と双方向に通信可能になっている。携帯端末8は、スマーフォン等のモバイル型の通信機器である。なお、携帯端末8は、電子鍵KEYであってもよい。
【0152】
図26に示すように、携帯端末8は、携帯アンテナ81、第4送受信回路82、第4マイクロコンピュータ83を有する。携帯アンテナ81は、基地局、各タイヤセンサ2、車載機3等との間で通信を行うためのアンテナである。携帯アンテナ81は、各タイヤセンサ2から送られてくる信号の受信に加えて、各タイヤセンサ2への信号の送信要求にも用いられる。第4送受信回路82は、携帯アンテナ81を通じて基地局、各タイヤセンサ2、車載機3等と通信を行う通信回路である。第4マイクロコンピュータ83は、携帯端末8における制御部を構成し、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第4マイクロコンピュータ83は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、各種処理を行う。
【0153】
本実施形態の携帯端末8は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24と携帯端末8との距離である端末タイヤ距離Lmtまたはタイヤ無線機24から送信された信号の電波強度のうち少なくとも一方を特徴量として算出可能になっている。端末タイヤ距離Lmtは、例えば、車載機タイヤ距離Lvtと同様の手法によって算出することができる。車載機3は、携帯端末8との通信によって、携帯端末8が算出した上記の特徴量を取得可能になっている。
【0154】
本実施形態の車輪位置検出処理は、車載機タイヤ距離Lvtに加えて、携帯端末8が算出した上記の特徴量に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図27、
図28に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図27に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0155】
図27に示すように、車載機3は、ステップS5100にて、車載機タイヤ距離Lvtの算出に必要な処理を要求する要求信号を各タイヤセンサ2に向けて送信するとともに、上記の特徴量の算出を要求する要求信号を携帯端末8に向けて送信する。
【0156】
タイヤセンサ2は、車載機3から要求信号を受信すると、第1実施形態と同様に、異なる周波数成分を有する信号を車載機3および携帯端末8に対して応答信号として送信する。
【0157】
図28に示すように、携帯端末8は、ステップS5200にて、車載機3から要求信号を受信したか否かを判定する。携帯端末8は、車載機3から要求信号を受信した場合にステップS5210に移行する。携帯端末8は、車載機3から要求信号を受信すると、ステップS5210にて、各タイヤセンサ2が送信する応答信号に基づいて、端末タイヤ距離Lmtおよび応答信号の電波強度の少なくとも一方を特徴量として算出する。なお、携帯端末8は、車載機3から要求信号を受信するまでステップS5200の処理を繰り返す。
【0158】
図27に示すように、車載機3は、要求信号を送信した後、ステップS5110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS5120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS5110の処理を繰り返す。
【0159】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS5120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。車載機タイヤ距離Lvtの算出方法は、第1実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0160】
続いて、車載機3は、ステップS5130にて、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪・後輪のいずれであるかを特定する。このステップS5130の処理は、第5実施形態で説明したステップS4130の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0161】
続いて、車載機3は、ステップS5140にて、携帯端末8から端末タイヤ距離Lmtおよび応答信号の電波強度の少なくとも一方を特徴量として取得する。そして、車載機3は、ステップS5150にて、携帯端末8から取得した端末タイヤ距離Lmtまたは応答信号の電波強度に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。
【0162】
車載機3は、例えば、車両1の右側にある携帯端末8から取得した端末タイヤ距離Lmtが所定距離以上の場合にタイヤセンサ2が左輪に設けられているとし、当該端末タイヤ距離Lmtが所定距離未満である場合にタイヤセンサ2が右輪に設けられているとする。
【0163】
また、車載機3は、例えば、車両1の右側にある携帯端末8から取得した応答信号の電波強度が所定値以上の場合にタイヤセンサ2が右輪に設けられているとし、当該電波強度が所定値未満である場合にタイヤセンサ2が左輪に設けられているとする。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0164】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0165】
(1)本実施形態の車載機3は、信号の送受信間の時間差に相関性を有する物理量に基づいて求めた車載機タイヤ距離Lvtに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出する。これにより、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。さらに、車載機3は、携帯端末8から取得した上記の特徴量に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。このような構成は、例えば、車載機3が車両1の左右の略中央に設けられ、車載機タイヤ距離Lvtだけでタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを判別が困難な場合に特に有効である。
【0166】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図29~
図33を参照して説明する。本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0167】
図29に示すように、加速度センサ22は、各車輪5a~5dの周方向の検出軸であるA軸と、各車輪5a~5dの径方向の検出軸であるB軸とを有する。加速度センサ22は、車輪5a~5dの回転時に車輪5a~5dに働く加速度のうち、B軸の加速度に応じた検出信号を第1加速度として出力し、A軸の加速度に応じた検出信号を第2加速度として出力する。
【0168】
加速度センサ22は、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの最下位置(すなわち、回転角度θ=0°)にあるときにA軸が前後方向DR2を向き、B軸が上下方向DR1を向くように設けられている。各タイヤセンサ2それぞれは、同様に構成されるとともに各タイヤセンサ2の車輪5a~5dの取付態様も同じである。
【0169】
但し、左輪に設けられる各タイヤセンサ2と右輪に設けられる各タイヤセンサ2とは、車軸を挟んで180度反転した状態で取り付けられるため、A軸およびB軸の向きが反対となる。例えば、
図30に示すように、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの最下位置にあってB軸が上方を向く際には、右輪のA軸が前向きとなり、左輪のA軸が後ろ向きとなる。
【0170】
ここで、
図31は、右輪の加速度センサ22から出力されるA軸およびB軸の検出値の変化の一例を示したタイムチャートである。また、
図32は、左輪の加速度センサ22から出力されるA軸およびB軸の検出値の変化の一例を示したタイムチャートである。
図31および
図32では、A軸の検出値(すなわち、第2加速度)を実線で示し、B軸の検出値(すなわち、第1加速度)を一点鎖線で示している。
【0171】
図31に示すように、右輪の加速度センサ22では、B軸の位相がA軸の位相に対して進む。すなわち、右輪の加速度センサ22では、A軸の検出値がピーク値となった後に、B軸の検出値がピーク値となる。
【0172】
一方、
図32に示すように、左輪の加速度センサ22では、B軸の位相がA軸の位相に対して遅れる。すなわち、左輪の加速度センサ22では、B軸の検出値がピーク値となった後に、A軸の検出値がピーク値となる。
【0173】
図30に示すように、本実施形態の車載機3は、車両1の左右方向DR3の略中央位置であって、後輪よりも前輪の近くに配置されている。すなわち、車載機3は、前輪と後輪との間の中間ラインMLよりも前方に配置されている。具体的には、車載機3は、中間ラインMLに対して車輪5a~5dのタイヤ径の分だけ前方に位置するラインよりも前方に配置されている。
【0174】
これらを加味して、本実施形態の車輪位置検出処理では、車載機タイヤ距離Lvtおよび第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図33に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図33に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0175】
図33に示すように、車載機3は、ステップS6100にて、車載機タイヤ距離Lvtの算出に必要な処理を要求する要求信号を各タイヤセンサ2に向けて送信する。タイヤセンサ2は、車載機3から要求信号を受信すると、異なる周波数成分を有する信号を車載機3に対して応答信号として送信する。
【0176】
車載機3は、要求信号を送信した後、ステップS6110にて、各タイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS6120に移行する。なお、車載機3は、各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS6110の処理を繰り返す。
【0177】
車載機3は、各タイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS6120にて、車載無線機31とタイヤ無線機24との間で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいて車載機タイヤ距離Lvtを算出する。車載機タイヤ距離Lvtの算出方法は、第1実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0178】
続いて、車載機3は、ステップS6130にて、各タイヤセンサ2から加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度を取得する。そして、車載機3は、ステップS6140にて、第1加速度と第2加速度との関係に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。車載機3は、例えば、B軸の位相がA軸の位相に対して進んでいるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを右輪に特定する。また、車載機3は、例えば、B軸の位相がA軸の位相に対して遅れているタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを左輪に特定する。
【0179】
続いて、車載機3は、ステップS6150にて、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪・後輪のいずれであるかを特定する。具体的には、車載機3は、左輪または右輪として検出されたものの中で、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを前輪として特定する。また、車載機3は、左輪または右輪として検出されたものの中で、車載機タイヤ距離Lvtが最も大きくなるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを後輪として特定する。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0180】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0181】
(1)本実施形態の車載機3は、第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。本実施形態の車両1は、左輪と右輪とが互いに反転した取付状態になっている。このため、左輪に設けられるタイヤセンサ2と右輪に設けられるタイヤセンサ2とでは、加速度センサ22の検出信号に含まれる第1加速度と第2加速度との関係が異なる。この第1加速度と第2加速度との関係は、電波強度の変動の影響を受けない。このため、車載機タイヤ距離Lvtだけでなく、第1加速度と第2加速度との関係に基づいて、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出することが望ましい。このような構成は、例えば、車載機3が車両1の左右の略中央に設けられ、車載機タイヤ距離Lvtだけでタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを判別が困難な場合に特に有効である。
【0182】
(2)車載機3は、車両1の前後方向DR2において後輪よりも前輪の近くに配置され、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを前輪として検出する。これによれば、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて複数のタイヤセンサ2のうち前輪に設けられたものを特定することができる。
【0183】
(第7実施形態の変形例)
第7実施形態では、車載機3が車両1の前後方向DR2において後輪よりも前輪の近くに配置されているものを例示したが、これに限定されない。車載機3は、例えば、
図34に示すように、車両1の前後方向DR2において前輪よりも後輪の近くに配置されていてもよい。この場合、車載機3は、車載機タイヤ距離Lvtが最も小さくなるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを後輪として検出すればよい。これによれば、車載機タイヤ距離Lvtに基づいて複数のタイヤセンサ2のうち後輪に設けられたものを特定することができる。
【0184】
第7実施形態では、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出した後に、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出するものを例示したが、これに限定されない。車載機3は、例えば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出した後に、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出するようになっていてもよい。
【0185】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、
図35~
図39を参照して説明する。本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0186】
図35に示すように、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの最下位置(θ=0°)のときに加速度センサ22のB軸の出力が最小値となり、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの最上位置(θ=180°)のときに加速度センサ22のB軸の出力が最大値となる。また、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの回転軸CLよりも後方位置(θ=90°)のときに加速度センサ22のB軸の出力が増加し、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの回転軸CLよりも前方位置(θ=90°)のときに加速度センサ22のB軸の出力が減少する。このように、車輪5a~5dにおけるタイヤセンサ2の位置と加速度センサ22のB軸の出力との間には相関性がある。
【0187】
図36に示すように、後輪のタイヤセンサ2C、2Dが車輪5c、5dの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θになる場合、後輪のタイヤセンサ2C、2Dと前輪のタイヤセンサ2A、2Aとのタイヤ間距離ΔTSは、以下の数式F4で示す範囲に収まる。但し、数式F4では、後輪の半径を「WLr」、前輪の半径を「WLf」、前輪の回転軸CLと後輪の回転軸CLとの距離を「ΔWL」としている。
【0188】
ΔWL-WLr-WLf<ΔTS<ΔWL+WLf・・・(F4)
一方、
図37に示すように、前輪のタイヤセンサ2A、2Bが車輪5c、5dの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θになる場合、タイヤ間距離ΔTSは、以下の数式F5で示す範囲に収まる。
【0189】
ΔWL-WLr<ΔTSr<ΔWL+WLr+WLf・・・(F5)
このため、後輪のタイヤセンサ2C、2Dが車輪5c、5dの回転軸CLよりも前方に位置する際のタイヤ間距離ΔTSは、前輪のタイヤセンサ2A、2Bが車輪5a、5bの回転軸CLよりも前方に位置する際のタイヤ間距離ΔTSより小さい値になり易い。
【0190】
これらを加味して、本実施形態の車輪位置検出処理では、第1加速度と第2加速度との関係およびタイヤ間距離ΔTSの比較結果に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図38、
図39に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図38に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0191】
図38に示すように、車載機3は、ステップS7100にて、各タイヤセンサ2から加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度を取得する。このステップS7100の処理は、第7実施形態で説明したステップS6130の処理と同様である。
【0192】
続いて、車載機3は、ステップS7110にて、第1加速度と第2加速度との関係に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。このステップS7110の処理は、第7実施形態で説明したステップS6140の処理と同様である。そして、車載機3は、ステップS7120にて、タイヤ間距離ΔTSの測距を要求する要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0193】
タイヤセンサ2は、車載機3側からの要求信号を受信すると、
図39に示す処理を実行する。
図39に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS7200にて、自身が車輪5a~5dの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θとなる際に、他のタイヤセンサ2に向けて、タイヤ間距離ΔTSを算出するために必要な処理を要求する要求信号を送信する。具体的には、タイヤセンサ2は、自身が最も前方に位置する回転角度θとなる際に要求信号を送信する。他のタイヤセンサ2では、要求信号を受信すると、異なる周波数成分を有する信号を応答信号として送信する。
【0194】
タイヤセンサ2は、ステップS7210にて、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信した場合にステップS7220に移行する。タイヤセンサ2は、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS7220にて、タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいてタイヤ間距離ΔTSを算出する。信号の位相差PDに基づくタイヤ間距離ΔTSの算出方法は、第1実施形態で説明した信号の位相差PDに基づく車載機タイヤ距離Lvtの算出方法と同様であることから、その説明を省略する。なお、タイヤセンサ2は、他のタイヤセンサ2のタイヤ無線機24から応答信号を受信するまでステップS7210の処理を繰り返す。また、タイヤ間距離ΔTSは、タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の到来時間ΔTに基づいて算出することも可能である。
【0195】
図38に戻り、車載機3は、タイヤセンサ2に向けてタイヤ間距離ΔTSの測距を要求する要求信号を送信した後、ステップS7130にて、タイヤセンサ2からタイヤ間距離ΔTSを取得する。そして、車載機3は、タイヤセンサ2が車輪5a~5dの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θになっている状態で算出したタイヤ間距離ΔTSを比較して、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪・後輪のいずれであるかを特定する。具体的には、車載機3は、タイヤ間距離ΔTSが小さいタイヤセンサ2が設けられた車輪5c、5dを後輪として検出し、タイヤ間距離ΔTSが大きいタイヤセンサ2が設けられた車輪5a、5bを前輪として検出する。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0196】
その他は、第7実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第7実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第7実施形態と同様に得ることができる。
【0197】
(1)本実施形態の車載機3は、電波強度の変動の影響を受けない第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。また、車載機3は、電波強度の変動の影響を受けないタイヤ間距離ΔTSに基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出する。これらによれば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。
【0198】
(2)車載機3は、タイヤセンサ2が前方に位置する回転角度θになっている状態で算出したタイヤ間距離ΔTSを比較し、タイヤ間距離ΔTSが小さいタイヤセンサ2が設けられた車輪5c、5dを後輪として検出する。また、タイヤ間距離ΔTSが大きいタイヤセンサ2が設けられた車輪5a、5bを前輪として検出する。これによれば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出することができる。
【0199】
(第8実施形態の変形例)
第8実施形態では、タイヤセンサ2は、タイヤセンサ2が前方に位置する回転角度θになっている状態でタイヤ間距離ΔTSを算出しているが、これに限定されない。タイヤセンサ2は、車載機3側からの要求信号を受信すると、
図40に示す処理を実行するようになっていてもよい。以下、
図40に示す処理について説明する。
【0200】
図40に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS7300にて、自身が車輪5a~5dの回転軸CLよりも後方に位置する回転角度θとなる際に、他のタイヤセンサ2に向けて、タイヤ間距離ΔTSを算出するために必要な処理を要求する要求信号を送信する。タイヤセンサ2は、ステップS7210にて、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、他のタイヤセンサ2から応答信号を受信すると、ステップS7220にて、タイヤ無線機24同士で異なる周波数成分を有する信号を用いた通信を行う際の信号の位相差PDに基づいてタイヤ間距離ΔTSを算出する。なお、タイヤ間距離ΔTSは、タイヤ無線機24同士で通信を行う際の信号の到来時間ΔTに基づいて算出することも可能である。
【0201】
このように、タイヤセンサ2が
図40に示す処理を実行する場合、車載機3は、タイヤ間距離ΔTSが小さいタイヤセンサ2を備える車輪5a、5bを前輪として検出し、タイヤ間距離ΔTSが大きいタイヤセンサ2を備える車輪5c、5dを後輪として検出する。これによっても、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出することができる。
【0202】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、
図41~
図45を参照して説明する。本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0203】
本実施形態のタイヤセンサ2は、タイヤ無線機24の受信時の電波の指向特性(すなわち、指向角)が広角となり、タイヤ無線機24の送信時の電波の指向特性が狭角に設定されている。具体的には、
図41に示すように、タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24が車輪5a~5dの回転軸CLの下方に位置する回転角度θになっている第1状態で車両1の後方に指向性を持つ電波を放射する構成になっている。また、タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24が車輪5a~5dの回転軸CLの上方に位置する回転角度θになっている第2状態で車両1の前方に指向性を持つ電波を放射する構成になっている。さらに、タイヤセンサ2は、タイヤ無線機24が車輪5a~5dの回転軸CLの後方に位置する状態で上方に指向性を持つ電波を放射し、タイヤ無線機24が車輪5a~5dの回転軸CLの前方に位置する状態で下方に指向性を持つ電波を放射する構成になっている。
【0204】
また、本実施形態の車載機3は、車載無線機31が車両1の前後方向DR2において前輪と後輪との間に配置されている。車載無線機31は、前輪と後輪との間であれば、前輪および後輪の一方までの距離が他方までの距離よりも大きくなる位置に配置されていてもよい。
【0205】
図42に示すように、後輪のタイヤセンサ2C、2Dは、車輪5c、5dの回転軸CLよりも後方に位置する回転角度θになっている第1状態では、車両1の後方に指向性を持つ電波を放射するので、車載機3との通信が不成立となる。また、後輪のタイヤセンサ2C、2Dは、車輪5c、5dの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θになっている第2状態では、車両1の前方に指向性を持つ電波を放射するので、車載機3との通信が成立する。
【0206】
一方、
図43に示すように、前輪のタイヤセンサ2A、2Bは、車輪5a、5bの回転軸CLよりも後方に位置する回転角度θになっている第1状態では、車両1の後方に指向性を持つ電波を放射するので、車載機3との通信が成立する。また、前輪のタイヤセンサ2A、2Bは、車輪5a、5bの回転軸CLよりも前方に位置する回転角度θになっている第2状態では、車両1の前方に指向性を持つ電波を放射するので、車載機3との通信が不成立となる。
【0207】
これらを加味して、本実施形態の車輪位置検出処理では、第1加速度と第2加速度との関係、タイヤセンサ2と車載機3との間における通信の成否に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を検出する。以下、本実施形態の車輪位置検出処理について
図44、
図45に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図44に示す制御フローは、車両1のイグニッションスイッチがオフからオンに変化した場合に周期的または不定期に車載機3によって実行される。
【0208】
図44に示すように、車載機3は、ステップS8100にて、各タイヤセンサ2から加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度を取得する。このステップS8100の処理は、第7実施形態で説明したステップS6130の処理と同様である。
【0209】
続いて、車載機3は、ステップS8110にて、第1加速度と第2加速度との関係に基づいて各タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。このステップS8110の処理は、第7実施形態で説明したステップS6140の処理と同様である。
【0210】
続いて、車載機3は、ステップS8120にて、タイヤセンサ2のタイヤ無線機24が第1状態になっている際に信号を送信することを要求する第1要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0211】
図45に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS8300にて、車載機3側から第1要求信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、車載機3側から第1要求信号を受信すると、ステップS8310にて、タイヤセンサ2が第1状態になっている際に応答信号を送信する。具体的には、タイヤセンサ2は、自身が車輪5a~5dの回転軸CLの下方に位置する回転角度θとなる際に応答信号を送信する。
【0212】
図44に戻り、車載機3は、第1要求信号を送信した後、ステップS8130にて、タイヤセンサ2側から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、タイヤセンサ2側から応答信号を受信した場合に、ステップS8140に移行し、タイヤセンサ2との通信が成立しているとして前輪判定フラグをオンする。一方、車載機3は、タイヤセンサ2側から応答信号を受信していない場合に、ステップS8150に移行し、タイヤセンサ2との通信が成立していないとして前輪判定フラグをオフする。
【0213】
続いて、車載機3は、ステップS8360に移行して、タイヤセンサ2のタイヤ無線機24が第2状態になっている際に信号を送信することを要求する第2要求信号を車載無線機31から各タイヤセンサ2のタイヤ無線機24に向けて送信する。
【0214】
図45に示すように、タイヤセンサ2は、ステップS8320にて、車載機3側から第2要求信号を受信したか否かを判定する。タイヤセンサ2は、車載機3側から第2要求信号を受信すると、ステップS8330にて、タイヤセンサ2が第2状態になっている際に応答信号を送信する。具体的には、タイヤセンサ2は、自身が車輪5a~5dの回転軸CLの上方に位置する回転角度θとなる際に応答信号を送信する。
【0215】
図44に戻り、車載機3は、第2要求信号を送信した後、ステップS8170にて、タイヤセンサ2側から応答信号を受信したか否かを判定する。車載機3は、タイヤセンサ2側から応答信号を受信した場合に、ステップS8180に移行し、タイヤセンサ2との通信が成立しているとして後輪判定フラグをオンする。一方、車載機3は、タイヤセンサ2側から応答信号を受信していない場合に、ステップS8190に移行し、タイヤセンサ2との通信が成立していないとして後輪判定フラグをオフする。
【0216】
続いて、車載機3は、ステップS8200にて、タイヤ無線機24が第1状態および第2状態となる際のタイヤセンサ2と車載機3との間の通信の成否に基づいて車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出する。具体的には、車載機3は、タイヤ無線機24が第1状態で車載機3との通信が成立し、第2状態で車載機3との通信が不成立となるタイヤセンサ2を備える車輪5a~5dを前輪として検出する。また、車載機3は、タイヤ無線機24が第2状態で車載機3との通信が成立し、第1状態で車載機3との通信が不成立となるタイヤセンサ2を備える車輪5a~5dを後輪として検出する。そして、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。
【0217】
その他は、第7実施形態と同様である。本実施形態の車輪位置検出装置は、第7実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第7実施形態と同様に得ることができる。
【0218】
(1)本実施形態の車載機3は、電波強度の変動の影響を受けない第1加速度と第2加速度との関係に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが左輪および右輪のいずれであるかを検出する。また、タイヤ無線機24が第1状態および第2状態となる際のタイヤセンサ2と車載機3との間の通信の成否は、電波強度の変動の影響が小さい。このため、車載機3は、タイヤセンサ2と車載機3との間の通信の成否に基づいてタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dが前輪および後輪のいずれであるかを検出すれば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を安定して検出することができる。
【0219】
(2)車載機3は、タイヤ無線機24が第1状態で車載機3との通信が成立し、第2状態で車載機3との通信が不成立となるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを前輪として検出する。これによれば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を精度よく検出することができる。
【0220】
(3)車載機3は、タイヤ無線機24が第2状態で車載機3との通信が成立し、第1状態で車載機3との通信が不成立となるタイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dを後輪として検出する。これによれば、タイヤセンサ2が設けられた車輪5a~5dの位置を精度よく検出することができる。
【0221】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0222】
上述の実施形態の車輪位置検出処理は、各タイヤセンサ2が車輪5a~5dのいずれに取り付けられたものであるかを特定し、各タイヤセンサ2のID情報を各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dの位置との紐付けが自動的に行われるものを例示した。しかし、各タイヤセンサ2のID情報を各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dの位置との紐付けは、マニュアル操作によって行われるようになっていてもよい。
【0223】
上述の第1~第6実施形態では、加速度センサ22が第1加速度および第2加速度を検出可能になっているものを例示したが、これに限定されない。加速度センサ22は、例えば、単軸加速度センサや3軸加速度センサで構成されていてもよい。
【0224】
上述の実施形態では、タイヤバルブVにタイヤセンサ2が取り付けられているものを例示したが、これに限定されず、タイヤバルブVとタイヤセンサ2とが一体に構成されていてもよい。タイヤセンサ2は、タイヤの空気圧、温度、加速度以外の物理量を検出するセンサとして構成されていてもよい。
【0225】
上述の実施形態のタイヤセンサ2および車載機3は、BLEの通信方式に基づいて双方向に通信可能に構成されているが、BLE以外の通信方式に基づいて双方向に通信可能なコネクション通信を行うように構成されていてもよい。
【0226】
上述の実施形態では、4つの車輪5a~5dを有する車両1に対して備えられた車輪位置検出装置について説明したが、さらに車輪が多い車両1についても、同様に本発明を適用することができる。
【0227】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0228】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0229】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0230】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0231】
1 車両
2 タイヤセンサ
24 タイヤ無線機
3 車載機
31 車載無線機
5a、5b、5c、5d 車輪
6 車体